JP2002521025A - 増殖因子のTGF−βファミリーのメンバーを使用する、生殖系列幹細胞の維持および増殖のための方法。 - Google Patents

増殖因子のTGF−βファミリーのメンバーを使用する、生殖系列幹細胞の維持および増殖のための方法。

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JP2002521025A
JP2002521025A JP2000561290A JP2000561290A JP2002521025A JP 2002521025 A JP2002521025 A JP 2002521025A JP 2000561290 A JP2000561290 A JP 2000561290A JP 2000561290 A JP2000561290 A JP 2000561290A JP 2002521025 A JP2002521025 A JP 2002521025A
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cells
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アラン シー. スプラッドリング,
ティン シェ,
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ザ カーネギー インスチチューション オブ ワシントン
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Abstract

(57)【要約】 増殖因子のTGF−βファミリー、特に骨形成性タンパク質(BMP)−2/4ホモログdecapentaplegic(dpp)は、生殖系列幹細胞を維持し、かつそれらの分裂を促進するために特異的に必要とされる。dppの過剰発現は、生殖系列幹細胞の分化をブロックする。dppまたはそのレセプターsaxophoneにおける変異は、幹細胞の損失を加速し、そして幹細胞の分裂を遅延させる。dppシグナル伝達は、生殖系列幹細胞によって直接的に受け取られ、それによってdppシグナル伝達は、生殖系列幹細胞増殖を制御するニッチの規定を補助する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の背景) (1.発明の分野) 本発明は、トランスフォーミング増殖因子βファミリーのメンバー、ならびに
細胞分裂、細胞の生存、および細胞運命の特異性のそれらの調節に関する。具体
的には、本発明は、骨形成性タンパク質(BMP)−2/4ホモログdecap
entaplegic(dpp)および幹細胞の維持におけるその役割に関する
。例えば、維持および生殖系列幹細胞の分裂の制御のためのdppベースの方法
、ならびに生殖系列幹細胞の増殖を制御するニッチ(niche)を規定するた
めのdppベースの方法が、開示される。さらに、本発明は、卵巣腫瘍発生のモ
デルを提供する。本発明はさらに、インビボにおいて未分化段階にて、またはイ
ンビトロで培養することによって、幹細胞を増殖させるためのdppベースの方
法に関する。
【0002】 (2.関連分野の記述) 連続的な細胞の代謝回転を経る多くの成体組織において、幹細胞の集団は、失
われた細胞を置換することを担う。増殖および新形成を制御する際のそれらの中
心的な役割のために、幹細胞の機能を調節する機構は、非常に興味深い(Pot
terおよびLoffler、1990;DoeおよびSpana、1995;
Lin、1997;Morrisonら、1997によって概説される)。幹細
胞の分裂を維持し、かつ幹細胞の娘細胞の分化を調節する2つの機構が、提唱さ
れている:内在性因子および細胞外シグナル。非対称的に局在した内在性因子は
、Drosophila胚における神経芽細胞の娘細胞の運命を特異的に補助す
る(DoeおよびSpana、1995)。細胞表面会合リガンドおよび拡散可
能な因子によって媒介される周囲の細胞からの細胞外シグナルが、頻繁に関与す
る(PotterおよびLoeffler、1990;Morrisonら、1
997)。これらの因子のうちのいくつかの同定は、ある型の幹細胞をインビト
ロで培養することを可能にする。
【0003】 Drosphila卵巣は、成体の寿命のほどんとの間に活性を保持している
、幹細胞の2つの別個の群を研究するための優れた系を示す(Spradlin
gら、1997によって概説される)。成体の卵巣は、生殖系列および体細胞性
幹細胞(somatic stem cell)が位置する、先端にて胚腺を各
々有する14〜16の卵巣小管を含む。胚腺の前端に位置する、2または3の生
殖系列幹細胞は、非対称に分裂して、卵巣小管における全ての生殖系列細胞を生
じる(WieschausおよびSzabad、1979;Lin(1997)
によって概説される)。嚢胞芽細胞(cystoblast)として既知の幹細
胞の娘細胞は、4回の同調化した分裂を経て、2、4、8、および最終的には1
6の相互連絡された嚢胞細胞(cystocyte)の群である、卵胞の前駆体
を生じる(de Cuevasら、1997によって概説される)。胚腺の中間
に存在する2つの体細胞性幹細胞は、全ての体細胞性卵胞細胞を生じる(Mar
golisおよびSpradling、1995);精巣におけるそれらの等価
体は、嚢胞(cyst)前駆細胞である。3つの型の有糸分裂的に静止している
体細胞は、幹細胞の近傍に位置する:終糸細胞(terminal filam
ent cell)およびキャップ細胞(cap cell)は、生殖系列の幹
細胞と接触し、一方、鞘内細胞(inner sheath cell)は、よ
り後方に位置し、そして両方の体細胞型と接触する。
【0004】 生殖系列幹細胞の分裂は、固有の機構を含むことが既知である。この分裂およ
び引き続く嚢胞細胞の分裂は、膜骨格タンパク質(例えば、α−スペクトリンお
よびhu−li tai shao(hts)によりコードされるアデューシン
ホモログ)に富むフソーム(fusome)の分離に起因して、物理的に等価で
はない(de Cuevasら、1997によって概説される)。幹細胞に特徴
的な丸いフソーム(すなわち、「スペクトルソーム(spectrosome)
」)は、嚢胞発生の進行として形状を変化させ、異なる段階での嚢胞が同定され
ることを可能にする。bag of marbles(bam)遺伝子は、幹細
胞の娘細胞中でのみ高度に発現される(McKearinおよびSpradli
ng、1990)。嚢胞芽細胞中のBamタンパク質の損失は、それらの分化を
妨げ、生殖系列の腫瘍を形成させる(Drosophilaにおける「腫瘍」は
、増殖している細胞の大きな塊であり、この用語は、これらの細胞が癌性である
ことを暗示しない)。翻訳レギュレーターをコードする遺伝子pumilio(
pum)およびnanos(nos)はまた、生殖系列幹細胞の形成および維持
に有用な役割を果たす(LinおよびSpradling、1997;Forb
esおよびLehmann、1998)。
【0005】 幹細胞の増殖を制御する細胞内シグナルについては、あまり知られていない。
2つの重要なシグナル伝達分子であるHedgehog(Hh)およびWing
less(Wg)(Perrimon、1995;CadiganおよびNus
se、1997によって概説される)は、終糸細胞およびキャップ細胞において
発現される(Forbesら、1996aおよび1996b)。Hhシグナル伝
達は、卵胞細胞(follicle cell)の増殖および分化に重要である
が、これは、本発明がなされた時点に、体細胞性幹細胞またはそれらの娘細胞が
調節されるか否かを決定されていなかった(Forbesら、1996aおよび
1996b)。生殖系列におけるこれらのシグナルの役割は、なおあまり明確で
はない。なぜなら、hhの異所性発現は、生殖系列幹細胞の機能を妨げないよう
であるからである(Forbesら、1996a)。
【0006】 トランスフォーミング増殖因子β(TGF−β)ファミリーのメンバー(TG
F−β、アクチビン、および骨形成性タンパク質(BMP)を含む)は、広汎な
範囲の細胞応答(細胞分裂、生存、および細胞運命の特異性の調節を含む)を誘
発する(Massagueら、1996;Hogan、1996aによって概説
される)。TGF−βは、インビトロ培養物またはインビボ異所性発現のいずれ
かによってアッセイされたのと同様に、幹細胞の増殖を抑制することが以前に同
定された(PotterおよびLeoffler、1990;Morrison
ら、1997)。マウスにおけるBMP−4およびそのレセプターMBPRの不
活化は、ホモ接合性変異体の胚性致死を生じる(Winnierら、1995;
Mishinaら、1995)が、幹細胞に対する効果は、配慮されていない。
【0007】 同様に、Drosophilaにおいて脊椎動物BMP−2/4ホモログをコ
ードするdppは、局所シグナル、ならびに細胞増殖および細胞運命の決定を調
節することによって、初期胚および成体付属体をパターン化する長距離モルフォ
ゲン(morphogen)として機能する(Padgettら、1987;L
awrenceおよびStruhl、1996によって概説される)。dppは
、卵胞細胞の前方サブセット中に発現され、そして卵子発生の後期段階中の卵形
状および極性を確立するために必要とされる(Twomblyら、1996)。
しかし、幹細胞の分化を引き起こす代わりの、それらの維持および増殖における
dppの効果は以前に示されていない。
【0008】 dppシグナル伝達経路における主要な関連物が、同定されている:saxo
phone(sax)およびthick vein(tkv)は、I型セリン/
トレオニンキナーゼ膜貫通レセプターをコードし、一方、puntは、II型セ
リン/トレオニンキナーゼ膜貫通レセプターをコードする(Brummelら、
1994;Nellenら、1994;Pentonら、1994;Xieら、
1994;Ruberteら、1995;Letsouら、1995)。mot
hers against dpp(mad)、Medea(Med)、および
Daughters against dpp(Dad)は、総称してSmad
sとして公知である保存されたTGF−βトランスデューサーのファミリーをコ
ードする(Sekelskyら、1995;Tsuneizumiら、1997
;Hudsonら、1998;Wisotzkeyら、1998;Dasら、1
998;Inoueら、1998)。Smadsは、TGF−βファミリーメン
バーに代わってシグナルを形質導入するか、またはTGF−βシグナル伝達を阻
害するタンパク質である。TGF−βシグナル伝達に対するパラダイムは、いく
つかの実験系から開発されている(Heldinら、1997)。Drosop
hilaにおいて、Dppは、I型およびII型レセプターの両方に結合し、構
成的に活性なPuntキナーゼが、I型キナーゼ(これは、Madをリン酸化す
る)をリン酸化し、そして活性化することを可能にする。リン酸化Madは、M
edを、転写アクチベーターとして核内に移行し、dpp標的遺伝子発現を刺激
する。
【0009】 Dppまたは他のBMP様シグナル伝達活性の増強は、Dad様タンパク質(
例えば、ヒトSmad6およびSmad7)の存在の減少によって達成され得る
