JP2003064629A - 車両用衝突緩衝装置 - Google Patents

車両用衝突緩衝装置

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JP2003064629A
JP2003064629A JP2001255407A JP2001255407A JP2003064629A JP 2003064629 A JP2003064629 A JP 2003064629A JP 2001255407 A JP2001255407 A JP 2001255407A JP 2001255407 A JP2001255407 A JP 2001255407A JP 2003064629 A JP2003064629 A JP 2003064629A
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vehicle
cushioning
shock absorber
collision
inertial mass
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JP2001255407A
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English (en)
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Makoto Yamazaki
誠 山▲崎▼
Takakatsu Nakajima
隆勝 中嶋
Kunihiro Wada
邦宏 和田
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Kowa Kogyo Co Ltd
Osaka Prefecture
Original Assignee
NKC KK
Kowa Kogyo Co Ltd
Osaka Prefecture
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 分離帯の端部に設けられる車両用衝突緩衝装
置であって、車両に大きなGを与えることなく、かつ、
効率的に衝突時の衝撃を吸収可能な車両用衝突緩衝装置
を得る。 【解決手段】 設定された車両衝突方向における後方に
固定体(194,122)を設け、固定体(194,1
22)の前方に、緩衝材を備える緩衝体106を複数並
べて設け、それら緩衝体106のいずれかの間に、前後
方向に移動可能な1以上の慣性質量体108を設ける。
慣性力方式の緩衝装置であり、実質的な慣性質量を有す
る慣性質量体108の作用により、緩衝体106が効果
的に変形し、車両の衝突のエネルギを効率的に吸収する
ことができる。したがって、コンパクトな装置であって
も、車両を安全に停止させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、路面に設置され、
車両が衝突した際の衝撃を緩衝するための車両用衝突緩
衝装置に関する。
【0002】
【従来の技術】車線を分離する分離帯は、中央分離帯を
始めとして、車線が分岐する場所、高速道路の料金所
等、様々な箇所に設けられており、これらの分離帯は、
コンクリート、ガードレール等によって形成されてい
る。車線の分離、分岐が開始される箇所、つまり分離帯
の端部においては、車両が衝突する可能性が高く、ま
た、かかる箇所の衝突は、正面衝突の場合が多いことか
ら、大きな事故に繋がる虞がある。したがって、分離帯
の端部には、車両の衝突の衝撃を効果的に緩衝する装置
を設けることが望まれる。
【0003】これまでに、分離帯に設けられる衝突緩衝
装置として、例えば、特開2001−159107号公
報に記載されたものが検討されている。この公報記載の
緩衝装置は、緩衝材と支持体とを組み合わせて使用する
ものであり、固定された支持体の剛性を利用して緩衝材
を充分に変形させる、あるいは、剛性のある支持体自体
を変形させることにより衝撃を吸収するタイプの緩衝装
置である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効
果】分離帯に設置される衝突緩衝装置は、車両(車両に
搭乗する人間)に大きなGを与えずに衝撃を吸収するこ
とが望まれる。つまり、衝突によっても車両に大きな変
形を与えない、搭乗者の身体に過度な負荷を与えないと
いった高い安全性を確保することが望まれる。このこと
は、いわゆる柔らかな緩衝材を使用し、これを衝突方向
に長く設置することにより実現可能である。しかし、こ
のような緩衝装置では、特に高速で衝突する場合を想定
すれば、その長さが非常に長いものとなってしまい、設
置スペースの関係等から、決して実用的なものとはなら
ない。つまり、緩衝装置には、短い停止距離においてか
つ大きなGを発生させずに車両を安全に停止可能である
ことが望まれる。言いかえれば、できるだけ小型であ
り、かつ、充分な衝撃吸収能力があることが期待されて
いるわけである。
【0005】例えば、上述の固定された支持体の剛性を
利用して緩衝材を充分に変形させるタイプの衝突緩衝装
置では、支持体の固定の解除に至るまでの荷重設定が重
要になってくる。ところが、その設計は難しいことに加
え、実際の衝突においては、衝突速度、衝突角度、車両
の重量等により、瞬時ではあるが大きなGが発生する可
能性が残る。そこで、その可能性を充分に避け得るため
には、車両停止に至るまでの距離を、ある程度長く設定
せざるを得ず、小型化の要求を充分に満たしきれている
とは言い切れないものとなっている。また、上述の剛性
のある支持体自体を変形させることにより衝撃を吸収す
るタイプの衝突緩衝装置では、支持体自体も緩衝材とし
て機能するものであり、緩衝材をいわゆる硬いものとし
たことと変わりないため、やはり衝撃によって車両が受
けるGが大きくなる可能性が残るものとなる。
【0006】本発明は、上記実情に鑑みてなされたもの
であり、車両に大きなGを与えることなく、かつ、効率
的に衝突時の衝撃を吸収可能な車両用衝突緩衝装置を得
ることを課題とする。そして、本発明によって、下記各
態様の車両用衝突緩衝装置が得られる。各態様は請求項
と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じ
て他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あ
くまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細
書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の
各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではな
い。また、一つの項に複数の事項が記載されている場
合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければなら
ないわけではない。一部の事項のみを選択して採用する
ことも可能である。
【0007】なお、以下の各項において、(1)項が請
求項1に相当し、(5)項が請求項2に、(9)項が請
求項3に、(14)が請求項4に、(19)項が請求項
5に、(25)項が請求項6に、(27)項が請求項7
に、それぞれ相当する。
【0008】(1)路面に設置されて車両の衝突による
衝撃を緩衝する車両用衝突緩衝装置であって、設定され
た車両衝突方向に平行な前後方向における後方に、移動
不能に設けられた固定体と、その固定体の前方に並んで
配設され、緩衝材を備えて車両の衝突の衝撃を吸収する
複数の緩衝体と、それら複数の緩衝体の少なくともいず
れかの間に配設され、前後方向に移動可能な1以上の慣
性質量体とを含むことを特徴とする車両用衝突緩衝装
置。本発明の車両用衝突緩衝装置は、緩衝体による衝撃
吸収を効率よく行わせるために、緩衝体の間に、実質的
に慣性質量を有するものを介在させた方式、いわば慣性
力方式の衝突緩衝装置である。
【0009】本発明の作用を説明する前に、先ず、車両
衝突の際の緩衝材による衝撃吸収の一般的な考え方につ
いて説明する。高速で走行する車両が緩衝体に衝突する
と、車両のもつ速度のエネルギは、緩衝体が変形するこ
とによって吸収され、すべての速度エネルギが吸収され
た時点で車両が停止する。走行する車両の速度エネルギ
vは、衝突時における車両の初速度をv0,車両の重量
をm0とすれば、Ev=m0・v0/2で表され、このEv
に相当するエネルギが、緩衝体が変形することにより吸
収される。
【0010】理論を単純化するために、緩衝体が単一の
緩衝材のみからなり、その緩衝材が完全弾性体であるも
のとして説明する。緩衝体の吸収エネルギは、その緩衝
材の応力−ひずみ線図により算出することができる。図
1に、完全弾性体の応力−ひずみ線図を示す。この応力
−ひずみ線図によれば、緩衝材がひずみεiまで変形し
たときの単位体積あたりの吸収エネルギeiは、図の斜
線部の面積で表される。その時において、発生する最大
応力は、σiとなる。ここで、緩衝体が、車両衝突方向
に一定の断面積(衝撃受面積)Aを有するものであり、
その車両衝突方向の全体長さをLとすれば、緩衝体の吸
収エネルギEiは、 Ei=L・A・ei となる。
【0011】このときに緩衝体から車両が受ける最大加
速度(厳密には減速度)αは、ニュートンの運動方程式
により、 α=A・σi/m0 となる。αの値は、重力加速度gで除して無次元化した
いわゆるG値を採用することができる。車両が受ける最
大加速度は、人体への安全性等を考慮すれば、G値にお
いて20G以下であることが望ましく、例えば、その範
囲において、許容されるσiの値を決定して緩衝装置の
設計が行われる。一般に、設計上、衝突が想定される車
両の重量、分離帯の幅および車両の幅等は既定されたも
のであるため、Aおよびm0の値はおのずとある範囲の
ものとなる。したがって、その緩衝装置におけるσi
値を、最大加速度が所定の値を超えない範囲で決定され
