JP2002520007A - Delta切断産物およびそれに基づく方法 - Google Patents

Delta切断産物およびそれに基づく方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、Delta切断ペプチド、その断片、誘導体および類似体、ならびにそれをコードする核酸に関する。本発明はまた、可溶性のDeltaペプチド、その断片、誘導体および類似体、ならびにそれをコードする核酸に関する。さらに、本発明は、Delta活性化の指標となるDelta切断産物を観察または測定することによりDelta活性化を検出または測定するための方法に関する。本発明はまた、Kuz活性化の指標となるDelta切断産物を観察または測定することによりKuz活性化を検出または測定するための方法に関する。本発明はさらに、Delta切断産物の量またはパターンの変化を観察または測定することにより、Delta活性化またはKuz機能をモジュレートする分子を検出するための方法に関する。本発明は、少なくとも一部には、活性形態のDelta(すなわち、シグナル伝達を仲介しかつNotchと結合する形態)が細胞外ドメインからなる可溶性断片である、という発見に基づくものである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本出願は、1998年10月19日出願の米国仮出願第60/104,834号、および1998年7
月13日出願の米国仮出願第60/092,513号の優先権の利益を主張するものであり、
これらそれぞれの記載内容は全文が本明細書中に参照により組み込まれるものと
する。
【0002】1.発明の属する技術分野 本発明は、メタロプロテアーゼ-ディスインテグリン(metalloprotease-disint
egrin)Kuzbanian(Kuz)(Delta切断ペプチド)によって切断される配列を含む
トポリスミックタンパク質Delta(toporythmic protein Delta) 、およびその誘
導体および類似体のペプチド、並びにそれをコードする核酸に関する。本発明は
、また、トポリスミックタンパク質Deltaの細胞外可溶性ペプチド(「可溶性 Del
ta ペプチド」または「DlEC」)およびその誘導体および類似体、ならびにそれを
コードする核酸に関する。Delta切断ペプチドまたはDlEC、およびその誘導体、
ならびにそれらに対する抗体の生成も提供する。本発明は、Deltaの活性化の指
標であるDelta切断産物の観察または測定によって、Delta活性化を検出または測
定する方法にも関する。本発明は、また、Delta切断産物の量またはパターンの
変化を観察または測定することによって、Delta活性化を調節する分子を検出す
る方法にも関する。本発明は、さらに、Kuzの機能の指標であるDelta切断産物の
観察または測定によって、Kuz機能を検出または測定する方法に関する。本発明
は、また、Delta切断産物の量またはパターンの変化を観察または測定すること
によって、Kuz機能を調節する分子を検出する方法にも関する。本発明は、Delta
とKuzからなる、およびDlECとNotchからなるタンパク質複合体、並びにスクリー
ニング、診断、および治療にそれらを利用する方法にも関する。
【0003】2.発明の背景 Notchのシグナル経路の明確な要素を規定する遺伝子群の同定は、遺伝的およ
び分子的研究により導かれた。当初の導入として、遺伝学的手法を用いて、もっ
ぱらショウジョウバエ(Drosophila)において、これらの多様な因子が同定され
たが、その後の解析により、ヒトを含む脊椎動物種での相同タンパク質の同定が
なされた。図1は、既知のNotch経路の要素間の分子の関係、ならびにそれらの
細胞内局在を示す(Artavanis-Tsakonas ら、1995、Sience 268: 225-232)。
【0004】 ショウジョウバエのNotch遺伝子は、発生全体に渡って細胞の運命を支配する
細胞-細胞間シグナリング機構の受容体として作用する〜300kDの膜貫通タンパク
質をコードする(例えば、Artavanis-Tsakonas ら、1995、Sience 268: 225-232
に概説されている)。ヒトを含む多くの脊椎動物種から、ショウジョウバエのNo
tchと近縁関係にある相同体が、脊椎動物の染色体に存在する、ショウジョウバ
エの単一の該遺伝子に相当する多くのパラログ(paralog)と共に、単離された
。元来hNと呼ばれていたヒトのNotchパラログのC-末端をコードするcDNAクロー
ンの単離が報告された(Stifani ら、1992、Nature Genetics 2: 119-127)。そ
れがコードするタンパク質は、他の種で発見されたNotch2タンパク質に近縁で
あることから、ヒトNotch2と称された(Weinmaster ら、1992、Development 11
6: 931-941)。Notch2の構造の特徴は、全てのNotch関連タンパク質に共通であ
り、細胞外ドメインに一続きの34から36個の上皮細胞成長因子(EGF)様タンデ
ムリピートおよび3個のLin-12/ Notchリピート(LNリピート)を含み、細胞内ド
メインには6個のアンキリンリピートおよびPEST-含有領域を含んでいる。ショウ
ジョウバエのNotch、ならびに線虫(C.elegans)の関連遺伝子lin-12およびglp-
1 (Sternberg、1993、Current Biology 3: 763-765; Greenwald、1994、Curren
t Opinion in Genetics and Development 4: 556-562)と同じく、脊椎動物のNo
tch相同体は、細胞の運命の決定づけを支配することによって、様々な発生段階
において作用する(例えば、Braumueller およびArtavanis-Tsakonas、1997、Pe
rsp. on Dev. Neurobiol. 4: 325-343などに概説されている)(さらにヒトNotc
h配列については、国際公開第WO 92/19734号公報参照のこと)。
【0005】 Notchの細胞外ドメインは36個の上皮細胞成長因子(EGF)様リピートを含み、
そのうちの2個(リピート11および12)は、NotchリガンドであるSerrateおよびD
eltaとの相互作用に関係している。DeltaおよびSerrateは、EGF相同的細胞外ド
メインを持つ膜結合型リガンドであり、これらが隣接する細胞上のNotchと物理
的に相互作用してシグナリングの引き金をひく。
【0006】 Notch受容体の末端切断型の発現を含む機能解析により、受容体活性化が、細
胞内ドメイン中の6個のcdc10/アンキリンリピートに依存していることが示唆さ
れた。DeltexおよびSuppressor of Hairlessは、過剰発現すると該経路の明らか
な活性化を誘起するが、これらは該リピートに会合する。
【0007】 Deltexは細胞質タンパク質であり、環状ジンクフィンガーを有する。一方、Su
ppressor of Hairlessは、エプスタインバールウイルス(Epstein-Barr virus
)により誘導されるB細胞不死化に関与する哺乳動物のDNA結合タンパク質である
CBF1のショウジョウバエ相同体である。少なくとも培養細胞においては、Notch
受容体が隣接する細胞上のリガンドのDeltaと相互作用する際に、Suppressor of
Hairlessは細胞質内でcdc10/アンキリンリピートと会合し、核に移行すること
が示されている(Fortini 及び Artavanis、1994、Cell 79: 273-282)。新規核タ
ンパク質であるHairlessのSuppressor of Hairlessとの会合は、酵母ツーハイブ
リッド系で実証され、従って、Suppressor of Hairlessの転写への関与は、Hair
lessによって調節されていると思われる(Brouら、1994、Genes Dev. 8: 2491;
Knust ら、1992、Genetics 129: 803)。
【0008】 最後に、Notchシグナリングは、少なくともSplit複合体のエンハンサー内の特
定の塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス(bHLH)遺伝子を活性化することが判
っている(Delidakis ら、1991、Genetics 129: 803)。Notchシグナリングに対
する関係は不明であるが、遺伝学的解析によりNotch経路に関与していることが
示されている新規な遍在性核タンパク質が、黒幕的遺伝子によりコードされてい
る(Smollerら、1990、Genes Dev. 4: 1688)。
【0009】 Notch経路の普遍性は様々なレベルで現れる。遺伝子レベルでは、ショウジョ
ウバエにおいて非常に広範な範囲の細胞種の発生に影響する多くの変異が存在す
る。マウスのノックアウト変異は胚性致死であり、Notchの機能の基礎的な役割
と一致している(Swiatek ら、1994、Genes Dev. 8: 707)。ヒトの造血系にお
けるNotch経路の変異は、リンパ芽球性白血病に関連している(Ellison ら、199
1、Cell 66: 649-661)。最後に、発生段階にあるアフリカツメガエル胚におけ
るNotchの変異型の発現は、正常な発生を大きく妨げる(Coffman ら、1993、Cel
l 73: 659)。ヒトのいくつかの悪性組織中においてNotch発現レベルの増加が見
つかっている(国際公開第WO 94/07474号公報)。
【0010】 ショウジョウバエ胚におけるNotch発現パターンは、複雑かつ動的である。該N
otchタンパク質は、早期胚では広範に発現し、その後、発生が進むと、中立また
は増殖性の細胞群に限定されるようになる。成体では、その発現は、卵巣および
精巣の再生組織に限られている(Fortini ら、1993、Cell 75: 1245-1247; Jan
ら、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 8305-8307; Sternberg、1993、Cur
r. Biol. 3:763-765; Greenwald、1994、Curr. Opin. Genet. Dev. 4: 556-562;
Artavanis-Tsakonas ら、1995、Sience 268: 225-232)。ゼブラフィッシュお
よびアフリカツメガエルにおける、既知の3個の脊椎動物のNotch相同体のうちの
一つであるNotch1の発現に関する研究により、その全体的なパターンは、一般的
に最終分化をしていない増殖性の細胞群に関係するNotchの発現と類似している
ことが示された。高い発現レベルを示す組織には、発達中の脳、目、および神経
管がある(Coffman ら、1990、Sience 249: 1438-1441; Bierkamp ら、1993、Me
ch. Dev. 43: 87-100)。哺乳動物における研究では、対応するNotch相同体の発
現が発生後期に始まることが示され、細胞の運命づけが行われている組織、また
は迅速に増殖が起こっている組織において、該タンパク質は、動的パターンを示
す発現があることが判った(Weinmaster ら、1991、Development 113: 199-205;
Reaume ら、1992、Dev. Biol. 154: 377-387; Stifani ら、1992、Nature Gene
t. 2: 119-127; Weinmaster ら、1992、Development 116: 931-941; Kopan ら
、1993、J. Cell Biol. 121:631-641; Lardelli ら、1993、Exp. Cell Res. 204
: 364-372; Lardelli ら、1994、Mech. Dev. 46: 123-136; Henrique ら、1995
、Nature 375: 787-790; Horvitz ら、1991、Nature 351: 535-541; Franco del
Amo ら、1992、Development 115: 737-744)。哺乳動物のNotch相同体が最初に
発現する組織には、胚の体節形成前中胚葉および発生過程にある神経上皮がある
。体節形成前中胚葉において、Notch1の発現が移行した中胚葉の全てに認めら
れ、体節形成前中胚葉の前縁部では特に濃いバンドが認められる。体節が形成さ
れると、この発現は減少することが示され、体細胞性前駆細胞の分化においてNo
tchが作用することを示している(Reaume ら、1992、Dev. Biol. 154: 377-387;
Horvitz ら、1991、Nature 351: 535-541)。マウスのDeltaでも同様の発現パ
ターンが認められる(Simske ら、1995、Nature 375: 142-145)。
【0011】 哺乳動物の神経系の発生中には、Notch相同体の発現パターンは、脊髄の脳室
域の特定の領域、並びに末梢神経系の構成要素において顕著に認められ、これら
のパターンは重複はするが同一ではないことが示されている。神経系におけるNo
tchの発現は、細胞増殖をする領域に限定されており、分化したばかりの細胞の
近傍の群では消失している(Weinmaster ら、1991、Development 113: 199-205;
Reaume ら、1992、Dev. Biol. 154: 377-387; Weinmaster ら、1992、Developm
ent 116: 931-941; Kopan ら、1993、J. Cell Biol. 121:631-641; Lardelli
ら、1993、Exp. Cell Res. 204: 364-372; Lardelli ら、1994、Mech. Dev. 46:
123-136; Henrique ら、1995、Nature 375: 787-790; Horvitz ら、1991、Natu
re 351: 535-541)。ラットのNotchリガンドもまた、発達中の脊髄に発現し、脳
室域にNotch遺伝子の発現領域と重複する明瞭なバンドを示す。係るリガンドの
空間-時間的な発現パターンは、脊髄神経の運命を担った細胞のパターンとよく
相関しており、このことは、神経に運命づけられた細胞群のマーカーとしてのNo
tchの有用性を示している(Henrique ら、1995、Nature 375: 787-790)。また、
このことは、発現領域がNotch1の発現領域とも重複する、セキツイ動物のDelta
相同体についても示唆された(Larsson ら、1994、Genomics 24: 253-258; Fort
ini ら、1993、Nature 365: 555-557; Simske ら、1995、Nature 375: 142-145
)。アフリカツメガエルとニワトリの相同体の場合は、Deltaは、実際に、Notch
1の発現領域内の散在する細胞にのみ発現しており、側部の特異化モデルから予
測されるように、これらのパターンは将来の神経分化のパターンの「前兆」を示
している(Larsson ら、1994、Genomics 24: 253-258; Fortini ら、1993、Natur
e 365: 555-557)。
【0012】 特定の対象についての他の脊椎動物における研究においては、発生段階の、網
膜、毛包、および歯芽(tooth bud)などを含む知覚構造におけるNotch相同体の
発現に注目している。アフリカツメガエルの網膜の場合、Notch1は、周辺帯中
心および網膜中心の未分化細胞に発現している(Coffman ら、1990、Science 24
9: 1439-1441; Mango ら、1991、Nature 352: 811-815)。ラットでの研究にお
いて、発生段階の網膜の分化中の細胞へのNotch1の関与が実証され、Notch1が
この組織における継続的な細胞の運命の選択において作用することを示すという
解されている(Lyman ら、1993、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 10395-10399)
【0013】 毛包の再生中のマトリックス細胞でのマウスNotch1の発現の詳細な解析によ
り、上皮/間充織誘導的相互作用へのNotchタンパク質の潜在的な関与が調べられ
た(Franco del Amo ら、1992、Development 115: 737-744)。係る役割は元来ラ
ットの頬髯および歯芽でのNotch1の発現に基づいて提案された(Weinmaster ら
、1991、Development 113: 199-205)。にもかかわらず、Notch1の発現は、有糸
分裂をしない、分化段階にある、上皮/間充織相互作用に関係しない細胞の部分
に限定されていることが判明し、他部位でのNotchの発現と一致する発見であっ
た。
【0014】 ヒト組織および細胞系でのNotchタンパク質の発現の研究も報告されている。
ヒトT-細胞性白血病における末端切断型Notch1RNAの異常発現は、Notch1の切
断位置の転移により起こる(Ellisen ら、1991、Cell 66: 649-661)。造血中に
おけるヒトNotch1発現の研究は、T-細胞前駆体の分化の早期におけるNotch1の
役割を示唆した(Mango ら、1994、Development 120: 2305-2315)。ヒトNotch
1およびNotch2の発現に関して、正常および腫瘍性の子宮および結腸組織を含
む成体組織切片においてさらに研究された。Notch1およびNotch2は、調べた正常
組織の扁平上皮内の分化中の細胞群に発現していることが明らかになり、いくつ
かの前駆細胞を除いては、明らかに正常な円柱上皮には発現していなかった。比
較的良性の扁平上皮形成異常から円柱上皮が該腫瘍によって置き換えられる浸潤
性腺癌までの場合では、これら両タンパク質は腫瘍形成において発現する(Mello
ら、1994、Cell 77: 95-106)。
【0015】 いくつかの種でのNotchの末端切断型の恒常的活性型を用いた研究から、Notch
シグナリングの発生における役割および一般的性質に関する実態が明らかになっ
た。これらの組み換え型Notchは、細胞外リガンド結合ドメインを欠損しており
、哺乳動物のNotchタンパク質の天然の癌性変異体に類似しており、表現型の基
準においては、恒常的活性型である(Greenwald、1994、Curr. Opin. Genet. De
v. 4: 556; Fortini ら、1993、Nature 365: 555-557; Coffman ら、1993、Cell
73: 659-671; Struhl ら、1993、Cell 69: 1073; Rebay ら、1993、Genes Dev.
7: 1949; Kopan ら、1994、Development 120: 2385; Roehl ら、1993、Nature
364: 632)。
【0016】 -ショウジョウバエ胚における活性型Notchの遍在的発現は、上皮の分化を損なう
ことなく、神経芽細胞の隔離を抑制する(Struhl ら、1993、Cell 69: 331; Reba
y ら、1993、Genes Dev. 7: 1949)。
【0017】 -発生過程にある成虫上皮などでの活性型Notchの持続的発現は、神経構造が犠牲
とされて、表皮の過剰生産をきたす(Struhl ら、1993、Cell 69: 331)。
【0018】 -神経芽細胞の隔離は、一時的な波で起こり、胚での活性型Notchの一過性発現は
、これを遅らせるが、回避するわけではない(Struhl ら、1993、Cell 69: 331)
【0019】 -ショウジョウバエ眼の成虫原基のよく解明されている細胞において一過性発現
させると、該細胞は正常な誘導の合図を無視して代わりの細胞運命を選ぶように
なる(Fortini ら、1993、Nature 365: 555-557)。
【0020】 -ショウジョウバエの胚または眼原基における活性型Notchの一過性発現を利用し
た研究は、Notchシグナリング活性が正常なレベルに戻ると、細胞は元に戻って
、適切に分化、またはその後の発生の合図に応答しうることを示す (Fortini ら
、1993、Nature 365: 555-557; Struhl ら、1993、Cell 69: 331) 。
【0021】 Notch経路およびNotchシグナリングの一般的な概説については、Artavanis-Ts
akonas ら、1995、Science 268: 225-232を参照されたい。
【0022】 Notchシグナリングに関する、リガンド、細胞質エフェクター、および核成分
がショウジョウバエで同定され、脊椎動物においてそれに対応するものもクロー
ン化されている(Artavanis-Tsakonas ら、1995、Science 268: 225-232)。様々
な要素間でのタンパク質の相互作用が実証されているが、Notchシグナリングの
生化学的性質は理解されていない。Notchの末端切断型を発現させることにより
、トランスジェニックハエおよびトランスフェクトした哺乳動物細胞またはショ
ウジョウバエ細胞の双方において、膜貫通ドメインおよび細胞外ドメインを欠く
Notchタンパク質が核に移行することが明らかになった(Lieber ら、1993、Genes
and Development 7: 1949-1965; Fortini ら、1993、Nature 365: 555-557; Ah
mad ら、1995、Mechanisms of Development 53: 78-85; Zagouras ら、1995、、
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 6414-6418)。哺乳動物とショウジョウバエのN
otch分子の配列比較は、欠失解析と共に、2つの核局在配列が、アンキリンリピ
ートの両端に存在することを明らかにした(Stifani ら、1992、Nature Genetic
s 2: 119-127; Lieber ら、1993、Genes and Development 7: 1949-1965; Kopan
ら、1994、Development 120: 2385-2396)。これらの発見は、タンパク質分解
による切断、およびこれに続く細胞内断片の核内への移行によって、Notchが核
での現象に直接的に関与するかもしれないという推測を喚起した。しかし、係る
仮説に対する確証的に機能する証拠は、明らかでない(Artavanis-Tsakonas ら、
1995、Science 268: 225-232)。
【0023】 本明細書の当節または他の節のあらゆる参考文献の記述や表示は、該参考文献
が本発明の先行技術として利用可能であることを承認するものとして解釈される
ものではない。
【0024】3. 発明の概要 本発明者らは、Deltaがメタロプロテアーゼ-ディスインテグリンKuzbanian(Ku
z)によって二つの断片、すなわち、本質的に細胞外ドメインからなる可溶性のア
ミノ末端断片、および本質的に膜貫通ドメインおよび細胞内ドメインからなる膜
結合断片に切断されることを発見した。Deltaの可溶性断片は、全長の膜結合Del
taと同様に、Notchに結合することができる。特定のメカニズムに限定する意図
はないが、本出願人は、全長のDeltaがNotchに結合することができるとしても、
in vivoにおけるNotchの実際のリガンドはDeltaの可溶性断片であると考えてい
る。
【0025】 Deltaは細胞の運命(分化)の決定に重要な役割を果たしているため、また、D
eltaはNotchのリガンドであり、Notchもまた細胞の運命(分化)の決定に重要な
役割を果たしているために、Delta活性化、すなわち切断の検出または測定は分
化の過程の研究および操作に重要である。DeltaおよびNotch機能をモジュレート
する分子は、たとえば、細胞集団の実質的な分化を伴わない拡大(国際出願WO 97
/11716)、癌の研究および治療(国際出願WO 94/07474)、ならびに正常組織におけ
る分化の研究のような、分化の過程の研究および操作のための重要な道具である
。NotchまたはDeltaのmRNAもしくはタンパク質レベルまたは活性の検出または測
定を可能にする分子もまた、分化の過程の研究および操作に有用である。したが
って、抗Delta抗体またはDelta核酸を生成または検出するために用いることがで
きる分子は、このような検出または測定に有用である。
【0026】 本発明の一つの実施形態は、メタロプロテアーゼ-ディスインテグリンKuzbani
an(Kuz)によって切断される配列を含むトポリスミック(toporythmic)タンパク質
Deltaの、約30アミノ酸からなるペプチド(本明細書では「切断ペプチド」と呼
ぶ)およびそれをコードする核酸、ならびにその誘導体(たとえば、断片)およ
び類似体に関する。たとえば、Delta切断ペプチドは、ヒトDelta(配列番号10)
のアミノ酸Cys516からアミノ酸Phe543まで、マウスDelta(配列番号6)のアミノ
酸Cys515からアミノ酸Phe543まで、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys5 23 からアミノ酸Phe551まで、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518
からアミノ酸Phe544まで、および、ショウジョウバエDelta(配列番号9)のア
ミノ酸Cys564からアミノ酸Ala593またはGln594までの配列からなる。切断ペプチ
ドをコードする核酸にハイブリダイズできる、または相補的な核酸もまた提供さ
れる。特定の実施形態において、Delta切断ペプチドは哺乳類Delta、好ましくは
ヒトDeltaの一部である。このようなペプチドはDeltaのKuz切断をモジュレート
し、それによってDeltaおよびNotchの活性化をモジュレートする能力を有すると
考えられる。
【0027】 特定の実施形態において、本発明は、Deltaタンパク質の断片を含むペプチド
であって、そのペプチドのアミノ酸配列が、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ
酸Cys516からPhe543まで、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515からPhe5 43 まで、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523からPhe551まで、ツメガ
エルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518からPhe544まで、または、ショウジ
ョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564からAla593もしくはGln594まで
のアミノ酸配列からなるものに関する。別の実施形態において、本発明は、ヒト
Delta(配列番号10)のアミノ酸Cys516からPhe543まで、マウスDelta(配列番号
6)のアミノ酸Cys515からPhe543まで、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸C
ys523からPhe551まで、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518からPh
e544まで、および、ショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
らAla593またはGln594までのアミノ酸配列からなる群から選択されるDelta配列
を含む、150または50または30アミノ酸以下のDeltaタンパク質の断片に関する。
さらに別の実施形態において、本発明は、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸C
ys516からPhe543まで、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515からPhe543
まで、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523からPhe551まで、ツメガエ
ルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518からPhe544まで、または、ショウジョ
ウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564からAla593もしくはGln594までの
アミノ酸配列からなるアミノ酸配列を有するペプチドに関する。
【0028】 本発明はまた、機能活性を有する、すなわち、「野生型」切断ペプチドに関連
する公知の機能活性を1以上示すことができる切断ペプチドの誘導体または類似
体に関する。このような機能活性には、抗原性[抗Delta切断ペプチド抗体に結合
する(または結合に関して切断ペプチドと競合する)能力]、免疫原性(切断ペ
プチドに結合する抗体を産生する能力)、Kuzに結合する(または結合に関して
切断ペプチドと競合する)能力が含まれるが、これらに限定されない。本発明は
さらに、Kuzに結合することができるDelta切断ペプチドの断片(およびその誘導
体または類似体)に関する。
【0029】 さらに、Delta切断ペプチド、その誘導体および類似体に対する抗体も提供さ
れる。
【0030】 切断ペプチド配列を含むDelta断片もまた、少なくとも切断ペプチド配列を含
有するDeltaの配列を含み、Delta配列のアミノおよび/またはカルボキシ末端に
おいて非Delta配列と融合したDelta断片を含む融合タンパク質として提供される
。少なくとも切断ペプチド配列を含むDelta断片のコンカテマー(concatamers)(
たとえば、少なくとも切断ペプチド配列からなるDelta配列の一部の2、3、ま
たはそれ以上のコピー)もまた提供される。特定の実施形態において、切断ペプ
チド配列を含むDelta断片の長さは、35、50、75、100、150、または200アミノ酸
以下である。特定の実施形態において、本発明は、非Deltaタンパク質配列と融
合したDeltaタンパク質配列を含むキメラタンパク質であって、このDeltaタンパ
ク質配列が、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516からPhe543まで、マウ
スDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515からPhe543まで、ニワトリDelta(配列
番号7)のアミノ酸Cys523からPhe551まで、ツメガエルDelta(配列番号8)のア
ミノ酸Cys518からPhe544まで、または、ショウジョウバエDelta(配列番号9)
のアミノ酸Cys564からAla593もしくはGln594までのアミノ酸配列を含む、100ま
たは50または30アミノ酸以下の配列であるものに関する。
【0031】 別の実施形態において、本発明は、2つのタンパク質分解過程、すなわちシグ
ナルペプチドの切断およびKuzによる切断によって全長のDeltaタンパク質から切
断された、全長のDeltaタンパク質のアミノ末端断片を含むペプチド(本明細書
では、「可溶性のDeltaペプチド」または「DlEC」と呼ぶ)、ならびにその誘導
体および類似体に関する。たとえば、可溶性のDeltaペプチドのアミノ酸配列は
、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys516とアミノ
酸Phe543の間で終結し、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22で開始して
アミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終結し、ニワトリDelta(配列番号7)
のアミノ酸Ser24で開始してアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結し、ツ
メガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys518とアミ
ノ酸Phe544の間で終結し、またはショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミ
ノ酸Ser23で開始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593もしくはGln594の間で終
結する。このようなペプチドはNotchに結合することによってDeltaおよびNotch
の活性化をモジュレートする能力を有すると考えられる。
【0032】 本発明はまた、機能活性を有する、すなわち、「野生型」可溶性ペプチドに関
連する公知の機能活性を1以上示すことができる、可溶性のDeltaペプチドの誘
導体または類似体に関する。このような機能活性には、抗原性[抗Delta可溶性ペ
プチド抗体に結合する(または結合に関して可溶性ペプチドと競合する)能力]
、免疫原性(可溶性ペプチドに結合する抗体を産生する能力)、Notchに結合す
る(または結合に関して可溶性ペプチドと競合する)能力が含まれるが、これら
に限定されない。
【0033】 さらに、Delta可溶性ペプチド、その誘導体および類似体に対する抗体も提供
される。
【0034】 Delta切断ペプチド、誘導体および類似体の製造方法、たとえば、組換え手段
によるものもまた提供される。可溶性のDeltaペプチド、誘導体および類似体の
製造方法、たとえば、組換え手段によるものもまた提供される。
【0035】 本発明はまた、DeltaおよびKuzのタンパク質複合体を含む特定の組成物および
上記タンパク質複合体の製造方法に関する。特に、この実施形態において、本発
明はDelta、ならびにDeltaの誘導体、断片および類似体と、Kuz、ならびにその
誘導体、断片および類似体との複合体に関する(本明細書において、DeltaとKuz
との複合体を「Delta:Kuz」と記載する)。Delta:Kuz複合体、およびその誘導
体または類似体の製造方法、たとえば、組換え手段によるものもまた提供される
【0036】 本発明はまた、Notchと、本質的にKuzによるDeltaのタンパク質分解過程によ
って放出される細胞外ドメインからなるDeltaの可溶性断片(「可溶性のDeltaペ
プチド」または「DlEC」)とのタンパク質複合体を含む特定の組成物および上記
タンパク質複合体の製造方法に関する。特に、この実施形態において、本発明は
可溶性のDeltaペプチド、ならびに可溶性のDeltaペプチドの誘導体、断片および
類似体と、Notch、ならびにその誘導体、断片および類似体との複合体に関する
(本明細書において、Deltaの可溶性断片とNotchの複合体を「DlEC:Notch」と
記載する)。 DlEC:Notch複合体、およびその誘導体または類似体の製造方法、
たとえば、組換え手段によるものもまた提供される。
【0037】 本発明はさらに、NotchもしくはDeltaもしくはKuzを発現する細胞、またはNot
chもしくはDeltaもしくはKuzを発現する細胞を含む生物に、ヒトDelta(配列番
号10)のアミノ酸Cys516付近からアミノ酸Phe543付近まで、マウスDelta(配列
番号6)のアミノ酸Cys515付近からアミノ酸Phe543付近まで、ニワトリDelta(
配列番号7)のアミノ酸Cys523付近からアミノ酸Phe551付近まで、ツメガエルDe
lta(配列番号8)のアミノ酸Cys518付近からアミノ酸Phe544付近まで、および
ショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564付近からアミノ酸Ala59 3 またはGln594付近までのアミノ酸配列を有するDeltaの断片を含むペプチドを接
触させることによって、NotchもしくはDeltaもしくはKuzの活性をモジュレート
(すなわち、阻害または促進)するための方法に関する。特定の実施形態におい
て、該ペプチドは、Deltaの25、30、35、40、50、100、150、200または250個の
アミノ酸を含む。
【0038】 本発明はさらに、NotchもしくはDeltaもしくはKuzを発現する細胞または生物
に、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys516とアミ
ノ酸Phe543の間で終結し、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22で開始し
てアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終結し、ニワトリDelta(配列番号7
)のアミノ酸Ser24で開始してアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結し、
ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys518とア
ミノ酸Phe544の間で終結し、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のア
ミノ酸Ser23で開始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593またはGln594の間で終
結するアミノ酸配列を有するDeltaタンパク質の断片を含むペプチドを接触させ
ることにより、NotchもしくはDeltaもしくはKuzまたはこれらのシグナル経路の
少なくとも1つの活性をモジュレート(すなわち、阻害または促進)するための
方法に関する。
【0039】 本発明はさらに、Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体の活性をモジュ
レート(すなわち、阻害または促進)するための方法に関する。Delta:Kuz複合
体またはDlEC:Notch複合体のタンパク質成分は細胞の運命および分化に関与し
ている。したがって、本発明は細胞の運命または分化を変える能力について、De
lta:Kuz複合体、および上記複合体の誘導体または類似体をスクリーニングする
ための方法に関する。本発明はまた、細胞の運命または分化を変える能力につい
て、DlEC:Notch複合体、および上記複合体の誘導体または類似体をスクリーニ
ングするための方法に関する。
【0040】 本発明はまた、Delta切断ペプチドおよびそれをコードする核酸、ならびに可
溶性のDeltaペプチドおよびそれをコードする核酸に基づく、治療および診断の
ための方法および組成物に関する。本発明は、本発明の治療用化合物を投与する
ことによる細胞の運命および分化の障害の治療方法を提供する。このような治療
用化合物(本明細書において「治療薬」と呼ぶ)には、Delta切断ペプチドなら
びにその誘導体および類似体(断片を含む)、それらに対する抗体、Delta切断
ペプチド、誘導体または類似体をコードする核酸、Delta切断ペプチドアンチセ
ンス核酸、Delta:Kuz複合体およびそれに対する抗体、ならびにDlEC:Notch複
合体およびそれに対する抗体が含まれる。さらに、このような治療薬には、可溶
性のDeltaペプチドならびにその誘導体および類似体、それらに対する抗体、可
溶性のDeltaペプチド、誘導体または類似体をコードする核酸、ならびに可溶性
のDeltaペプチドアンチセンス核酸が含まれる。好ましい実施形態において、本
発明の治療薬は、癌性の症状を治療するため、または前新生物状態または悪性で
ない状態から新生物状態または悪性の状態への進行を防ぐために投与される。他
の特定の実施形態において、本発明の治療薬は神経系の障害を治療するため、ま
たは組織の再生および修復を促進するために投与される。
【0041】 1つの実施形態において、Notch、Delta切断ペプチドおよび/またはKuz機能に
拮抗するか、またはこれを阻害する治療薬(本明細書において、これ以後「アン
タゴニスト治療薬」と呼ぶ)を治療効果を得るために投与する。別の実施形態に
おいて、Notch、Delta切断ペプチドおよび/またはKuz機能を促進する治療薬(本
明細書において、これ以後「アゴニスト治療薬」と呼ぶ)を治療効果を得るため
に投与する。
【0042】 細胞の運命の障害、特に過剰増殖性(たとえば、癌)または低増殖性の障害で
あって、異常なまたは望ましくないレベルのNotch、Delta切断ペプチドおよび/
またはKuzタンパク質の発現または活性または局在化を伴うものを、以下により
完全に記載するように、上記のレベルを検出することによって診断することがで
きる。
【0043】 本発明のさらに別の実施形態は、Delta活性化の指標となるDelta切断産物を観
察または測定することによりDelta活性化を検出または測定するための方法に関
する。本発明のこの実施形態の1つの態様において、細胞内のDelta活性化を検
出または測定するための方法は、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以
上のDelta切断産物の発現を検出または測定することを含む。さらに別の態様に
おいて、この方法は、ショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
とアミノ酸Ala593もしくはGln594の間で、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸C
ys516とアミノ酸Phe543の間で、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515
アミノ酸Phe543の間で、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523とアミ
ノ酸Phe551の間で、または、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518
とアミノ酸Phe544の間で終結する全長のDeltaのアミノ末端断片を検出または測
定することを含む。さらに別の態様において、この方法は、還元的な条件下で、
約67キロダルトンの可溶性のDelta断片(DlEC)を検出または測定することを含む
。さらに別の態様において、この方法は、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸S
er22で開始してアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で終結し、マウスDelta(
配列番号6)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間
で終結し、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Ser24で開始してアミノ酸Cy
s523とアミノ酸Phe551の間で終結し、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ
酸Ser22で開始してアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終結し、およびショ
ウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23で開始してアミノ酸Cys564
アミノ酸Ala593またはGln594の間で終結するアミノ酸配列を有する可溶性のDelt
aペプチドを検出または測定することを含む。
【0044】 本発明はまた、Kuz機能の指標となるDelta切断産物を観察または測定すること
により、Kuz機能を検出または測定するための方法に関する。本発明のこの実施
形態の1つの態様において、細胞内のKuz機能を検出または測定するための方法
は、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物の発現を
検出または測定することを含む。さらに別の態様において、この方法は、ショウ
ジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593もしくはGln594の間で、ヒ
トDeltaのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で、マウスDeltaのアミノ酸Cys5 15 とアミノ酸Phe543の間で、ニワトリDeltaのアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551
の間で、または、ツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終
結する全長のDeltaのアミノ末端断片を検出または測定することを含む。さらに
別の態様において、この方法は、還元的な条件下で、約67キロダルトンの可溶性
のDelta断片を検出または測定することを含む。さらに別の態様において、この
方法は、ヒトDelta(配列番号10)にアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys516
アミノ酸Phe543の間で終結し、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22で開
始してアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終結し、ニワトリDelta(配列番
号7)にアミノ酸Ser24で開始してアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結
し、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22で開始してアミノ酸Cys518 とアミノ酸Phe544の間で終結し、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)
のアミノ酸Ser23で開始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593またはGln594の間
で終結するアミノ酸配列を有する可溶性のDeltaペプチドを検出または測定する
ことを含む。
【0045】 別の実施形態において、本発明はまた、Delta切断産物の量またはパターンの
変化を検出または測定することにより、Delta活性化をモジュレートする分子を
同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様において、De
lta活性化のモジュレーターを同定する方法は、細胞に候補モジュレーター分子
を接触させ、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物