。脊椎動物のSmad6およびSmad7は、I型レセプターと相互作用し、そ
して培養細胞およびカエル胚においてTGF−βおよびBMPシグナル伝達を阻
害することが既知である。従って、特定のSmadの阻害によるTGF−βファ
ミリーメンバーの阻害不全は、BMP様シグナル伝達カスケードを促進する。さ
らに、Dppまたは他のBMP様シグナル伝達活性は、DppまたはBMPレセ
プター(例えば、DrosophilaにおけるSax、TkvおよびPunt
、ならびにヒトにおけるBMPレセプター、BMPR−II、ActR−II、
Act−IIB、BMPR−IA、およびActR−I)の機能の増強によって
増強され得る。DppまたはBMPシグナル伝達の他の下流の正のレギュレータ
ーには、DrosophilaにおけるMad、Med、Dad、およびSch
nurriタンパク質、ならびにヒトにおけるSmad1、Smad4およびS
mad5が挙げられる。Padgett(1999)による総説を参照のこと。
【0010】 従って、生殖系列幹細胞の維持および増殖に関与する因子を同定および特徴付
けする先行技術の失敗に取り組むために、本発明者らは、ここで、増殖因子のT
GF−βファミリーのメンバーおよびそのシグナル伝達経路が、思いがけなくこ
の本質的な機能を提供することを開示する。
【0011】 (発明の要旨) 本発明の目的は、骨形成性タンパク質(BMP)シグナル伝達経路を通じたシ
グナル伝達を刺激することによって幹細胞を維持および/または増殖させること
である。この様式で、幹細胞の集団が、インビボまたはインビトロで維持され得
、および/または拡大され得る。
【0012】 生物の生殖系統および体細胞幹細胞を維持するための方法は、骨形成性タンパ
ク質(BMP)シグナル伝達経路を刺激することによって提供される。
【0013】 レセプターに対するBMP特異的な結合と関連するシグナル伝達経路は、セリ
ン/スレオニン残基のリン酸化(例えば、キナーゼ、ホスファターゼ)およびそ
のシグナルを連絡するその経路の成分(すなわち、例えば、転写因子のようなシ
グナルトランスデューサー)(これらは、そのシグナルを連絡する)のカスケー
ドを含み得る。例えば、シグナルは、細胞表面におけるBMP結合から核(ここ
で、下流標的の遺伝子発現は、活性化されるかまたは阻害されるかのいずれかで
ある)へと連絡され得る。従って、BMPシグナル伝達は、この経路において1
つ以上の工程において、またはこのシグナル伝達経路の上流のレギュレーターま
たは下流の標的に影響を与えることによって調節され得る。BMPシグナル伝達
の調節(すなわち、刺激または抑制)は、幹細胞に対して直接、または混合され
た細胞集団(例えば、フィーダー層)において他の細胞を介して間接的に、達成
され得る。
【0014】 この幹細胞の特性は、BMPシグナル伝達を刺激することによって維持され得
る。さらに、幹細胞は、そのような刺激によって量が増加し得、そして/または
寿命が増加し得る。逆に、集団の中の幹細胞または腫瘍細胞は、BMPシグナル
伝達を抑制することによって、総数または濃度が減少し得るか、または検出限界
において消失さえし得る。
【0015】 幹細胞はまた、本発明に従って、増殖および単離され得る。
【0016】 本発明は、幹細胞への限定されたアクセスおよび限定された数という問題に取
り組む。幹細胞を維持および増殖する能力は、これらの希な細胞の遺伝子操作お
よび特徴付けを容易にする。
【0017】 (特定の実施態様の説明) 本発明は、生殖系列幹細胞の分裂を維持および制御するための方法を提供する
。ここでは、dppが必須な役割を提供し得る。さらに、これは、卵巣腫瘍形成
モデルを提供し、ここで、dppの過剰発現は、卵巣幹細胞腫瘍を生成する。ク
ローン分析によって、dppシグナル伝達経路の下流成分(すなわち、シグナル
トランスデューサー)が生殖系列幹細胞において、その分裂および維持のための
細胞自律性に必要であることが実証される。本発明はまた、BMPシグナル伝達
によって細胞のニッチ(niche)の制御のための方法を提供する。ここで、
生殖系列幹細胞は、例えば、周りの体細胞に由来するようであるdppシグナル
によって調節される。
【0018】 幹細胞は、正および負の拡散性の因子によって調節されると考えられるが、こ
れらの因子の殆どの機能は、インビボでは全く実証されていない。本発明は、D
ppが直接Drosophila生殖系列幹細胞を維持するようにシグナル伝達
し、そしてその分裂を刺激する方法を提供する。この例の実験は、幹細胞および
その子孫の機能が多くの細胞世代にわたって直接試験され得るクローン細胞作製
方法によって可能になった。dppシグナルに加えて、dppシグナル伝達経路
において公知の成分は、これらの成体幹細胞において必要であることが示されて
いる。この作用は、幹細胞に特異的であるようである。なぜなら、dpp経路成
分を欠く生殖系列細胞は、16細胞嚢胞を形成し得たからである。この例は、T
GF−β様の分子が幹細胞増殖因子として機能することを実証する。
【0019】 dppシグナル伝達は、幹細胞を維持するために必要とされる。この細胞にお
いて、Dppは、いくつかの異なる様式で作用し得る。シグナル伝達は、生殖系
列幹細胞が、嚢胞芽細胞および生殖体へと分化することを妨害する。この例は、
過剰発現されたdppが幹細胞分化を妨害するが、他方でdpp機能の減少が、
幹細胞分化を促進することを示す。dppシグナル伝達経路の魅力的な候補標的
は、Bamタンパク質である。このタンパク質は、通常、嚢胞芽細胞において、
幹細胞よりもはるかに高いレベルで合成される(McKearinおよびOhl
stein,1995)。生殖系列幹細胞におけるBamの強制的な発現は、d
ppシグナル伝達の減少によって生じる様式に非常に類似した様式でその生殖系
列幹細胞を分化させる(OhlsteinおよびMcKearin、1997)
。従って、dppシグナル伝達は、生殖系列幹細胞においてBamタンパク質レ
ベルを負に調節し得る。2つの他の遺伝子pumおよびnosは、生殖系列幹細
胞を形成および維持するために必要とされる(LinおよびSpradling
、1997;ForbesおよびLhemann、1998)。胚において、こ
の両方のタンパク質は、協同して作用して、標的遺伝子(例えば、hunchb
ack(hb))の翻訳を抑制する(Bakerら、1992;Murataお
よびWharton、1995)。卵巣において、dppシグナル伝達は、No
s/Pum経路に対する効果を通じて、または独立の機構によってBamを下方
制御し得る。しかし、dpp経路を通じた遺伝子が必要である。これは、2つの
核転写因子を含む。このことは、この経路の作用が標的遺伝子の転写に対してで
あることを示唆する。AttisanoおよびWrana(1998)、Kaw
abataら(1998)ならびにPadgettら、(1998)による総説
もまた参照のこと。
【0020】 dppはまた、幹細胞と基底終糸細胞との間の特異化された会合を維持するよ
うに機能し得る。そのような会合は、胚腺(germarium)前に幹細胞を
保持するが、娘生殖系列細胞はすべて、後へと移動し、そして最終的には胚腺を
離脱すると推定されている。本明細書において提示される結果は、幹細胞欠失が
分化に起因することを示す。おそらく、そのレセプターを介したdppシグナル
伝達は、細胞表面に存在する接着分子または幹細胞接着を間接的に促進する細胞
質タンパク質の発現を調節する。
【0021】 dppシグナル伝達はまた、幹細胞分裂を刺激するように作用し得る。dpp
シグナル伝達は、Drosophila発生の間のいくつかの点での細胞増殖を
刺激する。翼成虫盤において、細胞増殖および/または生存のためにこのシグナ
ル伝達は必須である(BurkeおよびBaster、1996)が、他方、こ
のシグナル伝達は、目盤の発生の形態形成の溝におけるG2−M転移を促進する
(Pentonら、1997)。そのような要件に一致して、mad変異体は、
非常に減少した成虫盤、短い盲腸、および小さな脳を有する(Sekelsky
ら、1995)。本明細書において開示されたdppシグナル伝達の必要性は、
成体幹細胞が、増殖を調節するために胚細胞および幼生体細胞の戦略に類似する
戦略を使用することを示唆する。例えば、dppは、幹細胞について細胞分裂の
速度を刺激する。
【0022】 加齢の間、幹細胞の数および活性は、減少すると考えられる。この例は、dp
pシグナル伝達のレベルが生殖系列幹細胞の寿命および分裂速度を制御すること
を示す。減少したdppシグナル伝達は、未熟な幹細胞の欠失を生じた。おそら
く、さらに驚くべきことは、幹細胞からDadタンパク質活性の除去によって生
じるシグナル伝達において予測される増加が、幹細胞がより長期に維持されるこ
とを可能にしたことが観察されたことである。この知見は、dppシグナル伝達
が必要であるばかりでなく、ときに、幹細胞維持について速度の律し得ることを
示唆する。例示的な例は、インタクトな生物において幹細胞寿命が延びる方法を
始めて実証する。
【0023】 これらの結果は、幹細胞の寿命を延長すること(これは、治療的に有意義であ
り得るプロセスである)が可能であり得ることを示唆する。例えば、幹細胞に対
してBMPシグナル伝達を上方制御する薬物は、ヒトおよび動物における受精能
(例えば、生殖系列細胞(基底細胞)の数が減少した患者における雄性受精能)
を増強し得る。そのような薬物は、幹細胞機能の減少によって引き起こされる血
液の状態(例えば、再生不良性貧血、無ガンマグロブリン血症)および関連する
状態を改善し得る。BMPシグナル伝達を増強する薬物は、創傷治癒を増強し得
る。幹細胞の欠失によって生じる加齢関連病理(例えば、脱毛、筋肉質量の欠失
、血液細胞数の減少および皮膚ならびに他の幹細胞依存性組織の加齢)は、BM
Pシグナル伝達を増加させることによって処置され得る。BMPシグナル伝達を
増強する化合物は、生物の平均寿命を延長させ得る。
【0024】 dppシグナル伝達の増強についての一つの方法は、dppインヒビターであ
るDadまたは他のDad様阻害性タンパク質活性(阻害性Smad活性)の生
殖幹細胞からの除去によって容易にされ得る。Dadは、dppシグナル伝達に
よって誘導されるが、次いで、その生産を活性化したその経路自体を下方制御す
るように作用する。この方法はまた、dppシグナル伝達の他の負のレギュレー
ター、および特に阻害性Smadを用いて実施され得る。対照的に、brink
er(brk)は、dppシグナル伝達によって抑制される標的遺伝子である。
なぜなら、これはそれ自体が転写リプレッサーであり、Brkリプレッサーの発
現を抑制させる正味の効果は、Brkで制御された標的遺伝子を上方制御するこ
とであるからである(Minamiら、1999;Campbellら、199
9;Jawinskaら、1999)。これは、dppシグナル伝達の後にBr
k制御された標的遺伝子の生成の増加を生じる。従って、BMPシグナル伝達は
、SmadまたはBMPシグナル伝達によって調節される標的遺伝子の適切な操
作(すなわち、BMPシグナル伝達の刺激または抑制を達成するために適切なそ
れらの効果を増加または減少させること)によって刺激または抑制され得る。D
adおよびBrkの役割は、その経路の残りと同様に、哺乳動物において保存さ
れているようである。