ることになる。
【0012】ここで、緩衝体の緩衝効率を表すパラメー
タとして、緩衝係数Cを、 C=σi/ei と定義する。この緩衝係数Cができるだけ小さくなるよ
うに緩衝設計することにより、その緩衝体は、高効率な
エネルギ吸収体となる。つまり、上記式においてCの値
を最小にすることは、「できるだけ小さな応力を加え
て、できるだけ大きなエネルギを吸収することができ
る」ことを意味する。緩衝装置の設計において、その緩
衝体の緩衝係数が最小となるようにすれば、その緩衝体
の特性は最大限に発揮されることになり、より高効率の
衝撃吸収が可能な緩衝装置は、車両衝突方向の長さをよ
り短くできることに繋がる。逆にいえば、大きな応力が
発生する場合、車両(車両に搭乗する人間)への大きな
衝撃の原因となり、また、エネルギ吸収が大きくない場
合は、車両が停止するまでの距離が長くなって、緩衝装
置が短いときには、後方の固定壁(固定体)に激突する
可能性が残るものとなる。
【0013】一方、緩衝体の全体長さLは、 L=C・H/G という式で関係付けることができる。ここで、Hは、車
両衝突速度を自由落下したときの落下高さに換算した
値、いわゆる車両衝突速度に相当する等価落下高さであ
る。上述のように、Gの値は適切な範囲で設定され、ま
た、Hの値は、想定する車両衝突速度に応じた値となる
ことで、緩衝体全体の長さが決定される。ちなみに、車
両が100km/hの速度で衝突するものとし(H=3
9.34m)、その車両が受ける最大加速度を20Gに
設定した場合、緩衝体全体の長さLは、緩衝係数Cに応
じて、下記表1のようになる。
【0014】
【表1】
【0015】上記表1から判るように、緩衝係数が小さ
いほど、緩衝体の全体長さが短くてすむ。このことは、
緩衝係数を小さくするほど、緩衝装置がコンパクトに設
計できることを意味する。ちなみに、緩衝材が理論的弾
性体である場合の緩衝係数は、ひずみ100%の場合つ
まり最後まで変形した場合に最小値を示し、その値は、
e=σ/2=0.5σであることから、2.0となる。
一般の緩衝材は、完全弾性体ではない。例えば、発泡ポ
リスチレン(いわゆる発泡スチロール;以下「EPS」
と略す)の応力−ひずみ線図は、図2に示すようなもの
となる。かかる応力−ひずみ線で表される特性をもつ緩
衝材の場合、応力σiおよびひずみεiの値つまり変形量
に応じて、緩衝係数Cの値は変化する。したがって、緩
衝係数Cが最小値となる応力σiに基づいた緩衝装置の
設計を行えば、エネルギ吸収効率の高い緩衝装置が得ら
れることになる。
【0016】次に、緩衝体のみによって衝撃吸収するタ
イプの場合、前述した固定された支持体の剛性を利用し
て緩衝材を充分に変形させるタイプ(支持体固定方式)
場合、本発明による慣性質量体を配したタイプ(慣性力
方式)の場合の3つの場合の衝撃吸収の効率について、
緩衝材が理論弾性体であるものと想定して考察する。図
3に、緩衝体のみの方式、支持体固定方式、慣性力方式
の衝突緩衝装置を、それぞれ模式的に示す。図3(a)
に示すものは、緩衝体のみの方式の緩衝装置であり、路
面に固定された固定体10と、固定体の車両衝突方向に
おける前方に配設した1つの比較的長い緩衝体20とか
らなる緩衝装置である。この装置の衝撃吸収の理論は、
上述したとおりのものであるたため、説明は省略する。
【0017】図3(b)に示すものは、固定体10と、
固定体10の前方に並ぶ4つの緩衝体20と、それぞれ
の緩衝体20の間に路面に固定されて配設された3つの
板状の支持体30とからなる。支持体30は、一定の荷
重が作用した場合に、固定が解除される。かかる緩衝装
置に車両が衝突した場合には、先頭(車両衝突方向にお
ける最前方)の緩衝体20はその後方の支持体30に支
持されているため、その固定解除荷重までの力が加わり
充分に圧縮変形する。その後、固定解除荷重に達したと
きに、その支持体30の固定が解除されて、その後方の
緩衝体20の圧縮変形が始まる。以下同様に、固定体1
0の前方の緩衝体20まで順次変形する。この場合の装
置全体の応力−ひずみ線図は、模式的には図4のように
表される。
【0018】図4に示すように、応力−ひずみ線は、設
定した支持体の固定解除荷重に相当する応力までの応力
上昇を繰り返す鋸刃状のものとなる。衝撃の吸収エネル
ギは、応力−ひずみ線に囲まれた部分(図の斜線部)の
面積に相当するエネルギであり、このエネルギは、前述
した図2に示した吸収エネルギに比較して大きなものと
なる。この場合の吸収エネルギeは、理論計算によれ
ば、 e=0.5σ×0.25+0.33σ×0.5/2+
0.25σ×0.75/2+σ×1.0/2≒0.73
9σ となり、先の緩衝体のみによる吸収の場合がe=0.5
σであったことと比較すれば、効率よく衝突エネルギが
吸収されることが確認できる。また、緩衝体のみによる
吸収の場合、緩衝装置全体の見かけの緩衝係数は、緩衝
体の緩衝係数と同じ2.0である。これに対し、支持体
固定方式の緩衝装置では、 C=σ/e≒1.35 という値の装置全体の見かけの緩衝係数が得られること
になる。
【0019】次に、図3(c)に示す本発明の緩衝装
置、つまり、慣性力方式の緩衝装置は、固定体10と、
固定体10の前方に並ぶ4つの緩衝体20と、それぞれ
の緩衝体20の間て配設されて車両衝突方向に移動可能
な3つの板状の慣性質量体40とからなる。慣性質量体
40は、実質的な慣性質量を有するものであり、車両の
衝突前には静止しており、車両の衝撃によって移動させ
られる。上記固定支持体方式の場合における固定解除荷
重と同等の荷重で移動を開始するような慣性質量を持た
せることで、緩衝体20は、同様に充分に変形せられ
る。先頭の緩衝体20は、その後方の慣性質量体40の
移動開始まで圧縮変形し、移動が開始された際にその後
方の緩衝体20が変形を開始し、順次、固定体10の前
方の緩衝体20まで変形する。本方式の緩衝装置の装置
全体の応力−ひずみ線図は、模式的には図5のように表
される。
【0020】図5に示すように、この場合の応力−ひず
み線も、移動開始に相当する応力までの応力上昇を繰り
返す。しかし、上述した固定支持体方式の場合と比較し
て、山の頂部および谷部がなだらかに連続する応力−ひ
ずみ線となる。これは、本慣性力方式が、支持体の固定
が解除された際に一気に移動を開始するのではなく、慣
性質量体が滑らかにに移動を開始できることに起因する
ものである。このことから、図4と比較して判るよう
に、慣性質量体による方式のほうが、さらに吸収エネル
ギが大きくなっており、さらに高効率な衝撃エネルギの
吸収が行われ、装置全体の見かけの緩衝係数も小さくな
る。つまり、さらに小型化された衝撃緩衝装置が得られ
る分けである。
【0021】さらに、慣性力方式の場合、車両の衝突速
度に応じた慣性力が発生する。つまり、衝突速度依存性
を有し、衝突速度が大きいほど、発生する慣性力が大き
くなるのである。上記支持体固定方式の緩衝装置の場
合、支持体の固定解除荷重は一定しており、想定速度で
の衝突のときと、それよりも衝突速度の小さい衝突のと
きとを比較しても、衝突初期の衝撃はあまり変わらない
ことを意味する。これに対し、慣性力方式の場合、想定
速度を下回る衝突速度での衝突の場合、小さな慣性力し
か発生させないため、衝突初期から車両に加わる衝撃を
小さくできるというメリットをも有する。
【0022】また、支持体固定方式の緩衝装置の場合、
支持体の固定を例えばアンカーボルト等の固定手段によ
って行う。したがって、固定解除荷重の調整は、これら
の破壊荷重を調整することによって行う。この調整は困
難を伴うとともに、実際の衝突は、例えば、固定手段の
バラツキ,アンカーボルトの緩み,劣化等、衝突方向、
衝突速度の影響等により、理論とは異なる場合も多い。
場合によっては、設定した荷重を超えてしまい、衝突時
のG値が許容される値を超えることや、逆に小さな荷重
で解除して、車両が大きな速度エネルギを残したまま固
定体に衝突することも考えられる。これに対し、慣性力
方式の場合は、慣性質量体の重量を調整すればよく、簡
便な手段により、安定した衝突エネルギの吸収を確保で
きることになる。
【0023】なお、上記慣性力方式の説明は、緩衝材が
完全弾性体である場合を例にとって説明したが、例え
ば、前述のESPを緩衝材として用いた緩衝装置では、
その応力−ひずみ線は、図6に示すような形状のものと
なる。この場合でも、同様に、高効率な衝撃エネルギの
吸収が行われることになる。
【0024】本発明の車両用衝突緩衝装置は、主に、固
定体、緩衝材を備える複数の緩衝体、慣性質量体とから
構成される。緩衝材は、緩衝体において、緩衝作用を担
う中心的な存在であり、ゴム、ばね等の弾性体をはじめ
として、上述したESP等のように正確には弾性体と呼
べないものをも含む。例えば、ポリウレタンフォーム、
アルミニウムハニカム体、衝撃吸収ゲル(ウレタンエラ
ストマー等)等、緩衝機能を発揮する種々のものを単独
であるいは複合して採用することができる。緩衝体は、
上記緩衝材だけで構成されるものであってもよく、ま
た、後述するように、緩衝材の他に外郭部材等を備える
ようなものであってもよい。固定体は、想定する車両衝
突方向の後方に位置し、緩衝体をバックアップするもの
である。固定体は、分離帯の固定壁の端部に取り付けら
れるように形成されたものでもよく、また、分離帯自体
が固定体となるものであってもよい。
【0025】慣性質量体は、実質的に慣性質量を有する
ものであればよい。あまり軽すぎるものは、効果的な慣
性力を有しないため、相当の重量があることが望まし
い。また逆に、重すぎる場合、車両に大きな衝撃を与え
るため、適度な重量である必要がある。前後の緩衝体と
の関係、特に前方の緩衝体との関係で、その重量を決定
すればよい。具体的には、例えば、慣性質量体1つあた
りの重量は、衝突を想定する車両の重量の5%以上20
%以下であることが望ましい。また、緩衝材が比較的嵩
の大きなものであることに鑑みれば、省スペースを実現
するために、慣性質量体の密度は高いほうがよく、具体
