JP2002525084A - 部位特異的組換え酵素の接合移動による動物ゲノムの改変方法 - Google Patents

部位特異的組換え酵素の接合移動による動物ゲノムの改変方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、活性型の部位特異的組換え酵素、特にCre を哺乳動物の卵母細胞に移行させる方法に関する。この組換え酵素は、少なくとも1つの特異的部位を有する雄性生殖細胞において特異的なプロモーターの制御下に発現され、精子のクロマチンと結合した状態にある。本方法は、動物ゲノムの改変、例えば外来性配列を動物ゲノムに挿入したり、ある配列を別の配列で置き換えるのに特に有用である。このプロモーターがSycp 1プロモーターである場合、一つの用途は、父由来と母由来の染色体の間の組換えを可能にする。本発明はまた、この方法により作製されうる動物、および、これらのトランスジェニック動物を医薬品、化粧品および農産食品産業に用いることに関する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【技術分野】
本発明は、活性型の部位特異的組換え酵素 (リコンビナーゼ) 、特にCre を哺
乳動物の卵母細胞に移行させる方法に関する。この組換え酵素は、少なくとも1
つの特異的部位を有する雄性生殖細胞において特異的なプロモーターの制御下に
発現され、精子のクロマチンと結合した状態にある。本方法は、動物ゲノムの改
変、例えば外来性配列を動物ゲノムに挿入したり、ある配列を別の配列で置き換
えるのに特に有用である。このプロモーターがSycp 1プロモーターである場合、
一つの使用方法は、父由来と母由来の染色体の間の組換えを生じさせることを可
能にする。本発明はまた、この方法により作製されうる動物、および、これらの
トランスジェニック動物を医薬品、化粧品および農産食品産業に用いることに関
する。
【0002】
【背景技術】
部位特異的組換え法は、動物ゲノムにおいて所定の改変を行うための有力な手
段を提供する。P1バクテリオファージのCre 組換え酵素(Sauer & Henderson, 19
89, 1990およびPorter, 1998) を含む、いくつかの組換え酵素は、二つの定まっ
た二重鎖デオキシリボヌクレオチド配列 (Cre 酵素に対してはLoxP標的配列) の
間の組換えを触媒する。Cre による組換えのこれらの操作は、培養下の細胞にお
いて (Sauer 及びHenderson, 1990)、及び植物細胞において (Albert et al. 19
95) 行われてきたが、動物の生殖系列では行われていない。
【0003】 組換え反応は最も普通には、同じ分子の2つのLoxP部位間の分子内組換えによ
り、 "floxed" 領域と呼ばれる特定ゲノム領域の標的化削除、“ノック−アウト
”に用いられてきた。特に、ある細胞型における欠失を、Cre 組換え酵素を特異
的に発現させうる各種の遺伝子構築物を用いて生じさせてきた (Brocard et al.
1997)。標的化組込み、“ノック−イン”は部位特異的組換えの可能な用途を提
供するかもしれず、非常に価値があるだろうが、そのような発展はある種の制限
により許されなかった。一般に、組換え酵素は各々特異的部位 (もしくは組換え
部位) を有する2つのDNA 分子間の分子間組換えを触媒するかもしれず、異種DN
A(細胞に導入された) を定められた部位 (細胞ゲノムのある領域) に組込むのに
用いられるであろう。
【0004】 哺乳動物の生殖系列への応用が、現在利用可能な方法を用いて哺乳動物におい
て考えられるかもしれないが、その操作は培養下のES細胞における組換え体クロ
ーンの選択、生殖キメラの作製および安定な組換え系が得られる前の一連の交配
を含む、長期の技術的に困難な一連の工程を必要とするだろう。第一に、これら
の操作すべてに必要な時間は数年ではないとしても数ヶ月になり、収率は低いで
あろう。第二に、組換え体クローンの選択は抗生物質耐性のための遺伝子の導入
を必要とするであろう。これらの選択は、遺伝子発現の予測できない逸脱を生じ
させるかもしれない。
【0005】 技術の現状では、相同的組換えまたは切り出しにより生じる変異はしばしば動
物にとって致死的である。このため、雄性生殖系列におけるこれらの変異の効果
は評価することができない。精子形成の環状過程が他の器官で重要な機能を果た
す多数の調節遺伝子を含むためである。この状況の一例はBrcal 遺伝子 (Gowen
et al. 1996, Zabludoff et al. 1996) について記載されてきた。この制限は組
換え酵素の発現の空間的および時間的調節を確立することにより克服されうる。
組織特異的プロモーター及び誘導性プロモーターの使用、並びにアデノウイルス
ベクターおよびホルモンにより活性化される形態の組換え酵素の使用が、この問
題の克服のために考慮されてきた (Akagi et al. 1997, Brocard et al. 1997,
Gu et al. 1994, Kuhn et al. 1995, Porter, 1998, Wagner et al. 1997) 。
【0006】 組換え酵素を雄性生殖細胞でのみ発現させることにより、これらの問題は本発
明により解決される。予想外にも、これは精子クロマチンと結合しており、受精
後に精子とともに活性形態で卵母細胞に移行される。これは最終的にゲノムの改
変を可能にする。
【0007】 別の用途は、父方と母方の染色体の間の部位特異的な減数分裂相同的組換えで
あるかもしれない。これは、減数分裂の第一分裂 (本質的に太糸期に) の間に酵
素の存在を必要とするであろう。これは本発明を導く実験においてまさにそうで
ある。
【0008】 減数分裂はゲノムの大きさを減じ、相同的組換えにより遺伝的多様性を生み出
し、同時に、修復過程により遺伝子の完全性を維持する。減数分裂の第一段階の
間の転移調節の過程についてはほとんど知られていない。しかし、トランスジュ
ニックマウスについての研究により、最近、雄性細胞に対して特異的なプロモー
ター、例えばHSP70-2 (Dix et al. 1996), Pdha-2 (Iannello et al. 1997), Pg
k2 (Robinson et al. 1989), Tcp-10bt (Ewulonu et al. 1993) およびHox-a.4
(Berhinger 1993)の同定に至っている。
【0009】 O'Gorman et al. 1997に記載されている、生殖系列へのCre の発現は、減数分
裂後にのみ活性となるPrm1プロタミンプロモーターを用いている。この文献に記
載の実験において、Cre の接合移動 (zygotic transfer) は観察されていない。
ここで、本発明においては、特異的LoxP部位が精子ゲノムに存在すれば、この移
動が実証されうることが見出された。
【0010】 Sycp 1遺伝子は同定され、クローン化され、マウス染色体3に位置する (Sage
et al. 1997) 。この蛋白質はシナプトネマ構造の中央要素の主成分である (Me
uwissen et al. 1992)。これは、雄および雌の、接合糸期の開始から複糸期まで
の減数分裂の間にもっぱら存在する。(Meuwissen et al. 1992, Heyting et al.
1989, Offenberg et al. 1991, Dietrich et al. 1992, Moenr et al. 1992, D
obson et al. 1994)。このタンパク質のmRNAの同時の発現は、発現の調節が転移
レベルであることを示す (Meuwissen et al. 1992)。
【0011】 生殖分化の比較的遅い段階において発現する上記のプロモーターとは異なり、
Sycp 1は精母細胞の減数分裂の初期の相で発現するという利点を有する。Sycp 1
の特異的発現を担う要素を同定し、選択する必要があった。この内在性遺伝子を
発現する細胞系を樹立することが可能でなかったことから、トランスジェニック
マウスを用いる実験が行われた。このように、Sycp 1遺伝子の転写開始部位の上
流260bp に位置する、マウスSycp 1プロモーター領域は、雄における減数分裂の
初期の期間、導入遺伝子 (transgene)の発現を指令するのに十分であるだけでな
く、卵巣においては活性でなく、雄において最も有効であることが見出された。
Sycp 1のこの領域は、従って、同じ染色体上か、または父方および母方の染色体
の異なる位置で行われるLoxP部位間の減数分裂組換えに有用である。
【0012】 本発明を実施するのに必要な一組の操作は、限られた数の受精卵 (一腹で十分
であることが最も多い) での一連の微量注入 (マイクロインジェクション) およ
び再移植(reimplantation)であり、これらは今日、日常的な技術である。ES細胞
を用いて行う操作と異なり、提示した操作は選択系の使用を含まず、組換えマウ
スの作製に必要な時間は数週間であり、これは組換え体の選択の場合よりもかな
り速い。さらに、作製されたトランスジェニック動物およびその子孫はすべて安
定である。
【0013】 このように、従来技術の文献はいずれも以下に明らかにするような本発明を記
載も示唆もしていない。
【0014】
【発明の開示】
従って、本発明は下記の工程を含む、動物ゲノムに外来性配列を挿入する方法
に関する: a) ゲノムに少なくとも1つの特異的部位を有する雄性精母細胞において部位特
異的組換え酵素を発現させ、この組換え酵素は精子クロマチンに結合した状態で
あり、 b) 卵母細胞を受精させ、該精子を介して組換え酵素を移行させ、 c) “特異的部位−外来性配列”構造を有する組換えDNA を、受精後の雄性前核
に微量注入し、 d) 1−細胞期の該胚の雄性前核中のゲノムの特異的部位に所望の導入遺伝子を
挿入する、これは精子クロマチンの脱凝縮の間に放出される組換え酵素により触
媒される。
【0015】 有利には、この組換え酵素はCre であり、特異的部位はLoxP部位である。 本方法では、上記外来性配列は、必要に応じた組織特異的プロモーターの制御
下で発現される所望の遺伝子を含む。所望の遺伝子はまた、スプライスアクセプ
ター(splice acceptor) (SA)要素、IRES (Internal Ribosome Entry Site) 配列
および/またはポリアデニル化シグナル (例えば、AATAAA) を有してもよく、ま
たこの遺伝子は所望のタンパク質をコードするか、あるいは組織特異的プロモー
ターを同定するためのリポーター遺伝子でありうる。
【0016】 別の面では、本発明の主題は、動物ゲノムにおいて配列Xを配列Yで置換する
