JP2003097350A - シリンダヘッドカバー締結部の構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 エンジン製造ラインにおける部品管理を簡略
化し、且つ組付作業性を向上し得るように改良されたシ
リンダヘッドカバー締結部の構造を提供する。 【解決手段】 シリンダヘッドと一体をなす部材（実施
の形態中のスタッドボルト２）にねじ結合される締結部
材（実施の形態中の長ナット４）と、該締結材に設けら
れた第１リテーナ（実施の形態中のアッパリテーナ５）
と、シリンダヘッドカバー（１）に係止するシール部材
（７）と、該シール部材に設けられた第２リテーナ（実
施の形態中のロワリテーナ８）と、第１リテーナと第２
リテーナとの間に挟設されたばね部材（実施の形態中の
コイルスプリング９）と、該ばね部材が自然長の状態で
シール部材と締結部材とを相互保持させるべくシール部
材と締結部材との間に設けられた保持手段とを有するも
のとする。これにより、第１リテーナと第２リテーナと
の間にばね部材を挟設した状態でシール部材と締結部材
とが互いに保持されるので、これらの部品を一体に仮組
することができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、シリンダヘッドカ
バー締結部の構造に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】エンジンのシリンダヘッドに対してシリ
ンダヘッドカバーを固定する部分の構造として、シリン
ダヘッドに螺着したボルトの頭部とシリンダヘッドカバ
ーの外面との間にばね部材を挟設し、ばね部材が発生す
る弾発力をもってシリンダヘッドカバーをシリンダヘッ
ドに押圧するようにした構造が、特開２０００−１４５
５４３号公報に開示されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】この従来構造による
と、シリンダヘッドに螺着するボルト、ばね部材、及び
ばね部材を保持するためのリテーナの各部材は、ばらば
らの状態でエンジン製造ラインに供給される。またシリ
ンダヘッドに対するシリンダヘッドカバーの組み付け時
にこれら複数の部品を一々組み合わせなければならな
い。そのため、部品管理が厄介である上、組付工程も煩
雑になりがちであった。

【０００４】本発明は、このような従来技術の問題点を
解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、エ
ンジン製造ラインにおける部品管理を簡略化し、且つ組
付作業性を向上し得るように改良されたシリンダヘッド
カバー締結部の構造を提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】このような目的を果たす
ために、本発明の請求項１においては、シリンダヘッド
と一体をなす部材（実施の形態中のスタッドボルト２）
にねじ結合される締結部材（実施の形態中の長ナット
４）と、該締結材に設けられた第１リテーナ（実施の形
態中のアッパリテーナ５）と、シリンダヘッドカバー
（１）に係止するシール部材（７）と、該シール部材に
設けられた第２リテーナ（実施の形態中のロワリテーナ
８）と、前記第１リテーナと前記第２リテーナとの間に
挟設されたばね部材（実施の形態中のコイルスプリング
９）と、該ばね部材が自然長の状態で前記シール部材と
前記締結部材とを相互保持させるべく前記シール部材と
前記締結部材との間に設けられた保持手段とを有するこ
とを特徴とするものとした。

【０００６】このようにすれば、第１リテーナと第２リ
テーナとの間にばね部材を挟設した状態でシール部材と
締結部材とが互いに保持されるので、これらの部品を一
体に仮組することができる。

【０００７】また請求項２においては、上記保持手段と
して、締結部材を挿通する孔（１５ａ）をシール部材に
設けると共に、締結部材の外周面に弾発的に当接する環
状凸部（１６）を孔の内周面に設けるものとした。これ
により、シール部材の弾発力を利用してシール部材と締
結部材との仮組状態を保持し得る。

【０００８】更に請求項３においては、シール部材の外
周面に対応する折り返し部（１７）を第２リテーナに設
け、この折り返し部でカバーされる軸線方向範囲内に環
状凸部を設けるものとした。これにより、環状凸部に作
用する圧縮力を折り返し部にて受け止めることができ
る。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下に添付の図面を参照して本発
明について詳細に説明する。

【００１０】図１は、エンジンのシリンダヘッドに対し
てシリンダヘッドカバー１を固定するための締結手段を
示している。この締結手段は、シリンダヘッド側に固設
されたスタッドボルト２に螺着される雌ねじ孔３を備え
る締結部材としての長ナット４と、長ナット４に一体形
成された第１リテーナとしてのアッパリテーナ５と、シ
リンダヘッドカバー１に形成されたスタッドボルト挿通
孔６に嵌着されるシール部材７と、シール部材７の上部
に結合する第２リテーナとしてのロワリテーナ８と、ア
ッパ・ロワ両リテーナ５・８間に挟設されるばね部材と
してのコイルスプリング９とからなっている。

