JP2003061698A - がん細胞の脱分化抑制物質の探索方法 - Google Patents

がん細胞の脱分化抑制物質の探索方法

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JP2003061698A JP2001254731A JP2001254731A JP2003061698A JP 2003061698 A JP2003061698 A JP 2003061698A JP 2001254731 A JP2001254731 A JP 2001254731A JP 2001254731 A JP2001254731 A JP 2001254731A JP 2003061698 A JP2003061698 A JP 2003061698A
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protein
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Yasuhisa Fukui
泰久 福井
Sayoko Ihara
さよ子 伊原
Keiun Jo
慶雲 徐
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Sankyo Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】がん細胞の脱分化を抑制する物質を探索する方
法を提供する。 【解決手段】1)試験物質存在下又は非存在下で、マイ
トジェン−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ
−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ(mit
ogen‐activated protein ki
nase‐avtivaetd protein ki
nase:以下、「MAPKAPキナーゼ」とい
う。)、基質タンパク質及びATPを反応させる。 2)試験物質非存在下におけるMAPKAPキナーゼの
基質タンパク質リン酸化活性に対する、試験物質存在下
におけるMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リン酸
化活性の減少の程度を測定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイトジェン−ア
クチベイティッド・プロテイン・キナーゼ−アクチベイ
ティッド・プロテイン・キナーゼ(mitogen‐a
ctivatedprotein kinase‐av
tivaetd protein kinase:以
下、「MAPKAPキナーゼ」という。:Sithanandam,
G., et al., Mol. Cel. Biol., 16, 868-876(1996)参
照)による熱ショックタンパク質27(Heat Sh
ock Protein 27:以下、「HSP27」
という。:Matozaki T, et al., Cell Signal., 12, 51
5-524(2000)参照)のリン酸化を試験物質が阻害する程
度を測定する工程を含む、がん細胞の脱分化を抑制する
物質を試験する方法、該方法により得られる、がん細胞
の脱分化抑制物質、等に関する。
【0002】
【従来の技術】印環細胞がんはいわゆるスキルスがんと
よばれる悪性腫瘍のひとつで、低分化型腺がんに属し、
細胞間相互作用に欠けるため、細胞が散らばってしまう
傾向にあり、手術による摘出が不可能ながんである。そ
の特徴として、巨大な液胞をもつ細胞が出現することが
知られている。その化学療法は確立しておらず、外科手
術等の治療は事実上不可能とされている。発明者らは高
分化型のヒト大腸癌由来の腺がん細胞である、HCC2
998細胞に活性変異型のホスファチジルイノシトール
3キナーゼ(phosphatidylinosito
l−3−kinase:以下、「PI3K」という。)
を発現させるといわゆる印環細胞がん様に変化するこ
と、また、天然から単離された印環細胞がん株では高頻
度でPI3Kが活性化されていることを見出した(Koba
yashi M, et al., Proc. Natl. Acad.Sci. U.S.A., 96,
4874-4879(1999)参照)。このことは、PI3Kが印環
細胞がんの形成に重要な機能を果たしていることを示唆
している。そこで、HCC2998細胞に活性変異型P
I3Kを発現させて印環細胞細胞がん様の細胞を生じる
系を用いて印環細胞がん治療薬を探索する方法を考案し
た。(唐牛ら、日本農芸化学会誌、74巻、353頁
(2000年):唐牛ら、日本農芸化学会誌、75巻、
333頁(2001年):特開2000−355549
参照)細胞内情報伝達系においてPI3Kの下流にはR
ac、MAPキナーゼキナーゼ6(MAP kinas
e kinase 6:以下、「MKK6」とい
う。)、p38MAPキナーゼ、MAPKAPキナーゼ
等の存在が知られており(Matozaki T, et al., Cell S
ignal., 12, 515-524(2000)参照)、発明者らはこれら
の下流因子についても検討し、活性変異型MKK6によ
っても巨大な液胞は生じないが、HCC2998細胞の
細胞間相互作用が失われ、細胞が丸く形態変化するこ
と、PI3Kによる細胞の形態変化はMKK6の下流因
子p38MAPキナーゼの阻害剤SB203580によ
って阻害されることなどから、印環細胞がんの形成には
PI3K−MKK6−p38MAPキナーゼのカスケー
ドが重要であることを明らかにしてきた(唐牛ら、日本
農芸化学会誌、74巻、353頁(2000年):唐牛
ら、日本農芸化学会誌、75巻、333頁(2001
年)参照)。
【0003】細胞間相互作用や細胞の形態にはアクチン
や微小管などの細胞骨格が重要な働きをしている。MK
K6の下流因子のなかで細胞骨格と関係している因子を
探索するとHSP27が浮かび上がってくる。即ち、p
38MAP Kinaseの下流因子の一つとしてMA
PKAPキナーゼが知られているが、MAPKAPキナ
ーゼはさらにHSP27をリン酸化することが知られて
いる。HSP27はアクチンの重合促進をすることが報
告されており(Butt, E., et al., J. Biol. Chem., 27
6, 7108-7113(2001)参照)、印環細胞がん形成における
p38MAPKinaseの下流因子としてHSP27
が考えられ(Huot J, et al., J. Cell Biol., 143, 13
61-1373(1998)参照)、印環細胞がんとMAPKAPキ
ナーゼの関連は注目されている。
【0004】
【発明の解決しようとする課題】発明者らは、活性変異
型PI3K、活性変異型MKK6又は活性変異型p38
MAPキナーゼを腺がん細胞で発現させることにより、
そのような腺がん細胞が印環細胞がん様の形態へ変化す
ること、及び、そのような形態変化がp38MAPキナ
ーゼの阻害剤SB203580により阻害されることを
見出した。次いで、PI3K−MKK6−p38MAP
キナーゼのカスケードにおいてそれらの下流に位置する
MAPKAPキナーゼのドミナント・ネガティブ(domi
ant negative:以下、「DN」という。)変異体を作製
して上述の形態変化への影響を調べた結果、活性変異型
PI3K、活性変異型MKK6による印環細胞がん様形
態変化は、MAPKAPキナーゼのDN変異体により抑
制されることを見出し本発明を完成した。
【0005】また、上述のカスケードにおいてMAPK
APキナーゼの下流に位置するHSP27の活性変異型
変異体も腺がん細胞を印環細胞がん様形態へ変化させ得
ることを見出し、HSP27を介した印環細胞がん様形
態変化には、MAPKAPキナーゼが介在している可能
性が強く示唆された。
【0006】
【課題を解決する手段】本発明は、(1)がん細胞の脱
分化を抑制する物質を探索する方法であって、下記工程
のi)及びii): i)試験物質存在下又は非存在下で、マイトジェン−ア
クチベイティッド・プロテイン・キナーゼ−アクチベイ
ティッド・プロテイン・キナーゼ(mitogen‐a
ctivated protein kinase‐a
vtivaetdprotein kinase:以
下、「MAPKAPキナーゼ」という。)、基質タンパ
ク質及びATPを反応させる; ii)試験物質非存在下におけるMAPKAPキナーゼ
の基質タンパク質リン酸化活性に対する、試験物質存在
下におけるMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リン
酸化活性の減少の程度を測定する、を含む方法、(2)
基質タンパク質が野生型熱ショックタンパク質27であ
る、(1)に記載の方法、(3)がん細胞の脱分化を抑
制する物質を探索する方法であって、下記工程のi)乃
至iii): i)マイトジェン−アクチベイティッド・プロテイン・
キナーゼ−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ
(mitogen‐activated protei
n kinase‐avtivaetd protei
n kinase:以下、「MAPKAPキナーゼ」と
いう。)遺伝子を動物細胞へ導入し、MAPKAPキナ
ーゼを発現させる; ii)試験物質存在下又は非存在下で、i)で得られ
た、MAPKAPキナーゼ発現細胞を培養する; iii)試験物質非存在下における、i)で得られた細
胞の保有するMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リ
ン酸化活性に対する、試験物質存在下における、i)で
