JP2003013130A - 鋼管製造用ビレットの製造方法およびラインパイプ用鋼管の製造方法 - Google Patents

鋼管製造用ビレットの製造方法およびラインパイプ用鋼管の製造方法

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JP2003013130A JP2001193172A JP2001193172A JP2003013130A JP 2003013130 A JP2003013130 A JP 2003013130A JP 2001193172 A JP2001193172 A JP 2001193172A JP 2001193172 A JP2001193172 A JP 2001193172A JP 2003013130 A JP2003013130 A JP 2003013130A
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billet
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Abstract

(57)【要約】 【課題】降伏比が低く、歪み時効による性能劣化が起こ
らない表面品質のよい鋼管を製造するための、鋼管製造
用ビレットの製造方法およびラインパイプ用鋼管の製造
方法を提供。 【解決手段】質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.15〜
0.40%、Mn:0.80〜1.60%、Al:0.001〜0.080%、N:
0.0005〜0.0060%を含有し、残部がFeおよび不純物から
なり、AlおよびNの含有量が下記(a)式を満足する鋼
管製造用ビレットを、製鋼工程において、残存酸素濃度
が300ppm以上の溶鋼を転炉から全出鋼量の60〜80%を
鋼した後、出鋼中の溶鋼に脱酸剤としてAlを添加し、そ
の後成分調整を行った溶鋼を鋳造することで製造する。
さらに、このビレットを熱間で穿孔圧延によって製管し
た後、熱処理により鋼管組織をベイナイト組織、または
ベイナイトの焼戻組織とする。 log(Al×N)≦−3.6…(a)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼管製造用ビレッ
トの製造方法およびその鋼管製造用ビレットを用いたラ
インパイプ用鋼管の製造方法に係り、より詳しくは、降
伏比が低く、歪み時効による性能劣化が起こらず、表面
品質のよい鋼管を製造するための、鋼管製造用ビレット
の製造方法およびその鋼管製造用ビレットを用いたライ
ンパイプ用鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】エネルギー資源が枯渇してきたことか
ら、腐食性を有する硫化物を多く含む石油、天然ガスな
どの天然資源を採掘して使用することが多くなってき
た。また、従来は採掘困難のため、海底にある油井、ガ
ス油井は見向きもされなかったが、新たに採掘されるこ
とが多い。このように天然資源の採掘環境は悪化してお
り、それら天然資源を輸送するラインパイプは、資源輸
送中に破壊されるケースも多くなっている。
【0003】そのため、近年、ラインパイプ用鋼管とし
ては高強度、高靱性の要求に加え、資源輸送中の安全性
を考慮に入れ、万が一、設計値以上の高圧が鋼管に加わ
っても、材料が降伏した後、直ちに破壊事故に至らぬた
めに降伏比性能が求められている。ここで、降伏比と
は、降伏応力と引張応力の比で表せる値(=降伏応力/
引張応力)であり、降伏応力より大きな応力が材料に付
加し、材料が降伏した後、破断に至るまでの耐久性能の
目安となる。この値が低いほど、破断は起きにくい。
【0004】また、海底にラインパイプを敷設する場合
には、船上でパイプを溶接で周継ぎしながら、海底へ鋼
管を送り込んで敷設する方法(S-ray法)や、あらかじ
め、陸上で溶接周継ぎした鋼管を20〜30m径のリールに
巻き付けたものを船で海上に運び、鋼管を巻き戻して海
