JP2002522462A - 組織外傷に関連した病原プロセスの阻害 - Google Patents

組織外傷に関連した病原プロセスの阻害

Info

Publication number
JP2002522462A
JP2002522462A JP2000564574A JP2000564574A JP2002522462A JP 2002522462 A JP2002522462 A JP 2002522462A JP 2000564574 A JP2000564574 A JP 2000564574A JP 2000564574 A JP2000564574 A JP 2000564574A JP 2002522462 A JP2002522462 A JP 2002522462A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
expression
halofuginone
collagen
inhibition
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000564574A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2002522462A5 (ja
Inventor
パインズ、マーク
ブロダフスキー、イスラエル
ナーグラ、アーノン
ハズーム、エリ
Original Assignee
ハダシット・メディカル・リサーチ・サービシイズ・アンド・ディベロプメント・カンパニー・リミテッド
アグリカルチュラル リサーチ オーガナイゼーション
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by ハダシット・メディカル・リサーチ・サービシイズ・アンド・ディベロプメント・カンパニー・リミテッド, アグリカルチュラル リサーチ オーガナイゼーション filed Critical ハダシット・メディカル・リサーチ・サービシイズ・アンド・ディベロプメント・カンパニー・リミテッド
Publication of JP2002522462A publication Critical patent/JP2002522462A/ja
Publication of JP2002522462A5 publication Critical patent/JP2002522462A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K31/00Medicinal preparations containing organic active ingredients
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P17/00Drugs for dermatological disorders
    • A61P17/02Drugs for dermatological disorders for treating wounds, ulcers, burns, scars, keloids, or the like
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P43/00Drugs for specific purposes, not provided for in groups A61P1/00-A61P41/00
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P9/00Drugs for disorders of the cardiovascular system

Landscapes

  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Pharmacology & Pharmacy (AREA)
  • Veterinary Medicine (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Public Health (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Animal Behavior & Ethology (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Nuclear Medicine, Radiotherapy & Molecular Imaging (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Cardiology (AREA)
  • Heart & Thoracic Surgery (AREA)
  • Epidemiology (AREA)
  • Dermatology (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)