方法であり、この方法は、その精母細胞が部位特異的組換え酵素を発現し、該組
換え酵素が精子クロマチンと結合した状態である、遺伝子型“特異的部位−配列
X−特異的部位”の雄を交配させ、次いで、微量注入により、“特異的部位−配
列Y−特異的部位”構造の分子をそのゲノムに導入することからなり、該組換え
酵素は精母細胞の減数分裂の間の配列Xの切り出し、および卵母細胞の受精直後
の配列Yの特異的部位への組込みを触媒する。“配列X”または“配列Y”なる
用語は任意のコーディングまたは非コーディング配列を意味するものである。こ
の方法は配列Xの遺伝子を不活性化するために使用できる。
【0017】 上述した方法によれば、また本発明の説明の残部に関しては、上記組換え酵素
はCre であってよく、上記特異的部位はLoxP部位であってよく、哺乳動物の生殖
細胞において有効な発現を行わせるプロモーターの制御下で発現しうる。従って
、移動の間、Cre はクロマチンに結合した状態である。本発明においては、いか
なるCre タンパク質、その変異体および変種、LoxP配列のいかなる変異体および
変種も使用できる。当業者に周知のCre は、欧州特許第300422号 (4頁、5〜33
行) および欧州特許第220009号 (3頁、31〜39行) に詳細に記述され、これらの
刊行物は参照のために本明細書において援用される。Cre 配列を含む多数のプラ
スミドはそこに開示され、アメリカン・ティシュー・カルチャー・コレクション
に、例えばBSY90(受託番号ATCC 53255) およびPBS39(受託番号ATCC 20772) とし
て寄託されている。Cre 配列は、XhoIおよびSalI制限酵素を用いてpBS39 から単
離しうる。本発明では、その他の組換え酵素/特異的部位系も使用できる。特に
、サッカロミセス・セレビシアエ (Saccharomyces cerevisiae) 由来のFLP/FRT
系;ツィゴサッカロミセス・ルキシイ (Zygosaccharomyces rouxii) のS/RS系、
およびMuバクテリオファージ由来のGin/gix 系が挙げられ、これらは本明細書に
おいて参照のために援用する欧州特許第814165号に記載されている。
【0018】 本発明はまた、卵母細胞に、部位特異的組換え酵素、特にCre をその活性形態
で移行させる方法に関する。この方法は、DNA 上のその作用部位に高い親和性を
有する組換え酵素を雄性生殖細胞において発現させ、該タンパク質はその特異的
部位 (例えば、Cre の場合はそのLoxP部位) で精子クロマチンと結合しており、
次いで卵母細胞を受精させ、そして該精子を介してこのタンパク質を移行させる
ことからなる。次いで、このタンパク質は、受精後クロマチンの脱凝縮の間に活
性形態で放出される。
【0019】 哺乳動物の生殖細胞において有効な発現を行わせるプロモーターには、Sycp 1
(データバンク受け入れ番号 U 35665) 、Tcp-10bt (M 84175), Pgk-2, HSP-70-
2, Pdha-2 またはPrm1 (X 07626)プロモーターまたはこれらのプロモーターの少
なくとも1つの領域が特に選択される。例えば、このプロモーターはマウスSycp
1プロモーターの−260/+5 領域 (配列番号1) と少なくとも80%の相同性を有
する少なくとも1つの配列を含んでいてもよい。この領域は、哺乳動物の精母細
胞の初期減数分裂の間に所望の遺伝子の発現を特異的に誘導するのに十分である
【0020】 本発明を実施するのに使用できるプロモーターの例を下記表1に示す。表中の
参考文献は、本明細書において参照のために援用する。
【0021】
【表1】
【0022】 本発明はまた、上記方法によって作製しうるトランスジェニック動物にも関す
る。 本発明の別の主題は、哺乳動物の精母細胞の減数第一分裂期の間に所望の遺伝
子の発現を有効に促進することを可能にするヌクレオチド配列であり、配列番号
1の配列と少なくとも80%の相同性を有する少なくとも1つの配列を含むことを
特徴とする。好ましくは、このヌクレオチド配列は少なくとも配列番号1または
配列番号2の配列を含む。
【0023】 Sycp 1プロモーターの-54/+5領域 (配列番号3) は精母細胞における発現に向
かわせるための最小の配列である。しかし、最大レベルでの発現には-260/+5 領
域が必要である。
【0024】 従って、精母細胞において有効であり指令される発現を促進するための最小物
であるSycp 1プロモーターのヌクレオチド配列は、配列番号1の配列と少なくと
も80%の相同性を有する少なくとも1つの配列を含むとして規定される。
【0025】 配列番号1および配列番号2は、それぞれマウスにおける配列-260/+5 、およ
びラットにおける-316/+5 である。好ましくは、上記ヌクレオチド配列は少なく
とも配列番号1または配列番号2の配列を含むことを特徴とする。配列番号1お
よび配列番号2の配列に均等な任意の配列が本発明により対象とされることは言
うまでもない。「均等な配列」なる用語は、哺乳動物、例えばブタ科、ヒツジ科
、ウシ科および齧歯動物などの、精母細胞において所望遺伝子の発現を特異的に
有効に誘導するのに十分な哺乳動物のSycp 1プロモーターの任意の配列を意味す
る。
【0026】 さらに別の面において、本発明は所望の遺伝子のためのコーディング配列と融
合した少なくとも1つの前記配列を含むヌクレオチド配列に関する。所望の遺伝
子は、好ましくは部位特異的組換え酵素、特にCre をコードする遺伝子である。
また、本発明は、この配列をプラスミド、ウイルスベクター、偽ベクターまたは
裸の、線状のもしくは環状のDNA の形態で含むDNA 分子に関する。
【0027】 本発明はまた、そのゲノムに、精母細胞において所望の遺伝子、好ましくは部
位特異的組換え酵素、特にCre を特異的に発現することを可能にする上記ヌクレ
オチド配列を有するトランスジェニック動物に関する。この組換え酵素は精子ク
ロマチンに結合している。この動物は前述の方法に有用である。
【0028】 本発明はまた、父方と母方の染色体間の組換えのための方法を目的とし、この
方法は、そのゲノムに1または2以上の特異的部位を有する雄性動物をそのゲノ
ムに1または2以上の特異的部位を有する雌性動物と交配することからなり、減
数分裂の第一相の間に発現する組換え酵素が特異的部位間の組換えを触媒するこ
とを特徴とする。
【0029】 別の面において、本発明はこの方法により作製しうる動物、およびこの方法に
より作製しうる動物を交配することにより作製されるマルチトランスジェニック
(multitransgenic) 動物に関する。本発明によるトランスジェニック動物は哺乳
動物、特にヒツジ科、ブタ科、ウシ科および齧歯動物から選択された哺乳動物で
ある。
【0030】 本発明の有利な面は、上記トランスジェニック動物を、医薬品、化粧品および
/または農産食品に有用な物質、特に活性物質、好ましくはペプチドもしくはポ
リペプチド、抗体、抗原、ホルモン類または成長因子の製造に、および/または
フードサプリメントの製造に使用することに関する。例えば、組織特異的プロモ
ーター、例えば、ウサギWAP またはマウスWAP ( 欧州特許出願No.92401635.5-21
05) の制御下で哺乳動物の乳汁中に所望のタンパク質を製造することが可能であ
る。
【0031】 上記動物はまた、遺伝子、プロモーターおよびタンパク質、特に遺伝病に関与
する遺伝子を同定するための、および/または活性物質の作用を試験するための
実験モデルとして、また、ヒトとの免疫相溶性が野生型の器官や細胞よりも良好
な、もしくはヒト免疫防御による拒絶が低率であるような器官もしくは細胞の作
製に、および飼育のために使用することができる。
【0032】 本発明はまた、特許請求の範囲に記載の要素全てに関し、これらの要素は参照
のために本明細書において援用する。 本明細書の残部については、以下に示した図の説明を参照する。
【0033】
【図面に関する説明】
図1は部位特異的組換えを示し、図1Aは2つのLoxP部位間に位置する、floxed
領域と称される領域の間の、分子内組換えによる特定ゲノム領域の欠失を模式的
に表したものである。図1Bは、それぞれLoxP部位を有する2つのDNA 間の分子
間組換えにより触媒される、外来性配列の標的化組み込みを示す。
【0034】 図2は、特異的LoxP部位における父由来と母由来の染色体間の減数分裂相同的
組換えを示す。 図3は、Pgkl-LoxP 構築物の微量注入後の、プロモーターなしのLoxP- βgeo
導入遺伝子の活性化を示す。 A:プラスミドpGK-LoxPは、pBS112 (Sauer およびHenderson, 1990)のBamHI(B
) およびHindIII(H)部位の間に挿入された、Pgk1遺伝子のプロモーターを含むPG
K βgeobpA (Freicrich およびSoriano, 1991)のBamHI-HindIII 断片を含む。こ
のプラスミドDNA は微量注入の前にHindIII およびPvuI(P) で開裂させ、5'LoxP
部位の欠失を生じさせる。野生型の雌と、Tcp-10bt-creおよびLoxP- βgeo 導入
遺伝子を有する二重トランスジェニック雄との交配に由来する受精卵に、標準的
方法 (Hogan, 1986)により微量注入を行った。 B、CおよびD:微量注入を行った卵を培地中に24時間保持し、β- ガラクトシ
ダーゼ活性を検出するためにX-Gal で染色した。Bは対照 (微量注入せず) であ
る。内在性β- ガラクトシダーゼ活性は検出されない。CおよびDはAに記載の
構築物を微量注入した2系列の卵である。β- ガラクトシダーゼ活性が検出され
る (着色および矢印) 。
【0035】 図4はRxr α遺伝子座におけるGFP の部位特異的挿入を示す。 A:親の雄マウスSycp 1-Cre RxrαΔAF2(LNL)の体細胞および配偶子に
おけるゲノムを図式的に表す。 B:LoxP-GFP挿入ベクターのマップを示す。プラスミドpBS112 (LoxP部位を含む
pBR332、Sauer およびHenderson, 1990)中に以下の断片を連続的に挿入すること
によりプラスミドを構築した。 −ショウジョウバエ (Drosophilia)の“engrailed ”遺伝子のEn-2イントロンの 一部、スプライスアクセプター(Sa)およびIres (Internal Ribozonal entry site) を有する、pGT1.8 IRES βgeo(Mountford,1994) 由来のBamHI-NcoI、 −GFP のコーディング領域を含む、pEGFP(Clontech) 由来のHind III-EcoRI、 −ポリアデニル化シグナル (pA) を有するpSA βgeo 由来のSacI-XhoI 、 C:Cre を用いて行われる組換えが RxrαΔAF2(L)における組込みに導く