底に敷設する方法(リールバージ法)など塑性変形を伴
う方法が用いられる。このため、低降伏比とともに、鋼
管材料には塑性変形による性能劣化が起こらない、いわ
ゆる歪み時効による性能劣化が小さいことが求められて
いる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】以上のような背景を受
け、降伏比を小さくすることを目的としたラインパイプ
用鋼管に関する発明が多数なされている。
【0006】特開昭62−151523号公報には、鋼
管中の炭素の含有量を一定の範囲内に制限し、圧延直後
に直接焼入れを行うラインパイプ用鋼管の製造方法の発
明が開示されている。また、特開平2−282427号
公報には、フェライトとパーライトの混合組織を有する
鋼を熱処理により、オーステナイトとフェライトの混合
組織とする鋼管の製造方法の発明が開示されている。そ
して、特開平9−111343号公報および特開平9−
111344号公報には、任意の組成を有する鋼片を穿
孔圧延して中空素管を製造し、一定の熱処理を加える鋼
管の製造方法の発明が記載されている。
【0007】しかしながら、上述の発明では、降伏比に
ついて考慮して鋼管を製造しているものの、海底にライ
ンパイプを敷設するような場合を想定していないため、
塑性変形によって生じる歪み時効による性能劣化につい
ては配慮されていない。
【0008】また、鋼管の表面品質についても考慮され
ていない。鋼管の表面品質が悪く、鋼管表面に多数の表
面疵があれば、そこを起点として破壊が起きやすくな
る。よって、鋼管に用いられる鋼材は製管性に優れると
ともに、製管しても鋼質であることが要求される。
【0009】本発明の課題は、降伏比が低く、歪み時効
による性能劣化が起こらず、表面品質のよい鋼管を製造
するための、鋼管製造用ビレットの製造方法およびその
鋼管製造用ビレットを用いたラインパイプ用鋼管の製造
方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者は、まず、降伏
比が低い中炭素鋼(炭素含有量:約0.10〜0.20質量%)
に着目した。降伏比を低く確保しつつ、歪み時効による
性能劣化が起こらず、鋼管にしても表面疵が少ない鋼管
の組成成分について検討したところ、鋼管に含まれる組
成成分が一定の範囲内にあるとき、歪み時効による性能
劣化を抑制できることが判明した。
【0011】そして、そのような組成成分を有する鋼管
を得るための製造方法について検討した結果、鋼管に含
まれる組成成分の中でも窒素がパイプライン用鋼管の特
性に大きく関与することが分かった。窒素は通常、鋼管
中に不純物として存在するため、鋼管に含まれる窒素は
少ない方が好ましいが、その除去は困難である。そこ
で、窒素を除去するのではなく、製鋼工程において、溶
鋼中に窒素が吸収されることを防止し、結果的に、窒素
の濃度を低く抑える方法について検討した。
【0012】一方、製管した鋼管の表面疵の発生要因を
調べたところ、鋼管の表面疵は、AlNによるものであ
り、製管前のビレットにできた表面疵を反映して形成さ
れたものであることが判明した。すなわち、ビレットの
表面疵の発生を抑制できれば、鋼管の表面疵の発生も抑
制できる。
【0013】本発明は、上述の知見をもとに完成に至っ
たものであり、その要旨は、下記(1)を特徴とする鋼
管製造用ビレットの製造方法および下記(2)を特徴と
するラインパイプ用鋼管の製造方法にある。
【0014】(1)質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:
0.15〜0.40%、Mn:0.80〜1.60%、Al:0.001〜0.080
%、N:0.0005〜0.0060%を含有し、残部がFeおよび不
純物からなり、AlおよびNの含有量が下記(a)式を満
足する鋼管製造用ビレットの製造方法であって、製鋼工
程において、残存酸素濃度が300ppm以上の溶鋼を転炉か
ら全出鋼量の60〜80%を出鋼した後、出鋼中の溶鋼に脱