的には、緩衝体の密度の5倍以上であることが望まし
く、また、15倍以上であることがより望ましく、さら
に50倍以上であることが望ましい。ここで密度は、真
密度ではなく、嵩密度つまり重量を見かけ上の体積で除
したものを意味する。
【0026】緩衝体の具体的な個数、慣性質量体の個数
は特に限定するものではなく、想定する衝突車両の重
量、衝突速度等に応じて、適切な範囲に設定すればよ
い。また、固定体と慣性質量体との間、慣性質量体どう
しの間、最前方の慣性質量体の前方のそれぞれに存在す
る緩衝体の数は特に限定されない。上述した図3の態様
のものは、それぞれ1つずつ緩衝体が配設されている
が、この代わりに、複数の緩衝体を配設することも可能
である。複数の緩衝体を配設する場合、車両衝突方向に
に直角な方向に並列に配置することもでき、また、車両
衝突方向に直列的に積層させることも可能である。
【0027】(2)前記慣性質量体が、前記車両衝突方
向に対して略直角に配設された板状のものである(1)項
に記載の車両用衝突緩衝装置。慣性質量体の形状は、特
に限定されるものでない、ブロック状、柱状等種々な形
状とすることができる。衝突する車両の幅、分離帯の幅
等を考えれば、緩衝装置はある程度の幅を有するもので
あることが望ましく、緩衝体もそれに応じた幅を有する
ことに鑑みれば、緩衝体を介して自らの慣性力でもって
衝撃を受け止めるためには、慣性質量体も有効な面積を
有することが望ましい。したがって、慣性質量体は、板
状の形状を有するものであり、かつ、その板表面を車両
衝突方向に向けて配設されるものであることが望まし
い。
【0028】(3)前記慣性質量体の前記車両衝突方向
への移動を円滑化するための移動円滑化装置を有する
(1)項または(2)項に記載の車両用衝突緩衝装置。慣性質
量体を利用した衝撃エネルギの吸収においては、慣性質
量体の移動が円滑であることが望まれる。したがって、
移動円滑化装置を設けた本態様の緩衝装置では、より効
率的な衝撃吸収が担保される。慣性質量体は、路面に直
に配設されるものでもよく、また、装置のベース等を介
して路面に接地するものであってもよい。いずれの場合
も摩擦等によって、車両衝突方向への移動を制限される
可能性があり、本移動円滑化手段は、かかる摩擦等の影
響を排除するものである。
【0029】(4)前記移動円滑化装置が、前記慣性質
量体に設けられて少なくとも前記車両衝突方向に直角で
かつ路面に平行な軸線まわりに回転可能な回転体を含
み、前記慣性質量体が、その回転体において接地する
(3)項に記載の車両用衝突緩衝装置。移動円滑化装置の
具体的な態様は、特に限定されるものではないが、例え
ば、低摩擦材、潤滑材等を介在させる等の良好な摺動特
性が得られるような手段を採用することができる。ま
た、ころ、車輪、球体等の回転体を設けこの回転体の転
がりにより、安定的に移動を円滑化させるものであって
もよい。かかる回転体は、慣性質量体の円滑な移動を安
定的に確保し得る。また、キャスター等の路面と平行に
回動あるいは旋回可能な回転体を用いれば、車両衝突方
向と交差する方向に対しても移動が円滑化されることに
なり、例えば、慣性質量体がある程度左右方向の力を受
ける場合等にも、慣性質量体の円滑な移動が確保され
る。
【0030】(5)少なくとも前記車両衝突方向に直角
でかつ路面に平行な左右方向への前記慣性質量体の移動
を規制するガイド装置を備える(1)項ないし(4)項のいず
れかに記載の車両用衝突緩衝装置。本発明の車両用衝突
緩衝装置は、もっとも危険である前方からの正面衝突に
おける緩衝を中心に設計されるが、実際の衝突は、衝突
位置が左右いずれかに偏ったオフセット衝突である場合
も多く、また、衝突方向が左右いずれかに偏った斜突の
場合も多い。かかるオフセット衝突、斜突等の場合は、
緩衝装置自体が左右移動して、効果的な衝撃吸収が実現
されない可能性もある。慣性質量体の左右への移動を規
制するガイド装置を備える本態様の緩衝装置は、かかる
場合においても、効果的な衝撃吸収が確保される。ま
た、オフセット衝突、斜突、あるいは側部に衝突する場
合は、緩衝装置自体が左右方向に移動していまい、分離
すべき車線に大きくはみ出してしまう可能性もある。か
かるはみ出しは、二次的な事故にも繋がるため、防止す
べきである。本態様におけるガイド装置は、かかる車線
へのはみ出しを防止する手段としても機能する。
【0031】(6)前記ガイド装置が、少なくとも前記
固定体の近傍と最前方の前記慣性質量体とにわたって前
記車両衝突方向に張られ、両端の位置が路面に対して固
定されたガイド用索体と、前記ガイド用索体が貫通する
貫通穴を有する前記慣性質量体のスライド部とを含む
(5)項に記載の車両用衝突緩衝装置。ガイド装置の具体
的な態様は特に限定されるものではない。例えば、剛体
としてのレールとそれに沿って移動する移動体とで構成
されるようなものであってもよい。ここに掲げたよう
に、索体を利用すれば、簡便にガイド装置を構成でき
る。また、ガイド用索体は、例えば、金属製等のワイヤ
を用い、これを適度なテンションで車両衝突方向に引張
った状態で配置すればよい。かかる構成のガイド用索体
は、ある程度の弾性を有することから、左右方向に作用
する力、後に詳しく説明するような慣性質量体へ回動力
が作用する場合等でも、その弾性効果により、慣性質量
体の移動が円滑に行われる。なお、比較的強い力で引張
り、固定する必要があり、それを引張るための剛性のあ
る引張手段、固定手段等に車両が直接衝突しないことが
望ましいため、路面近傍、つまり、緩衝装置の下部に設
置することが望ましい。また、慣性質量体のスライド部
は、ガイド用索体が貫通する貫通穴を有するという単純
な構成である。この貫通穴の内壁の一部がガイド用索体
に当接して、慣性質量体の左右への移動が規制される。
なお、貫通穴にガイド用索体を貫通させる構成であるた
め、慣性質量体の上方への跳ね上がりも、充分に規制さ
れる。
【0032】(7)前記ガイド用索体が、前記左右方向
に互いに間隔を隔てて複数本設けられた(6)項に記載の
車両用衝突緩衝機構。ガイド用索体の本数は、特に限定
されるものではない。例えば、比較的太いものが1本配
設されるものであってもよい。本態様のように、ガイド
用索体を複数本設ける場合は、慣性質量体が左右方向へ
移動しようとする力が複数に分散されるため、索体自体
を比較的細くできるという利点がある。また、間隔を隔
てることにより、慣性質量体の大きな傾斜をも規制でき
るという利点がある。
【0033】(8)前記スライド部に、前記貫通穴が前
記ガイド用索体の各々が貫通するように複数並んで設け
られた(7)項に記載の車両用衝突緩衝装置。複数のガイ
ド用索体を設ける場合、それらが貫通するスライド部の
貫通穴は、複数本のガイド用索体のすべてを貫通させる
1つの貫通穴であってもよい。例えば、2本のガイド用
索体を平行に配設し、貫通穴を開口長さの長い長穴とし
て、この長穴の両端にそれぞれガイド用索体が位置する
態様である。これに対し、本態様のように、複数のガイ
ド用索体のそれぞれが通過するような複数の貫通穴を設
ければ、左右両方向に対して大きな規制力が得られる。
【0034】(9)前記ガイド装置が、前記慣性質量体
の路面に平行な平面に沿った回動を許容する回動許容機
構を有する(5)項ないし(8)項のいずれかに記載の車両用
衝突緩衝装置。緩衝体が偏荷重を受けるような場合、そ
の力を受け止める慣性質量体が、前後方向に直角な面に
対して傾斜するときがある。このときにおいて、慣性質
量体のその方向の回動をある程度許容する機構を備えた
本態様の緩衝装置は、かかるときでも、慣性質量体の円
滑な移動が確保される。
【0035】(10)前記ガイド装置が、少なくとも前
記固定体の近傍と最前方の前記慣性質量体とにわたって
前記車両衝突方向に張られ、両端の位置が路面に対して
固定されたガイド用索体と、前記ガイド用索体が貫通す
る貫通穴を有する前記慣性質量体のスライド部とを含
み、前記貫通穴の少なくとも1つが前記左右方向に長い
長穴として形成されることで、前記ガイド用索体および
前記スライド部が前記回動許容機構として機能する(9)
項に記載の車両用衝突緩衝装置。回動許容機構の具体的
な手段は、特に限定されるものではない。前述したガイ
ド用索体をガイド装置に用いる態様の場合、その索体が
貫通するスライド部の貫通穴を長穴にすることにより、
簡便に、慣性質量体の上記回動を許容することが可能と
なる。例えば、2本のガイド用索体を設け、そのうちの
1本が貫通する貫通穴を長穴にする態様、2つとも長穴
にする態様、あるいは、3本のガイド用索体を設け、両
側の索体が貫通する貫通穴を長穴とする態様等種々の態
様を採用することができる。なお、複数のガイド用索体
を設ける態様の場合、長穴長さを変更することにより、
許容される回動量をコントロールすることができる。し
たがって、この態様のガイド装置は、回動許容機構のみ
ならず、回動量制御機構としても機能する。
【0036】(11)前記ガイド用索体が、前記左右方
向に互いに間隔を隔てて複数本設けられ、前記スライド
部に、前記貫通穴が前記ガイド用索体の各々が貫通する
ように複数並んで設けられ、前記複数のガイド用索体の
うちの前記左右方向の外側の2本のものの各々が、それ
らが貫通する前記貫通穴の各々において前記左右方向に
おける内側に位置する(10)項に記載の車両用衝突緩衝装
置。本項に記載の態様は、より具体的な態様である。本
態様のものは、慣性質量体左右への移動を規制しつつ、
かつ、回動を許容するという2つの機能を兼ね備えたガ
イド装置を有する慣性質量体となる。
【0037】(12)前記回動許容機構が、前方に位置
する前記慣性質量体の回動量が後方に位置する前記慣性
質量体の回動量より小さくならないように、前記前記慣
性質量体の回動を許容するものである(9)項ないし(11)
項のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装置。慣性質量体
の左右への移動を規制する上記ガイド装置を設けた場
合、例えば、オフセット衝突、斜突等の際は、前方の慣