得られた細胞の保有するMAPKAPキナーゼの基質タ
ンパク質リン酸化活性の減少の程度を測定する、を含む
方法、(4)動物細胞が、野生型熱ショックタンパク質
27遺伝子又はタグ融合型熱ショックタンパク質27遺
伝子を導入された細胞である、(3)に記載の方法、
(5)基質タンパク質が、野生型熱ショックタンパク質
27又はタグ融合型熱ショックタンパク質27である、
(3)又は(4)に記載の方法、(6)がん細胞の脱分
化を抑制する物質を探索する方法であって、下記工程の
i)乃至iii): i)野生型熱ショックタンパク質27遺伝子を動物細胞
へ導入し、野生型熱ショックタンパク質27を発現させ
る; ii)試験物質存在下又は非存在下で、i)で得られ
た、野生型熱ショックタンパク質27発現細胞を培養す
る; iii)試験物質非存在下における、i)で得られた細
胞の保有する野生型熱ショックタンパク質27のリン酸
化度に対する、試験物質存在下における、i)で得られ
た細胞の保有する野生型熱ショックタンパク質27のリ
ン酸化度減少の程度を測定する、を含む方法、(7)野
生型熱ショックタンパク質27のリン酸化がマイトジェ
ン−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ−アク
チベイティッド・プロテイン・キナーゼ(mitoge
n‐activated protein kinas
e‐avtivaetd protein kinas
e)によって触媒される、(6)に記載の方法、(8)
動物細胞が、哺乳動物の消化器がん由来の腺がん細胞で
ある、(6)又は(7)に記載の方法、(9)がん細胞
の脱分化が、細胞間相互作用の喪失及び/又は未分化型
の細胞への形態変化である、(1)乃至(8)のいずれ
か一つに記載の方法、及び、(10)(1)乃至(9)
のいずれか一つに記載の方法により得られる、がん細胞
の脱分化を抑制する物質、に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明において、MAPKAPキ
ナーゼは、通常は基質タンパク質リン酸化活性を発現し
ない不活性な状態にあるが、リン酸化等により活性化を
受けることにより基質タンパク質リン酸化活性を発現す
る状態に変化し得る正常なMAPKAPキナーゼを意味
する。
【0008】また、本発明において、野生型PI3Kと
は、通常はホスファチジルイノシトール−4,5−ニリ
ン酸(phosphatidylinositol−
4,5−diphosphate:以下、「PI45P
2」という。)リン酸化活性を発現しない不活性な状態
にあるが、チロシンリン酸化された他のタンパク質が結
合して活性化を受けること等によりPI45P2リン酸
化活性を発現する状態に変化し得る正常なPI3Kを意
味する。同様に、野生型MKK6とは、通常は基質タン
パク質リン酸化活性を発現しない状態にあるが、リン酸
化等により活性化を受けることにより基質タンパク質リ
ン酸化活性を発現する状態に変化し得る正常なMKK6
を意味する。同様に、野生型HSP27とは、通常は基
質タンパク質リン酸化活性を発現しない不活性な状態に
あるが、リン酸化等により活性化を受けることにより基
質タンパク質リン酸化活性を発現する状態に変化し得る
正常なHSP27を意味する。
【0009】さらに、本発明において、活性変異型PI
3Kとは、Kobayashiらの方法(Kobayashi, e
t al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 96, 4874-487
9(1999)参照)又はKitaらの方法(Kita,Y., et a
l., J. Cell Sci., 111, 907-915(1998)参照)等により
得られる、恒常的にPI45P2リン酸化活性を発現す
るPI3K変異体を意味する。同様に、活性変異型MK
K6とは、野生型MKK6のリン酸化部位を酸性アミノ
酸で置換することにより得られる、恒常的に基質タンパ
ク質リン酸化活性を発現するMKK6変異体を意味す
る。同様に、活性変異型HSP27とは、野生型HSP
27のリン酸化部位を酸性アミノ酸で置換することによ
り得られる、恒常的に基質タンパク質リン酸化活性を発
現するHSP27変異体を意味する。
【0010】また、本発明において、MAPKAPキナ
ーゼのDN変異体とは、MAPKAPキナーゼのATP
結合部位の塩基性アミノ酸を中性疎水性アミノ酸で変換
することにより得られる、基質タンパク質リン酸化活性
を発現しないMAPKAPキナーゼ変異体であり、MA
PKAPキナーゼを発現する細胞へトランスフェクショ
ンすることにより該細胞が内在性に保有するMAPKA
Pキナーゼの基質リン酸化活性を有意に抑制する変異体
を意味する。
【0011】さらに、本発明において、がん細胞の脱分
化とは、細胞間相互作用を有するがん細胞が細胞間相互
作用を完全に又は部分的に喪失することを意味する。が
ん細胞の脱分化は、例えば、がん細胞の形態変化等とし
て観察又は確認することができる。細胞の形態変化を観
察する場合、具体的には、分化型のがん細胞は器壁に付
着した角張った形態をとり、未分化型のがん細胞は器壁
に付着せず丸型の形態をとる。本発明においては、その
ような分化型の形態をとるがん細胞が未分化型の形態又
はより未分化型に近い形態へ変化することを、がん細胞
の脱分化の意味に包含する。
【0012】がん細胞の形態変化は顕微鏡下で観察する
ことができ、そのような観察には蛍光顕微鏡が好適に用
いられる。蛍光顕微鏡で細胞を観察する場合、対象の細
胞に予め蛍光タンパク質を発現させておく。蛍光タンパ
ク質としては公知のものを広く使用することができ、G
reen Fluorescence Protein
等を例示することができる。該タンパク質をコードした
ヌクレオチドを含む組換えベクターpEGFP−C1
(Clontech社製)を予め細胞へ導入することに
より、所望の観察が可能になる。
【0013】このようながん細胞の脱分化は、例えば、
ヒト大腸がん由来の腺がん細胞HCC2998株(Stin
son, S. F., et al., Anticancer Res., 12, 1035-1053
(1992)参照)、ヒト胃がん由来の腺がん細胞MKN45
株(Motoyama, T., et al.,Acta Pathol. Jpn., 36, 65
-83(1986):特開2000−355549号公報参
照)、同じくMKN74株(Motoyama, T., et al., Ac
ta Pathol. Jpn., 36, 65-83(1986)参照)等において、
活性変異型PI3K又は活性型MKK6を発現させるこ
とにより、器壁に付着した角張った形態から丸い、印鑑
細胞がん様の形態への変化として観察することが可能で
ある。
【0014】また、本発明におけるがん細胞の脱分化を
確認する形態観察以外の方法としては、例えば、分化型
又は未分化型がん細胞に特徴的な表現形質又はマーカー
を指標として、該指標の量的又は質的な変化を調べる方
法等を挙げることができる。具体的には、分化型のがん
細胞に特徴的な指標を測定し、該測定値が対照群と比較
して有意に減少した場合に当該細胞が脱分化したものと
みなすことができる。同様に、未分化型のがん細胞に特
徴的な指標を測定し、該測定値が対照群と比較して有意
に増加した場合に当該細胞が脱分化したものとみなすこ
とができる。そのような指標としては、公知のものが広
く使用できる。
【0015】以下、本発明の提供するがん細胞の脱分化
を抑制する物質の探索方法について述べる。 1)MAPKAPキナーゼタンパク質を用いた探索方法
(その1) MAPKAPキナーゼの有するリン酸化活性に対する試
験物質の阻害の程度を測定することにより、該阻害活性
を有する試験物質をがん細胞の脱分化抑制物質として選
抜することができる。具体的には、基質であるATPの
消費を指標としてMAPKAPキナーゼのリン酸化活性
を試験物質存在下又は非存在下で測定し、両者の測定値
より該試験物質の有するMAPKAPキナーゼ阻害活性
を算出することができる。ATPの消費は、公知の標識
物質の測定法又は分析化学的的手法により容易に測定す
ることができる。
【0016】MAPKAPキナーゼ(Sithanandam, G.,
et al., Mol. Cel. Biol., 16, 868-876(1996)参照)
画分としては、例えば、公知のMAPKAPキナーゼ遺
伝子配列(Genbank Accession No. NM 004635)に基
き、PCR法又はRT−PCR法等により当該遺伝子又
はcDNAをクローニングし、該遺伝子又はcDNAを
公知の方法で動物細胞をへ導入してMAPKAPキナー
ゼを発現させた細胞の破砕物、その抽出物、それらの粗
精製画分や部分精製画分等を使用することができる。動
物細胞としては、通常組換えタンパク質の製造に使用さ
れる細胞であれば特に限定されるものではないが、例え
ば、CHO細胞、COS細胞、COS−7細胞、297
T細胞等を挙げることができる。また、MAPKAPキ
ナーゼは、遺伝子組換え型及び天然分離型のいずれであ
ってもよい。
【0017】ATPは、標識体及び非標識体のいずれで
あってもよく、それぞれ市販のものを広く使用すること
ができる。標識ATPとしては、32P標識体が好適に使
用され得る。32P標識ATPとしては、[γ−32P]A
TP(アマシャム ファルマシア バイオテク(株)
製:第一化学(株)製)等を例示することができる。32
Pのβ線放射能は液体シンチレーションカウンターを用
いて測定することができる。 2)MAPKAPキナーゼタンパク質を用いた探索方法
(その1) MAPKAPキナーゼによる基質タンパク質へのリン基
酸への取り込みに対する試験物質の阻害の程度を測定す
ることにより、該阻害活性を有する試験物質をがん細胞
