JP2001520887A - 新規な分裂促進性サイクリンおよびその使用 - Google Patents

新規な分裂促進性サイクリンおよびその使用

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JP2001520887A JP2000518093A JP2000518093A JP2001520887A JP 2001520887 A JP2001520887 A JP 2001520887A JP 2000518093 A JP2000518093 A JP 2000518093A JP 2000518093 A JP2000518093 A JP 2000518093A JP 2001520887 A JP2001520887 A JP 2001520887A
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ディルク インゼ
ベイリダー リーヴェン デ
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Abstract

(57)【要約】 分裂促進性サイクリンをコードするDNA配列、ならびにそれを得るための方法が提供される。さらに、原核および/または真核宿主細胞における発現を可能とする調節要素と機能的に結合したDNA配列である前記DNA配列を含むベクターも提供する。これに加えて、前記DNA配列によってコードされる蛋白質、前記蛋白質に対する抗体、およびそれらを製造するための方法も提供される。さらに、前記のDNA配列、ベクター、蛋白質、および抗体を含む診断的組成物も記載される。また、細胞周期を活性化または阻害しうる化合物を同定するための方法も記載される。さらに、上記のDNA配列およびベクターを含むトランスジェニック植物細胞、植物組織および植物体のほか、前記のDNA配列、ベクター、蛋白質、抗体および/もしくは本発明の方法によって同定される化合物の、植物細胞および組織の培養、植物育種ならびに/または農業における使用も記載される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 本発明は、分裂促進性サイクリン(mitogenic cyclin)をコードするDNA配列 、ならびにそれを得るための方法に関する。また、本発明は、原核および/また
は真核宿主細胞における発現を可能とする調節性要素と機能的に結合したDNA配 列である前記DNA配列を含むベクターも提供する。これに加えて、本発明は、前 記DNA配列によってコードされる蛋白質、前記蛋白質に対する抗体、およびそれ らを製造するための方法にも関する。また、本発明は、植物もしくはその一部に
おいて機能的である1つもしくは複数の分裂促進性サイクリン、および/または このような蛋白質をコードする1つもしくは複数のDNA配列の導入および/または
発現を含む、植物および/または植物細胞の成長特性を制御または変更するため
の方法にも関する。本発明はさらに、前記のDNA配列、蛋白質および抗体を含む 診断的組成物にも関する。また、本発明は、細胞周期を活性化または阻害しうる
化合物を同定するための方法にも関する。さらに本発明は、上記のDNA配列およ びベクターを含むトランスジェニック植物細胞、植物組織および植物体のほか、
前記のDNA配列、ベクター、蛋白質、抗体、および/または本発明の方法によっ て同定される化合物の、植物細胞および組織の培養、植物育種ならびに/または
農業における使用にも関する。
【0002】 真核生物における細胞周期の進行制御は主として2つの移行点で作用する:1つ
はDNA合成前のG1後期であり、もう1つはG2/M境界である。これらの制御ポイン トを経ての進行はサイクリン依存性プロテインキナーゼ(CDK)複合体によって 媒介され、これはCDK遺伝子によってコードされるほぼ34kDaの触媒ユニットを含
む。CDKタンパク質は、サイクリンと呼ばれる第二のタンパク質に結合されてい る場合にのみプロテインキナーゼとして活性である。サッカロミセス・セレビシ
エ(Saccharomyces cerevisiae)およびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosa
ccharomyces pombe)はいずれも細胞周期の調節に単一のCDK遺伝子のみを用いる
。それぞれSch.ポンベおよびS.セレビシエにおけるそれらの遺伝子産物であるp3
4cdc2およびp34cdc28のキナーゼ活性は、調節蛋白質、上述のいわゆるサイクリ ンに依存する。異なる細胞周期段階を経ての進行は、p34cdc2/cdc28の種々のサ イクリンとの逐次的な会合によって達成される。高等な真核生物でもこの制御機
構は保存されているが、細胞周期の異なる時期の調節のために多数のCDKを用い るように進化してきたため、状況はより複雑である。哺乳動物では、CDK1からCD
K7までと定義され、それぞれがサイクリンの特定のサブユニットと結合する7種 のCDKが記載されている。
【0003】 cdk/サイクリン複合体の活性は、(i)CDKおよびサイクリン遺伝子の転写、(
ii)特定のCDKと特異的なパートナーであるサイクリンとの会合、(iii)CDKお よびサイクリンサブユニットのリン酸化/脱リン酸化、(iv)SUC1/CKS1相同体
および細胞周期キナーゼ阻害物質(CKI)などの他の調節蛋白質との相互作用、 ならびに(v)サイクリンの細胞周期依存的破壊という5段階の調節を受ける。
【0004】 シロイヌナズナ(Alabidopsis thalian)でこれまでに単離されたCDK遺伝子は
CDC2aAtおよびCDC2bAtの2つであり、その遺伝子産物のアミノ酸の同一性は56% である。この2つのCDKはいくつかの特徴によって区別される。第1に、酵母p34cd c2/cdc28 変異株を補完しうるのはCDC2aAtのみである。第2に、CDC2aAtおよびCDC
2bAtは異なるサイクリン結合モチーフを有し(それぞれPSTAIREおよびPPTALRE)
、このことからそれらが異なる種類のサイクリンと結合することが示唆される。
第3に、CDC2aAtおよびCDC2bAtはいずれも同じ空間的発現パターンを呈するが、 異なる細胞周期段階特異的な調節が認められる。CDC2aAt遺伝子は細胞周期の全 体を通じて構成的に発現される。これに対して、CDC2bAt mRNAのレベルは周期的
に変動し、SおよびG2期の間で最も高い。
【0005】 さらに、アラビドプシスからは多数のサイクリンが単離されている。その大半
には動物のAまたはB型クラスのサイクリンとの非常に高い配列類似性が認められ
るが、D型サイクリンも同定されている。D型サイクリンの他のサイクリンとの類
似性はわずかに過ぎない。D型サイクリンは哺乳動物において成長センサーとし て作用し、その発現は細胞周期における細胞の位置よりも細胞外の信号に依存す
る度合いが大きい。このため、D型サイクリンは分裂促進刺激を媒介し、休止期 からの離脱に働くという仮説が提唱されている。これはCDK/サイクリンD複合体
による網膜芽腫蛋白質(Rb)の過剰リン酸化を介して調節されると考えられてい
る。Rbは細胞分裂開始の制御に重要な役割を果たす癌抑制蛋白質である。低リン
酸化型のRbは、S期特異的遺伝子の発現を促進することが知られているE2F型転写
因子と複合体を形成する。このため、RbがE2Fと結合するとS期導入が妨げられる
。リン酸化されたRbはE2F転写因子と複合体を形成することができず、このためD
NA合成が可能となる。D型サイクリンにはすべて、Rbとの結合を可能にする固有 のアミノ酸モチーフ(LXCXE)がある。シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana )では、G1特異的サイクリンを欠く変異型酵母株を回復させる能力により、3種 類のD型サイクリンが同定されている(Soni、Plant Cell 7(1995)、85〜103)
。これらのD型サイクリン同士のアミノ酸同一性は約30%に過ぎず、発現様式も 異なることが示された:すなわちCYCD1;1は花および葉において、CYCD2;1は葉お
よび根において、CYCD3;1は根において最も豊富である。G1後期ブロックからの 離脱によって得られるシロイヌナズナ(A. thaliana)同調懸濁培養物を用いる ことにより、CYCD3;1転写物がG1/S移行期に増加し、以降は一定に保たれること
が示された。CYCD2;1転写物のレベルは細胞周期全体を通じて不変のままである (Fuerst、Plant Physiol. 112(1996)、1023〜1033)。すなわち、シロイヌナ
ズナのD型サイクリン遺伝子は、哺乳動物での対応物に関する記載の内容と同じ く、細胞周期の時期とは独立した様式で発現される。実際には、転写はマイトジ
ェンの存在により調節を受ける。飢餓状態においた細胞培養物において、CYCD2;
1の発現はスクロースのみの添加によって誘導可能であり、CYCD3;1の転写はサイ
トカイニンによって誘導可能である(Soni、Plant Cell 7(1995)、85〜103) 。異なるD型サイクリンがさまざまな分裂促進刺激に反応するという観察結果は 、それらのそれぞれが、分裂促進刺激の感知と細胞周期とを結びつける特定のシ
グナル伝達経路に関与することを示唆している。
【0006】 植物の成長、植物の構造および/または植物の疾患に関する問題を扱うために
は、植物細胞の分裂調節に関与する植物遺伝子および遺伝子産物の同定および単
離を行うことが最も重要であると考えられている。このような新規遺伝子および
/または蛋白質が単離および分析されれば、植物全体としての成長に影響を与え
ることが可能である。また、特定の組織または器官の成長、およびそれ故に植物
の構成を改変することもできる。
【0007】 このため、本発明の基礎にある技術的課題は、農業ならびに植物細胞および組
織の培養において特に有用な、細胞周期蛋白質(cell cycle protein)を調節す
るための手段および方法を提供することである。
【0008】 この技術的課題に対する解決法は、特許請求の範囲において特徴付けられる態
様を提供することによって得られる。
【0009】 したがって、本発明は、 (a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含む蛋白質をコードするヌクレオチ
ド配列を含むDNA配列、 (b)配列番号:1に示されたヌクレオチド配列を含むDNA配列、 (c)(a)または(b)に定義されたDNA配列の相補鎖とハイブリダイズするDNA 配列、 (d)(a)または(b)のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列との同一性
が少なくとも70%であるアミノ酸配列をコードするDNA配列、 (e)遺伝暗号の結果として、そのヌクレオチド配列が(a)から(d)までのい ずれか1つに定義されたDNA配列のヌクレオチド配列と縮重するようなDNA配列、 ならびに (f)(a)から(e)までのいずれか1つのDNA配列によってコードされる蛋白質 の断片をコードするDNA配列 からなる群より選択される、分裂促進性サイクリンをコードする、またはこのよ
うな蛋白質の免疫活性および/もしくは機能的断片をコードするDNA配列に関す る。
【0010】 「分裂促進性」という用語は、細胞周期へのリエントリー(reentry)および /または細胞周期の進行に正の影響を及ぼす化合物(化学物質または蛋白質)を
指す;実施例4も参照。「サイクリン」という用語は、細胞分裂を活発に調節す る蛋白質の一つを意味する。
【0011】 「細胞周期」という用語は、細胞増殖、特にDNA複製および有糸分裂の調節に 関連する周期的な生化学的および構造的イベントを意味する。この周期は、G0
ギャップ1(G1)、DNA合成(S)、ギャップ2(G2)および有糸分裂(M)と呼ば れる時期に分けられる。
【0012】 「増殖」という用語は、細胞の成長および複製、すなわち分裂を意味する。
【0013】 「細胞分裂」という用語は、有糸分裂、すなわち細胞複製の通常の過程を意味
する。
【0014】 本明細書で用いられる「遺伝子」「ポリヌクレオチド」「核酸配列」「ヌクレ
オチド配列」「DNA配列」または「核酸分子」という用語は、リボヌクレオチド またはデオキシリボヌクレオチドのいずれかである任意の長さの重合型のヌクレ
オチドを意味する。この用語は、分子の一次構造のみに関して言及するものであ
る。このため、この用語には2本鎖および1本鎖のDNA、ならびにRNAが含まれる。
また、これには既知の種類の修飾、例えばメチル化、1つまたは複数の天然型ヌ クレオチドの類似体による「キャプス(caps)」置換なども含まれる。好ましく
は、本発明のDNA配列は、上記に定義した分裂促進性サイクリンをコードするコ ード配列を含む。
【0015】 「コード配列」とは、適切な調節配列の制御下におかれた時に、mRNAへの転写
および/またはポリペプチドへの翻訳がなされるヌクレオチド配列のことである
。コード配列の境界は、5'末端の翻訳開始コドンおよび3'末端の翻訳停止コドン
によって決定される。コード配列には、mRNA、cDNA、組換えヌクレオチド配列ま
たはゲノムDNAが非制限的に含まれ、特定の状況下ではイントロンが存在しても よい。
【0016】 本発明に従い、ベイト(bait)としてCDC2a、プレイ(prey)として細胞懸濁 液のcDNAライブラリーを用いるツーハイブリッドシステム(Fieldsら、Nature 3
40(1989)、245〜246)が開発された。このライブラリーは、指数増殖期初期、
指数増殖期、定常期初期および定常期という成長期の種々の時点で採取したシロ
イヌナズナ細胞懸濁液から得たRNA混合物を用いて作製された。その結果、陽性 クローンが1つ同定された。このクローンは当初、LDV159と命名され、新規な分 裂促進性サイクリンをコードしていた。レノージン(Renaudin)ら、Plant Mol.
