JP2002533477A - 結合自由エネルギーの正確な予測を含む構造ベースのドラッグデザインのためのシステムおよび方法 - Google Patents

結合自由エネルギーの正確な予測を含む構造ベースのドラッグデザインのためのシステムおよび方法

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ロバート・エス・デウィット
ユージーン・アイ・シャクノビッチ
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プレジデント・アンド・フェローズ・オブ・ハーバード・カレッジ
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Abstract

(57)【要約】 より正確に結合自由エネルギーを予測する方法を含む、改善された新規構造ベースのドラッグデザインを提供するシステムおよび方法。該システムおよび方法は、対応する知識ベースのポテンシャルデータとともに粗視化モデルを用いてリガンド候補およびリガンド候補のライブラリーを成長させる。粗視化モデルを用いた本発明に鑑みて、本発明の新規な成長法はメトロポリスモンテカルロ法を用い、その結果、必ずしも最低のエネルギー構造ではないが低いエネルギー構造が得られ、より良好なリガンド候補が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本発明は一般に、構造ベースの新規(de novo)ドラッグデザインをするため
のシステムおよび方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、新規な治療用分子
またはリガンドを製造する際に結合自由エネルギーを正確に予測する方法を含む
、新規構造ベースのドラッグデザインのためのシステムおよび方法に関する。
【0002】 (背景技術) リード化合物(leads)を見出すこと、および見出したリード化合物を最適化
することは、疾患や他の異常な身体状態に対処するのに有用な分子またはリガン
ドを開発するうえでの目標である。近年、これには、とりわけドラッグデザイン
の分子類似法(molecular similarity method)を用いることが含まれる。これ
は、新たなまたは改良された生物学的に活性で治療用の分子またはリガンドの探
索における有用なリード化合物を決定するための多くの方法の一つにすぎない。
ドラッグデザインの分子類似法は、相互に類似しているかまたは生化学的標的構
造との相補性を示すものを見出すために広範囲の化学構造を評価することに基づ
いている。このようにして同定した化学構造は、通常、標的構造に結合する妥当
に高い蓋然性を有する。この適当な化学構造の探索は、化学構造の大きなデータ
ベースを探索する探索アルゴリズム(search algorithms)を用いたコンピュー
ター技術によって促進および改善される。
【0003】 所望のリード化合物またはリガンドを開発する他の方法は、高処理量(throug
hput)スクリーニングまたはコンビナトリアルケミストリーを用いることである
。これら従来法は、ある状況下で所望のリード化合物およびリガンドを誘導する
ことがわかっている。 構造ベースの分子デザインは、ドラッグデザインのためのリード化合物分子を
同定するためのさらに他の方法である。この方法は、良好なインヒビターはその
標的レセプターとの有意な構造的および化学的相補性を有するとの前提に基づい
ている。このデザイン法は、標的部位への結合に資する特別の性質を有する分子
を作製することができる。構造ベースのデザイン法によりデザインする分子構造
は、たとえば、三次元構造がわかっている生化学的標的と相互作用することを意
味する。
【0004】 構造ベースのドラッグデザイン法は、従来技術の方法に対して明らかな利点を
有する。構造ベースのドラッグデザイン法が伝統的なリード化合物の発見および
オプチマイゼーション法に対して与える一つの重要な利点は、可能な分子間相互
作用がわかること(awareness)である。 構造ベースのドラッグデザイン法の1つの目標は、リード化合物分子を同定す
ることである。このことは様々な仕方で達成することができる。しかしながら、
大抵の構造ベースのドラッグデザイン法における主たる総括的な手順は、(1)
レセプター部位の構造を同定および決定すること;(2)理論的な原則および実
験データを用いて該レセプター部位に結合するであろう一連の推定リガンドを提
示すること(これらリガンドは合成し、その相補性について試験する);(3)
低自由エネルギーレベルで首尾よく結合したレセプター/リガンド複合体の構造
の決定を行うこと;および(4)さらに結合を高めることを目指して手順(2)
および(3)を繰り返すことである。
【0005】 構造ベースのドラッグデザイン法の成功は、推測されるように、改良された計
算法(computation)の使用により促進でき、そのような計算法は鍵となる分子
フラグメント(該フラグメントをついで連結して分子を生成させてよい)または
分子全体(存在する化合物のデータベースからかまたは分子増大(growth)アル
ゴリズムにより)の同定をはかどらせるであろう。これら計算法の進歩は、巨大
分子のレセプター部位に首尾よく結合するであろう分子またはリガンドを開発す
る能力を高めるものである。
【0006】 1つのそのような進歩である分子のコンピュータードッキング(computationa
l docking)は、レセプター部位の構造および巨大分子レセプターに対する潜在
的なドラッグデザイン候補の結合親和性の評価を考慮に入れている。このことは
、合成した分子の三次元データベースによって構造ベースのドラッグデザインを
する基礎となる。ドッキングに取りかかるうえで取り組み克服しなければならな
い相当の数学的挑戦がある。これらには、レセプター部位およびリガンドの分子
形状を記載するための明確に最良の方法が存在しないこと、不規則な物体(連結
すべきレセプター表面およびリガンド表面)を一緒にパッキングすること、およ
びグラフ理論に関連する探索上の問題点(search issues)、すなわちレセプタ
ー部位とリガンドとのマッチングを行うための同形の部分グラフの研究が含まれ
る。リガンドのドッキングは、(1)部位/リガンドの記載、(2)参照するリ
ガンドフレームおよび部位フレームの併置、および(3)相補性の評価の3つの
構成要素を有する。
【0007】 部位/リガンドの記載に関しては、レセプター巨大分子の原子座標をX線結晶
学、核磁気共鳴(NMR)またはホモロジーモデリング(homology modeling)
などの方法で得る。部位の記載は単にレセプター部位の原子座標であってよい。
しかしながら、空間的な相補性だけでなく化学的な相補性をも測定することを望
むなら、これら原子の化学的な特性についての若干の概念が必要である。部位の
容積もまた、部位の境界を同定できないなら定めてもよい。リガンドの記載は部
位の記載と全く同様である。
【0008】 多数の有機および無機化合物の構造は、X線および中性子結晶学技法を用いて
実験的に決定されている。もしもそのような構造を定められないときは、力場と
帰納的規則(heuristic rules)の組み合せを用いて原子座標を作成する市販の
コンピューターソフト製品を用いることにより、関連する化合物の近似の三次元
座標を得ることができる。
【0009】 リガンドとレセプター部位との併置を考慮するに際して、分子のドッキングに
おいて一般的に望まれるのはレセプター−リガンド複合体に関して最低の自由エ
ネルギーの構造を得ることである。さらに、この最低の自由エネルギーの探索は
、最低の結合自由エネルギーおよび選択基準に関して該構造の各位置での最良の
適合を選択する。このことを達成するための試みは、(1)推定リガンドのデー
タベースを探索し、同定したリガンドを特定のレセプター部位との各リガンドの
相互作用エネルギーに従ってランク付けを行う、および(2)コンピューターに
よる研究は特定の複合体の幾何学で成り立っている、ということになる。
【0010】 レセプター部位とリガンドとの相補性の評価においてリガンドのデザインのた
めに興味が持たれるのは結合の自由エネルギー(g結合)である。このことは、
リガンド−レセプター複合体の正確な幾何学的モデルが利用できるなら、自由エ
ネルギー摂動法を用いて直接計算できる。自由エネルギーの計算は、一般にコン
ピューターで多くの時間、すなわち日のオーダーの時間を要する。この点に鑑み
て、自由エネルギーを計算するための多くの単純化が提唱されている。しかしな
がら、これら単純化は自由エネルギーの決定に対して不正確さをもたらす傾向が
ある。このような正確さの下落は受理できないものであり、それゆえ、適度の長
さだと考えられる時間(これは分またはそれ未満の範囲である)内で自由エネル
ギーを計算し、かつ正確さを損うことのない方法に対する要求が存在する。 自由エネルギーの計算または予測は、多くの市販のソフトウエアプログラムの
いずれかにより行うことができる。これらプログラムおよびそのコンピューター
戦略の幾つかは以下に一層詳細に論じられるであろう。
【0011】 リード化合物の候補を開発するための分子またはリガンドを製造するのに用い
ることのできるフラグメントに関連した多量のデータを含むデータベースを自動
的に探索する2つの方法のうちの1つを用いることが知られている。第1の方法
は幾何学的方法であり、リガンドとレセプター部位との記述子(descriptors)
をマッチングする。第2の方法は、リガンドとレセプターとの相互作用エネルギ
ーを最小にすることによりリガンドとレセプターを並べることである。この方法
の要件を満たすため、エネルギー駆動(energy-driven)探索は、分子動力学(
「MD」)および伝統的なモンテカルロ(Monte Carlo;「MC」)シミュレー
ションに基づく。しかしながら、これら方法はコンピューターによる膨大な時間
を要する。これら方法のいずれかを用いて所定のリガンド−レセプター複合体の
最低のエネルギー状態を見出すことは根本的な問題である。
【0012】 自由結合エネルギーの実際の計算を取り巻く方法を見出す試みは、記述子、格
子(grids)およびフラグメントに基づく探索法という結果となった。記述子マ
ッチング法についてみると、結合が起ると提唱されているレセプターの領域につ
いて分析を行う。ついで、リガンドの原子を該部位の最良の位置に位置付ける。
これによって近似したリガンド−レセプターの立体構造が得られ、ついで該構造
をオプチマイゼーションによりさらに精密にすることができる。記述子マッチン
グ法は適度に速く、レセプター部位での興味のもたれる領域の良いサンプリング
を提供する。記述子マッチング法の多くは、組み合せ探索戦略を用いたアルゴリ
ズムを使用している。そのようなものであるから、パラメータ値の小さな変化が
、過度に長いコンピューターによる計算時間を引き起こすことがある。
【0013】 DOCKは最も初期のマッチングプログラムの一つである。DOCKソフトウ
エアはサンフランシスコのユニバーシティー・オブ・カリフォルニアによって開
発されたもので、標的部位の陰画像(negative image)を作成し、類似のリガン
ドについてデータベースを探索し、推定リガンドを該部位に配置し、ついで適合
の良否を評価することによって医薬を開発することにより、問題を解決しようと
試みる方法を提供する。
【0014】 DOCKソフトウエアを使用するに際して重要な要因は、結合自由エネルギー
の正確な予測である。好都合な場合では正確さは1〜2kcal/モルの高さに
達し得る。操作の際、DOCKは、レセプター部位に位置的に(locally)相補
的な球面(spheres)を用いて該レセプター部位の空間充填(space-filling)陰
画を作成する。リガンドの幾つかの原子はレセプター球面とマッチングして、該
部位中のリガンドのキラルな方向付け(chiral orientations)を生じる。該レ
セプター部位の構造と相補する候補について小さな分子のデータベースを探索す
る。
【0015】 DOCKには実際には所望とされるほど正確な予測が得られないという問題が
ある。さらに、DOCKは新規な構造を示唆することはできず、すでにデータベ
ースに存在するものを探索できるだけである。 CAVEATソフトウエア(これも記述子マッチング法である)は、リガンド
の方向的な(directional)特徴付けに基づく。CAVEATはバークレーのユ
ニバーシティー・オブ・カリフォルニアで開発された。このプログラムは、特定
のベクトルに沿って位置した原子を有するリガンドを探索する。これらベクトル
は、知られている複合体からの構造上の情報から得られる。CAVEATは、化
学構造の出発点としてのテンプレートを見出すためのリガンドデータベースの探
索に着目している。
【0016】 FOUNDATIONソフトウエアは、重要なリガンド原子のモデルと構造ベ
ースのモデルとを組み合せることを試みる記述子マッチング法を提供する。FO
UNDATIONを使用するに際して、探索者は候補分子が有していなければな
らない原子および結合のタイプを同定する。FOUNDATIONは、探索を限
定するために探索者によって提供される詳細な原子のタイプ、結合のタイプ、鎖
の長さ、およびトポロジー上の制約に著しく依存している。FOUNDATIO
Nは活性部位の立体的な構成要素を考慮するのみであり、化学的に相補的なリガ
ンドを見出すためにマッチング情報に依存している。FOUNDATIONプロ
グラムに必要とされる堅固な制約は、レセプター部位での1つの方向性に候補を
制限する。
【0017】 オーストラリアの会社であるCSIROで開発されたCLIXソフトウエアは
、レセプター部位を用いて可能な結合立体構造を定めることによりDOCKと似
ている。CLIXはレセプター部位の詳細な化学的記載に依存している。このプ
ログラムはDOCKよりも少ないレセプター−リガンドマッチングを使用する。
CLIXもまたレセプター部位での相互作用エネルギーを評価する。
【0018】 格子探索法(grid search methods)は、6度の配向空間(orientation space
)の自由度をサンプリングするのに用いる。これら方法は適当な解法(solution
)を同定するものであり、これは別個のサンプリング法では保証できないもので
ある。正確さは種々の位置の探索に使用した手順サイズにより制限される。手順
のサイズはまた探索時間をも決定する、すなわち、増加した手順の数が多いほど
探索時間も長くなる。高相補性の領域におけるさらなるサンプリングを使用した
方法は、この問題を克服する。
【0019】 第1のタイプの格子探索法は側鎖球面法(side chain spheres method)であ
る。この方法は、側鎖原子の単純化した球面表示および4の硬直な自由度の格子
探索を用いてタンパク質−タンパク質複合体を調べるものである。このプログラ
ムは、表面評価アルゴリズム、複合体の完全な分子力場評価(full molecular f
orce-field evaluations of complexes)、および最初のドッキング構造をより
精密にするためのシミュレーティド・アニーリング法を使用する。
【0020】 第2のタイプの格子探索法はソフトドッキング法(soft docking method)で
ある。この方法によれば、レセプターおよびリガンドの表面を立方体に分割して
探索の変換部(translational part)を生成させる。純粋な回転格子探索をサン
プルリガンドに対して角度を慎重に増加させた(in discreet angular incremen
ts)方向性にて行う。正確さはサイズにより制限される。処理時間スケーリング
