JP2002520772A - ビームの経路補正用磁場を有するマルチビーム電子管 - Google Patents

ビームの経路補正用磁場を有するマルチビーム電子管

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Abstract

(57)【要約】 この発明は、本体(10)を通過するほぼ平行な複数の電子ビーム(1〜7)を有するマルチビーム電子管に関するものである。これらの内のいくつかのビーム(2〜7)は、少なくとも1つのビーム間容積(22)を画定し、該ビーム間容積(22)を画定する各ビーム(2〜7)は、他の全てのビームにより誘起される動揺する方位磁場(Bθ)にかけられる。電子管は、ビーム間容積(22)内に配置される少なくとも1つの導体部材(23)内に、逆電流(I′)がビーム(1〜7)の電流(I)の方向とは反対方向に循環することを許容する手段(M)を具備し、前記逆電流(I′)は、ビーム間容積(22)を画定するビーム(2〜7)において、動揺する磁場(Bθ)に対抗する補正磁場を発生する。この発明は、進行波管またはマルチビームクライストロンに適用可能である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 この発明は、例えば、クライストロンまたは進行波管のような、マルチビーム
縦相互作用電子管に関するものである。これらの電子管は、概して、軸回りに構
成され、この軸に平行な複数の縦方向の電子ビームを具備している。これらのビ
ームは、しばしば、複数の陰極が固定された共通の電子銃で生起され、進行方向
の終点において、1以上のコレクタに接続されている。電子銃とコレクタとの間
において、ビームは、出力でマイクロ波エネルギを取り出すマイクロ波構造体を
通過させられる。この構造体は、連続する共鳴キャビティおよびドリフト管から
構成されている。電子ビームは、それらの細長い形状を維持するために、主軸に
心合わせされ、前記マイクロ波構造体を取り囲むフォーカサーの磁場によって収
束させられる。
【0002】 マルチビーム電子管の利点は、生起される電流が高く、かつ/または、電圧が
低く、かつ/または、長さが短いということである。 ほぼ同等の性能を得るための電子管の全体的な大きさは、一般に、より小さい
。したがって、使用される電源および変調器は、簡略化され、かつ、よりコンパ
クトである。各ビームのパービアンスが概して低いので、相互作用の効率はより
良好である。
【0003】 クライストロンの場合には、キャビティが高電流によって荷電されるという事
実によって、バンド幅が増大させられる。 シングルビーム管と比較したときの、主な欠点の1つは、ビームが、ドリフト
管によって認め得るほど遮断されずに、マイクロ波構体を通して進行することが
できるような、最適に収束した磁場を発生させることが困難であるということで
ある。
【0004】 マルチビームクライストロンでは、ボディ電流と呼ばれる遮断される電流は、
しばしば、約4〜8%であるのに対し、従来のシングルビームクライストロンで
は、高効率クライストロンの場合のように、ビームが大きく周波数変調された場
合でさえも、2〜3%を超えることはない。
【0005】 過度の遮断は、複雑かつ高価な冷却システムを必要とする極端に大きな加熱が
必要となるばかりでなく、膨張、脱気、周波数変化、振動、スプリアスモードの
励起、反射電子、イオン衝撃およびビームとマイクロ波構造体との間の動揺する
相互作用が生ずるために、電子管の不十分な作動にもつながる。
【0006】 この遮断は、コレクタに近接するときのより大きな密度変調の降下によって空
間電荷力を増大させ、それによって、結果としてドリフト管の壁面に近接するよ
うに、ビームの断面を増大させてしまうことによるものである。また、この遮断
は、部分的には、軸方向の磁場が変化する領域、すなわち、電子銃およびコレク
タの近傍において半径方向の磁場を必然的に生ずるフォーカサーによるものであ
る。さらに、フォーカサーが完全ではないために、ピンぼけに寄生する磁気成分
が生起される。
【0007】 マルチビーム電子管に特有のピンぼけの他の主な原因は、各ビームが、電子管
の形態及びその動作モードに依存して、他のビームを動揺させる危険性を生ずる
方位磁場を生成するということである。この方位磁場は、偏心ビームに、それら
を偏向させる半径方向の遠心力を生じさせる。
【0008】 フォーカサーとそのコイルの形態について特に注意することにより、ピンぼけ
