JP2003061930A - 熱拡散装置および磁気共鳴映像撮像装置 - Google Patents

熱拡散装置および磁気共鳴映像撮像装置

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JP2003061930A JP2001252071A JP2001252071A JP2003061930A JP 2003061930 A JP2003061930 A JP 2003061930A JP 2001252071 A JP2001252071 A JP 2001252071A JP 2001252071 A JP2001252071 A JP 2001252071A JP 2003061930 A JP2003061930 A JP 2003061930A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 MRI装置において、撮影時に勾配磁場発生
部から発生する熱の処理を効率よくおこなう。 【解決手段】 撮影時に熱を発生する勾配磁場発生部
が、勾配コイル12と、勾配コイル12を挟み込むa層
13、b層14からなるX方向勾配磁場発生部9と、勾
配コイル15と、勾配コイル15を挟み込むc層16、
d層17からなるY方向勾配磁場発生部10と、勾配コ
イル18と、勾配コイル18を挟み込むe層19、f層
20からなるZ方向勾配磁場発生部11とから構成され
る。ここで、各層の熱伝導率をf層20>e層19=d
層17>c層16=b層14>a層13とすることで、
勾配コイル12、15、18から発生する熱を上方向に
のみ拡散させ、冷却部3で処理をおこなう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、均一な磁場を発
生する静磁場発生磁石と、位置および時間に応じて変動
する磁場を発生する勾配磁場発生部と、勾配磁場発生部
から生ずる熱を除去する冷却部と、電磁波送受信手段と
を有する磁気共鳴映像撮像装置に関し、特に、磁気共鳴
映像撮像装置内の勾配磁場発生部において生ずる熱を効
率よく排除することのできる磁気共鳴映像撮像装置に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、物体の内部構造を画像化すること
ができ、医療現場で脳腫瘍の診断などに用いられる磁気
共鳴映像撮像装置(以下「MRI装置」と言う)が知ら
れている。MRI装置による内部構造の撮影は、具体的
には以下のメカニズムによりおこなう。
【0003】MRI装置は、特定の核種(主に水素原
子)に対して核磁気共鳴現象を利用することで、撮影対
象物の任意の断層面を任意の厚さで画像化することがで
きる。核磁気共鳴現象とは、対象物体に一様な静磁場を
印加すると、対象物体を構成する原子の原子核において
スピンの方向がそろい、静磁場の強度に比例した周波数
(以下「共鳴周波数」と言う)の電磁波を吸収、放出す
るようになる現象のことである。
【0004】位置情報を調べるために、静磁場とは別に
空間的および時間的に変動する勾配磁場を撮影対象物に
対して印加する。勾配磁場を印加することにより、撮影
対象物に印加される磁場は場所によって異なり、撮影対
象物を構成する各原子の共鳴周波数は場所によって変化
する。したがって、勾配磁場を印加することで、撮影対
象物のどの位置にどのような原子が存在するかを知るこ
とができる。以上が、MRI装置による物体の内部構造
撮影のメカニズムである。
【0005】勾配磁場を印加する装置は、空間的および
時間的に変化する磁場を供給するために、通常はコイル
を有する電磁石からなる。図8は、従来技術に属するM
RI装置における、勾配磁場発生部の構造を示す。撮影
対象物は3次元的形状を有する物体であるため、撮影対
象物の構成原子の位置を決定するためには3方向に渡っ
て勾配磁場を発生する必要がある。したがって、勾配磁
場発生部はX方向勾配磁場発生部61、Y方向勾配磁場
発生部62、Z方向勾配磁場発生部63を有し、それぞ
れを縦に積層した構造からなる。また、各方向勾配磁場
発生部は、勾配コイルと、このコイルを上下方向から挟
み込むことにより勾配コイルを固定する固定板によって
構成される。例えば、X方向勾配磁場発生部61は、勾
配コイル64をX方向勾配コイル固定板65、66によ
り挟み込む構造からなる。これらの勾配コイル64、6
7、70に電流を流すことにより、勾配磁場が発生して
各原子の位置に関する情報を得ることが可能となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、勾配磁場を発
生する勾配磁場発生部は、位置情報を得るための十分な
勾配磁場を発生させるために、勾配コイル中に数百アン
ペアもの大電流を流す必要がある。そのため、勾配コイ
ルから発生する熱は膨大なものとなり、勾配磁場発生部
自身のみならず周囲の静磁場発生磁石や、撮影対象物に
電磁波を照射および検出するためのRFコイルに対して
熱が加えられ、装置としての性能が低下してしまうとい
う問題が生ずる。また、勾配磁場発生部の周囲に配置さ
れる静磁場発生磁石は、温度により磁場強度が変化する
という特性を有するため、この点からも勾配磁場発生部
から生ずる熱を放置するのは妥当ではない。
【0007】このような問題を解決するために、図8に
示すように2つの冷却部を取り付ける技術が提案されて
いる。これによれば、勾配磁場発生部の上部および下部
に冷却部73、74を取り付けて熱を処理することで、
勾配磁場発生部から生ずる熱によりMRI装置が損傷を
受けることを防止することができる。
【0008】しかし、冷却部73、74を勾配磁場発生
部の上部および下部に配置することで、以下の問題点が
生ずる。まず、冷却部を2カ所に配置することにより、
MRI装置の構造が煩雑となる。したがって、MRI装
置の設計における自由度が減少し、装置の設計が複雑化
する。さらに、2つも冷却部を配置することで装置全体
の重量も増大してしまう。
【0009】また、冷却効率を高くできないという問題
がある。勾配コイルで発生した熱は勾配磁場発生部の全