は、回転手順サイズの三乗であり、レセプター−リガンド表面の点(receptor-l
igand surface points)の数の積である。
【0021】 フラグメント連結法(fragment-joining methods)は、官能基を独立してレセ
プター中にドッキングすることにより高相補性の領域を同定する。これら方法は
、付加した組み合せ探索のために硬直したリガンドの問題に特に悩まされるわけ
ではない。フラグメント連結法は合成されていない化合物を示唆するが、これら
フラグメントを実体的な(sensible)合成的に受理しうるパターンに連結するこ
とは困難である。フラグメント連結法は、フラグメントを最低のエネルギーの幾
何学的位置に保持しながら官能基を連結して完全な分子を生成する必要があると
いう問題がある。
【0022】 GROWは、既知の構造を有するタンパク質に相補的なペプチドをデザインす
るのに用いられているフラグメント連結法である。このソフトウエアは、Upjohn
Laboratories(カラマズー、ミシガン)で開発された。操作は、シードのアミ
ノ酸をレセプター部位に置き、ついでアミノ酸の付加を繰り返す。コンホメーシ
ョンは、前以て計算した低エネルギーの形状のライブラリーから選択する。ペプ
チドを付加する度にペプチド−レセプター複合体を最小にし、評価する。最良の
10〜100の低エネルギー構造のみをいずれれかの段階で保持する。
【0023】 GROWMOLソフトウエアは、分子に付加した新たな各原子を該分子上の近
傍の原子に対する該付加原子の化学的相補性に従って評価することにより分子を
作製する。ボルツマンの計量因子(Boltzmann weighing factor)を用い、選択
の蓋然性を高相補性スコアを有する原子の方へ偏らせる。化学的相補性は、疎水
的な接触の数(すなわち、前以て定めた「疎水性領域」を占めるカルボニル炭素
以外のリガンドの炭素数)および水素結合の数(すなわち、前以て定めた「水素
アクセプター領域」中のリガンドの水素原子数と前以て定めた「水素結合ドナー
領域」中に認められるリガンドの酸素原子数とを加えたもの)を計算することに
より決定する。
【0024】 GROWBUILDソフトウエアは、ヒドロキシ、カルボニルまたはベンゼン
環などの単一の官能基からなるライブラリーからのフラグメントを付加すること
により分子を成長させる。各構成(setup)毎に、可能なフラグメント付加を分
子の機械エネルギーに従って評価し、最良の1つを無作為に選ぶ。最初は、充填
しなければならない活性部位の断絶領域を同定するため、重要な結合領域に関す
る情報は用いない。
【0025】 ハーバード・ユニバーシティー(ケンブリッジ、マサチューセッツ)で開発さ
れたHOOKは、官能基について低エネルギーの位置を探すことによりレセプタ
ー部位中のホットスポットを見出すフラグメント連結法である。HOOKは幾つ
かの機能性フラグメントの多くのコピーの無作為な配置を用い、ついで分子動力
学を行う。 マルチプルスタートモンテカルロ法(Multiple Start Monte Carlo methods)
もまたフラグメント連結法として用いられている。これら方法は、リガンドのフ
ラグメントをレセプター部位にドッキングするためにデータベースの探索を行う
【0026】 MCSS−HOOK−DLD法は、マルチプルコピー同時探索(MCSS)を
行うことにより分子フラグメントにとって有利な相互作用部位を位置付けること
を含む。そのような探索では、CHARMM経験力場(empirical force field
)を用いてタンパク質をリガンドの平均ポテンシャル場(potential field)に
供する。得られた相互作用部位はGRIDと違って配向(orientation)に関す
る情報を含んでおり、DLD(ダイナミックリガンドデザイン)またはデータベ
ース中の分子フラグメント(HOOK)により結合力場およびリンカーsp
よびsp炭素原子と連結することができる。MCSSベースの方法の望ましく
ない側面は、大量のコンピューターによる計算が必要なことであり、現代のワー
クステーションで数日の処理時間、ついで各リガンド候補について約1時間のコ
ンピューターによる計算が必要である。
【0027】 BUILDERソフトウエアはドッキングした構造のファミリーを用い、制御
可能な密度の不規則な格子を提供する。この格子は分子フラグメントを連結する
経路を探索できる。 LUDIは、レセプター上の微細部位(microsites)中にドッキングするフラ
グメントを連結することによりインヒビターを提唱するフラグメント連結法であ
る。LUDIはBASF(シュトゥットガルト、ドイツ)で開発された。これら
フラグメントは前以て決定した分子フラグメントのリストからのものである。微
細部位は、水素結合および疎水性基によって定められる。リガンドの偽原子位置
(pseudoatom positions)が、種々の相互作用について最小値となる適切な角度
および距離に基づいて微細部位内で生成される。同定したフラグメントを、12
の官能基の1またはそれ以上からなる線状鎖を用いて連結する。
【0028】 GRIDソフトウエアはハイブリッド格子/フラグメント連結法であり、活性
レセプター部位内の多くの規則的に間隔をあけた格子点(grid points)に小さ
なフラグメントプローブを置く。このプログラムはオックスフォード・ユニバー
シティー(イングランド)で開発されたものであり、重要な水素結合基の位置を
再生することがわかっている。GRIDは経験的な水素結合相互作用ポテンシャ
ルおよび官能基の球面表示を用い、種々の分子フラグメントの親和性の輪郭を描
き出す。これは、高親和性および低親和性の領域を同定する。この輪郭は、化学
的な直覚(chemical intuition)を導き出すのに用いるか、または他の分析プロ
グラムのインプットとして用いることができる。GRIDはフラグメントの配向
を予測することはできないので、フラグメントの表示により制限を受ける。関連
するプログラムはHSITEであり、これは各点での水素結合生成の蓋然性を含
めて酵素活性部位の水素結合領域の地図を作成する。
【0029】 (発明の開示) (発明が解決しようとする技術的課題) 上記で検討したプログラムから正確な結果を得るためには、レセプター部位で
の結合自由エネルギーを理解し、評価し、予測する(または計算する)必要があ
る。また、そのようなことをコンピューターによる適度の計算時間で行う必要が
ある。現在用いられている予測するための便法の(short cut)計算方法は、構
造ベースのドラッグデザインを改善するには遺憾なところが多い。
【0030】 結合自由エネルギーの予測は、下記式による。 Δg結合=Δe結合−TΔs結合 =Δe複合体形成−TΔs複合体形成 +Δe溶媒和−脱溶媒和−TΔs溶媒和−脱溶媒和 上記式中、 Δg結合=タンパク質−リガンド複合体の全結合自由エネルギー Δe結合=相互作用エネルギーから複合体形成により誘導された分子内ひずみ
を差し引いたもの Δs結合=複合体の形成により誘導されたコンホメーション自由度の変化 Δe複合体形成=リガンド/タンパク質複合体の相互作用エネルギー TΔs複合体形成=複合体形成に伴うリガンドおよびタンパク質の両者のフレ
キシビリティーの低下によるエントロピー変化 Δe溶媒和−脱溶媒和=溶媒和のエネルギーは、水性溶媒からタンパク質結合
部位のより親油性領域への親水性基および親油性基の移動によるエネルギー因子
である Δs溶媒和−脱溶媒和=複合体形成時のリガンドと溶媒およびタンパク質と溶
媒との間の界面での溶媒の秩序の変化に関連する溶媒和のエントロピー。
【0031】 巨大分子レセプターに対するリガンドの結合親和性を迅速かつ正確に計算する
能力は、新規構造ベースのドラッグデザインにおいて依然として問題である。自
由エネルギー摂動計算法(free energy perturbation calculations)は1kc
al/モル内で相対的な結合自由エネルギーを生成することができるが、これら
方法には限界がある。収束に要するCPU(「中央処理装置」)時間は最速のコ
ンピューターを用いても過大であり、この方法は結合自由エネルギーの差異を計
算する試みがなされた分子のペア間での小さな変異に限られる。
【0032】 この点を強調するため、新規構造ベースのドラッグデザインでは、可能な限り
多くの分子を提唱されたレセプター部位で短時間にて試験することができ、試験
した構造を結合自由エネルギーの正確な予測に基づいてランク付けすることがで
きる必要がある。もしも小さな有機分子が官能基の単純な組み合せであると考え
られるなら、候補分子は、たとえば5つの官能基の選択および配置として考える
ことができる。そのようなものとして、そのような小さな有機分子を構築するの
に用いることのできるフラグメントのデータベースは、評価しなければならない
極めて多数の構造という結果となる。たとえば、50フラグメントの非常に小さ
なデータベースでさえも5官能基の10億近い候補(50の組み合せ)が得ら
れるであろう。分子フラグメントのデータベースのサイズが増大するにつれ、可
能な組み合せの数が劇的に増大するであろうことは容易にわかる。そのようであ
るから、現在の技術を用いては各組み合わせを試験するのに必要なコンピュータ
ーによる計算時間は膨大であり、それゆえ実際的でない。本発明は、探索を行う
能力を向上させるシステムおよび方法を提供するものである。とりわけ、最も意
味のある組み合せのみを試験するために迅速かつ正確な自由エネルギーの評価法
を用いる。
【0033】 すでに検討したものなどの従来のコンピューターによる計算法は、うまくいけ
ばコンピューター計算の障壁の幾つかを克服する希望のあるアルゴリズムを用い
ている。しかしながら、コンピューター計算の障壁の克服を試みるに際して、結
合自由エネルギーの予測における正確さ(これは可能な候補のランク付けに際し
て知るべき非常に重要な因子である)が大きく損われている。結合自由エネルギ
ーの正確な評価のため、熱力学サイクルの各段階でのエンタルピーおよびエント
ロピーの変化の経験的なポテンシャルおよび段階的評価を用いた精巧なシミュレ
ーションを用いて自由結合エネルギーが計算されている。これらの計算法は各分
子について過度のコンピューターによる計算時間を要し、通常の構造ベースのド
ラッグデザインには実際的でない。それゆえ、これら従来法は、完全な熱力学的
決定のための可能な候補の短いリストを提供するスコアリング法、または化学的
合成および結合自由エネルギーの実験的決定を用いている。
【0034】 結合自由エネルギーの完全な表現を近似する方法の多くにおいて、スコアリン
グは自由エネルギーへの単独の最も重要な寄与因子として複合体中のリガンドと
タンパク質との相互作用エネルギーのみに基づいている。他の方法では、ランク
付けは化学的な相補性よりも空間的な相補性に基づいている。これらの場合にお
いて、溶媒和の寄与は表面領域の近似として取り扱う。これら2つの方法のいず
れにおいてもスコアリングは不完全であるため、候補分子またはリガンドのラン
ク付けの正確さに悪影響を及ぼしている。
【0035】 新規構造ベースのドラッグデザインでは、レセプター部位へのドッキングのた
めのリード化合物候補を生成およびランク付けするための多数の方法が試みられ
ている。しかしながら、過去において結合自由エネルギーを決定するために便法
を用いたときに自由エネルギーの予測の正確さは損われていた。それゆえ、三次
元のタンパク質−リガンド複合体での結合自由エネルギーを計算するために過度
のコンピューターによる計算時間を使用しない限り、不正確さの可能性は大きく
なるであろう。候補分子およびリガンドのランク付けは主として結合自由エネル
ギーに基づいているので、候補を不正確にランク付けする可能性も非常に高くな
る。
【0036】 可能なリード化合物候補を生成するために多数の変化に富む構造をサンプリン
グするのに要するコンピューターによる計算時間は、通常、非常に膨大で実際的
でない。できるだけ多くの構造をできるだけ短時間にサンプリングし、ついで結
合自由エネルギーの正確な予測に基づいてランク付けを行うことが非常に望まし
いので、過去のコンピューターによる計算の障害を回避しているが結合自由エネ
ルギーの予測の充分な正確さを備えたリード化合物候補の成長(grow)のための
システムおよび方法に対する必要性が存在する。
【0037】 (その解決方法) 本発明の目的は、構造ベースのドラッグデザインのための新規なシステムおよ
び方法を提供することである。それゆえ、一つの側面において、本発明は、レセ
プター部位に結合する分子を新規にデザインする方法であって、手順: (a)レセプター部位中に分子を構築し、その際、該構築手順は、レセプター部
位中に入れた最初の分子フラグメントに連続的な無作為の分子フラグメントを加
え、分子フラグメントの各添加の後に成長する分子の自由エネルギーを評価し、
ついで該分子の自由エネルギー評価が該分子に可能な最低の自由エネルギー評価
よりも高くなるように、レセプター部位に加えるときに各連続的な分子フラグメ
ントを配向することを含み、 (b)手順(a)を繰り返してレセプター部位中に成長した分子の集合を生成し
、ついで増大する自由エネルギー評価に従って該分子の集合をランク付けして高
ランクの分子を同定し、 (c)手順(b)で同定した高ランクの分子の1またはそれ以上の官能基を単一
の再開始フラグメントとして選択し、該再開始フラグメントを用いて手順(a)
および(b)に従って第二世代の分子を構築し、 (d)経験的力場を用いてレセプター部位および第二世代の分子を含むタンパク
質/リガンド複合体のエネルギーを最小にし、 (e)第二世代の分子の経験的相互作用エネルギーを定量し、ついで該分子をラ
ンク付け、その際、低い相互作用力の分子は負の相互作用エネルギーがより大き
な分子よりも高くランク付けされ、負の相互作用エネルギーがより大きな分子は
負または正の相互作用エネルギーがより小さな分子よりも高くランク付けされ、
(f)手順(f)からの高ランク分子を、化学的な実行可能性(viability)、
合成の適合性(feasibility)、溶解度、およびタンパク質の構造に対する該分
子の影響の決定を含む分子の定性分析に基づいて修飾し、その際、該修飾は原子
および/または官能基置換、特定のレセプター部位からの成長の開始、塩橋また
は水素結合の導入(inclusion)、および溶解度増大手段を含み、 (g)手順(e)および(f)の両者で高ランクと同定される分子が構築される
まで手順(c)〜(f)を繰り返す を含む方法を提供する。
【0038】 一つの態様において、レセプター部位は以下のものよりなる群から選ばれる:
Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2ドメイン、MDM2
タンパク質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒドラーゼタンパク質
(とりわけ、ヒトカルボニックアンヒドラーゼIIタンパク質)。好ましくは、経
験的相互作用エネルギーはCHARMM相互作用エネルギーを含み、経験的力場
はCHARMMを含む。 本発明の他の目的は、タンパク質−リガンド複合体での結合自由エネルギーを
予測する一層正確な方法を有する構造ベースのドラッグデザインのための新規な
システムおよび方法を提供することである。
【0039】 本発明のさらに他の目的は、タンパク質−リガンド複合体での結合自由エネル
ギーを予測する一層正確な方法を用いた、レセプター部位で結合するための候補
分子またはリガンドを構築するための新規なシステムおよび方法を提供すること
である。 本発明の他の目的は、新規構造ベースのデザイン法を用いて生成した、目的と
するレセプター部位に結合するリガンド候補のライブラリーを提供することであ