磁気成分を低減することが可能であることは公知である。 また、電子管の本体において中間極片を使用することにより、半径方向の磁場
を低減することに寄与することも可能である。
【0009】 電子が出射されるとすぐに磁束線が前記電子の経路にほぼ合致するように、電
子銃が改良されてもよい。 ドリフト管がビームの全体的な移動に追随するように、ドリフト管の傾きを変
化させることも可能である。
【0010】 しかしながら、これら全ての解決策は、全ての他のビームによって、偏心ビー
ムに誘起される方位磁場に対抗するものではない。 したがって、この発明の目的は、この誘導方位磁場を、ゲインまたは効率特性
を低下させることなく、低減または消滅させることである。
【0011】 これを達成するために、この発明は、本体を貫通する多数のほぼ平行な電子ビ
ームを具備するマルチビーム電子管を提案している。これらのビームの内、少な
くともいくつかが、ビーム間容積を画定する。このビーム間容積を画定するビー
ムの各々は、全ての他のビームによって誘起された動揺方位磁場にかけられる。
電子管は、本体内に、ビーム間容積内に配置される少なくとも1つの導体部材に
おいて、ビームの電流の方向とは逆方向への逆電流を許容する手段を具備し、こ
の逆電流が、ビーム間容積を画定するビーム内に、前記動揺磁場に対抗する補正
磁場を生成する。
【0012】 前記導体部材は、本体内に組み込まれてもよく、また、これとは反対に、本体
から電気的に絶縁されていてもよい。
【0013】 前記本体内に組み込まれた導体部材内に逆電流の流通を許容する手段は、本体
の入力に近接して、アース接続部を具備し、それによって、逆電流が、このアー
スにより閉じられたビームの電流から生じ、コレクタが、ビームを生成する陰極
とアースとの中間電位に配される。
【0014】 このアース接続部は、陰極に電位を供給する高電圧源に接続されていることが
好ましい。 この種の電子管、すなわち、クライストロンまたは進行波管のいずれかにおい
ては、本体は、複数のキャビティを具備し、該キャビティの入力および出力にお
いて、ビームがドリフト管内に含まれる。ドリフト管が、同じ導体ブロック内に
くり抜かれる場合には、この導体ブロックは、逆電流が流れる導体部材として機
能する。
【0015】 電流をビーム間容積内に強制するために、導体ブロックは、ビーム間容積を取
り巻く中央部分に、該中央部分の周りに配置されたブロックの周辺部分を占有す
るものよりも低い抵抗を有している。
【0016】 これらの種々の抵抗を得るために、中央部分は第1の材料により、周辺部分は
第2の材料によってそれぞれ構成され、該第2の材料が最も高い抵抗を有してい
る。
【0017】 また、ブロックの周辺部の周囲に、その点における抵抗を増加させるためにシ
ケインを形成することも好ましい。 2つの連続するキャビティが、導体ブロックと一体的な共通の壁を有する場合
には、導体ブロックおよびこの共通壁内に抵抗性インサートが含まれていてもよ
く、この抵抗性インサートは、該インサート周りのループおよび該インサート各
側部の共通壁において反対方向に、前記導体ブロック内に逆電流を流通させる。
【0018】 逆電流の流通を許容する手段は、本体の入力近傍に配される第1の接続手段と
、本体の出力近傍に配される第2の接続手段とを具備し、これら接続手段が、逆
電流を供給する必要がある電源に接続するために使用される。
【0019】 導体部材が本体内に組み込まれている態様では、本体および/またはコレクタ
は、通常は電気的接触状態にある種々の部材から電気的に絶縁されなければなら
ない。 ドリフト管が同じ導体ブロック内にくり抜かれない態様では、ビーム間容積は
ドリフト管内で中空であり、その内部に、本体といかなる電気的な接触をも生じ
ることなく、前記ドリフト管とほぼ平行となるように、導体部材を収容すること
ができる。
【0020】 この導体部材は、キャビティの入力および出力に、硬質部分を具備し、キャビ
ティをまたぐと同時にキャビティの両側に接続される2つの硬質部分を接続する
柔軟な接続部を具備していてもよい。
【0021】 この発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照した、この発明に係るマル
チビーム電子管の実施形態についての説明を読むことにより明らかになる。 図1aは、この発明に係るマルチビーム電子管の本体を示す断面図である。 図1bは、電子ビームにより誘起される磁場を示している。 図2は、この発明に係るマルチビームクライストロンを示す縦断面図である。 図3aおよび図3bは、内部に組み込まれた導体部材を有する、この発明に係