の該細胞による発現を検出または測定することを含む。その際、該候補分子と接
触していないDelta細胞と比べたときの、1以上の該切断産物の存在または量の
差異が、該分子がDelta活性をモジュレートすることを示している。
【0046】 他の態様において、Delta活性化のモジュレーターを同定するための方法は、K
uzおよび必要に応じて他の細胞タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよび
必要に応じて該組成物の1以上の成分による全長のDeltaの切断を誘導する条件
下で、候補モジュレーター分子を全長のDeltaと接触させ、得られたDelta切断産
物DlECおよびDlTMの量を検出または測定することを含む。その際、該候補分子と
接触していない上記の組成物の存在下での全長のDeltaと比べたときの、該Delta
切断産物の存在または量の差異が、該分子がDelta活性をモジュレートすること
を示している。
【0047】 さらに別の実施形態において、本発明はまた、Kuz機能に必要なDelta切断産物
の量の変化を検出または測定することによって、Kuz機能をモジュレートする分
子を同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様において
、Kuz機能のモジュレーターを同定する方法は、細胞に候補モジュレーター分子
を接触させること、ならびに、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上
のDelta切断産物の該細胞による発現を検出または測定することを含む。その際
、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたときの、1以上の該切断産物
の存在または量の差異が、該分子がNotch機能をモジュレートすることを示して
いる。
【0048】 さらに別の実施形態において、本発明はまた、Kuz機能の指標となるDelta切断
産物の量の変化を検出または測定することによって、Kuz機能をモジュレートす
る分子を同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様にお
いて、Kuz機能のモジュレーターを同定する方法は、細胞に候補モジュレーター
分子を接触させること、ならびに、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1
以上のDelta切断産物の該細胞による発現を検出または測定することを含む。そ
の際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたときの、1以上の該切断
産物の存在または量の差異が、該分子がKuz機能をモジュレートすることを示し
ている。
【0049】 本発明はまた、Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体(および複合体に
含まれる個々のタンパク質をコードする核酸)に基づく、治療および予防、なら
びに診断、予後、およびスクリーニングのための方法および組成物に関する。本
発明の治療用化合物には、Delta:Kuz複合体、および複合体の一方または両方の
メンバーがDeltaまたはKuzの誘導体、断片、同族体または類似体である複合体;
上記のものに対する抗体、および上記のものをコードする核酸;ならびに該複合
体の成分をコードするヌクレオチド配列に対するアンチセンス核酸が含まれるが
、これらに限定されない。診断、予後およびスクリーニングキットもまた提供さ
れる。
【0050】 Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体の活性のモジュレーター(すなわ
ちアゴニスト、およびアンタゴニスト)をスクリーニングするための動物モデル
および方法もまた提供される。
【0051】 Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体の形成を阻害する、あるいは増大
させる分子を同定する方法もまた提供される。
【0052】4. 図面の簡単な説明 (図面の説明については下記参照)5. 発明の説明 本発明者らは、Deltaがメタロプロテアーゼ-ディスインテグリン(disintegri
n)Kuzbanian(Kuz)により2つの断片、すなわち主に細胞外ドメインから構成
される可溶性アミノ末端断片および主に膜貫通ドメインと細胞内ドメインとから
構成される膜結合断片に切断されることを発見した。全長膜結合型Deltaと同様
に、Deltaの可溶性断片は、Notchに結合することができる。特定のメカニズムに
限定するわけではないが、本発明者らは、たとえ全長DeltaがNotch結合能をもつ
としても、in vivoにおけるNotchの実際のリガンドは、Deltaの可溶性断片であ
ると考えている。
【0053】 Deltaは細胞の運命(分化)の決定において重要な役割を果たすため、またDel
taはNotchのリガンドである(Notchもまた細胞の運命(分化)の決定において重
要な役割を果たす)ため、Delta活性化(即ち切断)の検出または測定は、分化
過程の研究および操作において重要である。。DeltaおよびNotchの機能をモジュ
レートする分子は、分化過程の研究および操作にとって重要なツールとなり、例
えば、実質的に分化させずに細胞集団を増やすこと(国際公開WO97/11716)、癌
の研究および治療(国際公開WO94/07474)、および正常な組織の分化研究におい
て有用である。またNotchもしくはDeltaのmRNAまたはタンパク質のレベルまたは
活性の検出あるいは測定を可能とする分子も、分化過程の研究および操作におい
て有用である。従って、抗Delta抗体またはDelta核酸を生成または検出するため
に使用することができる分子は、このような検出または測定において有用である
【0054】 本発明の1つの実施形態は、メタロプロテアーゼ-ディスインテグリンKuzbani
an(Kuz)により切断される配列を含むトポリズミック(toporythmic)タンパク
質Deltaの、約30個のアミノ酸からなるペプチド(本明細書中では「切断ペプチ
ド」と呼ぶ)およびこれをコードする核酸、ならびにこれらの誘導体(例えば断
片)および類似体に関する。例えばDelta切断ペプチドは、ヒトDeltaのアミノ酸
Cys516〜アミノ酸Phe543、マウスDeltaのアミノ酸Cys515〜アミノ酸Phe543、ニ
ワトリDeltaのアミノ酸Cys523〜アミノ酸Phe551、ツメガエルDeltaのアミノ酸Cy
s518〜アミノ酸Phe544、およびショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564〜アミ
ノ酸Ala593またはGln594のアミノ酸配列からなる。該切断ペプチドをコードする
核酸に相補的なまたはこれにハイブリダイズする核酸も提供される。特定の実施
形態において、Delta切断ペプチドは、哺乳動物のDelta、好ましくはヒトDelta
の一部である。このようなペプチドは、Kuz によるDeltaの切断、従ってDeltaお
よびNotchの活性化をモジュレートする能力を有すると考えられる。
【0055】 また本発明は、機能的に活性な(すなわちその「野生型」切断ペプチドに関連
する1以上の既知の機能活性を示すことができる)切断ペプチドの誘導体または
類似体にも関する。このような機能活性には、抗原性(抗Delta切断ペプチド抗
体に結合する能力または該抗体への結合について該切断ペプチドと競合する能力
)、免疫原性(該切断ペプチドに結合する抗体を生成する能力)、Kuzに結合す
る(またはKuzへの結合について該切断ペプチドと競合する)能力が含まれるが
、これらに限定されない。本発明はさらに、Kuzに結合することができるDelta切
断ペプチドの断片(およびその誘導体または類似体)に関する。
【0056】 さらに、該Delta切断ペプチド、その誘導体および類似体に対する抗体が提供
される。
【0057】 また、該切断ペプチド配列を含むDelta断片も提供される。同様に、少なくと
も該切断ペプチド配列を含むDeltaの配列を含むDelta断片が、該Delta配列のア
ミノおよび/またはカルボキシ末端で非Delta配列に融合された、融合タンパク質
も提供される。少なくとも該切断ペプチド配列を含むDelta断片のコンカテマー
(例えば少なくとも該切断ペプチド配列からなるDelta配列の一部の2、3コピ
ーまたはそれ以上)も提供される。特定の実施形態において、該切断ペプチド配
列を含むDelta断片は、35、50、75、100、150または200アミノ酸長より短い。
【0058】 Delta切断ペプチド、誘導体および類似体の産生方法(例えば組換え法による
もの)も提供される。
【0059】 他の実施形態において、本発明は、全長Deltaタンパク質のアミノ末端断片を
含むペプチドならびにその誘導体および類似体に関し、該断片は、2つのタンパ
ク質分解プロセッシング、つまりシグナルペプチドの切断およびKuzによる切断
により、全長Deltaタンパク質から切断されたもの(本明細書では「可溶性Delta
ペプチド」または「DlEC」と呼ぶ)である。例えば、該可溶性Deltaペプチドの
アミノ酸配列は、ヒトDelta(配列番号10)ではアミノ酸Ser22から始まってアミ
ノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で終わり、マウスDelta(配列番号6)ではアミ
ノ酸Ser22から始まってアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終わり、ニワト
リDelta(配列番号7)ではアミノ酸Ser24から始まってアミノ酸Cys523とアミノ
酸Phe551の間で終わり、ツメガエルDelta(配列番号8)ではアミノ酸Ser22から
始まってアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終わり、またはショウジョウバ
エDelta(配列番号9)ではアミノ酸Ser23から始まってアミノ酸Cys564とアミノ
酸Ala593またはGln594の間で終わる。このようなペプチドは、Notchに結合し、
従ってDeltaおよびNotchの活性化をモジュレートする能力を有すると考えられる
【0060】 また本発明は、機能的に活性な(すなわちその「野生型」可溶性ペプチドに関
連する1以上の既知の機能活性を示すことができる)可溶性Deltaペプチドの誘
導体または類似体にも関する。このような機能活性には、抗原性(抗Delta可溶
性ペプチド抗体に結合する能力または該抗体への結合について該可溶性ペプチド
と競合する能力)、免疫原性(該可溶性ペプチドに結合する抗体を生成する能力
)、Notchに結合する(またはNotchへの結合について該可溶性ペプチドと競合す
る)能力が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】 さらに、該Delta可溶性ペプチド、その誘導体および類似体に対する抗体も提
供される。
【0062】 また、可溶性Deltaペプチド、誘導体および類似体の産生方法(例えば組換え
法によるもの)も提供される。
【0063】 また本発明は、DeltaとKuzとのタンパク質複合体を含むある組成物および該タ
ンパク質複合体の産生方法にも関する。具体的には、この実施形態において、本
発明は、Deltaまたはその誘導体、断片もしくは類似体と、Kuzまたはその誘導体
、断片または類似体との複合体に関する(本明細書中DeltaとKuzとの複合体は、
「Delta:Kuz」と記す)。Delta:Kuz複合体、およびその誘導体または類似体の
産生方法(例えば組換え法によるもの)も提供される。
【0064】 また本発明は、Kuzにより放出されたDeltaの可溶性断片とNotchとのタンパク
質複合体を含む組成物および該タンパク質複合体の産生方法にも関する。具体的
には、この実施形態において、本発明は、該可溶性Deltaペプチドまたは該可溶
性断片の誘導体、断片もしくは類似体と、Notchまたはその誘導体、断片または
類似体との複合体(本明細書中Deltaの可溶性断片とNotchとの複合体は、「DlEC :Notch」と記す)。DlEC:Notch複合体、その誘導体および類似体の産生方法(
例えば組換え法によるもの)も提供される。
【0065】 本発明はさらに、Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞またはNotch、Delt
aもしくはKuzを発現する細胞を含む生物を、ヒトDelta(配列番号10)のおよそ
アミノ酸Cys516〜アミノ酸Phe543、マウスDelta(配列番号6)のおよそアミノ酸
Cys515〜アミノ酸Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のおよそアミノ酸Cys523 〜アミノ酸Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のおよそアミノ酸Cys518〜ア
ミノ酸Phe544、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のおよそアミノ酸Cy
s564〜アミノ酸Ala593またはGln594のアミノ酸配列を有するDeltaの断片を含む
ペプチドに接触させることにより、Notch、DeltaまたはKuzの活性をモジュレー
トする(すなわち抑制または促進する)ための方法に関する。特定の実施形態に
おいて、該ペプチドは、Deltaの25、30、35、40、50、100、150、200または250
アミノ酸を含む。
【0066】 本発明はさらに、Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞または生物を、ヒ
トDelta(配列番号10)のアミノ酸Ser22から始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Ph
e543の間で終わるアミノ酸配列、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22
ら始まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終わるアミノ酸配列、ニワトリ
Delta(配列番号7)のアミノ酸Ser24から始まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe55 1 の間で終わるアミノ酸配列、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22
ら始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終わるアミノ酸配列、またはシ
ョウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23から始まりアミノ酸Cys564
とAla593もしくはGln594の間で終わるアミノ酸配列を有するDeltaタンパク質の
断片を含むペプチドに接触させることにより、Notch、DeltaもしくはKuzの活性
またはこれらのシグナル伝達経路の少なくとも1つをモジュレートする(すなわ
ち抑制または促進する)ための方法に関する。
【0067】 本発明はさらに、Delta:Kuz複合体の活性またはDlEC:Notch複合体の活性を
モジュレート(すなわち抑制または促進)するための方法に関する。Delta:Kuz
複合体およびDlEC:Notch複合体のタンパク質成分は、細胞の運命および分化に
関与している。したがって本発明は、細胞の運命または分化を変更する能力につ
いてDelta:Kuz複合体ならびに該複合体の誘導体および類似体をスクリーニング
するための方法に関する。また本発明は、細胞の運命または分化を変更する能力
についてDlEC:Notch複合体ならびに該複合体の誘導体および類似体をスクリー
ニングするための方法にも関する。
【0068】 また本発明は、Delta切断ペプチドおよびこれをコードする核酸に基づく治療
および診断、ならびに可溶性Deltaペプチドおよびこれをコードする核酸に基づ
く治療および診断のための方法および組成物にも関する。本発明は、本発明の治
療用化合物を投与することによる細胞の運命および分化の障害の治療方法を提供
する。このような治療用化合物(本明細書中において「治療薬」と呼ぶ)には、
Delta切断ペプチドならびにその誘導体および類似体(断片を含む)、これらに
対する抗体、該Delta切断ペプチド、誘導体もしくは類似体をコードする核酸、D
elta切断ペプチドのアンチセンス核酸、Delta:Kuz複合体およびこれに対する抗
体、ならびにDlEC:Notch複合体およびこれに対する抗体が含まれる。さらに、
このような治療薬には、可溶性Deltaペプチド、その誘導体および類似体、これ
らに対する抗体、該可溶性Deltaペプチド、誘導体または類似体をコードする核
酸、ならびに可溶性Deltaペプチドのアンチセンス核酸が含まれる。好適な実施
形態において、本発明の治療薬は、癌の症状を治療するため、または新生物発生
前の状態もしくは非悪性状態から新生物発生状態もしくは悪性状態への進行を防
ぐために投与される。他の特定の実施形態において、本発明の治療薬は、神経系
障害を治療するため、または組織の再生および修復を促進するために、投与され
る。
【0069】 1つの実施形態において、Notch、Delta切断ペプチドおよび/またはKuzの機能
と拮抗するまたは該機能を抑制する治療薬(以後「アンタゴニスト治療薬」と呼
ぶ)は、治療効果のために投与される。他の実施形態において、Notch、Delta切
断ペプチドおよび/またはKuzの機能を促進する治療薬(以後「アゴニスト治療薬
」と呼ぶ)は、治療効果のために投与される。
【0070】 細胞運命の障害、特にNotch、Delta切断ペプチドおよび/またはKuzタンパク質
の発現、活性または局在化の異常なもしくは望ましくないレベルに関係する高増
殖性障害(例えば癌)または低増殖性障害は、以下にさらに詳しく記載するよう
に、このようなレベルを検出することにより診断することができる。
【0071】 本発明のさらに他の実施形態は、Delta活性化の指標となるDelta切断産物を観
察または測定することによりDelta活性化を検出または測定するための方法に関
する。本発明のこの実施形態の1つの態様において、細胞内のDelta活性化を検
出または測定するための方法は、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以
上のDelta切断産物の発現を検出または測定することを含んでなる。さらに他の
態様において、該方法は、ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸A
la593またはGln594の間、ヒトDeltaのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間、マ
ウスDeltaのアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ酸Cy
s523とアミノ酸Phe551の間、またはツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミノ
酸Phe544の間で終わる全長Deltaのアミノ末端断片を検出または測定することを
含んでなる。さらに他の態様において、該方法は、還元条件下で約67キロダルト
ンの可溶性Delta断片を検出または測定することを含んでなる。さらに他の態様
において、該方法は、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Ser22から始まりアミ
ノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で終わるアミノ酸配列、マウスDelta(配列番
号6)のアミノ酸Ser22から始まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終わる
アミノ酸配列、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Ser24から始まりアミノ
酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終わるアミノ酸配列、ツメガエルDelta(配列
番号8)のアミノ酸Ser22から始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終わ
るアミノ酸配列、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23
から始まりアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593またはGln594の間で終わるアミノ酸
配列を有する、可溶性Deltaペプチドの検出または測定を含んでなる。
【0072】 また本発明は、Kuz機能の指標となるDelta切断産物を観察または測定すること
によりKuz機能を検出または測定するための方法にも関する。本発明のこの実施
形態の1つの態様において、細胞内のKuz機能を検出または測定するための方法
は、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物の発現を
検出または測定することを含んでなる。さらに他の態様において、該方法は、シ
ョウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593またはGln594の間、ヒ
トDeltaのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間、マウスDeltaのアミノ酸Cys515 とアミノ酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間
、またはツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終わる全長D
eltaのアミノ末端断片を検出または測定することを含んでなる。さらに他の態様
において、該方法は、還元条件下で約67キロダルトンの可溶性Delta断片を検出
または測定することを含んでなる。さらに他の態様において、該方法は、ヒトDe
lta(配列番号10)のアミノ酸Ser22から始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543 の間で終わるアミノ酸配列、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22から始
まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終わるアミノ酸配列、ニワトリDelt
a(配列番号7)のアミノ酸Ser24から始まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551
間で終わるアミノ酸配列、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22から
始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終わるアミノ酸配列、およびショ
ウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23から始まりアミノ酸Cys564
アミノ酸Ala593またはGln594の間で終わるアミノ酸配列を有する可溶性Deltaペ
プチドの検出または測定を含んでなる。
【0073】 また他の実施形態において、本発明は、Delta切断産物の量またはパターンの
変化を検出または測定することにより、Delta活性化をモジュレートする分子を
同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様において、De
lta活性化のモジュレーターを同定する方法は、細胞に候補モジュレーター分子
を接触させ、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物
の該細胞による発現を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分
子と接触していないDelta細胞と比べて、前記1以上の切断産物の存在または量
が変化していることが、該候補分子がDelta活性をモジュレートすることを示す
ものである。
【0074】 他の態様において、Delta活性化のモジュレーターを同定する方法は、Kuzおよ
び任意で他の細胞性タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよび任意で該組
成物の1以上の成分による全長Deltaの切断へ導く条件下で、候補モジュレータ
ー分子を全長Deltaに接触させ、生じるDelta切断産物DlECおよびDlTMの量を検出
または測定することを含んでなり、その際、候補分子と接触していない前記組成
物の存在下での全長Deltaと比べて、前記Delta切断産物の存在または量が変化し
ていることが、該分子がDelta活性をモジュレートすることを示すものである。
【0075】 またさらに他の実施形態において、本発明は、Notch機能に必要なDelta切断産
物の量の変化を検出または測定することによりNotch機能をモジュレートする分
子を同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様において
、Notch機能のモジュレーターを同定するための方法は、細胞を候補モジュレー
ター分子と接触させ、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta
切断産物の該細胞による発現を検出または測定することを含んでなり、その際、
該候補分子と接触していないDelta細胞と比べて、前記1以上の切断産物の存在
または量が変化していることが、該候補分子がNotch機能をモジュレートするこ
とを示すものである。
【0076】 またさらに他の実施形態において、本発明は、Kuz機能の指標となるDelta切断
産物の量の変化を検出または測定することによりKuz機能をモジュレートする分
子を同定するための方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様において
、Kuz機能のモジュレーターを同定する方法は、細胞を候補モジュレーター分子
と接触させ、DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物
の該細胞による発現を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分
子と接触していないDelta細胞と比べて、前記1以上の切断産物の存在または量
が変化していることが、該候補分子がKuz機能をモジュレートすることを示すも
のである。
【0077】 また本発明は、Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体(および該複合体
に関与する個々のタンパク質をコードする核酸)に基づく治療、予防、診断、予
後およびスクリーニングのための方法ならびに組成物に関する。本発明の治療用
化合物には、Delta:Kuz複合体、および該複合体を構成するメンバーの一方また
は両方が、DeltaまたはKuzの誘導体、断片、相同体または類似体である複合体、
これに対する抗体およびこれをコードする核酸、ならびに該複合体成分をコード
するヌクレオチド配列に対するアンチセンス核酸が含まれるが、これらに限定さ
れない。診断、予後およびスクリーニングのためのキットも提供される。
【0078】 Delta:Kuz複合体の活性またはDlEC:Notch複合体の活性のモジュレーター(す
なわちアゴニストおよびアンタゴニスト)のスクリーニングのための動物モデル
および方法も提供される。
【0079】 Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体の形成を阻害または促進する分子を
同定する方法も提供される。
【0080】 開示内容を限定するのではなく明瞭にするために、本発明の詳細な説明を以下
の小節に分けて記載する。
【0081】5.1. Delta切断ペプチド、可溶性DeltaペプチドおよびDelta:Kuzタンパク質複
合体 5.1.1.Delta切断ペプチドおよび可溶性Deltaペプチド 脊椎動物種および無脊椎動物種に由来するDeltaをコードする核酸はすでにク
ローニングされている(ヒトを含む脊椎動物のDeltaをコードする核酸について
は例えば国際公開WO97/01571参照)。ヒトDeltaをコードする配列および該配列
によりコードされるアミノ酸配列は、GenBankに受託番号AF003522として入手可
能であり、図4Aおよび図4Bに記載する。Delta切断ペプチドもしくは可溶性Delta
ペプチドまたはその機能的に活性な断片もしくは他の誘導体をコードするヌクレ
オチド配列を、適当な発現ベクター(すなわち挿入されたタンパク質コード配列
の転写および翻訳に必要なエレメントを含むベクター)に挿入することができる
。また、必要な転写および翻訳シグナルも、天然Delta遺伝子および/またはその
フランキング領域により供給され得る。該タンパク質コード配列を発現するため
に、様々な宿主ベクター系を使用することができる。これらの宿主ベクター系に
は、ウイルス(例えばワクシニアウイルス、アデノウイルス等)に感染させた哺
乳動物細胞系、ウイルス(例えばバキュロウイルス)に感染させた昆虫細胞系、
酵母ベクターを含む酵母等の微生物、またはバクテリオファージ、DNA、プラス
ミドDNAもしくはコスミドDNAにより形質転換した細菌が含まれるが、これらに限
定されない。ベクターの発現エレメントはその強度および特異性が様々である。
使用する宿主ベクター系によって、多くの好適な転写および翻訳エレメントのう
ちのいずれかを使用することができる。特定の実施形態において、ヒトDelta切
断ペプチドが発現される。他の特定の実施形態では、ヒト可溶性Deltaペプチド
が発現される。
【0082】 先に記載したDNA断片のベクターへの挿入方法はどれも、適切な転写/翻訳制御
シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ遺伝子を含む発現ベクター
を構築するために使用できる。これらの方法には、in vitro組換えDNAおよび合
成方法、ならびにin vivo組換体(遺伝子組換え)が含まれうる。Delta切断ペプチ
ドまたはそのペプチド断片をコードする核酸配列の発現を、第2の核酸配列によ
り調節して、組換えDNA分子により形質転換された宿主内でDelta切断ペプチドが
発現されるようにしてもよい。例えば、Delta切断ペプチドの発現を、当該技術
分野で知られているいずれかのプロモーター/エンハンサーエレメントにより制
御してもよい。Delta切断ペプチド発現を制御するために使用できるプロモータ
ーとして、以下のものが挙げられるがこれらに限定されない。すなわち、SV40初
期プロモーター領域(BernoistおよびChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラ
ウス肉腫ウイルスの3’側末端反復配列に含まれるプロモーター(Yamamotoら, 19
80, Cell 22:787-797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, 198
1, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の
調節配列(Brinsterら, 1982, Nature 296:39-42);β-ラクタマーゼ(lactamase)
プロモーターなどの原核生物発現ベクター(Villa-Kamaroffら, 1978, Proc. Nat
l. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727-3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら, 1983
, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:21-25);Scientific American, 1980, 24
2:74-94中の”Useful proteins from recombinant bacteria”も参照のこと;ノ
パリン合成酵素プロモーター領域を含む植物発現ベクター(Herrera-Estrellaら,
Nature 303:209-213)またはカリフラワーモザイクウイルス35S RNAプロモータ
ーを含む植物発現ベクター(Gardnerら, 1981, Nucl. Acids Res. 9:2871)、なら
びに光合成酵素リブロース二リン酸カルボキシラーゼ (Herrera-Estrellaら, 19
84, Nature 310:115-120);Gal4プロモーター、ADC(アルコール脱水素酵素)プロ
モーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリ性ホスフ
ァターゼプロモーターなどの酵母またはその他の菌類に由来するプロモーターエ
レメント、ならびに以下の動物転写制御領域(組織特異性を示し、トランスジェ
ニック動物において使用される):膵腺房細胞において活性なエラスターゼI遺
伝子制御領域(Swiftら, 1984, Cell 38:639-646;Ornitzら, 1986, Cold Spring
Harbor Symp. Quant. Biol. 50:399-409;MacDonald, 1987, Hepatology 7:425
-515);膵臓β細胞において活性なインスリン遺伝子制御領域(Hanahan, 1985, N
ature 315:115-122)、リンパ系細胞において活性なイムノグロブリン遺伝子制御
領域(Grosschedlら, 1984, Cell 38:647-658;Adamesら, 1985, Nature 318:533
-538;Alexanderら, 1987, Mol. Cell. Biol. 7:1436-1444)、精巣細胞、乳房細
胞、リンパ系細胞および肥満細胞において活性なマウス乳腺癌ウイルス制御領域
(Lederら, 1986, Cell 45:485-495)、肝臓において活性なアルブミン遺伝子制御
領域(Pinkertら, 1987, Genes and Devel. 1:268-276)、肝臓で活性なα-フェト
プロテイン遺伝子制御領域(Krumlaufら, 1985, Mol. Cell. Biol. 5:1639-1648
;Hammerら, 1987, Science 235:53-58);肝臓において活性なα1-抗トリプシ
ン遺伝子制御領域(Kelseyら, 1987, Genes and Devel. 1:161-171)、骨髄性細胞
において活性なβ-グロブリン遺伝子制御領域(Mogramら, 1985, Nature 315:338
-340;Kolliasら, 1986, Cell 46:89-94);脳内の稀突起神経膠細胞において活
性なミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域(Readheadら, 1987, Cell 48:703
-712);骨格筋において活性なミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域(Sani, 1985, Natu
re 314:283-286)、ならびに視床下部において活性な性腺刺激性放出ホルモン遺
伝子制御領域(Masonら, 1986, Science 234:1372-1378)。
【0083】 Delta切断ペプチドをコードするか可溶性Deltaペプチドをコードする核酸のイ
ンサートを含む発現ベクターは、3つの一般的なアプローチにより同定できる。
すなわち、(a)核酸ハイブリダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の存在
または不在、および(c)挿入配列の発現である。第1のアプローチの場合、挿入
されたDelta切断ペプチドコード配列と相同な配列を含むプローブを用いる核酸
ハイブリダイゼーションにより、発現ベクターに挿入された外来遺伝子の存在を
検出できる。第2のアプローチの場合、外来遺伝子をベクターに挿入することに
より生じる特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生
物質に対する抵抗性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおけるオクルージョ
ン体(occlusion body)形成など)の存在または不在に基づき、組換えベクター/宿
主系を同定し、選択することができる。例えば、Delta切断ペプチドコード核酸
が、ベクターのマーカー遺伝子配列内に挿入される場合、マーカー遺伝子機能の
不在によりインサートを含む組換体を同定できる。第三のアプローチでは、組換
体により発現される外来遺伝子産物をアッセイすることにより、組換え発現ベク
ターを同定できる。このようなアッセイは、例えば、コードされている切断ペプ
チドのin vitroアッセイ系における物理的特性または機能的特性(例えば、Kuzに
結合、抗体と結合)に基づくことができる。
【0084】 特定の組換えDNA分子を同定し単離した後は、それを増殖させるために当該分
野で公知のいくつかの方法を使用できる。適切な宿主系および増殖条件が確立さ
れたら、組換え発現ベクターを増殖させて多量に調製できる。先に説明したよう
に、使用できる発現ベクターとしては、以下のベクターまたはそれらの誘導体が
挙げられるが、これらに限定されない。すなわち、一部であるが列挙すると、ワ
クシニアウイルスまたはアデノウイルスなどのヒトまたは動物ウイルス;バキュ
ロウイルスなどの昆虫ウイルス;酵母ベクター;バクテリオファージベクター(
例えば、λ)、ならびにプラスミドおよびコスミドDNAベクターがある。
【0085】 さらに、挿入配列の発現をモジュレートするか、所望の特定の手法により遺伝
子産物を修飾およびプロセシングする宿主細胞株を選択してもよい。特定のプロ
モーターからの発現は、特定のインデューサーの存在下で高めることができる。
つまり、遺伝子操作されたDelta切断ペプチドの発現は制御できる。さらに、異
なる宿主細胞は、タンパク質の翻訳および翻訳後プロセシングおよび修飾(例え
ば、グリコシル化、[例えば、シグナル配列の]切断)について、特徴的かつ特定
のメカニズムを有する。適切な細胞系または宿主系を、発現される外来タンパク
質の所望の修飾およびプロセシングを確実にするために選択できる。例えば、細
菌系における発現を使用して、非グリコシル化コアタンパク質産物を産生できる
。酵母における発現は、グリコシル化産物を産生する。哺乳動物細胞における発
現を使用して、異種哺乳動物Delta切断ペプチドの「天然」グリコシル化を確実に
するか、または異種哺乳動物可溶性Deltaペプチドの「天然」グリコシル化を確実
にできる。さらに、異なるベクター/宿主発現系により、異なる程度のプロセシ
ング反応を生じることができる。
【0086】 別の特定の実施形態では、Delta切断ペプチド、断片、類似体または誘導体は
、融合体またはキメラタンパク質産物((異なるタンパク質の)異種タンパク質配
列にペプチド結合を介して結合したペプチド、断片、類似体または誘導体を含む
)として発現されてもよい。このようなキメラ産物は、所望のアミノ酸配列をコ
ードする適切な核酸配列を、当該分野において公知の方法により適切なコーディ
ングフレーム内で互いにライゲートさせ、当該分野において周知の方法によりキ
メラ産物を発現させることによって作成できる。あるいはまた、このようなキメ
ラ産物は、例えばペプチド合成機を使用して、タンパク質合成方法により作製で
きる。
【0087】 cDNA配列およびゲノム配列の両方を、クローニングおよび発現できる。
【0088】 本発明の一実施形態は、メタロプロテアーゼ-ディスインテグリン(disintegri
n) Kuzbanian(Kuz)(本明細書において「切断ペプチド」と称する)により切断され
る配列を含む局所律動的(toporythmic)タンパク質Deltaの約30個のアミノ酸から
なるペプチド、それをコードする核酸、ならびにその誘導体(例えば、断片)およ
び類似体に関する。例えば、Delta切断ペプチドは、ヒトDelta(配列番号:10)の
アミノ酸Cys516付近からおよそアミノ酸Phe543付近の配列、マウスDelta(配列番
号:6)のアミノ酸Cys515付近からアミノ酸Phe543付近の配列、ニワトリDelta(配
列番号:7)のアミノ酸Cys523付近からアミノ酸Phe551付近の配列、ツメガエルDe
lta(配列番号:8)のアミノ酸Cys518付近からアミノ酸Phe544付近の配列、ならび
にショウジョウバエDelta(配列番号:9)のアミノ酸Cys564付近からアミノ酸Ala5 93 またはGln594付近の配列からなる。このようなペプチドは、DeltaのKuz切断を
モジュレートし、従ってDeltaおよびNotch活性化をモジュレートする能力を有す
ると考えられている。特定の実施形態では、Delta切断ペプチドは、哺乳動物Del
ta、好ましくはヒトDeltaの一部である。
【0089】 本発明はさらに、Delta切断ペプチド、ならびにDelta切断ペプチドの誘導体(
断片を含むがこれに限定されない)および類似体に関する。Delta切断ペプチド誘
導体およびペプチド類似体をコードする核酸も提供する。特定の態様では、ペプ
チド、誘導体または類似体は、マウス、ニワトリ、カエル、ラット、ブタ、ウシ
、イヌ、サルまたはヒトのDelta切断ペプチドのものである。
【0090】 Delta切断ペプチドに関係する誘導体および類似体の製造および使用も本発明
の範囲に含まれる。特定の実施形態では、誘導体または類似体は、機能的に活性
である(すなわち、野生型Delta切断ペプチドに関連する1つ以上の機能活性を示
すことができる)。一例として、所望の免疫原性または抗原性を有するこのよう
な誘導体または類似体は、例えば、イムノアッセイにおいて、免疫化のためまた
はDelta活性の阻害のためなどに使用できる。所望のDelta特性(例えば、kuzまた
はその他の局所律動的タンパク質に結合する)を保持するか、あるいは阻害する
このような分子は、このような特質および生理学的関連物のインデューサーまた
はインヒビターとしてそれぞれ使用できる。Delta切断ペプチドの誘導体または
類似体を、当該分野で公知の方法(本明細書に記載のアッセイを含むが、これら
に限定されない)により所望の活性について調べることができる。
【0091】 特に、Delta切断ペプチド誘導体は、Delta切断ペプチドコード配列を、機能的
に同等の分子をもたらす置換、付加または欠失により変更することで作製できる
。ヌクレオチドコード配列の縮重により、Delta切断ペプチドと実質的に同じア
ミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施に使用してもよい。これ
には、配列内で機能的に同等なアミノ酸残基をコードする種々のコドンを置換す
ることでサイレントな変化がもたらされて変更されたコードDelta切断ペプチド
遺伝子の全体または一部を含むヌクレオチド配列が挙げられるが、これらに限定
されない。同様に、本発明のDelta切断ペプチド誘導体には、配列内の残基を機
能的に同等のアミノ酸残基と置換することによりサイレントな変化がもたらされ
て変更された配列を含むDeltaタンパク質のアミノ酸配列の全体または一部を一
次アミノ酸配列として含むものが挙げられるが、これらに限定されない。例えば
、配列内の1つ以上のアミノ酸残基を、機能的に同等な物として作用する同様の
極性の別のアミノ酸と置換して、サイレントな変更をもたらす。配列内のアミノ
酸の置換基は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択してもよい
。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、
バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含ま
れる。極性があり中性のアミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、システ
イン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に荷電した(
塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれる。負に
荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれる。
【0092】 また、特定の実施形態では、切断ペプチド配列を含むDeltaの断片が提供され
る。特定の実施形態では、切断ペプチドを含むDelta断片は、35、50、75、100、
150または200アミノ酸以下の長さである。例えば、切断ペプチド配列を含むDelt
a断片は、切断ペプチド配列、および35個の連続したアミノ末端アミノ酸を含む
。別の例では、該断片は、切断ペプチド配列および100個の連続したアミノ末端
アミノ酸を含む。また別の例では、該断片は、切断ペプチド配列および50個の連
続したカルボキシ末端アミノ酸を含む。また別の例では、該断片は、切断ペプチ
ド配列、50個の連続したアミノ末端アミノ酸、および50個の連続したカルボキシ
末端アミノ酸を含む。また別の実施形態では、少なくとも切断ペプチド配列を含
むDelta断片のオンカタマー(oncatamers)(例えば、少なくとも切断ペプチド配列
からなる2,3またはそれ以上のコピー数のDelta配列部分)も提供される。
【0093】 本発明のDelta切断ペプチド誘導体および類似体は、当該分野で公知の様々な
方法により製造できる。これらの製造をもたらす操作は、遺伝子またはタンパク
質レベルで行ってもよい。例えば、クローニングされたDelta遺伝子配列を、当
該分野で公知の多数の方法(Maniatis, T., 1990, Molecular Cloning, A Labora
tory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor,
New York)のいずれかにより改変してもよい。該配列を、適切な部位において制
限エンドヌクレアーゼにより切断し、その後所望であればさらに酵素的改変を行
