JP2002512040A - ストレス耐性植物 - Google Patents

ストレス耐性植物

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JP2002512040A JP2000544818A JP2000544818A JP2002512040A JP 2002512040 A JP2002512040 A JP 2002512040A JP 2000544818 A JP2000544818 A JP 2000544818A JP 2000544818 A JP2000544818 A JP 2000544818A JP 2002512040 A JP2002512040 A JP 2002512040A
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Abstract

(57)【要約】 サイクリン依存性キナーゼ(CDK)蛋白質のストレス誘発性リン酸化を抑える能力を植物に付与することによって、非生物的ストレス条件、特に浸透圧ストレスに対する耐性をもつ植物を得るための方法を説明する。前記能力を付与するためのベクターも提供する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、例えば耐塩性(tolerant to salinity)などのストレス耐性をもつ
植物を得るための方法、植物に前記耐性を付与しうる遺伝情報を含むベクター、
前記遺伝情報によってコードされるムテイン(mutein)、ならびに前記方法によ
って得られる植物および植物材料に関する。
【0002】 いくつかの文書が、本明細書の本文の全体を通じて引用される。本明細書に引
用する文書(あらゆる製造者の仕様書、指示書などを含む)はそれぞれ参照とし
て本明細書に組み入れられるが、引用される文書の任意のすべてが本発明に対す
る真の先行技術であることを認めるものではない。
【0003】 太陽エネルギー、水および栄養分、塩分の不足または過剰、高温および低温な
らびに汚染(例えば重金属)などの非生物的ストレス条件は、植物の成長に大き
な影響を及ぼすとともに、栽培品種などの収穫量を著しく減少させるおそれがあ
る。当技術分野では、非生物的ストレス条件下では細胞周期がDNA合成前のG1後
期および/またはG2/M境界期で停止することによって植物細胞の増殖が抑制さ
れることが知られている;デューディッツ(Dudits)、1997、植物細胞の分裂(
Plant Cell Division)、Portland Press Research、Monograph、Francis, D.、
Dudits, D.およびlnze, D.編、第2章、pp.21およびベルゴーニュー(Bergouniou
x)、Protoplasma 142(1988)、127〜136を参照。
【0004】 しかし、植物細胞における細胞周期の調節はほとんど解明されていない。国際
公開公報第92/09685号は、植物細胞の増殖を制御するための方法であって、前
記植物細胞における細胞周期調節蛋白質のレベルを調節することを含む方法を一
般的に説明している。国際公開公報第92/09685号に開示された方法は、1つまた
は複数の環境条件の存在下における植物の成長挙動の改善のために適用可能であ
ると説明されている。特に、国際公開公報第92/09685号は、酵母および脊椎動
物の細胞周期に重要な役割を果たすことが知られている蛋白質であるp34cdc
蛋白質が植物に存在することを述べており(例えば、本明細書に参照として組
み入れられるLewおよびKombluthによる総説、Curr. Op. Cell Biol. 8(1996)
、795〜804を参照されたい)、そこでは植物性p34cdc2蛋白質の量が植物組
織における細胞分裂の律速因子となることが示されている。しかし、無生物的条
件、特に塩ストレス条件下での細胞周期の停止における植物p34cdc2蛋白質
もしくは植物細胞周期制御蛋白質と推定される他のものの役割も、前記細胞周期
停止後の細胞周期の進行の開始に関する役割も明らかには示されていない。
【0005】 当技術分野では、ストレス耐性植物の作出のためのさまざまなアプローチが記
載されている。例えば、国際公開公報第97/13843号は、後期胚形成過剰(late
embryogenesis abundant)蛋白質をコードする核酸を用いる穀物植物細胞(cere
al plant cell)またはプロトプラストの形質転換による、水ストレスまたは塩
ストレス耐性をもつトランスジェニック穀物植物の製造を記載している。さらに
、幼若性(juvenility)および抗酸化能を高めることによる病気およびストレス
耐性をもつ植物の製造も提唱されている;バルナ(Barna)、Novenytermeles 44
(1995)、561〜567参照。しかし、上記のアプローチが一般的に適用可能であっ
て、その他の点では植物の表現型、例えば成長特性に実質的に影響を及ぼさずに
植物にストレス耐性を付与するために用いうることはこれまで示されていない。
【0006】 このため、本発明の根底にある技術的課題は、農業において特に有用な植物に
対してストレス耐性を付与または強化するための手段および方法を提供すること
である。
【0007】 この技術的課題に対する解答は、特許請求の範囲において特徴が記載される態
様を提供することによって得られる。
【0008】 したがって、本発明は、核酸分子および/または調節配列を植物細胞、植物組
織または植物体に導入することを含む、非生物的ストレス条件に対する耐性をも
つ植物を得るための方法であって、前記核酸分子または調節配列の導入が、非生
物的ストレス条件下における抑制性リン酸化に対する感受性をもたないサイクリ
ン依存性キナーゼ(CDK)蛋白質の存在をもたらすような方法に関する。
【0009】 CDK活性の制御は、サイクリンの会合およびリン酸化によって行いうる。CDKの
リン酸化は、リン酸化部位の位置に応じて、その活性に対して抑制効果または活
性化効果のいずれかを及ぼしうる。p34cdc2は、G2期におけるThr 167の活性化を
リン酸化すること、ならびにThr-14および/またはTyr-15の抑制性リン酸化によ
って調節される(Jacobs、Annu. Rev. Plant Physiol. Plant Mol Biol. 46(19
95)、317〜339)。
【0010】 本明細書で用いられる「非生物的ストレス条件下における抑制性リン酸化に対
する感受性をもたない」という用語は、通常はストレス条件下において植物細胞
内でリン酸化されるCDK蛋白質が十分にリン酸化されないこと、すなわち、スト
レス条件下で通常はリン酸化されるある種の抑制性リン酸化部位がリン酸化され
ないことを意味する。したがって、例えば、CDK蛋白質が、ストレス条件下にお
いて植物細胞内で通常はリン酸化される抑制性リン酸化部位を4つ含む場合には
、前記リン酸化部位の少なくとも1つがリン酸化されていなければ本発明による
前記CDKは非リン酸化型として存在する。「非生物的ストレス条件下における抑
制性リン酸化に対する感受性をもたない」および「非リン酸化型のCDK蛋白質」
という用語は、本明細書において互換的に用いられる。
【0011】 本明細書で用いられる「非生物的ストレス」という用語は、例えば水(冠水、
乾燥、脱水)、嫌気性(低濃度の酸素、CO2など)、浸透圧(塩)、温度(高温
/熱、低温、凍結、霜)、栄養分/汚染物質といった環境因子などの非生存性も
しくは非生物的(すなわち、生物的でない:昆虫、細菌、真菌、ウイルス)環境
ストレス因子によって、または前記ストレス因子に関するか、もしくはそれらに
よって誘導されるホルモン、二次メッセンジャーもしくは他の分子によって生じ
る、細胞、組織、器官または植物全体の代謝、成長および生存性に対する任意の
有害作用を意味する。
【0012】 「嫌気性ストレス(anaerobic stress)」という用語は、低酸素および無酸素
を含む、前記に定義した通りのストレスを生じるのに十分な酸素レベルのあらゆ
る低下を意味する。
【0013】 「冠水ストレス(flooding stress)」という用語は、モンスーン、雨期、鉄
砲水または植物の過度の灌漑などの際に生じるような、植物、植物の部分、組織
もしくは単離細胞が液状培地中に長期的もしくは一時的に浸漬されることに起因
する、またはそれによって誘発される任意のストレスを意味する。
【0014】 「寒冷ストレス」および「熱ストレス」とはそれぞれ、特定の植物種に関する
最適な成長温度の範囲を下回る、または上回る温度によって誘発されるストレス
のことである。このような最適な成長温度の範囲は、当業者によって容易に決定
されるか、または当業者に周知である。
【0015】 「脱水ストレス(dehydration stress)」とは、細胞、組織、器官または植物
全体の水分不足、膨圧低下または含水量減少によって誘発されるあらゆるストレ
スのことである。
【0016】 「乾燥ストレス(drought stress)」とは、細胞、組織、器官もしくは生物体
からの水分の剥奪もしくは水分供給の減少によって誘発される、またはそれに起
因するあらゆるストレスを意味する。
【0017】 「塩分誘発性ストレス」「塩ストレス」または類似の用語は、細胞の細胞内も
しくは細胞外環境の浸透圧の擾乱に起因する、またはそれによって誘発されるあ
らゆるストレスを意味する。
【0018】 本発明の方法に従って得られるトランスジェニック植物は、前記植物に導入さ
れた核酸分子および/または調節配列が存在すると同時に、対応する野生型植物
が感受性をもつ非生物的ストレスに対する耐性を獲得するか、またはそれに対す
る耐性が高まる。「耐性」および「耐性をもつ」という用語は、前記に定義した
非生物的ストレスによって引き起こされる細胞代謝の変化、細胞増殖の低下およ
び/または細胞死の遅延から完全な阻害までに及ぶ範囲の保護を、対象として含
む。好ましくは、本発明の方法に従って得られるトランスジェニック植物は、対
応する野生型植物が成長、代謝、生存性および/または雄性もしくは雌性不稔の
低下を示す環境条件下で前記植物が実質的に正常に成長しうるという意味で、非
生物的ストレスに対して耐性をもつ。
【0019】 すべての真核生物において、細胞周期の進行はサイクリン依存性キナーゼ(CD
K)の活性に依存する。分裂酵母(NurseおよびBisset、Nature 292(1981)、55
8〜560)および出芽酵母(Nasmyth、Curr. Opin. Cell. Biol. 5,(1993)、166
〜179)ではそれぞれCDC2およびCDC28プロテインキナーゼが細胞周期の中心的な
調節因子であり、一方、高等な真核生物には役割の異なる多くのCDKが存在する
(Mironov, V.、De Veylder, V.、Van Montagu, M.およびlnze, D.(1999)、高
等植物における細胞分裂周期の分子的制御(Molecular Control of the Cell Di
vision Cycle in Higher Plant)、植物細胞(The Plant Cell)およびPines、S
em. Cell. Biol. 5(1994)、399〜408)。酵母におけるチロシン15でのCDC2の
脱リン酸(GouldおよびNurse、Nature 342(1989)、39〜45)およびCDC25チロ
シンホスファターゼによる動物細胞でのトレオニン14での脱リン酸(Norbury、E
MBO J.(1991)、3321〜3329)は、細胞周期が分裂期へと進行するための必要条
件である。分裂酵母におけるTyr15残基のリン酸化不能なPhe15への置換は、早期
に分裂期に進行する結果として、小型細胞であるwee表現型をもたらす(Russell
およびNurse、Cell 49(1987)、559〜567)。シロイヌナズナ(Arabidopsis)
では、Thr14およびTyr15リン酸化部位がプロテインキナーゼCDC2aAtに保存され
ている(Mironov(1999))。しかし、Thr14およびTyr15が置換されたドミナン
トネガティブ変異型のCDC2aAtを過剰発現するトランスジェニック・シロイヌナ
ズナ系統には、頂芽優性が弱まる傾向を除き、表現型の変化は認められなかった
(Hemerly、EMBO J. 14(1995)、3925〜3936)。
【0020】 本発明により、非生物的ストレス条件下で細胞周期の停止が始まる際には、シ
ロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)の既知のCDC2aと機能的に等価である植
物CDK蛋白質が、それぞれ前記CDC2aの15位のチロシンおよび14位のトレオニンに
対応するチロシン残基および選択的にはトレオニン残基でもリン酸化されること
が明らかになった。さらに、驚くべきことに、リン酸化不能な変異型CDKの発現
によって非生物的ストレス耐性植物が生じることも明らかになった。本発明は、
変異型CDK、すなわちリン酸化不能なAla14およびPhe15残基を備えたCDC2aAtを過
剰発現するトランスジェニック植物が、非生物的ストレス、特に塩ストレスに対
する耐性の増強を示すとの所見に基づく。野生型(WT)および野生型CDC2aAt(C
DC2aWT)を異所性に発現するトランスジェニック・シロイヌナズナ(YF2およびY
F5、実施例2)と比べて、NaCl存在下における栽培後の苗条成長はYF系統の方が
高度であった。さらに、塩分を除去した後の回復もYF系統の方がCDC2aWTおよびW
T植物よりも早かった(図1)。本発明によって得られた以上の結果は、前記のリ
ン酸化、特に植物CDK蛋白質のリン酸化が、非生物的ストレス誘発性の細胞周期
停止における重要な事象の一つと考えられることを強く示唆する。
【0021】 「CDK」または「植物CDK」という用語は、上記のリン酸化可能なチロシン残基
を有し、選択的には前記のトレオニン残基をさらに有する、植物および植物細胞
において細胞周期を調節する機能を備えたすべての植物CDK蛋白質を含むものと
する。これらのCDKの例には、シロイヌナズナで同定されたCDC2aおよびCDC2bな
どのCDC2ファミリーのメンバーがある。
【0022】 上記の所見はシロイヌナズナのCDK蛋白質CDC2aを用いて得られたものであるが
、本発明は、植物において機能をもつ任意のCDK蛋白質、すなわちシロイヌナズ
ナの既知のCDC2aと機能的に等価な植物CDK蛋白質を用いて実践しうる。「シロイ
ヌナズナの既知のCDC2aと機能的に等価な植物CDK蛋白質」という用語は、例えば
保存的なPSTAIREサイクリン結合モチーフならびに上記のリン酸化可能なチロシ
ンおよびトレオニン残基を有するというように、植物または植物細胞においてそ
れぞれがシロイヌナズナのCDC2aと類似した調節機能を有する個々のCDK蛋白質を
意味する。クローニングの試みが盛んに成された結果、さまざまな植物種で数多
くのCDK蛋白質が同定されているが、これらの中から配列に基づいて少なくとも5
種類が識別可能である(その集成についてはSegers、植物細胞増殖ならびに成長
および発育におけるその調節(Plant cell proliferation and its regulation
in growth and development). Bryant JA、Chiatante D編、Chichester:John
Wiley & Sons(1997)、1〜19を参照されたい)。モデル植物であるシロイヌナ
ズナでは、それぞれが異なるファミリーに属する2種類のCDKの特徴が明らかにさ
れている。このような例の一つがCDC2aAtであり、これは保存的なPSTAIREアミノ
酸モチーフを含むほか、細胞周期を通じて転写および蛋白質レベルの両面で構成
的に発現される。しかし、これに伴うキナーゼ活性はG1/SおよびG2/M移行期で
最大であり、このことからこの2つのチェックポイントで一定の役割を果たすこ
とが示唆される(Hemerly、Plant Cell 5(1993)1711〜1723、Burssens、Plant
Physiol. Biochem. 36(1998)、9〜19、Segers、Plant J. 10(1996)、601〜
612)。CDC2bAtはPPTALREモチーフを含み、そのmRNAレベルはSおよびG2期におい
て優先的に高い(Segers、1996およびその引用文献)。その蛋白質は転写レベル
に追随するが、CDC2bAtキナーゼ活性が最大に達するのは有糸分裂中のみであり
、これはM期に何らかの役割を果たすことを意味する。さらに、当技術分野で周
知の方法に従い、植物に非生物的ストレス耐性を付与する能力に関して、本発明
に従って用いうるCDKまたはその変異体の試験を行うことも可能であり、これに
ついては例えば、植物における物理的ストレス:耐性のための遺伝子およびそれ
らの産物(Physical Stresses in Plants:Genes and Their Products for Tole
rance)、グリロ(S. Grillo)(編)、レオーネ(A. Leone)(編)(June 199
6)Springer Verlag、ISBN:3540613471;植物および農作物のストレスのハンド
ブック(Handbook of Plant and Crop Stress)、モハメド・ペッサラクリ(Moh
ammad Pessarakli)(編)、Marcel Dekker、ISBN:0824789873;ストレス化に
おける植物の生理:非生物的因子(The Physiology of Plants Under Stress:A
biotic Factor)、エリック・T・ニルセン(Erik T. Nilsen)、デーヴィッド・
M・オーカット(David M. Orcutt)(寄稿)、エリック・T・ニルセン(Eric T.