Biol. 32(1996)、1003〜1018における命名法に従い、本明細書では本発明の 新規な分裂促進性遺伝子を新規クラスのD型サイクリンであるCYCD4;1とも呼ぶ。
【0017】 CYCD4;1遺伝子は117bpの5'非翻訳領域を含む。CYCD4;1はGAL4活性化ドメイン との融合蛋白質として単離されたため、上流にインフレーム停止コドンは存在し
ない。しかし、CYCD4;1を他のシロイヌナズナD型サイクリンとの整列化により、
CYCD4;1配列は完全長であることが示唆される(配列番号:1)。さらに、第118
位の開始コドンは有効な共通翻訳開始配列(GxxAUGG;Kozak 1987、J. Mol. Bio
l. 196、p947〜950)を含む。121bpの3'非翻訳領域に重複する2つのポリアデニ ル化シグナルが認識されうる。CYCD4;1によってコードされる308アミノ酸の蛋白
質(配列番号:2)の分子量はほぼ34kDaと算出され、アミノ末端にRb相互作用モ
チーフを有する(アミノ酸10〜14)。PESTFINDプログラム(Rogersら 1986、Sci
ence 234、p364〜368)の使用により、PEST配列がアミノ酸1〜93(PESTFINDスコ
ア+2.9)に位置することが特定された。PEST配列(プロリン、グルタミン酸、セ
リンおよびトレオニンに富む)は不安性な蛋白質中に特徴的に存在する。
【0018】 CYCD4;1蛋白質と他のシロイヌナズナD型サイクリンとの間に有意な配列類似性
が認められたのはアミノ末端ドメイン、特にサイクリンボックス内のみである(
図1)。この領域におけるCYCD4;1のCYCD1、CYCD2およびCYCD3との同一性はそれ ぞれ61.3%、69.8%および66.6%である。蛋白質全体を考慮すると、CYCD4;1のC
YCD1;1、CYCD2;1およびCYCD3;1との同一性はそれぞれ37.2%、44.4%および31.9
%である(表1)。
【表1】 種々のシロイヌナズナD型サイクリン間の配列類似性および同一性
【0019】 CYCD4;1蛋白質はCYCD2;1と最も密接に関連しているが、それらの配列の類似性
は52.3%に過ぎない(表1)。また、CYCD4;1のカルボキシ末端ドメインはCYCD2;
1よりも有意に短く、このため蛋白質のサイズ(CYCD4;1およびCYCD2;1でそれぞ れ34kDaおよび43kDa)、およびその結果として、推定される蛋白質構造にも著明
な差が生じる。したがって、CYCD2;1とCYCD4;1は異なる群に属するとみなせる。
【0020】 以上より、配列番号:1のヌクレオチド配列を含む遺伝子が新規クラスの分裂 促進性サイクリンの一員をコードすることは明らかである。
【0021】 本発明は、分裂促進性サイクリンをコードする限りにおいて、上記のDNA配列 とハイブリダイズし、これらと比較して1つまたは複数の位置に違いがあるDNA配
列にも関する。「ハイブリダイズする」とは、このような核酸分子が、通常のハ
イブリダイゼーション条件下、好ましくは、例えばサムブルック(Sambrook)(
分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manu
al)、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY
(1989))によって記載されたものなどのストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズすることを意味する。このようなストリンジェントなハイブリダイゼーシ
ョン条件の例は、4×SSC、65℃でのハイブリダイゼーションに続いて、0.1×SSC
、65℃で1時間洗浄することである。または、ストリンジェントなハイブリダイ ゼーション条件の例は、50%ホルムアミド中での4×SSC、42℃である。哺乳動物
、特にヒトなどの他の生物体に由来する分裂促進性サイクリンが、穏和なハイブ
リダイゼーション条件下で分裂促進性サイクリンに関する配列とハイブリダイズ
し、発現に際して細胞周期蛋白質と相互作用しうるペプチドをコードする他のDN
A配列によってコードされてもよい。このような非ストリンジェントなハイブリ ダイゼーション条件の例は4×SSC、50℃、または30〜40%ホルムアミド、42℃で
のハイブリダイゼーションである。このような分子には、本発明の分裂促進性サ
イクリンの断片、類似体または誘導体であって、アミノ酸および/またはヌクレ
オチドの欠失、挿入、置換、付加および/または組換え、もしくは当技術分野で
知られた任意のその他の改変が単独または組み合わせてなされている点で上記の
アミノ酸配列またはそれらの基となるヌクレオチド配列と異なるものが含まれる
。本発明に係る核酸分子にこのような改変を導入するための方法は、当業者には
周知である。また、本発明は、遺伝暗号の縮重のために上記のいずれかの核酸分
子のヌクレオチド配列とは異なる配列の核酸分子にも関する。本発明の蛋白質の
このようなすべての断片、類似体および誘導体も、上に定義した通りの本質的な
特有の免疫的および/または生物的特性が本質的に変化しない限りにおいて本発
明の範囲に含まれ、すなわち、本発明の新規核酸分子には、上記の核酸分子によ
ってコードされることが可能であって分裂促進性サイクリン、生物学的活性およ
び/または他のタンパク質と相互作用するための能力に関して同等または同一の
特徴を有する分裂促進性サイクリンに対する抗体と反応しうる1つまたは複数の エピトープに関する一次構造コンフォメーションの少なくとも一部を有する蛋白
質またはペプチドをコードするすべてのヌクレオチド配列が含まれる。このため
、本発明に係る核酸分子に含まれる核酸配列によってコードされる分裂促進性サ
イクリンの少なくとも機能的部分を含むポリペプチドをコードする核酸分子も本
発明の一部である。これに関する例は、本発明に係るポリペプチドまたはその断
片が別のアミノ酸配列中に埋め込まれたものである。好ましくは、本発明のDNA 配列は、配列番号:2に定義されるタンパク質と実質的に同一のアミノ酸配列を
有するタンパク質をコードする。
【0022】 添付の実施例で示すように、本発明に従って分裂促進性サイクリンを同定する
ために適したツーハイブリッドスクリーニング解析法が開発された。このため、
もう1つの局面において、本発明は、ベイト(bait)としてCDC2a、プレイ(prey
)として細胞懸濁培養液のcDNAライブラリーを用いるツーハイブリッド・スクリ
ーニング解析を含む、分裂促進性サイクリンを同定および入手するための方法に
関する。好ましくは、前記CDC2aはCDC2aAtである。しかし、他の植物および/ま
たは哺乳動物などの他の生物体に由来するCDKを含むPESTを用いてもよい。細胞 培養物は、動物などの分裂促進性サイクリンを有する任意の生物体、好ましくは
哺乳動物に由来しうる。アラビドプシスなどの植物細胞の懸濁培養物が特に好ま
しい。
【0023】 上記のアッセイ法においてCDC2aと相互作用することが同定された蛋白質また はペプチドをコードする核酸分子は、当技術分野で知られた方法によって容易に
入手および配列決定が可能であり、これについては添付の実施例も参照されたい
。したがって、本発明は、本発明の方法によって入手しうる分裂促進性サイクリ
ンをコードするDNA配列にも関する。
【0024】 1つの好ましい態様において、本発明に係る核酸分子は、RNAまたはDNA分子、 好ましくはcDNA、ゲノムDNAまたは合成的に合成されたDNAまたはRNA分子である 。好ましくは、本発明の核酸分子は植物、好ましくはシロイヌナズナに由来する
。しかし、分裂促進性サイクリンは植物の細胞分裂において主要な役割を果たす
と想定されているため、同様の特性を示す対応する蛋白質は他の植物にも存在す
るはずである。本発明の核酸分子は、例えば、上記の核酸分子と任意の源の核酸
分子(の試料)とのハイブリダイゼーションによって入手可能である。上記の核
酸分子とハイブリダイズする核酸分子の由来としては、一般に任意の生物が可能
であり、好ましくはこのような分子を有する植物、好ましくは単子葉または双子
葉植物、特に、穀物植物、すなわちイネ科(Proaceae)植物、ジャガイモ、キャ
ッサバ、マメ科植物などのあらゆるデンプン産生植物、アブラナ、亜麻仁などの
油産生植物、ポリペプチドを貯蔵物質として用いるダイズなどの植物、ショ糖を
貯蔵物質として用いるテンサイまたはサトウキビなどの植物、樹木、観賞植物な
どの農業、園芸または材木栽培において関心がもたれる植物である。好ましくは
、本発明に係る核酸分子はシロイヌナズナに由来する。上記の核酸分子とハイブ
リダイズする核酸分子は、例えば、当技術分野で周知の技法により、cDNAまたは
ゲノムライブラリーなどのライブラリーから単離することができる。例えば、ハ
イブリダイズする核酸分子は、標準的な技法に従って前記分子とハイブリダイズ
させることによってライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして、
上記の核酸分子またはその断片もしくはその相補物を用いて同定および単離が可
能である。上記の核酸分子に由来するオリゴヌクレオチドをプライマーとして用
いるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの核酸増幅技術を用いることによってこ のような核酸分子を単離することも可能である。
【0025】 上記のいずれかの核酸分子とハイブリダイズする核酸分子には、分裂促進性サ
イクリンまたはその免疫学的もしくは機能的断片をコードする上記の核酸分子の
断片、誘導体および対立遺伝子変異体も含まれる。断片とは、記載される蛋白質
または上記に定義した通りのその機能的断片もしくは免疫学的活性断片をコード
するだけの十分な長さをもつ核酸分子の部分であると解釈される。好ましくは、
機能的断片には、図1に示されるCYCD4タンパク質の少なくともサイクリンボッ クスが含まれる。好ましくは、該断片は、配列番号:2のアミノ酸配列の78〜18
2位のアミノ酸残基を含む。
【0026】 本文脈における「誘導体」という用語は、これらの核酸分子のヌクレオチド配
列が、上記の核酸分子の配列とは1つまたは複数のヌクレオチド位置で異なり、 前記核酸分子と高度に相同的であることを意味する。相同性とは、配列同一性が
少なくとも40%であり、特にいえば同一性が少なくとも60%、好ましくは80%を
上回り、さらにより好ましくは90%を上回ることを指すと解釈される。「実質的
に相同な」という用語は、ORF(オープンリーディングフレーム)全体を比較し た際に参照物と配列の点で少なくとも50%同一である対象、例えば核酸を意味し
、配列同一性は好ましくは少なくとも70%であり、より好ましくは少なくとも80
%、さらにより好ましくは少なくとも85%、特により好ましくは90%を上回り、
最も好ましくは95%またはそれを上回り、特にいえば98%またはそれを上回る。
上記の核酸分子の配列との差は、例えば、ヌクレオチドの置換、欠失、付加、挿
入および/または組換えの結果であってよい(前記参照)。
【0027】 相同性とはさらに、それぞれの核酸分子またはコードされる蛋白質が機能的お
よび/または機能的に等価であることを意味する。上記の核酸分子と相同な核酸
分子、および前記核酸分子の誘導体である核酸分子は、例えば、同じ生物機能を
有する改変、特に同一または実質的に同一な生物機能を備えた蛋白質をコードす
る改変を示す前記核酸分子の変異体である。それらは、他の植物の変種もしくは
種または変異に由来する配列などの、天然にみられる変異体でもよい。これらの
変異は天然にみられるものでも、変異誘発法によって得られるものでもよい。対
立遺伝子変異体は、天然にみられる対立遺伝子変異体でもよく、合成的に製造さ
れた、または遺伝的に操作された変異体でもよい;前記参照。
【0028】 上記の核酸分子の種々の誘導体および変異体によってコードされる蛋白質は、
生物活性、分子量、免疫反応性、コンフォメーション、さらに電気泳動移動度、
クロマトグラフィーでの挙動、沈降係数、最適pH、最適温度、安定性、溶解度、
分光特性などの物理的特性といった特定の共通した特徴を有する。
【0029】 本発明に係る核酸分子ならびにそれに由来する分子に関して考えられるさまざ
まな応用の例は、以下に詳細に説明する。
【0030】 このため、1つのさらなる態様において、本発明は、上記の核酸分子またはそ の相補鎖と特異的にハイブリダイズする、長さが少なくとも15ヌクレオチドの核
酸分子に関する。特異的ハイブリダイゼーションは好ましくはストリンジェント
な条件下で起こり、これは全くまたは実質的に異なる蛋白質をコードするヌクレ
オチド配列とのクロスハイブリダイゼーションが全くまたはほとんど生じないこ
とを意味する。このような核酸分子は、プローブとして、および/または遺伝子
発現の制御のために用いうる。核酸プローブ技術は当業者には周知であり、当業
者にはこのようなプローブの長さを変更しうることは容易に理解されると思われ
る。長さが16から35ヌクレオチドの核酸プローブが好ましい。当然ながら、長さ
