JP2002519124A - 構造体の2次元あるいは3次元空間の相違の計算方法および表示方法 - Google Patents

構造体の2次元あるいは3次元空間の相違の計算方法および表示方法

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Abstract

(57)【要約】 医学的診断、研究、あるいは医療技術のための、2次元あるいは3次元の空間的相違の数量化と表示のための方法であって、この方法を用いて、最低ひとつの対象において画像作成方法のデジタル化により検出されたボリューム要素の最低ひとつの対照構造に対する相対的位置、および一般的に、この対照のすべてのボリューム要素に対する相対的位置を計算、保存、および表示する。最低2つの対象において、画像作成方法のデジタル化の結果得られるボリューム要素が、計算機支援システムにより検出され、その場合に初期ボリュームのボリューム要素が対応する対照ボリューム要素にむかって移動した距離が、線形化された運動モデル、この運動モデルに適合させた数値のマルチグリッド法、グレイスケールの値に基づく力により、および/またはデジタル化されたボリュームの複数の解像度段階を用いて計算されることを特徴とする方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (技術分野) 本方法は、医学的診断、研究あるいは医療技術へ適用するための生物学的対象
の空間的標準化を目的とした2次元あるいは3次元の空間的相違(変形場)の計算
および表示に用いるものである。
【0002】 (背景技術) ひとつの共通の座標系における2つの対象の空間的相違の全体を、以下では変
形場と呼ぶ。ここでは、対象ではなく、最低ひとつの対象において画像作成方法
のデジタル化の結果生ずるボリューム要素の最低ひとつの対照構造に対する相対
的位置と、一般的に、この対照のすべてのボリューム要素に対する相対的位置を
計算および表示する。
【0003】 本方法では、2次元あるいは3次元の変形場を計算するために、画像作成方法
のアナログからデジタルに変換された信号(ボリューム要素)を受け取る計算機支
援システムを使用する。信号を記録した後、初期ボリュームと対照ボリュームに
おける相当するボリューム要素が、運動モデルにより解析され、対応付けられる
。対応付けは、初期ボリュームと対照ボリューム間のグレイスケールの値に基づ
く力によってなされるが、この力を用いて初期ボリュームにおける個々のボリュ
ーム要素が移動した距離を数値のマルチグリッド法を使って計算することができ
る。
【0004】 個々のボリューム要素が移動した距離は、測定値メモリーに記録される。それ
に続き、変形場を用いて、点ごとの初期ボリュームの変位が実行され、結果はメ
モリーに記録されるか、視覚化装置に送られる。変形場は、2次元あるいは3次
元の一定間隔の格子に適用することにより、視覚化装置上で目に見えるようにで
き、空間構造の変異性の統計的分析(個体間適合)、あるいは2つ以上の異なった
画像作成方法により表示された複数の対象の重ね合わせ(個体内、個体間適合)に
使われる。
【0005】 特に、本方法により、2種類の画像作成方法によるボリュームを、機能的パラ
メータと形態学的パラメータを統合して情報密度を高めることを目的として、自
動的、幾何学的に対応付ける際の問題が解決する。
【0006】 本発明は、医学的診断、研究あるいは医療技術のための、2次元あるいは3次
元の空間的相違(変形場)の計算および表示に使用するものである。ここでは、対
象ではなく、最低ひとつの対象において画像作成方法のデジタル化の結果生じる
ボリューム要素の最低ひとつの対照構造に対する相対的位置、および一般的に、
この対照のすべてのボリューム要素に対する相対的位置を計算および表示する。
【0007】 正常な、そして病理的に変化した体の構造と機能を画像として把握し、且つ分
析するために、放射線医学的診断に画像作成方法を使うことは、すでに知られて
いるとおりである。様式が異なった画像作成方法は、共通の基本原則に基づいて
いる。さまざまな「情報媒体」、例えば、可視光線、X線、超音波、放射性核種
、磁場等が、体と相互作用を起こすのである。その場合に受容された情報は、輝
度によりコード化され、画像中で、あるいは三次元ではボリュームとして表示さ
れる。
【0008】 画像作成システムとしては、さまざまな装置の使用が可能である。光学顕微鏡
的情報を持つ組織学的連続画像を記録するための装置とならび、X線コンピュー
タ断層撮影(CT)、磁気共鳴断層撮影(MRI)、ファンクショナルMRI(核磁気共鳴機
能画像法、fMRI)、ポジトロン・エミッション断層撮影(PET)あるいはシングル・
フォトン・エミッション・コンピュータ断層撮影(SPECT)による連続画像の巨視
的な情報を利用することも可能である。
【0009】 これらの画像作成方法の使用において、本発明は、特に、空間的標準化を目的
