JP2003034528A - 長尺状金属酸化物結晶の製造方法および長尺状金属酸化物結晶 - Google Patents

長尺状金属酸化物結晶の製造方法および長尺状金属酸化物結晶

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JP2003034528A
JP2003034528A JP2001217979A JP2001217979A JP2003034528A JP 2003034528 A JP2003034528 A JP 2003034528A JP 2001217979 A JP2001217979 A JP 2001217979A JP 2001217979 A JP2001217979 A JP 2001217979A JP 2003034528 A JP2003034528 A JP 2003034528A
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carbon thin
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Akira Tomita
彰 富田
Takashi Kyotani
隆 京谷
Keitaro Matsui
啓太郎 松井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 従来得ることができなかった、特定のサイズ
および形状を有する微小な長尺状の金属酸化物結晶を製
造する。 【解決手段】 略直線状の細孔pを有する無機物質Iの
前記細孔p内壁にチューブ状の炭素薄膜cを形成する工
程と、細孔p内壁に形成された炭素薄膜cの内部に金属
または金属化合物mを挿入する工程と、金属または金属
化合物mを挿入された炭素薄膜cを有する無機物質Iを
水熱処理することにより、無機物質Iを溶解除去すると
ともに、炭素薄膜c内に挿入された金属または金属化合
物mを酸化させて長尺状の金属酸化物結晶m’を形成さ
せる工程と、炭素薄膜cを加熱して除去することにより
長尺状金属酸化物結晶m’を取り出す工程とをそなえ
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定のサイズおよ
び形状を有する長尺状金属酸化物結晶およびその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、金属酸化物を結晶成長させる方法
としては、金属あるいは金属化合物を原料として用い、
これを水熱反応させる方法が広く行なわれている。しか
しながら、こうした水熱反応は、通常は強アルカリの過
酷な条件で行なわれるため、アルミニウムの陽極酸化皮
膜やメソポーラスシリカ等の無機物を鋳型として使用
し、そのサイズや形状を制御することはできなかった。
【0003】具体的には、陽極酸化皮膜やメソポーラス
シリカ等の無機物の細孔を鋳型として利用し、細孔内部
に金属あるいは金属化合物を挿入せしめて水熱反応させ
ることができれば、金属酸化物をロッド状、リボン状、
チューブ状など長尺状の形状に結晶成長させることがで
きるが、過酷な水熱反応条件下ではこうした素材の鋳型
は溶解してしまうため、サイズや形状を制御しながら結
晶成長を行なわせることはできなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述の理由から、金属
あるいは金属化合物を原料としてこれを水熱反応させる
ことにより、無機物の細孔を利用して微小な金属酸化物
結晶を生成させる場合に、サイズや形状を制御すること
ができる工業的な製造技術はいまだ確立されておらず、
このような技術の確立が望まれていた。
【0005】即ち、本発明の目的は、従来得られなかっ
た、特定のサイズおよび形状を有する微小な長尺状金属
酸化物結晶を提供することであり、また、本発明の他の
目的は、結晶のサイズや形状を制御することにより、前
述の特徴を有する長尺状金属酸化物結晶を量産する方法
を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは鋭
