JP2003040774A - キノンレダクターゼ誘導剤 - Google Patents

キノンレダクターゼ誘導剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】生体内のキノンレダクターゼの発現を誘導する
ことにより、生体内キノンレダクターゼ量を高めて、そ
の欠乏に起因する各種疾病を予防治療する医薬又はそれ
を含む食品の提供を課題とする。 【解決手段】天然由来あるいは合成のインジルビンを含
有する医薬品あるいは食品が、生体内におけるキノンレ
ダクターゼの発現を誘導し、その量を増加させ、生体内
の機能調節能を円滑にし、前記課題を解決した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は天然由来あるいは合
成のインジルビンを含有してなる医薬品あるいは食品に
関するものである。
【0002】
【従来の技術】キノンレダクターゼは、1960年頃に
Lars ErnsterによりDTジアフォラーゼ(EC 1.6.99.2)
と命名されたフラボプロテインで、一般的にはキノンレ
ダクターゼまたはキノンオキシドレダクターゼなどと呼
ばれている。このキノンレダクターゼは、NADHやN
ADPHを補酵素として、キノン類や電子受容体となる
化合物の還元を触媒する酵素であり、量の多少はあるも
のの生体内のあらゆる器官、組織に見出される酵素であ
る。キノンレダクターゼが還元する基質には例えばキノ
ン類、キノンイミン類、アゾ化合物や窒素酸化物などが
ある。キノンレダクターゼは、活性酸素や過酸化脂質な
どにより生じた酸化物、代謝により生じた酸化物や、食
事、喫煙や排ガスなどから生体に取り込まれた化合物を
還元する作用を有している。また、キノンレダクターゼ
は生体の機能成分であるビタミンK、ユビキノンなどの
酸化還元反応や、酸化型ビタミンEを還元するなどの各
種生体内反応にも関与しており、生体内の様々な機能調
節に関与していると考えられる。
【0003】キノンレダクターゼは第2相薬物代謝酵素
に分類され、キノンレダクターゼの発現を誘導すること
は、薬物代謝亢進すなわち解毒作用の亢進のみならず、
癌や生活習慣病など様々な疾病の発症の要因となる因子
を除去することによる疾病リスクの低減効果すなわち疾
病予防効果、さらにはマイトマイシンCやEO9などの
還元性の抗腫瘍剤の活性を増強させることによる癌治療
促進効果にも繋がる。
【0004】近年、このキノンレダクターゼ発現を誘導
する素材を見出すことに焦点をあてた研究が進められて
いる。そして、ジチオレチンやイソチオシアナート類な
どの含硫化合物にその作用があることがわかり、それら
を含むユリ科ネギ属やアブラナ科の植物が癌予防食品素
材として脚光を浴びている。しかし、キノンレダクター
ゼ発現を誘導する化合物はそれ自体毒性の高いものがあ
り、より安全性の高い素材が求められている。
【0005】インジルビンは、式(I)次に示す化学構
造を有する物質である。
【化1】
【0006】この物質は、IUPAC命名法により3−
(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドインド
ール−2−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−イン
ドール−2−オンと命名される紫色の物質(CAS-No. 47
9-41-4)で、インジゴ植物(インジゴ色素の原料となる
植物)に含有されていることや、インジゴ植物から青色
の色素であるインジゴを作る際の副生産物として得られ
ることが知られている。しかし近年、合成色素の登場に
より次第にその存在が忘れられつつある。
【0007】インジゴ植物におけるインジルビン生成
は、例えば次の様な経路で生じると考えられている。す
なわち、β−グルコシダーゼの作用によりインドキシル
配糖体のインジカン(植物型インジカン、3−O−β−
グルコシド)がインドキシルとなり、そのインドキシル
が酸化されてイサチンとなり、イサチンとインドキシル
が重合してインジルビンとなる。このとき、2分子のイ
ンドキシルが酸化重合してインジゴが生成する反応が主
反応で、インジルビンや別経路で生じるイソインジゴは
微量の副生成物である。
【0008】インジルビンは尿中にも見出される物質
で、極く希に、尿カテーテルを使用している患者のカテ
ーテルチューブが紫色に染まる現象が知られているが、
この着色の本体がインジルビンである。インジルビンが
尿中に多く検出される場合は、尿中に排出されたインジ
カン(動物型インジカン、3−硫酸インドキシル)が尿
路に感染した細菌によって酸化されてインジルビンとな
った可能性が強いが、トリプトファンなどの代謝により
生じたインジカンが体内で加水分解および酸化重合して
インジルビンが生じたり、食事からのトリプトファンや
インドキシル配糖体などが腸内細菌により代謝されたり
してインジルビンが生成するので、通常の尿中にも微量
は存在している。しかし、健常者の尿に検出されるイン
ジルビンの量は、食事や活動状態などの影響を受けてい
るので必ずしも一定ではない。
【0009】インジルビン関連化合物については、フラ
ンスのCNRSのグループが精力的に研究を進め、イン
ジルビンがサイクリン依存性タンパク質キナーゼ(CD
K)という酵素の活動を妨げること、インジルビンやそ
の誘導体が、CDKの阻害作用によって腫瘍細胞の増殖
を抑制する(Ralph Hoessel et al, Nature Cell Biolo
gy, Vol. 1, p 60-67, (1999))ことが判明し、インジ
ルビンやその誘導体を含有するCDK阻害剤として、WO
99/62503、EP 0966963A1が提案されている。
【0010】CNRSのグループはインジルビンのCD
K以外の酵素阻害活性、特にキナーゼ類の阻害について
研究を進めて、グリコーゲン合成キナーゼ−3β(GS
K−3β)およびCDKの一種のCDK5/P25の2
