JP4314128B2 - タンパク質立体構造と誘導適合を利用したリガンド探索方法 - Google Patents

タンパク質立体構造と誘導適合を利用したリガンド探索方法 Download PDF

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Description

本発明はタンパク質の立体構造座標を用いたリガンド探索方法、詳しくはタンパク質立体構造座標が既知の場合、相互作用すると考えられるリガンドを予測する方法に関する。
更に、本発明は、この方法で得られるリガンド、前期方法に使用可能なデータベース、データベース構造、及びコンピューターソフトプログラム、これを搭載したコンピュータやインターフェース等にも関する。
酵素や受容体等の生体機能を維持するために必要なタンパク質には、基質特異性と呼ばれる性質があり、活性部位が基質分子構造の細部にわたり常に一致しているLock&Key型と、基質が無いときには活性部位が不活性なランダムな状態にあり、基質が来るとこれを取り込むために活性部位が活性な状態に変化するInduced−Fit(誘導結合)型がある。誘導適合型とは、リガンドと結合する際にリガンド結合部位の立体構造が変化しリガンドを取り込むことが可能になる受容体をいう。
タンパク質の立体構造を用いたリガンド分子探索のための計算化学的手法としてはまずDOCK、FlexX、Ludi、GOLD、といった3次元化合物データベースサーチ(Virtual Screening)が知られている。これらは高速ドッキングスタディーとも呼ばれ大規模な化合物ライブラリサーチが可能である。しかし、本手法では評価に粗い近似を用いるため、結合配座や結合エネルギーの予測能は低い。さらにタンパク質とリガンドとの結合に大変重要な「誘導結合」に対応する計算式パラメータを充分に取り込んでいないので、たとえあったとしても、乱数を発生させ受容体の側鎖を動かす程度であり、計算結果の精度に充分なものとはいえない。
タンパク質とリガンドとの結合に重要な「誘導結合」をシミュレーションする方法としてはMD(分子動力学計算)、MM(分子力学計算)MC(モンテカルロ法)が知られている。これらの方法は比較的精度良く、結合配座や結合エネルギーの予測が可能である。ここで、分子動力学法(MD)と呼ばれる手法に関しては、ある分子を構成する各原子において、古典力学に基づく運動方程式を逐次的に解くことにより、その分子の動的構造を計算する方法であり、タンパク質の動的挙動を高精度でシュミレーションすることが可能である。しかし、計算に時間を要するため、多数の分子を扱うことは困難であり必ずしも有用な手法とはなっていない。さらに、従来法では該当タンパク質に対して分子動力学計算を行うとタンパク質立体構造はX線、NMR等で解析された座標から大きくズレる。こうしたズレはタンパク質の動的挙動の物理化学的描写を含んでいるがNMR等で示される動的挙動の実験的な結果と矛盾する挙動となる場合があり、必ずしも精度の高いシミュレーションとならないことが多い。
このように従来のin silico screening関連では、タンパク質とリガンドとの結合に大変重要な「誘導結合」に対応する計算式パラメータを充分に取り込んでいないので、計算結果の精度に充分なものとはいえない。
一方、分子シミュレーションでは上記の誘導結合を表現し、解析することは可能であるが、高精度の結果を得るためには相当の時間を必要とする。多くの結果は、初期構造座標に依存してしまう。
本発明者等は、任意のタンパク質の立体構造が与えられたとき、該当タンパク質に結合するリガンドを探索する方法について検討をおこなった。現在流通している受容体・リガンド結合解析ソフトには、リガンドのフレキシビリティを考慮しているものは多くあるが、受容体側のフレキシビリティを考慮しているものはほとんどない。たとえあったとしても、乱数を発生させ受容体の側鎖を動かす程度であり、Lock&Key型の受容体に対応しているものばかりであった。そこで、Induced−Fit型の受容体を対象にした受容体・リガンド結合解析ソフト開発することにした。
本発明が解決しようとする課題は、農薬、医薬品等の開発に特に重要な鍵となる、該当タンパク質に結合するリガンドを探索する方法を精度よく、かつ従来法に比べてはるかに効率的に精度よく探索する方法を提供することである。また、リガンド分子の多様な改変や受容体等のタンパク質の改変を迅速かつ効率的に行う方法を提供することにもある。更に本発明により、リガンド−タンパク質間の相互作用様式を解明し、それ等相互作用の認識機構を明確化することで、疾病の原因を特定したり、それ等に関連する薬物の開発を促進すること等を目的とする。
本発明者等は、任意のタンパク質立体構造が与えられたとき該当タンパク質に結合するリガンドを探索する方法について検討を重ねた結果、下記[1]〜[6]の方法およびそのためのコンピュータプログラムを見出し、或いは開発した。
ここで、分子動力学法(MD)と呼ばれる手法があり、これはある分子を構成する各原子において、古典力学に基づく運動方程式を逐次的に解くことにより、その分子の動的構造を計算する方法である。つまり、これはある分子を構成する各原子における古典力学を土台とした動的挙動を計算する方法である。従って、この手法をうまく取り込むことができれば、リガンドを取り込んでいない状態のInduced−Fit型受容体を初期状態に選んでも受容体・リガンド結合を再現できると考えた。MD計算は古典力学を土台にしているため、各原子にある程度の拘束をかける必要がある。そこで、まず初めに受容体の基準振動解析を行い受容体の主鎖二面角揺らぎを計算し、この主鎖二面角揺らぎに基づいて各原子に拘束をかけてMDを計算する手法を開発した。具体的には、基準振動解析計算をまず行い、定常状態の主鎖二面角の揺らぎを計算する。そして、その揺らぎを基にした拘束を各原子にかけながら分子動力学計算を行うことでより精度の良い受容体の動的構造を予測する。また、分子動力学計算より得た動的構造及び相互作用関数を用いることで、誘導適合型受容体にも応用できる受容体/リガンド結合を精度良く予測できる。本発明の方法は、より真に近い受容体/リガンド結合を予測する方法である。従って、本発明の方法は、医農薬分子の設計に極めて有用である。
[1] 任意の単数を含む複数鎖のタンパク質立体構造が与えられた場合において、該当タンパク質の立体構造から誘導適合を反映したパラメータおよび構造変化した立体構造座標を例えば基準振動計算方法や分子動力学計算方法よりあらかじめ算出し、当該パラメータおよび構造変化した立体構造座標を用いて該当タンパク質と別の物質が結合した場合の相互作用関数を定義し、当該相互作用関数によって該当タンパク質と結合する物質をコンピュータプログラムにより評価し、選定する方法。
[2] [1]によって記載された方法において、該当タンパク質に結合するリガンドを選択する際に(0)〜(8)に示した一連の処理を全自動または手動的に行うことを特徴とするコンピュータプログラム。
(0) 化合物データベースからリガンドを1つ選択する。該当タンパク立体構造として、誘導適合を反映するパラメータを用いて動的挙動を考慮した複数の構造変化座標を用意し、ランダムに1つの構造を選択する。
(1) 重ね合わせを行う該当タンパク中の空間点を指定する。空間点は例えば以下のような方法で発生させる。
1. ダミー原子の発生による空間点の発生
リガンドとタンパク質との相互作用における水素結合に着目し、タンパク質中の水素結合サイトを空間点として指定する。水素結合における重要事項は距離と角度である。つまり、角度を計算するためには、水素結合ドナー(以後、ドナー)に水素原子が必要になる。
そこで、活性部位及びリガンドに水素原子が含まれていない場合、以下の規則によりダミー水素原子を発生させた。
1) sp2軌道原子を中心とする正三角形状にダミー原子を発生(図2)。すなわち、図2に示すように、sp2軌道原子の窒素原子(A)を中心とする正三角形の空いている位置にダミー水素原子(B)を発生させた。
2) sp3軌道原子では、水素結合を形成する距離にある場合、水素原子を共有するように回転できると考え水素結合相互作用を計算するときには、距離のみを考慮することにした。このため、sp3軌道原子にはダミー原子を発生させない。
金属及び水では、活性部位・リガンド結合の仲介役となり得るので、相互作用する位置に以下のようにダミー原子を発生させた。
1) 鉄のような金属には、正八面体状にダミー原子を発生(図3)。すなわち、図3に示すように、亜鉛(A)を中心とする正八面体の空いている位置にダミー原子(B)を発生させた。
2) 水は、正四面体状にダミー原子を発生。
ただし、活性部位と相互作用している方向にはダミー原子を発生させないことにした。
2. 構造活性相関情報を利用した空間点の発生
リガンドの構造活性相関(SAR)情報に着目し、以下の項目を入力情報にすることにした。
(A) SARから得られた活性部位の原子(以後、「A原子」)。PDB形式に従う。
(B) 「A原子」と相互作用するであろうリガンドの原子タイプ(以後、「Bタイプ」)。SYBYLのMOL2形式に従う。
(C) 「A原子」と「Bタイプ」との相互作用の強さ(以後、「C強さ」)。
(D) 「A原子」と「Bタイプ」との相互作用する距離(以後、「D距離」)(単位はÅ)。
A)〜D)をもとにタンパク質中の活性部位内におけるリガンドの初期座標を利用し、以下の規則により空間点を作成することにした。
1) 「A原子」がドナーまたは金属及び水の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合ドナー、金属原子の場合)、1.で発生させたダミー原子の方向に対して「A原子」から「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選んだ(図4、図5)。
2) 「A原子」がsp3軌道原子の場合(SAR情報の活性部位側の指定がsp3軌道原子の場合)には、「A原子」から「D距離」の周囲を初期座標に選んだ(図6)。
3) 「A原子」が水素結合アクセプター(以後、アクセプター)の場合(SAR情報の活性部位側の指定が水素結合アクセプターの場合)、「A原子」の結合延長上「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選んだ(図7)。
4) その他の場合(SAR情報の活性部位側の指定がその他の原子の場合)には、「A原子」を中心とする半径が「D距離」の球表面上の点を初期座標に選んだ(図8)。
5) (1)〜(4)とは、異なりリガンドの初期座標を直接指定することもできるようにした。
(2) (0)で選択したリガンド中の原子と(1)で指定した空間点とのペアを重複がないようにランダムに選択する。
(3) 以下のスコアSscore(i,j)を計算する。
Figure 0004314128
ij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離。dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離。αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数。βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数。
αは1.5、βは0.8とするのが好ましい。
(4) (3)のスコアが最大になるように調整する。スコアを最大にする手法としては、例えば、シミュレーティッドアニーリング法が挙げられる。または、時間短縮には(2)、(3)を10000回繰り返し、Sscore(i,j)が最大になるペアを探し、そのペア情報をもとにリガンドを初期座標に重ね合わせる方法を適応することが好ましい。
(5) (4)で重ねあわせたリガンドに対してタンパク質との相互作用エネルギーをコンフォメーションを微調整しながら最適化計算する。リガンドのコンフォメーションの微調整は、(4)で算出されたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3を越えない程度に座標変化させる。
微調整は例えばランダムサーチで最適化することが好ましい。ランダムサーチは以下の項目に従ってタンパク質の活性部位とリガンドとの微小変化を8000回行い、最適エネルギー「U最適」が最小になるようにする。
1〕 回転可能な結合のうち最大5つ乱数で選び、結合ごとにランダムに±10.0°の範囲内で回転させリガンドのコンフォメーションを換える。この過程を3回に一度行う。
2〕 x、y、z軸方向それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内でリガンドの並進運動を行う。この過程を2回に一度行う。
3〕 回転中心座標それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内で回転中心座標を移動させ、さらに3次元方向の角度それぞれに対して、ランダムに±5.0°の範囲内でリガンドの回転運動を行う。この過程を5回に一度行う。
(6) リガンドのコンフォメーションを大きく動かして、(2)から再スタートを行い、(5)までを繰り返して最適化を行う。コンフォメーション改変は、(3)で算出されたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3以上になるよう座標変化させる。
リガンドのコンフォメーションを大きく動かした最適化は、例えば(5)で最適化したエネルギー「U最適」でのコンフォメーションに対して、回転可能な結合をランダムに5つ選び、原子タイプごとに決められた回転角度間隔に従ってランダムに回転させる。その後(2)、(3)の過程を、5000回繰り返し行う。
ただし、リガンドのコンフォメーションを変化させた後、リガンドの内部エネルギー「U内部」を計算しその値が500.0以上のときはその後の計算をスキップし、次のリガンドコンフォメーションを発生させるようにする。
(7) (1)〜(6)までの過程を(0)で用意した複数の構造変化座標に対して行い、最適なタンパク質とリガンドとの複合体座標、最適エネルギー「U最適」を算出する。
(8) (1)〜(7)までの過程を(0)で用意した化合物データベース中の全てのリガンドに対して行い、化合物データベース中から該当タンパク質と結合する可能性のあるリガンドを選択する。
[3] [1]〜[2]によって記載された方法において、タンパク質の誘導適合を反映するパラメータおよび構造変化した立体構造座標を分子動力学計算方法を用いて算出する場合、該当タンパク質の立体構造に際し、基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、そのゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うことで、タンパク質の立体構造をエネルギー最適構造よりおおきく離れないようにして分子動力学計算を行う方法。
本手法による分子動力学計算は、例えば、基準振動計算より主鎖原子の2面角のゆらぎの値を算出し、該当のゆらぎ値を以下のように分子動力学計算における力の定数Kの部分に入れる。
Erot=Krot(φ―φ0)2
Erotはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の2面角のエネルギーのことを示す。
φは主鎖原子の2面角。
φ0は主鎖原子の2面角の標準値。
Krotの値が大きい場合はφはφ0に拘束される。
Epos=Kpos(r−r02
Eposはタンパク質の立体構造中において主鎖原子の位置のエネルギーのことを示す。
rは主鎖原子の座標。
r0は主鎖原子の座標の標準値。
Kposの値が大きい場合はrはr0に拘束される。
[4] [1]〜[2]によって記載された方法において、リガンドとタンパク質との相互作用を評価する際の目的関数として、従来の相互作用エネルギー関数に、タンパク質の動的性質を表現する関数を弾性エネルギーとして加え、タンパク質の立体構造座標から相互作用エネルギーを高速に算出するとともに、タンパク質の動的挙動に関する物理化学的性質を明確に描写することを特徴とする手法。
弾性エネルギーとして、タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し、以下の関数「U衝突」として適応する。活性部位における動的挙動の少ない側鎖原子及び主鎖原子のみのi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義した。
Figure 0004314128
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数、Nはリガンドの原子の数、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とした。
ここで、活性部位の各原子に対し衝突を許す重み付けw(i)が定義された場合以下の式を用いる。ただし、w(i)は、0〜1の範囲の実数とする。
Figure 0004314128
ψ(i,j)=w(i) * K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは活性部位の原子の数、Nはリガンドの原子の数、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とした。
また、弾性エネルギーとしては、以下の関数を用いて定義することも可能である。

