JP2002513290A - 修飾されたファイバー蛋白質を有するアデノウイルスによる遺伝子移入 - Google Patents

修飾されたファイバー蛋白質を有するアデノウイルスによる遺伝子移入

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Abstract

(57)【要約】 修飾アデノウイルスを細胞にインビボ又はエキソビボで形質導入する。該アデノウイルスは、修飾される前は第一の血清型である。該修飾アデノウイルスにおいて、ファイバーの少なくとも一部分、特にヘッド部分が第一の血清型のアデノウイルスから除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、特にヘッド部分と置換されている。このような方法は、該第一の血清型のアデノウイルスに抵抗性であるが、第二の血清型アデノウイルスのファイバーのヘッド部分に結合する受容体を有する細胞に形質導入するのに有用である。

Description

【発明の詳細な説明】 修飾されたファイバー蛋白質を有するアデノウイルスによる遺伝子移入技術分野 本発明は、1997年5月8日に出願された出願番号08/852,924の 一部継続出願であり、その全ての内容は本明細書の一部である。 本発明は、遺伝子運搬ビークル(vehicle)として使用され、それによって遺 伝子が細胞内に転移されるようなアデノウイルスに関する。特に、本発明は、修 飾アデノウイルスを使用することによる細胞内への遺伝子の転移(移入)(trans fer)に関する。修飾される前のアデノウイルスは、第一の血清型であり、第−の 血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分 が除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好 ましくはヘッド部分と置換されている。 本発明は、又、所望の血清型のアデノウイルスのファイバー、好ましくはヘッ ド部分の少なくとも一部分を含むように修飾されており、遺伝子運搬又は遺伝子 転移ビークルが該所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの当該部分、好ま しくは当該ヘッド部分に対する受容体に結合するようになっている、該遺伝子運 搬又は遺伝子転移ビークルに関する。このような遺伝子運搬又は遺伝子転移ビー クルは、例えば、所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一部 分、好まし〈はヘッド部分を含むように修飾されている、ウイルス表面蛋白質を 有する、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスである。別の 態 様として、上記遺伝子運搬又は遺伝子転移ビークルは、所望の血清型のアデノウ イルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分が結合されてい るプラスミドのような、非ウイルス性遺伝子運搬又は遺伝子転移ビークルであり 得る。一具体例として、遺伝子運搬又は遺伝子転移ビークルは発現ビークルを包 摂したプロテオリポソームであり、該プロテオリポソームは所望の血清型のアデ ノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分を有する。 本発明は、更に、少なくとも一つの外来性DNA配列を含む血清型3のアデノ ウイルスに関し、又、血清型3のアデノウイルスのファイバーのヘッド部分に結 合する受容体を有する細胞を血清型3のアデノウイルスのファイバーのヘッド部 分を有する遺伝子転移ビークルと接触させることによって、該細胞内にポリヌク レオチドを移入させることに関する。 本明細書中で使用される「遺伝子転移ビークル」という用語は、細胞にポリヌ クレオチド(DNA又はRNA)配列を運搬することの出来るいかなる構築物を も意味する。このような遺伝子転移ビークルには、非限定的に、アデノウイルス 、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスのようなウイルス、 プラスミド、細胞内に転移されるポリヌクレオチド配列を包摂したプロテオリポ ソーム、並びに、付着融合性性(fusogenic)ポリマー層内、又は内部付着融合性 性ポリマー層と外部親水性ポリマー層の間に含まれるポリヌクレオチドを有する 「合成ウイルス」及び「合成ベクター」等が含まれる。 本明細書中で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチ ド及びデオキシリボヌクレオチドを含むヌクレオチドの任意の長さのポリマー形 態を意味する。このような用語には、一本鎖又は二重鎖RNAを含み、更に、メ チル化又はキャップ化ポリヌクレオチドのよ うな修飾ポリヌクレオチドも含まれる。背景技術 アデノウイルスゲノムは、約36キロベース塩基対の直鎖状、二重鎖のDNA 分子である。ウイルスゲノムの各末端には、ウイルス複製に必要な、逆方向末端 反復配列(ITR)として知られている短い配列が存在する。アデノウイルスは 分子遺伝学的に充分特徴付けがなされているので、遺伝子導入の為に有利なベク ターである。アデノウイルスの遺伝子構成に関する知識がある為に、ウイルスD NAの大きな断片を外来性配列と置換することが可能である。更に、組換えアデ ノウイルスは構造的に安定していて、大量に複製した後でも再構成した(rearran ged)ウイルスは観察されない。 従って、アデノウイルスは所望の遺伝子を真核細胞内に導入する為の運搬ビー クルとして使用することが出来る。アデノウイルスによる運搬は細胞受容体と結 合することによってこのような遺伝子を真核細胞に運搬する。アデノウイルスフ ァイバー蛋白質はこのような付着に係わる(Philipson,et al.,J.Virol.,Vol .2,pgs.1064-1075(1968))。ファイバー蛋白質には、テール部分(tail portio n)、シャフト部分(shaft portion)、及び、推定受容体結合領域を含む球状ヘッ ド部分(globular head portion)を有する。ファイバースパイクはホモトリマー であり、一つのビリオン当り12個のスパイクがある。 感受性細胞においては、アデノウイルスによる細胞侵入経路は、二つの別個の 細胞表面現象から成る効率的な過程である(Wickham,et al.,Cell,Vol.73,pg s.309-319(1993))。第一に、アデノウイルスキャプ シドファイバー蛋白質と未同定細胞表面受容体との間の高親和性相互作用によっ て、アデノウイルス粒子が細胞表面に付着する。引き続いて、ペントンが共受容 体として機能する細胞表面インテグリン、αvβ3及びαvβ5と会合してウイ ルスの内部侵入(internalization)を可能にする(Wickham,(1993))。天然のアデ ノウイルス粒子及び発現されたファイバー蛋白質とを使用した競合試験によって 、少なくとも二つの異なるアデノウイルスファイバー受容体が存在することが証 明され、これらの受容体は亜属Bアデノウイルス(アデノウイルス3)及び亜属 Cアデノウイルス(アデノウイルス5)と反応する(Defer,et al.,J.Virol.,Vol.6 4,pgs.3661-3673(1990);Mathias,et al.,J.Virol.,Vol.68,pgs.6811-6814(1994) ;Stevenson,et al.,J.Virol.,Vol.69,pgs.2850-2857(1995))。アデノウイルス3 とアデノウイルス5は異なるファイバー結合受容体を利用しているが、αvイン テグリンはこれら両血清型の細胞内への侵入を強化する(Marthias,1994)。この ことは、結合及び侵入の段階は関連していない事象であり、様々な細胞表面分子 へのファイバー付着によって生産的な侵入が可能になるということを示唆してい る。その他のアデノウイルス血清型に対する別の受容体も存在すると思われるが 、未だ証明されていない。 ヒト亜属Cアデノウイルス(アデノウイルス血清型5)は、多くの非分裂細胞 に容易に形質導入できる効率的な運搬ビークルである。アデノウイルスは広範囲 な細胞、並びに、肺、肝臓、内皮細胞、及び筋肉等の組織に感染する(Trapnell ,et al.,Curr .Opinion Biotech.,Vol.5,pgs.617-625(1994))。高い力価 の精製アデノウイルスベクターストックを調製することが出来、これによってイ ンビボでの投与をすることが出来る。肝臓形質導入の為の静注運搬及び肺に対す る遺伝子移入のための気管内 点滴を含むインビボ投与の様々な経路が研究されてきた。アデノウイルスベクタ ー系がより広範囲に使用されるに従って、ある細胞型は組換えアデノウイルス感 染に対して抵抗性があることが明らかになってきた。ファイバー結合受容体、及 びαvβ3又はαvβ5インテグリンの両者は、標的細胞への高効率な感染にと って重要である。遺伝子移入を阻止することにおける組換え可溶性ファイバーの 効率によって示されるように、ファイバーが介在する付着が効率的な形質導入に 必要である(Goldman et al,J .Virol.Vol.69,pgs.5951-5958(1995))。ファ イバー受容体を欠いた細胞の形質導入はかなり低い効率で起こり、投入するベク ターの量を多くする必要がある(Freimuth ert al.,J .Virol.Vol.70,pgs.40 81-4085(1996);Haung,etal.,J .Virol.,Vol.70,pgs.4502-4508(1996))。 ファイバーに関係ない形質導入はペントン基アルギニン−グリシン−アスパラギ ン酸、即ち、RGD配列が細胞表面のインテグリンに直接結合することによって 起こるものと考えられる。RGD:インテグリン経路を阻害することによって、 遺伝子移入効率が数分の一に低下するが(Freimuth,1996;Haung,1996)、ファイ バー受容体相互作用を阻害した場合に較べて不完全であり、ファイバー受容体相 互作用の方がより重要であることが示唆される。 低レベルの遺伝子移入は、標的細胞における侵入過程の成分の一つが欠けてい ることが原因と考えられる。例えば、ヒト肺上皮細胞への不充分な遺伝子移入は avb5インテグリンが欠失していることによる(Goldman,1995)。血管内皮細 胞及び平滑筋細胞のようなその他の細胞型は、アデノウイルス5受容体が低レベ ルであるためにファイバー依存性形質導入が欠如していることが確認されている (Wickham,et al.,J .Virol.,Vol.70,pgs.6831-6838(1996))。アデノウイ ルスベクターの 標的細胞への効率的な形質導入を増強する又は可能にする為に、幾つかの試みが 成されてきた。これらの戦略には、ペントン基を変更して、特異的細胞表面イン テグリンを選択的に標的とすること(Wickman,et al.,Gene Ther.,Vol.2,pg s.750-756(1995);Wickman,et al.,J .Virol.,Vol.70,pgs.6831-838(1996) )及びファイバー蛋白質を適当なリガンドで修飾して結合を変えること(Michael ,et al.,Gene Ther.,Vol.2,pgs.660-668(1995);Stevenson,1995)がある。発明の開示 本発明は、アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、特にヘッド部 分が除去され、新規な受容体特異性を有するファイバー部分、特にヘッド部分と 置換されているアデノウイルスによる細胞への形質導入に係る。細胞受容体に対 する組換えアデノウイルス3とアデノウイルス5のファイバー蛋白質の結合は以 前に研究され、ファイバー蛋白質の受容体特異性はこれら二つのファイバー蛋白 質間のヘッド領域を交換することによって変更出来ることが示された(Stevenson ,1995)。即ち、本発明は、修飾される前のアデノウイルスは第一の血清型であ り、該アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分 が除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分と置 換されているキメラファイバーを有する修飾アデノウイルスによる細胞への形質 導入に係る。本発明者は、このようなアデノウイルスは、異なるファイバー結合 受容体を利用しているが、第二の血清型アデノウイルスに対する受容体を有する 細胞に結合し、しかも、修飾アデノウイルスのファイバーのヘッド領域の第二の 血清型アデノウイルスに対する 受容体への結合を介して修飾アデノウイルスにより結合していることを見出した 。 本発明は、又、所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一 部分、好ましくはヘッド部分を含む、アデノウイルス以外の遺伝子運搬又は遺伝 子転移ビークルに係る。このような遺伝子転移ビークルは所望の血清型のアデノ ウイルスのファイバーに結合する受容体を有する細胞にポリヌクレオチドを運搬 するのに有用である。本発明の遺伝子転移ビークルには、非限定的に、レトロウ イルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、所望の血清型のアデノウイル スのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分が化学的に結合され ているプラスミド、及び細胞内に運搬されるポリヌクレオチドを包摂する(encap sulating)プロテオリポソームが含まれる。 更に、もう一つの別の態様として、本発明は、少なくとも一つの外来性DNA 配列を有するアデノウイルス血清型3のアデノウイルスに係る。 更に別の態様として、本発明は、アデノウイルス3に対する受容体を有する細 胞にアデノウイルス3のファイバーの少な〈とも一部分、好ましくはヘッド部分 を有する遺伝子運搬ビークルを接触させることにより、このような細胞内へポリ ヌクレオチドを移入させることに係る。図面の簡単な説明 本発明を以下の図面に関して記載する。 図1は、野生型ファイバーAv1LacZ4、及びキメラファイバーAv9L acZ4アデノウイルスベクターのゲノム分析を示す。図1Aは、各ベクターの 構成図上での、ScaI(S),DraI(D),Ec oRI(E),及びBamHI(B)制限エンドヌクレアーゼ部位を示す。予想さ れるDraI及びScaI制限断片、及びAv1LacZ4及びAv9LacZ 4の予想サイズが強調されている。各ベクターよりDNAを単離し、示されてい る制限エンドヌクレアーゼで消化し、そして標準操作によるサザンブロット分析 を実施した。図1Bは、0.8%アガロースゲルに適用し、エチジウムブロマイ ドで染色して各DNA断片を視覚化した、消化DNA試料(0.4μg)を示し ている。λDNA/HindIII及びφX174RFDNA/HaeIIIのDNA サイズマーカーの組み合わせ(M)が示されている。野生型ファイバーAv1L acZ4ベクターは、レーン1,ScaI(S);レーン2,DraI(D);及び レーン3,EcoRI(E)及びBamHI(B)で消化されている。キメラフ ァイバーAv9LacZ4アデノウイルスベクターは、レーン4,ScaI(S) ;レーン5,DraI(D);及びレーン6,EcoRI(E)及びBamHI( B)で消化されている。図1Cは、ゼータプローブ(Zetaprobe)膜に写し取り、 約1x106cpm/mlの[32P]標識化500bpアデノウイルス3ファイ バーヘッドドメインプローブとハイブリダイズさせ、12時間感光してフィルム とした、図1Bに示された消化DNA断片である。アデノウイルス3ファイバー ヘッドプローブとハイブリダイズしたAv9LacZ4由来と予想される断片が 示されている。 