種のキナーゼをインジルビンが抑制することをみつけ
た。そしてインジルビンは、GSK−3βとCDK5/
P25を阻害することにより、アルツハイマー病やその
他の神経伝達系疾患の治療剤としての可能性も有してい
ることを見出した(Sophie Leclerc et al., The Joun
al of Biological Chemistry, Vol. 276, p 251-260 (2
001))。
【0011】また特開2001-31580には、インジゴ植物で
あるタデ科のアイ(Polygonum tinctorium)の抽出物か
ら単離精製したインジルビンが、リポポリサッカライド
(LPS)などで刺激を受けた際のインターフェロン−
γの産生抑制およびインターロイキン−10の産生促進
作用を有することが報告されている。
【0012】インジルビンは検討された際に既にその安
全性についても調べられており、例えば、イヌに臨床投
与量の5〜10倍量のインジルビンを連続して2〜3ヶ
月服用させても、何ら毒性は認められていない。また、
多量に投与した場合も副作用を伴うことなく、大部分の
インジルビンは糞便に排出される。
【0013】上述の通り、インジルビンは、色素として
古くから知られた化合物であり、CDKやGSK−3β
などのキナーゼ阻害作用や免疫応答細胞の或る種のサイ
トカイン産生調節作用などが報告されている。しかしな
がら、インジルビンがキノンレダクターゼの発現を誘導
する作用を有していることは未だ全く知られていなかっ
た。
【0014】
【本発明が解決しようとする課題】本発明は、このよう
な状況において、生体内の様々な機能に関与しているキ
ノンレダクターゼの発現を誘導する、安全でかつ優れた
キノンレダクターゼ誘導剤を提供すること、さらにはこ
のキノンレダクターゼ誘導剤をキノンレダクターゼの欠
乏またはキノンレダクターゼ産生能の低下に起因する疾
病の予防ならびに治療、再発予防、合併症予防や健康維
持増進に貢献する医薬品や食品を提供することを課題と
する。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、インジル
ビンの生理活性について広範な実験と研究を行ってきた
ところ、インジルビンに優れたキノンレダクターゼ発現
誘導作用があることを突き止めた。すなわち天然物から
単離精製したインジルビンおよび化学合成により調製し
たインジルビンを動物に投与することにより、生体のキ
ノンレダクターゼ活性が増大することを見出した。しか
も、インジルビンが安全性の高い物質であることは既に
確かめられており、ヒトあるいは他の動物を対象とする
安全でかつ優れた医薬品や食品を提供できることが判明
した。
【0016】すなわち本発明は、(1)インジルビンを
含有してなるキノンレダクターゼ誘導剤、(2)肝疾患
の予防または治療剤である(1)記載のキノンレダクタ
ーゼ誘導剤、(3)肝疾患による合併症の予防又は治療
剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、
(4)解毒剤である(1)記載のキノンレダクターゼ誘
導剤、(5)肝機能亢進剤である(1)記載のキノンレ
ダクターゼ誘導剤、(6)第2相薬物代謝機能亢進剤で
ある(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、(7)生
体の抗酸化機能亢進剤である(1)記載のキノンレダク
ターゼ誘導剤(8)抗腫瘍剤活性増強剤である(1)記
載のキノンレダクターゼ誘導剤、(9)発癌予防剤であ
る(1)記載のキノンレダクターゼ誘導剤、(10)発
癌性化学物質不活性化剤である(1)記載のキノンレダ
クターゼ誘導剤、および(11)(1)〜(10)のい
ずれかに記載のキノンレダクターゼ誘導剤を含有してな
る食品、である。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるインジルビン
は、IUPAC命名法により、3−(1,3−ジヒドロ−3
−オキソ−2H−インドインドール−2−イリデン)−
1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−オンと命名
される化合物(CAS-No. 479-41-4)で、2−(1,3−
ジヒドロ−3−オキソ−2H−インドール−2−イリデ
ン)−1,2−ジヒドロ−3−H−インドール−3−オ
ン(慣用名:インジゴ、CAS-No. 482-89-3)、3−
(1,2−ジヒドロ−2−オキソ−3H−インドール−
3−イリデン)−1,3−ジヒドロ−2H−インドール
−2−オン(慣用名:イソインジゴ、CAS No. 476-34-
6)の構造異性体である。
【0018】インジルビンの調製は、天然物や天然物の
加工物から抽出して単離精製したり、化学合成したり、
あるいは微生物により産出させたりして、公知の技術や
それらの組み合わせにより比較的容易に行うことができ
る。
【0019】天然物からは、例えば、タデ科のアイ(学
名Polygonum tinctorium)やキツネノマゴ科のリュウキ
ュウアイ(学名Storobilanthes tlaccidifolium)、マ
メ科のタイワンコマツナギ(別名インドアイ、学名Indi
gofera tinctoria)、ラン科のエビネ(学名Calanthe d
iscolor)、などの植物や、スエヒロタケ科のスエヒロ
タケ(学名Schizophyllum commune)などの真菌類か
ら、各種の溶剤抽出および各種のクロマト技術、結晶化
などを組み合わせてインジルビンを調製することができ
る。
【0020】天然由来の加工物からは、例えば、生薬の
「青黛(せいたい)」(5種類のインジゴ植物から選択
された少なくとも1種の植物を加工した生薬)や「すく
も」(アイを加工した染料の原料)などのインジルビン
を含有する加工物から調製することもできる。
【0021】化学合成においては、例えば、1H−イン
ドール−2,3−ジオン(慣用名:イサチン、CAS No.