い、単離し、in vitroでライゲートする。Delta切断ペプチドの誘導体または類
似体をコードする遺伝子の製造において、改変された遺伝子が、翻訳終止シグナ
ルに妨害されることなく、Deltaと同じ翻訳リーディングフレームに確実に残る
ことに注意する必要がある。
【0094】 さらに、Delta切断ペプチドをコードする核酸配列を、in vitroまたはin vivo
で突然変異させて、翻訳、開始および/もしくは終止配列を作製および/もしくは
破壊するか、またはコード領域において変化させて、および/もしくは新たな制
限エンドヌクレアーゼ部位を形成するか、既存のものを破壊して、さらにin vit
ro改変をし易くする。当該分野で公知のいずれの突然変異誘発法も使用でき、in
vitro部位特異的突然変異誘発(Hutchinson, C.ら, 1978, J. Biol. Chem 253:6
551)などが挙げられるがこれに限定されない。配列変化を含むPCRプライマーをP
CRで用いて、このような変化を増幅断片に導入してもよい。
【0095】 また、Delta切断ペプチド配列の操作は、タンパク質レベルで行ってもよい。
本発明の範囲に含まれるのは、Delta切断ペプチド断片、または翻訳の間もしく
は翻訳後に(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の
保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子もしくは
他の細胞リガンドへの連結などにより)示差的に改変されたその他の誘導体もし
くは類似体である。多数ある化学的改変のいずれもが公知の技術により実施でき
、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH 4 による特異的化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカマイ
シンの存在下における代謝合成;などが挙げられるがこれらに限定さない。
【0096】 加えて、Delta切断ペプチドの類似体および誘導体は化学的に合成できる。さ
らに、所望であれば、非典型的アミノ酸または化学アミノ酸類似体を、置換また
は付加としてDelta配列へ導入できる。非典型的アミノ酸には、一般的なアミノ
酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、サ
ルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン
、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、設計(designer)
アミノ酸(β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸およびNα-メチルアミノ酸
など)、ならびに一般的なアミノ酸類似体が含まれるがこれらに限定されない。
【0097】 特定の実施形態では、Delta切断ペプチド誘導体は、アミノ末端またはカルボ
キシ末端においてペプチド結合を介して異なるタンパク質のアミノ酸配列と結合
したDelta切断ペプチドまたはその断片を含むキメラまたは融合ペプチドである
。一実施形態では、このようなキメラタンパク質は、(異なるタンパク質をコー
ドする配列とフレーム内で連結したDelta切断ペプチドコード配列を含む)タンパ
ク質をコードする核酸の組換え発現により製造する。このようなキメラ産物は、
当該分野において公知な方法により、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核
酸配列を適切なコーディングフレーム内で互いにライゲートさせ、そして当該分
野で一般に知られる方法によりキメラ産物を発現させることによって作製できる
。あるいはまた、このようなキメラ産物は、タンパク質合成法により(例えば、
ペプチド合成機を使用して)作製できる。特定の実施形態では、異種シグナル配
列を有し、Delta切断ペプチドをコードするキメラ核酸は、キメラタンパク質が
細胞によって細胞外で発現されるように発現される。
【0098】 また、本発明は、機能的に活性な(すなわち、「野生型」切断ペプチドに関連す
る1つ以上の既知の機能活性を示すことができる)切断ペプチドの誘導体または
類似体に関する。このような機能活性には、抗原性[抗Delta切断ペプチド抗体に
結合する(または結合について切断ペプチドと競合する)能力]、免疫原性(切断ペ
プチドに結合する抗体を産生する能力)、Kuzに結合する(または結合について切
断ペプチドと競合する)能力が挙げられるがこれらに限定されない。本発明はさ
らに、Kuzに結合可能なDelta切断ペプチドの断片(およびその誘導体または類似
体)に関する。
【0099】 別の実施形態では、本発明は、完全長Deltaタンパク質のアミノ末端断片(この
断片は2つのタンパク質分解性プロセシング事象(すなわち、シグナルペプチド
の切断およびKuzによる切断)により完全長Deltaタンパク質から切断される)を含
むペプチド(本明細書では「可溶性Deltaペプチド」と称する)、ならびにその誘導
体および類似体に関する。例えば、可溶性Deltaペプチドアミノ酸配列は、ヒトD
elta(配列番号:10)のアミノ酸Ser22から開始し、アミノ酸Cys516とアミノ酸Phe 543 との間で終わり;マウスDelta(配列番号:6)のアミノ酸Ser22から開始し、
アミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543との間で終わり;ニワトリDelta(配列番号:7
)のアミノ酸Ser24から開始し、アミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わり
;ツメガエルDelta(配列番号:8)のアミノ酸Ser22から開始し、アミノ酸Cys518 とアミノ酸Phe544との間で終わり;またはショウジョウバエDelta(配列番号:9
)のアミノ酸Ser23から開始し、アミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593もしくはGln594 との間で終わる。このようなペプチドは、Notchと結合する能力を有し、従ってD
eltaおよびNotch活性化をモジュレートすると考えられている。
【0100】 本発明はさらに、可溶性Deltaペプチド、ならびに可溶性Deltaペプチドの誘導
体(断片を含むがこれに限定されない)および類似体に関する。可溶性Deltaペプ
チド誘導体およびペプチド類似体をコードする核酸も提供する。特定の態様では
、該ペプチド、誘導体または類似体は、マウス、ニワトリ、カエル、ラット、ブ
タ、ウシ、イヌ、サルまたはヒト可溶性Deltaペプチドのものである。
【0101】 可溶性Deltaペプチドに関係する誘導体および類似体の製造および使用も本発
明の範囲に含まれる。特定の実施形態では、誘導体または類似体は、機能的に活
性である(すなわち、野生型可溶性Deltaペプチドに関連する1つ以上の機能活性
を示すことができる)。一例として、所望の免疫原性または抗原性を有するこの
ような誘導体または類似体は、例えば、イムノアッセイにおいて、免疫化のため
またはDelta活性の促進のためなどに使用できる。所望のDelta特性(例えば、Not
chまたはその他の局所律動的タンパク質に結合する)を保持するか、あるいは阻
害するこのような分子は、このような特質および生理学的関連物のインデューサ
ーまたはインヒビターとしてそれぞれ使用できる。可溶性Deltaペプチドの誘導
体または類似体を、当該分野で公知の方法(本明細書に記載のアッセイを含むが
、これらに限定されない)により所望の活性について調べることができる。
【0102】 特に、可溶性Deltaペプチド誘導体は、可溶性Deltaペプチドコード配列を、機
能的に同等の分子をもたらす置換、付加または欠失により変更することで製造で
きる。ヌクレオチドコード配列の縮重により、可溶性Deltaペプチドと実質的に
同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を、本発明の実施に使用してもよい
。これには、配列内で機能的に同等なアミノ酸残基をコードする種々のコドンを
置換することでサイレントな変化がもたらされて変更されたコード可溶性Delta
ペプチド遺伝子の全体または一部を含むヌクレオチド配列が挙げられるが、これ
らに限定されない。同様に、本発明の可溶性Deltaペプチド誘導体には、配列内
の残基を機能的に同等のアミノ酸残基と置換することによりサイレントな変化が
もたらされて変更された配列を含むDeltaタンパク質のアミノ酸配列の全体また
は一部を一次アミノ酸配列として含むものが挙げられるが、これらに限定されな
い。例えば、配列内の1つ以上のアミノ酸残基を、機能的に同等な物として作用
する同様の極性の別のアミノ酸と置換して、サイレントな変更をもたらす。配列
内のアミノ酸の置換基は、そのアミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択
してもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソ
ロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオ
ニンが含まれる。極性があり中性のアミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニ
ン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に
荷電した(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンが含まれ
る。負に荷電した(酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸が含
まれる。
【0103】 本発明の可溶性Deltaペプチド誘導体および類似体は、当該分野で公知の様々
な方法により製造できる。これらの製造をもたらす操作は、遺伝子またはタンパ
ク質レベルで行ってもよい。例えば、クローニングされたDelta遺伝子配列を、
当該分野で公知の多数の方法(Maniatis, T., 1990, Molecular Cloning, A Labo
ratory Manual, 2d ed., Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor
, New York)のいずれかにより改変してもよい。該配列を、適切な部位において
制限エンドヌクレアーゼにより切断し、その後所望であればさらに酵素的改変を
行い、単離し、in vitroでライゲートする。可溶性Deltaペプチドの誘導体また
は類似体をコードする遺伝子の製造において、改変された遺伝子が、翻訳終止シ
グナルに妨害されることなく、Deltaと同じ翻訳リーディングフレームに確実に
残ることに注意する必要がある。
【0104】 さらに、可溶性Deltaペプチドをコードする核酸配列を、in vitroまたはin vi
voで突然変異させて、翻訳、開始および/もしくは終止配列を作製および/もしく
は破壊するか、またはコード領域において変化させて、および/もしくは新たな
制限エンドヌクレアーゼ部位を形成するか、既存のものを破壊して、さらにin v
itro改変をし易くする。当該分野で公知のいずれの突然変異誘発法も使用でき、
in vitro部位特異的突然変異誘発(Hutchinson, C.ら, 1978, J. Biol. Chem 253
:6551)などが挙げられるがこれに限定されない。配列変化を含むPCRプライマー
をPCRで用いて、このような変化を増幅断片に導入してもよい。
【0105】 また、可溶性Deltaペプチド配列の操作は、タンパク質レベルで行ってもよい
。本発明の範囲に含まれるのは、可溶性Deltaペプチド断片、または翻訳の間も
しくは翻訳後に(例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公
知の保護基/ブロック基による誘導体化、タンパク質分解性切断、抗体分子もし
くは他の細胞リガンドへの連結などにより)示差的に改変されたその他の誘導体
もしくは類似体である。多数ある化学的改変のいずれもが公知の技術により実施
でき、臭化シアン、トリプシン、キモトリプシン、パパイン、V8プロテアーゼ、
NaBH4による特異的化学的切断;アセチル化、ホルミル化、酸化、還元;ツニカ
マイシンの存在下における代謝合成;などが挙げられるがこれらに限定さない。
特定の実施形態では、N-またはC-末端改変が行われる(例えば、N-アセチル化
)。
【0106】 また、可溶性Deltaペプチドの類似体および誘導体は化学的に合成できる。さ
らに、所望であれば、非典型的アミノ酸または化学アミノ酸類似体を、置換また
は付加としてDelta配列へ導入できる。非典型的アミノ酸には、一般的なアミノ
酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、ヒドロキシプロリン、サ
ルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン
、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、設計(designer)
アミノ酸(β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸およびNα-メチルアミノ酸
など)、ならびに一般的なアミノ酸類似体が含まれるがこれらに限定されない。
【0107】 具体的な実施形態では、可溶性Deltaペプチド誘導体は、そのアミノまたはカ
ルボキシ末端で、ペプチド結合を介して、異なるタンパク質のアミノ酸配列に結
合する可溶性Deltaペプチドまたはその断片を含む、キメラペプチドまたは融合
ペプチドである。ある実施形態では、このようなキメラタンパク質は、タンパク
質をコードする核酸(異なるタンパク質のコード配列にフレーム内結合した可溶
性Deltaペプチドコード配列を含む)の組換え発現により生成される。このよう
なキメラ生成物は、所望のアミノ酸配列をコードする適切な核酸配列を、当業者
には公知の方法により、正しいコーディングフレームで、互いに連結した後、当
業者に一般に知られた方法により、キメラ産物を発現させることによって調製す
ることができる。あるいは、このようなキメラ産物は、例えば、ペプチド合成装
置の使用等、タンパク質合成方法により調製することも可能である。具体的な実
施形態では、異種シグナル配列を有する可溶性Deltaペプチドをコードするキメ
ラ核酸を発現させて、細胞によりこのキメラタンパク質を細胞外で発現させる。
【0108】 本発明はまた、機能的に活性な、すなわち「野生型」可溶性ペプチドに関連す
る1つ以上の公知の機能活性を示す能力がある可溶性ペプチドの誘導体または類
似体に関する。このような機能活性には、抗原性[抗可溶性Deltaペプチド抗体
に結合する(または、結合において可溶性ペプチドと競合する)能力]、免疫原
性(可溶性ペプチドと結合する抗体を産生する能力)、Notchに結合する(もし
くは、結合において可溶性ペプチドと競合する)能力が含まれるが、これらに限
定されるわけではない。さらに本発明は、Notchに結合することができる可溶性D
eltaペプチドの断片(および誘導体またはその類似体)に関する。
【0109】5.1.2 DeltaとKuzのタンパク質複合体およびDeltaとNotchのタンパク質複合体 本発明は、Delta:Kuzタンパク質複合体に関する。本発明はまた、DlEC:Notc
hタンパク質複合体に関する。Delta、KuzおよびNotchは、クローン化されている
(例えば、WO 92/19734、WO 97/01571およびWO 98/08933を参照)。図2は、ヒト
Notch(配列番号1および2)を含む数個のNotch相同体のアミノ酸配列(配列番
号1、2、3および4)を示す。図3は、数個のDelta相同体のアミノ酸配列(配列
番号5、6、7、8および9)を示し、図4Bには、ヒトDeltaをコードする核酸
配列(配列番号13)を示す。Kuzのヒト相同体のアミノ酸配列(配列番号12)お
よびそのコード核酸配列(配列番号13)を図5Aおよび5Bにそれぞれ示す。Dl EC は完全長Deltaのアミノ末端断片であり、主にKuzがDeltaを切断すると遊離さ
れる野生型Deltaの細胞外ドメインから成る。DlEC断片は可溶性であり、ショウ
ジョウバエDelta(配列番号9)では、アミノ酸Ser23で開始し、アミノ酸Cys564 とアミノ酸Ala593またはGln594の間で終結し、ヒトDelta(配列番号10)では、
アミノ酸Ser22で開始し、アミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で終結し、マウ
スDelta(配列番号6)では、アミノ酸Ser22で開始し、アミノ酸Cys515とアミノ
酸Phe543の間で終結し、雛Delta(配列番号7)では、アミノ酸Ser24で開始し、
アミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結し、アフリカツメガエルDelta(配
列番号8)では、アミノ酸Ser22で開始し、アミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544
間で終結する。
【0110】 本発明の好ましい実施形態では、Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体
は、ヒトタンパク質の複合体である。本発明は、また、Deltaの誘導体(断片を
含む)および類似体とKuzとの複合体、DeltaとKuzの誘導体(断片を含む)およ
び類似体との複合体、ならびにDeltaおよびKuzの誘導体(断片を含む)および類
似体の複合体(ここで用いるDelta:Kuz複合体の断片、誘導体、相同体もしくは
類似体には、該複合体の一方または両メンバーが、野生型DeltaまたはKuzのタン
パク質の断片、誘導体もしくは類似体である複合体を含む)に関する。さらに、
本発明は、DlECの誘導体(断片を含む)および類似体とNotchとの複合体、DlEC
とNotchの誘導体(断片を含む)および類似体との複合体、ならびに、DlECおよ
びNotchの誘導体(断片を含む)および類似体の複合体(ここで用いるDlEC:Not
ch複合体の断片、誘導体、相同体もしくは類似体は、該複合体の一方または両メ
ンバーが、野生型DlECまたはNotchタンパク質の断片、誘導体もしくは類似体で
ある複合体を含む)に関する。好ましい実施形態では、複合体の一方または両メ
ンバーが野生型タンパク質の断片、誘導体、相同体または類似体であるDlEC:No
tch複合体が、機能的に活性なDlEC:Notch複合体である。特定の態様では、天然
タンパク質、あるいはDelta、Notchおよび/またはKuzの誘導体もしくは類似体
は、動物、例えば、マウス、ラット、ブタ、ウシ、イヌ、サル、ヒト、ハエ、カ
エルから得られる。別の態様では、天然タンパク質は、植物から得られる。
【0111】 本明細書で用いる「機能的に活性なDelta:Kuz複合体」とは、野生型Deltaと
野生型Kuzとの複合体の1つ以上の既知の機能特性(タンパク質−タンパク質結合
、Delta、Kuzおよび/またはDelta:Kuz複合体に特異的な抗体との結合を含む)
を示す物質、または、細胞の運命および分化に関与するDelta、Kuzおよび/また
はDelta:Kuz複合体の機能特性を持つ物質を意味する。
【0112】 本明細書で用いる「機能的に活性なDlEC:Notch複合体」とは、野生型DlEC
野生型Notchとの複合体の1つ以上の既知の機能特性(タンパク質−タンパク質結
合、DlEC、Notchおよび/またはDlEC:Notch複合体に特異的な抗体との結合を含
む)を示す物質、または、細胞の運命および分化に関与するDlEC、Notchおよび
/またはDlEC:Notch複合体の機能特性を持つ物質を意味する。
【0113】 本発明はまた、Delta:Kuz複合体、特に、DeltaとKuzの複合体の細胞機能、特
に、Deltaおよび/またはKuzが関与する細胞機能を改変する能力についてのスク
リーニング方法に関する。該細胞機能には、例えば、細胞の運命決定および分化
、抗Delta:Kuz複合体抗体への結合等、ならびに、文献に記載されている他の活
性等の生理学的プロセスを含む細胞機能が含まれる。本発明はまた、DlEC:Notc
h複合体、特に、DlECとNotchとの複合体の細胞機能、特に、DlECおよび/または
Notchが関与する細胞機能を改変する能力についてのスクリーニング方法に関す
る。該細胞機能には、例えば、細胞の運命決定および分化、抗DlEC:Notch複合
体抗体への結合等、ならびに、文献に記載されている他の活性等の生理学的プロ
セスを含む細胞機能があ含まれる。
【0114】 本発明はまた、Deltaおよび/またはKuzの誘導体、断片または類似体の複合体
の、分化等の細胞機能を改変する能力についてのスクリーニング方法に関する。
例えば、所望の免疫原性または抗原性を有するこのような誘導体もまたは類似体
を、免疫検定で用いたり、免疫や、Delta:Kuz複合体活性の抑制等のために使用
することができる。関心のある特性(例えば、Delta:Kuz複合体への関与)を保
持、欠失または抑制する誘導体または類似体は、それぞれ、このような特性およ
びその生理学的相関物の誘導物質または阻害物質として使用することができる。
さらに、本発明は、DlECおよび/またはNotchの誘導体、断片、または類似体の
複合体の、分化等の細胞機能を改変する能力についてのスクリーニング方法に関
する。例えば、所望の免疫原性または抗原性を有するこのような誘導体または類
似体を、免疫検定で用いたり、免疫や、DlEC:Notch複合体活性の抑制等のため
に使用することができる。関心のある特性(例えば、DlEC:Notch複合体への関
与)を保持、欠失または抑制する誘導体または類似体は、それぞれ、このような
特性およびその生理学的相関物の誘導物質または阻害物質として使用することが
できる。
【0115】 本発明の具体的な実施形態は、それぞれ、抗Delta抗体により結合することが
できる、および/または抗Kuz抗体により結合することができる、Deltaの断片お
よび/またはKuzの断片からなるDelta:Kuz複合体、またはDelta:Kuz複合体に
特異的な抗体により結合することができる該Delta:Kuz複合体に関する。本発明
の別の具体的実施形態は、それぞれ、抗DlEC抗体により結合することができる、
および/または抗Notch抗体により結合することができる、DlECの断片および/
またはNotchの断片のDlEC:Notch複合体、またはDlEC:Notch複合体に特異的な
抗体により結合することができる、該DlEC:Notch複合体に関する。
【0116】 Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体の断片およびその他の誘導体また
は類似体は、以下に記載するアッセイ等(しかし、これらに限らない)、当業者
に公知の方法により、所望の活性について試験することができる。
【0117】 具体的な実施形態では、本発明は、複合体の一方または両メンバーを含むDelt
a:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体に関する。好ましい実施形態では、これ
らの断片は、改変型酵母マトリックス接合アッセイまたは遺伝子スクリーニング
で、Deltaと相互作用するものとして同定されるKuzの断片から構成されるが、こ
れに限定されるわけではない。上記複合体のいずれかのメンバーの領域を欠失し
た断片、またはこのような断片を含むタンパク質も提供される。本発明では、上
記のものをコードする核酸が提供される。
【0118】 Delta、NotchおよびKuzをコードする核酸は知られており、当業者には公知の
あらゆる方法、例えば、各配列の3’および5’末端にハイブリダイズ可能な合成
プライマーを用いたPCR増幅、および/または各ヌクレオチド配列に特異的なオ
リゴヌクレオチドを用いたcDNA、またはゲノムライブラリーからのクローン化に
より、取得することができる。
【0119】 相同体(例えば、ヒト以外の種のDelta、NotchおよびKuzをコードする核酸)
またはその他の関連する配列(例えば、パラログ)は、核酸ハイブリダイゼーシ
ョンおよびクローン化のための当業者には公知の方法を使用し、プローブとして
特定のヒト配列の全部または一部を用いる低・中・高ストリンジェンシーハイブ
リダイゼーションにより取得することができる。
【0120】 それぞれ図4A、5Aおよび2に示した、コードされたヒトDelta、Kuzおよび
Notchタンパク質(それぞれ、配列番号10、配列番号12、ならびに配列番号1お
よび2)は単独でまたは複合体として、タンパク質精製および組換えタンパク質
発現のための当業者には公知の方法により取得することができる。1つ以上の上
記タンパク質の組換え発現のために、該タンパク質をコードするヌクレオチド配
列の全部または一部を含む核酸を適切な発現ベクター、すなわち、挿入されたタ
ンパク質コード配列の転写および翻訳に必要な要素を含むベクターに挿入するこ
とができる。また、必要な転写および翻訳シグナルは、Delta、Kuz、Notch遺伝
子、および/またはそれらの隣接領域の天然プロモーターによって供給すること
もできる。
【0121】 様々な宿主ベクター系を用いて、タンパク質コード配列を発現することができ
る。これらは、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス等)に
感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆
虫細胞系;酵母ベクターを含む酵母等の微生物;またはバクテリオファージ、DN
A、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質転換させた細菌を含むが、これ
らに限定されるわけではない。ベクターの発現要素は、その長さおよび特異性が
異なる。使用する宿主ベクター系に応じて、多数の適した転写および翻訳要素の
うちのいずれか1つを使用することができる。
【0122】 好ましい実施形態では、同じプロモーターの制御下または2つの別々のプロモ
ーターの制御下で、同じ細胞で、全Deltaコード配列および全Kuzコード配列を発
現させることにより、Delta:Kuz複合体が得られる。また別の実施形態では、De
ltaの誘導体、断片もしくは相同体および/またはKuzの誘導体、断片もしくは相
同体を組換えにより発現させる。好ましくは、Deltaおよび/またはKuzタンパク
質の誘導体、断片または相同体は、結合アッセイにより同定された結合相手と複
合体を形成し、さらに好ましくは、抗Delta:Kuz複合体抗体に結合する複合体を
形成する。別の好ましい形態では、同じプロモーターの制御下または2つの別々
のプロモーターの制御下で、同じ細胞で、全DlECコード配列および全Notchコー
ド配列を発現させることにより、Delta:Notch複合体が得られる。さらに別の実
施形態では、DlECの誘導体、断片もしくは相同体および/またはNotchの誘導体
、断片もしくは相同体を組換えにより発現させる。好ましくは、DlECおよび/ま
たはNotchタンパク質の誘導体、断片または相同体は、結合アッセイにより同定
された結合相手と複合体を形成し、さらに好ましくは、抗DlEC:Notch複合体抗
体に結合する複合体を形成する。
【0123】 当業界で使用可能な方法を用いて、DNA断片をベクターに挿入することにより
、適切な転写/翻訳制御シグナルとタンパク質コード配列から成るキメラ遺伝子
を含む発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、in vitro組換
えDNA、合成方法およびin vivo組換え方法(遺伝子組換え)が含まれる。Delta
、KuzおよびNotch、またはその誘導体、断片もしくは相同体をコードする核酸配
列の発現をまた別の核酸配列により調節することにより、その遺伝子または断片
を、組換えDNA分子で形質転換された宿主に発現させることも可能である。例え
ば、タンパク質の発現は、当業界で公知の任意のプロモーター/エンハンサーに
より制御することができる。具体的な実施形態では、プロモーターはDelta、Not
chまたはKuzの遺伝子に対する本来のものではない。使用できるプロモーターは
、第5.1.1節に記載されるものを含むが、これらに限定されるわけではない
【0124】 具体的実施形態では、Delta、Notchおよび/もしくはKuz、またはその断片、
誘導体もしくは相同体をコードする核酸に機能しうるように連結されたプロモー
ターと、1つ以上の複製起点、ならびに、任意に1つ以上の選択マーカー(例え
ば、抗生物質耐性遺伝子)を含むベクターを使用する。好ましい実施形態では、
DeltaおよびKuzの両方、またはDlECおよびNotchの両方をコードする核酸配列に
機能しうるように連結されたプロモーターと、1つ以上の複製起点、ならびに、
任意で、1つ以上の選択マーカーを含むベクターを用いる。
【0125】 別の具体的な形態では、DeltaおよびKuz、またはDlECおよびNotchのコード配
列またはその一部を、一緒にまたは別々に含む発現ベクターは、3つのpGEXベク
ター(グルタチオンS-トランスフェラーゼ発現ベクター;SmithおよびJohnson、
1988、Gene 7:31〜40)の各々のEcoRI制限部位に、該遺伝子配列をサブクローン
化することにより調製される。これによって、正しいリーディングフレームにお
ける産物の発現が可能になる。
【0126】 関心のある配列を含む発現ベクターは、3つの一般的方法:(a)核酸ハイブリ
ダイゼーション、(b)「マーカー」遺伝子機能の有無、ならびに(c)挿入配列の発
現により同定することができる。第1の手法では、Delta、NotchおよびKuz配列
は、挿入配列と相同かつ相補的な配列を含むプローブとの核酸ハイブリダイゼー
ションにより検出することができる。第2の手法では、関心のある配列をベクタ
ーに挿入することにより発生する特定「マーカー」機能(例えば、抗生物質に対
する耐性、バキュロウイルス中の閉塞体(occlusion body)形成)の有無に基づ
いて、組換えベクター/宿主系を同定および選択することができる。例えば、De
ltaもしくはKuz遺伝子、またはその一部をベクターのマーカー遺伝子配列内に挿
入すると、DeltaまたはKuz断片を含む組換え体は、上記マーカー遺伝子機能の不
在(例えば、β−ガラクトシダーゼ活性の欠失)により同定される。第3の手法
では、組換え発現ベクターは、組換えベクターにより発現したDeltaおよびKuzを
アッセイすることにより同定することができる。例えばこのようなアッセイは、
in vitroアッセイ系において相互作用する種の物理的または機能的特性、例えば
、Delta:Kuz複合体の形成、または抗Delta、抗Kuzもしくは抗Delta:Kuz複合体
の抗体への結合等に基づくものでよい。
【0127】 Delta、NotchおよびKuz分子が同定され、複合体または個々のタンパク質が単
離されると、当業界で公知のいくつかの方法を用いて、これらを増殖することが
できる。適した宿主系および増殖条件を用いて、組換え発現ベクターを多量に増
殖および増幅することができる。すでに述べたように、使用することができる発
現ベクターまたは誘導体には、限定するものではないが、ワクシニアウイルスも
しくはアデノウイルス等のヒトまたは動物ウイルス;バキュロウイルス等の昆虫
ウイルス、酵母ベクター;ラムダファージ等のバクテリオファージ;ならびにプ
ラスミドおよびコスミドベクターが含まれる。
【0128】 さらに、挿入された配列の発現をモジュレートする、または、所望する特定の
様式で発現させたタンパク質を修飾もしくはプロセッシングする宿主細胞株を選
択することも可能である。特定のプロモーターからの発現は、特定の誘導物質の
存在下で高めることができる。従って、遺伝子工学的に操作したDelta、Notchお
よび/またはKuzの発現を制御することが可能である。さらに、様々な宿主細胞
が、タンパク質の翻訳ならびに翻訳後のプロセッシングおよび修飾(例えば、グ
リコシル化、リン酸化等)について特徴的かつ特有の機構を有する。適切な細胞
系または宿主系を選択して、外来タンパク質の所望の修飾およびプロセッシング
の達成を確実にすることができる。例えば、細菌系での発現を使用して、グリコ
シル化されていないコアタンパク質を生成することができ、一方、哺乳動物細胞
での発現は、異種タンパク質の「本来の」グリコシル化を確実にする。さらに、
各種ベクター/宿主発現系は、様々な程度で、プロセッシング反応を実施するこ
とができる。
【0129】 別の具体的実施形態では、Delta、Notchおよび/もしくはKuzのタンパク質も
しくはその断片またはその相同体もしくは誘導体を、異なるタンパク質の異種タ
ンパク質配列にペプチド結合を介して結合されたタンパク質、断片、相同体また
は誘導体を含む融合タンパク質またはキメラタンパク質産物として発現させても
よい。このようなキメラ産物は、当業界で公知の方法により、正しいコードフレ
ームで、所望のアミノ酸をコードする適切な核酸配列を互いに連結し、当業界で
一般に知られる方法により、適した宿主中でキメラ産物を発現させることにより
調製することができる。あるいは、このようなキメラ産物は、例えば、ペプチド
合成装置の使用等、タンパク質合成技術により調製することができる。任意の異
種タンパク質コード配列に融合されたDelta、Notchおよび/またはKuz部分を含
むキメラ遺伝子を構築することも可能である。具体的実施形態は、Delta、Notch
および/またはKuzの少なくとも6つのアミノ酸からなる断片を含むキメラタン
パク質に関する。
【0130】 具体的な実施形態では、Deltaタンパク質およびKuzの相互作用ドメイン、また
は、DlECおよびNotchの相互作用ドメイン、ならびに、任意で、両ドメイン間の
ペプチドリンカーを含む融合タンパク質であって、このリンカーが、Deltaおよ
びKuz結合ドメインの相互作用、または、DlECおよびNotch結合ドメインの相互作
用を促進することを特徴とする、融合タンパク質が提供される。これらのタンパ
ク質は、特に、相互作用の安定性が求められる(分子内反応としての、複合体の
形成による)場合、例えば、Delta:Kuz複合体に特異的な、またはDlEC:Notch
複合体に特異的な抗体の生成において、有用である。
【0131】 特に、Delta、Notchおよび/またはKuz誘導体は、機能的に同等の分子を提供
する置換、付加または欠失によって、それらの配列を改変することにより作製す
ることができる。ヌクレオチドコード配列の縮重のために、Delta、Notchまたは
Kuz遺伝子もしくはcDNAと実質的に同じアミノ酸配列をコードする他のDNA配列を
本発明の実施に使用することができる。これらの配列としては、限定するもので
はないが、配列内での機能的に同等のアミノ酸残基をコードする異なるコドンへ
の置換とそれによるサイレントな変化により改変されるDelta、NotchまたはKuz
遺伝子の全部または部分を含むヌクレオチド配列がある。同様に、本発明のDelt
a、NotchまたはKuz誘導体としては、限定するものではないが、一次アミノ酸配
列として、Delta、NotchまたはKuzのアミノ酸配列の全部または部分(機能的に
同等のアミノ酸残基で配列内の残基が置換され、その結果、サイレントな変化を
起こしている改変配列を含む)を含むものが挙げられる。例えば、配列内の1つ
以上のアミノ酸残基を、機能的同等物として作用する同様の極性の別のアミノ酸
で置換することにより、サイレント改変を起こすことができる。配列内のアミノ
酸の置換基は、該アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選択することがで
きる。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸としては、アラニン、ロイシン、イソ
ロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオ
ニンがある。また、極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、トレオニン、シ
ステイン、チロシン、アスパラギン、ならびにグルタミンがある。また、正荷電
(塩基)アミノ酸には、アルギニン、リシンおよびヒスチジンがある。負荷電(
酸性)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸がある。
【0132】 本発明の特定の実施形態では、Delta、NotchまたはKuzの少なくとも6個(連
続的)のアミノ酸から成るDelta、NotchまたはKuzの断片から構成される、もし
くは該断片を含むタンパク質、およびそのタンパク質をコードする核酸を提供す
る。他の実施形態では、上記断片は、DeltaおよびKuzまたはDlECおよびNotchの
少なくとも10、20、30、40、もしくは50アミノ酸から構成される。特定の実施形
態では、このような断片は、35、100または200アミノ酸以下である。Delta、Not
chおよびKuzの誘導体または類似体は、限定するものではないが、同じ大きさの
アミノ酸配列に対して、もしくは、当技術分野で公知のコンピューターホモロジ
ープログラムによりアラインメントがなされたアラインメント済配列と比較した
場合に、様々な実施形態において、少なくとも30%、40%、50%、60%、70%、
80%、90%または95%の同一性にてDelta、NotchまたはKuzと実質的に相同な領
域を含む分子、あるいは、そのコード核酸が、ストリンジェント、中程度にスト
リンジェント、もしくは非ストリンジェントな条件下で、Delta、NotchまたはKu
zをコードする配列とハイブリダイズする能力を有する分子を含む。
【0133】 本発明のDelta、NotchおよびKuz誘導体および類似体は、当技術分野で公知の
様々な方法により作製することができる。これらを作製するための操作は、遺伝
子またはタンパク質レベルで実施することができる。例えば、クローン化された
Delta、NotchおよびKuz遺伝子配列を、当技術分野で公知の多数の方法(Sambroo
kら、1989、Molecular Cloning、A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring H
arbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、ニューヨーク)のいずれによっ
ても改変することができる。前記配列は、制限エンドヌクレアーゼを用いて適切
な部位で切断した後、所望であれば、さらに酵素による修飾を施し、単離して、
in vitroで連結することができる。Delta、NotchもしくはKuzの誘導体、相同体
または類似体をコードする遺伝子を作製する際には、改変遺伝子が、所望の活性
がコードされる遺伝子領域において、元の翻訳リーディングフレームを、翻訳停
止シグナルにより中断されずに保持することを確実にするように注意を払うべき
である。
【0134】 さらに、Delta、Notchおよび/またはKuzコード核酸配列は、in vitroまたはi
n vivoで突然変異を起こさせて、翻訳、開始および/または終結配列を形成およ
び/または破壊するか、あるいは、コード領域に変異を形成するか、および/ま
たは新しい制限エンドヌクレアーゼ部位を形成する、もしくは、すでに存在する
制限エンドヌクレアーゼ部位を破壊することにより、さらにin vitro改変を促進
することができる。このために、限定するものではないが、化学的突然変異誘発
およびin vitro部位特異的突然変異誘発(Hutchinsonら、1978、J. Biol. Chem
253:6551〜6558)、突然変異を含むPCRプライマーを用いた増幅等を含む、当技
術分野で公知のあらゆる突然変異誘発方法を用いることができる。
【0135】 Delta、Notchおよび/またはKuz、あるいはそれらの断片もしくは誘導体を発
現する組換え細胞をいったん同定すれば、個々の遺伝子産物または複合体を単離
し、分析することができる。これは、タンパク質または複合体の物理的および/
または機能特性に基づくアッセイにより達成される。これらのアッセイには、限
定するものではないが、上記産物の放射性標識に続いて、ゲル電気泳動、イムノ
アッセイ、マーカー標識産物への架橋等による分析を行うことが含まれる。
【0136】 Delta:KuzまたはDlEC:Notch複合体は、限定するものではないが、カラムク
ロマトグラフィー(例えば、イオン交換、アフィニティー、ゲル排除、逆相高圧
、高速タンパク質液体等)、分画遠心法、分画溶解度法を含む、当技術分野で公
知の標準的方法、あるいは、タンパク質の精製に使用されるその他の標準的方法
により、単離および精製することができる(上記複合体またはタンパク質を発現
している天然供給源、もしくは組換え宿主細胞のいずれかから)。機能特性は、
当技術分野で公知の任意の適切なアッセイを用いて評価することができる。
【0137】 あるいは、Deltaもしくはその誘導体、またはKuzもしくはその誘導体、または
Notchもしくはその誘導体をいったん同定すれば、前記タンパク質のアミノ酸配
列は、キメラ遺伝子(該タンパク質をコードしている)の核酸配列から推定する
ことができる。その結果、前記タンパク質またはその誘導体を、当技術分野で公
知の標準的化学的方法により合成することができる(例えば、Hunkapillerら、1
984、Nature 310:105〜111)。
【0138】 本発明の特定の実施形態では、このようなDelta:Kuz複合体は、組換えDNA技
術、化学的合成方法、あるいは、天然供給源からの精製のいずれにより作製され
たかに拘わらず、限定するものではないが、一次アミノ酸配列として、実質的に
図3および5A〜5Bに示したアミノ酸配列(それぞれ、配列番号5、6、7、
8および9、ならびに配列番号12)の全部または部分、ならびにそれらの断片お
よびその他の類似体および誘導体(それらとの相同性を有するタンパク質を含む
)を含有するものを含む。本発明の別の特定の実施形態では、このようなDlEC
Notch複合体は、組換えDNA技術、化学的合成法、あるいは、天然供給源からの精
製のいずれにより生成されたかに拘わらず、限定するものではないが、一次アミ
ノ酸配列として、実質的に図2および3に示したアミノ酸配列(それぞれ、配列
番号5、6、7、8および9、ならびに配列番号1、2、3および4)の全部また
は部分、ならびにそれらの断片およびその他の類似体および誘導体(それらとの
相同性を有するタンパク質を含む)を含有するものを含む。
【0139】 Delta、Notchおよび/またはKuz配列の操作は、タンパク質レベルで実施する
ことができる。本発明の一実施形態の範囲には、Delta断片またはKuz断片と、翻
訳の間もしくは後に、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化
、公知の保護基/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質加水分解切断、抗
体分子または他の細胞性リガンドへの結合等により、差別的に修飾されたDelta
またはKuz断片、誘導体および類似体との複合体が含まれる。多数の化学的修飾
のいずれをも、限定するものではないが、臭化シアン、トリプシン、キモトリプ
シン、パパイン、V8プロテアーゼ、NaBH4、アセチル化、ホルミル化、酸化、還
元、ツニカマイシンの存在下での代謝合成等による特異的化学的切断を含む、公
知の方法で実施することができる。
【0140】 特定の実施形態では、Delta、Notchおよび/またはKuzアミノ酸配列を蛍光標
識を含むように修飾する。別の特定の実施形態では、Delta、Notchおよび/また
はKuzを修飾することにより、異種機能性試薬を含有させる。このような異種機
能性試薬を用いて、複合体のメンバーを架橋することができる。
【0141】 さらに、Deltaおよび/またはKuz、もしくはDlECおよび/またはNotchの類似
体および誘導体の複合体は、化学的に合成することができる。例えば、所望のド
メインを含む、あるいは、in vitroで所望の活性(例えば、Delta:Kuz複合体形
成)を媒介するDeltaおよび/またはKuz部分に対応するペプチドを、ペプチド合
成装置を使用して合成することができる。さらに、所望であれば、非典型的アミ
ノ酸または化学的アミノ酸類似体を、Deltaおよび/またはKuz中に、置換または
付加物として導入することもできる。非典型的アミノ酸としては、限定するもの
ではないが、一般的アミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸(4
-Abu)、2-アミノ酪酸(2-Abu)、6-アミノへキサン酸(Ahx)、2-アミノイソ酪
酸(2-Aib)、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン
、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリ
シン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-ア
ラニン、フルオロアミノ酸、および、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸
、Nα-メチルアミノ酸等のデザイナーアミノ酸、ならびに、一般のアミノ酸類似
体が挙げられる。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)のいずれ
でもよい。
【0142】 天然の産物が、突然変異体である疑いがあるか、もしくは、新しい種から単離
されたものである場合には、天然供給源から単離されたDelta、NotchまたはKuz
、ならびにin vitroで、またはin vivoもしくはin vitroで合成された発現ベク
ターから、発現させたDelta、NotchまたはKuzのアミノ酸配列は、DNA配列の分析
から、あるいは、単離されたタンパク質の直接配列決定により、決定することが
できる。このような分析は、手動配列決定、もしくは、自動化アミノ酸シークエ
ネーターの使用により実施することができる。
【0143】 またDelta:KuzまたはDlEC:Notch複合体は、親水性分析(HoppおよびWoods、
1981、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:3824〜3828)により分析することがで