酸剤としてAlを添加し、その後成分調整を行った溶鋼を
鋳造することを特徴とする鋼管製造用ビレットの製造方
法。
【0015】 log(Al×N)≦−3.6 … (a) このとき、鋼管製造用ビレットが、さらに、質量%で、
Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.02〜0.50%、Cu:0.05〜0.50
%、Ni:0.05〜0.50%、Nb:0.01〜0.05%、V:0.01〜
0.10%、Ti:0.003〜0.005%およびCa:0.001〜0.005%
のうちいずれか1種または2種以上を含有することが好
ましい。
【0016】(2)上記(1)の製造方法で製造した鋼
管製造用ビレットを、熱間で穿孔圧延によって製管した
後、熱処理により鋼管組織をベイナイト組織、またはベ
イナイトの焼戻組織とするラインパイプ用鋼管の製造方
法。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明は、上述したように、
(1)鋼管製造用ビレットの製造方法、および(2)ラ
インパイプ用鋼管の製造方法の2つの発明からなる。
(2)ラインパイプ用鋼管の製造方法の発明は、(1)
の製造方法により製造した鋼管製造用ビレットを用い、
ラインパイプ用鋼管を製造する方法の発明、すなわち
(1)を含む発明である。以下では、上記(1)および
(2)の製造方法に関し、1.ラインパイプ用鋼管の成
分組成と2.ラインパイプ用鋼管の製造条件についてそ
れぞれ詳細に述べる。
【0018】1.ラインパイプ用鋼管の成分組成 本発明では、ビレットの成分組成として各元素の含有量
を規定したが、製造されるラインパイプ用鋼管の成分組
成は、ビレットの組成成分と同じである。以下では、ラ
インパイプ用鋼管の成分組成について詳述する。なお、
以下で表す%はすべて質量%を示す。
【0019】C:0.10〜0.20% Cは鋼の強度を高め、また降伏比を低くする効果を有す
る。これらの効果は、C含有量が0.10%以上で得ること
ができる。しかし、Cを過剰に含有させると、溶接施工
性が低下し、溶接母材および溶接部の熱影響部における
靱性が低下するので、C含有量の上限は0.20%とする。
【0020】Si:0.15〜0.40% Siは溶鋼を脱酸し、さらに、鋼の強度を高める効果も有
する。これらの効果は、Si含有量が0.15%以上で得るこ
とができる。しかし、Siを過剰に含有させると介在物が
増加し、溶接母材および溶接部の熱影響部における靱性
が劣化するので、Si含有量の上限は0.40%とする。
【0021】Mn:0.80〜1.60% Mnは靱性を劣化させることなく強度を向上させる効果を
有する。これらの効果はMn含有量が0.80%以上で得るこ
とができる。しかし、Mnを過剰に含有させると、溶接母
材の靱性が劣化するので、Mn含有量の上限は1.60%とす
る。
【0022】Al:0.001〜0.080% Alは溶鋼の脱酸を目的として含有させる。この効果はAl
含有量が0.001%以上で得ることができ、Al含有量が0.0
01%未満では脱酸不足となって鋼質の劣化を招く。ま
た、Alには、フリーのNをAlNとして固定することで時
効を抑える効果がある。しかし、Alを過剰に含有させる
と、鋼中に非金属介在物が現出し、靱性を低下させるの
で、Al含有量の上限は0.080%とする。
【0023】N:0.0005〜0.0060% Nは靱性の低下や歪み時効の劣化を招くため、少ないほ
ど好ましい。そのため、N含有量の上限は0.0060%とす
る。また、N含有量を0.0005%未満に低減するには、特
殊なプロセスが必要となり、そのためのコストが増加す
るので、N含有量の下限は0.0005%とする。
【0024】Cr:0.05〜0.50% Crは焼入れ性を向上させる効果を有し、さらに強度を向
上させ、低降伏比を低くすることができる。これらの効
果はCr含有量が0.05%以上で得ることができる。しか
し、Crを過剰に含有させると溶接部の靱性が低下するの
で、Cr含有量の上限は0.50%とする。
