JP2003081869A - 骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤 - Google Patents

骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤

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JP2003081869A
JP2003081869A JP2001281493A JP2001281493A JP2003081869A JP 2003081869 A JP2003081869 A JP 2003081869A JP 2001281493 A JP2001281493 A JP 2001281493A JP 2001281493 A JP2001281493 A JP 2001281493A JP 2003081869 A JP2003081869 A JP 2003081869A
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bone
pth
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osteoblasts
cell
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Toshinori Ishizuya
俊則 石津谷
Kazuhiko Katayama
和彦 片山
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Asahi Kasei Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、骨形成作用を増強する、骨髄細胞
または骨芽細胞移植医療用補助剤を提供することを目的
とする。 【解決手段】 副甲状腺ホルモン(PTH)またはPT
H誘導体を主成分とする、骨髄細胞または骨芽細胞移植
医療用補助剤。 【効果】 本発明の、副甲状腺ホルモン(PTH)また
はPTH誘導体を主成分とする骨髄細胞または骨芽細胞
移植医療用補助剤を使用することにより、骨再生を促進
して、骨折または骨欠損の治療期間を短縮することに有
用である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する分野】本発明は、副甲状腺ホルモン(P
TH)またはPTH誘導体を主成分とする骨髄細胞また
は骨芽細胞移植医療用補助剤に関する。
【0002】
【従来の技術】臓器移植は、臓器が重篤な障害を受けた
ときに選択される治療法の一つである。しかし、ドナー
数の不足、病原体感染、拒絶など、様々な技術的、社会
的問題を抱えた治療法でもある。この時、臓器そのもの
でなく、細胞を移植することにより臓器移植を代替する
ことができるならば、上記の様々な弊害を軽減させるこ
とができる。この時、細胞の由来としては異種、同種、
自己の組織が考えられるが、異種組織由来の細胞に対し
ては拒絶免疫の問題が大きく、さらに既存または未知の
病原体感染の危険性が想定されるため、その利用は極め
て特殊な場合に限定される。
【0003】一方、同種組織由来の細胞では、自己認識
に関与する遺伝子群を合致させることにより拒絶免疫の
問題は軽減されるため、臓器移植を代替する細胞移植に
は、同種または自己組織由来の細胞が最も理想的と考え
られる。しかし当然のことながら採取量は限定され、ま
た、取得される細胞は高い分化能を有していない細胞で
あったり、生体外に取り出されたことによって機能が減
弱したり消失したりする。このため、生体外に取り出し
た細胞の機能を効率よく促進させるための方法や、生体
外に取り出した未分化な細胞を機能細胞へと分化させる
方法の確立が望まれており、例えば、パーキンソン病、
アルツハイマー病に対する神経細胞の移植、糖尿病に対
する膵島細胞の移植、肝炎に対する肝実質細胞の移植、
そして骨折や骨欠損に対する骨髄細胞や骨芽細胞の移植
などが試みられている。
【0004】骨折は種々の原因により、あらゆる年齢層
のヒトにおいて生じうる障害である。その上、骨折の治
癒には比較的長期間を要する。特に、複雑骨折による骨