が100ヌクレオチドおよびそれ以上の核酸分子を用いることも妥当と考えられる 。本発明の核酸プローブは種々の用途に有用である。一方において、それらは本
発明による核酸配列を増幅するためのPCRプライマーとして用いうる。前記プラ イマーの設計および用法は当業者には周知である。好ましくは、このような増幅
プライマーは、配列番号:1に示されたヌクレオチド配列、または配列番号:2の
アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列と同一または相補的な、少なくとも
6ヌクレオチド、特にいえば13ヌクレオチド、好ましくは15から25ヌクレオチド またはそれ以上の連続配列を含む。もう1つの用途は、ゲノムDNAまたはcDNAライ
ブラリーの相同性スクリーニングによって本発明の核酸分子とハイブリダイズす
る核酸分子を同定するためのハイブリダイゼーションプローブとしての使用であ
る。上記の核酸分子に対して相補的な本発明のこの好ましい態様による核酸分子
を、例えばアンチセンスもしくは三重鎖ヘリックス効果による細胞周期遺伝子の
発現抑制のため、または本発明の核酸分子またはその一部を含む遺伝子の(プレ
)-mRNAを特異的に切断する適したリボザイム(例えば、欧州特許第A1 0 291 53
3号、欧州特許A1 0 321 201号、欧州特許第A2 0 360 257号を参照のこと)の作 製のために用いてもよい。適した標的部位および対応するリボザイムの選択は、
例えば、シュタイネッケ(Steinecke)、Ribozymes、Methods in Cell Biology
50、ガルブレース(Galbraith)ら編、Academic Press、Inc.(1995)、449〜46
0に記載された通りに行うことができる。さらに当業者は、このような核酸プロ ーブを、生物体、特に植物に由来する試料中の本発明の核酸分子の存在を検出す
るといった特定の用途に適したマーカーで標識することも可能なことを十分に認
識している。
【0031】 上記の核酸分子は、DNAもしくはRNA、またはそれらのハイブリッド体のいずれ
でもよい。さらに前記の核酸分子は、例えば、オリゴヌクレオチドアンチセンス
法でよく用いられるチオエステル結合および/またはヌクレオチド類似体を含ん
でもよい。前記の修飾は、細胞内のエンドおよび/またはエキソヌクレアーゼに
対抗して核酸分子を安定化させるために有用と思われる。前記核酸分子は、細胞
内での前記核酸分子の転写を可能にするキメラ遺伝子を含む適切なベクターによ
って転写されてもよい。
【0032】 さらに、本発明の核酸分子の発現の検出または阻害のために、いわゆる「ペプ
チド核酸(peptide nucleic acid)」(PNA)法を用いることもできる。例えば 、PNAの相補的ならびに種々の1本鎖RNAおよびDNA核酸分子との結合は、熱変性お
よびビアコア表面相互作用法(BIAcore surface-interaction techniques)(Je
nsen、Biochemistry 36(1997)、5072〜5077)を用いて系統的に調べることが できる。さらに、上記の核酸分子ならびにそれに由来するPNAを、ビアコア(BIA
core)などの親和性センサーを用いて、試料から入手した核酸とのハイブリダイ
ゼーションによって点変異を検出するために用いることもでき、これについては
ゴトウ(Gotoh)、Rinsho Byori 45(1997)、224〜228を参照されたい。ペプチ
ド核酸(PNA)オリゴマーアレイ上でのハイブリダイゼーションに基づくDNAスク
リーニングは、例えばワイラー(Weiler)、Nucleic Acids Research 25(1997 )、2792〜2799などの先行技術において記載されている。PNAの合成は、例えば コッホ(Koch)、J. Pept. Res. 49(1997)、80〜88、フィン(Finn)、Nuclei
c Acids Research 24(1996)、3357〜3363に記載された通りの当技術分野で知 られた方法に従って行いうる。例えば制限酵素としての、または核酸オリゴヌク
レオチドの合成用のテンプレートなどとしての、このようなPNAに関して考えら れるさらなる用途も当業者には知られており、例えばベゼルコフ(Veselkov)、
Nature 379(1996)、214およびボーラー(Bohler)、Nature 376(1995)、578
〜581に記載されている。
【0033】 本発明は、本発明の核酸分子を含む、遺伝子工学において伝統的に用いられる
ベクター、特にプラスミド、コスミド、ウイルス、バクテリオファージおよびそ
の他のベクターにも関する。種々のプラスミドおよびベクターの作製には当業者
に周知の方法を用いることができ、これについては例えば、サムブルック(Samb
rook)、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning A Laborato
ry Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory(1989)N.Y.およびアウスユーベ
ル(Ausubel)、分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in
Molecular Biology)、Green Publishing Associates and Wiley Interscience 、N.Y.(1989)に記載された技法を参照されたい。または、本発明の核酸分子お
よびベクターを、標的細胞への送達用のリポソーム中に再構成することもできる
【0034】 1つの好ましい態様において、ベクター中に存在する核酸分子は、原核および /または真核細胞における核酸分子の発現を可能にする調節配列(control sequ
ence)と連結している。
【0035】 「調節配列」という用語は、それと連結しているコード配列の発現を生じさせ
るために必要な調節性DNA配列を指す。このような調節配列の性質は宿主生物体 によって異なる。原核生物では、調節配列には一般にプロモーター、リボソーム
結合部位およびターミネーターが含まれる。真核生物では一般に調節配列にはプ
ロモーター、ターミネーターが含まれ、さらに場合によってはエンハンサー、ト
ランスアクチベーターまたは転写因子が含まれる。「調節配列」という用語は、
最低限、その存在が発現のために必要なすべての構成要素を含むものとし、ほか
の有利な構成要素も含みうる。
【0036】 「機能的に結合された」という用語は、記載される複数の構成要素がそれらの
意図する様式で機能することを許容する関係にあるような並び方を指す。コード
鎖と「機能的に結合された」調節配列は、コード鎖の発現が調節配列に適合した
条件下で達成されるような方式で連結される。調節配列がプロモーターである場
合には2本鎖核酸が用いられることは当業者には明らかである。
【0037】 したがって、本発明のベクターは好ましくは発現ベクターである。「発現ベク
ター」とは、選択された宿主細胞の形質転換のために用いることができ、選択さ
れた宿主においてコード配列の発現をもたらす作製物である。発現ベクターとし
ては、例えばクローニングベクター、バイナリーベクターまたは組込みベクター
が可能である。発現には、核酸分子の好ましくは翻訳可能なmRNAへの転写が含ま
れる。原核および/または真核細胞における発現を実現させる調節性要素は当業
者には周知である。真核細胞の場合には、それらは転写開始を実現させるプロモ
ーターを通常含み、選択的には、転写終結および転写物の安定化を実現させるポ
リAシグナル、例えばカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)由来の35S RNAのも
のを含む。よく用いられるその他のプロモーターは、遍在的発現のためのポリユ
ビキチンプロモーターおよびアクチンプロモーターである。通常用いられる終結
シグナルは、ノパリンシンターゼ(Nopaline Synthase)プロモーター由来また はCAMV 35Sプロモーター由来である。しばしば用いられる植物性翻訳エンハンサ
ーはTMVオメガ配列であり、イントロン(例えばトウモロコシShrunken遺伝子由 来のイントロン1)を含めることによって発現レベルが最大100倍に高まることが
示されている(Mait、Transgenic Research 6(1997)、143〜156;Ni、Plant J
ournal 7(1995)、661〜676)。このほかの調節性要素には転写ならびに翻訳エ
ンハンサーが含まれうる。原核宿主細胞における発現を可能とすると考えられる
調節性要素には、例えば大腸菌のPL、lac、trpまたはtacプロモーターが含まれ 、真核宿主細胞における発現を可能とする調節性要素の例には、酵母のAOX1もし
くはGAL1プロモーター、またはCMV、SV40 、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイ ルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー、または哺乳動物および他の動物 細胞におけるグロビンイントロンがある。この文脈において適した発現ベクター
は当技術分野で知られており、オカヤマ-バーグ(Okayama-Berg)cDNA発現ベク ターpcDVl(Pharmacia)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(In-vitrogene) 、pSPORT1(GIBCO BRL)などがある。本発明の上記のベクターは、選択性および
/またはスコア化可能な(scorable)マーカーを含む。形質転換を受けた植物細
胞、カルス、植物組織および植物体を選択するために有用な選択マーカー遺伝子
は当業者に周知であり、これには例えば、メトトレキサートに対する耐性を付与
するdhfr(Reiss、Plant Physiol.(Life Sci. Adv.)13(1994)、143〜149) 、アミノ配糖体であるネオマイシン、カナマイシンおよびパロマイシンに対する
耐性を付与するnpt(Herrera-Estrella、EMBO J. 2(1983)、987〜995)ならび
にハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Marsh、Gene 32(1984)、4
81〜485)に関する選択の基盤としての代謝拮抗薬耐性が含まれる。そのほかの 選択遺伝子も記載されており、これには細胞がトリプトファンの代わりにインド
ールを利用しうるようにするtrpB(Hartman、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85(
1988)、8047)、細胞がマンノースを利用しうるようにするマンノース-6-リン 酸イソメラーゼ(国際公開公報94/20627号)、およびオルニチンデカルボキシ ラーゼ阻害薬2-(ジフルオロメチル)-DL-オルニチンすなわちDFMOに対する耐性を
付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue、1987、分子生物 学における最新の情報(Current Communications in Molecular Biology)、Col
d Spring Harbor Laboratory編)、またはプラスチシジンSに対する耐性を付与 するアスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus)由来のデアミナーゼ(T
amura、Biosci. Biotechnol. Biochem. 59(1995)、2336〜2338)がある。
【0038】 スコア化可能な有用なマーカーも当業者に知られており、市販されている。前
記マーカーとしては、ルシフェラーゼ(Giacomin、P1. Sci. 116(1996)、59〜
72;Scikantha、J. Bact. 178(1996)、121)、グリーン蛍光蛋白質(Gerdes、
FEBS Lett. 389(1996)、44〜47)またはL-グルクロニダーゼ(Jefferson、EMB
O J. 6(1987)、3901〜3907)をコードする遺伝子が有利である。本態様は、本
発明のベクターを含む細胞、組織および生物体の簡便および迅速なスクリーニン
グのために特に有用である。
【0039】 本発明はさらに、上記のベクターまたは宿主細胞にとって外来性である本発明
による核酸分子を含む宿主細胞に関する。
【0040】 「外来性である」とは、核酸分子が宿主細胞に対して異種である――これは異
なるゲノム背景を有する細胞または生物体に由来することを意味する――か、ま
たは宿主細胞に対して同種であるが前記核酸分子の天然型の相当物とは異なるゲ
ノム環境に位置することを意味する。このことは、核酸分子が宿主細胞に対して
同種であるならば、それは前記宿主細胞のゲノム中で天然の位置にはなく、特に