【0025】 幹細胞に対してBMPシグナル伝達を減少させる薬物は、有用な化学療法剤で
あり得る。例えば、BMPシグナル伝達経路を阻害する薬物は、幹細胞の分化を
生じさせることによって奇形ガンに対する有用な治療であり得る。別の例として
、BMPシグナル伝達を阻害する薬物は、継続された成長のためのBMPシグナ
ル伝達に依存する卵巣生殖系列腫瘍に対する首尾よい処置であり得る。
【0026】 幹細胞に対するBMPシグナル伝達の増加または減少によって、幹細胞の集団
を、骨髄移植の前に増大させ、それによって、首尾よい移植のチャンスを増加さ
せ、そして必要とされるドナー骨髄の量を減少させることを可能にし得る。さら
に、BMPシグナル伝達の制御は、患者から除去され、インビトロで増大され、
そして次いで患者に再導入されるべき骨髄におけるもの以外の幹細胞の、損傷ま
たは疾患(例えば、パーキンソン病)によって損傷した組織を修復させることを
可能にし得る。
【0027】 血液腫瘍(例えば、リンパ腫および白血病)を有する患者からの骨髄は、BM
P感受性について試験され得る。BMP感受性について陽性の試験結果によって
、インビボでの抗BMP処置の潜在的な副作用を回避する工程を採ることが可能
になる。例えば、その患者から取り出された骨髄は、BMPシグナル伝達を阻害
し、それによって腫瘍細胞の分化を誘導し、そしてその腫瘍の負荷を減少するこ
とによって、腫瘍細胞が浄化され得る。次いで、浄化された骨髄は、自己骨髄移
植でその患者に返還され得る。そのような分化治療はまた、肉腫、ガン腫および
神経膠腫症のような固形腫瘍について使用されて、腫瘍負荷を減少させ得る。治
療は、単独または他の処置(例えば、迅速に分裂する細胞を優先的に殺傷する化
学療法、高体温、または放射線)および腫瘍の外科的切除とともに使用され得る
【0028】 幹細胞に対するBMPシグナル伝達の上方制御は、例えば、トランスジェニッ
ク動物を作製するために有用である培養物中の生殖系列幹細胞の増殖を可能にし
得る。そのような技術は、従来、発生および疾患の遺伝的モデルとしては使用さ
れてこなかった生物において特に有用である。
【0029】 幹細胞ニッチを、dppのようなTGF−βメンバーの過剰発現によって増大
させる能力は、希なヒトの幹細胞、あるいは任意の種の希な幹細胞が、宿主とし
て作用するように遺伝子操作された、生存するDrosophilaへの移入後
に精製および増殖されることを可能にし得る。
【0030】 生物医学的な研究および処置に加えて、本発明の他の用途は、農業および野生
動物の保存を含む。幹細胞は、ヒト、霊長類(例えば、ボノボ、チンパンジー、
ゴリラ、マカク、オランウータン)、伴侶(companion)動物(例えば
、イヌ、ネコ)、および農場/実験室の動物(例えば、ウシ、ロバ、ヤギ、ウマ
、ブタ、ヒツジ;ヒキガエル(frog)、サンショウウオ、カエル(toad
)のような両生類;ニワトリ、アヒル、シチメンチョウのような鳥類、コイ、ナ
マズ、メダカ、サケ、テラピア(tilapia)、マグロ、ゼブラフィッシュ
のような魚類;ノウサギ、ウサギのようなウサギ目動物;マウス、ラットのよう
なげっ歯類)において提供され得るか、またはそれらから得られ得る。
【0031】 幹細胞は、適切なニッチ中または培養物中にて維持および/または維持され得
、そして核移入を通じて、子孫生物をクローニングするための核の供給源、また
は胚の凝集を通じて、モザイク生物の増殖のための細胞供給源として使用され得
る。従って、Dppまたは関連BMPは、動物をクローニングするために、イン
ビトロまたはインビボで幹細胞を増殖させるための手段を提供する。
【0032】 BMPシグナル伝達は、BMPシグナル伝達経路、または異なる型のBMP、
BMPレセプター、および互いに機能的に当価なSMADの進化的に多様化した
成分の能力のために、1つの型のBMPおよびBMPレセプターの型のみに限定
されないようである。例えば、Dpp/Tkvシグナル伝達とGbb/Saxシ
グナル伝達との間にはクロストークが存在するようであり(Haerryら、1
998)、そしてあるシグナルトランスデューサーは、異なるシグナル伝達経路
で作用する(Lagnaら、1996)。例えば、BMPの混合物は、規定され
た培養培地に添加され得るか、または馴化培養培地に存在し得、その結果、Dp
pおよびGbbは、1よりも多くの異なる型のBMPレセプターを通じて、BM
Pシグナル伝達を開始する際に作用する。別の例としては、1つの型のシグナル
トランスデューサーは、1よりも多くの異なる型のBMPレセプターを通じて、
シグナル伝達を刺激し得る。
【0033】 BMPシグナル伝達を刺激するために、正のシグナルトランスデューサーは、
発現において増大され得るか(例えば、より多くの転写物および/または翻訳産
物)、あるいはそのシグナルトランスデューサーの活性を増大させるために機能
獲得表現型に変異され得、一方、負のシグナルトランスデューサーは、発現にお
いて減少され得るか(例えば、より少ない転写物および/または翻訳産物)、あ
るいはそのシグナルトランスデューサーの活性を減少させるために機能喪失表現
型に変異され得る。あるいは、BMPシグナル伝達の下流の標的遺伝子は、BM
Pが、標的遺伝子の上流に結合するそのUASまたはエクジソンレセプターを結
合するトランスアクチベーター様GAL4を使用する遺伝子工学によってそのレ
セプターに結合することなく、直接的に活性化または阻害され得る。マウスにお
ける同様の技術は、テトラサイクリンまたはFK506を用いる誘導を含む。
【0034】 別の方法は、細胞中で内因性BMP活性を増大させるか、または細胞外で内因
性BMP活性を増大させることである(特に、リガンドがBMPシグナル伝達に
おける律速成分である場合)。例えば、BMP発現は、幹細胞中で増大され得、
そしてオートクライン機構を通じてBMPシグナル伝達を刺激し得る。あるいは
、BMP発現は、非幹細胞またはフィーダー細胞中で増大され得、次いで、BM
P活性が分泌され、そして幹細胞によって取り込まれるか、あるいは幹細胞の表
面との接触へともたらされる。BMPはまた、細胞外空間または培養培地に添加
され得る。BMP活性は、動物または培養物中に通常存在する量と比較した場合
、少なくとも約10%、50%、100%、または200%程度、BMPシグナ
ル伝達を刺激するために増大され得る。
【0035】 維持され得る幹細胞の特性は、以下を含む:多能性、全能性、1以上の分化し
ている細胞系列へと方向付けること、複数の異なる型の先祖細胞および/または
分化した細胞を生じること、生殖系列に寄与すること、およびそれらの組み合わ
せ。従って、幹細胞の増殖および/または生存は、BMPシグナル伝達の減少ま
たは除去の後の適切な条件の下で分化する能力を保持しつつ、分化のプログラム
へと方向付けることなく、維持され得る。より簡単には、集団中の幹細胞は、非
幹細胞に関する総数または濃度において拡大され得るか(すなわち、量の増大)
、幹細胞の誕生とその死またはアポトーシスとの間の時間において延長され得る
か(すなわち、寿命の増大)、あるいはそれらの組合せであり得る。逆に、集団
中の幹細胞または腫瘍細胞は、BMPシグナル伝達を抑制することによって、総
数または濃度において減少され得るか、あるいはさらに、検出限界にて除去され
る。
【0036】 本発明に従って作製された幹細胞は、全能性または多能性、雄性または雌性、
生殖系列または体細胞性、分裂性または静止状態、脊椎動物または非脊椎動物で
あり得、インサイチュで存在するかまたは単離されてい得、分化細胞から部分的
または実質的に精製されてい得、およびそれらの組合せであり得る。増殖してい
る幹細胞は、二倍体であり、減数分裂に進入し、そして配偶子発生のより後期の
段階は、本発明によって妨げられる、雄性または雌性の生殖系列の幹細胞につい
ての分化プログラムの一部である。幹細胞は、精巣、卵巣、特にDrosoph
ilaの精巣および/または卵巣小管の頂端(apical tip)、あるい
は他の成体組織または胚性組織中に存在し得るか、またはそれらから得られ得る
。分化させることによって、幹細胞は、造血系、免疫系、または神経系などの細
胞に分化し得る。好ましくは、本発明によって維持および/または増殖される幹
細胞は、より遅く分化する能力を保持し、それによって卵子形成または精子形成
、3つの全ての胚葉(すなわち、内胚葉、中胚葉、外胚葉)、複数の分化した細
胞系列、およびそれらの組合せに寄与する。
【0037】 体細胞は、卵巣由来の終糸細胞、キャップ細胞、および鞘内細胞、ならびに精
巣由来のhub細胞を含む。好ましくは、本発明は、維持および/または増殖の
間に、生殖系列細胞に関する集団中の体細胞の割合を減少させる。周囲の体細胞
または体細胞を含むフィーダー層によって規定されるニッチは、生殖系列細胞を
維持および/または伝播するために、細胞の接触および他の細胞外シグナルを提
供し得る。例えば、培養細胞を遺伝的に操作して、BMP(これは、次いで、幹
細胞上のそのレセプターに結合する)を発現および分泌させることによって、特
定の必須の細胞外シグナルを提供するフィーダー層が、提供され得る。
【0038】 細胞集団は、生殖系列または体細胞系列(または混合)、雄性または雌性、分
裂性または静止状態、脊椎動物または非脊椎動物であり得、インサイチュで存在
するかまたは単離されてい得、部分的または実質的に精製されてい得、およびそ
れらの組合せであり得る。好ましくは、細胞集団は、1以上のBMPを発現する
細胞を含み;より好ましくは、BMPは、非幹細胞により分泌され、そして幹細
胞のレセプターに結合してBMPシグナル伝達を刺激する。従って、本発明の幹
細胞は、BMP、特にDppまたはホモログに対するレセプターを含むか、ある
いは少なくともBMPシグナル伝達に応答性である。
【0039】 哺乳動物、両生類、鳥類、および魚類に加えて、他の生物(例えば、蠕虫(例
えば、Helminthes、Nematodes)、および昆虫(例えば、A
nopheles、Drosophila)のような無脊椎動物)が、本発明に
おいて使用され得る。特に、BMPシグナル伝達経路の成分、上流のレギュレー
ターの成分、および下流の標的の成分の比較は、それらが高度に保存されている
ことを示す(BitgoodおよびMcMahon、1995;Padgett
ら、1998)。従って、本発明は、Drosophila melanoga
sterに対するその有用性に限定されるべきではない。dppの保存を示し(
Newfeldら、1997)、かつ有用なようである他の種は、D.simu
lans、D.pseudoobscura、およびD.virilisである
。よく研究されている後生動物亜界の種について、dpp様遺伝子が同定されて
いる。
【0040】 dpp、glass bottom boat(gbb)、およびscrew
(scw)の哺乳動物ホモログは、BMP−2/4、BMP−5/8、およびB
MP−6としてそれぞれ同定されている(Hoffmann、1997;Raf
teryおよびSutherland、1999;Whartonら、1999
)。BMP−2およびBMP−4を特異的に結合する哺乳動物のセリン/トレオ
ニンキナーゼレセプターは、同定されている(Yamajiら、1994)。T
GF−βファミリーの他の関連メンバー、それらのレセプター、またはそれらの
シグナル伝達経路の他の成分もまた、本発明に使用され得る。米国特許第5,0