の脱分化抑制物質として選抜することができる。具体的
には、MAPKAPキナーゼ、基質タンパク質及び32
標識したATPを試験物質存在下又は非存在下で反応さ
せた後、基質タンパク質へ取り込まれた32Pを測定し、
試験物質存在下及び非存在下の測定値より該試験物質の
有するMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リン酸化
阻害活性を算出することができる。
【0018】MAPKAPキナーゼ(Sithanandam, G.,
et al., Mol. Cel. Biol., 16, 868-876(1996)参照)
は、例えば、公知のMAPKAPキナーゼ遺伝子配列
(Genbank Accession No. NM 004635)に基き、PCR
法又はRT−PCR法等により当該遺伝子又はcDNA
をクローニングし、該遺伝子又はcDNAを公知の方法
で動物細胞をへ導入してMAPKAPキナーゼを発現さ
せた細胞より常法に従って抽出、精製又は単離すること
ができる。動物細胞としては、通常組換えタンパク質の
製造に使用される細胞であれば特に限定されるものでは
ないが、例えば、CHO細胞、COS細胞、COS−7
細胞、297T細胞等を挙げることができる。また、M
APKAPキナーゼは、遺伝子組換え型及び天然分離型
のいずれであってもよく、粗画分、部分精製画分及び精
製標品のいずれであってもよい。
【0019】基質タンパク質としては、MAPKAPキ
ナーゼのリン酸化基質であることが知られているタンパ
ク質であれば特に限定されないが、野生型HPS27、
アルファB−クリスタリン(alphaB−cryst
allin:Kato, K., et al., J. Biol. Chem., 273,
28346-28354(1998)参照)、p90 S6キナーゼ(Al
essi, D. R., et al., FEBS Letters, 399, 333-338(19
96)参照)、LSP1(Huang, C. K., et al., J. Bio
l. Chem., 272, 17-19(1997)参照)等を例示することが
でき、好適な基質タンパク質は野生型HSP27であ
る。
【0020】基質タンパク質は、基質タンパク質をコー
ドした公知のヌクレオチド配列に基き、PCR法又はR
T−PCR法等により当該遺伝子又はcDNAをクロー
ニングし、該遺伝子又はcDNAを公知の方法で動物細
胞へ導入して当該基質タンパク質を発現させ、細胞培養
物より常法に従って所望の基質タンパク質を精製単離す
ることができる。動物細胞としては、通常組換えタンパ
ク質の製造に使用される細胞であれば特に限定されるも
のではないが、例えば、CHO細胞、COS細胞、CO
S−7細胞、297T細胞等を挙げることができる。ま
た、基質タンパク質は、遺伝子組換え型及び天然分離型
のいずれであってもよく、粗画分、部分精製画分及び精
製標品のいずれであってもよい。好適な基質タンパク質
である野生型HSP27を本探索方法に使用する場合、
例えば、公知のヒトHSP27遺伝子配列(Genbank Ac
cession No. XM 050410)に基き、上述の方法により所
望の野生型HSP27を得ることができる。
【0021】反応液中の基質タンパク質は、免疫沈降や
公知のタンパク質精製手段により、抽出又は分離するこ
とができる。基質タンパク質を免疫沈降するのに用いる
抗体若しくは抗血清は、該基質タンパク質で免疫した動
物の血清として、又は、該血清から常法に従って精製さ
れた抗体として得ることができる。好適な基質タンパク
質である野生型HSP27の免疫沈降には、上述のよう
な方法により得られる抗体及び抗血清に加え、市販の抗
野生型HSP27抗体(Santa Cruz Biotechnology In
c.社製)又は抗リン酸化HSP27抗体(Cell Signali
ng ThechnologyInc.社製)等を使用することができる。
【0022】ATPは、標識体及び非標識体のいずれで
あってもよく、それぞれ市販のものを広く使用すること
ができる。標識ATPとしては、32P標識体が好適に使
用され得る。32P標識ATPとしては、[γ−32P]A
TP(アマシャム ファルマシア バイオテク(株)
製:第一化学(株)製)等を例示することができる。
【0023】免疫沈降させた基質タンパク質画分へ取り
込まれた32Pのβ線放射能は、液体シンチレーションカ
ウンターを用いて測定するか、又は、その免疫沈降画分
をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した
後、イメージアナライザー若しくはオートラジオグラフ
ィー等により基質タンパク質に対応するシグナルを測定
することができる。
【0024】また、リン酸化された基質タンパク質と特
異的に結合するモノクローナル抗体を用いるエンザイム
イムノアッセイ法やELISA法等により、反応終了液
又は免疫沈降画分中に存在する、リン酸化された基質タ
ンパク質を定量することが可能である。
【0025】さらに、免疫沈降により得られる画分をS
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した後、リ
ン酸化された基質タンパク質と特異的に結合するモノク
ローナル抗体を用いるイムノブロッティング(immu
noblotting)法により、リン酸化された基質
タンパク質を定量することが可能である。
【0026】これらの、リン酸化された基質タンパク質
と特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる測定法
は、非標識ATPを使用する場合に好適である。
【0027】好適な基質タンパク質である野生型HSP
27を本探索方法に用いる場合、市販の抗リン酸化HS
P27抗体(Cell Signaling Thechnology Inc.社製)
等をリン酸化HSP27の定量に使用することができ
る。 3)MAPKAPキナーゼ発現細胞を用いた探索方法
(その2) MAPKAPキナーゼ発現細胞におけるMAPKAPキ
ナーゼのシグナル伝達に対する試験物質の阻害の程度を
測定することにより、該阻害活性を有する試験物質をが
ん細胞の脱分化抑制物質として選抜することができる。
【0028】MAPKAPキナーゼのシグナル伝達の阻
害としては、がん細胞の脱分化に関与し且つMAPKA
Pキナーゼのシグナル伝達系に属する因子間におけるシ
グナル伝達の阻害であればよく、例えば、MAPKAP
キナーゼの基質タンパク質のリン酸化活性の阻害等を挙
げることができる。
【0029】具体的には、例えば、32P標識した正リン
酸存在下、且つ試験物質存在下又は非存在下で、MAP
KAPキナーゼ及び基質タンパク質を発現している細胞
を培養し、該培養物から基質タンパク質を分離し、該基
質タンパク質へ取り込まれた 32Pのβ線放射能を測定
し、試験物質存在下及び非存在下の測定値より該試験物
質の有するMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リン
酸化阻害活性を算出することができる。
【0030】また、試験物質存在下又は非存在下で、M
APKAPキナーゼ及び基質タンパク質を発現している
細胞を培養し、該培養物から基質タンパク質を分離し、
リン酸化された基質タンパク質の量を測定し、試験物質
存在下及び非存在下の測定値より該試験物質の有するM
APKAPキナーゼの基質タンパク質リン酸化阻害活性
を算出することができる。
【0031】MAPKAPキナーゼ発現細胞は、例え
ば、公知のMAPKAPキナーゼ遺伝子配列(Genbank
Accession No. NM 004635)に基き、PCR法又はRT
−PCR法等により当該遺伝子又はcDNAをクローニ
ングし、該遺伝子又はcDNAを動物細胞用の発現ベク
ターへ挿入することにより得られる組換えベクターで動
物細胞を形質転換するか又は該組換えベクターを動物細
胞へトランスフェクションすることにより得ることがで
きる。必要に応じて、MAPKAPキナーゼ発現細胞を
選抜してもよい。動物細胞としては、通常組換えタンパ
ク質の発現に使用される細胞であれば特に限定されるも
のではないが、例えば、CHO細胞、COS細胞、CO
S−7細胞、297T細胞等を挙げることができる。
【0032】また、内在性にMAPKAPキナーゼを発
現している動物細胞も、本探索方法のMAPKAPキナ
ーゼ発現細胞として使用することができる。そのような
細胞として、例えば、ヒト大腸がん由来の腺がん細胞H
CC2998株(Stinson, S. F., et al., Anticancer
Res., 12, 1035-1054(1992)参照)、ヒト胃がん由来の
腺がん細胞MKN45株(Motoyama, T., et al., Acta
Pathol. Jpn., 36, 65-83(1986):特開2000−35
5549号公報参照)、同じくMKN74株(Motoyam
a, T., et al., Acta Pathol. Jpn., 36, 65-83(1986)
参照)等を例示することができる。MKN45株及びM
KN74株は、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団
ヒューマンサイエンス研究資源バンクより、それぞれ、
番号JCRB0254、番号JCRB0255として入
手することができる。
【0033】MAPKAPキナーゼの基質タンパク質と
しては、動物細胞の内在性のもの及び遺伝子導入された
もののいずれであってもよく、野生型HPS27、タグ
融合型HSP27、アルファB−クリスタリン(alp
haB−crystallin:Kato, K., et al., J.