図2は、アデノウイルスキャプシド蛋白質のウエスタンイムノブロット分析を 示す。Av1LacZ4(レーン1及び4)及びAv9LacZ4ベクター(レ ーン2及び5)に対する等しい数のアデノウイルス粒子、又は完全長のアデノウ イルス3ファイバー蛋白質を有するコントロ ールウイルス(レーン3及び6)を4/15%SDS PAGE及び変性条件下 でのウエスタンブロット分析にかけた。(A)1レーン当り2x1010のアデノウ イルス粒子を適用し、膜を抗ファイバーモノクローナル抗体、4D2−5及び抗 マウスIgG−HRPO結合二次抗体を用いて化学発光により発色させた。(B )1レーン当り6x1010のアデノウイルス粒子を適用し、膜をウサギ抗アデノ ウイルス3ファイバー特異的ポリクローナル抗体及びロバ抗ウサギIgG−HR PO結合二次抗体を用いて化学発光により発色させた。分子量マーカーの位置を 示した。 図3A及び図3Bは、競合ウイルス形質導入アッセイの結果を示すグラフであ る。Hela細胞の単層を、漸増する濃度の精製アデノウイルス5ファイバート リマー蛋白質(5F,図3A)、又は、アデノウイルス3ファイバー蛋白質を有す る昆虫細胞溶解物(3F/CL,図3B)と共にインキュベートし、その後、各 細胞一個当り全100粒子の各Av1LacZ4(白丸)、又はAv9LacZ4 (黒丸)アデノウイルスベクターで形質導入した。実施例1に記載されているよ うに、24時間後、細胞をβ−ガラクトシダーゼ発現に関して分析した。各競合 濃度におけるアデノウイルスによる形質導入のパーセンテージをプロットした。 各プロットは、代表的な実験に対して独立した3回の測定の平均±標準偏差であ る。 図4(A,B)は、ヒト細胞系のアデノウイルスによる形質導入特性の差異を 示す。Hela(図4A及び4B)、MRC−5(図4C及び4D)、及びFaDu (図4E及び4F)細胞を、各細胞一個当り全1,000粒子の各Av1Lac Z4(図4A,4C,4E)、又はAv9La cZ4(図4B,4D,4F)ベクターで形質導入した。実施例1に記載されて いるように、24時間後、細胞をβ−ガラクトシダーゼ発現に関して分析した。 各競合濃度におけるアデノウイルスによる形質導入のパーセンテージをプロット した。代表的な光学顕微鏡写真を示す。 図5A、図5B、及び図5Cは、Hela、MRC−5、及びFaDuヒト細 胞系へのアデノウイルス媒介形質導入を示すグラフである。示された細胞は各細 胞一個当り全0、10、100、及び1000粒子の各Av1LacZ4(白丸) 、又はAv9LacZ4(黒丸)ベクターを用いて、全0.2mlの培養液中で 37℃にて1時間で形質導入した。24時間後に細胞を固定し、X−ガルで実施 例1のように染色した。高倍率視野(high power field)当たりの形質導入細胞の パーセンテージを各ベクター投与につき求めた。各値は独立した3回の測定の平 均パーセント形質導入±標準偏差であり、各ベクター投与は三重に実施した。各 ベクター投与におけるHela(図5A)、MRC−5(図5B)、及びFaDu( 図5C)細胞のパーセント形質導入が表示されている。 図6A及び図6Bは、各Av1LacZ4(白丸)、又はAv9LacZ4(黒 丸)ベクターで感染させた各細胞系に対するパーセント形質導入効率が、細胞当 たり100(図6A)粒子、及び1000(図6B)粒子の各ベクター投与につ き表示されている。各値は独立した3回の測定の平均±標準偏差である。細胞系 は、Hela:ヒト子宮腫瘍細胞、HDF:ヒト二倍体繊維芽細胞、THP−1 :ヒト単球、MRC−5:ヒト胎児性肺二倍体繊維芽細胞、FaDu:ヒト扁平 上皮腫瘍細胞、HUVEC:ヒト臍帯静脈内皮細胞、及びHCAEC:ヒト冠状 動脈内皮 細胞である。 図7は、細胞当たり10,000粒子までの量の各Av1LacZ4又はAv 9LacZ4で形質導入した初代ヒト大動脈平滑筋細胞のパーセンテージを示す グラフである。 図8は、細胞当たり1,000粒子までの量の各Av1LacZ4又はAv9 LacZ4で形質導入したヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)パーセンテージ 、細胞当たり1,000又は5,000粒子までの量の各Av1LacZ4又は Av9LacZ4で形質導入したブタ大動脈平滑筋細胞(PASMC)パーセン テージ、及び、細胞当たり1,000粒子までの量の各Av1LacZ4又はA v9LacZ4で形質導入したラット大動脈平滑筋細胞(RASMC)パーセン テージを示すグラフである。 図9は、ヒト扁平上皮腫瘍細胞系のアデノウイルスによる形質導入特性の差異 を示す。JSQ−3(パネルA及びパネルB)、Hep−2(パネルC及びパネル D)、及びSCC9(パネルE及びパネルF)細胞を、各細胞一個当り全1,0 00粒子の各Av1LacZ4(パネルA,C,及びE)、又はAv9LacZ4 (パネルB,D,及びF)ベクターで形質導入した。実施例8に記載されている ように、24時間後、細胞をβ−ガラクトシダーゼ発現に関して分析した。代表 的な光学顕微鏡写真を示す。 図10は、形質導入に対する投与量の影響を示す。JSQ−3(パネ ルA)、Hep−2(パネルB)、及びSCC9(パネルC)ヒト細胞系を漸増す る投与量の各Av1LacZ4(白丸)、又はAv9LacZ4(黒丸)に、全0 .2mlの培養液中で37℃にて1時間暴露した。24時間後に細胞を固定し、 X−ガルで実施例8のように染色した。 高倍率視野(high power field)当たりの形質導入細胞のパーセンテージを各ベク ター投与につき求めた。各値は独立した3回の測定の平均パーセント形質導入± 標準偏差であり、各ベクター投与は三重に実施した。 図11は、ヒト扁平上皮腫瘍細胞系のアデノウイルスによる形質導入特性の差 異を示す。各Av1LacZ4(白四角)又はAv9LacZ4(黒四角)で感 染した各細胞系に対する形質導入効率のパーセンテージが、細胞当たり1,00 0粒子について示されている。各値は独立した3回ないし6回の測定の平均パー セント形質導入±標準偏差(sd)である。発明の詳細な説明 本発明の一態様によれば、少なくとも一種のDNA配列を細胞内に導入する (transferring)方法が提供される。該方法は、細胞を少なくとも一種のDNA配 列を有する修飾アデノウイルスで形質導入することから成る。修飾される前のア デノウイルスは、第一の血清型である。修飾アデノウイルスにおいては、該アデ ノウイルスのファイバーの少なくとも一部分が除去され、第二の血清型のアデノ ウイルスのファイバーの少なくとも一部分で置換されている。細胞は、第二の血 清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分に結合する受容体を有し ている。 少なくとも一種のDNA配列の細胞内への導入は、修飾アデノウイルスが細胞に 結合することを介して達成される。 上記のように、アデノウイルスファイバー蛋白質は、ヘッド部分、シャフト部 分及びテール部分を有する。本発明の一具体例では、第一の血清型のアデノウイ ルスのファイバーのヘッド部分の少なくとも一部分が除去され、第二の血清型ア デノウイルスのヘッド部分の少なくとも一部分と置換されている。好適な具体例 によれば、第一の血清型のアデノウイルスのファイバーのヘッド部分の全体が除 去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーのヘッド部分と置換されてい る。 一具体例においては、第一血清型と第二血清型とは、異なる亜属からのもので ある。一般的に、ヒトアデノウイルス血清型は亜属Aから亜属Fに分類される。 このような亜属については、Bailey,et al.,Virology,Vol.205,pgs.438-452(19 94)に詳しく記載されており、その内容は本明細書に参照として含まれている。 亜属Aには、アデノウイルス12、アデノウイルス18、及びアデノウイルス3 1が含まれる。亜属Bには、アデノウイルス3、アデノウイルス7、アデノウイ ルス34、及びアデノウイルス35が含まれる。亜属Cには、アデノウイルス1 、アデノウイルス2、アデノウイルス5、及びアデノウイルス6が含まれる。亜 属Dには、アデノウイルス9、アデノウイルス10、アデノウイルス15、及び アデノウイルス19が含まれる。亜属Eには、アデノウイルス4が含まれる。亜 属Fには、アデノウイルス40及びアデノウイルス41が含まれる。一具体例と して、第一の血清型のアデノウイルスは亜属C内の血清型のアデノウイルスであ り、第二の血清型のアデノウイルスは亜属A,B,D,E及びF内の一つに属す るものである。別の具体例では、第二の血清型のアデノウイルスは亜属Bに属す るものである。更に別の 具体例では、第一の血清型のアデノウイルスはアデノウイルス5であり、第二の 血清型のアデノウイルスはアデノウイルス3である。即ち、このような具体例に おいては、アデノウイルス5のファイバーのアミノ酸残基404から581(即 ち、ファイバーヘッド部分)が除去され、アデノウイルス3のファイバーのアミ ノ酸残基136から319(即ち、ファイバーヘッド部分)と置換されている。 アデノウイルス5のファイバー蛋白質をコードするDNAはGenbank受託 番号No.M18369(参照として本明細書の一部を成す)として、アデノウ イルス3のファイバー蛋白質をコードするDNAはGenbank受託番号No .M12411(参照として本明細書の一部を成す)として登録されている。 修飾アデノウイルスによって形質導入される細胞は、第二の血清型アデノウイ ルスのファイバー蛋白質の一部分、特に、ファイバー蛋白質のヘッド部分と結合 する受容体を有する細胞である。修飾アデノウイルスがアデノウイルス3のファ イバーヘッド部分を有するアデノウイルス5血清型のアデノウイルスである場合 には、このような修飾アデノウイルスによって形質導入される細胞には、非限定 的に、例えば、肺上皮細胞及び肺癌細胞のような肺細胞;単球、マクロファージ のような造血細胞を含む血液細胞;リンパ腫細胞;急性骨髄白血病細胞及び急性 リンパ球白血病細胞を含む白血病細胞;例えば、血管及び消化系の平滑筋細胞を 含む平滑筋細胞;及び、例えば、頭部及び首癌細胞、並びに神経芽細胞腫のよう な癌細胞がある。 このようなアデノウイルスは、ファイバーの少なくとも一部分をコードするD NAが除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分 をコードするDNAと置換されているような第一の血 清型のアデノウイルスベクターから構築することが出来る。 一般的に、かかるアデノウイルスは更に、細胞内に移入すべき少なくとも一種 のDNA配列を含む。この少なくとも一種のDNA配列は外来性DNA配列であ り得、特に、治療剤をコードする外来性DNA配列であり得る。この「治療剤」 という用語は、包括的な意味で使用され、狭義の治療剤、予防剤及び置換剤を包 含するものである。 治療剤をコードするDNA配列としては、非限定的に、TNF−αのような腫 瘍壊死因子(TNF)遺伝子、インターフェロン−α、−β及び−γのようなイ ンターフェロン類をコードする遺伝子、IL−1,IL−1β、IL−2からI L−14までのようなインターロイキン類をコードする遺伝子、G−CSF,G M−CSF,TGF−α,TGF−β及び繊維芽増殖因子をコードする遺伝子、 オルニチントランスカルバミアーゼ(OTC)をコードする遺伝子、アデノシン デアミナーゼ(ADA)をコードする遺伝子、リンパ球に対する増殖因子である リンホカイン類のような細胞増殖因子をコードする遺伝子、上皮細胞増殖因子( EGF)、血管内皮増殖因子(VEGF)、及びケラチン細胞増殖因子(KGF) をコードする遺伝子、可溶性CD4をコードする遺伝子、ファクターVIIIをコー ドする遺伝子、ファクターIXをコードする遺伝子、チトクロムbをコードする遺 伝子、グルコセレブロシダーゼをコードする遺伝子、T細胞受容体をコードする 遺伝子、LDL受容体、ApoE,ApoC,ApoAI及びコレステロール輸 送及び代謝に関するその他の遺伝子、α−1アンチトリプシン(α1AT)遺伝 子、B7.1のような共刺激抗原(co-stimulatory antigen)をコードする遺伝子 、リンフォタクチンのような走化性物質をコードする遺伝子、嚢胞性繊維症性膜 貫通調節(CFTR)遺伝子、インシュリン遺伝子、ヒポキサチン フォスフォリボシルトランスフェラーゼ遺伝子、例えば、ヘルペス単純ウイルス チミジンキナーゼ遺伝子、サイトメガロウイルスチミジンキナーゼ遺伝子、及び 水痘ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子のようなウイルスチミジンキナーゼ遺伝子 のような「自殺」遺伝子又は負選択マーカー、抗体の抗原結合ドメインに対するF c受容体をコードする遺伝子、肝炎B,又は非A非B肝炎ウイルスの複製を阻害 するアンチセンス配列のようなウイルス複製を阻害するアンチセンス配列、アン チセンスC−mybオリゴヌクレオチド、例えば、マンガンスーパーオキシドジ スムターゼ(Mn−SOD)、カタラーゼ、銅亜鉛スーパーオキシドジスムターゼ (CuZn−SOD)、細胞外スーパーオキシドジスムターゼ(EC−SOD)及 びグルタチオンレダクターゼのような抗酸化剤遺伝子、組織プラスミノーゲンア クチベーター(tpA)、尿プラスミノーゲンアクチベーター(ウロキナーゼ)、ヒ ルディン、及びフェニルアラニンヒドロキシラーゼ遺伝子、酸化窒素合成酵素、 血管作用性ペプチド、血管形成性(Angiogenic peptides)、ドーパミン遺伝子、 ジストロフィン遺伝子、βグロビン遺伝子、αグロビン遺伝子、HbA遺伝子、 ras,src及びbc1遺伝子のようなガン遺伝子(protooncogenes)、p53 及びRbのようなガン抑制遺伝子、例えば、内皮単球活性化ポリペプチド−2( EMAP−2)のような抗血管形成性因子をコードする遺伝子、乳ガン、卵巣ガ ン、消化器ガン、及び子宮ガンを治療する為のヘレグリン−α蛋白質遺伝子、例 えば、p21遺伝子のような細胞周期調節因子遺伝子、サイクリンG1及びD1 遺伝子に対するアンチセンスポリヌクレオチド、内皮酸化窒素合成酵素(ENO S)遺伝子、T細胞抗原受容体のβ鎖内に含まれるエピトープに特異的なモノク ローナル抗体、多剤耐性(MDR)遺伝子、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR) 遺伝子、リボザイムを コードするDNA配列、アンチセンスポリヌクレオチド、血管平滑筋カルシウム チャンネル又はアドレナリン受容体又はアンジオテンシン変換酵素に対する拮抗 阻害剤として機能する分泌ペプチドをコードする遺伝子、並びに、中枢神経系の アミロイドプラークを破壊する酵素等をコードするDNA配列を挙げることが出 来る。 しかしながら、本発明の範囲は、如何なる特定の治療剤に限定されるものでは ないことを理解されたい。 治療剤をコードするDNA配列は、ゲノムDNA又はcDNA配列であり得る 。更に、該DNA配列は天然のDNA配列、又はその対立変異体であっても良い 。「対立変異体」という用語は、本明細書中において、一つ以上のヌクレオチド の置換、欠失、又は付加が天然DNA配列にあり、それによってコードされるポ リペプチド又はその断片又は誘導体の機能が実質的に変化しないような、該天然 DNA配列の変異形態を意昧する。一具体例では、DNA配列は更に、リーダー 配列又はその一部分、分泌シグナル又はその一部分、及び/又はトレーラー(tra iler)配列又はその一部分を含むことが出来る。 少なくとも一つの治療剤をコードするDNA配列は適当なプロモーターの調節 下にある。適当なプロモーターとしては、非限定的に、アデノウイルス主要後期 プロモーターのようなアデノウイルスプロモーター、サイトメガロウイルス(C MV)プロモーターのような外来性プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV )プロモーター、MMTプロモーター及びメタロチオネインプロモーターのよう な誘導性プロモーター、熱ショックプロモーター、アルブミンプロモーター、及 びApoAIプロモーターを挙げることが出来る。