る。 これら目的および他の目的は、添付の図面とともに本明細書の残りの部分で一
層詳細に記載されるであろう。
【0040】 本発明はコンピューターによる新規構造ベースのドラッグデザインのためのシ
ステムおよび方法であり、リガンドの発見および構築のための新規な方法および
結合自由エネルギーを予測するためのより正確な方法を用いるものである。従っ
て、本発明のシステムおよび方法は、対応する知識ベースの(knowledge-based
)ポテンシャルデータとともに粗視化(coarse-graining)モデルを用いること
により、一層良好に予測しうる新規構造ベースのドラッグデザイン手段を提供す
る。さらに、粗視化モデルの使用に鑑みて、本発明の新規な分子成長法(molecu
lar growth method)は、低い自由エネルギー構造という結果となる(しかしな
がら、必ずしも最低の自由エネルギー構造でなくともよい)分子またはリガンド
を構築するメトロポリス(metropolis)モンテカルロ選択法を用いる。かくして
成長させた構造も結合自由エネルギーの予測が一層正確であり、受理しうるドラ
ッグデザイン候補でありうる。
【0041】 本発明の分子成長法は、結合部位の配置空間を速やかに探索およびサンプリン
グするためにメトロポリスモンテカルロ法を用いる。これはデータベースの一部
であるフラグメントについての相互作用ポテンシャルの知見を用いて行う。メト
ロポリスモンテカルロ法はまた、本発明のシステムおよび方法に、分子またはリ
ガンドを構築するのに有用であろうフラグメントを極めて速やかに同定する能力
をも与える。
【0042】 粗視化は統計力学において普通に用いられる手順であり、最も細かい細部での
変化によって圧倒されることなく一般的な傾向を推論できるように、中間の長さ
のスケールでの事象にのみ注意を集中することを可能にするものである。形式的
には、粗視化は特定のサイズの空間内での相互作用ポテンシャルの平均という結
果となる。これら空間のサイズは、平均したポテンシャルに包摂される(subsum
ed)詳細の本質を確信できるように該システム中の幾つかの物理的距離と対応し
ていなければならない。たとえばタンパク質−リガンド相互作用に応用すると、
粗視化は、分子が水性溶媒中で秩序を誘導し得る距離にほぼ対応する長さスケー
ルを選択することを必然的に伴う。
【0043】 粗視化を用いる場合、タンパク質の原子とリガンドの原子との間の接触半径を
定め、タンパク質−リガンド複合体の結晶構造のデータベースを調べる際または
デザインするときの結合相互作用を評価する際に、接触の半径(あるいは相互作
用半径と呼ばれる)内の原子は互いに接触していると考える。粗視化法の一つの
利点は、リガンド結合の溶媒エントロピーの項(terms)をポテンシャル表面に
統合する(integrates)ことである。粗視化法の他の利点は、ポテンシャル表面
が場所的な平均化(local averaging)により滑らかになることである。このこ
とは、可能な分子の空間をモンテカルロ成長アルゴリズムによって非常に効率的
に探索することを可能にする。
【0044】 知識ベースのポテンシャルは、自由エネルギー評価に対する種々のタイプの接
触の寄与を測定する一揃いの相互作用パラメータである。これらパラメータは、
すべての種々の原子タイプの間で接触が形成される頻度についての統計を集める
ことにより構造のデータベースより得られる。粗視化と組み合せることにより知
識ベースのポテンシャルは、物理的統計的な推論に基づいて結合自由エネルギー
を評価するためのシステムを提供する。
【0045】 知識ベースのポテンシャルデータを用いた粗視化モデルは、カノニカル(cano
nical)統計力学の原理をタンパク質の亜集団に適用した結果によるものである
。とりわけ、このモデルは、折り畳みタンパク質の小さな亜集団が相互に熱平衡
にあることの決定を含む。そのようなものとして、本発明はこれら原理を採用す
る。それゆえ、タンパク質の結晶構造およびタンパク質−リガンド複合体の結晶
構造に存在する情報を各構成部分に分解し、結合自由エネルギーに対する各構成
部分の寄与を蓋然性に基づいて割り当てることができると主張する妥当な根拠が
存在する。このことは、本発明が結合自由エネルギーの予測のためにより正確な
結果を達成することを可能にし、それら結果を分子またはリガンドの構築のため
に応用することを可能にするものである。
【0046】 本発明のシステムおよび方法によれば、候補分子の同定は最低自由エネルギー
複合体の探索ではなく、レセプター部位で低い自由エネルギー複合体を形成する
候補分子またはリガンドを同定するための探索であり、ドラッグデザインのため
の最良のリード化合物を与えるものである。このことは、メトロポリスモンテカ
ルロ選択法を用いる成長法を用いることにより達成される。分子成長法は、所望
の長さの低自由エネルギー候補の生成という結果となる。
【0047】 本発明は、構造ベースのドラッグデザインによる分子成長のためのシステムお
よび方法であり、候補分子またはリガンドの構築のための新規な方法およびリガ
ンド候補のライブラリーを用い、該分子またはリガンドが成長するときの該分子
またはリガンドの結合自由エネルギーをより正確に予測する方法を用いるもので
ある。本発明のシステムおよび方法はまた、適度の長さのコンピューターによる
計算時間で結合自由エネルギーのより正確な予測のできる、候補分子またはリガ
ンドの成長を可能にする。
【0048】 本発明の方法は、相互作用を速やかに評価して強い結合リガンドを構築するこ
とを可能にし、分子の変更および伸長についての示唆を連続的に提供するもので
あり、その結果、タンパク質結合部位との優れた化学的および空間的相補性が得
られる。この点で、本発明の方法は、知識ベースのポテンシャルデータを用いた
粗視化モデルに基づく定量スコア(以下、そのような定量スコアは「自由エネル
ギー評価スコア」と称する)を提供するものであり、これは候補分子への変更を
定量的に評価できるように実験的に見出した結合自由エネルギーと直接相関し該
結合自由エネルギーの近似である。
【0049】 他の利点は、この方法が分子の相互作用構築を可能にすることである。たとえ
ば、構造ベースのデザインは、部分的に成長した分子の再開始フラグメントとし
ての使用および天然に存在するリガンド中に存在することが知られている特定の
相互作用(塩橋やII-II相互作用など)の挿入(両者とも候補分子が成長する方
向に影響を及ぼす)を可能にする。従来技術に対する他の利点としては、時間の
効率、後に連結する必要のある別個のフラグメントではなく全体の分子を生成し
評価することができること、およびスコアリング法と結合の既知の自由エネルギ
ーとを相関させることができることが挙げられる。
【0050】 他に断らない限り、以下の定義を本発明の記載に適用する。 「結合」とは、リガンドがレセプター部位と安定な配置で会合する物理的事象
である。 「ドッキング」とは、結合を可能とする配置を決定することを目標とするコン
ピューターによる手順である。 「新規構造ベースのドラッグデザイン」とは、タンパク質構造の知識を用いて
特定のレセプター部位と結合するのに資する分子またはリガンドを動的に形成す
るプロセスをいう。
【0051】 「重い原子」とは、ある分子内の非水素原子をいう。 「リガンド」とは、標的レセプターに結合する分子をいう。 「リガンド候補」とは、潜在的なリガンドとして提唱されているリガンドをい
う。あるリガンド候補が標的レセプターに結合することが実験的に示されると、
そのようなリガンド候補は「リガンド」と表示される。 「リード化合物」とは、潜在的な医薬用途、治療用途および/または薬剤用途
を有することが実験的に示されているリガンドである。 「分子」とは、分子化合物の最小の単位を形成すべく結合した原子の組み合せ
である。
【0052】 「回転異性体(rotamer)」(構造ベースのデザインの文脈における)とは、
その分子と結合部位との間の結合のねじれ回転(torsional rotation)により該
結合部位中で配向した(oriented)分子である。 「フラグメント」とは、リガンドまたは分子の構築に用いる原子または官能基
である。 「再開始フラグメント」とは、フラグメントのライブラリーから無作為に選ん
だフラグメントではなく、部分的にまたは全体的に成長した分子からの原子また
は官能基であり、本発明の方法を用いてリガンドまたは分子の構築を行うために
出発のインプットとして用いる。 「相互作用半径」とは、タンパク質原子とリガンド原子とが互いに相互作用し
て結合する最大の距離である。
【0053】 「準拠状態(reference state)」とは、すべての相互作用タイプの頻度が正
確に平均となるリガンド原子とタンパク質原子との人為的な配置である。それは
平均の確率
【数2】 として最も良く記載される。 「準化学的近似」とは、カノニカル統計力学の原理に基づいて確率をエネルギ
ーに変換する数学的方法である。 「経験的相互作用エネルギー」とは、数学的等式およびパラメータによるリガ
ンドとタンパク質との間の相互作用の物理的エネルギーの式であって、特別の形
態の等式をより簡単な相互作用システムの研究から採用したものをいう。
【0054】 本明細書において用いる「アルキル」なる語は、1〜12の炭素原子、好まし
くは1〜8の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖の脂肪族基をいい、1、2また
は3の置換基で任意に置換されていてよい。特に断らない限り、アルキル基は飽
和、不飽和または部分的に不飽和であってよい。それゆえ、本明細書において「
アルキル」なる語は、飽和アルキル基と同様にアルケニル基およびアルキニル基
を包含することを特に意図している。好ましいアルキル基としては、これらに限
られるものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、te
rt−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ビニル、アリル、イソブテニル
、エチニル、およびプロピニルが挙げられる。
【0055】 本明細書において「置換した」アルキル、シクロアルキル、アリール、または
へテロ環基とは、1〜約4、好ましくは1〜約3、さらに好ましくは1または2
の非水素置換基を有するものをいう。適当な置換基としては、これらに限られる
ものではないが、ハロ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル、アルキル、アルク
アリール(alkaryl)、アリール、アラルキル、アルコキシ、アミノ、アルキル
カルボキサミド、アリールカルボキサミド、アミノアルキル、アルコキシカルボ
ニル、カルボキシ、ヒドロキシアルキル、アルカンスルホニル、アレンスルホニ
ル、アルカンスルホンアミド、アレンスルホンアミド、アラルキルスルホンアミ
ド、ホスホリルアルキルカルボニル、シアノ、およびアルキルアミノカルボニル
基が挙げられる。
【0056】 本明細書において用いる「シクロアルキル」なる語は、3〜12、好ましくは
3〜8の炭素原子を有する飽和および部分的に不飽和の環状炭化水素基を含み、
その際、環上の1または2の位置がオキソ基で置換されていてよく、シクロアル
キル基はさらに任意に置換されていてよい。好ましいシクロアルキル基としては
、これらに限られるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペ
ンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ
ノン、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0057】 「アリール」基は、任意に置換されていてよい1〜3の芳香族環を含むC
14芳香族残基である。好ましくはアリール基はC〜C10アリール基であ
る。好ましいアリール基としては、これらに限られるものではないが、フェニル
、ナフチル、アントラセニル、およびフルオレニルが挙げられる。「アリールア
ルキル」基はアルキル基に共有結合したアリール基を含み、いずれかが独立に置
換されていてもよいし置換されていなくてもよい。好ましくはアリールアルキル
基はC1−6アルキル(C6−10)アリールであり、ベンジル、フェネチル、お
よびナフチルメチルを含むがこれらに限られるものではない。「アルカリール」
または「アルキルアリール」基は、1またはそれ以上のアルキル置換基を有する
アリール基である。アルカリール基の例としては、これらに限られるものではな
いが、トリル、キシリル、メシチル、エチルフェニル、およびメチルナフチルが
挙げられる。
【0058】 「へテロ環」基は、約3〜約8の原子を有する環構造であって、1またはそれ
以上の原子がN、OおよびSよりなる群から選ばれるものである。へテロ環基は
、炭素原子上でオキソまたは上記に挙げた置換基の1つで任意に置換されていて
よい。へテロ環基はまた、独立に窒素原子上でアルキル、アリール、アラルキル
、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、アリールカルボニル、アリールス
ルホニル、アルコキシカルボニル、アラルコキシカルボニルで置換されていてよ
く、または硫黄原子上でオキソまたは低級アルキルで置換されていてよい。好ま
しいへテロ環基としては、これらに限られるものではないが、エポキシ、アジリ
ジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、
チアゾリジニル、オキサゾリジニル、およびモルホリノが挙げられる。
【0059】 ある好ましい態様において、へテロ環基はへテロアリール基である。本明細書
において用いる「へテロアリール」なる語は、5〜14の環原子、好ましくは5
、6、9または10の環原子を有し、環状の配列で共有される6、10または1
4のπ電子を有し、炭素原子に加えてN、OおよびSよりなる群から選ばれた1
〜約3のへテロ原子を有する基をいう。好ましいへテロアリール基としては、こ
れらに限られるものではないが、チエニル、ベンゾチエニル、フリル、ベンゾフ
リル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジ
ニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、キノキサニル、テトラゾリル、オ
キサゾリル、チアゾリル、およびイソキサゾリルが挙げられる。
【0060】 他の好ましい態様において、へテロ環基はアリール基またはへテロアリール基
に融合している。そのような融合したへテロ環の例としては、これらに限られる
ものではないが、テトラヒドロキノリンおよびジヒドロベンゾフランが挙げられ
る。 本明細書において用いる「アシル」なる語は、アルキルカルボニルまたはアリ
ールカルボニル置換基をいう。 「アシルオキシ」なる語は、アルキルオキシカルボニルまたはアリールオキシ
カルボニルをいう。 本明細書において用いる「アミド」なる語は、ホルミルアミノ、アルキルカル
ボニルアミノ、またはアリールカルボニルアミノをいう。「アミノ」なる語は、
NH、アルキルアミノ、アリールアミノ、および環状アミノ基を包含すること
を意味する。
【0061】 図1、一般に100は、新規構造ベースのドラッグデザインのためにリード化
合物候補を構築およびランク付けするための本発明の方法の一般的な図解を提供
する。図1に示すように、分子成長法108は102および104からの入力を
受け取る。104では(1)タンパク質構造および(2)その結合部位について
の情報が提供される。この情報は、標準ブルックヘブンプロテインデータバンク