いえば異なる遺伝子に囲まれていることを意味する。この場合には、核酸分子は
それ自体の制御下にあっても異種プロモーターの制御下にあってもよい。宿主細
胞内に存在する本発明によるベクターまたは核酸分子は、宿主細胞のゲノム中に
組み込まれても、染色体外に何らかの形態で維持されてもよい。この点に関して
、本発明の核酸分子は、相同組換えを介して変異遺伝子を修復または作製するた
めにも用いうることが理解される必要がある(Paszkowski(編)、植物における
相同組換えおよび遺伝子サイレンシング(Homologous Recombination and Gene
Silencing in Plants)、Kluwer Academic Publishers(1994))。
【0041】 宿主細胞は、細菌、昆虫、真菌、植物または動物細胞などの任意の原核または
真核細胞でありうる。好ましい真菌細胞は、例えば、サッカロミセス属のもの、
特にS.セレビシエのものである。
【0042】 本発明のもう1つの主題は、本発明のベクターまたは核酸分子の存在により、 蛋白質の発現およびこのようにして産生された蛋白質の培養物からの回収を可能
とする条件下でこのような蛋白質を発現させうるような、本発明による宿主細胞
の培養を含む、分裂促進性サイクリンの調製のための方法である。
【0043】 「発現」という用語は、細胞内での蛋白質またはヌクレオチド配列の産生を意
味する。しかし、前記の用語には、無細胞系における蛋白質の発現も含まれる。
これには、その産物をコードするDNAからの、RNA産物への転写、転写後修飾およ
び/または蛋白質産物またはポリペプチドへの翻訳、さらに考えられるものとし
て翻訳後修飾が含まれる。用いる個々の作製物および条件に応じて、蛋白質は細
胞から回収してもよく、培地またはこの両方から回収してもよい。当業者には、
天然の蛋白質を発現させうるだけでなく、蛋白質を融合ポリペプチドとして発現
させること、または例えばタンパク質の培地への分泌を実現させるというように
蛋白質を宿主細胞の特定の区画に向かわせるシグナル配列を付加することも可能
であることはよく知られている。さらに、このような蛋白質またはその断片は、
例えば以下などに記載されている標準的方法に従って化学合成および/または改
変することができる。
【0044】 本明細書で用いられる「蛋白質」および「ポリペプチド」という用語は交換し
うる。「ポリペプチド」とはアミノ酸(アミノ酸配列)の重合体を指し、特定の
長さの分子を指すものではない。このため、ペプチドおよびオリゴペプチドはポ
リペプチドの定義に含まれる。また、この用語は、例えばグリコシル化、アセチ
ル化、リン酸化などのポリペプチドの翻訳後修飾も言及または包含する。例えば
、1つまたは複数のアミノ酸類似体(例えば、非天然型のアミノ酸など)を含む ポリペプチド、置換結合を有するポリペプチドに加えて、天然型および非天然型
の双方の当技術分野で知られたその他の修飾もこの定義に含まれる。
【0045】 本発明はさらに、本発明に係る核酸分子によってコードされる、または上記の
方法によって産生または入手されるタンパク質、ならびにこのような分裂促進性
サイクリンの機能的および/または免疫活性断片に関する。本発明の蛋白質およ
びポリペプチドは必ずしも設計された核酸配列から翻訳される必要はなく、例え
ば化学合成、または組換え発現系の発現、または適したウイルス系からの単離を
含む、任意の様式で作製することができる。本ポリペプチドは、1つまたは複数 のアミノ酸類似体、リン酸化アミノ酸または非天然型アミノ酸を含みうる。アミ
ノ酸類似体を配列中に挿入する方法は当技術分野で知られている。また、本ポリ
ペプチドは、当業者に知られた1つまたは複数の標識も含みうる。この文脈にお いて、本発明による蛋白質を当技術分野で知られた通常の方法によってさらに改
変させうることも理解される。本発明に係る蛋白質を提供することにより、生物
活性を保持している断片を判定することも可能である。これにより、例えばその
結合活性に必須である本発明の蛋白質に由来するアミノ酸配列、およびGUSマー カー遺伝子(Jefferson、EMBO J. 6(1987)、3901〜3907)などのその他の機能
的アミノ酸配列を含むキメラ蛋白質およびペプチドの作製が可能となる。その他
の機能的アミノ酸配列を、例えば化学的手段によって本発明の蛋白質と物理的に
結合させてもよく、または当技術分野で周知の組換えDNA法によって融合させて もよい。
【0046】 「配列の断片」または「配列の一部」という用語は、言及される本来の配列の
切断型配列を意味する。切断型配列(核酸または蛋白質の配列)の長さはさまざ
まであってよく、最小サイズは言及される本来の配列に少なくとも匹敵する機能
および/または活性を有する配列を提供するのに十分なサイズの配列であるが、
最大サイズは特に厳密ではない。用途によっては、最大サイズは通常、本来の配
列の望ましい活性および/または機能を提供するために必要なサイズを実質的に
上回ることはない。典型的には、切断型アミノ酸配列の長さは約5から約60アミ ノ酸である。しかし、より典型的には、配列の長さは最大で約50アミノ酸、好ま
しくは最大で約30アミノ酸である。通常は、少なくとも約10、12または15アミノ
酸、最大で約20または25アミノ酸の配列を選択することが望ましい。
【0047】 さらに、適切なコンピュータプログラムを用いて、本発明の蛋白質の構造モチ
ーフのフォールディングシミュレーションおよびコンピュータ上での再設計を行
うことができる(Olszewski、Proteins 25(1996)、286〜299;Hoffman、Compu
t. Appl. Biosci. 11(1995)、675〜679)。蛋白質フォールディングのコンピ ュータモデル化は、詳細なペプチドおよび蛋白質モデルのコンフォメーションお
よびエネルギー解析のために用いうる(Monge、J. Mol. Biol. 247(1995)、99
5〜1012;Renouf、Adv. Exp. Med. Biol. 376(1995)、37〜45)。特に、相補 的ペプチドに関するコンピュータ検索による分裂促進性サイクリンおよびそのレ
セプター、そのリガンドまたは他の相互作用蛋白質の同定には適切なプログラム
を用いることが可能である(Fassina、Immunomethods 5(1994)、114〜120)。
蛋白質およびペプチドの設計に適したこれ以外のコンピュータシステムも、例え
ばベリー(Berry)、Biochem. Soc. Trans. 22(1994)、1033〜1036、ウォダッ
ク(Wodak)、Ann. N. Y. Acad. Sci. 501(1987)、1〜13、パボ(Pabo)、Bio
chemistry 25(1986)、5987〜5991などの先行技術において記載されている。上
記のコンピュータ解析によって得られた結果は、例えば本発明の蛋白質またはそ
の断片のペプチド模倣物(peptidomimetic)の調製のために用いることができる
。蛋白質の天然のアミノ酸配列のこのようなペプチド模倣物は、親蛋白質(pare
nt protein)を極めて効率的に模倣しうる(Benkirane、J. Biol. Chem. 271(1
996)、33218〜33224)。例えば、容易に入手しうる非キラルΩアミノ酸残基を 本発明の蛋白質またはその断片に組み入れることにより、脂肪鎖のポリメチレン
単位によるアミド結合の置換がもたらされ、これによってペプチド模倣物の作製
のための好都合な戦略が提供される(Banerjee、Biopolymers 39(1996)、769 〜777)。低分子ペプチドホルモンの極めて高活性のペプチド模倣類似体が先行 技術において記載されている(Zhang、Biochem. Biophys. Res. Commun. 224(1
996)、327〜331)。連続的なアミドアルキル化によるペプチド模倣物コンビナ トリアルライブラリーの合成、および結果として得られた化合物を、例えばその
結合性および免疫学的特性に関して検討することにより、本発明の蛋白質の適切
なペプチド模倣物を同定することもできる。ペプチド模倣物のコンビナトリアル
ライブラリーの作製および使用のための方法は、例えばオストレッシュ(Ostres
h)、Methods in Enzymology 267(1996)、220〜234およびドーナー(Dorner)
、Bioorg. Med. Chem. 4(1996)、709〜715などの先行技術に記載されている。
【0048】 さらに、本発明の蛋白質の三次元および/または結晶構造を、本発明の蛋白質
の生物活性に対するペプチド模倣阻害物質(peptidomimetic inhibitor)の設計
のために用いることができる(Rose、Biochemistry 35(1996)、12933〜12944 ;Rutenber、Bioorg. Med. Chem. 4(1996)、1545〜1558)。
【0049】 さらに本発明は、本発明による分裂促進性サイクリンまたはこのような蛋白質
の一部、すなわち特異的エピトープもしくは断片を特異的に認識する抗体に関す
る。本発明の抗体は、任意の生物体、好ましくは植物における他の分裂促進性サ
イクリンおよび遺伝子を同定および単離するために用いることができる。これら
の抗体は、モノクローン抗体、ポリクローン抗体または合成抗体、さらにはFab 、FvもしくはscFv断片などの抗体の断片のいずれでもよい。モノクローン抗体は
、例えば、マウス骨髄腫細胞と免疫化した哺乳動物由来の脾細胞との融合を含む
、ケーラー(Kohler)およびミルスタイン(Milstein)、Nature 256(1975)、
495ならびにガルフレ(Galfre)、Meth. Enzymol. 73(1981)、3に最初に記載 された技法によって調製することができる。さらに、例えばハーロウ(Harlow)
およびレーン(Lane)「抗体、実験室マニュアル(Antibodies、A Laboratory M
anual)」、CSH Press、Cold Spring Harbor、1988に記載された方法を用いて、
前記のペプチドに対する抗体またはその断片を入手しうる。これらの抗体は、例
えば、本発明による蛋白質の免疫沈降および免疫局在決定のため、さらには例え
ば組換え生物体におけるこのような蛋白質の合成のモニタリングのため、および
本発明による蛋白質と相互作用する化合物の同定のために用いうる。例えば、フ
ァージ抗体の選択効率を高め、本発明の蛋白質のエピトープと結合する単一のフ
ァージ抗体ライブラリーで得られる親和性の増分を高めるために、ビアコア(BI
Acore)システムで用いている表面プラスモン共鳴を用いることができる(Schie
r、ヒトAntibodies Hybridomas 7(1996)、97〜105;Malmborg、J. Immunol. M
ethods 183(1995)、7〜13)。多くの場合、抗体の抗原に対する結合現象は、 他のリガンド/抗リガンド結合と等価である。
【0050】 植物細胞の分裂が影響を受ける様式としては、概念的には(i)細胞分裂の阻 害もしくは阻止、(ii)細胞分裂の維持、促進もしくは刺激、または(iii)DNA
合成の有糸分裂および細胞質分裂とのアンカップリングの3つが考えられる。本 発明によるヌクレオチド配列によってコードされる分裂促進性サイクリンの発現
調節は、植物細胞の分裂特性に対して、特にG1/Sおよび/またはG2/M移行期に
関与する遺伝子の発現レベルの破壊、ならびにその結果としての当該植物または
その一部の全体的構成に対して、驚くほど有利な影響をもたらした。その一例は
、サイクリン依存性プロテインキナーゼ複合体の形成を阻害することにより、DN
A合成、またはDNA複製の進行が負の影響を受けると思われることである。または
、分裂促進性サイクリンの過剰発現は、細胞周期へ再び入るのを促進する。
【0051】 「サイクリン依存性プロテインキナーゼ複合体」という用語は、好ましくは機
能的であるサイクリンが、好ましくは機能的であるサイクリン依存性キナーゼと
会合した際に形成される複合体を意味する。このような複合体は蛋白質をリン酸
化する活性をもつと考えられ、付加的な蛋白質分子種を含んでも含まなくてもよ
い。
【0052】 「プロテインキナーゼ」という用語は、タンパク質のリン酸化を触媒する酵素
を意味する。
【0053】 本発明の産業適用性を分析するために、本発明に係るヌクレオチド配列を過剰
産生する形質転換植物を作製することができる。新規遺伝子、蛋白質またはその
不活性化変異体のこのような過剰発現は、細胞分裂に対して正または負のいずれ
かに働くと考えられる。発現レベルおよび/または活性を調節するための方法は
当業者に知られており、これには例えば過剰発現、共抑制、リボザイムの使用、
センスおよびアンチセンス法、遺伝子サイレンシング法が含まれる。「センス鎖
」とは、そのmRNA転写物に対して相同である2本鎖DNA分子のストランドを指す。
「アンチセンス鎖」は、「センス鎖」の配列に対して相補的な逆配列を含む。
【0054】 このため、本発明に係る核酸分子は、植物の特質を調節すること、および好ま