Biol. Chem., 273, 28346-28354(1998)参照)、p90
S6キナーゼ(Alessi, D. R., et al., FEBS Letter
s, 399, 333-338(1996)参照)、LSP1(Huang, C.
K., et al., J. Biol. Chem., 272, 17-19(1997)参照)
等を例示することができ、好適な基質タンパク質は野生
型HSP27及びタグ融合型HSP27である。また、
基質タンパク質遺伝子が遺伝子導入されたものである場
合、MAPKAPキナーゼ及び基質タンパク質遺伝子又
はそのcDNAを動物細胞へ共トランスフェクションす
る。
【0034】タグ融合型HSP27のタグとしては、例
えば、市販抗体9E10(Santa Cruz Biotechnology I
nc社製)のエピトープ(以下、「mycタグ」とい
う。:Kita,Y., et al., J. Cell Sci., 111, 907-915
(1998):Kobayashi, et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
U.S.A., 96, 4874-4879(1999)参照)、赤血球凝集素
(ヘマグルチニン:hemagglutinin)タグ、FLAGタ
グ等の公知のタグを使用することができ、それらを野生
型HSP27と遺伝子組換え又は化学的手法により融合
することによりタグ融合型HSP27を得ることができ
る。
【0035】反応液中の基質タンパク質は、免疫沈降や
公知のタンパク質精製手段により、抽出又は分離するこ
とができる。基質タンパク質を免疫沈降するのに用いる
抗体若しくは抗血清は、該基質タンパク質で免疫した動
物の血清として、又は、該血清から常法に従って精製さ
れた抗体として得ることができる。好適な基質タンパク
質であるHSP27の免疫沈降には、上述のような方法
により得られる抗体及び抗血清に加え、抗HSP27抗
体(Santa Cruz Biotechnology Inc.社製)又は抗リン
酸化HSP27抗体(Cell Signaling Thechnology In
c.社製)等の市販の抗体を使用することができる。同様
に、好適な基質タンパク質であるタグ融合型HSP27
の免疫沈降には、上述の抗HSP抗体、抗リン酸化HS
P27抗体に加え、各タグと結合する抗体を使用するこ
とができる。例えば、mycタグ融合型HSP27の免
疫沈降には、9E10抗体(Santa Cruz Biotechnology
Inc.社製)等を使用することができる。
【0036】32P標識した正リン酸は、市販のもの(ア
マシャム ファルマシア バイオテク(株)製、第一化
学(株)製等)を広く使用することができる。
【0037】免疫沈降させた基質タンパク質へ取り込ま
れた32Pのβ線放射能は、液体シンチレーションカウン
ターを用いて測定するか、又は、その免疫沈降画分をS
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した後、ジ
アナライザー若しくはオートラジオグラフィー等により
基質タンパク質に対応するシグナルを測定することがで
きる。
【0038】また、本探索方法を32P標識した正リン酸
を用いずに行うことも可能である。その場合、32P標識
した正リン酸非存在下でMAPKAPキナーゼ発現細胞
を上述の通り培養し、該培養物の破砕物から基質タンパ
ク質及び/又はリン酸化された基質タンパク質を分離
し、リン酸化された基質タンパク質を定量する。その定
量は、例えば、リン酸化された基質タンパク質と特異的
に結合するモノクローナル抗体を用いるエンザイムイム
ノアッセイ法やELISA法等により、培養物の破砕物
を免疫沈降した画分中に存在するリン酸化された基質タ
ンパク質の量として測定することが可能である。また、
免疫沈降により得られる画分をSDS−ポリアクリルア
ミドゲル電気泳動に供した後、リン酸化された基質タン
パク質と特異的に結合するモノクローナル抗体を用いる
イムノブロッティング法により、リン酸化された基質タ
ンパク質を定量することも可能である。好適な基質タン
パク質である野生型HSP27を本探索方法に用いる場
合、市販の抗リン酸化HSP27抗体(Cell Signaling
Thechnology Inc.社製)等をリン酸化HSP27の定
量に使用することができる。同様に、好適な基質タンパ
ク質であるタグ融合型HSP27を本探索方法に用いる
場合、市販の9E10抗体(Santa Cruz Biotechnology
Inc.社製)等をリン酸化されたタグ融合型HSP27
の定量に使用することができる。 4)HSP27のリン酸化を指標とする探索方法 HSP27発現細胞におけるHSP27のリン酸化に対
する試験物質の阻害の程度を測定することにより、該阻
害活性を有する試験物質をがん細胞の脱分化抑制物質と
して選抜することができる。
【0039】具体的には、野生型HSP27発現細胞又
はタグ融合型HSP27発現細胞を 32P標識した正リン
酸存在下、且つ試験物質存在下又は非存在下で培養し、
野生型HSP27又はタグ融合型HSP27へ取り込ま
れた32Pの放射能を測定し、試験物質存在下及び非存在
下の測定値より該試験物質の有する野生型HSP27又
はタグ融合型HSP27リン酸化阻害活性を算出するこ
とができる。
【0040】また、試験物質存在下又は非存在下で、野
生型HSP27発現細胞を培養し、該培養物から野生型
HSP27を分離し、リン酸化されたHSP27の量を
測定し、試験物質存在下及び非存在下の測定値より該試
験物質の有する野生型HSP27リン酸化阻害活性を算
出することができる。
【0041】野生型HSP27発現細胞は、例えば、公
知のヒトHSP27遺伝子配列(Genbank Accession N
o. XM 050410)に基き、PCR法又はRT−PCR法等
により当該遺伝子又はcDNAをクローニングし、該遺
伝子又はcDNAを動物細胞用の発現ベクターへ挿入す
ることにより得られる組換えベクターで動物細胞を形質
転換するか又は該組換えベクターを動物細胞へトランス
フェクションすることにより得ることができる。必要に
応じて、野生型HSP27発現細胞を選抜してもよい。
また、内在性に野生型HSP27を発現している動物細
胞も、本探索方法に使用することができる、そのような
動物細胞として、ヒト大腸がん由来の腺がん細胞HCC
2998株(Stinson, S. F., et al., Anticancer Re
s., 12, 1035-1054(1992)参照)、ヒト胃がん由来の腺
がん細胞MKN45株(Motoyama,T., et al., Acta Pa
thol. Jpn., 36, 65-83(1986):特開2000−355
549号公報参照)、同じくMKN74株(Motoyama,
T., et al., Acta Pathol. Jpn., 36, 65-83(1986)参
照)等を例示することができる。MKN45株及びMK
N74株は、財団法人ヒューマンサイエンス振興財団ヒ
ューマンサイエンス研究資源バンクより、それぞれ、番
号JCRB0254、番号JCRB0255として入手
することができる。
【0042】タグ融合型HSP27発現細胞は、例え
ば、公知のヒトHSP27遺伝子配列及び各タグをコー
ドするDNAの配列に基いて融合遺伝子を作製し、該融
合遺伝子又はcDNAを動物細胞用の発現ベクターへ挿
入することにより得られる組換えベクターで動物細胞を
形質転換するか又は該組換えベクターを動物細胞へトラ
ンスフェクションすることにより取得することができ
る。必要に応じて、タグ融合型HSP27発現細胞を選
抜してもよい。
【0043】野生型HSP27又はタグ融合型HSP2
7を組換え体として発現させるのに用いる動物細胞とし
ては、通常組換えタンパク質の製造に使用される細胞で
あれば特に限定されるものではないが、例えば、CHO