とした生物学的対象間における空間的な差の完全自動計算に関する。ここでは、
運動モデル、マルチグリッド法、外部からの力、そしてボリュームを粗くするた
めのメカニズムを組み合わせて用い、それぞれのボリューム要素について空間的
な差の計算をおこなう。空間の差の全体(変形場)は、視覚化装置と結合したメモ
リーに記録される。
【0010】 変形場はまた、さまざまに異なった画像作成方法による画像情報の統合のため
に用いることもできる。すなわち、さまざまな方法で得られた画像情報を、ひと
つの共通の座標軸上で重ね合わせるために用いることができるのである。本方法
によって、測定装置を使用する必要なく、ボリューム要素どうしの対応付けをお
こない、対象どうしを幾何学的にできうる限り正確に一致させることが可能にな
る。
【0011】 本方法は、初期対象のおのおののボリューム要素について、対照対象への距離
を自動的に求めるものであるが、これは現存の測定法あるいは対応付け方法では
、ボリューム要素の個数が多すぎるため(医療技術では最低約800万個)不可能で
ある。特に、三次元の対象を測定するための古典的な方法では、初期対象内部の
ボリューム要素が一般的にアクセスできないか、あるいはまた、あまりはっきり
と形成されていないせいで、対応付けができず、初期対象内部のボリューム要素
を対照対象において再認識することが不可能である。
【0012】 すでに、少数の補間点と限定された対応付けの可能性によってインタラクティ
ブに操作を進める適合メソッド(ローランド(Roland)他 1994、シアーズ(Schier
s)他 1986、ブックシュタイン(Bookstein) 1989、ローア(Rohr)他 1996、本
稿末の文献リスト参照)、あるいはまた自動的に(フリストン(Friston)他 1995
、リンデベルク(Lindeberg) 1995、コリンズ(Collins)他 1995)、しかし基準
点、表面、輪郭のみに基づいて(ダヴァツィコス(Davatzikos) 1996、トンプソ
ン(Thompson)他 1996)あるいはグローバルに(バイツィ(Bajcsy)他 1989、ミラ
ー(Miller)他 1993、ブロ・ニールセン(Bro-Nielsen)他 1996、ティリオン(Th
irion) 1996)操作を行う適合メソッドを提供することが知られている。
【0013】 これらの既知の方法には、医療技術にとって重要である完全自動且つボリュー
ム要素について正確な適合を不可能にする、以下の不可避の制約がある。 1)手動の補助を用いる方法は、再現が不可能で、再度測定を行った場合、結果
に差が出ることがある。この方法の使用は、対応付けが限定されている場合(例
えば、グローバルな回転)にのみ意義を持つ。なぜなら、他の場合には、より正
確な対応付けのためには、実際上、基準点の数が非常に多くなり、扱いが不可能
になるからである。
【0014】 2)輪郭のみ、あるいは表面のみを使用する場合、同様に手動の補助が必要とな
るとともに、初期対象と対照対象間の対応する表面あるいは輪郭の補間に問題が
出る。さらに、対応付けは一般に再現が不可能である。
【0015】 3)ほんの小さな変形すら、完全な対応付けを不可能にする前提条件となる。
【0016】 4)空間的相違が大きく複雑である場合、数値の計算コストが非常に高くなるた
め、既知の方法では、完全な対応付けを断念せざるを得ないか、あるいは計算コ
ストの最小化のためにフィルターを使用することになる。しかし、このフィルタ
ーの使用によっては、ボリューム要素について正確な適合は十分に行われ得ない
。なぜなら、このフィルターに基づく方法は、ヒューリスティックに行われて、
正確な変形場を定めることが不可能になってしまうか、あるいは一般的に3次元
での適用のためには、実際には計算コストが高く、変換がなおも不可能だからで
ある。
【0017】 ここで決定的なのは、このフィルターに基づく方法で必要なオペレーティング
・ステップの数Oが、最良の場合でもO(N logN)で増加するということである(Nは
ボリューム要素の総数。)。
【0018】 本発明は、上で述べた欠点(1-4)を完全に回避する。ショルマン(Schormann)
らの論文(1996)で述べられた方法は、もうひとつの提案であるが、これは、運動
モデルを使用する本発明と比較すれば、ほんの小さな幾何学的な空間的相違を確
定するためのものである。その上、この提案においては、処理速度をさらに向上
させるための対象を粗くするメカニズムも、適合性向上のための修正された外部
からの力についても考慮されていない。
【0019】 この論文およびヘン(Henn)らによる論文(1997)では、さらに非線形モデルが扱
われているが、これは線形モデルに較べて数値の収束性、数値的不安定性、およ
び一致という点で劣る(下記参照)。このことから、このような実際のシチュエー