きる。親水性プロフィールを用いて、タンパク質の疎水性および親水性領域を同
定すると共に、結合実験や抗体合成等において実験操作用の基質を設計する際、
そのタンパク質の方向性を推定する上で役立てることができる。また、二次構造
分析を実施して、Delta、Notchおよび/またはKuz、またはそれらの誘導体の特
定の構造を呈する領域を同定することができる(ChouおよびFasman、1974、Bioc
hemistry 13:222〜23)。当技術分野で入手可能なコンピューターソフトウエア
プログラムを用いて、操作、翻訳、二次構造予測、親水性および疎水性プロフィ
ール予測、オープンリーディングフレーム予測およびプロット、ならびに配列相
同性の決定等を行うことができる。
【0144】 また、限定するものではないが、X線結晶解析(Engstrom、1974 Biochem. Ex
p. Biol. 11:7〜13)、質量分析法およびガスクロマトグラフィー(Methods i
n Protein Science、J. Wiley and Sons、ニューヨーク、1997)、ならびにコン
ピューターモデリング(FletterickおよびZoller編、1986、Computer Graphics
and Molecular Modeling、In:Current Communications in Molecular Biology、
Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor Press、ニューヨーク)
を含む他の構造分析方法を使用してもよい。
【0145】5.2 抗体 本発明のある実施形態によれば、Delta切断ペプチド、その断片またはその他
の誘導体、またはその類似体を免疫原として用いることにより、このような免疫
原を認識する抗体を生成することができる。本発明の別の実施形態によれば、可
溶性Deltaペプチド、その断片またはその他の誘導体、またはその類似体を免疫
原として用いることにより、このような免疫原を認識する抗体を生成することが
できる。このような抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、キメラ、一本鎖
、Fabフラグメント、ならびにFab発現ライブラリーを含むが、これらに限定され
るわけではない。特定の実施形態では、ヒトDelta切断ペプチドに対する抗体が
生成される。別の特定の実施形態では、ヒト可溶性Deltaペプチドに対する抗体
が生成される。
【0146】 本発明の別の実施形態によれば、Delta:Kuz複合体またはその断片、誘導体も
しくは相同体、あるいは、DlEC:Notch複合体またはその断片、誘導体もしくは
相同体を免疫原として用いることにより、このような免疫原に免疫特異的に結合
する抗体を生成することができる。このような抗体は、ポリクローナル、モノク
ローナル、キメラ、一本鎖、Fabフラグメント、ならびにFab発現ライブラリーを
含むが、これらに限定されるわけではない。特定の実施形態では、ヒトDeltaお
よびヒトKuzの複合体に対する抗体が生成される。別の特定の実施形態では、ヒ
トDlECとヒトNotchの複合体に対する抗体が生成される。別の実施形態では、Del
taの断片およびKuzの断片から形成された複合体を免疫原として用いて、抗体を
生成する。尚、これらの断片は、上記複合体の他のメンバーと相互作用するタン
パク質ドメインを含む。
【0147】 当技術分野で公知の各種方法を用いて、本発明のDelta切断ペプチドまたは誘
導体または類似体、あるいは、可溶性Deltaペプチドまたは誘導体または類似体
、あるいはタンパク質複合体に対するポリクローナル抗体を生成することができ
る。抗体の生成のために、天然Delta切断ペプチド、またはDlECもしくはNotchま
たはKuz、あるいは、それらの合成体、または誘導体(例えば、断片)の注入に
より、限定するものではないが、ウサギ、マウス、ラット等を含む様々な宿主動
物を免疫することができる。宿主の種に応じて、各種アジュバントを用いること
により、免疫応答を高めることも可能である。このようなアジュバントとして、
限定するものではないが、フロイント(完全および不完全)アジュバント、水酸
化アルミニウムなどのミネラルゲル、リソレシチンなどの界面活性物質、プルロ
ニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油性エマルション、キーホールリ
ンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および、BCG(カルメット・ゲラ
ン菌)やコリネバクテリウム・パルバム(corynebacterium parvum)等の潜在的に
有用なヒトアジュバントが挙げられる。
【0148】 例えば、Delta切断ペプチド配列またはその類似体に対するモノクローナル抗
体の調製のために、培養中の連続細胞系による抗体分子の生成のためのあらゆる
方法を用いてよい。例えば、最初にKohlerおよびMilsteinにより開発されたハイ
ブリドーマ法(1975、Nature 256:495〜497)、トリオーマ法、ヒトB細胞ハイ
ブリドーマ法(Kozborら、1983、Immunology Today 4:72)、ならびにヒトモノ
クローナル抗体を生成するためのEBVハイブリドーマ法(Coleら、1985、Monoclo
nal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp.77〜96)がある
。本発明のさらに別の実施形態では、最近の技術(PCT/US90/02545)を用いて、
無菌動物においてモノクローナル抗体を生成することができる。本発明によれば
、ヒト抗体を使用することができ、これは、ヒトハイブリドーマ(Coteら、1983
、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 80:2026〜2030)の使用により、あるいは、
in vitroで、EBVウイルスでヒトB細胞を形質転換する(Coleら、1985、Monoclon
al Antibodies and Cancer Therapy、Alan R. Liss、pp.77〜96)ことにより取
得することができる。実際に、本発明に従い、例えば、Delta切断ペプチドに特
異的なマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物活性のヒト抗体分子由来の遺
伝子と共にスプライシングすることにより、「キメラ抗体」を生成すべく開発さ
れた方法(Morrisonら、1984、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81: 6851-6855;
Neubergerら、1984、Nature 312: 604-608; Takedaら、1985、Nature 314: 452
-454)を用いることができる。このような抗体は、本発明の範囲に含まれる。
【0149】 本発明によれば、一本鎖抗体の生成のために記載された方法(米国特許第4,94
6,778号)を適用して、例えば、Delta切断ペプチド特異的一本鎖抗体を生成する
ことができる。本発明の別の実施形態では、Fab発現ライブラリーの構築のため
に記載された方法(Huseら、1989、Science 246:1275〜1281)を利用して、Del
taタンパク質、誘導体または類似体に対して所望の特異性を備えるモノクローナ
ルFabフラグメントの迅速かつ容易な同定を可能にする。
【0150】 公知の方法により、前記分子のイディオタイプを含む抗体フラグメントを生成
することができる。例えば、このような断片として、限定するものではないが、
該抗体分子のペプシン消化により生成することができるF(ab’)2フラグメント;
F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成することが
できるFab’フラグメント;ならびに、パパインおよび還元剤で抗体分子を処理
することにより生成することができるFabフラグメントが挙げられる。
【0151】 抗体の生成において、所望の抗体のスクリーニングは、当技術分野で公知の方
法、例えば、ELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)により達成することができる
。例えば、Delta切断ペプチドを認識する抗体を選択するために、Delta切断ペプ
チドに結合する産物に対して、作製したハイブリドーマをアッセイしてもよい。
ヒトDelta切断ペプチドに免疫特異的な抗体の選択のためには、ヒトDelta切断ペ
プチドに対する結合が陽性であること、ならびにショウジョウバエDelta切断ペ
プチドとの結合を欠くことに基づいて選択することができる。
【0152】 以上述べた抗体は、本発明のタンパク質配列の局在化および活性に関する当技
術分野で公知の方法、例えば、診断法等において、適切な生理学的サンプルにお
ける上記タンパク質の画像化、そのレベルの測定のために使用することができる
【0153】 本発明の別の実施形態(以下参照)では、結合ドメインを含むDelta切断ペプ
チドおよびその断片に特異的な抗Delta切断ペプチド抗体は治療薬である。本発
明のさらに別の実施形態では、結合ドメインを含む抗Delta:Kuz複合体抗体もし
くはその断片は、治療薬である。本発明のさらに別の実施形態では、結合ドメイ
ンを含む抗可溶性Deltaペプチド抗体もしくはその断片は、治療薬である。
【0154】5.3 Deltaの活性形態の検出 本発明は、Delta活性化の指標であるDelta切断産物を観察または測定すること
による、Delta活性化の検出または測定方法に関する。本発明のこの実施形態の1
つの態様においては、細胞内のDelta活性化の検出または測定のための該方法は
、DlECおよびDlTMからなる群から選択される1以上のDelta切断産物の発現を検出
または測定することを含んでなる。さらに別の態様において該方法は、ショウジ
ョウバエDelta(配列番号9)においてはアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸Cys564 とアミノ酸Ala593もしくはGln594との間で終わり、ヒトDelta(配列番号10)
においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との間で終
わり、マウスDelta(配列番号6)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cy
s515とアミノ酸Phe543との間で終わり、ニワトリDelta(配列番号7)において
はアミノ酸Ser24で始まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わり、ま
たツメガエルDelta(配列番号8)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cy
s518とアミノ酸Phe544との間で終わる、全長Deltaのアミノ末端断片を検出また
は測定することを含んでなる。さらに別の態様において該方法は、還元条件下で
約67キロダルトンの可溶性Delta断片を検出または測定することを含んでなる。
【0155】 別の実施形態においては、本発明はまた、Delta切断産物の量またはパターン
の変化を検出または測定することによる、Delta活性化をモジュレートする分子
の同定方法に関する。本発明のこの実施形態の1つの態様においては、Notch活性
化のモジュレーターの該同定方法は、候補モジュレーター分子を細胞に提供し、
DlECおよびDlTMからなる群より選択される1以上のNotch切断産物の該細胞による
発現を検出または測定することを含んでなる。その際、該候補分子と接触してい
ないDelta細胞と比べたときの、1以上の該切断産物の存在または量の変化によっ
て、該分子がDelta活性をモジュレートすることが示される。
【0156】 別の態様においては、Delta活性化のモジュレーターの該同定方法は、候補モ
ジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下、および場合によってはさらに
細胞性タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよび場合によっては1以上の該
組成物の成分による該全長Deltaの切断を導くような条件下で接触させ、Delta切
断産物であるDlECおよびDlTMの量を検出または測定することを含んでなる。その
結果、該組成物の存在下で該候補分子と接触していない全長Deltaと比べたとき
の、該Notch切断産物の存在または量の変化によって、該分子がDelta活性をモジ
ュレートすることが示される。
【0157】 Delta活性化の指標であるDelta切断産物の発現を検出または測定するための、
当技術分野で公知であるいずれの方法を用いてもよい。例えば、限定するもので
はないが、Deltaの活性形態を検出するための方法の1つは、DlECおよびDlTMから
なる群から選択される1以上のDelta切断産物を検出することによるか、またはシ
ョウジョウバエDelta(配列番号9)においてはアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸
Cys564とアミノ酸Ala593もしくはGln594との間で終わり、ヒトDelta(配列番号
10)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との
間で終わり、マウスDelta(配列番号6)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミ
ノ酸Cys515とアミノ酸Phe543との間で終わり、ニワトリDelta(配列番号7)に
おいてはアミノ酸Ser24で始まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わ
り、またツメガエルDelta(配列番号8)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミ
ノ酸Cys518とアミノ酸Phe544との間で終わる、全長Deltaのアミノ末端断片を検
出することによるものである。さらに別の態様においては、該方法は、還元条件
下で約67キロダルトンの可溶性Delta断片を検出または測定することを含んでな
る。
【0158】 このような切断産物の検出は、例えば、抗Delta抗体で切断産物を免疫沈降さ
せるか、イムノアフィニティカラム上の抗Delta抗体またはプレート上もしくは
ウェル内に固定化された抗Delta抗体との結合によるか、あるいはウエスタンブ
ロッティングによる該断片の可視化によって行い得る。特定の実施形態において
は切断産物を、一般的な細胞表面標識化により、または放射性標識を含む培養培
地中でのインキュベーションによる細胞のパルス標識化により標識してもよい。
あるいは、Delta切断産物ではなく、抗Delta抗体(または抗体結合パートナー)
が標識されてもよい。
【0159】 Deltaの活性形態を検出するための別の方法には、Deltaに結合するDeltaリガ
ンドまたはその結合断片(Notchなど)を使用する方法(該リガンドが標識され
る場合など)、あるいはDelta切断産物などを共免疫沈降させる好適な抗Deltaリ
ガンド抗体との共免疫沈降によりDeltaを回収する方法などがある。
【0160】 前述の手順と同様の手順により、Deltaに結合するかさもなければDeltaと相互
作用する他のタンパク質(特にトポリズミック(toporythmic)タンパク質)の
ドメイン(Notchの結合断片など)に対する抗体を作製できる。
【0161】 内部でDelta活性化が検出または測定される細胞は、内在的にまたは組換えに
よってDeltaを発現する細胞の、任意の細胞であり得る。細胞は、脊椎動物、昆
虫(ショウジョウバエなど)、C. elegans、哺乳動物、ウシ、マウス、ラット、
鳥類、魚類、霊長類、ヒトなどの細胞であり得る。発現されるDeltaは、脊椎動
物、昆虫、C. elegans、哺乳動物、ウシ、マウス、ラット、鳥類、魚類、霊長類
、ヒトなどのものであり得る。細胞は、一次組織(primary tissue)、細胞系また
はDelta導入遺伝子を含み発現する動物の細胞であってもよい。例えば、トラン
スジェニック動物はショウジョウバエ(キイロショウジョウバエ(melanogaster)
など)、またはC. elegansであってもよい。好ましい実施形態においては、導入
遺伝子はヒトDeltaをコードする。トランスジェニック動物は、当技術分野でよ
く知られた標準的な方法により作製できる(ショウジョウバエにおけるベクター
としてのP因子トランスポゾンの使用によって、など)。
【0162】5.4. Delta活性化のモジュレーターの同定方法 本発明の1つの実施形態においては、全長Deltaの切断に影響を与えるモジュレ
ーターの能力を検出することによる、Delta活性化のモジュレーター(インヒビ
ター、アンタゴニストまたはアゴニストなど)の同定方法が提供される。本発明
のこの実施形態の1つの態様においては、Delta活性化のモジュレーターの該同定
方法は、細胞に候補モジュレーター分子を提供し、DlECおよびDlTMからなる群よ
り選択される1以上のDelta切断産物の該細胞による発現を検出または測定するこ
とを含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたとき
の、1以上の該切断産物の存在または量の変化によって、該分子がDelta活性をモ
ジュレートすることが示される。さらに別の態様において該方法は、細胞に候補
モジュレーター分子を提供し、ショウジョウバエDelta(配列番号9)において
はアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593もしくはGln594との
間で終わり、ヒトDelta(配列番号10)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミ
ノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との間で終わり、マウスDelta(配列番号6)にお
いてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543との間で終わり
、ニワトリDelta(配列番号7)においてはアミノ酸Ser24で始まりアミノ酸Cys5 23 とアミノ酸Phe551との間で終わり、またツメガエルDelta(配列番号8)にお
いてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544との間で終わる
、全長Deltaのアミノ末端断片の該細胞による発現量を検出または測定すること
を含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたときの
、該断片の存在または量の変化によって、該分子がDelta活性をモジュレートす
ることが示される。
【0163】 さらに別の態様において該方法は、細胞に候補モジュレーター分子を提供し、
約67キロダルトンの可溶性Delta断片の該細胞による発現を検出または測定する
ことを含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたと
きの、該可溶性断片の存在または量の変化によって、該分子がDelta活性をモジ
ュレートすることが示される。
【0164】 本発明のこの実施形態のさらに別の態様においては、Delta活性化のモジュレ
ーターの該同定方法は、候補モジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下
、および場合によってはさらに細胞性タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuz
および場合によっては1以上の該組成物の成分による該全長Deltaの切断を導くよ
うな条件下で接触させ、Delta切断産物であるDlECおよび/またはDlTMの量を検出
または測定することを含んでなる。その結果、該組成物の存在下で該候補分子と
接触していない全長Deltaと比べたときの、該Delta切断産物の存在または量の変
化によって、該分子がDelta活性をモジュレートすることが示される。別の態様
においては、Delta活性化のモジュレーターの該同定方法は、候補モジュレータ
ー分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下、および場合によってはさらに細胞性タン
パク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよび場合によっては1以上の該組成物の成
分による該全長Deltaの切断を導くような条件下で接触させ、ショウジョウバエD
elta(配列番号9)においてはアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸Cys564とアミノ
酸Ala593もしくはGln594との間で終わり、ヒトDelta(配列番号10)において
はアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との間で終わり、マ
ウスDelta(配列番号6)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys515とア
ミノ酸Phe543との間で終わり、ニワトリDelta(配列番号7)においてはアミノ
酸Ser24で始まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わり、またツメガ
エルDelta(配列番号8)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys518とア
ミノ酸Phe544との間で終わる、全長Deltaのアミノ末端断片を検出または測定す
ることを含むものである。その際、該組成物の存在下で該候補分子と接触してい
ない全長Deltaと比べたときの、該断片の存在または量の変化によって、該分子
がDelta活性をモジュレートすることが示される。
【0165】 さらに別の態様においては、Delta活性化のモジュレーターの該同定方法は、
候補モジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下、および場合によっては
さらに細胞性タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよび場合によっては1以
上の該組成物の成分による該全長Deltaの切断を導くような条件下で接触させ、
約67キロダルトンの可溶性Delta断片の量を検出または測定することを含んでな
る。その際、該組成物の存在下で該候補分子と接触していない全長Deltaと比べ
たときの、該可溶性断片の存在または量の変化によって、該分子がDelta活性を
モジュレートすることが示される。
【0166】 細胞性タンパク質を含む組成物を用いる実施形態の特定の態様においては、細
胞性タンパク質を含んでなる該組成物は、組換えによってDeltaを発現する細胞
から調製された細胞溶解物である。この実施形態の別の特定の態様においては、
細胞性タンパク質を含んでなる該組成物は、内在的にDeltaを発現する細胞から
調製された細胞溶解物である。
【0167】 Delta切断産物の検出または測定は、当技術分野でよく知られた方法によって
、および/または前出の第5.1節に開示した方法によって行い得る。
【0168】 この実施形態の方法において使用される細胞は、内在的にまたは組換えによっ
てDeltaを発現し得るものである。細胞型および発現され得るDeltaタンパク質の
例は第5.1節に記載されている。組換えDelta発現は、Deltaをコードする核酸を
発現ベクターに導入し、次いで該ベクターを細胞に導入してDeltaを発現させる
か、または単にDeltaをコードする核酸を発現のための細胞内に導入することに
よって行い得る。脊椎動物および非脊椎動物のDeltaをコードする核酸はクロー
ン化され、配列決定され、それらの発現は当技術分野においてよく知られている
。例えば、国際公開第WO97/01571号(参照により全体として本明細書に組み入れ
る)を参照されたい。発現は、発現ベクター由来であっても染色体内からであっ
てもよい。
【0169】 Delta-DNAをベクター中に挿入するための、当業者に知られた任意の方法を使
用し、好適な転写/翻訳制御シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメ
ラ遺伝子を含む発現ベクターを構築し得る。これらの方法は、in vitro組換えDN
Aおよび合成技術およびin vivo組換え体(遺伝的組換え)を含み得る。Deltaタ
ンパク質をコードする核酸配列の発現は、第二の核酸配列によって、Deltaタン
パク質が組換えDNA分子により形質転換された宿主内で発現されるように制御し
得る。例えば、Deltaタンパク質の発現を、当技術分野で公知であるプロモータ
ー/エンハンサーエレメントのいずれかにより制御し得る。Delta遺伝子の発現を
制御するために使用し得るプロモーターには、限定するものではないが、第5.1
節に記載のものが含まれる。
【0170】 全長Deltaを、細胞性タンパク質を含む組成物(細胞溶解物または細胞画分な
ど)とともに、候補となる切断の(そしてそれ故にDelta活性化の)モジュレー
ターの存在下でインキュベートする本発明の方法においては、Deltaの発現は、
全長Deltaが発現され、かつ、いずれのバックグラウンドのタンパク分解も越え
てDelta切断産物が容易に検出されるようにタンパク分解によるDelta切断が最小
限に保たれているものでなければならない。タンパク分解を最少に保つ方法が当
技術分野でいくつか知られている。例えば、Delta切断を最少に保つための1つの
方法は、Deltaを細胞内で発現させ、同時にブレフェルジンA処理を行うものであ
る。別の方法は、DeltaをKuzを含まない細胞内で発現させるか、またはフェニル
メチルスルホニルフルオリド(PMSF)などのプロテアーゼ阻害剤の存在下で、in v
itro転写/翻訳系においてDeltaを発現させるものである。
【0171】5.5 Kuz活性化のモジュレーターの同定方法 本発明の1つの実施形態においては、全長Deltaの切断に影響を与えるモジュレ
ーターの能力を検出することによる、Kuz機能のモジュレーター(インヒビター
、アンタゴニストまたはアゴニストなど)の同定方法が提供される。本発明のこ
の実施形態の1つの態様においては、Kuz機能のモジュレーターの該同定方法は、
Delta発現細胞に候補モジュレーター分子を提供し、DlECおよびDlTMからなる群
より選択される1以上のDelta切断産物の該細胞による発現を検出または測定する
ことを含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べたと
きの、1以上の該切断産物の存在または量の変化によって、該分子がKuz機能をモ
ジュレートすることが示される。さらに別の態様において該方法は、Delta発現
細胞に候補モジュレーター分子を提供し、ショウジョウバエDelta(配列番号9
)においてはアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593もしくはG
ln594との間で終わり、ヒトDelta(配列番号10)においてはアミノ酸Ser22
始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との間で終わり、マウスDelta(配列番
号6)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543との
間で終わり、ニワトリDelta(配列番号7)においてはアミノ酸Ser24で始まりア
ミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わり、またツメガエルDelta(配列番
号8)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544との
間で終わる、全長Deltaのアミノ末端断片の該細胞による発現量を検出または測
定することを含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比
べたときの、該断片の存在または量の変化によって、該分子がKuz機能をモジュ
レートすることが示される。
【0172】 さらに別の態様において該方法は、Delta発現細胞に候補モジュレーター分子
を提供し、約67キロダルトンの可溶性Delta断片の該細胞による発現を検出また
は測定することを含んでなる。その際、該候補分子と接触していないDelta細胞
と比べたときの、該可溶性断片の存在または量の変化によって、該分子がKuz機
能をモジュレートすることが示される。
【0173】 本発明のこの実施形態のさらに別の態様においては、Kuz機能のモジュレータ
ーの該同定方法は、候補モジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下、お
よび場合によってはさらに細胞性タンパク質を含む組成物の存在下で、Kuzおよ
び場合によっては1以上の該組成物の成分による該全長Deltaの切断を導くような
条件下で接触させ、Delta切断産物であるDlECおよび/またはDlTMの量を検出また
は測定することを含んでなる。その結果、該組成物の存在下で該候補分子と接触
していない全長Deltaと比べたときの、該Delta切断産物の存在または量の変化に
よって、該分子がKuz活性をモジュレートすることが示される。別の態様におい
ては、Kuz機能のモジュレーターの該同定方法は、候補モジュレーター分子と全
長Deltaとを、Kuzの存在下、および場合によってはさらに細胞性タンパク質を含
む組成物の存在下で、Kuzおよび場合によっては1以上の該組成物の成分による該
全長Deltaの切断を導くような条件下で接触させ、ショウジョウバエDelta(配列
番号9)においてはアミノ酸Ser23で始まりアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593
しくはGln594との間で終わり、ヒトDelta(配列番号10)においてはアミノ酸S
er22で始まりアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543との間で終わり、マウスDelta(
配列番号6)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe54 3 との間で終わり、ニワトリDelta(配列番号7)においてはアミノ酸Ser24で始
まりアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551との間で終わり、またツメガエルDelta(
配列番号8)においてはアミノ酸Ser22で始まりアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe54 4 との間で終わる、全長Deltaのアミノ末端断片を検出または測定することを含む
ものである。その際、該組成物の存在下で該候補分子と接触していない全長Delt
aと比べたときの、該断片の存在または量の変化によって、該分子がKuz機能をモ
ジュレートすることが示される。
【0174】 また別の態様において、Kuz機能のモジュレーターの同定方法は、Kuzおよび任
意に細胞性タンパク質を含む組成物の存在下、Kuzおよび場合によって該組成物
中の1種以上の成分による全長Deltaの切断を促す条件下において、候補モジュレ
ーター分子を全長Deltaと接触させ、約67キロダルトンの可溶性Delta断片の量を
検出および測定することを含む。この方法において、候補分子と接触させていな
い組成物の存在下における全長Deltaと比較したときの、前記可溶性断片の存在
または量の差異は、該分子がKuz機能をモジュレートすることを示す。
【0175】 細胞性タンパク質を含む組成物を用いるこの実施形態の特定の態様では、細胞
性タンパク質を含む組成物は、組換えによりKuzを発現する細胞から生成される
細胞溶解物である。この実施形態における別の特定の態様では、細胞性タンパク
質を含む組成物は、内在的にKuzを発現する細胞から生成される細胞溶解物であ
る。
【0176】 Delta切断産物の検出および測定は、当技術分野で公知の方法によって、およ
び/または前掲の第5.1節で開示した方法によって実施できる。
【0177】 この実施形態の方法に使用する細胞は、内在的にまたは組換えによりKuzを発
現できる。細胞種および発現されうるKuzタンパク質の例は、第5.1節に記載され
ている。組換えKuz発現は、Kuzをコードする核酸を発現ベクター中に導入し、続
いて該ベクターを細胞に導入してKuzを発現させるか、または単にKuzをコードす
る核酸を発現のための細胞中に導入することにより実施する。脊椎動物Kuzおよ
び非脊椎動物Kuzをコードする核酸は、クローン化および配列決定されており、
その発現は当技術分野で公知である。例えば、国際公開WO 98/08933を参照され
たい。該出願はその全体を参照により本明細書に組み入れる。発現は、発現ベク
ターまたは染色体内から起こりうる。
【0178】 Kuz-DNAをベクター中に挿入するための当業者に公知の方法のいずれかを用い
て、適当な転写/翻訳調節シグナルおよびタンパク質コード配列からなるキメラ
遺伝子を含む発現ベクターを構築しうる。これらの方法には、in vitro組換えDN
A、合成方法およびin vivo組換え体(遺伝子組換え)が含まれる。DeltaまたはK
uzタンパク質をコードする核酸配列の発現は、Kuzタンパク質が組換えDNA分子で
形質転換された宿主において発現されるように、また別の核酸配列によって調節
しうる。例えば、Kuzタンパク質の発現は当技術分野で公知の任意のプロモータ
ー/エンハンサー因子によって調節しうる。Delta遺伝子発現の制御に使用しうる
プロモーターとして、限定するものではないが、第5.1節に記載したものが挙げ
られる。
【0179】 全長DeltaおよびKuzを、細胞性タンパク質(例えば、細胞溶解物または細胞画
分)を含む組成物とともに、候補となる切断(すなわちDelta活性化)モジュレ
ーターの存在下においてインキュベートするような本発明の方法においては、De
ltaの発現は全長Deltaが発現されるものでなければならず、そしてDeltaのタン
パク質分解による切断を最小限に維持して、Delta切断産物がどんなバックグラ
ウンドタンパク質分解に対しても容易に検出されるようにする。タンパク質分解
を最小限に維持するための、いくつかの方法が当技術分野で公知である。例えば
、Delta切断を最小限にするための1つの方法は、同時にブレフェルジンA処理し
ながら細胞中でDeltaを発現させるものである。別の方法は、Deltaを含まない細
胞中でKuzを発現させるもの、またはin vitro転写-翻訳系においてフェニルメチ
ルスルホニルフルオリド(PMSF)のようなプロテアーゼ阻害剤の存在下でKuzを発
現させるものである。
【0180】5.6 Delta:Kuz複合体活性またはDlEC:Notch複合体活性のモジュレーターを同
定する方法 Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体、その誘導体、断片および類似体
、Delta、Notch、Kuzをコードする核酸、ならびに該核酸の誘導体、断片および
類似体を用いて、Delta:Kuz複合体またはDlEC:Notch複合体、複合体メンバー
コード化核酸、複合体メンバータンパク質、およびこれらの誘導体に結合するか
、またはこれらの機能をモジュレートし、かくしてDelta:Kuz複合体またはDlEC :Notch複合体の活性または生成の作動薬または拮抗薬としての潜在的用途を有
する化合物をスクリーニングできる。このように本発明は、Delta、Notch、Kuz
の核酸およびタンパク質、または該核酸およびタンパク質の誘導体に特異的に結
合するか、またはその機能をモジュレートする分子を検出するためのアッセイに
関する。例えば、DeltaおよびKuz核酸の双方を発現する組換え細胞を使用して、
このアッセイにおける複合体またはタンパク質を組換えにより産生することがで
き、Delta:Kuz複合体に結合するか該複合体の生成または活性を阻害または促進
する分子をスクリーニングすることができる。好ましい実施形態においては、優
れた安定性を有するがDelta:KuzまたはDlEC:Notch複合体を形成する能力を保持
しているポリペプチド類似体(例えば、DeltaおよびKuz、またはDlECおよびNotc
hを改変して、結合アッセイバッファー中におけるタンパク質分解に対して抵抗
力を持たせるか、または酸化的分解に対して抵抗力を持たせたもの)を使用して
、Delta活性化もしくはKuz活性、またはDelta:Kuz複合体の活性もしくは生成の
モジュレーターをスクリーニングするか、またはDlEC活性もしくはNotch活性、
またはDlEC:Notch複合体の活性もしくは生成のモジュレーターをスクリーニン
グする。このような抵抗性の分子は、例えば、タンパク質切断部位にあるアミノ
酸の置換、タンパク質分解を受けやすい部位における化学的に誘導体化したアミ
ノ酸の使用、および酸化を受けやすいアミノ酸残基(すなわち、メチオニンおよ
びシステイン)の置換によって作製することができる。
【0181】 例えば、推定される結合相手またはDelta:KuzもしくはDlEC:Notch複合体の活
性もしくは生成のモジュレーターなどの分子は、結合またはモジュレーションを
促進する条件下において、Delta:KuzもしくはDlEC:Notch複合体、またはこれら
の断片とそれぞれ接触させ、続いてDelta:KuzまたはDlEC:Notch複合体に特異的
に結合する分子、またはこれらの複合体の活性もしくは生成をモジュレートする
分子を同定する。同様の方法を用いて、Delta:KuzもしくはDlEC:Notch複合体を
コードする核酸もしくはその誘導体に結合する分子、またはこれらの複合体の機
能をモジュレートする分子をスクリーニングすることができる。
【0182】 本発明の特定の態様は、Delta:KuzまたはDlEC:Notch複合体の生成または分解
を、阻害または促進する分子の同定に関する。その際例えば、「集団内で生じる
タンパク質-タンパク質相互作用の同定および比較、ならびにこれらの相互作用
の阻害剤の同定」と題する国際特許公開 WO 97/47763(全体を参照により本明細
書に組み入れる)に記載されているような改変型酵母マトリックス接合試験を利
用する、阻害剤スクリーニングについて記載した方法を用いる。
【0183】 本発明の1実施形態において、DeltaもしくはKuz、またはDeltaおよびKuzの複
合体の活性をモジュレートする分子を、Kuzの存在下において1種以上の候補分子
をDeltaと接触させ、DeltaとKuzとの間で生成する複合体の量を測定することに
よって同定する。ここで複合体の生成量を、候補分子の不在下における生成量と
比べた場合の増加または減少は、該分子がDeltaもしくはKuz、またはDeltaとKuz
の複合体の活性をモジュレートすることを示す。好ましい実施形態においては、
DeltaまたはKuzの天然のプロモーターではないプロモーターからDeltaおよびKuz
の双方を発現する非ヒトトランスジェニック動物に、候補分子を投与することに
よりモジュレーターを同定する。より好ましくは、候補分子もまたこの非ヒトト
ランスジェニック動物中で組換えにより発現される。あるいは、このようなモジ
ュレーターの同定方法は、in vitroで、好ましくは精製されたDelta、精製され
たKuzおよび精製された候補分子を用いて実施することができる。
【0184】 本発明の別の実施形態においては、DlECもしくはNotch、またはDlECおよびNot
chの複合体の活性をモジュレートする分子を、1種以上の候補分子をNotchの存
在下でDlECと接触させ、DlECとNotchとの間で生成する複合体の量を測定するこ
とによって同定する。ここで複合体の生成量を、候補分子の不在下における生成
量と比べた場合の増加または減少は、該分子がDlECもしくはNotch、または前記D
lECとNotchの複合体の活性をモジュレートすることを示す。好ましい実施形態に
おいては、DlECまたはNotchの天然のプロモーターではないプロモーターからDlE C およびNotchの双方を発現する非ヒトトランスジェニック動物に、候補分子を投
与することによりモジュレーターを同定する。より好ましくは、該候補分子もま
た非ヒトトランスジェニック動物中で組換えにより発現される。あるいは、この
ようなモジュレーターの同定方法は、in vitroで、好ましくは精製されたDlEC
精製されたNotchおよび精製された候補分子を用いて実施することができる。
【0185】 上述のように実施するために使用できる方法は、当技術分野で公知である。ス
クリーニングすべき薬剤/分子は、特定の化合物数種の混合物として、または以
下の第5.7節に記載したような化合物ライブラリー、ペプチドライブラリーなど
として提供できる。またスクリーニングする薬剤/分子には、複合体の活性また
は生成をモジュレートすることができる、抗血清、アンチセンス核酸などのすべ
ての形態が含まれうる。
【0186】5.7 候補分子 当技術分野で公知のどんな分子も、Delta活性化またはKuz機能をモジュレート
するその能力について試験することができる。該能力は、本明細書に記載したDe
lta切断産物の1種以上を発現させることによって測定される。さらに、当技術分
野で公知のどんな分子も、Delta:Kuz複合体の機能をモジュレートする能力、ま
たはDlEC:Notch複合体の機能をモジュレートする能力について試験することが
できる。Delta活性化またはKuz機能をモジュレートする分子を同定するために、
候補分子をDeltaまたはKuzを発現する細胞に直接与えるか、または候補タンパク
質の場合は、それをコードする核酸が組換えにより発現して該候補タンパク質を
DeltaまたはKuz発現細胞中に産生するような条件下で該核酸を提供することによ
って、候補分子を与えることができる。全長Deltaおよび細胞性タンパク質を含
む組成物を用いるアッセイに関する本発明の実施形態においては、候補分子もま
た細胞性タンパク質(全細胞溶解物、膜画分など)を含む組成物に添加すること
ができる。好ましくは該タンパク質は、内在的にまたは組換えによりDeltaを発
現する細胞に由来するものである。
【0187】 本発明の実施形態は、Delta活性化もしくはKuz機能、または複合体の機能をモ
ジュレート(例えば、阻害、作動または拮抗)する分子のケミカルライブラリー
をスクリーニングするのに非常に適している。該ケミカルライブラリーは、ペプ
チドライブラリー、擬似ペプチドライブラリー、その他の非ペプチド合成有機物
ライブラリーでありうる。
【0188】 典型的なライブラリーは、いくつかの製造業者(ArQule,Tripos/Panlabs, Che
mDesign, Pharmacopoeia)から市販のものを入手できる。これらのケミカルライ
ブラリーを、コンビナトリアル戦略を用いて作製する場合もある。該戦略は、ラ
イブラリーのメンバー化合物が結合している基質上に各メンバーの正体をコード
化し、そうして効果的なモジュレーターである分子の直接的かつ即座の同定を可
能にする。このように、多くのコンビナトリアル法においては、化合物のプレー
ト上における位置がその化合物の組成を表す。また1実施例においては、単一の
プレートの位置は、関心のある相互作用を有するウェルに投入することによって
スクリーニングすることが可能な1〜20の化学物質を有しうる。こうしてモジュ
レーションが検出されると、相互作用する対のより少ないプールをモジュレーシ
ョン活性についてアッセイできる。この方法によって、多くの候補分子をスクリ
ーニングできる。
【0189】 使用に適した多くの多様なライブラリーが当技術分野で公知であり、本発明に
従ってこれらを使用して、試験すべき化合物を提供することができる。あるいは
、ライブラリーは標準的な方法を用いて構築することができる。化学的(合成)
ライブラリー、組換え発現ライブラリー、またはポリソームに基づくライブラリ
ーは、使用できる典型的な種類のライブラリーである。
【0190】 該ライブラリーは、形態に制約のあるもの(constrained)、半剛体(ある程度
の構造的硬度を有する)もの、線形なものまたは自由な形態のものでありうる。
該ライブラリーはcDNAもしくはゲノム発現ライブラリー、ランダムペプチド発現
ライブラリーまたは化学合成ランダムペプチド発現ライブラリー、または非ペプ
チドライブラリーでありうる。発現ライブラリーをアッセイを行う細胞中に導入
する。その際、該ライブラリーの核酸は発現して、それがコードするタンパク質
を産生する。1実施形態において、本発明において使用できるペプチドライブラ
リーは、in vitroで化学的に合成されたライブラリーでもよい。このようなライ
ブラリーの例が以下の論文に記載されている。Houghtenら、1991, Nature 354 :
84-86は、各ペプチド内の第1および第2残基が個々にかつ明確に確定されている
遊離ヘキサペプチドの混合物について記載する。Lamら、1991, Nature 354:82-8
4は、固相スプリット合成スキームによってペプチドのライブラリーを作製する
「1ビーズ、1ペプチド」法を記載する。該方法においては、収集した各ビーズ
自身の上にアミノ酸残基の単一のランダム配列が固定化されている。Medynski,
1994, Bio/Technology 12:709-710はスプリット合成法およびT-bag合成法につい
て記載する。Gallopら、1994, J. Medicinal Chemistry 37(9):1233-1251。そ
の他の単なる例示として挙げると、以下の文献の方法に従って、使用のためのコ
ンビナトリアルライブラリーを作製しうる。Ohlmeyerら、1993, Proc. Natl. Ac
ad. Sci. USA 90:10922-10926; Erbら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:
11422-11426; Houghtenら、1992, Biotechniques 13:412; Jayawickremeら、19
94, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:1614-1618; またはSalmonら、1993, Proc.
