JP2002505077A - 抗病原体システムおよびその使用方法 - Google Patents

抗病原体システムおよびその使用方法

Info

Publication number
JP2002505077A
JP2002505077A JP2000524312A JP2000524312A JP2002505077A JP 2002505077 A JP2002505077 A JP 2002505077A JP 2000524312 A JP2000524312 A JP 2000524312A JP 2000524312 A JP2000524312 A JP 2000524312A JP 2002505077 A JP2002505077 A JP 2002505077A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
pathogen
tat
cells
fusion protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2000524312A
Other languages
English (en)
Inventor
スティーブン・エフ・ドウディ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Washington
Original Assignee
University of Washington
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Washington filed Critical University of Washington
Publication of JP2002505077A publication Critical patent/JP2002505077A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K14/00Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof
    • C07K14/005Peptides having more than 20 amino acids; Gastrins; Somatostatins; Melanotropins; Derivatives thereof from viruses
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61PSPECIFIC THERAPEUTIC ACTIVITY OF CHEMICAL COMPOUNDS OR MEDICINAL PREPARATIONS
    • A61P39/00General protective or antinoxious agents
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/10Transferases (2.)
    • C12N9/12Transferases (2.) transferring phosphorus containing groups, e.g. kinases (2.7)
    • C12N9/1205Phosphotransferases with an alcohol group as acceptor (2.7.1), e.g. protein kinases
    • C12N9/1211Thymidine kinase (2.7.1.21)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/48Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)
    • C12N9/50Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25)
    • C12N9/503Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from viruses
    • C12N9/506Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from viruses derived from RNA viruses
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/14Hydrolases (3)
    • C12N9/48Hydrolases (3) acting on peptide bonds (3.4)
    • C12N9/50Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25)
    • C12N9/64Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from animal tissue
    • C12N9/6421Proteinases, e.g. Endopeptidases (3.4.21-3.4.25) derived from animal tissue from mammals
    • C12N9/6472Cysteine endopeptidases (3.4.22)
    • C12N9/6475Interleukin 1-beta convertase-like enzymes (3.4.22.10; 3.4.22.36; 3.4.22.63)
    • AHUMAN NECESSITIES
    • A61MEDICAL OR VETERINARY SCIENCE; HYGIENE
    • A61KPREPARATIONS FOR MEDICAL, DENTAL OR TOILETRY PURPOSES
    • A61K38/00Medicinal preparations containing peptides
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C07ORGANIC CHEMISTRY
    • C07KPEPTIDES
    • C07K2319/00Fusion polypeptide
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N2740/00Reverse transcribing RNA viruses
    • C12N2740/00011Details
    • C12N2740/10011Retroviridae
    • C12N2740/16011Human Immunodeficiency Virus, HIV
    • C12N2740/16311Human Immunodeficiency Virus, HIV concerning HIV regulatory proteins
    • C12N2740/16322New viral proteins or individual genes, new structural or functional aspects of known viral proteins or genes

Abstract

(57)【要約】 本発明は形質導入ドメインと細胞障害性ドメインを含む1種以上の融合タンパク質を含んでなる抗病原体システムを提供する。細胞障害性ドメインは病原体の感染により特異的に活性化される。該抗病原体システムは異なる病原体の1種またはその組合わせに感染した細胞を効果的に殺滅または損傷する。さらに提供されるのは、形質導入効率の増強されたタンパク質形質導入ドメインである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【参照されるべき関連出願】
本出願は、1998年4月20日出願の同時係属米国仮出願番号60/082
,402の一部継続出願であり、また1997年12月10日出願の同時係属米
国仮出願番号60/069,012の一部継続出願である。これら同時係属仮出
願の開示の全文は参照により本明細書に取込まれている。
【0002】
【発明の背景】
1.発明の分野 本発明は、タンパク質形質導入ドメインと細胞障害性ドメインとを含んでなる
融合タンパク質を病原体感染細胞に導入することにより、該細胞を殺滅または損
傷する抗病原体システムに関する。該細胞障害性ドメインは、病原体の感染した
細胞中で特異的に活性化され得る。さらに提供されるのは、該融合タンパク質の
形質導入能力を増強する特定の形質導入ドメインである。本発明は1種またはそ
れ以上の病原性ウイルスまたはプラスモジウムが感染した細胞を殺滅または損傷
するなど多様な用途を有する。
【0003】 2.背景 多様な病原体が哺乳動物、とりわけヒトなどの霊長類に感染する。例えば、あ
る種のウイルス、細菌、カビ、酵母、蠕虫、プラスモジウム、および原虫類が認
知されたヒト病原体である。例えば、内科のハリソン原理(Harrison’s Princi
ples of Internal Medicine)、12版、マックグロウ−ヒル、インク(199 1)参照。 病原体は多くの場合、形態学的特性を外部に表すメカニズムにより細胞を殺し
、または損傷する。例えば、アポトーシスまたは壊死を受ける病原体感染細胞は
、容易に同定し得る細胞の変化を示す。 アポトーシスに関わる細胞タンパク質および特に酵素についての理解は進歩し
つつある。例えば、カスパーゼ類(すなわち、システイニルアスパルテート特異
プロテアーゼ;cysteinyl aspartate−specific proteases)、シー・エレガン ス(C.elegans)ced−3およびグランザイムBなどのある種細胞プロテアー ゼがアポトーシスに関係している。数種のカスパーゼおよびそれに対するタンパ
ク質分解性基質をエンコードする核酸配列が知られている。例えば、カスパーゼ
−3(すなわち、CPP32)は特によく研究されている。トンプソン(Thomps
on,C.B.)、Science、267:1456(1995);およびウオーカー(Wal
ker,N.P.C.)ら、Cell、78:343(1994)。
【0004】 壊死に関与するタンパク質を同定する試みも関連性がある。例えば、壊死はあ