意検討した結果、略直線上の細孔を有する無機物質の細
孔内壁を型枠として用い、この細孔の内部に均一な直径
のチューブ状の炭素薄膜を形成した後、その炭素薄膜内
に金属または金属化合物を挿入せしめ、これを水熱処理
することによって、前記無機物質を溶解除去すると同時
に、サイズや形状を制御しながら長尺状金属酸化物を結
晶成長させることが可能となり、且つ、その炭素薄膜は
加熱によって容易に燃焼除去できることを見出し、本発
明に到達した。
【0007】即ち、本発明の趣旨は、略直線状の細孔を
有する無機物質の前記細孔の内壁に炭素薄膜を形成する
工程と、前記細孔内壁に形成された該炭素薄膜の内部に
金属または金属化合物を挿入する工程と、該無機物質を
水熱処理することにより、該無機物質を溶解除去すると
ともに、該炭素薄膜内部に挿入された該金属または該金
属化合物を酸化させて長尺状の金属酸化物結晶を生成さ
せる工程と、該炭素薄膜を加熱して除去することによ
り、該炭素薄膜内部に生成した該長尺状金属酸化物結晶
を得る工程とをそなえたことを特徴とする、長尺状金属
酸化物結晶の製造方法に存する。また、本発明の別の趣
旨は、直径が5nm〜1μm、長さが1〜100μmで
あることを特徴とする、長尺状金属酸化物結晶に存す
る。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につき
詳細に説明する。勿論、本発明は以下の実施形態に限ら
れるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲にお
いて、様々な形態に変形して実施することが可能であ
る。
【0009】本発明者等の発明に係る特開平9−142
819号公報には、略直線状の細孔を有する無機物質を
利用し、この細孔の内壁に炭素薄膜を形成した後、さら
に細孔内に異物質を挿入せしめるとともに、異物質の挿
入前あるいは挿入後に前記無機物質を溶解除去すること
によって、異物質を内包した炭素薄膜を製造することが
記載されている。
【0010】本発明に係る長尺状金属酸化物結晶の製造
方法では、上述の公報と同様に、略直線状の細孔を有す
る無機物質を使用して、まず前記細孔の内壁にチューブ
状の炭素薄膜を形成した後、さらに前記炭素薄膜の内部
に金属または金属化合物を挿入し、この無機物質を水熱
処理することにより、無機物質を溶解除去するととも
に、前記の炭素薄膜内部に挿入された金属または金属化
合物を酸化させて、長尺状の金属酸化物結晶を生成させ
る。さらに、炭素薄膜を加熱して除去することによっ
て、炭素薄膜内部に生成した長尺状金属酸化物結晶を得
るものである。
【0011】なお、本発明において「長尺状」とは、金
属酸化物結晶の立体形状であって、一方向の長さがこれ
に垂直な方向の長さに比して長い形状を広く指すものと
し、具体的には、金属酸化物結晶のアスペクト比(金属
酸化物結晶の立体形状における、最も長い一方向の長さ
と、これに垂直な方向のうち最も長い一方向の長さとの
比)が、10〜10000の範囲にある形状を指すもの
とする。すなわち、本発明における「長尺状」の定義
は、一般に長手方向の断面形状によって分類されるロッ
ド状(断面形状が略円形)、リボン状(断面形状が扁平
な略方形)等の各種形状を全て含むものである。
【0012】本発明の製造方法において、無機物質の細
孔内壁に炭素薄膜を形成する際には、i)前記細孔内壁
に有機化合物を被覆してそれを加熱することにより、該
有機化合物を炭化させて、または、ii)前記細孔中に
気体状の炭化水素を気相炭化させ、前記細孔内壁に炭素
を堆積させて、炭素薄膜を形成する。
【0013】無機物質の細孔内壁は、金属または金属化
合物挿入時には鋳型の役割を果たすものの、過酷な水熱
反応条件下では溶解してしまい、通常は鋳型としてサイ
ズを制御する機能を果たすことが困難である。しかし、
本発明では、細孔内壁に炭素薄膜を形成しておくことに
よって、過酷な水熱反応条件下で無機物質自体は溶解し
てしまっても、炭素薄膜が挿入物を保護し、かつ、鋳型
の役割を果たすことができるので、水熱合成による金属
酸化物の結晶成長のサイズを制御することができる。そ