しくは改良された、または有用な、改変された表現型を有する植物を得ることを
目的とした、植物細胞の遺伝子操作のために特に有用である。同様に、本発明を
、インビトロ培養下にある細胞、好ましくは植物細胞の細胞分裂および増殖を調
節するために用いることもできる。具体的には、植物細胞の分裂速度および/ま
たは植物細胞分裂の阻害には、本発明に係る蛋白質をコードする遺伝子の過剰発
現または発現の低下によって影響を与えることができる。本発明に係るサイクリ
ン遺伝子の過剰発現は細胞増殖を促進し、一方、サイクリンの発現低下は細胞分
裂を停止させるか、または細胞周期へのリエントリーを阻止する。このため、本
発明の一部は、前記のコード配列またはその一部を含むサイクリンを細胞増殖の
正または負の調節因子として用いることである。
【0055】 過剰産生の結果としてG1/S期時間は短縮され、増殖の増殖因子に対する依存 性は弱くなる。このため、当該ポリペプチドをコードする遺伝子またはその断片
を単独または組み合わせて用いることによる植物細胞の形質転換によって形質転
換植物を得ることができ、植物細胞は単子葉または双子葉植物に属しうる。この
目的のためには、単一の構築物中にあるか、または当該配列に加えて別々の構築
物として存在する組織特異的プロモーターを用いることができる。または、サイ
クリンの発現はサイトカイニンもしくはスクロースにより誘導可能である。
【0056】 驚くべきことに、本発明に係るポリペプチドもしくはその断片を用いて、また
は本発明に係る遺伝子に対するアンチセンスRNAを用いて、植物の分裂組織の細 胞分裂をそれぞれ正および/または負の方向に操作することができる。さらに、
サイクリンの過剰産生によって増殖が増強され、塩、乾燥、寒冷などの環境スト
レスによって引き起こされる停止に対する細胞分裂の感受性が低下する。
【0057】 したがって、本発明は、トランスジェニック植物、植物細胞または植物組織を
作製するための方法であって、本発明の核酸分子およびベクターを前記植物、植
物細胞または植物組織のゲノム中に導入することを含む方法を提供する。
【0058】 センスまたはアンチセンス配向にある本発明に係る核酸分子を植物細胞内で発
現させるためには、この分子は植物細胞における発現を実現させる調節性要素の
制御下におかれる。これらの調節性要素は、発現させようとする核酸分子に対し
ても、同じく形質転換させようとする植物種に対しても、異種でも同種でもよい
。このような調節性要素は一般に、植物細胞内で活性を示すプロモーターを含む
。トランスジェニック植物の全組織において発現を得るためには、CaMVの35Sプ ロモーター(Odell、Nature 313(1985)、810〜812)またはトウモロコシのポ リユビキチン遺伝子のプロモーター(Christensen、Plant Mol. Biol. 18(1982
)、675〜689)などの構成性プロモーターを用いることが好ましい。トランスジ
ェニック植物の特定の組織における発現を達成するためには、組織特異的プロモ
ーターを用いることができる(例えば、Stockhaus、EMBO J. 8(1989)、2245〜
2251を参照)。また、ジャガイモの塊茎内およびトウモロコシ、ソラマメ、コム
ギ、オオムギなどのさまざまな植物種の種子内で特異的活性を示すプロモーター
も知られている。発現の厳密な制御を行えるように誘導性プロモーターを用いて
もよい。誘導性プロモーターの一例は、熱ショック蛋白質をコードする遺伝子の
プロモーターである。顆粒粉(microspore)に特異的な調節性要素およびその使
用も記載されている(国際公開公報第96/16182号)。さらに、化学的に誘導し うるTetシステム(Tet-system)を用いてもよい(Gatz、Mol. Gen. Genet. 227 (1991)、229〜237)。これ以外の適したプロモーターも当業者には知られてお
り、例えばワード(Ward)(Plant Mol. Biol. 22(1993)、361〜366)に記載 されている。調節性要素はさらに、植物細胞内で機能的である転写および/また
は翻訳エンハンサーも含みうる。さらに調節性要素は、転写物にポリA尾部を付 加してその安定性を高めると思われるポリAシグナルなどの転写終結シグナルも 含みうる。
【0059】 本発明に係る核酸分子がセンス配向において発現される場合には、蛋白質が植
物細胞の任意の望ましい区画内に位置するような方式でコード鎖を改変すること
が原則的に可能である。これらには、核、小胞体、液胞、ミトコンドリア、プラ
スチド、アポプラスト、細胞質などが含まれる。本発明の蛋白質の相互作用性の
構成要素は、細胞質および/または核において作用を及ぼすため、本発明の蛋白
質を同じ区画内に向かわせるためには対応するシグナル配列が好ましい。望まし
い区画における局在化を実現させるこの改変およびシグナル配列を実行するため
の方法は当業者には周知である。
【0060】 外来性DNAを植物に導入するための方法も当技術分野で周知である。これらに は、例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaci
ens)またはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を 用いてのT-DNAによる植物細胞または組織の形質転換、プロトプラストの融合、 直接的な遺伝子導入(例えば、欧州特許第A 164 575号を参照)、注入、電気穿 孔、微粒子射入などの遺伝子銃法(biolistic method)、花粉を介した形質転換
、植物RNAウイルスを介した形質転換、リポソームを介した形質転換、損傷もし くは酵素分解を加えた未成熟胚または損傷もしくは酵素分解を加えた胚形成性カ
ルスを用いての形質転換、および当技術分野で知られたその他の方法が含まれる
。本発明の方法に用いられるベクターはさらに、植物ゲノムへの安定的組込みを
可能とするアグロバクテリウムT-DNAの「左側境界」または「右側境界」配列を 含みうる。さらに、マーカーをもたない(marker free)トランスジェニック植 物、すなわち植物の発生および植物育種のある特定の時期に選択性またはスコア
化可能なマーカー遺伝子が失われるものの作製を可能とする方法およびベクター
も当業者には知られている。これは、例えば、同時形質転換(Lyznik、Plant Mo
l. Biol. 13(1989)、151〜161;Peng、Plant Mol. Biol. 27(1995)、91〜10
4)によって、および/または植物における相同組換えを促進しうる酵素を用い るシステムの使用(例えば、国際公開公報第97/08331号;Bayley、Plant Mol.
Biol. 18(1992)、353〜361);Lloyd、Mol. Gen. Genet. 242(1994)、653〜
657;Maeser、Mol. Gen. Genet. 230(1991)、170〜176;Onouchi、Nucl. Acid
s Res. 19(1991)、6373〜6378を参照)によって達成可能である。適切なベク ターを調製するための方法は、例えばサムブルック(Sambrook)(分子クローニ
ング:実験室マニュアル(Molecular Cloning;A Laboratory Manual)、第2版 (1989)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、NY) によって記載されている。
【0061】 適したアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens )の菌株およびベクター、さらにアグロバクテリウムの形質転換ならびに適切な
増殖および選択培地は当業者に周知であり、先行技術において記載されている(
GV3101(pMK90RK)、Koncz、Mol. Gen. Genet. 204(1986)、383〜396;CS8C1 (pGV 3850kan)、Deblaere、Nucl. Acid Res. 13(1985)、4777;Bevan、Nucl
eic. Acid Res. 12(1984)、8711;Koncz、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86(1
989)、8467〜8471;Koncz、Plant Mol. Biol. 20(1992)、963〜976;Koncz、
遺伝子タギングおよび発現試験のための特殊化ベクター(Specialized vectors forgene tagging and expression studies)、Plant Molecular Biology Manu
al、第2巻、GelvinおよびSchilperoort(編)、Dordrecht、The Netherlands:K
luwer Academic Publ.(1994)、1〜22;欧州特許第A-120 516号;Hoekema:バ イナリー植物ベクター系(Binary Plant Vector System)、Offsetdrukkerij Ka
nters B.V.、Alblasserdam(1985)、Chapter V、Fraley、Crit. Rev. Plant. S
ci.、4、1〜46;An、EMBO J. 4(1985)、277〜287)。本発明の方法にはアグロ
バクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)を用いること が好ましいが、アグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)
などの他のアグロバクテリウム菌株も、例えば前記菌株によって付与される表現
型が望ましい場合などには用いうる。
【0062】 遺伝子銃法を用いる形質転換のための方法は当業者には周知であり、例えばワ
ン(Wan)、Plant Physiol. 104(1994)、37〜48、バシル(Vasil)、Bio/Tec
hnology 11(1993)、1553〜1558およびクリストウ(Christou)(1996)Trends
in Plant Science 1、423〜431を参照されたい。微量注入は、ポトリカス(Pot
rykus)およびスパンゲンベルグ(Spangenberg)(編)、植物に対する遺伝子導
入(Gene Transfer To Plants)、Springer Verlag、Berlin、NY(1995)に記載
された通りに行うことができる。ほとんどの双子葉植物の形質転換は上記の方法
によって行いうる。しかし、単子葉植物の形質転換に関してはいくつかの好首尾
な形質転換法が開発されている。これらには、上記のものなどの遺伝子銃法を用
いる形質転換のほか、プロトプラスト形質転換、ある程度の透過化処理を行った
細胞での電気穿孔、グラスファイバーを用いたDNAの導入などが含まれる。
【0063】 本明細書で用いられる「形質転換」という用語は、導入に用いられる方法とは
無関係に、外来性ポリヌクレオチドの宿主細胞への導入を指す。ポリヌクレオチ
ドの宿主細胞への導入は一時的でも安定的でもよく、例えばプラスミドもしくは
キメラ結合のように組み込まれずに維持されても、または宿主ゲノム中に組み込
まれてもよい。この結果得られた形質転換植物細胞は、続いて、当業者に知られ
た様式で形質転換植物を再生させるために用いることができる。
【0064】 一般に、本発明に従って改変することができて、本発明による蛋白質の過剰発
現またはこのような蛋白質の合成の低下のいずれかを呈する植物を、任意の望ま
しい植物種から得ることができる。それらは単子葉植物でも双子葉植物でもよい
が、穀物(例えば、トウモロコシ、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、カラス
ムギなど)、ジャガイモ、油産生植物(例えば、アブラナ、ヒマワリ、ラッカセ
イ、ダイズなど)、ワタ、テンサイ、サトウキビ、マメ科植物(例えば、インゲ
ンマメ類、エンドウ豆類など)、木材産生植物、好ましくは樹木などの、農業、
材木栽培または園芸において関心がもたれる植物種に属することが好ましい。
【0065】 したがって、本発明は、植物細胞における核酸分子の発現を可能にする調節性
要素と結合した形で(好ましくはゲノム中に安定的に組み込まれた)本発明に係
る核酸分子を含み、その核酸分子がトランスジェニック植物細胞に対して外来性
であるようなトランスジェニック植物細胞にも関する。外来性の意味については
前記を参照されたい。
【0066】 トランスジェニック植物細胞における核酸分子の存在および発現は分裂促進性
サイクリンの合成をもたらし、このような細胞を含む植物における生理的変化お
よび表現型変化をもたらす。
【0067】 このため、本発明は、本発明によるトランスジェニック植物細胞を含むトラン
スジェニック植物および植物組織にも関する。それらが天然には起こらない発生
段階および/または植物組織などにおける本発明の分裂促進性サイクリンの(過