【0025】Mo:0.02〜0.50% MoもCr同様に、焼入れ性を向上させる効果を有し、さら
に強度を向上させ、降伏比を低くすることができる。こ
れらの効果はMo含有量が0.02%以上で得ることができ
る。しかし、Moを過剰に含有させると溶接部の靱性が低
下するので、Mo含有量の上限は0.50%とする。
【0026】Cu:0.05〜0.50% Cuは強度の向上が期待できるとともに耐食性を向上させ
ることができる。これらの効果は、Cu含有量が0.05%以
上で得ることができる。しかし、Cuを過剰に含有させる
と材料コストが上昇するとともに、溶接性も悪化するの
で、Cu含有量の上限は0.50%とする。
【0027】Ni:0.05〜0.50% Niは靱性を劣化させることなく、強度を向上させること
ができる。これらの効果は、Ni含有量が0.05%以上で得
ることができる。しかし、Niを過剰に含有させると材料
コストが上昇するとともに、溶接性も悪化するので、Ni
含有量の上限は0.50%とする。
【0028】Nb:0.01〜0.05% Nbは析出強化により強度の向上に寄与する。この効果は
Nb含有量が0.01%以上で得ることができる。しかし、Nb
を過剰に含有させると、引張強度に比べ降伏点の上昇が
著しくなり、降伏比が高くなるのと同時に、靱性が低下
するので、Nb含有量の上限は0.05%とする。
【0029】V:0.01〜0.10% Vも析出強化により強度の向上に寄与する。この効果は
V含有量が0.01%以上にすることによって得ることがで
きる。しかし、Vを過剰に含有させると、溶接母材およ
び溶接部の靱性が低下するので、V含有量の上限は0.10
%とする。
【0030】Ti:0.003〜0.005% Tiも析出強化により強度の向上に寄与する。この効果は
Ti含有量が0.003%以上で得ることができる。しかし、T
iを過剰に含有させると、溶接部の靱性が低下するの
で、Ti含有量の上限は0.005%とする。
【0031】Ca:0.001〜0.005% Caは鋼中のSと反応して硫化物となる。圧延によっても
圧延方向に伸びることがなく圧延後も球状を維持する。
Caには、MnSのように延伸された介在物先端を起点とす
る水素誘起割れなどの発生を抑制することができる。こ
の効果はCa含有量が0.001%以上で得ることができる。
しかし、Caを過剰に含有させると、鋼の清浄性を悪化さ
せ、さらに母材の靱性を劣化させるので、Ca含有量の上
限は0.005%とする。
【0032】以上では、ラインパイプ用鋼管に含有する
各元素の含有量について述べたが、本発明は、これらの
元素の含有量のうち、さらにAlとNの含有量が(a)式
を満たさなければならない。
【0033】 log(Al×N)≦−3.6 … (a) 前述のようにAlは過剰に含有させると、鋼中に非金属介
在物が現出する。この非金属介在物の一形態としてAlN
が挙げられる。AlNはビレットを作製する際、フリーの
Nを固定して歪み時効を抑える働きをするが、AlNの現
出量が多すぎると、ビレット外面のカブレの原因とな
る。そして、ビレット外面に多くのカブレを有するビレ
ットを製管した場合、そのカブレを引き継ぎ、鋼管の外
表面に疵(表面疵)が発生する。
【0034】表面疵はその深さが浅ければ問題はない
が、深さ0.3mm以上の表面疵が多数発生すると、現地で
行う鋼管のコーティング工程において支障が発生する。
通常、一本の鋼管に対し深さ0.3mm以上の表面疵が10個
以上発生すると、ライン速度に鋼管がついていけず、鋼
管のコーティング作業に支障をきたす。(a)式を満足
すれば、鋼管に発生する深さ0.3mm以上の表面疵を10個
未満に抑えることができる。
【0035】2.ラインパイプ用鋼管の製造条件 本発明のラインパイプ用鋼管のビレットを製造するに
は、その製鋼工程において、残存酸素濃度が300ppm以上
の溶鋼を転炉から全出鋼量の60〜80%を出鋼した後、出
鋼中の溶鋼に脱酸剤としてAlを添加する。
【0036】転炉にて精錬を行う際には、通常、上吹き