Nilsen)、第2版(October 1996)、John Wiley & Sons、ISBN:0471031526;
乾燥、塩、寒冷および熱ストレス:高等植物における分子応答(Drought, Salt,
Cold and Heat Stress:Molecular Responses in Higher Plants)(Biotechno
logy Intelligence Unit)、カズオ・シノザキ(Kazuo Shinozaki)(編)、カ
ズオ・ヤマグチ-シノザキ(Kazuko Yamaguchi-Shinozaki)(編)(1999)、R G
Landes Co、ISBN:1570595631;ストレス下における植物:生化学、生理学およ
び生態学ならびに植物改良へのそれらの応用(Plants Under Stress:Biochemis
try, Physiology and Ecology and Their Application to Plant Improvement)
(Society for Experimental Biology Seminar Serie)、ハムリン・G・ジョー
ンズ(Hamlyn G. Jones)、フラワーズ(T.J. Flowers)、ジョーンズ(M.B. Jo
nes)(編)、(September 1989)、Cambridge Univ. Pr.(Short)、ISBN:052
1344239;環境ストレスに対する植物の適応(Plant Adaptation to Emvironment
al Stress)、レスリー・フォウデン(Leslie Fowden)、テリー・マンスフィー
ルド(Terry Mansfield)、ジョン・ストッダート(John Stoddart)(編)(Oc
tober 1993)Chapman & Hall、ISBN:0412490005または添付する実施例で述べる
ものを参照されたい。
【0023】 CDC2aの15位のチロシンおよび14位のトレオニンに対応するCDKにおけるリン酸
化部位の決定は、例えば、局所的配列整列化に関する検索のために用いうる基礎
的局所整列化検索ツール(Basic Local Alignment Search Tool)、略してBLAST
2(Altschul、1997;Altschul、J. Mol. Evol. 36(1993)、290〜300;Altschu
l、J. McI. Biol. 215(1990)、403〜410)などを用いて、所定のCDKのアミノ
酸配列におけるこのような部位をコンピュータを用いて同定することによって行
いうる。BLASTは、配列類似性を決定するためのヌクレオチドおよびアミノ酸配
列の整列化を行う。BLASTは厳密な一致の決定および相同体の同定に特に有用で
ある。チャン(Zhang)、Planta 200(1996)、2〜12による記載の通りに、抗ホ
スホ-チロシンおよび抗ホスホ-トレオニン抗体を用いてリン酸化部位を決定する
ことも可能である。
【0024】 本発明の方法における核酸分子の導入により、前記の非リン酸化型のCDK蛋白
質の量が増大するか、またはその新たな産生が引き起こされる。例えば、前記核
酸分子は、上記の蛋白質の、または非リン酸化形態にある前記CDK蛋白質の発現
を誘導しうる転写因子などの調節蛋白質の、または例えば、CDK脱リン酸酵素、
もしくはCDKをリン酸化する酵素のアンチセンスなどの、コード配列を含む。
【0025】 「コード配列」とは、適切な調節配列の制御下におかれた時に、mRNAへの転写
および/またはポリペプチドへの翻訳がなされるヌクレオチド配列のことである
。コード配列の境界は、5'末端の翻訳開始コドンおよび3'末端の翻訳停止コドン
によって決定される。コード配列には、mRNA、CDK、組換えヌクレオチド配列ま
たはゲノムDNAが非制限的に含まれ、特定の状況下ではイントロンが存在しても
よい。
【0026】 本明細書で用いられる「遺伝子」「ポリヌクレオチド」「核酸配列」「ヌクレ
オチド配列」「DNA配列」または「核酸分子」という用語は、リボヌクレオチド
またはデオキシリボヌクレオチドである任意の長さの重合型のヌクレオチドを意
味する。この用語は、分子の一次構造のみに関して言及するものである。したが
って、この用語には2本鎖および1本鎖のDNAならびにRNAが含まれる。また、これ
には既知の種類の修飾、例えばメチル化、1つまたは複数の天然型ヌクレオチド
の類似体による「キャプス(caps)」置換なども含まれる。
【0027】 本明細書で用いられる「調節配列」という用語は、植物細胞のゲノム中でリン
酸化阻害因子などをコードする遺伝子の近傍に組み込まれているために、上記の
蛋白質などの前記蛋白質の発現を増強させる核酸分子を指す。このような調節配
列には、プロモーター、エンハンサー、不活性化型サイレンサーイントロン配列
、3'UTRおよび/もしくは5'UTRコード領域、蛋白質および/もしくはRNA安定化
要素、または遺伝子発現の活性化および/もしくは遺伝子産物の量の増加をもた
らすことが知られている他の遺伝子発現制御配列が含まれる。
【0028】 前記核酸分子の導入は新たな発現につながり、一方、上記の調節配列が前記蛋
白質の発現の増強および/または誘導のために用いられる場合には、最終的には
細胞内の非リン酸化型CDK蛋白質の量の増加をもたらす。したがって、本発明は
、非リン酸化型CDKの新たな発現および/または発現増強を提供することを目的
とする。本発明の方法の1つの好ましい態様において、前記CDKはPSTAIRE型CDKで
あり、好ましくは前記CDKはCDC2aである。
【0029】 添付する実施例で示す通り、植物では、非生物的ストレス条件下における細胞
周期停止の開始時に、内因性サイクリン依存性キナーゼ(CDK)が15位のチロシ
ンおよび選択的にはさらに14位のトレオニン残基でリン酸化されることが明らか
になった。CDK配列が同定されている大部分の植物では、前記チロシンおよびト
レオニン残基の位置はそれぞれ15位および14位であり、例えば、シロイヌナズナ
のCDC2aについてもそうである。しかし、進化の過程などにおいて、蛋白質のN末
端での1つまたは複数の欠失または付加の結果として、何らかの植物CDKでこれら
の共通のY-15およびT-14のそれぞれの位置がある程度変化した可能性もある。
【0030】 本明細書で用いられる「15位のチロシン」および「14位のトレオニン残基」と
いう用語は、したがって、個々のCDKの14位および15位のほか、植物CDK蛋白質に
おける前記チロシンおよびトレオニン残基であってストレス誘発性細胞周期停止
の開始が保留されている時点でリン酸化されているという特徴をもつこれらの残
基のこの種の位置変化も含むものとする。このことは、本明細書の定義による前
記位置が、シロイヌナズナCDC2aの15位のチロシンおよび14位のトレオニンにそ
れぞれ対応することを意味する。
【0031】 したがって、本発明の任意の方法の1つの好ましい態様において、CDKは、シロ
イヌナズナCDC2aのアミノ酸配列中の15位に対応する位置にあるチロシンの箇所
にリン酸を含まない。CDK蛋白質は、シロイヌナズナCDC2aのアミノ酸配列中の15
位のチロシンおよび14位のトレオニンにそれぞれ対応するチロシンおよびトレオ
ニンのいずれにもリン酸基を含まないことが特に好ましい。
【0032】 本発明の方法の1つの態様において、前記非リン酸化型CDK蛋白質はリン酸化不
能なCDKムテインである。本発明の1つの好ましい態様は、植物に対して、Y-15が
リン酸化不能な残基に置換されたCDKムテインをストレス条件下で産生する能力
を付与することによる。植物がこのようなCDKムテインを産生しうる場合には、
前記ムテインは、ストレス誘発性細胞周期停止の引き金となるリン酸化系に対す
る感受性を実質的にもたないと考えられる。これにより、植物は細胞周期のダウ
ンレギュレーションを回避し、前記ストレス条件に対する耐性が高まる。
【0033】 本明細書で用いられる「CDKムテイン」という用語は、1個のアミノ酸の置換、
欠失または付加などの少なくとも1つの変異を含むCDK断片またはCDK蛋白質と定
義される。さらに、T-14のリン酸化は、上記のダウンレギュレーション機構を増
強または媒介する役割を果たしている可能性もある。このため、本発明による方
法のもう1つの好ましい態様において、CDKムテインは14位にリン酸化不能なアミ
ノ酸残基も含む。
【0034】 前記ムテインは、入手しようとするストレス耐性植物の内因性CDKに由来する
ことが好ましい。内因性CDKから始めることにより、うまく機能しないムテイン
が生じるリスクを最小限に抑えられる。しかし、さまざまな植物CDKの間に相同
性がみられることを考慮すれば、別の植物種からのCDKも用いうることは当業者
には明らかであると考えられる。例えば酵母または脊椎動物などに由来するCDK
も、内因性植物CDKとの相同性によっては本発明に適すると考えられ、その適性
は当業者により容易に判定可能である。
【0035】 CDKムテインは、Y-15(すなわち、シロイヌナズナCDC2aの15位のチロシンに対
応するCDKのチロシン)を置換するリン酸化不能なアミノ酸残基として、Y-15→F
-15変異を含むことが好ましい(Fはフェニルアラニンである)。これまでに検討
したすべての植物において、前記ムテインの発現はストレス耐性の増強をもたら
した。同様に、T-14(すなわち、シロイヌナズナCDC2aの14位のトレオニンに対
応するCDKのトレオニン)を置換するリン酸化不能なアミノ酸残基として、CDKム
テインはT-14→A-14変異を含むことが好ましい(Aはアラニンである)。この種
のムテインの発現はストレス耐性の改善をもたらした。
【0036】 上記に説明した通り、本発明の方法はさまざまなやり方で実施可能である。こ
のため、例えば、上記のリン酸化不能な型のCDKをコードする核酸分子をゲノム
中にすでに含むものの、プロモーターが弱いなどの理由で適切な様式でそれを発
現しないような植物細胞も用いうると考えられる。このような場合には、植物細
胞に対して、前記リン酸化不能な型のCDKをコードする内因性核酸分子の近傍に
強力なプロモーターなどの調節配列を導入し、その発現が誘導されるようにすれ
ば十分と考えられる。しかし、通常は、野生型植物細胞はリン酸化不能な型のCD
Kをコードする内因性遺伝子をもたないと考えられる。このため、本発明の1つの
好ましい態様において、植物細胞または植物組織または植物体に導入しようとす
る前記核酸分子は、前記リン酸化不能な型のCDKをコードする。
【0037】 または、前記非リン酸化型のCDKがCDKの脱リン酸および/またはリン酸化の阻
害によるような形で、本発明の方法を実施することも可能である。
【0038】 上記の通り、驚くべきことに、非生物的ストレスに曝露された植物の細胞分裂
のダウンレギュレーションは、CDK、特にY-15の位置にリン酸を含まない、シロ
イヌナズナCDC2aと等価なCDKの存在によって効果的に抑制されることが示された
。したがって、本発明の1つの好ましい態様は、植物に対して、その実質的な部
分が前記CDC2aの15位のチロシンに対応するチロシンの箇所にリン酸を含まない
、シロイヌナズナCDC2aと機能的に等価なCDK蛋白質をストレス条件下で生じる能
力を付与することに関する。この点に関する「実質的な部分(substantial port
ion)」とは、本明細書において、非生物的ストレス条件下での成長改善を植物
に付与するために十分な、Y-15の位置にリン酸を含まないCDKの量と定義される
。当業者は、前記ストレス耐性を改善するためには、植物または植物細胞に存在
する対応するCDKの必ずしもすべてがY-15の位置にリン酸を含んではならないと
いうわけではないことを理解すると考えられる。これは例えば、植物に対して、
前記チロシンのリン酸化の阻止または前記チロシンの脱リン酸機構の活性化の能
力を付与することによって実現可能である。この拮抗作用はT-14もさらにリン酸
を含まなければさらに改善されると思われるため、CDK蛋白質は前記CDC2aの15位
のチロシンおよび14位のトレオニンにそれぞれ対応するチロシンおよびトレオニ
ンのいずれにもリン酸基を含まないことが好ましい。
【0039】 したがって、本発明に係るストレス耐性植物を得るための1つの興味深い方法
は、植物に対して、少なくとも前記植物の内因性CDKの15位のチロシンをリン酸
化しうる、CDC25またはその機能的類似体をストレス条件下で生じる能力を付与
することによる。CDC25の脱リン酸活性はルー(Lew)および(Kornbluth)、前
記に記載されている。植物がストレス条件下で機能性CDC25蛋白質を産生しうる
ようにする、すなわち、内因性CDKの上記のチロシンおよび選択的にはさらに隣
接するトレオニンの脱リン酸を可能とすることにより、ストレス条件の結果とし
て生じるCDKのリン酸化が効果的に抑制される。
【0040】 哺乳動物および酵母のいずれにおいてもWEE1プロテインキナーゼはCDC25に対