Abstract

(57)【要約】 本発明によれば、正常な組織修復機構を維持しながら組織外傷の病的側面を防止するための組成物および方法が提供される。本発明は、これら分子によって、必要とされる健康な細胞外マトリックス系を維持しつつ、組織外傷により引き起こされる損傷のカスケードを遮断することが可能であるという事実に基づいてなされたものである。細胞外マトリックス系を調節するための組成物は、薬学的に許容される担体と薬学的に有効な量のエフェクターを含む。好ましくはエフェクターはキナゾリノン誘導体である。より好ましくはキナゾリノン誘導体は式(I)の構造を有する群のものまたはそれの薬学的に許容される塩である。 【化1】 式中、R1は水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニルおよび低級アルコキシからなる群の一つであり、R2はヒドロキシ、アセトキシおよび低級アルコキシからなる群の一つであり、R3は水素および低級アルケノキシからなる群の一つであり、nは1または2である。より好ましくはエフェクターは、ハロフジノンおよびそれの薬学的に許容される塩である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の分野) 本発明は、細胞外マトリックスの系を分子レベルで調節することによって組織
外傷に関連した病原プロセスを阻害することに関する。より詳細には、本発明は
、こうした調節において有用なキナゾリノン誘導体、特にキナゾリノンであるハ
ロフジノン、及び分子レベルにて同様の機序によって効果を奏する他の分子を含
む組成物に関するものである
【0002】 詳細には、これらの分子は核因子κB(NF−κB)転写の強力な阻害物質で
あり、外傷によって引き起こされる病原プロセスの傷害カスケードを、正常な修
復機構を破壊することなく防止することが現在では開示されている。
【0003】 (発明の背景) ECMの分解及び再編は組織外傷後の正常な修復において不可欠なプロセスで
あるが、これらの機構は、癒着形成、肝線維症、肝硬変、ケロイド及び過形成性
瘢痕の形成、ならびに肺線維症などの多くの異なる病原プロセスにも関与してい
る。これらの病態生理学的プロセスはすべて組織外傷に対する異常応答である。
こうしたプロセスのそれぞれは、可能性として機序の異なる、非常に異なる組織
に関連した、異なる線維症の異なるタイプを代表するものである。
【0004】 組織外傷に対する生理学的応答は、細胞の移動及び複製、細胞外マトリックス
(ECM)成分の代謝回転、及び細胞外微小環境の変化といった多くの因子が関
与した複雑なプロセスである。基本的にこうした応答では損傷した組織の修復や
置換が行われる。こうした修復や置換の正確な部分は組織の種類に応じて異なる
が、こうしたプロセスのすべてに特定の基本原理が共通している。すべての外傷
後の組織の正常かつ必要な修復には、調節された遺伝子発現による広範な因子の
協調が必要である。
【0005】 組織外傷に対する病態生理学的応答はこれらの組織においても異なるが、癒着
や本来の臓器組織の機能性を再現しない他の異常組織をしばしば形成するため、
組織外傷の修復によって臓器の能力及び機能は完全に回復されない。
【0006】 組織外傷に対する病態生理学的応答に基く線維症プロセスの一例として心線維
症がある。 心線維症には多くの原因があり、線維性組織の蓄積が起こる。こうした線維性
組織が蓄積するにしたがって心機能は低下し、やがては患者の死にいたる。心臓
における線維性組織の形成は、コラーゲンや他の基質タンパク質などの細胞外マ
トリックス成分の異常に大量の蓄積を特徴とする。したがって、心組織、ひいて
は心機能へのダメージを防止するためにはこの心線維化プロセスを阻害する必要
がある。
【0007】 ケロイドや過形成性瘢痕の形成及び増殖、心線維症及び他の線維症疾患プロセ
スなどの、組織外傷に対する各種の異常応答を阻害するうえで現在利用可能な治
療法は残念なことに完全な成功を収めているとはいえない。例として、外科手術
によって病変の大きさ及び範囲を縮小することが可能であり、また、物理的圧力
によって、ケロイド及び過形成性瘢痕の大きさ及び範囲を縮小するとともにそれ
らの初期の形成を防止することが可能である(D.D. Datubo-Brown, Brit. J. Pl
as. Surg., Vol 43, p.70-77, 1990)。しかしながらいずれの治療法も病変の再
発を防止するにはいたっておらず、殊に手術は罹患率を高めるリスクを伴う。
【0008】 他の治療形態としてコルチコステロイドの投与が挙げられる。例えば、トリア
ムシノロンは、コラーゲンの分解速度を増大させることによってケロイド及び過
形成性瘢痕の大きさを縮小させるようである(Rockwell, W.B.et al., Plastic
and Recon. Surg., Vol. 84, p.827-835, 1989)。しかしながらこうした薬物
の副作用は潜在的に危険であり、普遍的な成功を収めているとはいえない。放射
線治療などの他の治療法も異なる有効性を示し、他の潜在的副作用をともなう(
Rockwell, W.B. et al., Plastic and Recon. Surg., Vol. 84, p. 827-835, 19
89)。したがって、病態生理学的な線維化プロセスをともなうこれらの疾患に対
する改善された治療法が求められていることは明らかである。
【0009】 上記に述べたように、ケロイド及び過形成性瘢痕形成、癒着の形成、及び乾癬
にともなう細胞過増殖、ならびに、心線維症、肺線維症、及び肝線維症などの多
くの異なる病原性線維症においてはコラーゲンの合成及び蓄積が重要な役割を果
たしている。コラーゲンの合成はまた、主として1次または2次線維症に関連し
た多くの他の病態にも関与している。線維症においてコラーゲンが重要な役割を
担っていることは、コラーゲンの蓄積を阻害する薬の開発を促した(K.I. Kivir
ikko, Annals of Medicine, Vol. 25, pp. 113- 126 (1993) )。
【0010】 しかしながら、コラーゲンなどのECM成分の蓄積は、組織の構造の一般的維
持のほか、創傷の治癒にとっても重要であると現在は考えられている。実際、従
来技術の教示によれば、創傷治癒の強さは最終的にはコラーゲンの蓄積に依存し
ている(Haukipuro, K., et al., Ann. Surg., Vol. 213, p. 75-80, 1991 )。
すなわちこの従来技術によれば、コラーゲン蓄積は創傷治癒強度及び支持を与え
るには充分なレベルだが、瘢痕を形成するほどには高くないレベルで存在しなけ
ればならない。
【0011】 更に、従来技術によれば、単にコラーゲン合成を阻害することによって非常に
有害な副作用がもたらされることが予想される。残念なことに、コラーゲン形成
の一般的な阻害物質などのコラーゲン合成を阻害するある種の薬剤を、腫瘍の成
長などのコラーゲン依存プロセスに与える影響について調べた結果、これらの薬
剤はマウスにおいて腫瘍の成長を阻害するが、長期にわたって安全な投与を行う
には毒性が高すぎることが判明した。そこで現在入手可能なコラーゲン合成及び
蓄積の阻害剤を、線維化及び/またはコラーゲンに関連した状態に与える影響に
ついて調べたところ、これらの阻害剤は悪性腫瘍や、上記に述べた線維性疾患の
ようなコラーゲンに依存もしくは関連した病態の治療には不適当であることが分
かった。
【0012】 更に、コラーゲン合成及び蓄積の入手可能な多くの他の阻害剤が、各種の線維
化プロセスに与える影響について調べられてはいないものの、コラーゲン代謝経
路に対する特異性を欠くために一般に望ましくない。したがって、現在入手可能
な薬剤の多くが有害な副作用を有する。
【0013】 例として、コラーゲン産生線維芽細胞の増殖を遅くするための試みとして細胞
毒性薬が使用されてきた(J.A. Casas, et al., Ann. Rhem. Dis., Vol. 46, p.
763 (1987) )。その例としてコルヒチンがあり、細胞外マトリックス中へのコ
ラーゲン分泌を遅くする(D. Kershenobich, et al., N. Engl. J. Med., Vol.
318, p. 1709 (1988) )。他の薬剤ではコラーゲン代謝の重要な酵素の阻害剤と
して作用するものがある(K. Karvonen, et al., J. Biol Chem., Vol. 265, p
. 8414 (1990); C.J. Cunliffe, et al., J. Med. Chem., Vol. 35, p.2652 (19
92))。しかし、これらの阻害物質で、特定の種類のコラーゲンの代謝及び蓄積
に対して特異的な効果を有するものはない。更に、これらの薬剤は、補体活性化
の古典経路におけるClq、神経筋接合部終板のアセチルコリンエステラーゼ、
コングルチニン、肺の界面活性物質であるアポ蛋白などの他の重要なコラーゲン
性分子の生合成を妨げる。こうした阻害作用及び特異性の欠如は重篤な副作用を
もたらす可能性がある。
【0014】 ニフェジピンやフェニトインなどのコラーゲン合成を阻害する他の薬剤は、他
のタンパク質の合成をも阻害し、コラーゲン生合成経路を非特異的に遮断する(
T. Salo, et al., J. Oral Pathol. Med., Vol. 19, p.404 (1990))。ここでも
やはり特異性の欠如のためにこれらの薬剤の臨床応用は大幅に制限される。これ
は、タンパク質合成の非特異的阻害により、薬剤が患者に投与されると有害な副
作用をもたらす場合があるためである。
【0015】 実際、上記に述べたようなβ−アミノ−プロピオニトリルなどのコラーゲン架
橋阻害物質のような臨床的に利用可能な抗線維化薬もやはり非特異的である。残
念なことに、これらのコラーゲン架橋阻害剤の特異性の欠如も長期の使用におい
ては重い副作用をもたらす。こうした副作用としては、lathritic症候
群や伸展性組織発生の阻害がある。後者の副作用は別の線維状結合組織蛋白であ
るエラスチンの架橋が切断されることによるものである。更に、これらの薬剤の
コラーゲン架橋阻害作用は2次的なものであり、コラーゲンはコラゲナーゼによ
って分解される前にまず過剰生産されなければならない。したがってコラーゲン
合成自体の型特異的阻害剤が必要とされていることは明らかである。
【0016】 強皮症や対宿主性移植片病などの特定の線維性状態を治療するためのこうした
型特異的コラーゲン合成阻害剤の1つが米国特許第5,449,678号に開示
されている。これらの状態はいずれも過剰なコラーゲンの蓄積をともなうが、ハ
ロフジノンによりこれを阻害することが可能である。この特異的阻害剤は次式に
て表される薬学的活性を有する化合物の薬学的な有効量を含む組成物である。
【0017】
【化10】 式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、
及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセトキシ
、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級アルケノ
キシ−カルボニルからなる群からなる群の要素である。これらの化合物群の内、
こうした治療においてハロフジノンが特に有効であることが示されている。
【0018】 国際特許出願公開公報第WO96/06616号には、これらの化合物は血管
の平滑筋細胞の増殖を防止することによって再狭窄を有効に治療することが可能
であることが更に開示されている。再狭窄は血管の損傷に対して、血管の管腔内
部の平滑筋細胞が増殖し、細胞外マトリックスが蓄積することを特徴とする(Ch
oi et al., Arch. Surg., Vol. 130, p. 257‐261 (1995))。こうした平滑筋細
胞増殖の1つの特徴として、正常な収縮性の表現型から合成的なものへの表現型
の変化がある。I型のコラーゲンがこうした表現型変化を支持し、これをハロフ
ジノンによって阻害することが可能であることが示されている(Choi et al., A
rch. Surg., Vol. 130, p. 257‐261 (1995); 国際特許出願公開公報第WO96
/06616号)。すなわちハロフジノンは、I型のコラーゲンの合成を阻害す
ることにより血管損傷後の平滑筋のこうした異常な再分化を防止する。他のin
vitroの研究により、ハロフジノンは3T3線維芽細胞の増殖をも阻害す
ることが示されている(米国特許第5,449,678号)。
【0019】 しかしながら再狭窄のプロセスは心線維症とは異なる。更に、心組織は他の臓
器の組織とは一般に異なっている。詳細には、心組織は、血液を効果的に送り出
すために、電気的活動の波に基いて単一の筋肉として機能する能力を維持しなけ
ればならない。したがって、機能において大幅に妥協してもなお生体活動を維持
するうえで必要な機能のレベルを与えることのできる肝臓のような臓器とは対照
的に、心臓は高い機能レベルを常に維持しなくてはならない。したがって心線維
症はどのような程度であっても心臓の機能に悪影響を及ぼすため、他の臓器にお
いて適当な治療法が心線維症を治療及び/または防止するうえでも適当であると
は限らない。
【0020】 更に、ハロフジノンのin vitroでの作用から常にin vivoでの
効果が期待できるとは限らない。例として、米国特許第5,449,678号に
開示されるように、ハロフジノンはin vitroで骨の軟骨細胞のI型コラ
ーゲンの合成を阻害するが、ハロフジノンで処理したニワトリにおいて骨折率の
上昇は報告されず、in vivoでは効果が見られないことを示している。し
たがって、in vivoでのハロフジノンの正確な振る舞いをin vitr
oでの研究から常に予想できるとは限らない。
【0021】 実際、複数の異なる疾病の治療に有効なハロフジノンの作用の最初の発見はま
ったくの偶然によるものであった。ハロフジノンの作用の詳細な機序は知られて
いなかったため、ハロフジノンがこれらの疾病に対して有効であることは試行錯
誤によって示された。こうした知識の欠如と、ハロフジノンのin vivoで
の振る舞いをin vitroでの効果からは完全には予測できないこととが相
まってこれらの病態生理学的状態に対する新たな治療薬の開発を制限してきた。
【0022】 ハロフジノンの作用機序の解明により新規かつより効果的な治療薬の開発が可
能となる。更に、こうした治療薬は、ハロフジノン及び他のキナゾリノン誘導体
の分子標的に正確に的を絞って設計することが可能であり、これにより望ましく
ない治療の副作用が低減される。こうした治療薬はまた、細胞外マトリックス系
の全体を調節することが可能であり、この系が乱されることにともなう多くの異
なる病態を改善することが可能である。
【0023】 したがって、細胞外マトリックス系を調節することが可能な特異的エフェクタ
ーであって、その作用機序が転写もしくは他の分子レベルにおいて標的をしぼっ
た介在効果であることにより、組織外傷への病理学的応答に対する特異的効果を
特定の分子標的における正確な介在によって決定することが可能なエフェクター
が、医療分野において求められていることは広く認識されている。したがってこ
のエフェクターは、腫瘍の成長、進行及び転移の阻害剤として作用し、他の生理
学的プロセスに実質的に悪影響を与えることなく特にin vivoにて効果的
である。更にこのエフェクターは、血管形成及びコラーゲンの蓄積を阻害し、腫
瘍細胞において選択的にアポトーシスを誘発することが可能であり、更に心線維
症などの各種の線維性疾患のプロセスを特異的かつ的をしぼって阻害することに
より、その治療において望ましからざる副作用を生じることがない。
【0024】 (発明の概要) 組織外傷の病理的側面は防止するが、正常な組織修復機構は維持するという本
発明に基く組成物の能力は、これらの分子は適正かつ健康な細胞外マトリックス
系は維持する一方で組織外傷によって引き起こされる損傷のカスケードを妨げる
という事実に基いたものであることをここに開示する。
【0025】 本発明の一態様に基けば、ハロフジノンは、活性が共調節されることが知られ
ていない複数の遺伝子を協調させるもしくは共調節するうえで有効であることが
示された。こうした共調節は、他のシステムの調節された遺伝子への連係が知ら
れている特定の遺伝子がハロフジノンによって共調節されないという点において
特異的である。事実、こうした特異的共調節は、ハロフジノンなどのキナゾリノ
ン誘導体のこれらの効果のすべてに共通した機構があることを示唆するものであ
る。
【0026】 本発明の別の一態様に基けば、ハロフジノンは、以前には関連が知られていな
かった複数の効果を生じせしめるものである。こうした効果には、a)特にコラ
ーゲンα1(I)遺伝子の発現を阻害することによる、I型コラーゲンの発現の
低減、(b)サイトカインであるIL−1β及びTNFαの放出の低減、及びN
F−κBの転写の阻害、(c)IV型コラゲナーゼ産生の阻害、(d)cKro
x転写因子の活性の促進、(e)コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害と並
行した、コラーゲンのシャペロン熱ショックタンパク質のHSP47遺伝子の発
現の低減、(f)TGFβの発現に対して影響がないこと、などが挙げられる。
【0027】 本発明に基き、組織外傷に対する病理学的応答の阻害におけるハロフジノンな
らびに関連するキノリノン類の作用機序においては、細胞外マトリックス系が分
子レベルで調節されることを開示する。こうした調節には以下の因子が少なくと
も含まれる。すなわち、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害、NF−κB
の転写の阻害、及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害である。ハロフジノンによる
調節の効果の別の重要な因子はcKrox転写因子の活性の促進である。
【0028】 NF−κBはストレスや傷害にともなう様々な刺激因子によって細胞内で活性
化されることが示されており、多大な関心を集めている。NF−κBは、IL−
1β(インターロイキン1β)及び腫瘍壊死因子α(TNFα)などの多くの因
子によって誘導されることが示されている(Mercurio and Manning; Curr. Op.
in Cell Biol., 11: 226-232, 1999)。多くの炎症因子もやはりNF−κBを誘
導することが示されており、多様な誘導機構がこの特定の標的に集束しているも
のと考えられる。したがって、NF−κBの発現の阻害に対するハロフジノンの
効果は、線維化プロセスの阻害に対するハロフジノンの効果を誘導する一方で生
理学的に正常かつ望ましい細胞外マトリックス系を調節及び維持する機構の少な
くとも1つの特徴を示していると考えられる。
【0029】 コラーゲンα1(I)遺伝子の発現のためのcKrox転写因子は、α1(I
)及びα2(I)コラーゲン遺伝子のプロモーターに結合する、ジンクフィンン
ガーを含む新規な転写因子であり、α1(I)プロコラーゲンプロモーターの転
写を抑制することが示されている(Widom R L; Culic I; Lee J Y; Korn J H; G
ENE , (1997 Oct 1) 198: 407-20 )。以下の実施例に詳述されるように、ハロ
フジノンはcKroxの効果を増強し、コラーゲン合成の阻害活性を高めること