しかしながら、本発明の範囲 は、如何なる特定の外来性遺伝子又はプロモーターに限定されるものではないこ とを理解されたい。 本発明で使用するアデノウイルスベクターの一具体例としては、本質的に完全 なアデノウイルスゲノムを含むアデノウイルスベクターを挙げることができる(S henk et al.,Curr .Top.Microbiol.Immunol.,111(3):1-39(1984))。別の態 様として、アデノウイルスゲノムの少なくとも一部分を決失した修飾アデノウイ ルスベクターを使用することができる。 好適な具体例として、アデノウイルスベクターには、アデノウイルス5’IT R,アデノウイルス3’ITR,アデノウイルスキャプシド化シグナル、治療剤 をコードするDNA配列、及び該治療剤をコードするDNA配列を調節するプロ モーターが含まれる。該ベクターでは、アデノウイルスE1及びE3DNA配列 の少なくとも主要部が欠如しているが、アデノウイルスE2及びE4DNA配列 の全部、及びアデノウイルス主要後期プロモーターに制御されるアデノウイルス 蛋白質をコードするDNA配列が欠如しているわけではない。 別の態様のベクターでは、E2及びE4DNA配列から成る群から選択される 少なくとも1つのDNA配列の少なくとも一部も欠如している。 別の態様では、アデノウイルスE1及びE3DNA配列の少なくとも主要部が 欠如しており、且つ、E2及びE4DNA配列の少なくとも一部も欠如している 。 更に別の態様のベクターでは、72キロダルトンの結合蛋白質をコードするE 2a領域の遺伝子が変異を受け、ウイルス粒子が形成される温度である32℃で 活性化されるような温度感受性蛋白質を生産するようになっている。この温度感 受性変異はEnsinger et al.,J .Virology,10:328-339(1972),Van der Vliet et al.,J .Virology,15:348-354 (1975),Friefeld et al.,J .Virology,124:380-389(1983)に記載されてい る。 好適具体例におけるこのようなベクターは、標準的な技術によって、最初に、 5’側から、アデノウイルス5’ITR、アデノウイルスキャプシド化シグナル 、及びE1aエンハンサー配列を含む「必須左末端要素」、プロモーター(アデノ ウイルスプロモーター又は外来性プロモーター)、複数クローニング部位(本明細 書に記載されたようなもの)、ポリAシグナル、及びアデノウイルスゲノムのセ グメントに対応するDNAセグメントを含有するシャトルベクターを構築するこ とにより作成される。このベクターには、更に、三つの部分から成る(tripartit e)リーダー配列が含まれていてもよい。アデノウイルスゲノムのセグメントに対 応するDNAセグメントは修飾又は突然変異アデノウイルスとの相同的組換えに おける基質として機能し、このような配列は、例えば、ゲノムの3329番目の 塩基から6246番目の塩基より長くない、アデノウイルス5ゲノムのセグメン トである。該ベクターには、更に、選択マーカー及び複製基点が含まれることが ある。複製基点は細菌由来の複製基点で有り得る。このようなシャトルベクター の代表例としては、PCT出願(WO94/23582(1994年10月27日 公開)、及びWO95/09654(1995年4月13日公開))並びに米国特 許第5,543,328号(1996年8月6日付与)に記載されているpAv S6を挙げることが出来る。治療剤をコードするDNA配列を複数クローニング 部位に挿入し、プラスミドベクターを調製することが出来る。 こうして得られる構築物は、アデノウイルスベクターを製造するのに使用され る。相同的組換えは、E1及びE3アデノウイルスDNA配列の少なくとも主要 部が除去された、修飾又は変異アデノウイルスを用い て行われる。このような相同的組換えは、上記プラスミドベクター及び修飾又は 変異アデノウイルスを、例えば、293細胞のようなヘルパー細胞系にリン酸カ ルシウム沈殿によってコトランスフェクションすることで実施することが出来る 。このような相同的組換えによって、NotI部位と相同的組換え断片との間に シャトルベクター由来のDNA配列を含み、相同的組換え断片と3’ITRとの 間にE1及びE3が除去されたアデノウイルス由来のDNA配列を含む、組換え ベクターが形成される。 一具体例において、相同的組換え断片は、アデノウイルス5(ATCC VR− 5)ゲノムの3329番目から6246番目のヌクレオチドと重複している。 このような相同的組換えによって、アデノウイルス5’ITR,アデノウイル スキャプシド化シグナル、E1aエンハンサー配列、プロモーター、治療剤をコ ードするDNA配列、ポリAシグナル、E1及びE3DNA配列の少なくとも主 要部が欠如しているアデノウイルスDNA、及びアデノウイルス3’ITRを含 むベクターが作成される。更に、三つの部分から成るリーダー配列が含まれてい てもよい。このベクターは、293ヘルパー細胞系(ATCCNo.CRL15 73)のような、ウイルス複製にとって必須のE1a及びE1bDNA配列を有 するヘルパー細胞系(セルライン)内にトランスフェクションされ、アデノウイ ルス粒子を生産する。トランスフェクションは、エレクトロポラレーション、リ ン酸カルシウム沈殿、微小注射又はプロテオリポソームによって行うことが出来 る。 別の態様のベクターでは、アデノウイルスE1及びE4の各DNA配列の全部 又は少なくとも一部が欠如しているか、又は、アデノウイルス E1及びE2の各DNA配列の全部又は少なくとも一部が欠如しているか、又は 、アデノウイルスE1、E2及びE4の各DNA配列の全部又は少なくとも一部 が欠如している。 このようなベクターは修飾又は非修飾ウイルスゲノム又はプラスミドと、アデ ノウイルス5(ATCCNo.VR−5)又は変異若しくは欠失を含むアデノウ イルス5由来ウイルスのような直鎖状ウイルスゲノムから直接得られる断片との 組み合わせからの直接のインビトロ結合によっても組み立てることが出来る。 別の態様では、ベクターは、所望の修飾がなされたアデノウイルスゲノム(例 えば、アデノウイルス5ゲノム又はアデノウイルス5E3突然変異Ad d13 27(Thimmpaya,et al.,Cell,Vol.31,pg.543(1983)))の部分を含むプラスミ ドクローンと、左アデノウイルスITR、E1領域欠如、及び所望のトランス遺 伝子を含む第二のプラスミド(例えば、pAvS6)との間での真核細胞内にお ける相同的組換えによって組み立てることが出来る。別の相同的組換えの方法に よれば、プラスミドクローンと直鎖状アデノウイルス(例えば、アデノウイルス 5、Ad d1327又は変異若しくは欠失を含むアデノウイルス5由来ウイル ス)ゲノムとの間で行われる。 次いで、ベクターは、このウイルスベクターから除去されている必須の遺伝子 の機能を補完することのできるセルライン内にトランスフェクションされ、感染 性ウイルス粒子を生成する。このセルラインは、一般的に、感染可能でアデノウ イルス又はアデノウイルスベクターの増殖を助け、グルココルチコイドホルモン の存在下で連続的なウイルス生産が可能であり、グルココルチコイドホルモンに 対して応答可能(即ち、グルココルチコイドホルモン受容体を発現することので きるセルライン) であるようなセルラインである。必須アデノウイルス遺伝子でトランスフェクシ ョンすることが可能で、感染性アデノウイルス粒子を生成する為に用いることの できるセルラインとしては、非制限的ではあるが、A549,KB,Hep−2 が挙げられる。 或種のウイルス遺伝子が発現すると細胞毒となり得るので、E2a,E2b及 び/又はE4領域、並びにE1領域が誘導性プロモーターの調節下に入れること ができる。このような誘導性プロモーターとしては、非限定的ではあるが、マウ ス乳腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター(Archer,et al.,Science,Vol.25 5,pgs.1573-1576(March 20,1992)、合成最小グルココルチコイド応答要素プ ロモーターGRE5(Mader,et al.,Proc .Natl.Acad.Sci.,Vol.90,pgs.56 03-5607(June 1993),又はテトラサイクリン応答性プロモーター(Gossen,et al .,Proc.Natl .Acad.Sci.,Vol.89,pgs.5547-5551(June 1992)を挙げること ができる。もう一つの態様では、E1領域は誘導性プロモーターの調節下にあり 、E2a,E2b及び/又はE4領域は天然プロモーターの調節下にある。この ような場合には、天然プロモーターはE1領域の発現によってトランス活性化さ れる。 一具体例では、セルラインは、アデノウイルスE4全領域をその天然プロモー ターとともに含み、かつ、転写調節の為に、例えば、ホルモン誘導性プロモータ ーであるマウス乳腫瘍ウイルス(MMV)プロモーター又はグルココルチコイド 応答要素(GRE)を含むプロモーターのような、制御可能な又は誘導性のプロ モーターの調節下のE1a領域又は全E1領域(E1a及びE1b領域を含む) を含む。また別の態様では、E4DNA配列もMMVプロモーターのような制御 可能プロモーターから発現される。E1及びE4DNA配列は一つの発現ビーク ルに含まれ るか、又は、別個の発現ビークルに含まれている。好ましくは、発現ビークルは プラスミドベクターであって、セルラインのゲノムに組み込まれている。 アデノウイルスのE1及びE4の各DNA配列の全て又は一部が欠如している ベクター、アデノウイルスのE1及びE2の各DNA配列の全て又は一部が欠如 しているベクター、又はアデノウイルスのE1、E2及びE4の各DNA配列の 全て又は一部が欠如しているベクター、並びに補完細胞系(complementing cell lines)は、PCT出願(WO96/18418、1996年6月20日公開)に 記載されており、その内容は本明細書に参照として含まれる。 上記のようなアデノウイルスベクターが作成された後に、ファイバー蛋白質の 少なくとも一部分をコードするDNAが除去され、修飾されるアデノウイルスの 血清型とは異なる血清型を有するアデノウイルスのファイバー蛋白質の少なくと も一部分をコードするDNAと置換されているように、このようなベクターのゲ ノムが修飾される。このような修飾は、当業者には公知の遺伝子工学的手法によ って実施することができる。 アデノウイルスベクターのゲノムの修飾後に、該ベクターは適当な細胞系内に トランスフェクションされて、ファイバー蛋白質の少なくとも一部分、特にヘッ ド部分が変更され、修飾されるアデノウイルスの血清型とは異なる血清型を有す るアデノウイルスのファイバー蛋白質の少なくとも一部分を特にヘッド部分有す るようになった感染性のアデノウイルス粒子が生成される。 別の態様としては、修飾されたファイバー蛋白質をコードするDNA配列は、 上記のようなアデノウイルスシャトルプラスミド内に置かれる。このシャトルプ ラスミドには治療剤をコードする少なくとも一種のDN A配列も含まれる。シャトルプラスミドは、ファイバー蛋白質をコードするDN A配列が欠如したアデノウイルスゲノムと共に適当な細胞系内にトランスフェク ションされ、感染性ウイルス粒子を生成する。 もう一つの別の態様では、第一のシャトルプラスミドには治療剤をコードする 少なくとも一種のDNA配列が含まれる。第二のシャトルプラスミドには修飾さ れたファイバー蛋白質をコードするDNA配列が含まれる。第一のシャトルプラ スミドは適当な細胞系内にコトランスフェクションされ、少なくとも一種のDN A配列を有する感染性ウイルス粒子が生産される。修飾されたファイバー蛋白質 をコードするDNA配列が含まれる第二のシャトルプラスミドは、少なくとも一 種のDNA配列を有するアデノウイルスと共に適当な細胞系内にコトランスフェ クションされ、相同組換えによって、修飾されたファイバー及び治療剤をコード する少なくとも一種のDNA配列を有する感染性ウイルス粒子が生産される。 更にもう一つの別の態様では、治療剤をコードする少なくとも一種のDNA配 列を有する第一の血清型のアデノウイルスベクターと修飾ファイバーをコードす るDNA配列を有するシャトルプラスミドとの間の相同組換えによって修飾アデ ノウイルスを構築する。 本発明の修飾アデノウイルスは、インビボ、エキソビボ、又はインビトロで細 胞を形質導入する為に使用される。インビボで投与される際には、本発明のアデ ノウイルスは宿主における治療効果を奏する上に有効な量で投与される。 一具体例では、修飾アデノウイルスベクターは、1プラーク形成単位(Plaque forming unit)から1014プラーク形成単位、好ましくは、106プラーク形成単 位から1013プラーク形成単位の量を投与する。宿 主はヒト又はヒト以外の霊長類を含む哺乳動物であり得る。 修飾アデノウイルスは、患者に投与するのに適当な、例えば、生理溶液のよう な液体、硫酸プロタミン(Elkins-Sinn,Inc.,Cherry Hill,N.J.)、又はポリブ レン(Sigma Chemical)のような薬学的に許容し得るキャリアと組合わせて投与す ることが出来る。 修飾アデノウイルスによって形質導入される細胞は、第二の血清型アデノウイ ルスに対する受容体を有する細胞であり、第二の血清型アデノウイルスのファイ バー部分、特に、修飾アデノウイルスに含まれるヘッド部分と第二の血清型アデ ノウイルスに対する該受容体が結合する。 一具体例として、第一の血清型アデノウイルスがアデノウイルス5であり、こ のアデノウイルスが、そのアデノウイルス5のファイバーの少な<とも一部分、 特にヘッド部分が除去され、アデノウイルス3のファイバーの少なくとも一部分 、特にヘッド部分で置換されているように修飾されている場合には、形質導入さ れる細胞には、非限定的に、例えば、肺上皮細胞のような正常肺細胞、肺繊維芽 細胞、及び肺癌細胞のような肺細胞;単球、マクロファージのような造血細胞を 含む血液細胞;リンパ腫細胞;急性骨髄白血病細胞及び急性リンパ球白血病細胞 を含む白血病細胞;例えば、血管及び消化系の平滑筋細胞を含む平滑筋細胞;及 び、例えば、頭部及び首癌細胞、肺癌細胞、並びに神経芽細胞腫のような癌細胞 がある。 このように、アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分を有するアデノウイ ルス5血清型の修飾アデノウイルスは、肺の病気又は疾患(例えば、嚢胞性繊維 症、肺サーファクタント蛋白質欠損状態、又は肺気腫)の治療に使用することが 出来る。修飾アデノウイルスは、例えば、エアゾル吸引、又は気管支点滴、又は 経鼻又は経気管点滴で投与が行われ る。 例えば、修飾アデノウイルスベクターは肺細胞を感染させるのに使用され、こ のような修飾アデノウイルスには嚢胞性線維症の治療に有効なCFTR遺伝子が 含まれている。別の態様では、修飾アデノウイルスには、SP−A,SP−B, 又はSP−Cのような肺サーファクタント蛋白質をコードする遺伝子を含み、そ れによって該修飾アデノウイルスベクターは肺サーファクタント蛋白質欠損症の 治療に使用される。更に別の態様として、修飾アデノウイルスには、α−1−ア ンチトリプシンをコードする遺伝子が含まれており、それによって該修飾アデノ ウイルスベクターはα−1−アンチトリプシン欠損症の結果引き起こされる肺気 腫の治療に使用される。 別の態様では、修飾アデノウイルスは、化学治療を受けている癌患者の造血幹 細胞に感染させる為に使用され、このような細胞を化学治療剤の副作用から保護 する。このような細胞は、インビボで修飾アデノウイルスにより形質導入される か、又は、患者から取られ、エキソビボで修飾アデノウイルスにより形質導入さ れ、その後戻される血液試料又は骨髄試料から得られる。