Ev=w(hard shape region)、E=0(soft shape region)

hard shape regionとは、タンパク質の立体構造中、動的挙動の小さい部分であり、soft shape regionとは、動的挙動の大きい部分のことを指す。Wは定数で100であることが好ましい。
[5] [1]〜[4]によって記載された方法において、タンパク質の動的性質を表現する関数として基準振動解析結果またはタンパク質の二次構造判定結果を用いることを特徴とした方法。
二次構造判定においては、タンパク質のへリックス、シート部分は揺らぎは小さいと考え、それ以外は揺らぎは大きいと考え相互作用の評価関数、分子動力学計算の拘束条件に適応する。
[6] [1]〜[5]によって記載された方法において、計算された該当タンパク質が代表的な複数の立体構造座標である場合や、該当タンパク質の立体構造が例えば核磁気共鳴スペクトルの解析結果のような複数の立体構造座標である場合についても、該当タンパク質と結合するリガンドの探索について、複数座標すべてを全自動的にかつ短時間で同等に評価することを可能とした方法。
本発明によれば、本発明はタンパク質の立体構造座標を用いたリガンド探索方法、詳しくはタンパク質立体構造座標が既知の場合、相互作用すると考えられるリガンドを予測する方法に関して、タンパク質とリガンドとの結合に大変重要であるタンパク質の動的挙動を反映したパラメータを取得し、かつタンパク質の動的挙動を反映したリガンドとの新規な相互作用評価関数を用いて、該当タンパク質の立体構造と結合する新規リガンドを予測を行うことができる。これにより従来法と比較して、より信頼性の高い、かつ医薬品設計等に適したタンパク質の立体構造を世界中で解析されている大量のゲノム配列に関しても対応するスピードで構築することができる。従来はin silico スクリーニングにおいては、タンパク質とリガンドとの相互作用に重要な誘導結合を充分に取り扱うことのできるアルゴリズムが見出されていなかった時点に対し、タンパク質とリガンドとの相互作用エネルギー関数に、基準振動計算結果、もしくは二次構造予測から得られるタンパク質の「ゆらぎ」を表すパラメータを簡易にとりこむ計算式を導入した。
さらに、分子動力学シミュレーションにおいては、この方法により、該当タンパク質の動的挙動を反映したパラメータとリガンドとの相互作用評価関数に関して、該当タンパク質についての基準振動計算を行い、その結果を分子動力学計算に反映させることを特徴とする。従来はタンパク質の動的挙動のシミュレーションを行うためには、分子動力学計算を用いていたが、従来法で該当タンパク質に対して分子動力学計算を行うとタンパク質立体構造はX線、NMR等で解析された座標から大きくズレる。こうしたズレはタンパク質の動的挙動の物理化学的描写を含んでいるがNMR等で示される動的挙動の実験的な結果と矛盾する挙動となる場合があり、必ずしも精度の高いシミュレーションとならないことが多い。そこで、分子動力学計算を行う際には、タンパク質の立体構造をある程度固定しシミュレーションを行う必要があり、本手法では分子動力学計算におけるエネルギー関数中で主鎖原子の2面角に拘束をかける手法を開発した。さらに2面角の拘束条件としては、そのパラメータとして予め該当タンパク質の基準振動計算を行い、主鎖原子の2面角のゆらぎを算出し、そのゆらぎの大きさにより例えばゆらぎの大きい部分は拘束条件を緩め、ゆらぎの小さい部分は拘束条件を強めるパラメータとして用いることとした。こうした条件でタンパク質の分子動力学シミュレーションを行うことで、精度よく動的挙動を描写することができる。加えてこうして算出された分子シミュレーションからタンパク質の動的挙動を描写した座標を取得することができ、これを利用することでさまざまなリガンド結合部位の形状を用いたリガンド探索を行うことができる。
これらの結果、今までのin silico スクリーニングでは見出すことができなかった新規なリガンドを発見することを可能するとともに、今までは長時間を必要とする分子シミュレーションでしか解析できなかった「誘導結合」を含めたタンパク質−リガンドとの相互作用解析を短時間で行うことを可能にした。
こうしたアルゴリズムは、既存ソフトウェアよりも誘導結合現象をより深く考慮した“in silico screening”に対応可能とし、誘導結合現象と疎水相互作用の正しい理解のもと単純化している。アルゴリズムは単純化されているので、自動化により多くのターゲットタンパク質を処理可能とする。その結果、例えば100万以上の化合物データベースから、新規で、もっともらしい化合物を探索することができるので実験では対応できない規模のデータベースからもっともらしい化合物を現実的な時間内に探索することが出来る。
また、タンパク質−リガンドとの相互作用解析を短時間で行うことが可能になるので、例えば代謝、毒性の原因となる数多くのタンパク質と薬物との相互作用解析が可能となり、in silicoでの薬物の代謝、毒性予測を行うことができる。
本発明において、リガンドとして取り扱うことのできる分子は使用するリガンドの種類や数を限定しないため、蛋白質、ペプチド、DNA、薬剤成分、金属、イオン、糖類、核酸成分、ホルモンを含む全ての物質を当該リガンドと見なすことができる。この方法によって、具体的に農薬、医薬品等の分子設計を行うことができる。
リガンドとタンパク質との相互作用エネルギー評価関数には、従来ドッキング法では静電エネルギー項、van del waals項、さらにはソフトドッキング法等に見られてる動的挙動を表現するための調整項が主に用いられているが、本手法においてはタンパク質とリガンドとの相互作用中にはソフトドッキング法等に見られてる動的挙動を表現するための調整項を用いる代わりに古典力学で用いられている弾性衝突の理論を適応し、タンパク質とリガンドとの相互作用に関して、その物理化学的性質をより明確にした。このことによりタンパク質の構造変化と相互作用との関係を得ることができ、リガンドの機能の理解を迅速かつ正確に行うための手助けとなる。
尚、本発明で利用するタンパク質の立体構造は、その際X線結晶構造解析等により、タンパク質の立体構造として3次元座標が決定されたもの以外に、タンパク質の経験的なモデリング法、特にホモロジーモデリング法或いはスレッディング法を利用して作成した立体構造座標をも適応することができる。
以下、本発明の実施の形態について説明する。好適かつ代表的な例について説明するものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
本明細書において幾つかの用語を使用するが、特に明記しない限り、次の意味を有する。
「標的タンパク質」とは、立体構造の詳細がX線結晶解析やNMR解析、ホモロジーモデリング法により既に決定されており、リガンド探索の対象とするタンパク質を意味する。
「原子座標」とは、三次元空間上で立体構造を記述するものである。それは空間上のある点を原点とする互いに垂直な三方向の相対的な距離であり、タンパク質中に存在する水素原子を除く原子一つあたりに3個の数字からなるベクトル量である。
図1は、本発明によるタンパク質立体構造と誘導適合を利用したリガンド探索方法の一例を示すフローチャートである。図1は、本発明によるタンパク質の立体構造予測を示すフローチャート。
図1に示す通り、この方法においては、先ず、ステップ0において、リガンドのデータベースを用意する。リガンドのデータベースは分子力学法等に用いて3次元化することが望ましい。
ステップ10において標的タンパク質の立体構造を選定し、座標を入手する。
ステップ20において、標的タンパク質の基準振動計算を行い、主鎖原子の位置のゆらぎと2面角のゆらぎを求める。
ステップ30において、ステップ20において求めた標的タンパク質のゆらぎを拘束条件として用いた分子動力学計算を行う。
ステップ40において、標的タンパク質のリガンド結合部位に、リガンドを配置するための点郡を指定する。
ステップ50において、ステップ0で定められた一つのリガンドに対し、リガンドの各原子をステップ30で定められた点群に重ね合わせる。
ステップ60において、ステップ50で定められた重ねあわせに対し、ステップ20およびステップ30で定められた計算結果によりタンパク質の動的挙動を表すパラメータを取得し、該当パラメータを用いてリガンドとタンパク質との相互作用エネルギーをリガンドコンフォメーションを微調整しながら計算する。コンフォメーションの微調整は、ステップ50で定められたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3を越えない程度に座標変化させる。
ステップ70において、ステップ50で定められたリガンドに対して、コンフォメーションを大きく動かして、ステップ50から再スタートを行い、ステップ70までを繰り返して最適化を行う。コンフォメーション改変は、ステップ50で算出されたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3以上になるよう座標変化させる。
ステップ80において、ステップ70まで得られた標的タンパク質とリガンドとの相互作用エネルギーを決定する。
ステップ90において、ステップ40に戻り、ステップ0中の別のリガンドを選択し、ステップ80まで計算する。
ステップ100において、ステップ0中でのリガンドに対し、ステップ90において定められた相互作用エネルギーを比較し、標的タンパク質に結合すると予想されるリガンドを選択する。
本発明では、従来は標的タンパク質の立体構造が与えられた場合におけるリガンド探索が、タンパク質とリガンドとの相互作用にとって重要なタンパク質の動的な性質を反映させることが困難であった時点に対し、ステップ20から90までを行うことで、タンパク質とリガンドとの相互作用において、タンパク質の動的性質に関する運動エネルギー部分を弾性率として扱い、リガンドの近接に伴うタンパク質の弾性的性質を取り込んだエネルギー評価関数(安定化に寄与する疑似弾性エネルギー)を用いることで、相互作用エネルギーをvan del waalth相互作用エネルギーと疑似弾性エネルギーとの和の形式とし、物理化学的現象をはっきりさせた評価関数を用いることが従来法と異なる点である。以下、各ステップについて更に詳細に説明する。
(ステップ0:リガンドデータベースの準備)
3次元座標を含むリガンドデータベースを用意する。リガンドデータベースとしては、例えば、ACD等のような市販化合物データベース、化合物を描いて収集した仮想化合物データを用いることができる。ガンドのデータベースは分子力学法等に用いて3次元化することが望ましい。
(ステップ10:標的タンパク質立体構造の選択と取得)
ステップ0で定められたリガンドデータベースから特定リガンドを探索するための標的タンパク質を選択し、3次元座標を入手する。3次元座標は、公共データベースであるPDBやホモロジーモデリング法等で作成した立体構造座標を用いることが望ましい。
(ステップ20:標的タンパク質の基準振動計算)
ステップ10で定められた参照タンパク質の動的挙動を表すパラメータを基準振動解析法による計算結果のデータベースもしくは二次構造判定計算をおこない取得する。まず、基準振動解析法によるタンパク質の動的挙動を表すパラメータ取得方法について下記に示す。
基準振動解析法とは、ポテンシャルエネルギーを変位の二次関数として近似し、運動方程式を厳密に解き、最適化構造の周りの微小な振動を解析する方法を意味する。解くべき運動方程式は下記式(1)または(2)である。
Figure 0004314128
・・・(1)
Figure 0004314128
・・・(2)
ただし、
Figure 0004314128
ここでωkは固有値、Uikは固有ベクトルであり、δijはクロネッカーのデルタである。TijとVijはそれぞれ運動エネルギーEkとポテンシャルエネルギーVに関係し、下記式(3)および(4)の通りである。
Figure 0004314128
・・・(3)
Figure 0004314128
・・・(4)
ここで、qiは振動の自由度に対応した座標、qi 0は最適化座標、qi’(式(3)における「qiドット」を意味する)はqiの時間による微分である。Ajkは集団運動Qkと個々の原子運動qjを結ぶ係数であり、下記式(5)の通りである。
Figure 0004314128
・・・(5)
ただし、基準振動
Figure 0004314128
である。ここで、αkとδkは初期条件で定められる。
上記した基準振動解析法の詳細は「Wilson,E.B.,Decius,J.C.,and Cross,P. C. 1955. Molecular Vibration. McGraw−Hill.」に記載されている。
参照タンパク質に対して、上記で得られた固有値、固有ベクトルを用いて、ある温度・ある固有値での各Cα原子の位置ゆらぎを計算し、このゆらぎの値をCαが含まれるアミノ酸のゆらぎの値とする。目的タンパク質の各アミノ酸のゆらぎの値は、ステップ50におけるアライメントを利用して、目的配列と参照配列の比較から対応するアミノ酸残基ペアにおいて、目的タンパク質のゆらぎの値として参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。ゆらぎの値を求められなかったものについては、予め設定しておいた値をあてはめる。こうして得た目的タンパク質の各アミノ酸のゆらぎの値を目的タンパク質の動的な挙動を表すパラメータとする。
次に、二次構造判定計算によるタンパク質の動的挙動を表すパラメータ取得方法について下記に示す。
二次構造判定はタンパク質の立体構造座標から計算される。ソフトウェアとしては、DSSP、STRIDE等が好ましいが、基本的にはタンパク質の主鎖のねじれ角と水素結合パターンから判別される方法を用いる。
ここで、「DSSP(Dictionary of protein secondary structure of protein)」とは、PDB書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合パターンと、内部回転角等を解析しαへリックスとβシートとを判定するソフトウェアである。DSSPの詳細は、「Kabsch,W. & Sander,C. (1983) Dictionary of protein secondary structure:pattern recognition of hydrogen−bonded and geometrical features. Biopolimers, 22:2577−2637」に記載されている。
「STRIDE(Protein secondary structure assignment from atomic coordinate)」とは、PDB書式のファイルを入力ファイルとして、主鎖の水素結合パターンと、内部回転角等を解析しαへリックスとβシートとを判定するソフトウェアである。STRIDEの詳細は、「Frishman, D & Argos,P.(1995) Knowledge−based secondary structure assignment. Proteins: structure, function and genetics, 23, 566−579」に記載されている。
参照タンパク質に対して、上記ソフトウェア等を用いて、二次構造計算を行い、各アミノ酸がとるαへリックス構造、βシート構造、ループ構造を判定する。目的タンパク質の各アミノ酸の二次構造は、ステップ50におけるアライメントを利用して、目的配列と参照配列の比較から対応するアミノ酸残基ペアにおいて、目的タンパク質の二次構造判定として参照タンパク質と同一のものを当てはめておく。二次構造判定を求められなかったものについては、予め設定しておいた結果をあてはめる。こうして得た目的タンパク質の各アミノ酸の二次構造判定結果を目的タンパク質の動的な挙動を表すパラメータとする。
上記の目的タンパク質の動的挙動を表すパラメータとしては、参照タンパク質の基準振動解析法より取得した結果を用いることが好ましく、該当計算結果は別途データベースとして保存されているものを使用する。二次構造判定計算結果は、好ましくは、基準振動解析が行われていない参照タンパク質を用いる際に基準振動解析計算の代用として使用する。
(ステップ30:標的タンパク質の分子動力学計算(拘束つき))
主鎖の位置拘束エネルギー「U位置」を導入し、初期の受容体骨格の変動を抑えながらAPRICOT[Yoneda S. & Umeyama H. (1992) Free energy perturbation calculations on multiple mutation bases J. Chem. Phys. 97, 6730−6736]を用いて最小化(条件:温度300K、受容体の表面から水分子が最低2分子配置できる箱状水槽、力場:AMBER[S. J. Weiner, P.A. Kollman, D.A. Case, U.C. Singh, C. Ghio, G. Alagona, S. Profeta, &, P. Weiner (1984) A new force field for molecular mechanical simulation of nucleic acids and proteins J. Am. Chem. Soc. 106, 765−784])を行った。