るクライストロンの本体の部分的な縦断面図および横断面図である。 図4aおよび図4bは、本体から絶縁された導体部材を有する、この発明に係
るクライストロン本体の部分的な縦断面図および横断面図である。 図5a,図5b,図5cは、本体から絶縁された導体部材を有する、この発明
に係るクライストロン本体の部分的な縦断面図および横断面図である。 図6は、この発明に係るマルチビーム進行波管を示す縦断面図である。
【0022】 図1aは、マルチビーム電子管の電子ビーム1〜7を、断面において示してい
る。これらのほぼ平行なビームは、本体内部のドリフト管13内に収容されてい
る。これらのドリフト管13は、電子管の本体10の一部を構成する同じ導体ブ
ロック15内にくり抜かれている。これらの内の1つのビーム1は、点0を通過
し紙面に垂直な中心軸に中心合わせされている。他のビーム2〜7は、点0を中
心とする円上に配置され、偏心している。通常は、それらは、相互に対して、ほ
ぼ等距離に配されている。
【0023】 図1bを見ると、電流Iiからなるビームiが、該ビームの軸から距離dだけ
離れた点Nにおいて、ビームiに直交する面内で、ほぼ、 bθi=μIi/2πd に等しい磁場bθiを生起している。ここで、μは、媒体の透磁率である。
【0024】 したがって、図1aにおける電子管の少なくとも1つの偏心ビーム7は、一方
では、偏向しない求心収束力を発生するそれ自体の磁場bθ7にかけられ、他方
では、他の全てのビーム1〜6によって誘起される磁場bθ1,bθ2,bθ
,bθ4,bθ5およびbθ6の合成磁場Bθ、すなわち、
【数1】 にかけられる。
【0025】 この合成磁場Bθは、中心軸から離れる方向にビーム7を偏向させる半径方向
の遠心力を発生する。中心ビーム1に関しては、それが1つである場合には、対
称性があるために偏向されることはない。
【0026】 ここで、図2を参照すると、この発明に係るマルチビーム電子管が示されてい
る。この電子管は、マルチビームクライストロンである。この電子管は、軸線X
X′の周りに構成されている。
【0027】 電子管は、同時に参照される図1aに示されたものと同様に配置された、符号
1〜7を有する複数のビームを有すると仮定する。これら7つのビームの内、符
号2〜7の6本のビームは、ビーム間容積22を画定している。一例では、それ
らは、半径aの円上に配置され、ビーム間容積22は円柱状である。最後のビー
ム1は、軸線XX′上に心合わせされ、他のビームは偏心している。ビーム1〜
7は、電子銃17によって生成される。その後、これらビーム1〜7は、それら
が通過する本体10に入り、その出力において、コレクタ11内に収集される。
電子銃17は、高電圧源A1によって供給される適当な電位Vkに配されたとき
に、ビーム1〜7を生起する7個の陰極18を有している。また、電子管は、本
体10の入力Eに向けて電子を加速する陽極16をも具備している。この陽極は
、陰極の電位Vkよりも負ではない電位に配されている。図2においては、3個
の陰極のみが示されている。
【0028】 本体10は、キャビティ20とドリフト管13とを交互に配して構成されてい
る。キャビティ20は、側壁27を具備している。ビーム1〜7は、最初のキャ
ビティ20を貫通する前、最後のキャビティ20を出る際、および、より一般的
には、各キャビティ20間において、ドリフト管13内に収容される。本体10
は管状のフォーカサー12内に配置される。本体10は入力極片19.1の後に
始まり、出力極片19.2の前で終了する。
【0029】 ビーム間容積22を画定するビーム2〜7の各々には、それらを偏向させるピ
ンぼけ方位磁場が作用する。この方位磁場は、図1において説明したように、他
の磁場の全てによって誘起される。この誘起される方位磁場の影響を減衰または
消滅させることを試みるために、この発明に係るマルチビーム電子管は、本体1
0内に、ビーム間容積22内に配置される少なくとも1つの導体部材23におい
て、全てのビームにより運ばれる電流Iとは反対方向に、逆電流I′が流通する
ことを許容する手段Mを具備している。この逆電流I′は、動揺したビーム2〜
7内に、誘起された方位磁場Bθとは反対方向に向かう補正方位磁場B′θを生
起する。
【0030】 図2に示される例では、導体部材23は、電子管の本体10内に組み込まれ、
逆電流I′の流通を許容する手段Mは、本体10の入力近傍にアース接続部Pを
具備し、それによって、逆電流I′が、該アースにより閉じられた全てのビーム