例えば、多剤耐性(M DR)遺伝子、又はジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)遺伝子を含有する本発明 の修飾アデノウイルスをインビボ又はエキソビボで造血幹細胞に形質導入するこ とが出来る。このような形質追導入された造血幹細胞は化学治療剤に対して耐性 となり、形質導入された造血幹細胞はこのような化学治療剤による治療を受けて いる癌患者の中で生存することが出来る。 更に別の具体例では、本発明の修飾アデノウイルスは、頭部又は首の癌、神経 芽細胞腫、肺癌、及びリンパ腫のような腫瘍の治療に使用される。 例えば、修飾アデノウイルスは単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(TK )のような負の選択マーカー又は「自殺」遺伝子と呼ばれるものを含む。このよ うなベクターは、例えば、腫瘍又はリンパ腫に修飾アデノウイルスを直接注射し 、該腫瘍又はリンパ腫にアデノウイルスベクターが形質導入されることによって 、患者に投与することから成る、頭部又は首の癌、神経芽細胞腫、肺癌、及びリ ンパ腫のような腫瘍の治療に使用される。別の方法として、頭部及び首の癌、又 は神経腫瘍の治療に使用される場合、修飾アデノウイルスを頭部及び首の癌、又 は神経芽細胞腫に近隣部位に位置する血管に投与し、それによって、修飾アデノ ウイルスが該頭部及び首の癌、又は神経芽細胞腫まで移動し、それらに形質導入 される。該腫瘍細胞又はリンパ腫に修飾アデノウイルスが形質導入された後、例 えば、ガンシクロビルのような相互作用薬剤又はプロドラッグを患者に投与し、 これによって形質導入された細胞を殺す。 更に別の具体例では、本発明の修飾アデノウイルスは、急性骨髄白血病細胞及 び急性リンパ球白血病細胞を含む白血病細胞の治療に使用される。例えば、修飾 アデノウイルスは上記のような負の選択マーカー又は「自殺」遺伝子と呼ばれる ものを含む。このような修飾アデノウイルスは、例えば、静脈経由、又は、骨髄 に投与され、白血病細胞にアデノウイルスベクターが形質導入される。該白血病 細胞に修飾アデノウイルスが形質導入された後、例えば、上記相互作用薬剤又は プロドラッグを患者に投与し、これによって形質導入された細胞を殺す。 別の具体例として、急性骨髄白血病細胞及び急性リンパ球白血病細胞を含む白 血病細胞、又は神経芽細胞腫は、白血病細胞、又は神経芽細胞腫に対する免疫応 答を惹起するポリペプチドをコードするDNA配列を含む修飾アデノウイルスに よって治療することも出来る。このようなポ リペプチドには、非限定的に、インターロイキン−2のような免疫刺激性サイト カイニン、B7.1のような共刺激性抗原(co-stimulatory antigen)及びリンフ ォタクチンのような化学走化性薬剤が含まれる。神経芽細胞腫の治療に使用され た場合に、修飾アデノウイルスは直接に該神経芽細胞腫に投与されるか、及び/ 又は血管経由で投与され、それによって修飾アデノウイルスが神経芽細胞腫に形 質導入される。 形質導入された白血病細胞又は神経芽細胞腫は、該白血病細胞又は神経芽細胞 腫に対する免疫応答を惹起するポリペプチドを発現し、それによって、該白血病 細胞又は神経芽細胞腫の増殖を阻止し、予防し、破壊する。 更に別の具体例では、修飾アデノウイルスは、再発狭窄症(restenosis)を予防 するか又は治療し、若しくは、侵入性(invasive)血管操作後の血管障害の予防又 は治療に使用すること出来る。本明細書中で使用する「侵入性(invasive)血管操 作」という用語は、非限定的に動脈及び静脈を含む血管系の一部分の修復、除去 、置換、及び/又は再構成(例えば、バイパス又はシャント)を意味する。この ような操作には、非限定的に、血管形成(angioplasty)、動脈移植のような血管 移植、血栓の除去、動脈又は静脈の除去、及び冠状動脈バイパス手術が含まれる 。例えば、修飾アデノウイルスには、p21遺伝子のような細胞周期調節因子、 ヒルディン、内皮酸化窒素合成酵素(ENOS)、例えば、サクリンG1及びD1 のエピトープを認識する抗体のような、サクリンG1及びD1に対するアンタゴ ニストをコードするDNA配列が含まれる。又は、修飾アデノウイルスには、サ イクリンG1及びD1に対する遺伝子に対するアンチセンスポリヌクレオチドが 含まれるか、又は、上記のような負の選択マーカー又は「自殺」遺伝子と呼ばれ るものを含まれる。修飾アデノウ イルスは血管障害又は侵入性(invasive)血管操作の近隣部位に血管内経由で投与 され、それによって、修飾アデノウイルスが血管の平滑筋細胞に形質導入される 。形質導入された細胞は治療剤を発現し、再発狭窄症又は血管障害を予防するか 又は治療する。このような血管障害の再発狭窄症には、非限定的に、冠状動脈、 頚動脈、股動脈、又は腎動脈の血管障害又は再発狭窄症、及び腎臓透析ろう管(f istulas)が含まれる。 一具体例として、血管障害又は再発狭窄症が平滑筋細胞の増殖と関連する場合 には、修飾アデノウイルスには、上記のような負の選択マーカーをコードする遺 伝子又は「自殺」遺伝子と呼ばれるものが含まれる。該平滑筋細胞に修飾アデノ ウイルスが形質導入された後、上記のような相互作用薬剤又はプロドラッグを患 者に投与し、これによって血管障害又は再発狭窄症の部位で形質導入された平滑 筋細胞を殺し、血管障害又は再発狭窄症を治療する。 別の具体例では、治療剤をコードする少なくとも一つのDNA配列を有する修 飾アデノウイルスは動物に投与され、こうして得られる動物を病気、又は疾患及 びそれらの治療について研究の為のモデルとして使用する。例えば、治療剤をコ ードするDNA配列を有する本発明の修飾アデノウイルスは、このような薬剤が 欠如した動物に与えることが出来る。このような治療剤をコードするDNA配列 を有する修飾アデノウイルスの投与後に、この治療剤の発現に関して該動物は評 価される。このような研究の結果から、治療剤の欠如に関連する病気又は疾患の 治療に、こうしたアデノウイルスをヒト患者にどのように投与したら良いかにつ いて決定することが出来る。 本発明の範囲としては更に、所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少 なくとも一部分、好ましくはヘッド部分の少なくとも一部分、 より好ましくは全ヘッド部分がアデノウイルス以外の遺伝子運搬又は遺伝子転移 ビークルに含まれることである。このような遺伝子運搬又は遺伝子転移ビークル には、非限定的に、レトロウイルス、アデノ随伴ウイルス、及びヘルペス単純ウ イルス等のヘルペスウイルス等のウイルスベクター;並びに、プラスミドベクタ ー、遺伝性物質を包摂したプロテオリポソーム、「合成ウイルス」及び「合成ベ クター」等が含まれる。 ウイルスベクターを使用する場合には、レトロウイルスのエンベロープ、アデ ノ随伴ウイルスのネークド(naked)蛋白質被覆、又はヘルペスウイルスのエンベ ロープのようなウイルス表面蛋白質が、所望の血清型のアデノウイルスの少なく とも一部分、好ましくはヘッド部分の少なくとも一部分、より好ましくは全ヘッ ド部分を含むように修飾されていて、該ウイルスベクターを用いて該所望の血清 型のアデノウイルスのファイバーのヘッド部分に結合する受容体を有する細胞を 形質導入することが出来る。例えば、細胞内に転移すべきポリヌクレオチド(D NA又はRNA)配列を含むウイルスベクターは、アデノウイルス3のファイバ ーのヘッド部分を含むように修飾されたウイルス表面蛋白質を有している。この ようなウイルスベクターは、当業者に公知の遺伝子工学的手法に従って構築する ことが出来る。次いで、該ウイルスベクターを、上記のようなアデノウイルス3 のファイバーのヘッド部分に結合する受容体を有する細胞に形質導入し、上記の ような病気又は疾患を治療することが出来る。 別の具体例として、遺伝子運搬ビークルは、所望の血清型のアデノウイルスの ファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分の少なくとも一部分、よ り好ましくは全ヘッド部分が結合しているプラスミドである。この所望の血清型 のアデノウイルスのファイバーの少なくとも 一部分は細胞内に転移すべきポリヌクレオチド配列を含むプラスミドベクターに 直接結合することが出来、又は、この所望の血清型のアデノウイルスのファイバ ーの少なくとも一部分は、例えば、ポリエチレンイミン、ポリリジン複合体、又 はデンドリマーポリマーのような直鎖又は分岐状陽イオン性ポリマーのようなリ ンカー部分によってプラスミドベクターに結合することも出来る。該プラスミド ベクターは該所望の血清型のアデノウイルスのファイバーのヘッド部分に結合す る受容体を有する細胞を形質導入することが出来る。例えば、プラスミドベクタ ーは直接、又はリンカー部分を介してアデノウイルス3のファイバーのヘッド部 分に付着することが出来る。該プラスミドベクターは、アデノウイルス3のファ イバーのヘッド部分と結合する受容体を有する細胞に形質導入することが出来る 。 別の具体例として、細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを、所望の血清型の アデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくはヘッド部分の少な くとも一部分、より好ましくは全ヘッド部分を有するプロテオリポソーム内に包 摂することが出来る。該細胞内に転移すべきポリヌクレオチドは裸の(単独の)ポ リヌクレオチド配列か、又は、プラスミドベクターのような適当な発現ビークル 内に含有されていてもよい。プロテオリポソームは当業者には公知の方法で調製 することが出来る。細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを包摂するプロテオリ ポソームを使用して、該所望の血清型のアデノウイルスのファイバーのヘッド部 分に結合する受容体を有する細胞に該細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを運 搬することが出来る。例えば、プロテオリポソームはその壁の中にアデノウイル ス3のファイバーのヘッド部分を有し、このようなプロテオリポソームは、上記 のようなアデノウイルス3のファイバーのヘッ ド部分と結合する受容体を有する細胞と接触させることが出来る。該プロテオリ ポソームが細胞に結合した後に、リポソームに含まれるポリヌクレオチドが該細 胞内に移入される。 更に別の具体例として、細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを「合成ウイル ス」の一部とすることも出来る。このような合成ウイルスにおいて、該ポリヌク レオチドはpH感受性膜不安定化ポリマーの内部付着融合性(fusogenic)層内に 含まれる。この合成ウイルスには切断可能な親水性ポリマーの外部層も含まれる 。所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分、好ましくは ヘッド部分の少なくとも一部分、より好ましくは全ヘッド部分を切断可能な親水 性ポリマーの外部層に結合する。細胞内に転移すべきポリヌクレオチドは裸の( 単独の)ポリヌクレオチド配列か、又は、プラスミドベクターのような適当な発 現ビークル内に含有されていてもよい。合成ウイルスを使用して、該所望の血清 型のアデノウイルスのファイバーのヘッド部分に結合する受容体を有する細胞に 該細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを運搬することが出来る。例えば、合成 ウイルスは切断可能な親水性ポリマーの外部層に結合するアデノウイルス3のフ ァイバーのヘッド部分を有する。このような合成ウイルスは、上記のようなアデ ノウイルス3のファイバーのヘッド部分と結合する受容体を有する細胞と接触さ せることが出来る。該合成ウイルスが細胞に結合した後に、合成ウイルスに含ま れるポリヌクレオチドが該細胞内に移入される。 更に別の具体例として、細胞内に転移すべきポリヌクレオチドを「合成ベクタ ー」の一部とすることも出来る。このような合成ベクターにおいて、該ポリヌク レオチドはpH感受性膜不安定化ポリマーの付着融合性層内に含まれる。所望の 血清型のアデノウイルスのファイバーの少な くとも一部分、好ましくはヘッド部分の少なくとも一部分、より好ましくは全ヘ ッド部分をpH感受性膜不安定化ポリマーの付着融合性層に結合する。このよう な合成ベクターは、特にエキソビボ又はインビトロでポリヌクレオチドを細胞に 運搬することに有用である。例えば、合成ベクターはpH感受性膜不安定化ポリ マーの付着融合性層に結合するアデノウイルス3のファイバーのヘッド部分を有 する。このような合成ベクターは、上記のようなアデノウイルス3のファイバー のヘッド部分と結合する受容体を有する細胞と接触させることが出来る。該合成 ベクターが細胞に結合した後に、合成ベクターに含まれるポリヌクレオチドが該 細胞内に移入される。 本発明の更に態様によれば、少なくとも一種の外来性DNA配列を有するアデ ノウイルス3血清型のアデノウイルスベクターが提供される。この少なくとも一 種の外来性DNA配列は上記したものの中から選択することが出来る。このよう なアデノウイルスベクターは、インビボ、エキソビボ、又はインビトロで、例え ば、アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分と結合する受容体を有する、上 記のような細胞に形質導入する際に使用することが出来る。該ベクターは上記の ような投与量で投与することが出来る。該ベクターは、上記のような薬学的に許 容し得るキャリアと組み合わせて投与することが出来る。このようにしてベクタ ーは上記したような病気又は疾患の治療に使用することが出来る。しかしながら 、本態様の範囲は、如何なる特定の細胞型、又は特定の病気若しくは疾患の治療 に限定されるものではないものと理解されたい。 又、本発明の別の態様によれば、アデノウイルス3のファイバーの少なくとも 一部分、好ましくはヘッド部分の少なくとも一部分、より好ましくは全ヘッド部 分を含む遺伝子運搬ビークルを細胞と接触させること によって、少なくとも一種のポリヌクレオチドを該細胞内に移入する方法が提供 される。このような細胞はアデノウイルス3のファイバーの少なくとも一部分と 結合する受容体を有する。少なくとも一種のポリヌクレオチドの該細胞内への移 入は、該遺伝子運搬ビークルが細胞と結合することによって行われる。このよう な遺伝子運搬ビークルには、非限定的に、アデノウイルス、レトロウイルス、ア デノ随伴ウイルス、ヘルペス単純ウイルスのようなヘルペスウイルス、及び、細 胞内に移入すべき少なくとも一種のポリヌクレオチドを包摂したプロテオリポソ ームがある。この少なくとも一種のポリヌクレオチドは、少なくとも一種の上記 のよな治療剤をコードする。実施例 本発明を以下の実施例に関して説明する。しかしながら、かかる実施例によっ て本発明の範囲は制限されるものではない。実施例1 材料及び方法 組換えファイバープラスミド アデノウイルス5に基づくアデノウイルスベクターの右側末端(right hand en d)における相同組換え用にシャトルベクターを構築した。このシャトルベクター プラスミド(「プレパック(prepac)」と呼ぶ)は、pBluescript SKII(+)(S tragene)にクローニングされているAdd1327(Thimmapaya,Cell,Vol.31 ,pg.543(1983))の25171bpから34057bpまでの最後の8886b pゲノムを含み、Dr. Soumitra Roy,Genetic Therapy,Inc.,Gaithersberg,Marylandの好意により 提供された。