表面から外部に放出されるため、勾配磁場発生部の全表
面に対して冷却部を配置する必要がある。実際には勾配
磁場発生部の側面における表面積は小さいため無視する
ことができるものの、すくなくとも勾配磁場発生部の上
面および下面を覆う形で冷却部を配置する必要がある。
そのため、発熱量の大小および冷却部の性能の高低に関
わらず、必ず2つの冷却部を配置しなければならず、効
率的ではない。
【0010】本発明は上記従来技術の欠点に鑑みてなさ
れたものであって、MRI装置内の勾配磁場発生部にお
いて生ずる熱を効率よく排除することのできるMRI装
置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決し、
目的を達成するため、第1の観点にかかる発明は、装置
の動作に伴い発生する熱を拡散する熱拡散装置であっ
て、熱伝導率の異なる複数の部材で形成することにより
熱拡散方向に異方性を持たせた熱拡散装置であることを
特徴とする。
【0012】この第1の観点にかかる発明によれば、熱
拡散装置による熱の拡散に異方性を持たせたため、たと
えば熱拡散装置の周囲に熱の影響を受けやすい物体が配
置されていても、その物体が配置された方向への熱の拡
散を防止することができる。
【0013】また、第2の観点にかかる発明は、第1の
観点にかかる発明において、前記熱伝導率の異なる複数
の部材が、所定の方向に対して順次熱伝導率の低い順に
積層された構造を有することにより前記所定の方向に熱
が拡散することを特徴とする。
【0014】この第2の観点にかかる発明によれば、所
定の方向に熱を拡散させることができるため、効率良く
熱の拡散をおこなうことが可能となる。
【0015】また、第3の観点にかかる発明は、第1ま
たは第2の観点にかかる発明において、前記熱伝導率の
異なる複数の部材においてもっとも熱伝導率の高い部材
に接触して配置された冷却部を有することを特徴とす
る。
【0016】この第3の観点にかかる発明によれば、熱
拡散装置を構成する部材のうち、もっとも熱伝導率の高
い部材に冷却部を接触させることによって、拡散してき
た熱を冷却部で効率良く処理することができる。
【0017】また、第4の観点にかかる発明は、均一な
磁場を発生する静磁場発生磁石と、位置および時間に応
じて変動する磁場を発生する勾配磁場発生部と、勾配磁
場発生部から生ずる熱を除去する冷却部と、電磁波送受
信手段とを有する磁気共鳴映像撮像装置において、前記
勾配磁場発生部を熱伝導率の異なる複数の部材により形
成して、前記勾配磁場発生部内で生ずる熱の拡散に異方
性を持たせた磁気共鳴映像撮像装置であることを特徴と
する。
【0018】この第4の観点にかかる発明によれば、熱
伝導率の異なる複数の物質から構成することで熱の拡散
に異方性を持たせることができるため、熱の影響を受け
やすい装置の配置された方向に対して熱の拡散を防止す
ることができる。
【0019】また、第5の観点にかかる発明は、第4の
観点にかかる発明において、前記勾配磁場発生部が、前
記熱伝導率の異なる複数の部材を所定の方向に対して順
次熱伝導率の低い順に積層した構造を有し、前記勾配磁
場発生部で生ずる熱が前記所定の方向に拡散することを
特徴とする。
【0020】この第5の観点にかかる発明によれば、所
定の方向に対してのみ熱の拡散をおこなうことができる
ため、効率の良い熱の放出をおこなうことができる。
【0021】また、第6の観点にかかる発明は、第4ま
たは第5の観点にかかる発明において、前記勾配磁場発
生部が、勾配コイルを複数の固定板により挟み込む構成
からなる1方位勾配磁場発生部を複数積層したものであ
って、個々の前記固定板が、それぞれ下部に位置する固
定板の熱伝導率よりも高い若しくは同等の熱伝導率を有
し、前記冷却部が、前記勾配磁場発生部の上部に配置さ
れていることを特徴とする。
【0022】この第6の観点にかかる発明によれば、1
方位勾配磁場発生部で発生した熱を上方向に拡散させる
ことが可能であり、1方位勾配磁場発生部の上部に冷却
部を配置することにより拡散してきた熱を効率よく排除
することができる。
【0023】また、第7の観点にかかる発明は、第6の
観点にかかる発明において、前記固定板が、前記勾配コ
イルの周辺部分において前記固定板における他の部分よ
りも熱伝導率の高い物質からなることを特徴とする。
【0024】この第7の観点にかかる発明によれば、勾
配磁場発生部において、コイルが密集して大量の熱が発
生する部分においては、同一の固定板の他の部分よりも
熱伝導率の高い物質で構成することで、横方向への熱の
拡散を抑制し、上部方向への効率良い熱拡散をおこなう
ことができる。
【0025】また、第8の観点にかかる発明は、第4な
いし第7の観点にかかる発明のいずれかにおいて、前記
勾配磁場発生部と前記冷却部との間に配置されたヒート
シンクを有することを特徴とする。
【0026】この第8の観点にかかる発明によれば、勾
配磁場発生部と冷却部との間にヒートシンクを配置する
ことで、勾配磁場発生部で発生した熱を冷却部に効率よ
く伝えることができる。
【0027】また、第9の観点にかかる発明は、第6な
いし第8の観点にかかる発明のいずれかにおいて、前記
固定板が、繊維強化プラスチックおよびアルミニウム酸
化物を構成成分に有し、アルミニウム酸化物の含有量を
変化させることで前記固定板の熱伝導率を変化させるこ
とを特徴とする。
【0028】この第9の観点にかかる発明によれば、固
定板を構成する繊維強化プラスチックにアルミニウムを
混入することで熱伝導率を変化させることができるた
め、固定板としての機能を損なうことなく、熱伝導率を
変化させることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態にかかるMRI装置について詳細に説明する。
図面の記載において同一あるいは類似部分には同一ある
いは類似な符号を付している。
【0030】実施の形態1.図1は、実施の形態1にか
かるMRI装置の構造の一部を示す断面図である。ま
た、図2は実施の形態1にかかるMRI装置のうち、特
に勾配磁場発生部2の構造を示す。以下、図1および図