が示されている。
【0030】 上記に述べたように、細胞外マトリックス系を調節するハロフジノンの能力に
おける更なる因子には、サイトカインであるIL−1β及びTNFαの放出の低
減、及びコラーゲンのシャペロンであるHSP47の発現の低減が含まれる。細
胞外マトリックス系に対するこれらの実際の効果のすべてにおいて、TGFβの
発現に何らの影響も及ぼされない点が共通している。したがって、ハロフジノン
による、健康な細胞外マトリックスを維持した細胞外マトリックス系の調節は、
特定の機構に特異的なものであることは明らかである。
【0031】 腫瘍マーカーであるH19遺伝子の発現の阻害、ならびにECM(細胞外マト
リックス)の蓄積及び再編の全体の調節といった、ハロフジノン及びそのクラス
の他の分子のこうした分子標的の中には、ハロフジノンの作用機序の2次的な標
的となるか、あるいはハロフジノンによって間接的に阻害されやすいだけのもの
がある。実際、これらの阻害作用はcKrox転写因子の増強や、上記に述べた
他の機構の調節に関連している場合がある。
【0032】 いずれにしても、これらの機構はすべて「細胞外マトリックス系」の調節に関
連するものである。ここにその全容を援用する米国特許第5,852,024号
に示されるように、ハロフジノンはコラーゲンの過剰な蓄積を阻害するが、創傷
の治癒に必要なコラーゲンの基底レベルの発現は妨げないことが本発明者等によ
って以前に示されており、調節は細胞外マトリックスの代謝回転及びコラーゲン
の蓄積に関連したすべてのプロセスの単なる阻害にとどまらない。
【0033】 「細胞外マトリックス系」なる語は、細胞外マトリックス及び関連した組織構
造の合成、蓄積、及び維持に関する一連のプロセスのことを云うものである。細
胞外マトリックス系の適正な調節により、組織外傷に対する病理学的応答が阻害
され、ハロフジノン及び他のエフェクターの作用機序の潜在的標的のすべてによ
って、他の所望の生理活性を実質的に阻害または変化させることなくこうした病
理学的応答を防止することが可能である。
【0034】 更に、下記に詳述するように、ハロフジノン及び細胞外マトリックス系の調節
が可能な他の化合物のこうした特異的作用は、ECM蓄積及びECM系の他の側
面に関連した様々な疾患の治療において有用である。例として、予想されないこ
とであったが、下記の例において述べられるように、ハロフジノンはin vi
voで心線維症の病態生理学的プロセスを阻害することが発見された。
【0035】 本発明の一実施形態に基けば、細胞外マトリックスの系を調節するための組成
物であって、薬学的有効量のエフェクターを薬学的に許容可能な担体とともに含
み、細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害
、ならびにNF−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む組
成物が提供される。好ましくは、細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα
1(I)遺伝子の発現の阻害及びcKrox転写因子の活性の促進、ならびにN
F−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む。より好ましく
は、細胞外マトリックス系の調節は、TGF−βの発現に実質上影響しない、コ
ラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害及びcKroxの活性の促進、ならびに
、サイトカインIL−1β及びTNFαの放出の低減、NF−κBの転写の阻害
及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む。
【0036】 本発明の好ましい実施形態に基けば、細胞外マトリックス系の調節は、TGF
−βの発現に実質上影響しない、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害、N
F−κBの発現の阻害、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、及びサイトカインIL
−1β及びTNFαの放出の低減と並行して、HSP47の発現を低減させるこ
とを含む。
【0037】 本発明の別の一実施形態に基けば、組織外傷にともなう少なくとも1つの病理
学的プロセスを阻害するための組成物であって、薬学的有効量のエフェクターを
薬学的に許容可能な担体とともに含む組成物において、前記エフェクターは組織
外傷にともなう少なくとも1つの病理学的プロセスを阻害するうえで細胞外マト
リックス系を調節し、細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺
伝子の発現の阻害、ならびにNF−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産
生の阻害を含む組成物が提供される。
【0038】 好ましくは、細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝子の
発現の阻害及びcKrox転写因子の活性の促進、ならびにNF−κBの転写の
阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む。より好ましくは、細胞外マトリ
ックス系の調節は、TGF−βの発現に実質上影響しない、コラーゲンα1(I
)遺伝子の発現の阻害及びcKroxの活性の促進、ならびに、NF−κBの転
写の阻害、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、及びサイトカインIL−1β及びT
NFαの放出の低減を含む。最も好ましくは、エフェクターは、TGF−βの発
現に実質上影響することなく、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害と並行
してHSP47の発現を低減させ、NF−κBの発現を阻害し、IV型コラゲナ
ーゼ産生を阻害し、サイトカインIL−1β及びTNFαの放出を低減する。
【0039】 好ましくは、前記の少なくとも1つの病理学的プロセスは、ガン、及び、肝線
維症及び肝硬変、慢性炎症性疾患、肺線維症、心線維症、新脈管新生、癒着の形
成、乾癬、ケロイド、過形成性瘢痕を含むがこれらに限定されない線維性状態、
ならびに、細胞外マトリックス系を調節することが可能なエフェクターによって
改善、低減、もしくは治療することが可能な病理学的状態からなる群から選択さ
れる。
【0040】 本発明の特に好ましい実施形態に基けば、エフェクターはキナゾリノン誘導体
である。より好ましくは、キナゾリノン誘導体は、次式にて表される群の要素及
び薬学的に許容可能なその塩である。
【0041】
【化11】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシからなる群の要素であり、nは1または2であるような組成物である
。最も好ましくは、この化合物はハロフジノン及び薬学的に許容可能なその塩で
ある。
【0042】 本発明の別の好ましい一実施形態に基けば、細胞外マトリックスの蓄積によっ
て引き起こされる細胞増殖を阻害するための組成物であって、次式にて表される
化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効量を含む組成物が提供される
【0043】
【化12】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシからなる群の要素であり、nは1または2である。
【0044】 本発明の更なる別の一実施形態に基けば、心線維症を治療するための組成物で
あって、次式にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能なその塩
の薬学的有効量を薬学的に許容可能な担体とともに含む組成物が提供される。
【0045】
【化13】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシ−カルボニルからなる群の要素であり、nは1または2である。
【0046】 本発明の更なる別の一実施形態に基けば、心線維症を治療するための薬剤の製
造方法であって、次式にて表される群の要素である化合物の薬学的有効量を薬学
的に許容可能な担体中に入れる工程を含む方法が提供される。
【0047】
【化14】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシ−カルボニルからなる群の要素であり、nは1または2である。薬学
的に許容可能なその塩も更に含まれる。
【0048】 本発明の更なる別の一実施形態に基けば、被験者の心線維症を治療するための
方法であって、次式にて表される化合物の薬学的有効量を投与する工程を含む方
法が提供される。
【0049】
【化15】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシ−カルボニルからなる群の要素であり、nは1または2である。薬学
的に許容可能なその塩も更に含まれる。
【0050】 本発明の更なる別の一実施形態に基けば、心線維症を実質的に予防するための
組成物であって、次式にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能
なその塩の薬学的有効量を薬学的に許容可能な担体とともに含む組成物が提供さ
れる。
【0051】
【化16】 ただし式中、R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェ
ニル、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R2は、ヒドロキシ、アセ
トキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であり、R3は、水素及び低級ア
ルケノキシ−カルボニルからなる群の要素であり、nは1または2である組成物
【0052】 本発明の更なる別の一実施形態に基けば、前記の化合物はハロフジノンである
ことが好ましい。以下、「ハロフジノン」なる語は次式にて表される化合物及び
薬学的に許容可能なその塩として定義される。
【0053】
【化17】 組成物はこの化合物に対する薬学的に許容可能な担体を含むことが好ましい。 上記に述べた化合物のすべてが、この式にて表される化合物自体であるかもし
くは薬学的に許容可能なその塩であるかもしくはその両方であることが好ましい
【0054】 (発明の簡単な説明) 予期しないこととして、下記に実施例において述べるように、組織外傷に対す
るこれらの病理的応答のすべての阻害におけるハロフジノンの作用機序において
、分子レベルにおける細胞外マトリックス系の調節が行われることが見出された
【0055】 ここに開示されるように、本発明の実験結果においては更に、ハロフジノンが
コラーゲンの発現を阻害すると同時にNF−κB(核因子κB)の発現を明らか
に阻害することが示された。NF−κBはストレスや傷害にともなう様々な刺激
因子によって細胞内で活性化されることが示されており、多大な関心を集めてい
る。NF−κBは、IL−1β(インターロイキン1β)及び腫瘍壊死因子α(
TNFα)などの多くの因子によって誘導されることが示されている(Mercurio
and Manning; Curr. Op. in Cell Biol., 11: 226-232, 1999)。興味深いこと
に、これらの特異的因子は本発明の実験結果においてやはりハロフジノンによっ
て阻害されることが示された。多くの炎症因子もやはりNF−κBを誘導するこ
とが示されており、多様な誘導機構がこの特定の標的に集まっているものと考え
られる。したがって、NF−κBの発現の阻害に対するハロフジノンの効果は、
線維化プロセスの阻害に対するハロフジノンの効果を誘導する一方で生理学的に
正常かつ望ましい細胞外マトリックス系を調節及び維持する機構の少なくとも1
つの特徴を示していると考えられる。
【0056】 一方、NF−κBはVII型コラーゲン遺伝子(COL7A1)の発現の調節
において重量な役割を果たしていることが示されている。NF−κBは、「TN
F−α応答要素」として知られるこの遺伝子のプロモーターの特定の部分に結合
することによってCOL7A1の発現に対するTNF−αの効果を媒介する(Ko
n et al., Oncogene, 18: 1837-1844, 1999 )。興味深いことに、COL7A1
はプロモーター領域において2つの異なる別々の要素を有する。すなわち前述し
た「TNF−α応答要素」、及びTGB−βに対する別の応答要素である。した
がって、TGF−βではなく、TNF−α及びNF−κβに対するハロフジノン
の明らかな効果により、ハロフジノンは線維症の病理学的プロセスに対して所望
の阻害効果を奏するものであり、生理学的に正常かつ所望の細胞外マトリックス
系を阻害またはダウンレギュレーションすることがない。
【0057】 ハロフジノンの別の重要な分子標的はコラーゲンα1(I)遺伝子の発現のた
めのcKrox転写因子である。cKroxは、α1(I)及びα2(I)コラ
ーゲン遺伝子のプロモーターに結合する、ジンクフィンンガーを含む新規な転写
因子であり、α1(I)プロコラーゲンプロモーターの転写を抑制することが示
されている(Widom R L; Culic I; Lee J Y; Korn J H; GENE, (1997 Oct 1) 19
8: 407-20 )。以下の実施例に示されるように、ハロフジノンはcKroxの効
果を増強し、コラーゲン合成の阻害活性を高めることが示されている。
【0058】 cKroxは、骨よりも皮膚においてより高い濃度で存在することも示されて
おり、このことは、ハロフジノンが骨の脆性を高めることなく皮膚におけるコラ
ーゲンの過剰蓄積を低減する理由を説明するものである(Galera P ; Musso M;
Ducy P; Karsenty G; PNAS, (1994)91: 9372-6 )。
【0059】 ハロフジノンの投与によって起きることが示されている他の重要な効果として
は、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現を阻害することと並行して、特定のコラ
ーゲンのシャペロン熱ショックタンパク質のHSP47遺伝子の発現を低減する
こと、NF−κβの発現は阻害するがTGF−βの発現に実質上影響することな
く、サイトカインであるIL−1β及びTNFαの放出を低減させることが挙げ
られる。
【0060】 HSP47はコラーゲン、特にプロコラーゲンに特異的な分子シャペロンであ
ることが示されている(Nagata and Hosokawa; Cell Structure and Function;
21: 425-430, 1996 )。HSP47は小胞体(ER)内に存在するタンパク質で
あり、新たに合成されるプロコラーゲンに、そのプロコラーゲン鎖がゴルジ体に
入るまで結合する。HSP47は、コラーゲンの三重らせん構造のような、コラ
ーゲンの適正なタンパク質構造の形成を助ける。コラーゲンに対するHSP47
の機能的な関連を更に支持する点として、過去の実験結果において、各種の細胞
においてHSP47の発現がコラーゲンの発現に密接に関係していることが示さ
れている(Nagata and Hosokawa; Cell Structure and Function; 21: 425-430,
1996 )。具体的には、四塩化炭素をラットに投与することによって誘発される
肝線維症の進行において見られるHSP47の発現量の増大は、I型コラーゲン
の発現量の増大とやはり同時に見られる。
【0061】 興味深いことに、本発明の実験結果によって、ハロフジノンはHSP47の発
現をコラーゲンの発現とともに阻害することが明らかに示された。これらの結果
は、ハロフジノンが、線維性病態におけるコラーゲン及び他のECM成分の病理
学的合成及び蓄積に関連した多くの異なるプロセスに共通する基本的な機構にお
いて作用するという仮説を支持するものである。
【0062】 いずれにしても、これらの機構はすべて細胞外マトリックス系の調節に関連す
るものである。ここにその全容を援用する米国特許第5,852,024号に示
されるように、ハロフジノンはケロイドや他の異常瘢痕形成にともなうコラーゲ
ンの過剰蓄積を阻害するが、創傷の治癒強度は低下させないことが本発明者等に
よって以前に示されており、こうした調節は細胞外マトリックス及びコラーゲン
の蓄積に関連したすべてのプロセスの単なる阻害にとどまらない。
【0063】 細胞外マトリックス系の適正な調節によって、組織外傷に対する病理学的応答
が阻害され、ハロフジノン及び他のエフェクターの作用機序の潜在的標的のすべ
てによって、他の所望の生理活性を実質的に阻害または変化させることなくこう
した病理学的応答を防止することが可能である。実際、この明細書で用いる「エ
フェクター」なる語は、細胞外マトリックス系を調節することにより、組織外傷
ならびに機構的に関連したプロセスに関する病理学的プロセスを特異的に阻害す
ることが可能なあらゆる化合物またはその組合せを意味するものである。
【0064】 「機構的に関連したプロセス」なる語は、組織外傷に対する異常応答と少なく
とも1つの機構を共有するような病理学的状態を含むものである。機構的に関連
したプロセスの一例としては、悪性細胞の転移が挙げられるが、これはここにそ
の全容を援用する1998年2月11日に出願された国際特許出願公開公報第W
O98/34613号に示されるように、こうした転移は新脈管形成に依存して
おり、新脈管形成は更にコラーゲンなどの細胞外マトリックス成分の蓄積に依存
していることによる。同様に、癒着の形成などの組織外傷に対する異常応答もや
はりコラーゲン蓄積に依存している。したがって、これらの病理学的プロセスは
すべて機構的に関連しているということができる。
【0065】 「細胞外マトリックス系」の他の機構としては、これに限定されるものではな
いが、脈管形成の阻害、ECM蓄積の防止、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、イ
ンテグリンの発現の阻害、アポトーシスの誘発、及びH19遺伝子の発現の阻害
などが含まれる。細胞外マトリックス系の全体的構造ならびにこの系に関係した
ハロフジノンの効果を図1に示した。図に示されるように、細胞外マトリックス
系に対するハロフジノンの特異的効果には、腫瘍、及び、腎線維症、強皮症及び
GVHDなどの線維症、再狭窄ならびに皮膚損傷に関連した状態の阻害または改
善が含まれる。ハロフジノン及び他のエフェクターは、細胞外マトリックス系に
関連した特定の効果または因子を媒介することにより、I型コラーゲンの合成を
阻害することが可能であり、正常かつ望ましい生理学的プロセスを継続させる一
方で組織外傷にともなう病理的状態を改善する。
【0066】 これらの機構の特定の側面に関し、血管形成及びECMの蓄積について上記に
述べた。IV型コラゲナーゼは転移及び細胞浸潤に関与する中枢的なメタロプロ
テアーゼである。アポトーシスとは、プログラミングされた細胞死であり、上述
したように悪性細胞においては阻止されており、したがって悪性細胞は「不死」
細胞とも呼ばれる。H19遺伝子は膀胱ガンの早期のステージに関連した腫瘍マ
ーカ遺伝子である。より詳細には、H19遺伝子は発生段階で調節される遺伝子