性質量体ほど大きく回動させられ、後方の慣性質量体ほ
どそれに働く回動力は小さい。したがって、前方の慣性
質量体の回動量を大きくし、後方のものの回動量を小さ
く制限する本態様の緩衝装置は、円滑な慣性質量体の後
方への移動が確保された上に、装置自体の安定性が確保
されるさせることで、効果的に衝突のエネルギを吸収で
きる装置となる。
【0038】(13)前記ガイド装置が、少なくとも前
記固定体の近傍と最前方の前記慣性質量体とにわたって
前記車両衝突方向に張られ、両端の位置が路面に対して
固定されたガイド用索体と、前記ガイド用索体が貫通す
る貫通穴を有する前記慣性質量体のスライド部とを含
み、前記貫通穴の少なくとも1つが前記左右方向に長い
長穴として形成され、前方に位置する前記慣性質量体の
長穴長さが、後方に位置する前記慣性質量体の長穴長さ
より小さくならないように形成された(12)項に記載の車
両用衝突緩衝装置。前述したように、ガイド用索体を用
いた上記ガイド装置においては、そのガイド用索体が貫
通する貫通穴を長穴することにより、回動が許容され、
また、長穴の長さを変更することにより回動量を制御で
きる。本項に記載の態様では、簡便な手段によって、前
方の慣性質量体の回動量を大きくすることが可能であ
る。
【0039】以上(3)項〜(13)項に記載の態様は、慣性
質量体についての移動円滑化装置、ガイド装置に関する
ものであるが、かかる装置は、慣性質量体のみならず、
緩衝体についても適用できる。つまり、複数の緩衝体の
うちの一部あるいはすべてのものに対して、(3)項〜(1
3)項に記載の技術的特徴を備えた移動円滑化装置、ガイ
ド装置を設けることも可能である。
【0040】(14)前記緩衝体が、前記車両衝突方向
に直角な方向における偏り変形を抑制するための偏り変
形抑制手段が設けられたものである(1)項ないし(13)項
のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装置。緩衝体が偏荷
重を受けた場合、それを構成する緩衝材は、偏った変形
を強いられる。特に、緩衝体の前後方向の長さが長い場
合は、偏り変形が大きい。偏り変形が生じると、効果的
な衝突エネルギの吸収が阻害される。緩衝体の偏り変形
が抑制される本態様の緩衝装置は、より効果的な衝突エ
ネルギの吸収が可能となる。
【0041】(15)前記偏り変形抑制手段が、前記緩
衝材を前記車両衝突方向においてその方向に略直角な面
に沿って複数に仕切る仕切板を含む(14)項に記載の車両
用衝突緩衝装置。偏り変形抑制手段の具体的な構成は、
特に限定されるものではない。緩衝体の前後方向の長さ
が長い場合は、それを構成する緩衝材も長く、そのよう
な緩衝材は、座屈させられる方向に力が働く等して、変
形がより大きく偏ることになる。本項に記載の仕切板
は、緩衝体を構成する緩衝材を前後方向に分割し、1つ
の緩衝材の長さを短くし、また、例えば、その分割面に
おいて緩衝材を後方から支持する等して、偏り変形を防
止するものである。
【0042】(16)前記緩衝体が、自身が備える前記
緩衝材の破損による飛散を防止するための緩衝材飛散防
止手段を備える(1)項ないし(15)項のいずれかに記載の
車両用衝突緩衝装置。緩衝体を構成する緩衝材は、変形
を強いられることにより破壊されることがある。例え
ば、後に説明するESP等を緩衝材とする場合がそうで
ある。車両が衝突して緩衝装置が機能した場合、破壊し
た緩衝材は、周囲に飛散する。緩衝材の飛散は、付近を
走行する車両の走行を阻害する可能性もある。緩衝材飛
散防止手段を備えた本態様の緩衝装置は、周囲の安全を
も確保できる緩衝装置となる。
【0043】(17)前記緩衝材飛散防止手段が、前記
緩衝材の少なくとも前記前方側および後方側の面の以外
の表面を覆う薄板状、箔状、あるいは膜状の被覆部材を
含む(16)項に記載の車両用衝突緩衝装置。緩衝体が備え
る緩衝材飛散防止手段は、特に、具体的な構成が特に限
定されるものではない。ただし、あまり剛性の高いもの
では、緩衝体自体の緩衝機能を損なうことにもなりかね
ない。本項に記載の態様では、比較的薄い被覆部材によ
り、緩衝体に害となる程の剛性を付与せずに、効果的に
破壊された緩衝材の飛散が防止される。
【0044】(18)前記被覆部材が、パンチンングメ
タルを含む(17)項に記載の車両用衝突緩衝装置。被覆
部材は、例えば、薄い金属板、樹脂等のラップ、ネット
(網状体)等、さまざまな材料、形態のものを採用でき
る。設計に応じて適宜選択すればよい。パンチングメタ
ルは、多数の開孔が設けられた薄い金属板であり、充分
なる飛散防止能力を有し、軽量で、緩衝材の変形に応じ
て自らも変形し易く、緩衝機能を阻害しないという利点
があり、好適な被覆部材となる。なお、自身の剛性を小
さくして、緩衝材の変形に応じて自らを変形しやすくす
るために、開孔率は、50%以上とすることが望ましい
【0045】(19)前記緩衝体が、それぞれに緩衝材
を備えてユニット化された緩衝体ユニットである(1)項
ないし(18)項のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装置。
緩衝体の形態は、いかなるものであってもよい。例え
ば、固定体、あるいは、慣性質量体に固着されて存在す
るものであってもよい。高速で走行する車両の衝突緩衝
を目的とする場合、本緩衝装置は、比較的長くまた比較
的多くの緩衝材を使用する。このうようなことに鑑みれ
ば、設置場所で組付を行うような場合にあっては特に、
緩衝体自体が独立して搬送可能であり、設置の際に容易
に組み立て可能であることが望ましい。また、一部の緩
衝体が破損等した場合に、そのものだけ交換すれば緩衝
装置が修復できるようにすれば、メンテナンスにおいて
も簡便な緩衝装置となる。緩衝材を始めとして、上述の
緩衝材飛散防止手段、緩衝体の外郭となる外郭部材等を
備えて、これらを一体化した緩衝体ユニットを構成すれ
ばよい。
【0046】緩衝体をユニット化させて緩衝体ユニット
とする場合、その1つの緩衝体ユニットが緩衝材を1つ
内包するのでもよく、2以上の緩衝材を内包するもので
あってもよい。2以上の緩衝材を内包する場合、車両衝
突方向に直列的に並べるものでもよく、また並列的に並
べるものであってもよい。複数の緩衝材を内包させて緩
衝体ユニットを構成する場合、内包させる数量を変更す
ることによっても、その緩衝体ユニットのばね定数、つ
まり、いわゆる緩衝体としての柔らかさを調整できると
いうメリットがある。
【0047】(20)前記複数の緩衝体ユニットの各々
が、各々の前記緩衝材を内包する外殻部材を有し、その
外殻部材の少なくとも一部のものが当該車両用衝突装置
の外殻を構成する(19)項のいずれかに記載の車両用衝突
緩衝装置。緩衝装置は、外観上、例えば塗装等された外
郭を有することが望ましい。緩衝装置全体を、外郭部材
で覆うように外郭を構成することもできる。上記ユニッ
ト化された緩衝体の場合、本態様のように、その緩衝体
の外郭部材がそのまま緩衝装置自体の外郭となるように
構成すれば、簡便に組み立て可能な緩衝装置となる。緩
衝体ユニットの外郭部材は、耐候性のあるものであるこ
とが望ましい。また、外郭部材は、車両衝突の際に容易
に変形するもの、つまり、緩衝体の緩衝機能を阻害する
ような過度の剛性を有しないものであることが望まし
い。例えば、鋼板等を使用する場合は、薄いものである
ことが好ましい。また、外郭部材が比較的的重いものの
場合は、その外郭部材が実質的な質量を有して慣性質量
体として機能することも考えられる。外郭部材の重量が
緩衝設計に影響を与えるほど大きな場合は、その重量を
も考慮して、慣性質量体の重量を設定することが望まし
い。
【0048】また、例えば、慣性質量体の間に、複数の
緩衝体ユニットが配設される場合、2つの緩衝体ユニッ
トが互いに接する面にそれらユニットの外郭部材が介在
して、それらのユニットが前後方向に積層される態様を
採用することができる。この場合、介在する外郭部材
は、前述の仕切板として機能することになる。すなわ
ち、これら2つのユニットを1つの緩衝体と擬制した場
合、外郭部材のその部分が、2つのユニットにまたがる
緩衝材を分割したものと観念することができるのであ
る。したがって、先に説明した仕切板は、このような態
様であってもよいことを意味する。
【0049】(21)前記固定体と前記慣性質量体うち
の最前方のものとの間に存在する前記緩衝体を、前記固
定体と前記最前方の慣性質量体とで挟持する緩衝体挟持
手段を備える(1)項ないし(20)項のいずれかに記載の車
両用衝突緩衝装置。前述したように、緩衝体は、固定体
あるいは慣性質量体に固着されるものであってもよい。
しかし、装置が大型であることに鑑みれば、組み立てら
れることも多い。上述したユニット化された緩衝体の場
合特にそうであるが、簡便に組み立て可能であることが
好ましい上、組み立てられたものが装置自体の形状を充
分に維持可能であることが好ましい。固定体および慣性
質量体は剛体であり、容易に変形しないものであること
から、これらの間に挟み付けて配設すれば、組み立てが
容易であり、かつ、緩衝体が緩衝装置においてしっかり
と保持され、装置自体の形状安定性が増す。
【0050】(22)前記緩衝体挟持手段が、前記車両
衝突方向に前記固定体と前記最前方の慣性質量体との間
に張られ、前記最前方の慣性質量体を前記固定体に向か
って引き付ける力を生じさせてそれらの間に前記緩衝体
を挟持するための挟持用索体を含む(21)項に記載の車両
用衝突緩衝装置。上述の緩衝体を挟持する態様の場合、
その挟持手段は特に限定されるものではない。ただし、
適正な挟持力を発生させることが望ましい。挟持用索体
を用い、この索体にテンションをかけた状態で緩衝体を
保持する本態様の緩衝装置は、簡便に、適切な挟持力を
得られる装置となる。索体は、金属製等のワイヤ等を用
いることができる。
【0051】(23)前記挟持用索体が、前記車両衝突
方向に直角でかつ路面に平行な左右方向における当該車
両衝突緩衝装置の両側のそれぞれに配設された(22)項に