(「PDB」)の書式または表記法での結合部位の座標、タンパク質原子の座標
およびタンパク質原子のタイプを含む。結合部位に関しては、提唱されたレセプ
ター部位を同定するために少なくとも1つの座標が提供される。104の自由エ
ネルギー評価法は、構築されつつある分子またはリガンドの自由エネルギーの評
価を提供する。自由エネルギー法は、図3に従って開発したエネルギー表からの
入力を受け取る(これについては以下に記載するであろう)。多数の分子または
リガンドが構築されたら、通常、その結合自由エネルギーに基づき、110でド
ラッグデザインのためのリード化合物候補としてランク付けされる。
【0062】 分子成長法108への第二の入力は、構築した分子についての自由エネルギー
評価104である。記載したように、この自由エネルギー評価法は図3に従って
開発される計算した自由エネルギーデータベースからの情報を用いる。この予測
は、相互作用モデルおよび準拠状態の適切な選択、適当な相互作用半径の選択、
目的とする原子についての知識、タンパク質−リガンド複合体の既知の構造に関
する情報(知識ベースのポテンシャルデータ)、および準化学的近似に基づいて
いる。 108の分子成長法は図2の一般的に200で詳細に示してあり、これについ
ては以下に記載するであろう。この方法は、中間のおよび最終的な分子またはリ
ガンドの受理(acceptance)をその評価した結合自由エネルギーに基づいて条件
として制御するために、メトロポリスモンテカルロ(「MMC」)選択プロセス
を用いる。
【0063】 図1および図2を参照しながら、108の分子成長法をより詳細に検討する。
図2の106でエネルギー表(図3に基づく)を計算する。この表の計算を所定
のセットのパラメータについて一度行う。パラメータを変えたときは表を再度計
算する。たとえば、相互作用半径を5オングストロームから3オングストローム
に変えたとき、表を再計算する。分子またはリガンドの構築の際にアクセスでき
るように、本発明の方法の開始時点または開始頃に表を計算することが必要であ
る。
【0064】 図2の202で、標的レセプター部位を有するタンパク質を入れる。これにつ
いで手順102が続き、ここで該標的レセプターを有するタンパク質に関する情
報が図1の108から入力される。この情報は目的とするタンパク質の構造およ
び結合部位を記載する。結合部位の記載において、その相対的な位置が座標の形
態で与えられる。この時点から分子成長法は、単結合で連結したフラグメントか
らなる簡単な有機分子である分子またはリガンドを成長させるであろう。 204では水素分子(「H」)を座標上のタンパク質の結合部位中に無作為
に位置させる。このH分子は、手順206を満足させるための存在する分子と
みなされる。手順206に従い、H原子の1つを新たな結合部位として無作為に
選択する。
【0065】 手順208は、フラグメントのライブラリーから無作為にフラグメントを選択
することにより行う。たとえば、ライブラリーは表1に示すフラグメントを含ん
でいることができる。表1 :分子成長法のためのフラグメント
【0066】 手順210では、無作為に選択したフラグメント上の少なくとも1のH原子を
無作為に選択する。H分子からの選択したH原子およびフラグメントからのH
原子は、タンパク質結合部位で構築される分子のための最初のフラグメント結合
を形成するであろう。 手順212では、第一のフラグメントと手順204で入れたH分子からの残
りのH原子との間で第一の(かつ新しい)結合が形成される。この結合が形成さ
れるとき、選択した2つのH原子が除去される。本発明に従って、これら新しい
結合の角度および結合の長さは妥当な近似であることが保証される。
【0067】 次の手順は214であり、ここでは新規フラグメントが結合部位で低エネルギ
ーレベルにて適切に位置されるように、生成した結合および結合部位に関して新
規フラグメントを該新規結合の周りでのひずみ回転により配向させる。好ましく
は、新規結合の周りでのひずみ回転による新規フラグメントの配向に際して、配
向は所定の増分にて行う。これら所定の増分は、なお穏当なコンピューターによ
る計算時間を可能とするであろう最小のものである。最も好ましくは、ねじれ配
向は60°の増分で起る。立体的に妨げのない配向について、その自由エネルギ
ー値を手順216で評価する。最も好ましくは、配向は原子の対がそのファンデ
ルワールス半径の合計の70%以内にあるようなものである。低いエネルギーま
たは最低のエネルギーを生じるフラグメントまたは回転異性体の位置が、成長し
つつある分子の候補とみなされる。
【0068】 本発明の分子成長法を用い、いかなる所望のサイズの分子またはリガンドをも
構築できることがわかった。このことは、H原子の置換および該置換したH原子
に前以て連結させた原子の結合によりフラグメントを付加できることにより実現
される。該タンパク質に結合した構造のいずれのH原子も潜在的な成長部位であ
るという点で分枝鎖形成効果は充分に実現される。
【0069】 216では構築する分子の自由エネルギーの予測をする。自由エネルギーの評
価法は図3の300に詳細に示してある。図3は、フラグメント単位で成長しつ
つある分子についての所望の自由エネルギー情報を与えるのに用いるエネルギー
表を作成または計算する方法のブロック線図である。何を評価するのかを理解す
るため、分子の結合自由エネルギーを決定する要因を理解する必要がある。結合
自由エネルギーの評価法を詳細に検討する前に、分子成長法の残りの部分を検討
することにする。
【0070】 手順216の後、分子成長法は手順218に進む。本発明のシステムおよび方
法は、知識ベースのポテンシャルデータを用いた粗視化モデルを用い、必ずしも
最低ではないが低い自由エネルギーの複合体を有する候補リード化合物分子を開
発および同定するために、コンビナトリアル探索空間(combinatorial search s
pace)(タンパク質の結合部位)(これは大まかなエネルギー景観(landscape
)である)を評価する。本発明のシステムおよび方法は、手順218でMMC選
択プロセスを用いることにより多種最小問題(multiple minimum problem)を克
服している。このフラグメントが条件(condition)として受理されるか否かを
決定するため、回転異性体の各配向について結合自由エネルギーが計算されたら
、218のMMC選択プロセスは、今行っている成長手順の前でかつ最適の配向
にある成長手順の後に原子当たりのエネルギーに関して比較を行う。もしも新た
に構築した手順で原子当たりのエネルギーが低下しているなら、その配向は条件
として受理される。しかしながら、もしも原子当たりのエネルギーの増加が経験
されても、それもまた条件として受理されるが、式(Example)(2):
【数3】 (式中、 p=受理の確率; Δg=ΔG/N(ΔGは目的とするフラグメントを付加したときの自由エネル
ギーの差異であり、Nはリガンド中の原子の総数である)は原子当たりの自由エ
ネルギーの変化である; T=温度) によって定められる確率にてである。
【0071】 本発明のシステムおよび方法によるMMC選択プロセスは、原子当たりのエネ
ルギーが場合により増加するのを可能にする。このことは、小さな分子を結合部
位の堅固な立体領域中で成長させ、該分子を溶媒または他の非占拠領域中に成長
しなくてはならないようにし、タンパク質と辺縁部でのみ相互作用している場合
に必要である。かくして、そのような増加を受理したため、その後に結合の自由
エネルギーをより大きく低下させる機会が提供されてよい。
【0072】 本発明のMMC選択プロセスをオプチマイゼーション法として用いることには
利点がある。この方法は、有意に一層のメトロポリス不履行(failures)には導
かない回転異性体の無作為選択に照らして低いエネルギー分子を作製する。さら
に、この方法は、間接的に可能な最も堅固な立体的相補性という結果となるであ
ろう。
【0073】 220での手順は、構築した分子がこの時点で充分に大きいか否かを決定する
。充分に大きいなら、この方法は手順222に向けられる。手順222では、こ
のタンパク質の同じ結合部位で他の分子を構築するか否かを決定する。さらなる
分子を構築しないなら、この方法はこのタンパク質結合部位について分子を生成
することを停止し、手順230に進んで候補の分子またはリガンドを構築すべき
次のタンパク質を待機する。手順222での答えが「yes」であり他の分子を
生成するなら、この方法は手順204に戻り、そこで新たな分子またはリガンド
を構築すべきタンパク質の結合部位にHが加えられる。
【0074】 220で分子が充分に長くはないと決定されると、本発明の方法は手順206
に戻り、そこで上記で記載した仕方にて、存在する分子に付加するために他のフ
ラグメントが無作為に選択される。 本発明のシステムの方法を行うに際し、該方法の実行を取り巻くパラメータが
考慮される。考慮されるパラメータの幾つかは、構築を行うときの温度、立体的
な妨げを評価するときに原子間で許される最も近い接近、およびフラグメント回
転異性体を選択するときの角度の増分である。
【0075】 好ましくは、選択される温度は、単位時間当たりに最も多くの低エネルギー構
造を生成するものである。2つの原子の最も近い接近は、それらのファンデルワ
ールス半径の合計のあるパーセントである。というのは、これがデータベース中
の最も近い接近と良好な相関をもたらすからである。フラグメントのねじれ配向
のために選択した増分の量は、さらにより小さな増分へと洗練することができる
。しかしながら、そのようなより小さな増分は、結果を得るのに有意に長いコン
ピューターによる計算時間という結果となりうる。60°のねじれ回転増分、7
0%のファンデルワールス接触半径、および10.0のアルゴリズム温度という
好ましいパラメータが与えられると、少なくとも20の重い原子の分子を約1秒
で生成することができる。
【0076】 ここで結合自由エネルギーの評価法を図3を参照しながら詳細に検討する。上
記で記載したように、式(1)を用いて結合自由エネルギーを評価する: Δg結合=Δe結合−TΔs結合
1) =Δe複合体形成−TΔs複合体形成 +Δe溶媒和−脱溶媒和−TΔs溶媒和−脱溶媒和 再び図3を参照すると、エネルギー表の一部である結合自由エネルギーを評価
するに際して、302と304の項目を306の項目と組み合せて、既知のタン
パク質−リガンド複合体の原子間相互作用の統計(310に示す)を生成する。
310の情報は、構築している特定の分子の結合自由エネルギーを評価するのに
用いる知識ベースのポテンシャル相互作用データを形成する。
【0077】 302で、タンパク質−リガンド複合体中に結合すべき原子のための大きな相
互作用半径が選択される。大きな相互作用半径を選択するのは、溶媒和エントロ
ピー効果を考慮できるからである。最も適した長さを相互作用半径に選択する。 304では可能な相互作用の異なるクラスに基づいた原子のタイプに関する情
報が提供される。表2は304に含まれる情報の例を提供する。表2 :原子タイプ相互作用データ それゆえ、項目306は、少なくともタンパク質−リガンド複合体に存在する
と思われる原子タイプに関する情報を含んでいる。
【0078】 306のデータベースを参照すると、このデータベースは、知られているタン
パク質−リガンド複合体の構造の一覧、それらの座標、および対応する化学的要
素を含む。このデータベースは、さらに情報が得られるにつれて頻繁に更新され
うるものである。本発明の方法を、構造および結合の情報が以前に実験的に決定
されているタンパク質−リガンド複合体に適用した。情報がブルックヘブンプロ
テインデータバンク(「PDB」)から利用できるタンパク質−リガンド複合体
のサンプルを表3に示す。そのような例は、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ
(「PNP」)およびアミノ酸結合タンパク質(「LST」)を含む。表3 :タンパク質−リガンド複合体データベース
【0079】 302および304からの情報は、306の情報と組み合せたときに310の
知識ベースのデータとなる。とりわけ、310の情報は、既知のタンパク質−リ
ガンド複合体における原子間相互作用の統計であり、これは構築しようとする分
子またはリガンドの結合自由エネルギーのより正確な予測を可能にするであろう
。 次の手順は、310の統計を、特定の原子タイプ間での相互作用の自由エネル
ギー寄与を構成する一揃いの相互作用パラメータに編集することである。310
から既知のタンパク質−リガンド複合体での原子間相互作用の確率が与えられる
と、この情報は構築しようとする分子またはリガンドの準拠状態と組み合される
。この準拠状態は、溶媒エネルギーおよび立体配置エントロピー効果を説明する
ように選択される。
【0080】 結合エネルギーから評価を生成するために組み合せる第三の項目は、構築しよ
うとする分子またはリガンドのタンパク質−リガンド複合体の近似である(31
2にある)。好ましくは、使用する近似は準化学的な近似である。 308、310および312からの情報を組み合せると、その結果得られるの
は106のエネルギー表であり、これは構築しようとする分子またはリガンドに
可能な相互作用の各タイプへの評価した自由エネルギー寄与を提供するのに用い
られる。106の自由エネルギー表で提供されるデータの一例を表4に示す。表4 :エネルギー表
【0081】 本発明の統計的な根拠を検討する前に、図4および図5を説明する。これら図
面は、図1、図2および図3の側面をグラフで示す。図2および図4を参照する
と、タンパク質402(一般的に400で示す)を入れたとき、該タンパク質を
定め、404の座標「X」などの結合部位の座標を決定する。ついで、406の
分子などのH分子を結合部位に加える。理解されるであろうように、単一
の結合部位に1を超えるH分子を加えてもよい。 図2および図5を参照すると(一般的に500で示す)、フラグメント502
の1つのH原子を最初の結合を形成するために選択する。この結合が形成された
ら、H分子406の選択したH原子(図4)およびフラグメント502を除去
する。新たな結合504が形成されるとき、最初のフラグメントが分子の構築に
際して加えられている。
【0082】 加えたフラグメントを今度は結合504の周りに増分にて回転させて最良の適
合を得、自由エネルギー評価を種々の配向に基づいて行う。新規な分子の評価を
上記で記載したMMC選択法に基づいて行い、ついで図2の方法の残りの部分を
行う。 記載したように、本発明は対応する知識ベースのポテンシャルデータを用いた
粗視化モデルを行うものである。このモデルを用いるのは、互いに熱平衡にある
折り畳みタンパク質の亜集団にカノニカル力学の原理を適用できるからである。
そのようなものとして、タンパク質の結晶構造およびタンパク質−リガンド複合
体の結晶構造を各構成部分に分解することができる。ついで、各部分の寄与を蓋
然性に基づいて割り当てることができる。
【0083】 一般に統計力学では、同じエネルギーにある2つの状態は、ある位置を占める
のに等しい確率を有する。このことは、式(3)で表される:
【数4】 上記式中、 P ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用のエネルギー確率; eij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用のエネルギー; k=ボルツマン定数; T=データベース情報を得た実験温度; Z=規格化定数。
【0084】 タンパク質−リガンド複合体を形成するに際して、正確に同じエネルギーを有
する立体配置が同様に等しく形成されるわけではない。これは、リガンドによっ