により運ばれる電流Iから生成される。コレクタ11は、もちろん、陰極18の
電位Vkとアース電位との間の中間電位Vcに配される。
【0031】 キャビティ20の入力および出力には、図1aに示されたようなビーム1〜7
と同数のドリフト管13がくり抜かれた導体ブロック15が配置されている。
【0032】 これらの導体ブロック15は、内部を逆電流I′が流通する導体部材23を構
成している。図1aでは、図示された導体ブロック15は、半径a+g+tの円
柱であり、ここで、gは、ドリフト管の半径、tは、ドリフト管13とブロック
15のエッジとの間に配置された材料の厚みである。この厚みtは、本体10の
内部を密封するのに寄与している。
【0033】 図2に示された形態では、逆電流I′は本体10全体を、ビーム1〜7の電流
Iとは反対方向に流通するが、ビーム間空間22の内部を流れる部分のみが補正
を提供する。ビーム間容積22の外部を流れる部分、特に、キャビティの側壁2
7を流れる部分は、補正には関係しないが、全く動揺を誘起しない。
【0034】 図2に示された例では、アース接続部Pは、電子銃17の陽極16に配置され
ている。アース接続を入力極片19.1に配置することも考えられる。この入力
極片19.1は、陰極18が、フォーカサー12の磁場によって動揺させられる
ことを防止する。
【0035】 この形態では、陰極18の電位Vkは、該陰極18とアース接続部Pとの間に
接続された電源A1によって供給される。 一般に、この種の電子管では、アース接続は、コレクタ11、または、該コレ
クタ11がベース10から電気的に絶縁されている場合には、コレクタ11に収
集された電子がフォーカサー12の磁場によって動揺させられることを防止する
出力極片19.2において行われる。
【0036】 電子管の本体10に組み込まれた導体部材23に逆電流I′を流通させること
は、この本体10および/またはコレクタ11が、従来技術の従来の形態では電
気的に接触状態にあった電子管の他の構成部品に対して電気的に絶縁されている
ことを必要とする。特に、フォーカサー12は、誘電部材24.1を用いて、本
体10から電気的に絶縁される。この例では、絶縁は、入力および出力極片19
.1,19.2によって達成される。これらの極片19.1,19.2は、従来
の電子管では、その入力Eおよびその出力Sにおいて本体と接触状態である。例
えば、フォーカサー12と極片19.1,19.2との間に挿入されたPTFE
シート24.1が使用される。また、最後のキャビティ20内に、伝達ガイドが
配置されている。入力導波管25.1が、第1のキャビティ20に接続され、増
幅すべき信号をキャビティ20に入射することを可能にする。この導波管25.
1は、絶縁カラー24.2によって本体10から電気的に絶縁されている。最後
の導波管20は、電子管によって生成されたマイクロ波エネルギをユーザ装置(
図示略)に送信することを目的とした出力導波管25.2に連通している。この
導波管25.2は、絶縁カラー24.2によって本体10から電気的に絶縁され
ている。
【0037】 一般に、冷却装置26が、コレクタ11の周り、および、本体10の周りにも
設けられている。この冷却装置26は、コレクタ11および必要であれば本体1
0から電気的に絶縁される。この絶縁は、冷却装置を、例えば、抵抗性冷媒を流
通させる少なくとも1つのブラスチック製ダクト28のような誘電材料から構成
することにより得られてもよい。冷媒としては脱イオン水が使用されてもよい。
【0038】 計算により、正確な補償を提供する逆電流I′は、I′=(1/2)Iである
ことを示しており、ここで、Iは、電子管の全てのビーム1〜7の総電流に相当
している。 他のビームによりビーム間空間22を画定するビームの内の1つに誘起される
方位磁場は、ビーム間空間を画定するビームが半径aの円上に配列されている場
合には、 Bθ=μI/4πa によって与えられる。
【0039】 ビーム1〜7の総電流Iが、半径a+g+tの断面を有する導体ブロック15
内で流通させられる場合には、逆電流I′は、 I′≒Ia/(a+g+t) で与えられ、この逆電流I′は、a,g,tの値が、比a/(a+g+t) が0.5に等しいような値である場合には、明らかに正確な補償を許容する。
【0040】 a=21.8mm,g=6mm,t=3mm等とすれば、最適な結果が得られ
る。寸法a,g,tは、図1aに示されているが、等しい縮尺で示されているわ
けではない。
【0041】 本体10全体を流通する電流から最適な逆電流I′を得ることを可能とする1