記載の車両用衝突緩衝装置。挟持用索体は、偏りなく挟
持力を発生させる箇所に張られることが望ましく、その
点で、装置の両側に配設した本態様の緩衝装置は、偏り
ない保持力が得られる装置となる。また、両側に張られ
た索体は、緩衝装置の側面への車両衝突等の際に、緩衝
体の横ずれ、あるいは、装置自体の横ずれを防止する機
能をも併せ持つ。また、そのような挟持用索体は、両側
のそれぞれに1本ずつ配設されてもよく、複数本ずつ配
設されてもよい。
【0052】(24)前記緩衝体の緩衝係数が3以下で
ある(1)項ないし(23)項の車両用衝突緩衝装置。前述し
たように、緩衝体の緩衝係数が小さい方が、衝突エネル
ギを効率的に吸収可能で、小型化された緩衝装置とな
る。緩衝体の緩衝係数を限定するが、緩衝体の緩衝機能
を確保するものが緩衝材であり、緩衝体における他の構
成要素が、その緩衝能力にほとんど影響を与えない限
り、緩衝体の緩衝係数は、緩衝材の緩衝係数としても構
わない。緩衝材が完全弾性体である場合は、上述したよ
うに、ひずみが100%ののときつまり最後まで変形し
たときにおいて、緩衝係数が、2.0であり、3以下の
緩衝係数を有する緩衝体で構成する本態様の緩衝装置
は、効率のよい衝撃吸収が可能な緩衝装置となる。さら
に、より効率のよい衝撃吸収ということに鑑みれば、
2.5程度あるいは2.5以下であることがより望まし
い。なお、緩衝係数は、設定するひずみ量、応力値によ
って変化するため、応力−ひずみ線を作成し、その応力
−ひずみ線から、緩衝係数が最小となる最小緩衝係数を
求め、緩衝係数とすればよい。また、重量が既知である
重錘を、様々な所定の高さから緩衝材の上に落下させ、
その衝撃吸収の過程における重錘の加速度(厳密には減
速度)からG値を求め、前記L=C・H/Gという式か
ら、緩衝係数を算出して最小値となる緩衝係数をもって
して、その緩衝材の緩衝係数としてもよい。
【0053】(25)前記緩衝材が、発泡ポリスチレン
とアルミニウムハニカム体との少なくとも一方を含む
(1)項ないし(24)項のいずれかに記載の車両用衝突緩衝
装置。緩衝体を構成する緩衝材は、特に限定されるもの
ではない。先に述べたように、例えば、各種ゴム、ば
ね、ESP(発泡ポリスチレン)ポリウレタンフォー
ム、アルミニウムハニカム体、ゲル等の1種のものを単
独であるいは2種以上のものを複合して用いることがで
きる。この中でも、EPSは、緩衝係数が3以下の緩衝
体を形成できる。また、アルミニウムハニカム体は、通
孔の延びる方向を前後方向に向けて配設することによ
り、例えば、EPSよりさらに低い緩衝係数の緩衝体が
実現可能である。ただし、アルミニウムハニカム体は、
通孔の区画壁が座屈等の変形をして衝撃を吸収するもの
であり、衝撃吸収過程において、きわめて瞬時ではある
が、ノイズ的、高周波的に高い応力が発生することもあ
る。このことに鑑みれば、アルミニウムハニカム体とE
SPとを複合化して、具体的には、アルミニウムハニカ
ム体とEPSとの積層させた2層構造、3層構造、ある
いはそれ以上の多層構造であることが望ましい。例え
ば、アルミニウムハニカム体とEPSとの2層構造の緩
衝材を用いることにより、緩衝係数が2以下となる緩衝
体が実現可能となる。
【0054】(26)前記緩衝材が、発泡ポリスチレン
である(25)項に記載の車両用衝突緩衝装置。EPSは、
極めて安価であるというメリットがある。また、EPS
は、極めて軽量であるというメリットを有する。したが
って、EPSのみを緩衝材として用いる本態様の緩衝装
置は、安価かつ軽量な緩衝装置となる。また、EPS
は、発泡倍率を変更するという簡便な手段により、その
柔らかさを変更させることができるという利点をも有す
る。
【0055】(27)前記複数の緩衝体を前記慣性質量
体により区切られた複数の緩衝体群に区分けした場合
に、前方の前記緩衝体群の前後方向のばね定数がその後
方の前記緩衝体群の前後方向のばね定数と比較して小さ
くなるように構成された(1)項ないし(26)項のいずれか
に記載の車両用衝突緩衝装置。本発明の緩衝装置は、慣
性力方式の緩衝装置であり、車両が前方から衝突した場
合に、前方の緩衝体から順に変形し、前方の慣性質量体
から順に後方へ移動させられる。慣性質量体の後方の緩
衝材は、車両重量のみならず、その前方の慣性質量体の
重量もが加わった重量に相当するエネルギを吸収するこ
とになる。したがって、より効率的な衝突エネルギの吸
収を行うためには、本項に記載の態様のように、後方の
緩衝体群のばね定数を大きく、つまり硬くするほうが望
ましい。
【0056】ここでいう、「ばね定数」とは、緩衝体の
圧縮方向のひずみ(変形割合)と荷重との関係を意味す
る。ばね定数が大きい場合は、荷重に対するひずみ量が
小さく、いわゆる硬い緩衝体であることを意味し、逆
に、ばね定数が小さい場合は、同じ荷重に対するひずみ
量が大きく、いわゆる柔らかい緩衝体であることを意味
する。緩衝材が、例えばEPSのように、復元力が弱く
厳密には弾性体と呼べないものである場合でも、一方向
つまり圧縮方向の応力−ひずみ線図を作成することがで
きるため、その応力−ひずみ線に基づいて、縦弾性率相
当のもの把握することができ、それに基づいてばね定数
相当のものを推定できる。したがって、本明細書にいう
「縦弾性率」、「ばね定数」とは、弾性体についていう
縦弾性率、ばね定数のみを意味するのでなく、その緩衝
体の硬さ、柔らかさを表現するための概念のことをいう
ものとする。緩衝体のばね定数を大きくする場合は、例
えば、その緩衝体を構成する緩衝材に高弾性率のものを
用いるものであってもよく、その緩衝材の車両衝突方向
に直角な断面における断面積を大きくするものであって
もよい。この2つの手段のいずれによっても、その緩衝
体を硬くすることができる。逆に、ばね定数を小さくす
る場合、つまり、緩衝体を柔らかくする場合は、低弾性
率の緩衝材を用いる、あるいは、断面積を小さくすれば
よい。なお、1つの緩衝体に複数の緩衝材が並列的に配
設されている場合は、その緩衝体における緩衝材の断面
積は、それら複数の緩衝材の断面積の総和として考えれ
ばよい。
【0057】緩衝体の配設位置である固定体と慣性質量
体との間、慣性質量体どうしの間、最前方の慣性質量体
の前方のそれぞれに、1つずつの緩衝体が配設される場
合は、それぞれの緩衝体のばね定数に基づいて、本項記
載の態様の緩衝装置の緩衝設計を行えばよい。これに対
して、上記の配設位置の少なくともいずれかに、複数の
緩衝体が存在する場合は、それら複数の緩衝体の総和と
してのばね定数を考える必要がある。この意味から、本
項において、「緩衝体群」という概念を導入した。した
がって、「緩衝体群」とは、対象となる緩衝体が、複数
の場合だけでなく、1つの場合であってもその1つをも
って緩衝体群と呼ぶものとする。
【0058】(28)いずれか1以上の前記慣性質量体
の後方に複数の緩衝体が前後方向に連続して配設され、
その連続する複数の緩衝体のうちの最前方の緩衝体が、
前後方向のばね定数がその後方の緩衝体の前後方向のば
ね定数と比較して小さくなるように形成されている(1)
項ないし(27)項のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装
置。車両の衝突の際、慣性質量体は後方に移動させられ
ることで、効率的な衝突エネルギの吸収がなされる。慣
性質量体の直後の部分の緩衝体がいわゆる硬いものであ
る場合、その慣性質量体の移動速度に追従した変形速度
が得られず、その慣性質量体はスムーズな移動ができな
い。つまり、慣性質量体の移動開始直後において、いわ
ゆる抵抗が大きい状態となってしまう。この点を考慮す
れば、慣性質量体の直後の緩衝体はいわゆる柔らかいも
のであることが望ましい。本態様の緩衝装置は、慣性質
量体どうしの間、また、慣性質量体と固定体との間に複
数の緩衝体が配設された場合についての態様である。複
数の緩衝体の最前方の緩衝体を柔らかくすることで、そ
の前方の慣性質量体の後方へのスムーズな移動が確保さ
れ、より効率的な衝撃吸収が可能となる。ばね定数を小
さくする手段としては、その緩衝体に、縦弾性率の小さ
な(いわゆる柔らかな)緩衝材を使用することであって
もよく、また、同じ緩衝材を使用して、その断面積を小
さくすることであってもよい。
【0059】(29)いずれか1つ以上の前記慣性質量
体の後方に1つの緩衝体が配設され、その緩衝体が、前
方の部分の前後方向のばね定数がその部分の後方の部分
の前後方向のばね定数と比較して小さくなるように形成
されている(1)項ないし(27)項のいずれかに記載の車両
用衝突緩衝装置。例えば、図3(c)に示すような1つ
の緩衝体を慣性質量体の後方に配設する場合において、
上記同様、その慣性質量体の後方への円滑な移動を確保
する態様であって、緩衝体における慣性質量体の直後の
部分を柔らかいものとする態様である。
【0060】(30)前記いずれか1つ以上の慣性質量
体が、少なくとも最前方に配設された慣性質量体である
(28)項または(29)項に記載の車両用衝突緩衝装置。慣性
質量体の直後の緩衝体あるいは緩衝体の部分を柔らかく
する態様において、その対象する慣性質量体は、複数の
慣性質量体の任意の1つ以上のものであれば、それなり
の効果が得られる。衝突による慣性質量体の移動速度
は、最前方の慣性質量体ほど大きく、その後方の緩衝体
の変形が追従しにくくなり、大きな衝撃を車両に与える
可能性が高い。このことに鑑みれば、少なくとも最前方
の慣性質量体の後方の緩衝体あるいは緩衝体の部分を柔
らかくすることが望ましい態様となる。なお、最前方の
慣性質量体のみを対象とする態様であっても、また、す
べての慣性質量体を対象とする態様であってもよい。
【0061】(31)前記複数の慣性質量体のうちの最
前方の慣性質量体の重量m1が、次式で表される理論最
適重量misに対して、0.7mis≦m1≦1.3mis
関係が成り立つ(1)項ないし(30)項のいずれかに記載の
車両用衝突緩衝装置。 mis=1/(v0 2/(A1・L1・eopt)−1/m0) v0:想定車両衝突速度 m0:想定車両重量 A1:最前方の慣性質量体の前方に存在する緩衝材の衝