2を用いて、実施の形態1にかかるMRI装置につい
て、説明する。
【0031】実施の形態1にかかるMRI装置は、図1
に示すとおり、静磁場発生磁石1と、勾配磁場発生部2
と、勾配磁場発生部2の上部に配置された冷却部3と、
撮影対象物8に対して電磁波の送受信をおこなうRFコ
イル4と、磁気回路用ヨーク5と、静磁場を均一化する
ための整磁板6と、RFシールド7とを有する。
【0032】静磁場発生磁石1は、例えば永久磁石また
は超電導磁石からなり、撮影対象物8に対して空間的お
よび時間的に均一な静磁場を印加する機能を有する。超
電導磁石からなる場合は、液体ヘリウムによって静磁場
発生磁石1を冷却する必要がある。なお、静磁場発生磁
石1は、撮影対象物8に対して0.2〜1.5T程度の
強磁場を印加する。
【0033】冷却部3は、勾配磁場発生部2から発生し
た熱を吸収するためのものである。冷却部3が熱を吸収
することにより外部への拡散を抑えることで、静磁場発
生磁石1から生ずる静磁場を安定化することができ、ま
た、MRI装置を構成する他の装置の損傷なども抑制す
ることができる。なお、冷却部3は、水を循環させるこ
とにより冷却をおこなう水冷式のものであっても、ファ
ンで空気を送り込むことで冷却する空冷式のものであっ
ても構わない。さらに、空冷式と水冷式を組み合わせた
構造からなるものであっても、本実施の形態1における
冷却部3として使用することができる。
【0034】RFコイル4は、撮影対象物8に対して一
定の範囲の周波数からなる電磁波を照射し、核磁気共鳴
現象により撮影対象物8を構成する原子から放出された
電磁波を受信するためのものである。RFコイル4によ
って照射される電磁波の周波数は、静磁場発生磁石1に
より印加される磁場の強度が1.0Tの場合には、数M
HZ〜数十MHZである。
【0035】磁気回路用ヨーク5は、静磁場発生磁石1
において発生した磁場が本実施の形態1にかかるMRI
装置の外部に放出されるのを防ぎ、撮影対象物8に効率
よく磁場を印加するためのものである。具体的には、静
磁場発生磁石1の下部から放出される磁力線を、磁気回
路用ヨーク5を通してMRI装置の上部へと導くこと
で、上部からも撮影対象物8に対して磁場を印加でき
る。このことにより、通常ならば外部に放出される磁場
成分についても撮影対象物8に印加することができ、こ
の結果、効率的に撮影対象物8に磁場を印加することが
できる。
【0036】整磁板6は、静磁場発生磁石1により発生
した静磁場の均一性を高めるためのものである。本実施
の形態1において、撮影対象物8は人体など一定の体積
を有するものであるため、広い範囲に渡って静磁場を印
加する必要がある。しかし、通常の永久磁石等では広い
範囲に渡って均一な磁場を発生するのは容易でないた
め、整磁板6を配置することにより、磁場の均一化を図
っている。整磁板6は、通常は鉄を材料として用いる
が、このほかに珪素鋼板を積層したものやフェライト、
アモルファスを用いてもよい。なお、図1において、整
磁板6は静磁場発生磁石1の上に一様に配置されている
が、これは理解の容易のために模式的に表したものであ
り、整磁板6は静磁場発生磁石1の内部に配置しても良
いし、静磁場発生磁石1から離れた場所に配置しても良
い。
【0037】RFシールド7は、勾配磁場発生部2を構
成する勾配コイル12、15、18とRFコイル4との
カップリングを避けるために設けられている。RFシー
ルド7の材料としては非磁性でかつ導電性を有する必要
があり、一般には銅箔が用いられる。
【0038】勾配磁場発生部2は、円盤状の形状からな
り、その鉛直方向の断面は図2に示すように、X方向勾
配磁場発生部9、Y方向勾配磁場発生部10、Z方向勾
配磁場発生部11を順に積層した構造を有し、Z方向勾
配磁場発生部11の上には、冷却部3が配置されてい
る。本実施の形態1にかかるMRI装置の撮影対象物8
は、3次元的形状からなるため、画像を形成するために
必要な位置情報を3次元的に得る必要があるからであ
る。
【0039】X方向勾配磁場発生部9は、勾配コイル1
2と、勾配コイル12を上下から挟み込むa層13とb
層14とからなる。勾配コイル12は銅線などの導体に
より構成されており、勾配コイル12に電流を流すこと
によりX方向に勾配した磁場を撮影対象物8に対して印
加する機能を有する。なお、X方向勾配磁場は、本実施
の形態1において周波数エンコードのために用いられる
ことから、以下ではX方向を周波数方向と言う。
【0040】a層13とb層14は、ともに繊維強化プ
ラスチック(以下「FRP」と言う)を主体とし、これ
にアルミナ(Al23)を含有させたものからなる。ア
ルミナの含有量はb層14の方が、a層13よりも多い
構造とする。アルミナの含有量の違いにより、a層13
よりもb層14の方が熱伝導率の高い構造となる。
【0041】Y方向勾配磁場発生部10は、勾配コイル
15と、勾配コイル15を上下から挟み込むc層16お
よびd層17とからなる。勾配コイル15は電流を流す
ことによりY方向に勾配した磁場を発生する機能を有
し、c層16とd層17は、それぞれアルミナを含有す
るFRPからなる。なお、Y方向勾配磁場は、本実施の
形態1において位相エンコードのために用いられること
から、以下ではY方向を位相方向と言う。
【0042】また、d層17のアルミナの含有量はc層
16における含有量よりも多くし、熱伝導率も高くす
る。なお、c層16のアルミナの含有量はb層14にお
ける含有量と同じとする。したがって、c層16の熱伝
導率はb層14の熱伝導率と同等となる。
【0043】Z方向勾配磁場発生部11は、勾配コイル
18と、勾配コイル18を上下から挟み込むe層19お
よびf層20からなる。Z方向勾配磁場発生部11は、
勾配コイル18に電流を流すことによりZ方向に勾配し
た磁場を発生する。なお、Z方向勾配磁場は、いわゆる
スライス選択のために用いられることから、以下ではZ
方向をスライス方向と言う。
【0044】また、e層19およびf層20は、アルミ
ナを含有するFRPからなり、e層19のアルミナの含
有量はd層17における含有量と同じにし、f層20に