細胞、COS細胞、COS−7細胞、297T細胞等を
挙げることができる。
【0044】反応液中の野生型HSP27又はタグ融合
型HSP27は、免疫沈降や公知のタンパク質精製手段
により、抽出又は分離することができる。野生型HSP
27を免疫沈降するのに用いる抗体若しくは抗血清は、
野生型HSP27で免疫した動物の血清として、又は、
該血清から常法に従って精製された抗体として得ること
ができる。また、市販の抗野生型HSP27抗体(Sant
a Cruz BiotechnologyInc.社製)又は抗リン酸化HSP
27抗体(Cell Signaling Thechnology Inc.社製)等
を使用することもできる。同様に、タグ融合型HSP2
7の免疫沈降には、上述の抗野生型HSP27抗体、抗
リン酸化HSP27抗体等に加え、各タグと結合する抗
体を使用することができる。例えば、mycタグ融合型
HSP27の免疫沈降には、9E10抗体(Santa Cruz
Biotechnology Inc.社製)等を使用することができ
る。
【0045】32P標識した正リン酸は、市販のもの(ア
マシャム ファルマシア バイオテク(株)製、第一化
学(株)製等)を広く使用することができる。
【0046】免疫沈降させた基質タンパク質へ取り込ま
れた32Pのβ線放射能は、液体シンチレーションカウン
ターを用いて測定するか、又は、その免疫沈降画分をS
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供した後、イ
メージアナライザー若しくはオートラジオグラフィー等
により基質タンパク質に対応するシグナルを測定するこ
とができる。
【0047】また、本探索方法を32P標識した正リン酸
を用いずに行うことも可能である。その場合、32P標識
した正リン酸非存在下で、野生型HSP27発現細胞を
上述の通り培養し、該培養物の破砕物から野生型HSP
27及び/又はリン酸化された野生型HSP27を分離
し、リン酸化された野生型HSP27を定量する。その
定量は、例えば、リン酸化された野生型HSP27と特
異的に結合するモノクローナル抗体を用いるエンザイム
イムノアッセイ法やELISA法等により、培養終了物
又はその破砕物の免疫沈降画分中に存在するリン酸化さ
れた野生型HSP27の量として測定することが可能で
ある。また、免疫沈降により得られる画分をSDS−ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動に供した後、リン酸化さ
れた基質タンパク質と特異的に結合するモノクローナル
抗体を用いるイムノブロッティング法により、リン酸化
された野生型HSP27を定量することも可能である。
そのような測定には、市販の抗リン酸化HSP27抗体
(Cell Signaling Thechnology Inc.社製)等を使用す
ることができる。上述の1)乃至4)に加え、本発明
は、MAPKAPキナーゼ又は野生型HSP27の遺伝
子発現を抑制又は阻害する物質の探索方法をも提供す
る。そのような方法としては、MAPKAPキナーゼ遺
伝子又は野生型HSP27遺伝子の転写調節領域を用い
たリポーター遺伝子アッセイ法、該転写調節領域を含む
DNA及び該DNAに結合する転写調節因子タンパク質
を用いた結合アッセイ法等を例示することができる。
【0048】本発明の提供する探索方法に供する試験物
質は、例えば、精製単離された低分子化合物、ペプチド
及びヌクレオチド、並びにそれらの混合物、微生物培養
物、植物又は動物に由来する各種の画分及びそれらの抽
出物等を挙げることができる。
【0049】以下、本発明の提供するがん細胞脱分化抑
制物質について述べる。
【0050】本発明において、がん細胞の脱分化抑制物
質は、上述のような本発明の探索方法において阻害活性
が測定され得る物質であれば特に限定されるものではな
い。がん細胞の脱分化抑制物質には、MAPKAPキナ
ーゼ又は野生型HSP27と結合する抗体、すなわち抗
MAPKAPキナーゼ抗体又は抗野生型HSP27抗体
であってもよく、そのような抗体は好適にはMAPKA
Pキナーゼ又は野生型HSP27の活性中和抗体であ
り、より好適にはヒト化抗体である。また、MAPKA
PキナーゼのDN変異体及びHSP27のDN変異体
も、本発明のがん細胞の脱分化抑制物質に包含される。
【0051】本発明の提供するがん細胞の脱分化抑制物
質が実際にがん細胞の脱分化を抑制することは、該物質
が、分化型がん細胞の未分化型形態への変化を抑制する
ことを顕微鏡下で観察すること等により、確認すること
ができる。そのような確認に使用する分化型がん細胞と
しては、哺乳動物の消化器がんに由来する分化型の細胞
であれば特に限定されるものではない。哺乳動物として
は、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ブタ
等を例示することができ、好適にはヒトである。がん細
胞の由来する消化器がんとしては、特に限定されるもの
ではないが、例えば、食道がん、胃がん、大腸がん、直
腸がん等であり、好適には胃がん及び大腸がんである。
そのようながん由来の細胞として、ヒト大腸がん由来の
腺がん細胞HCC2998株(Stinson, S. F., et a
l., Anticancer Res., 12, 1035-1054(1992)参照)、ヒ
ト胃がん由来の腺がん細胞MKN45株(Motoyama,
T., etal., Acta Pathol. Jpn., 36, 65-83(1986):特
開2000−355549号公報参照)、同じくMKN
74株(Motoyama, T., et al., Acta Pathol. Jpn., 3
6, 65-83(1986)参照)等を例示することができる。MK
N45株及びMKN74株は、財団法人ヒューマンサイ
エンス振興財団ヒューマンサイエンス研究資源バンクよ
り、それぞれ、番号JCRB0254、番号JCRB0
255として入手することができる。これらの細胞は器
壁に付着して角張った形態をとる分化型のがん細胞であ
るが、活性変異型PI3K、活性変異型MKK6又は活
性変異型HSP27を発現させることにより、器壁より
脱離して丸い印環細胞がん様の未分化型形態へ変化す
る。上述の通り、本発明においては、そのようながん細
胞の印環細胞がん様の形態への変化も、がん細胞の脱分
化の意味に包含する。
【0052】本発明のがん細胞脱分化抑制物質は、ヒト
又はヒト以外の哺乳動物の各種がんの予防又は治療、が
ん細胞の悪性化及び/又は脱分化の阻害等の医薬用途に
好適に使用することができる。該物質の適応は、哺乳動
物が罹患するがんであれば特に限定されるものではない
が、例えば、食道がん、胃がん、大腸がん、直腸がん等
の消化器系のがんを挙げることができる。
【0053】また、本発明のがん細胞脱分化抑制物質の
投与形態は特に限定されるものではなく、製剤、年齢、
性別、がんの種類、がんの進行の程度等に応じて適宜選
択され得る。例えば、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロ
ップ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、カプセル剤等は
経口投与され得る。注射剤は単独で若しくはグルコー
ス、アミノ酸等の補液との混合液として、又はポリオキ
シエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等と混和したエ
マルジョンとして、静脈内投与、筋肉内投与、皮内投
与、皮下投与及び/又は腹腔内投与され得る。坐剤は直
腸内投与され得る。
【0054】これらの各種製剤は、主薬に加え、賦形
剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、溶解剤、矯味矯臭剤、コ
ーティング剤等、当該分野で公知の補助剤を用いて製造