剰)発現のために、これらのトランスジェニック植物には野生型植物と比べて種
々の生理的、発生的および/または形態的改変が認められると思われる。
【0068】 例えば、シロイヌナズナCYCD4;1遺伝子を過剰発現するトランスジェニック植 物を得るために、そのコード領域を例えばpAT7002ベクター中にクローニングす ることができる(AoyamaおよびChua、997、Plant J. 11、p605〜612)。このベ クターは、グルココルチコイドであるデキサメタゾンの添加により、クローニン
グされた挿入物の誘導性発現を可能とする。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PC
R)の手法に従い、5'-GAACACTCGAGTGTAATGGCAGAGG-3'(配列番号:3)および5'-
CATCATACTAGTTATAATAATGTAAG-3'(配列番号:4)というプライマーを用いて、CY
CD4;1のコード領域を増幅することができる。得られたPCR断片を精製し、XhoIお
よびSpeIで切断できる。続いてこの断片をpTA7002のXhoIおよびSpeI部位にクロ ーニングすることができる。この結果得られたバイナリーベクターは、アグロバ
クテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)に導入可能であ る。この菌株は、例えばリーフディスク法(Horshら、1985、Science 227、p122
9〜1231)を用いるタバコ・プチハバナ(Nicotiana tabacum cv. Petit havana )の形質転換、および例えば根形質転換法(Valvekensら、1988、PNAS 85、5536
〜5540)を用いるシロイヌナズナの形質転換に用いうる。続いてトランスジェニ
ック植物をハイグロマイシン20mg/lによって選択することができる。
【0069】 植物をCYCD4誘導性発現に関する植物の試験は以下の通りに行いうる。各形質 転換体の葉2〜3枚を2つに切断する。半分にした葉のそれぞれを、デキサメタゾ ン(濃度0.03mM)の存在下または非存在下において50mMのクエンナトリウム酸緩
衝液(pH 5.8)中に浸漬する。誘導を24時間加えた後に、トリゾール(Trizol)
試薬(Gibco BRL)を製造者に従って用いてこれらの葉からRNAを抽出し、例えば
5μgのRNAを用いてノーザンゲルを泳動にかける。ゲルをニトロセルロースフィ ルター(HybondN+、Amersham)上にブロットし、CYCD4プローブとハイブリダイ ズさせる。
【0070】 さらに、デキサメタゾンの存在下および非存在下で、1%スクロースを加えた1
/2 MS培地に形質転換体の種子を播くこともできる。この際、対照としてSR1種子
を含める必要がある。デキサメタゾンの存在下では、トランスジェニック植物の
成長挙動が対照植物と比べて変化すると予想される。例えば、これらのトランス
ジェニック植物はより速く成長する、および/または余分に細胞を有する可能性
がある。
【0071】 さらに、前記植物は対応する野生型植物と比べて環境ストレスに対する感受性
が低いと考えられる。
【0072】 さらに、本発明は、本発明に係る核酸分子またはその一部を(好ましくはゲノ
ム中に安定的に組み込まれた形で)含み、その核酸分子またはその一部の転写お
よび/または発現が細胞周期相互作用蛋白質の合成の低下をもたらすようなトラ
ンスジェニック植物にも関する。
【0073】 1つの好ましい態様において、この低下はアンチセンス、センス、リボザイム 、共抑制および/または優性変異の効果によって達成される。
【0074】 「アンチセンス」および「アンチセンスヌクレオチド」とは、天然にみられる
遺伝子産物の発現を遮断するDNAまたはRNA作製物を意味する。
【0075】 本発明に係る核酸分子を提供することにより、上記の通りに蛋白質の発現レベ
ルが低下し、それ故に細胞分裂に欠陥のあるトランスジェニック植物細胞を作製
するという可能性が開拓される。これを実現するための技法は当業者には周知で
ある。これらには、例えばアンチセンスRNA、リボザイム、アンチセンスおよび リボザイムの機能を兼ね備えた分子ならびに/または共抑制効果をもたらす分子
の発現が含まれる;前記も参照。植物細胞における分裂促進性サイクリンの量を
減少させるためにアンチセンス法を用いる場合、アンチセンスRNAをコードする 核酸分子は、形質転換に用いる植物種に対して同種由来であることが好ましい。
しかし、分裂促進性サイクリンをコードする内因性の核酸分子に対して高度の相
同性を示す核酸分子を用いることも可能である。この場合には、相同性は好まし
くは80%よりも高く、特にいえば90%よりも高く、さらにより好ましくは95%よ
りも高い。
【0076】 トランスジェニック植物細胞における本発明に係る蛋白質の合成の低下は、例
えば細胞分裂の変化を引き起こしうる。このような細胞を含むトランスジェニッ
ク植物において、このことは種々の生理的、発生的および/または形態的変化を
もたらしうる。
【0077】 したがって、本発明は、上記のトランスジェニック植物細胞を含むトランスジ
ェニック植物にも関する。これらは野生型植物と比較して、例えば細胞分裂にお
ける欠陥および/または増殖特性の低下を示すと考えられる。
【0078】 本発明は、本発明に係る蛋白質の過剰発現またはこのような蛋白質の合成の低
下のいずれかを示す、上記のトランスジェニック植物細胞を含む培養植物組織に
も関する。
【0079】 本発明に従って得られた形質転換植物は、従来の育種方式、もしくは同一の特
質を備えたさらに形質転換がなされた植物を作製するためのインビトロ植物繁殖
に用いることができ、および/または同一もしくは近縁種のその他の変種に同じ
特質を導入するために用いることもできる。このような植物も本発明の一部であ
る。形質転換植物から得られる種子も遺伝的に同じ特質を含んでおり、本発明の
一部である。前記の通り、本発明は当業者に知られた任意の形質転換法によって
形質転換されうるあらゆる植物および穀物に対して原則的に適用可能であり、こ
れには例えばトウモロコシ、コムギ、オオムギ、イネ、脂肪種子作物、樹木種、
テンサイ、キャッサバ、トマト、ジャガイモ、その他の数多くの野菜、果物が含
まれる。
【0080】 さらにもう1つの局面において、本発明は、本発明による核酸分子を発現する トランスジェニック植物細胞または前記蛋白質のレベルの低下を示す細胞のいず
れかを含む本発明によるトランスジェニック植物の回収可能部分および繁殖材料
にも関する。回収可能部分は原則として植物の任意の有用な部分であってよく、
例えば花、花粉、実生、塊茎、葉、茎、果実、種子、根などである。繁殖材料に
は、例えば種子、果実、挿木、実生、塊茎、台木が含まれる。
【0081】 本発明はさらに、 (a)スクリーニングしようとする化合物と、本発明の分裂促進性サイクリンお よび適切な条件下で分裂促進性サイクリンと相互作用しうる読み出し系を含む反
応混合物との組み合わせ、 (b)分裂促進性サイクリンと前記読み出し系との相互作用を可能にする条件下 での、化合物または複数の化合物を含む試料の存在下における前記反応混合物の
維持、 (c)読み出し系の抑制または活性化をもたらす試料および化合物それぞれの同 定および確認 という段階を含む、分裂促進性サイクリンの活性化物質または阻害物質を同定お
よび入手するための方法に関する。
【0082】 本発明の文脈における「読み出し系(read out system)」という用語は、細 胞、組織または器官において転写および/または発現した際に、スコア化可能お
よび/または選択性の表現型を提供するDNA配列を意味する。このような読み出 し系は当業者には周知であり、例えば、上記および添付の実施例で説明する組換
えDNA分子およびマーカー遺伝子が含まれる。本発明の方法における「複数の化 合物」という用語は、同一でも同一でなくともよい複数の物質として理解される
べきである。
【0083】 前記の化合物または複数の化合物は、化学的に合成もしくは微生物により産生
されてもよく、および/または、例えば、植物、動物または微生物などからの細
胞抽出物などの試料中に含めてもよい。さらに、前記化合物は分裂促進性サイク
リンを抑制または活性化しうることが当技術分野で知られていても、これまで知
られていなくてもよい。反応混合物は無細胞抽出物でもよく、細胞または組織培
養物を含んでもよい。本発明の方法のために適した設備は当業者に知られており
、例えばアルバート(Alberts)ら、細胞の分子生物学(Molecular Biology of
Cell)、第3版(1994)、特に第17章に広く記載されている。複数の化合物は例 えば反応混合物、培地に添加しても細胞内に注入しても、または植物体に噴霧し
てもよい。1つの化合物または複数の化合物を含む試料が本発明の方法において 同定されれば、分裂促進性サイクリンを抑制もしくは活性化しうる化合物を含む
と同定された最初の試料から化合物を単離すること、または、例えばそれが複数
の異なる化合物からなる場合には、試料当たりの異なる物質の数を減らして最初
の試料を細分したものに対して本方法を繰り返すために、最初の試料をさらに細
分することが可能である。試料の複雑さに応じて、好ましくは本発明の方法に従
って同定された試料が限られた数または唯一の物質のみを含むようになるまで、
上記の段階を複数回にわたって行うことができる。好ましくは、前記試料は類似
した化学的および/または物理的特性を有する物質を含み、最も好ましくは前記
物質は同一である。好ましくは、上記の方法に従って同定される化合物またはそ
の誘導体は、植物育種ならびに植物細胞および組織の培養における用途に適した
形態へとさらに処方化される。
【0084】 本発明の方法に従って試験および同定しうる化合物は、例えばcDNA発現ライブ
ラリーなどの発現ライブラリー、ペプチド、蛋白質、核酸、抗体、低分子有機化
合物、ホルモン、ペプチド模倣物、PNAなどでありうる(Milner、Nature Medici
ne 1(1995)、879〜880;Hupp、Cell 83(1995)、237〜245;Gibbs、Cell 79 (1994)、193〜198および前記に引用した参考文献)。さらに、分裂促進性サイ
クリンの調節因子と推定されるものおよび/または本発明の分裂促進性サイクリ
ンの上流もしくは下流に作用を及ぼすものをコードする遺伝子を、例えば、当技
術分野で知られた遺伝子ターゲティングベクターなどを用いる挿入変異誘発法(
insertion mutagenesis)(例えば、Hayashi、Science 258(1992)、1350〜135
3;FritzeおよびWalden、T-DNAタギングによる遺伝子活性化(Gene activation
by T-DNA tagging)、Methods in Molecular biology 44(Gartland, K.M.A.お よびDavey, M.R.編)、Totowa:Human Press(1995)、281〜294を参照)または
トランスポゾンタギング(Chandlee、Physiologia Plantarum 78(1990)、105 〜115)などを用いて同定することもできる。また、前記化合物は、既知の阻害 物質または活性化物質の機能的誘導体または類似体であってもよい。化学的誘導
体および類似体の調製のための方法は当業者に周知であり、例えばバイルシュタ
イン(Beilstein)、有機化学ハンドブック(Handbook of Organic Chemistry)
、Springer edition New York Inc.、175 Fifth Avenue、New York、N.Y. 10010
U.S.A.および有機化学(Organic Synthesis)、Wiley、New York、USAに記載さ
れている。さらに、当技術分野で知られた方法に従って、前記誘導体および類似
体を効果に関して試験することもできる。さらに、例えば上記の方法に従って、
ペプチド模倣物ならびに/またはコンピュータ利用による適切な誘導体および類
似体を用いることもできる。本発明の方法に用いうる細胞または組織は、好まし
くは前記の態様で説明した本発明の宿主細胞、植物細胞または植物組織である。
【0085】 ある化合物が分裂促進性サイクリンを抑制または活性化しうるか否かの判定は
、例えば、DNA複製および細胞分割のモニタリングによって行いうる。これはさ らに、化合物と接触した本発明の細胞の表現型特性を観測し、それを野生型植物
のものと比較することによっても行いうる。1つのさらなる態様において、前記 特性を、分裂促進性サイクリンを抑制もしくは活性化しうる、またはしえないこ
とが知られた化合物と接触させた細胞のものと比較してもよい。
【0086】 上記の方法によって同定される阻害物質または活性化物質は、除草剤、殺虫剤
および/または植物成長調整物質として有用なことが明らかになると思われる。
このため、1つのさらなる態様において、本発明は、本発明の方法に従って入手 または同定される化合物であって、分裂促進性サイクリンの活性化物質または分