欠損は、極めて長期に及ぶ治癒期間を必要とし、完治不
能な場合もある。このように骨折は患者の日常生活に重
大な支障をきたす。従って、骨折患者を早期に離床させ
ることは、患者の予後、QOL(Quolity of
Life)などの様々な点で極めて重要な課題であ
る。
【0005】また高齢者が骨折による長期臥床を余儀な
くされた場合、不動性骨萎縮の併発により、易骨折性が
加速度的に高まる。加えて骨折した高齢者は痴呆などの
内科的合併症を伴う頻度が高いため寝たきりになる可能
性が極めて高い。こうしたことから、近年の高齢者の増
加に伴い、高齢者の骨折が社会的にも経済的にも重大な
問題となりつつある。以上のような理由から、外科医
療、特に骨折治療の分野において、骨折の治療や骨欠損
部の修復促進に適応可能な優れた骨形成促進剤の開発
や、同種または自家骨由来の細胞移植術の確立が強く望
まれている。
【0006】骨折の治癒は局所で起こる現象である。こ
のとき、骨折部位の状態が、炎症惹起、仮骨形成、リモ
デリングというステップを経て、経時的に変化していく
ことが知られている。また生体内においては、骨折が生
じた際に骨形成を促進する作用を示す種々の因子が産生
され、上記のそれぞれのステップにおいて、それらの因
子が骨折部位で局所的に作用を示し、骨折の治癒を促進
することが知られている。
【0007】このような因子としては骨形態誘導因子
(Bone Morphogeneic Protei
n、BMP;J.Bone Miner.Res.1
3.1483.1998)、線維芽細胞増殖因子(Fi
broblast GrowthFactor、FG
F;Endocrinology,135.774.1
998)、トランスフォーミング成長因子(Trans
forming Growth Factor−β、T
GF−β;Acta OrthopaedicaSca
ndinavica,64.553.1993)などが
知られており、動物実験などでもその作用が証明されて
いる。
【0008】これらの骨形成促進因子は、いずれも分子
量が5000以上のペプチドあるいは蛋白質であり、換
言すればこれらの骨形成促進因子はペプチド性生理活性
物質である。一般にペプチド性生理活性物質は生体内に
おいて速やかに代謝され失活してしまうので、骨折の治
療を目的として、上記骨形成促進因子をそのまま患者に
投与しても充分な治療効果は得られない。また一般に、
ペプチド性生理活性物質は化学的安定性に乏しい。この
問題を解決するために、有効成分であるペプチド性生理
活性物質の安定化を試みた製剤が種々報告されている
が、臨床での応用について満足出来る品質のものはまだ
得られていない。
【0009】一方、ペプチド性生理活性物質ではない、
分子量の低い化合物の中にも、骨形成促進作用を示す物
質が知られており、例えば、プロスタグランディン類、
ベンジルホスホン酸誘導体、フェノールスルホフタレン
誘導体などが報告されているが、これら既知の物質で、
臨床的に骨折や骨欠損の治療に充分な効果があったとい
う報告はない。このため現時点において、満足できる治
療効果を有する骨形成促進物質はなく、従って同種また
は自家骨由来の細胞移植による外科的治療にかかる期待
は極めて大きいといえる。
【0010】骨組織は主に、骨表面を被覆する骨芽細
胞、骨小孔に存在する骨細胞、さらに骨表面で骨吸収を
営む破骨細胞で構成される。中でも骨芽細胞は、単独で
骨基質の産生と骨基質成分の石灰化、破骨細胞の分化お
よび活性調節を行い、骨形成の中心的役割を担う。この
ため生体外に取り出した骨芽細胞、または生体外に取り
出した未分化間葉系細胞を生体外で骨芽細胞に分化さ
せ、適当な担体と共に生体の骨折部位、または骨欠損部
位などに移植する技術が試みられている。
【0011】従来、ある程度分化した骨芽細胞を同種ま
たは自家から、一般的な移植術に足る一定量を採取する
ことは極めて困難であったが、最近、ヒト骨髄細胞を生
体外に取り出してデキサメサゾンと共に培養すると、骨
芽細胞へと効率的に分化することが報告された(Ohg
ushiら“Stem cell technolog
y and bioceramics;from ce
ll to geneengineering”J.B
iomed.Mat.Res.48.913−927.