U位置 = K位置 * R2

ここで、「K位置」は300.0、Rは基準座標からのずれとした。
続いて、APRICOTに二面角拘束エネルギー「U二面角」を導入して、最小化した受容体のMD計算(条件:温度300K、受容体の表面から水分子が最低2分子配置できる箱状水槽、力場:AMBER)を行った。

U二面角 = K二面角 * (θ−θ平衡)2

θは二面角(単位rad)。
「K二面角」には、最大値と最小値を指定することで、その範囲内で主鎖二面角揺らぎに対応するように各二面角に対して不均一な拘束がかかるようにした。以後、主鎖二面角を拘束しながら行うMDを二面角拘束MDと呼ぶことにする。
二面角拘束MD計算によりタンパク質構造座標を入手するには、受容体動的構造のクラスタリングを行う。
あらかじめ指定した活性部位に対して、MDの途中経過100fsecごとの受容体を重ね合わせた構造及び初期構造の活性部位を母集団とした。まず初めに、クラスタリングすることにより側鎖の動的情報が失われる可能性が高いことから、側鎖の二面角χにおいて母集団のα%が平均角度±20.0°の範囲で保存されている全側鎖二面角を収集した。ただし、主鎖の根元に近い方からχが保存されていないと判定された場合はそれ以降のχは保存されていないものとした。
次に、収集した保存側鎖二面角をすべて網羅している構造を母集団から抽出した。そして、抽出した構造の類似性を比較するために全原子rms(root mean square)がβÅ以下の場合、同一構造と判断して一方を削除、最終的に選ばれた構造をもとに受容体動的構造クラスターを作成した。また、保存されていなかった二面角χを構成する原子では、変動する可能性が高いことから活性部位・リガンド結合計算において衝突しても良いことにした。ただし、α、βは定数。
(ステップ40:基準となる標的タンパク質上の空間点を選択する。)
ステップ30で作成した複数のタンパク質立体構造座標のうち1つをランダムに選択する。タンパク質座標中の空間点は例えば以下のような方法で発生させる。
1. ダミー原子の発生による空間点の発生
リガンドとタンパク質との相互作用における水素結合に着目し、タンパク質中の水素結合サイトを空間点として指定する。水素結合における重要事項は距離と角度である。つまり、角度を計算するためには、水素結合ドナー(以後、ドナー)に水素原子が必要になる。そこで、活性部位及びリガンドに水素原子が含まれていない場合、以下の規則によりダミー水素原子を発生させた。
1) sp2軌道原子を中心とする正三角形状にダミー原子を発生(図2)。
2) sp3軌道原子では、水素結合を形成する距離にある場合、水素原子を共有するように回転できると考え水素結合相互作用を計算するときには、距離のみを考慮することにした。このため、sp3軌道原子にはダミー原子を発生させない。
金属及び水では、活性部位・リガンド結合の仲介役となり得るので、相互作用する位置に以下のようにダミー原子を発生させた。
1) 鉄のような金属には、正八面体状にダミー原子を発生(図3)。
2) 水は、正四面体状にダミー原子を発生。
ただし、活性部位と相互作用している方向にはダミー原子を発生させないことにした。
2. 構造活性相関情報を利用した空間点の発生
リガンドの構造活性相関(SAR)情報に着目し、以下の項目を入力情報にすることにした。
A) SARから得られた活性部位の原子(以後、「A原子」)。PDB形式に従う。
B) 「A原子」と相互作用するであろうリガンドの原子タイプ(以後、「Bタイプ」)。SYBYLのMOL2形式に従う。
C) 「A原子」と「Bタイプ」との相互作用の強さ(以後、「C強さ」)。
D) 「A原子」と「Bタイプ」との相互作用する距離(以後、「D距離」)(単位はÅ)。
A)〜D)をもとにタンパク質中の活性部位内におけるリガンドの初期座標を利用し、以下の規則により空間点を作成することにした。
1) 「A原子」がドナーまたは金属及び水の場合、1.で発生させたダミー原子の方向に対して「A原子」から「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選んだ(図4、図5)。
2) 「A原子」がsp3軌道原子の場合には、「A原子」から「D距離」の周囲を初期座標に選んだ(図6)。
3) 「A原子」が水素結合アクセプター(以後、アクセプター)の場合、「A原子」の結合延長上「D距離」の位置及びその周囲を初期座標に選んだ(図7)。
4) その他の場合には、「A原子」を中心とする半径が「D距離」の球表面上の点を初期座標に選んだ(図8)。
5) (1)〜(4)とは、異なりリガンドの初期座標を直接指定することもできるようにした。
(ステップ50:ステップ40の点群にステップ0中でリガンド座標の一つを重ね合わせる。)
距離行列を用いたアライメント作成アルゴリズム(DALI)[Holm, L., & Sander, C. (1993) Protein Structure Comparison by Alignment of Distance Matrices J. Mol. Biol. 233, 123−138]を低分子用に改良した手法で初期座標とリガンドを重ね合わせた。
(1) 1つの「Bタイプ」には、リガンドの原子タイプが複数対応することが多い。そこで、乱数を用いて「Bタイプ」とリガンドの原子タイプで同一視できるペアを作成した。ただし、ペアにおいてリガンドの原子タイプが重複しないようにした。
(2) 「Bタイプ」には、ステップ40−2.により複数の初期座標が含まれているので、初期座標も乱数を用いて選択した。
(3) 選択された初期座標とリガンドそれぞれの距離行列を作成し、Sscore(i,j)を計算する。
Figure 0004314128
ij sは該当タンパク質中のi番目とj番目の空間点距離。dij Cは化合物中のi番目とj番目の原子間距離。αは、該当タンパク質中の空間点群と化合物が完全に重なりあった場合にSscore(i,j)を最大値とするための定数。βは重なりと定義できる限界値を与えるための定数。
αは1.5、βは0.8とするのが好ましい。
(4) (1)〜(3)を10000回繰り返し、Sscore(i,j)が最大になるペアを探し、そのペア情報をもとにリガンドを初期座標に重ね合わせた。
(ステップ60:標的タンパク質との相互作用関数をリガンドのコンフォメーションを微調整しながら最適化する。)
ステップ50で重ねあわせたリガンドに対してタンパク質との相互作用エネルギーをコンフォメーションを微調整しながら最適化計算する。リガンドのコンフォメーションの微調整は、ステップ50で算出されたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3を越えない程度に座標変化させる。
微調整は例えばランダムサーチで最適化することが好ましい。ランダムサーチは以下の項目に従ってタンパク質の活性部位とリガンドとの微小変化を8000回行い、最適エネルギー「U最適」が最小になるようにする。
1〕 回転可能な結合のうち最大5つ乱数で選び、結合ごとにランダムに±10.0°の範囲内で回転させリガンドのコンフォメーションを換える。この過程を3回に一度行う。
2〕 x、y、z軸方向それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内でリガンドの並進運動を行う。この過程を2回に一度行う。
回転中心座標それぞれにおいて、ランダムに±1.0Åの範囲内で回転中心座標を移動させ、さらに3次元方向の角度それぞれに対して、ランダムに±5.0°の範囲内でリガンドの回転運動を行う。この過程を5回に一度行う。
最適エネルギーは以下のように定義する。

U最適=USAR+U水素+U疎水+Uスタッキング+U衝突+U内部
ここで、原子のVan der Waals半径及び原子間相互作用距離はAMBER99[J. Wang, P. Cieplak & P.A. Kollam (2000) How well does a restrained electrostatic potential (RESP) model perform in calculating conformational energies of organic and biological molecules? J. Comput. Chem. 21, 1049−1074]およびMM3パラメータ[Ma B., Lii J.−H., Allinger N.L. (2000) Molecular polarizabilities and induced dipole moments in molecular mechanics J. Comput. Chem. 21, 813−825]を参考にした。
(a) SARに関するエネルギー関数
SAR情報に従う指標としてエネルギーUSARを定義した。
Figure 0004314128
ψ(i)=KSAR(i) * (RSAR(i)−R)2−δ

NはSAR情報の数、Rは「A原子」からリガンド側の相互作用原子までの距離、KSAR(i)はi番目の「C強さ」、RSAR(i)はi番目の「D距離」、δは20.0とした。
Figure 0004314128
Figure 0004314128
Figure 0004314128
(c) 疎水相互作用エネルギー
活性部位(ALA、CYS、PHE、ILE、LEU、MET、PRO、VAL、TRP、TYRの側鎖。ただし、TYRの水酸基は除く)及びリガンド(炭素原子)の疎水相互作用し得る原子に通し番号を付け、活性部位のi番目とリガンドのj番目との原子間距離Rがカットオフ以内にあるときψ(i,j)を計算するように定義した。
Figure 0004314128
Figure 0004314128
Mは活性部位の疎水相互作用し得る原子の数、Nはリガンドの疎水相互作用し得る原子の数、「K疎水(i,j)」及び「R疎水(i,j)」は原子タイプごとに決めた疎水相互作用の強さ及び距離とした。また、カットオフは8.0Åとした。
Figure 0004314128
Figure 0004314128
(e) 分子間衝突(弾性衝突エネルギー)
活性部位(クラスタリングの際に定義した、保存されている側鎖原子及び主鎖原子のみ)のi番目の原子とリガンドのj番目の原子との原子間距離Rが衝突距離「R衝突(i,j)」以内のとき、ψ(i,j)を計算するように定義した。
Figure 0004314128
ψ(i,j)=K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは衝突を不許可とする活性部位の原子の数、Nはリガンドの原子の数、「K衝突」は1000.0とした。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とした。
ここで、活性部位の各原子に対し衝突を許す重み付けw(i)が定義された場合以下の式を用いる。ただし、w(i)は、0〜1の範囲の実数とする。
Figure 0004314128
ψ(i,j)=w(i) * K衝突 * (R衝突(i,j)−R)2