る種のDNAウイルス、例えば、ヘルペスウイルスなどの発現に続くと考えられ
ている。
【0005】 病原体は多くの場合、ある種のタンパク質、特にプロテアーゼなどの酵素の合
成を誘発する。殆どすべての病原体が生産的感染を遂行するために1種またはそ
れ以上の特異プロテアーゼを必要とするように思われる。例えば、以下に例示す
るヒト病原体は少なくとも1つの病原体特異プロテアーゼの発現を必要とする;
サイトメガロウイルス(CMV)、単純ヘルペスウイルス、例えば、タイプ−1
(HSV−1)、肝炎ウイルス、例えば、C型(HCV)、ある種のプラスモジ
ウム、例えば、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、ヒト免疫不全ウイルスタ
イプ1(HIV−1、HTLV−III、LAVまたはHTLV−III/LA
Vともいう)、ヒト免疫不全ウイルスタイプ2(HIV−2)、カポジ肉腫関連
ヘルペスウイルス(KSHVまたはヒトヘルペスウイルス8)、黄熱病ウイルス
、ある種フラビウイルス、およびライノウイルスである。
【0006】 ある場合には、プロテアーゼは病原体それ自体によってエンコードされる。こ
のような場合には、プロテアーゼは多くの場合病原体特異プロテアーゼといわれ
る。例えば、CMV、HCV、HIV−1、HIV−2、KSHV、および熱帯
熱マラリア原虫は病原体特異プロテアーゼをエンコードする病原体の代表である
。これらのプロテアーゼは多様な機能を発揮し、生産的感染のためにまず絶対的
に必要とされる。
【0007】 特定の病原体特異プロテアーゼ、例えば、HCVがエンコードするセリン型プ
ロティナーゼ、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)がエンコードするアスパラ
ギン酸プロテアーゼ(すなわち、プラスメプシンIおよびII)、およびHSV
−1がエンコードする成熟プロテアーゼなどについては分析努力が払われている
。ディランニイ(Dilanni, C.L.)ら、J. Biol. Chem.、268:2048(1 993);およびフランシス(Francis, S.E.)ら、EMBOJ.、13:306(1 994)参照。 それに対し、ある種の宿主細胞プロテアーゼの誘発可能な発現は、他の病原体
による生産的感染を調節すると信じられる。これらの宿主細胞プロテアーゼは時
として誘発可能な宿主細胞プロテアーゼといわれる。例えば、ある種植物などの
真核細胞の細菌感染は、正常に静止状態にある宿主細胞プロテアーゼの発現を誘
導することができる。宿主細胞プロテアーゼの誘導は病原体を損傷するための試
行であり、それによって宿主細胞を感染から防御する。
【0008】 HIVウイルスによる感染は多くの注目を集めている。現在、略全世界で一致
していることは、これらヒト族のレトロウイルスが後天性免疫不全症候群(AI
DS)および関連疾病の病因作用因子であるということである。殆どすべてのH
IVウイルスによる生産的感染はある種のHIV特異プロテアーゼの発現を必要
とする。例えば、バー−シヌーシー(Barre−Sinoussi)ら、Science、220:
868〜871(1983);ガロ(Gallo)ら、Science、224:500〜5
03(1984)。 HIV感染などの病原体感染を標的とする治療薬の開発は進行しつつある。一
般的な方法の一つは病原体感染の明瞭な段階を中断させることに絞られている。
特に、治療薬はある種のHIV特異酵素、例えば、逆転写酵素(RT)および病
原体特異プロテアーゼなどを除去するために開発されている。 他の薬品、例えば、ある種サイトカインはCMVおよびHSV感染を治療する
試行に使用されている。
【0009】 病原体感染を治療する他の提案された方法は、「細胞内免疫化」といわれる方
法に関する。簡単に説明すると、この方法は、宿主細胞が生産的感染を維持し得
ないようにする試行において、宿主細胞を遺伝子的に修飾することである。例え
ば、ある種真核細胞はこの方法を用いて病原体感染に対し免疫することが可能で
あると示唆されている。例えば、ボルチモア(Baltimore)、Nature、335: 7395(1988);ハリソン(Harrison)ら、Human Gene Therapy、3:4
61(1992);および米国特許5,554,528(ハリソンら)参照。 遺伝子修飾のより特異的な形態は、細胞毒をエンコードする遺伝子構築物の投
与を伴うと報告されている。この場合、該構築物は遺伝子が一度細胞内に入ると
細胞毒を発現し得るように設計する。
【0010】 しかし、病原体感染を治療するこれまでの方法にはいくつかの制限がある。 例えば、細胞を殺すために細胞毒を使用する方法は、常に成功するとは限らな
い。一つの解釈は多くの細胞内細胞毒について報告されている多面的効果に関係
しているのかもしれない。これらの効果は多くの場合、細胞殺滅の分析を複雑な
ものとする。さらに、細胞毒をエンコードする多くの遺伝子構築物は、宿主細胞
内で不所望の高い基本活性を示す。これらの問題は、感染および非感染細胞の死
に導く、「漏出」細胞毒発現として知られるものを生み出す。
【0011】 病原体感染を治療するための他の方法もまた問題をもっている。例えば、薬物
の使用による方法は完全に有効なわけではない。より詳しくは、攻撃的なあるい
はしつこい病原体に感染した被験者は、多くの場合、長期の治療介入を必要とし
、時には数ヶ月または数年にも及ぶことがある。薬物耐性病原体の増殖が次第に
問題化している。このように、この方法の長期的評価には議論がある。
【0012】 特に、今日のHIV治療ではHIVプロテアーゼを標的とする小型の阻害分子
を利用する。しかし、抵抗性のHIV株の出現が次第に問題化している。例えば
、コフィン(Coffin, J.M.)ら、Retroviruses、コールド・スプリング・ハーバ
ー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク(1997);カ
プラン(Kaplan, A.H.)ら、ウイルスプロテアーゼの阻害剤に対し感受性を低下
させたウイルスプロテアーゼをエンコードする多発性ヒト免疫不全ウイルスタイ
プ1変異体の選択、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:5597(1994) ;コンドラ(Condra, J.H.)ら、多重プロテアーゼ阻害剤に抵抗するHIV−1
変異体の生体内出現、Nature 374:569(1995);グルニック(Gulni
k, S.V.)ら、薬物圧下に選択されるHIV−1プロテアーゼ突然変異体の動態 特性と交差耐性パターン、Biochemistry 34:9282(1995);および チスデール(Tisdale, M.)ら、5種の異なるプロテアーゼ阻害剤に対する抵抗 性について個々に選択したヒト免疫不全ウイルスタイプ1変異体の交差耐性分析
、Antimicrob. Agents Chemother. 39:1704(1995)。
【0013】 レトロウイルスTATタンパク質は、ある種の治療設定に用途を見出す可能性
があるとの認識がある。TATはある種のHIV遺伝子をトランス活性化すると
の報告があり、殆どのヒトHIVレトロウイルスによる生産的感染にとって必須
であると信じられている。TATタンパク質はある型の融合タンパク質を細胞内
に持込むのに使用されている。この過程は一般に形質導入と言われる。米国特許
5,652,122(フランケル(Frankel)ら)、およびチェン(Chen, L.L. )ら、Anal. Biochem.、 227:168(1995)参照。
【0014】 しかし、融合タンパク質を細胞に形質導入するのにTATを使用することは、
重要な欠陥と関係することでもある。 例えば、融合タンパク質の適切なレベルを細胞内に維持するのは困難であった
。この問題を克服する試みは、大量の融合タンパク質を投与して、適切な細胞内
レベルを維持する助けとすることであった。大量の融合タンパク質を投与する必
要性は、ある種治療用融合タンパク質の広範な使用を阻みまたは妨げる。例えば
、大量のあるTAT融合タンパク質を使用すると、ある種の宿主細胞の生存能力
にマイナスの影響を与える。
【0015】 さらに、これまでの形質導入する融合タンパク質の多くは、治療上適切なコン
ホメーションを維持するのが困難であった。実例として、多くのこれまでのTA
T融合タンパク質は形質導入に際し、部分的にまたは完全にほぐれると信じられ
ている。この変性は多くの場合、形質導入を有意に減少させる、あるいは除去す
る潜在性を有する。 さらに、これまでの形質導入融合タンパク質を正しく折りたたむことの必要性
は、該タンパク質の精製および保存努力を複雑なものとしてきた。
【0016】 さらなる欠点は、TATまたはある種のTATフラグメントに融合したタンパ
ク質と関連すると報告されている。これらの欠点は、TATが如何に細胞内で作
用すると信じられているかに関係する。さらに詳しくは、TATまたはTATフ
ラグメントが融合タンパク質に対してある種の生物学的特性を付与している可能
性があるとの認識がある。これら特性の一部、特に核局在化およびRNAの結合
は常に望ましいとは限らない。特に、多くのTAT融合タンパク質は核外に、あ
るいはRNAから離して位置させることが難しいという懸念があった。例えば、
ダン(Dang)ら、J. Biol. Chem.、264:18109(1989);TAT−
関連性質の考察については、カルナン(Calnan,B.J.)ら、Genes Dev.、5:2
01(1991)参照。 高い形質導入効率を示し、病原体感染細胞に特異的に細胞毒を送達し得る抗病
原体システムを保有することが望ましい。さらに望まれることは、病原体感染細
胞により活性化され得る本質的に不活性な分子として該細胞毒を送達し得る抗病
原体システムを保有することである。
【0017】
【発明の要約】
本発明は高い形質導入効率を示し、1種以上の病原体が感染した細胞を特異的
に殺滅または損傷する抗病原体システムに関する。一般に、該抗病原体システム
は形質導入ドメインおよび細胞障害性ドメインを含んでなり、枠内融合分子とし
て遺伝子的に、したがって共有結合によりともに結合している融合分子を含んで
いる。さらに、本発明は融合分子の形質導入効率を上昇させる形質導入ドメイン
に関する。該抗病原体システムは非感染細胞中では本質的に不活性であるが、病
原体が感染した細胞内では特異的に活性化される。さらに提供されることは、病