おける含有量はe層19における含有量よりも多くす
る。したがって、f層20の熱伝導率はe層19よりも
高く、e層19の熱伝導率はd層17と同等となる。
【0045】なお、勾配コイル12、15、18につい
て、図2では同様のパターンで示しているが、これは簡
略化して表現したものであり、実際には各方向に勾配磁
場を発生するため、勾配コイル12、15、18の配線
パターンは互いに異なっている。このことは他の図面に
おける勾配コイルについても同様である。
【0046】次に、実施の形態1にかかるMRI装置を
用いて、実際にMRI画像を撮影する方法について、図
3を用いて説明する。まず、撮影対象物8をMRI装置
内部に搬入し、静磁場発生磁石1により発生した静磁場
雰囲気中に撮影対象物8を配置する(ステップS10
1)。なお、静磁場発生磁石1が超電導磁石からなる場
合は、あらかじめ超電導磁石を液体ヘリウムなどで冷却
し、超伝導状態を作り出しておく必要がある。
【0047】その後、スライス(Z方向)勾配磁場を印
加しながら撮影対象物に電磁波を照射する(ステップS
102)。これにより、撮影対象物8は共鳴周波数の異
なり、法線がZ方向である多数のスライスに分割され、
任意のスライスの共鳴周波数と同一周波数の高周波パル
スを撮影対象物8に照射することで、所望の撮影面(ス
ライス)内のスピンを励起することができる。
【0048】そして、撮影対象物8に対して位相(Y方
向)勾配磁場を印加する(ステップS103)。位相勾
配磁場を印加することにより、ステップS102におい
て選択されたスライス中に存在する原子から放出される
電磁波の位相が場所によって異なったものとなる。具体
的には、スライスは位相方向を短手方向とした複数の短
冊に分割され、各短冊に属する原子からは同一位相の電
磁波が放出される。したがって、この時点で電磁波を放
出する原子の位置は、Z方向(スライス方向)の座標お
よびY方向(位相方向)の座標について特定できること
となる。
【0049】そして、各短冊における原子の位置を特定
するために周波数(X方向)勾配磁場を印加しながら、
撮影対象物8を構成する原子から放出される電磁波を受
信する(ステップS104)。周波数方向に勾配磁場を
かけることにより、周波数方向に沿って異なる周波数の
エコーを得ることができるようになるため、電磁波を放
出する原子のX方向(周波数方向)の座標を特定するこ
とができる。したがって、ステップS102、S103
とあわせて電磁波を放出する原子の位置が特定される。
なお、スライス方向、位相方向、周波数方向の各勾配磁
場の印加は、図示を省略した制御部が、勾配コイル1
2、15、18に流す電流を制御することによりおこな
う。勾配磁場を発生する際に勾配コイル12、15、1
8に流れる電流はそれぞれ数百アンペアである。
【0050】そして、撮影対象物8を構成する原子から
放出された、磁場強度に比例した周波数の電磁波をRF
コイル4によって受信する(ステップS104)。ステ
ップS102において送信装置として機能したRFコイ
ル4は、本ステップS104では受信装置として機能す
る。RFコイル4で受信された電磁波は、図示を省略し
た記憶手段により、データとして記憶される。そして、
S102〜S104の走査を位相方向のマトリックス数
だけ繰り返し実施し、2次元データセットを得る。
【0051】その後、2次元データセットについて2次
元高速フーリエ変換をおこない、周波数に関するデータ
を得る(ステップS105)。撮影対象物8を構成する
原子から放出された電磁波の周波数は、原子の位置によ
って異なるため、周波数のデータから特定の原子の分布
を知ることができる。
【0052】その後、ステップS105で得たデータの
強度を輝度値に変換し(ステップS106)、画像とし
て出力する(ステップS107)。出力の態様は、スラ
イスごとに2次元的に表示するものであっても、撮影対
象物8について内部構造が分かるように、各部を半透明
な構造で3次元的に表示するものであっても良い。ま
た、出力の方法に関しても、モニタに出力するものであ
っても、プリントアウトされるものであっても良い。
【0053】上述のステップS102において、勾配磁
場発生部2を構成する勾配コイル12、15、18には
それぞれ最大で数百アンペアもの電流が流れる。この電
流によって生ずる熱の拡散について、図4を用いて説明
する。なお、図4は、勾配磁場発生部2の一部を示す
が、理解を容易にするため勾配コイル15、18につい
て図示を省略しており、勾配コイル12についても一部
について図示を省略している。また、横方向では一様な
熱伝導率を有するため、熱伝導率の違いは上下方向のみ
で生じ、熱の拡散は上下の1次元方向のみに行われるも
のとする。
【0054】熱の拡散については、いわゆる拡散方程式
が知られている。それによると、熱qの拡散は熱拡散係
数Dと、温度Tを用いて、次式のように表される。な
お、上下方向の座標軸をxとする。 q=−D*∂T/∂x ・・・・・(1) ここで、拡散係数Dは熱伝導率に比例する係数であるた
め、熱の流れは熱伝導率および温度の変化率に比例する
ことが分かる。すなわち、熱伝導率が高く、温度が低い
場所に向かって熱は拡散する。
【0055】最初、勾配コイル12に電流を流し始めた
際には温度は位置によらず一定とみなすことができるた
め、勾配コイル12で発生した熱が上方向に拡散する
か、下方向に拡散するかは熱伝導率の違いによって決定
される。勾配コイル12の下に配置されたa層13は、
上述したようにアルミナの含有量が上に配置されたb層
14よりも少ないため、熱伝導率がb層14よりも小さ
い。したがって、a層13の存在により下方向に拡散す
る熱の量は上方向と比べて少なくなる。
【0056】さらに、上方向に拡散した熱は、b層14
以上の熱伝導率を有するc層16へと拡散し、さらに熱
伝導率の高いd層17、e層19、f層20へと拡散し
ていく。そして、f層20の上に配置された冷却部3に
よって熱が吸収される。したがって、上方向へ拡散した
熱によってb層14、c層16、d層17、e層19、
f層20の温度が上昇することはない。一方で、a層1