Mは活性部位の原子の数、Nはリガンドの原子の数、「K衝突」は1000.0であることが好ましい。「R衝突(i,j)」は活性部位のi番目の原子とリガンドのj番目の原子それぞれのVan der Waals半径の和とした。
Figure 0004314128
(ステップ70:リガンドのコンフォメーションを大きく改変する。)
リガンドのコンフォメーションを大きく動かして、ステップ50から再スタートを行い、ステップ60までを繰り返して最適化を行う。コンフォメーション改変は、ステップ60で算出されたリガンド座標を中心に並進、回転、シングルボンドまわりの角度をRSMDで0.3以上になるよう座標変化させる。
リガンドのコンフォメーションを大きく動かした最適化は、例えばステップ50で最適化したエネルギー「U最適」でのコンフォメーションに対して、回転可能な結合をランダムに5つ選び、原子タイプごとに決められた回転角度間隔に従ってランダムに回転させる。その後ステップ50、ステップ60の過程を、5000回繰り返し行う。ただし、リガンドのコンフォメーションを変化させた後、リガンドの内部エネルギー「U内部」を計算しその値が500.0以上のときはその後の計算をスキップし、次のリガンドコンフォメーションを発生させるようにする。
(ステップ80:標的タンパク質とリガンドとの相互作用エネルギーの決定)
ステップ40から70まで「U最適」が最適値となる最適なタンパク質とリガンドとの複合体座標、最適エネルギー「U最適」を算出する。
(ステップ90:ステップ40に戻り、ステップ0中の別のリガンドを選択し、ステップ80まで計算する。)
ステップ40から90まではステップ0中の化合物データベース中のリガンド全てについて行われる。
(ステップ100:リガンドの選択)
ステップ90まで評価されたタンパク質とリガンドとの複合体座標、最適エネルギー「U最適」を基にステップ0中のデータベース中のリガンドから該当タンパク質と結合する可能性のある化合物を選ぶ。
以下に、本発明にかかる相互作用関数によって該当タンパク質と結合する物質をコンピュータプログラムにより評価し、選定する方法及びその装置、該当タンパク質に結合するリガンドを選択する際に一連の処理を全自動または手動的に行うことを特徴とするコンピュータプログラム及びその装置、該当タンパク質の立体構造に際し、基準振動計算を行い、各アミノ酸のゆらぎの大きさを求め、そのゆらぎの大きさを拘束条件として、分子動力学計算を行うことで、タンパク質の立体構造をエネルギー最適構造よりおおきく離れないようにして分子動力学計算を行う方法及びその装置、タンパク質の動的挙動に関する物理化学的性質を明確に描写することを特徴とする手法及びその装置、タンパク質の動的性質を表現する関数として基準振動解析結果またはタンパク質の二次構造判定結果を用いることを特徴とした方法及びその装置、核磁気共鳴スペクトルの解析結果のような複数の立体構造座標である場合についても、該当タンパク質と結合するリガンドの探索について、複数座標すべてを全自動的にかつ短時間で同等に評価することを可能とした方法及びその装置を具体的な例を用いて詳細に説明する。
下記の実施例は、本発明の具体的な認識を得る一助と見るべきであり、本発明の範囲を何ら制限するものではない。
(二面角拘束MDおよびクラスタリングにおけるパラメータ定数の決定)
基準振動解析により二面角のゆらぎ値が計算される。本発明においては、二面角のゆらぎ値を分子動力学計算における拘束条件として、

