JP2003056575A - 転がり摺動部材及び転動装置 - Google Patents

転がり摺動部材及び転動装置

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JP2003056575A JP2001246738A JP2001246738A JP2003056575A JP 2003056575 A JP2003056575 A JP 2003056575A JP 2001246738 A JP2001246738 A JP 2001246738A JP 2001246738 A JP2001246738 A JP 2001246738A JP 2003056575 A JP2003056575 A JP 2003056575A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 大きな接触応力が作用するような条件下や無
潤滑下においても好適に使用可能な転がり摺動部材及び
転動装置を提供する。 【解決手段】 スラスト玉軸受は、軌道面1aを有する
内輪1と、軌道面1aに対向する軌道面2aを有する外
輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配設された
複数の玉3と、両軌道面1a,2a間に複数の玉3を軸
受の円周方向にわたって等配に保持する保持器4と、を
備えている。両軌道面1a,2a及び玉3の転動面3a
には、潤滑性を有し且つ等価弾性定数が100〜240
GPaであるDLC層Dが設けられている。DLC層D
は、Cr,W,Ti,Si,Ni,及びFeのうちの2
種以上の金属からなる金属層Mと、前記金属及び炭素か
らなる複合層Fと、炭素からなるカーボン層Cと、の3
層で構成されていて、該3層は表面側からカーボン層
C,複合層F,金属層Mの順に配されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、潤滑性に優れた転
がり摺動部材及び該転がり摺動部材で構成された転動装
置に係り、特に、大きな接触応力が作用するような条件
下や無潤滑下においても好適に使用可能な転がり摺動部
材及び転動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドライクカーボン(以降はD
LCと記す)は、その表面がダイヤモンドに準ずる硬さ
を有し、摺動抵抗も摩擦係数が0.2以下と二硫化モリ
ブデンやフッ素樹脂と同様に小さいことから、従来から
潤滑性材料として使用されている。
【0003】例えば、磁気ディスク装置においては、磁
気素子又は磁気ディスクの表面に数十オングストローム
のDLC膜を形成することにより、磁気素子と磁気ディ
スクとの間の潤滑性を高めて磁気ディスクの表面を保護
している。一方、上記のような特異な表面の性質から、
DLCは転がり摺動部材の新たな潤滑性材料として注目
されており、近年、軸受への潤滑性の付与に利用されて
いる。
【0004】例えば、国際公開WO99/14512号
公報には、軌道輪の軌道面や転動体の表面に金属を含有
するDLC膜を備えた転がり軸受が開示されている。こ
の転がり軸受においては、前記DLC膜により接触応力
が緩和される。また、CVD法,プラズマCVD法,イ
オンビーム形成法,イオン化蒸着法等によって、軌道輪
の軌道面や転動体の表面にDLC膜を形成した転がり軸
受等の転動装置が知られている(例えば、特開平9−1
44764号公報,特開2000−136828号公
報,特開2000−205277号公報,特開2000
−205279号公報,特開2000−205280号
公報など)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、転がり
軸受等の転動装置においては、軌道輪の軌道面や転動体
の表面に大きな接触応力が作用するので、繰り返し応力
によってDLC膜が破損してしまうおそれがあった。こ
のような破損が起きる原因としては、以下の2点が考え