Natl. Acad. Sci. USA 90:11708-11712。PCT公開公報 WO 93/20242ならびにBre
nnerおよびLerner、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:5381-5383は、各化
学ポリマーライブラリーメンバーについてのオリゴヌクレオチドアイデンティフ
ァイヤーを含む「コード化コンビナトリアルケミカルライブラリー」について記
載する。
【0191】 さらに、より一般的で、構造的に制約のある有機物(例えば非ペプチド)の多
様なライブラリーもまた使用できる。例を挙げると、ベンゾジアゼピンライブラ
リー(Burinら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:4708-4712を参照)を使
用しうる。
【0192】 使用できるコンホメーションに制約のあるライブラリーとしては、限定するも
のではないが、酸化環境においてジスルフィド結合によって架橋されシスチンを
形成している不変のシステイン残基、改変ペプチド(例えば、フッ素、金属、同
位体ラベルを組込んでいるもの、リン酸化されたもの)、非天然アミノ酸を1個
以上含有するペプチド、非ペプチド構造体、およびγ-カルボキシグルタミン酸
を有意な割合で含有するペプチドを含むものが挙げられる。
【0193】 非ペプチド、例えばペプチド誘導体(非天然アミノ酸を1個以上含むものなど
)のライブラリーもまた使用できる。このようなライブラリーの一例に、ペプト
イドライブラリーがある(Simonら、1992, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9367
-9371)。ペプトイドは非天然アミノ酸のポリマーであり、該アミノ酸は、α炭素
ではなく骨格アミノ基の窒素に結合している天然の側鎖を有する。ペプトイドは
ヒト消化酵素によっては容易に分解されないので、薬物用途に有利かつより簡単
に適用できる。ペプチド内のアミド官能基が過メチル化されて、化学的に形質転
換されたコンビナトリアルライブラリーが作製されているような、別の例のライ
ブラリーを使用してもよい(Ostreshら、1994, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:
11138-11142)。
【0194】 本発明に従ってスクリーニングできるペプチドライブラリーのメンバーは、20
種の天然アミノ酸を含むものには限定されない。特に、化学的に合成されたライ
ブラリーおよびポリソームに基づくライブラリーにおいては、20種の天然アミノ
酸に加えて他のアミノ酸の使用が可能である(ライブラリーの作製において使用
するアミノ酸前駆体のプールにそれらを含有させることによる)。特定の実施形
態においては、該ライブラリーメンバーには、非天然もしくは非古典的アミノ酸
または環状ペプチドが1種以上含まれる。非古典的アミノ酸には、限定するもの
ではないが、一般のアミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、A
bu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ
酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロ
キシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-
ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、
β-メチルアミノ酸などの偽造(designer)アミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-
メチルアミノ酸、フルオロアミノ酸およびアミノ酸類似体全般が含まれる。さら
に、アミノ酸はD(右旋性)でもL(左旋性)でもありうる。
【0195】 さらに、トポリズミックタンパク質、ならびにその誘導体および断片をDelta
活性化をモジュレートする能力について試験できる。トポリズミックタンパク質
、そしてより一般的には、遺伝子の「Notchカスケード」または「Notch群」のメ
ンバーには、Notch、Delta、Serrate、Kuz、およびDelta/Serrateファミリーの
その他のメンバーが含まれ、これらは遺伝学的に(例えばショウジョウバエにお
ける表現型の検出)または分子相互作用(in vitroでの結合など)によって同定
される。遺伝子Notchファミリーの脊椎動物および非脊椎動物メンバーの例につ
いては、国際公開 WO 92/19734、WO 97/18822、WO 96/27610、およびWO 97/0157
1ならびにその中の引用文献を参照されたい。
【0196】 ライブラリーのスクリーニングは公知の種々の方法のいずれかによって実施で
きる。例えば、ペプチドライブラリーのスクリーニングについて記載している以
下の引用文献を参照されたい。Parmley and Smith, 1989, Adv. Exp. Med. Biol
. 251:215-218; Scott and Smith, 1990, Science 249:386-390; Fowlkesら
、1992, BioTechniques 13:422-427; Oldenburgら、1992, Proc. Natl. Acad. S
ci. USA 89:5393-5397; Yuら、1994, Cell 76:933-945; Staudtら、1988 Scienc
e 241:577-580; Bockら、1992, Nature 355:564-566; Tuerkら、1992, Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA 89:6988-6992; Ellingtonら、1992, Nature 355:850-852;
Ladnerら、米国特許第5,096,815号、米国特許第5,223,409号および米国特許第5,
198,346号;Rebar and Pabo, 1993, Science 263:671-673;および国際公開 WO
94/18318。
【0197】 特定の実施形態において、スクリーニングは、該ライブラリーメンバーを、De
ltaもしくはKuz、または固相上に固定した本発明のタンパク質複合体(またはコ
ードする核酸もしくは誘導体)に接触させ、該タンパク質または複合体(またはコ
ードする核酸もしくは誘導体)に結合するライブラリーメンバーを回収すること
により実施することができる。かかるスクリーニング法の例は、「パンニング(p
anning)」技術と呼ばれ、例えばParmleyおよびSmith、1988、Gene 73:305-318;
Fowlkesら、1992、BioTechniques 13:422-427;国際特許出願第WO 94/18318号;
および本明細書で先に引用した参考文献中に記載されている。
【0198】 特定の実施形態において、DeltaもしくはKuzの断片および/または類似体、特
にペプチド様物質を、Delta:Kuz複合体形成の競合的または非競合的阻害剤(それ
によってDelta:Kuz複合体の活性または形成を阻害する)としての活性についてス
クリーニングする。
【0199】 スクリーニング法には、本発明のタンパク質または複合体タンパク質を、放射
性リガンド(例えば、125Iもしくは3H)、磁性リガンド(例えば、酢酸フォトビオ
チン(photobiotin acetate)に共有結合した常磁性ビーズ)、蛍光リガンド(例え
ば、フルオレセインもしくはローダミン)、または酵素リガンド(例えば、ルシフ
ェラーゼもしくはβ‐ガラクトシダーゼ)で標識することが含まれ得る。次いで
、溶液中で結合する反応物を、当業界で公知の多数の技術のうちの1つによって
単離することができる。それらの技術としては、限定されるものではないが、非
標識結合パートナー(または第2標識タンパク質もしくは複合体部分で用いたも
のに由来する識別可能なマーカーを有する標識結合パートナー)に対する抗血清
を用いた標識タンパク質もしくは複合体部分の共免疫沈降法、免疫アフィニティ
ークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、および密度勾配遠心な
どが挙げられる。好ましい実施形態においては、該標識結合パートナーは、市販
のフィルターによって保持されない小さな断片またはペプチド様物質である。そ
して結合した場合には、標識された種はフィルターを通過できないため、複合体
形成の簡単なアッセイが可能となる。
【0200】 当業界で一般に知られた方法を用いて、タンパク質を標識する。好適な標識法
としては、限定されるものではないが、放射性標識したアミノ酸(例えば、3H‐
ロイシンもしくは35S‐メチオニン)の取込みによる放射性標識、クロラミンT法
、Bolton-Hunter試薬などを用いた125Iもしくは131Iによる翻訳後ヨウ素化によ
る放射性標識、またはホスホリラーゼおよび無機放射性標識リンを用いた32Pに
よる標識、酢酸フォトビオチンおよび太陽灯曝露によるビオチン標識などが挙げ
られる。
【0201】5.8 治療薬としての使用 本発明は、本発明の治療用化合物の投与による細胞運命(cell fate)または分
化に関する障害の治療を提供する。かかる治療用化合物(本明細書においては「
治療薬」と呼ぶ)としては、Delta切断ペプチド、Delta:KuzおよびDlEC:Notchタ
ンパク質複合体ならびにその類似体および誘導体(断片を含む)(例えば、上記の
もの)、それらに対する抗体(上記のもの)、Delta切断ペプチドをコードする核酸
、類似体、もしくは誘導体(例えば、上記のもの)および本発明のタンパク質複合
体、ならびにDelta、NotchおよびKuzアンチセンス核酸が挙げられる。さらに、
かかる治療薬には、可溶性Deltaペプチドならびにその誘導体および類似体、そ
れらに対する抗体、可溶性Deltaペプチドをコードする核酸、誘導体、もしくは
類似体、ならびに可溶性Deltaペプチドアンチセンス核酸が含まれる。特定の実
施形態においては、該治療薬は、ヒトDelta(配列番号10)のおよそアミノ酸Cys 516 〜アミノ酸Phe543、マウスDelta(配列番号6)のおよそアミノ酸Cys515〜アミ
ノ酸Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のおよそアミノ酸Cys523〜アミノ酸Phe 551 、ツメガエルDelta(配列番号8)のおよそアミノ酸Cys518〜アミノ酸Phe544
およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のおよそアミノ酸Cys564〜アミノ酸A
la593またはGln594の配列のDeltaタンパク質の断片を含むペプチドである。特定
の実施形態においては、該ペプチドは、Deltaタンパク質のうちの25、30、35、4
0、50、100、150、200または250個の連続したアミノ酸を含む。本発明のアンタ
ゴニスト治療薬は、Delta機能および/またはNotch機能(DeltaはNotchリガンド
であるからである)および/またはKuz機能(KuzはDeltaに結合し、タンパク分解
的にDeltaを処理するからである)に拮抗するか、またはそれらを阻害するような
治療薬である。かかるアンタゴニスト治療薬は、公知の簡便なin vitroアッセイ
、例えば、Deltaが別のタンパク質(例えば、Notchタンパク質またはKuzタンパク
質)に結合するのを阻害するか、または好ましくはin vitroもしくは細胞培養に
おいてアッセイされるような公知のNotchもしくはDeltaもしくはKuz機能のいず
れかを阻害する該治療薬の能力に基づくアッセイの使用によって同定するのが最
も好ましいが、遺伝的アッセイ(例えば、ショウジョウバエにおけるもの)も用い
ることができる。好ましい実施形態においては、該アンタゴニスト治療薬は、Ku
zへの結合を媒介するDelta切断ペプチド、またはそれに対する抗体である。他の
特定の実施形態においては、かかるアンタゴニスト治療薬は、Kuzに結合するDel
ta切断ペプチドを含む分子を発現することができる核酸、またはDeltaアンチセ
ンス核酸である(本明細書の第5.11節を参照のこと)。好ましくは、下記のように
、好適なin vitroまたはin vivoアッセイを、特定の治療薬の効果を測定したり
、罹病した組織の治療のためにその投与が必要であるかどうかを決定するために
利用すべきであることに留意しなければならない。何故なら、組織の発達の経歴
により、アンタゴニスト治療薬またはアゴニスト治療薬が望ましいかどうかが決
定され得るからである。
【0202】 さらに、Delta切断ペプチドもしくは誘導体またはタンパク質複合体もしくは
誘導体の投与の様式(例えば、可溶性形態で投与するか、あるいは細胞内の組換
え発現用のそのコード核酸を介して投与するかどうか)は、それがアゴニストま
たはアンタゴニストとして作用するかどうかに影響し得る。
【0203】 本発明のアゴニスト治療薬は、上記のように、Delta機能またはNotch機能また
はKuz機能を促進する。かかるアゴニスト治療薬としては、限定されるものでは
ないが、Kuzへの結合を媒介するDeltaの一部を含むタンパク質および誘導体、な
らびに前記のものをコードする核酸(投与してin vivoにおいてそれらのコード産
物を発現できるもの)が挙げられる。
【0204】 本発明の治療薬のさらなる説明および起源については、本明細書の第5.1節か
ら第5.7節に記載されている。
【0205】 所望のDelta特性(例えば、Kuzへの結合、細胞内リガンドへの結合)を保持する
か、あるいは阻害する分子を、それぞれ、かかる特性およびその生理学的相関の
誘導剤、または阻害剤として治療的に用いることができる。特定の実施形態にお
いては、Kuzに結合するDeltaの一部の配列を含有するペプチド(例えば、6〜50個
または100〜200個の範囲のアミノ酸、および特に約25、30、35、50、100または1
50個のアミノ酸)を用いて、DeltaまたはNotch機能に拮抗させることができる。
特定の実施形態においては、かかるアンタゴニスト治療薬を用いて、Notch発現
の上昇に関連するヒトその他の悪性腫瘍(例えば、子宮頸癌、大腸癌、乳癌、扁
平上皮腺癌(下記参照))を治療または予防する。Deltaの誘導体または類似体を、
当業界で公知の方法によって、所望の活性について試験することができる。その
方法としては、限定されるものではないが、下記の実施例に記載のアッセイが挙
げられる。特定の一実施形態においては、ペプチドライブラリーをスクリーニン
グして、所望の活性を有するペプチドを選択することができる。かかるスクリー
ニングは、例えばKuzへの結合をアッセイすることにより行うことができる。
【0206】 他の治療薬としては、Kuzに結合する分子がある。従って、本発明はまた、か
かる分子を同定する方法も提供する。かかる分子は、複数の分子(例えば、ペプ
チドライブラリー、またはコンビナトリアル化学ライブラリー中のもの)を、結
合を誘導するような条件下でKuzタンパク質と接触させ、Kuzタンパク質に結合す
る任意の分子を回収することを含んでなる方法によって同定できる。
【0207】 本発明のアゴニスト治療薬およびアンタゴニスト治療薬は、細胞運命に関わる
障害に対して治療上の有用性を有する。アゴニスト治療薬を、(1)NotchまたはDe
ltaまたはKuz機能レベルの不在または減少(正常レベルと比較した場合、または
所望であれば)に関与する疾患または障害において(例えば、Deltaタンパク質が
、欠損している、遺伝的に欠陥を有する、生物学的に不活性であるか、もしくは
活性が低下している、または発現が低下している被験者において)、および(2)in
vitro(またはin vivo)アッセイ(下記参照)によってDeltaアゴニストの投与の有
用性が示される疾患または障害において、治療的に(予防的にも)投与する。Notc
hまたはDeltaまたはKuz機能レベルの不在または減少は、例えば、被験者の組織
サンプル(例えば、生検組織由来のもの)を取得し、それをin vitroにおいて、発
現したNotchまたはDeltaまたはKuzタンパク質のタンパク質レベル、構造および
/または活性についてアッセイすることにより、容易に検出することができる。
従って、当業界で標準的な多くの方法を用いることができる。該方法としては、
限定されるものではないが、NotchもしくはDeltaもしくはKuzタンパク質を検出
および/または可視化するための免疫アッセイ(例えば、ウェスタンブロット、
免疫沈降後のドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動、免疫細
胞化学など)ならびに/あるいはNotchもしくはDeltaもしくはKuz mRNAをそれぞ
れ検出および/または可視化することによる、NotchもしくはDeltaもしくはKuz
の発現を検出するためのハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンア
ッセイ、ドットブロット、in situハイブリダイゼーションなど)が挙げられる。
【0208】 特定のアゴニスト治療薬またはアンタゴニスト治療薬の投与が必要であるかど
うかを決定するのに用いることができるin vitroアッセイとしては、被験者の組
織サンプルを培養物中で増殖させ、治療薬に曝露するかまたは治療薬を投与し、
そして該組織サンプルに対するかかる治療薬の効果を観察するin vitro細胞培養
アッセイが挙げられる。該被験者が悪性腫瘍を有する一実施形態においては、か
かる悪性腫瘍に由来する細胞サンプルを、プレートに塗布するかまたは培養物中
で増殖させ、次いで該細胞を治療薬に曝露する。悪性腫瘍細胞の生存または増殖
を阻害する(例えば、最終的な分化を促進することによる)治療薬を、in vivoに
おける治療的使用のために選択する。当業界で標準的な多くのアッセイを用いて
、かかる生存および/または増殖を評価することができる。例えば、3H‐チミジ
ンの取込みを測定したり、細胞を直接計数したり、癌原遺伝子(例えば、fos、my
c)または細胞周期マーカーなどの既知の遺伝子の転写活性の変化を検出すること
により、細胞増殖をアッセイすることができる。トリパンブルー染色によって細
胞の生存能力を評価することができる。また、形態学的変化に基づいて、分化を
可視的に評価することができる。特定の態様においては、該悪性腫瘍細胞培養物
を、(1)アゴニスト治療薬、および(2)アンタゴニスト治療薬に別々に曝露する。
このアッセイの結果により、どのタイプの治療薬が治療的な効能を有するかを示
すことができる。
【0209】 別の実施形態においては、それぞれ過剰または過少増殖性障害を有するか、ま
たは有することが疑われる組織に由来する被験者の細胞サンプルに対して、望ま
しい効果、細胞増殖の阻害または促進を示す治療薬の使用が必要とされる。かか
る過剰または過少増殖性障害としては、限定されるものではないが、下記の第5.
8.1節から第5.8.3節に記載のものが挙げられる。
【0210】 別の特定の実施形態においては、罹病した被験者のタイプの神経細胞に由来す
る神経再生/軸索伸長のin vitroでの促進を示す、神経損傷または神経系の変性
障害(第5.8.2節参照)の治療における治療薬の使用が必要とされる。
【0211】 さらに、本発明のアンタゴニスト治療薬の投与はまた、NotchもしくはDeltaも
しくはKuz優性活性化表現型(「機能を獲得する」突然変異)を含有することが決
定されるか、または知られた疾患あるいは障害において必要とされる。アゴニス
ト治療薬の投与は、NotchもしくはDeltaもしくはKuz優性ネガティブ活性化表現
型(「機能を喪失する」突然変異)を含有することが決定されるか、または知られ
た疾患あるいは障害において必要とされる。Notchタンパク質の種々の構造ドメ
インの機能が、hsp70熱ショックプロモーターならびに眼球特異的プロモーター
の下で一連のショウジョウバエのNotch欠失変異体を異所的に発現させることに
よって、in vivoで調べられてきた(Rebayら、1993、Cell 74:319-329を参照のこ
と)。2つのクラスの優性表現型が観察された。その1つは、Notchの機能を喪失
する突然変異を示し、もう一方は、Notchの機能を獲得する突然変異を示した。
優性「活性化」表現型は、大部分の細胞外配列を欠損したタンパク質の過剰発現
に起因し、一方、優性「ネガティブ」表現型は、大部分の細胞内配列を欠損した
タンパク質の過剰発現に起因していた。この結果は、受容体(その細胞外ドメイ
ンがリガンド結合を媒介する)としてのNotch機能が、細胞質ドメインによる発達
シグナルの伝達をもたらすことを示していた。
【0212】 種々の特定の実施形態において、被験者の障害に関与する細胞型のうちの代表
的な細胞を用いて、治療薬がかかる細胞型に対する望ましい効果を有するかどう
かを決定するためのin vitroアッセイを行うことができる。
【0213】 別の実施形態においては、前新生物であることが疑われる被験者の組織サンプ
ルの細胞を同様にin vitroにおいてプレートに塗布するか、または増殖させ、治
療薬に曝露する。より正常な(すなわち、前新生物状態、新生物状態、悪性腫瘍
状態、または形質転換された表現型を示す度合いの少ない)細胞表現型をもたら
す治療薬を、治療用に選択する。当業界で標準的な多くの方法を用いて、前新生
物状態、新生物状態、または形質転換されたかもしくは悪性腫瘍の表現型が存在
するかどうかを評価することができる。例えば、形質転換された表現型に関連す
る特徴(in vivoにおける腫瘍形成能に関連するin vitroでの一群の特徴)として
は、より円形化した細胞形態、より緩んだ培養基(substratum)への付着、接触阻
害の喪失、足場依存性の喪失、プラスミノーゲン活性化因子などのプロテアーゼ
の放出、糖質輸送の増加、血清要求性の低下、胎児性抗原の発現、250,000ダル
トン表面タンパク質の消失などが挙げられる(Luriaら、1978、General Virology
、第3版、John Wiley & Sons、New York pp. 436-446)。
【0214】 他の特定の実施形態においては、治療すべき特定の被験者に由来する細胞サン
プルではなく、細胞系を用いて上記のin vitroアッセイを行うことができる。こ
の細胞系は、治療または予防することが望まれる悪性腫瘍、新生物または前新生
物障害から誘導されたものか、またはこれらの障害に関連する特徴を示すもので
あり、あるいは本発明に従う効果が望まれる神経細胞型または他の細胞型から誘
導されたものである。
【0215】 該アンタゴニスト治療薬を、(1)NotchもしくはDeltaもしくはKuzの機能レベル
の上昇(正常なものと比較した場合、または所望であれば)に関与する疾患または
障害(例えば、NotchもしくはDeltaもしくはKuzタンパク質が過剰発現されるか、
または過剰な活性を有する場合)において、および(2)in vitro(またはin vivo)
アッセイにおいてDeltaアンタゴニストの投与の有用性が示唆されるような疾患
または障害において、治療的に(予防的にも)投与することができる。Notchもし
くはDeltaもしくはKuz機能のレベルの上昇は、上記のものなどの方法、タンパク
質および/またはRNAの定量により容易に検出することができる。治療上の有用
性を決定するために、被験者の組織サンプルの細胞または適当な細胞系もしくは
細胞型を用いたin vitroアッセイを上記のように行うことができる。
【0216】5.8.1 悪性腫瘍 アンタゴニスト治療薬またはアゴニスト治療薬による介入の効能について上記
のように試験することができ、また処理して治療上の有用性の示唆を観察するこ
とができる悪性腫瘍および前新生物状態としては、限定されるものではないが、
下記の第5.8.1節および第5.9.1節のものが挙げられる。
【0217】 本発明に従って治療され、その細胞型をin vitro(および/またはin vivo)で
試験することができ観察の際に適当なアッセイ結果が得られた悪性腫瘍および関
連障害としては、限定されるものではないが、表1に記載したものが挙げられる
(かかる障害の概説については、Fishmanら、1985、Medicine、第2版、J.B. Lipp
incott Co.、Philadelphiaを参照のこと)。
【0218】
【表1】 悪性腫瘍および関連障害
白血病 急性白血病 急性リンパ球性白血病 急性骨髄性白血病 骨髄芽球性 前骨髄球性 骨髄単球性 単球性 赤白血病 慢性白血病 慢性骨髄性(顆粒球性)白血病 慢性リンパ球性白血病 真性赤血球増加症 リンパ腫 ホジキン病 非ホジキン病 多発性骨髄腫 ヴァルデンストレームマクログロブリン血症 H鎖病 固形腫瘍 肉腫および癌腫 線維肉腫 粘液肉腫 脂肪肉腫 軟骨肉腫 骨原性肉腫 脊索腫 血管肉腫 内皮肉腫 リンパ管肉腫 リンパ管内皮肉腫 骨膜腫 中皮腫 ユーイング腫 平滑筋肉腫 横紋筋肉腫 大腸癌 膵臓癌 乳癌 卵巣癌 前立腺癌 扁平上皮癌 基底細胞癌 腺癌 汗腺癌 皮脂腺癌 乳頭状癌 乳頭状腺癌 嚢胞腺癌 髄様癌 気管支原生癌 腎細胞癌 肝細胞癌 胆管癌 絨毛癌 精上皮腫 胎生期癌 ウィルムス腫 子宮頸癌 精巣腫 肺癌 小細胞肺癌 膀胱癌 上皮癌 神経膠腫 星状細胞腫 髄芽細胞腫 頭蓋咽頭腫 上衣細胞腫 松果体腫 血管芽細胞腫 聴神経腫 乏突起神経膠腫 髄膜腫 黒色腫 神経芽細胞腫 網膜芽細胞腫
【0219】 特定の実施形態においては、頸部(cervix)、食道、および肺などにある上皮
組織において悪性腫瘍または異常増殖変化(化生および形成異常など)を治療ま
たは予防する。
【0220】 大腸および首の悪性腫瘍は、該悪性腫瘍ではない組織に関連するヒトNotchの
増加発現を示す(1994年4月14日に公開されたPCT公開番号WO 94/07474を参照の
こと、参照によりその全文を本明細書に組み入れる)。したがって、特定の実施
形態においては、Notch機能を阻害するアンタゴニスト治療法、例えばDelta切断
ペプチドの有効量を投与することによって、大腸癌もしくは頸部の悪性腫瘍また
は前悪性変化を治療または予防する。大腸および頸癌におけるNotchの増加発現
の存在は、多くのさらに癌性かつ過増殖の状態がNotchのアップレギュレーショ
ンを示すと示唆する。したがって特定の実施形態においては、Notch機能を阻害
するアンタゴニスト治療薬の投与によって、種々の癌(例えば乳癌、扁平腺癌、
セミノーマ、黒色腫、および肺癌、ならびにそれらの前悪性変化、他の過増殖性
疾患など)を治療または予防し得る。
【0221】5.8.2 神経系疾患 アンタゴニストまたはアゴニスト治療薬による介入の効果について前掲に記載
したように試験することができ、また治療を行って治療有効性の指示を観察しう
る細胞型に関与する神経系疾患には、限定するものではないが、 神経系損傷、
および軸索の分離、ニューロンの減退もしくは変性、または脱髄のいずれかを引
き起こす疾病または障害が含まれる。本発明に従って患者(ヒトおよび非ヒト哺
乳動物の治療を受ける者を含む)を治療し得る神経系損傷には、限定するもので
はないが、以下に示す中枢神経系(脊髄、脳を含む)または末梢神経系の損傷が
含まれる; (i)外傷性損傷(身体外傷により生じる損傷または外科手術に関連する損傷
、例えば、神経系の一部を切断する損傷、または圧迫損傷が含まれる); (ii)虚血性損傷(神経系の一部において酸素の欠乏により神経の損傷または
死が引き起こされる、例えば脳梗塞もしくは虚血、または脊髄梗塞もしくは虚血
が含まれる); (iii)悪性腫瘍病巣(神経系関連悪性腫瘍または非神経系組織由来の悪性腫
瘍のいずれかの悪性組織によって神経系の一部が破壊または傷つけられている)
; (iv)感染病巣(感染症、例えば、ヒト免疫不全ウイルス、帯状ヘルペス、も
しくは単純ヘルペスウイルスによる膿瘍の感染症またはそれらに関連した感染症
、あるいはライム病、結核、梅毒の結果として、神経系の一部が破壊または傷つ
けられている); (v)変性病巣(限定するものではないが、パーキンソン病、アルツハイマー
病、ハンチントン舞踏病もしくは筋萎縮性側索硬化症に関連する変性を含む変性
過程の結果として、神経系の一部が破壊または傷つけられている); (vi)栄養性疾病または障害に関連する病巣(限定するものではないが、ビタ
ミンB12欠乏症、葉酸欠乏症、ウェルニッケ病、タバコ−アルコール性弱視、マ
ルキアファーヴァ‐ビニャーミ病(脳梁の原発性変性)、およびアルコール性小
脳変性を含む栄養障害または代謝の障害により、神経系の一部が破壊または傷つ
けられている); (vii)神経学的病巣(限定するものではないが、糖尿病(糖尿病性ニューロ
パシー、ベル麻痺)、全身性紅斑性狼瘡、カルチノーマ、またはサルコイドーシ
スを含む全身性疾患に関連する); (viii)毒物質により引き起こされる傷害(該毒物質には、アルコール、鉛、
または特定の神経毒が含まれる);ならびに (ix)脱髄性病巣(限定するものではないが、多発性硬化症、ヒト免疫不全ウ
イルス関連骨髄障害、横断骨髄障害もしくは種々の病因、進行性多病巣性白質脳
症、および橋中央ミエリン溶解を含む脱髄性疾患により、神経系の一部が破壊ま
たは傷つけられている)。
【0222】 神経系疾患の治療に有用な本発明の治療薬は、ニューロンの生存および分化を
促進する生物学的活性について試験することにより選択し得る(第5.8節も参
照のこと)。例えば制限するわけではないが、本発明に従って以下に示す作用の
いずれかを引き出す治療薬は有用でありうる; (i)培養においてニューロンの生存時間を増大させる、 (ii)培養またはin vivoにおいてニューロンの新芽形成を増大させる、 (iii)培養またはin vivoにおいてニューロン関連分子(例えば運動性ニュー
ロンに関するコリンアセチルトランスフェラーゼもしくはアセチルコリンエステ
ラーゼ)の産生を増大させる、あるいは (iv)in vivoにおいてニューロン機能障害の症候を低減させる。
【0223】 かかる作用は、当技術分野で公知の任意の方法により測定し得る。非限定的な
好ましい実施形態においては、ニューロン生存率の増大をArakawaら(1990、J.