U二面角 = K二面角 * (θ−θ平衡)2
θは二面角(単位rad)。

中の「K二面角」に適応する。実際には「K二面角」の最大値と最小値を指定することで、その範囲内で主鎖二面角揺らぎに対応するように各二面角に対して不均一な拘束がかかるようにしている。本実施例では、「K二面角」の適切な最大値と最小値を決定することを目的とする。
さらに分子動力学計算後、構造変化した座標をクラスター解析し代表構造を選択する。その際、あらかじめ指定した活性部位に対して、MDの途中経過100fsecごとの受容体を重ね合わせた構造及び初期構造の活性部位を母集団とし、まず初めに、クラスタリングすることにより側鎖の動的情報が失われる可能性が高いことから、側鎖の二面角χにおいて母集団のα%が平均角度±20.0°の範囲で保存されている全側鎖二面角を収集した。ただし、主鎖の根元に近い方からχが保存されていないと判定された場合はそれ以降のχは保存されていないものとした。次に、収集した保存側鎖二面角をすべて網羅している構造を母集団から抽出した。そして、抽出した構造の類似性を比較するために全原子rms(root mean square)がβÅ以下の場合、同一構造と判断して一方を削除、最終的に選ばれた構造をもとに受容体動的構造クラスターを作成した。また、保存されていなかった二面角χを構成する原子では、変動する可能性が高いことから活性部位・リガンド結合計算において衝突しても良いことにした。ここでα、βは定数となるが、本実施例では、適切なα、βを決定することを目的とする。
ここでは、リガンドと接触している活性部位において最も良い主鎖の動的構造を得ることが目的であるので、rms(root mean square)を計算するときは活性部位における主鎖原子(N、Cα、C、O)の4原子のみが対象とした。
「K二面角」の最大値と最小値、クラスタリング定数α、βはNMRで解析される構造を再現できる値が適切であると考えられる。ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、PDB code:1LUD)はNMRで解析された構造である。そこでまず、NMR構造のジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR、PDB code:1LUD)のMODEL1を初期構造に基準振動解析を行い、ゆらぎ値を求めその後分子動力学計算をおこなった。また、1LUD(MODEL1)に含まれていたリガンドの各原子から半径6Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。分子動力学計算後は、受容体動的構造クラスタリングまで行った。ただし、MDは0〜0.1nsecまでの結果を使用した。ここで、MDでの拘束の最小値と最大値は0から1000まで(100ごと)、クラスタリングにおいては、定数αは0%から90%まで(10%ごと)、定数βはNMR構造平均値rmsを参考に、0.1Åから0.6Åまで(0.1Åごと)の数値を網羅的に行い、1LUDにおけるNMR構造すべてと比較することにより定数を決定することにした。
NMR構造平均値は、受容体動的構造クラスタリングにおける定数βを決定するための参考として求めた。the Protein Data Bank(PDB)のNMR構造のうち、受容体が単純タンパク質で、1つのPDBファイル内に記載されていたNMR構造が10パターン以上あり、リガンドを含む117種類を対象に、活性部位のNMR構造平均値rmsを求めることにした。
まず、MODEL1においてリガンドの各原子から半径6Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。MODEL1以外の構造において、MODEL1の活性部位とのrmsをそれぞれ求め、さらにその平均rmsを求めた。ここで、平均rmsが1.0Å以上の場合は明らかな動的構造と見なせるので、そのようなPDBファイルを対象からはずした。これにより、対象となるPDBファイルは71種類となった。71種類の平均rmsをさらに平均化した値をNMR構造平均値rmsとした。このようにして得られたNMR構造平均値rmsは0.62となった。
「K二面角」の適切な最大値と最小値、クラスタリングにおける定数α、βの決定に関しては、各パラメータ値とNMR構造との比較を行った。
1LUDには24種類のMODELが含まれており、MODEL1を対象にしたので、これを除く23種類のMODELの活性部位を正解構造とした。計算の結果出力された各受容体動的構造クラスターにおいて各正解構造とrmsを計算しその中で最小のrmsを「RMS最小」として、各受容体動的構造クラスターから得られた「RMS最小」の平均値をスコアとし、このスコアが最小となるパラメータを採用することにした。
図11に1LUDのMODEL1における基準振動解析結果を、図12、図13、図15〜18にスコアとパラメータとの比較の結果を示す。
図11では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示した。紫色Cは活性部位である。
図12において、この結果、定数αは70%が良いという結果になったが、一般性を持たせときに70%ではクラスタリングの精度が低下した場合もあったので、これよりマイルドにした80%を定数αの値にした。
図13および図15〜18において、クラスタリング定数をα=80.0%、β=0.4Åに固定した。なお、黒色に近いほどスコアが小さい。
これらの結果より、スコアが小さくなる拘束条件としては図14の値が最適であると判断された。
これらの値の妥当性は、例えば、主鎖原子のみではなく、Cα原子、側鎖原子、全原子について調査しても図14のパラメータ値が最適であることが分かる。
(拘束パラメータ有無による分子動力学計算の相違)
本発明によって開発された拘束パラメータを適応した分子動力学計算を2.0nsecまで行い、活性部位の主鎖原子の動的挙動が拘束パラメータを適応しない場合と比較して構造がどの程度変化するかを調べた。
Case1)
ジヒドロ葉酸還元酵素(1LUDのMODEL1)を対象に検証した。結果を図19〜図21に示す。基準振動計算結果は。実施例1で求めた値を適応した。
図19では、1LUDのPDBファイル内に記載されている24種類の各モデル構造をMODEL1と活性部位の主鎖原子においてrmsを計算し、その平均rmsを点線で表示。二面角拘束があるとき(A)とないとき(B)において、活性部位の主鎖原子の初期構造からのずれをrmsで表示。
図20に二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較を示す。図20において、白色はNMR構造(1lud)であり、黒色はMD構造(1lud)である。
表1に二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較を示す。
Figure 0004314128
図21に二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較を示す。
表2に二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較を示す。
Figure 0004314128
Case2)
ここでは、FMAS[Ogata K., Umeyama H. (2000) An automatic homology modeling method consisting of database searches and simulated annealing J. Mol. Graphics Mod. 18, 258−272]によりモデリングした構造(モデル構造)とX線構造を初期構造に選び、初期構造及び拘束の有無に依存することを検証した。また、リガンドの各原子から半径10Å以内に含まれる受容体残基を活性部位と定義した。
cellular retinoic acid binding protein type II(CRABP−II)(PDB code:1CBQ)のX線構造(立体構造)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー32.1%のintestinal fatty acid binding protein(PDB code:1ICM )を選び、図22のアライメントでモデル構造を作成した。図23、図24、図25にX線とモデルの構造比較を示す。
図23には、1CBQの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示す。図24には、図23の緑色Cで示される物質である6−(2,3,4,5,6,7−hexahydro−2,4,4−trimethyl−1−methyleneinden−2−yl)−3−methylhexa−2,4−dienoic acidの構造を示す。
図25には、1CBQのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示した。
図26は1CBQのX線構造の基準振動解析の結果を示す図であり、図27は1CBQのモデル構造の基準振動解析の結果を示す図である。図26および図27では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図28には、1CBQのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示す。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。図28において、Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし、Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり、Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし、Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり、である。
Case3)
FlavodoxinのX線構造(PDB code:1J9G)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー29.2%のflavodoxin(PDB code:1AHN)を選び、図29のアライメントでモデル構造を作成した。図29には、1J9Gおよび1AHNのアライメントを示す。
図30には、1J9Gの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示す。図31には、図30における緑色Cで示される物質であるflavin mononucleotideの構造を示す。
図32には、1J9GのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示する。
図33には1J9GのX線構造の基準振動解析の結果を、図34には1J9Gのモデル構造の基準振動解析の結果を示す。図33および図34において、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDE[8]による二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図35には、1J9GのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示す。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし。Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり。Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし。Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり。
Case4)
Matrix metalloproteinase−8(MMP−8)のX線構造(PDB code:1MMB)を利用した。また、参照タンパク質にホモロジー55.0%のMMP−3(PDB code:1B3D)を選び、図36のアライメントでモデル構造を作成した。図36には、1MMBおよび1B3D_Aのアライメントを示す。
図37には、1MMBの立体構造(X線構造(赤色A)およびモデル構造(青色B))を示す。図38には、図37における緑色Cで示される物質であるbatimastatの構造を示す。
図39には、1MMBのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示する。
図40には1MMBのX線構造の基準振動解析の結果を、図41には1MMBのモデル構造の基準振動解析の結果を示す。図40および図41において、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDE[8]による二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図42には、1MMBのX線構造とモデル構造の分子動力学法(MD)計算の結果を示す。X線構造の活性部位の主鎖原子とのrmsを求めた。Aは初期構造がX線構造で二面角拘束なし。Bは初期構造がX線構造で二面角拘束あり。Cは初期構造がモデル構造で二面角拘束なし。Dは初期構造がモデル構造で二面角拘束あり。
Case1)〜Case4)に示したとおり、拘束パラメータを適応した分子動力学計算結果は、拘束パラメータを適応しない場合と比較して、大きな構造変化は少ない。このことは古典力学を適応しているため大きな構造変化をしてしまう分子動力学法において、拘束パラメータを適応することで大きな構造変化を合理的に拘束することができ,理想的な構造座標を得ることが可能であるということを示している。また、ホモロジーが高ければ、FMASの構造構築精度もあがる。すなわち、X線に近い構造を得られるので、アミノ酸の数個異なるミューテーションタンパク質にもこの手法は利用できる。
(タンパク質/リガンド複合体モデルの検証)
本発明により該当タンパク質に結合するリガンドの複合体立体構造が予測される。本実施例では、こうして予測された複合体立体構造座標の予測精度を検証する。検証には、複合体の立体構造が既知で、リガンドの有無もしくはリガンドの種類により活性部位の形が異なるInduced−Fit型のタンパク質を用いた。ここで、リガンドの各原子から半径10Å以内の残基をタンパク質の活性部位と定義した。また、X線構造またはNMR構造を初期構造に選んだMDでは、ほぼ一定の構造を保ち続けることが分かったのでMDを1.0nsecまで行うことにした。ただし、水素原子を除いて計算した。複合体モデル構築は、発明実施の形態に従って行った。