られる。
【0006】まず、1点目は、鋼とDLC膜との密着性
を向上させるために介在された金属中間層の脆性化の問
題である。すなわち、金属中間層を構成する金属とDL
C膜を構成する炭素とが結合して脆さを有する金属カー
バイドが生成するため、金属中間層が脆性化して、DL
C膜が破損しやすくなるのである。そして、金属中間層
が1種の金属で構成されている場合は金属カーバイドの
脆さが大きいため、破損の要因となりやすい。
【0007】2点目は、DLC膜は、応力が作用しても
非常に変形しにくい性質を有しているという問題であ
る。DLCは硬く高弾性であるので、ステンレスや軸受
鋼等のような弾性定数の小さい金属材料に被覆されてい
ると、両者の弾性定数の違いから、母材の変形にDLC
が追従することができずに、DLC膜が破損する場合が
ある。
【0008】そこで、本発明は、上記のような従来技術
の有する問題点を解決し、大きな接触応力が作用するよ
うな条件下や無潤滑下においても好適に使用可能な転が
り摺動部材を提供することを課題とする。また、このよ
うな転がり摺動部材を備える、潤滑性に優れた転動装置
を提供することを併せて課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発
明の転がり摺動部材は、相手部材との間で相対的な転が
り接触又はすべり接触が生じる鋼製の転がり摺動部材に
おいて、前記相手部材との接触面に、潤滑性を有するダ
イヤモンドライクカーボン層を設け、該ダイヤモンドラ
イクカーボン層を、Cr,W,Ti,Si,Ni,及び
Feのうちの2種以上の金属からなる金属層と、前記金
属及び炭素からなる複合層と、炭素からなるカーボン層
と、の3層で構成し、表面側から前記カーボン層,前記
複合層,前記金属層の順に配したことを特徴とする。
【0010】このような転がり摺動部材は、母材である
鋼と前記カーボン層との間に前記複合層及び前記金属層
が介在しているので、潤滑性に優れた前記ダイヤモンド
ライクカーボン層(DLC層)と母材である鋼との密着
性が優れている。特に、前記複合層を、前記金属層側か
ら前記カーボン層側に向かって炭素の割合が徐々に増加
する構成とすれば、密着性がより優れたものとなる。
【0011】また、複合層を、Cr,W,Ti,Si,
Ni,及びFeのうちの2種以上の金属と炭素とで構成
したので、1種の金属と炭素とで構成した場合と比べ
て、金属と炭素との結合により生成した金属カーバイド
の脆さが小さい。よって、複合層の脆さが小さいので、
繰り返し応力やせん断力が負荷されてもDLC層が破損
しにくい。
【0012】さらに、前記DLC層の等価弾性定数は、
100〜240GPaとすることが好ましい。そうすれ
ば、母材である前記鋼よりもDLCの方が小さい等価弾
性定数を有することとなるので、繰り返し応力が作用し
た際にDLC層が変形することが可能となる。その結
果、母材の変形にDLC層が追従することが可能となる
ので、DLC層の破損が生じにくい。
【0013】前記DLC層の等価弾性定数が240GP
a超過であると、前記鋼よりもDLC層の方が大きい等
価弾性定数を有することとなるので、繰り返し応力が作
用した際の母材の変形にDLC層が追従することが困難
となって、DLC層の破損が生じやすくなる。一方、1
00GPa未満であると、DLC層の硬さが低くなっ
て、摩耗が生じやすくなる。
【0014】なお、DLC層のような薄膜については、
通常の方法では弾性定数を測定することはできないた
め、本発明においては以下の方法により測定された、弾
性定数に準拠する等価弾性定数を用いる。すなわち、押
し込み深さを少なくともDLC層の厚さ内として微小硬
度計による測定を行い、得られた荷重−除荷曲線により
等価弾性定数を求める。
【0015】例えば、DLC層の厚さが2μmである場
合は、押し込み荷重を0.4〜50mNの間で適宜設定
して測定を行う。本発明においては、エリオニクス社製
の微小硬度計を使用し、押し込み荷重を50mNとして
測定した等価弾性定数を用いる。この他の等価弾性定数