原体による感染、特にある種のウイルスおよびプラスモジウムなどのヒト病原体
による感染を治療するための該抗病原体システムの使用方法である。
【0018】 該抗病原体システムの好適な使用は、病原体感染が少なくとも1種の病原体特
異プロテアーゼを誘導することを必然的に伴う。好ましいことに、このプロテア
ーゼは標的とするアミノ酸配列を特異的に切断することができる。標的とするア
ミノ酸配列は融合分子の1成分であり、本明細書では場合によりこれをプロテア
ーゼ認識または切断部位という。プロテアーゼ認識部位の特異的切断は、融合分
子を、一般に細胞障害性ドメインで、あるいはその近傍で切断して細胞毒を形成
する。そのように形成された細胞毒は、病原体が感染した細胞を特異的に殺滅ま
たは損傷することができる。
【0019】 重要なことは、本抗病原体システムが、細胞毒の形成を病原体誘導プロテアー
ゼの存在につなぎ、それによって細胞障害作用を感染細胞に高度に集中させるこ
とである。細胞毒の形成は、非感染細胞および病原体が不活性である感染細胞で
は最少であるか除外されている。したがって、該抗病原体システムは、生産的に
感染した細胞と非感染細胞との間で有効に特異的に識別することができる。
【0020】 本抗病原体システムは多くの重要な利点を有する。例えば、病原体の血清型の
変化に対応して容易に操作することができる。すなわち、本抗病原体システムが
1種以上の病原株に感染した細胞を殺す、または損傷するために特異的に適合さ
せ得るということである。これに対し、これまでの感染阻止方法、とりわけ薬物
ベースの方法は病原体血清型の変化に対応して通常設計されていない。この欠陥
は多くの場合、薬物耐性病原株の増殖を制御し得ないものとする。以下の考察か
らより明らかとなるように、該抗病原体システムは1種以上の病原体誘発プロテ
アーゼの産生を利用する能力を有し、病原体血清型に感染した細胞を殺滅または
損傷する。顕著な違いは、殆どのこれまでの薬物ベースの方法では、例えば、病
原体遺伝子産物の活性を阻止することにより、病原性経路を阻害することばかり
試行している。本抗病原体システムはより柔軟性に富み、感染した細胞を細胞毒
に特異的に露呈することで病原株の出現を減少させるか、あるいはさらに除去す
るのに用いることができる。
【0021】 本発明の柔軟性の一例として、該抗病原体システムはHIV血清型の出現に対
して特に有用である。例えば、HIVに感染した多くの患者は数種のウイルス株
を表出する。常套の薬物ベース療法では、通常、RTまたはHIVプロテアーゼ
などのHIV酵素活性を阻止しようとする。かかる治療の臨床結果は、多くの場
合、HIV血清型スペクトルの出現である。HIV血清型は、該治療に対し部分
的またはさらに完全に耐性を進展させ得ることが認められる。さらにいわゆる「
カクテル」療法といわれる複数の抗HIV剤を使用する療法には問題がある。そ
れに対し、本発明の抗病原体システムは非常に柔軟性に富み、HIVプロテアー
ゼを使用することによりHIV血清型を産生する細胞を殺滅または損傷するのに
適合させることができる。重要なことは、該抗病原体システムは、これらHIV
プロテアーゼ活性の増大または該システムの活性化が増強された感染細胞数の増
大に対処するように形成される。
【0022】 本抗病原体システムの柔軟性は、一部、ほぼどのような数のHIV血清型が感
染した細胞でも殺滅または損傷するように仕上げることができるという理由で生
じるものである。このように、本発明によると、特定の患者において1種または
それ以上のHIV株を撲滅する抗病原体システムを形成することが可能である。
この特徴はいくつもの観点で非常に有用である。例えば、一人の患者において、
潜在的に有害なまたは無効な薬物に頼ることなしに、HIV感染と闘う特異的な
方法を提供する。重要なことは、該抗病原体システムがナノモル以下の用量で有
効であるように形成することができる。この抗ウイルス活性の低レベルは多くの
現存薬物ベース療法よりも有意に低い。本発明のこの特徴は該抗病原体システム
に対する患者の寛容にプラスの衝撃を与える。
【0023】 さらに、本抗病原体システムは、認知された抗HIV療法、例えば、感染細胞
を殺すまたは損傷する「カクテル」方式(すなわち、抗HIV薬物の併用)を用
いる療法と十分に両立する。 本発明の特定の態様において、該抗病原体システムは、ウイルス産生のHIV
プロテアーゼを活用することにより、HIV血清型の出現を減少させるまたは除
去するため採用される。HIV感染細胞を殺す例示となる融合タンパク質は、下
記実施例11および12に示す。
【0024】 さらに、本抗病原体システムは予想外に大型の融合分子を細胞内に形質導入す
ることができる。とりわけ、該抗病原体システムは誤って折りたたまれた(すな
わち、部分的にまたは完全にほぐれた)融合分子を適応させ、これらの分子が細
胞内に効率的に形質導入されるようにする。とりわけ、該抗病原体システムは、
分子量が約1ないし約500kDaまたはそれ以上の範囲の誤って折りたたまれ
た融合分子と両立し得ると信じられる。したがって、該抗病原体システムは、広
大なスペクトルの融合分子を細胞内に形質導入するのに広く適用することができ
る。
【0025】 さらに詳しくは、誤って折りたたまれた融合分子を形質導入する能力は、これ
までの形質導入方法を越えた本質的な利点を有する。例えば、本発明に従い使用
される誤って折りたたまれた融合タンパク質は、時には約10倍またはそれ以上
にまで形質導入効率を有意に上昇させることが判明した。さらに、融合タンパク
質をミスフォールディングする(誤って折りたたむ)ことにより、細胞内部の融
合分子の量を最適化し得ることも判明した。融合分子の調製と保存もまたミスフ
ォールディングによりプラスの影響を与えられる。
【0026】 考察したように、該抗病原体システムは柔軟性に富む。例えば、病原体が少な
くとも1種の特定プロテアーゼをその細胞内に誘導し得るものであれば、該シス
テムは特定型の病原体または細胞に限定されるものではない。該プロテアーゼは
病原体誘導性または宿主細胞誘導性プロテアーゼであってもよいが、感染に応答
して特異的に誘導される(すなわち、合成または活性化される)ものである。し
かし、特定されたプロテアーゼは融合分子上のプロテアーゼ認識部位を切断して
細胞毒を活性化することができなければならない。
【0027】 本抗病原体システムおよびそれを使用する方法は生体外または生体内で使用す
ることができる。さらに、融合分子成分の順序または数は、分子上の各成分が操
作可能に結合していて、かつ、意図した特定の機能を遂行し得る限り、重要では
ない。
【0028】 該抗病原体システムが産生する細胞毒は、好ましくは、1種以上の細胞プロテ
アーゼおよび通常は病原体−または宿主細胞誘導プロテアーゼの存在下に、感染
細胞を殺滅または損傷するように選択する。好ましくは、該細胞毒は、標準の細
胞生存度試験によりアッセイしたときに、細胞の少なくとも約20%、25%、
50%、75%、80%または90%を殺し、また、好ましくは病原体に感染し
た細胞の約95%、98%または100%まで殺すことが可能である。好適な生
存度試験は標準トリパンブルー排除アッセイ法であるが、他のアッセイ法も必要
により使用してもよい。細胞障害活性はそれを産生する細胞に限定するのが好ま
しい。
【0029】 すでに言及したように、本抗病原体システムは枠内融合分子を含んでいる。該
融合は常套の組換え核酸法により達成することができる。所望により、該融合は
下記の常套法に従い、形質導入タンパク質を細胞障害性ドメインに化学的に結合
することにより達成することもできる。 一般に、融合分子の形質導入ドメインは、融合分子の形質導入において形質導
入し得るか、または介助となり得る殆どすべての合成もしくは天然産アミノ酸配
列である。例えば、形質導入は、融合分子に共有結合により結合しているタンパ
ク質配列、特にHIV TATタンパク質またはそのフラグメントを使用するこ とにより、本発明に従い達成することができる。あるいは、該形質導入化タンパ
ク質はアンテナペディア・ホメオドメイン(Antennapedia homeodomain)または
HSV VP22配列、または当該分野で既知の適切なその形質導入化フラグメ ントであってもよい。
【0030】 形質導入化アミノ酸配列のタイプとサイズは、所望の形質導入の範囲を含め、
いくつかのパラメーターにより導かれる。好適な配列は対象とする細胞の少なく
とも約20%、25%、50%、75%、80%または90%、より好ましくは
、細胞の少なくとも約95%、98%および100%までを形質導入し得るもの
である。形質導入の効率は、一般に形質導入した細胞の百分比で表すが、いくつ
かの常套方法、例えば、下記の特異顕微鏡的方法により定量し得る(例えば、フ
ロー・サイトメトリー分析)。 さらに好ましい形質導入配列は、細胞内の融合分子の少なくともピコモル量で
有利な細胞の侵入と放出の率(場合により、それぞれk1およびk2という)を
明らかにする。アミノ酸配列の侵入と放出の率は、検出可能な標識融合分子を用
いる標準動態分析により容易に定量し得るか、または少なくとも近似させ得る。
一般に、侵入率と放出率の比は約5〜約100の間から約1000までの範囲に
ある。
【0031】 特に、形質導入アミノ酸配列は実質的にαらせん性を特徴とする少なくとも1
つのペプチドを含む。形質導入は、形質導入化アミノ酸配列が有意なαらせん性
をもつときに最適化されることが見出された。また、好適なのは、これらの配列
が該ペプチドの少なくとも一面にそって実質的に配列されている塩基性アミノ酸
残基を有する場合である。一般にかかる好適な形質導入配列は合成タンパク質ま
たはペプチド配列である。 さらに好適な形質導入アミノ酸配列は、クラスI形質導入化ドメインまたは同
様の名称のものであり、堅固なαヘリックス構造であって、ヘリックスシリンダ
ーの下方にわずかにアルギニン(Arg)残基を有する。 一態様において、クラスI形質導入ドメインは、下記一般式により示されるペ
プチドである: B1−X1−X2−X3−B2−X4−X5−B3 ただし、式中B1、B2およびB3はそれぞれ独立に同一または異なって塩基性
アミノ酸である;そして、X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立に
同一または異なってαヘリックス増強アミノ酸である。 他の態様において、クラスI形質導入化ペプチドは下記一般式により示される