つの方法は、電流を、ビーム間容積に優先的に通過させることである。 図3a,図3b,図4a,図4bは、ビーム間容積内の電流が2つの好ましい
方法で与えられる、この発明に係るマルチビームクライストロンの本体10の一
部を示す縦断面図および横断面図である。
【0042】 2つの連続するキャビティ20が、図3aに概略的に示されている。それらは
、図4aには、簡略化のために示されていない。図3b,図4bの横断面は、切
断面aaに沿って切断した断面図である。
【0043】 図3a,図3bにおいて、導体ブロック15は、周辺部32によって取り囲ま
れた中央部31から構成されている。ドリフト管13は、中央部31に配置され
ている。ビーム間容積22の境界は、図3bに破線で示され、ドリフト管13の
中心を通る円にほぼ一致しており、中央部分31はビーム間容積22を取り囲ん
でいる。
【0044】 少なくとも1つのブロックに対して、中央部分31を第1の材料から構成し、
周辺部分32を第2の材料から構成し、これらの材料を、第1の材料の抵抗率が
第2の材料の抵抗率よりも低くなるように選択することにより、このビーム間容
積22を通る優先的な流れが明確に得られる。
【0045】 中央部分31を、例えば、銅から構成し、周辺部分をステンレス鋼から構成し
ていてもよい。他の選択も可能である。周辺部分32の材料の選択は、所望の密
封手段と適合性がなければならない。
【0046】 少なくとも1つのブロック15の周辺における抵抗率を、ビーム間容積におけ
る抵抗率に対して増加させる他の方法は、ブロック15の周囲にシケイン33を
切り込むことである。これらのシケイン33は、図4aおよび図4bに示されて
いる。このシケインを有する形態は、図4に示されるように、図3a,図3bに
示された形態と組み合わせてもよいが、その必要性はない。
【0047】 ビーム電流Iから生ずる逆電流I′に代えて、逆電流I′を流通させる手段M
は、一方が本体10の入力E近傍に配され、他方が出力Sの近傍に配される2つ
の接続手段C1,C2を含むことができ、これらの接続手段は、逆電流I′を供
給しなければならない低電圧源A2の端子に接続することを意図している。(後
述する)図6は、マルチビーム進行波管に適用されるこの特徴を示している。も
ちろん、これをマルチビームクライストロンに適用することもできる。
【0048】 上述したマルチビームクライストロンでは、ビームの経路の補償は、逆電流が
ビーム間容積内、すなわち、ドリフト管13内を流通する点において生ずる。し
かしながら、これらのドリフト管13は、本体10の長さのほぼ75%を占有し
、そのことは、ビームの長さの25%のみが補正を受けないことを意味するが、
このことは問題になるほどものもではない。キャビティ20の入力および出力に
おける好適な補正が、必要であれば、この望ましくない偏向効果を低減するため
に考案されてもよい。
【0049】 ドリフト管13が同じ導体ブロック15内にくり抜かれず、キャビティ30に
接続された管13によって製造され、相互に分離されている形態では、ビーム間
容積22は導体材料によって満たされていない。 図5a,5bは、この特徴を有するマルチビームクライストロン本体を示す部
分的な縦断面図および横断面図である。
【0050】 この場合には、逆電流I′が流通する導体部材23は、本体10から電気的に
絶縁されかつ分離されている。導体部材23は、ビーム間容積22内に、ドリフ
ト管13と平行に、該ドリフト管13またはキャビティ20と電気的に接触する
ことなく延びている。該導体部材23は、キャビティの入力および出力に配置さ
れた硬質の導体部分34から構成され、これらの部分は、アルミナのような絶縁
体37によって被覆された硬質の導体棒とすることもできる。
【0051】 本体の全長にわたって、一連の硬質の胴体部分34が存在し、キャビティ20
の各側部に配置された2つの硬質の胴体部分34が、キャビティ20をまたぐ柔
軟な接続部材35によって接続されている。この柔軟な接続部材35は、絶縁体
で被覆された金属編組体でよい。
【0052】 逆電流I′の流通を許容する手段Mは、導体部材23の2つの端部に、逆電流
I′を供給する電源A2に接続することを目的とした接続手段C1,C2を具備
している。
【0053】 図5cに示されるように、電子管が中央ビームを有していない場合には、単一
の導体部材23が中央に設けられているだけで十分である。図5bに示されるよ
うに、電子管が中央ビームを有する場合には、複数の導体部材23が望ましく、