ランスより酸素吹きを行い、溶鋼中の炭素を取り除くた
め、溶鋼中の酸素含有量は上昇する。そのため、溶鋼に
脱酸剤としてAlを添加して酸化を促し、溶鋼中の酸素を
Alとしてスラグ中に捕獲する。
【0037】しかしながら、溶鋼中の酸素含有量が少な
くなると、空気中より溶鋼に窒素が吸収され、溶鋼の窒
素含有量が上昇する。上述したように窒素は鋼管の表面
疵の原因となる元素であり、窒素含有量は少ないほど好
ましい。酸素が多く残存している溶鋼では、溶鋼の窒素
含有量の上昇を抑えることができる。
【0038】そこで、残存酸素濃度が300ppm以上の溶鋼
を転炉から全出鋼量の60〜80%を出鋼し、その後、出鋼
中の溶鋼、具体的にはレードル中に脱酸剤としてAlを添
加して、溶鋼中の酸素を除去することで、窒素が溶鋼に
吸収されることを防ぐことができる。全出鋼量の60%を
出鋼する以前にAlを添加した場合には、溶鋼に窒素が吸
収され、本発明の効果が発揮されない。また、80%超を
出鋼した後にAlを添加した場合には、Alはレードル中で
充分に攪拌されず、脱酸が不十分となる。
【0039】Al添加後、残りの40〜20%の溶鋼を出鋼す
ることにより、レードル中の溶鋼の攪拌を十分に行え、
レードル中の溶鋼を均一に脱酸することができる。その
結果、溶鋼中の酸素含有量はパイプライン用鋼管の製造
に問題ないレベルまで少なくすることができ、鋼管製造
用ビレットとして好適な成分の溶鋼を得ることができ
る。
【0040】このように出鋼中の溶鋼への脱酸剤として
のAlの添加のタイミングを遅らせるだけで、溶鋼中のN
含有量を低く抑えることができるので、本発明における
窒素含有量の制御は非常に簡便であり、製造コストの上
昇も発生しない。
【0041】そして、出鋼した溶鋼を鋳造して、ビレッ
トとする。鋳造は連続鋳造によって行うことが好ましい
が、通常の鋳造によるものでも問題はない。ビレット
は、鋼管用として、円形状に鋳造することが好ましい。
【0042】本発明で規定した組成を有すれば、ビレッ
トの表面に外カブレはほとんど生じない。しかし、ビレ
ット中央部にポロシティなどの欠陥が生じたときには、
ビレットを製管したとき鋼管に内面欠陥が生じる場合が
あるので、ポロシティなどの欠陥を必要により圧着して
欠陥がない状態にしなければならない。
【0043】続いて、以上のように得られたビレットを
製管し、鋼管を製造する。通常、ビレットの温度は常温
まで下げられるが、穿孔が容易に行えるようビレット加
熱炉で加熱され、穿孔および圧延が施される。この後、
熱処理を施し、鋼管組織をベイナイト組織とする。ベイ
ナイト組織とすることにより、鋼管の強度を高くするこ
とができる。
【0044】このときの熱処理は、穿孔圧延された鋼管
を熱処理炉で再加熱し、一定時間以上保持した後、水冷
以上の冷却速度で冷却すればよい。水冷以上の冷却速度
で鋼管を急冷することで、ベイナイト組織を得ることが
できる。保持温度によって羽根状ベイナイト(上部ベイ
ナイト)や針状ベイナイト(下部ベイナイト)といった
硬度など特性の異なるベイナイトが得られるが、本発明
で変態させて得るベイナイトはその種類を問わない。ま
た、さらにこのベイナイト組織を有する鋼管を焼戻し
て、ベイナイトの焼戻組織としてもよい。焼戻組織とす
ることで、靱性を高めることができる。
【0045】以上のように製造した鋼管は、降伏比が低
く、歪み時効による性能劣化が起こらず、さらに表面品
質のよいことに加え、強度も高いため、ラインパイプ用
鋼管として用いることが好ましい。特に歪み時効による
性能劣化が起こりにくいことから、S-ray法やリールバ
ージ法により海底に敷設するラインパイプ用鋼管として
は好適である。
【0046】
【実施例】表1は、本発明の効果を確かめるために用意
したビレットの組成成分、ビレット製造時の転炉中の残
存酸素濃度、および出鋼時のAl濃度を示したものであ
る。表1に示すように、溶鋼中の組成成分を様々に変化
させ、本発明で規定した組成成分の範囲内にあるもの(N
o.1〜11)と、比較のため、組成成分の範囲外のもの(No.