: B1−X1−X2−X3−B2−X4−X5−B3 ただし、式中B1、B2およびB3はそれぞれ独立に同一または異なって塩基性
アミノ酸である;X1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立に同一また
は異なってαヘリックス増強アミノ酸である。
【0032】 さらに好適な形質導入化ペプチドは、「クラスII」ドメインまたは同様の名
称のものとして本明細書でしばしば言及する。これらのドメインは一般に塩基性
残基、例えば、リジン(Lys)またはアルギニン(Arg)、好ましくはアル
ギニン(Arg)を必要とし、そしてさらに該ドメインに「屈曲」を導入するの
に十分な少なくとも1個のプロリン(Pro)残基を含む。 一態様において、クラスIIドメインは、下記一般式により示されるペプチド である: X−X−R−X−(P/X)−(B/X)−B−(P/X)−X−B−(B/X
) ただし、式中Xはαヘリックス促進残基、好ましくはアラニンである;P/Xは
プロリンまたは前記定義のXのいずれかである;Bは塩基性アミノ酸残基、例え
ば、アルギニン(Arg)またはリジン(Lys)、好ましくはアルギニン(A
rg)である;Rはアルギニン(Arg)であり、そしてB/XはBまたは前記
定義のXのいずれかである。
【0033】 本発明によるさらなる形質導入化配列は、TATの少なくとも49〜56アミ
ノ酸ないしTATの全長配列を含んでなるTATフラグメントを含む。好適なT
ATフラグメントはそのフラグメントのαらせん性を増大させるに十分な1個ま
たはそれ以上のアミノ酸の変化を含む。殆どの事例で、導入されるアミノ酸の変
化は、認知されたαヘリックス増強アミノ酸を加えることからなる。あるいは、
アミノ酸の変化はTATフラグメントからαヘリックスの形成または安定性を妨
害する1個以上のアミノ酸を取除くことである。さらに特定の態様において、T
ATフラグメントは、少なくとも1個のアミノ酸をαヘリックス増強アミノ酸と
置換したものを含む。好ましくは、TATフラグメントは標準的なペプチド合成
技法により調製し得るが、ある場合には組換えDNA法が好ましい。
【0034】 本発明のさらなる形質導入タンパク質はTATフラグメントを包含し、その場
合、TAT49〜56配列は、該配列の少なくとも2つの塩基性アミノ酸がTA
Tフラグメント、好ましくはTAT49〜56配列の少なくとも一面に沿って実
質的に配列されるように修飾してある。一態様において、この整列はTAT49
〜56配列に対して少なくとも1個の特定アミノ酸を付加するかまたは置換する
ことにより達成される。実例としてのTATフラグメントは少なくともTATの
アミノ酸49〜56に少なくとも1個の特定アミノ酸を置換することからなり、
その置換は該49〜56配列の塩基性アミノ酸残基を、該セグメント、好ましく
はTAT49〜56配列の少なくとも一面に沿って配列する。
【0035】 本発明によるさらなる形質導入タンパク質はTATフラグメントを含み、その
場合TAT49〜56配列はαヘリックス増強アミノ酸による少なくとも1つの
置換を含む。一態様において、該置換は、TATフラグメントの少なくとも2つ
の塩基性アミノ酸残基が該TATフラグメントの少なくとも一面に沿って実質的
に配列されるように選択する。より特定した態様において、該置換は、TAT4
9〜56配列の少なくとも2つの塩基性アミノ酸残基が該配列の少なくとも一面
に沿って実質的に配列されるように選定する。
【0036】 さらに提供されるのは、少なくとも2つの異なる形質導入化タンパク質の一部
を含むキメラ形質導入化タンパク質である。例えば、キメラ形質導入化タンパク
質は2つの異なるTATフラグメント、例えば、一方はHIV−1からのもの、
他方はHIV−2からのものを融合することにより形成させることができる。あ
るいは、他の形質導入化タンパク質は所望の形質導入化タンパク質を非相同アミ
ノ酸配列、例えば、6XHis(場合により「HIS」という)、EE、HAま
たはMycなどに融合することにより形成させることができる。
【0037】 上に言及したように、本発明の融合分子はまた、融合した細胞障害性ドメイン
を含む。一般に、該細胞障害性ドメインは潜在的に毒性の分子と1個以上の特定
プロテアーゼ開裂部位を含む。「潜在的に毒性の」という用語は、該分子が細胞
障害性ドメインの一部として存在する場合、感染または非感染細胞に対し有意に
細胞障害性ではない(標準的細胞生存度試験によりアッセイした場合に、細胞の
致死率が、好ましくは、約30%、20%、10%、5%、3%または2%以下
である。より好ましくは細胞の致死率が1%以下である)ということを意味する
。上に言及したように、該プロテアーゼ開裂部位は、病原体感染により誘導され
る1種またはそれ以上のプロテアーゼにより特異的に切断される得る。
【0038】 とりわけ、該プロテアーゼ切断部位は、非感染細胞では実質的に未切断のまま
となるように選択し、それによって細胞障害性ドメインを不活性状態に維持する
。これらのプロテアーゼ切断部位は、病原体が不活性な細胞でも実質的に未切断
のままとなるように選択するとよい。しかし、特異病原体誘導または宿主細胞誘
導プロテアーゼの存在下では、該プロテアーゼ切断部位が特異的に切断され、潜
在的に毒性の分子から細胞毒を生成する。すなわち、該プロテアーゼ部位の切断
は融合分子から細胞障害性ドメインを放出し、それによって活性な細胞毒を形成
する。1つまたはそれ以上のプロテアーゼ切断部位は一般に細胞障害性ドメイン
に位置しており、融合タンパク質からのドメインの全部または一部の放出を最適
化し、細胞毒の形成を増強する。
【0039】 より好適なプロテアーゼ切断部位は、非感染細胞と正常に会合したプロテアー
ゼにより切断されないように選択する。これらのプロテアーゼは一般に「ハウス
キーピング」プロテアーゼといわれており、よく知られている。 プロテアーゼ切断部位は、本明細書において場合により「病原特異」切断部位
ともいい、病原体感染により誘導される1種以上のプロテアーゼにより特異的に
切断される許容能力を意味する。該プロテアーゼ切断部位は、それら部位の切断
が融合分子から細胞障害性ドメインを放出する限り、病原体(または1種を超え
る病原体)に「応答」し、それによって細胞毒を活性化する。
【0040】 細胞障害性ドメインは、もしそれが考察したように融合分子から放出され得る
ならば、一種以上の多様な潜在的に毒性の分子を含む。融合分子に使用する細胞
障害性ドメインの一例は未成熟酵素である。これら未成熟酵素は場合によりチモ
ーゲン、プロ酵素、プレプロ酵素または単により成熟した酵素の「プレ−」「プ
レ−プロ」または「プロ−」型という。好適なチモーゲンは、該チモーゲン上で
1種以上の天然産プロテアーゼ切断部位において、部位特異的タンパク質分解に
より、細胞毒(すなわち、細胞障害性酵素)に特異的に活性化される。チモーゲ
ンは自己タンパク質分解により、ある例ではさらに加工処理され得る。
【0041】 特に、好適なチモーゲンを含む細胞障害性ドメインは1つ以上の特定のプロテ
アーゼ切断部位を含み、それがチモーゲン内および/またはその周辺に加わって
いる。該切断部位は任意に位置して、チモーゲンの放出と成熟した、またはより
成熟した細胞障害性酵素への処理加工を容易にしている。 とりわけ、チモーゲンにプロテアーゼ切断部位が加わることは、当のチモーゲ
ンにおいて天然産プロテアーゼ切断部位に関して補充的である。しかし、該切断
部位が1つ以上の天然産切断部位と置換わることは好ましいことである。この態
様において、チモーゲンの置換されたプロテアーゼ切断部位は1種以上の病原体
特異プロテアーゼにより特異的に切断され得る。チモーゲンの天然産プロテアー
ゼ切断部位を部分的にまたは完全に1つ以上の病原体応答切断部位と置換するこ
とにより、チモーゲンの細胞毒への成熟は病原体感染による実質的または完全な
制御下に置かれる。
【0042】 多様な特異チモーゲンは下記考察のように細胞障害性ドメインへの封入に適し
ている。これらチモーゲンの活性型は、一般に、細菌毒素、特に外毒素、植物毒
素、および無脊椎動物毒素、例えば、コノトキシン、蛇毒およびクモ毒を包含す
る。
【0043】 さらに考慮すべき細胞障害性ドメインは、遺伝的に優性の特性を及ぼす潜在能
力保有の既知タンパク質を包含する。すなわち、該タンパク質は融合タンパク質
から特異的に切断され、次いで、細胞複製などの1種以上の細胞機能を無効とす
る。この態様において、潜在的に優性のタンパク質は、当該タンパク質が融合タ
ンパク質から放出されるまで、優性な特性(場合により優性は表現型として知ら
れる)を表明しないにちがいない。本発明による潜在的に優性なタンパク質の例
は、網膜芽細胞腫タンパク質(Rb)、p16およびp53などの細胞複製を阻
害するタンパク質を包含する。
【0044】 さらに考慮すべき細胞障害性ドメインは、ある種のヌクレオシドまたはその類
似体を細胞毒に変換する許容能力を有する実質的に不活性な酵素を含む。この態
様において、細胞障害性ドメインは1つ以上の特定プロテアーゼ切断部位を含み
、それが好適に位置づけられていて、融合タンパク質から不活性酵素を放出する
。この放出に続いて、該酵素は該ヌクレオシドまたはその類似体を細胞毒に変換
する。かかる酵素の例は、ウイルスチミジンキナーゼおよびヌクレオシドデアミ
ナーゼ、例えば、シトシンデアミナーゼなどを含む。また考慮すべきは、酵素の
触媒活性フラグメント、例えば、当該分野で一般に知られた酵素のフラグメント
を含んでなる細胞障害性ドメインである。
【0045】 本抗病原体システムは多くのさらなる重要な利点を提供する。例えば、該抗病
原体システムは予期に反して誤って折りたたまれた融合タンパク質をも適応させ
る。以下の考察と実施例からさらに明確となるように、その特徴は細胞内部で融
合タンパク質のレベルを実質的に高めることで見出された。一般に、対応して投
与する融合タンパク質の量を増加する必要はない。理論に結びつける積もりはな
いが、誤って折りたたまれた融合分子の形質導入には、適度の数の分子が必要で
あり、有効な細胞障害性効果を表出するためには、その内のわずかな部分が再生
される必要がある。例えば、下記実施例5〜6に示したようなある種の好適な融
合タンパク質では、約10〜100個の正しく再生された融合タンパク質のみが
感染細胞を殺滅または損傷するために必要とされる。このように、本発明は、有