91-56-5)と酢酸インドキシル(CAS No. 608-08-2)を
炭酸ナトリウムなどで弱アルカリ性としたメタノールな
どの溶媒中で反応させてインジルビンを合成することが
でき、生じたインジルビンは、洗浄と再結晶により純度
の高いものを得ることができる。
【0022】これらの他にも、例えば細菌類の培養、真
菌類の培養、植物カルスの培養等によりインジルビンを
得ることができる。
【0023】このようにして調製したインジルビンは、
その使用目的や剤形、使用方法により、純度の高いもの
から低いものまで用途に合わせた純度のものが使用でき
る。例えば、化学合成は高純度のインジルビンを調製す
るために用い、天然物からはインジルビン含有抽出物を
得るために用いてもよい。
【0024】このようにして得られた精製インジルビン
は、紫色の針状結晶として得られ、薄相クロマトグラフ
ィー、高速液体クロマトグラフィー、赤外吸収スペクト
ル、可視紫外線吸収スペクトル、質量スペクトル、1H
−核磁気共鳴分光法、13C−核磁気共鳴分光法などに
より分析して、同定および定量することができる。イン
ジルビン含有抽出物や精製インジルビンあるいはインジ
ルビン含有抽出物を含む各種医薬品や食品のインジルビ
ン含量も、薄相クロマトグラフィー、高速液体クロマト
グラフィーなどの分析法により測定することができる。
【0025】キノンレダクターゼは、NAD(P)H:
キノンレダクターゼ、NAD(P)H:キノンオキシド
レダクターゼ、ニコチンアミド−キノンオキシドレダク
ターゼ、キノンアクセプターオキシドレダクターゼ、N
AD(P)H:メナジオンオキシドレダクターゼ、メナ
ジオンレダクターゼ、ビタミンKレダクターゼなどと呼
ばれる酵素と同義である。
【0026】キノンレダクターゼが還元の対象とする物
質には、例えば、ベンゾピレンキノン類(例えばベンゾ
ピレンの代謝物)、ベンゾキノン類(例えばベンゼンの
代謝物)や、その他の環境由来や合成のキノン類で反応
性が高く、1電子あるいは2電子還元されうる化合物が
挙げられる。
【0027】ベンゾピレンキノン類、ベンゾキノン類
は、環境由来の発癌性物質として知られるベンゾピレン
やベンゼンが、シトクロームP450やシトクロームP
450レダクターゼなどの酵素により、キノン類などの
代謝物に変換されることにより生じる。また、キノン類
やその誘導体は、シトクロームP450、シトクローム
P450レダクターゼ、ユビキノンオキシドレダクター
ゼ、キサンチンオキシドレダクターゼやシトクロームb
レダクターゼなどにより還元されて不安定なセミキノ
ン類を生じる。セミキノン類は反応性が高く、DNAや
タンパク質、その他生体内分子と反応して遺伝子の変異
や酵素失活などを引き起こす。また、セミキノン類は酸
素と反応して活性酸素を生じさせる。活性酸素もまた、
DNA障害、脂質過酸化、膜障害、細胞毒性、変異、発
癌などの原因となる。
【0028】キノンレダクターゼは、環境からの毒物や
それらが代謝されて活性化した毒物などを代謝したり、
生体内抗酸化物質が酸化して生じた酸化物を還元したり
して、毒物除去、生体防御、活性酸素産生抑制などに寄
与する。
【0029】上述のシトクロームP450やシトクロー
ムP450レダクターゼなどは、薬物代謝酵素の一般的
な分類では、第1相薬物代謝酵素に分類される。第1相
薬物代謝酵素は、基本的に、NAD、NADP、NAD
H、NADPHを補酵素として基質を酸化あるいは還元
する酵素群である。第2相薬物代謝酵素は、薬物あるい
は薬物が第1相薬物代謝された代謝物の排出を高めるた
め、すなわち水溶性を高めて尿などから排出させやすく
するための酵素群で、グルタチオン−S−トランスフェ
ラーゼ、UDP−グルクロノシルトランスフェラーゼ、
エポキシドヒドラーゼ、スルファターゼなどがある。
【0030】キノンレダクターゼは、NAD(P)Hを
補酵素として基質を還元する酵素であるが、その酵素の
働きと、発現メカニズムすなわちその酵素のDNA相同
性の解析から、第2相薬物代謝酵素として分類されてい
る。ピケットらやジャイスワルらは、グルタチオン−S
−トランスフェラーゼとキノンレダクターゼの遺伝子に
XRE(xenobiotic response element)とARE(ant
ioxidant response element)を見付けだしている(L.