【００１１】アッパリテーナ５には、コイルスプリング
９の上端を係止させるためのスプリングシート１１がそ
の下面の外周部に、また長ナット４をスタッドボルト２
に螺着するのに捻回するための例えばソケットレンチと
係合する六角頭１２がその上面に、それぞれ一体形成さ
れている。このアッパリテーナ５付きの長ナット４は、
例えば冷間鍛造などで一体成型することができる。この
ように、工具係合部としての六角頭１２とアッパリテー
ナ５と長ナット４とを一体成型することで部品点数の削
減を図っている。

【００１２】ここで工具係合部としての六角頭１２の径
寸法を長ナット４の雌ねじ孔３よりも大きくすると共
に、捻回工具としてのソケットレンチの係合溝Ｇをアッ
パリテーナ５の上面から沈み込ませることにより、六角
頭１２を含む長ナット４全体の軸線方向寸法を最短化し
得る。また六角頭１２の径方向外側にスプリングシート
１１を設けることにより、締結力を大きくするためにコ
イルスプリング９の直径を大きくしても、六角頭１２の
サイズやソケットレンチのサイズを変更する必要がな
い。

【００１３】ロワリテーナ８は、板金の絞り加工からな
り、コイルスプリング９の下端を係止させるためのスプ
リングシート１３がその上面の外周部に、またシール部
材７の上面と外周面とを保持するために、外周側を下向
きに折り返すことによって下向きに凹となる窪み１４が
その中央部に、それぞれ形成されている。

【００１４】シール部材７およびロワリテーナ８の中心
部には、長ナット４を挿通する孔１５ａ・１５ｂが形成
されている。そしてシール部材の孔１５ａの内周面に
は、長ナット４の外周面に弾圧力を作用させるための環
状凸部１６が形成されている。この環状凸部１６は、ロ
ワリテーナ８に形成された窪み１４の環状内周面に対応
する位置、つまりシール部材７の外周面に対応してロワ
リテーナ８に設けられた折り返し部１７の範囲内に設け
られている。

【００１５】シール部材の孔１５ａの下側の開口部に
は、スリーブ１８が下向きに延出されている。シリンダ
ヘッドカバー１のスタッドボルト挿通孔６の内周面にこ
のスリーブ１８が密接することにより、シリンダヘッド
カバー１にシール部材７が係止するようになっている。

【００１６】長ナット４は、両リテーナ５・８間に挟持
したコイルスプリング９が自由長の時に、シール部材の
孔１５ａの内周面の環状凸部１６がその下端側の外周面
に当接するようにその長さが定められている。

【００１７】シール部材の孔１５ａに長ナット４を挿通
すると、長ナット４の外周面と環状凸部１６とが摩擦接
触する。この時、環状凸部１６には、長ナット４の外周
面からの径方向外向きの圧縮力が作用すると共に、ロワ
リテーナ８の下向きの折り返し部１７からの径方向内向
きの圧縮力が作用するので、この摩擦圧接力により、ア
ッパリテーナ５とロワリテーナ８との間にコイルスプリ
ング９を挟持した状態で、長ナット４とシール部材７と
の一体的な状態が保持される。

【００１８】このサブアセンブリ化された状態で、長ナ
ット４の下端をスタッドボルト２の上端に合わせた上
で、六角頭１２にソケットレンチ（図示せず）を係合さ
せて長ナット４を捻回することにより、コイルスプリン
グ９が適当に圧縮された状態となり、コイルスプリング
９の弾発力でシリンダヘッドカバー１がスタッドボルト
２つまりシリンダヘッドに固定されることとなる。

【００１９】ここで折り返し部１７の軸線方向範囲一杯
に環状凸部１６を設けるものとすれば、シール性および
保持力のより一層の向上を企図し得る。

【００２０】図２は、本発明の第２の実施形態を示して
おり、上記第１の実施形態と機能的に同一の部分には同
一符号を付してその説明は省略する。この実施例は、コ
イルスプリング９を皿ばね１９に代えたものであり、長
ナット４と環状凸部１６との間の摩擦圧接力によってア
ッパリテーナ５とロワリテーナ８との間に皿ばね１９を
保持した状態で、長ナット４とシール部材７との一体的
な状態を保持する機能は第１の実施形態と同じである。