の測定方法としては、フィッシャー社製の微小硬度測定
装置を用いる方法がある。この方法においては、(マイ
クロ)ビッカース硬度計は使用せず、静電容量で制御で
きる微小硬度計又はナノインデンテータを用いることが
望ましい。なおかつ、押し込み深さはDLC層の厚さ内
とする必要がある。そして、前記微小硬度計又はナノイ
ンデンテータにより得られた荷重−除荷曲線の弾性変形
量から等価弾性定数を求める。
【0016】なお、HRC60の鋼炭素クロム鋼(SU
J2)の表面の等価弾性定数を上記の方法により求める
と250GPaとなり、通常カタログ等に記載されてい
る210GPaよりも大きい結果となる。これは、上記
の方法が微小な押し込み領域における測定であることか
ら、SUJ2の表面の加工硬化層の影響を受けるためで
ある。
【0017】さらに、前記DLC層は、非平衡型マグネ
トロンを用いたスパッタリングにより形成されたもので
あることが好ましい。このような物理的成膜法は、CV
D法,プラズマCVD法,イオンビーム形成法,イオン
化蒸着法等と比較して、転動装置のような大きな接触応
力が作用する装置を構成する部品に対して好適である。
【0018】以上のように、本発明の転がり摺動部材
は、大きな接触応力が作用しても破損しにくい潤滑膜
(DLC層)を備えているので、大きな接触応力が作用
する装置(例えば、転動装置等)を構成する部材等に好
適に適用することが可能である。また、優れた潤滑性を
有しているので、無潤滑下においても好適に使用するこ
とが可能である。そして、摩耗や発熱が少ない上、繰り
返し応力に対して強く長寿命である。
【0019】さらに、本発明の転動装置は、外面に軌道
面を有する内方部材と、該内方部材の軌道面に対向する
軌道面を内面に有して前記内方部材の外側に配置された
外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された転
動体と、を備える転動装置において、前記内方部材,前
記外方部材,及び前記転動体のうち少なくとも1つを、
請求項1〜4のいずれかに記載の転がり摺動部材とした
ことを特徴とする。
【0020】このような構成であれば、転動装置を構成
する転がり摺動部材のDLC層は大きな接触応力が作用
しても破損しにくいので、大きな接触応力が作用するよ
うな条件下や無潤滑下において使用されても長寿命であ
る。なお、本発明の転動装置としては、転がり軸受,直
動案内軸受(リニアガイド装置),ボールねじ,直動ベ
アリング等があげられる。
【0021】そして、前記内方部材とは、転動装置が転
がり軸受の場合は内輪、同じく直動案内軸受の場合は案
内レール、同じくボールねじの場合はねじ軸、同じく直
動ベアリングの場合は軸を、それぞれ意味する。また、
前記外方部材とは、転動装置が転がり軸受の場合は外
輪、同じく直動案内軸受の場合はスライダ、同じくボー
ルねじの場合はナット、同じく直動ベアリングの場合は
外筒を、それぞれ意味する。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明に係る転がり摺動部材及び
転動装置の実施の形態を、図面を参照しながら説明す
る。図1は、本発明に係る転動装置の一実施形態である
スラスト玉軸受の構成を示す縦断面図であり、図2は、
図1のA部分を拡大して示した部分拡大断面図である。
【0023】図1のスラスト玉軸受は、軌道面1aを有
する内輪1と、軌道面1aに対向する軌道面2aを有す
る外輪2と、両軌道面1a,2a間に転動自在に配設さ
れた複数の玉3と、両軌道面1a,2a間に複数の玉3
を軸受の円周方向にわたって等配に保持する保持器4
と、を備えている。内輪1,外輪2,及び玉3はSUJ
2等の鋼製である。また、内輪1及び外輪2の寸法は内
径30mm、外径62mm、厚さ7mmで、軌道面1
a,2aの横断面形状は、玉3の直径の52%の曲率半
径を有する円弧状である。
【0024】さらに、内輪1の軌道面1a,外輪2の軌
道面2a,及び玉3の転動面3aには、潤滑性を有し且