12〜23)について、本発明のような製鋼工程、鋳造工
程、穿孔圧延工程および熱処理工程を通し、鋼管を製造
した。
【0047】
【表1】
【0048】はじめに、製鋼工程では、本発明で規定し
たように、残存酸素濃度が300ppm以上の溶鋼を転炉から
全出鋼量の2/3(66.6%)を出鋼した後、出鋼中の溶鋼に
脱酸剤としてAlを添加し、出鋼時のAl濃度を0.001%以
下にして溶鋼中の窒素含有量を調節した。なお、比較の
ため、一部のもの(No.22)については、残存酸素濃度300
ppm未満の溶鋼を転炉から全出鋼量の60〜80%出鋼する
以前にAlを添加し、窒素含有量が高くなるようにして出
鋼した。そしてこの後、溶鋼の成分調整を行った。
【0049】次に、鋳造工程では、製鋼工程で得た溶鋼
を連続鋳造により外径360mm、長さ5.8mの丸ビレットに
した。
【0050】続いて、穿孔圧延工程では、この丸ビレッ
トを加熱し、マンネスマン穿孔法にて、高交叉穿孔し、
圧延を施し、外径323.9mm、管肉厚25.4mm、長さ12mの継
目無鋼管を製管した。
【0051】最後に、熱処理工程では、この継目無鋼管
を熱処理炉にて、950℃まで加熱し、 10分間保持した
後、冷却装置により水冷することのより継目無鋼管をベ
イナイト組織に変態させ、さらに焼戻しを行い、継目無
鋼管をベイナイト組織の焼戻組織とした。
【0052】このように製造した継目無鋼管について、
その一部を切り取りJIS Z2201に規格化されている引張
試験片とJIS Z2202に規格化されている衝撃試験片を作
製し、それぞれの試験片にJIS Z2241、JIS Z2242に従
い、引張試験とシャルピー衝撃試験を行って、引張強度
と降伏強度を測定した。
【0053】また、製造したままの継目無鋼管の管軸方
向に5%の伸びを与えた後、250℃で1時間、加熱保持し
て時効させた継目無鋼管から採取した複数の試験片を用
意し、温度を様々に変化させ、シャルピー衝撃試験を行
うことで破面遷移温度も測定し、歪み時効による性能劣
化を調べた。
【0054】一方で、継目無鋼管の表面品質を調べるた
め、継目無鋼管の外面を目視で観察し、疵深さをピット
ゲージで測定して0.3mm以上の表面疵の数を調査した。
【0055】表2は、以上のような一連の試験から得た
降伏強度、引張強度、降伏比(=降伏強度/引張強
度)、破面遷移温度および0.3mm以上の表面疵の数を各
試料についてまとめたものである。表2において、
rsは製造したままの継目無鋼管から採取した試験片か
ら得た破面遷移温度を表す。破面遷移温度(rs
が-40℃以下の場合を合格品として○、-40℃を超える場
合を不良品として×で示した。
【0056】
【表2】
【0057】また、Δrsは製造したままの継目無
鋼管から採取した試験材の時効処理を施していないもの
(通常の衝撃試験)と時効処理を施したものとの破面遷
移温度の差を表す。破面遷移温度の差(Δrs)が
15℃以下の場合は、鋼管の性能劣化はほとんどなく鋼管
施工上、歪み時効による性能劣化を考慮する必要が小さ
いため、合格品として○を付した。15℃超30℃以下の場
合は、鋼管に若干の性能劣化が見られ、鋼管施工上の配
慮が必要であるため、△を付した。30℃を超える場合
は、鋼管の性能劣化が著しいため、海底に施工するライ
ンパイプ用鋼管としては適さないので、不良品として×
を付した。
【0058】そして、表面疵については、鋼中のAl含有
量とN含有量の積の対数と表面疵の数の関係についてま
とめた。
【0059】図1は、表1および表2の結果について、
鋼中のAl含有量とN含有量の積の対数に対して発生した
表面疵の数を示した図である。図1において、縦軸は一
般的な鋼管(長さ12m)に対する深さ0.3mm以上の表面疵
の数を表す。
【0060】表2からも明らかなように、本発明で規定
した組成成分の範囲内にある鋼管(No.1〜11)について
は、降伏比が90%以下と小さく、rsおよびΔ
rsも合格品として好ましい範囲内にある。
【0061】一方、比較のために作製した、組成成分の