することができる。
【0055】錠剤の成形に際しては、担体として当該分
野で公知のもの、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウ
ム、グルコース、尿素、澱粉、炭酸カルシウム、カオリ
ン、結晶セルロース、珪酸等の賦形剤、水、エタノー
ル、プロパノール、単シロップ、グルコース液、澱粉
液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラ
ック、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニル
ピロリドン等の結合剤、乾燥澱粉、アルギン酸ナトリウ
ム、寒天末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸
カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エス
テル類、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグ
リセリド、澱粉、乳糖等の崩壊剤、白糖、ステアリン、
カカオバター、水素添加油等の崩壊抑制剤、第四級アン
モニウム塩基、ラウリル硫酸ナトリウム等の吸収促進
剤、グリセリン、澱粉等の保湿剤、澱粉、乳糖、カオリ
ン、ベントナイト、コロイド状珪酸等の吸着剤、精製タ
ルク、ステアリン酸塩、硼酸末、ポリエチレングリコー
ル等の滑沢剤等を使用することができる。錠剤の場合、
必要に応じ、通常の剤皮を施した錠剤、例えば、糖衣
錠、ゼラチン被包錠、腸溶被錠、フィルムコーティング
錠、二重錠、多重錠等とすることができる。
【0056】丸剤の成形に際しては、担体として当該分
野で公知のもの、例えば、グルコース、乳糖、澱粉、カ
カオ脂、硬化植物油、カオリン、タルク等の賦形剤、ア
ラビアゴム末、トラガント末、ゼラチン、エタノール等
の結合剤、ラミナラン、寒天等の崩壊剤を使用すること
ができる。
【0057】坐剤の成形に際しては、担体として当該分
野で公知のもの、例えば、ポリエチレングリコール、カ
カオ脂、高級アルコール、高級アルコールのエステル
類、ゼラチン、半合成グリセライド等を使用することが
できる。
【0058】注射剤が液剤、乳剤又は懸濁剤である場
合、滅菌され且つ血液と等張であることが好ましく、こ
れら液剤、乳剤及び懸濁剤の成形に際しては、希釈剤と
して当該分野で公知のもの、例えば、水、エチルアルコ
ール、プロピレングリコール、エポキシ化イソステアリ
ルアルコール、ポリオキシ化イソステアリルアルコー
ル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等
を使用することができる。注射剤を血液と等張にするた
めに充分な量の食塩、グルコース、グリセリン等を含有
せしめてもよく、通常の溶解補助剤、緩衝剤、無痛化剤
糖を含有せしめてもよい。
【0059】これらの各種製剤には、必要に応じ、着色
剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤、他の薬剤等を含有
せしめてもよい。
【0060】これらの各種製剤中に含まれる、本発明の
がん細胞の脱分化抑制物質の量は、剤形、投与方法等に
依存するが、通常1乃至70重量%であり、好ましくは
1乃至30重量%である。
【0061】、本発明のがん細胞の脱分化抑制物質の投
与量は、該物質の構造や物理化学的諸性質、がんの種
類、がんの進行度、年齢、体重、投与方法、剤形等に依
存するが特に限定されるものではない。
【0062】本発明のがん細胞の脱分化抑制物質を含有
する医薬の投与回数は、剤形、疾患の種類、疾患の程
度、体重等に依存するが、特に限定されるものではな
い。
【0063】また、本発明のがん細胞の脱分化抑制物質
が、抗MAPKAPキナーゼ抗体、抗野生型HSP2
7、MAPKAPキナーゼのDN変異体、HSP27の
DN変異体等のタンパク質又はそれらをコードしたヌク
レオチドである場合、医薬としてヒト又はヒト以外の哺
乳動物へ投与され得るのに加え、それらを標的のがん組
織又はがん細胞へ局所的に導入する方法によりヒト又は
ヒト以外の哺乳動物へ適用することができる。
【0064】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に
説明するが、本発明はこれらに限定されるものではな
い。 実施例1.活性変異型PI3K発現細胞の調製 1)組換えベクターの作製 Kitaら又はKobayashiらの方法(Kita,Y.,
et al., J. Cell Sci., 111, 907-915(1998):Kobayas
hi, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.,96, 4874
-4879(1999)参照)により、PI3KをコードしたDN
Aを活性変異型であるBD110型へ変異させ、pMI
Kneoベクター(Takayanagi, J., Biochem. Mol. Bi
ol. Int. 39, 721-728(1996)参照)へ挿入した。 2)HCC2998細胞の培養 HCC2998細胞を10%の牛胎児血清を含むRPM
I1640培地で培養した後、血清を含まないダルベッ
コ(Dulbecco)改変最小培地に培地交換した。 3)トランスフェクション トランスフェクションはリン酸カルシウム法で行った。
【0065】1)で調製した組換えベクター DNA5
μgを含む小容量の水溶液に終濃度250mMの塩化カ
ルシウムを加え、水を加えて50μlとした後、等張H
EPES緩衝液(組成:50mM HEPES、280
mM NaCl、1.5mMNa2HPO4 :pH7.
05)50μlを加え、20分間室温にて保温した。こ
の反応液を、HCC2998細胞を培養した直径3cm
のウェルへ添加し、4時間保温した。培地を除去した
後、20%グリセロールを含むダルベッコ改変最小培地
を加え、3分間室温にて保温した後、培地を10%の牛
胎児血清を含むRPMI1640培地と交換した。30
乃至60分間保温した後に細胞を植え継ぎ、2日間培養
した。 4)蛍光顕微鏡下での細胞の観察 予め、蛍光タンパク質Green Fluoresce
nce ProteinをコードするpEGFP−C1
(Clontech社製)を、活性変異型PI3Kと共
トランスフェクションしておき、励起波長460乃至4
90nmのフィルターを用い、蛍光を発している細胞の
形態を観察した。対照として、pEGFP−C1のみを
トランスフェクションしたHCC2998細胞の形態を
同様に観察した。
【0066】HCC2998細胞は器壁に細胞が接して
いるため角張った形態を示す(図1の右下パネル及び表
1参照)が、活性変異型PI3Kをトランスフェクショ
ンしたHCC2998細胞の37.3%は丸い形態を示
した(図1の左上パネル及び表1参照)。そのような形
態変化を示した細胞では、隣接する細胞との細胞間相互
作用を喪失していることが示唆された。また、該形態変
化は、p38MAPキナーゼ阻害剤であるSB2035
80(Sigma社製)を培地へ添加することにより阻
害された。 実施例2.活性変異型MKK6発現細胞の調製 1)組換えベクターの作製 Raingeaudらの方法(Raingeaud, J., et al.,
Mol. Cell. Biol, 16, 1247-1255(1996) 参照)によ
り、MKK6(Hanafusa, H., et al., J. Biol.Chem.,
274, 27161-27167(1999)参照)の活性化に必要なセリ
ン(アミノ末端から数えて151番目)及びスレオニン
(アミノ末端から数えて155番目)をそれぞれグルタ
ミン酸へ置換するべく変異させたDNAを、pcDL−
SRα 296(Takabe, Y., et al., Mol. Cell. Bio