てサンプリングした空間中に境界が強く存在することから2つのエントロピー効
果が生じるからである。エントロピー効果は、(1)溶媒の秩序付け(solvent
ordering)(タンパク質−溶媒界面、リガンド−溶媒界面、および複合体−溶媒
界面における)および立体的な妨げによる原子間相互作用に対する制限、および
(2)ほぼ固定されたタンパク質およびリガンドの化学的構造である。エントロ
ピー効果はエネルギー事象とは相関がないため、式(4)に示すように、サンプ
リング確率P(これはエントロピー効果と関係する)として表すことができる
【数5】 上記式中、 P ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用のサンプリング確率; sij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用のエントロピー; k=ボルツマン定数; Z=規格化定数。
【0085】 式(3)のPと式(4)のPとの積は、全確率と大まかな結合自由エネル
ギー(これはタンパク質−リガンド複合体中のタンパク質とリガンドとの間の原
子間相互作用を記載するのに選択した相互作用モデルに依存する)との間の関係
を与える。これは式(5)で表される。
【数6】 上記式中、 P ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用の全確率; P ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用のエネルギー確率; P ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用のサンプリング確率; eij=タンパク質原子iとリガンド原子jとの間の相互作用のエネルギー; sij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用のエントロピー; k=ボルツマン定数; T=データベース情報を得た実験温度; Z=規格化定数。 選択した相互作用モデルは、相互作用半径および好適な原子タイプのセットか
らなっている。
【0086】 式(5)は式(6)に示す自由エネルギーg ijの解が得られるように変え
ることができる。これは準化学的近似を含む。式(6)は観察した相互作用の頻
度から決定する。
【数7】 上記式中、 g ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用の大まかな自由エネルギー; T=データベース情報を得た実験温度; k=ボルツマン定数; Z=規格化定数; Pij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用の全確率。
【0087】 適当な準拠状態を選択する場合には、規格化定数を省くことができる。準拠状
態は、各大まかな自由エネルギー項g ijについて
【数8】 の自由エネルギーに寄与する。このことは式(7)、(8)および(9)により
示される。
【数9】 式(7)、(8)および(9)中、
【数10】 ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用の正味の自由エネルギー; g ij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互
作用の大まかな自由エネルギー; Pij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用の全確率; T=データベース情報を得た実験温度; k=ボルツマン定数; Z=規格化定数。
【0088】 式(9)は、タンパク質−リガンド複合体の結晶構造中の原子間相互作用につ
いての統計的な情報を項毎の自由エネルギーへの寄与として(to term by term
contributions to binding free energy)記載する。gijは合計したときに、
104に提供する式(1)中の完全な形態の自由エネルギーを近似するであろう
。 知識ベースのポテンシャルデータをタンパク質−リガンド結合事象に適用する
ための正しい相互作用モデルおよび準拠状態は、式(6)(下記に繰返し記載す
る)の項から演繹される(deducted)。
【数11】
【0089】 さらに詳しくは、溶媒秩序の獲得または損失のために複合体の形成に関して溶
媒和エントロピーの変化が起り、これはリガンド、タンパク質、または複合体中
の原子に暴露した溶媒のポテンシャル表面間の相関関係である。これら相関関係
は、リガンド、タンパク質または複合体の境界を越える水分子のサイズの2倍で
ある。リガンドとタンパク質との間の相互作用は脱溶媒和という結果となるので
、立体配置のエントロピーは変化する。このように、タンパク質とリガンドとの
間で特定の分子間接触を形成するには、接触している各原子が脱溶媒和しなけれ
ばならない。このプロセスにより大量の秩序が破壊されたときには、そのような
特定の接触の形成のための脱溶媒和によりエントロピーが増大する。
【0090】 タンパク質とリガンドとの間の大きな相互作用半径の選択は、溶媒秩序の相関
関係長(the correlation length of solvent ordering)でなければならない。
これが事実であるなら、起っていることが観察される特定の接触の確率は、自由
エネルギーの予測に対する溶媒和エントロピーの寄与の平均的な効果を含むであ
ろう。そのようであるから、本発明のシステムおよび方法は相互作用モデルのた
めに大きな相互作用半径を選択するであろう。本発明の目的のためには、この相
互作用モデルは、リガンド原子とタンパク質原子が互いの相互作用半径内にある
なら、タンパク質原子と接触すべきリガンド原子を定めるであろう。
【0091】 生成した各接触は、脱溶媒和に基づくエネルギー損失を伴う。これは準拠状態
で計上しなければならない。準拠状態を定めるに際して、特定の接触の脱溶媒和
による損失の特異性は一般的な要素となって計算に入れられ、大きな相互作用半
径を用いた相互作用モデルにおける残りのエネルギー寄与は、単に溶媒和による
損失が生じたことを考慮に入れている。
【0092】 準拠状態の選択に際して、タンパク質に関して制限されないリガンドの空間的
なサンプリングが有効に存在する。そのようであるから、準拠状態は化学構造を
感知していない。このように、特定の構造の自由エネルギー評価と準拠状態の評
価との間の差異は、特定の大抵堅固な化学構造の形成時の原子の収集(collecti
on)における立体配置エントロピーの損失を説明している。ここで式(8):
【数12】 (g ijから
【数13】 が差し引かれる)を考慮すると、制限されないサンプリングのエントロピー効果
および溶媒和の効果が考慮に入れられる。
【0093】 上記に示した式を用いると、本発明のシステムおよび方法は、式(10)によ
って定められる全結合自由エネルギーの決定に大部分基づき、候補の構造を評価
し、ついでランク付けする。
【数14】 上記式中、 ΔG=全結合自由エネルギー gij=タイプiのタンパク質原子とタイプjのリガンド原子との間の相互作
用の正味の自由エネルギー Δij=この項は、iおよびjが互いに相互作用半径内になければ0であり、
相互作用範囲内にあれば1に等しい。
【0094】 上記に記載した相互作用モデルおよび準拠状態を用い、ΔGは複合体形成にお
ける自由エネルギーの全変化の近似である。上記で検討した粗視化は溶媒和のエ
ントロピー効果を含み、準拠状態は溶媒和エネルギーの効果および立体配置エン
トロピーを考慮に入れている。さらに、本発明のシステムおよび方法によれば、
原子タイプの一般化ではなく、原子タイプおよびそれが複合体形成において実際
に起っているエネルギー寄与に及ぼす効果について立ち入った考察を行っている
。 以下の実施例は本発明をさらに説明するであろう。これら実施例は本発明の範
囲を制限することを意図するものではなく、また制限すると解釈してはならず、
本発明の範囲は特許請求の範囲によってより充分に定められる。
【0095】実施例1 :実験的な結合エネルギーとの相関 結合自由エネルギーの近似の正確さを試験するため、本発明の方法を結合自由
エネルギーの実験的な測定と比較した。本発明のシステムは、自動モード、指向
(directed)モードまたは補助(assisted)モードの3つのモードのうちの一つ
で操作できる。自動モードでは、必要とされるすべてのことは、出発材料のタン
パク質構造および結合部位の近傍を特定するための該タンパク質上の座標を与え
ることである。この入力に基づき、該システムは特定した座標の相互作用半径の
長さ内に少なくとも1の原子を有するリガンドを生成する。指向モードは、選択
した分子フラグメントおよび該フラグメントがどこに結合すべきかを使用者が特
定した、相互作用法である。補助モードは、使用者がフラグメントを特定するこ
とから開始される。ついで、補助モードは自動的に進行する。このモードは、使
用者が成長させようとする分子に特定の分子フラグメントを導入することを可能
にする。 本発明の方法を、プリンヌクレオシドホスホリラーゼ(「PNP」)およびヒ
ト免疫不全ウイルス1プロテアーゼ(「HIV−1プロテアーゼ」)を含む、そ
の構造および結合に関する情報がこれまでに実験的に決定されている幾つかのタ
ンパク質−リガンド複合体系に適用した。
【0096】プリンヌクレオシドホスホリラーゼ 本発明により結合自由エネルギーを近似する方法を、プリンヌクレオシドホス
ホリラーゼ(「PNP」)についてデザインし、合成し、アッセイしたグアニン
ベースのリガンドに適用した。表5に掲げたX基またはR基を含むPNPリガン
ドを、本発明のシステムおよび方法を指向モードにて低エネルギーコンホメーシ
ョンで用いて相互作用させながら構築した。そのようなものとして、これら分子
を、あたかも本発明の新規分子成長法を用いて生成させたかのようにして試験し
た。言い換えれば、コンピューターによる充分な計算時間が与えられるならば、
本発明のシステムおよび方法は列挙した分子および対応するいかなるコンホメー
ションをも生成することができた。これら正確なリガンドの非指向生成(すなわ
ち、指向モードでない)は、とても起りそうもない。本発明のシステムおよび方
法による表5に示したPNPリガンドの生成は、結合定数またはIC50測定の
対数として得た自由エネルギー(これは複合体形成の傾向の実験的な決定である
)を本発明の知識ベースのポテンシャルに相関させることを可能とした。同じ方
法をSH3ドメインおよびHIV−1プロテアーゼの例にも用いた。
【0097】 以下のPNPリガンドを本発明の方法により試験した。
【化4】 上記式中、RおよびXはそれぞれ表5に列挙した以下の基を含む。
【0098】表5 :PNP候補リガンド
【表1】
【表2】
【0099】 各分子はグアニンまたは9−デアザグアニンフラグメントを含んでおり、これ
をグアニンの1ulb結晶構造中の座標に固定した。構造の平衡の結合モードを、
本発明の粗視化した知識ベースの(coarse-grained knowledge-based)ポテンシ
ャルにより提供されるポテンシャル表面に対するコンホメーション探索により決
定した。低いリン酸感受性を有するとして記録した分子は、リン酸の濃度を50
mMまで増加させたときに結合定数が15またはそれ以下の因数で変化するもの
である。高度に感受性の分子は、幾つかの場合に140の因数で影響を受ける。 本発明による知識ベースのポテンシャルデータは、結合定数の大きさの5を超
える次数で実験的な結合自由エネルギーとよく相関する。本発明のシステムおよ
び方法による結合自由エネルギーの予測に対して見出された強い相関関係は、リ
ード化合物分子の新規ドラッグデザインを行うことができることを示している。
【0100】HIV−1プロテアーゼ HIV−1プロテアーゼは、構造ベースのドラッグデザインのためになされた
多くの努力の標的であった。Abdel-Meguid, S. S.ら、Biochemistry 1994, 33:
11671-11677、Thompson, S. K.; Murphy, K. H. M.; Zhaong, B.; Winborne, E.
; Green, D. W.;およびFisher, S. M.ら、J. Med. Chem. 1994 37: 3100-3107を
参照。しかしながら、粗視化した知識ベースのポテンシャルと実験的に決定した
結合自由エネルギーとの間の相関関係を試験するためのリガンドの系を選択する
に際して、幾つかの留意点が必要であった。第一に、実験的な決定は、該系中の
成員間で同一の条件下で行わなければならなかった。第二に、結合定数は広範な
範囲に及ぶ必要があった。第三に、結合モード座標は刊行されているかまたはコ
ンホメーション探索により入手できる必要があった。第四に、分子は構造的に様
々であるが、それでもほぼ同じ分子量を有する必要があった。以下のHIV−1
プロテアーゼリガンドを本発明の方法により試験した。
【0101】
【化5】
【0102】 上記式中、XおよびR(またはR')は、表10に列記する以下の基を含む。表10 :HIV−1プロテアーゼ候補リガンド
【表3】
【0103】 上記PNPの例のように、これら分子は共通する構造モチーフを有しているの
で、結晶構造(1hpsおよび1sbg)を用いてこれらモチーフの座標を定め、各分
子の平衡に対してコンホメーション探索を用いることにより、各リガンドの結合
モードを決定した。また、結合部位中の構造を特定した水もタンパク質の一部と
して含ませた。本発明の構造ベースのデザイン法および実験的結合定数(CHA
RMM相互作用エネルギー)を用いて決定した粗視化した知識ベースのポテンシ
ャル間の相関を図12に示す。
【0104】 図11に、構造および結合についての情報を実験的に得た、PNP、SH3ド
メインおよびHIV−1プロテアーゼの3つのタンパク質−リガンド系の定量的
な相関関係の要約を示す。各場合に有意の相関関係が観察された。無作為の出現
の確率は、同数の点の無作為の選択が所定の相関定数を有したであろう確率とし
て定めた。かくして、観察された相関関係が系統的であり疎らなサンプリングの
結果ではなかった信頼は、PNP、SH3ドメインおよびHIV−1プロテアー
ゼに対してそれぞれ99.8%、88.9%および95.0%である。表11 :相関関係データの要約
【0105】実施例2 :新規デザイン 本発明の新規デザイン法は、一般に以下の5つの段階で行われるものとして検
討することができる。 I.結合部位のガイド付きツアー 多くの分子を生成し、最良のスコアリングの分子の間で高頻度で生じる定性的
な特性を観察する。 II.テンプレートからの成長 上記観察から分子の幾つかの部分を選択して再開始フラグメントとして使用す
る。本発明の方法を用い、これらフラグメント上の特定の部位から分子を生成さ
せる。これにより使用者は、分子成長の方向を選択でき、上記で観察した特性を
含めることを試みることができる。 III.定量分析 CHARMMのような経験的力場を用い、段階IIからの最良の分子の各々で生
成した複合体のエネルギーを最小にする。本発明の方法により提供される自由エ
ネルギー評価(あるいは本明細書で粗視化したポテンシャルを称する)および経
験的な相互作用エネルギーの両者で良好なスコアリングを示した分子をさらに詳
細に吟味する。
【0106】 IV.定性分析 これら高スコアリングの分子を、定性的な相互作用、化学的な実行可能性、合
成の適合性、溶解度、並びにタンパク質においてリガンドが誘発する構造変化の
観察に基づいてさらに詳細に吟味する。 V.オプチマイゼーション 本発明の方法および化学的な直覚を用い、最良の分子の定量的および定性的ス
コアを上昇させる。一般にこれは、原子および/または官能基置換、特定の部位