の上、この挿入物を有する炭素薄膜を加熱するだけで、
容易に炭素薄膜を除去して内部の長尺状金属酸化物結晶
を得ることができ、工業的に有利である。
【0014】以下、本発明の長尺状金属酸化物結晶の製
造方法について、図1(a)〜(d)を用いて詳しく説
明する。なお、図1(a)〜(d)はいずれも、本発明
の長尺状金属酸化物結晶の製造方法の各工程を表わす模
式図である。
【0015】まず、第1の工程として、図1(a)に示
すように、略直線上の細孔pを有する無機物質Iを用意
し、この前記細孔pの内壁にチューブ状の炭素薄膜cを
形成する。
【0016】略直線上の細孔pを有する無機物質Iとし
て好適なものとしては、各種金属の陽極酸化皮膜、ゼオ
ライト(好適にはタイプL)、セピオライト等の粘土鉱
物等が挙げられる。このうち、特に好ましくは、アルミ
ニウムの陽極酸化皮膜(アルマイト)が挙げられる。無
機物質Iの形状としては膜状が好ましく、その厚さは、
目的とする金属酸化物結晶のサイズに応じて選択すれば
よい。
【0017】また、上述の無機物質Iが有する略直線上
の細孔pの直径は、目的とする金属酸化物結晶のサイズ
に応じて選択すればよい。細孔pの直径の制御は、種々
の常法に従って行なえばよい。上に例示したアルマイト
の場合、例えば、高電圧(高電流密度)で製膜を行なう
ほど、製造されたアルマイトが有する細孔の直径は大き
くなる。また、膜の酸化に使用する電解液としては、酸
性、アルカリ性のいずれの電解液でも差し支えない。酸
性電解液としては、主に硫酸、シュウ酸、クロム酸、リ
ン酸等が挙げられるが、この順で細孔の直径が増大す
る。
【0018】上記無機物質Iの細孔pの内壁にチューブ
状の炭素薄膜cを形成させる手法としては、前述したと
おり、有機化合物で細孔p内壁を被覆後、この有機化合
物を加熱によって炭化させる手法、または、気体状の炭
化水素を気相炭化させ、細孔p内壁に炭素を堆積させる
手法を取り得る。
【0019】前者の手法で用いる有機化合物は、何らか
の手段により液化する必要があり、液化する手段として
は、温度を上げること、溶媒に溶かすこと等が挙げられ
る。よって、こうした手段で液化することが可能な化合
物であれば、前者の手法で用いることができる。具体的
に例示するなら、フルフリルアルコール、ポリビニルア
ルコール、ポリアクリロニトリル、酢酸ビニル、これら
の一部重合物、石炭や石油等のピッチ、およびアセナフ
チレン等が挙げられる。
【0020】かかる有機化合物を液化させた状態で上述
の無機物質Iと接触させ、無機物質Iの細孔pに充填さ
せる。この無機物質Iを加熱して細孔pに充填された有
機化合物を炭化することで、無機物質Iの細孔p内に均
一な大きさの炭素薄膜cが形成される。無機物質I中の
細孔pに前記有機化合物を充填する際には、予め減圧し
ておくと細孔p中に有機化合物が入りやすいために好ま
しい。
【0021】また、有機化合物の炭化の際の加熱温度
は、有機化合物の炭化は生じるが無機物質I自体が破壊
されたり、製造されるべき炭素薄膜c自体と反応したり
する可能性のない範囲で選択すればよく、例えばアルマ
イトの場合には500〜1300℃、ゼオライト、セピ
オライトの場合には500〜1000℃が好ましい。こ
の範囲より加熱温度が低すぎると、有機化合物の炭化が
進行しにくく、この範囲より加熱温度が高すぎると、無
機物質I自体が破壊されたり、製造されるべき炭素薄膜
c自体と反応したりする可能性がある。
【0022】一方、後者の気体状の炭化水素を気相炭化
させる手法では、用いる無機物質Iの形態として、板状
のもの、薄膜状のものであって、略直線状の細孔pが厚
さ方向に連続し、さらに細孔pの両端が外部に開放した
ものが、気体状の炭化水素を細孔pの内部に通過させ易
いために好ましい。このようなものとしては、例えば
「Anodisc」(ホワットマンペーパー社製、アル
ミニウム陽極酸化皮膜)等が挙げられる。
【0023】また、用いられる気体状の炭化水素として
は、メタン、エタン、プロパン、プロピレン、ベンゼ
ン、エチレン等の、常温において気体である炭化水素が
好適に用いられる。かかる気体状の炭化水素は、通常、
キャリアガスとともに無機物質Iに接触させるように流