11,691号、同第5,013,649号、同第5166,058号、同第5
,168,050号、同第5,216,126号、同第5,324,819号、
同第5,354,557号、同第5,653,372号、同第5,639,63
8号、同第5,650,276号、および同第5,854,207号もまた参照
のこと。
【0041】 さらに、変異分析および構造−機能の相関の決定は、Dppシグナル伝達に保
存された残基および必須な残基を同定した(Whartonら、1996)。細
菌で発現されたDppは、再び折り畳まれ、次いで、生化学的および生物物理学
的に特徴付けられる(Groppeら、1998)。BMPファミリーのメンバ
ーのホモログ、それらのレセプター、およびこのシグナル伝達経路の他の成分は
、アミノ酸が比較される場合の高レベルの構造の保存性によって、ならびに/あ
るいはホモログが変異体の表現型をレスキューするか、またはそれ以外の方法で
BMP活性を置換する場合の機能の保存性によって同定され得る。
【0042】 細胞型は、マーカーによって同定されており、そして遺伝的変異体および発生
研究によって十分に特徴付けられる。幹細胞は、インタクトな生物の部分として
インサイチュで提供され得るか、またはそれらは、インビトロで培養され得る。
生殖系列幹細胞および周囲の細胞は、成体(例えば、卵巣、精巣)または胚に由
来し得る。インビトロの培養について、細胞は、生物から直接的に得られ得るが
(すなわち、初代培養)、これは、それらの数を拡大(例えば、最初の数よりも
少なくとも2倍、10倍、または100倍)するために、数回の培養(例えば、
少なくとも5回、10回、または20回)を通じて、細胞を継代することが便利
である。
【0043】 幹細胞は、BMPシグナル伝達経路を刺激することによって細胞数を増大させ
るか、または増大させずにドナー生物から単離し得;1以上の化学物質での処理
するか、遺伝物質を導入するか、別の細胞と融合させるか、1以上の遺伝子を変
異させるか、所望の遺伝子型または表現型を選択するか、あるいはそれらの組合
せによって、維持および/または増殖のための条件下で、一過性のインビトロ培
養の間に操作され得;ならびにドナーと同一の宿主中に幹細胞を戻して移植する
か(すなわち、自系移植)、ドナーと同様であるが異なる宿主中に幹細胞を戻し
て移植するか(すなわち、同種異系移植)、あるいはドナーとは完全に異なる宿
主中に幹細胞を戻して移植する(すなわち、生体異物移植)。インビトロ培養条
件で、トランスフェクションおよび部位特異的組換え、ならびに細胞または核の
移植によるDrosophilaの遺伝子工学が、当該分野において公知である
【0044】 Drosphilaについて、精巣当たり10個の生殖系列幹細胞および卵巣
当たり32〜48個の生殖系列幹細胞(すなわち、卵巣当たり約16個の卵巣小
管、および卵巣当たり約2または3個の生殖系列幹細胞が存在する)のみが存在
する。本発明は、生体または胚中でインビボで産生され、次いで、インビトロで
培養された、非常に増大した数の幹細胞を提供する。細胞のインビトロ培養は、
まず、各々の卵巣小管中に多数の生殖系列幹細胞を有するハエを作製することに
よって実行され得る。次いで、卵巣は、無菌の培養培地中に外科的に取り出され
得、そして生殖細胞が放出され得る(それらは、接着せず、それによって脱凝集
する必要がない)。あるいは、脱凝集した胚もまた、生殖系列幹細胞の供給源と
して使用され得る。胚当たりの生殖細胞の数は、卵巣および精巣当たりの数と同
じであるが、100,000個の胚を用いて開始することが可能であるが、数百
の性腺が、容易に得られ得る。Schneider(1972)は、Droso
phila由来の細胞株の誘導を示す。
【0045】 Drosophila細胞は、Dpp(例えば、Panganibanら、1
990)またはHh(例えば、Leeら、1994)を発現する細胞のフィーダ
ー層を含有する小さなウェル、あるいは可溶性因子を分泌する細胞を含む培地を
馴化するか、または組換え産生された可溶性因子(例えば、Groppeら、1
998に従って産生されたDpp)を単純に添加することによって調製される培
養培地中にプレートされ得る。例えば、Schneider’s Drosop
hila培地のような、Drosophila細胞を増殖させるためのインビト
ロ培養培地が市販されている。Drosophila細胞はまた、哺乳動物の組
織培養培地中に適応および増殖され得る(Spradlingら、1975;L
engyelら、1975)。Drosophila細胞は、哺乳動物細胞のよ
うにトランスフェクトされ得る(Burkeら、1984)。体細胞、胚細胞(
ES)、および胚細胞(EG)中の相同組換えのための構築物およびストラテジ
ーは、インビトロで培養されたDrosophila細胞を用いる用途のために
適応され得る(Capecchi、1989;KollerおよびSmithi
es、1992)。次いで、培養細胞またはそれらの核は、Drosophil
a中に移入され得る(Okadaら、1974;Van Deusen、197
7)。
【0046】 生殖系列幹細胞を培養する以前の試みは、発生の特定の段階に各胚中に存在す
る40個の生殖系列細胞を利用した。しかし、dppは提供されず、そしてこれ
らの細胞は、培養物中で分化しなかった(Allisら、1979)。このよう
な培養物中でBMP発現を誘導すること、または外因性のBMPをそれらに添加
することは、インビトロで生殖系列幹細胞を維持し、かつ増殖させる単純な様式
である。
【0047】 BMPはまた、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、白血病阻害因子(L
IF)、およびSl因子(SF)のような既知の幹増殖因子と置き換えて、また
は組み合わせて使用され得る。従って、本明細書中で観察されるようなBMP活
性はまた、米国特許第5,453,357号および同第5,690,926号に
教示される技術を使用して実証され得る。
【0048】 身体外でのみ行われるBMPシグナリングの刺激を用いる幹細胞のエキソビボ
培養は、生物におけるBMPシグナリングの全身的効果を避けるために好ましい
【0049】 血管のまたは器官の操作は、内皮または実質にそれぞれ分化する幹細胞を用い
て、幹細胞がコートされたか、もしくは浸透された移植可能な支持体(例えば、
ステント、ホローファイバー、または粒子)とともに、またはこのような支持体
なしで達成され得る。自己に移植されておらず、そして組織不適合性を認識する
免疫系を有する生物中にある場合、同種異系組織または異種組織の移植は、宿主
の免疫抑制(例えば、シクロスポリンAまたはFK506処理)を必要とし得る
。副腎、骨髄、脳、肝臓、卵巣もしくは精巣、膵臓、末梢ニューロンもしくはグ
リア、赤血球もしくは白血球、骨格筋もしくは平滑筋、皮膚、甲状腺、またはこ
れらの組合せの活性および/あるいは構造を有する組織への、幹細胞の分化が好
ましい。
【0050】 1つ以上の幹細胞の遺伝子は、化学的もしくは環境的誘導、アンチセンス、リ
ボザイム、キメラ修復ベクター、RNAi、またはランダム/配列特異的挿入に
よって活性化または阻害され得る。遺伝子の異所性発現は、特定の空間的または
時間的様式、模倣的な病原性状態または疾患状態、あるいは内在性遺伝子におけ
る変異の表現型模写において制御され得る。相同組換えは、遺伝子ノックアウト
または置き換えを達成するために好ましい(例えば、米国特許第5,569,8
24号、同第5,602,307号、同第5,614,396号、同第5,68
3,906号、および同第5,830,682号を参照のこと)。例えば、幹細
胞は、ポリヌクレオチドを用いてトランスフェクトされ得、ポリヌクレオチドま
たはその部分は、無作為な部位に、または配列特異的な様式で、トランスフェク
トされる幹細胞のゲノムに組み込まれ、目的の遺伝子の遺伝子座における相同組
換えは選択され、そして選択された幹細胞は宿主生物に移植される。ポリヌクレ
オチドの物理的導入(例えば、微粒子銃、エレクトロポレーション、マイクロイ
ンジェクション)が好ましい。あるいは、Pエレメントの挿入は、遺伝子を破壊
するために本発明に従って維持され、そして/または増殖された幹細胞において
インビボまたはインビトロで遺伝的に操作され得る(ZhangおよびSpra
dling、1994;Spradlingら、1995を参照のこと)。
【0051】 TGF−βシグナリングは、Drosophila精子形成の間に生殖系列嚢
胞の増殖を制限することが示されてきた(Matunisら、1997)。pu
ntおよびshn機能が、生殖細胞を取り囲む体細胞細胞のクローンにおいて除
去された場合、嚢胞は、4回の有糸分裂後に分裂を継続する(Matunisら
、1997)。しかし、これらの研究者らは、雄の生殖系列幹細胞においてこの
経路が機能するか否かについて取り扱っていなかった。胚盤(embryo d
isc)および成虫盤において、puntおよびshnは、dppの下流で機能
し得る(Ruberteら、1995;Letsouら、1995;Arora
ら、1995;Griederら、1995)が、dppまたは別のTGF−β
ファミリーメンバーがシグナルを送るために使用されるか否かは未知であった。
雄の生殖系列幹細胞のdppの下流の成分における変異体のクローン分析は、卵
巣において本明細書中で報告されるものと同様に、Dppおよび/または他のT
GF−β様分子が精巣におけるそれらの分裂および維持のために必要とされるか
否かを示し得る。
【0052】 マウスにおいて、BMPファミリーメンバーであるBMP−2およびBMP−
4は、75%より大きい同一性を伴って、dppに最も密接に関連し、そして胚
においてdpp変異体をレスキューするために機能し得る(Padgetら、1
993)。最近、両方の遺伝子は、相同組換えによって不活性化されたが、しか
しホモ接合性の胚は、あまりに初期に死滅するので生殖腺における可能な機能を
評価できなかった(Winnierら、1995;ZhangおよびBradl
ey、1996;Hoganによる概説、1996b)。本発明者らの知見と一
致して、Lawsonら(1999)は、BMP−4は、始原生殖細胞の数に影
響を与え;さらに、BMP4は体細胞組織において必要とされ、そしておそらく
、生殖系列細胞においてBMPシグナル伝達を刺激したが、このことは直接に示
されなかったことを報告している。2つの他のBMPファミリーメンバー、BM
P−8AおよびBMP−8Bの精子形成の間の役割は試験されてきた(Zhao
ら、1996;1998)。BMP−8Bは、初期の成熟期において雄の生殖系
列細胞増殖の再開のために必要であり、そして成体における生殖系列細胞の生存
のために必要であるが、一方BMP−8Aは、成体の精子形成の維持において役
割を果たす。
【0053】 「ニッチ」仮説は、幹細胞が最適な微小環境すなわち「ニッチ」に存在するこ
とを仮定する(Schofield、1978)。幹細胞が分裂する場合、1つ
の娘細胞のみがニッチに残存し、一方他の娘細胞は分化される。ニッチ中の幹細
胞は、自己再生の高い可能性を有するが、しかし、分化の経路に進入する可能性
は低い。このモデルは、幹細胞が、多数のインビトロの培養系において増殖およ
び分化のために増殖因子の添加を必要とするという観察と一致する(Potte