撃受面積 L1:最前方の慣性質量体の前方に存在する緩衝材の総
長さ eopt:最前方の慣性質量体の前方に存在する緩衝材の
単位体積当たりの理論最適吸収エネルギ 本発明の緩衝装置は、前述したように慣性力方式と呼べ
るのものであり、慣性質量体の慣性力によって効率的な
衝突エネルギの吸収が実現される。図1と図4との比較
および図2と図5との比較から判るように、最前方の慣
性質量体の重量設計が、効率的な吸収において重要な要
素となる。本態様の緩衝装置は、最前方の慣性質量体が
適正範囲の重量となるように形成されたものであり、よ
り効率的な衝撃吸収が実現される。
【0062】具体的には、最前方の慣性質量体の前方に
存在する緩衝体との関係で決定されるが、緩衝体を構成
する緩衝材以外の構成要素がその緩衝材の緩衝能力に影
響を与えないことを前提として、その緩衝材との関係と
して扱えばよい。また最前方の慣性質量体の前方に緩衝
体が複数存在する場合、本項でいう緩衝材は、それら複
数の緩衝体を構成するすべての緩衝材の総和として扱え
ばよい。ここで、eop tは、緩衝材が持つ固有の物性値
であり、前述したように、応力−ひずみ線図から算出さ
れる値であって、緩衝係数が最小値を示す場合における
単位体積当たりの吸収エネルギを意味する。また、例え
ば、先頭部分が細く形成される等して緩衝材が一定の断
面積を有しない場合は、最前方の慣性質量体の前方に存
在する緩衝緩衝材の総体積V1として、このをV1を上記
1で除した値をもって、上記A1とすればよい。
【0063】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の車両用衝突緩衝
装置の一実施形態について、図を参照しつつ詳細に説明
する。図7に、本実施形態の車両用衝突緩衝装置の斜視
図を示し、図8に、平面断面図を、図9に、側面断面図
を、図10に、図9におけるA−A部の正面断面図をそ
れぞれ示す。また、図11に慣性質量体の間に緩衝体ユ
ニットが積層されて配設される様子を示す。
【0064】本緩衝装置は、全体的には蒲鉾のような形
状をなし、その長手方向を分離帯の延びる方向と同じ方
向となるように路面に設置される。想定する車両衝突方
向は図8および図9に矢印で示すX方向であり、その車
両衝突方向が緩衝装置の長手方向、つまり前後方向とな
る。なお、衝突の前方の部分は、左右の幅が小さく、つ
まり、先頭部が先尖りの形状となっている。本緩衝装置
は、主に、ベース100と、ベース100の車両衝突方
向の後方に固定された2つの固定板102,104と、
固定板102,104の前方に並んでベース100の上
方に配設された複数(本実施形態では16個)の緩衝体
ユニット106と、緩衝体ユニット106の間に配設さ
れてそれぞれが慣性質量体となる4つの移動板106と
から構成される。
【0065】ベース100は、鋼板からなる。2つの固
定板102,104すなわち後方固定板102および前
方固定板104は、鋼板からなり、下部において溶接に
よりベース100に固着されている。後方固定板102
と前方固定板104とは互いに鋼製のステー120で連
結されている。図示していないが、ベース100がアン
カーボルトにより路面に固定され、また、後方固定板1
02がコンクリート製の分離帯122に固定されること
で、本緩衝装置が設置される。本緩衝装置においては、
2つの固定板102,104とそれを繋ぐステー120
とが固定体として機能する。
【0066】複数の緩衝体ユニット106は、それら1
つ1つが緩衝体として機能する。緩衝ユニット106
は、16個配設されており、その外観形状は、蒲鉾を切
断したような形状となっている。車両衝突方向における
前方つまり先頭部の4個のものを除き、中央部から後方
にかけての12個のものが略同じ外観形状をなし、先頭
部の4個の緩衝体ユニットは、本緩衝装置の形状に相応
して、装置前方のものほど左右方向の幅が小さくなって
いる。また、緩衝体ユニット106は、後方の固定板1
04と後方の移動板108との間に4個のものが、移動
板108どうしの間にそれぞれ4個のものが、最前方の
移動板108の前方に4個のものが配設されている。本
実施形態の緩衝装置においては、上記4個ずつの緩衝体
ユニット106がそれぞれ緩衝体群を構成し、移動板1
08を区切りとして4つの緩衝体群に区分けされてい
る。
【0067】緩衝体ユニット106は、緩衝機能を担う
1つあるいは2つの緩衝材130と、緩衝材130の上
下左右を被覆する被覆部材132と、緩衝材130およ
び被覆部材132を内包する外郭部材134とを含んで
構成される。緩衝材130は、直方体形状に成形された
発泡ポリスチレン(EPS)である。被覆部材134
は、薄い(0.3〜1mm程度)鋼板製のパンチングメ
タルであり、それぞれの緩衝材130の前後の面を除く
面、つまり、上下左右の面を取り巻くように覆ってい
る。外郭部材134は、薄い(0.5〜1mm程度)鋼
板製であり、前板136と後板138と上方および左右
方向に連続する側板140とに分けられ、それぞれが接
合されて1つの外郭部材134を構成する(最前方の外
郭部材134は前板136と側板140とが区別なく一
体に形成されている)。緩衝材130は、外郭部材13
4の前板136および後板138に付設された保持金具
142により、その位置が固定されて外郭部材134に
保持されている。なお、2つの緩衝材を有する場合は、
図示していないが、それぞれの緩衝材130がそれぞれ
の保持金具142によって、独立してその位置が固定さ
れている。緩衝材の大きさ等については後に詳しく説明
する。
【0068】外郭部材134は、本緩衝装置自体の外郭
をも構成する。詳しくは、外郭部材134の側板140
が、緩衝装置の上および左右の外郭を構成している。ま
た、緩衝材130は、外郭部材134の側板140と距
離を隔てて配置されている。つまり緩衝材130は、外
郭部材134の内部において、上下左右に(2つの緩衝
材130が存在する場合は、それらの間にも)空間を有
して配設されている。この空間の存在により、車両衝突
の際の緩衝体130の変形および外郭部材134の変形
が容易となり、緩衝体ユニット106つまり緩衝体の緩
衝作用は阻害されない。また、緩衝材130が変形して
破損する場合であっても、被覆部材132が緩衝材13
0の変形に応じて変形し、破損した破片が緩衝装置の周
囲に飛散することを効果的に防止する。つまり被覆部材
132は、緩衝材飛散防止手段として機能する。なお、
外郭部材134も、飛散防止手段として機能するという
ことができる。
【0069】移動板108は、比較的厚い鋼板であり、
実質的に慣性質量を有する慣性質量体である。前後方向
から見て、その大きさは、緩衝体ユニット106と略等
しい大きさであり、その重量は、設計上、板厚を変更す
ることにより、容易に変更することが可能である。移動
板108の下部には、左右方向に間隔を置いて、2つの
車輪装置150が取り付けられており、車輪装置150
は、車両衝突方向に直角でかつ路面に平行な軸線まわり
に回転可能な回転体である車輪152を有する。移動板
150は、この車輪152を介してベース100に接地
しており、前後方向の移動を円滑に行えるようになって
いる。つまり、これらの車輪装置150は前記車両衝突
方向への移動を円滑化するための移動円滑化装置として
機能する。
【0070】ベース100の上方の近傍には、ガイド用
索体として機能する比較的太い2本の鋼製のワイヤであ
るガイド用ワイヤ154が、左右方向に間隔を隔てて、
配設されている。こららのガイド用ワイヤ154は、ベ
ース100の上面に設けられた前方固定装置156と前
方固定板104に設けられた後方固定装置158とで、
テンションをかけられつつ、車両衝突方向に張られてい
る。詳しくは図示しないが、後方固定装置158には、
ターンバックル機構が備わっており、このターンバック
ル機構により、ガイド用ワイヤ154にテンションがか
けられている。これらガイド用ワイヤ154は、前方固
定板102と最前方の緩衝体ユニット106にわたって
張られている。
【0071】移動板108の下部には、板厚方向に貫通
して左右方向に長い長孔として形成された2つの貫通穴
であるガイド用ワイヤ貫通穴170が設けられている。
2本ガイド用ワイヤ154の各々が、ガイド用ワイヤ貫
通穴170の各々に貫通する。貫通穴170の上下方向
の幅、つまり長穴幅は、ガイド用ワイヤ154の外径よ
り大きく形成され、移動板108の前後方向の移動を担
保している。また、図10に表すように、静止状態(衝
突される前の状態)においては、ガイド用ワイヤ154
のそれぞれが、貫通穴170のそれぞれにおいて、左右
方向における内側に位置している。移動板108の左右
方向への移動は、ガイド用ワイヤ154と貫通穴170
とによって規制される。貫通穴170が形成された移動
板108の下部の部分は、ガイド用ワイヤ154に沿っ
て移動板108が移動するためのスライド部172とな
り、このスライド部172とガイド用ワイヤ154と
で、左右方向への移動板108の移動を規制するガイド
装置を構成する。また、この構成において、貫通穴17
0が長穴として形成されていることから、その長穴長さ
(左右方向の穴長さ)の分だけ、移動板108が傾斜可
能となっている。つまり、その分だけ、路面に平行な平
面に沿った回動が許容される。したがって、このガイド
装置は、移動板108の回動許容機構を有する装置であ
る。ガイド装置の機能については、後述する。
【0072】また、同様に、緩衝体ユニット106にお
いても、外郭部材134の前板136および後板138
に長穴として形成された2つのガイド用ワイヤ貫通穴1
74が設けられており、これらの貫通穴174の各々に
2本のガイド用ワイヤ154が貫通する。つまり、これ
らの貫通穴174とガイド用ワイヤ154とは、緩衝体
ユニット106に対するガイド装置として機能するもの
であるといえ、また、そのガイド装置は、緩衝体ユニッ
ト106に対しての回動許容機構を有するものであると