して拮抗性であり、CDC2のTyr15をリン酸化することにより有糸分裂阻害因子と
して作用する(Igarashi、Nature 353(1991)、80〜3、RussellおよびNurse、C
ell 49(1987)、559〜567、LabibおよびNurse、Current Biology、3(1993)、
164〜166)。Wee1の植物相同体であるZmWee1がトウモロコシから最近同定された
(Sun、Proc. NatI. Acad. Sci. USA 96(1999)、4180〜4185)。分裂酵母では
、CDC2の抑制性Tyr15リン酸化に際してMIK1がWEE1プロテインキナーゼと協同的
に作用する(Lundgren、Cell 64(1991)、1111〜1122)。アフリカツメガエル
では、CDC2をTyr15およびThr14の両方でリン酸化し、CDC2複合体を有糸分裂不活
性状態に保つMYT1キナーゼが同定されている(Mueller、Science 270(1998)、
86〜89)。
【0041】 したがって、本発明に係るストレス耐性植物を得るためのもう1つの興味深い
方法は、植物に対して、ストレス条件下で少なくともWeeキナーゼ、MIK1もしく
はMYTまたはその機能的等価物の発現または活性を阻害し、それによって前記植
物のCDKの少なくとも15位のチロシンでの内因性リン酸化を阻害または低下させ
る能力を付与することによる。Weeキナーゼについては、例えば、ルー(Lew)お
よびコーンブルース(Kornbluth)、前記に総説が成されている。このキナーゼ
はCDKの上記のY15をリン酸化するほか、T-14のリン酸化の原因である可能性もあ
る。「Weeキナーゼの機能的等価物」とは、内因性植物CDKのチロシン残基および
選択的にはトレオニン残基のそれぞれのリン酸化において既知のWeeキナーゼの
機能を果たす、植物のあらゆる内因性キナーゼを意味する。このため、最近同定
されたMyt1キナーゼ(Mueller、Science 270(1995)、pp 86)は、このような
機能的等価物とみなされうる。非生物的ストレス条件下でのWeeキナーゼの発現
を抑制することにより、CDKのリン酸化が阻害されて細胞分裂(有糸分裂活性)
および増殖のダウンレギュレーションが抑制され、このためにストレス耐性が得
られると考えられる。
【0042】 したがって、本発明に係るトランスジェニック植物の組換え操作には、動物も
しくは酵母のCDC25、WEE1、MYT1もしくはMIK1遺伝子、またはより好ましくはト
ウモロコシ由来のWee1などの植物相同体の使用が含まれる;サン(Sun)、前記
参照。
【0043】 戦略としては、本明細書に記載される調節配列の使用、ならびに以下に詳細に
説明するRNAアンチセンス構築物、t-DNA挿入、共抑制、ドミナントネガティブ変
異体、相同組換え技術などによるプロテインキナーゼ(WEE、MYTおよびMIK)の
ノックアウトによって、CDC25相同体を過剰発現させることが含まれる。
【0044】 当業者には理解されると思われるが、上記のホスファターゼの発現または前記
プロテインキナーゼの阻害は、さまざまな様式で実現可能である。例えば、CDC2
5の植物相同体の発現は、内因性ホスファターゼ遺伝子の発現を誘導するための
上記に定義した調節配列の導入によって誘導しうる。さらに、前記プロテインキ
ナーゼの遺伝子発現の阻害またはその遺伝子産物の不活性化を通じて、上記のキ
ナーゼによるリン酸化を抑制することも可能である。本発明の1つの好ましい方
法において、植物細胞、植物組織または植物体に導入される前記核酸分子は、前
記CDC25またはその機能的類似体をコードする。ヒトでは、CDC25a、bおよびcと
いう3種類のホスファターゼが同定されている。CDC25aはG1/S移行期に役割を果
たし、一方、CDC25bおよびcはG2/M移行期に働くと考えられている(Sahdu、Pro
c. NatI. Acad. Sci. USA 87(1990)、5139〜5143、Galaktiniov、Cell 67(19
91)、1181〜1194、Nagata、New Biol. 10(1991)、959〜968、Jinno、EMBO J.
13(1994)、1549〜1556)。分裂酵母(S.pombe)では、CDC25ホスファターゼ
が1種類単離されている(GouldおよびNurse、Nature 342(1989)、39〜45、Lab
ibおよびNurse(1993))。植物ではCDC25コグネートはまだ単離されていないが
、細胞周期の進化的な特徴を考慮すれば、植物にも類似のホスファターゼが存在
すると思われる(参照:CDC2様プロテインキナーゼのTyr15リン酸化の可能性は
チャン(Zhang)、Planta 200(1996)、2〜12、シュップラー(Schuppler)、P
lant Physiol. 117(1998)、667〜678の研究によって示唆されており、実施例
に提示するように塩分ストレスを与えたYF植物の分析によっても示された)。マ
クキビン(McKibbin)、Plant Mol. Biol. 36(1996)、601〜612による、分裂
酵母CDC25を過剰発現するトランスジェニック植物の表現型分析により、この仮
説が裏づけられた。これらの植物は側根をより多く生じたが、このことは側根が
生じる部位である内鞘がチェックポイントを回避し、それが分裂酵母CDC25の作
用によって軽減されることを意味する。
【0045】 1つのさらなる好ましい態様において、植物細胞もしくは植物組織または植物
体に導入しようとする前記核酸分子は、前記のWEEキナーゼ、MYT、MIKまたはそ
の機能的類似体もしくは等価物のアンチセンスRNAをコードする。
【0046】 上記の蛋白質またはその少なくとも一部を新たに発現させようとする場合には
、本発明の方法において、例えばCDKムテインなどのこの種の蛋白質をコードす
る遺伝子であって、植物細胞内で発現可能な遺伝子を用いることが好ましい。し
たがって、本発明の方法のもう1つの態様において、前記核酸分子は、植物にお
ける核酸分子の発現を可能とする調節配列と機能的に結合している。前記調節配
列は、プロモーター、エンハンサー、サイレンサー、イントロン配列、3'UTRお
よび/または5'UTR領域、蛋白質および/またはRNA安定化要素を含む。前記調節
配列は、キメラ性、組織特異的、構成性または誘導性のプロモーターであること
が好ましい。「機能的に結合した」という用語は、記載される複数の構成要素が
それらの意図する様式で機能することを許容する関係にあるような並び方を指す
。コード鎖と「機能的に結合した」制御配列は、コード鎖の発現が制御配列に適
合した条件下で達成されるような方式で連結される。制御配列がプロモーターで
ある場合には2本鎖核酸を用いることが好ましいことは当業者には明らかである
。さらに、本発明に従って用いられる核酸分子は、転写終結および転写物の安定
化を実現させるポリAシグナル、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)
またはノパリンシンターゼ(Nopaline Synthase)プロモーター由来の35Sプロモ
ーターのものなどと機能的に結合することも可能である。そのほかの調節要素と
して転写ならびに翻訳エンハンサーを含めてもよい。しばしば用いられる植物性
翻訳エンハンサーはタバコモザイクウイルス(TMV)のオメガ配列であり、イン
トロン(例えば、トウモロコシShrunken遺伝子由来のイントロン-1など)を含め
ることによって発現レベルが最大100倍に高まることが示されている(Mait、Tra
nsgenic Research 6(1997)、143〜156;Ni、Plant Journal 7(1995)、661〜
676)。
【0047】 標的細胞内で機能をもつ任意のプロモーターを用いることが可能である。それ
自体が当業者に知られているCaMV35Sプロモーターは、塩ストレス(すなわち、
増殖培地における塩濃度が1w/v%NaClなど)に対する耐性が改善された植物をも
たらす。非生物的ストレス条件時に誘導されうるプロモーターを用いることが好
ましい。この種のプロモーターは、例えば、発現が増強、低下またはそれ以外の
変化を来すような遺伝子を含む、植物細胞における環境、すなわち好ましくは非
生物的であるストレスによって直接的または間接的に調節されるストレス関連遺
伝子から入手しうる。これらのストレス関連遺伝子には、特に嫌気性ストレス、
冠水ストレス、寒冷ストレス、脱水ストレス、乾燥ストレス、熱ストレスまたは
塩分により、その発現が誘導または抑制される遺伝子が含まれる。例えば、スト
レス関連遺伝子は、特にスクロースシンターゼ、ホスホグルコムターゼ、ホスホ
グルコースイソメラーゼ、フルクトース-1,6-二リン酸アルドラーゼ、グリセル
アルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、エノラ
ーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、およびア
ラニンアミノトランスフェラーゼからなる群より選択されるANPをコードしうる
。この種のプロモーターは当技術分野で周知である(例えば、LangおよびPalva
、Plant Mol. Biol. 20(1992)、951、ならびに以下の表1も参照のこと)。
【0048】
【表1】
【0049】 本発明の方法の特に好ましい1つの態様において、前記誘導性プロモーターは
非生物的ストレスによって誘導可能であり、好ましくは前記非生物的ストレスは
浸透圧ストレスであり、好ましくは塩により引き起こされる。
【0050】 上記の核酸分子は発現ベクター中に構成されることが好ましい。「発現ベクタ
ー」とは、選択された宿主細胞の形質転換のために用いることができ、選択され
た宿主においてコード配列の発現をもたらす構築物である。発現ベクターとして
は、例えばクローニングベクター、バイナリーベクターまたは組込みベクターが
可能である。発現には、核酸分子の好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写が含まれ
る。本発明の上記のベクターは、選択性および/またはスコア化可能な(scorab
le)マーカーを含むことが有利である。形質転換を受けた植物細胞、カルス、植
物組織および植物体を選択するために有用な選択マーカー遺伝子は当業者に周知
であり、これには例えば、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr(Reis
s、Plant Physiol.(Life Sci. Adv.)13(1994)、143〜149)、アミノ配糖体
であるネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシンに対する耐性を付与する
npt(Herrera-Estrella、EMBO J. 2(1983)、987〜995)ならびにハイグロマイ
シンに対する耐性を付与するhygro(Marsh、Gene 32(1984)、481〜485)に関
する選択の基盤としての代謝拮抗薬耐性が含まれる。そのほかの選択遺伝子も記
載されており、これには細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用しう
るようにするtrpB(Hartman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(1988)、8047)
、細胞がマンノースを利用しうるようにするマンノース-6-リン酸イソメラーゼ
(国際公開公報94/20627号)、およびオルニチンデカルボキシラーゼ阻害薬2-(
ジフルオロメチル)-DL-オルニチンすなわちDFMOに対する耐性を付与するODC(オ
ルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue、1987、分子生物学における最新の
情報(Current Communications in Molecular Biology)、Cold Spring Harbor
Laboratory編)、またはプラスチシジンSに対する耐性を付与するアスペルギル
ス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(Tamura、Biosci. B
iotechnol. Biochem. 59(1995)、2336〜2338)がある。
【0051】 スコア化可能な有用なマーカーも当業者に知られており、市販されている。前
記マーカーとしては、ルシフェラーゼ(Giacomin、P1. Sci. 116(1996)、59〜
72;Scikantha、J. Bact. 178(1996)、121)、緑色蛍光蛋白質(Gerdes、FEBS
Lett. 389(1996)、44〜47)またはL-グルクロニダーゼ(Jefferson、EMBO J.