ションにおいて出て来る微分方程式すべてについて、「標準的なマルチ・グリッ
ド法」は存在しないということを言わねばならない。マルチ・グリッド法は、そ
れぞれの問題に応じてアレンジしなくてはならない多数の個々のコンポーネント
から成り立っているのである。
【0020】 線形もしくは非線形モデルの解についての相違は、つまり、モデルにより異な
る要求自体によって規定されており、したがってモデルに適合した独自の構造を
持っている(事前の緩和法、事後の緩和法の種類と個数、レストリクション、補
間、V-、W-、F-サイクル、グリッド・デプス。 参照: W・H.・プレス、B・P・
フランネリー、S・A・トイコルスキー、W・T・フェッターリング(Press W H, Fl
annery B P, Teukolsky S A, Vetterling W T ): [it Numerical recipes in C]
.Cambridge: Cambridge U. P. (1988) 871ページ以下)。そのため、線形システ
ムのために、新しいマルチ・グリッド法を開発することが必要になった。
【0021】 さらに、運動モデルは、以下の点でクリステンセン(Christensen)らの論文( (
1997) 868ページ、第三節)で提案された液体モデルと異なる。 a)クリステンセン(Christensen)らによる論文((1997)、(1996))では、付加的
に常微分方程式(方程式10 クリステンセン(Christensen)他 (1997))の解を求
めることによって、液体モデルへの変換がなされる。
【0022】 この論文の方程式10および12からわかるように、それぞれのタイム・ステップ
ごとに個々の空間方向について導関数(変形場の勾配∇ベクトルu∀ベクトルu)を
計算しなくてはならない。この計算は、我々が提案する運動モデルでは完全に避
けられており、このことは、データ量の大きさと、殊に、空間的相違の速やかな
計算という目標設定を考慮した場合、著しい計算時間上の利点を示すものである
【0023】 b)さらに、この運動モデルは、クリステンセン(Christensen)ら(1996)、(1997
)、ショルマン(Schormann)ら(1996)、ヘン(Henn)ら(1997)、ハラー(Haller)ら(1
996)の論文で呈示されたものと根本的に異なる。 (i)線形化されたモデルのバージョンにおいて L(ベクトルu(n)) = f(ベクトルu(n) ges) ベクトルu(n+1) ges = δベクトルu(n)+ベクトルu(n) ges
【0024】 ここでは、Lは微分演算子L = μΔ+(μ+λ)∇∇、μ、λはラメの定数、ベ
クトルfはグレイスケールの値に基づく外部からの力、δベクトルu(n)はモデル
中のn個目の局所的な変位、そしてベクトルu(n) gesはすでに計算済みの任意に選
択したひとつのボリューム要素の全体の運動である。時間に依存しない無限小の
距離δベクトル u(n)は、その全体においてボリューム要素の運動を記述するも
のであるが、これの導入によるモデルの上記の線形化は、上記の論文でのべられ
た方法に対し重大な相違を示す(図1も参照)。
【0025】 クリステンセン(Christensen)らによって優先して用いられた時間依存のモデ
ルでは、ここで挙げたものと比較すると、もうひとつ常微分方程式を解かなくて
はならない。ショルマン(Schormann)らによる論文(1996)、ヘン(Henn)らによる
論文(1997)で述べられた方法は、非線形モデルを含むが、これは微分演算子にお
いても外部からの力f = f(u)においても空間的相違uへの依存性を示す。
【0026】 L(ベクトルu) =ベクトルf この場合ベクトルf(ベクトルu)のテイラー展開は、ベクトルuに関する非線形を
導く。
【0027】 これらの非線形のモデルは、以下の欠点を持つ。一方で、これらは実際に画像作
成システムのノイズによって不可避的に引き起こされる数値的不安定に対し、非
常に弱い。他方で、これらの非線形システムでは、数値的収束性が非常に弱いこ
とが問題となり、さらに一致、すなわち初期ボリュームと目標ボリュームでのホ
モローグな構造どうしの相関に問題がある。
【0028】 したがって、運動モデルは、時間への非依存性と線形化という点で、先行する
技術と根本的に異なる。さらに、これまで知られている方法では、初期対象の個
々のボリューム要素が対照対象の対応するボリューム要素に割り当てられる適合
の結果を、任意の対象において自動的に、すなわち手動的補助を用いず、十分な
正確さで得ることが不可能である。
【0029】 したがって、本発明の課題は、冒頭で挙げた様式の方法を改良することである
。それゆえに、線形化した運動モデルとこのモデルに適合させたマルチ・グリッ
ド法によって、高い適合性は保ったままで、極端に高い数値の計算コストを著し
く低減し、変形場の計算をインタラクティブな補助無しに可能にする。