3に拡散した熱は依然としてa層13に留まるため、a
層13ではわずかに温度が上昇する。
【0057】そのため、勾配コイル12に電流を流して
から一定時間を経過した後の温度分布について、勾配コ
イル12の下に配置されたa層13における温度は、b
層14における温度よりも高い。したがって、式(1)
より、熱は下方向へは熱は流れにくくなり、勾配コイル
12から発生する熱は上方向のみに流れるようになる。
したがって、a層13の温度は、撮影開始直後にわずか
に上昇したあとは一定の値に留まり、本実施の形態1に
かかるMRI装置を構成する他の装置に対して影響を与
えることはほとんどない。さらに、図1に示した通り、
勾配磁場発生部2と、勾配磁場発生部2の下部に配置さ
れる整磁板6との間には空隙が設けられており、空気は
良好な断熱材として機能することから、勾配磁場発生部
2の底部における微小な温度上昇は整磁板6に対して全
く影響を与えないといえる。
【0058】なお、上方向に拡散した熱については、勾
配磁場発生部2の上部に冷却部3が配置されているた
め、冷却部3によって処理される。したがって、勾配磁
場発生部2の上面の温度も上昇することはなく、勾配磁
場発生部2の上面から熱が放出されることもない。
【0059】上述の議論は、勾配コイル15および勾配
コイル18についても同様に成立する。したがって、本
実施の形態1にかかるMRI装置においては、勾配磁場
発生部2から発生する熱を勾配磁場発生部2の上に配置
した冷却部3のみで処理することが可能であることが分
かる。
【0060】以上説明したように、実施の形態1にかか
るMRI装置は、使用時に勾配磁場発生部2から発生す
る熱を勾配磁場発生部2上に配置した冷却部3のみを用
いて処理することが可能であるため、従来の冷却部を複
数設けたMRI装置と比較して、効率よく熱を処理する
ことができる。
【0061】また、冷却部3のみで熱処理をおこなうた
め、MRI装置を構成する部品の数が少なくてすみ、製
造コストの低減および装置設計の自由度の向上を図るこ
とができる。
【0062】さらに、冷却部3は、勾配磁場発生部2で
発生した熱を完全に処理できるため、静磁場発生磁石1
の温度が変化することなく、静磁場の均一性に影響を与
えるおそれもないため、撮影された画像データも良質な
ものを得ることができる。また、MRI装置全体が熱に
より影響を受けることもないため、MRI装置自体の劣
化を防ぐこともできる。
【0063】なお、勾配磁場発生部2について、各層の
熱伝導率の変化の態様は上述の例に限定されない。例え
ば、c層16の熱伝導率をb層14よりも大きくし、e
層19の熱伝導率をd層17よりも大きくしても良い。
また、本実施の形態1でa層13〜f層20の各層ごと
に熱伝導率を設定したのは、あくまでこれらの層が別個
独立して構成されているからに過ぎないため、必要なら
ば、例えばa層13自体が上部において下部よりも熱伝
導率が大きくなる構造としても良い。すなわち、勾配コ
イル12、15、18により生ずる熱が一方向に移動す
る構造であれば、本実施の形態1にかかるMRI装置と
同様の効果を得ることができる。
【0064】また、静磁場発生磁石1によって発生する
静磁場の値と、RFコイル4が照射する電磁波の周波数
の値は、上述した値には限定されない。これらの値は撮
影対象物の種類および装置の特性によって適宜変更可能
なものであり、静磁場の強度と電磁波の周波数との間に
核磁気共鳴現象が成立するような値とすればよい。
【0065】実施の形態2.次に、実施の形態2にかか
るMRI装置について、図1、図5および図6を用いて
説明する。なお、実施の形態1と同一または類似の部分
については説明を省略する。
【0066】実施の形態2にかかるMRI装置は、図1
に示すように、静磁場発生磁石1と、勾配磁場発生部2
と、勾配磁場発生部2の上部に配置された冷却部3と、
撮影対象物8に対して電磁波の送受信をおこなうRFコ
イル4と、磁気回路用ヨーク5と、静磁場を均一化する
ための整磁板6と、RFシールド7とを有する。
【0067】勾配磁場発生部2は、図5に示すように、
上面から見ると円形の形状からなり中心から外周に向か
って円形の低熱伝導部分25、リング形状からなる高熱
伝導部分26、低熱伝導部分27、高熱伝導部分28、
低熱伝導部分29が配置されている。ここで、高熱伝導
部分26、28は、それぞれ勾配磁場発生部2の内部に
おいて、勾配コイルが存在する部分に対応する。すなわ
ち、高熱伝導部分26、28は、図6におけるa”層4
3、b”層44、c”層45、d”層46、e”層4
7、f”層48が設けられた領域に対応している。
【0068】また、勾配磁場発生部2の中央から外周部
にかけての断面形状は、図6で示すように、X方向勾配
磁場発生部31、Y方向勾配磁場発生部32、Z方向勾
配磁場発生部33を順に積層した構造からなる。
【0069】X方向勾配磁場発生部31は、勾配コイル
34を上下から薄い円盤で挟み込む構造からなる。下の
円盤は、勾配コイル34に近接した部分ではa”層43
を形成し、それ以外の部分ではa’層35を形成する。
同様に、上の円盤は、勾配コイル34に近接した部分で
はb”層44を形成し、それ以外の部分ではb’層36
を形成している。これらの各層は、それぞれFRPと、
アルミナを構成成分として有する。アルミナの含有量を
調整することで、それぞれの層の熱伝導率を変化させる
ことができ、各層の熱伝導率の大小関係は、b”層44
>a”層43>b’層36=a’層35とする。
【0070】Y方向勾配磁場発生部32は、X方向勾配
磁場発生部31の場合と同様に、勾配コイル37を上下
方向から薄い円盤で挟み込む構造からなる。下側の円盤
は、勾配コイル37の近接部分ではc”層45を形成
し、それ以外の部分ではc’層38を形成する。同様
に、上側の円盤は、勾配コイル37の近接部分ではd”
層46を形成し、それ以外の部分ではd’層39を形成
する。各層はFRPとアルミナを構成成分に有し、アル
ミナの含有量を調整することで、各層の熱伝導率の大小
関係はd”層46>c”層45>d’層39=c’層3