であり、その発現は組織分化が起こっている胚の発生においてピークとなる。ウ
ィルムス腫、副腎皮質細胞ガン、胚芽腫、横紋筋肉腫、肺ガン、栄養膜腫、及び
膀胱ガンの早期のステージには、H19を含む領域内の染色体異常が関連してい
る(B. Tycko, Am. J. Path., Vol. 144, p. 431-439, 1994; de Groot, N. et
al., Trophoblast Res., Vol. 8, p. 2285-2302, 1994; Ra chmilewitz, J. et
al., Oncogene, Vol. 11, p. 863-870, 1995 )。
【0067】 細胞外マトリックス系の重要な点は、ハロフジノンの作用機序によって、悪性
腫瘍の細胞増殖抑制阻害、線維症及び癒着の低減または防止、及び組織外傷に対
する他の病理学的応答またはその機構的に関連した活性などの多くの所望の活性
を促進することが可能であり、しかも、治癒創傷の強度の低下や骨の構造のリモ
デリングの変化といった望ましからざる副作用を実質上もたらさないことである
【0068】 (好ましい実施形態の説明) 予期しないこととして、組織外傷に対するこれらすべての病理的応答の阻害に
おけるハロフジノンの作用機序では、細胞外マトリックス系が分子レベルで調節
されることが発見された。こうした調節には以下の作用が含まれる。すなわち、
α1(I)プロコラーゲンプロモーターの転写を抑制するcKrox転写因子の
活性を高めること、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現を阻害すると同時にコラ
ーゲンの分子シャペロンであるHSP47の発現を低減すること、NF−κβの
発現は阻害するがTGFβの発現に影響することなく、サイトカインであるIL
−1β及びTNFαの放出を低減させることなどである。
【0069】 更に、ハロフジノンは、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、H19遺伝子の発現
の阻害、ECM(細胞外マトリックス)の蓄積及び再編の全体的調節、慢性炎症
性疾患の改善及び/または防止、及び新脈管形成の阻害などの細胞外マトリック
ス系の他の側面にも関係している。「細胞外マトリックス系」の他の機構として
は、これに限定されるものではないが、血管形成の阻害、ECM蓄積の防止、I
V型コラゲナーゼ産生の阻害、インテグリンの発現の阻害、アポトーシスの誘発
、及びH19遺伝子の発現の阻害が含まれる。細胞外マトリックス系のこのよう
な特異的調節は特にin vivoにおいてはこれまで証明されていなかった。
【0070】 以下に、本発明の態様のより完全な理解及び認識を可能とすべく、図面及び実
施例に示された特定の好ましい実施形態に関して本発明を説明するが、発明はこ
れらの実施形態に限定されるものではなく、すべての別例、改変、ならびに均等
物は特許請求の範囲によって定義される発明の範囲に含まれるものである。すな
わち、好ましい実施形態を含む図面及び実施例は本発明の実施の態様を説明した
ものであるが、示される詳細はあくまで例であって、本発明の好ましい実施形態
を説明するためのものであり、発明の構成方法、原理、及び概念的側面の最も有
用かつ理解が容易と思われる説明を与えるべく示されるものである。
【0071】 本発明は以下の説明的実施例ならびに図面を参照すればより容易に理解するこ
とが可能である。ここではハロフジノンについてのみ触れるが、その教示をここ
に援用する米国特許第3,320,124号において説明及び権利主張される他
のキナゾリノン誘導体も同様の性質を有するものと考えられる。
【0072】実施例1 ハロフジノンによるcKrox活性の促進およびI型コラーゲン遺伝子発現の阻 前述のように、ハロフジノンならびに他の関連するキナゾリノンおよびエフェ
クターの作用の最も重要な目標の1つは、cKrox活性の促進および付随する
I型コラーゲン遺伝子発現の阻害である。これらの2つの活性を、以下の通りハ
ロフジノンを用いて証明した。
【0073】 最初に、ハロフジノンがI型コラーゲン遺伝子発現を阻害する能力を以下の通
り証明した。子宮筋層細胞および平滑筋肉腫細胞を同じ患者から採取し、10%
FCS添加DMEMを入れた10cmシャーレにプレートした。細胞が80%コ
ンフルエンスに達したら、培地を無血清DMEM+0.1%BSAと48時間交
換し、洗浄し、約37℃で約48時間、漸増濃度のハロフジノンを溶かした同じ
培地に暴露した。次いで、細胞を回収し、RNA抽出およびI型コラーゲン遺伝
子発現についてのノザンブロット分析にかけた。ハロフジノンは、用量依存的に
I型コラーゲン遺伝子発現(5.4および4.8kbの産物)を阻害した。
【0074】 次に、ヒト皮膚線維芽細胞を被験者から採取し、初代培養で維持した。対照細
胞を賦形剤で処理したが、ハロフジノン処理細胞を前述のようにハロフジノンで
処理した。次いで、細胞を回収し、RNA抽出ならびにI型コラーゲン遺伝子発
現およびcKrox活性遺伝子発現についてのノザンブロット分析にかけた。ハ
ロフジノンはcKrox遺伝子発現を促進したが、同時にI型コラーゲン遺伝子
発現を阻害した。従って、ハロフジノン作用機構の重要な1つの分子的目標がc
Krox遺伝子発現、従ってcKrox活性の増強であることは明らかであり、
その結果としてI型コラーゲン遺伝子発現の阻害を引き起こす。
【0075】 ハロフジノン作用のこのような目標は新規のものであり、背景技術により教示
も示唆もされていなかった。しかしながら、この機構の解明が、組織外傷に関連
した病理学的プロセスに対する新たな治療の開発および計画に重要であることは
明らかである。さらに、このような結果により、異常なコラーゲン合成を阻害す
る一方、望ましくない副作用なくコラーゲンに関連した正常な生理学的プロセス
を進行することができるハロフジノンの能力についての明確な機構上の解明が得
られる。特に、異常なコラーゲン合成を阻害することができる一方、望ましくな
い副作用なくコラーゲンに関連した正常な生理学的プロセスを進行することがで
きる分子および化学的組成物は、cKrox遺伝子発現および/または活性の増
強の目標を治療介入とすることにより今や実現可能である。
【0076】実施例2 in vitroでのハロフジノンによるIV型コラゲナーゼ産生阻害 細胞外マトリックス系調節の別の重要な特徴は、ハロフジノンによるIV型コ
ラゲナーゼ産生の阻害である。 腫瘍細胞はECMを消化する酵素を分泌する。これにより、腫瘍細胞は隣接組
織に穴を開け、他の組織に浸潤することができる。非常に多くの研究が、マトリ
ックスメタロプロテアーゼ(MMP)、特にIV型コラゲナーゼと、腫瘍浸潤お
よび転移のプロセスとを結びつけている。IV型コラゲナーゼは、ユニークなm
RNAによりコードされる、2つの72kDaおよび92kDaタンパク質とし
て現れる。
【0077】 図2に示されるように、T50膀胱ガン細胞培養物でのMMP2(72kDa
IV型コラゲナーゼ)活性は、25ng/mlハロフジノンの存在下で著しく
阻害され、その一方、100ng/mlハロフジノンでほぼ完全に阻害された。
サブコンフルエントな細胞培養物を、無血清DMEM中で6〜24時間インキュ
ベートした。コラーゲン分解活性を、ゼラチン注入(1mg/ml,Difco
,Detroit,MI)SDS−PAGE8%ゲルにおいて測定した。簡単に
言うと、培地試料を、非還元条件下で基質注入ゲルにおいて分離し、続いて、2
.5%Triton X−100(BDH、England)中で30分間イン
キュベートした。次いで、このゲルを、50mM Tris、0.2 NaCl
、5mM CaCl2、0.02%Brij35(重量/体積)(pH7.5)
中で、37℃で16時間インキュベートした。インキュベーションの終わりに、
ゲルを、メタノール/酢酸/H2O(30:10:60)に溶かした0.5%ク
マシーブルーG250(Bio−Rad Richmond CA)で染色した
。様々なバンドの強度を、コンピュータ化されたデンシトメーター(Molec
ular Dynamics タイプ300A)により測定した。
【0078】 ハロフジノンは、Boyden chamber浸潤アッセイを用いて、マト
リゲルECMを通る細胞浸潤を阻害することもまた見出された(データ示さず)
。このような阻害から、細胞外マトリックス系機構の一部としてIV型コラゲナ
ーゼ阻害が含まれることが支持される。ここでハロフジノンは、前述のように、
腫瘍増殖、進行、および転移などの望ましくない病理学的プロセスを阻害する。
【0079】実施例3 in vitroでのハロフジノンによる腫瘍マーカー遺伝子発現阻害 細胞外マトリックス系のさらに別の態様は、腫瘍マーカー遺伝子発現の調節、
特に、H19遺伝子発現の阻害である。 H19遺伝子は発生により調節される遺伝子であり、その発現は、組織分化が
起こっている胎児発生間に最高に達する。H19遺伝子は親から与えられ、母方
対立遺伝子からしか発現しない。H19はまた、ウィルムス腫瘍、副腎皮質ガン
、肝芽細胞腫、横紋筋肉腫、肺腫瘍、栄養膜腫瘍、および膀胱ガンなどの悪性腫
瘍の初期段階と関連する腫瘍マーカー遺伝子である。この実験方法は以下の通り
であった。
【0080】 RT112および5376ヒト膀胱ガン細胞株を、ハロフジノンの非存在下お
よび存在下で(130ng/ml、播種後24時間または72時間で添加)培養
し、H19遺伝子発現をノザンブロット分析により評価した(Nagler,A
ら,Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.,17巻,
194 −202 頁,1997)。図3に示すように、ハロフジノン暴露により、試験した
RT112および5376ヒト膀胱ガン細胞株でのH19遺伝子発現は実質的に
低下した。前述のように、このような阻害からもまた、細胞外マトリックス系機
構の一部としてH19遺伝子発現の阻害が含まれることが支持される。
【0081】実施例4 インテグリン発現の阻害 ハロフジノンおよび関連キナゾリノンの細胞外マトリックス系に対する効果の
別の重要な態様には、例示化合物であるハロフジノンの効果により説明されるよ
うに、これらの化合物がインテグリン発現を阻害する能力が含まれる。
【0082】 インテグリンは、脈管形成および血管形成においてin vivoで機能する
ことが示されている。β1サブユニットに対する中和抗体を注射すると、ウズラ
胚における大動脈内腔の形成が阻害された(Drake,C.J.ら,in v
ivo.Dev.Dyn.193 巻,83−91頁,1992)。Chereshおよび同
僚は、αvβ3が血管成長に必要であるという証拠を示した(Brooks,P.
C.ら,Science 264 巻,569 −571 頁,1994)。αvβ3インテグリン
複合体に対する抗体(LM609)は正常な血管形成を阻害し、CAMアッセイ
においてFGF−2刺激血管形成または腫瘍誘導血管形成もまた阻害したが、前
から存在する血管を破壊しなかった。抗αvβ3 mAbが血管形成を阻害する機
構はアポトーシスが関与しているらしい。αvβ3インテグリンの環状RGDペプ
チドアンタゴニストまたはLM609モノクローナル抗体を静脈内に単回注射す
ると、CAMに移植したヒト腫瘍が急速に退行する。αv遺伝子を発現しない、
従ってαvβ3インテグリンを発現しない腫瘍細胞には接着能力がなく、無胸腺ヌ
ードマウスに移植した際の腫瘍形成性が著しく低い。αv cDNAをこれらの
細胞に安定にトランスフェクトすると、これらの腫瘍形成能が完全に回復した(
Felding−Habermann,B.ら,J.Clin.Invest.
,89巻,2018−2022頁,1992)。さらに、ハロフジノンは、血管形成および腫瘍
増殖を阻害することが見出されている。
【0083】 従って、ハロフジノンの効果が、非常に攻撃的なMDA 435ヒト乳ガン細
胞株のαv、β3、およびβ5インテグリンサブユニット発現に対して調べられた
。細胞を、漸増濃度(10〜400ng/ml)のハロフジノンの非存在下(図
4、レーンAおよびB)または存在下で、24時間(レーンC:400ng/m
l)、48時間(レーンD〜G:それぞれ、10、50、200、および400
ng/ml)、または72時間(図4、レーンH:400ng/ml)培養した
。総RNAを抽出し、1.1%ホルムアルデヒド−アガロースゲル電気泳動にか
け、ナイロン膜に移し、αvに対応する32P標識PCRプローブとハイブリダイ
ズさせた。図4に示すように、乳ガン細胞を10ng/mlおよび50ng/m
lのハロフジノンに48時間暴露すると、αv mRNAがアップレギュレート
された(図4、レーンDおよびE)。この効果は、高濃度(200〜400ng
/ml)のハロフジノンで最小であった(図4、レーンF〜H)。次に、RT−
PCRを用いて、MDA 435乳ガン細胞によるβ3およびβ5インテグリン鎖
発現に対するハロフジノンの効果を分析した。図5に示すように、ハロフジノン
は用量依存的にmRNA発現を阻害し、200ng/mlでほぼ完全に阻害した
(図5、レーン1:対照;レーン2〜5:それぞれ、10、50、200、およ
び400ng/mlハロフジノンに24時間暴露)。対照に、β5 mRNA発
現に対して影響を及ぼさなかった。αvβ3インテグリン複合体は腫瘍血管形成に
重要な役割を果たすので、ハロフジノンの抗血管形成効果は、ある程度、ハロフ
ジノンのβ3遺伝子発現阻害により媒介される可能性がある。
【0084】 従って、インテグリン遺伝子発現の阻害がハロフジノンによる細胞外マトリッ
クス系調節の別の態様であることは明らかである。実施例5 心線維症の阻害 前述のように、組織外傷に対する異常反応と他の機構上関連する病理学的プロ
セスとを阻害する一方、正常な生理学的プロセスを維持することにより、ある分
子が細胞外マトリックス系を調節する能力は、例示化合物であるハロフジノンの
効果により例示される。しかしながら、これらの結果はどれも、心線維化治療薬
としてのキナゾリン含有化合物(例えば、ハロフジノン)の適切性を教示も示唆
もしなかった。心臓組織は、効果的に機能するために高度の全体にわたる系を維
持しなければならない非常に分化した細胞からなるので、このような結果は予期
しないものである。
【0085】 さらに、心筋組織は、単一体として電気信号に応じて収縮しなければならない
。これは、ハロフジノンを用いて線維化および他の型の組織外傷を治療するため
に以前に研究された他の組織と関連する性質ではない。この性質は心臓組織に特
有のものであり、線維組織がこのように収縮することができないので線維化の損
傷作用を高める。第2に、損傷を受けた心筋組織は不適切に収縮する。すなわち
、単一の焦点で心臓収縮が開始し、続いて心臓組織全体の電位を掃引するのでは
なく、多数のこのような焦点が生じる損傷組織では不整脈が発生することがあり
、不適切な収縮を引き起こし、最終的に死をもたらす。第3に、心臓組織は単一
体として機能しなければならない。肺および肝臓などの他の組織は、多かれ少な
かれ独立して機能することができる、異なる組織型および構造からなる。しかし
ながら、心臓全体が単一体として機能しなければならない。従って、線維化プロ
セスが始まる前または後でのハロフジノンによる適切な心筋機能の保護または回
復は、先行技術から予測も教示もすることができない。
【0086】 さらに、ハロフジノンは、I型コラーゲン阻害物質であることしか示されてい
なかった。しかしながら、心臓における線維組織の形成は、異常に多量の細胞外
マトリックス成分の沈着により特徴付けられる。従って、ハロフジノンがI型コ
ラーゲンの合成および沈着を阻害する能力から、ハロフジノンが心線維化の病理
発生を遅延、軽減、または改善する能力を予測することができない。
【0087】 さらに、以下に示すように、ハロフジノンは、TGFβ(トランスフォーミン
グ増殖因子)合成をダウンレギュレートするか、または別の方法で変えることな
く、I型コラーゲン沈着を阻害することにより心線維化を妨げることができる。
TGFβは、いくつかのECM成分の合成および沈着に一般に影響を及ぼすサイ
トカインである。単一の機構により制限されたくなければ、ハロフジノンは、I
型コラーゲン転写に対する影響により影響を及ぼすかもしれない。従って、ハロ
フジノンの効果は特異的かつ限局的であり、さらに心線維化を妨げることができ
る。
【0088】 心線維化の病理発生は十分に理解されていないが、この疾患の動物モデルは首
尾良く開発されている。心線維化は、アンギオテンシンII(AngII)を慢
性投与することによりラットにおいて誘導された。
【0089】 心線維化の阻害を目的とした化合物は、線維組織沈着を引き起こす病理学的プ
ロセスを遅延または停止させる能力について、上記のAngIIモデルなどのi
n vivoモデルで試験しなければならない。以下により詳細に記載されるよ
うに、このような実験を、I型コラーゲン合成阻害物質であるハロフジノンにつ
いて行った。
【0090】 対照およびAngII(アンギオテンシンII)処理ラットに由来する心臓試
料の組織学的試験により、AngIIは、コラーゲン線維含有量の増加を含めて
、ラット心臓において特異的な形態変化を誘導することが判明した。ハロフジノ
ンは、これらの形態変化の発生を実質的に阻害し、より正常な外見のラット心臓
をもたらした。
【0091】 実験モデルは以下の通りであった。雄Sprague−Dawleyラットを
4群に分けた。2つの群に、AngIIを、移植ミニポンプにより0.150n
g/分の速度で慢性的に注入した。この投与計画により重篤な心線維化が誘導さ
れる。他の2つのラット(対照ラット)群に生理食塩水を注射した。AngII
処理ラットの1つの群および対照群の1つの群に、毎日、16マイクログラムの
ハロフジノンを腹腔内注射した。この実験期間の終わりに、ラットを屠殺し、心
臓を取り出し、秤量した。
【0092】 組織学的試験のために心臓試料を採取した。簡単に言うと、この組織試料をリ
ン酸緩衝化生理食塩水(PBS)に集め、PBSに溶かした4%パラホルムアル
デヒドで4℃で一晩固定した。試料を段階的なエタノール溶液中で脱水し、クロ
ロホルムで清澄化し、パラプラストに包埋した後、5μm連続切片を調製した。
コラーゲンタンパク質および非コラーゲンタンパク質の差別的な染色を、対比染
色として、ピクリン酸に溶かした0.1%シリウスレッドおよび0.1%ファス
トグリーンを用いて行った。この手順によりコラーゲンは赤色に染色される(G
ascon−Barre,M.ら,J.Histochem.Cytochem
.,37:377 −381 ,1989)。
【0093】 次いで、心臓試料を、ラットコラーゲンα1(I)発現用のプローブまたはT
GFβ1発現用のプローブとハイブリダイズさせた。この遺伝子プローブの一方
とのハイブリダイゼーションのために、切片をキシレンで脱パラフィンし、段階
的なエタノール溶液シリーズに通して再水和し、蒸留水で5分間洗浄し、次いで
、2×SSC中で70℃で30分間インキュベートした。次いで、切片を蒸留水
で洗浄し、50mM Tris−HCl、5mM EDTA(pH7.5)に溶
かしたプロナーゼ、0.125mg/mlで10分間処理した。消化後、スライ
ドを蒸留水で洗浄し、PBSに溶かした10%ホルマリンで後固定し、0.2%
グリシンでブロックした。ブロッキング後、スライドを蒸留水で洗浄し、段階的
なエタノール溶液に通して迅速に脱水し、数時間、風乾した。ハイブリダイゼー
ション前に、1600bpラットコラーゲンα1(I)挿入物を元のプラスミド