rおよびLoeffler,1990;Morrisonら、1997)。ニッ
チにおける微小環境の分子的性質は、なお、任意の系において規定されなければ
ならないが、Drosophila胚腺は、そのようなニッチを含むようである
。以前に、幹細胞は、末端フィラメントおよびキャップ細胞(これらの両方がh
hを発現する)に隣接するが、一方後者のみがarmadillo(arm)お
よびwgを発現する(Forbesら、1996a;1996b)。幹細胞の娘
細胞は、後部により多く存在し、そしておそらく、patched(ptc)お
よびhhを発現する胚腺の鞘内細胞と直接的に接触する(Forbesら、19
96b)。構造およびシグナルにおけるこの非対称性は、生殖系列幹細胞がそれ
らの娘細胞からの異なるシグナルのレベルを受け取ることを可能にし得る。ニッ
チの存在と一致して、最近、際だった変異幹細胞を欠失した胚腺における2つの
野生型幹細胞がときどき観察された。このことは、空になったニッチが再び占有
されたことを示唆する。
【0054】 生殖系列幹細胞ニッチの存在はまた、局所的なdppが過剰発現された場合に
、幹細胞増殖と一致する。これらの条件下において、ニッチのサイズは、実質的
に拡大され得る。逆に、dpp機能の減少は、ニッチが生殖系列幹細胞を維持す
る能力を弱め得、このことは損失を加速させることをもたらす。これらの結果は
、dppが必須のニッチシグナルであることを示唆する。しかし、dppは、取
り囲む体細胞からの他のシグナルと相互作用し、生殖系列幹細胞のために機能的
なニッチを作るようである。それにも関わらず、鍵となるニッチシグナルとして
のdppの同定は、インビトロにおけるDrosophila生殖系列幹細胞を
培養する取り組みを非常に促進する。
【0055】 技術的な制限により、以前は、生殖系列幹細胞によって受容されるdppシグ
ナルの供給源の同定が妨害されてきた。理想的には、無効であるdpp対立遺伝
子のクローンの分析は、細胞がシグナルを産生することを示す。しかし、幹細胞
に隣接する体細胞は、卵巣の発達の初期に分裂を停止し、そして特定の小さなク
ローンの誘導を困難にする。胚腺におけるこのdpp発現のパターンはまた、シ
グナルの起源についてのいくつかの洞察を与える。しかし、唯一利用可能なdp
p−lacZ融合株および全マウントインサイチュ実験が、胚腺における発現を
検出することに失敗したが、後期段階の卵チャンバーにおける卵胞細胞発現が観
察された。本発明者らは、ここでニッチ中の体細胞がdppを発現することを示
す。多くの系において、低いレベルのdpp発現が、生物学的効果について十分
であることが公知であり、ゆえに本発明においてごく低いレベルのBMPを提供
することが十分であり得る。
【0056】 Drosophilaの脚、触角、および生殖盤(genital disc
)において、dppおよびwgは、hhによって前部の区画に誘導され、そして
dppおよびwgの相互の抑制は、それらを、それらの適切なドメインに制限す
る(BrookおよびCohen、1996;JiangおよびStruhl,
1996;ChenおよびBaker,1996)。脊椎動物の肢の発達におい
て、sonic hedgehog(shh)は、BMP−2の発現を誘導し得
る(JohnsonおよびTabin,1995)。体細胞の末端フィラメント
、キャップ、および鞘内細胞はhhを発現し、そして生殖系列幹細胞に隣接して
存在する(Forbesら、1996a、1996b)。wgおよびdpp発現
は、hhによって誘導され得、そして生殖系列幹細胞の増殖および維持のために
それらの細胞へシグナリングされ得る。データは、これらのシグナル、および、
おそらく前部体細胞由来のさらなるシグナルが、胚腺の先端部の生殖系列幹細胞
についてのニッチを規定することを示す。従って、ヘッジホッグ(hedgeh
og)シグナリングを改変する薬剤が使用されて局所的BMPシグナリングを変
化させ得、それによって幹細胞の維持および/または増殖を調節する。
【0057】 (実施例) (実施例1:異所性のDpp発現は、生殖細胞腫瘍を誘導する) DppがDrosophila成体卵巣における生殖系列幹細胞を調節し得る
か否かを評価するために、Dppを、hsp70−GAL4(hs−GAL4)
およびUAS−dpp(BrandおよびPerrimon,1993)を使用
して、胚腺中で異所的に発現させた。胚腺中の異なる細胞型を区別するために、
本発明者らは、抗Hts抗体および抗Vase抗体を使用して、体細胞および生
殖系列細胞を、それぞれ可視化した。抗Hts抗体はまた、胚腺の生殖系列細胞
中のスペクトロソーム(spectrosome)およびフソーム(fusom
e)を認識する(de Cuevasら、1997を参照のこと)。
【0058】 生殖系列幹細胞および嚢胞芽細胞のみが、大きな円形のスペクトロソームを有
するが、一方、嚢胞は、特徴的な分枝したフソームを有する。野生型胚腺におい
て、2つの生殖系列幹細胞は、嚢胞芽細胞よりもより前方に位置する。胚腺の領
域1および2a(すなわち、前方の半分)において成長している嚢胞(これは、
生殖系列幹細胞および嚢胞芽細胞よりもより後方である)は、フソームによって
連結される。胚腺の領域2bおよび3において、レンズ型と円形の嚢胞の両方は
、胚腺を横切って広がり、そして体細胞性卵胞細胞によって取り囲まれる。フソ
ーム構造は、これらのより古い嚢胞において変性を始める。
【0059】 熱ショックに供したhs−GAL4雌由来の胚腺および熱ショックの非存在下
でhs−GAL4およびUAS−dppを有する雌由来の胚腺は、野生型と区別
できなかった。これらの熱処理した胚腺において、対応する野生型の胚腺領域1
および2aを満たす大きな単一の生殖系列細胞は、スペクトロソームを含んだが
、嚢胞形成の証拠を示さなかった。対応する野生型領域2bおよび3において、
レンズ型と円形の両方の嚢胞が観察された。これらの嚢胞は、おそらく分化した
嚢胞芽細胞に由来するか、または最初の熱ショックの前に形成された嚢胞である
【0060】 この解釈と一致して、熱ショックの4〜5日後に、対応する領域1および2に
おけるすべての生殖系列細胞は、スペクトロソームを含む単一の細胞であった。
そして分枝したフソームを含む成長している嚢胞は、ほとんど検出されなかった
。体細胞性卵胞細胞のみが検出され、生殖系列細胞は存在しなかった。この表現
型は、bamおよびbenigm gonial cell neoplasm
(bgcn)変異の表現型に非常に類似している(McKearinおよびSp
radling,1990;GateffおよびMechler,1989)。
【0061】 ここで、卵巣小管当たり2〜3の生殖系列幹細胞の野生型の数ではなく、何ダ
ースものその細胞が単一の卵巣小管中に存在した。さらに、その存在する数は、
3日後よりも4〜5日後が2〜3倍より多かった。卵巣あたり16の卵巣小管、
および雌のハエあたり2つの卵巣が存在するので、上記の数のすべてに32をか
けて、ハエ当たりの雌の生殖系列幹細胞の数を計算する。生殖系列幹細胞は、d
ppの誘導後に増殖して、大量の正常の外見の、正常に機能する生殖系列幹細胞
を形成する。増殖している細胞は、(1)一般的なサイズおよび外見、(2)フ
ソームの形態、(3)生殖細胞特異的遺伝子vasaの発現、(4)細胞質Ba
mの発現の非存在(すなわち、生殖系列幹細胞が嚢胞芽細胞に分化したという高
感度の指標)、および(5)dppの除去後の生殖系列細胞についての正常な経
路に沿って分化する能力、に基づいて生殖系列幹細胞であることを示した。
【0062】 (実施例2:Dpp誘導腫瘍細胞は、生殖系列幹細胞に似ている) 嚢胞芽細胞および初期有糸分裂嚢胞は、幹細胞から区別し得る。なぜなら、前
者は、嚢胞芽細胞段階から8細胞段階の嚢胞段階の終わりまで細胞質Bamタン
パク質を発現するからである。抗BamCおよび抗αスペクトリンを用いる野生
型胚線の免疫蛍光染色は、生殖系列幹細胞ではなく、嚢胞芽細胞および成長して
いる嚢胞が、細胞質Bamタンパク質を発現することを実証する。抗BamCお
よび抗αスペクトリンを用いるdpp誘導胚線の免疫蛍光染色は、増幅した単一
の生殖系列細胞が、細胞質Bamタンパク質を発現し損なったことを示した。d
pp誘導胚腺において、増殖している嚢胞であるように見える、いくつかの、ま
れなBamC陽性細胞が観察された。これらのデータは、dpp過剰発現によっ
て誘導される、大量の単一の生殖系列細胞は、分化した嚢胞芽細胞よりもむしろ
幹細胞に類似することを示す。
【0063】 BamC染色のこの非存在は、蓄積した単一の生殖系列細胞の増殖の停止によ
るものではなかったことを実証するために、dpp誘導胚腺を、1時間のヌクレ
オチドアナログBrdUの取り込みの後に、抗BrdU抗体および抗αスペクト
リン抗体を用いて染色した。細胞周期のS期において有糸分裂的に活性である細
胞は、BrdUを取り込み得る。dpp誘導胚腺において、いくつかの単一の生
殖系列細胞は、BrdUを取り込んだ。このことは、これらの単一の生殖系列細
胞が増殖の停止を有さなかったことを示す。
【0064】 これらの結果は、dpp過剰発現によって誘導された腫瘍細胞が分裂を続け、
そしてそれらのフソーム形態およびBamタンパク質の非存在において幹細胞に
類似することを示す。これらは、生殖系列幹細胞の数の増加を表す。
【0065】 これらのdpp誘導幹細胞が分化する能力を保持するか否かを決定するために
、それらの挙動が試験された。hs−GAL4/UAS−dpp Drosop
hilaを、4日間の熱ショック処理によって誘導し、次いで抗Hts抗体およ
び抗Vase抗体を用いる染色の前に、2または4日間室温に戻した。温度を下
げた2日後から形成し始め、そして腫瘍における最も後部の領域において常に最
初に形成した生殖系列嚢胞を観察した。多くの16細胞嚢胞が、室温に戻した4
日後に見られた。それらの位置および数に基づくと、これらの嚢胞は、低い温度
への移動後に起こる幹細胞分裂に由来するというよりはむしろ、dpp誘導され
た生殖系列幹細胞に由来するに違いない。しかし、すべてのdpp誘導された生
殖系列幹細胞が、完全な嚢胞を形成し得たわけではなかった。なぜなら、いくつ
かの卵巣小管は、領域3において、1、2、4、または8細胞の嚢胞を有したか
らである。
【0066】 (実施例3:過剰発現したdppは、生殖系列幹細胞に直接作用する) 2つの異なるモデルが、生殖系列幹細胞に対するDppの効果を説明し得る:
生殖系列幹細胞への直接シグナリングおよびリレーシグナリングである。リレー
シグナリングモデルは、異所性のDppが生殖系列幹細胞を取り囲む体細胞にお
いて第2のシグナルのスイッチを入れることを予測する。
【0067】 リレーモデルを直接試験するために、hs−GAL4/UAS系を使用して、
I型Dppレセプターを活性化した。hs−GAL4/UAS系は、成体卵巣中
の体細胞において高レベルの標的遺伝子を発現し得るが、生殖系列細胞では発現
し得ない(Manseauら、1997)。活性化されたtkv(tkv*)(
Nellenら、1996)および活性化されたsax(sax*)(Desら
、1998)の両方は、多くの発生プロセスにおいてdppシグナリング経路活
性化を模倣することが示された。
【0068】 胚腺の体細胞における活性化されたI型Dppレセプターの過剰発現は、異所
性のdpp発現の効果を模倣しない。以下の遺伝子型のハエを3日間熱ショック