8とする。また、X方向勾配磁場発生部31における各
層との関係では、熱伝導率の大きさはc”層45=b”
層44、c’層38=b’層36とする。
【0071】Z方向勾配磁場発生部33は、勾配コイル
40を上下から薄い円盤で挟み込む構造からなる。挟み
込む円盤のうち、下側の円盤は、勾配コイル40に近接
する部分でe”層47を形成し、それ以外の部分でe’
層41を形成する。上側の円盤は、勾配コイル40に近
接する部分でf”層48を形成し、それ以外の部分では
f’層42を形成する。各層は、FRPとアルミナを構
成成分に有し、アルミナの含有量を調整することで各層
の熱伝導率はf”層48>e”層47>e’層41=
f’層42という大小関係を有する。また、Y方向勾配
磁場発生部32における各層との関係では、熱伝導率の
大きさはe”層47=d”層46、f’層42=c’層
38とする。
【0072】したがって、勾配磁場発生部2における各
層の熱伝導率の大小関係は、f”層48>e”層47=
d”層46>c”層45=b”層44>a”層43>
f’層42=e’層41=d’層39=c’層38=
b’層36=a’層35となる。
【0073】次に、実施の形態2にかかるMRI装置を
使用した際に、勾配磁場発生部2から発生する熱の流れ
について説明する。勾配コイル34、37、40には数
百アンペアの電流が流れるため、ジュール熱が発生す
る。これに対し、勾配磁場発生部2では、a’層35、
b’層36、・・・・、f’層42における熱伝導率が
他の層と比べて小さいため、勾配コイル34、37、4
0からこれらの層には熱はほとんど流れない。
【0074】一方、a”層43、b”層44、・・・
・、f”層48は、上に行くにしたがって熱伝導率が高
くなる構造をとるため、勾配コイル34、37、40か
ら発生する熱はこれらの層を通って上方向に拡散する。
したがって、勾配コイル34、37、40から発生した
熱は、勾配磁場発生部2の上面にまで到達し、勾配磁場
発生部2の上部に配置された冷却部3で処理される。そ
のため、発生する熱はすべて冷却部3でのみ処理するこ
とができ、効率よく熱を処理をすることが可能であり、
かつ、装置の構造を単純化して装置全体の重量を軽くす
ることができる。また、静磁場発生磁石1が熱による影
響を受けないために良質な画像を得ることができる。
【0075】また、本実施の形態2における勾配磁場発
生部2では、横方向に熱が拡散することがほとんどな
い。したがって、発生した熱が放出されるのは図5にお
ける高熱伝導部分26、28においてのみであるため、
冷却部3も高熱伝導部分26、28から放出される熱を
吸収できればよい。そのため、冷却部3を小型化するこ
とが可能であり、さらにMRI装置全体において構造を
単純化し、重量を軽くすることが可能である。
【0076】なお、本実施の形態2において、高熱伝導
部分26、28は勾配コイル34、37、40の配置に
対応して設けられているのであるため、勾配コイル3
4、37、40の配線パターンが図6に示したものと異
なる場合、高熱伝導部分26、28の配置、形状も当然
異なってくる。
【0077】また、低熱伝導部分25、27、29を構
成するa’層35、b’層36、・・・・、f’層42
において、熱伝導率を同一のものとするのではなく、高
熱伝導部分26、28の場合と同様に、上に向かうにし
たがって熱伝導率が高くなる構造としても良い。勾配コ
イル34、37、40から発生する熱は、厳密にはまっ
たく横方向に拡散しないというわけではなく、多少の熱
は横方向に漏れ出す。したがって、この横方向に漏れだ
した熱についても処理することがより望ましい。そのた
め、低熱伝導部分25、27、29についても、上下方
向に熱伝導率を変化させて漏れだした熱を上方に拡散さ
せて上部に配置した冷却部3で処理をおこなうことによ
り、他の装置に及ぼすおそれを一切排除することができ
る。ただし、この場合でも横方向に拡散する熱をなるべ
く抑えるために、例えばa”層43の熱伝導率はa’層
35の熱伝導率よりも高くする必要がある。
【0078】さらに、高熱伝導部分と低熱伝導部分の配
置を、勾配コイルの存在の有無によって分けるのではな
く、勾配コイルの密集した部分と、密集していない部分
にわけてもよい。この場合は、勾配コイルが密集した部
分からは大量の熱が発生するため、密集部分を高熱伝導
部分とすることで効率よく熱を上方向に拡散させること
ができるという効果を有する。
【0079】さらに、横方向の熱伝導率の違いを高熱伝
導部分26、28と低熱伝導部分25、27、29の2
段階にのみ分けるのではなく、例えば高熱伝導部分と低
熱伝導部分との間の値の熱伝導率を有する部分を複数設
けて、熱伝導率の違いを多段階のものとしても良い。こ
の場合、例えば、高熱伝導率領域は勾配コイルがもっと
も密集している領域に配置し、勾配コイルの密集の度合
いに応じて異なる熱伝導率を有する領域を配置する構造
とすることができる。
【0080】実施の形態3.次に、図1および図7を用
いて実施の形態3にかかるMRI装置について、説明す
る。実施の形態3にかかるMRI装置は、図1に示すよ
うに、静磁場発生磁石1と、勾配磁場発生部2と、図7
に示すように勾配磁場発生部2の上部に配置されたヒー
トシンク49と、ヒートシンク49の上部に配置された
冷却部3と、撮影対象物8に対して電磁波の送受信をお
こなうRFコイル4と、磁気回路用ヨーク5と、静磁場
を均一化するための整磁板6と、RFシールド7とを有
する。
【0081】勾配磁場発生部2は、図7に示すように、
X方向勾配磁場発生部9と、Y方向勾配磁場発生部10
と、Z方向勾配磁場発生部11と、冷却部3を順に積層
した構造からなる。
【0082】ヒートシンク49は、勾配コイル12、1
5、18から発生し、勾配磁場発生部2の上端部まで到
達した熱を冷却部3に伝えるためのものである。ヒート
シンク49の材料としては、熱伝導性に優れた金属等を
用いることが望ましい。具体的には、銅(Cu)や、ア
ルミニウム(Al)等で構成することが望ましい。
【0083】ヒートシンク49を勾配磁場発生部2と冷
却部3との間に配置することによって、勾配磁場発生部