V.Favreau,C.B.Pickett,The Journal of Biological Ch
emistry,Vol.266,4556-4561,(1991), L.V.Favreau,C.
B.Pickett,The Journal of Biological Chemistry,Vol.
268, 19875-19881,(1993), A.K.Jaiswal,Biochemistr
y,Vol.30,10647-10653,(1991))。
【0031】キノンレダクターゼなどの第2相薬物代謝
酵素をより多く発現させることの利点は、第1相も第2
相も本来は解毒するために働くのであるが、第1相の反
応が場合により却って生体にとって毒性の強い物質を作
り出してしまうことがあるのに対し、第2相の反応はそ
うして生成した毒物をも解毒してくれるところにある。
例えば、発癌性の高いことで知られるカビ毒のアフラト
キシンは、第1相の反応で活性化されることで変異原性
を現す。ベンゾピレンの発癌性も第1相薬物代謝により
活性化される。こうして活性化された毒性物質は第2相
薬物代謝により解毒されるので、第2相薬物代謝の亢進
は発癌予防として重要となる。ダイオキシン類も第1相
により活性化されて変異原となり、生じた変異原物質の
解毒も第2相によって行われている。
【0032】解熱鎮痛薬として良く知られるアセトアミ
ノフェンは、多量に摂取したときや体調により急性中毒
症をおこすことがある。アセトアミノフェンの解熱鎮痛
効果はアセトアミノフェンそのものによる作用であり、
かつアセトアミノフェンそのものの毒性はかなり低い。
アセトアミノフェンによる肝機能障害を伴う中毒症は、
実はアセトアミノフェンが第1相代謝により毒性物質と
なることにより引き起こされる。このときも生じた毒物
は第2相が働いて解毒する。
【0033】変異原性物質のみならず、細胞毒性を有す
る他の化合物や疾病を誘発する化学物質などを解毒する
ことを亢進させるのにも、キノンレダクターゼなどの第
2相薬物代謝酵素の活性化すなわち発現量の増大は極め
て重要である。
【0034】癌治療において、生還元性抗腫瘍剤が新し
いクラスの抗癌剤として重要視されている。その例とし
てマイトマイシンCやEO9、プロフィロマイシン、ジ
アジクオンなどが挙げられ、これらは1電子あるいは2
電子還元されて活性化され効果を発揮する。キノンレダ
クターゼは、これらの生還元性抗腫瘍剤の効果を増大す
ることができる。例えば、キノンレダクターゼを誘導す
る作用のある化合物の1,2−ジチオールー3−チオン
により、マイトマイシンCやEO9の抗腫瘍活性が増大
することが報告されている。
【0035】EO9の抗腫瘍活性は前述の通り還元され
て活性化するのであるが、これはEO9の還元体のセミ
キノン体やヒドロキノン体が腫瘍細胞の遺伝子に結合し
て抗腫瘍活性を示すからと考えられている。EO9の還
元化には第1相薬物代謝のシトクロームP450レダク
ターゼによっても行うことができる。しかしながら、シ
トクロームP450レダクターゼが作用するときには、
酸素分子から活性酸素のスーパーオキシドを産生してし
まう。このスーパーオキシドは、新たな変異の原因とな
ったり、細胞の機能を失わせる。キノンレダクターゼは
EO9を還元して活性化するときにスーパーオキシドを
産生させないので、EO9を使用した治療時にキノンレ
ダクターゼ量を高めておけばスーパーオキシドによる毒
性を低減することができる。
【0036】キノンレダクターゼの生体内抗酸化作用亢
進の機能について説明する。抗酸化性物質(アンチオキ
シダント)の多くは、その水素供与体としての作用によ
り抗酸化作用を示すのであるが、水素供与した後の物質
(酸化物)が水素受容体として働いて、逆に酸化促進物
質(プロオキシダント)として作用することがある。こ
うして生じたプロオキシダントの消去にもキノンレダク
ターゼが活躍する。
【0037】生体内抗酸化物質として良く知られるトコ
フェロール(ビタミンE)は、脂溶性ビタミンであるに
も拘わらず副作用のほとんどないことが知られている。
ビタミンEの機能は、その優れた水素供与能により膜脂
質やリポ蛋白体での脂質過酸化を防止することにあると
考えられている。トコフェロールは水素供与体として働
くとその結果トコフェロールラジカルとなるのである
が、これはビタミンCやチオール化合物などの抗酸化分
子により速やかに還元されて再生される。しかし、多量
のトコフェロールラジカルが処理(トコフェロールへの
再生)できなくなるようなことがあると、副作用のない
といわれていたトコフェロールにも副作用がでてくるこ
とがある。すなわち、トコフェロールから生じたセミキ
ノン体やキノン体の毒性が生じることがある。例えば、
喫煙者に対し過剰のトコフェロール単独をサプリメント
ととして与え続けると、肺癌の発症リスクが上昇するこ
とが知られている。これは、トコフェロールから生じた
キノン体によると考えられている。
【0038】キノンレダクターゼは、トコフェロールか
ら生じたキノン体のトコフェロールキノンを還元してト
コフェロールハイドロキノンに戻すことができる。トコ
フェロールハイドロキノンは抱合化された後に尿などに
排出される。すなわち、キノンレダクターゼは、トコフ
ェロールの抗酸化性を損なうことなく、トコフェロール
の副作用の原因となるとトコフェロールキノンの代謝を