1999)ため、骨髄細胞を骨芽細胞に分化させて、生
体内に移植する技術が主流となりつつある。
【0012】しかしながら、これだけでは充分でなく、
生体外で培養した骨芽細胞の骨形成機能をより増強させ
ることで、生体内に移植したときの治癒効果をさらに加
速させることが、治療期間短縮のためには求められる。
しかしながら、例えば前述したBMPは生体外では骨芽
細胞の他に軟骨細胞や脂肪細胞の分化も促進してしまう
し、線維芽細胞増殖因子は細胞の増殖は促進するが、骨
芽細胞の骨形成機能は決して促進しない。またトランス
フォーミング成長因子や、デキサメサゾン、その他の非
ペプチド性骨形成促進剤は、骨形成機能に対する作用は
極めて弱く、上述した目的には不十分であった。
【0013】骨芽細胞の分化を制御する細胞内因子とし
て、最近、骨形成に関与する種々の遺伝子のプロモータ
ー上に存在するOSE2配列を認識する一群の転写因子
が注目を浴びており、これらはcbf、またはPEBP
2、またはAML、またはRUNXと呼ばれる転写因子
ファミリーとして知られている。これら転写因子が骨形
成において重要な役割を担っていることは、このファミ
リーの一員であるcbfa1遺伝子を発生工学的手法に
よってノックアウトしたマウスでは、石灰化した骨組織
が殆ど認められないこと(Komoriら“Targe
ted disruption of cbfa1 r
esults in a complete lack
of bone formationowing t
o maturational arrest of
osteoblasts”Cell 89.755−7
64.1997)。
【0014】逆に、cbfa1遺伝子の発現プラスミド
を培養骨芽細胞に導入すると、シャーレ中に形成される
骨様結節が増加すること(Banerjeeら“Run
thomology domain proteins
in osteoblast diffrentia
tion:AML3/cbfa1 is a majo
r component of a bone−spe
cific complex”J.Cell Bioc
hem.66.1−8.1997)。
【0015】また、cbfa1遺伝子を骨組織で発生工
学的に強制発現させたマウスでは、骨形成活性が増加し
ていること(Amlingら“Increased b
one formation in cbfa1 ov
erexpressingmice”J.Bone M
iner.Res.14.S171.1999)などか
ら明らかである。従って、cbfa1(またはPEBP
2αA、またはAML3、またはRUNX2)と呼ばれ
る転写因子の活性は、骨形成促進シグナルの出現に伴っ
て骨芽細胞中で増加し、骨形成に関与する様々な形質遺
伝子の発現を促進させていると考えられる。
【0016】このことは同時に、OSE2配列を認識す
る転写因子の活性を促進する物質は、骨芽細胞における
骨形成作用を増強する作用を持つことを示しており、懸
かる物質は骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤と
して有用であることを期待させるに充分である。しか
し、現在までにそのような生理活性物質は知られていな
かった。
【0017】
【発明が解決しようとしている課題】本発明は、OSE
2配列を認識する転写因子の活性を促進して骨形成作用
を増強する、骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤
を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】本発明者らはOSE2配
列を認識する転写因子の活性を増強させる物質を鋭意、
探索した結果、意外にも副甲状腺ホルモンにこの作用が
存在していることを見出した。副甲状腺ホルモン(PT
H)またはPTH誘導体はヒトなどの生体に投与すると
骨形成を促進する作用を持つことから、新しいタイプの
骨粗鬆症治療薬として現在、注目を集めており(最新骨
粗鬆症、折茂肇、1999年、ライフサイエンス出
版)、骨粗鬆症治療における副甲状腺ホルモン(PT
H)またはPTH誘導体の有用性は、例えば以下の参考
文献で示唆、または開示されている:Horiら“Ef
fect of human parathyroid
hormone(PTH(1−34)) on ex
perimental osteopenia of
rats induced by ovariecto
my.”Bone Miner.3.193−199.
1988.;Wronskiら“Parathyroi
d hormone is more effecti
ve than estrogen or bisph
osphonates for restoratio
n of lost bone mass inova
riectomized rats.”Endocri
nology 132.823−831.1993.;
Uzawaら“Comparison of the
effects of intermittent a
nd continuous administrat
ion of human parathyroid
hormone (1−34) on rat bon
e.”Bone 16.477−484.1995.;
Fujitaら“Effect of an inte
rmittent weekly dose ofhu
man parathyroid hormone
(1−34) onosteoporosis:a r
andomized double−masked p