意な抗病原体活性を達成するために、細胞内部の大量の細胞障害性分子を濃縮さ
せる必要性を減じあるいは不要なものとさえすることができる。
【0046】 さらに、本抗病原体システムの活性は多くの事例で質量作用により増強される
ことが判明した。さらに詳しくは、細胞障害性ドメインの特異切断は追加の融合
分子を感染細胞内に引き入れることができることを見出した。この特徴は、最適
以下の用量で好適に投与される細胞障害性ドメインを含むこれらの融合タンパク
質にとって特に有利である。かかる事例において、融合タンパク質は特異的に感
染細胞内に濃縮され、それによって細胞毒のレベルを致死レベルまたは略致死レ
ベルにまで上昇させる。重要なのは、細胞毒が非感染細胞において最適以下のレ
ベルのままにあることである。
【0047】 本発明の特定の融合タンパク質に関して提供されるなおさらなる利点は、該タ
ンパク質が上記のTATフラグメントを含んでいることである。例えば、TAT
フラグメントに融合したタンパク質の細胞障害性ドメインは、細胞核またはRN
Aに向いている必要がない。さらに詳しくは、本融合分子は感染細胞内部のTA
Tフラグメントから細胞障害性ドメインを分離するように形状化されており、そ
れによって核内またはRNAでのタンパク質の不要な濃縮を避けている。非感染
細胞では、かかる融合タンパク質が核またはRNAに向けられている可能性があ
ると認識される。このように、感染細胞および非感染細胞における融合タンパク
質の差異のある局在化が、かかる細胞を互いに識別する手段、例えば、精査によ
る手段を提供する。
【0048】 本発明の抗病原体システムは、ある種薬物ベースの抗病原体療法にプラスの影
響をも与える。さらに詳しくは、レトロウイルス、特にHIVに感染した細胞は
長期間、時には数ヶ月ないし数年もの間、感染性粒子を留め置くことができる。
この期間、レトロウイルスは、時には1つまたはほんの僅かのゲノム配列を変化
させることによって、殆どの薬物に対し実質的な耐性を発達させることができる
。一旦、レトロウイルスが1つのクラスの薬物に対し耐性になると、かかるウイ
ルスはそのスペクトルの薬物にも耐性となる。このように、薬物ベースの方法を
使用する治療法は一般に柔軟性を欠き、耐性ウイルスの存在に対しては容易に適
合しない。関連した重要な問題が、ある種プラスモジウムなど、他の耐性病原株
の発達に関して起こっている。
【0049】 それに対し、本抗病原体システムは、薬物耐性を獲得する病原体の許容能力に
関係なく、病原体に感染した細胞を殺し、または損傷する。薬物耐性病原体、特
に薬物耐性HIV株の生育は、本抗病原体システムによると、このシステムが備
える多数のプロテアーゼ切断部位のために、殆ど不可能であると信じられる。例
示として、HIVウイルスは約8〜10個のかかる切断部位をもつと報告されて
いる。該抗病原体システムに対し実質的な耐性を発達させるためには、このシス
テムがこれら部位1つまたはそれ以上を含んでいるので、当該ウイルスはこれら
の切断部位ならびに対応するウイルスプロテアーゼを改変しなければならない。 したがって、本抗病原体システムを使用することによって、多くの病原性耐性
株、特にある種薬物耐性のHIV株の存在を有意に減少させる、あるいはさらに
除去することが期待される。
【0050】 さらに、本発明の抗病原体システムは様々な薬物ベースの治療と両立し得る。
このように、該抗病原体システムは単独の活性剤として使用し、あるいは1種以
上の治療薬と併用し、例えば、病原体、特に薬物耐性病原性株を最少化または除
去することができる。 さらに提供されるのは、実質的に純粋な本発明の融合分子である。
【0051】 本発明はまた、該融合タンパク質をエンコードする核酸、特に自己複製DNA
ベクターとして構成された染色体外DNA配列を提供する。 本発明はまた、哺乳動物、特にヒトなどの霊長類における1種またはそれ以上
の病原体による感染を抑制または除去する方法を提供する。より詳しくは、該方
法は治療有効量の本抗病原体システムを投与することからなる。さらに、該方法
は1種以上の病原体に罹患しているか、または罹患し易い哺乳動物の治療を含む
。 1種またはそれ以上の病原体による感染を抑制または除去するための本発明に
よる好適な方法は、該抗病原体システムをエアロゾルとして提供し、該システム
を、例えば、鼻腔または経口経路経由で投与することからなる。特に考慮すべき
ことは、該抗病原体システムを肺組織に投与し、肺上皮との接触を容易にし、か
つ血流への移行を高めるように特に設計した投与方式である。
【0052】 さらに提供されるのは、所定母集団の細胞にアポトーシスを誘導する方法であ
って、該方法は霊長類などの哺乳動物に、治療上十分量の抗病原体システムを1
種以上の病原体の存在下に投与することからなる。 1種以上の病原体に感染した細胞は、培養物中に維持された細胞、例えば、不
死化細胞系または細胞もしくは組織の一次培養物であってもよい;または該細胞
は生体内の組織または器官(例えば、肺)の一部であってもよい。このように、
本抗病原体システムは必要により生体外および生体内で使用することができる。
【0053】 本発明はまた、上記の形質導入ドメインおよび細胞障害性ドメインに加えて、
必要により他の成分をも含むことのできる実質的に純粋な融合分子、特に融合タ
ンパク質を提供する。これらの成分は共有結合によりまたは非共有結合によりそ
こに結合し、特に1個以上のポリペプチド配列を含む。付加したポリペプチド配
列は場合により本明細書においてはタンパク質の精製または同定「タグ」という
。かかるタグの例はEE、6Xhis、HAおよびMYCである。
【0054】 考察したように、本明細書に記載した融合タンパク質は誤って折りたたまれた
形状で提供されるのが好ましいが、ある事例では適切に折りたたまれた融合タン
パク質を使用するのが望ましい。誤って折りたたまれた融合タンパク質は一般に
クロマトグラフ法で精製されるが、要すれば、所望の融合分子を、本来それを含
む細胞成分から精製するように仕上げておくことができる。一般に、この方法は
適切な宿主細胞からの封入体の単離、誤って折りたたまれた融合タンパク質の変
性、および融合分子を精製する通常のクロマトグラフ法の使用からなる。封入体
において誤って折りたたまれた融合タンパク質を発現することは、誤って折りた
たまれた融合タンパク質を宿主細胞プロテアーゼによる分解から防御するなど、
いくつかの利点をもつ。さらに、融合タンパク質を誤って折りたたまれた形状で
提供することにより、時間が掛かり、コストのかさむタンパク質再生技法が回避
される。
【0055】 本発明によりさらに提供されるのは、実質量の該融合分子を調製する方法であ
る。一般的に、該方法は適切な宿主細胞で所望の融合分子を発現させること、該
細胞を培養すること、およびそこから融合分子を精製し、実質的に純粋な融合分
子を得ることからなる。該方法は所望の融合タンパク質を大規模に(すなわち、
少なくともミリグラム量)種々の実施形態、例えば、ローラーボトル、攪拌フラ
スコ、組織培養プレート、バイオリアクター、または醗酵槽から発現・精製する
のに使用することができる。
【0056】 本発明の融合タンパク質を単離・精製する本方法は非常に有用である。例えば
、所望の殺滅または損傷活性を示す融合タンパク質のために、融合タンパク質を
発現・精製する方法をもつことは、非常に有用である。該融合タンパク質を大量
に製造し得る方法を手にすることは特に有用であり、その結果、該融合タンパク
質は医学用、研究用、家庭用または商業用用途に適したキットの1成分として作
製することができる。さらに、構造分析を単純化すること、同様に所望によりさ
らなる精製および/または試験のために利用し得る融合タンパク質を大規模大量
に手にすることは有用である。
【0057】 本発明はまた、病原体感染により誘導されるタンパク質、特にプロテアーゼを
調節する、好ましくは阻害する治療上の許容能力を有する化合物を検出するため
の生体外および生体内スクリーニングを特徴とする。例えば、その一つの方法は
一般に、所望の細胞を病原体で感染させること、該細胞を本発明の融合タンパク
質と接触させること、該融合タンパク質を形質導入すること、該化合物を該細胞
に添加すること、および該融合タンパク質により殺滅または損傷した細胞を検出
することからなる。特定化合物の有効性は、細胞殺滅または損傷の程度を添加し
た化合物濃度の関数として定量することにより、容易に評価することができる。
【0058】 さらに提供されるのは、哺乳動物、とりわけヒトなどの霊長類の病原体感染抑
制方法であって、該抗病原体システムの治療有効量を該哺乳動物に投与すること
を特徴とする。一態様において、該融合タンパク質は共有結合により結合したタ
ンパク質形質導入ドメインおよび細胞障害性ドメインを含んでいる。該方法は、
融合タンパク質を哺乳動物の細胞に形質導入すること、該融合タンパク質を切断
して細胞障害性ドメインを融合タンパク質から十分に放出させること、細胞内の
細胞障害性ドメインを濃縮すること、そして細胞毒を産生させて哺乳動物の病原
体感染を十分に抑制することからなる。病原体の例としは、レトロウイルス、ヘ
ルペスウイルス、インフルエンザまたは肝炎の原因となり得るウイルス、および
マラリアの原因となり得るプラスモジウムなどであるが、これらに限定されるも
のではない。好適な細胞障害性ドメインおよび細胞毒については以下に詳細に説
明する。 哺乳動物において病原体感染を抑制する方法の他の態様においては、プロドラ
ッグが投与されるが(例えば、適切なヌクレオシドまたはその類似体)、該プロ
ドラッグが濃縮された細胞障害性ドメインと接触して細胞毒を産生する。
【0059】 本発明によりさらに提供されるのは、配列内に共有結合により結合した、1)
TATセグメント、特に、そのタンパク質形質導入フラグメント、および2)病
原体誘導または宿主細胞誘導プロテアーゼ、例えば、HIVプロテアーゼ、また
はその触媒活性フラグメントを含む融合タンパク質である。 本発明によりさらに提供されるのは、抗病原体システムであって、その融合タ
ンパク質が配列内に共有結合により結合した、1)形質導入ドメイン、2)第一
のチモーゲンサブユニット、3)プロテアーゼ切断部位、および4)第二のチモ
ーゲンサブユニットを含んでなる。また提供されるのは、該形質導入ドメインが
TATであり、該第一のチモーゲンサブユニットがp5ビッドであり、該プロテ