l., 8, 466-471(1988)参照)へ挿入した。 2)HCC2998細胞の培養 実施例1の2)に準じて行った。 3)トランスフェクション 実施例1の3)に準じて行った。 4)蛍光顕微鏡下での細胞の観察 実施例1の4)に準じて行った。
【0067】HCC2998細胞は器壁に細胞が接して
いるため角張った形態を示す(図1の右下パネル及び表
1参照)が、活性変異型MKK6をトランスフェクショ
ンしたHCC2998細胞の57.6%は丸い形態を示
した(図1の左中パネル及び表1参照)。そのような形
態変化を示した細胞では、隣接する細胞との細胞間相互
作用を喪失していることが示唆された。
【0068】また、上述の形態変化は、p38MAPキ
ナーゼ阻害剤であるSB203580(Sigma社
製)を培地へ添加することにより阻害された。 実施例3.活性変異型HSP27発現細胞の調製 1)組換えベクターの作製 Buttらの方法(Butt, E., et al., J. Biol. Che
m., 276, 7108-7103(2000) 参照)に従って、ヒトHS
P27遺伝子(Genbank Accession No. XM 050410)の
3つのリン酸化部位である3つのセリン(アミノ末端か
ら数えて15番目、78番目及び82番目のアミノ酸)
をそれぞれアスパラギン酸へ変化させるために、5'-CGC
TCCTGCGGGTCCGGACTGGGACCCCTTCC-3'(配列表の配列番号
1)をプライマーとするPCR反応(Sawano,A. & MIya
Waki, A., Nuc. Acids Res., 28, E78(2000)参照)に供
した後、5'-CAGCCGCGCGCTCGACCGGCAACTCGACAGCGGGGTCTC
G-3'(配列表の配列番号2)をプライマーとする上述の
PCR反応を行うことにより、ヒトHSP27遺伝子を
変異させた。得られた変異DNAを、pMIKNeoベ
クター(Takayanagi, J., Biochem. Mol. Biol. Int. 3
9, 721-728(1996)参照)へ挿入した。 2)HCC2998細胞の培養 実施例1の2)に準じて行った。 3)トランスフェクション 実施例1の3)に準じて行った。 4)蛍光顕微鏡下での細胞の観察 実施例1の4)に準じて行った。
【0069】HCC2998細胞は器壁に細胞が接して
いるため角張った形態を示す(図1の右下パネル及び表
1参照)が、活性変異型HSP27をトランスフェクシ
ョンしたHCC2998細胞の32.6%は丸い形態を
示した(図1の左下パネル及び表1参照)。そのような
形態変化を示した細胞では、隣接する細胞との細胞間相
互作用を喪失していることが示唆された。
【0070】
【表1】 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― トランスフェクションした遺伝子 形態変化した細胞の割合(%) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― pEGFP−C1+活性変異型PI3K 37.3 pEGFP−C1+活性変異型MKK6 57.6 pEGFP−C1+活性変異型HSP27 32.6 pEGFP−C1 9.6 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 実施例4.MAPKAPキナーゼのDN変異体の作製 1)変異体をコードしたDNAの作製 MAPKAPキナーゼのATP結合部位のリジン(アミ
ノ末端から数えて69番目のアミノ酸)をアラニンへ変
化させるために5'-GCGCACTGGACAGGCCTCTGCCCTGAAGC-3'
(配列表の配列番号3)をプライマーとするPCR法
(Sawano,A. & MIyaWaki, A., Nuc. Acids Res., 28, E
78(2000)参照)により、MAPKAPキナーゼ(Sithan
andam, G., et al., Mol. Cel. Biol., 16, 868-876(19
96)参照)をコードしたDNA(Genkank Accessionn N
o. NM 004635)を変異させた。 2)変異体の有する活性の確認 一般に、キナーゼのATP結合部位に存在するリジンを
アラニンで置換することにより、該キナーゼのDN変異
体変異体を得ることができる。
【0071】MKK6がHSP27をリン酸化する活性
を、1)で得られたDNAによりコードされるタンパク
質が阻害するか否かを調べることにより、該変異体がD
N変異体であるか否かを確認することができる。 実施例5.MAPKAPキナーゼのDN変異体によるが
ん細胞の脱分化の抑制 1)共トランスフェクション(その1) 実施例1の1)で作製した活性変異型PI3K組換えベ
クター、又は、実施例2の2)で作製した活性変異型M
KK6組換えベクター、及び、実施例4の1)で作製し
たMAPKAPキナーゼのDN変異体を挿入した組換え
ベクターを、実施例1の3)に記載の方法に準じてHC
C2998細胞へ共トランスフェクションした。対照と
して、pEGFP−C1のみをHCC2998細胞へト
ランスフェクションした。
【0072】実施例1の4)に順じて蛍光顕微鏡下で細
胞の形態を観察したところ、活性変異型PI3Kによる
形態変化はMAPKAPキナーゼのDN変異体を共発現
させることにより有意に抑制され(図1の右上パネル及
び表2参照)、活性変異型MKK6による形態変化はM
APKAPキナーゼのDN変異体を共発現させることに
よりほぼ完全に抑制された(図1の右中パネル及び表2
参照)。 2)共トランスフェクション(その2) 実施例3の1)で作製した活性変異型HSP27組換え
ベクター、及び、実施例4の1)で作製したMAPKA
PキナーゼのDN変異体を挿入した組換えベクターを、
実施例1の3)に記載の方法に準じてHCC2998細
胞へ共トランスフェクションする。対照として、pEG
FP−C1のみをHCC2998細胞へトランスフェク
ションする。実施例1の4)に順じて蛍光顕微鏡下で細
胞の形態を観察する。
【0073】
【表2】 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― トランスフェクションした遺伝子 形態変化した細胞の割合(%) ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― pEGFP−C1+活性変異型PI3K 31.0 pEGFP−C1+活性変異型PI3K +MAPKAPキナーゼのDN変異体 25.0 pEGFP−C1+活性変異型MKK6 57.8 pEGFP−C1+活性変異型MKK6 +MAPKAPキナーゼのDN変異体 13.2 pEGFP−C1 11.1 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 実施例6.がん細胞の脱分化抑制物質の探索(その1) 1)MAPKAPキナーゼの調製 MAPKAPキナーゼ(Sithanandam, G., et al., Mo
l. Cel. Biol., 16, 868-876(1996)参照)をコードした
公知のDNA(Genbank Accessionn No. NM 004635)を
RT−PCR法により増幅し、Buttらの方法(But
t, E., et al., J. Biol. Chem., 276, 7108-7103(200
0) 参照)により、pMIKNeoベクターへ挿入す
る。
【0074】常法により該ベクターをCHO細胞へトラ
ンスフェクションする。トランスフェクションされた細
胞の培養物から、常法によりMAPKAPキナーゼを精
製する。 2)野生型HSP27の調製 公知の野生型HSP27をコードした公知のDNA(Ge
nbank Accessionn No.XM 050410)をRT−PCR法に
より増幅し、Buttらの方法(Butt, E., etal., J.