通させる。このときの流量は、細孔pの長さ(薄膜の厚
さ)、細孔pの径により異なるため特に限定されない
が、気体状炭化水素の濃度が高すぎると、滞留時間が長
い場合等に炭素薄膜cが得られなくなることがあるた
め、気体状の炭化水素流通条件は適宜調節する。
【0024】こうして得られたチューブ状の炭素薄膜c
の外径アスペクト比(チューブ長さ/チューブ外直径)
は、通常は20〜10000の範囲、好ましくは50〜
1000の範囲である。また、炭素薄膜cの内径アスペ
クト比(チューブ長さ/チューブ内直径)は、通常は2
0〜10000の範囲、好ましくは50〜1000の範
囲である。
【0025】次に、第2の工程として、図1(b)に示
すように、前記第1の工程において無機物質Iの細孔内
壁に設けた炭素薄膜cの内部に、金属または金属化合物
mを挿入する。
【0026】金属または金属化合物mを挿入する手法と
しては、挿入する金属または金属化合物mを何らかの手
段で液体状態にして、例えば、溶媒に可溶な物質であれ
ば溶液状態にして、含浸担持等の手段を用いて、細孔p
内壁に設けた炭素薄膜cの内部に挿入させればよい。ま
た、炭素薄膜c(あるいは、型枠として共存する無機物
質I)が変性しない程度の温度で溶融する場合は、細孔
p内壁に設けた炭素薄膜cと溶融状態で接触させ、炭素
薄膜c内に挿入させてもよい。
【0027】前者の手法を用いることのできる金属また
は金属化合物mの種類としては、例えば、鉄、コバル
ト、ニッケル等の遷移金属またはその遷移金属を含む化
合物が挙げられる。液体状態の具体例としては、硫酸
塩、硝酸塩、塩化物などの金属塩が挙げられ、この場合
には、用いる塩の種類に応じて、挿入する金属または金
属化合物mを、水溶液、有機溶媒溶液など、適宜選択し
た溶媒に対する溶液とする。有機溶媒を用いる場合、有
機溶媒の選択には特に制限はないが、メタノール、エタ
ノール等のアルコール類が好適である。作成した溶液を
含浸担持した後、適宜溶媒の沸点に併せて加熱して溶媒
を除去し、蒸留水等で洗浄、乾燥すればよい。この場
合、細孔p内壁に設けた炭素薄膜c内に上記物質を挿入
する際には、あらかじめ減圧にしておくと炭素薄膜c内
に入りやすく好ましい。
【0028】後者の具体例としては、鉛、アンチモンと
いった比較的低温で溶融する金属またはそれらの金属を
含む化合物などが挙げられる。この場合、炭素薄膜cと
の接触を良くするために、あらかじめ挿入する金属また
は金属化合物mを炭素薄膜c上に蒸着やスパッタなどで
堆積させた後、金属または金属化合物mの融点以上に温
度を上げ、毛細管現象によって炭素薄膜c内に挿入させ
るか、あるいは、あらかじめ減圧にした状態で溶融状態
の金属または金属化合物mと接触させて、炭素薄膜c内
に挿入させるなどの手法が挙げられる。
【0029】炭素薄膜c内に金属または金属化合物mを
挿入する別の手法として、挿入する金属または金属化合
物mが熱などによって気体状となる物質であれば、CV
D(chemical vapor deposition;化学蒸着)法によっ
ても挿入できる。たとえば、各金属のカルボニル錯体や
メタロセンを用い、これらを炭素薄膜c中に導くことに
よって行なう手法も挙げられる。
【0030】続いて、第3の工程として、前記第2の工
程で細孔p内壁の炭素薄膜c内部に金属または金属化合
物mを挿入せしめた前記無機物質Iについて、図1
(c)に示すように、これを水熱処理することによって
前記無機物質Iを溶解除去するとともに、炭素薄膜c内
部に挿入された金属または金属化合物mを酸化させ、長
尺状の金属酸化物結晶m’を生成させる。
【0031】水熱処理の条件として特に制限はないが、
通常、次のような条件が好適である。 温度: 通常は、80〜300℃、好ましくは、90〜
200℃、 圧力: 通常は、常圧〜20atm、好ましくは、5〜
15atm以下、 処理時間: 通常は、数分〜数日、好ましくは、数十分
〜50時間、更に好ましくは、数時間〜30時間程度、 液性: 挿入する金属または金属化合物mによるが、
鉄、ニッケル等の遷移金属またはこれを含む化合物であ
れば、アルカリ存在下が好ましい。