処理に供し、引き続いて胚腺を抗Vase抗体および抗Hts抗体を用いて標識
した:hsGAL4/UAS−sax*、hsGAL4/UAS−tkv*、およ
びUAS−sax*/+;hsGAL4/UAS−tkv*。異なる染色体部位で
UAS−tkv*挿入およびUAS−sax*挿入を含む2つの独立した系統を試
験した。活性化されたsax*もしくはtkv*または両方が、hs−GAL4
(これは、dpp過剰発現においての同じドライバーである)を用いて胚腺の体
細胞において過剰発現された場合、生殖系列幹細胞増殖は観察されなかった。し
かし、卵チャンバーの出芽は、hsGAL4/UAS−tkv*系統およびUA
S−sax*/+;hsGAL4/UAS−tkv*系統における領域3嚢胞中で
頻繁に影響を受けた。このことは、体細胞性卵胞細胞機能が、後期段階では欠損
していたことを示唆する。
【0069】 これらの結果は、リレーシグナリングが、そのメカニズムに関わらず、それ自
体で生殖系列幹細胞分化を阻害するには十分でないことを示唆する。過剰発現し
たDppは、リレーシグナルによって作用するようには見えないので、それは、
機能的Dppレセプターを介して生殖系列細胞に直接作用して、嚢胞芽細胞分化
を阻害するようである。
【0070】 (実施例4:DppおよびSaxは、生殖系列幹細胞の分裂および維持のため
に必要とされる) dppの役割を直接試験するために、本発明者らは、DppおよびDppレセ
プターsaxの機能を減少させる変異を試験した。Dppシグナリングは、Dr
osophila発生の間、多くの点において必須である。dpp変異のいくつ
かの温度感受性対立遺伝子の組合せ(dppe90/dpphr56およびdpphr4
dpphr56を含む)が、18℃において成体で発生し得る(Whartonら、
1996)。これらのヘテロ対立遺伝子の組合せは、28℃にシフトした後に、
本発明者らが胚腺中でdppの変異体表現型を試験することを可能にした。28
℃への温度シフトの1週間後試験したこれらの遺伝子型由来の胚腺の40〜50
%は、ヘテロ接合体よりも有意に小さかったが、より激しい減少は、より高温に
維持されたより加齢した雌において見られた。幹細胞が失われたか否かを決定す
るために、変異型の雌由来の卵巣を、抗Hts抗体および抗Vase抗体を用い
て染色し、そして各々の卵巣小管における幹細胞の数を直接計数した(表1)。
試験した遺伝子型の両方の生殖系列幹細胞数において、2週間にわたって劇的な
減少が存在した。2つのうちでより強かった、dpphr4/dpphr56)は、2
週間以内にほとんど完全に幹細胞を除去した。この組合せは、多くの少数の成体
のハエを産生し、そしてdppe90/dpphr56よりもより激しく胚の発生を破
壊することが公知である(Whartonら、1996)。
【0071】 変異が生殖系列細胞に特異的に作用する場合、嚢胞細胞および嚢胞は、分裂お
よび発達を継続する。このことを試験するために、変異体の卵巣小管におけるフ
ソームの形態を分析した。幹細胞数に対する弱い効果を有するDppレセプター
変異saxP由来の卵巣小管もまた、研究された。幹細胞損失の時期は、個々の
胚腺の間で変化することが予想される。なぜなら、幹細胞の損失は、無作為なプ
ロセスであるからである(MargolisおよびSpradling,199
5)。
【0072】 1週齢saxP/+およびdppe90/CyOP23雌由来のコントロール胚腺
を、抗Vase抗体およgび抗Htsを用いて二重標識した。両方の場合におい
て、dpp対立遺伝子またはsax対立遺伝子についてヘテロ接合性である1週
齢の雌由来の胚腺は、概してその後部において2つの幹細胞を含んだ。変異胚腺
をまた、抗Vase抗体および抗Hts抗体を用いて二重標識した。
【0073】 1週齢雌由来の変異体saxp/saxp胚腺は、野生型よりも小さかった。1
つの場合において、2つの幹細胞が観察されるが、嚢胞の数は減少した。別の場
合において、1つの幹細胞が残存し、そして領域1および2aは、領域2bの開
始によって示されたようにより減少した。このことは、幹細胞が失われかつその
分裂が遅延したことを示す。
【0074】 2週齢変異体saxp/saxp雌における多くの胚腺は、両方の幹細胞を失い
、そして有糸分裂性嚢胞が存在しないが、後期の発生段階での嚢胞および卵チャ
ンバーは残存する(例えば、領域2bに対応する最も後部の嚢胞)。
【0075】 変異体dppe90/dpphr56雌は、28℃でより急速な幹細胞の損失を示し
た。このような胚腺は、しばしば、1週間後に1または0の幹細胞を含んだ。1
つの場合において、1つの幹細胞のみが見出され、そして有糸分裂性の嚢胞は見
出されなかった;最も後部の嚢胞は、16細胞を含んだ。別の場合において、幹
細胞は存在しなかった;8細胞嚢胞および16細胞嚢胞が後部に存在する。2週
間後、大部分の卵巣小管は完全に幹細胞を欠いていたが、いくつかはなお、16
細胞嚢胞またはより古い卵胞を含んだ。
【0076】 正常な嚢胞細胞発生は、胚腺全体にわたって連続するので、これらの変異の効
果は、幹細胞の分裂および維持に大部分限定されるようである。後者のプロセス
において、いくつかの異常、卵チャンバー発芽が観察された。幹細胞の損失は、
細胞死または分化のいずれかによって引き起こされ得る。アポトーシス性細胞は
、生殖系列幹細胞がDAPI染色に基づいて位置付けされた、これらの胚腺の最
も後部の領域において観察されなかった。
【0077】 これらの結果は、dppシグナリングのレベルの減少が、生殖系列幹細胞の嚢
胞への分化を促進し、従って幹細胞損失を引き起こすことを示す。以前の研究(
Twomblyら、1996)と一致して、本発明者らは、これらのdpp変異
体およびsaxp変異体において、後部の損失を有する、いくつかの部分的に腹
側化した卵を観察した。
【0078】 (実施例5:Put、Tkv、Mad、およびDadは、生殖系列幹細胞維持
のために、細胞自律的に必要である) dppシグナリングが生殖系列によって受容されることを決定的に実証するた
めに、これらの細胞において、シグナル伝達経路の成分が自律的に必要であるか
否かを評価する研究を行った。Flp誘導された有糸分裂的な組換えを利用して
、成体卵巣の生殖系列幹細胞における機能喪失変異についてホモ接合性である、
際だったクローンを産生した(実験手順を参照のこと)。シグナル伝達経路にお
いて、dppの下流の遺伝子は、その分裂および維持のために、生殖系列幹細胞
において必要とされる。示された遺伝子型の幹細胞クローンを欠く胚腺またはそ
れを保有する胚腺を生成し、次いで抗lacz抗体および抗Hts抗体を用いて
標識した。標識された幹細胞およびその子孫の嚢胞は、lacZタンパク質の非
存在により示された。
【0079】 クローンを、armadillo−lacZ(これは、野生型ハエが熱ショッ
クに供せられない場合に、胚腺中のすべての細胞において強力に発現される)を
使用して標識した。幹細胞クローンは認識され得る。なぜなら、幹細胞のみが、
有糸分裂性の組換え事象の後に、5日間より多く胚腺中で持続するからである(
MargolisおよびSpradling、1995)。組換え事象は有糸分
裂的に活性な成体細胞においてのみで起こり得るので、この方法は、末端で分化
した末端フィラメント、キャップ細胞、および鞘内細胞において変異体クローン
を産生しない。結果的に、このアプローチは、周りを取り囲むこれらの体細胞に
おける変異体クローンに起因する潜在的な複雑さを除外する。このことは、遺伝
子の自律的な機能を、生殖系列幹細胞中で試験することを可能にする。この方法
は、3つの主なさらなる利点を有する。第1に、持続性の変異体クローンが長期
間にわたって研究され得、定量される生殖系列幹細胞の維持を可能にする。第2
に、同じ胚腺に並んでいる変異体幹細胞および野生型幹細胞の両方の存在が、直
接比較による遺伝子の除去の効果についてのコントロールを提供する。従って、
これらの2つの幹細胞の相対的な分裂速度は、1つの変異体および1つの野生型
幹細胞を有する胚腺において、単に変異体および野生型嚢胞の数を計数すること
によって決定され得る。最後に、変異の生殖系列幹細胞特異的効果は、標識した
嚢胞芽細胞、嚢胞、および卵チャンバーの発生状態を観察することによって評価
され得る。
【0080】 punt−、tkv−、mad−、Med−、およびDad−の生殖系列幹細
胞クローンを、適切な遺伝形質の雌を熱ショックに供することおよびこれらの卵
巣を試験すること(1週間後に開始する)によって、生成する。Drosoph
ila卵巣における幹細胞は、半減期が約4.6週間の有限の寿命を有する(M
argolisおよびSpradling、1995;表2)。野生型クローン
と対照的に、試験した遺伝子の各々についての幹細胞変異体(Dadを除く)は
、より迅速に失われた(表2)。例えば、1週間後、punt135変異体生殖系
列幹細胞は、相対的に新しい嚢胞の存在によって示されるように、なお存在して
いたか、またはごく最近に失われたかのいずれかであった。しかし、2週間後に
、punt135変異体生殖系列幹細胞は、通常失われ、そしてほんのわずかな進
行した変異体嚢胞が残存した。
【0081】 mad12変異体幹細胞がなおより迅速に失われた。1週間後、mad12変異体
生殖系列幹細胞は、子孫の嚢胞の欠如により示されるように、ときどき残存する
が、しかし十分に増殖しなかった。より頻繁には、生殖系列幹細胞は、すでに失
われ、そしてより発達した嚢胞が観察された。2週間後、mad12変異体生殖系
列幹細胞はまれに残存し、そして変異体嚢胞は存在しないが、しかしより古い変
異体卵チャンバーは存在していた。驚くべきことに、2つの野生型生殖系列幹細
胞は、変異体幹細胞が失われた後に時折観察された。これらの結果は、dppシ
グナルが直接生殖系列幹細胞に作用してそれらの維持を調節することを示す。し
かし、16細胞嚢胞の形成または引き続く生殖系列細胞の発達に対する効果は観
察されなかった。
【0082】 他の試験した遺伝子とは異なり、Dadは、dppシグナル伝達の負のレギュ
レーターである。Dad遺伝子は、dppシグナル伝達経路によって誘導され、
そしてdppの機能を拮抗する(Tsuneizumiら、1997)。Dad 271-68 対立遺伝子は、C末端の保存されたドメイン全体が欠失する重篤な対立遺
伝子である(Tsuneizumiら、1997)。きわだったことに、たとえ
、両方の生殖系列幹細胞が、この遺伝子を欠失したとしても(例えば、2つの変
異型生殖系列幹細胞および子孫の嚢胞の正常な補体が存在した)、Dad271-68 についての生殖系列幹細胞変異体は、失われなかった(例えば、変異生殖系列幹
細胞およびその子孫の嚢胞が存在し得る)。クローンの誘導の3週間後でさえも
、ターンオーバーは、検出され得なかった。このことは、増加するdppシグナ
ル伝達が、生殖系列幹細胞の寿命を延長し得ることを示唆する。
【0083】 幹細胞に対する異なる変異の効果の大きさを比較するために、変異型生殖系列
幹細胞の半減期を測定した(表2;実験手順)。punt10460は、Dpp I
I型レセプターのハイポモルフ対立遺伝子であり、一方、punt135は、強力
な対立遺伝子である(Aroraら、1995;Letsouら、1995)。
punt10460クローンにおいて、生殖系列幹細胞の半減期は、約4.6〜0.