からの成長、または塩橋または水素結合の導入、または該分子の溶解度増大の努
力を伴う。
【0107】 本発明の目的は、タンパク質上のレセプター部位に結合する分子を新規にデザ
インする方法であって、手順: (a)レセプター部位中に分子を構築し、その際、該構築手順は、レセプター部
位中に入れた最初の分子フラグメントに連続的な無作為の分子フラグメントを加
え、分子フラグメントの各添加の後に成長する分子の自由エネルギーを評価し、
ついで該分子の自由エネルギー評価が該分子に可能な最低の自由エネルギー評価
よりも高くなるように、レセプター部位に加えるときに各連続的な分子フラグメ
ントを配向することを含み、 (b)手順(a)を繰り返してレセプター部位中に成長した分子の集合を生成し
、ついで増大する自由エネルギー評価に従って該分子の集合をランク付けして高
ランクの分子を同定し、 (c)手順(b)で同定した高ランクの分子の1またはそれ以上の官能基を単一
の再開始フラグメントとして選択し、該再開始フラグメントを用いて手順(a)
および(b)に従って第二世代の分子を構築し、 (d)経験的力場を用いてレセプター部位および第二世代の分子を含むタンパク
質/リガンド複合体のエネルギーを最小にし、 (e)第二世代の分子の経験的相互作用エネルギーを定量し、ついで該分子をラ
ンク付け、その際、低い相互作用力の分子は負の相互作用エネルギーがより大き
な分子よりも高くランク付けされ、負の相互作用エネルギーがより大きな分子は
負または正の相互作用エネルギーがより小さな分子よりも高くランク付けされ、
(f)手順(e)からの高ランク分子を、化学的な実行可能性、合成の適合性、
溶解度、およびタンパク質の構造に対する該分子の影響の決定を含む分子の定性
分析に基づいて修飾し、その際、該修飾は原子および/または官能基置換、特定
のレセプター部位からの成長の開始、塩橋または水素結合の導入、および溶解度
増大手段を含み、 (g)手順(e)および(f)の両者で高ランクと同定される分子が構築される
まで手順(c)〜(f)を繰り返す を含む方法を提供することである。
【0108】 とりわけ、本発明は、基質上に存在するレセプター部位に結合させるための分
子を新規にデザインする方法を提供し、その際、該基質は、好ましくはSrc−
ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2ドメイン、MDM2タンパク
質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒドラーゼタンパク質よりなる
群から選ばれる。 本発明の他の目的は、本発明の新規構造ベースのデザイン法に従って目的とす
るレセプター部位に結合するリガンド候補のライブラリーを構築することであり
、該デザイン法は下記手順を含む: (a)成長させようとする分子が結合するレセプター部位の少なくとも一部の分
子的構成についてレセプター部位を評価し、成長させようとする分子が結合する
レセプター部位の少なくとも一部の少なくとも一つの座標を生成し、ついで少な
くともレセプター部位の分子的構成に関して、成長させようとする分子が結合す
るレセプター部位の部分の座標を出力し、 (b)知識ベースのポテンシャルデータを用いて成長させようとする分子の自由
エネルギーを評価し、該評価した自由エネルギーを出力し、ついで (c)手順(a)および(b)からの出力を用いてレセプター部位に結合させる
ための分子を構築し、その際、該構築手順は、該分子の自由エネルギー評価が該
分子に可能な最低の自由エネルギー評価よりも高くなるような配向にある分子フ
ラグメントを選択することにより該分子を構築することを含む。好ましい態様に
おいて、以下の基質上のレセプター部位に結合するリガンド候補のライブラリー
を構築する:Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2ドメイ
ン、MDM2タンパク質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒドラー
ゼタンパク質。
【0109】CD4 CD4タンパク質は、ヘルパーT細胞で発現される免疫グロビンファミリーの
膜貫通コレセプター(coreceptor)である。CD4タンパク質は、クラスIIの主
要組織適合遺伝子複合体(MHC−II)タンパク質の非多型部分に結合すること
によってヘルパーT細胞と抗原提示細胞との間の接触に関与し、ついで結合した
Lckキナーゼの活性化が続き、T細胞での下流(downstream)活性化事象に導
く。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)は、タンパク質gp120がCD4レセプ
ターに結合することによってT細胞中への侵入を獲得する。このCD4のPhe
43の近傍のgp120結合部位がリガンドデザインの標的であった。
【0110】 デザインプロセスの段階Iで生じる可能な相互作用のうちで、Lys46およ
びAsp56を境界とする狭いポケット中の水素結合の形成と同様に、Phe4
3のフェニル環とのII−II相互作用が重要であることが明らかであった。本発明
の方法から得られる第一世代の分子を図13に示す。ここで、これら分子の殆ど
で水素結合コアおよび疎水性残基が同じ相対的配向で認めることができる。これ
ら図13に示す第一世代CD4候補の定性分析の結果を下記表12に示す。表12:図13に示す第一世代CD4候補の定量分析 分子 重い原子当たりの自由エネルギー CHARMM相互作用 評価のスコア エネルギー(kcal) 8 −26.2 −82.3 17 −30 −80.9 32 −28.5 −53.6 33 −36.3 −70.6 35 −26.8 −80.8 41 −45.7 −99 45 −26.9 −59.8
【0111】 表12に示す定性データおよび定量的な特性を用い、分子41をさらなる分析
のために選択した。図14はCD4に対するリガンド候補として第二世代の分子
を示す。分子41bは分子41の糖様の環構造の結合部位を手動で変えることに
より作製したもので、Phe42とのII−スタッキング(II-stacking)相互作
用が改善された。分子41c、41dおよび41gは、本発明のデザインモデル
により生成した環置換基により41bから得られた。分子41eは、糖様の環構
造をピリジン基に連結しているフレキシブルな鎖を短くし飽和させることにより
41bから得られ、これもII−スタッキングを改善した。分子41fは、結合部
位の幾何学によって示唆される手動の変化により41eから得られた。分子41
hは、フレキシブルな鎖から糖様の環へ橋を加えて該分子の結合コンホメーショ
ンを保存することにより41eから得られたものであり、これによってその堅固
さが増した。分子41iは、7員環上の酸素原子を炭素原子で手動置換すること
により41hから得られた。この置換は、分子41i中の種々の角度でのその効
果のためにII−スタッキングを弱くする。表13は、これら第二世代分子の定量
分析および定性分析を記載する。
【0112】表13:図14に示す第二世代CD4候補の定量分析 分子 重い原子当たりの自由エ CHARMM相互作用(kcal) ネルギー評価のスコア 相互作用 ひずみ 正味 41 −45.7 −99 14.4 −84.3 41b −47.9 −139 20 −119 41c −45.1 −128 20.7 −107.3 41d −46.1 −120 33.2 −86.8 41 −50.6 −112 36.6 −75.4 41f −50.5 −116 20.1 −95.9 41g −49.4 −82 15 −67 41h −49.9 −119 22.5 −96.5 41i −48 −86 20.5 −65.6 ひずみエネルギーは、適合ベースの(adapted-basis)Newton−Raphson法を用
いて結合したコンホメーションと収束への気相最小化から得られるコンホメーシ
ョンとの間の内部エネルギーの差異として計算する。正味のCHARMMエネル
ギーは相互作用エネルギーとひずみエネルギーとの和である。
【0113】 図15は、CD4のgp120結合部位での分子41hの三次元構造を示す。
図15(a)は、構造ベースドラッグデザインを用いて新規に生成した、CD4
タンパク質上のレセプター部位に結合するリガンド候補を示し、下記式V:
【化6】 を含む。 このリガンド候補内に存在する相互作用は、Phe43との部分的なII−スタ
ッキング、並びにLys46およびAsp56との4つの分子間水素結合および
ピリジン基の配向を安定化する1つの分子内水素結合を含む。7員の融合環橋は
、該分子の結合したコンホメーションにおいて多くの堅固さを付与する。
【0114】SH3ドメイン Src−ホモロジー−3(SH3)ドメインは、PI3K、Grb2、Crk
などの種々の細胞内シグナル伝達メディエーターで認められる保存されたドメイ
ンであり、最終的に細胞の増殖、分化、および移動などの細胞応答に導くシグナ
ル経路を媒体する様々なタンパク質−タンパク質相互作用に参画している。これ
らプロセスの不規則さは幾つかの普通にみられる疾患の原因に寄与しているため
、治療発明のための候補としてSH3ドメインを考慮することが重要になってい
る。 最近、2つのクラスのポリプロリンらせんペプチドがSrc SH3ドメイン
に結合することがわかった(クラスI RXLPPLPおよびクラスII LPPL
PXR)。これらペプチドは保存された残基によって形成される3つのポケット
に収容される。すなわち、アルギニンによって占められペプチドの配向を振り向
ける特異性ポケット(specificity pocket)、およびそれぞれLPペアによって
占められる2つのLPポケット。以下の2つのデザイン努力は1つのLPポケッ
トと特異性ポケットに着目する。
【0115】特異性ポケット 最近、「偏向要素(biasing element)」PLPPLP(2つのLPポケット
を占める、ArgがなくX=PであるクラスIペプチドの一部)のN末端に結合
したコンビナトリアル合成した小さな分子リガンドが特異性ポケットに結合する
ことが示された(Combs, A. P.; Kapoor, T. M., Feng, S., Chen J. K., Daude
-Snow, L. F., Schreiber, S. L., J. Am. Chem. Soc., (1996) 118: 287-288)
。このアッセイは、N末端プロリンに結合した第一のモノマーの極めて強い選択
を明らかにした。アシル化モノマーは該ポケット中での成長の機会を提供したの
で、これを再開始フラグメントとして用い、成長はこのモノマー上のアシルH原
子からのみ進行し、それゆえ該分子のペプチド様の性質は保存されると主張する
ことにより、本発明の方法を用いてリガンドを特異性ポケット内で成長させた。
【0116】 段階Iの後、高スコアリング分子の2つの特性が特に重要であることが明らか
であった。第一に、Tyr55およびTrp42との大量の疎水的接触の形成。
第二に、Asp23およびThr20上のドナーおよびアクセプターによる水素
結合の形成。第一世代リガンドを図6に示す。図6に示す分子は、再開始フラグ
メントとしてアシル化モノマーを用いて結合部位で生成させた100の分子のう
ちの最良の6つの分子である。これら分子は以下のような定性的な特徴を有する
:ポケットのRTループ中の残基と水素結合を形成するグルコース様の環、およ
び結合ポケット中のトリプトファン残基およびチロシン残基と疎水的に接触した
不飽和環系。分子3は定量的に良いスコアを示し(表6を参照)、Tyr55お
よびTrp42との疎水的な相互作用が改善されていることを示唆した。
【0117】 さらに最適化するために1つの基本的なテンプレート(分子3)を選択した。
該分子において、糖基は水素結合相互作用をなし、該分子の残りの部分は疎水的
な相互作用を促進するための高いポテンシャルを残していた。この選択は主とし
て、CHARMM相互作用エネルギー(これは強いけれども、表6に示すように
他の第一世代候補に比べると遥かに弱かった)ではなく本発明の粗視化した知識
ベースのポテンシャル分子成長法を用いて分子3のスコアリングを促進する機会
に基づいていた。
【0118】表6:図6に示す第一世代SH3特異性ポケット候補の定性分析 分子 重い原子当たりの自由エネルギー CHARMM相互作用 評価のスコア エネルギー(kcal) 2 −32.7 −117.9 3 −32.9 −59.4 5 −23.9 −107.2 6 −29.4 −62.9 9 −30 −68.4 17 −33.2 −46.3 ある非必須官能基を取り除いて分子3aを調製した(図7参照)。分子3aは
、ピロール環から1つの置換基を取り除くことにより分子3から得られた。グル
コースのコンホメーションが可能な限り変わらないようにするため、5員環を飽
和させることにより分子3aの相当のひずみエネルギーを軽減させた。
【0119】 ピロール基の飽和はその後のデザインの再開始フラグメントである分子3bに
導き、この分子の内部ひずみエネルギーは表7に示すように分子3aに比べて大
きく低減していた。この分子上の幾つかの水素原子を可能な成長のための部位と
して用いることにより、本発明の方法を2つのオプチマイゼーションジェネレー
ションにより用いた。CHARMMによる複雑な構造のオプチマイゼーションの
後、分子3bを再開始フラグメントとして用いたが、この化合物は好適な結合部
位として中央の5員環上のH原子しかなかった。最良のスコアリングの候補3c
を再開始フラグメントとして用いて分子3dを作製したが、該分子のフェニル環
はTyr55とII−スタッキングコンホメーションを形成する。末端アミド基の
再配置がTrp42との部分的なII−スタック(II-stack)を形成するフェニル
基の一部を形成できることに注目してから、手動変化により分子3dから分子3
eを得た。また、1つのカルボニル基を除去して炭素原子をspからsp
変えることにより連結鎖をよりフレキシブルにし、内部ひずみエネルギーを低減
させた。得られた分子3e(図8に示す)は、タンパク質と2つのII−スタッキ
ング相互作用および3つの水素結合を形成することができる。
【0120】表7:図7に示す第二世代SH3特異性ポケット候補の定性分析 分子 重い原子当たりの自由エ CHARMM相互作用(kcal) ネルギー評価のスコア 相互作用 ひずみ 正味 3a −27.3 −54.6 32.2 −21.6 3b −27.1 −51.4 18.5 −32.9 3c −33.4 −77.2 27.4 −49.8 3d −34.7 −59.7 24.4 −35.3 3 −37.8 −57.9 19 −38 ひずみエネルギーは、適合ベースのNewton−Raphson法を用いて結合したコン
ホメーションと収束への気相最小化から得られるコンホメーションとの間の内部
エネルギーの差異として計算する。正味のCHARMMエネルギーは相互作用エ
ネルギーとひずみエネルギーとの和である。
【0121】SH3ドメインLPポケット LPポケットに対するデザイン努力は、偏向要素の位置2,3にあるLPをミ
メチックで置換したいとの望みからのさらなる挑戦に直面した。新たなリガンド
は該ポケットの各境界のプロリン残基(偏向要素の1および4)とのアミド結合
を有することが望まれ、妥当な構造とされる分子の幾何学を厳重に拘束すること
が目標であった。 分子の成長が各境界プロリンからポケットに向かって内側に進むように、本発
明の方法はプロリン1,4を再開始フラグメントとして用いることによってLP
ポケットに対する所望の候補リガンドを首尾よくデザインすることができた。こ
れらSrc SH3ドメインのLPポケットに対する第一世代、第二世代および
第三世代のリガンド候補を図9に示す。