rospective study using th
ree dose levels.”Osteopor
osis Int.9.296−306.1999.;
Neerら“Effect of parathyro
idhormone (1−34) on fract
ures and bonemineral dens
ity in postmenopausal wom
en with osteoporosis.”N.E
ngl.J.Med.344.1434−1441.2
001.;1996年3月19日付で公開された藤田ら
の特開平8−73376;1987年10月6日付で発
行されたNeerらの米国特許第4,698,328
号。
【0019】しかしながら、副甲状腺ホルモン(PT
H)またはPTH誘導体が、骨髄細胞または骨芽細胞移
植医療用補助剤として有用であるか否かは、これまでに
全く指摘されていなかった。また、培養骨芽細胞におけ
る副甲状腺ホルモンのコラゲナーゼ−3遺伝子発現促進
作用には、転写因子AP1と転写因子cbfが関わって
いることは報告されていたが、cbfの役割は、骨芽細
胞における遺伝子発現に必須であるためのものであり、
副甲状腺ホルモンによる遺伝子発現の誘導作用を担う役
割としては報告されていない(Nagarajanら
“Parathyroid hormone regu
lates the rat collagenase
−3 promoter in osteoblast
ic cells through the coop
erative interaction of th
e Activator Protein−1 sit
e and the runt domain bin
ding sequence.”J.Biol.Che
m.273.10647−10657.1998)。
【0020】すなわち、本発明は、副甲状腺ホルモン
(PTH)またはPTH誘導体を主成分とする、骨髄細
胞または骨芽細胞移植医療用補助剤に関する。生体外に
取り出した骨髄細胞、または骨芽細胞は、副甲状腺ホル
モン(PTH)またはPTH誘導体と共に培養すること
によって、OSE2配列を認識する転写因子の活性が促
進され、骨形成機能が増強される。そしてこのような細
胞を骨折または骨欠損部位に移植することにより、骨癒
合または骨再生を短期間で完了させ、治癒するまでの期
間を短縮することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明における副甲状腺ホルモン
(PTH)とは、生体内で血清カルシウム濃度上昇効
果、リン濃度低下効果を示すホルモンの総称で、天然型
のPTH、遺伝子工学的手法で製造されたPTH、化学
的に合成されたPTHを包含し、好ましくは84アミノ
酸から成るヒトPTH(ヒトPTH(1−84))を示
す。また生理学上活性なPTHフラグメントとは、前記
のPTHの部分ペプチドや、PTHそのものあるいはそ
の部分ペプチドの構成アミノ酸を一部他のアミノ酸に置
換したもの、PTHそのものあるいはその部分ペプチド
の構成アミノ酸の一部を欠失したもの、およびPTHそ
のものあるいはその部分ペプチドに1種以上のアミノ酸
を付加したペプチドなどで同様の活性を有するペプチド
を意味する。
【0022】副甲状腺ホルモンフラグメントとしては、
例えばヒトPTH(1−34)、ヒトPTH(1−6
4)、ヒトPTH(35−84)、ヒトPTH(1−1
4)、ウシPTH(1−34)などが挙げられる。PT
H(1−34)とは副甲状腺ホルモンのN末端から34
アミノ酸までの34個のアミノ酸から成る副甲状腺ホル
モンフラグメントを示し、天然型PTHの生物活性は、
このPTH(1−34)によって再現されることが知ら
れている(生化学辞典、東京化学同人、1984)。本
発明においてはこれらのPTH誘導体もその目的に包含
される。
【0023】さらにアミノ酸置換の好ましい例として
は、8位における構成アミノ酸のロイシンやノルロイシ
ンへの置換、18位における構成アミノ酸のロイシンや
ノルロイシンへの置換、34位における構成アミノ酸の
チロシンへの置換などが挙げられる。さらに副甲状腺ホ
ルモン関連ペプチド(PTH related Pep
tide(PTHrP))のような副甲状腺ホルモンの
特徴を保持しながらも、アミノ酸配列がわずかに変化し
た類似体も挙げられる。
【0024】本発明で骨髄細胞または骨芽細胞移植医療
用補助剤として用いられる副甲状腺ホルモン(PTH)
またはPTH誘導体としては、前記のとおり、生体内で
血清カルシウム濃度上昇効果、リン濃度低下効果を示す
ペプチドホルモンであれば全て本発明の副甲状腺ホルモ
ン(PTH)またはPTH誘導体として包含される。ま
た、副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH誘導体で
あって、本発明の目的に使用されるものはこれらの例示
以外にも本発明に包含される。
【0025】例えば好ましい例としては、ヒトPTH
(1−84)、ヒトPTH(1−34)、ヒトPTH
(1−37)、ヒトPTH(1−38)、ヒトPTH
(1−34)−NH2などが挙げられ、さらに好ましく
はヒトPTH(1−84)またはヒトPTH(1−3
4)が挙げられる。本発明で用いられる骨髄細胞、また
は骨芽細胞は、例えば以下の文献に記載の方法で生体か
ら採取することができる:Yoshikawaら“Hu
man marrow cells−derived
cultured bone inporous ce
ramics.”Biomed.Mater.Eng.