こと、および部位特異的組換えの結果改変された遺伝子座を表す図式。 D:GFPIおよびGFP2プライマー、およびRXR1およびint2プライマーを用いて、微
量注入した卵から得られた13の新生動物のゲノムDNA のPCR 増幅の結果 (RXR-in
t 連結を示す) 。Sycp 1-Creの存在または不在はサザンブロットにより証明され
る。
【0036】 図5:マウスSycp 1遺伝子の5'領域の構造および配列 A:Sycp 1の5'領域の図式的マップ エクソン1および2に番号を付け、最初のATG および転写開始部位 (+1) の存
在を示す。各種のトランスジュニック系列を構築するのに用いる断片の範囲を示
す。制限酸素部位は、BamHI はB、Pst1はP、SacII はS、ApaIはAで示す。 B:マウス (M) およびラット (R) のSycp 1の配列の比較 転写因子の推定結合部位を示す (四角で囲む) 。転写された配列 (エクソン1)に
下線を引いてある。
【0037】 図6:体細胞系における各種Sycp 1/luc構築物の発現 それぞれのバーは3つの実験の平均を表し、各実験は3回行われる。エラーバ
ーは平均の標準誤差を表す。この図およびその他の図では、統計値はスチューデ
ント検定を用いて計算した。結果はすべてCMV/lac Z 内部対照に対するものであ
る。対照ベクター(pXP1)はプロモーターのないルシフェラーゼリポーター遺伝子
を含む。プラスミドSV40-lucの活性は任意に100 に固定した。
【0038】 図7:トランスジュニック系列 [-722/+102]lacZ、[-260/+102]lacZ 、[-260/
+102]luc および[-54/+102]luc の精巣におけるリポーター遺伝子の特異的発現 各バーは異なるバッチからの少なくとも5匹のトランスジェニックの雄の活性
の平均を示す。エラーバーは平均の標準誤差を示す。この活性はタンパク質の量
および、同じバッチに属する非トランスジェニックマウスのバックグラウンドノ
イズに標準化している。低レベルのlacZ活性は、精巣細胞におけるβ- ガラクト
シダーゼ型の高い内生レベルによる。各キメラについて二つの系列を詳細に検討
した (1および2) 。Teは精巣を、Liは肝臓を、Spは脾臓を、Kiは腎臓を、Heは
心臓を、そしてLuは肺を示す。
【0039】 図8:発生段階での、[-54/+102]luc および[-260/+102]luc トランスジェニ
ックマウスの精巣におけるルシフェラーゼリポーター遺伝子の発現 肝臓抽出物を陰性対照として用いた。各バーは異なるバッチからの少なくとも
4匹のトランスジュニック雄の平均を表す。エラーバーは平均の標準誤差を示す
。X軸におけるP8からP14 は、8日目から14日目の発生の段階を表す。
【0040】 図9:各種器官における[-260/+5]トランスジェニックマウスのluc リポータ
ー遺伝子の発現 [-260/+5]luc トランスジェニックマウスにおけるルシフェラーゼリポーター
遺伝子の精巣における特異的発現を示す。3つの独立系列をリポーター遺伝子の
発現について試験した。各バーは少なくとも5匹のトランスジェニック雄の平均
活性を表す。エラーバーは、実験間の平均の標準誤差を示す。試験した各種器官
の説明は図7の説明と同じである。
【0041】 図10:トランスジェニック系列[-260/+5]に属するマウスの精巣および肝臓に
おけるルシフェラーゼリポーター遺伝子の、発生段階での発現 横線のバーは精巣における発現を、斜線のバーは肝臓における発現を表す。P8
からP15 はそれぞれ8日目から15日目の発生の段階を示す。エラーバーは実験間
の平均の標準誤差を示す。
【0042】 図11:Sycp 1/lacZ 導入遺伝子は雌における減数分裂の間は発現しない PCR検定を[-260/+102]lacZトランスジェニックマウスの精巣、肝臓およびE17
胎児性卵巣由来のRNA について、および[-1848/ +102]lacZトランスジェニック
マウスのE16 胎児性卵巣のRNA について行った。RNA をDnase I で予め処理し、
できれば逆転写の前にRnase A (+および-)で切断した。Sycp 1転写物は成熟精巣
のRNA 、および16日目の胚段階 (E16)および17日目に胚段階 (E17)における卵巣
由来のRNA において検出されるが、肝臓のRNA においては検出されない。
【0043】 図12:Sycp 1-Cre/RxrαΔAF2(LNL)雄の子孫におけるfloxed配列の切
り出し Cre配列は、一対のプライマーCre1およびCre2 (Rxr α野生型対立遺伝子) を用
いたPCR 増幅により同定され、Rxr αΔAF2(L) (欠失対立遺伝子) および
Rxr αΔAF2(LNL) (標的対立遺伝子) はRXR1およびRXRII で同定され、
tk-neoはtkneo1および tkneo2 (Feil et al.1996) で同定された。コラム1 は先
祖マウスに対応し、カラム2〜10は同腹の子を表す。
【0044】 図13および14:生殖細胞における多数コピーのfloxed遺伝子の標的化欠失 DNAを、先祖の二重トランスジェニック雄由来の名種組織から調製し、その子孫
の尾から抽出し、そしてHind III制限酵素で切断した。pSA βgeo ( カラム1〜
7) またはpPGKA βgeobpA (カラム8〜13) のプラスミドDNA −これはCre 導入
遺伝子のfloxed配列およびpBR322配列を出現させる−をプローブとして用いた。
カラム1〜3にfloxedSycp 1-Cre/ βgeo 2重トランスジェニック先祖のDNA を
のせた (1は肺臓を、2は腎臓を3は精巣を表す) 。カラム4〜6は正常マウス
で作製した3匹の子の尾から抽出したDNA に相当する。カラム7はSycp 1−Cre
導入遺伝子を有するマウスのDNA に相当する (対照) 。カラム8 はDNA を、カラ
ム9はfloxedSucp1/Cre Pgk1 二重トランスジェニック先祖の精巣のDNA を表す
。カラム10〜13は作製した4匹の子の尾からのDNA に相当する。制限酵素断片は
、Cre 導入遺伝子の断片である“c ”で、そのヌクレオチド配列から予測される
導入遺伝子の内部断片を示す“in” (それぞれの長さはβgeo2では3.9 および2.
4kb 、Pgk1で3はである) で示され、“j ”は隣接細胞性配列の連結部を含む断
片に相当する。導入遺伝子は単線で、染色体配列は二重線で、Loxp部位は三角で
表す。
【0045】
【発明を実施するための最良の形態】
従って、本発明の新規な方法は哺乳動物ゲノムにおける部位特異的組換えの全
操作、特に外来性配列の挿入 (ノックイン) 、配列の置換または遺伝子の不活性
化、および両親由来の染色体間の減数分裂組換え (図1および2参照) を迅速に
非常に有効的に行うために、組換え酵素を卵母細胞に導入することを可能にする
。本方法は、減数分裂中に発現する組換え酵素が精子クロマチンと結合して移行
し、従って、第一分裂前の胚における所定部位の組換えを触媒しうるという驚く
べき実証に基づいている。Cre 導入遺伝子は半接合体の形態で父親の方に存在し
ていることに注意すべきである。従って、子孫の50%のみがそれを受け取る。他
方、それらはすべて、配偶子のクロマチンと結合した酵素を受け取り、組換えは
1−細胞期の胚においてのみ有効に生じ、これが組換えられたLoxP部位のその後
の安定性を確保する。
【0046】 さらに、この導入遺伝子が伝達されると、プロモーターの活性が、胚発生から
老化まで、生体の一生を通じて体細胞で止められる。このように、実施される遺
伝子改変は生体のすべての細胞で発生の間、検出しうるキメラ現象なしに、再生
産され、この改変は安定であり続け、ただちに遺伝性となる。示された方法は、
トランスジェノシス技術が今まで困難であった生物 (ES細胞系の欠如) に適用し
うる。
【0047】 精子クロマチンを介したCre 組換え酵素の移動 先ず、Tcp-10-bt-Cre 導入遺伝子の場合、次いでSycp 1-Cre導入遺伝子の場合
において、精子形成中に合成されたCre 酵素の分子が精子の凝縮クロマチンと結
合した状態であることが示された。この状態では不活性であるが、しかし、これ
らは脱凝縮(decompacted) 核構造に戻る間にLoxp部位の間の組換えを行うことが
できる。実験条件下で精子に対して行うことができるこの操作は、当然、受精後
も接合体の雄性前核において生じる。
【0048】 組換え酵素の活性は次の実験において試験される。 第1の実験系では、Tcp-10bt-Cre導入遺伝子、およびプロモーターなしのβge
o 遺伝子のfloxedコーディング領域の複数コピー挿入について半接合である雄と
交配させた野生型雌から受精卵を得た。Pkg1プロモーターの3'位に位置するLoxP
部位を有する構築物を標準的方法 (Hogan, 1986)により微量注入した (図3A)
。24時間培養後、4つのうち約1つの胚がX-Gal による陽性着色を示す (図3B、
C およびD)。βgeo 遺伝子の発現は微量注入したコーディング領域の上流のプロ
モーターの有効な組み込みによる。
【0049】 RxrαΔAF2(L)構造などのより単純な遺伝子の立体構造を、微量注入し
たDNAの部位特異的組み込みの実証ために用いた。 第2の実験系は、floxed配列の切り出しが配偶子形成中に生じ、受精時には1
つのLoxP部位のみを残すような、Sycp-1-Creトランスジェニックマウスの精子中
の潜在性Cre 活性の存在を実証した。さらに、これらの実験により、組換え酵素
が雄性前核中で依然として活性であり、floxed導入遺伝子を所定のLoxP部位に組
み込むことを可能にするかどうかを知ることができる。Sycp-1-Cre導入遺伝子お
よびfloxed RxrαΔAF2(LNL)遺伝子座を有する雄を作製した (図4A) 。
これらの雄の精子中では、組換えられた対立遺伝子 RxrαΔAF2(L)を生ず
るようにtkneo 配列は完全に切り出された。この対立遺伝子はすべての子孫に伝達され、ただ1
つの残存LoxP部位を保持する。二重トランスジェニックマウスを野生型の雌と交
配させ、受精胚を単離し、GFP (Green Fluorescent Protein、グリーン蛍光タン
パク質) タンパク質のコーティング配列を、スプライスアクセプターおよびIRES
(Internal Ribosomal Entry Sequence) の上流に含む組換えDNA (図4B) を微量