裂促進性サイクリンの阻害物質である前記化合物に関する。
【0087】 このような有用な化合物は、例えば、本発明の分裂促進性サイクリンと結合す
るトランス作用因子のことがある。トランス作用因子の同定は、当技術分野にお
ける標準的な方法を用いて行いうる(例えば、Sambrook、前記およびAusubel、 前記を参照されたい)。ある蛋白質が本発明の蛋白質と結合するか否かを判定す
るには、標準的な未変性ゲルシフト分析を行うことができる。本発明の蛋白質と
結合するトランス作用因子を同定するためには、本発明の蛋白質を標準的な蛋白
質精製法における親和性試薬として、または発現ライブラリーのスクリーニング
用のプローブとして用いることができる。トランス作用因子がいったん同定され
れば、例えば、トランス作用因子の本発明の蛋白質との結合に対抗する阻害物質
に関するスクリーニングから始めて、本発明の分裂促進性サイクリンに対するそ
の結合の調節に向けた取り組みが行えるようになる。そうすれば、トランス作用
因子(またはその阻害物質)、または例えばトランスジェニック植物用のベクタ
ー中にある、それをコードする遺伝子を適用することにより、植物における分裂
促進性サイクリンの活性化または抑制を達成することができる。さらに、活性化
型のトランス作用因子が二量体であれば、その活性を阻害するためにトランス作
用因子のドミナントネガティブ変異体を作製することができる。さらに、トラン
ス作用因子が同定されれば、これに続いて、細胞周期の制御に関与する遺伝子の
活性化(シグナル伝達など)または抑制につながる経路におけるさらなる構成要
素を同定することができる。そうすれば、動物および植物における細胞周期を調
節するためのさらなる薬物および方法を開発するために、これらの構成要素の活
性の調節に取り組むことが可能となる。
【0088】 本発明は、前記の核酸分子、ベクター、蛋白質、抗体、または化合物、および
選択的には検出のために適した手段のうち少なくとも1つを含む、診断的組成物 にも関する。
【0089】 前記の診断的組成物は、細胞からのmRNAの単離、およびそのようにして得られ
たmRNAと上記の核酸プローブを含むプローブとのハイブリダイゼーション条件下
での接触、プローブとハイブリダイズしたmRNAの存在の検出、およびそれによる
細胞内での蛋白質の発現の検出を含む、対応するmRNAの存在の検出によって、分
裂促進性サイクリンの発現を検出するための方法に対して用いうる。本発明によ
る蛋白質の存在を検出するさらなる方法は、例えば固相酵素免疫測定法などの当
技術分野で周知の免疫学的技法を含む。さらに、植物育種における分子マーカー
として本発明による核酸分子を用いることも可能である。
【0090】 当業者は、哺乳動物または昆虫などのその他の生物体における細胞分裂の進行
に影響を与えるために酵母および動物などのその他の生物体に由来する本発明に
よる蛋白質を用いることができる。1つの好ましい態様において、1つまたは複数
の本発明のDNA配列、ベクターもしくは蛋白質または上記の抗体もしくは化合物 を、例えば、形質転換植物、特に ・完全な植物体において ・選択された植物器官、組織または細胞種において ・寒冷、加熱、乾燥もしくは塩ストレスなどの非生物的ストレスまたは病原体感
染などの生物的ストレスを含む、特定の環境条件下 ・特定の発生段階の間 における細胞周期の進行におけるG1/S移行期に関与する遺伝子の発現レベルの 途絶を特異的に妨げるために用いられる。
【0091】 本発明のもう1つの局面は、本発明の1つもしくは複数のDNA配列、ベクターも しくは蛋白質、または上記の抗体もしくは化合物を、例えば、本発明に係るサイ
クリン遺伝子の発現調節によって操作できる当該植物の全体的構成、成長および
環境に対する感受性を調節するために用いることができるという点である。
【0092】 上記の観点からみて、本発明は、植物細胞周期、植物細胞の分裂および/もし
くは増殖の調節のため、植物細胞においてサイクリン依存性プロテインキナーゼ
の活性に影響を与えるため、分裂促進性サイクリンの有無に影響を与えることも
しくはその発現を妨げることによって植物細胞の分裂を阻止するため、環境スト
レス条件によって引き起こされる植物の成長阻害を改変するため、雄性もしくは
雌性不稔を誘発するため、上記に定義した宿主における細胞分裂の進行に影響を
与えるため、または細胞周期蛋白質の抑制物質もしくは活性化物質を同定するた
めのスクリーニング法において用いるための、本発明のDNA配列、ベクター、蛋 白質、抗体、調節配列、組換えDNA分子、核酸分子または化合物の使用にも関す る。特質が改変された植物の遺伝子操作のため、および相同分子の同定のために
本発明による核酸分子を用いるという上記の可能性に加えて、上記の核酸分子は
、例えば、上記の分裂促進性サイクリンと相互作用する蛋白質をコードする核酸
分子の同定のためのいくつかの他の用途に用いることもできる。これは、上記の
もの、および例えばスコフィールド(Scofield)(Science 274(1996)、2063 〜2065)に記載されたいわゆる酵母「ツーハイブリッドシステム」の使用による
ものなども含む、当技術分野で周知のアッセイによって達成することができ、こ
れについては添付の実施例も参照されたい。このシステムでは、本発明による核
酸分子によってコードされる蛋白質またはその一部を、GAL4転写因子のDNA結合 ドメインと連結させる。この融合蛋白質を発現し、GAL4転写因子によって認識さ
れる適切なプロモーターによって働くlacZレポーター遺伝子を含む酵母菌株に、
活性化ドメインと融合させた植物蛋白質またはそのペプチドを発現すると思われ
るcDNAのライブラリーによる形質転換を施す。したがって、cDNAの1つによって コードされるペプチドが本発明の蛋白質のペプチドを含む融合ペプチドと相互作
用しうる場合には、この複合体はレポーター遺伝子の発現を指令すると思われる
。このようにして、本発明に係る核酸分子およびコードされるペプチドを、分裂
促進性サイクリンと相互作用するペプチドおよび蛋白質の同定に用いることがで
きる。相互作用蛋白質の結合に対する阻害物質を同定するためにこの系および同
様の系をさらに活用しうることは当業者には明らかである。
【0093】 本発明に係る蛋白質またはこのような分子をコードする核酸分子と相互作用す
る化合物を同定するための他の方法には、例えば、ファージディスプレイ系を用
いるインビトロスクリーニングのほか、フィルター結合アッセイ、または例えば
ビアコア(BIAcore)装置(Pharmacia)を用いての相互作用の「リアルタイム」
測定がある;前記に引用した参考文献を参照のこと。
【0094】 上記およびその他の態様は、本発明の説明および実施例によって開示および包
含される。本発明に従って用いられる方法、用法および化合物の任意の1つに関 するさらなる文献は、例えば電子装置を用いて公的ライブラリーから引き出しう
る。例えば、例えばhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/PubMed/medline.htmlでイン
ターネット上で利用可能である公的データベース「メドライン(Medline)」を 利用することができる。これ以外のデータベースおよびhttp://www.ncbi.nlm.n
ih.gov/、http://www.infobiogen.fr/、http://www.fmi.ch/biology/research
_tools. html、http://www.tigr.org/などのアドレスは当業者に知られており 、例えばhttp://www.lycos.com.を用いて利用することもできる。バイオテクノ
ロジーにおける特許情報の概要および遡り検索および現在の認識に関して有用な
特許情報の関連情報源の概説は、バークス(Berks)、TIBTECH 12(1994)、352
〜364において提供されている。
【0095】 本発明はさらに、以下の非制限的な図面および実施例を参照することによって
説明される。
【0096】本発明を例示する実施例 別に述べる場合を除き、すべての組換えDNA法は、サムブルック(Sambrook) ら(1989)、分子クローニング:実験室マニュアル(Molecular Cloning :A La
boratory Manual)、Cold Spring Harbor Laboratory Press、NYまたはアウスユ
ーベル(Ausubel)ら(1994)、分子生物学における最新プロトコール、最新プ ロトコール(Current Protocols in Molecular Biology、Current Protocols) の第1巻および第2巻に記載されているプロトコールに従って実施する。植物の分
子的作業のための標準的な材料および方法は、バイオスサイエンティフィックパ
ブリケーションズ社(BIOS Scientific Publications Ltd)(UK)およびブラッ
クウェルサイエンティフィックパブリケーションズ社(Blackwell Scientific P
ublications)(UK)から共同出版されているR.D.D. クロイ(Croy)による「植
物分子生物学ラブファーセ(Plant Molecular Biology Labfase)」(1993)に 記載されている。
【0097】 実施例1:細胞周期相互作用蛋白質の同定 CDC2aAt相互作用蛋白質を同定するために、his3およびlacZレポーター遺伝子 の双方の発現を調節するGAL4認識部位に基づくツーハイブリッドシステムを用い
た。CDC2aAtの完全長コード領域をpGBT9ベクター中にクローニングすることによ
り、GAL4 DNA結合ドメインのC末端とCDC2aAtとの融合蛋白質を含むpGBTCDC2Aベ クターを作製した。GAL4活性化ドメインのスクリーニングには、指数増殖期初期
、指数増殖期、定常期初期および定常期という成長期の種々の時点で採取したシ
ロイヌナズナ細胞懸濁液のmRNAから作製したcDNA融合ライブラリーを用いた。pG
BTCDC2Aプラスミドをライブラリーを用いてHF7cレポーター株へと同時形質転換 させた。ほぼ1.2 107個の独立した形質転換体を、無ヒスチジン培地上での増殖 能に関してスクリーニングした。30℃での3日間のインキュベーションにより、 約1200個のコロニーが得られた。これらのコロニーを10mM 3-アミノ-1,2,4-トリ
アゾールの存在下における無ヒスチジン培地上での増殖に関して検討することに
より、陽性コロニーの数は250個に減った。次にこれらのコロニーをlacZ遺伝子 の活性化に関して検討したところ、153個がHis+およびLacZであることが判明 した。陽性クローンからDNAを調製し、塩基配列を決定した。クローンの1つは、
新規な分裂促進性サイクリンをコードする遺伝子(LDV59)を含んでいた。LDV59
によってコードされる蛋白質はRb相互作用モチーフも含む。
【0098】 LDV59によってコードされる蛋白質とCDC2aAtとの間の相互作用の特異性を、pG
BTCDC2AおよびpGADLDV59による酵母の再形質転換によって検証した。対照として
、pGBTCDC2AをGAL4活性化ドメインのみを含むベクター(pGAD424)により同時形
質転換し、pGADLDV59をGAL4 DNA結合ドメインのみを含むプラスミド(pGBT9)に
より同時形質転換した。形質転換体を、ヒスチジン含有または非含有培地に播い
た。ヒスチジンの非存在下で増殖可能であったのは、pGBTCDC2AおよびpGADLDV59
の両方を含む形質転換体のみであった。
【0099】 実施例2:LDV59によってコードされる蛋白質はCdc2aAtおよびCdc2bAtの両方と会
合する CDC2bAtの完全長コード領域をpGBT9ベクター中にクローニングすることにより
、GAL4 DNA結合ドメインのC末端とCDC2bAtとの融合蛋白質をコードするpGBTCDC2
Bベクターを作製した。HF7c酵母に対してpGBTCDC2BをpGADLDV59により同時形質 転換し、同時形質転換体をヒスチジン含有または非含有培地に播いた。対照とし
て、pGBTCDC2BをGAL4活性化ドメインのみを含むベクター(pGAD424)により同時
形質転換し、pGADLDV59をGAL4 DNA結合ドメインのみを含むプラスミド(pGBT9)
により同時形質転換した。ヒスチジンの非存在下で増殖可能であったのは、pGBT
CDC2BおよびpGADLDV59の両方を含む形質転換体のみであった。これらのデータは
、LDV59によってコードされる遺伝子産物がCDC2aAtだけでなくCDC2bAtとも結合 することを示す。
【0100】 実施例3:LDV59遺伝子の特徴分析 LDV59遺伝子のゲノム構成を検討するため、アラビドプシスのDNAを3つの異な る制限酵素で消化した。LDV59コード領域との低ストリンジェンシーでのハイブ リダイゼーションではすべての消化物で単一のバンドのみが認められ、このこと
からアラビドプシスのハプロイドゲノム中に存在するLDV59遺伝子は1つのみであ