【0032】水熱処理に用いるアルカリの種類として
は、特に制限はないが、例えばNaOHが挙げられる。
【0033】無機物質Iの細孔p内壁は、金属または金
属化合物mの挿入時には鋳型の役割を果たすものの、水
熱反応条件下では溶解してしまい、鋳型として金属酸化
物結晶m’のサイズを制御する機能を果たすことが困難
だが、本発明においては、細孔p内壁に設けられた炭素
薄膜cが挿入物を保護し、かつ、鋳型の役割を果たすこ
とができるので、金属酸化物結晶m’のサイズを制御し
ながら水熱合成を行なうことができる。
【0034】なお、水熱処理後は、適宜、蒸留水等で洗
浄乾燥(通常は、室温〜80℃程度、好ましくは、室温
〜60℃程度)を行なう。
【0035】最後に、第4の工程として、前記第3の工
程で生成した長尺状金属酸化物結晶m’を内部に有する
炭素薄膜cについて、図1(d)に示すように、加熱し
て炭素薄膜cを燃焼除去することにより、長尺状金属酸
化物結晶m’を得る。
【0036】加熱の条件には特に制限は無く、炭素薄膜
cは燃焼するが金属酸化物結晶m’自体が破壊された
り、製造されるべき炭素薄膜c自体と反応したりする可
能性のない範囲で、適宜選択すればよい。具体的な加熱
条件としては、大気中にて、通常は300〜1500
℃、好ましくは400〜1000℃である。
【0037】以上、詳述した第1〜第4の各工程を経
て、最終的に得られる長尺状金属酸化物結晶の形状は、
挿入する金属または金属化合物の種類を始め種々の条件
によって異なるが、通常は直径が5nm〜1μm、長さ
が1〜100μm、アスペクト比が10〜10000で
ある。中でも、直径が5〜100nm、長さが0.1〜
10μm、アスペクト比が10〜1000の長尺状とな
ることが多く、逆に言えば、このような形状の金属酸化
物結晶を得る際に、本発明は好適に用いることができ
る。
【0038】また、得られる金属酸化物結晶はリボン
状、ロッド状など広く長尺状であるが、特に長手方向の
断面形状が扁平なリボン状の金属酸化物結晶が得られる
ことが多く、逆に言えば、こうしたリボン状の金属酸化
物結晶を得る際に、本発明は好適に用いることができ
る。
【0039】さらに、得られる金属酸化物結晶は単結晶
であることが多く、逆に言えば、特定形状の金属酸化物
の単結晶を得る際に、本発明は好適に用いることができ
る。
【0040】このように、本発明の長尺状金属酸化物結
晶の製造方法によれば、略直線上の細孔pを有する無機
物質Iの細孔p内壁をいわば型枠のように用いることに
より、均一な直径のチューブ状の炭素薄膜cを形成した
後、金属または金属化合物mをその炭素薄膜c内に挿入
せしめ、これを水熱処理することによって前記無機物質
Iを溶解除去し、かつ、長尺状に金属酸化物結晶m’を
生成させた後、炭素薄膜cを加熱除去することによっ
て、従来は製造できなかった、微小でありながらサイズ
の制御された長尺状金属酸化物結晶m’を得ることがで
きる。また、本方法の各工程は容易に実行可能であるた
め、本発明の適用によって、特定形状を有する微小な長
尺状金属酸化物結晶m’の量産が可能となる。
【0041】本発明によれば、直径が5nm〜1μm、
長さが0.1〜100μm、アスペクト比が10〜10
000の微小な長尺状金属酸化物結晶を得ることができ
る。中でも、これまで製造することができなかった、前
述の直径・長さ・アスペクト比を有するニッケル酸化物
の単結晶を始め、特定のサイズおよび形状を有する様々
な金属酸化物の単結晶を効率的に得ることができ、極め
て有用である。
【0042】
【実施例】以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説
明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものでは
なく、その要旨を越えない限りにおいて、種々変形して
実施することが可能である。
【0043】・実施例1 略直線状の細孔を有する無機物質として、アルミニウム
陽極酸化皮膜を用いた。この陽極酸化皮膜は、図6に示
す装置を用いて以下のように作製した。まず、陽極酸化
させるアルミニウム板(1)を、その片面が電解液(2