【0030】 3次元での計算に液体モデルが要する時間は、文献では(クリステンセン(Chri
stensen) 他, IEEE Computer, 29(1): 32-38, 1996を参照)約7日とされている
が、これに対し、本方法では−対比のための実施において−約30分である。
【0031】 (発明の開示) この課題は、本発明の請求項1の特徴を持つ方法で解決される。本方法では、
変形場の計算のために、まず画像作成方法の対象が計算機支援システムに記録さ
れる。記録の後、初期ボリュームの個々のボリューム要素について対照ボリュー
ムの対応するボリューム要素に向かう運動が定められる。そのために対象はまず
、個々のボリューム要素がばねで隣り合う要素と結ばれている弾性のあるマテリ
アルに変えられる。
【0032】 このプロセスは、本来の連続した問題の離散化に相当する。対照ボリューム要
素までの空間の差をなくすのに必要なだけの外部からの力を加えることにより、
このボリューム要素からなる格子が変形する。しかしその場合、生じた変形は、
外部からの力とばねから生じる内部の力が平衡したものに過ぎない(弾性モデル)
。したがって、完全な空間の差の計算のために、新しく生じた中間ポジションに
、最終的な状態まで、すなわち対応する対照ボリューム要素との完全な一致に到
るまで、新たに計算した外部の力が加えられる。
【0033】 この逐次的な、すなわち力の線形化された適用により、ひとつの任意のボリュ
ーム要素の全体の運動を定めることができ、これにより大きな変形の計算及び修
正が可能になる。ボリューム要素の全体の運動は、優先する具体化形式を使う本
発明により、先行の位置間隔の変化した空間の差から求められる新しい外部の力
を逐次適用することによって求められる。
【0034】 しかし、これはそれぞれのボリューム要素について、時間に依存する運動方程
式の解によっても求められる。しかし、これは計算コストがより高い(クリステ
ンセン(Christensen) 他、1994)。本発明のもうひとつの課題は、初期ボリュー
ムのおのおののボリューム要素が対照ボリュームまで移動する距離の制御を可能
にする、初期ボリュームと対照ボリュームの形の間における適切な力を定めるこ
とである。
【0035】 この課題は、本発明により、対照ボリューム要素と小さな空間の差のぶん変位
した初期ボリューム要素のあいだのグレイスケールの値の差の2乗と、初期ボリ
ューム要素と小さな空間の差のぶん変位した対照ボリューム要素のあいだのグレ
イスケールの値の差の2乗を最小化することによって解決される。これによりま
さに、グレイスケールの値の差からそれぞれのボリューム要素について生じる運
動の軌道を明確に記述する力の大きさ、位置、および方向が定められる。
【0036】 初期ボリュームと対照ボリュームの間での対称化により、力は、初期ボリュー
ムを対照ボリュームの中に押すコンポーネントと、初期ボリュームを対照ボリュ
ームに引き込むコンポーネントとに分割される。もうひとつ考えられるオルタナ
ティブは、対称的な力の第一のコンポーネントのみからなる力であるが、この場
合、計算コストがより高くなり、適合の正確さが劣るという、好ましくない結果
がもたらされる。
【0037】 対称化された力のオルタナティブとして、本発明により、力の大きさが、まず
グレイスケールの値の差の2乗に比例して増加し、より大きな差について線形に
増加することで、画像作成システムのノイズの影響を受けにくくした。
【0038】 本発明のさらなる課題は、変形場を可能な限り低い計算コストで、且つ正確さ
を失うこと無く計算することである。この課題は、本発明により、有限差分法あ
るいは有限要素法による離散化、モデルに適合させた数値のマルチグリッド法、
CS(修正スキーム)あるいはFAS(フル近似スキーム)を用いることで解決される。
ここにおいて、計算コストがボリューム要素の数とともに線形にのみ増加するこ
と(O(N))が可能になる。
【0039】 これまで知られている最良のグローバルなフィルター方法では、O(NlogN) (ク
リステンセン(Christensen)らによる液体モデル(1997)ではO(N2))で増加する。
これを使用すると、ボリューム要素の数が多い場合(臨床での適用では、約800万
個)著しい時間的な不利が生じ、既知の計算機の能力では、この方法の実際の適
用は不可能である。
【0040】 本発明では、結果は、近似値を求めるのではなく、選択された数値的な正確さ
で定めることができる。それぞれのボリューム要素が移動した距離は、結果とし
て測定値メモリーに記録される。それに続き、初期ボリュームの点ごとの変位が
変動場を使用することにより行われ、結果はメモリーに記録されるか、視覚化装
置に送られる。
【0041】 本発明のさらにもうひとつの課題は、対象内のグローバルで幾何学的な構造の
自動的な対応付けを改良することと、処理速度のさらなる向上を達成することで