6(1987)、3901〜3907)をコードする遺伝子が有利である。本態様は、本発明
のベクターを含む細胞、組織および生物体の簡便および迅速なスクリーニングの
ために特に有用である。
【0052】 本発明は、本発明に係る核酸分子および/または調節配列を少なくとも1つ含
む、遺伝子工学において伝統的に用いられるベクター、特にプラスミド、コスミ
ド、ウイルス、バクテリオファージおよびその他のベクターにも関する。特に、
本発明は、シロイヌナズナの変異型cdc2a遺伝子または別の種、好ましくは植物
種の機能的に等価な遺伝子をコードするDNA配列と機能的に結合していて、その
遺伝子産物が前記植物細胞内で機能的であるCDKムテインであって、CDKムテイン
中のCDC2aの15位のチロシンに対応する位置にリン酸化不能なアミノ酸残基を含
むような、植物細胞内で機能的であるストレス誘導性プロモーター、好ましくは
塩ストレス誘導性プロモーターを少なくとも含むベクターに関する。ムテインは
、前記CDC2aの14位のトレオニンに対応するムテインの位置にもリン酸化不能な
アミノ酸残基を含むことが好ましい。うまく機能しない可能性を最小限に抑える
ためには、植物CDK遺伝子を用いることが好ましい。この種のベクターによる形
質転換を受けた植物細胞は、非生物的ストレス条件下で、上記の調節性リン酸化
事象に対する感受性をもたないCDKムテインを産生する能力を獲得し、そのため
にストレス耐性植物または植物細胞が得られる。さらなる1つの態様において、
ベクターは、少なくともシロイヌナズナCDC2aの15位のチロシンに対応する植物C
DKの少なくとも1つのチロシンの脱リン酸を行いうるCDC25またはその機能的類似
体をコードするDNA配列と機能的に結合した、植物細胞内で機能をもつ上記の定
義によるプロモーターを含む。このようなベクターは、上記の通り、植物におい
てCDC25を発現させ、内因性植物CDKのY-15および選択的にはT-14の脱リン酸を引
き起こし、ストレス耐性の改善をもたらすために用いうる。
【0053】 種々のプラスミドおよびベクターの作製には当業者に周知の方法を用いること
ができ、これについては例えば、サムブルック(Sambrook)、分子クローニング
:実験室マニュアル(Molecular Cloning A Laboratory Manual)、Cold Spring
Harbor Laboratory(1989)N.Y.およびアウスユーベル(Ausubel)、分子生物
学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)、Gr
een Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y.(1989)に記載され
た技法を参照されたい。本発明に従って好ましく用いうるプラスミドおよびベク
ターには、当業者に周知のものが含まれる。または、本発明の核酸分子およびベ
クターを、標的細胞に送達するためのリポソーム中に再構成することもできる。
本発明はさらに、核酸分子が宿主細胞にとって外来性であるような上記のベクタ
ーを含む宿主細胞にも関する。
【0054】 「外来性である」とは、核酸分子が宿主細胞に対して異種である――これは異
なるゲノム背景を有する細胞または生物体に由来することを意味する――か、ま
たは宿主細胞に対して同種であるが前記核酸分子の天然型の相当物とは異なるゲ
ノム環境に位置することを意味する。このことは、核酸分子が宿主細胞に対して
同種であるならば、それは前記宿主細胞のゲノム中で天然の位置にはなく、特に
いえば異なる遺伝子に囲まれていることを意味する。この場合には、核酸分子は
それ自体の制御下にあっても異種プロモーターの制御下にあってもよい。宿主細
胞内に存在する本発明によるベクターまたは核酸分子は、宿主細胞のゲノム中に
組み込まれても、染色体外に何らかの形態で維持されてもよい。
【0055】 宿主細胞は、細菌、昆虫、真菌、植物または動物細胞などの任意の原核細胞ま
たは真核細胞でありうる。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロミセス属のも
の、特にS.セレビシエ(S. cerevisiae)のものである。
【0056】 本発明に係るストレス耐性植物を得るための1つの好ましい方法において、前
記能力は、a)シロイヌナズナの変異型cdc2a遺伝子または別の種、好ましくは植
物種の機能的に等価な遺伝子をコードする、前記植物細胞内で機能的なプロモー
ターの制御下にあるDNA配列を少なくとも含むベクターによる1つまたは複数の植
物細胞の形質転換であって、その遺伝子産物が前記植物細胞内で機能的でCDC2a
の15位のチロシンに対応するCDKムテインの位置にリン酸化不能なアミノ酸残基
を含むCDKムテインであって、好ましくはムテインがCDKムテインの14位にもリン
酸化不能なアミノ酸残基を含むような形質転換、 b)アグロバクテリウム・ツメ
ファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)形質転換系などによる、形質転換
を受けた1つまたは複数の植物細胞からの植物体の再生、により、前記細胞の1つ
または複数の細胞に対して付与される。しかし、当技術分野で知られた他の形質
転換法を用いてもよい。「植物細胞内で機能的なムテイン」とは、前記植物細胞
内で発現された場合に前記細胞のストレス耐性の改善につながるようなムテイン
を意味する。
【0057】 外来性DNAを植物に導入するための方法も当技術分野で周知である。これらに
は、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaci
ens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を
用いてのT-DNAによる植物細胞または組織の形質転換、プロトプラストの融合、
直接的な遺伝子導入(例えば、欧州特許第A 164 575号を参照)、注入、電気穿
孔、微粒子射入などの遺伝子銃法(biolistic method)、花粉を介した形質転換
、植物RNAウイルスを介した形質転換、リポソームを介した形質転換、損傷もし
くは酵素分解を加えた未成熟胚または損傷もしくは酵素分解を加えた胚形成性カ
ルスを用いての形質転換、および当技術分野で知られたその他の方法が含まれる
。本発明の方法に用いるベクターはさらに、植物ゲノムへの安定的組込みを可能
とするアグロバクテリウムT-DNAの「左側境界」または「右側境界」配列を含み
うる。さらに、マーカーをもたない(marker free)トランスジェニック植物、
すなわち植物の発生および植物育種のある特定の時期に選択性またはスコア化可
能なマーカー遺伝子が失われるものの作製を可能とする方法およびベクターも当
業者に知られている。これは、例えば、同時形質転換(Lyznik、Plant Mol. Bio
l. 13(1989)、151〜161;Peng、Plant Mol. Biol. 27(1995)、91〜104)に
よって、および/または植物における相同組換えを促進しうる酵素を用いるシス
テムの使用(例えば、国際公開公報第97/08331号;Bayley、Plant Mol. Biol.
18(1992)、353〜361);Lloyd、Mol. Gen. Genet. 242(1994)、653〜657;M
aeser、Mol. Gen. Genet. 230(1991)、170〜176;Onouchi、Nucl. Acids Res.
19(1991)、6373〜6378を参照)によって実現可能である。適切なベクターを
調製するための方法は、例えばサムブルック(Sambrook)(分子クローニング:
実験室マニュアル(Molecular Cloning;A Laboratory Manual)、第2版(1989
)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY)によっ
て記載されている。
【0058】 適したアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens
)の菌株およびベクター、さらにアグロバクテリウムの形質転換ならびに適切な
増殖および選択培地は当業者に周知であり、先行技術において記載されている(
GV3101(pMK90RK)、Koncz、Mol. Gen. Genet. 204(1986)、383〜396;CS8C1
(pGV 3850kan)、Deblaere、Nucl. Acid Res. 13(1985)、4777;Bevan、Nucl
eic. Acid Res. 12(1984)、8711;Koncz、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86(1
989)、8467〜8471;Koncz、Plant Mol. Biol. 20(1992)、963〜976;Koncz、
遺伝子タギングおよび発現試験のための特殊化ベクター(Specialized vectors
forgene tagging and expression studies)、Plant Molecular Biology Manu
al、第2巻、GelvinおよびSchilperoort(編)、Dordrecht、The Netherlands:K
luwer Academic Publ.(1994)、1〜22;欧州特許第A-120 516号;Hoekema:バ
イナリー植物ベクター系(Binary Plant Vector System)、Offsetdrukkerij Ka
nters B.V.、Alblasserdam(1985)、Chapter V、Fraley、Crit. Rev. Plant. S
ci.、4、1〜46;An、EMBO J. 4(1985)、277〜287)。本発明の方法にはアグロ
バクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いること
が好ましいが、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)
などの他のアグロバクテリウム菌株も、例えば前記菌株によって付与される表現
型が望ましい場合などには用いうる。
【0059】 遺伝子銃法を用いる形質転換のための方法は当業者に周知であり、例えばワン
(Wan)、Plant Physiol. 104(1994)、37〜48、バシル(Vasil)、Bio/Techn
ology 11(1993)、1553〜1558およびクリストウ(Christou)(1996)Trends i
n Plant Science 1、423〜431を参照されたい。微量注入は、ポトリカス(Potry
kus)およびスパンゲンベルグ(Spangenberg)(編)、植物に対する遺伝子導入
(Gene Transfer To Plants)、Springer Verlag、Berlin、NY(1995)の記載通
りに行うことができる。ほとんどの双子葉植物の形質転換は上記の方法によって
行いうる。しかし、単子葉植物の形質転換に関してはいくつかの好首尾な形質転
換法が開発されている。これらには、上記のものなどの遺伝子銃法を用いる形質
転換のほか、プロトプラスト形質転換、ある程度の透過化処理を行った細胞での
電気穿孔、グラスファイバーを用いたDNAの導入、アグロバクテリウムを介した
形質転換などが含まれる。
【0060】 本明細書で用いられる「形質転換」という用語は、導入に用いられる方法とは
無関係に、外来性ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入を指す。ポリヌクレオチ
ドの宿主細胞への導入は一時的でも安定的でもよく、例えばプラスミドのように
組み込まれずに維持されても、または宿主ゲノム中に組み込まれてもよい。この
結果得られた形質転換植物細胞は、続いて、当業者に知られた様式で形質転換植
物を再生させるために用いることができる。
【0061】 一般に、本発明に従って改変することができて、非リン酸化型CDKの過剰発現
および/または新たな発現を示す植物は、任意の望ましい植物種から得ることが
できる。それらは単子葉植物でも双子葉植物でもよいが、作物(crop)植物、根
菜植物、油産生植物、木材産生植物、農業生物培養植物(agricultured bioticu
ltured plant)、果実産生植物、飼料または飼草用マメ科植物、伴生植物または
園芸用植物などの、農業、材木栽培または園芸において関心がもたれる植物種に
属することが好ましく、このような植物には例えば、コムギ、オオムギ、トウモ
ロコシ、イネ、ニンジン、テンサイ、チコリ、ワタ、ヒマワリ、トマト、キャッ
サバ、ブドウ、ダイズ、サトウキビ、アマ、アブラナ、チャ、カノーラ、タマネ
ギ、アスパラガス、セロリ、キャベツ、レンズマメ、ブロッコリ、カリフラワー
、芽キャベツ、アーティチョーク、オクラ、カボチャ、ケール、コラード、ライ
ムギ、モロコシ、オートムギ、タバコ、コショウ、またはジャガイモがある。こ
れ以外の種が除外されるわけではない。地下水による灌漑が必要となる乾燥また
は半乾燥地域の耕地で生育する作物は、本発明による利益を受けると考えられる
【0062】 したがって、本発明は、核酸分子または調節配列がトランスジェニック植物細
胞に対して外来性であるような、上記の定義による核酸分子もしくは調節配列ま
たは本発明に係るベクターを含むトランスジェニック植物細胞にも関する。「外
来性」という用語の意味については前記を参照されたい。
【0063】 1つの局面において、本発明は、ゲノム中に安定的に組み込まれた形で本発明
に係る核酸分子、調節配列もしくはベクターを含む、または本発明に従って入手
しうるトランスジェニック植物細胞であって、核酸分子の発現または調節配列に
よって付与されるものが野生型植物と比べてトランスジェニック植物における上
記の非リン酸化型CDKまたは脱リン酸酵素の発現増強または新たな発現をもたら