8.311−320.1998;橋本ら“培養ヒト骨芽
細胞様細胞とヒト線維芽細胞様細胞の遺伝子発現の定量
比較”日本骨代謝学会雑誌.13.11.1995。ま
た、採取された骨髄細胞はデキサメサゾン存在下で培養
することにより骨芽細胞の分化形質を獲得させることが
可能である(Ohgushiら“Stemcell t
echnology and bioceramic
s;fromcell to gene engine
ering”J.Biomed.Mat.Res.4
8.913−927.1999)。
【0026】このようにして生体外に取り出した骨芽細
胞、または生体外に取り出し骨芽細胞に分化させた骨髄
細胞は適当な期間、組織培養用ディッシュで培養して、
移植に用いる充分量になるまで増殖させることができ
る。さらに、生体外で適当な担体に接着させて、細胞の
増殖を促進させることも可能である。本発明における副
甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH誘導体を主成分
とする骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤は、適
当な溶解液に希釈した後、あらかじめ組織培養用ディッ
シュに播種された骨髄細胞または骨芽細胞、あるいは適
当な担体に接着させた骨芽細胞に一定時間、作用させれ
ばよい。
【0027】本発明に用いることができる副甲状腺ホル
モン(PTH)またはPTH誘導体の溶解液は特に限定
されないが、HBSS(Hanks balanced
salt solutions)、EBSS(Ear
les balancedsalt solution
s)、PBS(Phosphate buffered
saline)、生理食塩水、組織培養用培地、臓器
保存用溶液、臓器輸送用溶液、血清などが挙げられる。
【0028】また本発明に用いることができる担体も特
に限定されないが、ゼラチンスポンジ、多孔質ハイドロ
キシアパタイト、セラミック、乳酸−グリコール酸共重
合体、グリコール酸−カプロラクトン共重合物などを担
体として用いることができる。さらに本発明における副
甲状腺ホルモン(PTH)または、PTH誘導体を主成
分とする骨髄細胞または、骨芽細胞移植医療用補助剤
は、薬学的に許容される補助剤を添加することができ、
例えば基材、安定剤、防腐剤、保存剤、懸濁化剤、溶解
剤、溶解補助剤、乳化剤、滑沢剤、粘租剤、賦形剤、結
合剤、着色剤、緩衝剤などが挙げられる。
【0029】これらの補助剤を利用して本発明の骨髄細
胞または、骨芽細胞移植の生着促進剤を調製する際に
は、例えば、医薬品添加物一覧表(財団法人東京医薬品
工業協会医事法規委員会および大阪薬品工業協会医事法
規研究委員会発行)の記載に基づいて補助成分を適宜選
択すればよい。また補助成分の使用量は薬学的に許容さ
れうる範囲内であれば、使用様態に応じて適宜選択でき
る。本発明における副甲状腺ホルモン(PTH)また
は、PTH誘導体を主成分とする骨髄細胞または、骨芽
細胞移植医療用補助剤の用途は特に限定されないが、骨
折の治療や外科的骨削除による骨欠損部の治療に好まし
く用いることが出来る。本発明において、骨折は再骨折
や予後不良骨折等も含む。骨折の治療に際し、本発明の
副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH誘導体を主成
分とする骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤によ
る処理を施した骨髄細胞または骨芽細胞を、適当な担体
と共に骨折部位に移植することで、正常な骨再生と、回
復期間の短縮が可能となる。
【0030】また、本発明において、外科的骨削除は偽
関節症の治療、脊椎固定術、人工関節置換術、骨切り
術、骨延長術、骨補填術、歯科インプラント移植術、歯
周病の治療などを目的として、用いられるものを含む。
すなわち本発明の副甲状腺ホルモン(PTH)またはP
TH誘導体を主成分とする骨髄細胞または骨芽細胞移植
医療用補助剤による処理を施した骨髄細胞または骨芽細
胞を、適当な担体と共に骨の断面、または骨と生体材料
との間隙などに移植することで、骨再生、または移植片
の骨に対する早期且つ堅固な定着が可能となる。
【0031】骨髄細胞または、骨芽細胞移植医療用補助
剤の有効成分として副甲状腺ホルモン(PTH)または
PTH誘導体を用いる場合、その濃度は使用様態に応じ
て適宜変更してよいが、例えば組織培養用シャーレに単