ある。この課題は、本発明により、ボリュームを粗雑化するメカニズムを使用す
ることで達成される。この方法では、複数の隣り合ったボリューム要素が、ひと
つの新しいボリューム要素として包括され、例えば、堅固に結合される。この手
順は何度も繰り返され、したがって次第に粗くなるボリュームの階層が生じる。
【0042】 変形場は、まず最も粗いボリュームについて定められる。変形場は、最終的に
オリジナルの解像度に到るまで、次々とより細かなボリュームに補間される。ボ
リューム要素のグローバルな空間の差の範囲への局所的な対応付けは、まず粗い
ボリュームに適用することで成し遂げられるため、粗い構造が適合され、それに
よってより大きな空間的距離を越えた適合が可能になる。
【0043】 このようにボリューム要素の総数を減らすことにより、処理速度の向上が達成
される。同時に、幾何学的構造の自動的な対応付けが、特に対象の空間的に複雑
な構造において改善される。なぜなら、対応付けは、粗い構造から細かい構造へ
と、組織的に構成されているからである。変形場の完全自動計算とともに、医療
技術分野において、さまざまな画像作成方法によるデータについて正確な位置決
定を可能にする発明が、自在に使えるようになる。
【0044】 これは、今まで得られなかった新しい、殊に人間の皮質組織の分析に有効なツ
ールである。このような分析は、先に通常の個体間の変異性に条件付けられた構
造のバリエーションの程度が知られていない限り、不可能である。この対象内部
における構造の幾何学的正常度は、変形場を用いて計算され得る。このためには
、ひとつには、対象個体群の構造を変形場を用いて共通の座標系上に変換するが
、この場合、本方法によって、これらの構造が重なり合う確率の解析が可能にな
る。
【0045】 あるいはまた、対象個体群の変形場からガウシアン・フィールドを計算するこ
ともできる。これをもって、それぞれのボリューム要素について同じ確率密度の
楕円体から計算されるマハナロビスの距離に関するX2乗検定をすることで、対
象の正常度に対する危険率を示すことができる。この分析の実践は、すべてのデ
ータをいわゆる「人間の標準脳」に包括する特別なデータバンクの設立へとつなが
るだろう。
【0046】 個々の解剖学的相違を顧慮しつつ、このデータバンクの助けを借りて、病理学
的変異を量的、質的に把握し、適切に治療することができる。これによって、臨
床的な診断においてアクチュアルな患者のデータもしくは対照対象の正常度の限
界について、信頼性の確認をおこなうことができる。これは、例えば、定位手術
にとって非常に重要な意味を持つ。
【0047】 (発明の実施の形態) 次の図は、本発明をより良く理解するためのものである。さらに詳しい個々の事
象について、以下に詳しく説明する。 図1は、あるひとつのボリューム要素の「真の」軌道における運動、線形の運動
モデルδベクトルuiによる近似の運動、および非線形モデルによる運動を示して
いる(上下に揺れているカーブ)。また、図2は、本発明の実施形態を図式化した
ものである。
【0048】 図3は、様式の異なる画像情報の統合を目的として、MRの連続切片(a)と相当
する組織学的連続切片(b)を結合させるため、変形場を2次元に適用したもので
ある。データ記録時の切断方向が異なり、さらに組織学的な標本作成において不
可避であるアーチファクトにもかかわらず、ボリューム要素について正確な対応
付けが成し遂げられたことが、判別できる。
【0049】 図4は、MR断層撮影法によって撮影された2つの異なった脳(a,b)の結合のた
めに、変形場を2次元に適用したものである。適合前(a)と適合後(c)の両方の脳
の空間的相違が視覚的に捉えられるよう、対照切片(b)の外側の輪郭を(a)と(c)
に重ね合わせてある。
【0050】 図5は、先に図4で示した初期構造を対照構造に変形する変形場(a)を示す。
内部構造についても幾何学的変化が目で見てわかるよう、変形場は一定間隔の格
子に適用してある。この場合、脳の拡張された領域と圧縮された領域がはっきり
と浮かび上がる。その下の図では、x方向(b)とy方向(c)の力が示してある。ここ
では、力の大きさと方向が、グレイスケールの値でコード化してあるが、(b)で
は左向きの力を白(右向きは黒)、(c)では上向きの力を白(下向きは黒)として示
してある。
【0051】 画像の縁のコンスタントなグレイスケールの値は、強さが0のの力をはっきり
と示している。個々の画像上の点において結果として生じる力は、これらの力の
ベクトルの和から構成される。 図6は、さらにもうひとつの適用例である((a)は適合前、(c)は適合後の初期対
象。(b)は対照対象)。ここでは著しい変形が対象の右の領域で生じている(変形
場(d)参照)。
【0052】 図7は、本方法の2つの異なる個体の脳への3次元の適用である。初期状態で
は、著しく異なった表面形態(脳溝パターン)が判別できる。変形後は、両方の脳