すようなトランスジェニック植物細胞に関する。または、CDKムテインまたは対
応する脱リン酸酵素をコードする核酸分子をゲノム中に有する植物細胞を用い、
前記植物細胞が異種プロモーターおよび/またはエンハンサー要素などの上記の
調節配列の制御下にあるこの核酸分子に対応する内因性遺伝子を発現するように
改変することも可能である。CDKムテインなどをコードする核酸分子の発現を通
常は制御することのない異種プロモーターおよび上記の要素を遺伝子ターゲティ
ングベクターを用いて導入することは、前記および例えばハヤシ(Hayashi)、S
cience 258(1992)、1350〜1353、フリッツェ(Fritze)およびワルデン(Wald
en)、T-DNAタギングによる遺伝子活性化(Gene activation by T-DNA tagging
)、Methods in Molecular biology 44(Gartland, K.M.A.およびDavey, M.R.編
)、Totowa:Human Press(1995)、281〜294)などの標準的な方法、またはト
ランスポゾンタギング(Chandlee、Physiologia Plantarum 78(1990)、105〜1
15)に従って行いうる。適したプロモーターおよびエンハンサーなどのその他の
調節性要素には前記のものが含まれる。
【0064】 もう1つの局面において、本発明は、ゲノム中に安定的に組み込まれた形で本
発明に係る核酸分子、調節配列もしくはベクターを含む、または本発明に従って
入手しうるトランスジェニック植物細胞であって、核酸分子、調節配列またはそ
の一部の存在、転写および/または発現が、野生型植物と比べてトランスジェニ
ック植物における非生物的ストレス条件下でのCDKリン酸化蛋白質の合成または
活性の低下につながるようなトランスジェニック植物細胞に関する。好ましくは
、前記低下はアンチセンス、センス、リボザイム、共抑制、インビボ変異誘発、
抗体発現および/または優性変異の効果によって達成される。したがって、植物
におけるCDKリン酸化酵素の転写物に対して相補的なアンチセンスRNAをコードす
る核酸分子の使用も、本発明の主題である。これに関して、相補性とは、コード
されるRNAが100%の相補性を有する必要があることを意味するものではない。植
物細胞における発現時にCDKリン酸化蛋白質の発現を十分に抑制する程度にそれ
が高い限り、相補性の程度は低くても十分である。転写されたRNAの、このよう
なリン酸化酵素をコードする核酸分子の転写物に対する相補性は好ましくは少な
くとも90%、より好ましくは少なくとも95%である。植物細胞における転写の際
にアンチセンス効果を引き起こすためには、この種のDNA分子の長さは少なくと
も15bpであり、好ましくは長さ100bpを上回り、最も好ましくは長さ500bpを上回
るが、通常は5000bp未満であり、好ましくは2500bp未満である。また、植物細胞
における発現時に、植物細胞内で共抑制効果によって上記のリン酸化蛋白質をコ
ードする核酸分子の発現を低下させるRNAの合成をもたらすようなDNA分子を用い
ることも可能である。共抑制の原理および対応するDNA配列の作製については、
例えば国際公開公報第90/12084号に厳密に記載されている。このようなDNA分子
は、リン酸化酵素をコードする遺伝子の転写物に対して高い相同性を備えたRNA
をコードすることが好ましい。しかし、コーディングRNAが蛋白質に翻訳可能で
あることは必ずしも必要ではない。共抑制効果の原理は当業者には周知であり、
例えば、ヨルゲンセン(Jorgensen)、Trends Biotechnol. 8(1990)、340〜34
4、ニーベル(Niebel)、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 197(1995)、91〜1
03、フラベル(Flavell)、Curr. Top. Microbiol. Immunol. 197(1995)、43
〜36、パラキ(Palaqui)およびボーシェレ(Vaucheret)、Plant. Mol. Biol.
29(1995)、149〜159、ボーシェレ(Vaucheret)、Mol. Gen. Genet. 248(199
5)、311〜317、デベルネ(de Borne)、Mol. Gen. Genet. 243(1994)、613〜
621ならびに他の文献に記載されている。
【0065】 同様に、脱リン酸酵素をコードする遺伝子の転写物を特異的に切断するリボザ
イム活性を備えたRNA分子をコードするDNA分子を用いることもできる。リボザイ
ムとは、RNA分子および特異的標的配列を切断しうる触媒活性をもつRNA分子のこ
とである。組換えDNA技術を用いて、リボザイムの特異性を変更することが可能
である。リボザイムにはさまざまな物質群(class)がある。ある種の遺伝子の
転写物の特異的切断を目的とする実践的適用のためには、リボザイムの2つの異
なる群の代表から構成されるものを用いることが好ましい。第1の群はグループI
イントロン型リボザイムに属するリボザイムによって構成される。第2の群は、
特徴的な構造上の特性としていわゆる「ハンマーヘッド」モチーフを呈するリボ
ザイムからなる。標的RNA分子の特異的認識は、このモチーフに隣接する配列を
変更することによって改変させうると思われる。標的分子中の配列と塩基対を形
成することにより、これらの配列は、触媒反応およびその結果としての標的分子
の切断が起こる位置を決定する。効率的な切断が生じるために必要な配列の条件
は厳密ではないため、原理的には個々の望ましいRNA分子に対して特異的リボザ
イムを開発することができる。
【0066】 CDKに対するキナーゼをコードする遺伝子の転写物を特異的に切断するリボザ
イムをコードするDNA分子を作製するためには、例えばリボザイムの触媒ドメイ
ンをコードするDNA配列を、標的蛋白質をコードする配列と相同なDNA配列と両側
に連結させる。触媒ドメインをコードする配列は、例えば、SCMoウイルスのサテ
ライトDNA(Davies、Virology 177(1990)、216〜224およびSteinecke、EMBO J
. 11(1992)、1525〜1530)の触媒ドメイン、またはTobRウイルスのサテライト
DNA(HaseloffおよびGerlach、Nature 334(1988)、585〜591)のものでよい。
触媒ドメインに隣接するDNA配列は、本発明の上記のDNA分子に由来するものが好
ましい。細胞内のある特定の蛋白質の活性を低下させるためのリボザイムの発現
も当業者には知られており、例えば、欧州特許第B1 0321 201号に記載されてい
る。植物細胞におけるリボザイムの発現は、例えば、フォイター(Feyter)ら(
Mol. Gen. Genet. 250(1996)、329〜338)に記載されている。
【0067】 さらに、本発明の植物細胞内でCDKをリン酸化しうる酵素のキナーゼ活性を、
細胞の形質転換によってハイブリッド型RNA-DNAオリゴヌクレオチド(「キメロ
プラスト(chimeroplast)」)を細胞に導入する、いわゆる「インビボ変異誘発
」によって低下させることも可能である(TIBTECH 15(1997)、441〜447;国際
公開公報95/15972号;Kren、Hepatology 25(1997)、1462〜1468;Cole-Strau
ss、Science 273(1996)、1386〜1389)。RNA-DNAオリゴヌクレオチドのDNA成
分の一部は、前記核酸分子配列と比較してCDKをリン酸化しうる内因性酵素の核
酸配列と相同であるが、相同領域によって囲まれる形で変異を示すか、または異
種領域を含む。RNA-DNAオリゴヌクレオチドの相同領域および内因性核酸分子の
塩基対形成に続いて相同組換えを行うことにより、RNA-DNAオリゴヌクレオチド
のDNA成分に含まれる変異、または異種領域を植物細胞のゲノムに移行させるこ
とができる。これにより、活性の低下がもたらされる。
【0068】 さらに、植物におけるCDKをリン酸化しうる酵素またはそのような蛋白質の一
部、すなわち特異的断片もしくはエピトープを特異的に認識する抗体をコードす
る核酸分子を、植物における蛋白質の活性を阻害するために用いることも可能で
ある。これらの抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体または合成抗
体、さらにはFab、FvもしくはscFv断片などの抗体の断片のいずれでもよい。モ
ノクローナル抗体は、例えば、マウス骨髄腫細胞と免疫化した哺乳動物由来の脾
細胞との融合を含む、ケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Na
ture 256(1975)、495ならびにガルフレ(Galfre)、Meth. Enzymol. 73(1981
)、3に最初に記載された技法によって調製しうる。さらに、例えばハーロウ(H
arlow)およびレーン(Lane)「抗体、実験マニュアル(Antibodies、A Laborat
ory Manual)」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1988に記載された方法を用
いて、前記のペプチドに対する抗体またはその断片を入手することもできる。植
物における抗体または抗体様分子の発現は当技術分野で周知の方法によって実現
可能であり、例えば、完全サイズの抗体(During、Plant. Mol. Biol. 15(1990
)、281〜293;Hiatt、Nature 342(1989)、469〜470;Voss、Mol. Breeding 1
(1995)、39〜50)、Fab断片(De Neve、Transgenic Res. 2(1993)、227〜23
7)、scFv(Owen、Bio/Technology 10(1992)、790〜794;Zimmermann、Mol. B
reeding 4(1998)、369〜379;Tavladoraki、Nature 366(1993)、469〜472)
およびdAb(Benvenuto、Plant Mol Biol. 17(1991)、865〜874)が、タバコ、
ジャガイモ(Schouten、FEBS Lett. 415(1997)、235〜241)またはシロイヌナ
ズナで首尾よく発現されており、総蛋白質の6.8%という高い発現レベルに達し
ている(Fiedler、Immunotechnology 3(1997)、205〜216)。
【0069】 さらに、植物プロテアーゼにおけるCDKをリン酸化しうる変異型蛋白質をコー
ドする核酸分子を、野生型蛋白質の活性を妨げるために用いることも可能である
。この種の変異型はキナーゼ活性などの生物活性を失っていることが好ましく、
さらに蛋白質のアミノ酸配列におけるアミノ酸の欠失、置換および/または付加
を経た、対応する野生型蛋白質に由来するものでもよい。変異型のこの種の蛋白
質には、より高い基質親和性および/またはより高い基質代謝回転などを呈する
ような、活性亢進変異型のこの種の蛋白質も含まれる。さらに、このような活性
亢進型は、細胞環境において蛋白質を安定化させるアミノ酸が組み入れられてい
るために細胞内でより安定な可能性がある。これらの変異型は天然のものでも遺
伝子操作を受けた変異体でもよく、これについては前記も参照されたい。
【0070】 植物においてCDKをリン酸化しうる蛋白質に関する核酸およびアミノ酸配列は
、例えば、上記のWee-キナーゼ、MIKまたはMYT蛋白質から得ることができる。さ
らに、植物細胞においてCDKをリン酸化しうる酵素の発現を制御する転写因子な
どの調節蛋白質をコードする遺伝子の発現を低下させるために、上記のアンチセ
ンス、リボザイム、共抑制、インビボ変異誘発、抗体発現および優性変異効果も
用いうることは当業者には直ちに明らかである。同様に、上記の方法を、例えば
、CDKリン酸化酵素が活性化するために必要な調節蛋白質などの活性をノックア
ウトするために用いることもできる。さらに、上記の方法は、植物細胞における
内因性の野生型CDKの発現または活性をノックアウトするために用いることが可
能である。これには、CDKムテインが植物細胞内で野生型と競合せず、そのため
、CDKムテインが低濃度であっても望ましい表現型を得るには十分であると思わ
れるという利点があると考えられる。
【0071】 また、本発明の開示から、上記に特定した戦略の任意の組み合わせを、非リン
酸化型のCDKが存在するために新規または増強された非生物的ストレス耐性を示
すトランスジェニック植物の作出に用いうることも明らかである。このような組
み合わせは、例えば、植物細胞、植物組織または植物への対応する核酸分子の(
同時)形質転換導入などによって行うことができ、または本発明の方法のさまざ
まな態様によって作出されるトランスジェニック植物の交配によって行ってもよ
い。同様に、非生物的ストレス耐性および遺伝子操作による別の特性を兼ね備え
るように、本発明の方法によって入手しうる植物を他のトランスジェニック植物
と交配させることも可能である。
【0072】 さらに、本発明は、本発明によるトランスジェニック植物細胞を含むトランス
ジェニック植物および植物組織にも関する。前記トランスジェニック植物細胞は
、上記の定義による核酸分子または調節配列を少なくとも1つ含むか、または本
発明の方法によって入手可能である。さらに、本発明は、本発明の方法によって
入手しうるトランスジェニック植物および植物組織に関する。上記の通り、前記
トランスジェニック植物は、非生物的ストレス耐性のために種々のイディオタイ
プ変化を示すと思われ、好ましくは対応する野生型植物と比べて植物成長、根成
長および/または収穫量の加速および/または増強を示す。
【0073】 前記の通り、本発明の植物細胞、植物組織、特にトランスジェニック植物は、
対応する野生型植物と比べて、ある程度の(高い)非生物的ストレス耐性を示す