層培養された骨芽細胞を処理する場合の有効濃度は5p
g/ml〜500ng/mlの濃度範囲、さらに好まし
くは0.5〜50ng/mlの濃度範囲となるように溶
解液に希釈して用いる。さらに、これら濃度の副甲状腺
ホルモン(PTH)またはPTH誘導体を細胞に持続的
に、または一過的に作用させることもできる。
【0032】この場合の一過的な作用とは1時間〜48
時間、細胞に副甲状腺ホルモン(PTH)またはPTH
誘導体を作用させ、それ以降は副甲状腺ホルモン(PT
H)またはPTH誘導体を含まない溶解液で培養する。
さらにこの一過的な作用を、培養期間の中で複数回繰り
返し行っても良い。これらの使用様態は細胞の種類や、
担体の有無、培養期間などによって適宜変更されるもの
で、特定の条件として限定されない。
【0033】このような方法で用いられる、副甲状腺ホ
ルモン(PTH)またはPTH誘導体を主成分とする骨
髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤は、骨再生をよ
り促進し、治療期間を短縮することに有用である。
【0034】
【実施例】以下に本発明の実施例を挙げて詳しく説明す
るが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではな
い。
【0035】
【実施例1】pTA−osf2(x4)プラスミドの作
製 CBFA1/osf2転写因子の応答配列として、ラッ
トオステオカルシン遺伝子の5’上流域に存在するOS
E2配列(AACCACA)をコア配列とするCCAA
CCACAGの4回繰り返し配列を持ち、その両端に制
限酵素のNheI、BglIIへの接続配列を持つ合成
DNAを作製した。5’−CTAGCCCAACCAC
AGCCAACCACAGCCAACCACAGCCA
ACCACAGA−3’5’−GATCTCTGTGG
TTGGCTGTGGTTGGCTGTGGTTGGC
TGTGGTTGGG−3’この合成DNAを10mM
Tris/HCl、1mM EDTA(pH7.5)
に溶解し、0.1M NaCl存在下で等量混ぜ、10
0℃で5分加熱した後、徐冷し、相補するDNAをアニ
ーリングした。得られたDNAをosf2(x4)DN
Aと名付けた。
【0036】レポータープラスミドとしては、pTA−
Luc(Clontech社製)を使用した。このプラ
スミドのTAプロモーター領域の上流域にあるマルチク
ローニングサイトのNheI、BglII先の合成DN
Aを挿入するため、pTA−Lucを制限酵素のNhe
I、BglIIで切断した。切断したプラスミドとos
f2(x4)DNAを混合し、DNAライゲーションキ
ット(東洋紡社製)でライゲーション反応を行い、コン
ピテントセルDH5α(東洋紡社製)に導入した。得ら
れた形質転換体から、目的のDNAが挿入されている形
質転換体(pTA−osf2(x4)の保持菌)を選択
し、この菌を大量調整したものから、QIAGEN p
lasmid kit(QIAGEN)を用いプラスミ
ドDNApTA−osf2(x4)を調製した。このプ
ラスミドを次のレポータージーンアッセイに供した。ま
た、対照としてpTA−Lucを同アッセイに供した。
【0037】レポータージーンアッセイ TransIT−LT1(Mirus)キットを用い
て、プラスミドDNApTA−osf2(x4)を骨芽
細胞ROS17/2.8に定法通りに遺伝子導入した。
24時間後、ROS16/2.8細胞を10%ウシ胎児
血清添加Ham培地に懸濁し、96well whit
e plateに1X104細胞/cm2の細胞密度で播
種した。さらに16時間後、ヒトPTH(1−34)
(旭化成株式会社製)を5pg/ml〜500ng/m
lの濃度範囲となるように10%ウシ胎児血清添加Ha
m培地で希釈し、細胞に加えた。添加1〜24時間後に
それぞれ細胞を破砕し、Luciferase活性を求
めた。
【0038】その結果、PTHは骨芽細胞様細胞におい
て用量依存性に、且つ6〜9時間後をピークに一過的に
Luciferase活性を増加させた。一方、OSE
2配列のないプラスミドを導入した細胞では、PTHに
よるLuciferase活性増加作用は認められなか
った。
【0039】
【実施例2】生後1日令Fischer−344ラット
の頭蓋冠を酵素溶液(0.1%細胞分散用コラゲナー
ゼ、0.05%トリプシン、4mM EDTA−2N
a)中で室温20分間攪拌。この操作を7回繰り返して