Case1)
ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)である1BZFと1LUDとはホモロジーが100.0%でかつ結合しているリガンドが異なることにより活性部位の形が異なる。そこで、1BZF(MODEL18)を初期構造として選択し、リガンドとして2,4−diamino−5−(3,4,5−trimethoxy−benzyl)−pyrimidin−1−ium(図49)を用い、本発明によるプログラムによってタンパク質/リガンド複合体モデルを作成し、正解構造である1LUD(MODEL4)と比較することで検証した(図43)。
図43に、ジヒドロ葉酸還元酵素の立体構造を示す。図43では、1LUD(MODEL4)受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)、1BZF(MODEL18)の受容体(青色C)とリガンド(水色D)を示す。
図44に1BZFの基準振動計算解析を示す。図44では、二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図45、図47に1BZFを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示す。図45には、正解構造1LUD(MODEL4)の活性部位とのrmsを表示。Aは主鎖原子。Bは側鎖原子。Cは全原子。図47は、1BZF(MODEL18)における活性部位・リガンド結合解析であり、MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。
図46にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示す。図46は、1LUD(MODEL4)より得られた構造活性相関情報。
図48〜図50にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示す。図48は、0〜1.0nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合。緑色Aは正解構造の1LUD(MODEL4)。青色Bは初期構造の1BZF(MODEL18)。そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dはリガンドの正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは0.9614。図50のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.2791の誘導が生じた。図49は黒色:正解(1ludのmodel 4)、灰色:初期構造(1bzfのmodel 18)、白色:最適構造。図50は、2,4−diamino−5−(3,4,5−trimethoxy−benzyl)−pyrimidin−1−ium。1LUDのリガンド。
Case2)
heat shock protein 90(HSP90)である1YERと1YETはホモロジーが100.0%でリガンド結合の有無により活性部位の形が異なる。そこで、リガンド結合していない1YERを初期構造に選び、リガンドとしてgeldanamycinを用い、正解構造である1YETと比較することで検証した(図51)。図51は、heat shock protein 90の立体構造である。1YETの受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)。1YERの受容体(青色C)。
図52に1YERの基準振動解析を示す。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図53、図55に1YERを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示す。正解構造1YETの活性部位とのrmsを表示。Aは主鎖原子。Bは側鎖原子。Cは全原子。図55は、1YERにおける活性部位・リガンド結合解析。MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。
図54にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示す。図54は、1YETより得られた構造活性相関情報。
図56および図57にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示す。図56および図57は1YER・リガンド結合。図56は、0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合。緑色Aは正解構造の1YET。青色Bは初期構造の1YER、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dはリガンドの正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは1.2081。図57のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.1619の誘導が生じた。図57は、geldanamycin。1YETのリガンド。
Case3)
mitogen−activated protein kinase(MAP kinase)である1A9Uと1OUKはホモロジー100.0%でかつ結合しているリガンドが異なることにより活性部位の形が異なる。そこで、1A9Uを初期構造に選び、リガンドとして1OUK中に含まれるリガンドを用い、正解構造である1OUKと比較することでと検証した(図58)。図58はmitogen−activated protein kinaseの立体構造。図58において、1OUKの受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)。1A9Uの受容体(青色C)とリガンド(水色D)。
図59に基準振動解析結果を示す。図59は1A9Uの基準振動解析。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図60、図62に1YERを用いた拘束二面角分子動力学の結果を示す。図60は1A9UのMD。図60に正解構造1OUKの活性部位とのrmsを表示。Aは主鎖原子。Bは側鎖原子。Cは全原子。図62は1A9Uにおける活性部位・リガンド結合解析。MD計算を0.1nsecまで行ったときの結合解析及び1.0nsecまで行ったとき、また、受容体動的構造クラスタリングを行うときの母集団を100fsecごと及び1000fsecごとで行ったときの結合解析。評価法は、正解構造との活性部位及びリガンドのrmsで行った。
図61にリガンドドッキングにおける空間点指定のパラメータ値を示す。図61は1OUKより得られた構造活性相関情報。
図63〜図65にタンパク/リガンド複合体と正解構造との比較を示す。図63〜図65は1A9U・リガンド結合。図63は、0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団により作られたクラスターを用いて行った活性部位・リガンド結合。緑色Aは正解構造の1OUK。青色Bは初期構造の1A9U、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dはリガンドの正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは1.6112。図65のリガンドを結合させることにより活性部位の主鎖原子のrmsで0.1871の誘導が生じた。図64において、黒色:正解(1ouk)、灰色:初期構造(1a9u)、白色:最適構造。図65は1OUKのリガンド。4−[5−[2−(1−phenyl−ethylamino)−pyrimidin−4−yl]−1−methyl−4−(3−trifluoromethylphenyl)−1H−imidazol−2−yl]−piperidine。
Case1)〜Case3)に示す通り、本発明により作成されるタンパク質/リガンド複合体モデルは、誘導結合型のタンパク質/リガンド複合体の立体構造を精度よく予測可能であることが分かる。
(Fxaを用いたin silico Screeningへの応用例)
本発明により、セリンプロテアーゼの1種であるFxaの立体構造(図66)を用い、化合物データベースからFxaに結合する可能性のあるリガンドを探索した。立体構造には、1AIXを用い、リガンドデータベースとして、PDBデータベースより収集した3633種類のリガンドを用いた。発明実施の形態に従い、in silico screeningを行った。その結果を図67に示す。
図67は、化合物データベース中のリガンドのうち、1AIXとの相互作用エネルギーの上位100個を示している。図67で、太字は1AIX中に含まれているリガンドで、斜線はセリンプロテアーゼ。PDB codeとは、リガンドが含まれているもとのPDBcodeを示す。図67には、1AIXにもともと含まれているリガンドがランキング19位に入っている。
ランキング19位におけるタンパク質/リガンド複合体構造とを図68および図69に示す。図68において、白色は受容体、黒色は1AIXのリガンド。図69は1AIX中のリガンド。
図67中のランキング35位、38位、80位はすべてセリンプロテアーゼに結合するリガンドである。
これらの構造とおけるタンパク質/リガンド複合体構造を図70および図71、図72および図73、図74および図75に示す。図70および図71はランキング35位におけるタンパク質/リガンド複合体構造。図70において、白色は受容体、黒色は1AUJのリガンド。図71は1AUJ中のリガンド。図72および図73はランキング38位におけるタンパク質/リガンド複合体構造。図72において、白色は受容体、黒色は正解(1FOR)のリガンド、RMSは1.500。図73は1FOR中のリガンド。図74および図75はランキング80位におけるタンパク質/リガンド複合体構造。図74において、白色は受容体、黒色は1K1Mのリガンド。図75は1K1M中のリガンド。
これらの結果から、本発明により、化合物データベースからもっともらしい化合物を選択することが可能であることが分かる。
(異なる条件でのin silicoスクリーニング)
構造活性相関(SAR)の情報により順位が変動することを検証する。また、受容体を固定した場合の順位の変動も検証する。
ここでは、severe acute respiratory syndrome(SARS)のプロテアーゼを用いたin silico screeningを行った。初期構造にはリガンドを含まない1UK3(B鎖)を、またリガンドを含む1UK4(B鎖)のリガンド結合様式を構造活性相関情報として利用した。活性部位は1UK4(B鎖)のリガンドの各原子から半径10Å以内に含まれる受容体残基部位。リガンドデータベースとして、PDBより収集した3633種類のリガンドを用いた。ただし、結合解析で利用する受容体動的構造クラスターには0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団で作られたものを使用した。また、水素原子を除いて計算した。
図76はSARSプロテアーゼの立体構造。1UK4(B鎖)の受容体(緑色A)とリガンド(赤色B)。1UK3(B鎖)の受容体(青色C)。
図77に1UK3の基準振動解析の結果を示す。図77は1UK3(B鎖)の基準振動解析。二面角φ(橙色A)、ψ(緑色B)の揺らぎの大きさを示した。揺らぎが0.0に近いほど分子動力学法(MD)計算において二面角拘束が強くなる。また、STRIDEによる二次構造判定でα−へリックス(赤色D)、β−シート(青色D)を表示。紫色Cは活性部位。
図78に1UK3の分子動力学計算の結果を示す。図78は1UK3(B鎖)のMD。1UK4(B鎖)の活性部位とのrmsを表示。Aは主鎖原子。Bは側鎖原子。Cは全原子。
Case1) SAR4ヵ所指定
図79に活性部位内での空間指定を示す。図79は1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報。
図80にin silico スクリーニングの結果を示す。図80は1UK3(B鎖)におけるin silicoスクリーニングの結果。
図81に正解構造との比較を示す。図81は1UK3と1UK4との比較。順位25。緑色Aは1UK4(B鎖)。青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造。Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは2.5721。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0792。
図82および図83に、in silico スクリーニングの順位1を示す。図83は1QF4のリガンド(C8−R)−hydantocidin 5’−phosphate。
Case2) SAR3ヵ所指定
図84に1UK3の活性部位内での空間指定を示す。図84は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。
図85には、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示す。図85は1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。順位49。緑色Aは1UK4(B鎖)。青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは2.0057。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0469。
図86には、SAR3ヵ所指定でのin silicoスクリーニング結果を示す。図86はSAR3ヵ所指定で実行したin silicoスクリーニングの結果。
Case3) SAR5ヵ所指定
図87に1UK3の活性部位内での空間指定を示す。図87は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。
図88にはSAR5ヵ所指定でのin silicoスクリーニング結果を示す。図88はSAR5ヵ所指定で実行したハイスループットスクリーニングの結果。