ることが示された。
【0101】 実施例4:LDV59の発現はマイトジェンにより誘導可能である グラブ(Glab)ら(FEBS Lett. 353(1994)、p.207〜211)により記載された
通りに維持した生態型Col.-Oのアラビドプシス細胞懸濁液を、オーキシン(2,4-
D)、サイトカイニン(BAP)およびスクロースを欠く培地中で再懸濁化すること
により、48時間にわたり増殖因子を枯渇させた。48時間後に細胞を8等分し、ス クロース含有または非含有、オーキシン含有または非含有、およびサイトカイニ
ン含有または非含有という条件を組み合わせた培地中に再懸濁した。6時間後に 細胞から培養RNAを抽出した。LDV59遺伝子をプローブとしてRNAゲルブロットの 検索を行った。ハイブリダイゼーションシグナルが観察されたのはサイトカイニ
ンおよびスクロースを加えた細胞のみであり、このことはLDV59遺伝子がこれら の分裂促進因子によって特に誘導されることを示す。
【0102】 実施例5:LDV59の発現 2.5%グルタルアルデヒドを含む0.1Mカコジル酸緩衝液(pH7.2)にて植物材料
を固定した。固定組織をエタノールで脱水し、トルエンで洗浄した上でパラフィ
ン中に包埋した。包埋組織をスライスして連続10μmの切片とし、コーティング がなされた顕微鏡用スライドグラスに接着した。T7およびSp6 RNAポリメラーゼ を製造者(Boehringer Mannheim)の指示に従って用いるラン・オフ転写法によ り、PGem2中にサブクローニングされたLDV59 cDNAの35S-UTP標識センスおよび
アンチセンスRNAを作製した。完全長転写物をアルカリ加水分解によって平均長0
.3kbに短縮した(Coxら、1984、Dev.Biol., 101、p.485)。完全長および加水分
解された転写物の両方のサイズを1%変性ゲルにて確認し、合成されたRNAの量を
算出した。mRNAインサイチューハイブリダイゼーションの手順は、本質的にはア
ンゲラー(Angerer)およびアンゲラー(Angerer)、「インサイチューハイブリ
ダイゼーション:実践的アプローチ(In situ hybridization:A practical app
roach)」(The Practical Approach series、Wilkinson DG編、Oxford Press、
p.15〜32)(1992)により記載された通りに行った。クロスハイブリダイゼーシ
ョンを避けるために、ストリンジェントな洗浄を0.1SSC(1×SSC、150mM NaCl、
15mM Na3-クエン酸、pH7.0)、62℃で60分時間行った。
【0103】 シロイヌナズナの根、茎頂分裂組織および花、ならびにラディッシュの根に対
してmRNAインサイチューハイブリダイゼーション法を適用したところ、以下の発
現パターンが認められた。
【0104】 側根発生初期には原生木部に隣接する内鞘細胞で強いハイブリダイゼーション
シグナルが認められる。側根の伸長に伴い、極めて強いシグナルがそれに基づい
て観察される。この時期には、側根端の分裂細胞におけるシグナルは弱いか全く
検出されない。根発生の後期には、LDV59 mRNAの多量の蓄積が認められたのは、
根分裂組織中の細胞集団のあるサブセットのみである。成熟した根分裂組織では
LDV59遺伝子の発現はほとんど認められない。維管束組織に沿った特定領域にお ける細胞列では弱く均一な発現パターンが認められる。維管束組織の同様の細胞
列では全く異なる発現パターンが認められる。すなわち、維管束柱に沿ってLDV5
9を発現する細胞の列と発現しない細胞の列が交互に観察される。維管束組織に 沿ったいくつかの組織切片では、含まれていたLDV59遺伝子発現細胞は1つのみで
あった。
【0105】 花発生期には花糸および幼若子房から維管束組織に沿ってLDV59の発現が観察 された。より後期には受精子房で多量のLDV59 mRNAの蓄積が認められ、珠心組織
中の大胞子-母細胞における蓄積の可能性が最も高いと考えられた。胚発生期に おける発現は球状期および心臓型期の胚で強く、成熟胚では弱かった。これらの
結果は、LDV59が維管束組織、側根形成および胚発生の初期段階に関与すること を示す。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】 シロイヌナズナD型サイクリンの配列を整列化したものを示す。C
YCD4;1コード領域をCYCD1;1、CYCD2;1、CYCD3;1(それぞれGenBankアクセッショ
ン番号X83369、X83370およびX83371)とともに整列化した。整列化はパイルアッ
プ(PILEUP)プログラム(Genetic Computer Group、Madison、WI)を用いて得 られた。黒色の領域は配列の過半数が同一な位置を示す。蔭をつけた残基は保存
的置換を表す。最大の類似性が得られるよう、点で表したギャップを挿入した。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12N 1/21 G01N 33/15 Z 5/10 33/50 Z G01N 33/15 C12N 15/00 ZNAA 33/50 5/00 B C (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW

Claims (29)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)配列番号:2に示されたアミノ酸配列を含む蛋白質をコー ドするヌクレオチド配列を含むDNA配列、 (b)配列番号:1に示されたヌクレオチド配列を含むDNA配列、 (c)(a)または(b)に定義されたDNA配列の相補鎖とハイブリダイズするDNA 配列、 (d)(a)または(b)のDNA配列によってコードされるアミノ酸配列との同一性
    が少なくとも70%であるアミノ酸配列をコードするDNA配列、 (e)遺伝暗号の結果として、そのヌクレオチド配列が(a)から(d)までのい ずれか1つに定義されたDNA配列のヌクレオチド配列へと縮重するようなDNA配列 、および (f)(a)から(e)までのいずれか1つのDNA配列によってコードされる蛋白質 の断片をコードするDNA配列 からなる群より選択される、分裂促進性サイクリン(mitogenic cyclin)をコー
    ドする、またはこのような蛋白質の免疫活性および/もしくは機能的断片をコー
    ドするDNA配列。
  2. 【請求項2】 ベイト(bait)としてCDC2a、プレイ(prey)として植物細胞懸
    濁液のcDNAライブラリーを用いるツーハイブリッド・スクリーニング解析を含む
    、分裂促進性サイクリンを同定および入手するための方法。
  3. 【請求項3】 CDC2aがCDC2aAtである、請求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 請求項2または3記載の方法によって入手しうる、分裂促進性サ イクリンをコードするDNA配列。
  5. 【請求項5】 請求項1もしくは4記載のDNA配列またはその相補鎖と特異的にハ
    イブリダイズする、長さが少なくとも15ヌクレオチドである核酸分子。
  6. 【請求項6】 請求項1または4記載のDNA配列を含むベクター。
  7. 【請求項7】 そのDNA配列が原核および/または真核宿主細胞における発現を
    可能にする1つまたは複数の調節配列と機能的に結合している発現ベクターであ る請求項6記載のベクター。
  8. 【請求項8】 請求項6もしくは7記載のベクターまたは請求項1もしくは4記載 のDNA配列を含む宿主細胞。
  9. 【請求項9】 細菌、昆虫、真菌、植物または動物細胞である請求項8記載の宿
    主細胞。
  10. 【請求項10】 蛋白質の発現および産生された蛋白質の培養物からの回収を可
    能とする条件下での請求項8または9記載の宿主細胞の培養を含む、分裂促進性サ
    イクリンまたはその免疫活性断片もしくは機能的断片の製造法。
  11. 【請求項11】 請求項1もしくは4記載のDNA配列によってコードされうる、ま たは請求項2、3もしくは10記載の方法によって入手しうる、分裂促進性サイクリ
    ンまたはその免疫活性断片もしくは機能的断片。
  12. 【請求項12】 請求項11記載の蛋白質またはその断片もしくはエピトープを特
    異的に認識する抗体。
  13. 【請求項13】 トランスジェニック植物、植物細胞または植物組織の製造法で
    あって、請求項1、4もしくは5記載のDNA配列または請求項6もしくは7記載のベク
    ターを該植物、植物細胞または植物組織のゲノムに導入することを含む方法。
  14. 【請求項14】 植物組織または植物細胞から植物を再生させることをさらに含
    む、請求項13記載の方法。
  15. 【請求項15】 植物細胞におけるDNA配列の転写および/もしくは発現を可能 にする調節性要素と機能的に結合された請求項1または4記載のDNA配列を含む、 または請求項13もしくは14記載の方法によって入手しうる、トランスジェニック
    植物細胞。
  16. 【請求項16】 請求項15記載のトランスジェニック植物細胞であって、該DNA 配列または該ベクターが植物細胞のゲノム中に安定的に組み込まれている細胞。
  17. 【請求項17】 請求項15または16記載の植物細胞を含むトランスジェニック植
    物または植物組織。
  18. 【請求項18】 植物細胞の分裂および/もしくは増殖が亢進している、ならび
    に/または対応する野生型植物に比べて植物の環境ストレスに対する感受性が低
    下している、請求項17記載のトランスジェニック植物。
  19. 【請求項19】 DNA配列もしくはその一部の転写および/または発現が細胞に おける分裂促進性サイクリンの合成の低下につながるような、ゲノム中に安定的
    に組み込まれた請求項1、4もしくは5記載のDNA配列もしくはその一部を含む、ま
    たは請求項13または14記載の方法によって入手しうる、トランスジェニック植物
    細胞。
  20. 【請求項20】 低下がアンチセンス、センス、リボザイム、共抑制および/ま
    たは優性変異の効果によって達成される、請求項19記載の植物細胞。
  21. 【請求項21】 請求項19または20記載の植物細胞を含むトランスジェニック植
    物または植物組織。
  22. 【請求項22】 植物細胞の分裂および/または増殖における欠陥を呈する、請
    求項21記載のトランスジェニック植物。
  23. 【請求項23】 請求項15、16、19または20記載の植物細胞を含む請求項17、18
    、21または22のいずれか一項に記載された植物の収穫可能部分または繁殖材料。
  24. 【請求項24】 (a)スクリーニングしようとする化合物と、請求項11記載の 分裂促進性サイクリンおよび適切な条件下で分裂促進性サイクリンと相互作用し
    うる読み出し系を含む反応混合物とを組み合わせる段階、 (b)分裂促進性サイクリンと該読み出し系との相互作用を許容する条件下で、 化合物の存在下または複数の化合物を含む試料の存在下において該反応混合物を
    維持する段階、 (c)読み出し系の抑制または活性化をもたらす試料および化合物をそれぞれ同 定または確認する段階 を含む、細胞分裂の活性化物質または阻害物質を同定および入手するための方法
  25. 【請求項25】 請求項24記載の方法の諸段階、および段階(c)において入手 もしくは同定された化合物またはその誘導体を農業または植物細胞および組織の
    培養における用途に適した形態に処方する段階を含む、植物の除草剤の製造法。
  26. 【請求項26】 植物細胞分裂の活性化物質または阻害物質である、請求項24記
    載の方法によって入手または同定される化合物。
  27. 【請求項27】 請求項1、4もしくは5記載のDNA配列、請求項6もしくは7記載の
    ベクター、請求項11記載の蛋白質、請求項12記載の抗体、または請求項26記載の
    化合物、および選択的には検出のために適した手段を含む診断的組成物。
  28. 【請求項28】 植物細胞周期、植物細胞の分裂および/もしくは増殖の調節、
    細胞増殖の正または負の調節因子としての植物細胞における分裂促進性サイクリ
    ンの活性に影響を与えること、環境ストレス条件によって引き起こされる成長阻
    害を改変すること、または細胞周期蛋白質の抑制物質もしくは活性化物質を同定
    するためのスクリーニング法における使用を目的とする、請求項1、4もしくは5 記載のDNA配列、請求項6もしくは7記載のベクター、請求項11記載の蛋白質、請 求項12記載の抗体または請求項26記載の化合物の使用。
  29. 【請求項29】 成長調整物質および/または除草剤としての請求項26記載の化
    合物の使用。
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