注入した。図4Dに示すゲノム構造の PCR解析は、GFP のコーティング配列が多数
の仔の RxrαΔAF2(L)遺伝子座に挿入されたこと、および完全なLoxP遺伝
子座を有する動物はいないことを示す (図4C) 。Rxr α+/+ 型の動物が発現して
いる。
【0050】 組換えに由来する Rxrα-LoxP-GFP-LoxP遺伝子座は伝達され、Cre − の雄と
雌の子孫の体組織に見出される。GFP の発現がこれらのマウスの皮膚および精巣
中に蛍光顕微鏡により証明された。精子クロマチンを介した組換え酵素の有効な
導入により提供される多数の用途の中で、LoxP部位およびリポータータンパク質
(GFP 、ルシフェラーゼ、β- ガラクトシダーゼ) のコーディング領域が挿入さ
れたゲノム遺伝子座を有するリポーターマウスが作製できる。
【0051】 1回の微量注入工程における導入遺伝子の導入は、既知のゲノムに関して、お
よびマウスのすべての器官において、プロモーターを同定、あるいは変異プロモ
ーターを解析するために使用できる。同様に、あるプロモーターの制御下に、各
種リポーター配列、変異させたコーディング領域、毒素をコードする遺伝子およ
び所望の任意のコーディング領域を挿入することが可能である。
【0052】 Sycp-1-Cre/LoxP 二重トランスジェニック雄を交配させて作製される受精卵に
微量注入した、LoxP部位を有する配列の標的化挿入のための方法を図4に示し、
以下にまとめる。
【0053】 1)Sycp-1-Cre導入遺伝子および2つのLoxP部位が外来性配列(tkneo遺伝子) を
囲む構造を有する二重トランスジェニックマウスを交配により構築する。 2)2つの導入遺伝子をマウスの体組織中でそのまま維持し、生殖系列中のCre
の合成により、雄の精子中のfloxed配列(tkneo) が切り出される。
【0054】 3)雄を、 Rxrα遺伝子座とCre について野生型であるマウスと交配させる;Cr
e酵素はクロマチン中で (胚の50%) 変異した Rxrα対立遺伝子のLoxP部位と結
合したままである;独立して50%の胚はCre 導入遺伝子を受け取る。
【0055】 4)組換え酵素がクロマチンの脱凝縮(decondensation)後に放出される。 5)組換えDNA LoxP-SA-IRES-GFP-polyAを慣用の技術 (Hogan et al, 1986)を用
いて、受精15時間後に雄性前核中に微量注入する。
【0056】 6)LoxP部位を含む遺伝子を受け取ったすべての胚、Cre + またはCre − 、
は組換え酵素の作用により、その中にGFP タンパク質をコードする領域が挿入さ
れている。
【0057】 7)発現:LoxP部位が Rxrα遺伝子のイントロンに挿入されていた。スプライス
アクセプター(SA)の存在は、IRES-GFP配列を機能性メッセンジャーに含ませるこ
とを可能にし、IRES (Internal Ribosomal Entry Site)の存在は、その3'末端が
コーディング領域の下流に付加されたポリアデニル化シグナル("polyA") により
規定されるRNA の翻訳を可能にする。新しいリポーターの発現に特徴的なグリー
ン蛍光が、 Rxrαリポーターを発現することが知られている器官中で実証される
【0058】 本発明を実施する際に行われた実験では、組換え効率は50〜80%の間であった (微量注入後に生まれた子マウスの数について報告された組換え体) 。 本発明方法、特に上で説明した方法は、導入遺伝子の挿入のための特定の領域
、特定の導入遺伝子、部位特異的組換え酵素の発現を調節する特定のプロモータ
ー、または特定の部位特異的組換え酵素に限定されるわけではないことは当然で
ある。
【0059】 精子クロマチンを介した組換え酵素の導入を用いて可能となる用途の範囲は、
特に以下の各種態様により例証される。 組織特異的プロモーターの同定 トランスジェネシスおよび非正統的組換えにより、あるいは相同的組換えによ
り、染色体部位に組み込まれたLoxP-IRES-GFP-polyA 配列を含む導入遺伝子を有
する "リポーターマウス" を作製する。LoxP部位を有するベクターへクローン化
されたゲノム断片の上流挿入は、マウスの第一世代から、従って、所望の組織に
おいてGFP を発現する断片を同定することを可能にする。種々の染色体位置に異
なるリポーター遺伝子 (特にβ- ガラクトシダーゼまたはルシフェラーゼ) を有
する数匹の "リポーターマウス" を平行して用いることができる。例えば、哺乳
動物の乳汁において発現する所望のタンパク質をコードする所望の遺伝子もまた
挿入することができる。
【0060】 プロモーターの発現パターンの解析 リポーターをプロモーターの下流に挿入(Rxrαの下流にGFP)すると、その天然
のゲノムの位置において完全なプロモーターの発現パターンを正確に確立するこ
とができる。
【0061】 異種遺伝子の発現 (「ノックイン」) リポーター遺伝子の挿入後の発現パターンにより、所望のプロモーターの転写
調節下で生物学的に活性な任意の遺伝子の発現を行うことが可能である。例えば
、組織特異的プロモーターの制御下で毒素、特にジフテリアトキシンをコードす
る遺伝子を挿入すること、このようにして任意に発生の一定の段階である細胞の
破壊を引き起こすことが可能である。
【0062】 変異体の解析 同じ配列の種々の変異体を含むカセットを挿入すると、一定の染色体の状態及
び一定のもしくは変化しうる生理学的条件下でその特性を比較することが可能に
なる。
【0063】 本発明方法において用いられるSycp 1 プロモーター Sycp 1遺伝子は、雄性及び雌性生殖細胞における第一減数分裂の前期の間での
み発現する(Meuwissen et al.1992; Heyting et al.,1989. Offenberg et al.19
91; Dietrich et al.1992; Moens et al.1992; Dobson et al.1994及び Dietric
h et al.1983) 。マウス Sycp 1 遺伝子の5'領域のヌクレオチド配列はSage et
al.1997 に記載されている (図5A) 。この遺伝子の上流領域はTATAボックスを含
まないが、転写部位は開始要素 CCA+ GTCCを含む(Smale et al.1989)。ゲノム
ライブラリーのラットcDNAのPst1断片(692bp) −これはSycp 1コーディング領域
の5'末端の585bp 及び1つの非翻訳リーダー配列を含む(Meuwissen et al.1992;
Sagae et al.1995)−によるスクリーニングにより、5つのゲノムクローンが同
定でき、その1つは転写開始部位の上流5'領域を含む。
【0064】 692bp cDNAプローブとハイブリッド形成する、5'側に最も遠く伸びるBamHI 断
片をサブクローン化し、そのヌクレオチド配列を確立した。 −324 位から+268 位に伸びる、解析した領域中のヌクレオチド配列は、2つ
の種間で80%の相同性を示す (図5b) 。
【0065】 2つの種間の高度の保存性は、この領域が重要な調節要素を含むことを明瞭に
示す。 トランスジェニック解析及びSycp 1プロモーター内の数系統の欠失により、2
つの異なる機能性領域を定めることが可能になった。強いエンハンサーが、−26
0 位と−54位との間に存在する。59bp長さ (−54から+5)の近位配列は、適当な
雄性生殖細胞において異種リポーター遺伝子(lacZ 及びlnc)の発現を指令するの
に十分である。
【0066】 Sycp 1プロモーターに存在するエンハンサーは種々の起源の細胞系において活
性であるので、このプロモーターが偏在する転写因子の作用に依存することは明
らかである。−54位と+5位の間の断片は、初期精母細胞においてルシフェラー
ゼの発現を指令するのに十分である。4匹のマウスの初期減数分裂遺伝子(Sycp
1 、Hsp70-2 、Pdha-2及びXmr)の間の比較により、転写因子結合部位の保存性が
ないことが明らかになった。しかし、マウスとラットにおいてSycp 1プロモータ
ーの配列間に高度の類似性 (80%) がある。例えば、E-box 及びMyb 型の転写因
子の潜在性部位が保存されている。
【0067】 卵巣において (発生の初期相の間に減数分裂が開始する) 、リポーター遺伝子
の発現は卵母細胞ではみられなかった。従って、Sycp 1プロモーターは、Cre 組
換え酵素の発現を指令する手段として非常に有利である。というのは、その活性
の特性が生物及びその子孫の遺伝的安定性を可能にするためである。
【0068】 LoxP部位におけるCre により誘導される組換えは、雄性生殖細胞の減数分裂中
に生じるようプログラミングされた。Cre 遺伝子を、雄の減数分裂の細糸期〜接
合糸期で活性である、Sycp 1遺伝子プロモーターのある領域の転写調節下に発現
させた。この遺伝子が雄性及び雌性生殖腺で発現するという事実にもかかわらず
、Sycp 1-Cre構築物で用いられた、プロモーターの選択された領域は、もっぱら
精巣において導入遺伝子の発現をひき起こした。
【0069】 従って、floxed部位は雌由来の子孫においては決して改変されなかった。flox
ed配列は体組織 (精巣を除いて) で安定に保持された。移植後の胚の段階で、お
よび成熟組織においては、非常に感度のよりRT-PCR法 (Meuwissen et al.1992)
を用いても発現は検出されなかった。
【0070】 精巣においてCre により誘導される組換えは、その他のマウス組織における組
換え酵素の活性に関する従来の研究(Akagi et al.1997; Gu et al.1994; Wagner
et al.1997) に記載されたものに比べて有利な方法を提供する。具体的には、本
発明の方法で得られる子孫を試験した場合、雄により伝達されるfloxed対立遺伝
子はすべて組換えを受けることが観察される。このような組換え頻度はCre/lox
組換え系に特に適している。
【0071】 Cre 組換え酵素は精子形成の初期段階で発現しうる 減数分裂の初期段階でもっぱら活性であるSycp 1(Synaptonemal Complex Prot
ein 1 、シナプトネマ構造タンパク質1) のプロモーターを単離し、リポーター
遺伝子の標的化発現をトランスジェニックマウスの接合糸期から太糸期で得た。
このプロモーターおよび後では減数分裂プロモーター(Tcp-10-bt、Ewunolu et a
l.1993) をトランスジェニックマウスの精子形成の間にCRE 酵素を発現するのに
用いた。Sycp 1の場合では、floxed導入遺伝子をも有する雄において、精子形成