図89には、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示す。図89は1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。順位2。緑色Aは1UK4(B鎖)。青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは1.2578。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.1620。
Case4) リガンド原子タイプ指定の変更
図90に1UK3の活性部位内での空間指定を示す。図90は1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。
図91には、リガンド原子タイプ指定変更でのin silicoスクリーニング結果を示す。図91はリガンド原子タイプ指定変更で実行したハイスループットスクリーニングの結果。
図92には、1UK3での最適構造と正解構造との比較を示す。図92は1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。順位774。緑色Aは1UK4(B鎖)。青色Bは初期構造の1UK3(B鎖)、そして赤色Cはリガンド結合における最適構造。要素色Dは1UK4のペプチド性リガンド(ASN−SER−THR−LEU−GLN)の正解構造。水色Eは計算結果によるリガンド。リガンドのrmsは2.5216。正解構造との活性部位の主鎖原子のrmsは、初期構造では1.0248、最適構造では1.0792。
Case5) 受容体固定
図93に活性部位内での空間指定を示す。図93は1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報。
図94に、受容体を固定したin silico スクリーニングの結果を示す。図94は受容体を固定した状態で実行したハイスループットスクリーニングの結果。
図95には、1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンドと計算結果のリガンドとの比較を示す。順位39。灰色は1UK3の活性部位構造。黒色は1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンド。白色は計算結果のリガンド。
Case1)〜Case4)を見ると、SARの指定が多いほど参考にしたリガンドの順位が良くなる。つまり、参考にできるリガンドの結合情報が信頼できる場合には、SARの情報を多くしたin silicoスクリーニングを行い、信頼性に欠ける場合には、SARの情報数を減らし、さらに、リガンド原子タイプ指定の幅を広げることで、様々なリガンドがランキング上位に分布する。そして、その分布情報をもとにSAR情報を作り変えてin silicoスクリーニングを実行するとより信頼性の持てる結果が出力されるはずである。
Case1)とCase5)を見ると、受容体の動的構造の有無による順位変動を示している。これは、リガンドの動きのみの最適化に比べ、リガンド及び受容体それぞれが動く最適化の方が原子のぶつかりをさけることに優れている。従って、同じ位置に配置するための最適化エネルギーに差が生じる。
(二面角拘束分子動力学計算のパラメータに関するMDパラメータの分布)
FMN−binding proteinにおける二面角拘束MDパラメータの分布。
ここでは、1LUD以外のNMR構造でも二面角拘束分子動力学計算及びクラスタリングのパラメータが同様の結果を生じるのかを検証する。そこで、FMN−binding proteinのNMR構造(PDB code:1AXJ)のMODEL1を初期構造に選んだ。評価法は、受容体動的構造クラスタリングのパラメーター(α=80.0%、β=0.4Å)を固定したこと以外は実施例1に従った。
図96に1AXJにおける二面角拘束分子動力学計算のパラメータ決定のスコアの分布状況を示す。図96は1AXJにおける二面角拘束MDパラメータの分布。Aに近い部分ほどスコアで小さい。1LUDの時と同様に二面角拘束の最大値800、最小値0では良い結果を示す。
(二面角拘束MD)
ここでは、主鎖二面角拘束MDで各原子の動的構造を検証する。また、時として基準振動解析が収束せず二面角揺らぎ情報が得られないことがある。そこで、図13により主鎖二面角に対して均一な拘束(500)でMDを行ったときでも良い結果になっていることから、この場合における動的構造も検証する。実施例1に従い、拘束なし、二面角揺らぎを用いた拘束及び均一な拘束(500)の条件のもとMDを行った。
図97〜図108に1LUDに対して行った分子動力学計算の各原子における動的挙動の結果を示す。図97〜図108は1LUD(MODEL1)のMD。図97および図98は活性部位の主鎖原子、図99および図100は受容体の主鎖原子、図101および図102は活性部位の側鎖原子、図103および図104は受容体の側鎖原子、図105および図106は活性部位の全原子、図107および図108は受容体の全原子、における動的挙動の結果を示す図である。1LUDのPDBファイル内に記載されている24種類の各モデル構造をMODEL1と活性部位の主鎖原子においてrmsを計算し、その平均rmsを点線で表示。二面角拘束があるとき(A)とないとき(B)及び二面角拘束が500で一定(C)において、活性部位の主鎖原子の初期構造からのずれをrmsで表示。
ここには、記載しないが1CBQ、1J9G、1MMB、1BZF(MODEL18)、1YER、1A9U及び1UK3(B鎖)に関しても主鎖二面角揺らぎに基づく拘束MDの結果を見ると、図109〜図111と同様に主鎖原子の抑制があると、拘束のない側鎖原子にも一定動きを示す。受容体の動きにおいて主鎖原子の動きの比重が大きいことが理解できる。
(異なる条件での結合解析)
ここでは、二面角拘束MD及びクラスタリングのパラメータが異なっても誘導が生じることを検証する。拘束の最大値100、最小値0及び受容体動的構造クラスタリング定数α=80.0%、β=1.0Åに設定して、その他は実施例2に従った。ただし、受容体動的構造クラスターには0〜0.1nsecの範囲内で100fsecごとの母集団で作られたものを使用した。また、活性部位の定義は、リガンドの各原子から半径6Å以内にある受容体残基とした。
図109〜図111には、異なる条件で受容体/リガンド結合の結果を示す。
(i) 1BZF(MODEL18)で、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2686の誘導が生じた(図109)。活性部位全体のrmsでは0.1224の誘導。リガンドのrmsは0.8526。
(ii) 1YERで、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2376の誘導が生じた(図110)。活性部位全体のrmsでは0.0816の誘導。リガンドのrmsは0.7246。
(iii) 1A9Uで、リガンド結合により活性部位の主鎖原子rmsで0.2150の誘導が生じた(図111)。活性部位全体のrmsでは0.0464の誘導。リガンドのrmsは0.9464。
ただし、緑色は正解構造、青色は初期構造、赤色は最適構造。要素色は正解リガンド、水色は最適リガンド。
図109〜図111で示すように、各条件が異なっていても、与えられた条件の中で最適な結果を生じることができる。
(正解構造を初期構造に選んだときの結合解析)
ここでは、DHFRの1BZF及び1LUDはリガンドの結合様式が似ているので、構造活性相関情報を一部変更し1BZFのリガンドの結合解析を行う。条件としては、初期構造に1BZF(MODEL18)、0〜0.1nsecまでの母集団より作成したクラスターを使用した。
図112には、1BZFの活性部位内における空間指定を示す。図112は1BZF用に変更した構造活性相関情報。
図113および図114には、1BZFにおける受容体/リガンド結合の結果を示す。図113および図114は1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析。
(i) 最適化したときの受容体には初期構造を選択し、リガンドのrmsは0.8884。(図113)
(ii) trimetrexate。1BZF(MODEL18)のリガンド。(図114)
初期構造が元々PDBに登録されていた構造、つまり最適構造であったため、計算結果でもそれが図113および図114のように再現できる。
以上、本発明の方法は、医農薬の分子設計等を中心に、受容体/リガンド結合の解析を行う分野(医薬品設計)において、極めて有用であると考えられる。本発明は、産業上多くの分野、特に医薬品、食品、化粧品、医療、構造解析、機能解析等の分野で広く実施することができ、故に極めて有用である。
本発明によるタンパク質立体構造と誘導適合を利用したリガンド探索方法の一例を示すフローチャートである。 sp2軌道原子におけるダミー水素原子発生。 金属原子におけるダミー原子発生。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)発生。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)発生。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)発生。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)発生。 構造活性相関(SAR)情報をもとに活性部位内にリガンドを入れるための初期座標(B)発生。 水素結合角の定義。 スタッキングにおける角度の定義。 1LUD(MODEL1)の基準振動解析の結果。 MD及びクラスタリングのパラメータとスコア。 クラスタリング定数を固定した時のMDでの二面角拘束の最大値、最小値の分布。 拘束パラメータ。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布。 クラスタリングのパラメータを固定した時の二面角拘束パラメータの分布。 1LUD(MODEL1)のMDの結果。 二面角拘束なしでMDを計算させた時のNMR構造との比較。 二面角拘束ありでMDを計算させた時のNMR構造との比較。 1CBQのアライメント。 1CBQの立体構造。 1CBQの立体構造。 1CBQのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示。 1CBQのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1CBQのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1CBQのX線構造とモデル構造のMD。 1J9Gのアライメント。 1J9Gの立体構造。 1J9Gの立体構造。 1J9GのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1J9GのX線構造とモデル構造のMD。 1MMBのアライメント。 1MMBの立体構造。 1MMBの立体構造。 1MMBのX線構造とモデル構造の相違をrmsで表示。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1J9GのX線構造とモデル構造の基準振動解析。 1MMBのX線構造とモデル構造のMD。 ジヒドロ葉酸還元酵素の立体構造。 1BZF(MODEL18)の基準振動解析。 1BZF(MODEL18)のMD。 1LUD(MODEL4)より得られた構造活性相関情報。 1BZF(MODEL18)における活性部位・リガンド結合解析。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合。 1BZF(MODEL4)・リガンド結合。 heat shock protein 90の立体構造。 1YERの基準振動解析。 1YERのMD。 1YETより得られた構造活性相関情報。 1YERにおける活性部位・リガンド結合解析。 1YER・リガンド結合。 1YER・リガンド結合。 mitogen−activated protein kinaseの立体構造。 1A9Uの基準振動解析。 1A9UのMD。 1OUKより得られた構造活性相関情報。 1A9Uにおける活性部位・リガンド結合解析。 1A9U・リガンド結合。 1A9U・リガンド結合。 1A9U・リガンド結合。 1AIXの立体構造。 in silico screeningの結果。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 タンパク質/リガンド複合体構造。 SARSプロテアーゼの立体構造。 1UK3(B鎖)の基準振動解析。 1UK3(B鎖)のMD。 1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報。 1UK3(B鎖)におけるin silicoスクリーニングの結果。 1UK3と1UK4との比較。 in silicoスクリーニングの順位1。 in silicoスクリーニングの順位1。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。 SAR3ヵ所指定で実行したin silicoスクリーニングの結果。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。 SAR5ヵ所指定で実行したハイスループットスクリーニングの結果。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。 1UK3(B鎖)より得られた構造活性相関情報。 リガンド原子タイプ指定変更で実行したハイスループットスクリーニングの結果。 1UK3(B鎖)と1UK4(B鎖)との比較。 1UK4(B鎖)より得られた構造活性相関情報。 受容体を固定した状態で実行したハイスループットスクリーニングの結果。 1UK3と1UK4を重ね合わせたリガンドと計算結果のリガンドとの比較。 1AXJにおける二面角拘束MDパラメータの分布。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 1LUD(MODEL1)のMD。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果。 異なる条件で受容体/リガンドの結合結果。 1BZF用に変更した構造活性相関情報。 1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析。 1BZF(MODEL18)のリガンド結合解析。