pUC18から切り出し、pSafyreプラスミドに挿入した。次いで、ジゴ
キシゲンニン標識(M,Pinesら,Matrix Biology,14:76
5 −71,1996)の後、切片を、このプローブとハイブリダイズさせた。同様に、
他のスライドを、TGF−β1用プローブとハイブリダイズさせた。
【0094】 図6は、ビデオデンシトメトリー後のラット心臓コラーゲン量を定量した結果
を示す。ラット肝臓組織のコラーゲン含有量を明らかにするために、この組織切
片をシリウスレッドで染色した。少量のコラーゲンが、対照ラット(CON)お
よびハロフジノンのみを与えたラット(HAL)において観察された。多量のコ
ラーゲンが、AngIIのみを与えたラット(AII)において観察されたが、
AngIIとハロフジノンとの両方を与えたラット(AII+HAL)では著し
く減少した。これは、ハロフジノンが、AngIIにより誘導される線維化の病
態生理学的プロセスを実質的に阻害する能力を示している。実際に、AngII
処理ラットの心室コラーゲン量比(ventricular collagen
volume fraction)(CVF)は、ハロフジノンのみまたはハ
ロフジノン+AngIIのいずれかで処理したラットと比較して3倍増加した(
p<0.05)。さらに、対照ラットの心室CVFは、ハロフジノンのみで処理
したラットの心室CVFと同一であった。実際に、2週間にわたって、AngI
Iなしでハロフジノンのみを投与した場合、ハロフジノンは心室CVFを変えな
かった。従って、ハロフジノンには、AngIIにより誘導される心室CVF増
加を妨げる強い能力があり、単独で心室CVFに影響を及ぼさなかった。
【0095】 図7は、ラット心臓組織切片とラットコラーゲンα1(I)プローブとのin
situハイブリダイゼーション後のデンシトメトリー測定結果を示す。コラ
ーゲンα1(I)遺伝子の低発現は、ハロフジノンのみを与えたラット(HAL
O)の心臓組織に見られる。コラーゲンα1(I)遺伝子発現の著しい増加は、
AngIIのみを与えたラット(AngII)の肝臓に見られた。ハロフジノン
とAngIIとの両方を与えたラット(AngII+HALO)は、AngII
のみを与えたラットと比較して、コラーゲンα1(I)遺伝子発現の著しい低下
を示した。この用量のハロフジノンは、AngIIにより引き起こされるラット
コラーゲンα1(I)遺伝子発現増加を実質的に低下させたが、このような発現
を完全に阻害しなかった。しかしながら、実質的に低下したラットコラーゲンα
1(I)遺伝子発現から、ハロフジノンは、AngIIによる異常な発現誘導に
対して効果的であることがわかる。従って、AngIIにより誘導されるI型コ
ラーゲンmRNAレベルの5倍増加(p<0.05)はハロフジノンにより弱め
られた。
【0096】 図8は、AngIIによりTGFβ mRNAの発現が増加したが(p<0.
05)、この増加はハロフジノン投与により影響されなかったことを示す。特に
、TGFβ発現レベルは、ハロフジノンのみを与えたラット(HALO)より、
AngIIを与えたラット(AngII)またはAngII+ハロフジノンを与
えたラット(AngII+HALO)において有意かつ同程度に高かった。従っ
て、ハロフジノンは、TGFβにより制御される細胞外マトリックス合成および
沈着のプロセスを阻害するように見えない。
【0097】 従って、ハロフジノンは、いくつかのECM成分の合成および沈着に影響を及
ぼすサイトカインであるTGFβの合成を変えることなく、I型コラーゲンの沈
着を阻害することにより心線維化を妨げることができる。ハロフジノンの効果は
、細胞外マトリックス合成経路の特定の状況に特異的であると思われ、背景技術
により教示も示唆もされない。従って、ハロフジノンの特異性は、TGFβによ
り制御されるように思われない機構である、コラーゲン合成および沈着の特定の
機構に向けられると思われる。
【0098】 全体的にみて、ハロフジノンは、AngII誘導性線維化により引き起こされ
るひどい形態変化および微細な形態変化を著しく縮小したことを含めて、全ての
レベルでAngII誘導性線維化の影響の出現を妨げることができた。ハロフジ
ノンの効果は、心線維化の病理学的プロセス間に生じる形態変化を妨げるのに効
果的であり、かつ特異的である。
【0099】実施例6 ハロフジノンによる複数遺伝子の共調節 以下に詳細に記載したように、予想外にハロフジノンは活性が共調節されるこ
とが知られていない複数遺伝子の共調節に有効であることが示された。そのよう
な共調節は、他の系で調節される遺伝子に連結する可能性のあることが知られて
いるある種の遺伝子がハロフジノンによって共調節されないという点において特
異的である。さらにそのような特異的共調節は、ハロフジノンなどのキナゾリノ
ン誘導体のそれらの効果全てにおいて共通にある基礎的機序を明瞭に示すもので
ある。
【0100】 詳細には実験結果からハロフジノンが、必然的に関連することが過去には知ら
れておらず、詳細にはコラーゲンα1(I)遺伝子の発現を阻害し、コラゲナー
ゼIV型産生を阻害し、H19遺伝子発現を阻害し、コラーゲンα1(I)遺伝
子の発現阻害と並行してHSP47遺伝子の発現を低下させ、NF−κBの発現
を阻害するがTGFβの発現に影響することなくサイトカイン類IL−1βおよ
びTNFαの放出を低下させることによるコラーゲンI型の発現低下を含む多く
の効果を引き起こすことが明らかである。
【0101】 前記にて詳細に説明したように、ハロフジノンはこれら遺伝子の発現に関して
関連する多くの阻害効果を行うように思われる。例えばハロフギノンは、I型コ
ラーゲンの発現と並行して、コラーゲンに特異的な分子シャペロンであるHSP
47の発現を低下させることが明らかになっている。他方、やはりコラーゲンI
型の発現上昇と並行して、ラットへの四塩化炭素投与によって誘発された肝臓線
維症の進行時にHSP47の発現向上が認められた。それは、ハロフギノンによ
るHSP47とコラーゲンI型の並行阻害が、ハロフジノンが線維症疾患状態内
でのコラーゲンおよび他のECM成分の病的合成および堆積に関連する多くの異
なるプロセスに影響を与える機序の1側面を示し得るような形のものである。
【0102】 さらにハロフギノンは以下に示すように、やはりHSP47の発現阻害および
コラーゲンの発現と並行して、NF−κB(核因子κB)の発現を阻害すること
が明らかになった。NF−κBは、やはり本実験でハロフジノンによって阻害さ
れた特異的因子に属するIL−1β(インターロイキン−1β)および腫瘍壊死
因子α(TNFα)などの多くの因子によって誘発されることが示された[Merc
urio and Manning; Curr. Op. in Cell Biol., 11: 226-232, 1999]。
【0103】 そこでTGF−βではなくTNF−αおよびNF−κBに関するハロフジノン
の見かけの効果によってハロフジノンは最終的に、実質的に生理的に正常で望ま
しい細胞外マトリックス系(economy )を悪い形で阻害したり低下させたりする
ことなく、線維症の病理プロセスに望ましい阻害効果を有するようになると考え
られる。
【0104】 生化学的プロセスの阻害 特定の細胞蛋白の特異的結合または活性の阻害パーセントを求めるための一連
のアッセイに従って得られたハロフジノンが各種生化学プロセスを阻害する能力
について、下記の表1に詳細に示してある。これらのアッセイはMDSパンラブ
ス社(MDS Panlabs Inc., Bothell, Wisconsin, USA )が行った。そのアッセイ
には、サイトカイン類IL−1βおよびTNF−αの放出阻害、NF−κBの転
写阻害などがあった。結果は以下の通りであった。
【0105】
【表1】 このようにこれらの結果は、前述のハロフジノンによる一群の阻害効果を明瞭
に示している。さらにこれらの結果は、これら特異的機能についてハロフジノン
が強力かつ重要な効果を有していることを示しているが、他の分析した機能はハ
ロフジノンによって実質的に影響されない状態であった(データは示していない
)。
【0106】 ハロフジノンによる遺伝子発現における変化の検討 以下に詳細に説明するように、複数遺伝子の発現に対するハロフジノンの効果
について、多数の遺伝子を同時に調べることができるアトラスcDNA発現アレ
イ(Atlas cDNA Expression Arrays; Clontech Ltd. )を用いることで調べた。
結果は、アトラス機能アレイについて表2に示し(ハロフジノン処理後の遺伝子
のダウンレギュレーション)、アトラスヒト相互作用アレイについては表3(ハ
ロフジノン処理後の遺伝子の上昇)および表4(ハロフジノン処理後の遺伝子の
ダウンレギュレーション)に示してある。実験法は以下の通りであった。
【0107】 アトラスヒトcDNA発現アレイ(カタログ番号7740−1)を用いた。ア
トラスcDNA発現アレイには、正に帯電したナイロン膜上に二連で付着させた
588のヒトcDNA、mRNA存在量を正規化させるための9個のハウスキー
ピング対照cDNAが、ハイブリダイゼーションの特異性を確認するための陰性
対照として含まれるプラスミドおよびバクテリオファージのDNAとともに含ま
れている。これらcDNAは代表的なものであり、転写因子、サイトカイン、腫
瘍遺伝子および腫瘍抑制遺伝子などのいくつかの異なる機能分類に配列されてい
る。各アトラスアレイ上に固定化されたcDNAは、非特異的ハイブリダイゼー
ションの問題を低減するために特別に製造したものである。各cDNA断片は2
00〜600bpであり、ポリ−A尾部、反復要素その他の非常に相同性の配列
を持たない転写体の領域から増幅されたものである。透明な配向格子も用いて、
陽性のハイブリダイゼーション信号に相当するcDNAの確認ができるようにし
た。
【0108】 最初に各RNA群1μgを、提供された試薬および[α−32P]dATPを用
いることで逆転写した。放射能標識した複合体cDNAプローブを、やはり提供
されたエクスプレスハイブ(ExpressHyb)ハイブリダイゼーション溶液を用いて
アトラスアレイに別個に終夜でハイブリダイズした。高厳密性洗浄後、ハイブリ
ダイゼーションパターンについて、以下に詳細に説明する方法に従ってオートラ
ジオグラフィーによる分析および/またはリン光撮像法による定量を行った。2
種類の異なるRNA源における所定のcDNAの相対的発現レベルを、一方のR
NA源からのプローブで得られた信号と別のRNA源からのプローブで得られた
ものと比較することで評価した。
【0109】 一次ヒト線維芽細胞から総RNAを取得した。DMEM(ダルベッコ調整イー
グル培地)培地中10%FCSの存在下に15mm培養皿で細胞を成長させた。
約70〜90%の集密度で細胞を10-8Mハロフジノンによって1時間処理した
。処理細胞と未処理細胞の両方について、SV総RNA単離システム(Promega
、カタログ番号Z3100)またはトリ試薬(Tri Reagent; Molecular Researc
h Center, Inc.、カタログ番号TR−118)を用いて総RNA調製を行った。
【0110】 プロメガ(Promega )のプロトコールに従って、溶解緩衝液2mLを15mm
プレートに入れ、溶解細胞を200〜1000μL先端を用いて回収し、全体で
5個のプレートの細胞が溶解・回収されるまで次にプレートに移した。溶解物を
、管当たり溶解物175μLで、5個のプレートそれぞれについて計10本の管
で微量遠心管に移した。細胞溶解物各175μLにSV RNA希釈緩衝液35
0μLを加え、管を3〜4回反転させることで溶液を混合した。70℃で3分間
インキュベートした後、溶解物を室温で10分間11000gにて遠心した。
【0111】 各サンプルについて、スピンカラムアセンブリを準備した。各スピンカラムア
センブリは、スピンバスケットと回収管とで構成されている。スピンバスケット
上のキャップを外し、回収管にラベルを施して、微量遠心管ラックに入れた。透
明となった溶解物を、残滓を攪乱せずに新鮮な微量遠心管に移した。95%エタ
ノール200μLを各溶解物管に加え、3〜4回ピペット操作することで混合し
た。混合物をスピンカラムアセンブリに移し、室温で11000gにて1分間遠
心した。
【0112】 スピンバスケットをスピンカラムアセンブリから取り出し、回収管中の液体を
廃棄した。スピンバスケットを回収管に戻し、SV RNA洗浄溶液600μL
をスピンカラムアセンブリに加え、カラムを11000gで1分間遠心した。回
収管を前述の方法に従って空とし、ラックに入れた。実施する各単離について、
各無菌管中でサンプル当たりイエロー・コア緩衝液(Yellow Core Buffer)40
μL、0.90M MnCl25μLおよびDNaseI酵素5μLをこの順序
で組み合わせることによって、DNaseインキュベーション混合物を調製した
。ピペット操作を行うことでインキュベーション混合物をゆるやかに混合し(渦
ができないように)、氷上で静置した。この調製したばかりのDNaseインキ
ュベーション混合物50μLを、溶液が膜に接触し完全にそれを覆うように、ス
ピンバスケット内の膜に直接注いだ。室温で15分間インキュベーションした後
、SV DNase停止溶液200μLをスピンバスケットに加え、11000
gで1分間遠心した。SV RNA洗浄液600μLを加え、次に11000g
で1分間遠心した。回収管を空にし、SV RNA洗浄液250μLを加え、1
1000gで2分間遠心した。
【0113】 各サンプルについて1本の溶出管を準備した。スピンバスケットを回収管から
溶出管に移し入れ、膜の表面を水で完全に覆いながらヌクレアーゼを含まない水
100μLを膜に加えた。溶出管の蓋が外を向くようにスピンバスケットアセン
ブリを遠心器に入れ、11000gで1分間遠心した。スピンバスケットを取り
出し、廃棄した。
【0114】 トリ試薬法に従って、細胞を培養皿で直接溶解した。トリ試薬1mLを各プレ
ートに加え、細胞溶解物をピペットに数回通した。各5個のプレート(処理およ
び未処理)を一緒に回収した。得られたホモジネートを室温で5分間保管して、
核蛋白複合体の解離が完了するようにした。ホモジネートにトリ試薬各1mL当
たりクロロホルム0.2mLを補給し、サンプルを15秒間激しく振盪した。得
られた混合物を室温で15分間インキュベートし、40℃にて12000gで1
5分間遠心した。遠心後、混合物を下層のフェノール−クロロホルム相、中間相
およびRNAを含む無色の上側水相に分けた。水相を新鮮な管に入れ、最初の段
階で用いたトリ試薬各1mL当たり0.5mLのイソプロパノールを加えること
でRNAを沈殿させた。
【0115】 サンプルを室温で10分間インキュベートし、40℃にて12000gで8分
間遠心した。上清を廃棄し、RNAペレットを75%エタノール(最初に用いた
トリ試薬当たり1mL以上)で渦撹拌とそれに続く40℃で5分間の7500g
での遠心によって洗浄した。得られたRNAを風乾し、水に再懸濁させた。
【0116】 得られた総RNAの収率を260nmで分光測光的に測定した。その場合、1
吸光単位(A260)が一本鎖RNA40μg/mLに相当する。精製RNAの
完全性も、28S/18S真核リボソームRNA比が臭化エチジウム染色によっ
て約2:1でなければならないアガロースゲル電気泳動によって求めたところ、
RNAの分解がほとんど起こっていないことが示された。
【0117】 ゲノムDNAによる汚染が特に問題を生じる。従って、全てのRNAサンプル
について、プローブとして用いる前にRNaseを含まないDNaseIで処理
した。各サンプルについて以下の試薬を組み合わせた。
【0118】 総RNA500μL(0.5μg) 10×DNaseI緩衝液(400mM Tris−HCl pH7.5;1
00mM NaCl;60mM MgCl2)100μL DNaseI(RQi RNase非含有DNase、プロメガ、カタログ番
号M6101;未希釈;1単位/μL)50μL
【0119】 脱イオンH2O 395μL 溶液をピペットで数回上下することで十分に混和した。反応混合物を水浴で3
7℃にて1時間インキュベートし、次に10×停止混合液(0.1M EDTA
[pH8.0];1ng/mLグリコーゲン[ウシ肝臓からのIX型、Sigma 、
カタログ番号G0885])100μLを加え、ピペットでの上下によって混合
した。
【0120】 各反応液を2本の1.5mL微量遠心管に分け入れ(管当たり550μL)、
フェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール(25:24:1)550μ
Lを各管に加え、混合物を十分に渦撹拌し、微量遠心管中で14000rpmで
10分間遠心して相分離を行った。最上の水層を注意深く新鮮な1.5mL微量
遠心管に入れ、中間相と下相は廃棄した。得られた水相についてこの抽出を繰り
返した後、最終的に得られた水層にクロロホルム:イソアミルアルコール(24
:1)混合液550μLを加え、次に激しく渦撹拌した。管を11000gで1
0分間遠心して相分離を行い、得られた上層の水相を取り、2.0mL微量遠心
管に移し入れた。1/5容量(100μL)の7.5M NH4OAcおよび2
.5容量(1.5mL)の96%エタノールを加え、混合物を十分に渦撹拌し、
14000rpmで20分間遠心した。上清を注意深く除去し、ペレットを80
%エタノール100μLで緩やかに覆い、14000rpmで10分間遠心した
。上清を除去した後、ペレットを約10分間乾燥して残留エタノールを蒸発させ
た。ペレットを脱イオンH2O250μLに溶かし、2本の同型の管を組合せ、
RNAについてポリA+RNAのオリゴ(dT)精製を行った。
【0121】 総RNAについて、プロメガのポリA管mRNA単離システムIII(P olyA
Tract mRNA Isolation Systems III ;カタログ番号Z5300)を用いてポリ
A+RNA単離を行った。総RNA500μL容量を水浴で65℃にて10分間
インキュベートした。ビオチンを加えたオリゴ(dT)プローブ3μLおよび2
0×SSC13μLをRNAに加え、緩やかに混合し、完全に冷却されるまで室
温でインキュベートした(約10分間)。ストレプトアビジン−常磁性粒子(S
A−PMPs)(RNAサンプル当たり1本の管)を、それが完全に分散するま
で管の底部を軽く叩くことで再懸濁させ、SA−PMPsが管の側部で回収され
るまで(約30秒)磁石スタンド(Magnetic Stand)に管を入れることで粒子を
捕捉した。上清を取り、SA−PMPsを0.5×SSCで3回洗浄し(洗浄1
回当たり0.3mL)、各回において磁石スタンドを用いて粒子を捕捉し、上清
を注意深く取った。洗浄したSA−PMPは0.5×SSC0.1mLに再懸濁
した。
【0122】 アニーリング反応液の全内容物を、洗浄したSA−PMPsが入った管に加え
、混合物を室温で10分間インキュベートし(1〜2分ごとに管を反転させるこ
とで混合物を緩やかに混合した)、SA−PMPsを磁石スタンドを用いて捕捉
し、SA−PMPペレットを攪乱しないようにしながら上清を注意深く取った。
全ての粒子が再懸濁するまで管の底部を軽く叩くことで、粒子を0.1×SSC
で4回洗浄した(洗浄1回当たり0.3mL)。最終洗浄後、注意を払いながら
SA−PMP粒子を攪乱せずにできるだけ多量の水相を取った。mRNAを溶出
するため、最終SA−PMPペレットをRNaseを含まない水0.1mLに再
懸濁させ、管を軽く叩くことで粒子を緩やかに再懸濁させた。SA−PMPsを