のボリューム、殊に脳溝のパターンが同一になっている。3次元の対象の幾何学
的拡張の記録は、図2が示すように、最低ひとつの検出器((1)、例えばコイル、
CCD) が装備されている医学的な画像作成方法(2)を用いることにより行われる。
【0053】 その際に検出された信号はAD変換器(3)に送られ、ボリューム1とボリューム2
のデジタルに変換された信号はメモリー(4a)、(4b)に保持される。画像作成方法
による対象の記録の際は、定位メソッドを用いて、グローバルな相応の位置合わ
せが確かに行われるよう、ボリュームの位置を定めなくてはならない。
【0054】 定位的位置付けが不可能な場合は、位置と方向合わせは、初期対象のアフィン
動作により、グローバルに修正される(5)。この場合アフィン動作は、概して、
定位的固定法によるものよりも高い適合性を保証する。なぜなら、位置と並びさ
らに大きさもまた修正されるからである。
【0055】 次のステップとして、対象は、それぞれのボリューム要素がばねによって隣合
う要素と結びついている弾性のあるマテリアルに変化する(6)。これによって、
ボリュームはボリューム要素から成る格子に変えられる。個々のボリューム要素
は、ある決まったグレイスケールの値からできている。空間の差をなくすため必
要な力は、理論物理学の変分原理(ハミルトンの原理)を適用することにより、そ
れぞれのボリューム要素について双方のボリュームのグレイスケールの値の差か
ら求められる。
【0056】 これは、両方のボリュームにおいて一致する鞍点を定める必要が無いという利
点がある。鞍点を定めるのではなく、初期ボリュームのボリューム要素が、両方
のボリューム間のグレイスケールの値の差が小さくなるよう変位されるのである
。対象が弾性のあるマテリアルに変化する際(6)、一度このプロセスが行われる
が、この場合、結果として生じた個々のボリューム要素の変位は、ばねのシステ
ムから計算される内部の力とグレイスケールの値の差から求められる力が平衡し
たものである。
【0057】 次のステップでは、複数のボリューム要素がひとつの新しいボリューム要素と
してまとめられる(7)。ここでは、ボリューム要素間のばねによる結合が、堅固
な結合に取って代わられ、あたらしいグレイスケールの値は、例えば、ひとつに
まとめられるボリューム要素の平均値から求められる。この手順は、何度も繰り
返され、結果として次第に粗くなるボリュームの階層が生じる。変形場(9)は、
まずマルチグリッド法(8)を用いて、最も粗いボリュームについて定められる。
【0058】 変形場(9)の逐次的な適用による全体の運動(10)の計算とマルチグリッド法(8)
を用いて解を求めることで、適合性がさらに向上する。これによって、次第に対
照ボリュームに似てくるボリュームのシーケンスが、この解像度の段階において
対照ボリュームと同一となるまで生じる。結果として生じた変形場は次のより細
かなボリュームに向けて補間される。
【0059】 (8)-(9)-(10)のプロセスは、最終的にオリジナルの解像度に達するまで、それ
ぞれの解像度の段階で繰り返される。ボリューム要素のグローバルな空間の差の
領域への局所的な対応付けは、はじめは粗いボリュームに適用することで成功す
る。したがって、これによって粗い構造の適合が可能になり、さらにこのことで
、より大きな空間的距離を越えた適合が可能になる。
【0060】 これとともに、空間的に複雑な構造の自動的な対応付けも、同時に改良される
。なぜなら、対応付けは、対応する対照ボリュームとの完全な一致が成し遂げら
れる最終的な状態にいたるまで、粗い構造から細かい構造へとシステマティック
に構成されているからである。
【0061】 画像作成システム(2)としては、さまざまな装置の使用が可能である。光学顕
微鏡的な情報を持つ組織学的連続画像の記録のための装置とならび、X線コンピ
ュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴断層撮影(MRI)、ファンクショナルMRI(核磁気共
鳴機能画像法、fMRI)、ポジトロン・エミッション断層撮影(PET)あるいはシング
ル・フォトン・エミッションコンピュータ断層撮影(SPECT)による連続画像の巨
視的な情報を利用することも可能である。
【0062】 ここでは、同一の対象における組織学的連続画像とMR連続画像からなる様式の
異なる画像情報の統合に特別な意義がある。なぜなら、組織学的ボリュームが、
本発明によって、対応するMRボリュームと完全に合致した場合には(図3)、MR断
層撮影法の単に巨視的な情報を、光学顕微鏡的な情報で補足することができるか
らである。これによってMR断層撮影の巨視的な解像度が1000倍に改善され、微視
的に定義された解剖学的ゾーンの境界分けが可能になる。
【0063】 本発明は、おのおのの構造について新しく変形場を計算する必要無しに、初期