つ等価弾性定数が100〜240GPaであるダイヤモ
ンドライクカーボン(DLC)層Dが設けられている。
そして、このDLC層Dは、図2に示すように、Cr,
W,Ti,Si,Ni,及びFeのうちの2種以上の金
属からなる金属層Mと、前記金属及び炭素からなる複合
層Fと、炭素からなるカーボン層Cと、の3層で構成さ
れていて、該3層は表面側からカーボン層C,複合層
F,金属層Mの順に形成されている。
【0025】次に、DLC層Dを形成する方法につい
て、外輪2を例に説明する。油分を脱脂した外輪2を株
式会社神戸製鋼所社製のアンバランスドマグネトロンス
パッタリング装置504(以降はUBMS装置と記す)
に設置し、アルゴンプラズマによるスパッタリングを用
いて、軌道面2aにボンバード処理を15分間施した。
【0026】そして、タングステン及びクロムをターゲ
ットとして、軌道面2aにこの2種類の金属をスパッタ
リングして成膜し、金属層Mを形成した。次に、この2
種類の金属のスパッタリングを続けながら、カーボンを
ターゲットとした炭素のスパッタリングを開始した。こ
のようなスパッタリングによって、前記2種類の金属と
炭素とが結合した金属カーバイドからなる複合層Fが、
金属層Mの上に形成された。
【0027】さらに、前記2種類の金属のスパッタ効率
を徐々に減少させながら、炭素のスパッタ効率を徐々に
増加させた。そして、前記2種類の金属のスパッタリン
グを終了し、炭素のスパッタリングのみとして、複合層
Fの上にカーボン層Cを形成した(DLC層D全体の厚
さは2.2μm)。このようなスパッタリングにより成
膜を行えば、2種類の金属で構成された層(金属層M)
から炭素で構成された層(カーボン層C)に向かって、
層の組成が連続的に徐々に変化していくDLC層Dを形
成することができる。このような構成のDLC層Dは、
各層(金属層M,複合層F,及びカーボン層C)の間の
密着性が非常に優れているとともに、潤滑性に優れたカ
ーボン層Cと母材である鋼との密着性が非常に優れてい
る。
【0028】UBMS装置は、スパッタリングに用いる
ターゲットを複数装着でき、各ターゲットのスパッタ電
源を独立に制御することにより、各成分のスパッタ効率
を任意に制御することができるので、上記のような成膜
に好適である。例えば、上記の場合の複合層F及びカー
ボン層Cを成膜する工程においては、金属ターゲットの
スパッタ電源(DC電源)の電力を低減させながら、同
時にカーボンターゲットのスパッタ電源(DC電源)の
電力を増加させればよい(このとき、外輪2には負のバ
イアス電圧を印加する)。
【0029】ここで、グロー放電発光分析装置(島津製
作所株式会社製のGDLS−9950)を使用して、D
LC層Dを形成する元素を分析した結果について、図3
の測定チャートを参照しながら説明する。チャートの横
軸は表面からの深さを示し、0nmがDLC層の表面を
意味している。また、縦軸は、その深さ位置における各
元素の含有量を示している。
【0030】なお、アルゴンガスを使用した放電によっ
て深さ方向の情報を得ているため、母材である鋼とDL
C層Dとの界面において、各元素の含有量を示す曲線が
ブロードとなっている。また、鋼とDLC層Dとの界面
が8000nm付近に位置していることから、このチャ
ートからはDLC層Dの厚さは約8μmであることが読
み取れるが、この分析法は直径2mmの円形部分につい
て放電発光により分析するため、深さ方向の精度上約8
μmとなって現れるものであって、実際のDLC層Dの
厚さは2.2μmである。
【0031】次に、このようなスラスト玉軸受とほぼ同
様の構成の軸受において、金属層及び複合層に用いた金
属の種類を種々変更した試験軸受を用意して、DLC層
の転がり疲労強度を評価する耐久試験を行った。なお、
この試験においては、DLC層は外輪の軌道面のみに形
成し、内外輪の軌道面間に配設した玉の数は3個とし
た。また、鉱油をヘキサンで3%に希釈したもの0.0
5mlを、外輪の軌道面に塗布して潤滑に用いた。
【0032】回転試験の条件は、アキシアル荷重が6k