磁気によって捕捉し、溶出したmRNA水相を新鮮な管に移し入れた。
【0123】 SA−PMPペレットをRNaseを含まない水0.15mLに再懸濁させ、
粒子を捕捉し、溶出mRNAを前の段階で溶出したmRNAとともに蓄積するこ
とで溶出手順を繰り返した。粒子を除去するため、溶出mRNAを10000g
で10分間遠心し、mRNAを注意深く新鮮な管に移し入れた。
【0124】 溶出mRNAの濃度および純度を上記の方法に従って分光測光的に求めた。 cDNAプローブを得るため、ポリA+RNAからcDNAを合成した。ポリ
A+RNA1μgについて、クローンテク(Clonetech )アトラスcDNA発現
アレイ成分を用いてcDNA合成を行う。全ての標識反応についてのマスター混
合物(Master Mix)を以下のように調製した。
【0125】 5×反応緩衝液2.0μL、10×dNTP混合液(dATP標識用)1.0
μL、[μ−32P]dATP(3000Ci/mmol、10mCi/mL;Am
ersham #PB10204 )3.5μL、DTT(100mM)0.5μL、MMLV逆
転写酵素(50単位/μL)1.0μL。
【0126】 各反応についてマスター混合物8.0μLを加えた。PCR熱サイクラー(T3
Thermocycler, Biometra )を70℃に予熱した。各実験ポリA+RNAおよび
対照ポリA+RNAについて、以下の成分を0.2mL PCR管(Tamar 、カ
タログ番号431M)中で混合した。
【0127】 ポリA+RNAサンプル 1μg(2μL)。 10×CDSプライマー混合物 1μL。 渦撹拌と微量遠心器での短時間の遠心によって管を混合した。管を予熱PCR
熱サイクラーで70℃にて2分間インキュベートし、次に50℃で2分間インキ
ュベートした。マスター混合物8μLを各反応管に加え(マスター混合物を加え
るのに必要な時間より長く熱サイクラーからRNAサンプルを取り出さないよう
に注意した)、管の内容物をピペット操作によって緩やかに混合し、直ちに熱サ
イクラーに戻した。管をPCR熱サイクラーで50℃にて25分間インキュベー
トし、10×停止混合液(0.1M EDTA pH8.0;1.0mg/mL
グリコーゲン[ウシ肝臓からのIX型、Sigma ])1μLを加えることで反応を
停止した。
【0128】 未取り込み32P標識ヌクレオチドおよび小(<0.1kb)cDNA断片から 32 P標識cDNAを精製するため、各反応管について以下の手順を行った。すな
わち、各反応について1本のCHROMA SPIN−200 DEPC−H2
Oカラムを除去してゲル基質を完全に懸濁させた(カラム基質中に気泡がある場
合にはカラムを再度反転させた)。底部のキャップをカラムから外し、次に頂部
のキャップをゆっくり外した。カラムを1.5mL微量遠心管冷蔵庫に入れ、昇
温させて約1時間にわたって室温に保持した。カラムを反転させて、カラム基質
中のゲルビーズの表面が見えるようになるまでカラムの排液を行った。カラム基
質の頂部は1.0−mLでなければならない。回収した液体を廃棄し、サンプル
を注意深く加え、ゲル床の平坦面までゆっくり移動させ、サンプルを樹脂床中に
十分に吸収させてから次の段階に進んだ。
【0129】 脱イオンH2O40μLをカラムに加え、カラムから完全に排液し、廃棄した
。脱イオンH2O250μLをカラムに加え、ゲル床より上に全く液体が残らな
くなるまでカラムから完全に排液し、廃棄した。
【0130】 4つの分画を以下のように回収した。カラムを清浄な1.5−mL微量遠心管
に移し入れ、脱イオンH2O100μLをカラムに加え、カラムを完全に排液し
た。その手順を4回繰り返した。32Pのプローブへの取り込みを、管にシンチレ
ーションカクテルを加えずにトリチウムチャンネル上で全サンプルをカウンティ
ングすることによるチェレンコフ(Cherenkov )のシンチレーションカウンティ
ング法を用いて調べた。
【0131】 ハイブリダイゼーション法を、最初にブランク膜への試験ハイブリダイゼーシ
ョンを行うことで以下のように行った。得られた32P標識cDNAプローブをア
トラスアレイにハイブリダイズする前に、供給された対照(ブランク)ナイロン
膜にそれをハイブリダイズすることで、各実験cDNAプローブの性質を調べた
。それによって、RNAサンプル中の不純物によって生じる非特異的バックグラ
ウンドのレベルを推定することができた。
【0132】 ナイロン膜を−20℃で保存し、手順の全期間を通じて濡れた状態に維持した
。エクスプレスハイブ溶液15mLを68℃で予備加熱し、剪断サケ睾丸DNA
(10mg/mL;Sigma #D-7656 )1.5mgを95〜100℃で5分間加熱
し、氷上で急冷した。熱変性剪断サケ睾丸DNAを予備加熱したエクスプレスハ
イブと混合し、用時まで68℃に維持した。
【0133】 アトラスアレイを脱イオンH2Oで濡らし、過剰量を振盪除去し、アトラスア
レイを以前に調製したハイブリダイゼーション溶液10mLに入れた。前ハイブ
リダイゼーションを68℃で連続撹拌しながら30分間行った。
【0134】 標識cDNAプローブの全蓄積物(約200μL、ブランクとアトラスアレイ
のそれぞれについて2および4−10×106cpm)を10×変性溶液(1M
NaOH、10mM EDTA)の反応総容量の1/10と混合し、68℃で
20分間インキュベートした。次に、Cot−1 DNA5μL(1μg/μL
)と等容量(約225μL)の2×中和溶液(1M NaH2PO4[pH7.0
])を加え、インキュベーションを68℃で10分間継続した。
【0135】 放射能混合物をエクスプレスハイブ溶液の残りの5mLに加えた。前ハイブリ
ダイゼーション溶液を注ぎ出し、ハイブリダイゼーション溶液を導入した。68
℃で連続撹拌しながら、ハイブリダイゼーションを終夜で行った。
【0136】 溶液1(2×SSC;1%SDS)および2(0.1×SSC;0.5%SD
S)を68℃で予備加熱した。ハイブリダイゼーション溶液を注意深く除去し、
アトラスアレイを68℃で連続撹拌しながら30分間にわたって溶液1 200
mLで洗浄した。この段階を4回繰り返した。同様に溶液2を用いて、さらに3
0分間洗浄を2回行った。
【0137】 アトラスアレイを容器から除去し、過剰の溶液を膜を乾燥させないようにしな
がら振盪除去した。ただちに膜をプラスチック製ラップに包み、アトラスアレイ
を増感紙を用いて−70℃でx線フィルムに3日間曝露した。
【0138】 フィルムの現像後、cDNAプローブをアトラスアレイから剥ぎ取り、膜を再
使用した。0.5%SDS溶液を加熱沸騰させ、プラスチック製ラップをアトラ
スアレイから除去し、膜を直ちに沸騰溶液に入れて10分間経過させた。溶液を
加熱から外し、10分間放冷した。x線フィルムへの曝露によって剥ぎ取りの効
率を調べ、放射能が検出されなくなるまで剥ぎ取り手順を繰り返した。
【0139】 アトラスアレイ上の遺伝子は、各種機能上の分類に群分けした。 A.腫瘍遺伝子;腫瘍抑制遺伝子;細胞臭気制御蛋白 B.ストレス応答蛋白;イオンチャンネルおよび輸送蛋白;細胞内信号伝達当
節剤およびエフェクター C.アポトーシス遺伝子;DNA合成、修復および組換え遺伝子 D.転写因子、一般的DNA結合蛋白 E.受容体:成長因子およびケモカイン、インターロイキンおよびインターフ
ェロン、ホルモン、神経伝達物質;細胞表面抗原;細胞接着蛋白
【0140】 F.細胞−細胞伝達蛋白:成長因子、サイトカインおよびケモカイン;インタ
ーロイキンおよびインターフェロン;ホルモン G.ハウスキーピング遺伝子 陰性対照:G2〜4、9〜11、16〜18 ブランクスポット:G1、8、15 陰性対照とブランクスポットのいずれも、ハイブリダイゼーション時にそれら
が取るべき挙動を示した。3日間の曝露後、2種類の異なるプローブにハイブリ
ダイズされた2種類の同一のアトラスアレイを比較し、2種類の間で異なる発現
強度を示した遺伝子を選択して、さらなる検討に供した。
【0141】
【表2】 ハロフジノン処理後のヒト細胞相互作用遺伝子の調節 前述のものと同じプロトコールを用いた。一次ヒト線維芽細胞を10-8Mのハ
ロフジノンで1時間処理した。そのハロフジノンについては予め、RNAのレベ
ルで試験を行い、コラーゲンα1(I)mRNAがハロフジノン処理で低下する
ことが認められた。cDNAプローブをハロフジノンで処理したまたは未処理の
細胞からのmRNAから得て、クローンテクのアトラスcDNA発現アレイ(ア
トラスヒト細胞相互作用アレイ、カタログ番号7746−1)に対してハイブリ
ダイズした。アレイには各種細胞相互作用に関与することが知られている265
の遺伝子が含まれている。ハイブリダイゼーション後、2つの膜を比較し、2つ
の間で異なる発現強度を示した遺伝子を選択してさらに検討した。
【0142】
【表3】
【表4】 これらの実験結果から、ハロフジノンが多くの異なる遺伝子の調節を変えるこ
とで、多数の異なる遺伝子産物に関しての細胞外マトリックス系に影響を与える
ことが明らかである。しかし、これらの異なる遺伝子に対する効果の多くが恐ら
くはハロフジノンとその種類の関連する分子の主要な作用機序によるものであり
、それにはコラーゲンα1(I)遺伝子の発現阻害、コラゲナーゼIV型産生の
阻害、H19遺伝子発現の阻害、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現阻害と並行
したHSP47遺伝子発現の低下、NF−κBの転写を阻害するがTGFβの発
現には影響しないサイトカイン類IL−1βおよびTNFαの放出低下などがあ
る。
【0143】 そこで、TGF−βにではなくTNF−αおよびNF−κBに関してのハロフ
ジノンの見かけの効果によりハロフギノンは最終的に、生理的に正常で望ましい
細胞外マトリックス系に対して悪い形での阻害や低下を実質的に生じることなく
線維症の病理プロセスに対して望ましい阻害効果を有するようになると考えられ
る。
【0144】 実施例7 細胞外マトリックス系調節のエフェクター 上記で明瞭に示したように、各種介入点でハロフジノンおよび他のエフェクタ
ーによって細胞外マトリックス系を調節することができる。それらの介入点によ
って、生理的に望ましいプロセスの実質的に正常な活動を維持しながら、組織外
傷に関連する病理プロセスおよび他の機序的に関連するプロセスを選択的に阻害
することができる。前述のように、「機序的に関連するプロセス」という用語は
、組織外傷に対する異常応答と1以上の基礎機序を共有する病理状態を指す。そ
のような機序的に関連するプロセスの例としては、悪性癌細胞の成長と転移があ
る。
【0145】 これら全ての病理プロセスの阻害におけるハロフジノンの基礎となる作用機序
には分子レベルでのコラーゲンI型合成の阻害が関与し、詳細にはcKrox活
性の促進とそれによるコラーゲンα1(I)遺伝子の発現阻害によるもの、なら
びにコラーゲンα1(I)遺伝子の発現阻害と並行したHSP47遺伝子発現の
低下;NF−κBの転写を阻害するがTGFβの発現には影響しないサイトカイ
ン類IL−1βおよびTNFαの放出低下によるものである。「cKrox活性
の促進」という用語には、cKrox遺伝子発現の上昇およびcKrox蛋白の
活動の促進などが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0146】 ハロフジノンの他の可能な分子標的には、コラゲナーゼIV型産生の阻害およ
びH19遺伝子発現の阻害、ならびにECM(細胞外基質)堆積および再構築の
全体的調節ならびに血管新生阻害などがある。「細胞外マトリックス系」の他の
機序には、アポトーシスの誘発およびH19遺伝子発現の阻害などがあるが、こ
れらに限定されるものではない。これら機序ならびに細胞外マトリックス系の全
体的な選択的調節を解明することで、背景技術によっては説明も示唆もされてい
ない治療介入の新規かつ非自明な方法が示されることは明らかである。
【0147】 従って本発明は、細胞外マトリックス系の調節のための方法および組成物、詳
細にはcKrox活性の促進ならびにコラーゲンα1(I)遺伝子の発現阻害;
NF−κBの転写を阻害するがTGFβの発現には影響しないサイトカイン類I
L−1βおよびTNFαの放出低下と並行したHSP47遺伝子の阻害のための
ものを含むことも想到される。
【0148】 これらの方法および組成物には、患者へのエフェクターの投与が含まれる。本
明細書で使用される「エフェクター」という用語は実質的に、上記のように細胞
外マトリックス系を調節することができる化合物またはそれの組合せを指す。好
ましくはエフェクターは、cKrox活性を促進することができる。より好まし
くはそのような促進は、cKrox遺伝子の発現を促進することで生じるもので
ある。別形態で好ましいものとしてエフェクターは、コラーゲンα1(I)遺伝
子の発現阻害;サイトカイン類IL−1βおよびTNFαの放出低下、ならびに
NF−κBの転写阻害と並行してHSP47遺伝子を阻害することができるが、
TGFβの発現に実質的に影響を与えずにこれらの効果を発揮することができる
【0149】 本発明の組成物の好ましい実施態様では、これらの組成物にはエフェクターと
してのキナゾリノン誘導体が含まれる。本発明のさらに好ましい実施態様では、
これらの組成物にはエフェクターとしてハロフジノンが含まれる。
【0150】 本発明のエフェクターは、当業界で公知の多くの方法で患者に投与することが
できる。以下において「患者」という用語は、エフェクターを投与したヒトまた
はそれより下等な動物を指す。例えば投与は、局所的に(点眼、経膣投与、直腸
投与、経鼻投与)、経口的にあるいは例えば静脈滴下または腹腔内注射、皮下注
射もしくは筋肉注射によって非経口的に行うことができる。
【0151】 局所投与用の製剤には、ローション、軟膏、ゲル、クリーム、坐剤、滴剤、液
剤、噴霧剤および粉剤などがあり得るが、これらに限定されるものではない。従
来の医薬用の担体、水系、粉末もしくは油系の塩基、増粘剤などが必要もしくは
望ましい場合がある。
【0152】 経口投与用の組成物には、粉剤もしくは粒剤、水もしくは非水系媒体中の懸濁
液もしくは液剤、小袋(sachet)、カプセルまたは錠剤などがある。増粘剤、希
釈剤、香味剤、分散助剤、乳化剤または結合剤が望ましい場合がある。
【0153】 非経口投与用製剤には、緩衝剤、希釈剤および他の好適な添加剤を含有してい
ても良い無菌の水溶液などがあるが、それに限定されるものではない。 用量は症状の重度ならびにエフェクターに対する患者の応答性によって決まる
。当業者であれば、至適用量、投与方法および反復回数を容易に決定することが
できる。
【0154】 以下の例は、ハロフギノンなどのエフェクターを用いて細胞外系を調節して、
組織外傷に関連する病的状態または機序的に関連する状態を治療する方法の単な
る例示であり、本発明を限定するものではない。
【0155】 その方法には、上記のような薬学的に許容される担体中のエフェクターを治療
を受ける患者に投与する段階を有する。エフェクターは、好ましくは患者におけ
る病的状態の軽減または改善などの所定のエンドポイントに達するまで、有効な
投与方法に従って投与される。
【0156】 そのような治療が有効であると考えられる状態の例としては、各種の癌、肝線
維症および肝硬変、肺線維症、心臓線維症など(これらに限定されるものではな
いが)の線維症状態、新血管形成、癒着形成、乾癬、ケロイド、過形成性瘢痕な
らびに細胞外マトリックス系を調節することができるエフェクターによって改善
、軽減その他の形で治療可能な他のそのような病理状態などがあるが、それらに
限定されるものではない。
【0157】 実施例8 心臓線維症の治療方法 上述のように、ハロフジノンは心臓線維症の有効な阻害薬であることが明らか
になっている。以下の例は、ハロフジノンを用いた心臓線維症の治療方法の単な
る例示であって、本発明はそれに限定されるものではない。
【0158】 この方法には、上記実施例7に記載のような薬学的に許容される担体中のハロ
フジノンを投与する段階が含まれる。ハロフジノンは、好ましくは患者における
心臓線維症のさらなる進行の停止、心臓線維症の阻害または心臓線維症形成の予
防などの所定のエンドポイントに達するまで、有効な投与方法に従って投与され
る。
【0159】 以上、限られた数の実施態様に関して本発明についての説明を行ったが、本発
明の多くの変更、修正および他の応用を行うことができることは明らかであろう
【図面の簡単な説明】
【図1】細胞外マトリックス系の特定の例示的態様を示す図。
【図2】ハロフジノンの存在下における、T50膀胱ガン培養中のIV型コ
ラゲナーゼ活性の用量依存阻害を示す図。
【図3】ハロフジノンによる、RT112及び5376膀胱ガン細胞系にお
けるH19遺伝子の発現の阻害を示す図。
【図4】インテグリンαV鎖の発現に対するハロフジノンの影響を示すノー
ザンブロット。
【図5】RT−PCRによって調べられた、βサブユニットの発現に対する
ハロフジノンの影響を示す図。
【図6】ラット心臓における心室のコラーゲン容積画分(CVF)に対する
ハロフジノンの影響を示す図。
【図7】ラット心臓におけるコラーゲンα1(I)遺伝子の発現に対するハ
ロフジノンの影響を示す図。
【図8】ラット心臓におけるTGF−βの発現に対するハロフジノンの影響
を示す図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G01N 33/15 G01N 33/15 Z 33/50 33/50 Z (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CR, CU,CZ,DE,DK,DM,EE,ES,FI,G B,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL ,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ, LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MD,M G,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,PL,PT ,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL, TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ,V N,YU,ZA,ZW (71)出願人 アグリカルチュラル リサーチ オーガナ イゼーション AGRICULTURAL RESEAR CH ORGANIZATION イスラエル国 50250 ベット ダガン ヴォルカニ センター ピー.オー.ボッ クス 6 (72)発明者 パインズ、マーク イスラエル国 76308 レホボト ピンス カー ストリート 12ビー (72)発明者 ブロダフスキー、イスラエル イスラエル国 90805 メバセレット ザ イオン アーベル ストリート 34 (72)発明者 ナーグラ、アーノン イスラエル国 74381 エルサレム スデ ロット ハーツル 46 (72)発明者 ハズーム、エリ イスラエル国 76308 レホボト ピンス カー ストリート 17 Fターム(参考) 2G045 AA40 CB01 DA12 DA13 DA14 DA20 DA36 DA77 FB01 4C084 AA13 AA17 DC32 DC39 ZA89 ZC20 4C086 AA01 BC46 GA07 MA04 ZA89 ZC20