の間のこれらの配列の切り出しが認められる。この切り出しはTcp10-bt-Cre導入
遺伝子を有する雄では生じない。組換え酵素は正しく合成されるが、クロマチン
の再構成及び凝縮が始まる時期であり、これがおそらく精子の形成前の組換えの
欠如の原因であろう。
【0072】 減数分裂の間のLoxP部位の組換え 減数分裂の第1分裂の太糸期の間の、Sycp 1-Cre導入遺伝子を用いた発現は、
図2の図式に従って、父親と母親起源の染色体上の異なる部位のLoxP部位間の組
換えを行わせることが示された。父親由来及び母親由来の染色体上で利用可能な
分子マーかーにより、LoxP部位における対の染色分体間の交換を示すことが可能
になる。2つのfloxed染色体を有するSycp 1-Cre雄の子孫での組換え頻度は30%
のオーダーである。この例に基づき、組換えられた染色体のいかなる構築もES細
胞における相同的組換えの慣用方法によって導入されたLoxP部位、トランスジェ
ネシス及び非正統的組換えにより挿入された部位、または標的化付加法により導
入された部位を用いて可能である。
【0073】 種々の細胞系列におけるSycp 1 プロモーターの活性 β−ガラクトシターゼ又はルシフェラーゼをコードする遺伝子のいずれかに連
結したSycp 1の転写された領域の上流の5'配列の種々の部分を有する、一連の組
換えDNA を構築した。減数分裂の間の発現に重要な遺伝子要素の同定のための実
験的基礎を得るために、Sycp 1遺伝子を発現する細胞系の研究がまず行われた。
【0074】 次いで、少なくとも弱い活性がプロモーターの存在を明らかにするかもしれな
いとの期待で、組換えDNA のトランスフェクション後にリポーター遺伝子の発現
を測定するために、非生殖起源の一連の細胞系を用いた。意外にも、これらの細
胞系はすべて、各種組換えDNA のトランスフェクション後に高レベルのルシフェ
ラーゼ活性を示した (図6) 。これらの結果は、ヌクレオチド−54までしか伸び
ていない最も短いSycp 1断片でも、ルシフェラーゼの発現を可能にする (低いが
検出可能なレベルで) ことを実証する。
【0075】 従って、減数分裂の特異的活性に関連はしないが、プロモーターの明瞭な活性
は、Sycp 1遺伝子に近い5'領域の配列によって調節される。よって、試験した最
も長い断片(1950bp)に含まれないサイレンサー要素のいずれかが生体内で体細胞
におけるSycp 1の発現を妨げるか、胚の特異性が培養下の体細胞において失われ
たシグナル系に依存すると結論づけられる。
【0076】 トランスジェニックマウスの精巣における特異的発現 Sycp 1 プロモーターの4つの異なる断片をトランスジェニックマウスにおいて
リポーター遺伝子の発現を指令する能力について試験した([−1848/+102]、 [
−722 /+102]、 [−260 /+102]及び [−54/+102]) 。
【0077】 プロモーターの3つの最長の断片を、lac Z 遺伝子の発現に基づいて試験した
。 [−54/+102]断片の発現のレベルは低く、精巣の抽出物におけるβ−ガラク
トシターゼ活性のバックグランドノイズは比較的高いことが知られている(Shape
r et al.1994) ので、この場合はルシフェラーゼをリポーターとして用いた。こ
れに対し、ルシフェラーゼの発現を[260/+102]断片について平行して試験した
。以下の表2に示す結果は、それぞれの場合において、少なくとも2つの系統が
、精巣のみで導入遺伝子を発現することを実証している。これは、最小のSycp 1
配列 [−54/+102]有するマウスについてさえもみられる。
【0078】
【表2】
【0079】 しかし、発現のレベルは[-54/+102]の系列においては低く、これはヌクレオチ
ド-54 まで伸びる配列がインビボにおいてエンハンサー効果を発揮し、トランス
フェクトされた体細胞系においても同様であることを意味する。
【0080】 この定量的効果は、Sycp 1の[-54/+102]プロモーターか[-260/+102] プロモー
ターのいずれかで調節されるルシフェラーゼリポーターを有するマウスの精巣に
おいて酵素活性を比較することにより評価した。後者は常に、10〜100 倍大きい
活性レベルを示した (図7) 。
【0081】 成熟精巣における減数分裂の間の発現 精巣におけるβ−ガラクトシターゼの特異的発現をいくつかの器官のX-gal 染
色により確認した。導入遺伝子を発現する細胞型を同定するために、次に、β−
ガラクトシターゼ活性を精巣部分でin situ 分析を行った。
【0082】 [−260 /+102]lac Z 動物のX-gal-陽性細胞は細管の周囲に位置する生殖細胞
の第2層に当たる。ヘマトキシリンによる対比染色により、lac Z-陽性細胞は精
液を生ずる上皮サイクルにおける太糸期 III−IV期の精母細胞の一部であること
が確認された(Clermont et al.1972) 。接合糸期及び初期太糸期において、より
弱いβ−ガラクトシターゼ発現がある部分において検出できた。細管の減数分裂
後の区画において又は、初期接合糸期及び複糸期の精母細胞については細胞の着
色は見られなかった。
【0083】 Sycp 1遺伝子の内在性発現はこれらの段階の間はないか非常に低い (図8) 。
これらの結果は、Sycp 1の発現の誘導又は抑制に関与する配列が分析されたプロ
モーターの断片の中に位置することを示唆している。
【0084】 これらの断片中に存在するSycp 1プロモーターの一部 (+1から+102)がリポ
ーター遺伝子の発現特性を確立するのにある役割をはたしているかどうかを決定
するために、さらに2つのトランスジェニック系列を、これらの断片が削除され
ているがヌクレオチド−260 まで上流の配列を有するSycp 1の転写開始因子を保
持している組換えDNA の微量注入により作製した。
【0085】 酵素学的実験により、 [−260 /+5]プロモーターの発現の特異性及びレベル
が、トランスフェクトされた細胞 (図6) およびトランスジェニック動物 (図9
及び10、図5と比較) の [−260 /+102]プロモーターのものに匹敵することが
実証される。
【0086】 性熟前 (Prepubescent) マウスにおける発生の間の調節 未成熟動物におけるリポーター遺伝子の発現を、導入遺伝子の発現が内在性Sy
cp 1遺伝子の発現と同じであることを実証するために測定した。幼精巣における
減数分裂の第1の変動は減数第1分裂細胞、生まれて約10日後の細糸期精母細胞
に同調する。
【0087】 第1太糸期細胞は14日目に出現し、第1ハプロイド細胞は3週間後である(Bel
lve et al.1977) 。本発明者らは、 [−260 /+102]lac Z 、 [− 260/+102]
luc 、 [− 260/+5]luc及び [−54/+102]luc トランスジェニック系列を解
析した。
【0088】 in sith 分析 (図8) により、生後13日目及び15日目に [− 260/+102]lac
Z マウスの初期精母細胞におけるβ−ガラクトシターゼの発現の検出が可能とな
ったが、8日目では検出できなかった。10日目では、発現はある種のマウスでの
み検出され、結果が陽性の場合、ある細管においてのみ検出された。これらの結
果は、 [− 260/+102]luc トランスジェニックマウスで行った測定により確認
された。ルシフェラーゼの発現は、生後10日目以前では検出されなかった。
【0089】 [−54/+102]luc 及び [− 260/+5]lucマウスでは、ルシフェラーゼ活性
の時間的プロフィールは同じであり、内在性遺伝子(Sage et al.1997) の場合と
同じである。
【0090】 この一組の結果から、Sycp 1プロモーターの59 bp 断片 (−54/+5) が、雄
性生殖腺における減数第1分裂の開始時に導入遺伝子の発現を指令するのに十分
な7bp開始因子配列及びすぐ上流の52bp断片を包含することが結論づけられる。
【0091】 精巣において発現される導入遺伝子のいずれも卵巣では転写されない 哺乳動物において、雌性配偶子形成は胚の発生の間に生じ、誕生前、ディクテ
ィオテン期(dictiotene)に停止する。減数第1分裂の前期の間、シナプトネマ構
造は精子形成細胞のものと形態的に同じであり(Dietrich et al.1983、Schertha
n et al.、1996) 、太糸期ではより視覚化される(Dietrich et al.1992) 。この
現象は15及び17日の胚(E15及びE17)の間胎児性卵巣においてみられる。ラットSC
P1タンパク質に対する抗体を用いて凍結切片(cryosection) で行われた免疫位置
測定実験(Meuwissen et al.1992; Dietrich et al.1992) により、E16 及びE17
マウスの卵巣においてSCP1タンパク質(Sycp 1 によりコードされる) を検出する
ことが可能となった。次に、雄性減数分裂の間に種々のトランスジェニック系列
により発現されるリポーター遺伝子の卵巣における発現を分析した。
【0092】 β−ガラクトシターゼのin sute 検出によっても、より感度のよいルシフェラ
ーゼ分析によっても導入遺伝子の発現の検出はできなかった。 [−1848/+1102]lac ZトランスジェニックマウスのE16 卵巣及び[261/+102]
lac Z トランスジェニックマウスのE17 卵巣のRNA を用いて行われたRT-PCR実験
により、Sycp 1の第1エクソンとlac Z 配列との間で融合した転写物を検出する
ことはできなかったが、一方、内在性遺伝子の発現は同じ試料中で検出された (
図11) 。
【0093】 発現の欠如の1つの可能な説明は、DNA メチルトランスフェラーゼ遺伝子の場
合に示される(Mertineit et al.1998)ような、雌性生殖系列における別のSycp 1
プロモーターの使用である。
【0094】 この仮説を確認するために、E16 卵巣由来の減数分裂細胞におけるSycp 1転写
開始部位を決定するのに5'RACE法を用いた。分析した48クローンの中から、最長
のcDNA断片を含む12のクローンを配列決定した。これらの配列は明らかに、雌性
生殖細胞における転写開始部位からの転写が、雄性生殖細胞において従来規定さ
れたものと同じであることを示す。このように、雄性減数分裂間のSycp 1遺伝子
の時間的及び空間的発現を確かにするシグナルが雌においてはその発現に十分で
ないようだ。
【0095】 Sycp 1-Cre/LoxP トランスジェニック雄の組織におけるfloxed配列の体細胞維 Sycp 1-Cre 導入遺伝子を有する4つの独立したトランスジェニック系列を確立