促進してその毒性を低減することができるのである。
【0039】ユビキノンは、ミトコンドリアにおける呼
吸鎖の電子伝達や酸化的リン酸化の重要な電子担体であ
るとともに、膜の安定性や抗酸化に寄与していると考え
られている。ユビキノンは、核やミトコンドリア、ミク
ロソーム、サイトソールなどに多く見られ、特にミトコ
ンドリアに多く、組織別にはミトコンドリアに富む心
臓、肝臓、腎臓に多い。ユビキノンは1電子還元でセミ
キノンラジカル、さらに1電子還元でジヒドロキシ体と
なり、これらがそれぞれ電子受容体あるいは電子供与体
となることで、電子担体として機能している。
【0040】ミトコンドリアは、スーパーオキシド産生
部位であり、電子伝達に伴って、スーパーオキシドを産
生する。生体内で生じる活性酸素のうち一番多いのが、
このミトコンドリアから漏れ出るスーパーオキシドであ
る。ユビキノンは、ミトコンドリア膜上にてスーパーオ
キシドの消去を行っていると考えられる。実際には、ユ
ビキノンが2電子還元されたジヒドロキシユビキノンが
スーパーオキシドの消去に働く。
【0041】キノンレダクターゼは、ユビキノンを2電
子還元してジヒドロキシユビキノンを生じさすことがで
きるので、キノンレダクターゼを誘導すると、ユビキノ
ンによるミトコンドリアからのスーパーオキシドの漏洩
を防止する作用が強くなる。すなわち、キノンレダクタ
ーゼを誘導することにより、ミトコンドリアからの活性
酸素の漏洩を防ぎ、活性酸素毒を低減してくれる。
【0042】ビタミンKは、フィロキノン(ビタミンK
1)、メナキノン(ビタミンK2)などキノン構造を有
するが、その機能の本質は酸化還元反応である。食事由
来のビタミンK(キノン体)は生体内で還元されてヒド
ロキノンとなり、このヒドロキノンが各種ビタミンK依
存性タンパク質をカルボキシル化する際のコファクター
として働く。このとき、ビタミンKヒドロキノンはビタ
ミンKエポキシドとなり、ビタミンKエポキシドはビタ
ミンKさらにビタミンKヒドロキノンへと再生される。
【0043】キノンレダクターゼは、ビタミンKからヒ
ドロキノンへの活性化や再生に関与する酵素であり、ビ
タミンKの機能を正常に働かせるために必要であるとと
もに、再生に関与することからビタミンK欠乏を予防す
る効果もある。抗生物質投与時にビタミンK欠乏となる
ことがあるが、このような薬物での治療時に、キノンレ
ダクターゼ活性を高めてビタミンK欠乏症を予防するた
めにも本発明のキノンレダクターゼを使用することがで
きる。
【0044】赤ワインにより心冠状動脈疾患の発症リス
クが低減するフレンチパラドックスで脚光を浴びたワイ
ンポリフェノールに代表されるように、フラボノイド類
などのポリフェノールの新しい機能が続々と報告されて
いる。ところで、これらのポリフェノール類は、そのフ
ェノール構造による水素供与体としての機能すなわち抗
酸化性があるところに共通性があるのであるが、水素供
与体として機能すると自らは酸化体となって水素受容体
になってしまう。このようにして生じたキノン体などの
水素受容体が、かえって酸化を促進したり生体に障害を
与えたりする恐れがあることを、既に多くの学者が懸念
している。
【0045】キノンレダクターゼは、フラボノイドなど
のポリフェノールから生じたキノン体などの水素受容体
を還元して、その毒性を低減し、それらフラボノイドの
さまざまな機能の発現に寄与している。したがって、キ
ノンレダクターゼの発現を誘導することは、生体におけ
るキノンレダクターゼの機能、作用を強化することに繋
がり、キノンレダクターゼの欠乏に起因するあらゆる疾
病の予防、治療剤として有用である。
【0046】抗酸化作用を有する機能性素材の多くが、
ラジカル捕捉活性を有していることとそのラジカル捕捉
能すなわち抗酸化活性からなる機能性を期待しているの
に対し、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤は、ラジカ
ル捕捉活性をもたないインジルビンによってキノンレダ
クターゼの発現を強力に誘導して、その結果として生体
内抗酸化作用を亢進させるという点で他のキノンレダク
ターゼ誘導剤と異なっている。
【0047】本発明の、キノンレダクターゼ誘導剤の具
体的な用途としては、キノンレダクターゼの欠乏に起因
する各種疾病の治療剤、治療後の再発予防剤、治療中の
合併症予防剤、治療に使用している他の医薬品の効果増
強剤、解毒剤、疾病予防剤、健康増進剤などが挙げられ
る。より具体的には、肝炎などの肝疾患の予防、治療
剤、肝疾患に起因する合併症の予防、治療剤、解毒剤、
肝機能亢進剤、第2相薬物代謝機能亢進剤、生体の抗酸
化機能亢進剤、抗腫瘍剤の活性増強剤、発癌予防剤、発
癌性化学物質不活性化剤、それらを含有する飲食品など
である。
【0048】本発明のキノンレダクターゼ誘導剤の投与
形態としては、その摂取または投与を容易ならしめる、
例えば医薬形態であれば、エキス剤、エリキシル剤、顆
粒剤、丸剤、軟膏剤、懸濁剤、乳剤、硬膏剤、坐剤、散
剤、チンキ剤、錠剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、注射
剤、点鼻剤、鼻噴霧剤、外気道用吸入剤などの形態とし
て使用できる。
【0049】食品形態では、通常の食品から加工食品、
調理食品、半調理食品、さらには、カプセルや錠剤の形
態が認められた保健機能食品の形態としても使用でき