範囲外の鋼管(No.12〜23)については、降伏比は本発明
の鋼管と同程度の特性は得られるものの、rsおよ
びΔ rs特性については、いずれも好ましい特性は
得られなかった。
【0062】また、図1から分かるように、log(Al
×N)が−3.6以下であれば、表面疵を10個以内に抑
えることができる。換言すれば、ビレットのAl含有量と
N含有量が(a)式を満たせば、ビレット外表面のカブ
レの発生を抑えることができ、結果として、鋼管の表面
疵の発生を抑えることができるので、鋼管のコーティン
グ作業にも支障をきたすことはないことがわかる。
【0063】
【発明の効果】本発明の鋼管製造用ビレットの製造方法
は、製鋼工程において、出鋼中に投入する脱酸剤として
のAlのタイミングを遅らせるため、溶鋼中の窒素含有量
を低く抑えることができ、ビレット表面に外カブレはほ
とんど生じない。
【0064】さらに、本発明の鋼管製造用ビレットの製
造方法では、ビレットの組成成分を規定しており、その
ようなビレットで製造した鋼管は、降伏比が低く、歪み
時効による性能の劣化も小さいものとなる。ビレット表
面には外カブレがほとんど生じないため、鋼管にした際
の表面疵も少なく抑えることができる。
【0065】以上のような特性を有するので、本発明で
得られる鋼管はパイプライン用の鋼管に適している。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、表1および表2の結果について、鋼中
のAl含有量とN含有量の積の対数に対して発生した表面
疵の数を示した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K042 AA06 BA13 BA14 CA03 CA05 CA06 CA08 CA09 CA10 CA12 CA13 DA01 DA02 DD02 DE02 4K070 AA01 AA02 AB07 AB17 AC24 BA05 BB02 CD04 DA05 DA08 EA01 EA10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】質量%で、C:0.10〜0.20%、Si:0.15〜
    0.40%、Mn:0.80〜1.60%、Al:0.001〜0.080%、N:
    0.0005〜0.0060%を含有し、残部がFeおよび不純物から
    なり、前記AlおよびNの含有量が下記(a)式を満足す
    る鋼管製造用ビレットの製造方法であって、製鋼工程に
    おいて、残存酸素濃度が300ppm以上の溶鋼を転炉から全
    出鋼量の60〜80%を出鋼した後、出鋼中の溶鋼に脱酸剤
    としてAlを添加し、その後成分調整を行った溶鋼を鋳造
    することを特徴とする鋼管製造用ビレットの製造方法。 log(Al×N)≦−3.6 … (a)
  2. 【請求項2】前記鋼管製造用ビレットが、さらに、質量
    %で、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.02〜0.50%、Cu:0.05
    〜0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Nb:0.01〜0.05%、V:
    0.01〜0.10%、Ti:0.003〜0.005%およびCa:0.001〜
    0.005%のうちいずれか1種または2種以上を含有する
    ことを特徴とする鋼管製造用ビレットの製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1または2に記載の製造方法で製造
    した鋼管製造用ビレットを、熱間で穿孔圧延によって製
    管した後、熱処理により鋼管組織をベイナイト組織、ま
    たはベイナイトの焼戻組織とすることを特徴とするライ
    ンパイプ用鋼管の製造方法。
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