した。これらの系列の特性に関しては何ら違いは認められないので、この研究の
残りの部分については1つの系列をランダムに選択した。得られた結果は、安定
に維持された導入遺伝子は精巣でのみ転写されることを実証した。
【0096】 floxed導入遺伝子を有しSycp 1-Creを保持する2重トランスジェニック系列を
、Sycp 1-Creマウスを、ゲノムにfloxed導入遺伝子を有するマウスと交配させる
ことにより得た。哺乳動物のゲノムにfloxed導入遺伝子を組み込む方法は詳しく
は、Kuhn及びSchwenk,1997、Galli-Taliadoros et al.1995 、及びFeil et al.1
996 に記載されている。適切な例では、2つの標的部位が、クローン化DNA :両
端がLoxP部位であるβgeo 配列の縦列反復(Friedrich及びSoriano,1997) 及び活
性プロモーター(LoxP-Pgk1) の低コピー数 (2コピー以下) の縦列挿入物を受精
卵に微量注入することにより作製された。第3の標的部位は RxrαΔAF2(L
NL)対立遺伝子(Feil et al.1996) に相当し、これにはLoxP-tk-neo-LoxPカセ
ットが Rxrαの第8イントロンにおける相同的組換えにより挿入された。LoxP-
βgeo 及びLoxP-Pkg1 導入遺伝子を有する雄では、サザンブロットハイブリッド
形成により、生体の器官におけるこれらの遺伝子座の全般的安定性が示される。
【0097】 Sycp 1-Rxr αΔAF2(LNL)動物で行った、より詳しい分析により、雄の
何匹か (試験した8匹のうち2匹) がその体細胞のDNA において完全で組換えら
れたfloxed配列を維持していることを示した。この観察は、上記のSycp 1プロモ
ーターについての研究の結果と一致する。従って、誕生時の確立されたfloxed導
入遺伝子の構造は、すべての体の器官において、老化した雄に関してさえも、安
定維持している。キメラ動物は除かれ、より詳しい研究を、感度のよいPCR 分析
が体細胞の組換えを検出しなかった雄について行われた。それぞれの場合、改変
されたfloxed配列は精巣及び精子DNA においてのみ検出された。
【0098】 Sycp 1-Cre/LoxP 雄を介した伝達の間のfloxed遺伝子座の欠失 2重トランスジェニック動物と非トランスジェニック動物の相手との間の交配
の子孫では、関与する配列の切り出しは、floxed遺伝子座がSycp 1-Cre/LoxP 雄
を介して伝達された場合に常に見られたが、一方同じ遺伝子座は、それらが母親
から伝達された場合にすべて安定であった。これらの結果を、野生型雌と、flox
ed対立遺伝子 RxrαΔAF2(LNL)については異型接合であり、Sycp 1-Cre
導入遺伝子については半接合である雄との子孫について図12に示す。父親の尾か
ら抽出したDNA(カラム1) のPCR 増幅ではfloxed配列("tkneo"と称される断片)
の存在を検出しなかった。
【0099】 9匹の子 (カラム2〜10) のいずれもこの断片をもたない。実際、この結果は
、2つの異なる状態に対応する。 −2匹の仔 (カラム4及び10) は父親由来の野生型対立遺伝子 Rxrαを受けと
った [生成物 ("Rxrα")の特徴的増幅により同定] 。
【0100】 −その他の仔は、tkneo 配列が切り出された対立遺伝子 RxrαΔAF2(LN
L)を受けついだ。 2つのプロモーターRXR1とRXR2を用いた増幅により、組換えられた遺伝子座(R
xrαΔAF2(L)) に特徴的なより大きい断片が生じた。切り出しは、Sycp 1
-Cre導入遺伝子の存在 (カラム2、6、8及び9) 又は不在 (カラム3、4、5
、7及び10) に独立にみられた。
【0101】 βgeo-LoxP多重導入遺伝子及びPgk1-LoxP 導入遺伝子について同様の結果が得
られた (図13) 。この場合、切り出しは、サザンブロットでは、導入遺伝子("in
")の配列から予測される内部断片に相当するバンドの消失により明らかとなり、
一方内在性配列を有する連結部位("j") を含む断片はすべての場合で保持された
。雄性の親では、floxed配列は精巣DNA(カラム3及び9) を除いて、改変されな
かった (カラム1、2及び8、図14) 。
【0102】 Tcp-10bt プロモーターによる本発明に係る方法の実施 本発明に関連して、t Tcp-10bt座の遺伝子の1つのプロモーターを使用して、
雄性生殖細胞内でCre 組換え酵素の発現を命令することも行った。当業者は、ト
ランスジェニックマウスのTcp-10btプロモーターの特性に関する必要な情報の全
てをEwunolu et al., Development, 1993 117:89-95 から入手できる。リポータ
ー遺伝子 (例えば、β−ガラクトシダーゼをコードする遺伝子) の発現の分析に
より、このプロモーターが減数分裂の後期 (後期太糸期から半数体段階) におけ
る生殖細胞の集団の標識を可能にすると結論づけることが可能となる。
【0103】 floxed遺伝子の標的化欠失をTcp-10bt-Cre導入遺伝子を用いて実施した。この
ために、Tcp-10bt-Cre導入遺伝子を有する2つの独立した系列を確立した。まず
第一に、Cre 酵素の活性を3種類の異なるタイプの「floxed」トランスジェニッ
クマウスにおいて検査した。Rxrα座への相同的組換えにより導入された作成物
が、プロモーターを持たない遺伝子 (β-geo) 、複数コピーの精巣内で不活性な
プロモーター (pgk-1)、または単一コピーのtk-neoカセット、のどれであるにせ
よ、それらは雄性生殖細胞内で完全なままである (精巣上体から精製された精子
内を含む) 。
【0104】 他方、これらの雄性動物で得られた子孫の大半は、floxed断片を切り出した。
精製精子およびこれらの雄性動物の子孫の組換えの分析では、Cre 組換え酵素が
マウスの受精卵中、または生化学的方法を用いた試験管中で、精子核の脱凝縮後
に再び活性になることから、これらの生殖細胞における不活性なCre 酵素の存在
が示された。
【0105】 Cre タンパク質が精子の凝縮クロマチンと関連して維持され、その接合子への
移入では、それが受精後の雄性前核中で活性であるという、この知見は、受精卵
への単純な微量注入によりゲノムLoxP部位に外来配列を挿入する手法への道を開
いた。この比較的単純な手法は、2つの導入遺伝子を有する雄性動物を、交配に
より確立することからなる。1つはTcp-10bt-Creであり、もう1つは、染色体遺
伝子座における最小でLoxP部位である (この遺伝子座が2つのLoxP配列を含んで
いる場合には、floxed領域は脱凝縮中に除去されるので、単一部位の場合に戻る
) 。Cre 酵素は減数分裂の後期にしか合成されないだろうが、全ての半数体細胞
中に存在しよう。Cre 遺伝子それ自体は50%の配偶子だけによって遺伝的に受け
継がれる。染色体LoxP部位および活性な組換え酵素が精子核中、従って、発生段
階1での胚の前核中に存在することから、微量注入により導入されたLoxP部位を
有する外因性DNA の標的化組込みが可能になる。この組込みの効率を、次の2つ
の異なる組合わせの挿入および受容遺伝子座で測定した:lacZコーディング配列
の上流でのプロモーター(pgk1)の組込み、および同じ配列の上流でのc-myc プロ
モーターの組込み。いずれの場合も、標的部位での組込みの効率は誕生の50%以
上であった。
【0106】 実施例1:細胞培養およびトランスフェクション実験 BALB/3T3細胞系 (クローンA31, ATCC <American Type Culture Collection> N
o. CCL-163) を、リン酸カルシウム共沈法 (Sambrook et al. 1989) を用いて、
対照のCMV-lacZ作成物0.1 μg と一緒にキメラプロモーター2μg でトランスフ
ェクションした。35 mm 培養皿当たり2×104 の細胞を接種した。トランスフ
ェクションの2日後に酵素アッセイを行った。
【0107】 実施例2:微量注入とトランスジェニックマウスの分析 当業者に慣用されている技術 (Hogan et al. 1986)に従って、受精卵へのプラ
スミドDNA の微量注入によりトランスジェニックマウスを発生させた。トランス
ジェニック動物の証明は、DNA の末端のサザンおよび/またはドットブロット分
析 (Sambrook et al. 1989) により行った。全てのトランスジェニックファミリ
ーを、C57BL/6 × DBA/2 Fl 遺伝的背景上で発生させ、かつ維持した。
【0108】 実施例3:ラットゲノムクローンの分離 DASHラムダベクター (ストラタジーン<stratagene>) 内のゲノムライブラリー (Sambrook et al. 1989) をラットcDNAプライマー (Meuwissen et al. 1992)で
スクリーニングすることによりラットゲノムクローンを分離した。
【0109】 実施例4:配列分析 SequenaseII キット (Amersham) を用いてDNA 配列決定を行った。データバン
クの配列の比較には、Genetic Computer Group社からのFASTA コンピュータプロ
グラムを用いた。ラットおよびマウスにおける該プロモーターの配列に対するGe
nbank およびEMBLデータベースの受託番号はそれぞれAF020295およびAF020296で
ある。
【0110】 実施例5:プラスミド作成 Sycp 1プロモーターの全ての断片は、Sycp 1転写開始部位の上流の12Kbの配列
を含むゲノムクローンに由来する (図5) (Sage et al. 1997)。その3'末端で、
試験したこのプロモーターの全ての断片は (1つの断片を例外として、下記を参
照) 、+102位の第一エキソン内に位置するSacII 部位まで伸びている(Sage et a
l. 1995)。このゲノムクローンをBamHI およびSacII で切断すると、2Kbの断片
を生じた。この断片を次にDNA ポリメラーゼクレノウフラグメント (Biolabs)で
処理し、EcoRV 部位でベクターpBluescript KS (-) (stratagene) に挿入した。
次いで、1950 bp EcoR1-Xho1断片を、lacZリポーター遺伝子を有するプラスミド
pnassβ (Clontech, 受託番号U02433)(プラスミド [-1848/+102]lacZ)中にサブ
クローンニングした。
【0111】 より短いゲノム配列を含むキメラを得るために、pBluescript 中にサブクロー