る。
【0050】本発明のキノンレダクターゼ誘導剤を先に
述べたような医薬品や食品の形態で用いるにあたって
は、その加工や摂取を容易ならしめる、例えば、油性基
剤、水性基剤、着香料、着色剤、湿潤剤、乳化剤、ゲル
化剤、増粘剤、酸化防止剤、防腐剤、賦形剤などの添加
物や食品素材、食品においては、野菜類、穀類、畜肉
類、魚介類などの食品素材を含有する形態であってもよ
い。また、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤は、ヒト
に投与されまたは摂取する医薬品や食品のみならず、家
畜、家禽、魚介など飼育動物の飼料および飼料添加物に
配合することもできる。本発明のキノンレダクターゼ誘
導剤を医薬として経口投与する場合、その投与量は成人
(50Kg)1日当たり0.01〜1000mg、好ま
しくは1.0〜200mg程度であり、1日に1回また
は2〜4回に分けて投与することができる。また、食品
中に添加する場合は、1日摂取量が医薬としての1日投
与量の1/10から2倍量となるような量において使用
することができる。
【0051】
【実施例】次に、本発明のキノンレダクターゼ誘導剤の
機能について実験例、実施例をあげて説明するが、それ
らに限定されるものではない。
【0052】実験例1 インジゴ植物からのインジルビ
ンの調製 徳島県で栽培されたアイの乾燥葉(福田龍株式会社より
入手)20gをエタノール300mlにて3時間加熱還
留抽出し、得られた抽出液をエバポレータにて濃縮し、
溶媒を除去して抽出物を得た。得られた抽出物を少量の
酢酸エチルに溶解して、シリカゲルカラムクロマトグラ
フィーに供した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー
はヘキサン/酢酸エチル(3:2,v/v)にて溶出を
行い、赤色色素画分を分画した。この画分を濃縮乾固
後、酢酸エチルに溶解して、常温下で放置したところ、
結晶が得られた。得られた結晶は、酢酸エチルに再度溶
解して再結晶化を行い、少量のメタノール、次いで少量
のアセトニトリルにて洗浄した。以上の操作により、紫
色の針状結晶4.5mgが得られた。後に行う機器分析
により、この結晶はインジルビンであると同定された。
【0053】実験例2 インジルビンの同定 実験例1で得られた化合物について各種機器分析を用い
て化合物の同定を行った。
【0054】質量スペクトル 実験例1で得られた化合物につき、電子衝撃イオン化法
による質量スペクトルをイオン化電圧70eVにて測定
したところ、m/z 262(M+,100%)、23
4(50%)、205(23%)、131(10%)、
103(10%)にピークが観察された。
【0055】核磁気共鳴スペクトル 実験例1で得られた化合物につき、重水素化ジメチルス
ルホキシドに溶解して、1H−核磁気共鳴スペクトル、
および、13C−核磁気共鳴スペクトルを測定した。そ
れぞれの核磁気共鳴スペクトルにより観察されたシグナ
ルの化学シフト並びに水素原子および炭素原子の帰属を
〔表1〕、〔表2〕に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】赤外線吸収スペクトル 臭素カリウム錠剤法にて、実験例1で得られた化合物の
赤外線吸収スペクトルを測定した。その結果を〔図1〕
に示した。得られた赤外線吸収スペクトルは、後述の実
験例3で得られた化学合成インジルビンの赤外線吸収ス
ペクトルに一致した。
【0059】以上の実験結果に基づき、実験例1で得ら
れた化合物は、3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−
2H−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジ
ヒドロ−2H−インドール−2−オン(通称名インジル
ビン、分子式C1610 、CAS-No. 479-41-
4)であると同定された。
【0060】実験例3 インジルビンの合成 酢酸インドキシル500mgをメタノール20mlに溶
解し、これにイサチン425mgと炭酸ナトリウム63
6mgを加えて、室温下にて30分間攪拌した。これを
室温下にて一晩放置した後、吸引濾過して得られた沈殿
物をメタノール洗浄、次いで水洗浄した。吸引濾過した
際の濾液は酢酸エチルと水で液液分配した。酢酸エチル
層を濃縮乾固したものと先に得られた沈殿物を合わせ
て、少量のジメチルホルムアミドに加熱溶解した。これ
を冷却した後、少量の水を添加していくことで、結晶が
析出した。得られた結晶は、再度ジメチルホルムアミド
に溶解して再結晶し、その結果、インジルビンの結晶6
68mgを得た。
【0061】実施例1 インジルビンによるキノンレダ
クターゼ誘導作用(in vitro) マウス肝由来細胞株hepa-1c1c7を用いて、インジルビン
処理により細胞に誘導されたキノンレダクターゼ量を測
定した。キノンレダクターゼの活性測定原理は、メナジ
オンがキノンレダクターゼによりヒドロキノンとなるこ
と、このヒドロキノンがMTT試薬[ 3−(4,5−ジ
メチル−2−チアゾリル)−2,5−ジフェニル−2H
−テトラゾリウムブロマイド ]を還元して生じるホルマ
ゾンが発色することによる。以下にその操作方法を示
す。
【0062】活性炭処理した牛胎児血清を5%含有する
α改変イーグル培地(α−MEM)に分散したhepa-1c1