Neurosci. 10:3507-3515)に記載の方法により測定することができ、ニューロン
の新芽形成の増大をPestronkら(1980、Exp. Neurol. 70:65-82)またはBrownら
(1981、Ann. Rev. Neurosci. 4 :17-42)に記載の方法により検出することがで
き、ニューロン関連分子の産生の増大を、測定しようとする分子に従ってバイオ
アッセイ、酵素アッセイ、抗体結合、ノーザンブロットアッセイなどにより測定
することができ、そして運動性ニューロン機能障害を運動性ニューロン疾患の身
体的発現、例えば、衰弱、運動性ニューロン伝導速度、または機能不能を評価す
ることにより測定することができる。
【0224】 特定の実施形態においては、本発明により治療し得る運動性ニューロン疾患に
は、限定するものではないが、運動性ニューロンおよび神経系の他の構成要素に
影響を及ぼす梗塞、感染症、毒素への暴露、外傷、外科手術損傷、変性疾患また
は悪性腫瘍などの疾患、および筋萎縮性側索硬化症などのニューロンに選択的に
影響を及ぼす疾患、ならびに限定するものではないが、進行性棘筋萎縮、進行性
球麻痺、原発性側索硬化症、乳児性および若年性筋萎縮、小児期の進行性球麻痺
(Fazio-Londe症候群)、ポリオおよびポリオ後症候群、および遺伝性運動感覚
神経障害(シャルコー‐マリー‐ツース病)が含まれる。
【0225】5.8.3 組織修復および再生 本発明の他の実施形態においては、本発明の治療薬を、限定するものではない
が良性異常増殖疾患の治療を含む組織再生および修復の促進のために使用する。
特定の実施形態は、肝臓の肝硬変(瘢痕化が正常な肝臓再生過程を上回った状態
)の治療、ケロイド(過形成性瘢痕)形成(瘢痕化過程が正常な回復を妨げる皮
膚の傷)の治療、乾癬(皮膚の過剰増殖および適切な細胞運命決定の遅延を特徴
とする共通の皮膚状態)、および禿頭症(最後に分化した毛包(Notchに富む組
織)が適切に機能しない状態)に関する。他の実施形態においては、本発明の治
療薬を使用して内耳の感覚上皮の変性または外傷疾患を治療する。
【0226】5.9 予防用途 5.9.1 悪性腫瘍 本発明の治療薬を、限定するものではないが表1に挙げる疾患を含む新生物ま
たは悪性腫瘍状態への進行を予防するために投与し得る。かかる投与は、該治療
薬がかかる疾患の治療または予防に有用であることが前掲に記載のようなアッセ
イにおいて示される場合に指示される。そのような予防用途は、先行する新生ま
たは癌への進行の既知または推測される状態において、特に、過形成、化生、最
も特定すると形成異常からなる非新生物の細胞増殖が起こった場合に指示される
(そのような異常増殖状態の総説については、RobbinsおよびAngell、1976、Bas
ic Pathology、第2版、W.B. Saunders Co.、Philadelphia、pp. 68-79を参照の
こと)。過形成とは、組織または器官において構造または機能の有意な変化なし
に細胞数の増加に関与する、制御された細胞増殖の形態である。一例としては、
子宮内膜の過形成は子宮内膜癌に先行して起こる場合が多い。化生とは、あるタ
イプの成人細胞または完全に分化した細胞が他のタイプの成人細胞と置換する、
制御された細胞増殖の形態である。化生は上皮または結合組織細胞で起こり得る
。異型の化生は疾患上ある程度化生である上皮に起こり得る。形成異常は頻繁に
癌の前兆となり、そして主に上皮において見出される。これは非新生物の細胞増
殖の最も疾患的な形態であり、個々の細胞の均一性および細胞の構成的配向の欠
損に関与する。形成異常細胞は異常に大きく、濃く染色された核を有することが
多く、そして多形性を示す。形成異常はその特性上、慢性過敏または炎症を示す
ところで発生し、そしてしばしば頸部、呼吸気管、口腔、および胆嚢において見
出される。
【0227】 あるいは、または過形成、化生、または形成異常という特徴を有する異常細胞
増殖の存在に加えて、in vivoで、または患者由来の細胞サンプルによりin vitr
oで展示される形質転換した表現型または悪性腫瘍表現型の1以上の特性の存在に
より、本発明の治療薬の好ましい予防/治療的投与が指示されうる。前掲に記載
のように、そのような形質転換した表現型の特性には、形態変化、よりゆるやか
な基層付着、接触阻害の損失、固着依存性の損失、プロテアーゼ放出、糖輸送の
増大、血清要求性の減少、胎児性抗原の発現、250,000ダルトンの細胞表面タン
パク質の消失などが含まれる(また、形質転換したまたは悪性腫瘍表現型に関す
る特性については同上pp.84-90を参照のこと)。
【0228】 特定の実施形態においては、白斑症、上皮の良性を示す過形成もしくは形成異
常の損傷またはボーエン病(in situにおけるカルチノーマ)は、好ましい予防
的介入を指示する前新生物の病巣である。
【0229】 他の実施形態においては、線維嚢胞病(嚢胞性過形成、乳房形成異常、特に腺
疾患(良性上皮過形成))は、好ましい予防的介入を指示する。
【0230】 他の実施形態においては、以下に示す悪性腫瘍の素因を1以上示す患者を、有
効量の治療薬の投与により治療する。その素因とは、悪性腫瘍(例えば、慢性骨
髄性白血病のフィラデルフィア染色体、濾胞性リンパ腫のt(14;18)など)に関連
する染色体転座、家族性ポリープ症もしくはガードナー症候群(大腸癌が起こり
得る前兆)、良性単一クローン性高ガンマグロブリン血症(多発性骨髄腫が起こ
り得る前兆)、およびメンデル的(遺伝学的)遺伝形質パターンを示す癌もしく
は前癌疾患(例えば、大腸の家族性ポリポーシス、ガードナー症候群、遺伝性外
骨症、多発性内分泌腺腫症、アミロイド産生および褐色細胞腫を有する骨髄性甲
状腺癌、ポイツ‐ジェガーズ症候群、フォン・レックリングハウゼン神経線維腫
症、網膜芽腫、頸動脈小体腫瘍、皮膚黒色癌、眼内黒色癌、色素性乾皮症、毛細
血管拡張性運動失調、チェジアック−東症候群、白皮症、ファンコーニ再生不良
性貧血、およびブルーム症候群;RobbinsおよびAngell、1976. Basic Pathology
、第2版、W.B. Saunders Co.、Philadelphia、pp. I12-ll3)を参照のこと、な
ど)を有する個人の一親等血族である。
【0231】 他の特定の実施形態においては、本発明のアンタゴニスト治療薬をヒト患者に
投与して、乳癌、大腸癌もしくは頸癌への進行を予防する。
【0232】5.9.2 他の疾患 他の実施形態において、本発明の治療薬を投与して、第5.8.2節に記載の
神経系疾患または第5.8.3節に記載の他の疾患(例えば肝臓肝硬変、乾癬、
ケロイド、禿頭症)を予防しうる。
【0233】5.10 治療または予防的用途の実証 本発明の治療薬は、所望の治療または予防の活性についてin vivoで試験する
ことができる。例えばかかる化合物をヒトで試験する前に、限定するものではな
いが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含む適切な動物モ
デル系において試験し得る。in vivo試験のために、ヒトに投与する前に当技術
分野で公知の任意の動物モデル系を使用し得る。
【0234】5.11 Delta活性化あるいはDelta:KuzもしくはDlEC:Notch複合体の活性または
形成の抑制のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドの使用 本発明の特定の実施形態においては、Delta切断ペプチド、Delta、Kuz、Notch
、およびDelta:KuzもしくはDlEC:Notch複合体の活性および/または形成を、D
elta、Notchおよび/またはKuzのアンチセンス核酸を使用して阻害する。本発明
は、Delta、Notchおよび/もしくはKuzまたはそれらの一部分をコードする遺伝
子またはcDNAに対してアンチセンスである少なくとも6ヌクレオチドの核酸の治
療または予防上の使用を提供する。本明細書で使用するように、「アンチセンス
」核酸とは、ある程度の配列相補性によってDelta、NotchまたはKuz RNA(好ま
しくはmRNA)の一部にハイブリダイズすることができる核酸を意味する。該アン
チセンス核酸は、Delta、NotchまたはKuz mRNAのコード領域および/または非コ
ード領域に相補的でありうる。Delta切断ペプチド活性あるいはDelta:Kuz複合
体形成もしくは活性またはDlEC:Notch複合体形成もしくは活性を阻害するアン
チセンス核酸は、治療薬として有用性があり、前掲に記載のような疾患の治療ま
たは予防に使用し得る。
【0235】 本発明のアンチセンス核酸は、2本鎖もしくは1本鎖、RNAもしくはDNA、または
それらの修飾体もしくは誘導体であるオリゴヌクレオチドであることができ、そ
れを直接細胞に投与してもよいし、または、外因性の導入された配列の転写によ
り細胞内で産生させてもよい。
【0236】 他の実施形態においては、本発明は、原核細胞または真核細胞におけるDelta
切断ペプチド核酸配列の発現の阻害方法に関し、該方法には本発明のDelta切断
ペプチドのアンチセンス核酸もしくはその誘導体を含有する組成物の有効量を細
胞に提供することが含まれる。
【0237】 上記アンチセンス核酸は、少なくとも6ヌクレオチドであり、好ましくは6〜約
200ヌクレオチドの範囲のオリゴヌクレオチドである。特定の態様においては、
該オリゴヌクレオチドは少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド
、少なくとも100ヌクレオチド、または少なくとも200ヌクレオチドである。該オ
リゴヌクレオチドは、DNAもしくはRNA、またはそのキメラ混合物、あるいはそれ
らの誘導体もしくは修飾変形体であり、1本鎖もしくは2本鎖のいずれかでありう
る。該オリゴヌクレオチドを塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖で修飾しても
よい。該オリゴヌクレオチドには、ペプチド、細胞膜を横切る輸送を促進する薬
物(例えばLetsingerら、1989、Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 86:6553-6556
;Lemaitreら、1987、Proc. Natl. Acad. Sci. 84:648-652;国際特許公開番号W
O 88/09810を参照)もしくは血液−脳関門を横切る輸送を促進する薬物(例えば
国際特許公開番号WO 89/10134を参照)、ハイブリダイゼーション誘発切断剤(
例えばKrolら、1988、BioTechniques 6:958-976を参照)、または介在薬(例え
ばZon、1988、Pharm. Res. 5:539-549を参照)などの他の追加基が含まれてもよ
い。
【0238】 本発明の好ましい態様においては、Delta切断ペプチドのアンチセンスオリゴ
ヌクレオチドが好ましくは1本鎖DNAとして提供される。該オリゴヌクレオチドは
、一般に当技術分野で公知の構成要素を有するその構造の任意の部位で修飾され
得る。
【0239】 アンチセンスオリゴヌクレオチドには、限定するものではないが、5-フルオロ
ウラシル、5-ブロモウラシル、5-クロロウラシル、5-ヨードウラシル、ヒポキサ
ンチン、キサンチン、4-アセチルシトシン、5-(カルボキシヒドロキシルメチル)
ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウリジン、5-カルボキシメ
チルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、β-D-ガラクトシルクエオシン
、イノシン、N6-イソペンテニルアデニン、l-メチルグアニン、l-メチルイノシ
ン、2,2-ジメチルグアニン、2-メチルアデニン、2-メチルグアニン、3-メチルシ
トシン、5-メチルシトシン、N6-アデニン、7-メチルグアニン、5-メチルアミノ
メチルウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオウラシル、β-D-マンノシルク
エオシン、5N-メトキシカルボキシメチルウラシル、5-メトキシウラシル、2-メ
チル-チオ-N6-イソペンテニルアデニン、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、ワイブ
トキソシン、プソイドウラシル、クエオシン、2-チオシトシン、5-メチル-2-チ
オウラシル、2-チオウラシル、4-チオウラシル、5-メチルウラシル、ウラシル-5
-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、5-メチル-2-チオウ
ラシル、3-(3-アミノ-3-N-2-カルボキシプロピル)ウラシル、(acp3)w、および
2,6-ジアミノプリンを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾された塩基
部分が含まれ得る。
【0240】 他の実施形態においては、前記オリゴヌクレオチドには、限定するものではな
いが、アラビノース、2-フルオロアラビノース、キシルロース、およびヘキソー
スを含む群より選択される、少なくとも1つの修飾された糖部分が含まれる。
【0241】 更に別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは、ホスホロチオエート、ホ
スホロジチオエート、ホスホルアミドチオエート、ホスホルアミデート、ホスホ
ルジアミデート、メチルホスホネート、アルキルホスホトリエステル、及びホル
ムアセタール、またはこれらの類似体からなる群から選択される、少なくとも1
種の修飾されたリン酸骨格を含む。
【0242】 更に別の実施形態において、オリゴヌクレオチドは2−α−アノマーオリゴヌ
クレオチドである。α−アノマーオリゴヌクレオチドは相補的なRNAと特殊な二
本鎖ハイブリッドを形成し、通常のβ−ユニットと対照的に、鎖が互いに平行に
なっている(Gautierら、1987, Nucl. Acids Res. 15:6625-6641)。
【0243】 オリゴヌクレオチドは他の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘
起性架橋剤、輸送(transport)剤、ハイブリダイゼーション誘起性切断剤等と
コンジュゲートされても良い。
【0244】 本発明のオリゴヌクレオチドは、当分野で公知の標準的な方法、例えば自動DN
A合成機(Biosearch、Applied Biosystems等から市販されているもの等)によっ
て合成することができる。例として、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドは
Steinらの方法(1988, Nucl. Acids Res. 16:3209)によって合成することがで
き、メチルホスホネートオリゴヌクレオチドは孔を調節したガラスポリマー支持
体の使用によって調製することができる(Sarinら、1988, Proc. Natl. Acad. S
ci. U.S.A. 85:7448-7451)。
【0245】 特殊な実施形態において、アンチセンスオリゴヌクレオチドは触媒性RNA、あ
るいはリボザイム(例えば国際特許公開No.WO90/11364;Sarverら、1990, Scien
ce 247:1222-1225を参照すること)を含む。別の実施形態においては、オリゴヌ
クレオチドは2'-O-メチルリボヌクレオチド(Inoueら、1987, Nucl. Acids Res.
15:6131-6148)、またはキメラRNA-DNA類似体(Inoueら、1987, FEBS Lett. 21
5:327-330)である。
【0246】 別の実施形態において、本発明のアンチセンス核酸は外来性配列からの転写に
よって細胞内で生成される。例えば、ベクターを細胞に取り込まれるようにin v
ivoに導入し、取り込んだ細胞内でこのベクターまたはその一部が転写されて、
本発明のアンチセンス核酸(RNA)を生成することができる。こうしたベクター
は、転写されて所望のアンチセンスRNAを製造することができる限り、エピソー
ムのままでいても、また染色体に組み込まれても良い。こうしたベクターは、当
分野では標準的な組み換えDNA技術によって構築することができる。ベクターは
、プラスミド、ウイルス、または当分野で哺乳動物細胞内での複製及び発現がで
きることが知られている他のものであっても良い。アンチセンスRNAをコードす
る配列の発現は、哺乳動物、好ましくはヒトの細胞内で働くことが当分野で公知
のいずれのプロモーターによるものであっても良い。こうしたプロモーターは誘
導性または構成的プロモーターのいずれであっても良い。こうしたプロモーター
としては、限定されるものではないが、SV40初期プロモーター領域(Bernoist及
びChambon, 1981, Nature 290:304-310)、ラウス肉腫ウイルスの3’長末端反
復に含まれるプロモーター(Yamamotoら、1980, Cell 22:787-797)、ヘルペス
チミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら、1981, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S
.A. 78:1441-1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら、1982,
Nature 296:39-42)等が挙げられる。
【0247】 本発明のアンチセンス核酸は、Delta、NotchまたはKuz遺伝子、好ましくはヒ
トのDelta、NotchまたはKuz遺伝子のRNA転写物の少なくとも一部に相補的な配列
を含む。しかしながら、絶対的相補性は、好ましいが必要ではない。本明細書で
いう場合、「RNAの少なくとも一部に相補的な」配列は、RNAとハイブリダイズし
て安定な二本鎖を形成することができる程の十分な相補性を有する配列を意味す
る。二本鎖アンチセンス核酸の場合、二本鎖DNAの一本の鎖をこのように試験す
ることができ、またはトリプレックス形成をアッセイすることができる。ハイブ
リダイズする能力は、相補性の程度及びアンチセンス核酸の長さの双方に依存す
る。一般に、ハイブリダイズする核酸が長くなる程、含まれ得るRNAとの塩基ミ
スマッチは多くなるが、それでも安定な二本鎖(または場合によってはトリプレ
ックス)を形成する。当業者であれば、ハイブリダイズした複合体の融点を決定
する標準的な方法を使用してミスマッチの許容度を確認できる。
【0248】 アンチセンス核酸を使用して、Delta切断ペプチド、またはDelta:Kuz複合体、
若しくはDlEC:Notch複合体を発現、または好ましくは過剰発現する細胞型の障害
を治療(または予防)することができる。好ましい実施形態において、一本鎖De
lta、Notch若しくはKuz DNAアンチセンスオリゴヌクレオチド、いずれも一本鎖
のDelta、Notch及びKuzアンチセンスオリゴヌクレオチド、または一本鎖のDelta
:Kuz DNAアンチセンス融合配列を使用する。
【0249】 Delta、Notch及び/またはKuz RNAを発現または過剰発現する細胞型は、当分
野で公知の種々の方法によって同定することができる。こうした方法には、限定
されるものではないが、Delta-、Notch-及びKuz-特異的核酸とのハイブリダイゼ
ーション(例えばノーザンブロットハイブリダイゼーション、ドットブロットハ
イブリダイゼーション、若しくはin situハイブリダイゼーションによるもの)
、または該細胞型由来のRNAがin vitroでDeltaまたはKuzに翻訳される能力を免
疫組織化学、ウエスタンブロット解析、ELISA等によって観察する方法等が挙げ
られる。好ましい態様において、患者由来の初代培養組織を、例えば免疫細胞化
学、in situハイブリダイゼーション、またはタンパク質若しくはmRNAの発現を
検出する多くの方法のいずれかによる処理の前に、Delta、Notch及び/またはKu
z発現についてアッセイしてことができる。
【0250】 本発明の医薬組成物(上記5.7節参照)は、製薬上許容し得る担体中に有効量
のアンチセンス核酸を含み、例えばDelta:Kuz複合体を発現または過剰発現する
型の疾患または障害を有する患者に投与することができる。
【0251】 特定の障害または状態の治療に有効なアンチセンス核酸の量は、その障害また
は状態の性質に依存し、標準的な臨床的技術によって決定することができる。可
能な場合には、ヒトで試験及び使用をする前に、in vitro、次いで有用な動物モ
デル系でアンチセンスの細胞障害性を決定することが望ましい。
【0252】 特殊な実施形態において、Delta及びKuzアンチセンス核酸を含む医薬組成物は
、リポソーム、マイクロ粒子、またはマイクロカプセルを介して投与される。本
発明の種々の実施形態において、Delta及び/またはKuzアンチセンス核酸の徐放
性を達成するような組成物を使用することが有用であり得る。特定の実施形態に
おいて、抗体を介して特定の同定可能な中枢神経系の細胞型にターゲッティング
されるリポソームを利用することが望ましい場合がある(Leonettiら、1990, Pr
oc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 87:2448-2451; Renneisenら、1990, J. Biol. Ch
em. 265:16337-16342)。
【0253】5.12 治療用/予防用の投与及び組成物 本発明は、有効量の本発明の治療薬の被験者への投与による治療(及び予防)
方法を提供する。好ましい態様において、治療薬は実質的に精製されている。被
験者は好ましくは動物であり、限定されるものではないが、ウシ、ブタ、ニワト
リ等の動物を含み、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトである。
【0254】 種々の送達システムが知られ、本発明の治療薬の投与に使用することができる
。例えば、リポソーム、マイクロ粒子、マイクロカプセルへのカプセル化、組み
換え細胞による発現、受容体介在型エンドサイトーシス(例えばWu及びWu, 1987
, J. Biol. Chem. 262:4429-4432を参照すること)、レトロウイルスまたは他の
ベクターの一部としての治療用核酸の構築等が挙げられる。導入方法としては、
限定されるものではないが、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻内、硬膜
外、及び経口投与が挙げられる。化合物はいずれかの都合の良い経路で、例えば
注入またはボーラス注入、上皮若しくは粘膜内皮(例えば口腔粘膜、直腸及び腸
管粘膜等)を通しての吸収によって投与しても良く、また他の生物学的に活性を
持つ薬剤と共に投与しても良い。投与は全身でも局所でも良い。更に、本発明の
医薬組成物を、脳室内注射及び髄腔内注射を含むいずれかの好適な経路で中枢神
経系に導入することが望ましい場合がある。脳室内注射は、例えばオマヤレザバ
ー等のレザバーに取り付けられた脳室内カテーテルによって容易に行うことがで
きる。肺内投与も、例えば吸入器またはネブライザー、及びエアロゾル化剤を用
いた製剤の使用によって利用することができる。
【0255】 特定の実施形態において、本発明の医薬組成物は治療が必要な領域に局所的に
投与することが望ましい場合がある。局所投与は、制限するものではないが、例
えば手術中の局所注入、例えば手術後の創傷に包帯を巻く際などの局所塗布、注
射、カテーテルの使用、坐剤の使用、あるいは移植片の使用によって達成するこ
とができる。該移植片は、多孔性であっても非多孔性であっても、あるいはゼラ
チン様物質であっても良く、シアラスティック(sialastic)膜等の膜、または
線維を含む。一実施形態において、投与は悪性腫瘍または新生物若しくは新生物
発生前の組織の部位(または前の部位)に直接注射することによって行うことが
できる。
【0256】 もう一つの実施形態において、治療薬は媒体、特にリポソーム中に入れて送達
することができる(Langer, Science 249:1527-1533 (1990); Treatら, Liposom
es in the Therapy of Infectious Disease and Cancer, Lopez-Berestein及びF
idler(編), Liss, New York, pp.353-365 (1989); Lopez-Berestein, 同書, p
p.317-327; 一般的に同書を参照すること)。
【0257】 更に別の実施形態において、治療薬は制御できる放出システムによって送達す
ることができる。一実施形態においてはポンプを使用することができる(Langer
, 前出; Sefton, CRC Crit. Ref. Biomed. Eng. 14:201 (1987); Buchwaldら, S
urgery 88:507 (1980); Saudekら, N. Engl. J. Med. 321:574 (1989)を参照す
ること)。別の実施形態においては、ポリマー性物質を使用することができる(
Medical Applications of Controlled Release, Langer及びWise(編), CRC Pres
., Boca Raton, Florida (1974); Controlled Drug Bioavailability, Drug Pro
duct Design and Performance, Smolen及びBall(編), Wiley, New York (1984);
Ranger及びPeppas, J. Macromol. Sci. Rev. Macromol. Chem. 23:61 (1983);
Levyら, Science 228:190 (1985); Duringら, Ann. Neurol. 25:351 (1989); Ho
wardら, J. Neurosurg. 71:105 (1989)を参照すること)。更に別の実施形態に
おいて、制御できる放出システムを治療ターゲット、すなわち脳の近傍におくこ
とができ、これによって必要量が全身投与の量の一部分のみとなる(例えばGood
son, Medical Applications of Controlled Release, 前出, vol. 2, pp.115-13
8 (1984)を参照すること)。
【0258】 他の制御できる放出システムは、Langerによる総説で論じられている(Scienc
e 249:1527-1533 (1990))。
【0259】 治療薬がタンパク質治療薬をコードする核酸である特殊な実施形態においては
、該核酸を適当な核酸発現ベクターの一部として構築し、細胞内に取り込まれる
ように投与することによって、該核酸をin vivoで投与してコードされたタンパ
ク質の発現を促進することができる。細胞内への取り込みは、例えばレトロウイ
ルスベクターの使用(米国特許第4,980,286号を参照すること)、直接注入、微
粒子砲撃法(例えば遺伝子銃;Biolistic, Dupont)、脂質若しくは細胞表面受
容体若しくはトランスフェクト剤による被覆、または核内に侵入することが知ら
れているホメオボックス様ペプチドに連結しての投与(例えばJoliotら, 1991,
Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:1864-1868)等によって行うことができる。あ
るいはまた、核酸治療薬を細胞内に導入し、相同組み換えによって、発現のため
に宿主細胞DNA内に組み込ませることができる。
【0260】 特定の障害の治療または予防を目的とする特殊な実施形態においては、好まし
くは以下の投与形態を使用する。
【0261】 障 害 好ましい投与形態 頸癌 局所 胃腸癌 経口、静脈内 肺癌 吸入、静脈内 白血病 静脈内、体外 転移性癌 静脈内、経口 脳腫瘍 ターゲッティング、静脈内、髄腔内 肝硬変 経口、静脈内 乾癬 局所 ケロイド 局所 禿頭症 局所 脊髄損傷 ターゲッティング、静脈内、髄腔内 パーキンソン病 ターゲッティング、静脈内、髄腔内 運動ニューロン疾患 ターゲッティング、静脈内、髄腔内 アルツハイマー病 ターゲッティング、静脈内、髄腔内
【0262】 本発明はまた、医薬組成物を提供する。こうした組成物は治療的に有効な量の
治療薬及び製薬上許容し得る担体を含有する。特殊な実施形態において、用語「
製薬上許容し得る」は、連邦政府若しくは州政府の監督官庁によって承認され、
または米国薬局方、若しくは他の一般に認識されている、動物、特にヒトに使用
するための薬局方に挙げられているものを意味する。用語「担体」は、治療薬と
共に投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、若しくは溶媒を意味する。こうした製
薬上の担体は、無菌の液体であっても良く、例えば水及び油、例えば鉱油、動物
油、植物油若しくは合成の油を含む。例としてはピーナッツ油、ダイズ油、鉱油
、ゴマ油等が挙げられる。医薬組成物が静脈内投与される場合には、水が好まし
い担体である。生理食塩水、並びにデキストロースおよびグリセロール水溶液も
、特に注射可能な溶液のための液体担体として使用することができる。好ましい
製薬上の賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼ
ラチン、モルト、コメ、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウ
ム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂粉乳、
グリセロール、プロピレン、グリコール、水、エタノール等が挙げられる。必要
であれば、組成物に少量の湿潤剤または乳化剤、あるいはpH緩衝剤を含有させ
ることもできる。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、錠剤、ピル
、カプセル、粉剤、徐放性製剤等の形態をとることができる。組成物は、トリグ
リセリド等の伝統的結合剤及び担体と共に坐剤として製剤化することができる。
経口製剤としては、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ス
テアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウ
ム等の標準的な担体を含有させることができる。好適な製薬上の担体の例は、E.