0%硫酸水溶液)(2)と、その裏面がイオン交換水
(3)とそれぞれ接触するように配置し、また、陰極に
もアルミニウム板(4)を用いて、前記電解液(2)に
浸潤した。このような構成で、陽極(1)および陰極
(4)に直流の定電圧20Vで2時間印加して陽極酸化
を行ない、陽極(1)表面に酸化皮膜を形成した。次い
で、陽極(1)と陰極(4)の電圧を逆にし、定電流
0.3Aとなるように電圧を10分間印加して、形成さ
れた陽極酸化皮膜を剥離させた。得られた陽極酸化皮膜
中の細孔の直径はほぼ30nmであった。
【0044】次いで、上述の手順にて得られた陽極酸化
皮膜中の細孔内壁に炭素を堆積させて炭素薄膜を形成さ
せるために、図7に示す装置を用いて以下の操作を行な
った。まず、得られた陽極酸化皮膜(5)を1枚、内径
2cmの石英反応管(6)内のガラス繊維集合体(7)
上に置き、石英管ごと炉中に設置しヒーター(8)によ
り温度を800℃とした。次に、前述の反応管(6)中
に、プロピレン濃度2.5体積%となるように窒素と混
合したガスを200ml/min(STP)で通過さ
せ、3時間かけて気相炭化を行なった。
【0045】こうして得られた炭素/アルミナ複合膜
(細孔内壁に炭素薄膜を有するアルミニウム陽極酸化皮
膜)100mgを、1torrに減圧下、2時間排気を
行なった。続いて、排気後の前記炭素/アルミナ複合膜
の炭素薄膜内に、金属塩としてNiCl2・6H2Oを挿
入した。具体的には、NiCl2・6H2Oの0.05M
エタノール溶液10mlを前記炭素/アルミナ複合膜に
含浸し、一晩(24時間)静置した後、これを取り出
し、エバポレータを用いて80℃でエタノール溶媒を除
去し、減圧加熱乾燥機中で、80℃、6時間、1tor
rに減圧下、乾燥した。これを、蒸留水で洗浄後、50
℃で24時間乾燥して、NiCl2・6H2Oを炭素薄膜
内に挿入した炭素/アルミナ複合膜を得た。
【0046】次いで、NiCl2・6H2Oを挿入した炭
素/アルミナ複合膜の20mgを、10N水酸化ナトリ
ウム水溶液50mlに浸漬し、オートクレーブ中で24時
間、150ドで水熱処理を行なった。これを蒸留水で洗
浄後、50℃で乾燥した。水熱処理により分離した炭素
薄膜のTEM(transmission electron microscope;透
過型電子顕微鏡)による写真を図2(a),(b)に示
す。黒い輪郭線で示される炭素薄膜(図1(a)〜
(d)の符号c参照)の内部に、長尺状金属酸化物結晶
(図1(c)および(d)の符号m’参照)が黒い影と
して確認できる。
【0047】さらに、大気中において、600℃で1時
間加熱して炭素薄膜を除去し、長尺状金属酸化物結晶を
取得した。得られた長尺状金属酸化物結晶のTEM写真
を図3に示す。長尺状金属酸化物結晶(図1(c)およ
び(d)の符号m’参照)が黒い影として確認できる。
【0048】・実施例2 金属塩としてNi(NO32・6H2Oを用い、前記炭
素/アルミナ複合膜に含浸させる溶液としてこのNi
(NO32・6H2Oの0.5Mエタノール溶液を使用
した他は、実施例1と同様の条件にて長尺状金属酸化物
結晶の製造を行なった。得られた長尺状金属酸化物結晶
のTEM写真を図4に示す。長尺状金属酸化物結晶(図
1(c)および(d)の符号m’参照)が黒い影として
確認できる。
【0049】また、実施例2については、電子線回折に
よる解析を行なった。電子線回折の結果を示すTEM写
真を図5に示す。電子線回折パターン(図5中の黒点の
並び)から、得られた長尺状金属酸化物(図1(c)お
よび(d)の符号m’参照)が単結晶であることが確認
された。
【0050】
【発明の効果】本発明により、従来得ることができなか
った、直径10nm〜1μm程度、長さ1μm〜100
μm程度の、特定のサイズおよび形状を有する微小な長
尺状金属酸化物結晶を得ることができ、本発明の適用に
よって、この新規な長尺状金属酸化物結晶の量産が可能
となる。かかる新規な長尺状金属酸化物結晶は、新規な
複合材料、電気伝導性材料、量子細線素子、超高速電気
素子、超高密度磁気記録媒体、非線形光学材料等として