c7細胞を1x10個となるよう96穴培養プレートに
撒き、24時間37℃、5%CO2下で培養した。培養
後、プレートから培地を除去し、インジルビンをあらか
じめジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解してお
き、DMSO濃度1%となるようにインジルビンを添加
したα−MEM培地に置換してさらに24時間培養し
た。以上の操作は2枚のプレートを用意して同じ操作を
行った。
【0063】培養後、一方のプレートから培地を除去
し、PBSで2回洗浄を行い、0.8%ジギトニン溶液
50μlを各ウェルに入れて20分間攪拌して細胞を溶
解した。これに反応液200μlを加えて5分から10
分間反応させた後、0.3mMジクマロール溶液を加え
て反応を停止した。この反応液の組成は、25mM ト
リス-塩酸(pH7.4);0.7% 牛血清アルブミン;
0.01% ツイーン20;5μM FAD;1mM グ
ルコース6リン酸;30μM NADP;2units/ml
グルコース6リン酸デヒドロゲナーゼ;0.3mg/m
l MTT;50μM メナジオンである。反応を停止し
た後、速やかにマイクロプレートリーダーにて、測定波
長630nm、参照波長700nmで「測定値A」を測
定した。この値はウェルあたりのキノンレダクターゼ活
性に相関する。
【0064】次にもう他方のプレートから培地を除去
し、0.2% クリスタルバイオレットを含有する2%エ
タノール溶液を100μlずつ加えて10分間放置後、
プレートごと水道水に数回浸漬して洗浄し、0.5%ド
デシル硫酸ナトリウムを含有する50%エタノール溶液
を200μlずつ加えて1時間放置することでウェルに
残った色素を可溶化した。このプレートをマイクロプレ
ートリーダーにて、測定波長550nm、参照波長70
0nmで「測定値B」を測定した。この値はウェル上の
細胞数に相関する。
【0065】以上の操作により得られた値から下記計算
式1にて細胞あたりの活性を求め、インジルビンを含有
しないDMSOだけを添加した群(対照群)の値を1と
して添加群のキノンレダクターゼ誘導比活性を算出し
た。 計算式1 (添加群の測定値A ÷ 添加群の測定値B)÷(対照群
の測定値A ÷ 対照群の測定値B)= 比活性
【0066】得られた結果を〔図2〕に示した。計算式
1により求めた比活性と細胞数に相関する測定値Bの結
果を図示した。〔図2〕で示すように、インジルビンは
hepa-1c1c7細胞に対して用量依存的にキノンレダクター
ゼを誘導した。また、この試験で用いた濃度範囲におい
ては、OD(吸光度)550−700nmの値に変化は
認められず、細胞毒性が認められていない。以上の結果
からインジルビンが優れたキノンレダクターゼ誘導物質
であることが明らかとなった。
【0067】実施例2 アセトアミノフェン誘発障害に
対するインジルビンの保護作用 アセトアミノフェンの多量投与により誘発される障害の
インジルビンによる保護作用について、以下に示すマウ
スを用いた実験で証明した。
【0068】16週齢の雌性、BALB/cマウスを5
群(対照群;N−アセチル−L−システイン「NACと
略す」200mg/kg投与群;インジルビン50mg
/kg投与群;同200mg/kg投与群;同800m
g/kg投与群、1群あたり4〜6匹)に分けて、24
時間絶食させた後、対照群には0.5%メチルセルロー
スを、正対照群(NAC投与群)にはNACを0.5%
メチルセルロースに溶解した水溶液を、試験群(インジ
ルビン投与群)にはインジルビンを0.5%メチルセル
ロースに溶解した水溶液をそれぞれ経口投与した。その
1時間後に生理食塩水に溶解したアセトアミノフェンを
150mg/kgの投与量となるよう経口投与して、肝
障害を誘発させた。アセトアミノフェン投与の24時間
後に採血を行い、遠心分離して血漿を調製し、血漿中の
アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、
アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)および乳
酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を、それぞれ和光
純薬製の「GOT−UVテストワコー」、「GPT−U
Vテストワコー」および「Lタイプワコー LDH」を
用いて日立自動分析装置7070で測定した。結果を
〔表3〕に示す。
【0069】
【表3】
【0070】〔表3〕から明らかなように、インジルビ
ン投与群は、対照群に比較して血漿中のAST、AL
T、LDH活性の上昇を顕著に抑制し、その作用は用量
依存的であった。
【0071】アセトアミノフェンは解熱鎮痛薬として知
られ、風邪薬などに使用されている。常用量の服用によ
る副作用は極めて稀であるが、過剰量を摂取すると肝機
能障害、腎臓障害、意識障害などを起こすことが知られ
ている。アセトアミノフェンは、肝臓においてシトクロ
ームP450によりN−アセチル−p−キノミネンに変
化した後にグルタチオン抱合により不活性化されて排出
されるが、多量のアセトアミノフェンを服用すると、グ
ルタチオンが枯渇したりしてN−アセチル−p−キノミ
ネンが肝臓に障害を与え、さらに肝臓から漏出したN−
アセチル−p−キノミネンが腎臓など他の臓器に障害を