これらは、中央ビーム1と、ビーム間容積22を画定するビーム2〜7との間に
配置される。
【0054】 ビームの内の1つに、他のビームにより誘起された望ましくない磁場は、定常
状態、または、長いパルス持続時間で作動する場合にのみ電子管内に現れる。こ
れは、遠距離通信用途、産業上または科学的用途、およびレーダに使用される多
くの電子管の場合である。
【0055】 なぜなら、ビームが本体10内に入射されるたびごとに、一定時間にわたって
、ドリフト管内に、磁場により誘起される動揺に対抗する渦電流を誘起するから
である。
【0056】 電子管のパルス反復周波数をFとして、磁場により誘起された動揺が通過可能
な材料の厚さeは、
【数2】 で与えられる。ここで、ρは材料の抵抗率を単位Ωcmで示したもの、μは材
料の相対的透磁率である。銅に対しては、ρは1.72×10−6Ωcm、μ =1である。
【0057】 電子管が、厚さe=16mmの銅により分離されたリング内に6個のビームを
有する場合には、パルス反復周波数Fは、せいぜい17Hzであり、この値は、
パルスが、ピンぼけ効果を生ずることなく30〜40msにわたって持続するこ
とができる時間である。
【0058】 マルチビームクライストロンにおける伝送の問題は、電力が高くかつパルスが
長いほど大きい。 上述した電子管はクライストロンである。この発明に係るマルチビーム電子管
は、図6に示されるように、進行波管であってもよい。
【0059】 この種の電子管において、本体10は、共通壁36に配置される絞り21によ
って相互に結合された一連のキャビティ30から構成される。ビーム1〜7は、
第1のキャビティ30を貫通する前、最後のキャビティ30を出る際、および、
さらに一般的には、キャビティ30間で、ドリフト管13内に収容される。しか
し、ここでは、ドリフト管13は本体10の長さの50%より少ない範囲を占有
しており、このことは、得られる補正があまり効率的ではないが、それにもかか
わらず有効であることを意味している。ドリフト管13がくり抜かれる導体ブロ
ックは符号15で示され、共通壁36は導体ブロック15と一体的である。
【0060】 取り得る最長の長さにわたるビーム間容積22における逆電流I′の流れを都
合良くするために、導体ブロック15および共通壁36内に、逆電流I′が迂回
することになる抵抗性インサート200を含ませることができる。これらのイン
サート200は、図6に、相互に固定された2つの部分201,202として示
されている。導体ブロック15内に配置された第1の部分201はドリフト管1
3を取り囲む管状の形態を有している。逆電流I′は、第1の部分201の周り
のループとして、導体ブロック15内を流れる。
【0061】 第2の部分は、第1の部分から、共通壁36の厚みの中にフランジ状に延びて
いる。 逆電流I′は、第2の部分202の両側において、反対方向に、共通壁36の
内部を流れる。
【0062】 ブロック15の半径方向の断面をとることにより、インサート200はT字状
断面を有し、その脚部は、第2の部分202であり、その横棒は第1の部分20
1である。インサート200の周りを流れる逆電流I′の流れは、図6の円で囲
んだ詳細図に示されている。 インサート200は、例えば、ステンレス鋼、アルミナ、または、凹所から構
成されていてもよい。
【0063】 逆電流I′の流れを許容する手段Mは、2つの接続手段C1,C2を具備して
いる。接続手段C1は本体10の入力E近傍に配置され、他の接続手段C2は、
本体10の出力S近傍に配置され、これらの接続手段C1,C2は、逆電流I′
を供給する低電圧源A2の端子e1,e2に接続されるようになっている。図6
において、第1の接続手段C1は、入力極片19.1に配され、第2の接続手段
C2は、コレクタ11のベースに配されている。第1の接続手段C1は陽極16
に配され、第2の接続手段C2は出力極片に配されていてもよい。上述した例で
は、第2の接続手段C2はアース電位であるが、他の電位を採用してもよい。
【0064】 低電圧源A2と直列に接続された適当に選択された抵抗Rによって、逆電流の
値を調節することができる。 図6では、他の電源A1が、従来のように示されている。該電源A1は、陰極
18とコレクタ11との間に接続され、ビーム1〜7を生成するように機能する
。これは高電圧源である。 この発明に係るマルチビーム電子管は、現存する電子管と比較して変更した構
造を有するものではなく、必要なことは、上述した接続を提供することである。
【図面の簡単な説明】