2から発生した熱を効率よく冷却部3へ伝えることがで
きる。具体的には、ヒートシンク49の熱伝導率はf層
20よりも大きな値であるため、勾配磁場発生部2内部
の場合と同様に、f層20上に存在する熱は、ヒートシ
ンク49内部を上方向に拡散して、冷却部3に到達す
る。
【0084】また、ヒートシンク49は熱伝導率が大き
いため、一度に多量の熱を拡散させることが可能であ
る。したがって、f層20に到達した熱は、ヒートシン
ク49により速やかに冷却部3へ到達し、その分f層2
0の上面の温度は低下する。これにより、熱が発生する
勾配コイル12、15、18とf層20との温度差は拡
大するため、式(1)より、勾配コイル12、15、1
8から上方向に拡散される熱の量は増大することが分か
る。熱を効率的に冷却部に送ることが可能となるため、
発生した熱の処理にさらに優れたMRI装置を実現する
ことができる。
【0085】なお、実施の形態3における勾配磁場発生
部2は、実施の形態1における場合と同様の構造からな
るが、実施の形態2のように、高熱伝導部分と低熱伝導
部分とに分かれた構造としても良い。このような構造と
しても、ヒートシンク49を冷却部3との間に挟んでい
れば、冷却効率をさらに上げることできる。
【0086】また、図7ではヒートシンク49は一様な
板状体からなるものとしているが、ヒートシンク49の
形状はこれに限定されない。放熱効果に優れた構造から
なるヒートシンクであれば、本実施の形態3におけるヒ
ートシンク49として用いることができる。
【0087】なお、上述のように本発明は実施の形態1
から実施の形態3によって記載したが、この開示の一部
をなす論述および図面はこの発明を限定するものである
と理解するべきではない。この開示から当業者には様々
な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかにな
ると思われる。例えば、本実施の形態1から実施の形態
3において、MRI装置の撮影対象は人体に限定され
ず、使用目的も医療用に限定されない。例えば、本実施
の形態にかかるMRI装置は、人体以外の物体について
の非破壊検査などに利用することも有効である。
【0088】また、勾配磁場発生部2に関してもX方向
勾配磁場発生部、Y方向勾配磁場発生部、Z方向勾配磁
場発生部の順に積層する必要は必ずしもなく、積層する
順番を変更することが可能であり、各方向勾配磁場発生
部を互いに分離した形態で配置することもできる。互い
に分離した場合には、それぞれに対して冷却部を配置す
る必要が生ずるが、その場合でも、従来の上下に配置す
る構造と比較して効率の良い熱の処理をおこなうことが
できる。また、勾配磁場発生部2以外の配置についても
同様で、適宜設計変更が可能である。例えば静磁場発生
磁石1、整磁板6、勾配磁場発生部2、冷却部3、RF
シールド7、RFコイル4のセットを撮影対象物8の上
部に配置することも可能であり、上部と下部の双方に配
置しても良い。
【0089】また、実施の形態1〜3にかかるMRI装
置は、垂直方向に静磁場を印加する、いわゆる垂直磁場
型であるが、本発明は静磁場を水平方向に印加する、い
わゆる水平磁場型のMRI装置に適用することも可能で
ある。
【0090】また、勾配磁場発生部2の構造を、熱を上
方へ拡散させる構造のみならず、下方へ拡散させる構造
としても良い。この場合は、勾配磁場発生部2の下部に
向かってアルミナの含有量を増加させればよい。ただ
し、その場合には冷却部3は磁場発生装置2の上部では
なく、下部に接触して配置する必要がある。
【0091】さらに、熱の拡散を1方向におこなうので
はなく、例えば、静磁場発生磁石1のように温度変化に
敏感な装置に対する方向にのみ熱の拡散が起こらないよ
うに勾配磁場発生部2の熱伝導率を変化させることも有
効である。勾配磁場発生部2から発生する熱の総量がそ
れほどでない場合、温度変化に敏感な装置に熱拡散が集
中しなければ装置の特性を悪化させることはないためで
ある。
【0092】また、熱の拡散を1方向におこなうのでは
なく、勾配磁場発生部2上のある1点に向かうように熱
の移動をおこなわせるように勾配磁場発生部2の熱伝導
率を変化させる構造とすることも有効である。この場合
には、勾配磁場発生部2から外部に対して熱は1カ所の
みから放出されるため、冷却部3を熱が放出される領域
の大きさに対応して小型化することができる。
【0093】また、勾配磁場発生部はそれぞれX方向、
Y方向、Z方向について勾配磁場を発生するものとして
いるが、これらの方向についても必ずしも直交座標系に
限定されるものではない。また、図中に表示したX軸、
Y軸、Z軸についても、これに限定されるものではな
い。装置の特性および撮影対象の形状などにあわせて適
宜変更することが可能である。
【0094】
【発明の効果】上述してきたように、第1の観点にかか
る発明によれば、熱拡散装置による熱の拡散に異方性を
持たせた構成としたため、たとえば熱拡散装置の周囲に
熱の影響を受けやすい物体が配置されていても、その物
体が配置された方向への熱の拡散を防止することができ
るという効果を奏する。
【0095】また、第2の観点にかかる発明によれば、
所定の方向に熱を拡散させることができる構成としたた
め、効率良く熱の拡散をおこなえるという効果を奏す
る。
【0096】また、第3の観点にかかる発明によれば、
熱拡散装置を構成する部材のうち、もっとも熱伝導率の
高い部材に冷却部を接触させる構成としたため、拡散し
てきた熱を冷却部で効率良く処理することができるとい
う効果を奏する。
【0097】また、第4の観点にかかる発明によれば、
熱伝導率の異なる複数の物質から構成し、熱の拡散に異
方性を持たせる構成としたため、熱の影響を受けやすい
装置の配置された方向に対して熱の拡散を防止すること
ができるという効果を奏する。
【0098】また、第5の観点にかかる発明によれば、
所定の方向に対してのみ熱の拡散をおこなうような構成
としたため、効率の良い熱の放出をおこなうことができ
るという効果を奏する。
【0099】また、第6の観点にかかる発明によれば、
勾配磁場発生部で発生した熱を上方向に拡散させること