プレパック内に含まれる野生型アデノウイルス5ファイバーcDN Aを、Horton,et al.,Biotechniues,Vol.8,pgs.528-535(1990)に記載さ れているように、PCR遺伝子オーバーラップ伸長を用いて5TS3HacDN Aと置換した。Stevenson,et al.,J .Virol.,Vol.69,pgs.2850-2857(1995 )に記載されているように、5TS3Haはアデノウイルス5ファイバーのテー ル及びシャフトドメイン(5TS;アミノ酸1から403)とアデノウイルス3 ファイバーのヘッド領域(3H;アミノ酸136から319)が融合して含まれ るものである。5TS3Haは野生型5FcDNAの天然3’下流配列を有する ように修飾された。更に、アデノウイルス3ファイバーのヘッド領域の最後の二 つのコドンである「GAC TGA」を野生型5Fコドン配列である「GAA TAA」に相当するように変異させてアデノウイルス5ファイバーの停止コドン 及びポリアデニル化シグナルを維持するようにした。アデノウイルス5ファイバ ー3’下流配列を、鋳型としてpgem5TS3Hプラスミド(Stevenson,1995 )を、そして以下のプライマー: 及び、を使用して、5TS3HacDNAに付加した。オーバーラッピング相同配列は 、以下のプライマー: 及び、 を使用して、プレパックに付加した。予想したサイズの増幅産物が得られ、ゲル 精製した。エンドプライマーP1及びP4を使用して第二のPCR反応を実施し 、これら二つの断片を結合した。第二のPCR反応によって得られた断片は、野 生型5Fコドン配列に変異された最後の二つのコドン及び適当な3’下流プレパ ック配列を有する5TS3HacDNAを含んでいる。5TS3HaPCR断片 をNdeI及びSse8387で消化し、直接プレパック内にクローニングして ファイバーシャトルプラスミドである、prep5TS3Haを作成した。組換えアデノウイルスの作成 修飾5TS3HaファイバーcDNAを、E1及びE3を欠如しβ−ガラクト シダーゼをコードするアデノウイルスベクターAv1LacZ4(PCT出願No .WO95/09654、1995年4月13日公開)のゲノム内に、Av1LacZ4と 5TS3Haファイバーシヤトルプラスミドとの間の相同組換えによって導入し 、キメラファイバーアデノウイルスベクターである、Av9LacZ4を作成し た。ヒト胎児性腎臓細胞293(ATCC CCL-1573)をアメリカンタイプカルチャー コレクション(Rockville.MD)から入手して、10%熱不活性化FBS(HIF BS)を含むIMEM培地で培養した。10μgのNotI消化prep5TS 3Ha及び1.5μgのSrfI消化Av1LacZ4ゲノムDN Aをリン酸カルシウム哺乳動物トランスフェクション系(Promega Corporation, Madison,WI)を使用して293細胞にトランスフェクションした。293細胞は リン酸カルシウムDNA沈殿とともに、37℃で24時間インキュベートした。 沈殿を除去し、単層を生理的リン酸塩緩衝液(PBS)で一回洗浄した。トラン スフェクトされた293細胞単層の上を、7.5%HIFBS、2mMグルタミ ン、50ユニット/mlペニシリン、50μg/ml硫酸ストレプトマイシン、 及び1%アンフオテリシンBを含むMEMの1%シープラークアガロース溶液で 覆った。アデノウイルスプラークを約14日後に単離した。各プラークを展開し 、ゲノムDNAを単離し、キメラファイバー5TS3HacDNAの存在に関し てScaI制限酵素消化を用いてスクリーニングし、プローブとしてAd3ファ イバーヘッド部分を使用したサザンブロット分析により確認した。陽性プラーク は二回のプラーク精製にかけ、元のAv1LacZ4挟雑物を除去した。この二 回のプラーク精製の後、Av9LacZ4ベクターを展開し、CsCl超遠心を 用いる従来技術により精製した。アデノウイルスカ価(粒子/ml)を分光学的 に測定し(Halbert,et al.,J .Virol.,Vol.56,pgs.250-257(1985);Weiden ,et al.,Proc .Natl.Acd.Sci.,Vol.91,pgs.153-157(1994))、Mitterde r,et al.,J .Virol.,Vol.70,pgs.7498-7509(1996)に記載されているように 293細胞単層を使用して測定した生物学的力価(pfu/ml)と比較した。 感染粒子に対する全粒子の割合(粒子/pfu)を計算した。各ベクターからD NAを単離してDraI,ScaI,又はEcoRI及びBamHIで消化し各 ベクターを同定し確認した。Av9LacZ4及び元のAv1LacZ4ベクタ ーの模式図を図1に示した。バキュロウイルス内でのファイバー構築物の発現 既に記載されているように(Stevenson,1995)、バキュロウイルス発現系(Clon tech,Palo Alto,CA)を使用して受容体結合の研究のためのファイバー蛋白質を 製造した。Ad3又はAd5ファイバー蛋白質を発現する組換えバキュロウイル スベクターを使用した。Spodoptera frugiperda細胞(Sf21)を単層で、2 7℃において、10%HIFBS、100ユニット/mlペニシリン、100μ g/ml硫酸ストレプトマイシン、及び2.5μg/mlアンフォテリシンBを 含むグレース(Grace)添加昆虫細胞培地で培養した。各組換えファイバーバキュ ロウイルスによるSf21細胞の大規模な感染を実施し、ファイバー保有細胞溶 解物を調製した(Stevenson,1995)。 Sf21細胞溶解物からアデノウイルス5ファイバーを精製した(Stevenson, 1995)。簡潔に述べると、DEAE−セファロースカラム、及びFPLCシステ ム(Pharmacia)を用いるPBSで平衡化したスーパーロース6ゲルろ過カラムを 使用した二段階の精製操作により、アデノウイルス5ファイバートリマーを均一 物まで精製した。精製したアデノウイルス5ファイバートリマー、及びアデノウ イルス3ファイバー(3F/CL)を有する細胞溶解物の蛋白質濃度は、牛血清 アルブミン(BSA)をアッセイ標準として用いるビシンコニン酸(bicinchonin ic acid)蛋白質アッセイ(Pierce,Rockford,IL)によって測定した。 ファイバー蛋白質の発現は変性条件下のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)− 4/15%ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)、及びウエスタンブロッ トにより確認した。小型のトランスブロット装置(Biorad,Hercles,CA)によ り、100ボルト30分間で蛋白質をポリ ビニリデンジフルオリド(PVDF)膜に移動させた。この移動が完了した後、 PVDF膜をポンシーレッド(Ponceau red)で一時的に染色し、分子量標準を直 接膜上に記した。使用した分子量標準は200から14kDa(Biorad)であった 。PVDF膜上の非特異的蛋白質結合部位は、150mM NaCl,2mM EDTA,0.04% Tween−20を含有する10mMTris,pH7 .4の5%乾燥ミルク溶液を使用して室温下1時間、又は4℃下一晩でブロック した。次いでこの膜を、一次抗アデノウイルス2ファイバーモノクローナル抗体 、4D2−5(Dr.J.Engler,University of Alabamaの好意により提供された 腹水)の1:10,000の希釈溶液、又は、アデノウイルス3ファイバーヘッドドメ インを発現するバキュロウイルスに対して作成された、部分精製の抗アデノウイ ルス3ファイバー特異的ウサギポリクローナル抗体(Stevenson,1995)20μg /mlと共に、室温で1時間インキュベートした。増感化学発光系(Amersham Li fesciences,Arlington,IL)を使用して、二次ヒツジ抗マウスIgG西洋ワサビ ペルオキシダーゼ(HRPO)結合抗体(Amersham Lifesciences,Arlington,I L)の1:10,000の希釈溶液、又は、二次ロバ抗ウサギIgG−HRPO結合抗体 の1:2,000の希釈溶液により膜を発色させた。膜を約3から60秒間フィルムに 感光させた。抗アデノウイルス3ファイバー特異抗血清の生産 既に記載されたバキュロウイルス発現系(Stevenson,1995)を使用して、アデ ノウイルス3ファイバーのヘッド領域を発現させた。標準プロトコール(Lofstra nd Labs Ltd.,Gaithersberg,MD)に従って、ファイバーのヘッド領域を含む昆 虫細胞溶解物を用いてニュージーランド白ウ サギを免疫した。 IgG画分を単離し、昆虫細胞溶解蛋白質を共有結合させたアフィニティカラ ムにかけた。このフィニティカラムに未結合の画分を集め、アデノウイルス5、 アデノウイルス3、及びキメラ5TS3Hファイバー蛋白質に対する免疫反応性 をウェスタンブロット分析によりテストした。競合的ウイルス形質導入アッセイ 組換えアデノウイルスの受容体指向性をファイバー蛋白質競合物の存在下での ウイルス形質導入アッセイで評価した。10%HIFBS、100ユニット/m lペニシリン、及び100μg/ml硫酸ストレプトマイシン添加のDMEMを 含む12ウェル内で培養したHela細胞(ATCC CCL2)の単層を、精製アデノ ウイルス5ファイバートリマー蛋白質(0.05μg/mlから100μg/m l)、又は、アデノウイルス3ファイバーを含む昆虫細胞溶解物(100μg/ mlから2000μg/ml)の各種希釈物とともに、2%HIFBS含有0. 2mlDMEM(全量)で37℃1時間インキュベートした。全量5μlのAv 9LacZ4及び元のAv1LacZ4アデノウイルスベクターを添加し、細胞 一個あたりの全粒子の割合が100となるようにウイルスを2%HIFBS含有 DMEMで希釈した。ウイルスによる形質導入を37℃で1時間実施した。該単 層をPBSで一度洗浄し、10%HIFBS含有DMEM1mlを各ウエルに添 加し、細胞を更に24時間インキュベートし、β−ガラクトシダーゼを発現させ た。細胞の単層をPBS中の0.5%グルタルアルデヒドで固定し、1mg/m lの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−ガラクトシド(X−ガ ル)、5mMフェロシアナイドナトリウム、2mMMgCl2を含むPBS0.5 ml中 でインキュベートした。細胞は、37℃で約24時間染色した。単層をPBSで 洗浄して、高倍率視野当りの青色細胞の平均数をZeissID03顕微鏡を使 用する光学顕微鏡でで計測し、1ウェル当り3から5個の視野を計数した。高倍 率視野当りの青色細胞の平均数を競合的ファイバー蛋白質を含まないコントロー ルに対するパーセンテージで示した。 競合物の各濃度を3重に行い、平均パーセンテージ±標準偏差を、添加した競 合物ファイバー蛋白質の関数として表した。各実験は3回から4回行われ、代表 的な実験からのデータを示した。細胞培養 Av9LacZ4及びAv1LacZ4による形質導入効率をヒト細胞系パネ ルで調査した。Hela,MRC−5(ATCC CCL−171),FaDu( ATCC HTB43)及びTHP−1(ATCC TIB−202)をATCC から入手し、推奨培地で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC,CC− 2517)及び冠状動脈内皮細胞(HCAEC,CC−2585)はClonetics Co rporation(San Diego,CA)から入手し、推奨培地で培養した。細胞1個あたりキ メラファイバーAv9LacZ4又は野生型Av1LacZ4アデノウイルスベ クターの全0,10,100,及び1000粒子を、2%HIFBS含有の全量 0.2mlの培地中で37℃で1時間、各細胞系に形質導入した。細胞単層をP BSで一度洗浄し、10%HIFBS含有の適当な培地1ml中を添加した。T HP−1は2%HIFBS含有の全量0.2mlの培地中で37℃で1時間上記 の各濃度のベクターとインキュベートし、その後、10%HIFBS含有の完全 培地1mlを添加した。これらの細 胞を24時間インキュベートしてβ−ガラクトシダーゼを発現させた。細胞の単 層を上記のように固定して染色した。X−ガル溶液中での各細胞系のインキュベ ーションは、偽感染ウェルに見られたバックグランド染色の量に応じて1.5乃 至24時間の間で変化させた。パーセンテージ形質導入は、高倍率視野における 全細胞一個当りの形質導入された青色細胞数をZeiss ID03顕微鏡によ る光学顕微鏡で1ウェル当り3から5の視野を計測することによって測定した。 各ベクター投与は三重に行い、高倍率視野当りの平均パーセンテージ形質導入( 平均±標準偏差,n=3)を求め、添加ベクターの関数として表示した。各細胞 系を少なくとも3回形質導入し、データは3回の独立した各試験から得られた平 均パーセンテージ形質導入±標準偏差を表している。結果 キメラファイバー遺伝子を含有するアデノウイルスベクターの構築 インビトロで発現されるキメラファイバー蛋白質及び昆虫細胞を使用して、ヘ ッドドメインを別の受容体を認識する別の血清型と交換することによってアデノ ウイルスファイバー蛋白質に特異的な受容体を変更することが以前から示されて いた(Stevenson,1995)。変更された受容体特異性を有するアデノウイルスベク ター粒子を製造するために、アデノウイルス5ファイバーのテール及びシャフト にアデノウイルス3ファイバーのヘッドドメインが融合したキメラファイバー遺 伝子である、5TS3H、をアデノウイルスゲノムであるAv1LacZ4内に 組み込んだ。野生型アデノウイルス5ファイバー遺伝子の正確な置換の為に、ア デノウイルス5ファイバー遺伝子、E4及び右端ITRを含有する73.9から 100マップユニットまでのAd d1327ゲノムの最後の88 86bpを含むシャトルプラスミドが構築された。このシャトルプラスミドは、 E1及びE3を欠如するアデノウイルスベクターAv1LacZ4のバックボー ンに修飾ファイバー遺伝子を相同組換えによって導入するために使用された。こ の戦略は、天然アデノウイルス5のファイバーをプレップ5TS3Haシャトル プラスミド内にクローニングされたキメラ5TS3Hファイバー配列と置換する ことである。得られたベクターであるAv9LacZ4は核標的β−ガラクトシ ダーゼcDNA及びアデノウイルス3ファイバーのヘッドドメインを有する。こ の方法はアデノウイルスゲノムに組み込ませる天然ファイバー配列に対するいか なる修飾をも可能にするものである。 元の(親)Av1LacZ4及びキメラファイバーAv9LacZ4ベクター は図1に模式的に示されている。アデノウイルス3ファイバーのヘッド領域によ ってDraI及びScaI制限酵素部位がAv1LacZ4ゲノム内に追加され 、これら部位が組換えウイルスの特定に使用される。図1Aに示されたような、 予想されるDraI及びScaI診断断片を生じたプラークを選択し、展開した 。精製したキメラファイバーAv9LacZ4及び元の(親)Av1LacZ4 からゲノムDNAを制限酵素及びアガロースゲル電気泳動で分析した(図1B)。 予想されたDNA断片はAv9LacZ4及び野生型Av1LacZ4の両方か ら得られた。Av9LacZ4ゲノムDNAのScaI消化によって18.4及 び3.2kbの診断断片が得られ(図1B、レーン4)、これはアデノウイルス3 ファイバーのヘッド領域の存在を示している。Av9LacZ4のDraI消化 によって8.0及び2.8kbの診断断片が得られ、これによってもアデノウイ ルス3ファイバーのヘッド領域の存在が示された(図1B、レーン5)。EcoR I及びBamHI消化によ って、予想されたような同一の制限酵素パターンが両方のベクターから得られた (図1B、レーン3及び6)。アデノウイルス3ファイバーのヘッドプローブを用 いたサザンブロット分析によって、両ベクターに関して、全ての制限エンドヌク レアーゼ消化に対して予想されたハイブリダイゼーションパターンが示された( 図1C)。