。「非生物的ストレス」の意味については前記参照。本発明の1つの好ましい態
様において、トランスジェニック植物は浸透圧ストレス、好ましくは塩ストレス
に対する耐性の増強を示す。塩ストレスに対する耐性の増強とは、形質転換を受
けていない対応する野生型植物が成長可能な培地と比べて塩含有率が少なくとも
約10%のオーダーで高い土壌などの培地上で成長しうるトランスジェニック植物
の能力を指すものと理解され、これは成長改善などの植物の活力に対しても有益
な効果をもたらす。本発明のトランスジェニック植物は、対応する野生型植物が
成長可能な培地または土壌よりも、少なくとも約50%、好ましくは約75%を上回
る、特に好ましくは少なくとも約100%を上回る、さらにより好ましくは約200%
を上回る塩分を含む培地または土壌で成長可能であることが有利である。
【0074】 本発明の特に好ましい1つの態様において、上記のトランスジェニック植物は
、40mM、より好ましくは100mM、さらにより好ましくは200mM、さらにより有利に
は300mMの塩を含む培地または土壌で成長可能である。前記の塩としては、例え
ば、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、塩
化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化カリウムなどの水溶性無機塩、農業用肥
料の塩、およびアルカリまたは酸土壌条件に付随する塩が可能である。好ましく
は、前記塩はNaClである。
【0075】 本発明に従って得られた形質転換植物は、従来の育種方式、もしくは同一の特
質を備えたさらに形質転換がなされた植物を作製するためのインビトロ植物繁殖
に用いることができ、および/または同一もしくは近縁種のその他の変種に同じ
特質を導入するために用いることもできる。
【0076】 さらに、他のストレス耐性遺伝子を用いて生物的または非生物的ストレス耐性
を付与するために、ストレス条件下で急速な/高い成長速度を維持するという本
発明のトランスジェニック植物の特徴を種々のアプローチと組み合わせることも
可能である。このようなストレス耐性遺伝子のいくつかの例を表2に示すが、概
論についてはホルムバーグ(Holmberg)およびビューロー(Bulow)、Trends Pl
ant Sci. 3、61〜66(1998)を参照されたい。ストレス耐性遺伝子の導入を含む
先行技術のアプローチのほとんどには、(非トランスジェニック対照と比べて)
正常な非ストレス条件下での成長が低下する、すなわち、ストレス耐性が成長お
よび生産性を犠牲にしたものであるという欠点がある。正常な成長条件下でスト
レス応答性遺伝子の構成性発現と成長速度の低下との間にこの相関が認められる
ことは、ストレス応答の制御と成長制御との間に相互干渉的な機構が存在するこ
とを意味する。このため、CDK蛋白質の抑制性リン酸化を防止または除去するこ
とによって細胞分裂(および増殖)をストレス制御に対して非感受性にすること
も、非ストレス条件下でストレス耐性機構を構成的に発現する植物の成長を早め
ることにつながると考えられる。
【0077】 さらに、マンニトール、プロリンなどの浸透圧保護物質、グリシンベタイン、
水チャンネル蛋白質などの他のストレス耐性遺伝子を植物に付与するために、非
生物的ストレス耐性を示すという本発明のトランスジェニック植物の特徴を種々
のアプローチと組み合わせることも可能である。したがって、植物に対して非生
物的ストレス耐性を付与するための本発明のアプローチは、種々のストレス耐性
遺伝子の導入を含む先行技術のアプローチと組み合わせることができる;例えば
表2参照。
【0078】
【表2】
【0079】 したがって、本発明の所見から、非生物的ストレス条件下における成長能力が
あって、例えばもう1つの導入遺伝子が存在するために、天然の野生型植物と比
べてさらに新たな表現型特性を示すトランスジェニック植物を作製することも今
や可能である。このためには、上記の核酸分子および調節配列を、植物に付加的
な表現型を付与する他の導入遺伝子と併用することができる。同様に、本発明の
方法に従って植物に非生物的ストレス耐性をまず付与し、続いて別の段階で、そ
の存在によって前記植物に新たな付加的な表現型をもたらすさらなる核酸分子を
用いる方法に従ってこの種の植物の形質転換を行うことも可能である。形質転換
の実際の効率とは無関係に、本発明の結果では、天然の野生型植物と比べて少な
くとも2つの新たな特性が示されており、それは非生物的ストレス、特に浸透圧
ストレス、好ましくは高度の塩分に対する耐性の増強、および前記植物における
さらなる核酸分子の存在に起因する表現型である。例えば、前記表現型は、相同
もしくは異種遺伝子の(過剰)発現または植物の内因性遺伝子またはそれらの遺
伝子産物の抑制によって付与される。
【0080】 トランスジェニック植物におけるある種の代謝経路の操作を目的とした相同ま
たは異種遺伝子の(過剰)発現ならびにアンチセンス阻害および共抑制のいくつ
かの例は、ハーバース(Herbers)(TIBTECH 14(1996)、198〜205)で総説が
成されている:標的遺伝子の(プレ)-mRNAを特異的に切断しうるさまざまな種
類のリボザイムは、例えば、欧州特許第B1 0291 533号、欧州特許第A10 321 201
号および欧州特許第A2 0 360 257号に記載されている。適した標的部位および対
応するリボザイムの選択は、例えば、シュタイネッケ(Steinecke)、Ribozymes
、Methods in Cell Biology 50、ガルブレース(Galbraith)ら編、Academic Pr
ess、Inc.(1995)、449〜460における記載の通りに行うことができる。リボザ
イムを介したウイルス耐性に関する例は、フォイター(Feyter)(Mol. Gen. Ge
net. 250(1996)、329〜228)に記載されている。したがって、本発明の方法を
、さらなる任意の望ましい特質を備えたトランスジェニックストレス耐性植物を
作製するために用いうることは当業者には直ちに明らかであり(総説については
、TIPTEC Plant Product & Crop Biotechnology 13(1995)、312〜397を参照)
、このような特質には(i)除草剤耐性(DE-A-3701623;Stalker、Science 242
(1988)、419)、(ii)昆虫耐性(Vaek、Plant Cell 5(1987)、159〜169)
、(iii)ウイルス耐性(Powell、Science 232(1986)、738〜743;Pappu、Wor
ld Journal of Microbiology & Biotechnology 11(1995)、426〜437;Lawson
、Phytopathology 86(1996)56suppl.)、(vi)オゾン耐性(Van Camp、Biote
ch. 12(1994)、165〜168)、(v)果実の保存性の改善(Oelfer、Science 254
(1991)、437.439)、(vi)デンプンの組成および/または生産の改善(Stark
、Science 242(1992)、419;Visser、Mol. Gen. Genet. 225(1991)、289〜2
96)、(vii)脂質組成の変更(Voelker、Science 257(1992)、72〜74)、(v
iii)(バイオ)ポリマーの生産(Poirer、Science 256(1992)、520〜523)、
(ix)花の色の変更、これは例えば、アントシアニンおよびフラボノイド生合成
経路の操作による(Meyer、Nature 330(1987)、667〜678、国際公開公報第90
/ 12084号)、(x)細菌、昆虫および真菌に対する耐性(Duering、Molecular
Breeding 2(1996)、297〜305;Strittmatter、Bio/Technology 13(1995)、
1085〜1089;Estruch、Nature Biotechnology 15(1997)、137〜141)、(xi)
アルカロイドおよび/または強心配糖体の組成の変更、(xii)雄性および/ま
たは雌性不稔の維持の誘導(欧州特許第A1 0 412 006号;欧州特許第A1 0 223 3
99号;国際公開公報第93/25695号)、(xiii)花序/花の寿命の延長、ならび
に(xvi)ストレス耐性が含まれる;表2に示したものを含む前記の参考文献を参
照のこと。
【0081】 したがって、本発明は、遺伝子操作のために非生物的ストレス耐性を示し、本
発明の方法に従って入手可能であって、上記のものの1つなどの新規表現型を植
物に付与するさらなる核酸分子をさらに含む、あらゆる植物細胞、植物組織また
は植物体に関する。
【0082】 前記の通り、上記に言及した個々の表現型を示す植物を交配させることによっ
てアプローチを組み合わせることができる。このような植物も本発明の一部であ
る。形質転換植物から得られる種子も遺伝的に同じ特質を含んでおり、本発明の
一部である。前記の通り、本発明は当業者に知られた任意の形質転換法によって
形質転換されうるあらゆる植物および穀物に対して原則的に適用可能であり、こ
れには前記のもの、例えばトウモロコシ、コムギ、オオムギ、イネ、脂肪種子作
物、樹木種、テンサイ、キャッサバ、トマト、ジャガイモ、その他の数多くの野
菜、果物が含まれる。
【0083】 さらにもう1つの局面において、本発明は、本発明に係る核酸分子を発現する
トランスジェニック植物細胞を含む本発明に係るトランスジェニック植物の収穫
可能部分および繁殖材料にも関する。収穫可能部分は原則として植物の任意の有
用な部分であってよく、例えば花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子、根
などである。繁殖材料には、例えば種子、果実、挿木、実生、塊茎、台木が含ま
れる。
【0084】 上記の開示を理解した当業者が、上記の通り、細胞周期の進行のストレス誘発
性ダウンレギュレーションを抑制する能力を植物に付与するための数多くの技法
を適用しうることは理解されると思われる。CDKムテインをコードする遺伝子に
よる植物細胞の形質転換の代わりに、またはそれに加えて、CaMV35Sプロモータ
ーなどの適したプロモーターの制御下にある機能的cdc25遺伝子による前記細胞
の形質転換によってCDC25もしくはその機能的類似体を植物細胞内で過剰発現さ
せること、またはWee-キナーゼ-mRNAのように、ノックアウトすることが望まし
い任意の蛋白質をコードするmRNAと塩基対を形成し、その切断をもたらすアンチ
センスRNAをコードする核酸による形質転換を行うことが可能である。
【0085】 したがって、本発明は一般に、非生物的ストレス耐性を植物に付与するための
、および/または植物用の選択マーカーとしての、上記の核酸分子、調節配列お
よびベクターの使用に関する。
【0086】 非生物的ストレス耐性を付与するための本発明の方法による上記の核酸分子、
調節配列およびベクターは、例えば、除草剤などの植物細胞死滅効果に対する耐
性(すなわち抵抗性)を付与しうる酵素またはそのムテインの(過剰)発現を用
いる他のシステムによる植物における選択マーカーとして用いうる。このような
システムの一例は、除草剤グリホスフェート(glyphosphate)に対する耐性を付
与する酵素である5-エノールピルブリシキメート-3-リン酸(5-enolpyruvlyshik
imate-3-phosphate)(EPSP)シンターゼの過剰発現である。同様の方式で、上
記の核酸分子、調節配列およびベクターを非生物的ストレス、特に添付する実施
例で示すような塩ストレスに対する耐性を付与するために用いることも可能であ
る。例えば、本発明の方法に従って得られるトランスジェニック植物は、例えば
40〜300mMの塩、例えばNaClを含む土壌により、温室内で容易に選択することが
できる。
【0087】 前記に考察した通り、非生物的ストレス条件下における植物細胞および植物の
挙動の検討において、細胞分裂(細胞周期)のストレス依存的ダウンレギュレー
ションが内因性細胞成分によって媒介されることを本発明に従って示すことがで
きた。前記成分は、ストレス誘発性の変化を生じ、それによって活性化または不
活性化される細胞周期調節蛋白質を含むと思われる。さらに、驚くべきことに、
例えば、上記の内因性細胞成分の改変もしくは阻害、またはそれとの競合、また
はその調節作用の回避などによって、非生物的ストレス、特に土壌の多量の塩分
などによる浸透圧ストレス条件下での細胞分裂のダウンレギュレーションを抑え
、さらにはそれを回避する能力を植物に対して付与し、それによって植物が前記
ストレス条件に対する耐性をもたせうることが示された。したがって、さらに別
の1つの態様において、本発明は、浸透圧ストレス耐性植物を作製するための、
細胞分裂のストレス誘発性ダウンレギュレーションを抑制しうる核酸分子または
調節配列の使用に関する。
【0088】 さらに、本発明は、塩含有量が40mMから300mMまでの土壌で栽培するための、
本発明の方法によって入手しうる植物または前記の植物の使用に関する。
【0089】 これらおよびその他の態様は、本発明の説明および実施例によって開示および
包含される。本発明に従って用いられる方法、使用および化合物の任意の1つに
関するさらなる文献は、例えば電子装置を用いて公的ライブラリーから取り出す
ことができる。例えば、インターネット上の例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.go
v/PubMed/medline. htmlで利用可能な公的データベース「メドライン(Medline
)」を用いてもよい。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/、http://www.infobiogen.