【0122】 段階Iのデザインの結果は以下のとおりである:Pro3の代わりに本発明の
方法は、Pro4から成長した7員環の疎水性環(図9b)に対する強い選択を
示したが、これはTyr52、Arg11、Tyr8およびPro19の側鎖と
疎水的に接触させる。Leu2の代わりに本発明の方法は、Pro1から成長す
る幾つかの候補を示唆した。これらの最良のものは図9c〜eに示してある。こ
れら第一世代の分子は、Pro3が結合する領域では主として疎水性のフラグメ
ントが選択されるが、Leu2部位では疎水的な接触(Trp34とおの)と水
素結合する相互作用(残基Asn51およびSer50との)との両者を生成す
るフラグメントが好まれることを明らかにした。この最後の特性は、純粋に疎水
性のロイシン側鎖には存在しない。
【0123】 上記セグメントを組み合せるため、幾つかのリンカーを手動で、および上記セ
グメントを再開始フラグメントとして用いた本発明の分子成長法を用いて、構築
した。これらのうち最適のもの(すなわち、大きなコンホメーションひずみエネ
ルギーを誘発することなく共有結合を可能とするもの)を用いてLeu部位フラ
グメントとPro部位フラグメントとの各ペアを連結させた。連結によって誘発
されるわずかなひずみはCHARMM最小化で低減させた。第二世代の分子(す
なわち、最良に連結された分子)を表9f〜kに示す。これら各分子は、本発明
の構造ベースのデザイン法でも、経験的測定でも、強いCHARMMスコアでも
良いスコアリングを示した。最初の3つの世代のSH3 LPポケット候補の定
量分析を下記表8に示す。
【0124】表8:図9に示す最初の3つの世代のSH3 LPポケット候補の定量分析 分子 重い原子当たりの自由エネルギー CHARMM相互作用 評価のスコア エネルギー(kcal) 9a −19.6 −20.7 9b −35.6 −8.9 9c −39.4 −23.68 9d −34.3 −8.2 9 −33.8 −23 9f −36.6 −28.6 9g −38.2 −53.8 9h −47.9 −45.8 9i −31.6 −52.7 9j −35.7 −46.5 9k −34.1 −53.2 9l −37.4 −42.9 9k −34.1 −53.2 9n −38.8 −66.2 9o(R=H) −28.6 −28.3
【0125】 これら分子の定量分析は、分子9hのフェニル環が特異性ポケットの近傍のタ
ンパク質構造のかなり大きなひずみを引き起こすことを示した。それゆえ、この
分子は排除した。グルコース様の基を含む候補もまた、非天然の糖を含む分子を
避けるために排除した。さらなる分析のために残った唯一の候補は9gであった
。合成の適合性に関する手動のオプチマイゼーションは、第三世代の分子9l〜
nへ導いたが、これら分子もまた幾つかのさらなる水素結合性基を含んでおり、
表8のCHARMM相互作用エネルギーによって示されるようにより強い結合エ
ネルギーに寄与していた。
【0126】 しかしながら、この時点ではLeu置換基の合成が依然としてかなり関与して
いた。それゆえ、強い相互作用を保持しながらも合成の観点から可能な最も簡単
な分子をデザインするため、Leu3の代わりの7員環を除去した。アミノ酸リ
ンカーがPro1置換基とPro3置換基との間の理想的な連結(合成の容易さ
およびコンホメーションのひずみを引き起こさない連結という意味で理想的;さ
らに、側鎖の方向はLeu2部位を指向する)をもたらすことが明らかとなった
。この観察は、本発明の新規構造ベースのデザイン法の結果得られた候補分子を
調べた直接の結果であったことに注意すべきである。アミノ酸の側鎖の構築を、
成長を分子9o上の位置Rに制限しながら本発明の方法により行った。幾つかの
芳香族側鎖が得られ(図10a〜c)、種々の水素結合性フラグメントを挿入す
ることにより手動でさらに最適化して第四世代の分子を得た。これら最終的なリ
ガンド候補の定量分析を表9に示す。
【0127】表9:図10に示すLPポケットに対する第四世代SH3 LPの定性分析 分子 重い原子当たりの自由エ CHARMM相互作用(kcal) ネルギー評価のスコア 相互作用 ひずみ 正味 9a −34 −25.4 30.8 +5.4 9b −40.3 −27.6 4.9 −22.7 9c −38.7 −25.4 34.9 +9.5 9d −34.4 −41.1 12.3 −28.8 9 −37.2 −46.8 12.1 −34.7 9f −38.4 −52.3 6.3 −46 9g −36.4 −52.9 31.2 −21.7
【0128】 ひずみエネルギーは、適合ベースのNewton−Raphson法を用い、固定したPr
o1およびPro4との結合したコンホメーションと収束への気相最小化から得
られるコンホメーション(この場合もPro1およびPro4を固定)との間の
内部エネルギーの差異として計算する。この意味で、ひずみエネルギーは、考慮
しているらせん置換(helical-substituted)偏向要素の部分のタンパク質への
結合の結果としてのエネルギー差異である。正味のCHARMMエネルギーは相
互作用エネルギーとひずみエネルギーとの和である。 図10の分子10dを、分子10d〜gを用いてデザインした最良のLPポケ
ットリガンド候補の一例として図11にさらに記載している。図11に示すよう
に、この分子は3つの水素結合を形成することができ、偏向要素の境界プロリン
を架橋しながら有意の疎水的および静電的な相補性を有する。
【0129】SH2 Srcホモロジー2(SH2)ドメインは、SH3と同様に多くのシグナル伝
達タンパク質に存在するモデュラー成分である。SH2ドメインは安定なタンパ
ク質複合体の速やかな形成を可能とし、分子内の結合事象によりタンパク質機能
を制御してもいる。SH3ドメインがPxxPモチーフおよび結合特異性を媒体
するさらなる残基を認識するのに対し、SH2ドメインは特定の配列状況でホス
ホチロシル残基を認識する。Srcホモロジー2(SH2)ドメインは種々のシ
グナル伝達タンパク質で認められ、ホスホチロシル含有ペプチド配列に結合する
。SH2ドメインは、ホスホチロシルタンパク質に高特異性で結合することによ
りタンパク質/タンパク質相互作用を媒体する。 出発タンパク質の構造、および結合部位の近傍を特定するための該タンパク質
上の座標のみを入力することにより本発明のデザイン法を自動モードで用い、S
H2ドメインに対するリガンド候補を生成した。
【0130】 一つの態様において本発明は、本発明の方法およびシステムを用いて生成し、
式I、IIまたはIII:
【化7】 (式中、R1はアルキル、アリール、へテロアリール、アルキルアリール、アリ
ールアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアミド、お
よびアリールアルキルアミドであり; R2は各場合に独立に水素原子、アルキル、アリール、へテロアリール、(へテ
ロアリール)アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、シクロアルケニ
ル、シクロアルキル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミド、およびアルコキ
シよりなる群から選ばれ、その際、1またはそれ以上の基が任意に置換されてい
てよい) を有するリガンド候補のライブラリーを提供する。
【0131】 SH2ドメインに結合するリガンド候補に関しては、以下の好ましい態様を適
用することができる。 R1は、好ましくは、(C6−10)アリール(C1−6)アルキル、好ましくは
(C6−10)アリール(C1−3)アルキル、さらに好ましくはベンジル;(C
−8)シクロアルキル(C1−6)アルキル、好ましくは(C3−6)シクロアルキ
ル(C1−3)アルキル;(C6−10)アリール(C1−6)アルキルアミド、好ま
しくは(C6−10)アリール(C1−3)アルキルアミド、さらに好ましくはベン
ジルアミド;および(C3−8)シクロアルキル(C1−6)アルキルアミド、好ま
しくは(C3−6)シクロアルキル(C1−3)アルキルアミドよりなる群から選ば
れ、その際、いずれのアリール基またはシクロアルキル基も任意に置換されてい
てよい。ある特に好ましい態様において、置換基はホスホリル基であり、R1は
ホスホアリールアルキルまたはホスホアリールアルキルアミドである。最も好ま
しくは、R1はホスホベンジルおよびホスホベンジルアミドよりなる群から選ば
れる。
【0132】 R2は好ましくは、水素原子;C1−8アルキル、好ましくはC1−6アルキ
ル、さらに好ましくはC4−6アルキル;C6−14アリール、好ましくはC −10 アリール;へテロアリール;(C6−10)アリール(C1−6)アルキル、
好ましくは(C6−10)アリール(C1−3)アルキル;(へテロアリール)アルキ
ル;(C3−8)シクロアルキル、好ましくは(C3−6)シクロアルキル、さらに
好ましくはシクロプロピル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタ
ジエニル、シクロヘキシル、またはシクロヘキセニル;C2−8アルコキシカル
ボニル、好ましくはC2−6アルコキシカルボニル、さらに好ましくはメトキシ
カルボニル、エトキシカルボニル、またはベンジルオキシカルボニル;C2−8 アシルオキシ、好ましくはC2−6アシルオキシ、さらに好ましくはC2−4
シルオキシ、最も好ましくはブチリルオキシ、ブテノイルオキシ、プロピオニル
オキシ、またはプロペノイルオキシ;C1−6アルコキシ、好ましくはC1−4 アルコキシ;C1−6アルキルアミド、好ましくはC1−4アルキルアミド;お
よびC1−6アルキルアミノ、好ましくはC1−4アルキルアミノよりなる群か
ら選ばれ、その際、いずれの基も任意に置換されていてよい。 最も好ましくは、R2は、ペンチル、ペンテニル、ブチル、ブテニル、フェニ
ル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキシ
ル、ブチリルオキシ、ブテノイルオキシ、プロピオニルオキシ、プロペノイルオ
キシ、プロピルアミド、プロペニルアミド、エチルアミド、およびエテニルアミ
ドよりなる群から選ばれる。
【0133】MDM2 腫瘍サプレッサーp53は、正常細胞で低レベル、しばしば検出できないレベ
ルで保持されている短寿命のタンパク質である。このタンパク質は正常細胞では
非常に低レベルで発現されるが、紫外線照射などのDNA障害因子に応答して蓄
積する。この増加はMDM2を含む多くのタンパク質の発現の転写アップレギュ
レーションを伴い、このことが今度はp53依存性の転写活性を抑制し、p53
活性のダウンレギュレーションという結果となる。MDM2タンパク質はp53
の転写活性化ドメインに結合し、p53が標的遺伝子を制御し抗増殖効果を付与
する能力を阻止し、一方、p53はMDM2遺伝子の発現を活性化しており、そ
の結果、自己制御(autoregulatory)フィードバックループを形成している。
【0134】 MDM2タンパク質上のp53結合ポケットに結合する小さな分子の開発は、
常に難題を提示してきた。最近、研究者らは、MDM2タンパク質上のp53結
合ポケットに堅固に結合する小さなタンパク質をコードする遺伝子を報告してい
る。Botter, A.ら、Design of a Synthetic MdM2-binding Mini Protein that A
ctivates the p53 Response In Vivo, Curr. Biol. 7(11): 860-869 (1997
年11月1日)。本発明の方法を用い、出願人らはMDM2タンパク質上のp5
3結合ポケットに結合するリガンド候補をデザインした。
【0135】 他の態様において、本発明は、MDM2タンパク質上のp53結合ポケットに
結合し、本発明の方法およびシステムを用いて生成した式IV:
【化8】 (式中、R1は水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリ
ール、へテロアリール、および(へテロアリール)アルキルよりなる群から選ばれ
、その際、いずれの基も任意に置換されていてよい; R2は各場合に独立に水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル
、アリール、へテロアリール、および(へテロアリール)アルキル、OH,O(
R3)、アミノよりなる群から選ばれ、その際、該アリール基またはへテロアリ
ール基は任意に置換されていてよい; ここで、R3はアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、(へテロ
アリール)アルキル、およびへテロアリールよりなる群から選ばれ、その際、該
アリール基またはへテロアリール基は任意に置換されていてよい) を有するリガンド候補のライブラリーを提供する。
【0136】 MDM2タンパク質上のp53結合ポケットするリガンド候補に関しては、以
下の好ましい態様を適用することができる。 ある好ましい態様において、R1は、好ましくは、H;C1−8アルキル、好
ましくはC1−6アルキル、最も好ましくはメチル、エチル、プロピル、イソプ
ロピル、イソブチル、またはブチル;C3−8シクロアルキル、好ましくはシク
ロプロピル、シクロペンチル、またはシクロヘキシル;(C6−10)アリール(
1−6)アルキル、好ましくは(C6−10)アリール(C1−3)アルキル、さ
らに好ましくはベンジル;1またはそれ以上、好ましくは1〜約3、さらに好ま
しくは1または2の、N、OおよびSよりなる群から独立に選ばれた環原子を有
するへテロ環;へテロ環(C1−6)アルキル、好ましくはへテロ環(C1−3)ア
ルキル;およびC6−10アリール、好ましくはフェニルよりなる群から選ばれ
、その際、いずれの基も任意に置換されていてよい。
【0137】 ある好ましい態様において、R2は、各場合に独立にH;ヒドロキシ;アミノ
;C1−8アルキル、好ましくはC1−6アルキル、さらに好ましくはC1−4 アルキル;C3−8シクロアルキル、好ましくはシクロプロピル、シクロペンチ
ル、またはシクロヘキシル;(C6−10)アリール(C1−6)アルキル、好まし
くは(C6−10)アリール(C1−3)アルキル、さらに好ましくはベンジル;1
またはそれ以上、好ましくは1〜約3、さらに好ましくは1または2の、N、O
およびSよりなる群から独立に選ばれた環原子を有するへテロ環;へテロ環(C
1−6)アルキル、好ましくはへテロ環(C1−3)アルキル;およびC6−10
アリール、好ましくはフェニルよりなる群から選ばれ、その際、いずれの基も任
意に置換されていてよい。ある特に好ましい態様において、R2はヒドロキシお
よびアミンよりなる群から選ばれる。ある特に好ましい態様において、R1はメ
チル、エチルおよびイソプロピルよりなる群から選ばれる。
【0138】カルボニックアンヒドラーゼ カルボニックアンヒドラーゼは、水と二酸化炭素との間の反応を触媒して炭酸
と水素イオンを生成する酵素である。7つのイソ酵素が知られており、これらの
うちヒトカルボニックアンヒドラーゼIIが特に興味が持たれている。ヒトカルボ
ニックアンヒドラーゼIIは房水内の眼内圧の上昇を引き起こし、このことが眼疾
患の緑内障の発病と相関させられている。この酵素は260のアミノ酸からなり
、底部にZn+2イオンを有する15オングストロームの深さのポケットを有し
、3つのヒスチジン残基が配位している。
【0139】 今日まで、ヒトカルボニックアンヒドラーゼIIの幾つかの強力な医薬インヒビ
ターが開発されている。最近の努力はベンゼンスルホンアミドベースのリガンド
の探究に向けられている。SigalおよびWhitesides, Bioorganic and Med. Chem.