Claims (23)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 細胞外マトリックスの系を調節するための組成物であって、
    薬学的有効量のエフェクターを薬学的に許容可能な担体とともに含み、細胞外マ
    トリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害、ならびにN
    F−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む組成物。
  2. 【請求項2】 細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝
    子の発現の阻害及びcKrox転写因子の活性の促進、ならびにNF−κBの転
    写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む請求項1に記載の組成物。
  3. 【請求項3】 細胞外マトリックス系の調節は、TGF−βの発現に実質上
    影響しない、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害及びcKroxの活性の
    促進、ならびに、NF−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害、
    及びサイトカインIL−1β及びTNFαの放出の低減を含む請求項2に記載の
    組成物。
  4. 【請求項4】 細胞外マトリックス系の調節は、TGF−βの発現に実質上
    影響しない、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害、NF−κBの発現の阻
    害、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、及びサイトカインIL−1β及びTNFα
    の放出の低減と並行して、HSP47の発現を低減させることを含む請求項1に
    記載の組成物。
  5. 【請求項5】 前記エフェクターはキナゾリノン誘導体である請求項1乃至
    4のいずれかに記載の組成物。
  6. 【請求項6】 前記キナゾリノン誘導体は、次式、 【化1】 にて表される群の要素及び薬学的に許容可能なその塩であって、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり、 R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であ
    り、 R3は、水素及び低級アルケノキシからなる群の要素であり、nは1または2
    である請求項5に記載の組成物。
  7. 【請求項7】 前記化合物はハロフジノン及び薬学的に許容可能なその塩で
    ある請求項6に記載の組成物。
  8. 【請求項8】 組織外傷にともなう少なくとも1つの病理学的プロセスを阻
    害するための組成物であって、薬学的有効量のエフェクターを薬学的に許容可能
    な担体とともに含む組成物において、前記エフェクターは組織外傷にともなう少
    なくとも1つの病理学的プロセスを阻害するうえで細胞外マトリックス系を調節
    し、細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害
    、ならびにNF−κBの転写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む組
    成物。
  9. 【請求項9】 細胞外マトリックス系の調節は、コラーゲンα1(I)遺伝
    子の発現の阻害及びcKrox転写因子の活性の促進、ならびにNF−κBの転
    写の阻害及びIV型コラゲナーゼ産生の阻害を含む請求項8に記載の組成物。
  10. 【請求項10】細胞外マトリックス系の調節は、TGF−βの発現に実質上
    影響しない、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害及びcKroxの活性の
    促進、ならびに、NF−κBの転写の阻害、IV型コラゲナーゼ産生の阻害、及
    びサイトカインIL−1β及びTNFαの放出の低減を含む請求項9に記載の組
    成物。
  11. 【請求項11】前記エフェクターは、TGF−βの発現に実質上影響するこ
    となく、コラーゲンα1(I)遺伝子の発現の阻害と並行してHSP47の発現
    を低減させ、NF−κBの発現を阻害し、IV型コラゲナーゼ産生を阻害し、サ
    イトカインIL−1β及びTNFαの放出を低減する請求項8に記載の組成物。
  12. 【請求項12】前記エフェクターはキナゾリノン誘導体である請求項8乃至
    11のいずれかに記載の組成物。
  13. 【請求項13】 前記キナゾリノン誘導体は、次式、 【化2】 にて表される群の要素及び薬学的に許容可能なその塩であって、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり、 R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であ
    り、 R3は、水素及び低級アルケノキシからなる群の要素であり、nは1または2
    である請求項12に記載の組成物。
  14. 【請求項14】前記化合物はハロフジノン及び薬学的に許容可能なその塩で
    ある請求項13に記載の組成物。
  15. 【請求項15】前記少なくとも1つの病理学的プロセスは、ガン、及び、肝
    線維症及び肝硬変、慢性炎症性疾患、腎線維症、肺線維症、心線維症、新脈管新
    生、癒着の形成、乾癬、ケロイド、過形成性瘢痕を含むがこれらに限定されない
    線維性状態、ならびに、細胞外マトリックス系を調節することが可能なエフェク
    ターによって改善、低減、もしくは治療することが可能な病理学的状態からなる
    群から選択される請求項8乃至14のいずれかに記載の組成物。
  16. 【請求項16】細胞外マトリックスの蓄積によって引き起こされる細胞増殖
    を阻害するための組成物であって、次式、 【化3】 にて表される化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効量を含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり、 R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び低級アルコキシからなる群の要素であ
    り、 R3は、水素及び低級アルケノキシからなる群の要素であり、nは1または2
    である組成物。
  17. 【請求項17】心線維症を治療するための組成物であって、次式、 【化4】 にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効
    量を薬学的に許容可能な担体とともに含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である組成物。
  18. 【請求項18】前記化合物はハロフジノンである請求項17に記載の組成物
  19. 【請求項19】心線維症を治療するための薬剤の製造方法であって、次式、 【化5】 にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効
    量を薬学的に許容可能な担体中に入れる工程を含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である方法。
  20. 【請求項20】被験者の心線維症を治療するための方法であって、次式、 【化6】 にて表される化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効量を投与する工
    程を含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である方法。
  21. 【請求項21】心線維症を実質的に予防するための組成物であって、次式、 【化7】 にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効
    量を薬学的に許容可能な担体とともに含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である組成物。
  22. 【請求項22】心線維症を実質的に予防するための薬剤の製造方法であって
    、次式、 【化8】 にて表される群の要素である化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効
    量を薬学的に許容可能な担体中に入れる工程を含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である方法。
  23. 【請求項23】被験者において心線維症を実質的に予防するための方法であ
    って、次式、 【化9】 にて表される化合物及び薬学的に許容可能なその塩の薬学的有効量を投与する工
    程を含み、 式中、 R1は、水素、ハロゲン、ニトロ、ベンゾ、低級アルキル、フェニル、及び低
    級アルコキシからなる群の要素であり;R2は、ヒドロキシ、アセトキシ、及び
    低級アルコキシからなる群の要素であり;R3は、水素及び低級アルケノキシ−
    カルボニルからなる群の要素であり;nは1または2である方法。
JP2000564574A 1998-08-13 1999-08-13 組織外傷に関連した病原プロセスの阻害 Pending JP2002522462A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
IL12579098 1998-08-13
US13714599P 1999-06-01 1999-06-01
US125790 1999-06-01
US60/137,145 1999-06-01
PCT/IL1999/000440 WO2000009070A2 (en) 1998-08-13 1999-08-13 Inhibition of pathogenic processes related to tissue trauma