fr/、http://www.f ml. chlbiologylresearch_tools. html、http://www.tigr.
orglなどのほかのデータベースおよびアドレスも当業者には周知であり、http:/
/www.lycos.com.などを用いて入手することもできる。バイオテクノロジーにお
ける特許情報の概要ならびに遡及的検索およびカレント・アウェアネスのために
有用な特許情報の関連情報源の概観は、バークス(Berks)、TIBTECH 12(1994
)、352〜364に示されている。
【0090】 以下の非制限的な実施例を参照することにより、本発明の説明をさらに行う。
【0091】 実施例において別に述べる場合を除き、組換えDNA技術はすべて、サムブルッ
ク(Sambrook)ら(1989)、分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cl
oning :A Laboratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NY、
またはアウスユーベル(Ausubel)ら(1994)、分子生物学における最新プロト
コール、最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology、Curren
t Protocols)の第1巻および第2巻に記載された手順に従って行われる。植物分
子の研究のための標準的な材料および方法は、バイオスサイエンティフィックパ
ブリケーションズ社(BIOS Scientific Publications Ltd)(UK)およびブラッ
クウェルサイエンティフィックパブリケーションズ社(Blackwell Scientific P
ublications)(UK)から共同出版されているR.D.D. クロイ(Croy)による「植
物分子生物学ラブファーセ(Plant Molecular Biology Labfase)」(1993)に
記載されている。
【0092】 実施例1:塩ストレスに反応して生じる形態変化および細胞周期調節遺伝子の発
現との相関 塩ストレスに反応して生じる形態変化を検討するために、既知の3種類の植物
細胞周期調節蛋白質の組織化学的分析を行った。そのために、サイクリン(CycA
2;1、CycBl;1)およびCDK(CDC2aAt)プロモーター-gus融合物による形質転換を
それぞれ行ったトランスジェニック植物に対して経時的推移に関する実験を行っ
た。サイクリンおよびCDKプロモーターはいずれもシロイヌナズナに由来する。1
0日齢のシロイヌナズナを1%NaClを含む固形培地に移し、12時間、36時間、4日
、1週および2週後にGUS活性および形態変化を観測した。12時間処理後に頂端分
裂組織におけるプロモーターの活性が低下したが、この時点ではまだ形態変化は
認められなかった。成長36時間後には塩の存在下で、膨潤した根先端ですべての
細胞周期遺伝子の発現の低下が認められ、同時に根頂端分裂組織の収縮が認めら
れた。4日後には、対照植物と比べてストレス負荷植物の地上部分に形態変化が
明らかに認められた。ストレス負荷植物の方が胚軸の伸長が少ないために丈が短
く、葉も小型であった。ストレスに対する適応期間中に苗条頂端分裂組織におい
てCycA2;1およびCycB1;1の発現誘導が認められた。塩含有培地で2週間成長させ
た後に葉の長さおよび根の分裂組織領域の長さを測定したところ、対照植物に比
べて著しく短いことが示された。発生した葉の数は塩ストレス負荷植物の方が対
照植物よりも有意に少なかった。対照植物とは異なり、塩ストレス負荷植物の拡
がりつつある葉ではCycB1;1およびCDC2aAtの発現に関するGUS染色はいずれも検
出されず、このことからこれらの器官における有糸分裂活性が低下していること
が示された。
【0093】 実施例2:CaMV35Sプロモーターの制御下にあるCDC2a-Y15F/T14A変異型遺伝子を
含むシロイヌナズナの塩ストレスに対する耐性の改善 塩ストレスに対する反応に関して、CaMV35Sプロモーターの制御下にあるCDC2a
-Y15F/T14A変異型遺伝子を含むトランスジェニック・シロイヌナズナ(Hemerly
、EMBO J. 14(1995)、3925〜3936を参照)と野生型植物との比較研究を行った
。シロイヌナズナ(生態型C24)に、リン酸化部位T14(アミノ酸第14位のトレオ
ニン)およびY15(アミノ酸第15位のチロシン)がA14(アミノ酸第14位のアラニ
ン)およびF15(アミノ酸第15位のフェニルアラニン)に変化した、CaMV35Sプロ
モーターの制御下にある変異型CDC2aAt遺伝子を含むように操作した。シロイヌ
ナズナ系統における変異型CDC2a-Y15F/T14Aの過剰発現による劇的な変化は発育
に関して認められなかった。唯一認められたのは頂芽優性の傾向のみであった。
塩ストレスに対する反応を検討するために、リン酸化不能なAla14およびPhe15残
基を有する変異型CDC2aAtであるCDC2a-Y15F/T14Aを過剰発現する2つの独立した
トランスジェニック・シロイヌナズナ系統(YF2およびYF5)を選択した。対照と
して、形質転換を受けていないシロイヌナズナ(C24)およびCaMV35Sプロモータ
ーの制御下にある非変異型CDC2aAt遺伝子の構築物を有するトランスジェニック
植物を実験に含めた。固形発芽培地で成長させた10日齢の植物を1%NaClを含む
同じ培地に移し、それらの成長および発育を観測して対照植物と比較した。いず
れの変異型系統も塩分に対する耐性の改善を示し、これは表現型の上でも認めら
れた。塩ストレス負荷を受けた変異型植物の方が対照の非形質転換植物および野
生型CDC2aAt遺伝子を過剰発現する植物よりも葉が大きく長かった。さらに、野
生型植物(WT)および野生型CDC2aAt(CDC2aWT)を異所性に発現するトランスジ
ェニック・シロイヌナズナと比べて、NaCl存在下における栽培後の苗条成長はYF
系統の方が高度であった。さらに、塩分を除去した後の回復もYF系統の方がCDC2
aWTおよびWT植物よりも早かった(図1)。前記の通り、CDC2aWTおよびYF系統は
それぞれ、野生型ならびにThr14およびTyr15がAla14およびPhe15残基に置換され
、構成性CaMV35Sプロモーター(Hemerly、EMBO J. 14(1995)、3925〜3936)の
制御下にある変異型CDC2aAtを含む。固形K1発芽培地(Valvekens、Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 85(1988)、5536〜5540)上で無菌条件下で10日間成長させた
シロイヌナズナ実生(生態型C24)を、同じ培地に1%NaClを添加したものに移し
て7日間おいた。それらを塩分から解放するために、それらを再びNaClを含まな
い固形K1培地に移した。7日間回復させた後に写真を撮影した。
【0094】 成長を定量的に評価するために、葉表皮細胞の数および胚軸の長さを測定した
。固形K1培地上にてインビトロで成長させた10日齢のシロイヌナズナ実生を、同
じ培地に1%NaClを添加したもの、または添加しないものに移し、それぞれ7日間
おいた。表皮細胞数および個々の細胞の表面積は、ライツ(Leitz)社のディア
プラン(Diaplan)顕微鏡(Leitz、Wetzlar、Germany)に装着したDIC光学装置
を用いて、第3葉の向軸葉表面のカメラルシダ像をデジタル化したものから求め
た。第3葉を選択した理由は、塩環境に移した時点で、活発に分裂する細胞の指
標であるCycB1;1:gusマーカー(Ferreira、植物細胞 6(1994)、1763〜1774)
が発現したことに基づく。100%メタノール中で固定し、乳酸で明瞭化したホー
ルマウント葉における表皮細胞の単層を観察した。画像解析はパブリック・ドメ
インのシリコンイメージプログラム(Scion Image Program)(バージョンβ-3b
、Scion Corporation)を用いて行った。各遺伝子型に関して報告した平均は、3
つの異なる葉に関する3回の独立した測定の平均値とした。1つの遺伝子型につき
、少なくとも10体の植物の胚軸長をツァイス(Zeiss)立体顕微鏡を用いて測定
した。データはすべて、マイクロソフト社のエクセルプログラム(Excell Micro
soft Program)を用いてヒストグラムに組み入れた。検討したすべての系統にお
いて、塩ストレスは葉の総表面積および表皮細胞数の減少を引き起こした(図2a
、b)。興味深いことに、表皮細胞の密度はYF2およびYF5の葉の方が有意に高く
(図2c)、このことはストレス負荷時により多くの細胞分裂が起こったことを意
味する。これと一致して、表皮細胞の平均サイズはYFの方がWTおよびCDC2aWT系
統よりも小さく(図2d)、酵母wee表現型と同程度であった。さらに、メリステ
モイドからの分裂によって形成される気孔複合体(Yang、植物細胞 7(1995)、
2227〜2239)の発達は、ストレス負荷YFの方が対照系統(CDC2aAtWTおよびWT)
よりも高度であった(図2a)。胚軸の成長も、実生を塩環境に移した後にWTおよ
びCDC2aWT系統では低下したが、一方、YF系統ではこれは認められなかった(図2
e)。これらのデータは、シロイヌナズナ実生の胚軸成長には細胞分裂が深く関
与しないため、WTおよびCDC2aWTと異なり、YF系統では塩ストレス時に伸長の抑
制および遅延が起こらない可能性を示唆する(Gendreau、Plant Physiol. 114(
1)(1997)、295〜305)。
【0095】 観察された表現型とCDC2活性との相関を調べるために、CDK複合体のH1キナー
ゼ活性を測定した(図3)。シロイヌナズナ実生を固形K1培地上にて無菌条件下
で10日間成長させ、続いて液体K1培地に移して2時間おいた。続いて植物を、1%
NaClを添加した、または添加しない新鮮な液体K1培地に移した。3および24時間
後に試料を採取し、H1キナーゼ活性を測定した(Azzi、Eur. J. Biochem. 203(
1992)、353〜360)。蛋白質濃度は、ウシ血清アルブミンを標準物質として用い
、プロテインアッセイキット(Protein Assay kit)(Bio-Rad、Munich、German
y)を用いて測定した。ヒストンH1キナーゼアッセイ法は、総蛋白質50μgおよび
p13SUC1アガロースビーズの50%懸濁液20μlを用い、p13SUC1親和性(Azzi
、Eur. J. Biochem. 203(1992)、353〜360)によって粗抽出物から精製したCD
K複合体を用いて行った。リン酸化されたヒストンH1は、ホスホイメージャース
キャニング(Molecular、Eugene、OR)によって可視化した。CDC2様キナーゼ活
性はWTでは塩ストレスを加えると急激に低下したが、CDC2aWTおよびYF2系統では
高値に保たれた。しかし、塩分負荷時にCDC2aWTとYF植物との間にみられた成長
の差はキナーゼ活性の測定値には反映されなかった。キナーゼ活性の測定に用い
た方法の定量的検出限界が(Azzi、Eur. J. Biochem. 203(1992)、353〜360)
、トランスジェニック系統の間のキナーゼ活性の差を描出する上での限界になっ
た可能性がある。
【0096】 このように、YF植物の成長増強により、塩ストレスなどの非生物的ストレス時
にCDC2aAt複合体のリン酸化状態を変化させることによってCDC2aAt活性を阻害す
る調節制御機構の重要性が示された。CDC2aAtの活性はG1/SおよびG2/M移行期
で最大であり、これはこの2つのチェックポイントの機能的関与を示唆する。
【0097】 このストレス誘発性制御機構がどの移行期に働くかを明らかにするため、NaCl
添加後のシロイヌナズナ細胞懸濁液の核含有量を分析した。シロイヌナズナ細胞
系(Axelos、Mol. Gen. Genet. 219(1989)、106〜112)を、0.2mg/lのα-ナ
フタレン酸を添加したガンボルグ(Gamborg)B5培地(Sigma)中で7日毎に継代
培養した。新鮮培地中に継代培養を行ってから48時間後にNaCl(0.5%)を添加
した。細胞のDNA核含有量を測定するために、細胞懸濁液1mlを遠心して核を遊離
させた後に(Glab、FEBS Lelt. 353(2)(1994)、207〜211)フローサイトメ
トリー分析を行った(Biorad、Bryte HS)。塩分により、シロイヌナズナ細胞懸
濁液の培養物においてG2期停止が引き起こされることが明らかになった(図4)
。脱水状態のコムギ葉(Schuppler、Plant Physiol. 117(1998)、667〜678)
および高浸透圧下の酵母(ShiozakiおよびRussel、Nature 378(1995)、739〜7
43)においてもG2/M期停止が報告されている。コムギ葉では水ストレスの結果
としてCDC2様蛋白質のTyrリン酸化が起こったものと推測されている(Schuppler
、Plant Physiol. 117(1998)、667〜678)が、この過程に関与する特異的CDC2
蛋白質およびリン酸化部位に関する手がかりは全く得られていない。
【0098】 上記に示した通り、細胞周期の進行調節と非生物的ストレス、特に塩ストレス
による成長抑制との間に関連があるという遺伝学的証拠が初めて得られた。本発
明によって得られたデータは、環境シグナルと連関したG2/M境界期のCDC2 Tyr1
5チェックポイント制御が植物で保存されていることを示す。哺乳動物は少なく
とも3種類の異なるCDC25 Tyr15ホスファターゼを含み、そのうち2つはG2/M移行
期に働くとみられている(Sadhu、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87(1990)、51
39〜5143;Galaktionov、Cell 67(1991)、1181〜1194. Cell 57、1181〜1194
;Nagata、New Biol. 10(1991)、959〜968;Suto、EMBO J. 13(1994)、1549