与える。したがって、このように実験動物に過剰のアセ
トアミノフェンを投与することにより、比較的容易に肝
臓障害を誘発させることができ、肝機能障害の生化学的
研究手段として広く使用されている。
【0072】ASTは、アミノ酸合成の際にアミノ基の
転移反応を触媒する酵素で、ほとんど全ての細胞に含ま
れ、細胞が障害を受けることにより漏出してくる逸脱酵
素で、心筋、肝臓、骨格筋、腎臓などに多く含まれてい
る。そのため、ASTは肝疾患、心疾患、骨格筋疾患の
程度、臨床経過の指標として用いられる。ALTは、A
STと同様にアミノ酸合成に必要なアミノ基転移酵素で
あり、細胞が損傷を受けたときに漏出してくる逸脱酵素
で、ASTに比較して特異性が高く、特に肝臓での含有
量が圧倒的に多く、次いで腎臓に多く含有されている。
このため、ALTは肝疾患の指標として用いられる。L
DHは、細胞が損傷したときに漏出する逸脱酵素である
が、あらゆる臓器に含まれることから、LDHが血中に
増加していることでどの組織が損傷を受けているかを特
定することは難しい。LDHによる損傷部位の予測には
LDHのアイソザイムの解析が必要となるが、LDHは
ASTやALTなどと組み合わせて使用することにより
生体内疾患の指標として広く使用されている。
【0073】インジルビンは、アセトアミノフェン過剰
投与によるALTの逸脱を顕著に抑制し、肝障害を抑制
することが明らかとなった。また、ASTおよびLDH
の逸脱も顕著に抑制しているので、インジルビンが生体
内キノンレダクターゼ発現を誘導して、肝障害のみなら
ず他の臓器の損傷をも抑制していると考えられる。
【0074】
【発明の効果】本発明のインジルピンを含んでなるキノ
ンレダクターゼ誘導剤は、ヒトを含む動物生体のキノン
レダクターゼの発現を誘導して、多彩な生理作用を発揮
させ、例えば肝疾患、それに起因する他の疾病の予防、
治療剤として有用であり、医薬品分野、化粧品分野、食
品分野において、ヒトのみならず家畜、家禽、魚介類な
どまでをも対象にした多種多様の用途に使用できる。こ
のような顕著な効果を奏する本発明は、医療、厚生分野
に貢献するとともに、人々の健康な暮らしの向上に寄与
する、意義のある発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 3−(1,3−ジヒドロ−3−オキソ−2H
−インドインドール−2−イリデン)−1,3−ジヒド
ロ−2H−インドール−2−オン、(〔化1〕、通称名
インジルビン)の赤外線吸収スペクトル。
【図2】 インジルビンによるキノンレダクターゼ誘導
活性。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61P 43/00 121 A61P 43/00 121 // C07D 209/36 C07D 209/36 (72)発明者 山本 佳弘 兵庫県伊丹市荻野8丁目21番地の2−203 号 Fターム(参考) 4B018 MD15 MD18 ME06 ME08 ME14 4C086 AA01 AA02 BC13 MA01 NA14 ZA75 ZB26 ZC37 ZC75 4C204 BB01 CB03 DB16 EB03 FB01 GB01

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】インジルビンを含有してなるキノンレダク
    ターゼ誘導剤。
  2. 【請求項2】肝疾患の予防または治療剤である請求項1
    記載のキノンレダクターゼ誘導剤。
  3. 【請求項3】肝疾患による合併症の予防又は治療剤であ
    る請求項1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。
  4. 【請求項4】解毒剤である請求項1記載のキノンレダク
    ターゼ誘導剤。
  5. 【請求項5】肝機能亢進剤である請求項1記載のキノン
    レダクターゼ誘導剤。
  6. 【請求項6】第2相薬物代謝機能亢進剤である請求項1
    記載のキノンレダクターゼ誘導剤。
  7. 【請求項7】生体の抗酸化機能亢進剤である請求項1記
    載のキノンレダクターゼ誘導剤。
  8. 【請求項8】抗腫瘍剤活性増強剤である請求項1記載の
    キノンレダクターゼ誘導剤。
  9. 【請求項9】発癌予防剤である請求項1記載のキノンレ
    ダクターゼ誘導剤。
  10. 【請求項10】発癌性化学物質不活性化剤である請求項
    1記載のキノンレダクターゼ誘導剤。
  11. 【請求項11】請求項1〜10のいずれかに記載のキノ
    ンレダクターゼ誘導剤を含有してなる食品。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2006115202A1 (ja) * 2005-04-25 2006-11-02 Fuji Sangyo Co., Ltd. ニコチンの毒性軽減組成物

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WO2006115202A1 (ja) * 2005-04-25 2006-11-02 Fuji Sangyo Co., Ltd. ニコチンの毒性軽減組成物

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