【図1a〜b】 図1aは、この発明に係るマルチビーム電子管の本体を示
す断面図である。図1bは、電子ビームにより誘起される磁場を示している。
【図2】 この発明に係るマルチビームクライストロンを示す縦断面図であ
る。
【図3a〜b】 内部に組み込まれた導体部材を有する、この発明に係るク
ライストロンの本体の部分的な縦断面図および横断面図である。
【図4a〜b】 本体から絶縁された導体部材を有する、この発明に係るク
ライストロン本体の部分的な縦断面図および横断面図である。
【図5a〜c】 本体から絶縁された導体部材を有する、この発明に係るク
ライストロン本体の部分的な縦断面図および横断面図である。
【図6】 この発明に係るマルチビーム進行波管を示す縦断面図である。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年9月11日(2000.9.11)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正内容】

Claims (20)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 本体(10)を通過するほぼ平行な複数の電子ビーム(1〜
    7)を具備し、これらビーム(1〜7)の内、少なくともいくつかのビーム(2
    〜7)が、他の全てのビームにより誘起される動揺する方位磁場(Bθ)にかけ
    られるビーム間容積(22)を画定するマルチビーム電子管であって、 前記ビーム間容積(22)内に配置された少なくとも1つの導体部材(23)
    に、前記ビーム(1〜7)の電流(I)の方向とは反対方向の逆電流(I′)の
    流通を許容する手段(M)を具備し、この逆電流(I′)が、ビーム間容積(2
    2)を画定するビーム(2〜7)に、動揺する磁場(Bθ)を妨害するための補
    正磁場を発生することを特徴とするマルチビーム電子管。
  2. 【請求項2】 前記導体部材(23)が、前記電子管の本体(10)内に組
    み込まれていることを特徴とする請求項1記載のマルチビーム電子管。
  3. 【請求項3】 前記ビーム(1〜7)の電子を出射する1以上の陰極(18
    )を具備する電子銃(17)を具備し、これらのビームが入力(E)から出力(
    S)に向かって前記本体(10)を通過して、出力(S)において、少なくとも
    1つのコレクタ(11)によって収集され、 前記逆電流(I′)の流通を許容する手段(M)が、前記本体(10)の入力
    (E)近傍のアース接続部を具備し、それによって、逆電流(I′)は、このア
    ースにより閉じられたビーム(1〜7)の電流(I)から生じ、前記コレクタ(
    11)が、アース電位と前記陰極(18)の電位(Vk)との間の中間電位(V
    c)に配されることを特徴とする請求項1または請求項2記載のマルチビーム電
    子管。
  4. 【請求項4】 前記アース接続部(P)は、前記電子銃(17)が設けられ
    る陽極(16)に配置されていることを特徴とする請求項3記載の電子管。
  5. 【請求項5】 前記アース接続部(P)は、前記本体(10)の入力(E)
    に配置された入力極片(19.1)に配置されていることを特徴とする請求項3
    記載の電子管。
  6. 【請求項6】 前記アース接続部(P)は、前記陰極(18)に電位(Vk
    )を供給する電源(A1)に接続するものであることを特徴とする請求項3から
    請求項5のいずれかに記載の電子管。
  7. 【請求項7】 前記逆電流(I′)の流通を許容する手段(M)が、前記本
    体の入力(E)近傍の第1の接続手段(C1)と、前記本体の出力(S)近傍の
    第2の接続手段(C2)とを具備し、これらの接続手段(C1,C2)が、逆電
    流(I′)を供給するための電源(A2)に接続されるものであることを特徴と
    する請求項1または請求項2記載の電子管。
  8. 【請求項8】 前記本体(10)が、連続するキャビティ(20,30)を
    具備し、前記ビーム(1〜7)が、前記キャビティ(20,30)の入力および
    出力において、導体ブロック(15)内にくり抜かれたドリフト管(13)内に
    収容され、これらの導体ブロック(15)が、導体部材(23)として機能する
    ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の電子管。