対象のそれぞれ独立した構造1....Nが、一度計算された変形場を用いることで、
対照に変形されるよう構想したものである。
【0064】 図4から、異なった脳における非常に相違した形態が、本発明によって完全に
自動的に修正できることが、明らかに見て取れる。そのために必要な力は、それ
ぞれのボリューム要素について、ある決まった大きさと方向の力が計算されるこ
とが明確になるよう、図5に示してある。さらに、本発明により、この力が2つ
のコンポーネントから成り立っていることも明らかに見て取れる。
【0065】 この2つとは、初期ボリュームを対照ボリュームの中に押すコンポーネントと
、初期ボリュームを対照ボリュームのなかに引き込むコンポーネントである。こ
れは、両方の対象を重ね合わせて形成された画像上で、x方向とy方向について見
ることができる。
【0066】 図5は、一定間隔の格子に適用して視覚化された変形場を示す。ここでは、大
きく複雑な変形が、対象の内部においても存在すること(図6)が具体的に示され
ている。これは、元は正方形であった桝目が、部分的に著しく膨張あるいは圧縮
されていることではっきりとわかる。 図7は、本発明を3次元で実現したものである。
【図面の簡単な説明】
次の図は、本発明をより良く理解するためのものである。
【図1】 あるひとつのボリューム要素の「真の」軌道における運動、線形の運動モデルδ
ベクトルuiによる近似の運動、および非線形モデルによる運動を示している(上
下に揺れているカーブ)。
【図2】 本発明の実施形態を図式化したものである。
【図3】 様式の異なる画像情報の統合を目的として、MRの連続切片(a)と相当する組織学
的連続切片(b)を結合させるため、変形場を2次元に適用したものである。デー
タ記録時の切断方向が異なり、さらに組織学的な標本作成において不可避である
アーチファクトにもかかわらず、ボリューム要素について正確な対応付けが成し
遂げられたことが、判別できる。
【図4】 MR断層撮影法によって撮影された2つの異なった脳(a,b)の結合のために、変形
場を2次元に適用したものである。適合前(a)と適合後(c)の両方の脳の空間的相
違が視覚的に捉えられるよう、対照切片(b)の外側の輪郭を(a)と(c)に重ね合わ
せてある。
【図5】 先に図4で示した初期構造を対照構造に変形する変形場(a)を示す。内部構造に
ついても幾何学的変化が目で見てわかるよう、変形場は一定間隔の格子に適用し
てある。この場合、脳の拡張された領域と圧縮された領域がはっきりと浮かび上
がる。その下の図では、x方向(b)とy方向(c)の力が示してある。ここでは、力の
大きさと方向が、グレイスケールの値でコード化してあるが、(b)では左向きの
力を白(右向きは黒)、(c)では上向きの力を白(下向きは黒)として示してある。
画像の縁のコンスタントなグレイスケールの値は、強さが0のの力をはっきりと
示している。個々の画像上の点において結果として生じる力は、これらの力のベ
クトルの和から構成される。
【図6】 さらにもうひとつの適用例である((a)は適合前、(c)は適合後の初期対象。(b)は
対照対象)。ここでは著しい変形が対象の右の領域で生じている(変形場(d)参照)
【図7】 本方法の2つの異なる個体の脳への3次元の適用である。初期状態では、著し
く異なった表面形態(脳溝パターン)が判別できる。変形後は、両方の脳のボリュ
ーム、殊に脳溝のパターンが同一になっている。
【手続補正書】特許協力条約第34条補正の翻訳文提出書
【提出日】平成12年6月1日(2000.6.1)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】特許請求の範囲
【補正方法】変更
【補正内容】
【特許請求の範囲】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AL,AU,BA,BB,BG,BR,CA ,CN,CU,CZ,EE,GE,HR,HU,ID, IL,IS,JP,KP,KR,LC,LK,LT,L V,MG,MK,MN,MX,NO,NZ,PL,RO ,SG,SI,SK,SL,TR,TT,UA,US, UZ,VN,YU Fターム(参考) 4C093 CA06 CA29 FD01 FD11 FF22 FF42 FH02 4C096 AB07 AB27 AB41 AD14 DA02 DC23 DC36 DE02 5B057 AA09 BA03 BA05 BA06 CA02 CA08 CA12 CA16 CB02 CB08 CB13 CB16 CB17 CD11 CD14 DA07 DA08 DA16 DA17 DB02 DB05 DB09 DC02 DC08 DC22 DC33 DC36 5L096 DA01 FA25 FA66 FA67 FA69 GA08 GA19 HA04

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 医学的診断、研究、あるいは医療技術のための2次元または