Av9LacZ4のScaI消化による18.4及び3.2kbの診 断断片及びDraI消化による8.0及び2.8kbの診断断片はアデノウイル ス3ファイバーのヘッドプローブとハイブリダイズした(図1C、レーン4及び 5)。完全長5TS3Hファイバーヘッド遺伝子が含まれるEcoRI及びBa mHI断片も同様に検出された(図1C、レーン6)。アデノウイルス5ファイバ ーのヘッドプローブを用いたサザンブロット分析(デ−タは示さず)によって、 Av1LacZ4に対する予想されたハイブリダイゼーションパターンが示され 、キメラファイバーAv9LacZ4ウイルス調製物は元のAv1LacZ4を 欠いていることが確認された。キメラファイバー含有アデノウイルス粒子の特徴付け キメラ5TS3Hファイバー蛋白質のアデノウイルス内への組み込み及び発現 に関して、CsCl精製ウイルスストックのウエスタンブロット分析により検討 した。等数のキメラ(Av9LacZ4)及び親(Av1LacZ4)粒子を変性 下での4/15%SDS PAGEにかけた。完全長Ad3ファイバーを含むコ ントロールウイルスも同様に分析した。ウエスタンブロット分析は、モノクロー ナル抗体、4D2−5(図2A)及び抗アデノウイルス3ファイバーヘッドドメ インに特異的なウサギポリクローナル抗体(図2B)を使用して実施した。4D 2−5モノクローナル抗体は、ファイバー蛋白質内のN−末端テールドメイン内 に位置する保存(conservative)エピトープを認識し(Hong,et al.,Embo .J.,V ol.14,pgs.4714-4727(1995))、アデノウイルス3ファイバー蛋白質(3F)及 びアデノウイルス5ファイバー蛋白質(5F)の両方に反応する(Stevenson,19 95)。図2Aに示されているように、Av1LacZ4(レーン1)及びAv9 LacZ4(レーン2)ウイルスは4D2−5と反応する約62から63kDa のファイバー蛋白質を有しており、一方で、アデノウイルス3ファイバーウイル スは約35kDaのファイバー蛋白質を有していた(図2A、レーン3)。キメラ 5TS3Hファイバー蛋白質のアデノウイルス内でのアデノウイルス3ファイバ ーヘッド(3FH)ドメインの存在はアデノウイルス3ファイバーの特異的なウ サギポリクローナル抗体を使用したウエスタンブロット分析により確認された。 ウサギ抗3FHポリクローナル抗体はAv1LacZ4のアデノウイルス5ファ イバー蛋白質とは反応せず、コントロールウイルス(図2A、レーン6)及びA v9LacZ4のキメラ5TS3Hファイバー蛋白質(図2B、レーン5)内に 含まれるアデノウイルス3ファイバー蛋白質である35kDaに特異的であった 。 キメラファイバー(Av9LacZ4)及び親ファイバー(Av1LacZ4 )アデノウイルスの生物学的力価及び粒子数を比較した。293細胞単層を使用 して測定した生物学的力価は、Av1LacZ4及びAv9LacZ4ウイルス 調製物に対して、夫々、2.6及び4.5x1010プラーク形成ユニット(pf u)/mlであった。全粒子数は分光学的に測定し、Av1LacZ4及びAv 9LacZ4ウイルス調製物に対して、夫々、1.45及び1.25x1012粒 子/mlであった。即ち、pfu力価に対する粒子数の割合はどちらのウイルス も類似しており、夫々、55.8対27.8全粒子数/pfuであった。アデノ ウイルス2に較べてアデノウイルス3でこの割合が増加することは報告されてい る(Defer.et al.,J .Virol.,Vol.64,pgs.3661-3673(1990))。しかしながら 、アデノウイルス5ファイバーヘッドドメインをアデノウイルス3ファイバーヘ ッドドメインと置換することによっては、キメラファイバー蛋白質を有するアデ ノウイルスの細胞生産を悪影響を及ぼしたり、全物理的粒子数の感染粒子に対す る割合に顕著な変化を及ぼしたりはしないことが判明した。修飾ファイバーアデノウイルスの受容体結合特異性 天然のアデノウィルス5ファィバーベクターと比較してキメラフィバーベクタ ーの受容体結合特異性を評価するために、組換えファイバー蛋白質競合体の存在 下で形質導入試験を実施した。キメラファイバー又は天然のアデノウイルス5フ ァイバーベクターで形質導入する前に、精製アデノウイルス5ファイバー蛋白質 又はアデノウイルス3ファイバー蛋白質を含有する昆虫細胞溶解物と共に細胞を プレインキュベートした。図3は、Av1LacZ4又はAv9LacZ4He laベクターによる形質導入の前に、Hela細胞をアデノウイルス5ファイバ ー蛋白質(図3A)又はアデノウイルス3ファイバー競合体(図3B)の量を増 加させてインキュベートした形質導入試験の結果を示したものである。Av1L acZ4によるHela細胞への形質導入は、アデノウイルス5ファイバートリ マー蛋白質量の増加に従い減少し、最大競合は0.1及び1.0μg/mlの間 で起こった。対照的に、精製したアデノウイルス5ファイバートリマーはAv9 LacZ4キメラファイバーアデノウイルスによるHela細胞への形質導入を 阻害しなかった。これらの結果から、野生型Av1LacZ4とAv9LacZ 4キメラファイバ ーベクターは異なる細胞表面蛋白質に結合することが確認された。この結論は、 図3Bに示した逆の実験によっても支持された。 アデノウイルス3ファイバー競合体の濃度を増加させると、Av9LacZ4 によるHela細胞への形質導入は減少したが、野生型であるAv1LacZ4 ベクターによるHela細胞への形質導入は影響を受けなかった。アデノウイル ス3ファイバー蛋白質を含まない昆虫細胞溶解物を用いたコントロール実験では 競合は示されなかったので(結果は示さず)、アデノウイルス3ファイバー競合体 とAv9LacZ4との間の競合は特異的である。これらの結果から、Av9L acZ4ベクターによるHela細胞への形質導入はアデノウイルス3受容体と 反応するキメラファイバー蛋白質を介するものであることを示している。即ち、 アデノウイルス5ファイバーヘッドドメインを修飾することによって、アデノウ イルスベクターの受容体指向性を変化させる結果となったのである。キメラファイバーベクターによるヒト細胞系の形質導入 アデノウイルス5及びアデノウイルス3受容体は未だ同定されていないので、 細胞分布に関して利用できる情報は比較的少ない。様々なヒト細胞におけるアデ ノウイルス5及びアデノウイルス3受容体の異なる発現は、親Av1LacZ4 とAv9LacZ4キメラファイバーベクターによる形質導入における差異に反 映されているのかも知れない。この二つのベクターによる多数のヒト細胞系の形 質導入特性が調査された。幾つかの細胞系はアデノウイルス5ファイバーアデノ ウイルス受容体結合に関して陰性であるか(Haung,et al.,J .Virol.,Vol.70 ,pgs.4502-4508(1996);Stevenson,1995)、又は、Av1LacZ4感 染に抵抗性(refractory)である(未発)ことが確認された。細胞は、キメラファ イバーであるAv9LacZ4、又は野生型であるAv1LacZ4アデノウイ ルスにより、0,10,100,及び1000の細胞一個当り粒子割合で、全量 0.2mlの培地中で感染させ、24時間後に上記のように細胞をX−ガルで染 色した。図4は、Hela細胞(図4A及び4B)、ヒト胎児性肺繊維芽細胞系で あるMRC−5(図4C及び4D)、及びヒト扁平上皮細胞がんであるFaDu( 図4E及び4F)の単層を、細胞一個当り100ウイルス粒子のAv1LacZ 4及びAv9LacZ4で形質導入した代表的な写真である。Hela細胞はど ちらのベクターによっても似たような効率で形質導入された。対照的に、MRC −5及びFaDuでは異なる形質導入が観察された。これらの両細胞ともAv1 LacZ4形質導入に対して比較的抵抗性があるが、Av9LacZ4によって 容易に形質導入された。 各細胞系のパーセント形質導入を定量し、形質導入したHela細胞、MRC −5及びFaDu細胞の割合を投与量の関数として示した(図5)。Hela細胞 (図5A)にベクターによる形質導入に対して同程度に感受性があり、アデノウ イルス5及びアデノウイルス3受容体が細胞表面に存在していることを示してい る。ヒト胎児性肺繊維芽細胞系であるMRC−5(図5B)はキメラファイバー Av9LacZ4により効率的に形質導入された。Av9LacZ4によるパー セント形質導入は用量依存的であり、ベクター投与が1000のときに約80% の形質導入であった。Av1LacZ4によるMRC−5の形質導入効率は低い ことが観察され、これらから、この細胞はアデノウイルス5ファイバー受容体の 発現レベルが低いか又は欠いていることが示唆された。対照的に、この型の細胞 にはアデノウイルス3ファイバー受容体は豊富に存在する ようである。FaDu細胞単層(図5C)も又、Av9LacZ4でより効率的 に形質導入され、ベクター投与が1000のときに75%の形質導入であるのに 対しAv1LacZ4では同じベクター投与量でわずか7%の形質導入しか達成 されなかった。 更に、Av9LacZ4及びAv1LacZ4を用いて多くのヒト細胞系の形 質導入が比較された。図6は、細胞一個当り100個(図6A)及び1000個 (図6B)のウイルス粒子の割合での各細胞系のデータをまとめたものである。 上記のHela細胞、MRC−5及びFaDu細胞以外に検討した細胞は、HD F(ヒト二倍体繊維芽細胞)、THP−1(ヒト単球)、HUVEC(ヒト臍帯静脈 内皮細胞)、及びHCAEC(ヒト冠状動脈内皮細胞)である。これらの細胞は 細胞一個当り100個及び1000個のウイルス粒子の割合でAv9LacZ4 又はAv1LacZ4を用いて24時間感染し、その後に上記のようにX−ガル で染色した。それぞれのベクター投与量における各細胞系の形質導入細胞の割合 を測定した。既に示したように、Hela細胞はこれらの両ベクターによって同 等のレベルで形質導入され、一方で、HDF細胞はAv1LacZ4およびAv 9LacZ4による形質導入に抵抗性があった。HDF細胞はアデノウイルス5 ファイバー結合に陰性であり、この細胞はアデノウイルス5ファイバー受容体の 発現レベルが低いか又は欠いていることが示されている(Stevenson,1995)。H DF細胞に関して図6に示された形質導入のデータは、この細胞がアデノウイル ス3ファイバー受容体についても、その発現レベルが低いか又は欠いていること を示している。 この分析によって、親Av1LacZ4及びキメラファイバーAv9LacZ 4ベクターによる形質導入に差異のある幾つかのヒト細胞系が 同定された。MRC−5、FaDu及びTHP−1細胞はアデノウイルス3ファ イバーヘッドを有する組換えベクターにより用量依存的に感染され(図6A及び 6B)、これら細胞型にはアデノウイルス3受容体がアデノウイルス5受容体よ りも豊富に存在していることを示唆している。細胞一個当り1000個のウイル ス粒子の割合で野生型Av1LacZ4により約45%のHCAECが形質導入 され、一方、キメラファイバーAv9LacZ4ベクターでは僅か7.3%しか 形質導入されなかった。HUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)は両方のベクター により同程度に形質導入された。Av1LacZ4及びAv9LacZ4による 形質導入における動脈内皮及び静脈内皮細胞の差異は、血管細胞の異なる領域由 来の細胞上のアデノウイルス3及びアデノウイルス5受容体の発現の差異を明ら かにした。これらの全てデータによって、潜在的な臨床上の関連性のある標的組 織由来のヒト細胞系上のアデノウイルス3及びアデノウイルス5受容体の発現の 違いが示された。議論 遺伝子治療研究における主な目的は、インビボにおける効率的なターゲット遺 伝子移入及び発現を達成することが可能であるベクター及び運搬システムの開発 である。治療遺伝子発現の為に適当な型の細胞への遺伝子移入の効率性及び特異 性を最大にし、且つ、毒性又は望ましくない副作用を生じる可能性のある体内の 他の細胞又は部位への遺伝子の移入を最小にするベクターが必要とされている。 インビボ遺伝子移入への応用に関して現在研究されているウイルスベクターの中 で、アデノウイルス系はかなり有望であり、動物モデル及び肺疾患及び癌におけ る初期臨床において多数の評価を受けてきた。アデノウイルスベクターの重要な 特徴は、形質導入の効率性とその結果インビボで達成される高レベルの遺伝子発 現である。これは、精製ウイルスベクターの高力価ストックを調製することが可 能であること、及び、遺伝子発現に至るアデノウイルス侵入プロセスにおける各 段階における顕著な効率性に由来するものである(Greber,et al.,Cell,Vol.7 5,pgs.477-486(1993))。アデノウイルス粒子の細胞への付着は、ファイバー蛋 白質と細胞受容体との間の高アフィニティ相互作用によって媒介される(Phillip son,et al.,J .Virol.,Vol.2,pgs.1064-1075(1968))。結合に続いて、多数 の細胞型へのビリオンの侵入は、ペプトン基のRGDペプチド配列と共受容体と して機能するαvb3及びαvb5インテグリンとの間の相互作用によって促進 される(Wickman,et al.,Cell,Vol.73,pgs.303-319(1993))。ファイバー蛋 白質とその受容体との間の高アフィニティ相互作用がないと、ウイルス結合及び 形質導入は起こるが、その効率は低いものになる。このファイバーに関係しない 結合及び形質導入は、ペプトン基と細胞インテグリンとの直接の会合によるもの と考えられている(Haung,1996)。細胞への形質導入の最初の段階での、ファイ バー蛋白質と細胞との間の相互作用は、アデノウイルスベクターによる形質導入 の細胞特異性を調節する為に、魅力的なそして論理的に当然の目標である。ファ イバー蛋白質の受容体結合ドメインは三量体である球状ヘッドドメイン内に存在 することが示されている(Henry,et al.,J .Virol.,Vol.68,pgs.5239-5246(1 994);Louis,et al.,J.Virol.,Vol.68,pgs.4104-4106(1994);Stevenson,19 95)。従って、ファイバーヘッドドメインとその受容体との相互作用は、アデノ ウイルスの結合特異性を決定するものである。その結果、ファイバーヘッドドメ インを操作することは、アデノウイルスベクターによる形質導入の細胞特異性を 調節す ることの可能性を示している。 この考え方を実験によって確かめるために、グループBとグループC血清型の アデノウイルスは異なった細胞受容体に結合するという事実を利用した(Defer, 1990;Mathias,et al.,J .Virol.,Vol.68,pgs.6811-6814(1994);Stevenson ,1995)。アデノウイルス3及びアデノウイルス5ファイバー蛋白質のヘッドド メインを交換したキメラファイバー蛋白質を調製した。この組換えキメラファイ バー蛋白質を用いた細胞結合及び競合に関する研究によって、受容体結合におけ るファイバーヘッドドメインの役割が確認され、ヘッドドメインを交換すること によってアデノウイルス3及びアデノウイルス5受容体の間で対応する受容体特 異性の変化が見られた(Stevenson,1995)。本発明において、アデノウイルス3 のファイバーヘッドドメインを含む、アデノウイルス5に基づくアデノウイルス ベクターAv9LacZ4を構築した。このファイバー修飾ベクターは、β−ガ ラクトシダーゼ発現ベクターであるAv1LacZ4から出発して、遺伝子置換 方法で得られた。アデノウイルス5/アデノウイルス3キメラファイバー遺伝子 、5TS3H、を含むプラスミドカセットをAv1LacZ4ゲノムとの相同組 換えに使用し、アデノウイルス5ファイバー遺伝子をアデノウイルス3のファイ バーヘッドを有するキメラファイバー遺伝子と正確に置換してAv9LacZ4 を作成した。