Nで、回転速度が6000rpmである。そして、外輪
の内部に熱電対を挿入して温度を測定したところ、温度
が200℃に至った場合はDLC層が破損し下地の露出
が生じていたため、200℃に到達するまでの時間を耐
久時間とした。用いた金属の種類及び試験結果を図4の
グラフに示す。実施例1〜5は、複合層に2種類の金属
を用いており、イオンアシスト効果によって金属カーバ
イドの生成がコントロールされているので、耐久時間が
優れていた。特に、実施例1のクロムとタングステンの
組合せが、耐久時間が非常に優れていた。この他では、
チタンとタングステンの組合せ、あるいはチタン,クロ
ム,タングステンの組合せが特に好ましい。
【0033】このように、クロム等の低融点金属とタン
グステン等の高融点金属とを組み合わせると、金属カー
バイドの脆さが小さくなるので好ましい。そして、低融
点金属よりも高融点金属を多量とした方がその効果が大
きい。これに対して、1種類の金属を用いた複合層を有
する比較例1〜3は、金属カーバイドの脆さが大きいた
め、DLC層が破損しやすくなって十分な耐久時間が得
られなかった。
【0034】また、比較例4は、2種類の金属(クロ
ム,チタン)を用いているが、ホロカソード型のイオン
プレーティング法によって金属層を成膜し、その上にプ
ラズマCVD法によってカーボン層を成膜したものであ
る。よって、複合層を有していないので、DLC層と母
材である鋼との密着性が不十分となり、耐久時間が短か
った。
【0035】次に、図1のスラスト玉軸受とほぼ同様の
構成の軸受において、DLC層の等価弾性定数を種々変
更した試験軸受を用意して、等価弾性定数とDLC層の
耐久性との相関を評価する回転試験を行った。ただし、
この試験においては、外輪は軌道溝を有していない平板
状の部材とし、玉の接触する軌道部分にDLC層を形成
した。また、内外輪の軌道面間に配設した玉の数は11
個とした。
【0036】DLC層の形成は前述と同様にUBMS装
置により行い、金属層及び複合層にはクロムとタングス
テンの2種類の金属を用いた。また、DLC層の等価弾
性定数は、外輪に印加するバイアス電圧を制御するか、
又は導入するガスの分圧を制御することにより、変化さ
せることができる。この導入するガス(アルゴン,水
素,メタン等の炭化水素系ガス)の種類や分圧比を制御
すれば、DLC層の等価弾性定数とともに表面の摺動抵
抗を自在にコントロールすることが可能であるので、前
記ガスを単独又は混合して導入することにより、目的に
あった所望のDLC層を形成することができる。
【0037】さらに、DLC層の厚さは、スパッタ時間
により精度よく制御することができる。回転試験は鉱油
中で行い、回転試験の条件(アキシアル荷重,回転速
度)は前述の試験と同様とした。そして、軸受支持部に
装着したエンデブコ社製の加速度センサーにより振動を
測定し、この振動値の増加によりDLC層の破損を検知
した。そして、DLC層が破損するまでの軸受の総回転
数によって、DLC層の耐久性を評価した。試験結果を
図5のグラフに示す。
【0038】このグラフから、DLC層の等価弾性定数
が100〜240GPaであると、DLC層の耐久性が
優れていることが分かる。なお、本実施形態は本発明の
一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定
されるものではない。例えば、本実施形態においては、
スラスト玉軸受を例示して説明したが、本発明の転動装
置は様々な転がり軸受に対して適用することができる。
例えば、深みぞ玉軸受,アンギュラ玉軸受,円筒ころ軸
受,円すいころ軸受,針状ころ軸受,自動調心ころ軸受
等のラジアル形の転がり軸受や、スラストころ軸受等の
スラスト形の転がり軸受である。
【0039】また、本実施形態においては、転動装置と
して転がり軸受を例示して説明したが、本発明の転動装
置は、他の様々な種類の転動装置に対して適用すること
ができる。例えば、直動案内軸受,ボールねじ,直動ベ