    3次元の空間的相違の数量化と表示のための方法であって、ディジタル画像作成
    方法により検出した、少なくとも1の基準に対する対象物の体積要素の相対位置
    、更には前記基準の全ての体積要素に対する相対位置を、計算し、記憶し、表示
    する方法であって、前記体積要素は、画像作成方法のディジタル化により生成さ
    れたものであり、少なくとも2つの対象からコンピュータ支援システムで検出し
    、前記初期の体積要素から対応する基準体積要素への距離を線形移動モデルで、
    数値マルチグリッド法を適用し、グレイスケール値に基づく力、及び/又はディ
    ジタル化した体積の複数の解像度を用いて、計算することを特徴とする方法。
  2. 【請求項2】 個々のボリューム要素が移動した距離(変形場)が、測定値メ
    モリーに記録されることを特徴とする請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 初期ボリュームの全体あるいは一部のボリューム要素におけ
    る変位が、変形場を用いて行われることを特徴とする請求項1および2記載の方
    法。
  4. 【請求項4】 一定間隔の格子を用いた変形場の視覚化が、視覚化装置(プ
    リンタ、ディスプレイ)に伝達されることを特徴とする請求項1から2のいずれ
    か1項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 初期ボリュームの全体あるいは一部のボリューム要素の変位
    が、視覚化装置(プリンタ、ディスプレイ)に伝達されることを特徴とする請求項
    1から3のいずれか1項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 ひとつの対象個体群における構造の出現率が、変形場を構造
    自体に適用するか、あるいは変形場を使用した確率に適用することにより計算さ
    れることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 【請求項7】 弾性モデルを使用し、且つこの弾性モデルにおいて結果とし
    て求められる変形場が一度計算され、逐次的には計算されないことを特徴とする
    請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 力が初期ボリュームと対照ボリュームの間の対称化されたグ
    レイスケールの値の差から求められることを特徴とする請求項1から7のいずれ
    か1項に記載の方法。
  9. 【請求項9】 力の大きさがまずグレイスケールの値の差の2乗に比例して
    増加し、より大きな差については線形で増加することを特徴とする請求項1から
    7のいずれか1項に記載の方法。
  10. 【請求項10】 マルチグリッド法が、線形化モデルの解を求めるため、修
    正スキーム(CS)あるいはフル近似スキームとして設計されていることを特徴とす
    る請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 弾性モデルあるいは運動モデルへの変換(離散化)を、有限
    差分あるいは有限要素を用いて行うことを特徴とする請求項1から10のいずれ
    か1項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 マルチグリッド法を用いて解を求めることおよび/または
    ボリュームを粗雑化する方法が、複数のプロセッサの同時使用において並列計算
    機上で実行されることを特徴とする請求項1から11のいずれか1項に記載の方
    法。
  13. 【請求項13】 ひとつの、あるいはいくつかの対象のさまざまに異なった
    画像作成様式について変形場が計算されることを特徴とする請求項1から12の
    いずれか1項に記載の方法。
  14. 【請求項14】 最低ひとつの対象が、コンピュータ断層法、および/また
    は磁気共鳴断層撮影法(MRI)、および/またはファンクショナルMRI(核磁気共鳴機
    能画像法)、および/または組織学的連続切片、および/またはポジトロン・エミ
    ッション断層撮影法(PET)、および/またはシングル・フォトン・エミッション・
    コンピュータ断層撮影法(SPECT)、および/または脳磁図計測法(MEG)、および/ま
    たは通常のX線技術、および/または超音波技術を用いて測定および記録されるこ
    とを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
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