〜1556)。分裂酵母では、CDC2の抑制性Tyr15リン酸化においてMIK1がWEE1プロ
テインキナーゼと協同的に作用する(Lundgren、Cell 64(1991)、1111〜1122
)。WEE1のほかに、CDC2をThr14およびTyr15の両方でリン酸化するMYT1プロテイ
ンキナーゼがアフリカツメガエルで見つかっている(Mueller、Science 270(19
98)、86〜89)。細胞周期調節の進化的な特徴を考慮すれば、植物にも類似のホ
スファターゼおよび近縁キナーゼが存在すると思われる。CDK活性を調節するこ
れらのプロテインホスファターゼおよびキナーゼの遺伝的操作は、将来的には非
生物的ストレス耐性植物、特に浸透圧耐性植物の組換え作出に貢献する可能性が
ある。
【0099】 以上を総括すると、本発明に従って行った実験により、サイクリン依存性キナ
ーゼのストレス誘発性リン酸化が抑制性成長応答をもたらすことが示された。前
記の態様において考察したように、この所見は植物科学および農業においていく
つかの有益な応用への道を開くものである。
【0100】 実施例3:その他のストレス条件を定義するための実験設定 植物が塩分ストレス以外の環境ストレスに対しても異なる反応を示すかどうか
を確認するために、当業者は当技術分野で知られた方法(例えば、前記の箇所で
引用した参考文献を参照)に従って実験をデザインすることができ、例えば植物
を以下に対して曝露する。
【0101】 - 寒冷ストレス:2〜5℃ - 熱ストレス:28〜40℃ - 乾燥ストレス:水を5〜14日間与えない、または水を5日間与えず、続いて水
を2日間与え、その後の5日間は水を与えない - 凍結ストレス:-6〜-4℃ - ストレス条件下での成長:固形K1培地にて無菌条件下で成長させた10日齢の
シロイヌナズナ実生(WT、CDC2aAtWT、YF2およびYF5)をグロースチャンバーに
移し、温度を例えば4℃に下げる(低温刺激)か、28℃に上げる(熱刺激)。成
長の差を観察するために、移して4〜10日後から毎日観察することが可能である
。 - ストレス条件からの回復:上記のストレス負荷植物(低温または熱刺激)を4
〜10日後に正常な成長条件に戻す。戻した時点から最大15日にわたって毎日観察
を行うことが可能である。
【0102】 ストレスに対する曝露期間およびストレスの経験的な値(例えば、4℃対6℃)
は検討しようとする植物種に応じて異なると考えられるが、当業者はこれらの期
間または値を容易に決定することができる。
【0103】 本発明を、以上の説明および実施例において詳細に説明したもの以外の形で実
施しうることは明らかであると思われる。以上の開示に鑑みて本発明のさまざま
な改変または変更が可能であり、それらは添付する特許請求の範囲に含まれる。
【0104】 発明の背景、詳細な説明および実施例において引用した文書(特許、特許出願
、学術誌の論文、要旨、実験マニュアル、書籍またはその他の開示を含む)のそ
れぞれの開示の全体は、参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の説明】
【図1】 野生型(WT)、CDC2aWT、YF2およびYF5系統の塩ストレスからの
回復。 (A)K1培地に移して7日後の対照植物 (B)1%NaClを含むK1培地に移して7日後の塩ストレス負荷植物 (C)K1培地に移して14日後の対照植物 (D)塩ストレス負荷植物の1%含有K1培地からの回復7日後
【図2】 WT、CDC2aWT、YF2およびYF5系統の塩ストレス時の成長の差 (a)非ストレス負荷WT(A)、CDC2aWT(C)、YF2(E)、YF5(G)およびストレ
ス負荷WT(B)、CDC2aWT(D)、YF2(F)、YF5(H)植物の第3葉の向軸表皮層 (b)塩ストレス時の第3葉の総表面積の減少 (c)正常条件およびストレス条件における葉面積単位当たりの表皮細胞数 (d)正常条件および塩ストレス条件における第3葉の平均細胞サイズ (e)塩ストレス時の胚軸の伸長速度
【図3】 ストレス負荷および非ストレス負荷WT、CDC2aWTおよびYF2系統の
ヒストンH1 CDK活性
【図4】 培地へのNaCl添加時および非添加時の4Cを含有するG2期シロイヌ
ナズナ細胞の割合(---. 0%NaCl、--- 0.5%NaCl)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SL,SZ,UG,ZW),E A(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ ,TM),AE,AL,AM,AT,AU,AZ,BA ,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN,CU, CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,GD,G E,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS ,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK, LR,LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,M N,MW,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU ,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM, TR,TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,Z A,ZW (72)発明者 ベックマン トム ベルギー国 メレルベク アベンスクテー ル 9 Fターム(参考) 2B030 AA02 AB03 AD20 CA06 CA17 CA19 CB02 CD03 CD07 CD09 CD10 CD13 4B024 AA08 BA79 CA01 DA01 FA02 FA06 GA11 GA17 HA01 4B065 AA88X AA89X AA89Y AB01 AC08 BA02 CA53

Claims (34)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 核酸分子または調節配列を植物細胞、植物組織または植物体
    に導入することを含む、非生物的ストレス条件に対する耐性をもつ植物を得るた
    めの方法であって、該核酸分子または調節配列の導入が、非生物的ストレス条件
    下における抑制性リン酸化に対する感受性をもたないサイクリン依存性キナーゼ
    (CDK)蛋白質の存在をもたらす方法。
  2. 【請求項2】 CDKがPSTAIRE型CDKである、請求項1記載の方法。
  3. 【請求項3】 CDKがCDC2aである、請求項1または2記載の方法。
  4. 【請求項4】 CDKがシロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)に由来する、
    請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 【請求項5】 CDKが、シロイヌナズナCDC2aのアミノ酸配列中の15位に対応
    する位置にあるチロシンの箇所にリン酸を含まない、請求項1から4のいずれか一
    項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 CDK蛋白質が、シロイヌナズナCDC2aのアミノ酸配列中の15位
    のチロシンおよび14位のトレオニンにそれぞれ対応するチロシンおよびトレオニ
    ンのいずれにもリン酸基を含まない、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法
  7. 【請求項7】 CDK蛋白質がリン酸化不能なCDKムテインである、請求項1から
    6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 【請求項8】 CDKムテインの15位のチロシンがリン酸化不能なアミノ酸残基
    に置換されている、請求項7記載の方法。
  9. 【請求項9】 CDKムテインが14位にリン酸化不能なアミノ酸残基をさらに含
    む、請求項8記載の方法。
  10. 【請求項10】 CDKムテインがY-15→F-15変異を含む、請求項7から9のいず
    れか一項に記載の方法。
  11. 【請求項11】 CDKムテインがT-14→A-14変異も含む、請求項7から10のいず
    れか一項に記載の方法。
  12. 【請求項12】 核酸分子がリン酸化不能な型のCDKをコードする、請求項7か
    ら11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 【請求項13】 非リン酸化型のCDKがCDKの脱リン酸化および/またはリン酸
    化の阻害による、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
  14. 【請求項14】 脱リン酸化が、植物の内因性CDKの少なくとも15位のチロシ
    ンを脱リン酸化できるCDC25またはその機能的類似体によって付与される、請求
    項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 リン酸化の阻害が、植物のCDKの少なくとも15位のチロシン
    の内因性リン酸化を阻害するWee-キナーゼ、MIK、MYTまたはその機能的等価物の
    発現または活性の抑制によって付与される、請求項13記載の方法。
  16. 【請求項16】 核酸分子が、CDC25、Wee-キナーゼ、MIK、MYTまたはその機
    能的類似体もしくは等価物をコードする、請求項14または15記載の方法。
  17. 【請求項17】 核酸分子が、植物細胞における核酸分子の発現を可能とする
    調節配列と機能的に結合されている、請求項1から16のいずれか一項に記載の方
    法。
  18. 【請求項18】 調節配列がプロモーター、エンハンサー、サイレンサー、イ
    ントロン配列、3'UTRおよび/または5'UTR領域、蛋白質および/またはRNA安定
    化要素を含む、請求項1から17のいずれか一項に記載の方法。
  19. 【請求項19】 調節配列がキメラ性、組織特異的、構成性または誘導性のプ
    ロモーターである、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
  20. 【請求項20】 誘導性プロモーターが非生物的ストレスによって誘導可能で
    ある、請求項19記載の方法。
  21. 【請求項21】 非生物的ストレスが浸透圧ストレスである、請求項20記載の
    方法。
  22. 【請求項22】 植物が単子葉植物または双子葉植物である、請求項1から21
    のいずれか一項に記載の方法。
  23. 【請求項23】 植物が作物(crop)植物、根菜植物、油産生植物、木材産生
    植物、農業生物培養植物(agricultured bioticultured plant)、果実産生植物
    、飼料または飼草用マメ科植物、伴生植物または園芸用植物である、請求項1か
    ら22のいずれか一項に記載の方法。
  24. 【請求項24】 植物がコムギ、オオムギ、トウモロコシ、イネ、ニンジン、
    テンサイ、チコリ、ワタ、ヒマワリ、トマト、キャッサバ、ブドウ、ダイズ、サ
    トウキビ、アマ、アブラナ、チャ、カノーラ、タマネギ、アスパラガス、セロリ
    、レンズマメ、ブロッコリ、カリフラワー、芽キャベツ、アーティチョーク、オ
    クラ、カボチャ、ケール、コラード、ライムギ、モロコシ、オートムギ、タバコ
    、コショウ、またはジャガイモである、請求項22または23記載の方法。
  25. 【請求項25】 請求項20または21に定義された核酸分子を含むベクター。
  26. 【請求項26】 請求項20もしくは21に定義された少なくとも1つの核酸分子
    または請求項25記載のベクターを含むトランスジェニック植物細胞。
  27. 【請求項27】 請求項1から21のいずれか一項に定義された少なくとも1つの
    核酸分子もしくは調節配列、または請求項25記載のベクターを含み、トランスジ
    ェニック植物に付加的な表現型特性を付与しうるさらなる核酸分子を含む、トラ
    ンスジェニック植物細胞。
  28. 【請求項28】 請求項26または27記載の植物細胞を含むトランスジェニック
    植物または植物組織。
  29. 【請求項29】 対応する野生型植物と比べて非生物的ストレス、好ましくは
    浸透圧ストレスに対する耐性の増強を示す、請求項28記載のトランスジェニック
    植物。
  30. 【請求項30】 付加的な表現型特性を示す、請求項29記載のトランスジェニ
    ック植物。
  31. 【請求項31】 請求項26または27記載の植物細胞を含む、請求項28から30の
    いずれか一項に記載の植物の収穫可能部分または繁殖材料。
  32. 【請求項32】 非生物的ストレス耐性を植物に付与するための、および/ま
    たは植物用の選択マーカーとしての、請求項1から24のいずれか一項に定義され
    た核酸分子もしくは調節配列または請求項25記載のベクターの使用。
  33. 【請求項33】 浸透圧、好ましくは塩ストレス耐性植物を製造するための、
    細胞分裂のストレス誘発性ダウンレギュレーションを抑制しうる核酸分子または
    調節配列の使用。
  34. 【請求項34】 塩含有量が約40mMから約300mMまでの土壌で栽培するための
    、請求項1から24のいずれか一項記載の方法によって入手しうる植物または請求
    項28から30のいずれか一項に記載の植物の使用。
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