いえる。
【0073】緩衝装置の左右両側には、それぞれ2本ず
つの比較的細い鋼製ワイヤである挟持用ワイヤ180が
設けられている。これらの挟持用ワイヤ180は、挟持
用索体としての機能を果たすものであり、前方固定板1
04と最前方の移動板108とにそれぞれ設けられた前
方固定装置182および後方固定装置184に両端部が
固定され、両者の間にわたって車両衝突方向に張られて
いる。移動板108には、対応する位置に貫通穴である
挟持用ワイヤ貫通穴186が設けられ、緩衝体ユニット
106の前板136,後板138にも挟持用ワイヤ貫通
穴188が設けられており、挟持用ワイヤ180がそれ
ぞれこれらの貫通穴186,188に貫通している。な
お、図10において、前方固定装置182は省略してあ
るが、それが干渉する外郭部材134の後板138の部
分には逃がし穴190が設けられている。また、詳しく
図示していないが、後方固定装置184はターンバック
ル機構を有し、挟持用ワイヤ180が最前方の移動板1
08を前方固定板104に向かって、適度なテンション
で引き付けていることにより、それらの間の移動板10
8および緩衝体ユニット106が挟持されるものとなっ
ている。この挟持によって、移動板108および緩衝体
ユニット106は、車両衝突方向に整列させられさらに
しっかり保持されることになる。すなわち、これら挟持
用ワイヤ180は、緩衝体挟持手段を構成する。また、
これらの挟持用ワイヤ180は、緩衝装置の側面への車
両衝突の際に、緩衝体の横ずれ、あるいは、装置自体の
横ずれを防止する機能をも果たす。なお、最前方の移動
板108の前方の緩衝体ユニット106には、かかる挟
持手段は設けられていないが、例えば、緩衝体ユニット
106の外郭部材134どうしをそれらの一部分で接合
する等により、同様に、しっかり保持されることにな
る。挟持用ワイヤ180にテンションをかける際のター
ンバックル機構の操作は、前方固定体102と後方固定
体104との間の作業空間192にて行えばよい。この
作業空間192は、ガイド用ワイヤ154にテンション
を付与する際にも利用されるが、通常は、カバー194
にて覆われている。
【0074】本緩衝装置は、1000kgの重量の車両
が100km/hの速度で正面衝突した場合、車両に与
える衝撃が20G以下となるように設計している。装置
の左左右の幅は約1500mm、高さ約1000mmと
なっている。それぞれの緩衝体ユニット106はその車
両衝突方向の長さが約300mm(最前方のものは約4
00mm)となっており、装置全長が約5.2m(固定
体の部分を除いて約4.9m)となっている。なお、図
9は、理解を容易にするため、緩衝材130すべて断面
で表してある。緩衝材は、前述したようにEPSで、発
泡倍率が50倍のものを使用している。その緩衝係数は
約2.5(最小値の値)である。それぞれの緩衝体ユニ
ット106が備える緩衝材130は、高さ方向において
その長さが約700mmと一定のものとなっている。そ
れぞれの緩衝体ユニット106が備える緩衝材130の
数量、1つの緩衝材130の左右方向における概略長さ
(幅)、緩衝体ユニット106ごとの緩衝材130の概
略総断面積(車両衝突方向に直角な面における総断面
積)を、前方の緩衝体ユニット106から順に示せば、
下記表2のようになる。
【0075】
【表2】
【0076】上記表2の数値に基づいて計算すれば容易
に理解できるように、移動板108を区切りとしたそれ
ぞれの緩衝体群で考えた場合、それぞれの緩衝体群の衝
撃を受ける断面積(緩衝体群のすべての緩衝材130の
体積の総和を緩衝体群の前後方向の長さで除した値)
は、前方の緩衝体群ほど小さく、ばね定数の値が小さく
なっている。すなわち、前方の緩衝体群ほど柔らかくな
っている。また、移動板108の後方に位置する緩衝体
ユニット106の緩衝材130(図8および図9の★
印)については、その後方の緩衝体ユニット106の緩
衝材130に比較して、断面積が小さいものとなってい
る。これは、前述したように、先頭部の慣性質量体の移
動速度が特に速く、その後部の緩衝材の変形が追従せず
に、車両に与えるの衝撃が大きくなるのを防止するため
の手段である。なお、緩衝体ユニット106において、
緩衝材130以外の構成要素は、緩衝作用を阻害するも
のではなく、緩衝設計においては、緩衝材130のみに
よって緩衝体が構成されているとしても影響はない。
【0077】慣性質量体となる移動板の重量は、最前方
のもの(図8および図9の☆印)を除いて、約110k
gである。前述したように、最前方のものの重量が特に
重要であり、また、初期衝撃をできるだけ小さくするこ
とが望ましいことから、その重量は約85kgと軽めに
なっている。ちなみに、その前方に存在するすべての緩
衝材130についての前記L1(総長さ),A1(衝撃受
面積:体積から換算),eopt(単位体積当たりの理論
最適吸収エネルギ)は、それぞれ約1200mm,約
0.4m2,約120kJ/m3であり、前記理論最適重
量misは、約80kgとなる。
【0078】本車両用衝突緩衝装置に、車両が前方より
正面衝突して、その衝突衝撃が吸収される様子を図12
に示す。この図が示すように、車両が衝突した場合、前
方側の緩衝体ユニット(緩衝体)から順に圧縮変形しつ
つ、前方側の移動板(慣性質量体)から順に後方に移動
して、効果的に衝撃を吸収する。詳しい計算は省略する
が、使用したEPSの緩衝係数が約2.5であるのに対
して、装置全体の見かけ上の緩衝係数は約2.1とな
る。本実施形態の緩衝装置の場合、1000kgの重量
の車両が100km/hの速度で正面衝突した場合、車
両に与える衝撃は、計算上、約17Gとなる。装置全体
の見かけ上の緩衝係数が約2.1という値となる場合、
20Gまでの衝撃を許容したときには、計算上では、緩
衝体全長が約4.2mで収まることになる。緩衝係数が
約2.5の緩衝材のみで緩衝装置を構成した場合(図3
(a)のような態様の場合)には、前述の表1からも推
測できるように、緩衝体の全長が約4.9m必要である
ことに鑑みれば、本緩衝装置がコンパクトな緩衝装置で
あることが容易に理解できる。
【0079】次に、ガイド装置の機能等について補足説
明する。本実施形態の緩衝装置では、ガイド装置は、平
行な2本のガイド用ワイヤ154と、移動板108のス
ライド部172に設けられた長穴であるガイド用ワイヤ
貫通穴170とを含んで構成される。図13にこれらの
構成要素を上方から模式的に示す。図13(a)は、衝
突前の静止状態である。車両の衝突等により、この移動
板108に装置の左右方向からの力が作用した場合を想
定する。図13(b)は、装置の前方から見て左方向か
らの力が加わった場合示す。図10に示すように、それ
ぞれのガイド用ワイヤ154は、それぞれの貫通穴17
0の内側に位置している。このため、移動板108が右
方向に移動しようとすると、右側のガイド用ワイヤ15
4は、右側の長穴の左方向の端部に当接する。そして、
そのガイド用ワイヤ154は、移動板108の力を受け
て撓むが、弾性反発力によって、移動板108を左方向
に押し戻そうとする。このようにして、移動板108の
左右方向への移動が規制される。例えば、剛体のレール
とそれと係合してスライドするガイド装置をも採用でき
るが、本ガイド装置は、索体の有する弾性力により、移
動板108の左右方向の移動を効果的に規制できるもの
となる。単純な構造のガイド装置であるといえる。なお
貫通穴170にガイド用ワイヤ154を貫通させる構成
であるため、移動板108の上方への跳ね上がりも、効
果的に規制される。
【0080】移動板108が路面に平行な平面に沿って
回動させられる場合を、図14に模式的に示す。本ガイ
ド装置は、ガイド用ワイヤ貫通穴170が長穴として形
成されている。したがって、移動板108が、車両衝突
方向に直角な面に対して傾斜する場合であっても、その
長穴の長さに応じた分だけ傾斜可能である。つまり、路
面に平行な平面に沿って回動可能である。具体的に説明
すれば、図10に示すように、それぞれのガイド用ワイ
ヤ154は、それぞれの貫通穴170の内側に位置して
おり、2つの貫通穴170の内側どうしの間隔は(図1
4のl0)、2本のガイド用ワイヤ154の内側どうし
の間隔(図14のl’)と略等しい。移動板108が傾
斜する場合、長穴の長さ(図14のl1,l2)の分だけ
傾斜させられる。図14(a)と図14(b)とでは長
穴の長さが異なり、図14(b)に示す場合のほうが、
長穴の長さが長く(l1<l2)、したがって、大きな回
動が許容される。例えば、前方の移動板108のほう
が、後方のものと比較して、回動させられる力が大きい
ため、回動許容量を大きくとることが望ましい。詳しく
は図示していないが、本実施形態の緩衝装置におけるガ
イド装置では、前方の移動板108に設けられた貫通穴
170のほうが、後方のものに比較して長穴の長さが長
く、回動許容量を多くしてある。なお、長穴長さを超え
る分の回動力は、ガイド用ワイヤの撓み、つまり弾性に
より効果的に緩和される。なお、回動がまったく許容さ
れない場合は、移動板108の後方への移動の円滑性が
損なわれる可能性がある。
【0081】次に、緩衝材の偏り変形抑制手段について
説明する。本緩衝装置では、剛体である移動板108ど
うしの間、あるいは移動板108と前方固定板104と
の間には、複数の緩衝体ユニット106が配設されてい
る。例えば、移動板108が後方に移動しつつ上記よう
に回動させられる場合を考える。移動板108の回動を
伴う緩衝材の圧縮変形の様子を、図15に模式的に示
す。図15(a)は、移動板108に前後方向長さの長
い緩衝材130が1つ配設されている場合である。この
場合、緩衝材130は座屈等により、偏った変形が大き
くなる。これに対し、本緩衝装置の場合は、複数の緩衝
体ユニットが配設されていることから、比較的短い緩衝
材130が複数配設されることになる。そして、それら
の間には、緩衝体ユニット106の外郭部材134の前
板136,後板138が介装された格好になっている。
したがって、図15(b)に示すように、例えば、外郭