Claims (12)

  1. 単数または複数鎖のタンパク質の座標データが与えられた場合に、当該タンパク質と結合するリガンドをコンピュータで下記のステップを実行することにより探索するリガンド
    探索方法であって、
    上記コンピュータは、処理手段と記憶手段とを少なくとも備え、
    上記記憶手段は、
    上記タンパク質の座標データと、
    上記リガンドのリガンド座標データと、
    上記タンパク質の活性部位の原子、当該原子と相互作用する上記リガンドの原子タイプ、上記原子と上記原子タイプとの相互作用の強さ、および、上記原子と上記原子タイプとの相互作用する距離、を少なくとも含む構造活性相関情報と、
    を少なくとも記憶し、
    上記処理手段において実行される、
    上記記憶手段に記憶された上記タンパク質の上記座標データに対して、基準振動計算を行うことにより、各アミノ酸のゆらぎ値を、誘導適合を反映した誘導適合パラメータとして求め、当該誘導適合パラメータを拘束条件として用いた分子動力学計算を行うことにより、上記タンパク質の動的挙動を考慮した構造変化後タンパク質座標データを選択する構造変化後タンパク質座標データ選択ステップと、
    上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップにて選択された上記構造変化後タンパク質座標データ、および、上記記憶手段に記憶された上記構造活性相関情報に基づいて、上記構造変換後タンパク質座標データ上に上記リガンドと重ね合わせを行う空間点を指定する空間点指定ステップと、
    上記空間点指定ステップにて指定された上記空間点と、上記記憶手段に記憶された上記リガンドの上記リガンド座標データとを用いて、上記タンパク質と上記リガンドとが結合した場合の相互作用関数を計算する際、上記タンパク質の上記動的挙動を表現する動的性質関数を「弾性エネルギー」として加えて計算する相互作用関数計算ステップと、
    を含み、
    上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドを評価し、選定することを特徴とするリガンド探索方法。
  2. 請求項に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記「弾性エネルギー」として、上記タンパク質の局所的な柔らかさを考慮し以下の数式に示す上記動的性質関数「U衝突」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  3. 請求項1または2に記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    上記基準振動計算より主鎖原子の2面角の上記ゆらぎ値を算出し、当該ゆらぎ値を以下の数式2または数式3に示す上記分子動力学計算における力の定数Kとすることにより、上記分子動力学計算を行うこと、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  4. 請求項1から3のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数のスコアが最大になるように最適化する相互作用関数最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  5. 請求項に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用関数計算ステップは、
    上記相互作用関数最適化ステップにより上記相互作用関数を最適化した後に、重ねあわせた上記リガンドに対して、上記タンパク質との相互作用エネルギーを、以下の数式4に示す最適エネルギー関数「U最適」を用いて計算し、当該相互作用エネルギーについてリガンド立体構造データのコンフォメーションを微調整しながら最適化する相互作用エネルギー最適化ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  6. 請求項5に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用エネルギー最適化ステップは、上記最適エネルギー関数「U最適」に、以下の数式5に示す上記エネルギー関数「U SAR 」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  7. 請求項5または6に記載のリガンド探索方法において、上記相互作用エネルギー最適化ステップは、上記最適エネルギー関数「U最適」に、以下の数式6、数式7または数式8に示す上記エネルギー関数「U水素」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  8. 請求項5から7のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用エネルギー最適化ステップは、上記最適エネルギー関数「U最適」に、以下の数式9、および、数式10に示す上記エネルギー関数「U疎水」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  9. 請求項5から8のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用エネルギー最適化ステップは、上記最適エネルギー関数「U最適」に、以下の数式11、および、数式12に示す上記エネルギー関数「Uスタッキング」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  10. 請求項5から9のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記相互作用エネルギー最適化ステップは、
    上記最適エネルギー関数「U最適」に、以下の数式13に示す上記エネルギー関数「U内部」を適応すること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
    Figure 0004314128
  11. 請求項5から10のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、
    上記処理手段において実行される、
    上記相互作用エネルギー最適化ステップにより最適化した後に、上記リガンド立体構造データのコンフォメーションを大きく変動させた後、再度、上記相互作用関数計算ステップを実行し、上記相互作用関数計算ステップにより計算された上記相互作用関数に基づいて当該タンパク質と結合する上記リガンドの再評価を行う再評価ステップ、
    をさらに含むことを特徴とするリガンド探索方法。
  12. 請求項1から11のいずれか1つに記載のリガンド探索方法において、上記構造変化後タンパク質座標データ選択ステップは、
    上記誘導適合パラメータに、上記タンパク質の基準振動解析結果または二次構造判定結果を用いること、
    を特徴とするリガンド探索方法。
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