ンニングした同じBamHI-SacII 断片上で、18 bp の5'プライマー内部オリゴヌク
レオチドをT3プライマーと一緒に使用してPCR 増幅を行った。PCR 断片をベクタ
ーpBluescript KS (-)中にクローニングし、配列決定により検証し、プラスミド
pnassβのEcoR1-Xho1部位中に移入した。このプロモーターの同じ断片を次いで
プラスミドpXP1 (Lee et al. 1994)中のルシフェラーゼリポーター遺伝子の前方
に移入した (これらのプラスミドは、前と同じ名前を有するが、"lacZ"の代わり
に"luc" がつく) 。位置-260と+5との間の5'上流配列を用いて別のプラスミドを
作成した。[-260/+102]lacZ キメラに対して使用した同じ5'プライマーを用いて
PCR 断片を増幅した。他方のプライマーは、Sycp 1転写開始部位 (位置+5/-15)
をカバーする。この275 bpの断片をプラスミド[-260/+5]lucを形成するようにpX
P1にサブクローンニングした。
【0112】 実施例6:RNA 分離と分析 全RNA をイソチオシアネート法 (Chomezynski et al. 1987)に従って調製した
。対照および Myb−/−A マウスからのRNA サンプルを使用した (Toscani et a
l. 1997)。妊娠雌性動物から得た胎児卵巣を一緒にグループ化し、RNA 調製物が
比較できることを確実にするため、同じ量の精巣と肝臓を使用した。全RNA をDN
アーゼI (Boehringer)で処理した後、フェノールで抽出し、エタノールで沈殿さ
せた。2μg のRNA をBoehringerからのTitan キットを用いて逆転写および増幅
した。対照反応に関して、RNA をRNアーゼA で予備処理した。Sycp 1転写産物を
検出するのに使用したプライマーの配列は、cDNA (Sage et al. 1995) の位置11
5-135 および495-475 に対応し、380 bp長さの産物を生ずる。Sycp 1およびlacZ
の相互融合物の転写産物を検出するのに用いたオリゴヌクレオチドは、Sycp 1 c
DNA の位置50-68 およびプラスミド pnassβのlacZリポーターの位置444-425 に
位置する。PCR サイクル条件は、94℃で30秒、55℃で1分および72℃で30秒を32
サイクルであった。この反応の産物を内部プローブ (Sycp 1 cDNA の位置245-26
5 およびプラスミド pnassβの位置358-378)を用いてハイブリダイズした。このSy
cp 1-lacZ cDNA断片をpBluescript 中にサブクローンニングして、SV40イントロ
ンの正しいスプライシングを確認するために配列決定した。
【0113】 Sage et al. 1997に既述されている手法に従って、Boehringerからの5' RACE
キットを用いて、卵母細胞中のSycp 1遺伝子の5'末端の決定を行った。 実施例7:リポーター遺伝子活性のアッセイ Shaper et al. 1994に記載されているようにガラクトン(Galacton)基質を用い
て組織抽出物上でβ−ガラクトシダーゼ活性をアッセイした。精上皮の構造のよ
り良好な保存を可能にする、凍結切片(cryosection) に代わる別の手法を用いて
in situ 測定を実施した。精嚢白膜を除去し、X-gal 浸透を容易にするために、
鉗子を用いて組織を慎重に広げた。2%パラホルムアルデヒド中、4℃で1時間
の固定を行った後、0.2 %のX-gal 中で室温で16時間インキュベーションした。
染色後、精巣を10%パラホルムアルデヒド中で24時間の後固定を行い、「レイカ
・ヒストレジン(Leica Historesin)」への包埋を製造業者 (Leica Instruments)
の指示に従って行った。5μm厚の切片をハリス (Harris) ヘマトキシリン用い
て対比染色した。「ルシフェラーゼ・アッセイ・システム」(Promega) を用いて
、製造業者の指示に従ってルシフェラーゼ活性を測定した。
【0114】 実施例8:マウスSCP1タンパク質の免疫局在化 15または16日(E15またはE16)の胚精巣の8μm厚の凍結切片を、Meuwissen et
al.に既述されているように、ラットタンパク質に対するポリクローナル抗体と
共にインキュベーションした。
【0115】 実施例9:プラスミド作成物およびトランスジェニックマウスの産生 プラスミドSycp 1-Creを2工程で作成した。転写開始部位に対して、-722から
+102まで伸びるSycp 1遺伝子の[-722/+102] プロモーターの断片 (Sage et al.
1997、上を参照) を、プラスミドpBluescript KS (stratagene) にEcoRI 部位と
Xho1部位との間で移入した。次いで、SalIおよびKpnI制限酵素で消化した最初の
プラスミドに、Cre 組換え酵素に対するコーディング配列 (Genebank受託No. XO
3453) およびポリアデニル化シグナルを挿入した。プラスミド pβgeo-LoxP (Fr
iedrich and Soriano 1991) 中で、2つのLoxP部位の間でのβgeo 融合遺伝子の
組込みを行った。このプラスミドは、プラスミドβgeo 由来のコーディング配列
に対応するHindIII-BamHI 断片を、2つのLoxP部位を含有するプラスミドpBS112
(Friedrich and Soriano 1991) のHindII-BamHI部位に挿入することによって作
成した。プラスミドpPGK-LoxP 中にて、マウスPgk1遺伝子のプロモーター (Gene
bank受託No. M18735) を2つのLoxP部位の間で挿入する。このプラスミドは、Pg
k1プロモーターをpBS11 のHindIII-BamHI 部位に挿入することにより作成した。
【0116】 実施例10:トランスジェニックマウス トランスジェニックマウスは、当業者に周知の方法 (Hogan et al. 1986)に従
って、受精卵にPvuIで線状化したキメラを微量注入することにより産生させた。
DNA の精製を、Qiagenカラムを用いて製造業者の指示を遵守して行った後、線状
化し、滅菌水中に5 ng/μl の濃度で懸濁させてから、微量注入を行った。トラ
ンスジェニック動物の検証を、マウスの尾から抽出したDNA のサザンおよび/ま
たはドットブロット分析により実施した。全てのトランスジェニックファミリー
を、C57BL/6 × DBA/2 F1 遺伝的背景上で発生させ、かつ維持した。 RxrαΔA
F2(LNL)変異動物は、 Rxrα遺伝子 (Fiel et al. 1996) の第8イントロ
ンに相同的組換えにより挿入されたLoxP-tk-neo-LoxPカセットを有する。
【0117】 実施例11:Cre 導入遺伝子の発現 Cre mRNAのレベルを逆転写酵素分析 (RT-PCR) により推定した。脳、肝臓、腎
臓および精巣からのRNA の分離を酸フェノール抽出を用いて行った。全RNA 調製
物をDNアーゼI で処理し (全ての残留RNアーゼから精製) 、マトリックスとして
1μg のRNA を用い、50 IU のMoloney マウス白血病ウイルス逆転写酵素 (Boeh
ringer Mannheim)を用いて50℃で30分間のcDNAの合成を行った。これを次いで、
Cre1プライマー (5'-TGA TGG ACA TGT TCA GGG ATC-3') (配列番号4) とCre2プ
ライマー (5'-CAG CCA CCA GCT TGC ATG A-3') (配列番号5) を用いて、35 PCR
サイクルの増幅を行って、865 bp Cre cDNA 断片を作成した。
【0118】 実施例12:マウスの遺伝子型決定 (genotyping) マウスのDNA の末端をHogan et al. 1986 に記載のようにして調製し、一連の
プローブを用いてスロット・ブロットハイブリダイゼーションにより分析した。
Cre プローブは、Cre1およびCre2プライマーを用いて、Cre タンパク質の完全な
オープンリーディングフレームを含む任意のプラスミドのPCR 増幅により得るこ
とができる。全てのこれらの断片をアガロースゲルで2回精製した。プローブは
「floxed」導入遺伝子の配列から調製することもできる。
【0119】 実施例13:Cre により誘発された切り出しの検出 当業者に周知の技法 (Sambrook et al. 1989) に従ってサザンブロット分析を
行った。DNA を上に述べた制限酵素 (10倍過剰) で一晩消化した。次いで、DNA
断片に電気泳動を受けさせ、ニトロセルロース上に移した。放射性ラベルしたプ
ラスミド pSAβgeo または pPKβgeobpa (Soriano et al. 1991)を用いてハイブ
リダイゼーションを行った。「floxed導入遺伝子」に加えて、これらのキメラに
存在するプラスミドpBr322の配列が、Cre 導入遺伝子の検出を可能にする。
【0120】 Cre 発現ベクターと RxrαΔAF2(LNL)対立遺伝子とを有する二重トラ
ンスジェニックマウスの分析を、Feil et al. 1996に記載されているようにして
PCR 増幅により行った。 RxrαΔAF2(LNL)対立遺伝子の検出に関しては
、5'および3'プライマーとして、それぞれ5'-GGT TCT CCG GCC GCT TGG GT-3' (
配列番号6) および5'-GGA GGC GAT GCG CTG CGA AT-3' (配列番号7) を用いて
、floxed tkneo配列を増幅した。Cre 導入遺伝子の検出にはCre1およびCre2プラ
イマーを使用した。RXR1プライマー (5'-CCA GGA GCC TCC TTT CTC CA-3')(配列
番号8) およびRXR2プライマー (5'-CCT GCT CTA CCT GGT GAC TT-3')(配列番号
9) を用いて、 RxrαΔAF2(LNL)標的対立遺伝子のfloxed tkneoラベル
の切り出しの明視化を行った。これらのプライマーは、野性型対立遺伝子 Rxrα
から156 bpの断片を増幅し、組換え対立遺伝子 RxrαΔAF2(L)からは190
bpの断片を増幅した。増幅産物を2%アガロースゲル電気泳動により分析した。
【0121】
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ns of the mouse protamine-1 promoter) 」 Biology of Reproduction 50, 65-
72.