プラーク精製に続いて、組換えベクターゲノムの分子分析により、 該ベクター中のファイバー遺伝子の置換が確認された。アデノウイルス3ファイ バーに特異的な抗血清を使用した、精製ベクター粒子のウェスタンブロット分析 により、キメラ5TS3Hファイバー蛋白質の発現及び機能的ウイルス粒子への 集合が確認された。Av9LacZ4キメラファイバーベクターの受容体特異性 の変化は、組換えフ ァイバー蛋白質との競合反応によって確認され、293細胞の形質導入は可溶性 アデノウイルス3ファイバーによって効率良くブロックされるが、アデノウイル ス5では起こらなかった。このデータは、組換えファイバー蛋白質との結合試験 から得られた以前の結果を確認し、元のアデノウイルス粒子に対する分析を発展 させるものである。更に、Av9LacZ4ベクターの変化した受容体特異性か ら、アデノウイルスベクターの指向性がヘッドドメインの操作によって変化させ ることが出来る、ということを実験的に確立した。 キメラファイバーキメラベクターAv9LacZ4及び親アデノウイルス5の Av1LacZ4ベクターの力価、収率、及び感染粒子に対する物理的量の割合 は類似しており、ファイバーヘッドの変更は293細胞に対するベクターの増殖 特性を顕著に変えるものでなかったことを示している。アデノウイルス3の感染 性はアデノウイルス5の感染性よりも著しく弱く、アデノウイルス3の粒子対P FUの割合はアデノウイルス5の約20倍であることが報告されている(Defer, 1990)。Av9LacZ4ベクターが親Av1LacZ4ベクターと同様の感染 性を有していることは、アデノウイルス5受容体又はアデノウイルス3受容体を 介するアデノウイルス5に基づくベクターの侵入効率が類似していることを示し ている。このことは、アデノウイルス5及びアデノウイルス3の間に見られる感 染性の差異は結合に異なる受容体を使用しているためではなく、これら二つの血 清型におけるその他の差異を反映したものであることを示唆している。293細 胞に対してAv9LacZ4ベクターとAv1LacZ4ベクターと同程度の感 染性を有している事実から、核への遺伝子運搬及び発現に至るベクター粒子の侵 入及び解離におけるその後の段階に悪影響を及ぼすことなく、アデノウイルスベ クターの結 合特異性を完全に変化させることが可能であるという重要な結論が導きだされる 。この結果は、ファイバー受容体の機能は第一に効率的な細胞付着を促進するこ と、及び細胞への侵入はこの付着に使用される分子には必ずしも依存しない独立 の事象であることを意味する。従って、ファイバー蛋白質を修飾して、異なる細 胞へベクターが侵入する能力と妥協することなく、該細胞表面分子へのベクター の付着を促進させることが可能である。この結論は、偏在的に発現される細胞表 面プロテオグリカンに結合するファイバー修飾アデノウイルスに関する最近の報 告によって支持される(Wickman,et al.,Nature Biotechnology,Vol.14,pgs .1570-1573(1996))。従って、細胞特異的に発現された細胞受容体に対するリガ ンドを含むように修飾されたファイバー蛋白質を含むその他のアデノウイルスベ クターを構築し、その結果、細胞選択的な形質導入をすることが可能である。 ファイバー蛋白質と細胞ファイバー受容体との相互作用のアデノウイルス感染 性に対する重要性は、可溶性ファイバー蛋白質によるこの感染の阻害が形質導入 を有効に阻止するという事実(図3)によって強調される。更に、細胞ファイバ ー受容体の発現レベルが低いか又は欠いている細胞は充分に形質導入されず、遺 伝子移入を達成するには高レベルのベクターを投入する必要がある(Haung,1996 )。嚢胞性肺繊維症の治療における最近のアデノウイルスベクターの臨床経験に よって、アデノウイルス5に基づくベクターによる形質導入に対する、以前には 予想されなかったようなヒト気道細胞(airway cells)の抵抗性が明らかにされて きた(Grub,et al.,Nature,Vol.371,pgs.802-806(1994);Zabner,et al. ,J .Virol.,Voo.70,pgs.6994-7003(1996))。αvインテグリン及びファイバ ー付着受容体の両者の発現パターンがインビボでのヒト 気道細胞の形質導入を制限しているものと言われている(Goldman,et al.,J .V irol. ,Vol.69,pgs.5951-5958(1995):Zabner,1996)。ヒト肺上皮細胞上のα vインテグリンの発現とアデノウイルスベクターによる形質導入効率との関連の 証拠がこの仮説を支持している(Goldman,1995)。 初代ヒト細胞上のアデノウイルス5ファイバー付着受容体の分布は充分に解明 されていない。これは主に、その同定が未だなされていないことに因る。しかし ながら、多くのヒト細胞系及び多数の初代細胞は、アデノウイルス5ファイバー 受容体の低レベル又は不存在により、アデノウイルス5に基づくベクターによる 形質導入に抵抗性であることが益々明らかとなってきた。既に述べたように、ア デノウイルス3ファイバー受容体も未だ同定されていないが、これは明らかにア デノウイルス5ファイバー受容体とは異なる。その結果、これら二つの受容体の 発現パターンに差異があれば、これは、アデノウイルス3ファイバー受容体又は アデノウイルス5ファイバー受容体のいずれかに付着するベクターによる形質導 入効率の差異に反映されるであろう。この仮説を支持すべく、アデノウイルス5 ベクターであるAv1LacZ4によっては充分に形質導入されず、キメラファ イバーであるAv9LacZ4によってより効率的に形質導入されるような、幾 種類かのヒト細胞系が同定された。このような細胞としては、ヒト頭部及び首腫 瘍系であるFaDu、ヒト肺上皮細胞系であるMRC−5、及びヒト単球細胞系 であるTHP−1がある。Hela細胞及びヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC )の形質導入ではこれらの両ベクターは同程度の効率を有していた。対照的に、 ヒト冠状動脈内皮細胞(HCAEC)はAv9LacZ4よりもAv1LacZ 4によってより効率的に形質導入された。これら二つのベクタ ーの差異はファイバーヘッドドメインの特性のみにあるので、形質導入で観察さ れた差異はファイバーに依存するものであり、二つのファイバー受容体の発現の 差異の結果に違いない。以上の結果によって明らかにされた、アデノウイルス5 及びアデノウイルス3に対する、ファイバー受容体の重複はするが異なっている 細胞分布は、特異的なヒト標的細胞の形質導入のためのベクターを設計する為に おそらくとりわけ価値のあるものとなるであろう。例えば、THP−1細胞系に 関して得られた結果は、単球/マクロファージ系列に対する遺伝子移入はアデノ ウイルス5よりはアデノウイルス3受容体の指向性を有するベクターを用いる方 がより効率的であることを示唆している。以前の研究によれば、ヒト造血細胞、 単球、T−リンパ球、及びTHP−1細胞系は、アデノウイルス5ファイバー受 容体の明らかな欠如の為にアデノウイルスベクターによる形質導入に対して抵抗 性であり、非常に高投与量のアデノウイルス5投入によってのみ形質導入される ものとされていた(Haung,et a.,J .Virol.,Vol.64,pgs.2257-2263(1995))。 Av9LacZ4ベクターによって単球が効率的に形質導入されることにより、 血管壁病巣のマクロファージ細胞を標的とすることによる心臓血管疾患及びアテ ローム性動脈硬化症の治療の為の戦略を立てる際に、これが有用であることが示 唆される。同様に、FaDu細胞系に関するデータは、ある種の腫瘍細胞系はA v1LacZ4よりもAv9LacZ4によってより効率的に形質導入されるこ とを示している。 アデノウイルスベクターを修飾して形質導入を可能にしたり促進したりする可 能性があるので、アデノウイルス介在遺伝子移入の効率を増加させることが出来 る。本明細書に記載されたヘッド置換戦略のようなアデノウイルスファイバー蛋 白質の修飾は、標的細胞の高度な選択的形質 導入を可能成らしめるものである。他のファイバー蛋白質からのヘッドドメイン は、異なるアデノウイルス血清型の指向性における天然の差異を利用して別のア デノウイルス受容体にベクターを向かわせるキメラファイバーを構築する為に使 用することができる。新規なファイバー蛋白質は又、ファイバーヘッドドメイン の他のトリマー蛋白質との置換、ペプチド配列のアデノウイルス5ファイバーC −末端への融合(Michael,et al.,Gene Ther.,Vol.2,pgs.660-668(1995))、 又は、ファイバーヘッドドメインの露出したループ領域へのペプチドリガンドの 付加(Xia,et l.,Structure,Vol.2,pgs.1259-1270(1994))によっても構築す ることが出来る。これらの戦略は、特異的細胞型に選択的にターゲットする、カ スタマイズされたアデノウイルスベクターの開発に繋がるであろう。実施例2 肺腫瘍細胞系の形質導入 A549肺腫瘍(ATCC No.CCL−185)、H23肺腺癌(ATCC No.CRL−5800)、H358肺胞細気管支腺癌(ATCC No.CRL −5807)、H441肺乳頭性腺癌(ATCC No.HTB−174)、及び ,H460肺大細胞癌細胞系(ATCC No.HTB−177)を、実施例1 に記載のように,細胞当たり100又は1,000個の粒子のAv1LacZ4 又はAv9LacZ4で形質導入した。形質導入に関するデータは以下の表Iに まとめた。 上記のデータは、アデノウイルス3ファイバーからのヘッド部分を有するアデ ノウイルスベクターが肺腫瘍細胞の形質導入、及び肺癌の治療に使用することが 出来ることを示唆している。実施例3 リンパ腫及び白血病細胞系の形質導入 U937ヒト大食細胞リンパ腫細胞(ATCC No.CRL−1593)を 、実施例1に記載のように,細胞当たり100又は1,000個の粒子のAv1 LacZ4又はAv9LacZ4で形質導入した。各実験は三重に行い、形質導 入細胞の平均パーセンテージを決定した。細胞当たり100個のAv1LacZ 4と接触させたU937では形質導入された細胞は観察されず、細胞当たり1, 000個の粒子のAv1LacZ4と接触させたU937では僅か0.1%の形 質導入された細胞が観察された。対照的に、細胞当たり100個の粒子のAv9 LacZ4ではU937細胞に3.4%±1.0%の形質導入が見られ、又、1 ,000個の粒子のAv9LacZ4ではU937細胞に9.2%±0.4%の 形質導入が見られた。 別の実験では、K562ヒト慢性骨髄性(chronic myelogenous)白血病細胞( ATCC CCL243)を、実施例1に記載の方法に従い、感染多重度(Mult iplicity of infection:MOI)10,50、又は100のAv1LacZ4又 はAv9LacZ4で形質導入した。形質導入したに関するデータは以下の表I Iにまとめた。 別の実験では、KG1ヒト骨髄急性骨髄原発性白血病細胞(ATCC CCL 246)を、実施例1に記載の方法に従い、感染多重度(MOI)10,50、 100、500又は1,000のAv1LacZ4又はAv9LacZ4で形質 導入した。形質導入したに関するデータは以下の表IIIにまとめた。 この実施例における各実験結果によると、アデノウイルス3ファイバーのヘッ ド部分を有するアデノウイルスベクターがリンパ腫又は白血病の治療に使用する ことが出来ることが示唆されている。実施例4 ヒト平滑筋細胞系の形質導入 HISMヒト空腸(intestinal jejunum)平滑筋細胞(ATCC No.CRL −1692)を、実施例1に記載のように,細胞当たり10、100又は1,0 00個の粒子のAv1LacZ4又はAv9LacZ4で形質導入した。各実験 は三重に行い、形質導入細胞のパーセンテージ(平均±標準偏差)を決定した。 その結果を以下の表IVに示した。 この実施例における実験結果は、アデノウイルス3ファイバーのヘッド部分を 有するアデノウイルスベクターが消化系又は血管の平滑筋のような平滑筋細胞の 形質導入に使用することが出来、このようなアデノウイルスが例えば、血管病巣 の再発狭窄症(restenosis)の治療のような各種疾患の治療に使用できることを示 唆している。実施例5 ヒト大動脈平滑筋細胞系の形質導入 ヒト大動脈平滑筋細胞(Clonetics)を、実施例1に記載のように,細胞当た り10、100又は1,000個の粒子のAv1LacZ4又はAv9LacZ 4で形質導入した。各実験は三重に行い、形質導入細胞のパーセンテージ(平均 ±標準偏差)を決定した。その結果を以下の表Vに示した。 この実施例における実験結果は、アデノウイルス3ファイバーのヘッド部分を 有するアデノウイルスベクターが、血管形成(angioplasty)後の再発狭窄症(rest enosis)の治療において、治療用導入遺伝子を血管平滑筋細胞に運搬し平滑筋細 胞の増殖を阻止する為に使用することができることを示唆している。実施例6 ヒト大動脈平滑筋細胞を細胞当たり10,000個までの粒子のAv1Lac Z4又はAv9LacZ4で形質導入する点以外は、実施例5の操作を繰り返し た。形質導入細胞のパーセンテージ(平均±標準偏差)を決定した。その結果を 以下の図7に示した。 図7に示された実験結果は、細胞当たり10,000個までの粒子を使用する ことによって、Av1LacZ4と比較してAv9LacZ4によるヒト大動脈 平滑筋細胞の形質導入が顕著に改善されたことを示してる。実施例7 ヒト、ブタ、及びラットの大動脈平滑筋細胞 ヒト大動脈平滑筋細胞(HASMC)を細胞当たり1,000個の粒子のAv 1LacZ4又はAv9LacZ4で形質導入し、ブタ大動脈平滑筋細胞(PA SMC)を細胞当たり1,000個又は5,000個の粒子のAv1LacZ4 又はAv9LacZ4で形質導入し、そしてラット大動脈平滑筋細胞(RASM C)を細胞当たり1,000個の粒子のAv1LacZ4又はAv9LacZ4 で形質導入する点以外は、実施例5の操作を繰り返した。形質導入細胞のパーセ ンテージを決定した。その結果を以下の図8に示した。図8に示された実験結果 は、ブタ大動脈平滑筋細胞はAv1LacZ4及びAv9LacZ4により同程 度のパーセンテージが得られたので、ブタは、アデノウイルス3ファイバーのヘ ッド部分及び治療移入遺伝子を有するアデノウイルスベクターの投与による、再 発狭窄症のような血管疾患の治療の研究用の動物モデ ルとして使用できることを示している。実施例8 Av1LacZ4及びAv9LacZ4アデノウイルスベクターを上記実施例 1のようにして調製した。生物学的及び分光学的力価は、Mittereder,1996中に 記載されているようにして測定した。 293細胞の単層について求めた生物学的力価は、Av1LacZ4及びAv 9LacZ4につき、夫々プラーク形成ユニット2.6x1010及び4.5x1 010pfu/mlであった。全粒子濃度は分光学的に求め、Av1LacZ4及 びAv9LacZ4につき、夫々1.45x1012及び1.25x1012粒子/ mlであり、全粒子数のpfuに対する割合は、夫々、55.8及び27.8で あった。細胞培養 Av1LacZ4及びAv9LacZ4の形質導入効率をヒト頭部及び首扁平 上皮細胞腫瘍細胞系を用いて調査した。FaDu(ヒト咽頭扁平癌:ATCC HTG43)、Hep−2(ヒト類表皮喉頭癌:ATCC CCL−23)、SC C4(ヒト舌扁平細胞癌:ATCC CRL−1624),SCC9(ヒト舌扁平 細胞癌:ATCC CRL−1629)、 SCC15(ヒト舌扁平細胞癌:ATCC CRL−1623)、及びSCC25 (ヒト舌扁平細胞癌:ATCC CRL−1628)をATCCから購入して、 推薦培地中で培養した。