【００２１】本第２の実施形態における皿ばね１９は、
シリンダヘッドカバー１側に大径側を配置することによ
り、シリンダヘッドカバー１と当接するシール部材７の
上方に設けられたロワリテーナ８の外周側に皿ばね１９
が当接するので、皿ばね１９の弾発力による保持力を高
効率に利用することができる。しかもアッパリテーナ５
をロワリテーナ８よりも小径とすることができるので、
アッパリテーナ５と一体をなす長ナット４を小型化し得
る。

【００２２】本第２の実施形態においては、皿ばね１９
とロワリテーナ８とを一体に設けても良く、一体化する
ことでさらに部品点数を削減し得る。

【００２３】なお、長ナット４を捻回する手段として
は、六角頭１２の部分に六角孔を開け、六角棒レンチを
用いて捻回するようにしても良い。

【００２４】また、図３に示すように、長ナット４とア
ッパリテーナ５とを別部材で構成しても良い。その際、
長ナット４に設けた六角頭１２などの工具係合部とアッ
パリテーナ５とは直接当接させても良いし、他の部材を
介して間接的に当接させるようにしても良い。さらにシ
ール部材７とロワリテーナ８についても、直接当接させ
ても良いし、他の部材を介して間接的に当接させても良
い。

【００２５】

【発明の効果】このように本発明の請求項１によれば、
アッパリテーナとロワリテーナとの間にばね部材を挟設
した状態でシール部材と締結部材とを相互に保持するも
のとしたので、これらの部品を一体に仮組することがで
きることから、部品点数を実質的に削減し、且つ組み付
け作業を簡略化する上に多大な効果を奏することができ
る。

【００２６】また請求項２によれば、締結部材を挿通す
る孔をシール部材に設けると共に、締結部材の外周面に
弾発的に当接する環状凸部を孔の内周面に設けるものと
したので、シール部材の弾発力を利用して締結部材とシ
ール部材との仮組状態を保持し得ることとなり、特別な
保持部材が不要となることから、構造の複雑化を招かず
に済む。

【００２７】更に請求項３によれば、ロワリテーナにシ
ール部材の外周面に対応する折り返し部を設け、折り返
し部の軸線方向範囲内に環状凸部を設けるものとしたの
で、環状凸部に作用する圧縮力を折り返し部で受け止め
られることとなり、シール性および保持力の向上に効果
的である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明による締結手段の要部縦断面図

【図２】本発明による締結手段の別の実施形態を示す要
部縦断面図

【図３】本発明による締結手段のさらに別の実施形態を
示す要部縦断面図

【符号の説明】

１ シリンダヘッドカバー ２ スタッドボルト ４ 長ナット ５ アッパリテーナ ７ シール部材 ８ ロワリテーナ ９ コイルスプリング １５ａ シール部材の孔 １６ 環状凸部 １７ 折り返し部

フロントページの続き (72)発明者 齋藤 秀樹 埼玉県和光市中央１丁目４番１号 株式会 社本田技術研究所内 Ｆターム(参考） 3G024 AA72 BA00 BA21 FA00 GA29

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シリンダヘッドと一体をなす部材に対し
   てねじ結合される締結部材と、 該締結部材に設けられた第１リテーナと、 前記シリンダヘッドカバーに係止するシール部材と、 該シール部材に設けられた第２リテーナと、 前記第１リテーナと前記第２リテーナとの間に挟設され
   たばね部材と、 該ばね部材が自然長の状態で前記シール部材と前記締結
   部材とを相互保持させるべく前記シール部材と前記締結
   部材との間に設けられた保持手段とを有することを特徴
   とするシリンダヘッドカバー締結部の構造。
2. 【請求項２】 前記保持手段は、前記シール部材に設け
   られた前記締結部材を挿通する孔と、前記ねじ結合部材
   の外周面に弾発的に当接すべく前記孔の内周面に設けら
   れた環状凸部とからなることを特徴とする請求項１に記
   載のシリンダヘッドカバー締結部の構造。
3. 【請求項３】 前記シール部材の外周面に当接する折り
   返し部を前記第２リテーナに設け、前記折り返し部でカ
   バーされる軸線方向範囲内に前記環状凸部を設けたこと
   を特徴とする請求項２に記載のシリンダヘッドカバー締
   結部の構造。