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1A〜1Bは部位特異的組換えを示す図である。
【図2】 特異的LoxP部位における父由来と母由来の染色体間の減数分裂相同的組換えを
示す図である。
【図3】 図3A〜3DはPgkl-LoxP 構築物の微量注入後の、プロモーターなしのLoxP-
βgeo 導入遺伝子の活性化を示す図である。
【図4】 図4A〜4DはRxr α遺伝子座におけるGFP の部位特異的挿入を示す図である
【図5】 図5A〜5BはマウスSycp 1遺伝子の5'領域の構造および配列を示す図である
【図6】 体細胞系における各種Sycp 1/luc構築物の発現を示す図である。
【図7】 トランスジュニック系列 [-722/+102]lacZ、[-260/+102]lacZ 、[-260/+ 102]
luc および[-54/+102]luc の精巣におけるリポーター遺伝子の特異的発現を示す
図である。
【図8】 発生段階での、[-54/+102]luc および[-260/+102]luc トランスジェニックマ
ウスの精巣におけるルシフェラーゼリポーター遺伝子の発現を示す図である。
【図9】 各種器官における[-260/+5]lucトランスジェニックマウスのluc リポーター遺
伝子の発現を示す図である。
【図10】 トランスジェニック系列[-260/+5]に属するマウスの精巣および肝臓における
ルシフェラーゼリポーター遺伝子の、発生段階での発現を示す図である。
【図11】 Sycp 1/lacZ 導入遺伝子が雌における減数分裂の間は発現しないことを示す図
である。
【図12】 Sycp 1-Cre/RxrαΔAF2(LNL)雄の子孫におけるfloxed配列の切り出し
を示す図である。
【図13】 生殖細胞における多数コピーのfloxed遺伝子の標的化欠失を示す図である。
【図14】 生殖細胞における多数コピーのfloxed遺伝子の標的化欠失を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 キュザン、フランソワ フランス国、F−06100ニース、アブニュ ー・ドゥ・ブランコラー、119、ビラ・オ ランジニ (72)発明者 ラッスルザドガン、ミノー フランス国、F−06100ニース、リュー・ マンゾン、4 (72)発明者 ビダル、フレデリック モナコ国、MC−98000モナコ、ブールバ ール・ディタリ、31 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA10 BA01 BA31 BA41 BA61 BA80

Claims (31)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の工程を含む、動物ゲノムに外来性配列を挿入する方法
    。 a) ゲノムに少なくとも1つの特異的部位を有する雄性生殖細胞において部位特
    異的組換え酵素を発現させ、この組換え酵素は精子クロマチンに結合した状態で
    あり、 b) 卵母細胞を受精させ、該精子を介して組換え酵素を移行させ、 c) “特異的部位−外来性配列”構造を有する組換えDNA を、受精後の雄性前核
    に微量注入し、 d) 1-細胞期の該胚の雄性前核中の特異的部位に前記外来性配列を挿入し、これ
    は精子クロマチンの脱凝縮の間に放出される組換え酵素により触媒される。
  2. 【請求項2】 前記外来性配列が、必要に応じた組織特異的プロモーターの
    制御下で発現される所望の遺伝子を含む、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記外来性配列が所望のプロモーターに融合したリポーター
    遺伝子を含む請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記外来性配列が、さらにスプライスアクセプター(SA)要素
    、IRES配列および/またはポリアデニル化シグナルを含む請求項1〜3のいずれ
    かに記載の方法。
  5. 【請求項5】 下記の工程を含む、動物ゲノムにおいて配列Xを配列Yで置
    換する方法。 a)ゲノムに“特異的部位−配列X−特異的部位”構造を有する雄性生殖細胞中に
    部位特異的組換え酵素を発現させ、該組換え酵素は精子クロマチンと結合した状
    態であり、 b)精子形成期に配列Xを該組換え酵素により切り出し、 c)卵母細胞を受精させ、該精子を介して組換え酵素を移行させ、 d)“特異的部位−配列Y−特異的部位”構造を有する組換えDNA を受精後の雄性
    前核に微量注入し、 e)1-細胞期の該胚のゲノム中の特異的部位に配列Yを挿入し、これは精子クロマ
    チンの脱凝縮の間に放出される組換え酵素により触媒される。
  6. 【請求項6】 配列Xの不活性化を可能にする請求項5記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記組換え酵素がCre であり、前記特異的部位がLoxP部位、
    LoxP配列の変種もしくは変異体である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 【請求項8】 下記の工程を含む、卵母細胞に、Cre をその活性形態で移行
    させる方法。 a)ゲノムに少なくとも1つのLoxP部位を含む雄性生殖細胞中においてCre を発現
    させ、該タンパク質は精子クロマチンと結合した状態であり、 b)卵母細胞を受精させ、該精子を介して該タンパク質を移行させ、 c)受精後クロマチンの脱凝縮の間に該タンパク質をその活性な形態で放出する。
  9. 【請求項9】 前記組換え酵素を、哺乳動物の精母細胞において有効な発現
    を行わせるプロモーターの制御下に発現させる、請求項1〜8のいずれかに記載
    の方法。
  10. 【請求項10】 前記プロモーターが、Sycp 1、EF-lalpha 、IAP 、FRM1f
    、Pdha-2、Hsp70-2 、CamII 、Hlt 、β4-Gtase 、Zfylf 、Tcp-10bt、Pgk-2
    、Hst70 、Hox-a.4 f 、Proacrosin、c-Kit 、ACE またはPrm 1 プロモーター
    の少なくとも1つの領域を含む、請求項9記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記プロモーターが、配列番号1の配列のSycp 1プロモータ
    ー領域と少なくとも80%の相同性を有する、少なくとも1つの配列を含む、請求
    項10記載の方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜11のいずれかに記載の方法により作製されうるト
    ランスジェニック動物。
  13. 【請求項13】 配列番号1の配列と少なくとも80%の相同性を有する配列か
    らなる、哺乳動物の精母細胞の減数分裂の初期相の間に所望の遺伝子の発現を有
    効に促進することを可能にするヌクレオチド配列。
  14. 【請求項14】 配列番号1または配列番号2の配列からなる、請求項13記載
    のヌクレオチド配列。
  15. 【請求項15】 所望の遺伝子のためのコーディング配列と融合した、請求項
    13および14のいずれかに記載のヌクレオチド配列。
  16. 【請求項16】 部位特異的組換え酵素に融合した、配列番号1の配列と少な
    くとも80%の相同性を有する配列を含む、哺乳動物の精母細胞の減数分裂初期相
    の間に該部位特異的組換え酵素の発現を可能にするヌクレオチド配列。
  17. 【請求項17】 前記組換え酵素がCre である、請求項16記載のヌクレオチド
    配列。
  18. 【請求項18】 請求項16または17に記載の少なくとも1つの配列を含み、プ
    ラスミド、ウイルスベクター、偽ベクターまたは裸の、線状のもしくは環状のDN
    A の形態であるDNA 分子。
  19. 【請求項19】 ゲノムに、精母細胞において所望の遺伝子を特異的に発現さ
    せることを可能にする、請求項13〜17のいずれかに記載のヌクレオチド配列を含
    むトランスジェニック動物。
  20. 【請求項20】 所望の遺伝子が部位特異的組換え酵素である請求項19記載の
    動物。
  21. 【請求項21】 前記組換え酵素がCre である請求項20記載の動物。
  22. 【請求項22】 前記組換え酵素が精子クロマチンに結合している、請求項20
    または21記載の動物。
  23. 【請求項23】 請求項22記載の動物の、請求項1〜11のいずれかに記載の方
    法への使用。
  24. 【請求項24】 下記工程を含む、父由来と母由来の染色体間の組換えのため
    の方法。 a)そのゲノムに1または2以上の特異的部位を有する雄の生殖細胞において部位
    特異的組換え酵素を発現させ、 b)該雄性動物を、そのゲノムに1または2以上の特異的部位を有する雌性動物と
    交配し、該組換え酵素が減数分裂の初期相の間に特異的部位間の組換えを触媒す
    る。
  25. 【請求項25】 請求項24記載の方法により作製しうる動物。
  26. 【請求項26】 請求項12または25に記載の動物を互いに交配することにより
    作製されるマルチトランスジェニック動物。
  27. 【請求項27】 前記動物が哺乳動物、特にヒツジ、ブタ、ウシおよび齧歯動
    物から選択された哺乳動物である請求項12、25および26のいずれかに記載のトラ
    ンスジェニック動物。
  28. 【請求項28】 請求項27記載の動物の、医薬品、化粧品および/または農産
    食品に有用な物質、特に活性物質、好ましくはペプチドもしくはポリペプチド、
    抗体、抗原、ホルモン類または成長因子の製造、および/またはフードサプリメ
    ントの製造のための使用。
  29. 【請求項29】 請求項27記載の動物の、遺伝子、プロモーターおよびタンパ
    ク質、特に遺伝病に関与する遺伝子を同定するための、および/または活性物質
    の作用を試験するための実験モデルとしての使用。
  30. 【請求項30】 請求項27記載の動物の、ヒトとの免疫相溶性が野生型の器官
    や細胞よりも良好な、またはヒトの免疫防御による拒絶反応が低率であるような
    器官もしくは細胞の作製のための使用。
  31. 【請求項31】 請求項27記載の動物の、飼育のための使用。
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