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002522462A true JP2002522462A (ja) 2002-07-23
JP2002522462A5 JP2002522462A5 (ja) 2006-10-05

Family

ID=26323693

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000564574A Pending JP2002522462A (ja) 1998-08-13 1999-08-13 組織外傷に関連した病原プロセスの阻害

Country Status (8)

Country Link
EP (1) EP1109559B1 (ja)
JP (1) JP2002522462A (ja)
AT (1) ATE307586T1 (ja)
AU (1) AU756437B2 (ja)
CA (1) CA2340176A1 (ja)
DE (1) DE69927987T2 (ja)
ES (1) ES2255286T3 (ja)
WO (1) WO2000009070A2 (ja)

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006504769A (ja) * 2002-10-31 2006-02-09 ステート オブ イスラエル、ミニストリー オブ アグリカルチャー 病理学的プロセスに関する遺伝子発現を制御するためのキナゾリノン組成物
WO2012108538A1 (ja) 2011-02-10 2012-08-16 国立大学法人 長崎大学 急性肺損傷診断方法

Families Citing this family (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
IL143366A0 (en) * 2001-05-24 2002-04-21 Harasit Medical Res Services & Treatment of renal fibrosis
EP2010136B1 (en) * 2006-04-10 2012-09-12 The President and Fellows of Harvard College Methods for modulating formation and progression of cellulite
AU2008206643B2 (en) 2007-01-21 2013-09-19 Agricultural Research Organization Composition and method for treating or preventing skeletal muscle fibrosis
CA2737219C (en) 2008-08-11 2017-02-28 Tracy Keller Halofuginone analogs for inhibition of trna synthetases and uses thereof
EP2802572B1 (en) 2012-01-13 2018-11-07 President and Fellows of Harvard College Halofuginol derivatives and their use in cosmetic and pharmaceutical compositions
US11708353B2 (en) 2018-06-08 2023-07-25 The General Hospital Corporation Inhibitors of prolyl-tRNA-synthetase

Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5449678A (en) * 1994-01-11 1995-09-12 Agricultural Research Organization, Ministry Of Agriculture Anti-fibrotic quinazolinone-containing compositions and methods for the use thereof
WO1996006616A1 (en) * 1994-08-31 1996-03-07 Davidson, Clifford, M. Quinazolinone pharmaceuticals and use thereof
JPH08510251A (ja) * 1993-05-07 1996-10-29 ビー マーゴリン、ソロモン 線維症の病変の修復と予防のための組成物および方法
WO1998000555A1 (en) * 1996-07-03 1998-01-08 Prockop Darwin J Recombinant n-proteinase, and the production, methods and uses thereof
WO1998003180A2 (en) * 1996-07-22 1998-01-29 The Victoria University Of Manchester Use of sex steroids function modulators to treat wounds and fibrotic disorders
WO1998024465A1 (en) * 1996-12-04 1998-06-11 The Victoria University Of Manchester Wound healing and treatment of fibrosis

Family Cites Families (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US3320124A (en) * 1964-07-20 1967-05-16 American Cyanamid Co Method for treating coccidiosis with quinazolinones
DE2934069A1 (de) * 1979-08-23 1981-03-12 Hoechst Ag, 6000 Frankfurt Mittel gegen theileriosen und seine verwendung.
JPH0971586A (ja) * 1995-09-07 1997-03-18 Yamanouchi Pharmaceut Co Ltd 新規な二環性縮合イミダゾール誘導体
US5852024A (en) * 1997-02-11 1998-12-22 Hadasit Treatment and prevention of adhesions
US6028075A (en) * 1997-02-11 2000-02-22 Pines; Mark Quinazolinone containing pharmaceutical compositions for prevention of neovascularization and for treating malignancies
DE19951702A1 (de) * 1999-10-27 2001-05-03 Aventis Pharma Gmbh Verwendung von 2-Amino-3,4-dihydro-chinazolinen zur Herstellung eines Medikaments zur Behandlung oder Prophylaxe von durch ischämischen Zuständen bewirkten Krankheiten

Patent Citations (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08510251A (ja) * 1993-05-07 1996-10-29 ビー マーゴリン、ソロモン 線維症の病変の修復と予防のための組成物および方法
US5449678A (en) * 1994-01-11 1995-09-12 Agricultural Research Organization, Ministry Of Agriculture Anti-fibrotic quinazolinone-containing compositions and methods for the use thereof
WO1996006616A1 (en) * 1994-08-31 1996-03-07 Davidson, Clifford, M. Quinazolinone pharmaceuticals and use thereof
WO1998000555A1 (en) * 1996-07-03 1998-01-08 Prockop Darwin J Recombinant n-proteinase, and the production, methods and uses thereof
WO1998003180A2 (en) * 1996-07-22 1998-01-29 The Victoria University Of Manchester Use of sex steroids function modulators to treat wounds and fibrotic disorders
WO1998024465A1 (en) * 1996-12-04 1998-06-11 The Victoria University Of Manchester Wound healing and treatment of fibrosis

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6009052372, PINES,M. et al, "Halofuginone, a specific inhibitor of collagen type I synthesis, prevents dimethylnitrosamine−induce", J Hepatol, 1997, Vol.27, No.2, p.391−8 *
JPN6009052374, NAGLER,A. et al, "Reduction in pulmonary fibrosis in vivo by halofuginone", Am J Respir Crit Care Med, 1996, Vol.154, No.4 Pt 1, p.1082−6 *

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006504769A (ja) * 2002-10-31 2006-02-09 ステート オブ イスラエル、ミニストリー オブ アグリカルチャー 病理学的プロセスに関する遺伝子発現を制御するためのキナゾリノン組成物
WO2012108538A1 (ja) 2011-02-10 2012-08-16 国立大学法人 長崎大学 急性肺損傷診断方法

Also Published As

Publication number Publication date
DE69927987D1 (de) 2005-12-01
EP1109559B1 (en) 2005-10-26
EP1109559A4 (en) 2002-05-08
EP1109559A2 (en) 2001-06-27
ATE307586T1 (de) 2005-11-15
WO2000009070A3 (en) 2000-10-19
CA2340176A1 (en) 2000-02-24
AU5191499A (en) 2000-03-06
ES2255286T3 (es) 2006-06-16
WO2000009070A2 (en) 2000-02-24
DE69927987T2 (de) 2006-11-09
AU756437B2 (en) 2003-01-16

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US5449678A (en) Anti-fibrotic quinazolinone-containing compositions and methods for the use thereof
Schett Cells of the synovium in rheumatoid arthritis. Osteoclasts
Zhang et al. Infusion of angiotensin-(1–7) reduces glomerulosclerosis through counteracting angiotensin II in experimental glomerulonephritis
Duerrschmid et al. Tumor necrosis factor: A mechanistic link between angiotensin-II–induced cardiac inflammation and fibrosis
JP5435946B2 (ja) 疾患を処置するためのヘッジホッグ経路アンタゴニスト
AU2012238525A1 (en) Medicament for liver regeneration and for treatment of liver failure
US20160095867A1 (en) Bet inhibition therapy for heart disease
EP0815215A2 (en) An antisense transcript associated to tumor cells having a t(14;18) translocation and oligodeoxynucleotides useful in the diagnosis and treatment of said tumor cells
Dong et al. MicroRNA‐214 exerts a cardio‐protective effect by inhibition of fibrosis
Wang et al. Enhancing cGMP in experimental progressive renal fibrosis: soluble guanylate cyclase stimulation vs. phosphodiesterase inhibition
WO2021263250A2 (en) Method of treating severe forms of pulmonary hypertension
JP2002522462A (ja) 組織外傷に関連した病原プロセスの阻害
JPH06209778A (ja) NF−κBアンチセンスポリヌクレオチド
Wang et al. Role of adenosine kinase inhibitor in adenosine augmentation therapy for epilepsy: a potential novel drug for epilepsy
US6693134B2 (en) Bicyclic aromatic chemokine receptor ligands
US20070010538A1 (en) Inhibition of pathogenic processes related to tissue trauma
Lee et al. Creation of myocardial fibrosis by transplantation of fibroblasts primed with survival factors
US20140356373A1 (en) Methods and compositions for treating lupus
IL141408A (en) Compositions for treating cardiac fibrosis comprising halfuginone derivatives
US20100015249A1 (en) Antitumor agent containing 6'-amidino-2'-naphthyl 4-guanidinobenzoate or salt thereof
US20050202005A1 (en) Uses of inhibitors for the activation of CXCR4 receptor by SDF-1 in treating rheumatoid arthritis
CN116236486B (zh) 髓过氧化物酶抑制剂在制备心脏保护药物中的应用
CA2504388A1 (en) Quinazolinone compositions for regulation of gene expression related to pathological processes
US20230304007A1 (en) Compositions and methods of treatment of muscle disorders by targeting h19x-encoded non-coding rnas
US20040127442A1 (en) Oligonucleotides for treating proliferative disorders

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060811

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060811

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091020

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100316