後半4回分で分離された細胞を骨芽細胞様細胞として培
養した。培養液には10%ウシ胎児血清添加αMEM培
地を用いた。
【0040】この細胞を5日間培養後、0.05%トリ
プシン、0.02% EDTA−2Naで剥離し、細胞
濃度を107細胞/培養液mlに調製し、細胞調製液4
mlに滅菌処理したアパタイトペレット(Ca10(P
O4)6OH2、サイズ:10×10×2mm)1個を
浸漬して、16時間かけてペレットに細胞を付着させ
た。以後はこのペレットを12well plateに
1wellあたり1個ずつ移動して培養した。
【0041】PTH処理は次のようにして行った。ヒト
PTH(1−34)(旭化成株式会社製)50ng/m
l含有培地でペレットを6時間培養し、洗浄後、PTH
を含まない培地に再度交換して42時間培養した。この
操作を5回繰り返した。対照には培養期間中、PTHを
含まない培地で培養したペレットを用いた。以上の処理
を施したアパタイトペレットを7週令雄性Fische
r−344ラットの背部皮下に移植して縫合した。その
後のラットは自動照明制御下で、餌や水は自由摂取とし
て飼育した。
【0042】移植2週間後のアパタイトペレットを摘出
し、洗浄後、0.1% Triton−X添加、50m
M Tris−Hcl緩衝液(pH7.2)中で組織を
超音波破砕し、アルカリフォスファターゼ活性とオステ
オカルシン量を測定した。その結果を表1に示す。
【0043】 [表1] アルカリフォスファターゼ活性(μmol/30min/ペレット ) 対照群 0.429±0.348 (n=6) PTH処理群 1.433±0.556 (n=6) オステオカルシン量(μg/ペレット) 対照群 0.012±0.020 (n=6) PTH処理群 0.237±0.149 (n=6)
【0044】ヒトPTH(1−34)で処理された骨芽
細胞を移植した群では、アルカリフォスファターゼ活性
とオステオカルシン量で表される骨形成機能が、移植ペ
レットあたりで増加していることが示された。従って、
実施例1および2より、ヒトPTH(1−34)はOS
E2配列を認識する転写因子の活性を増強させて骨芽細
胞の骨形成機能を促進し、骨髄細胞または骨芽細胞移植
医療用補助剤として有用であることが示された。
【0045】
【発明の効果】本発明の、副甲状腺ホルモン(PTH)
またはPTH誘導体を主成分とする骨髄細胞または骨芽
細胞移植医療用補助剤を使用することにより、骨再生を
促進して、骨折または骨欠損の治療期間を短縮すること
に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ROS17/2.8細胞においてヒトPTH
(1−34)が用量依存性に、且つ6〜9時間後をピー
クに一過的に、OSE2配列を認識する転写因子の活性
を増強させていることを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 35/32 A61K 37/24 Fターム(参考) 4C081 AB04 BA12 CD34 CE02 CF031 DA01 4C084 AA02 AA03 BA44 DB32 MA02 MA67 NA05 ZA961 ZA962 ZC752 4C087 AA01 AA02 BB44 BB46 MA02 MA67 NA05 ZA96 ZC75

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 副甲状腺ホルモン(PTH)またはPT
    H誘導体を主成分とする骨髄細胞または骨芽細胞移植医
    療用補助剤。
  2. 【請求項2】 PTH誘導体がヒトPTH(1−34)
    である請求項1記載の骨髄細胞または骨芽細胞移植医療
    用補助剤。
  3. 【請求項3】 骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助
    剤の医薬用途が骨折または骨欠損の治療である請求項1
    記載の骨髄細胞または骨芽細胞移植医療用補助剤。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2008542362A (ja) * 2005-06-13 2008-11-27 セウォン セロンテック カンパニー リミテッド 骨芽細胞と生体基質成分との混合物を用いた骨形成用組成物及びその製造方法

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