使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)はいずれも、本発明の長尺状金
属酸化物結晶の製造方法の各工程を表わす模式図であ
る。
【図2】(a),(b)はいずれも、実施例1で得られ
た、長尺状金属酸化物結晶を内部に有するチューブ状の
炭素薄膜の形状を示す、透過型電子顕微鏡による写真
(図面代用写真)である。
【図3】実施例1で得られた長尺状金属酸化物結晶の形
状を示す、透過型電子顕微鏡による写真(図面代用写
真)である。
【図4】実施例2で得られた長尺状金属酸化物結晶の形
状を示す、透過型電子顕微鏡による写真(図面代用写
真)である。
【図5】実施例2で得られた長尺状金属酸化物結晶の結
晶状態を示す、透過型電子顕微鏡による電子線回折の写
真(図面代用写真)である。
【図6】実施例1および2で用いたアルミニウムの陽極
酸化皮膜の製造装置を説明するための模式図である。
【図7】実施例1および2で用いた炭素/アルミナ複合
膜の製造装置を説明するための模式図である。
【符号の説明】
I 無機物質 p 細孔 c 炭素薄膜 m 金属または金属化合物 m’ 金属酸化物結晶 (1) 陽極(アルミニウム板) (2) 電解液(20%硫酸水溶液) (3) イオン交換水 (4) 陰極(アルミニウム板) (5) 陽極酸化皮膜 (6) 石英管 (7) ガラス繊維集合体 (8) ヒーター
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4G048 AA02 AB02 AB05 AD04 AD06 AE05 4G077 AA01 AA04 BB05 BB10 CA01 CB01 CB02 CB06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 略直線状の細孔を有する無機物質の前記
    細孔の内壁に炭素薄膜を形成する工程と、 前記細孔内壁に形成された該炭素薄膜の内部に金属また
    は金属化合物を挿入する工程と、 該無機物質を水熱処理することにより、該無機物質を溶
    解除去するとともに、該炭素薄膜内部に挿入された該金
    属または該金属化合物を酸化させて長尺状の金属酸化物
    結晶を生成させる工程と、 該炭素薄膜を加熱して除去することにより、該炭素薄膜
    内部に生成した該長尺状金属酸化物結晶を得る工程とを
    そなえたことを特徴とする、長尺状金属酸化物結晶の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 該炭素薄膜形成工程において、 i)前記細孔内壁に有機化合物を被覆してそれを加熱す
    ることにより、該有機化合物を炭化させる手法、およ
    び、ii)前記細孔中に気体状の炭化水素を気相炭化さ
    せることにより、前記細孔内壁に炭素を堆積させる手法
    のうち、少なくとも一方を用いて該炭素薄膜を形成する
    ことを特徴とする、請求項1記載の長尺状金属酸化物結
    晶製造方法。
  3. 【請求項3】 略直線状の細孔を有する無機物質が、金
    属陽極酸化皮膜、ゼオライト、およびセピオライトの少
    なくともいずれか一つであることを特徴とする、請求項
    1または請求項2に記載の長尺状金属酸化物結晶製造方
    法。
  4. 【請求項4】 幅が5nm〜1μm、長さが1〜100
    μmであることを特徴とする、長尺状金属酸化物結晶。
  5. 【請求項5】 単結晶であることを特徴とする、請求項
    4記載の長尺状金属酸化物結晶。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009102223A (ja) * 2007-10-25 2009-05-14 Samsung Electro-Mechanics Co Ltd バナジウム酸化物ナノ粒子の製造方法
CN107381662A (zh) * 2016-07-01 2017-11-24 淮阴师范学院 锰掺杂的磁性氧化镍的制备方法及其应用

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