部材134全体の支持力等により、それぞれの緩衝体1
30の座屈変形等が抑制されるため、緩衝材の偏った変
形が効果的に抑制される。つまり、例えば、複数の連続
する緩衝ユニット106の複数の緩衝材130を1つの
緩衝材と擬制する場合、外郭部材134の前板136お
よび後板138は、その緩衝材を前後方向に仕切る仕切
板として機能する。かかる仕切板が緩衝材の偏り変形抑
制手段として機能するのである。
【0082】緩衝装置は、正面衝突の場合を想定して設
計されるが、実際の車両の衝突は、例えば、オフセット
衝突、斜突等のように、偏荷重を受ける場合も少なくな
い。このような場合、慣性質量体の左右への移動、回
動、あるいは、緩衝材の偏り変形等の現象は避けられな
い。これらの現象を、うまく調整することにより、慣性
質量体の円滑な移動が確保され、効率的な衝突エネルギ
の吸収が可能となる。本緩衝装置では、上記回動許容機
構を含むガイド装置、緩衝材の偏り変形手段を設けて、
これを実現している。なお、緩衝体ユニット106も、
長穴となるガイド用ワイヤ貫通穴174が外郭部材13
4の前板136および後板138に形成され、それらに
ガイド用ワイヤ154が貫通しているため、上記ガイド
装置は、緩衝体ユニット106の左右方向の移動を規制
し、回動を許容するものとなる。
【0083】次に、緩衝材の変形態様について説明す
る。上記実施態様の緩衝材は、EPSを使用している。
これに変えてアルミニウムハニカム体とEPSの積層構
造の緩衝材を用いることができる。図16に、上記積層
構造の緩衝材を示す。この図の示す緩衝材130は、ア
ルミニウムハニカム体200を両側(詳しくは前後側)
をEPS202で挟むように積層したものである。この
ような緩衝材130を用いることもできる。アルミニウ
ムハニカム体200は、緩衝係数が小さな緩衝材であ
り、EPS202の存在によってノイズ的に(高周波的
に)発生する高い応力のピークを消去できることから、
このような積層構造の緩衝材は好適である。3層構造の
ものを示したが、積層数は限定されない。アルミニウム
ハニカム体200は、セル(通孔)のサイズ、セルを区
画する箔の厚さ(区画壁の厚さ)および材質等を調整し
て、望む緩衝係数のものとすればよい。なお、本変形態
様における緩衝材では、アルミニウムハニカム体202
のEPS202への食い込みを防止するために、両者の
間に、薄い金属シート204を介在させている。
【0084】上記実施形態は、1000kgの重量の車
両が100km/hの速度で正面衝突した場合、車両に
与える衝撃が20G以下となるように設計された装置で
ある。かかる設定だけではなく、例えば、もっと衝突速
度を遅く設定する等は、その長さを短くすることができ
る。図17に、上記実施形態の変形態様であって、長さ
の短い衝突緩衝装置のバリエーションを示す。図17
(a)は上記実施形態の緩衝装置であって、図17
(b),(c)は、それに比較して徐々に短くなってい
る。このように、設定衝突速度が遅くなるにつれて、緩
衝装置の前後方向の長さを短くすればよい。なお、移動
板108の数量,重量、緩衝体ユニット106の数量,
長さ,緩衝材の材質等、バリエーションに富んだいろい
ろな変形態様を採用することができる。また、緩衝装置
の外郭は、装置全体で1つの外郭部材を有するものであ
っても、慣性質量体で区画された部分ごとに外郭部材を
配置するようなものであってもよい。
【0085】以上、本発明の車両用衝突緩衝装置の一実
施形態とそのいくつかの変形態様について説明したが、
本発明の車両用衝突緩衝装置は、上記実施形態およびそ
の変形態様に限られず、前記〔発明が解決しようとする
課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様
を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改
良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】完全弾性体の応力−ひずみ線図を示す。
【図2】発泡ポリスチレンの応力−ひずみ線図を示す。
【図3】衝撃吸収の方式の相違する3つのタイプの車両
用衝突緩衝装置を模式的に示す。
【図4】緩衝材を完全弾性体とする支持体固定方式の緩
衝装置における装置全体の応力−ひずみ線図を模式的に
示す。
【図5】緩衝材を完全弾性体とする慣性力方式の緩衝装
置における装置全体の応力−ひずみ線図を模式的に示
す。
【図6】緩衝材を発泡ポリスチレンとする慣性力方式の
緩衝装置における装置全体の応力−ひずみ線図を模式的
に示す。
【図7】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置の斜視
図を示す。
【図8】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置の平面
断面図を示す。
【図9】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置の側面
断面図を示す。
【図10】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置の図
9におけるA−A部の正面断面図を示す。
【図11】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置にお
いて、慣性質量体の間に緩衝体ユニットが積層されて配
設される様子を示す。
【図12】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置に、
車両が前方より正面衝突して、その衝突衝撃が吸収され
る様子を示す。
【図13】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置が備
えるガイド装置において、移動板に左右方向からの力が
作用した場合を模式的に示す。
【図14】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置が備
えるガイド装置において、移動板が路面に平行な平面に
沿って回動させられる場合を模式的に示す。
【図15】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置にお
いて、移動板の回動を伴う緩衝材の圧縮変形の様子を模
式的に示す。
【図16】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置が備
える緩衝材の変形態様であって、使用可能なアルミハニ
カム体とEPSの積層構造の緩衝材を示す。
【図17】本発明の実施形態の車両用衝突緩衝装置の変
形態様であって、長さの短い衝突緩衝装置のバリエーシ
ョンを示す。
【符号の説明】
10:固定体 20:緩衝体 40:慣性質量体 10
0:ベース 102:後方固定板(固定体) 104:
前方固定板(固定体) 106:緩衝ユニット(緩衝
体) 108:移動板(慣性質量体) 130:緩衝材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山▲崎▼ 誠 大阪市住吉区苅田1−12−14−615 (72)発明者 中嶋 隆勝 和泉市あゆみ野2丁目7番1号 大阪府立 産業技術総合研究所内 (72)発明者 和田 邦宏 名古屋市熱田区古新町2の103の2 Fターム(参考) 2D101 CA04 DA04 DA05 DA06 EA01 FA02 FB01 FB02 GA12 GA13 GA15 GA17 3J066 AA01 AA23 BA01 BA03 BB01 BC01 BD05 BD07 BE06 BF03 DA07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 路面に設置されて車両の衝突による衝撃
    を緩衝する車両用衝突緩衝装置であって、 設定された車両衝突方向に平行な前後方向における後方
    に、移動不能に設けられた固定体と、 その固定体の前方に並んで配設され、緩衝材を備えて車
    両の衝突の衝撃を吸収する複数の緩衝体と、 それら複数の緩衝体の少なくともいずれかの間に配設さ
    れ、前後方向に移動可能な1以上の慣性質量体とを含む
    ことを特徴とする車両用衝突緩衝装置。
  2. 【請求項2】 少なくとも前記車両衝突方向に直角でか
    つ路面に平行な左右方向への前記慣性質量体の移動を規
    制するガイド装置を備える請求項1に記載の車両用衝突
    緩衝装置。
  3. 【請求項3】 前記ガイド装置が、前記慣性質量体の路
    面に平行な平面に沿った回動を許容する回動許容機構を
    有する請求項2に記載の車両用衝突緩衝装置。
  4. 【請求項4】 前記緩衝体が、前記車両衝突方向に直角
    な方向における偏り変形を抑制するための偏り変形抑制
    手段が設けられたものである請求項1ないし請求項3の
    いずれかに記載の車両用衝突緩衝装置。
  5. 【請求項5】 前記緩衝体が、それぞれに緩衝材を備え
    てユニット化された緩衝体ユニットである請求項1ない
    し請求項4のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装置。
  6. 【請求項6】 前記緩衝材が、発泡ポリスチレンとアル
    ミニウムハニカム体との少なくとも一方を含む請求項1
    ないし請求項5のいずれかに記載の車両用衝突緩衝装
    置。
  7. 【請求項7】 前記複数の緩衝体を前記慣性質量体によ
    り区切られた複数の緩衝体群に区分けした場合に、前方
    の前記緩衝体群の前後方向のばね定数がその後方の前記
    緩衝体群の前後方向のばね定数と比較して小さくなるよ
    うに構成された請求項1ないし請求項6のいずれかに記
    載の車両用衝突緩衝装置。
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