Ltrs, 6(5): 559-564 (1996)。本発明の方法を用い、本発明者らはヒトカルボ
ニックアンヒドラーゼIIのリガンド候補をデザインした。ついで、そのような候
補を合成し、ヒトカルボニックアンヒドラーゼIIに首尾よく結合することを示し
た。
【0140】 本明細書に用いた種々の技術用語および科学用語は、本発明が関係する技術分
野の当業者によって普通に理解される意味を有する。上記の記載から明らかなよ
うに、本発明を実施するために当業者に知られた方法を利用することができる。
さらに、上記発明を明確さおよび理解の目的のために例示および実施例により詳
細に説明したが、これら例示は単に説明のためのものであって本発明の範囲を限
定するものではない。当業者に明らかなものも含めて他の態様、変更および改変
は特許請求の範囲の範囲内に包含されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシステムによって採用した方法のブロック線図を示す。
【図2】 本発明のシステムによって採用した分子成長法に使用できる結合
自由エネルギーの評価法のブロック線図である。
【図3】 本発明のシステムの分子成長法のフローチャートである。
【図4】 少なくともH分子を入れたタンパク質レセプター部位の一例を
示す。
【図5】 構築すべき分子を入れたタンパク質レセプター部位の一例を示す
【図6】 Src SH3ドメインの特異性ポケットのリガンド候補として
の第一世代分子を示す。
【図7】 Src SH3ドメインの特異性ポケットのリガンド候補として
の第二および第三世代分子を示す。
【図8】 3つの水素結合並びにTyr55およびTrp42との有意のII
スタックを形成できる図7からの候補リガンド7eを示す:(a)該候補の分子
構造;(b)強いリガンドが相互作用すべき残基を示す、結合部位中のリガンド
のリコリス線図(licorice diagram);(c)Tyr55およびTrp42との
IIスタッキングを示す空間充填モデル;および(d)空間充填モデルの他の図。
【図9】 Src SH3ドメインのLPポケットに対するリガンド候補と
しての第一世代(b−e)、第二世代(f−k)および第三世代(l−n)分子
を示す。LPポケットを占めるペプチドPLPPを「a」により表してある。新
規なペプチド分子は「o」により表してある。種々の側鎖Rは図10に示す。
【図10】 Src SH3ドメインのLPポケットに対する候補リガンド
としての種々の側鎖を有する図9の分子9oを示す。
【図11】 Src SH3ドメインのLPポケットに対する候補リガンド
を示す:(a)該候補の分子構造;(b)強いリガンドが相互作用すべき残基を
示す、結合部位中のリガンドのリコリス線図;(c)空間充填モデル;および(
d)空間充填モデルの他の図。
【図12】 Src SH3ドメインの特異性ポケットに対する一連のリガ
ンドにおける、粗視化した知識ベースのポテンシャルデータと実験的な結合定数
との間の相関関係を示す。結合定数の対数は実験的な結合自由エネルギーに比例
するので、実験的な結合は対数目盛りでプロットしてある。
【図13】 CD4に対するリガンド候補としての第一世代分子を示す。自
由エネルギー評価および実験的な相互作用エネルギーに基づき、これらの7つの
分子は結合部位で作製した1000の分子のうちで最良である。
【図14】 CD4に対するリガンド候補としての第二世代分子を示す。生
成したこれら分子は定性的および定量的な特性を改善するために手動で操作した
が、これにはIIスタッキング相互作用の増大、炭素の糖様環へのピリジン基に連
結するフレキシブル鎖からの橋の付加、および7員環上の酸素原子と炭素との置
換が含まれる。
【図15】 CD4のPhe43結合ポケットに対する候補リガンドを示す
:(a)該候補の分子構造;(b)強いリガンドが相互作用すべき残基を示す、
結合部位中のリガンドのリコリス線図;(c)空間充填モデル;および(d)空
間充填モデルとしてのタンパク質およびリコリス線図としてのリガンドを示す線
図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C057 DD02 EE05 4H006 AA05 5B046 AA00 5B075 ND20 UU18

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 タンパク質上のレセプター部位に結合する分子を新規にデザ
    インする方法であって、手順: (a)レセプター部位中に分子を構築し、その際、該構築手順は、レセプター部
    位中に入れた最初の分子フラグメントに連続的な無作為の分子フラグメントを加
    え、分子フラグメントの各添加の後に成長する分子の自由エネルギーを評価し、
    ついで該分子の自由エネルギー評価が該分子に可能な最低の自由エネルギー評価
    よりも高くなるように、レセプター部位に加えるときに各連続的な分子フラグメ
    ントを配向することを含み、 (b)手順(a)を繰り返してレセプター部位中に成長した分子の集合を生成し
    、ついで増大する自由エネルギー評価に従って該分子の集合をランク付けして高
    ランクの分子を同定し、 (c)手順(b)で同定した高ランクの分子の1またはそれ以上の官能基を単一
    の再開始フラグメントとして選択し、該再開始フラグメントを用いて手順(a)
    および(b)に従って第二世代の分子を構築し、 (d)経験的力場を用いてレセプター部位および第二世代の分子を含むタンパク
    質/リガンド複合体のエネルギーを最小にし、 (e)第二世代の分子の経験的相互作用エネルギーを定量し、ついで該分子をラ
    ンク付け、その際、低い相互作用力の分子は負の相互作用エネルギーがより大き
    な分子よりも高くランク付けされ、負の相互作用エネルギーがより大きな分子は
    負または正の相互作用エネルギーがのより小さな分子よりも高くランク付けされ
    、 (f)手順(e)からの高ランク分子を、化学的な実行可能性、合成の適合性、
    溶解度、およびタンパク質の構造に対する該分子の影響の決定を含む分子の定性
    分析に基づいて修飾し、その際、該修飾は原子および/または官能基置換、特定
    のレセプター部位からの成長の開始、塩橋または水素結合の導入、および溶解度
    増大手段を含み、 (g)手順(e)および(f)の両者で高ランクと同定される分子が構築される
    まで手順(c)〜(f)を繰り返す を含む方法。
  2. 【請求項2】 レセプター部位が、Src−ホモロジー−3ドメイン、Sr
    c−ホモロジー−2ドメイン、MDM2タンパク質、CD4タンパク質、および
    ヒトカルボニックアンヒドラーゼIIタンパク質よりなる群から選ばれる、請求項
    1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 経験的相互作用エネルギーがCHARMM相互作用エネルギ
    ーを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 経験的力場がCHARMMを含む、請求項1に記載の方法。
  5. 【請求項5】 src−2ホモロジードメインに結合するリガンド候補のラ
    イブラリーであって、該リガンド候補は新規構造ベースのデザイン法に従って構
    築され、下記式I、IIおよびIII: 【化1】 (式中、R1はアルキル、アリール、へテロアリール、アルキルアリール、アリ
    ールアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアミド、お
    よびアリールアルキルアミドであり; R2は各場合に独立に水素原子、アルキル、アリール、へテロアリール、(へテ
    ロアリール)アルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、シクロアルケニ
    ル、シクロアルキル、アシル、アシルオキシ、アミノ、アミド、およびアルコキ
    シよりなる群から選ばれ、その際、1またはそれ以上の基が任意に置換されてい
    てよい) を有するものであるライブラリー。
  6. 【請求項6】 MDM2タンパク質に結合するリガンド候補のライブラリー
    であって、該リガンド候補は新規構造ベースのデザイン法に従って構築され、下
    記式IV: 【化2】 (式中、R1は水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル、アリ
    ール、へテロアリール、および(へテロアリール)アルキルよりなる群から選ばれ
    、その際、いずれの基も任意に置換されていてよい; R2は各場合に独立に水素原子、アルキル、シクロアルキル、アリールアルキル
    、アリール、へテロアリール、および(へテロアリール)アルキル、OH,O(
    R3)、アミノよりなる群から選ばれ、その際、該アリール基またはへテロアリ
    ール基は任意に置換されていてよい; ここで、R3はアルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、(へテロ
    アリール)アルキル、およびへテロアリールよりなる群から選ばれ、その際、該
    アリール基またはへテロアリール基は任意に置換されていてよい) を有するものであるライブラリー。
  7. 【請求項7】 Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2
    ドメイン、MDM2タンパク質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒ
    ドラーゼタンパク質よりなる群から選ばれた基質上に存在するレセプター部位に
    結合する分子を構築する方法であって、手順: (a)成長させようとする分子が結合するレセプター部位の少なくとも一部の分
    子的構成についてレセプター部位を評価し、成長させようとする分子が結合する
    レセプター部位の少なくとも一部の少なくとも一つの座標を生成し、ついで少な
    くともレセプター部位の分子的構成に関して、成長させようとする分子が結合す
    るレセプター部位の部分の座標を出力し、 (b)知識ベースのポテンシャルデータを用いて成長させようとする分子の自由
    エネルギーを評価し、該評価した自由エネルギーを出力し、ついで (c)手順(a)および(b)からの出力を用いてレセプター部位に結合させる
    ための分子を構築し、その際、該構築手順は、該分子の自由エネルギー評価が該
    分子に可能な最低の自由エネルギー評価よりも高くなるような配向にある分子フ
    ラグメントを選択することにより該分子を構築することを含む方法。
  8. 【請求項8】 Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2
    ドメイン、MDM2タンパク質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒ
    ドラーゼタンパク質よりなる群から選ばれた基質上に存在するレセプター部位に
    結合する分子を構築する方法であって、手順: (a)成長させようとする分子が結合するレセプター部位の少なくとも一部の分
    子的構成についてレセプター部位を評価し、成長させようとする分子が結合する
    レセプター部位の少なくとも一部の少なくとも一つの座標を生成し、ついで少な
    くともレセプター部位の分子的構成に関して、成長させようとする分子が結合す
    るレセプター部位の部分の座標を出力し、 (b)知識ベースのポテンシャルデータを用いて成長させようとする分子の自由
    エネルギーを評価し、該評価した自由エネルギーを出力し、その際、この手順は
    以下の手順: (1)溶媒エントロピー効果からの悪影響を打ち消す長さの相互作用半径を選
    択し、 (2)少なくとも分子フラグメントを含む、分子/レセプター複合体の既知の
    構造に関するアクセス可能な一覧を作成し、 (3)成長させようとする分子とレセプター部位との分子/レセプター複合体
    中で相互作用することが予測された原子タイプを少なくとも含む、分子相互作用
    のクラスに基づく原子タイプに関するアクセス可能な一覧を作成し、 (4)手順(1)の選択および手順(2)および(3)で作成した一覧に基づ
    き、分子/レセプター複合体の既知の構造についての分子相互作用のアクセス可
    能な一覧を作成し、 (5)溶媒エントロピー効果および立体配置エントロピー効果からの悪影響を
    打ち消す、成長させようとする分子についての準拠状態を選択し、 (6)成長させようとする分子についての準化学的な近似を作成し、ついで (7)手順(4)で作成した一覧、手順(5)の選択、および手順(6)で作
    成した準化学的近似に基づき、成長させようとする分子の評価した自由エネルギ
    ーを作成する を含み、ついで (c)手順(a)および(b)からの出力を用いてレセプター部位に結合させる
    ための分子を構築し、その際、該構築手順は、該分子の自由エネルギー評価が該
    分子に可能な最低の自由エネルギー評価よりも高くなるような配向にある分子フ
    ラグメントを選択することにより該分子を構築することを含む方法。
  9. 【請求項9】 Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−2
    ドメイン、MDM2タンパク質、CD4タンパク質、およびカルボニックアンヒ
    ドラーゼタンパク質よりなる群から選ばれた基質上に存在するレセプター部位に
    結合するための、成長させようとする分子の自由エネルギーを評価する方法であ
    って、手順: (a)溶媒エントロピー効果からの悪影響を打ち消す長さの相互作用半径を選
    択し、 (b)少なくとも原子座標および対応する化学要素を含む、分子/レセプター
    複合体の既知の構造に関するアクセス可能な一覧を作成し、 (c)成長させようとする分子とレセプター部位との分子/レセプター複合体
    中で相互作用することが予測された原子タイプを少なくとも含む、分子相互作用
    のクラスに基づく原子タイプに関するアクセス可能な一覧を作成し、 (d)手順(a)の選択および手順(b)および(c)で作成した一覧に基づ
    き、分子/レセプター複合体の既知の構造についての分子相互作用のアクセス可
    能な一覧を作成し、 (e)溶媒エントロピー効果および立体配置エントロピー効果からの悪影響を
    打ち消す、成長させようとする分子についての準拠状態を選択し、 (f)成長させようとする分子についての準化学的な近似を作成し、ついで (g)手順(d)で作成した一覧、手順(e)の選択、および手順(f)で作
    成した準化学的近似に基づき、成長させようとする分子の評価した自由エネルギ
    ーを作成する を含む方法。
  10. 【請求項10】 Src−ホモロジー−3ドメイン、Src−ホモロジー−
    2ドメイン、MDM2タンパク質、およびCD4タンパク質よりなる群から選ば
    れた基質上に存在するレセプター部位に結合する分子を構築する方法であって、
    手順: (a)成長させようとする分子が結合するレセプター部位の少なくとも一部の分
    子的構成についてレセプター部位を評価し、ついで、成長させようとする分子が
    結合するレセプター部位の少なくとも一部の少なくとも座標を作成し、 (b)成長させようとする分子が結合するレセプター部位の少なくとも一部に少
    なくとも水素(「H」)原子を入れ、 (c)該レセプター部位に入れたH原子の一つのH原子を無作為に選択し、 (d)前以て決定した一群の分子フラグメントから分子フラグメントを無作為に
    選択し、ついで該分子フラグメントから一つのH原子を無作為に選択し、 (e)手順(c)および(d)で選択したH原子で結合を形成させ、 (f)成長させようとする分子が低自由エネルギーを有するように、手順(e)
    で形成した結合に関して分子フラグメントを配向させ、 (g)知識ベースのポテンシャルを用いて成長させようとする分子の自由エネル
    ギーを評価し、ついで (h)手順(g)での評価自由エネルギーを、手順(e)で該フラグメントが該
    レセプター部位に結合する前に該レセプター部位に結合した分子の自由エネルギ
    ー評価と比較して手順(g)での評価自由エネルギーが手順(e)で該フラグメ
    ントが該レセプター部位に結合する前に該分子について前に評価した自由エネル
    ギーよりも大きいか小さいかを決定し、該評価自由エネルギーの方が小さい場合
    には該分子フラグメントの付加および配向を受理し、該評価自由エネルギーの方
    が大きい場合には前以て決定した仕方で決定した確率に従って最初の分子フラグ
    メントの添加および配向を受理する を含む方法。
  11. 【請求項11】 手順(f)での分子フラグメントの配向が所定の増分での
    ひずみ回転を含む、請求項10に記載の方法。
  12. 【請求項12】 ひずみ回転の所定の増分が60°の所定の増分である、請
    求項11に記載の方法。
  13. 【請求項13】 分子を比較および受理する方法がメトロポリスモンテカル
    ロ選択プロセスによるものである、請求項10に記載の方法。
  14. 【請求項14】 手順(h)の確率が 【数1】 (式中、 p=受理の確率; Δg=ΔG/N(ΔGは目的とするフラグメントを付加したときの自由エネル
    ギーの差異であり、Nはリガンド中の原子の総数である)は原子当たりの自由エ
    ネルギーの変化である; T=温度) に従って決定される、請求項10に記載の方法。
  15. 【請求項15】 結合する各分子フラグメントについて手順(c)〜(g)
    を繰り返すことをさらに含む、請求項10に記載の方法。
  16. 【請求項16】 手順(a)〜(c)に従って分子を5秒未満で成長させる
    ことができる、請求項7または8に記載の方法。
  17. 【請求項17】 該分子がSrc−ホモロジー−3ドメインの特異性ポケッ
    トに結合する、請求項7、8、9または10に記載の方法。
  18. 【請求項18】 該分子がSrc−ホモロジー−3ドメインのLPポケット
    に結合する、請求項7、8、9または10に記載の方法。
  19. 【請求項19】 Src−ホモロジー−3ドメインのLPポケットに結合す
    る分子を構築するための分子フラグメントがプロリンを含む、請求項18に記載
    の方法。
  20. 【請求項20】 構造ベースのドラッグデザイン法を用いて新規に生成した
    、CD4タンパク質上のレセプター部位に結合するリガンド候補であって、下記
    式V: 【化3】 を含むリガンド候補。
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