アーゼ切断部位がHIVプロテアーゼ切断部位であり、かつ、該第二のチモーゲ
ンサブユニットがp15ビッドである抗病原体システムである。
【0060】 本発明はまた、抗病原体システムであって、その融合タンパク質が配列内に共
有結合により結合した、1)形質導入ドメイン、2)第一のプロテアーゼ切断部
位、3)第一のチモーゲンサブユニット、4)第二のプロテアーゼ切断部位、お
よび5)第二のチモーゲンサブユニットを含んでなる抗病原体システムを提供す
る。また提供されるのは、該形質導入ドメインがTATであり、該第一のプロテ
アーゼ切断部位がHIV p7−p1プロテアーゼ切断部位であり、該第一のチ モーゲンサブユニットがp17カスパーゼ−3であり、該第二のプロテアーゼ切
断部位がHIV p17−p24プロテアーゼ切断部位であり、かつ、該第二の チモーゲンサブユニットがp12カスパーゼ−3である抗病原体システムである
【0061】 本発明はまた、HIV感染細胞を殺滅する方法をも提供する。一態様において
、該方法は該細胞を融合タンパク質の有効用量と接触させることからなり、その
際の融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、1)形質導入ドメイン
、2)第一のチモーゲンサブユニット、3)プロテアーゼ切断部位、および4)
第二のチモーゲンサブユニットを含んでなるか、または1)形質導入ドメイン、
2)第一のプロテアーゼ切断部位、3)第一のチモーゲンサブユニット、4)第
二のプロテアーゼ切断部位、および5)第二のチモーゲンサブユニットを含んで
なる。該融合タンパク質は必要なときに生体外または生体内に投与することがで
きる。例えば、該融合タンパク質はかかる治療を必要とする哺乳動物、例えば、
霊長類、特にHIVウイルスに感染しているヒト患者に生体内投与することがで
きる。 本発明の他の側面は後に説明する。
【0062】 [発明の詳細な説明] 上に言及したように、本発明は高い形質導入効率を示し、1種以上の病原体が
感染した細胞を特異的に殺滅または損傷する抗病原体システムを特徴とする。該
抗病原体システムは一般に遺伝子枠内融合タンパク質として細胞障害性ドメイン
に融合した形質導入ドメインを含む融合タンパク質を含む。好適な融合タンパク
質は、例えば、以下のようにアッセイして定量したときに、上昇した形質導入効
率を示す。該形質導入ドメインは融合タンパク質を細胞内に形質導入し、一旦、
細胞内にあると、細胞障害性ドメインが融合タンパク質から放出され、感染細胞
内に細胞毒を形成する。好適な態様において、該融合タンパク質の機能は、例え
ば、形質導入ドメイン構造を最適化することにより、また融合分子を誤って折り
たたむことにより、特異的に増強される。 好適な融合タンパク質は、下記に考察する標準の細胞生存度試験によりアッセ
イしたときに、病原体に感染した細胞の少なくとも約25%、40%、50%、
60%、または70%、好ましくは80%、90%、より好ましくは少なくとも
95%、また100%まで殺すことが可能である。 本発明による「抗病原体システム」は、本明細書記載の融合分子の1つまたは
それ以上、ならびにそれに添加し得る追加の成分、例えば、形質導入効率を含む
可溶化、安定化および/または活性化を容易にする成分を含む。例としては、血
清タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミン、バッファー、例えば、リン酸緩衝
化塩水、または医薬的に許容し得る媒体または安定剤などであるが、これらに限
定されるものではない。一般的には、医薬的に許容し得る媒体、安定剤などの考
察については「レミントンの製剤科学」(下記)を参照。好適な抗病原体システ
ムは、約1〜3種、好ましくは1種の融合タンパク質を医薬的に許容し得る担体
、例えば、水または緩衝化塩水に溶解して含む。好ましくは、該抗病原体システ
ムは無菌で提供される。
【0063】 下記により詳細に考察するように、該抗病原体システムは単独の活性剤として
、あるいは下記に特定して例示した1種以上の治療薬と併用し、投与することが
できる。 「融合分子」という用語を本明細書にて使用する場合、形質導入分子であって
、通常、組換え、化学的または他の適当な方法により細胞障害性ドメインに共有
結合により結合(すなわち、融合)させたタンパク質またはペプチド配列を意味
する。所望により、該融合分子はペプチドリンカー配列を介して1または数個の
部位に融合してもよい。当該ペプチド配列は病原体誘導または宿主細胞誘導プロ
テアーゼによる切断用の1ヶ所以上の部位を含んでもよい。あるいは、該ペプチ
ドリンカーは融合分子の構築を介助するように使用してもよい。該細胞障害性ド
メインは通常1個のチモーゲンなどの潜在的に毒性の分子を含むが、時にはかか
る分子は約2の間から約5〜10までである。特に好適な融合分子は融合タンパ
ク質である。
【0064】 すでに言及したように、本明細書に開示した融合タンパク質の成分、例えば、
形質導入化アミノ酸配列、細胞障害性ドメイン、プロテアーゼ切断部位(1ヶ所
または複数個所)およびペプチドリンカーは、もし該融合タンパク質が意図した
機能をもつならば、ほぼ如何なる様式で構成されてもよい。特に、融合タンパク
質の各成分は、要すれば、少なくとも1個の適切なペプチドリンカー配列により
、他の成分から隔てられていてもよい。さらに、融合タンパク質はタグを、例え
ば、融合タンパク質の同定および/または精製を容易にするために含んでもよい
。さらに特定の融合タンパク質を以下に記載する。
【0065】 好適なペプチドリンカー配列は、一般に、約20〜30個までのアミノ酸、よ
り好ましくは約10〜15個までのアミノ酸、そしてさらに好ましくは約1〜5
個のアミノ酸を含んでなる。該リンカー配列は一般に柔軟性であり、その結果、
該融合分子を単一の固まったコンホメーションに維持することはない。該リンカ
ー配列は、例えば、DNA結合タンパク質を融合分子から隔てておくために使用
することができる。とりわけ、該リンカー配列は、タンパク質形質導入ドメイン
と細胞障害性ドメインとの間に位置させ、例えば、それを化学的に交差結合させ
、分子に柔軟性を与えることができる。
【0066】 「誤って折りたたまれた」という用語が融合タンパク質に関係している場合、
部分的にまたは完全にほどけている(すなわち、変性している)ことを意味する
。融合タンパク質は下に考察するように1種以上のカオトロピック試薬との接触
により部分的にまたは完全に誤って折りたたまれることもある。より一般的には
、本明細書に開示された誤って折りたたまれた融合タンパク質は、対応する未変
性タンパク質の高ギッブス(Gibbs)自由エネルギー(ΔG)形状の代表である 。好適なのは、水溶液に十分に溶解する誤って折りたたまれた融合タンパク質で
ある。それに対し、未変性の融合タンパク質は通常正しく折りたたまれており、
水溶液に十分に溶解し、かつ比較的低いΔGをもつ。したがって、当該未変性融
合タンパク質は殆どの場合に安定である。
【0067】 融合タンパク質が誤って折りたたまれている(ミスフォールディング)のは、
通常の方法の一つまたは組合わせによって検出することが可能である。例えば、
ミスフォールディングは、様々な常套的生物物理学的技法、例えば、未変性分子
(対照)と誤って折りたたまれている分子をもちい、旋光度を測定することによ
り検出し得る。すでに言及したように、該抗病原体システムの好適な投与法は、
生体外および生体内で誤って折りたたまれている融合タンパク質の形質導入であ
る。理論に結びつける積もりはないが、融合タンパク質を細胞内に形質導入した
後、誤って折りたたまれている融合タンパク質は、例えば、シャペロネンにより
有意に再生されて、病原体感染に応答して活性化されるよりも十分に融合タンパ
ク質を産生する。
【0068】 「完全に溶解」という用語または同様の用語は、融合分子、特に融合タンパク
質が低G−力遠心分離(例えば、標準的遠心分離機において毎分約30,000
回転以下)では、バッファー水溶液、例えば、細胞培地から容易に沈降しないこ
とを意味する。さらに、融合分子は、それが5〜37℃を超える温度で、中性の
pHもしくはその近辺において、アニオン性または非イオン性洗剤の低濃度存在
下または不存在下に水溶液のままであるならば、可溶性である。これらの条件下
、可溶性のタンパク質は多くの場合、低沈降値、例えば、約10〜50スヴェー
ドベリー単位以下の値をもつ。
【0069】 ここに言及した水溶液は、一般的に、pHを一般的には約5〜9の範囲に、ま
た、イオン強度を約2mMと500mMの範囲に設定するための緩衝化化合物を
含んでいる。ある場合には、プロテアーゼ阻害剤または緩和な非イオン性洗剤が
添加される。さらに、所望により、担体タンパク質、例えば、ウシ血清アルブミ
ン(BSA)を数mg/mlまで添加してもよい。代表的な水性バッファーは、
標準的リン酸緩衝化塩水、トリス緩衝化塩水、または他の周知のバッファーおよ
び細胞培地製剤である。
【0070】 「ペプチド」とは、好ましくは本質的にそのサイズに関係なく20種の天然ア
ミノ酸からなるポリマーをいう。「タンパク質」という用語は比較的大きなタン
パク質に関して多く用い、「ペプチド」は小さいポリペプチドに関して多く用い
るが、当該分野でのこれら用語の使用は多くの場合互いに重なり合う。「ポリペ
プチド」という用語は、一般に、特にことわらない限り、タンパク質、ポリペプ
チド、およびペプチドについていう。
【0071】 「潜在的に毒性の分子」という用語は、タンパク質、ポリペプチド、またはペ
プチド、糖または多糖類、脂質または糖脂質、糖タンパク質、またはリポタンパ
ク質などであって、本明細書にて考察した所望の毒性効果を生じ得るものを意味
する。また考慮すべきことは、毒性のまたは潜在的に毒性のタンパク質、ポリペ
プチド、またはペプチドをエンコードする潜在的に毒性の核酸である。このよう
に、適切な分子は、調節因子、酵素、抗生物質、または薬物、ならびにDNA、
RNA、およびオリゴヌクレオチドを包含する。潜在的に毒性の分子は天然産で
あってもよく、あるいは既知化合物から、例えば、組換えまたは化学合成によて
合成してもよく、さらに非相同成分を含んでもよい。潜在的に毒性の分子は、標
準的な分子サイズ測定技法、例えば、遠心分離またはSDS−ポリアクリルアミ
ドゲル電気泳動法により判定した場合、一般に、約0.1〜100KDの間また
はそれ以上、約1000KDまでであって、好ましくは約0.1、0.2、0.