W. Martinによる「Remington's Pharmaceutical Sciences」に記載されている
。こうした組成物は、好ましくは精製された形態の治療薬を治療上有効な量で、
好適な量の担体と共に含有し、患者に対して適当な投与形態を提供する。製剤は
、投与方法に適合するべきである。
【0263】 好ましい実施形態において、組成物はヒトへの静脈内投与に適合した医薬組成
物としての通常の方法に従って製剤化される。典型的には、静脈内投与用組成物
は無菌の等張水性緩衝液の溶液である。必要な場合には、組成物は可溶化剤、及
び注射部位の痛みをやわらげるリグノカイン等の局所麻酔剤を含んでいても良い
。一般に、成分は別々に、または単位投与形態に混合して供給される。単位投与
形態としては、例えば活性薬剤の量を表示したアンプルまたはサシェット等の密
封容器に入れた凍結乾燥粉末または無水濃縮物として供給される。組成物を注入
によって投与すべき場合には、無水の医薬品グレードの水または生理食塩水を含
有する注入用ボトルで調剤することができる。組成物を注射によって投与する場
合には、投与前に成分を混合できるように注射用の無菌水または生理食塩水のア
ンプルを提供することができる。
【0264】 本発明の治療薬は、中性または塩の形態で製剤化することができる。製薬上許
容し得る塩としては、塩酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、酒石酸等に由来する塩等
の、遊離のアミノ基と反応して形成されるもの、及びナトリウム、カリウム、ア
ンモニウム、カルシウム、水酸化鉄、イソプロピルアミン、トリエチルアミン、
2−エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカイン等に由来する塩等の、遊
離カルボキシル基と反応して形成されるものが含まれる。
【0265】 特定の障害または状態の治療に有効な本発明の治療薬の量は、障害または状態
の性質に依存し、標準的な臨床的技術によって決定することができる。更に、最
適投与量の範囲を特定する一助とするために、任意にin vitroアッセイを使用す
ることができる。製剤において使用すべき正確な投与量は、投与経路、及び疾患
または障害の重篤度にも依存し、実施者の判断及び各患者の状況に従って決定す
べきである。しかしながら、静脈内投与に好適な投与量範囲は一般に、体重1kg
当たり活性化合物約20−500μgである。鼻内投与に好適な投与量範囲は一般に、
約0.01pg/kg体重〜1mg/kg体重である。有効投与量はin vitroまたは動物モデル
試験系から得られる用量−応答曲線から外挿することができる。
【0266】 坐剤は一般に0.5〜10重量%の範囲の活性成分を含有し、経口製剤は好ましく
は10〜95%の活性成分を含有する。
【0267】 本発明はまた、本発明の医薬組成物の1種以上の成分が充填された1以上の容
器を含む、医薬パックまたはキットを提供する。こうした容器には、医薬品また
は生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって定められた
フォームで、ヒトへの投与のための製造、使用または販売を機関によって承認さ
れたことを示す注意書を任意につけることができる。
【0268】5.13 診断用途 Delta切断ペプチド、可溶性Deltaペプチド、類似体、誘導体、およびそれらの
部分配列、Delta切断ペプチドをコードする核酸(およびその相補的配列)、可
溶性Deltaペプチドをコードする核酸(およびその相補的配列)、抗Delta切断ペ
プチド抗体、抗可溶性Deltaペプチド抗体、ならびに抗Delta:Kuzおよび抗DIEC:
Notch複合体抗体を、診断に使用できる。このような分子をイムノアッセイのよ
うなアッセイに使って、Delta切断ペプチド発現に影響を与える様々な症状、疾
病、および障害を検出、予後判定、診断もしくは監視し、またはそれらの治療を
監視することができる。特定の例においては、このようなイムノアッセイは、患
者由来のサンプルを免疫特異的結合が起こり得る条件下で抗Delta切断ペプチド
抗体に接触させ、抗体との免疫特異的結合の量を検出しまたは測定することを含
む方法により実施できる。特定の様態においては、組織切片におけるこのような
抗体の結合を、好ましくは抗Kuzまたは抗Notch抗体の結合と一緒に使用すること
によって、病状における、異常なDelta、Notchおよび/もしくはKuz局在化また
はDlEC:NotchもしくはDelta-Kuz同時局在化の異常なレベルを検出することがで
きる。ある特定の実施様態においては、Delta切断ペプチドの異常レベルが病状
の指標である場合に、Delta切断ペプチドに対する抗体を使用することによって
、患者組織または血清サンプル中のDelta切断ペプチドの存在をアッセイするこ
とができる。内因性NotchもしくはKuzタンパク質のDelta結合能力の異常レベル
、または内因性Delta切断ペプチドのKuz(または他のDeltaリガンド、例えばNot
ch)との結合能力の異常レベルは、細胞挙動の障害(例えば、癌など)の指標で
ありうる。「異常なレベル」は、身体の一部分からもしくは障害をもたない被験
者からの類似サンプルに存在するレベル、または存在するのを代表する標準レベ
ルと比較して、増加または低下したレベルを意味する。
【0269】 使用しうるイムノアッセイは、限定されるものでないが、いくつかを挙げれば
、ウェスタンブロット、ラジオイムノアッセイ、ELISA(酵素結合免疫吸着アッ
セイ)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、免疫沈降アッセイ、沈降反応、ゲル
拡散沈降反応、免疫拡散アッセイ、凝集アッセイ、補体結合アッセイ、免疫放射
線測定アッセイ、蛍光イムノアッセイ、プロテインAイムノアッセイのような技
術を使う競合もしくは非競合アッセイシステムを含む。
【0270】 Delta、NotchおよびKuz遺伝子ならびに相補的配列を含む関係する核酸配列お
よび部分配列ならびに他のトポリズミック(toporythmic)遺伝子配列も、ハイ
ブリダイゼーションアッセイに使うことができる。Delta、NotchおよびKuz核酸
配列、または8個以上のヌクレオチドを含んでなるそれらの部分配列を、ハイブ
リダイゼーションプローブとして使うことができる。ハイブリダイゼーションア
ッセイを使って、前記のDelta発現および/または活性の異常な変化に関係する症
状、障害、および病状を検出、予後判定、診断もしくは監視することができる。
特に、このようなハイブリダイゼーションアッセイは、核酸を含有するサンプル
を、ハイブリダイゼーションが起こりうる条件下で、Delta、NotchまたはKuzのD
NAまたはRNAとハイブリダイズ能を有する核酸プローブと接触させ、得られるハ
イブリダイゼーションを検出するかもしくは測定することを含む方法により実施
される。
【0271】 さらに、DeltaはNotchおよびKuzと結合するので、Deltaまたはそれらの結合部
分を使って、例えば結腸および頸部癌のようなNotch発現の増加がみられる悪性
疾病のスクリーニングにおいて、サンプル中のNotchまたはKuzの存在および/ま
たは量をアッセイすることができる。
【0272】5.14 動物モデル 本発明はまた、動物モデルも提供する。ある実施様態においては、Delta切断
ペプチド、可溶性Deltaペプチド、ならびにDelta:KuzおよびDIEC:Notch複合体
に関る疾病および障害に対する動物モデルが提供される。これらは、限定される
ものでないが、癌のような細胞挙動および分化の障害を含む。このような動物は
、初めに染色体のDelta、NotchおよびKuz遺伝子と、生物学的に(好ましくは異
種配列、例えば抗生物質耐性遺伝子の挿入により)不活性化または欠失された外
因性Delta、NotchおよびKuz遺伝子との間の相同的組換えまたは挿入突然変異の
発生を促すことにより、作出することができる。好ましい様態においては、例え
ば、挿入により不活性化したDeltaおよびKuz遺伝子を含むベクターを用いて相同
的組換えが起こるように胚由来の幹(ES)細胞を形質転換し、その後、形質転換
したES細胞を胚盤胞(blastocyst)中に注入し、該胚盤胞を里親(foster mothe
r)に移植し、その後、Deltaおよび/またはKuz遺伝子が不活性化もしくは欠失し
たキメラ動物(「ノックアウト動物」)を誕生させる(Capecchi, 1989, Scienc
e 244:1288-1292)ことにより、相同的組換えを起こすことができる。キメラ動
物を繁殖させて追加のノックアウト動物を作ることができる。このような動物は
、マウス、ハムスター、ヒツジ、ブタ、ウシ等であってよく、好ましくは非ヒト
哺乳類動物である。ある特定の実施様態においては、ノックアウトマウスを作る
【0273】 このようなノックアウト動物は、限定されるものでないが、細胞挙動および分
化などに関わる疾病もしくは障害を発症するかまたは発症素因があると予測され
、従って、このような疾病および障害の動物モデルとして、例えば、細胞挙動お
よび分化の障害ならびに他の疾病に対して分子(例えば、可能な治療薬)をスク
リーニングまたは試験するための用途を有しうる。
【0274】 本発明の異なる実施様態においては、例えば、異種プロモーター(すなわち、
固有のDeltaまたはKuzプロモーターでないプロモーター)の制御下で1以上のタ
ンパク質を過剰発現するかまたは複合体もしくはタンパク質を通常は発現しない
組織中で発現するDeltaおよびKuz遺伝子を導入することにより、機能的なDelta
および/またはKuz遺伝子を組込みかつ発現する(または過剰発現するもしくは誤
発現する)トランスジェニック動物は、Delta:Kuz複合体の増加したレベルを特
徴とする疾病および障害の動物モデルとして用途を有しうる。このような動物は
、分子を前記の疾病および障害を治療または予防する能力についてスクリーニン
グまたは試験するために使うことができる。
【0275】 ある実施様態においては、本発明は、内因性Delta遺伝子および内因性Kuzの両
方が上記動物またはその祖先の相同的組換えまたは挿入突然変異により欠失また
は不活性化されている組換え非ヒト動物を提供する。他の実施様態においては、
本発明は、Delta遺伝子が固有のKuz遺伝子プロモーターでないプロモーターの制
御下にありかつKuz遺伝子が固有のKuz遺伝子プロモーターでないプロモーターの
制御下にある、Delta遺伝子およびKuz遺伝子の両方を含む組換え非ヒト動物を提
供する。特定の実施様態においては、本発明は、6個以上のアミノ酸のKuzタンパ
ク質の断片と共有結合を介して融合した6個以上のアミノ酸のDelta切断ペプチド
を含んでなるキメラタンパク質をコードする核酸配列を含んでなるトランスジー
ンを含む組換え非ヒト動物を提供する。
【0276】6. NotchリガンドDeltaは、ディスインテグリン メタロプロテアーゼKuzbania
nにより切断される Notchシグナル伝達経路は、発生シグナルへの応答を適合させて細胞の挙動を
発生全体にわたって制御する、進化的に保存された細胞相互作用機構を規定する
(Artavanis-Tsakonasら, 1995, Science 268:225-232; Flemingら, 1998, Tren
ds in Cell Biology 7:437-441)。Notch受容体は、形質膜へ向かって移動する
ときにトランス-ゴルジ網中で切断され、一過的にリガンド能力のある、ヘテロ
二量体分子を形成する(Blaumuellerら, 1997, Cell 90:281-291)。共に既知の
リガンドであるDeltaおよびSerrateは膜貫通タンパク質として作用し、細胞外ド
メインを介して隣接細胞上に発現した受容体と相互作用すると考えられる(Flem
ingら, 1998, Trends in Cell Biology 7:437-441; Muskavitch, 1994, Develop
mental Biology 166:415-430)。Notchシグナル伝達の消失とKuzbanian(Kuz)
遺伝子(メタロプロテアーゼのADAMファミリーと推定されるメンバーをコードす
る遺伝子)の機能消失突然変異との間の表現型が類似することから(Rookeら, 1
996, Nature 273:1227-1231)、KuzはNotch受容体の切断に関わりうることが示
唆されている(PanおよびRubin, 1997, Cell 90:271-280)。最近の生化学研究
は、機能的に重要なトランスゴルジ網におけるNotch切断はフリン様転換酵素の
触媒作用によることを示し、この仮説を裏付けるものではない(Logeat,ら, 199
8, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8108-8112)。この研究と一致して、フリン
は、細胞表面で作用すると考えられるKuzのようなADAMプロテアーゼと反対に、
細胞下区画で作用することが知られている(Wolfsbergら, 1995, Jounal of Cel
l Biology 131:275-278)。
【0277】 成虫盤発生におけるKuzのドミナントネガティブトランスジーン(KuzDN)の構
成的発現に関係する表現型の修飾因子を確認する目的の遺伝スクリーニングによ
り、相互作用遺伝子としてのDeltaが解明された(Wuら, 未発表の観察)。この
ドミナントネガティブ構築物を発現するハエは、Kuzの野生型補体を運んでいて
も、機能Delta消失突然変異についてヘテロ接合性であると、半致死になる(Xu
ら, 未発表の観察)。対照的に、Delta重複はKuzDNに関係する表現型を救う(図
6A〜6F)。KuzDNハエは、縦走静脈の末端に追加の静脈物質(vein material)、
特にデルタ、羽根ノッチング(低貫通で観察される)、背板(notum)に追加の
剛毛を提示し、そして、小さく粗い眼を有する(図6Aおよび6E)。KuzDNハエが
、通常の2個でなく、3個の野生型Notchのコピーを運んでも、剛毛および眼の表
現型は影響を受けないし(Wuら, 未発表の観察)、また静脈デルタは改変されな
い(図6D)。他方、KuzDN表現型は、Delta重複により効果的に抑制される(図6B
および6F)。Delta分子のより高いコピー数はKuzDN構築物の効果を無効にする能
力のあることを示す。
【0278】 さらにDeltaとKuzの間の相互作用を、これら関係遺伝子のタンパク質産物間の
関係を検証することにより究明した。プライマー5’ GAGTTGCGCCTGAAGTACTT 3’
(配列番号14)と5’ GGTCGCTCCATATTGGTGGG 3’(配列番号15)を用いたショウ
ジョウバエDeltaの全細胞外ドメインのPCR産物を使い、続いてpGEX3のSmaI部位
とpMALのStuI部位中へクローニングし、こうして作製した融合タンパク質を使っ
て作った細胞外Deltaエピトープに対して、モノクローナル抗体を産生した。モ
ノクローナル細胞系(C594.9B、「9B」と呼ぶ)を標準プロトコルにより作製し
、Deltaを発現するS2細胞の免疫染色により、ハイブリドーマ上清のスクリーニ
ングを実施した。腹水液を作り1/3000〜1/10,000希釈でウェスタンブロットに使
い、ペルオキシダーゼ標識抗マウス抗体およびルミノール基質による化学発光現
像を用いて検出した(Randら, 1997, Protein Science 6:2059-2071を参照)。
この抗体を使い、安定して全長Deltaを発現するS2細胞中のDelta抗原を試験した
(図7A)。S2細胞は、野生型Kuzを内因的に発現することが知られている(Panお
よびRubin, 1997, Cell 90:271-280)。培地中の全長Deltaより速やかに移動す
る免疫反応性断片の存在が専ら培地中に観察された。この断片は、全長Deltaの
場合のように、非還元条件下で9Bに対して少なくとも40倍以上の免疫反応性を有
することが注目される。全長Deltaが細胞ペレットと結合しているにも拘わらず
、この断片はほとんど専ら培地内にあり、これが全長Delta由来の可溶性タンパ
ク質分解性断片であることを示唆する(本明細書では「DlEC」と呼ぶ)。この断
片のサイズは、還元条件下でほぼ67,000ダルトンであり、65,000ダルトンと見積
もられるDeltaの細胞外ドメインと一致する(図7D)。続いて、DlECを培地から
アフィニティ精製し、アミノ酸配列分析にかけてN末端アミノ酸配列を決定した
。簡単に説明すると、Deltaを発現するショウジョウバエS2細胞を、無血清培地
で0.7 mM CuSO4を用いて2日間誘導し、培地を採集し、70%硫酸アンモニウムで沈
降させた。沈降物を遠心分離で採集し、続いて再懸濁し、そして20 mM HEPES、1
50 mM NaCl、2 mM CaCl2、pH 7.4に対して透析した。このサンプルを、モノクロ
ーナル抗体9Bを結合したセファロースビーズ上を通過させ、1.0 M NaClで洗浄し
、25 mMグリシン、pH 2.8で溶出し、そして直接1.0 M Tris-HClを用いて中和し
た。N末端アミノ酸分析をApplied Biosystemsの気相アミノ酸シーケンサーを用
いて実施した。
【0279】 DlECのアミノ酸配列は、予測したポリペプチドプロセシング部位と一致し、シ
ョウジョウバエ、ツメガエルおよびヒトDelta相同体の間に保存されている(図7
E)。
【0280】 S2細胞中の全長Deltaは表面で切断されて、Deltaの細胞外ドメイン(DlEC)の
殆どまたは全てを含有する断片を放出すると結論した。ショウジョウバエ胚のウ
ェスタンブロット分析は、全長(DlFL)およびDlECと同じ移動度をもつ断片の両
方の存在を示し、この同じDelta誘導産物がin vivoに存在することを意味する。
DlFLとDlECの間に追加の潜在的一過性タンパク質分解産物が9B抗体により検出可
能であることは注目される(図7B、レーン「胚、10」および図8D、レーン「kuz
+/-」)。
【0281】 DlECの産生がKuzにより影響され得る可能性を、野生型Kuzを内因的に発現する
ことが先に説明したように知られているS2細胞中の同時トランスフェクション実
験により試験した(PanおよびRubin, 1997, Cell 90:271-280)。一過性トラン
スフェクションにおいて、DeltaのKuzとの同時トランスフェクションは、Delta
のみのトランスフェクションと比較して培地のDlECの顕著な増加を示した(図8A
)。このDlECの増加は、DlFLの減少と対応し、DlFLがDlEC産物の前駆体であると
いう概念と一致した。さらに、これらのデータはKuzのトランスフェクションがS
2細胞中の内因性Kuzに追加して作用することを示す。この仮説を支持して、KuzD
Nによる同時トランスフェクションは著しくDlEC産生の阻害効果を有する(図8A
)。同一実験条件下で、KuzまたはKuzDNの同時トランスフェクションはNotchの
タンパク質分解プロセシングに影響を与えない(図8B)。これらの観察は、Kuz
がDeltaのプロセシングに大きな役割を果たすことを実証し、Notchのプロセシン
グにおいてはこの役割が明らかでない。この結論に一致して、DlEC産生はメタロ
プロテアーゼ阻害剤EDTAおよび1,10-フェナントロリンにより著しく阻害された
が(図8C)、セリンプロテアーゼ阻害剤(PMSFおよびアプロチニン)、システイ
ンプロテアーゼ阻害剤(ロイペプチン)またはアスパルチルプロテアーゼ阻害剤
(ペプスタチン)による影響は観察されなかった。
【0282】 胚に存在することが示されるDlEC産物について(図7B)、本発明者らはこの産
物をin vivoで作製するのに果たすKuzの役割を検証する研究をした。kuzの1つ
(kuz +/-)またはゼロ(kuz -/-)接合体コピーをもつkuz母性ゼロ胚を、kuz生
殖系列クローンを運ぶ雌性ハエとkuz +/-雄性ハエとの交雑により作製した(Roo
keら, 1996, Nature 273:1227-1231)。Kuz -/-胚は、マルピーギ細管(malpigh
ian tubule)の不在および運動の欠如によって、kuz +/-胚から明らかに識別さ
れた。各タイプの胚の9つを集めたコレクションから調製した抽出物は、Kuz +/-
と比較して、Kuz -/-胚中の明らかなDlECの不在およびDlFLのより高いレベルを
示す(図8D)。同じ膜を抗Notch抗体によって再プロービングすると、Kuz +/-と
Kuz -/-胚中のNotchのプロセシングに差は認められなかった。さらに、14の無作
為に選択した個々の胚の分析は、8つの胚がkuz -/-胚に類似した顕著に高いレベ
ルのDlFLを有することを示し、(図8D)、予測した交雑の結果と一致した。これ
らの観察は、Kuzがin vivoでDeltaのタンパク質分解プロセシングを仲介するこ
とを示す。
【0283】 kuz突然変異体は多重の欠陥を有し、様々なプロセスとの関与を示す(Rookeら
, 1996,Nature 273:1227-1231)が、その表現型は部分的にDeltaのそれと重複す
る。胚形成中のkuzの不活性化はDelta突然変異より広範な神経形成表現型を引き
起こすが、それにかかわらず、腹側外側(ventrolateral)領域で2つの突然変
異の神経肥大(neural hypertrophy)が同一であることは明白である。成熟モザ
イククローンにおいて、クローン境界上でkuz突然変異細胞のパーセントが小さ
いと多重剛毛になる(Rookeら, 1996,Nature 273:1227-1231)。Deltaモザイク
クローンはもっと複雑な状況を提示する。クローン突然変異体の境界上の弱いDe
lta対立遺伝子に対する細胞は上皮となるが、強いDelta対立遺伝子に対する細胞
突然変異体は、多重剛毛(kuz突然変異体で観察される表現型である)を低頻度
で発現することは明らかである(HeitzlerおよびSimpson, 1991, Cell, 1083-10
92の図3)。しかし、強いkuzとdelta対立遺伝子をもつと、全ての追加のニュー
ロンは遺伝形質的に突然変異細胞に由来することは明らかである。
【0284】 上記の観察は、神経促進機能と呼ばれるkuzの第2の機能から明らかである(Ro
okeら, 1996, Science 273:1227-1231;RookeおよびXu, 1998, Bioassay 20:209
-214)。この機能は、deltaクローンの多重剛毛表現型と対照的に、kuzクローン
の中心の細胞が剛毛を発生することを阻止する。モザイク分析を含む遺伝データ
は、Deltaタンパク質のプロセシングがKuzにより仲介されるという仮説と適合し
うる。これらの知見はまた、kuzをNotch活性と結びつける以前の遺伝研究とも適
合しうる(PanおよびRubin, 1997, Cell 90:271-280;Sotillosら, 1997, Devel
opment 124:4769-4779;Wenら, 1997, Development 124:4759-4767)。
【0285】 接着アッセイ(adhesion assay)により、Notch-Delta相互作用がそれぞれの
タンパク質における細胞外ドメインにより物理的に仲介されることが実証されて
いる(Fehonら, 1990, Cell 61:523-534)。さらに、欠失アッセイ(deletion a
ssay)により、この相互作用の原因となる特異的配列が規定されている〔Rebay
ら, 1991, Cell 67:687-699;M.Muskavitchからの私信, “deletion mutants of
Delta lacking the DSL domain fail to bind Notch(DSLドメインを欠くDelta
の欠失突然変異体はNotchと結合しない)”;Flemingら, 1997, Development 12
4:2973-2981〕。これらのアッセイをDeltaおよびNotchタンパク質がS2細胞に過
剰発現する条件下で実施し、全長Deltaを細胞表面に明らかに検出した(データ
は示してない)。DlECはNotchと結合する能力があるかを試験することに興味が
もたれた。
【0286】 Notchを発現するS2細胞にDlECを加え、スクロースのクッションを通して沈降
すると、S2細胞のみと比較して、DlECとNotch細胞との特異的接着が得られ(図9
A)、これらの細胞上でDlEC:Notch複合体が形成することが示唆された。細胞凝
集アッセイにおいてDlECが全長Deltaに対してNotchとの結合を競合する能力を分
析することにより、これらの結果を拡張した。Notch/Delta相互作用を数値化す
るために、本発明者らは、再現性のある凝集測定を可能にする濁度測定アッセイ
を開発した。S2細胞のNotchおよびDeltaの発現をそれぞれ0.085 mMおよび0.022
mM CuSO4で16時間、誘導する。その後、細胞を遠心分離し、無血清培地において
、ベンチトップ分光計で20〜30% T320nm(〜2 x 106細胞/mL)を生じる等価密度ま
で産生させた。ブランク値はM3培地のみで設定する。その後、Notchの400μLお
よびDeltaの400μLを、1.4mL黒側板、ストッパーを付した石英キュベット中にピ
ペットで注入し、速やかに3回反転する。すぐにT320nmを読んで時間「0」値を
決定する。その後、キュベットをThermolyne変速ミキサーに載せて毎分20振動で
水平に揺動し、続いてT320nmを1分間隔で読みとる。その後、T320nmの変化(時
間ゼロと比較して)を時間に対してプロットする。DlECの影響を、同じ方法で無
関係な構築物でトランスフェクトして平行して調製したΔECN-S2細胞からの培地
の濃縮物(黒塗り四角)(Rebayら, 1993, Cell 74:318-329)と比較した。
【0287】 Notch細胞のDlEC濃縮物とのプレインキュベーションは、Delta細胞との凝集の
初期速度を著しく低下する(図9B)。DlECの競合効果は添加濃度およびNotch細
胞とのプレインキュベーションの時間の影響を受ける。さらに、Delta細胞のDlE C とのプレインキュベーションは、その後のNotch細胞との凝集に影響を与えるこ
となく、DlECは全長Deltaに対して競合するやり方で特異的にNotchと結合するこ
とを示した。
【0288】 DlECの生物学的活性を細胞培養アッセイで試験し、該アッセイは次のとおり実
施した。皮質ニューロンの低密度1次培養を15.5〜16.5胎日齢マウス胚から調製
した。ダルベッコ改変イーグル基礎培地、高グルコース/F12(1:1)、N2補給、2.5
mM L-グルタミンおよび5〜10%ウシ胎児血清の単一細胞懸濁液を、15μg/mlポリ
-オルニチンおよび2μg/cm2ラミニンでプレコートした5 mm径ガラス製カバース
リップ上にまいた。10日後、培養中にニューロン(<1000/cm2)がグリア細胞の
単層で増殖した。DlECの活性を試験するために、培養物を14〜17時間、培地で作
った5X ΔECN、5X DlEC、精製DlEC(25mMグリシン、30 mM Tris-HCl、pH 7.0中
の約0.04 A280nm/ml)の1:10希釈液を用いて処理した。3つ以上の独立した培養
ウエルを1実験試行中の各条件に対して試験した。細胞を4%パラホルムアルデヒ
ドで固定し、ニューロン特異クラスIIIβチューブリンに対するマウスモノクロ
ーナル抗体を用いて一晩染色し(TuJ1, 1:500; BabCo., Berkeley, CA)、Cy3コ
ンジュゲート抗マウス2次抗体を用いて可視化した(Jackson Immunoresearch L
aboratories)。免疫標識したニューロンをSpot2カメラ(Diagnostic Instrumen
ts)を用い、Zeiss Axioplan 2顕微鏡で40X対物レンズを使って撮影し、Adobe P
hotoshop 4.0(Adobe Systems, San Jose, CA)に取り込んだ。NIH Image 1.61
ソフトウェアを使って各カバーストリップから無作為に選択した5〜10個の画像
について軸索突起長(neurite length)を測定し、データをSigma Plot 4.0統計
ソフトウェア(SPSS)を使って解析した。
【0289】 Notchを発現するマウス皮質ニューロンの1次培養は内因的に樹状突起を発現
する(図9C)。内因性Notch受容体を発現する、皮質ニューロンにおけるin vitr
oのリガンド依存Notch活性化は、形態学的変化および神経突起の退縮を引き起こ
すことが実証されている。同じ効果が、ニューロンを濃縮DlEC含有培地または精
製DlECの存在で培養すると観察された(図9C)。これらのデータは、DlECがアゴ
ニストとして作用するという考えと一致する生物学的活性をもつことを示す。神
経突起成長の類似の効果は、脊椎動物Jaggedの可溶形にも観察されている(未発
表の観察)。
【0290】 可溶性Deltaペプチドのアミノ酸配列分析を実施した。上に記載したように、S
DS-PAGEより求めたDlECの分子量は、Deltaタンパク質の細胞外部分の全てではな
いがほとんどを含んでなるDlECと一致する。さらに、DlECのN末端配列は、予測
した全長DeltaのN末端と一致する(DlECはタンパク質分解によりN末端で切り取
られてない)。さらに、上に記載したように、DlECは、第9番目のEGF反復と膜近
傍ドメインと呼ばれる領域の膜貫通ドメインとの間の切断部位でタンパク質分解
プロセシングによって生じるようである。S2細胞上に発現されたショウジョウバ
エDelta由来の精製DlECの配列分析を、C末端配列決定およびトリプシン消化/液
体クロマトグラフィー/質量分析計(LC/MS)により実施した。この解析はHarva
rd Microchemistry Facility, Cambridge MAにおいて実施した。
【0291】 C末端配列決定により作製されたデータは、末端残基がアラニンであることを
示した。末端残基に先行するアミノ酸残基は不均一であり、グリシンがもっとも
優勢で、続いてアスパラギン、ロイシン、およびアルギニンと続いた。これらの
データは、DlECが複数位置で終結することを示し、複数のタンパク質分解プロセ
シング部位が存在することを示す。しかし、C末端配列決定は実施が非常に困難
であり、末端残基より先の残基の信頼性は著しく低下する。しかし、ショウジョ
ウバエDelta膜近傍ドメイン(ショウジョウバエDeltaの残基564-594)の解析は
、C末端配列決定データと一致する末端配列を与える6つの可能なアラニン残基の
内の4つ、すなわち、DA576、GA581、LA591、およびNA593を示す(図11)。我々
のデータは位置591のアラニンを示し、その位置にトレオニンを開示したVaessin
ら, 1987, EMBO J. 6:3431-3440の配列データとは対照的であった。
【0292】 トリプシン消化ペプチド分析はC末端配列決定データと一致した。ショウジョ
ウバエDlEC由来の24のトリプシン消化ペプチドをLC/MCによりポジティブと確認
し、配列を決定した。膜近傍ドメインに終結する5個のペプチドを同定した。ペ
プチドの2つは残基Ala593で終結し、2つの他のペプチドは残基Ala581で終結し
た。これらのデータはDlECの2つの優勢な形がアミノ酸残基581および593で終結
することを実証する。第5のペプチドはアミノ酸位置Gln576で終結し、これはC
末端分析で検出できなかった。両分析方法により共に、Ala581およびAla593を確
認したことは、追加の切断部位の可能性は残るものの、DlECの1次形はこれらの
部位における切断により作製されることを示す。これらの分析の性質上、様々な
種の相対的比率を定量的に評価できないので、どの切断部位が好ましいかを結論
することはできない。
【0293】 結論として、遺伝および生化学データは、Deltaが切断されてNotch経路におけ
る見かけのアゴニスト機能について生理活性をもつ、活性があり機能的に重要な
細胞外断片を産生することを示す。ショウジョウバエおよび他の系において、人
為的に末端切断されたNotchリガンドのIn vivo発現に関する従来の研究は、アン
タゴニストおよびアゴニストの両方の活性を実証している(Sunら, 1997, Devel
opment 124:3439-3448;Fitzgeraldら, 1995, Develompent 121:4275-4282;Li
ら, 1998, Immunity 8:43-55;Wangら, 1998, Neuron 21:63-75)。Deltaの可溶
形(DlS)は、発生しているショウジョウバエ眼においてアンタゴニストとして
作用しうることは明白である(Sunら, 1997, Development 124:3439-3448)。し
かし、DlECはDlSと同一ではなく、従って、2つの分子は機能的に異なりうるの
は明白である。図10ではDlECとDlSを模式図的に比較する。
【0294】 KuzはNotchの構成的切断の原因であるとは思われないが、KuzはNotchを異なる
部位で切断しうる可能性は残る。この点については、KuzDNが受容体とのリガン
ド結合により誘導されるNotch経路の標的遺伝子のトランス活性化を阻害しうる
ことが主張されている(Logeatら, 1998, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:8108
-8112)。しかし、この効果はNotch切断を反映するのでなくむしろ活性リガンド
を作成するDeltaの切断を反映する可能性がある。Kluegら, 1998, Mol. Cell Bi
ol. 9:1709-1723(「Klueg」)は、最近、通常の胚形成中のDeltaのプロセシン
グを報じ、Delta断片の存在を実証しており、その1つはDlECと一致する。本発
明者らは、16〜20時間胚に検出される中間体(図7B、8D、kuz +/-)はKuz突然変
異体(図8D 、kuz -/-)に存在せず、これらの産物の作製もKuzにより仲介され
うる可能性があることに注目する。
【0295】 本発明は、本明細書に記載した特定の実施様態により範囲が限定されるもので
はない。実際、本明細書に記載したものに加えて、本発明の様々な改変は、以上
の記載および添付図から当業者には明らかであろう。このような改変は添付した
請求の範囲内に入ることを意図する。
【0296】 様々な出版物が本明細書に引用されたが、これらの開示はその全文が参照によ
り組み入れられるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Notchシグナル経路の略図である。Notch受容体は、その細胞外ドメイ
ンを介してDeltaまたはSerrateのいずれかに結合することができる。リガンドが
結合すると受容体が多量体化し、これはNotchの細胞内アンキリン反復と細胞質
タンパク質であるDeltexとの間の相互作用によって安定化される。これらの現象
は、DNA結合タンパク質であるSuppressor of Hairlessの核へのトランスロケー
ションおよびそのHairlessタンパク質との公知の会合を制御することができる。
分裂のエンハンサーである基本的ヘリックス-ループ-ヘリックス(bHLH)遺伝子の
転写的誘導はNotchのシグナリングに依存するようである。
【図2】 図2は、Notch相同体の配列の比較である。ヒトNotch2(humN2)(配列番号1
)、ヒトNotch1(humN1)(配列番号2)、ツメガエルNotch/Xotch (XenN)(配列
番号3)、およびショウジョウバエNotch(DrosN)(配列番号4)のタンパク質配
列を、左側に名称を、右側に番号を示して並べた(Whartonら、1985、Cell 43:5
67-581; Coffmanら、1990、Science 249:1438-1441; Ellisenら、1991、Cell 66
:649-661; Stifaniら、1992、Nature Genetics 2:119-127)。主要なNotchタンパ
ク質のモチーフを枠で囲んである。N-末端の側から、枠で囲んだ領域は、EGF反
復、Lin-12/Notch(LN)反復、膜貫通ドメイン(TM)、アンキリン反復、およびPEST
含有領域を示す。さらに、推定されるCcNのチーフ構成要素(Stifaniら、1992、N
ature Genetics 2:119-127)、核局在化シグナル(NLS、BNTS)、ならびに推定され
るCKIIおよびcdc2リン酸化部位を示す。計算されたシグナル切断部位を矢印で示
す。
【図3】 図3は、Delta相同体の配列の比較である。ヒトDelta(HDL)(配列番号5)、
マウスDelta(MDL)(配列番号6)、ニワトリDelta(CDL)(配列番号7)、ツメガ
エルDelta(XDL)(配列番号8)、およびショウジョウバエDelta(DDL)(配列番号
9)のタンパク質配列を、左側に名称を、右側に番号を示して並べた。主要なDe
ltaタンパク質モチーフに標識をした。
【図4】 図4Aおよび4Bは、それぞれ、ヒトDeltaのアミノ酸配列(配列番号10)および核
酸配列(配列番号11)である。
【図5】 図5Aおよび5Bは、それぞれ、ヒトKuz相同体のアミノ酸配列(配列番号12)お
よび核酸配列(配列番号13)である。
【図6】 図6A-6Fは、Kuzと遺伝子的に相互作用する遺伝子を同定するために実施した遺
伝子修飾因子スクリーニングの結果を示す。発生する成虫原基にKuzDN構築物を
構成的に発現する株をスクリーニングに用いた(プロタンパク質およびメタロプ
ロテアーゼドメインの欠如したKuzDN構築物の発現は、GAL4系統32Bによっておこ
なわれた)。これにより、余分の翼静脈材料、縦の静脈の末端における大部分は
顕著な三角形(図6Aに矢印の頭で示す)、小さく粗い目、および胸背板上の余分
の粗毛(図6Eに矢印の頭で示す)を含む成体の突然変異表現型を生じた。2400個
を超える致死的なP-要素のインサートをKuzDNに対する表現型改変効果について
スクリーニングした。7つのP-インサートが、それぞれのP-インサートについて
ヘテロ接合性である場合に、KuzDNハエの生存率の有意な減少(半致命的)をお
こすことが見いだされた。これらのP-インサートの予備的な特性評価によって、
これらのうち2つはKuz対立遺伝子であり、1つは機能を喪失したDelta対立遺伝
子であることが明らかになったが、他方のインサートの性質は未知である。KuzD
Nバックグラウンドと共にDelta遺伝子(+/+/+)の余分なコピーを担持するハエ(
図6B、6F)はほぼ完全なKuzDN表現型の抑制を示す。(図6C)Notch(+/+/+)の余
分なコピー(Ramosら、1989、Genetics 123:337-348)は、単独では本質的に正常
な表現型を有する(図6C)。Notch(+/+/+)はKuzDNハエにおいて無視できる程度の
KuzDN表現型の抑制を与える(図6D)。
【図7】 図7A-7EはDeltaの可溶性断片(DlEC)がin vivoでS2細胞に構成的に放出される
ことを示している。図7A:安定にトランスフェクトされたS2細胞におけるDelta(
Dl)抗原の発現(Rebayら、1991、Cell 67:687-699)は、SDS-PAGEならびに還元し
た(+Bme)および還元しない(-Bme)細胞抽出物(c)および培地(m)のモノクローナル
抗体9Bを用いたウエスタンブロットによって検出される。全長のDeltaと一致す
る産物は、細胞抽出物中に明らかに検出可能である(還元していないものでMW約
83,000ダルトン、還元したもので約90,000ダルトン)。より大きい移動度を有す
る有意な量の産物が培地中に見いだされ(還元していないものでMW約62,000ダル
トン、還元したもので約67,000ダルトン)、これはDeltaの細胞外ドメイン(MW-
65,000ダルトンと算定された)と大きさにおいて一致しており、DlECと呼ばれる
。還元しないDeltaでは還元したものよりも40倍高い抗体の親和性が観察され、
還元したサンプルにおける増大したタンパク質荷重(4×)および曝露時間(10×)
によって相殺された。図7B:野生型ショウジョウバエ胚(16時間)の抽出物中に
同じ移動度のバンドが見いだされる。ゲルに載せた1、3、5および10個の胚は
、抗原は1個の胚(“1”)ではほとんど検出できないが、より数多い胚を載せる
と(“10”)より明白になることを示している。図7C:アフィニティー精製された
DlECは、クーマシーブルーで染色したSDS-PAGEゲル上で、還元的条件下でMW約62
,000ダルトン、また非還元的条件下でMW約67,000ダルトンに移動する。図7D:シ
ョウジョウバエDeltaタンパク質の略図は、DSLドメイン(DSL)、表皮増殖因子様
反復(EGF)および膜貫通ドメイン(TM)を示す。N-末端のアミノ酸の番号、TMドメ
インの開始点およびC-末端を示す。図7E:13サイクルのDlECのN-末端アミノ酸配
列分析を、ショウジョウバエ(dDl)、ツメガエル(xDl)およびヒト(hDl)Deltaアミ
ノ酸配列に対するアライメントと共に示す。矢印は、DlECのN-末端の変換したセ
リン残基の位置、およびDlのシグナルペプチドプロセシングの部位である可能性
がある位置を示す。
【図8】 図8A〜8Dは、Kuzがin vivoおよびin vitroにおけるDeltaプロセッシングにお
いて直接的な役割を果たすことを示す。図8A: 最初の2つのパネル(-): De
ltaおよびDlECの発現は、全長Deltaで一過性トランスフェクションを行ったS2細
胞の細胞ペレット(c)および培地(m)中における9B抗体を用いたウェスタンブ
ロットにより明らかである(Fehonら、1990, Cell 61: 523-534)。2番目の2
つのパネル(Kuz): KuzおよびDeltaを用いたS2細胞の同時トランスフェクシ
ョンにより、細胞培養培地(m)中のDlEC断片が増加し、この増加は、細胞ペレ
ット(c)中のDeltaの明らかな減少と相関している。3番目の2つのパネル(Ku
zDN): ドミナントネガティブKuzを用いた同時トランスフェクションにより、
培地(m)中に観察されるDlECは大幅に減少し、これは細胞ペレット(c)中の全
長Deltaの量の増加に対応する。図8B: Deltaの場合と同じ実験条件下でNotch
とKuz、およびNotchとKuzDNを用いて同時トランスフェクションを行い、9C6 Not
ch細胞内ドメイン抗体を用いてウェスタンブロットを行った(Fehonら、1990, C
ell 61:523-534)ところ、不変レベルのNTM(Notchの構成的にプロセッシングさ
れた形態)により見られるように、Notchのプロセッシングに対して極僅かな影
響しか示さない(Blaumuellerら、1997, Cell 90: 281-291)。図8C: メタロ
プロテアーゼ阻害剤EDTAおよび1,10-フェナントロリンは、DlECをもたらす内因
性S2細胞のタンパク質分解活性を阻害する。左側のパネルは、60分までの様々な
時点における、全長Deltaを安定に発現するS2細胞の培地中におけるDlECの蓄積
を示す(Rebayら、1991, Cell 67: 687-699)。右側のパネルは、EDTA(5, 10,
15mM)および1,10-フェナントロリン(5、10mM)の存在下における60分後のDlEC の蓄積を示す。培地および血清中のCa2+(約8.6mM)および他の金属イオンの濃
度をブロックするためには、比較的高濃度のキレート剤が必要であった。より高
濃度の1,10-フェナントロリンは、細胞の形態を変化させることが分かった。こ
れらの試薬は両方とも、文献等に既に詳しく記載されているメタロプロテアーゼ
阻害剤であり、培地中におけるDlECの蓄積を阻害する。図8D: Deltaのプロセ
ッシングは、Kuz-/-胚中において阻害される。9つのKuz+/-およびKuz-/-胚を形
態により確認し、これらの抽出物を、SDS-PAGEおよび抗体9Bを用いたウェスタン
ブロットにより分析した。DlECはKuz-/-胚の中に存在せず、Kuz+/-胚に比べて全
長Deltaのレベルが高いことを示す。
【図9】 図9A〜Cは、DlECがNotchに結合し、Notch-Deltaの相互作用と競合し、Notch経
路のアゴニストとして機能することを示す。図9A: DlEC断片は、Notchを発現
するS2細胞に特異的に結合し、単なるS2細胞には結合しない。DlEC(レーン6)
の不在下(レーン1)または存在下(レーン2)でインキュベートしたNotch発現S
2細胞(レーン1、2)を、スクロースクッションにより沈降させ、その抽出物を
、抗体9Bを用いてウェスタンブロットにかけた。DlECは、0.7mM CuSO4により誘
導したDelta-S2細胞の16時間培養培地(Sang’s M3)の5倍濃縮物として調製し
た。Notch-S2およびトランスフェクトされていないS2細胞を、5%血清を含む培
地中で0.7mM CuSO4を用いて16時間誘導した。遠心分離により細胞を回収し、1%
ウシ血清アルブミン(BSA)を含む無血清培地中で1回洗浄し、M3, 1% BSA中に2
×106細胞/mLの濃度で再懸濁した。DlEC濃縮物100μLに細胞250μLを加え、これ
にM3, 1% BSAを加えて体積を500μLとし、揺動テーブル(rocking table)上で
室温にて1時間、1分当り5回振動させてインキュベートした。この混合物を、1
% BSAで予めブロッキングしておいた微量遠心管中の20%スクロース、20mM TRI
S-HCl、150mM NaCl、2mM CaCl2、1% BSA、pH7.4のクッション上に重層した。こ
れらの微量遠心管を14,000rpmにて3分間の遠心分離にかけ、上清を吸引した。ペ
レットの再懸濁は行わずに、冷たい無血清培地で細胞ペレットを2回洗浄した。
次にこのペレットを、β-メルカプトエタノールを含まないSDS-PAGEサンプル緩
衝液中に溶解し、5分間煮沸した。SDS-PAGEおよび9B抗体を用いたウェスタンブ
ロットによりタンパク質を分析した。レーン3および4は、DlECの不在下(レーン
3)または存在下(レーン4)におけるS2細胞との並行インキュベーションを示す
。図9B: Notch-S2細胞をDlEC濃縮物と共に予めインキュベートしておくこと
により、320nmの透過光で比濁分析したところ、その後のDelta-S2細胞との凝集
率が減少する。対照培地濃縮物(1×ΔECN、■)に比べ、図示した濃度(1×DlE C 、●)では最初の凝集率の60%抑制が見られた。エラーバーは3回の反復測定の
平均の標準偏差を示す。図9Cは、以下の(I)〜(V)と表記した代表的な画像