  9. 【請求項9】 少なくとも1つの導体ブロック(15)が、前記ビーム間容
    積を取り囲む中央部分(31)に、該中央部分(31)を取り囲む周辺部分(3
    2)の抵抗より小さい抵抗を有することを特徴とする請求項8記載の電子管。
  10. 【請求項10】 前記中央部分(31)が第1の材料からなり、前記周辺部
    分(32)が第2の材料からなり、第1の材料が、第2の材料よりも低い抵抗率
    を有することを特徴とする請求項9記載の電子管。
  11. 【請求項11】 前記少なくとも1つのブロック(15)の周辺部分に、該
    周辺部分の抵抗率を増加させるために、その周面にシケイン(33)が設けられ
    ていることを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の電子管。
  12. 【請求項12】 2つの連続するキャビティ(30)が、導体ブロック(1
    5)上に支持される共通壁(36)を具備し、前記導体ブロック(15)および
    前記共通壁(36)が、抵抗性インサート(200)を具備し、該インサートが
    、逆電流(I′)を、前記導体ブロック(15)内で該インサート周りのループ
    として、かつ、共通壁(36)内では該インサート(200)の両側で反対方向
    に流通させることを特徴とする請求項8記載の電子管。
  13. 【請求項13】 前記ビーム(1〜7)が、コレクタ(11)において収集
    され、かつ、前記本体(10)および/またはコレクタ(11)と相互作用する
    1以上の装置(26,25,12)を具備し、 これらの装置(26,25,12)が、本体(10)および/またはコレクタ
    (11)から電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項2から請求項12
    のいずれかに記載の電子管。
  14. 【請求項14】 前記本体および/または前記コレクタから電気的に絶縁さ
    れた装置として、抵抗性流体が流通する絶縁材料からなる少なくとも1つのダク
    ト(28)から構成される、前記本体および/または前記コレクタを取り囲む冷
    却装置(26)を含むことを特徴とする請求項13記載の電子管。
  15. 【請求項15】 前記本体(10)から電気的に絶縁された装置として、そ
    の内部に前記本体(10)を配置する管状のフォーカサー(12)を含み、誘電
    部材(24.1)が、本体(10)を前記フォーカサーから絶縁するために、本
    体(10)の入力(E)および出力(S)に配置されていることを特徴とする請
    求項13または請求項14記載の電子管。
  16. 【請求項16】 前記本体(10)から電気的に絶縁された装置として、誘
    電カラー(24.2)により前記本体(10)から絶縁された少なくとも1つの
    伝送ガイド(25.1,25.2)を含むことを特徴とする請求項13から請求
    項15のいずれかに記載の電子管。
  17. 【請求項17】 前記本体(10)が、連続したキャビティ(20)を具備
    し、前記ビーム(1〜7)が、キャビティ(20)の入力および出力において、
    相互に絶縁されたドリフト管(13)内に収容され、 前記導体部材(23)が、細長く、前記ドリフト管または前記キャビティのい
    ずれとも電気的な接触をすることなしに、前記ドリフト管(13)に平行なビー
    ム間容積(22)内に延びていることを特徴とする請求項1記載の電子管。
  18. 【請求項18】 前記導体部材が、前記キャビティ(20)の入力および出
    力に、硬質の導体部分(34)を具備し、前記キャビティの両側に配される2つ
    の連続する導体部分(34)が、前記キャビティ(20)をまたぐ柔軟な接続部
    (35)によって接続されていることを特徴とする請求項17記載の電子管。
  19. 【請求項19】 前記導体部材(23)が、絶縁材で被覆されていることを
    特徴とする請求項17または請求項18記載の電子管。
  20. 【請求項20】 前記逆電流(I′)の流通を許容する手段(M)が、前記
    導体部材(23)の両側に、それらを、逆電流(I′)を提供するために必要な
    電源(A2)の端子に接続する接続手段(C1,C2)を具備することを特徴と
    する請求項17から請求項19のいずれかに記載の電子管。
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