90週間減少し、一方、強力なpunt135対立遺伝子は、生殖系列幹細胞の半
減期を約0.41週間まで減少した。tkv8は、I型レセプターの強力な対立
遺伝子である(Brummelら、1994;Nellenら、1994;Pe
ntonら、1994)。tkv8幹細胞クローンは、生殖系列幹細胞の半減期
を約0.69週間まで減少した。下流のシグナルトランスデューサーであるma
9およびmad12の2つの対立遺伝子のクローンは、生殖系列幹細胞の半減期
を、それぞれ2.5週間および0.25週間に減少した。この観察と一致して、
mad12はmad9よりもかなり強力な対立遺伝子である(Sekelskyら
、1995)。Med26は、別の下流のトランスデューサーの強力な対立遺伝子
である(Desら、1998)。Med26生殖系列幹細胞は、約0.38週間の
半減期でターンオーバーした。
【0084】 (実施例6:Punt、Tkv、Mad、Medは、生殖系列幹細胞分裂を刺
激するために細胞自律的に必要とされる) 生殖系列幹細胞分裂の調節におけるdpp経路の役割をさらに規定するために
、胚腺中で、1つの変異型生殖系列幹細胞および1つの野生型生殖系列幹細胞を
有する、変異型嚢胞および野生型嚢胞の数を比較した。各嚢胞は、1つの生殖系
列幹細胞分裂を示すので、野生型嚢胞および変異型嚢胞の計数は、相対的な生殖
系列幹細胞分裂速度の測定を可能とした。全ての3つの時点からの変異型生殖系
列幹細胞をなお保持する全ての胚腺を計数し、そして野生型嚢胞の数と比較した
。印を付けたが、遺伝的に野生型の生殖系列幹細胞を含むコントロールにおいて
、約50%の嚢胞に印を付けた。このことは、2つの生殖系列幹細胞が、1週齢
の成体胚腺中に存在し、そして類似の速度で分裂することを示す(表2を参照の
こと)。
【0085】 以前の実験に基づいて予測されたように、punt−、tkv−、mad−、
およびMed−変異型生殖系列幹細胞の全てが、野生型よりゆっくりと分裂した
(表2を参照のこと)。印をつけた野生型生殖系列幹細胞の相対的な分裂速度は
、約0.93であったが、試験された遺伝子型の速度は、約0.21から0.6
0の範囲であった。これらの減少は、これら対立遺伝子の公知の強度、および生
殖系列幹細胞の維持に対するその効果と、大部分は相関した。しかし、punt 10460 およびpunt135変異型生殖系列幹細胞は、これらが強度において異なる
という事実にもかかわらず、野生型よりも約3分の1の速さで増殖した。維持お
よび分裂に対する、これらの変異体の効果の間の差異は、経路の分岐点を反映し
得、そして少なくとも1つのさらなるII型レセプターがまた、生殖系列幹細胞
の挙動を媒介することを示唆し得る。興味深いことに、野生型よりも安定なDa
271-68変異型生殖系列幹細胞は、野生型生殖系列幹細胞と類似の速度か、また
は野生型生殖系列幹細胞より若干遅い速度で分裂した。これらの結果は、dpp
シグナル伝達経路の成分が生殖系列幹細胞の増殖にとって、自律的に必要とされ
ることを実証する。
【0086】 以前に示されたように、hs−GAL4によって駆動されて過剰発現されたd
ppの存在において産生された嚢胞は、常に16個の細胞を含んだ。dppシグ
ナル伝達が、嚢胞芽細胞および嚢胞細胞の分裂の調節に関与していないことを確
認するために、punt10460、mad9、mad12、Med26、およびDad27 1-68 について、個々の嚢胞変異体中の生殖系列細胞の数を計数した。全ての場合
において、これらの嚢胞は、16個の細胞(単一の卵母細胞を含む)を含んだ。
従って、dppシグナル伝達経路は、生殖系列内の幹細胞に特異的に作用する。
【0087】 (実施例7:dppは、生殖系列幹細胞を取り囲む分化した体細胞において、
発現される) Dppシグナルの供給源の場所を直接的に決めるために、ホールマウントmR
NAインサイチュハイブリダイゼーションを行い、解剖され固定化された2日齢
の野生型の雌において、dpp遺伝子の発現を可視化した。プロテアーゼ消化を
、50gm/mlで5分間行った以外は、標準的なプロトコールを使用した(Y
ueおよびSpradling、1992)。dppセンスRNAプローブをコ
ントロールとして使用した場合、染色は観察されなかった。同一の条件下におい
て、dppアンチセンスプローブは、生殖系列幹細胞に隣接する鞘内細胞および
キャップ細胞、ならびに後体細胞性卵胞細胞(posterior somat
ic follicle cell)におけるdpp mRNAを検出したが、
生殖系列および終糸細胞においては、検出されなかった。これらの発現データは
、周囲の分化した体細胞が、生殖系列幹細胞のニッチを構成するという、本発明
者らの知見を、さらに支持する。
【0088】 (実施例8:失われた生殖系列幹細胞は、同一胚腺内の他の幹細胞の娘細胞に
よって、置換され得る) 卵巣小管内の幹細胞が、ニッチ内に存在するというさらなる証拠を提供するた
めに、本発明者らは、失われた生殖系列幹細胞が、そうでなければ分化する細胞
によって置換され得、そして生殖系列幹細胞として機能し得る。1つの幹細胞棒
に印をつけた1週齢の胚腺において、印をつけた細胞は、ほとんど50%の嚢胞
に寄与し、このことは、1つの胚腺あたり平均して2つの生殖系列幹細胞が存在
することを示唆する。本発明者らは、野生型生殖系列幹細胞が、4.6週間の半
減期でターンオーバーすることを示したので、ほんの1個または0個の生殖系列
幹細胞を含む卵巣小管が、置換されないかぎり、予測された速度で生じる。例え
ば、4.6週間後、25%、50%および25%の胚腺が、2個、1個または0
個の生殖系列幹細胞を有することが予測される。対照的に、本発明者らは、5週
齢の胚腺の71%より多くが、まだ2つの生殖系列幹細胞を含み、20%が1つ
の生殖系列幹細胞を含み、そして9%が含まないことが観察された。これらの結
果は、予測されないものであり、そして喪失後、この期間において、生殖系列幹
細胞が62%置換された。
【0089】 いかにして置換が生じるか決定するために、本発明者らは、印をつけた幹細胞
が失われたばかりであり、置換される過程にある卵巣小管を同定した。そのよう
な卵巣小管は、印をつけられた嚢胞芽細胞、および印をつけた発達中の嚢胞を含
むが、印をつけた幹細胞を含まなかった。本発明者らは、卵巣小管の軸に対する
垂直平面中に残る幹細胞の正常ではない分裂を観察した。そのような分裂は、最
近失われた幹細胞と同一の位置に、娘幹細胞を配置する。通常、生殖系列幹細胞
は、前後軸にそって分裂し、そして後方の娘細胞は、嚢胞芽細胞に分化する。こ
れらの知見は、娘幹細胞の運命が、環境によって決定されることを示す。ニッチ
内のこの環境は、幹細胞の運命を維持するが、卵巣小管中のより後方の環境は、
嚢胞芽細胞としての分化を促進する。
【0090】 (実施例9:Dppは、雄性生殖系列幹細胞の維持に必要である) 温度感受性dpp変異遺伝子型を、dpphr56/CyOをdpphr4およびd
ppe90/CyOと交雑して、生成した。温度感受性punt変異型雄性を、p
unt10460/TM3と、punt135/TM3 Sbとを交雑することによって
生成した。dpphr56/dppe90、dpphr56/dpphr4およびpunt1046 0 /punt135の生体雄性を、28℃(すなわち、制限温度)で1週間、生育さ
せた。ヘテロ接合型コントロールもまた、28℃で試験した;精巣を切開して取
り出し、ウサギ抗Vasa抗体およびマウス抗Hts抗体を用いて染色した。C
y3−結合体化ヤギ抗ウサギ2次抗体およびFITC結合体化ヤギ抗マウス2次
抗体を使用して、Vasaタンパク質(赤色)およびHtsタンパク質(緑色)
を、Leica TCS−NT共焦点顕微鏡を用いて可視化した。生殖系列幹細
胞は、精巣の先端に位置し、そしてVasaタンパク質(赤色)のその発現によ
って認識され得、そしてまた、円形のフソーム(fusomu)(黄色)もまた
含み、そしてハブ(hub)細胞(緑色)とのその会合によって認識され得る。
分化した生殖系列細胞は、先端からより遠位にあり、そしてまた、その円形のフ
ソームまたは分岐したフソームのいずれかを含む。
【0091】 Drosophila精巣において、dppが雄性生殖系列幹細胞を調節する
ことを直接示すために、制限条件下におけるdpphr56/dppe90、dpphr5 6 /dpphr4およびpunt10460/punt135変異精巣における幹細胞の数を
試験し、そしてヘテロ接合型コントロール精巣と比較した。ヘテロ接合型精巣(
コントロール)において、体細胞のハブ細胞に隣接し、そして卵巣中のその対応
物のように円形フソームを含む、7〜9個の生殖系列幹細胞が存在した;これら
の精巣は、発生中の生殖系列嚢胞および一次精子細胞が豊富であった。制限温度
の1週間後、なお7個を越える生殖系列幹細胞が存在した。これらの値は、典型
的な野生型精巣と識別不可能である。対照的に、制限温度で生育されたオス由来
の1週齢のdpphr56/dppe90、dpphr56/dpphr4およびpunt1046 0 /punt135変異精巣は、減少した数(精巣1つあたり2〜7個の範囲)の生
殖系列幹細胞を含んだ。この損失の結果として、これあの精巣はまた、コントロ
ールよりも有意により小さく、より少ない発生中の生殖系列嚢胞および一次精子
細胞を含んだ。精巣は、卵巣小管よりもかなり多数の生殖系列幹細胞とともに開
始するので、たとえ精巣が雌性生殖系列幹細胞と同程度のdppおよびpunt
を必要とするとしても、1週間以内の完全な損失は、予測されない。これらの結
果は、dppおよびpuntが雄性生殖系列幹細胞の維持に必要とされることを
、実証する。
【0092】 (実施例10:Shnは、生殖系列幹細胞維持のために必要である) schnurri(shn)は、ヒトMPB1と相同なジンクフィンガータン
パク質をコードする。shnは、Drosophila胚中のdppシグナル伝
達にとって必要である(Aroraら、1995;Greiderら、1995
)。変異型shn生殖系列幹細胞クローンを上記のように生成した。FRT42
D arm−lacZ/FRT42D arm−lacZ未交尾のメスを、それ
ぞれFRT42D shn/CyOおよびFRT42D +/FRT42D +
(コントロール)のオスと、交雑した。shn変異を有する染色体に対してトラ
ンスにあるarm−lacZトランスジーンを保有する2日齢生体の非CyOの
メスを、各々8時間の間隔で2回、37℃で60分間、熱ショックをかけた。生
殖系列幹細胞を、上記と同様の様式において、試験した。これらの結果は、sh
nもまた、生殖系列幹細胞において、これらの維持および分裂に必要であること
を実証する。
【0093】 (実験手順) 本発明の実施のために有用な材料および方法の記載は、以下の一般的な参考文
献に提供される:
【0094】
【数1】 Drosophilaストックを、Indiana UniversityのB
loomington Stock Centerより入手し得る。Droso
philaの遺伝学および分子生物学に関する情報(Drosophilaゲノ
ムプロジェクトを通して得られる組換えクローンおよびヌクレオチド/アミノ酸
配列を含む)は、FLYBASE関連データベース(Nucl.Acids R
es.27、85〜88、1999を参照のこと)において、公に利用可能であ
る。
【0095】 (Drosophilaストックおよび遺伝学) この研究において使用される以下のハエのストックは、FlyBaseにおい
て記載されるか、またはそうでなければ特定されるかのいずれかである:
【0096】
【化1】 ほとんどのストックを、室温で培養した。その効果を最大限にするために、sa
Pおよびdpp変異体の両方を、28℃で1〜2週間培養した。
【0097】 (変異型生殖系列幹細胞クローンの生成および過剰発現) 変異細胞のクローンを、以前に記載されたように(XuおよびRubin、1
993)、Flp−媒介性有糸分裂組換えによって生成した。幹細胞クローン分
析のためのストックを生成するために、+FRT40A/CyO、tkv8
FRT40A/CyO、mad9 +FRT40A/CyO、およびmad12
+FRT40A/CyOのオスをそれぞれ、w HSPlp1;armadil
lo−lacZ FRT40Aの未交尾のメスと交雑した。FRT82B Me
26/TM3 Sb、FRT82B punt135/TM3 Sb、FRT82
B punt10460/TM3 Sb、FRT82B Dad271-68/TM3 S
bのオスをそれぞれ、w HSPlp1;FRT82B armadillo−
lacZの未交尾のメスと交雑した。変異を有する染色体に対してトランスにあ
るarmadillo−lacZトランスジーンを保有する2日齢生体の非Cy
Oまたは非Sbのメスを、37℃で60分間、熱ショックをかけた。このメスを
室温での毎日の新鮮な食餌に移し、そして卵巣を、最後の熱ショック処理の1週
間後、2週間後、または3週間後に取り除き、抗体染色のために処理した。
【0098】 過剰発現dppおよび活性化レセプターについてのストックを構築するために
、hs−GAL4の未交尾のメスを、それぞれUAS−dpp、UAS−tkv * /CyO、UAS−tkv*/TM3 Sb、UAS−sax*/CyO、UA
S−sax*/TM3 Sb、UAS−tkv*/CyO;UAS−sax*/T
M6、UAS−sax*/CyO;UAS−tkv*/TM6のオスと交雑した。
バランサー(balancer)染色体を保有しないメスを、毎回、12時間の
間隔で、3〜5日間、37℃で30分、熱ショックをかけた。
【0099】 (計算) 幹細胞の寿命を決定するために、適切な遺伝型の1〜2日齢のメス中の幹細胞
に、1回の熱パルスによって印をつけた。次に、1週間後、2週間後、および3
週間後、メスの何匹かから卵巣を切開し、そして抗Hts抗体および抗lacZ
抗体で染色した。印をつけた幹細胞を含む胚腺の割合を、各時点での60〜20
0個の胚腺の計数によって決定し、幹細胞の半減期を計算するために使用した。
【0100】 幹細胞の分裂速度を測定するために、本発明者らは、1つの野生型幹細胞およ
び1つの変異型幹細胞を含む胚腺中の、野生型嚢胞および変異型嚢胞の相対的な
数を決定した。1.0の相対的な分裂速度は、正常の分裂を示す。所定の遺伝型
について、これらの値は、各時点において類似しており、そして表2に平均を示
す。印をつけた野生型幹細胞は、おそらく2つの生殖系列幹細胞よりむしろ3つ
の生殖系列幹細胞を含む胚腺の小さな割合に起因して、1.0よりむしろ0.9
3の値をもたらした。