が可能であり、勾配磁場発生部の上部に冷却部を配置す
ることにより拡散してきた熱を効率よく排除することが
できるという効果を奏する。
【0100】また、第7の観点にかかる発明によれば、
勾配磁場発生部において、コイルが存在して大量の熱が
発生する部分においては、同一の固定板における他の部
分よりも熱伝導率の高い物質で構成することとしたた
め、横方向への熱の拡散を抑制し、上部方向への効率良
い熱拡散をおこなうことができるという効果を奏する。
【0101】また、第8の観点にかかる発明によれば、
勾配磁場発生部と冷却部との間にヒートシンクを配置す
る構成としたため、勾配磁場発生部で発生した熱を冷却
部に効率よく伝えることができるという効果を奏する。
【0102】また、第9の観点にかかる発明によれば、
固定板を構成する繊維強化プラスチックにアルミニウム
を混入することで熱伝導率を変化させる構成としたた
め、固定板としての機能を損なうことなく、熱伝導率を
変化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態1、2、3にかかるMRI装置の構
造を示す模式図である。
【図2】実施の形態1にかかるMRI装置における勾配
磁場発生部の構造を示す断面図である。
【図3】実施の形態1にかかるMRI装置の動作を示す
フローチャートである。
【図4】実施の形態1にかかるMRI装置における勾配
磁場発生部における熱の流れを示す模式図である。
【図5】実施の形態2にかかるMRI装置における勾配
磁場発生部の構造を示す上面図である。
【図6】実施の形態2にかかるMRI装置における勾配
磁場発生部の構造を示す断面図である。
【図7】実施の形態3にかかるMRI装置における勾配
磁場発生部の構造を示す断面図である。
【図8】従来技術にかかる勾配磁場発生部の構造を示す
断面図である。
【符号の説明】
1 静磁場発生磁石 2 勾配磁場発生部 3、73、74 冷却部 4 RFコイル 5 磁気回路用ヨーク 6 整磁板 7 RFシールド 8 撮影対象物 9、31、61 X方向勾配磁場発生部 10、32、62 Y方向勾配磁場発生部 11、33、63 Z方向勾配磁場発生部 12、15、18、34、37、40、64、67、7
0 勾配コイル 13 a層 14 b層 16 c層 17 d層 19 e層 20 f層 25、27、29 低熱伝導部分 26、28 高熱伝導部分 35 a’層 36 b’層 38 c’層 39 d’層 41 e’層 42 f’層 43 a”層 44 b”層 45 c”層 46 d”層 47 e”層 48 f”層 49 ヒートシンク 65、66 X方向勾配コイル固定板 68、69 Y方向勾配コイル固定板 71、72 Z方向勾配コイル固定板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宮本 昭栄 東京都日野市旭が丘四丁目7番地の127 ジーイー横河メディカルシステム株式会社 内 Fターム(参考) 4C096 AB33 AD09 CB01 CB20

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 装置の動作に伴い発生する熱を拡散する
    熱拡散装置であって、 熱伝導率の異なる複数の部材で形成することにより熱拡
    散方向に異方性を持たせたことを特徴とする熱拡散装
    置。
  2. 【請求項2】 前記熱伝導率の異なる複数の部材が、所
    定の方向に対して順次熱伝導率の低い順に積層された構
    造を有することにより前記所定の方向に熱が拡散するこ
    とを特徴とする請求項1に記載の熱拡散装置。
  3. 【請求項3】 前記熱伝導率の異なる複数の部材におい
    てもっとも熱伝導率の高い部材に接触して配置された冷
    却部を有することを特徴とする請求項1または2に記載
    の熱拡散装置。
  4. 【請求項4】 均一な磁場を発生する静磁場発生磁石
    と、位置および時間に応じて変動する磁場を発生する勾
    配磁場発生部と、勾配磁場発生部から生ずる熱を除去す
    る冷却部と、電磁波送受信手段とを有する磁気共鳴映像
    撮像装置において、 前記勾配磁場発生部を熱伝導率の異なる複数の部材によ
    り形成して、前記勾配磁場発生部内で生ずる熱の拡散に
    異方性を持たせたことを特徴とする磁気共鳴映像撮像装
    置。
  5. 【請求項5】 前記勾配磁場発生部が、前記熱伝導率の
    異なる複数の部材を所定の方向に対して順次熱伝導率の
    低い順に積層した構造を有し、前記勾配磁場発生部で生
    ずる熱が前記所定の方向に拡散することを特徴とする請
    求項4に記載の磁気共鳴映像撮像装置。
  6. 【請求項6】 前記勾配磁場発生部が、勾配コイルを複
    数の固定板により挟み込む構成からなる1方位勾配磁場
    発生部を複数積層したものであって、個々の前記固定板
    が、それぞれ下部に位置する固定板の熱伝導率よりも高
    い若しくは同等の熱伝導率を有し、 前記冷却部が、前記勾配磁場発生部の上部に配置されて
    いることを特徴とする請求項4または5に記載の磁気共
    鳴映像撮像装置。
  7. 【請求項7】 前記固定板が、前記勾配コイルの周辺部
    分において前記固定板における他の部分よりも熱伝導率
    の高い物質からなることを特徴とする請求項6に記載の
    磁気共鳴映像撮像装置。
  8. 【請求項8】 前記勾配磁場発生部と前記冷却部との間
    に配置されたヒートシンクを有することを特徴とする請
    求項4〜7のいずれかに記載の磁気共鳴映像撮像装置。
  9. 【請求項9】 前記固定板が、繊維強化プラスチックお
    よびアルミニウム酸化物を構成成分に有し、アルミニウ
    ム酸化物の含有量を変化させることで前記固定板の熱伝
    導率を変化させることを特徴とする請求項6〜8のいず
    れかに記載の磁気共鳴映像撮像装置。
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