5、1、2、5、10、20、30および50KDの間である。
【0072】 本明細書にて用いる場合、「細胞」という用語は、すべての初代細胞または不
死化細胞系、組織または器官に存在するような細胞の群を含むものとする。好ま
しくは、該細胞は哺乳動物、特にヒト起源のものであり、1種またはそれ以上の
病原体に感染し得るものである。本発明による「宿主細胞」とは、感染した細胞
、あるいは大腸菌など、本明細書に記載の核酸を増幅させるのに使用し得る細胞
である。
【0073】 本抗病原体システムは、1種またはそれ以上の病原体に感染する、または感染
する可能性のある多様な細胞での生体外または生体内使用に適している。 本抗病原体システム使用の一例として、培養した細胞を単一血清型の病原体に
感染させる。感染した細胞は、次いで、特定の融合タンパク質と生体外で接触さ
せる。すでに考察したように、この融合タンパク質は、その細胞障害性ドメイン
が病原体感染により誘導される1種以上のプロテアーゼの存在下、活性化される
ように形成する。細胞中への形質導入を実施した後(一般に約30分未満)、細
胞を約2〜24時間、一般には約18時間放置して融合タンパク質を切断させる
。その後、細胞を適当なバッファーまたは細胞培地で洗浄し、次いでその生存度
を評価する。融合タンパク質が細胞を殺すまたは損傷するために振り当てられる
時間は、選択した特定の細胞障害性ドメインにより多様である。しかし、生存度
は約2〜6時間後、約24時間までには多くの場合評価し得る。下記により詳細
に説明するように、細胞の生存度はある種周知の色素(例えば、トリパンブルー
)または蛍光体の取込みをモニターすることにより容易に測定または定量するこ
とができる。
【0074】 上に言及したように、該抗病原体システムは柔軟性に富み、特定の用途に合わ
せて作製した形態で提供することができる。例えば、該システムは、2種の融合
タンパク質を備えるようにして、その第一の融合タンパク質は形質導入ドメイン
と細胞障害性ドメインを含み、そして第二の融合タンパク質は形質導入化ドメイ
ンと病原体誘導または宿主細胞誘導のプロテアーゼを含むようにすることができ
る。
【0075】 本発明の融合分子により形質導入された細胞は、標準方法によりその生存度を
アッセイすることができる。その一つの方法では、細胞生存度が形質導入後また
はその間のDNA複製を測定することにより容易にアッセイすることができる。
例えば、好適なアッセイ法は、1種以上の検出可能な標識ヌクレオシド、例えば
、放射標識チミジンなどの細胞取込みからなる。この取込みはいくつかの常套法
、例えば、トリクロロ酢酸(TAC)沈殿に続くシンチレーション計測により簡
便に測定することができる。他の細胞生存度測定法は周知のトリパンブルー排除
技法である。
【0076】 すでに言及したように、本発明の融合分子は効率的に標的細胞またはかかる細
胞の群に形質導入される。形質導入効率は、要すれば、異なる方法の1つまたは
その組合わせによってモニターし、定量することができる。 例えば、その一つの方法は細胞による融合タンパク質の取込みを測定する生体
外アッセイ法である。該アッセイ法は、融合タンパク質を、例えば、放射活性原
子、蛍光物質、燐光物質、または発光物質タグ(例えば、フルオレセイン、ロー
ダミンまたはFITC)などで検出可能に標識し、次いで標識した融合タンパク
質の取込みを測定することからなる。あるいは、該融合タンパク質は、検出可能
な標識を形成し得る酵素、例えば、西洋わさびペルオキシダーゼ、β−ガラクト
シダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼまたはルシフェラ
ーゼなどで標識してもよい。好適な方法においては、所望の融合タンパク質を周
知の緑色蛍光タンパク質(GFP)に遺伝子的に融合させ、次いでその融合タン
パク質をアッセイすることも可能である。取込みはいくつかの常套法により、例
えば、標準細胞ソーター(例えば、FACS)で標識した細胞を定量することに
より、蛍光顕微鏡によいり、またはオートラジオグラフィーにより測定すること
ができる。アッセイ法に関する開示については、一般的にはサムブルーク(Samb
rook)らおよびオウスベル(Ausubel)ら(下記)を参照。
【0077】 本発明の好適な融合タンパク質は、細胞によるタンパク質取込みをモニターす
る常套法、特にFACSまたは関連する顕微鏡技法により定量した場合、標的細
胞総数の少なくとも約20%〜80%、より好ましくは約90%、95%、99
%ないし100%まで形質導入することができる。標的細胞の総数は標準技法に
より推定することができる。
【0078】 すでに言及したように、本発明は融合タンパク質と該融合タンパク質をエンコ
ードする核酸(例えば、DNA)に関する。細胞障害性ドメインがポリペプチド
配列である場合、融合タンパク質という用語は、一般的には異なる起源からの少
なくとも2種のポリペプチドが操作可能に結合しているものを企図するものであ
る。ポリペプチドに関して、「操作可能に結合している」という用語は、2種の
ポリペプチドが、それぞれのポリペプチドがその意図した機能を発揮し得るよう
な方式で、結合していることを意味しようとするものである。一般に、2つのポ
リペプチドはペプチド結合を介して共有結合により結合している。すでに考察し
たように、要すれば、2つのポリペプチドはペプチドリンカーにより隔てられて
いてもよい。
【0079】 ここで記載する融合タンパクは、好ましくは標準組換えDNA技術によって作
成する。たとえば、第1のポリペプチドをコードするDNA分子は、第2のポリ
ペプチドをコードするDNA分子を連結することができる。この例では、好適な
宿主細胞において出来あがったハイブリッドDNA分子を発現させ、融合タンパ
クを作成することができる。DNA分子は互いに5’から3’方向に連結し、ポ
リペプチドをコードした翻訳フレームが連結後変化しないようにする(すなわち
、DNA分子を互いにインフレームで連結する)。出来あがったDNA分子はイ
ンフレームの融合タンパクをコードする。
【0080】 それぞれが意図する機能を遂行するという条件で、融合タンパクの成分はほと
んどいかなる順序で組織されてもよい。たとえば、1つの実施態様では、タンパ
ク形質導入ドメインは、細胞傷害性ドメインの中に包含される病原体特異的プロ
テアーゼの開裂部位に近接する。さらに、細胞傷害性ドメインは、その片方また
は両方がタンパク形質導入ドメインに近接してもよい病原体特異的プロテアーゼ
の開裂部位に隣接することができる。本発明は環状融合タンパクについても考慮
する。
【0081】 病原体特異的開裂部位を包含する好ましい細胞傷害性ドメインは、そのような
ドメインが意図する機能につながるようなサイズを有するであろう。特に、好ま
しい細胞傷害性ドメインは、少なくとも約0.1、0.2、0.5、0.75、
1、5、10、25、30、50、100、200、500kDから約1000
kD以上まででありうる。通常細胞傷害性ドメインのサイズが融合タンパクのサ
イズを支配することは明らかなはずである。好ましい病原体特異的開裂部位は、
約4〜約30個または40個、好ましくは約8〜約20個、より好ましくは約1
4個のアミノ酸長である。以下の表1を参照されたい。病原体特異的プロテアー
ゼ開裂部位は、既知の化学架橋法を含む種々の方法によって作成し、融合するこ
とができる。たとえば、Means, G. E. (1974) タンパクの化学修飾、Holden~Day
を参照されたい。また、S. S. Wong (1991) タンパクの抱合と架橋、CRC Press も参照されたい。しかしながら、組換え操作を用い、インフレームでの融合タン
パクを作成することが一般的に好まれる。
【0082】 述べたように、発明に合致した融合分子は数種の方法によって組織することが
できる。見本となる構成では、形質導入ドメインのC末端を操作できるように細
胞傷害性ドメインのN末端に連結する。所望ならば、その連結は組換え法により
達成することができる。しかしながら、別の構成では、形質導入ドメインのN末
端が細胞傷害性ドメインのC末端に連結する。細胞傷害性ドメインの中で、第1
の病原体特異的プロテアーゼの開裂部位は形質導入ドメインのC末端に操作でき
るように連結することができ、プロテアーゼ開裂部位のC末端は傷害性を持つ分
子のN末端に操作できるように連結することができる。さらに別の構成では、細
胞傷害性ドメインのC末端は第1の病原体特異的部位と同様の、または異なった
第2の病原体特異的プロテアーゼの開裂部位のN末端に連結することができる。
好ましくは、第1および第2の病原体開裂部位は具体的には、病原体の感染によ
り誘導される同一のプロテアーゼによって切断される。
【0083】 別の方法として、または追加として、必要によって1つか複数の別のプロテア
ーゼ開裂部位を傷害性のある分子に挿入することができる。 本発明に合致する好ましい融合タンパクは、配列(N末端からC末端へ)にお
いて操作できるように連結した:1)形質導入ドメイン/1つか複数の病原体特
異的プロテアーゼ開裂部位/および傷害性を持つ分子;2)形質導入ドメイン/
病原体特異的プロテアーゼ開裂部位/およびチモーゲン;および3)形質導入ド
メイン/第1の病原体特異的プロテアーゼ開裂部位/第1のチモーゲンサブユニ
ット/第2の病原体特異的プロテアーゼ開裂部位/第2のチモーゲンサブユニッ