アリング等の他の転動装置にも好適に適用可能である。
さらに、本実施形態においては、非平衡型マグネトロン
を用いたスパッタリングによりDLC層を成膜したが、
パルスレーザーアーク蒸着法やプラズマCVD法等を用
いることもできる。ただし、等価弾性定数及び塑性変形
硬さ等を独立に制御することが容易な非平衡型マグネト
ロンを用いたスパッタリングが最も好適である。
【0040】
【発明の効果】以上説明したように、2種以上の金属と
炭素とからなる複合層を有するDLC層は、密着性に優
れており且つ脆さが小さい。よって、本発明の転がり摺
動部材及び転動装置は、大きな接触応力が作用するよう
な条件下や無潤滑下においても好適に使用可能である。
【0041】また、DLC層の等価弾性定数が、100
〜240GPaであるので、繰り返し応力が作用しても
DLC層の破損が生じにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る転動装置の一実施形態であるスラ
スト玉軸受の構成を示す縦断面図である。
【図2】図1のA部分を拡大して示した部分拡大断面図
である。
【図3】DLC層を形成する元素を分析した測定チャー
トである。
【図4】複合層に用いた金属の数及び種類と耐久時間と
の相関を示すグラフである。
【図5】DLC層の等価弾性定数と耐久性との相関を示
すグラフである。
【符号の説明】
1 内輪 1a 軌道面 2 外輪 2a 軌道面 3 玉 3a 転動面 D ダイヤモンドライクカーボン層 M 金属層 F 複合層 C カーボン層
フロントページの続き Fターム(参考) 3J101 AA02 AA32 AA42 AA53 AA62 BA02 BA10 BA52 BA53 BA54 BA55 BA70 CA15 DA05 EA53 EA78 FA31 GA53 4K029 AA02 AA22 BA01 BA07 BA09 BA12 BA17 BA34 BA35 BA64 BB02 BC00 BD04 CA05

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 相手部材との間で相対的な転がり接触又
    はすべり接触が生じ る鋼製の転がり摺動部材において、前記相手部材との接
    触面に、潤滑性を有するダイヤモンドライクカーボン層
    を設け、 該ダイヤモンドライクカーボン層を、Cr,W,Ti,
    Si,Ni,及びFeのうちの2種以上の金属からなる
    金属層と、前記金属及び炭素からなる複合層と、炭素か
    らなるカーボン層と、の3層で構成し、 表面側から前記カーボン層,前記複合層,前記金属層の
    順に配したことを特徴とする転がり摺動部材。
  2. 【請求項2】 前記複合層中の炭素の割合が、前記金属
    層側から前記カーボン層側に向かって徐々に増加してい
    ることを特徴とする請求項1に記載の転がり摺動部材。
  3. 【請求項3】 前記ダイヤモンドライクカーボン層の等
    価弾性定数を100〜240GPaとしたことを特徴と
    する請求項1又は請求項2に記載の転がり摺動部材。
  4. 【請求項4】 前記ダイヤモンドライクカーボン層は、
    非平衡型マグネトロンを用いたスパッタリングにより形
    成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のい
    ずれかに記載の転がり摺動部材。
  5. 【請求項5】 外面に軌道面を有する内方部材と、該内
    方部材の軌道面に対向する軌道面を内面に有して前記内
    方部材の外側に配置された外方部材と、前記両軌道面間
    に転動自在に配置された転動体と、を備える転動装置に
    おいて、前記内方部材,前記外方部材,及び前記転動体
    のうち少なくとも1つを、請求項1〜4のいずれかに記
    載の転がり摺動部材としたことを特徴とする転動装置。
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