【0101】 幹細胞の損失を測定するために、2個、1個または0個の生殖系列幹細胞を有
する胚腺を、1週齢および2週齢のメスの卵巣から計数した。dppトランスジ
ーンを含むCyOバランサー染色体と組み合わせた1コピーの変異遺伝子を保有
するヘテロ接合型のメス(Hurshら、1993)を、コントロールとした。
示された幹細胞の組成を有する卵巣小管のパーセントとして、値を示す。
【0102】 (免疫組織学) 以下の抗血清を、示された希釈で使用した:ポリクローナル抗Vasa抗体(
1:2000)(Liangら、1990);モノクローナル抗Hts抗体1B
1(1:5)(ZacciおよびLipshiz、1996);ポリクローナル
抗αスペクトリン抗体(1:100)(Byersら、1987);ラット抗B
am抗体(1:100)(MckearinおよびOhlstein、1995
);モノクローナル抗BrdU抗体(1:50)(Becton−Dickin
son);ポリクローナル抗βガラクトシダーゼ抗体(1:1000)(Cap
pel)。BrdUを用いる標識を、CuevasおよびSpradling(
1998)によって記載されるように、室温で1時間おこなった。全ての顕微鏡
写真を、Leica TCS−NT共焦点顕微鏡を用いて撮影した。
【0103】 (表1.Dppは、生殖系列幹細胞の維持に必要である)
【0104】
【表1】 0個、1個または2個の生殖系列幹細胞を有する卵巣小管のパーセントを、各遺
伝型について示す。実際の数を括弧内に示す。a P23は、CyO染色体上のdppトランスジーンである(Hurshら、1
993)。
【0105】 (表2.dpp経路の下流の成分が、生殖系列幹細胞において、それらの維持
および分裂に必要である)
【0106】
【表2】 alacZネガティブ生殖系列幹細胞クローンを有する胚腺の数/全胚腺×10
0。 実際の計数された胚腺の数を括弧内に示す。b 実験手順に記載されるように計算した。c 実験手順に記載されるように計算した。計数された嚢胞の数を、括弧内に示す
【0107】 本発明は、実際の実施態様および好ましい実施態様であると本明細書において
考慮されるものによって記載されてきたが、特許請求の範囲に記載される本発明
の変更が、本発明の新たな局面から逸脱することなく当業者に自明であり、そし
てそのような変更が特許請求の範囲内にあることが意図されることが、理解され
る。
【0108】 例えば、dppシグナル伝達経路の成分は、構造(例えば、アミノ酸残基は、
配列が整列される場合、位置の高い割合において、同一であるか、または化学的
に類似している)において保存され、そして哺乳動物タンパク質が経路の相同遺
伝子における変異から生じるDrosophila変異表現型をレスキューし得
るように機能において保存される。本明細書において同定されるDrosoph
ila遺伝子およびタンパク質、ならびにその変異体の等価物は、アミノ酸配列
におけるその類似性(例えば、TGF−βファミリーのメンバー)および/また
は変異表現型を少なくとも部分的にレスキューするその能力、またはそのような
表現型のフェノコピー(phenocopy)を生成するその能力によって、本
発明を実施する当業者に公知である。
【0109】 従って、法的保護の程度は、特許査定となる特許請求の範囲に記載される限定
およびその等価物によって規定される。明示的な記載がない限り、本明細書に記
載される本発明の他の局面は、特許請求の範囲を限定しない。この点に関し、明
細書に示唆される作用機序(例えば、BMPシグナル伝達のモデル)は、本発明
者らの観察についての単なる可能な説明であるが、特許請求の範囲に記載される
発明の実施は、必ずしもその作用機序に依存する必要はない。
【0110】 本開示に記載される全ての参考文献、特許出願、および特許は、その全体が本
明細書によって本明細書において参考として援用され、そして本分野の当業者の
高度な技術を示す。特に、上記に示される結果のいくつかは、優先権を有する米
国特許出願第60/094,008号の出願日後に、XieおよびSpradl
ingによってCell 94、251〜260(1998)において刊行され
た。
【0111】 (参考文献)
【0112】
【表3】 当該分野における標準的な手順は、以下の一般に入手可能な参考文献および研
究室マニュアルに記載される:
【0113】
【表4】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z A,ZW Fターム(参考) 4B024 AA11 BA21 CA04 DA02 EA04 GA11 HA01 4B065 AA90X AA90Y AB01 BA01 BA30 CA46

Claims (36)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Drosophilaの生殖系列幹細胞を維持するための方
    法であって、該方法は、以下の工程: (a)該生殖系列幹細胞から構成される集団を提供する工程、および (b)該集団の少なくとも1つの細胞において、骨形成性タンパク質(BMP
    )シグナル伝達経路によってシグナル伝達を刺激する工程であって、該刺激が、
    刺激された該BMPシグナル伝達経路のシグナル伝達を有していなかった集団と
    比較して、該集団においてさらに生殖系列幹細胞を維持している、工程、 を包含する、方法。
  2. 【請求項2】 前記集団が、インビボで維持され、そして前記Drosop
    hilaが、前記シグナル伝達を刺激するように遺伝的に操作されている、請求
    項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 前記集団がインビトロで維持される、請求項1に記載の方法
  4. 【請求項4】 前記生殖系列幹細胞が卵巣由来である、請求項1に記載の方
    法。
  5. 【請求項5】 前記生殖系列幹細胞が精巣由来である、請求項1に記載の方
    法。
  6. 【請求項6】 胚から前記生殖系列幹細胞を得る工程をさらに包含する、請
    求項1に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記BMPシグナル伝達経路が、前記集団に対して、野生型
    に存在する活性よりも少なくとも10%多いDecapentaplegic(
    Dpp)活性を提供することによって、刺激される、請求項1に記載の方法。
  8. 【請求項8】 前記BMPシグナル伝達経路が、dpp遺伝子を機能獲得表
    現型に少なくとも変異させることによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記BMPシグナル伝達経路が、前記集団に少なくともBM
    Pを提供することによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  10. 【請求項10】 前記BMPがDecapentaplegic(Dpp)
    タンパク質、BMP−2、およびBMP−4からなる群より選択される、請求項
    9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 前記BMPシグナル伝達経路が、I型またはII型dec
    apentaplegic(dpp)レセプターを機能獲得表現型に少なくとも
    変異させることによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 前記BMPシグナル伝達経路が、BMPを特異的に認識す
    る少なくとも1つのセリン/トレオニンキナーゼレセプターを通じて刺激される
    、請求項1に記載の方法。
  13. 【請求項13】 前記BMPレセプターが、Saxophone(Sax)
    、Thick vein(Tkv)、およびPunt(Put)からなる群より
    選択される、請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記BMPシグナル伝達経路が、BMPへのレセプター結
    合についての少なくとも1つのシグナルトランスデューサーの活性を変更するこ
    とによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  15. 【請求項15】 前記シグナルトランスデューサーが、Mothers a
    gainst dpp(Mad)、Medea(Med)、Daughters
    against dpp(Dad)、Schnurri(Shn)、およびB
    rinker(Brk)からなる群より選択される、請求項14に記載の方法。
  16. 【請求項16】 前記BMPシグナル伝達経路が、前記集団の細胞中のBM
    P発現を増大させることによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  17. 【請求項17】 BMP発現が、hedgehog(hh)活性化転写また
    はwingless(wg)活性化転写によって増大され、そしてBMPシグナ
    ル伝達が、少なくともいくつかの生殖系列幹細胞において増大される、請求項1
    6に記載の方法。
  18. 【請求項18】 前記集団が、終糸細胞、キャップ細胞、鞘内細胞、hub
    細胞、および嚢胞前駆細胞からなる群より選択される、少なくとも1つの体細胞
    からさらに構成される、請求項1に記載の方法。
  19. 【請求項19】 少なくとも1つの生殖系列幹細胞が、骨形成性タンパク質
    (BMP)を発現するフィーダー細胞と接触してインビトロで培養される、請求
    項1に記載の方法。
  20. 【請求項20】 少なくとも1つの生殖系列幹細胞が、少なくともいくつか
    の体細胞性ニッチ細胞と接触してインビトロで培養される、請求項1に記載の方
    法。
  21. 【請求項21】 前記BMPシグナル伝達経路を通じるシグナル伝達が、B
    MPシグナル伝達を刺激する体細胞のフィーダー層とともに前記生殖系列幹細胞
    をインビトロで培養することによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  22. 【請求項22】 前記BMPシグナル伝達経路を通じるシグナル伝達が、B
    MPシグナル伝達を刺激する培養培地中で、前記生殖系列幹細胞をインビトロで
    培養することによって刺激される、請求項1に記載の方法。
  23. 【請求項23】 多能性段階における少なくとも1つの前記生殖系列幹細胞
    を維持する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  24. 【請求項24】 全能性段階における少なくとも1つの前記生殖系列幹細胞
    を維持する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  25. 【請求項25】 宿主Drosophila中に、前記刺激された生殖系列
    幹細胞の少なくとも1つを移入する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方
    法。
  26. 【請求項26】 前記移入された生殖系列幹細胞の少なくとも1つが、前記
    宿主Drosophilaの2以上の分化した細胞系列に寄与する、請求項25
    に記載の方法。
  27. 【請求項27】 前記移入された生殖系列幹細胞の少なくとも1つが、前記
    宿主Drosophilaの生殖系列細胞系列に寄与する、請求項25に記載の
    方法。
  28. 【請求項28】 前記生殖系列幹細胞のゲノムの少なくとも1つの遺伝子を
    変異させる工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  29. 【請求項29】 前記生殖系列幹細胞のゲノム中に、1以上のポリヌクレオ
    チドを導入する工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  30. 【請求項30】 前記生殖系列幹細胞の標的遺伝子座に、相同組換えによっ
    てポリヌクレオチドを組み込む工程をさらに包含する、請求項1に記載の方法。
  31. 【請求項31】 相同組換えのために前記生殖系列幹細胞の少なくとも1つ
    の遺伝子を標的化する工程、該遺伝子の相同組換えを経た少なくとも1つの生殖
    系列幹細胞を選択する工程、および別のDrosophila中に、該相同組換
    えした生殖系列幹細胞を移入し、その結果、該標的化遺伝子が、該別のDros
    ophilaの生殖系列を通じて、遺伝的に伝達される工程、をさらに包含する
    、請求項1に記載の方法。
  32. 【請求項32】 BMPシグナル伝達の刺激の前に存在する各生殖系列幹細
    胞について、前記集団中に少なくとも10の生殖系列幹細胞が存在する、請求項
    1に記載の方法によって作製される、細胞集団。
  33. 【請求項33】 Drosophila幹細胞を維持するための方法であっ
    て、該方法は、以下の工程: (a)該幹細胞から構成される集団を提供する工程、および (b)刺激されていない幹細胞の集団と比較して、より多くの該集団の幹細胞
    が、少なくとも生存可能または未分化として維持されるように、decapen
    taplegic(dpp)シグナル伝達を刺激する工程、 を包含する、方法。
  34. 【請求項34】 生物の幹細胞または腫瘍細胞を減少させるかまたは除去す
    るための方法であって、該方法は、骨形成性タンパク質(BMP)レセプター経
    路によるシグナル伝達を抑制し、その結果、該幹細胞または腫瘍細胞が、減少ま
    たは除去される工程を包含する、方法。
  35. 【請求項35】 生物の幹細胞の量を増大させる方法であって、該方法は、
    骨形成性タンパク質(BMP)レセプター経路によってシグナル伝達を刺激し、
    その結果、少なくともいくつかの幹細胞の量が増大される工程を包含する、方法
  36. 【請求項36】 生物の幹細胞の寿命を増大させる方法であって、該方法は
    、骨形成性タンパク質(BMP)レセプター経路によってシグナル伝達を刺激し
    、その結果、少なくともいくつかの幹細胞の該寿命が増大される工程を包含する
    、方法。
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