における一次培養した皮質ニューロンに及ぼすDlECの影響を示す:(I)処理前7
〜10日のin vitro皮質ニューロン;(II)ΔECN培地の存在下で培養;(III)E1 EC 培地の存在下で培養;(IV)アフィニティー精製したDlEC、および(V)精製
したDlECのための緩衝液対照。グラフは、ニューロン当りの神経突起の平均の長
さを表す。各バーは、3回の別々の実験の平均±SEMを表す。一次皮質ニューロン
は対照培養物(I)、ΔECN培地の存在下の培養物(II)および精製されたDlEC
ための緩衝液対照(V)においては多極形態を示し、広範に広がった神経突起網
を示す。DlEC培地(III)および精製DlEC(IV)で処理した培養物においては、
ニューロンあたりの平均神経突起長の短縮および神経突起の限定された分岐に注
意されたい。目盛バー=50μm。
【図10】 図10は、Kuzにより切断されたDeltaの可溶性断片(DlEC)とDlsとの比較を示
す図である。
【図11】 図11は、ショウジョウバエDelta(配列番号9)のDelta切断ペプチドのアミノ
酸配列を示す。太い矢印は、C末端配列分析およびLC/MSの両方から得たデータに
より同定された切断可能部位を示し、破線の矢印は、これらの分析方法のうち一
方のみにより同定された切断可能部位を示す。(A)は、Vassinら(1987, EMBO
J. 6: 3431-3440)により報告されたトレオニンの代わりのアラニンを示す。
【手続補正書】
【提出日】平成13年1月31日(2001.1.31)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 48/00 A61P 35/00 A61P 25/00 C07K 14/47 35/00 16/18 C07K 14/47 C12N 1/15 16/18 1/19 C12N 1/15 1/21 1/19 C12P 21/02 C 1/21 C12Q 1/02 5/10 1/68 A C12P 21/02 G01N 33/15 Z C12Q 1/02 33/50 Z 1/68 C12P 21/08 G01N 33/15 C12N 15/00 ZNAA 33/50 A61K 37/02 // C12P 21/08 C12N 5/00 A (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),AU,CA,J P (72)発明者 チ,フイリン アメリカ合衆国 55441 ミネソタ州,プ リマウス,ウェスト マディソン レイク ドライブ 1300,アパートメント 217

Claims (124)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Deltaタンパク質の断片を含むペプチドであって、該ペプチ
    ドのアミノ酸配列が、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マ
    ウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys 518 〜Phe544、またはショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
    Ala593のアミノ酸配列からなる、上記ペプチド。
  2. 【請求項2】 Deltaタンパク質の30個連続したアミノ酸を含む、請求項1
    記載のペプチド。
  3. 【請求項3】 Deltaタンパク質の100個連続したアミノ酸を含む、請求項1
    記載のペプチド。
  4. 【請求項4】 Deltaタンパク質の150個連続したアミノ酸を含む、請求項1
    記載のペプチド。
  5. 【請求項5】 Delta切断ペプチドの1以上の機能活性を示すことができる
    、請求項1記載のペプチドの精製された誘導体または類似体。
  6. 【請求項6】 ヒトまたはキイロショウジョウバエ(D. melanogaster)のDel
    ta切断ペプチドの1以上の機能活性を示すことができる、請求項1記載のペプチ
    ドの精製された誘導体または類似体。
  7. 【請求項7】 ヒトまたはキイロショウジョウバエのDelta切断ペプチドに
    対する抗体と結合することができる、請求項5記載の誘導体または類似体。
  8. 【請求項8】 ヒトDelta切断ペプチドに対する抗体と結合することができ
    る、請求項1記載のペプチドの精製された断片。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の断片を含む分子。
  10. 【請求項10】 ヒトDelta切断ペプチドの1以上の機能活性を示すことが
    できる、請求項1記載のペプチドの精製された断片。
  11. 【請求項11】 Deltaタンパク質の断片ではない第2のタンパク質のアミ
    ノ酸配列に共有結合で融合された、200アミノ酸より少ないDeltaタンパク質の断
    片を含むキメラタンパク質であって、該Deltaタンパク質の断片が、ヒトDelta(
    配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ
    酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551
    ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジョ
    ウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列を含む、
    上記キメラタンパク質。
  12. 【請求項12】 Delta切断ペプチドがヒトタンパク質のものである、請求
    項11記載のキメラタンパク質。
  13. 【請求項13】 Delta切断ペプチドの1以上の機能活性を示すことができ
    る、請求項12記載のキメラタンパク質。
  14. 【請求項14】 精製されたものである、請求項1記載のペプチド
  15. 【請求項15】 ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マ
    ウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys 518 〜Phe544、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
    Ala593のアミノ酸配列からなる群より選択されるDelta配列を含む、150アミノ酸
    より少ないDeltaタンパク質の断片。
  16. 【請求項16】 ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マ
    ウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys 518 〜Phe544、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
    Ala593のアミノ酸配列からなる群より選択されるDelta配列を含む、50アミノ酸
    より少ないDeltaタンパク質の断片。
  17. 【請求項17】 ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マ
    ウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys 518 〜Phe544、およびショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
    Ala593のアミノ酸配列からなる群より選択されるDelta配列を含む、30アミノ酸
    より少ないDeltaタンパク質の断片。
  18. 【請求項18】 ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マ
    ウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys 518 〜Phe544、またはショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564
    Ala593のアミノ酸配列からなるペプチド。
  19. 【請求項19】 請求項15、16もしくは17記載の断片または請求項1
    8記載のペプチドを含む分子。
  20. 【請求項20】 非Deltaタンパク質配列に融合されたDeltaタンパク質配列
    からなるキメラタンパク質であって、該Deltaタンパク質配列が、ヒトDelta(配
    列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸C
    ys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメ
    ガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジョウバ
    エDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列を含む100アミ
    ノ酸より少ない配列である、上記キメラタンパク質。
  21. 【請求項21】 非Deltaタンパク質配列に融合されたDeltaタンパク質配列
    からなるキメラタンパク質であって、該Deltaタンパク質配列が、ヒトDelta(配
    列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸C
    ys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメ
    ガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジョウバ
    エDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列を含む50アミ
    ノ酸より少ない配列である、上記キメラタンパク質。
  22. 【請求項22】 非Deltaタンパク質配列に融合されたDeltaタンパク質配列
    からなるキメラタンパク質であって、該Deltaタンパク質配列が、ヒトDelta(配
    列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸C
    ys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメ
    ガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジョウバ
    エDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列を含む30アミ
    ノ酸より少ない配列である、上記キメラタンパク質。
  23. 【請求項23】 非Deltaタンパク質配列に融合されたDeltaタンパク質配列
    からなるキメラタンパク質であって、該Deltaタンパク質配列が、ヒトDelta(配
    列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸C
    ys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメ
    ガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、およびショウジョウバ
    エDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列からなる群よ
    り選択される、上記キメラタンパク質。
  24. 【請求項24】 精製されたものである、請求項15、16、17または1
    8記載の断片またはペプチド。
  25. 【請求項25】 請求項15、16、17または18記載の断片もしくはペ
    プチドまたは請求項20、21または22記載のキメラタンパク質に対する抗体
    またはそのフラグメント。
  26. 【請求項26】 Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞または細胞を含
    む生物におけるNotch、DeltaもしくはKuzの活性、またはそれらのシグナル伝達
    経路の少なくとも1つをモジュレートする方法であって、該細胞または生物に、
    請求項15、16または17記載の断片、請求項18または19記載のペプチド
    または分子、請求項20、21または22記載のタンパク質、あるいは請求項2
    4記載の断片またはペプチドを接触させることを含んでなる、上記方法。
  27. 【請求項27】 Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞または生物にお
    けるNotch、DeltaもしくはKuzの活性、またはそれらのシグナル伝達経路の少な
    くとも1つをモジュレートする方法であって、該細胞または生物に請求項25記
    載の抗体を接触させることを含んでなる、上記方法。
  28. 【請求項28】 Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞または生物にお
    けるNotch、DeltaもしくはKuzの活性、またはそれらのシグナル伝達経路の少な
    くとも1つをモジュレートする方法であって、該細胞または生物内で、請求項1
    5、16または17記載の断片、請求項18または19記載のペプチドまたは分
    子、請求項20、21または22記載のタンパク質、あるいは請求項24記載の
    断片またはペプチドを組換え法により発現させることを含んでなる、上記方法。
  29. 【請求項29】 Notch、DeltaもしくはKuzを発現する細胞または生物にお
    けるNotch、DeltaもしくはKuzの活性、またはそれらのシグナル伝達経路の少な
    くとも1つをモジュレートする方法であって、該細胞または生物内で、請求項2
    5記載の抗体を組換え法により発現させることを含んでなる、上記方法。
  30. 【請求項30】 アミノ末端またはカルボキシ末端が誘導体化されている、
    請求項15、16または17記載の断片または請求項18記載のペプチド。
  31. 【請求項31】 N-アセチル化されている、請求項30記載の断片またはペ
    プチド。
  32. 【請求項32】 C-末端アミドをもつ、請求項30記載の断片またはペプチ
    ド。
  33. 【請求項33】 容器内に請求項15、16または17記載の断片または請
    求項18記載のペプチドを含むキット。
  34. 【請求項34】 精製された形の請求項15、16または17記載の断片ま
    たは請求項18記載のペプチド、および製薬上許容される担体を含有する医薬組
    成物。
  35. 【請求項35】 請求項15、16もしくは17記載の断片または請求項1
    8記載のペプチドまたは請求項20、21もしくは22記載のタンパク質をコー
    ドするトランスジーンを含むトランスジェニック非ヒト動物。
  36. 【請求項36】 200アミノ酸より少ないDeltaの断片をコードするヌクレオ
    チド配列を含む核酸であって、該断片が、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸C
    ys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワト
    リDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号
    8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジョウバエDelta(配列番号9)
    のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列を含む、上記核酸。
  37. 【請求項37】 単離されたものである、請求項36記載の核酸。
  38. 【請求項38】 DNAである、請求項36記載の核酸。
  39. 【請求項39】 請求項36記載のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチ
    ド配列を含む、単離された核酸。
  40. 【請求項40】 請求項36記載の核酸を含む組換え細胞。
  41. 【請求項41】 請求項36記載の核酸を含む組換え細胞を増殖させて、コ
    ードされたDelta切断ペプチドを該細胞に発現させ、発現されたDelta切断ペプチ
    ドを回収することを含んでなる、Delta切断ペプチドの生産方法。
  42. 【請求項42】 請求項41記載の方法により得られる産物。
  43. 【請求項43】 治療に有効な量のDeltaタンパク質の断片および製薬上許
    容される担体を含有する医薬組成物であって、該断片のアミノ酸配列が、ヒトDe
    lta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号6)のア
    ミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys523〜Phe55 1 、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、またはショウジ
    ョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸配列からな
    る、上記医薬組成物。
  44. 【請求項44】 Deltaタンパク質がヒトDeltaタンパク質である、請求項4
    3記載の組成物。
  45. 【請求項45】 治療に有効な量のDelta切断産物の誘導体または類似体、
    および製薬上許容される担体を含有する医薬組成物であって、該誘導体または類
    似体がKuzタンパク質との結合能を有する、上記医薬組成物。
  46. 【請求項46】 治療に有効な量の請求項36記載の核酸および製薬上許容
    される担体を含有する医薬組成物。
  47. 【請求項47】 治療に有効な量のDelta切断産物と結合する抗体および製
    薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
  48. 【請求項48】 治療に有効な量の、Delta切断ペプチドに対する抗体の結
    合ドメインを含むフラグメントまたは誘導体、および製薬上許容される担体を含
    有する医薬組成物。
  49. 【請求項49】 疾病または障害の治療または予防を希望する被験者に、治
    療に有効な量のDeltaタンパク質の断片を投与することを含んでなる、被験者に
    おける疾病または障害の治療または予防方法であって、該断片のアミノ酸配列が
    、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Cys516〜Phe543、マウスDelta(配列番号
    6)のアミノ酸Cys515〜Phe543、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Cys52 3 〜Phe551、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Cys518〜Phe544、もしく
    はショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Ala593のアミノ酸
    配列、またはKuzタンパク質と結合できる前記のもののいずれかの誘導体からな
    る、上記方法。
  50. 【請求項50】 前記疾病または障害が、類似の非悪性疾患サンプルにおけ
    るDelta活性または発現と比べて、上昇したDelta活性、またはDeltaタンパク質
    もしくは抗Delta抗体と結合できるDelta誘導体の増大した発現により特徴づけら
    れる悪性疾患である、請求項49記載の方法。
  51. 【請求項51】 前記疾病または障害が、子宮頸癌、乳癌、大腸癌、メラノ
    ーマ、精上皮腫、および肺癌からなる群より選択される、請求項50記載の方法
  52. 【請求項52】 被験者がヒトである、請求項50記載の方法。
  53. 【請求項53】 疾病または障害の治療または予防を希望する被験者に、有
    効量の請求項36記載の核酸を投与することを含んでなる、被験者における疾病
    または障害の治療または予防方法。
  54. 【請求項54】 前記疾病または障害が中枢神経系の疾病または障害である
    、請求項50記載の方法。
  55. 【請求項55】 患者において、Notch-Deltaタンパク質結合活性の異常な
    レベルを特徴とする疾病または障害を診断する方法であって、患者由来のサンプ
    ル中のDelta切断ペプチドのKuzタンパク質結合能を測定することを含んでなり、
    その際、正常個体由来の類似のサンプル中の該結合能と比べて、該ペプチドのKu
    zタンパク質結合能の増加または低下が、患者における疾病または障害の存在を
    示すものである、上記方法。
  56. 【請求項56】 Deltaタンパク質とKuzタンパク質との精製された複合体。
  57. 【請求項57】 前記タンパク質がヒトタンパク質である、請求項56記載
    の精製された複合体。
  58. 【請求項58】 Deltaの誘導体とKuzとの複合体、DeltaとKuzの誘導体との
    複合体、およびDeltaの誘導体とKuzの誘導体との複合体からなる群より選択され
    る精製された複合体であって、Deltaの誘導体は野生型Kuzと複合体を形成するこ
    とができ、Kuzの誘導体は野生型Deltaと複合体を形成することができる、上記複
    合体。
  59. 【請求項59】 DeltaまたはKuzの誘導体が蛍光標識されている、請求項5
    8記載の精製された複合体。
  60. 【請求項60】 少なくとも6アミノ酸のKuz断片に共有結合で融合された
    少なくとも6アミノ酸のDelta断片からなるキメラタンパク質。
  61. 【請求項61】 Delta断片がKuz結合能のある断片であり、Kuz断片がDelta
    結合能のある断片である、請求項60記載のキメラタンパク質。
  62. 【請求項62】 Delta断片とKuz断片がDelta:Kuz複合体を形成している、
    請求項61記載のキメラタンパク質。
  63. 【請求項63】 請求項58記載の複合体と免疫特異的に結合する抗体、ま
    たはその結合ドメインを含む該抗体のフラグメントもしくは誘導体。
  64. 【請求項64】 Delta:Kuz複合体の部分ではないDeltaまたはKuzと免疫特
    異的に結合しない、請求項63記載の抗体。
  65. 【請求項65】 Deltaタンパク質をコードするヌクレオチド配列とKuzタン
    パク質をコードするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸または単離された
    核酸の組合せ。
  66. 【請求項66】 核酸ベクターである、請求項65記載の単離された核酸ま
    たは単離された核酸の組合せ。
  67. 【請求項67】 Deltaコード配列とKuzコード配列がプロモーターに機能的
    に連結されている、請求項65記載の単離された核酸または単離された核酸の組
    合せ。
  68. 【請求項68】 請求項60記載のキメラタンパク質をコードするヌクレオ
    チド配列を含む、単離された核酸。
  69. 【請求項69】 治療または予防に有効な量の請求項56記載の複合体、お
    よび製薬上許容される担体を含有する医薬組成物。
  70. 【請求項70】 前記タンパク質がヒトタンパク質である、請求項70記載
    の医薬組成物。
  71. 【請求項71】 DeltaとKuzの複合体を生産する方法であって、請求項65
    記載の核酸を含む組換え細胞を増殖させて、コードされたDeltaおよびKuzタンパ
    ク質を発現させかつ互いと結合させ、発現されたDeltaとKuzの複合体を回収する
    ことを含んでなる、上記方法。
  72. 【請求項72】 被験者において、DeltaとKuzとの複合体の異常なレベルを
    特徴とする疾病もしくは障害の存在またはそれを発症する素因について診断また
    はスクリーニングする方法であって、被験者由来のサンプル中の該複合体のレベ
    ル、DeltaおよびKuzをコードするRNAのレベル、または該複合体の機能活性のレ
    ベルを測定することを含んでなり、その際、該疾病もしくは障害またはそれを発
    症する素因をもたない類似のサンプル中の該複合体、DeltaおよびKuzをコードす
    るRNA、または該複合体の機能活性のレベルと比べて、被験者由来のサンプル中
    の該複合体、DeltaおよびKuzをコードするRNA、または該複合体の機能活性のレ
    ベルが増加または減少していることが、該疾病もしくは障害の存在またはそれを
    発症する素因を示すものである、上記方法。
  73. 【請求項73】 1個以上の容器に、DeltaとKuzの複合体、該複合体に対す
    る抗体、DeltaのRNAおよびKuzのRNAとハイブリダイズすることができる核酸プロ
    ーブ、またはDelta遺伝子およびKuz遺伝子の少なくとも一部の増幅を開始させる
    ことができる核酸プライマーの対からなる群より選択される物質を含むキット。
  74. 【請求項74】 被験者において、DeltaとKuzの複合体の異常なレベルに関
    係する疾病または障害を治療または予防する方法であって、治療または予防を希
    望する被験者に、治療に有効な量の、該複合体の機能をモジュレートする分子1
    種以上を投与することを含んでなる、上記方法。
  75. 【請求項75】 DeltaとKuzの複合体の形成を直接または間接にモジュレー
    トする分子をスクリーニングする方法であって、DeltaおよびKuzタンパク質から
    形成される該複合体のレベルを、該分子の存在下に、該複合体の形成へと導く条
    件下で測定し、該複合体のレベルを、該分子の非存在下で形成される該複合体の
    レベルと比較することを含んでなり、その際、該分子の存在下での該複合体のよ
    り低いまたはより高いレベルが、該分子が該複合体の形成をモジュレートするこ
    とを示すものである、上記方法。
  76. 【請求項76】 内因性Delta遺伝子および内因性Kuz遺伝子が非ヒト動物ま
    たはその祖先の相同的組換えまたは挿入突然変異誘発により欠失または不活性化
    されている、組換え非ヒト動物。
  77. 【請求項77】 Delta遺伝子とKuz遺伝子の両方を含む組換え非ヒト動物で
    あって、Delta遺伝子が天然のDelta遺伝子プロモーターではないプロモーターの
    制御下にあり、Kuz遺伝子が天然のKuz遺伝子プロモーターではないプロモーター
    の制御下にある、上記組換え非ヒト動物。
  78. 【請求項78】 Deltaの活性またはレベルをモジュレートする方法であっ
    て、細胞に、Delta遺伝子を発現する動物、Kuzタンパク質もしくは該タンパク質
    をコードする核酸、または該タンパク質と免疫特異的に結合する抗体もしくはそ
    の結合ドメインを含む該抗体のフラグメントまたは誘導体を接触させるか、投与
    することを含んでなる、上記方法。
  79. 【請求項79】 Kuzの活性またはレベルをモジュレートする方法であって
    、細胞に、該タンパク質をコードする遺伝子を発現する動物、Delta、またはDel
    taをコードする核酸、またはDeltaと免疫特異的に結合する抗体もしくはその結
    合ドメインを含む該抗体のフラグメントまたは誘導体を接触させるか、投与する
    ことを含んでなる、上記方法。
  80. 【請求項80】 DeltaまたはKuzまたはDeltaとKuzの複合体の活性をモジュ
    レートする分子の同定方法であって、1以上の候補分子とDeltaとをKuzの存在下
    で接触させ、DeltaとKuzの間で形成される複合体の量を測定することを含んでな
    り、その際、形成される複合体の量が、該候補分子の非存在下で形成される量と
    比べて、増加または減少することが、該分子がDeltaまたはKuzまたはDeltaとKuz
    の複合体の活性をモジュレートすることを示すものである、上記方法。
  81. 【請求項81】 細胞におけるDelta活性化を検出または測定する方法であ
    って、D1ECおよびD1TMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物の発現
    を検出または測定することを含んでなり、その際、Delta切断産物の存在および
    量がそれぞれDelta活性化の存在および量を示すものである、上記方法。
  82. 【請求項82】 前記検出または測定が、細胞に、特異的結合に導く条件下
    でD1ECまたはD1TMと結合する分子を接触させ、生起する該分子の該細胞への結合
    を検出することを含む方法により実施される、請求項81記載の方法。
  83. 【請求項83】 前記分子が抗Delta抗体またはその結合領域である、請求
    項82記載の方法。
  84. 【請求項84】 前記分子がNotchまたはKuzまたはその結合領域である、請
    求項82記載の方法。
  85. 【請求項85】 前記抗体またはその結合領域が蛍光標識で標識されており
    、該抗体の細胞への結合が蛍光活性化セルソーティングにより検出または測定さ
    れる、請求項83記載の方法。
  86. 【請求項86】 前記検出または測定が、(a) 該細胞に、細胞表面タンパク
    質と結合または反応する試薬を、そのような結合または反応に導く条件下で接触
    させ、(b) Deltaとの結合または反応を検出する、ことを含む方法により実施さ
    れる、請求項81記載の方法。
  87. 【請求項87】 前記試薬が標識されている、請求項86記載の方法。
  88. 【請求項88】 前記検出が、該細胞に、該試薬に対する標識された特異的
    結合パートナーを接触させることを含む方法により実施される、請求項86記載
    の方法。
  89. 【請求項89】 ステップ(b)での前記結合または反応の検出が、抗Delta抗
    体を用いて、ウエスタンブロッティングまたは免疫沈降により実施される、請求
    項87または88記載の方法。
  90. 【請求項90】 細胞におけるDelta活性化を検出または測定する方法であ
    って、ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593の間、ヒトDel
    taのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間、マウスDeltaのアミノ酸Cys515とア
    ミノ酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間、ま
    たはツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間、で終結するDelta
    のアミノ末端断片を検出または測定することを含んでなる、上記方法。
  91. 【請求項91】 細胞におけるDelta活性化を検出または測定する方法であ
    って、還元条件下で、約67キロダルトンの可溶性Delta断片を検出または測定す
    ることを含んでなる、上記方法。
  92. 【請求項92】 細胞におけるKuz機能を検出または測定する方法であって
    、D1ECおよびD1TMからなる群より選択される1以上のDelta切断産物の発現を検
    出または測定することを含んでなり、その際、Delta切断産物の存在および量が
    それぞれKuz機能の存在および量を示すものである、上記方法。
  93. 【請求項93】 前記検出または測定が、細胞に、特異的結合に導く条件下
    でD1ECまたはD1TMと結合する分子を接触させ、生起する該分子の該細胞への結合
    を検出することを含む方法により実施される、請求項92記載の方法。
  94. 【請求項94】 前記分子が抗Delta抗体またはその結合領域である、請求
    項93記載の方法。
  95. 【請求項95】 細胞におけるKuz機能を検出または測定する方法であって
    、ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593の間、ヒトDeltaの
    アミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間、マウスDeltaのアミノ酸Cys515とアミノ
    酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間、または
    ツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間、で終結するDeltaタン
    パク質のアミノ末端断片を検出または測定することを含んでなる、上記方法。
  96. 【請求項96】 細胞におけるKuz機能を検出または測定する方法であって
    、還元条件下で、約67キロダルトンの可溶性Delta断片を検出または測定するこ
    とを含んでなる、上記方法。
  97. 【請求項97】 Delta活性化のモジュレーターを同定する方法であって、
    細胞に候補モジュレーター分子を接触させ、D1ECおよびD1TMからなる群より選択
    される1以上のDelta切断産物の該細胞による発現を測定することを含んでなり
    、その際、該候補分子と接触していないDelta細胞と比べて、1以上の該切断産
    物の存在または量が変化していることが、該候補分子がDelta活性をモジュレー
    トすることを示すものである、上記方法。
  98. 【請求項98】 Delta活性化のモジュレーターを同定する方法であって、
    細胞に候補モジュレーター分子を接触させ、ショウジョウバエDeltaのアミノ酸C
    ys564とアミノ酸Ala593の間、ヒトDeltaのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間
    、マウスDeltaのアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ
    酸Cys523とアミノ酸Phe551の間、またはツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とア
    ミノ酸Phe544の間、で終結するDeltaタンパク質のアミノ末端断片の発現量を検
    出または測定することを含んでなり、その際、該候補分子に接触していないDelt
    a細胞と比べて、該断片の存在または量が変化していることが、該候補分子がDel
    ta活性をモジュレートすることを示すものである、上記方法。
  99. 【請求項99】 Delta活性化のモジュレーターを同定する方法であって、
    細胞に候補モジュレーター分子を接触させ、還元条件下で、約67キロダルトンの
    可溶性Delta断片を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分子
    に接触していないDelta細胞と比べて、該可溶性Delta断片の存在または量が変化
    していることが、該候補分子がDelta活性をモジュレートすることを示すもので
    ある、上記方法。
  100. 【請求項100】 Kuz機能のモジュレーターを同定する方法であって、細
    胞に候補モジュレーター分子を接触させ、D1ECおよびD1TMからなる群より選択さ
    れる1以上のDelta切断産物の該細胞による発現を検出または測定することを含
    んでなり、その際、該候補分子に接触していないDelta細胞と比べて、1以上のD
    elta切断産物の存在または量が変化していることが、該候補分子がKuz機能をモ
    ジュレートすることを示すものである、上記方法。
  101. 【請求項101】 Kuz機能のモジュレーターを同定する方法であって、細
    胞に候補モジュレーター分子を接触させ、ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys 564 とアミノ酸Ala593の間、ヒトDeltaのアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間、
    マウスDeltaのアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間、ニワトリDeltaのアミノ酸
    Cys523とアミノ酸Phe551の間、またはツメガエルDeltaのアミノ酸Cys518とアミ
    ノ酸Phe544の間、で終結するDeltaタンパク質のアミノ末端断片の発現量を検出
    または測定することを含んでなり、その際、該候補分子に接触していないDelta
    細胞と比べて、該断片の存在または量が変化していることが、該候補分子がKuz
    機能をモジュレートすることを示すものである、上記方法。
  102. 【請求項102】 Kuz機能のモジュレーターを同定する方法であって、細
    胞に候補モジュレーター分子を接触させ、還元条件下で、約67キロダルトンの可
    溶性Delta断片を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分子に
    接触していないDelta細胞と比べて、該可溶性Delta断片の存在または量が変化し
    ていることが、該候補分子がKuz機能をモジュレートすることを示すものである
    、上記方法。
  103. 【請求項103】 Delta活性化のモジュレーターを同定する方法であって
    、候補モジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下に、場合によりさらに
    細胞性タンパク質を含む組成物の存在下に、Kuzおよび場合により該組成物の1
    以上の成分による全長Deltaの切断に導く条件下で接触させ、生じるDelta切断産
    物の量を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分子に接触して
    いない該組成物の存在下での全長Deltaと比べて、Delta切断産物の存在または量
    が変化していることが、該候補分子がDelta活性をモジュレートすることを示す
    ものである、上記方法。
  104. 【請求項104】 前記組成物がDeltaを組換え的に発現している細胞から
    調製された細胞溶解物である、請求項103記載の方法。
  105. 【請求項105】 前記組成物がDeltaを内因的に発現している細胞から調
    製された細胞溶解物である、請求項103記載の方法。
  106. 【請求項106】 Kuz機能のモジュレーターを同定する方法であって、候
    補モジュレーター分子と全長Deltaとを、Kuzの存在下に、場合によりさらに細胞
    性タンパク質を含む組成物の存在下に、Kuzおよび場合により該組成物の1以上
    の成分による全長Deltaの切断に導く条件下で接触させ、生じるDelta切断産物D1 EC およびD1TMの量を検出または測定することを含んでなり、その際、該候補分子
    に接触していない該組成物の存在下での全長Deltaと比べて、該Delta切断産物の
    存在または量が変化していることが、該候補分子がKuz機能をモジュレートする
    ことを示すものである、上記方法。
  107. 【請求項107】 前記組成物がKuzを組換え的に発現している細胞から調
    製された細胞溶解物である、請求項106記載の方法。
  108. 【請求項108】 前記組成物がKuzを内因的に発現している細胞から調製
    された細胞溶解物である、請求項106記載の方法。
  109. 【請求項109】 Deltaタンパク質の精製された断片であって、該断片の
    配列が、ヒトDelta(配列番号10)のアミノ酸Ser22から開始してアミノ酸Cys516 とアミノ酸Phe543の間で終結するアミノ酸配列、マウスDelta(配列番号6)の
    アミノ酸Ser22から開始してアミノ酸Cys515とアミノ酸Phe543の間で終結するア
    ミノ酸配列、ニワトリDelta(配列番号7)のアミノ酸Ser24から開始してアミノ
    酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結するアミノ酸配列、ツメガエルDelta(配
    列番号8)のアミノ酸Ser22から開始してアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間
    で終結するアミノ酸配列、またはショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミ
    ノ酸Ser23から開始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Ala593の間で終結するアミノ
    酸配列からなる、上記断片。
  110. 【請求項110】 アミノまたはカルボキシ末端が誘導体化されている、請
    求項109記載の断片。
  111. 【請求項111】 N-アセチル化されている、請求項110記載の断片。
  112. 【請求項112】 C-末端アミドを有する、請求項110記載の断片。
  113. 【請求項113】 Deltaタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列
    を含む核酸であって、該断片のアミノ酸配列が、ヒトDelta(配列番号10)のア
    ミノ酸Ser22から開始してアミノ酸Cys516とアミノ酸Phe543の間で終結するアミ
    ノ酸配列、マウスDelta(配列番号6)のアミノ酸Ser22から開始してアミノ酸Cy
    s515とアミノ酸Phe543の間で終結するアミノ酸配列、ニワトリDelta(配列番号
    7)のアミノ酸Ser24から開始してアミノ酸Cys523とアミノ酸Phe551の間で終結
    するアミノ酸配列、ツメガエルDelta(配列番号8)のアミノ酸Ser22から開始し
    てアミノ酸Cys518とアミノ酸Phe544の間で終結するアミノ酸配列、またはショウ
    ジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23から開始してアミノ酸Cys564
    アミノ酸Ala593の間で終結するアミノ酸配列からなる、上記核酸。
  114. 【請求項114】 単離されたものである、請求項113記載の核酸。
  115. 【請求項115】 DNAである、請求項113記載の核酸。
  116. 【請求項116】 Deltaの断片をコードする請求項113記載の核酸のヌ
    クレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を含む、単離された核酸。
  117. 【請求項117】 Deltaタンパク質の断片を含むペプチドであって、該断
    片のアミノ酸配列がショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys564〜G
    ln594からなる、上記ペプチド。
  118. 【請求項118】 Deltaタンパク質の断片ではない第2のタンパク質のア
    ミノ酸配列に共有結合で融合された、200アミノ酸より少ないDeltaタンパク質の
    断片からなるキメラタンパク質であって、該断片がショウジョウバエDelta(配
    列番号9)のアミノ酸Cys564〜Gln594のアミノ酸配列を含む、上記キメラタンパ
    ク質。
  119. 【請求項119】 ショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Cys56 4 〜Gln594のアミノ酸配列からなるペプチド。
  120. 【請求項120】 200アミノ酸より少ないDeltaタンパク質の断片をコード
    するヌクレオチド配列を含む核酸であって、該断片がショウジョウバエDelta(
    配列番号9)のアミノ酸Cys564〜Gln594のアミノ酸配列を含む、上記核酸。
  121. 【請求項121】 ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Gln 594 の間で終結するDeltaのアミノ末端断片を検出または測定することを含んでな
    る、細胞におけるDelta活性化を検出または測定する方法。
  122. 【請求項122】 ショウジョウバエDeltaのアミノ酸Cys564とアミノ酸Gln 594 の間で終結するDeltaタンパク質のアミノ末端断片を検出または測定すること
    を含んでなる、細胞におけるKuz機能を検出または測定する方法。
  123. 【請求項123】 Deltaタンパク質の精製された断片であって、該断片の
    アミノ酸配列が、ショウジョウバエDelta(配列番号9)のアミノ酸Ser23から開
    始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Gln594の間で終結するアミノ酸配列からなる、
    上記断片。
  124. 【請求項124】 Deltaタンパク質の断片をコードするヌクレオチド配列
    を含む核酸であって、該断片のアミノ酸配列が、ショウジョウバエDelta(配列
    番号9)のアミノ酸Ser23から開始してアミノ酸Cys564とアミノ酸Gln594の間で
    終結するアミノ酸配列からなる、上記核酸。
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