JSQ−3細胞は、ヒト鼻前庭癌であり、Dr.Esther C hang,Georgetown University Medical Centerから頂いた。JSQ−3細胞も推 薦培地中で培養した。アデノウイルスによる形質導入 12ウェル組織培養皿を使用して、細胞一個当たりの全粒子が0、10、10 、100、1,000、2,000、5,000、又は10,000個のAv1 LacZ4又はキメラファイバーAv9LacZ4アデノウイルスベクターによ り、2%熱不活性化牛胎児血清(HIFBS)を含む培地の全量0.2ml中で 37℃で1時間で各細胞系を形質導入した。ウイルス溶液を除去し、単層をPB Sで洗浄し、そして、10%HIFBSを含む0.1mlの完全培地を添加した 。細胞を24時間インキュベートして、β−ガラクトシダーゼを発現させた。細 胞を固定し、染色し、パーセンテージ形質導入を既に記載したように光学顕微鏡 で測定した(Stevenson,et al.,J .Virology,Vol.71,pgs.4782-4790(1997)) 。簡潔に述べると、細胞の単層をPBS中の0.5%グルタルアルデヒドで固定 し、1mg/mlの5−ブロモ−4−クロロ−3−インドイル−β−D−ガラク トシド(X−ガル)、5mMフェロシアナイドナトリウム、2mMMgCl2を含 むPBS0.5ml中でインキュベートした。細胞は、37℃で約24時間染色 した。単層をPBSで洗浄して、高倍率視野当りの青色細胞の平均数をZeis s ID03顕微鏡を使用する光学顕微鏡で計測し、1ウェル当り3から5の高 倍率視野を計数した。各ウイルス濃度を3重に行った。各細胞系に対して、少な くとも3回の独立した実験を行った。結果 以前に、ヒト細胞系FaDu(ヒト咽頭扁平細胞癌)が、Ad3受容体に対す るキメラファイバー蛋白質を含有するAv9LacZ4ベクターにより効率的に 形質導入されることが示されている(Stevenson,1997)。この初期の観察を拡大 して、頭部及び首の腫瘍の治療に対する Av9の利用可能性を探索すべく、キメラファイバーAv9LacZ4及び親A v1LacZ4ベクターによる多数のヒトの頭部及び首腫瘍細胞系の形質導入特 性が調査された。細胞はキメラファイバーAv9LacZ4又はAv1LacZ 4アデノウイルスにより、全量0.2mlの培地中で細胞一個当たり0から10 ,000個迄の粒子の割合で感染させた。感染24時間後に、上記のようにX− ガルで細胞を染色した。図9は、細胞一個当たり1,000個のウイルス粒子の 投与量での、ヒト鼻前庭由来の頭部及び首系であるJSQ−3単層のAv1La cZ4及びAv9LacZ4ベクターによる形質導入の代表的な写真(図9A及 び9B)、ヒト類表皮喉頭癌であるHep−2単層のAv1LacZ4及びAv 9LacZ4ベクターによる形質導入の代表的な写真(図9C及び9D)、及びヒ ト舌扁平細胞癌であるSCC9単層のAv1LacZ4及びAv9LacZ4ベ クターによる形質導入の代表的な写真(図9E及び9F)である。これら全ての 細胞系において、形質導入に差異が見られた。JSQ−3、Hep−2及びSC C9はこのウイルス投与量のAv1LacZ4による形質導入に対して比較的抵 抗性であるが、Av9LacZ4では効率的に形質導入された。 これら三種類の各細胞系のパーセンテージ形質導入を、細胞一個当たり0から 10,000個迄の各ウイルス粒子の投与について定量した。ウイルス投与の関 数として、JSQ−3、Hep−2及びSCC9の形質導入細胞の割合をウイル ス投与の関数として図10に示した。ヒト鼻前庭由来の癌細胞であるJSQ−3 (図10A)はキメラファイバーAv9LacZ4ベクターにより用量依存的に 効率的に形質導入され、細胞一個当たり1,000個の粒子のベクター投与量で 62.4±25.3パーセンテージ形質導入(平均±標準偏差(sd))を達成し た。対照 的に、Av1LacZ4では形質導入の効率は低く、同じ細胞一個当たり1,0 00個の粒子のベクター投与量でわずか14.6±6.5パーセンテージ形質導 入しか観察されなかった。より高いベクター投与量である細胞一個当たり10, 000個の粒子では細胞の数が減少するという注目すべき細胞毒性が観察された 。ヒト類表皮喉頭癌細胞系であるHep−2(図10B)はキメラファイバーA v9LacZ4ベクターにより効率的に形質導入され、細胞一個当たり1,00 0個の粒子のベクター投与量で93±2.3パーセンテージ形質導入(平均±標 準偏差(sd))を達成した。Av1LacZ4では形質導入の効率は低く、同じ 細胞一個当たり1,000個の粒子のベクター投与量でわずか20.4±2.3 パーセンテージ形質導入しか観察されなかった。ヒト舌扁平細胞癌細胞系である SCC9でもAv9LacZ4ベクターにより効率的に形質導入され、細胞一個 当たり1,000個の粒子のベクター投与量で80.7±6.9パーセンテージ 形質導入であり、対照的に、Av1LacZ4では同じ細胞一個当たり1,00 0個の粒子のベクター投与量でわずか13.9±2.1パーセンテージ形質導入 しか観察されなかった。これらのデータは、以上の扁平細胞癌系はアデノウイル ス5受容体を低レベルでしか発現しておらず、これと対照的に、アデノウイルス 3受容体はこれら扁平細胞癌系において豊富に発現されていることを示唆するも のである。以上の研究から、例えば、咽頭、喉頭、鼻前庭及び舌等の頭部及び首 の異なる部位に由来する細胞は、アデノウイルス5受容体を介するよりも、アデ ノウイルス3受容体を介してより効率的に形質導入されることを示している。A v9LacZ4はAv1LacZ4に較べてこのような細胞系を約4から6倍の 効率で形質導入する。 その他の多くのヒト頭部及び首扁平癌細胞系の形質導入能力をAv9 LacZ4及びAv1LacZ4を用いて調査した。図11には、細胞一個当た り1,000個の粒子で検討した各細胞系に関するデータをまとめてある。使用 したこれら追加の細胞系には、その他の舌由来であるヒト扁平癌細胞系であるS CC4、SCC15及びSCC25も含まれていた。細胞は細胞一個当たり1, 000個の粒子のAv9LacZ4又はAv1LacZ4アデノウイルスベクタ ーで感染させ、24時間後に上記のようにX−ガルで染色した。このベクター投 与量で形質導入された細胞の割合を測定した。この分析によって、検討した全て の細胞系はAv9LacZ4キメラファイバー及び野生型ファイバーを有するA v1LacZ4ベクターによる形質導入に差異が見られることが示された。Fa Du,JSQ−3,Hep−2,SCC4,SCC9,SCC15,及びSCC 25細胞系はAv9LacZ4キメラファイバーにより効率的に形質導入され、 これは、アデノウイルス5受容体に較べてアデノウイルス3受容体がより多くこ れら細胞型の上に存在することを意味している。議論 以上の結果は、アデノウイルス3受容体にターゲットされたアデノウイルスベ クターであるAv9LacZ4は、ヒト扁平細胞癌細胞系内に遺伝子を移入する 際に、アデノウイルス5受容体と相互作用する親ベクターであるAv1LacZ 4よりも、より効率的であることを示している。Av9LacZ4により形質導 入された細胞のパーセンテージは用量依存的であり、Av1LacZ4に較べて 約4乃至6倍高かった。更に、Av9は頭部及び首の様々な異なる起源を有する 細胞を効率的に形質導入することが出来、頭部及び首の扁平細胞癌の治療のため の新規な 遺伝子治療の開発の為に、頭部及び首内の異なる部位内に遺伝子を移入するため に、このベクターは有用であることを示唆するものである。 本明細書において引用された、特許、刊行物(公開された特許出願を含む)、 データベースアクセッション番号、及び寄託番号は全て、これらの各特許、刊行 物(公開された特許出願を含む)、データベースアクセッション番号、及び寄託番 号が具体的にかつ個別的に参照として含まれるのと同程度に、それらの内容全体 が本明細書の中に参照として含まれる。 しかしながら、本発明の範囲は上記の具体例に限定されるものではない。本発 明は、上記に特定した以外の方法で実施することが出来、それらも以下に記載す る特許請求の範囲である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR, NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,KE,L S,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL ,AM,AT,AU,AZ,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CZ,DE,DK,EE,ES,F I,GB,GE,HU,IL,IS,JP,KE,KG ,KP,KR,KZ,LK,LR,LS,LT,LU, LV,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,N Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI ,SK,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US, UZ,VN (72)発明者 スティーブンソン・スーザン・シー アメリカ合衆国 21701 メリーランド州, フレデリック,ホースシュー・ドライブ, 10974番 (72)発明者 ゴルジグリア・マリオ アメリカ合衆国 20879 メリーランド州, ガイザースバーグ,ライオンズ・クレス ト・ウェイ,8027番 (72)発明者 バニン・エリオ・エフ アメリカ合衆国 38118 テネシー州,メ ンフィス,セッションズ・コート,1258番

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.少なくとも一つのDNA配列を有する修飾アデノウイルスを細胞に形質導入 することから成る、該少なくとも一つのDNA配列を該細胞内に移入する方法で あって、該アデノウイルスは、修飾される前は第一の血清型であり、該修飾アデ ノウイルスにおいて、第一の血清型の該アデノウイルスのファイバーの少なくと も一部分が除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーの少なくとも一 部分と置換されており、該細胞は該第二の血清型アデノウイルスのファイバーの 少なくとも一部分と結合する受容体を有しており、該少なくとも一つのDNA配 列の該細胞内への移入が該修飾アデノウイルスの該細胞への結合を介して行われ る、前記方法。 2.アデノウイルスのファイバーがヘッド部分、シャフト部分、及びテール部分 を有し、該第一の血清型の該アデノウイルスのファイバーのヘッド部分の少なく とも一部分が除去され、第二の血清型アデノウイルスのファイバーのヘッド部分 の少なくとも一部分と置換されている、請求項1に記載の方法。 3.該第一の血清型のアデノウイルスが亜属C内の血清型のアデノウイルスであ り、該第二の血清型のアデノウイルスが亜属A,B,D,E,及びFから成る群 から選択される亜属内の血清型のアデノウイルスである、請求項1に記載の方法 。 4.該第二の血清型のアデノウイルスが亜属B内の血清型のアデノウイルスであ る、請求項3に記載の方法。 5.該第一の血清型のアデノウイルスがアデノウイルス5であり、該第 二の血清型のアデノウイルスがアデノウイルス3である、請求項4に記載の方法 。 6.該細胞が肺細胞、造血細胞、リンパ腫細胞、白血病細胞、平滑筋細胞、及び 腫瘍細胞から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。 7.該細胞にインビボで該修飾アデノウイルスが形質導入される、請求項1に記 載の方法。 8.該細胞が肺細胞である、請求項6に記載の方法。 9.該細胞が造血細胞である、請求項6に記載の方法。 10.該細胞が腫瘍細胞である、請求項6に記載の方法。 11.該腫瘍細胞が頭部及び首の癌細胞である、請求項10に記載の方法。 12.該腫瘍細胞が神経芽細胞腫である、請求項10に記載の方法。 13.該細胞がリンパ腫細胞である、請求項6に記載の方法。 14.該細胞が白血病細胞である、請求項6に記載の方法。 15.該細胞が平滑筋細胞である、請求項6に記載の方法。 16.少なくとも一つのDNA配列を有する修飾アデノウイルスを細胞に形質導 入することから成る、該少なくとも一つのDNA配列を該細胞内に移入する方法 であって、該アデノウイルスは、修飾される前はアデノウイルス5血清型であり 、該修飾アデノウイルスにおいて、アデノウイルス5のファイバーのヘッド部分 が除去され、アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分と置換されており、該 細胞は該アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分と結合する受容体を有して おり、該少なくとも一つのDNA配列の該細胞内への移入が該修飾アデノウイル スの該細胞への結合を介して行われる、前記方法。 17.細胞に形質導入される少なくとも一つのDNA配列を有する修飾 アデノウイルスであって、該アデノウイルスは、修飾される前はアデノウイルス 5血清型であり、該修飾アデノウイルスにおいて、アデノウイルス5のファイバ ーのヘッド部分が除去され、アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分と置換 されている、前記修飾アデノウイルス。 18.請求項17に記載の修飾アデノウイルス、及び薬学的に許容し得るキャリ アを含む組成物。 19.細胞をアデノウイルス以外の遺伝子運搬ビークルと接触させることから成 る、該細胞内へ少なくとも一つのポリヌクレオチドを移入させる方法であって、 該遺伝子運搬ビークルは該少なくとも一つのポリヌクレオチドを含有し、該遺伝 子運搬ビークルは所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一部 分を含み、該細胞は該所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも 一部分に結合する受容体を有し、該少なくとも一つのポリヌクレオチドの該細胞 内への移入が該遺伝子運搬ビークルの該細胞への結合を介して行われる、前記方 法。 20.該遺伝子運搬ビークルは所望の血清型のアデノウイルスのファイバーのヘ ッド部分の少なくとも一部分を含む、請求項19に記載の方法。 21.該遺伝子運搬ビークルはアデノウイルス3のファイバーのヘッド部分を含 む、請求項20に記載の方法。 22.所望の血清型のアデノウイルスのファイバーの少なくとも一部分を含むア デノウイルス以外の遺伝子運搬ビークル。 23.アデノウイルス3のファイバーのヘッド部分を含む、請求項22に記載の 遺伝子運搬ビークル。 24 少なくとも一つの外来性DNA配列を含む、アデノウイルス3血清型のア デノウイルス。 25.請求項24に記載のアデノウイルス、及び薬学的に許容し得るキ ャリアを含む組成物。 26.請求項24に記載のアデノウイルスを細胞に形質導入することから成る、 少なくとも一つの外来性DNA配列を該細胞内に移入する方法であって、該細胞 はアデノウイルス3のファイバーと結合する受容体を有しており、該少なくとも 一つの外来性DNA配列の該細胞内への移入が該アデノウイルスの該細胞への結 合を介して行われる、前記方法。 27.細胞を少なくとも一つのポリヌクレオチドを含有する遺伝子運搬ビークル と接触させることから成る、該細胞内へ少なくとも一つのポリヌクレオチドを移 入させる方法であって、該遺伝子運搬ビークルはアデノウイルス3のファイバー の少なくとも一部分を含み、該細胞はアデノウイルス3のファイバーの少なくと も一部分に結合する受容体を有し、該少なくとも一つのポリヌクレオチドの該細 胞内への移入が該遺伝子運搬ビークルの該細胞への結合を介して行われる、前記 方法。
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