Biol. Chem., 276, 7108-7103(2000) 参照)により、p
MIKNeoベクターへ挿入する。
【0075】常法により該ベクターをCHO細胞へトラ
ンスフェクションする。トランスフェクションされた細
胞の培養物から、常法により野生型HSP27を精製す
る。 3)MAPKAPキナーゼによる野生型HSP27リン
酸化活性の測定 1)で得られたMAPKAPキナーゼ、2)で得られた
野生型HSP27及び[32P]γ−ATP(アマシャム
ファルマシア バイオテク(株)製)を含む、pH7
の緩衝液を37℃にて30分間反応させる。反応終了
後、抗野生型HSP27抗体(Santa Cruz Biotechnolo
gy Inc.社製)又は抗リン酸化HSP27抗体(Cell Si
gnaling Thechnology Inc.社製)を用い、常法に従って
反応物中の野生型HSP27及び/又はリン酸化HSP
27を免疫沈降する。回収された野生型及び/又はリン
酸化HSP27画分の有するβ線放射能を液体シンチレ
ーションカウンターで測定するか、又は、該画分をSD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、ゲル上の
β線放射能に由来するシグナルをイメージアナライザー
又はオートラジオグラフィーにより測定する。 4)試験物質のMAPKAPキナーゼ阻害活性の測定 試験物質存在下及び非存在下で4)の反応を行い、試験
化合物存在下におけるMAPKAPキナーゼ活性測定値
(X)及び試験化合物非存在下における該酵素活性測定
値(Y)より、試験物質による該酵素阻害率%を次の式
に従って算出する; 阻害率%=(1−X÷Y)×100 阻害率が50%以上である試験物質を、本探索法におい
て陽性と判定する。 実施例7.がん細胞の脱分化抑制物質の探索(その2) 1)MAPKAPキナーゼ及びタグ融合型HSP27を
共発現する細胞の調製 MAPKAPキナーゼをコードした公知のDNAを、実
施例6)の1に記載の方法によりpMIKNeoベクタ
ーへ挿入する。野生型HSP27及びmycタグの融合
遺伝子を作製し、実施例6)の1に記載の方法によりp
MIKNeoベクターへ挿入する。
【0076】得られた2種の組換えベクターを、常法に
よりCHO細胞へ共トランスフェクションする。 2)MAPKAPキナーゼのシグナル伝達の測定 1)で得られたMAPKAPキナーゼと野生型HSP2
7の共発現細胞を32P標識した正リン酸(アマシャム
ファルマシア バイオテク(株)製)存在下で37℃に
て24時間培養した後、回収した細胞を低張緩衝液中で
破砕し、抗mycタグ抗体である9E10(Santa Cruz
Biotechnology Inc社製)で免疫沈降する。回収された
野生型及び/又はリン酸化HSP27画分の有するβ線
放射能を液体シンチレーションカウンターで測定する
か、又は、該画分をSDS−ポリアクリルアミドゲル電
気泳動に供し、ゲル上のβ線放射能に由来するシグナル
をイメージアナライザー又はオートラジオグラフィーに
より測定する。 3)試験物質のMAPKAPキナーゼのシグナル伝達阻
害活性の測定 試験物質存在下及び非存在下で2)の反応を行い、試験
化合物存在下におけるMAPKAPキナーゼ活性測定値
(X)及び試験化合物非存在下における該酵素活性測定
値(Y)より、試験物質による該酵素阻害率%を次の式
に従って算出する; 阻害率%=(1−X÷Y)×100 阻害率が50%以上である試験物質を、本探索法におい
て陽性と判定する。
【0077】
【発明の効果】本発明の提供する方法は、がん細胞の脱
分化を抑制する物質の探索に有用であり、本発明の方法
により得られるがん細胞脱分化抑制物質は、各種のが
ん、特に消化器がんの悪性化の予防又は治療に有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】HCC2998細胞は右下パネル(GFP)に
示す通り角張った分化型の形態をとる。これに対し、活
性変異型PI3Kを導入した細胞は左上パネル(BD1
10)に示す通り丸型の未分化型の形態をとる。一方、
活性変異型PI3K及びMAPKAPキナーゼのDN変
異体を導入した細胞の多くは右上パネル(BD110+
MK3DN)に示す通り角張った分化型の形態をとる。
また、活性変異型MKK6を導入した細胞は左中パネル
(MKK6DA)に示す通り丸型の未分化型の形態をと
る。一方、活性変異型MKK6及びMAPKAPキナー
ゼのDN変異体を導入した細胞のほとんどは右中パネル
(MKK6DA+MK3DN)に示す通り角張った分化
型の形態をとる。さらに、活性変異型HSP27を導入
した細胞の多くは左下パネル(Hsp27DA)に示す
通り丸型の未分化型の形態をとる。
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> SANKYO CO., LTD <120> METHODS FOR IDENTIFING SUBSTANCES WHICH SUPPRESS DEDIFFERENCIATION OF TUMOR CELLS. <130> 2001134SW <140> <141> <160> 3 <170> PatentIn Ver. 2.1 <210> 1 <211> 32 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:A PCR primer to amplify a DNA e ncoding active form mutant of heat shock protein 27 <400> 1 cgctcctgcg ggtccggact gggacccctt cc 32 <210> 2 <211> 40 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:A PCR primer to amplify a DNA e ncoding active form mutant of heat shock protein 27 <400> 2 cagccgcgcg ctcgaccggc aactcgacag cggggtctcg 40 <210> 3 <211> 29 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Description of Artificial Sequence:A PCR primer to amplify a DNA e ncoding dominant negative mutant of mitogen-activated protein kinase-act ivated protein kinase <400> 3 gcgcactgga caggcctctg ccctgaagc 29
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12R 1:91) C12Q 1/48 Z (C12Q 1/48 C12R 1:91) (72)発明者 徐 慶雲 東京都文京区弥生1丁目1−1 東京大学 農学部内 Fターム(参考) 4B063 QA20 QQ08 QQ13 QQ79 QR07 QR42 QR50 QS02 QX07 4C084 AA17 NA14 ZB26

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】がん細胞の脱分化を抑制する物質を探索す
    る方法であって、下記工程のi)及びii): i)試験物質存在下又は非存在下で、マイトジェン−ア
    クチベイティッド・プロテイン・キナーゼ−アクチベイ
    ティッド・プロテイン・キナーゼ(mitogen‐a
    ctivated protein kinase‐a
    vtivaetdprotein kinase:以
    下、「MAPKAPキナーゼ」という。)、基質タンパ
    ク質及びATPを反応させる; ii)試験物質非存在下におけるMAPKAPキナーゼ
    の基質タンパク質リン酸化活性に対する、試験物質存在
    下におけるMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リン
    酸化活性の減少の程度を測定する、を含む方法。
  2. 【請求項2】基質タンパク質が野生型熱ショックタンパ
    ク質27である、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】がん細胞の脱分化を抑制する物質を探索す
    る方法であって、下記工程のi)乃至iii): i)マイトジェン−アクチベイティッド・プロテイン・
    キナーゼ−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ
    (mitogen‐activated protei
    n kinase‐avtivaetd protei
    n kinase:以下、「MAPKAPキナーゼ」と
    いう。)遺伝子を動物細胞へ導入し、MAPKAPキナ
    ーゼを発現させる; ii)試験物質存在下又は非存在下で、i)で得られ
    た、MAPKAPキナーゼ発現細胞を培養する; iii)試験物質非存在下における、i)で得られた細
    胞の保有するMAPKAPキナーゼの基質タンパク質リ
    ン酸化活性に対する、試験物質存在下における、i)で
    得られた細胞の保有するMAPKAPキナーゼの基質タ
    ンパク質リン酸化活性の減少の程度を測定する、を含む
    方法。
  4. 【請求項4】動物細胞が、野生型熱ショックタンパク質
    27遺伝子又はタグ融合型熱ショックタンパク質27遺
    伝子を導入された細胞である、請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】基質タンパク質が、野生型熱ショックタン
    パク質27又はタグ融合型熱ショックタンパク質27で
    ある、請求項3又は4に記載の方法。
  6. 【請求項6】がん細胞の脱分化を抑制する物質を探索す
    る方法であって、下記工程のi)乃至iii): i)野生型熱ショックタンパク質27遺伝子を動物細胞
    へ導入し、野生型熱ショックタンパク質27を発現させ
    る; ii)試験物質存在下又は非存在下で、i)で得られ
    た、野生型熱ショックタンパク質27発現細胞を培養す
    る; iii)試験物質非存在下における、i)で得られた細
    胞の保有する野生型熱ショックタンパク質27のリン酸
    化度に対する、試験物質存在下における、i)で得られ
    た細胞の保有する野生型熱ショックタンパク質27のリ
    ン酸化度減少の程度を測定する、を含む方法。
  7. 【請求項7】野生型熱ショックタンパク質27のリン酸
    化がマイトジェン−アクチベイティッド・プロテイン・
    キナーゼ−アクチベイティッド・プロテイン・キナーゼ
    (mitogen‐activated protei
    n kinase‐avtivaetd protei
    n kinase)によって触媒される、請求項6に記
    載の方法。
  8. 【請求項8】動物細胞が、哺乳動物の消化器がん由来の
    腺がん細胞である、請求項6又は7に記載の方法。
  9. 【請求項9】がん細胞の脱分化が、細胞間相互作用の喪
    失及び/又は未分化型の細胞への形態変化である、請求
    項1乃至8のいずれか一つに記載の方法。
  10. 【請求項10】請求項1乃至9のいずれか一つに記載の
    方法により得られる、がん細胞の脱分化を抑制する物
    質。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2007090032A2 (en) * 2006-01-27 2007-08-09 Serenex, Inc. Ribosomal protein s6 as a pharmacodynamic marker for hsp90 inhibition

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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