トを典型的に包含する。さらに所望のように、EE、HA、Mycおよびポリヒ
スチジン特に6Xhisのようなタンパクタグを1つか複数、形質導入ドメイン
のN末端に融合することができ、たとえば、溶解性または円滑な単離および融合
タンパクの同定を改良する。以下の実施例を参照されたい。
【0084】 一般的には好まれないが、融合タンパクにポリペプチド配列を操作できるよう
に連結し、細胞核への輸送を促進することも可能である。タンパクに包含された
場合、核へのタンパク輸送を促進するように作用するアミノ酸配列は既知であり
、核局在シグナル(NLS)と呼ばれている。核局在シグナルは典型的には塩基
性アミノ酸の伸展で構成されている。非相同性タンパク(たとえば発明の融合タ
ンパク)に取り付けた場合、核局在シグナルは細胞核へのタンパクの輸送を促進
する。核局在シグナルは、タンパク表面に曝し、タンパクの機能を妨害しないよ
うに非相同性タンパクに取り付ける。好ましくは、タンパクの一方の末端、たと
えばN末端にNLSを取り付ける。SV40核局在シグナルは、発明の融合タン
パクに包含することができる非限定的な例である。SV40核局在シグナルは以
下のアミノ酸配列:Thr−Pro−Lys−Lys−Lys−Arg−Lys
−Val(配列番号3)を有する。好ましくは、核局在シグナルをコードする核
酸は、標準組換えDNA法によって融合タンパクをコードする核酸に(たとえば
5’末端)インフレームでスプライスする。
【0085】 上述したように、発明の融合タンパクは一部分、第1のポリペプチドで構成さ
れ、ここではタンパク形質導入ドメイン、形質導入ドメイン、形質導入タンパク
または「PTD」と呼ばれることがあり、融合タンパクの細胞へのエントリーに
備えている。共役したタンパクを細胞にエントリーさせる能力を有するペプチド
は既知であり、TAT、アンテナペディア・ホメオドメイン、「ペネトラチン」
と呼ばれる、 Ala−Lys−Ile−Trp−Phe−Gln−Asn−Arg−Arg−
Met−Lys−Trp−Lys−Lys−Glu−Asn(配列番号1)(Der
ossi et al., J. Bio. Chem., 269:10444(1994))およびHSV VP22(Ellio
t and O'Hare, Cell, 88:223(1997))のような前述したものが挙げられる。
【0086】 形質導入タンパクの実例となるものは、少なくともTAT塩基性領域(天然T
ATタンパクにおける49〜57番目のアミノ酸)を包含するTAT断片である
。TAT断片はアミノ酸の長さで約9、10、12、15、20、25、30、
または50個から約86個までの長さであってもよい。TAT断片は、好ましく
は、TATシステイン−リッチ領域(天然TATタンパクの22〜36番目のア
ミノ酸)およびカルボキシ末端ドメインによりコード化されているTATエクソ
ン2(天然TATの73〜86番目のアミノ酸)を欠いている。TAT形質導入
ドメインは、以下のアミノ酸配列: YGRKKRRQRRR(配列番号2) を有する。そのアミノ酸配列はここでは「最小TAT配列」と呼ばれることもあ
る。米国特許第5,674,980号およびTAT構造に関連した開示のために
その明細書で引用した参考文献を参照されたい。また、TAT配列については、
Green, M. and Lowenstein, P. M. (1988)も参照されたい。
【0087】 上で議論したように、および以下の実施例の中で、TAT断片について形質導
入を向上させるような種々の修飾が熟慮されている。たとえば、断片のタンパク
形質導入ドメインは自由回転できるようにグリシン残基に隣接することができる
。図2の図面を参照されたい。別の方法としては、ほかのアミノ酸配列および特
に中性および/または親水性残基を所望のようにTAT断片に付加してもよい。
当該分野で既知のようなTAT断片にタンパクタグを付加してもよい。そのよう
なタンパクタグの例には、6XHis、HA、EEおよびMycが挙げられる。
一般に、修飾されたTAT断片は、アミノ酸の長さで少なくとも10、12、1
5、20、25、30、50、100、200個から約500個までである。
【0088】 融合タンパクの形質導入ドメインは、細胞への融合タンパクのエントリーを補
佐することができるようないかなるタンパクまたはその一部から得ることができ
る。述べたように、好ましいタンパクにはたとえば、非天然に生じる配列同様に
、TAT、アンテナペディア・ホメオドメインおよびHSV VP22が挙げら
れる。合成タンパク形質導入ドメインの好適性は、たとえば、単純に融合タンパ
クを調べ、合成タンパク形質導入ドメインが融合タンパクを所望のように細胞に
エントリーできるかどうかを定めることによって、容易に評価することができる
【0089】 「合成タンパク」などの用語によって、組換え法または化学的ペプチド合成に
よって作成された非天然に生じたアミノ酸配列を称する。 当該分野では形質導入するTATタンパクについて多数の変異体が記載されて
きた。本発明に合わせてこのような変異体を用いることができる。形質導入する
TATの作成法および使用法を報告している、参考として組み入れられている開
示である、米国特許第5,652,122号を参照されたい。
【0090】 別の形質導入ドメインおよび特に形質導入タンパクは従来の技術によって容易
に同定することができる。たとえば、1つのアプローチでは、所望のTAT断片
のような形質導入ドメイン候補を、標準組換え操作を用いて所望の細胞傷害性ド
メインに融合してインフレームで融合タンパクを形成する。続いて、たとえば放
射性原子またはFITCのような蛍光標識によって、融合タンパクを検出できる
ように標識する。次いで検出できるように標識された融合タンパクを上述したよ
うに細胞に加え、融合タンパクのレベルを測定する。好ましい形質導入ドメイン
は約1ピコモル〜約100マイクロモル、好ましくは約50ピコモル〜約75マ
イクロモル、より好ましくは約1〜約100ナノモルの融合タンパク細胞内濃度
を達成することができる。
【0091】 特に熟慮された形質導入タンパクは、たとえば上述したTAT、VP22、ま
たはアンテナペディア・ホメオドメイン配列のような既知の形質導入タンパクま
たは断片の標的突然変異誘発によって得られたものである。典型的には、突然変
異誘発された形質導入タンパクは、対応する完全長の形質導入タンパク配列を含
む同一の融合タンパクに比べた場合、所望の融合タンパクの形質導入が少なくと
も2、3、4、5、10、20、30、40または50倍優れている。
【0092】 本発明に合致した好ましい形質導入タンパクはクラスIアミノ酸配列であり、
好ましくは少なくとも以下の一般式:B1−X1−X2−X3−B2−X4−X
5−B3で表されるペプチドを包含するペプチド配列であり;式中B1、B2お
よびB3はそれぞれ独立に同一または異なった塩基性アミノ酸であり;およびX
1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立にアルファ−へリックス増強ア
ミノ酸であり、同一または異なっている。典型的にはこのような配列は合成した
ものである。
【0093】 「塩基性アミノ酸」などの用語は、ここで用いられるように第一級、第二級、
または第三級アミンのような塩基性残基、または窒素環メンバーを含有する環状
基を有するアミノ酸のことをいう。好ましい塩基性アミノ酸はリジン(Lys)
およびアルギニン(Arg)であり、アルギニンが特に好ましい。ヒスチジンも
好適な塩基性アミノ酸でありうる。
【0094】 「アルファ−へリックス増強」アミノ酸などの用語は、当業界で周知のアッセ
イによって測定されるようなアルファ−へリックスを形成するまたは安定化する
ような認知された傾向を有するアミノ酸を意味する。一般にO'Neil, K. T. and
DeGrado, W. F. (1990) Science 250:646およびそのようなアッセイに関してそ こで引用された参考文献を参照されたい。好ましいアルファ−ヘリックス増強ア
ミノ酸には、アラニン(Ala)、アルギニン(Arg)、リジン(Lys)、
ロイシン(Leu)、およびメチオニン(Met)が挙げられる。特に好ましい
アルファ−ヘリックス増強アミノ酸はアラニンである。「実質的なアルファ螺旋
性」という用語によって、たとえばヘリカルホイールダイヤグラムまたはそのほ
かの従来の方法によって測定されるような、認識できるアルファ−へリックス構
造を特定のペプチドが有することを意味する。
【0095】 1つの実施態様では、ペプチドは式 B1−X1−X2−X3−B2−X4−
X5−B3で表され、式中、B1、B2またはB3はのうち少なくとも1つはア
ルギニンであり、好ましくはB1、B2およびB3の全てがアルギニンである;
およびX1、X2、X3、X4およびX5はそれぞれ独立にアルファ−へリック
ス増強アミノ酸であり、同一または異なっている。好ましくは、X1、X2、X
3、X4またはX5のうち少なくとも1つはアラニンであり、より好ましくは、
X1、X2、X3、X4およびX5の全てがアラニンである。もう1つの実施態
様では、ペプチドは式 B1−X1−X2−X3−B2−X4−X5−B3で表
され、式中、B1、B2およびB3はそれぞれ独立に同一または異なった塩基性
アミノ酸であり;およびX1、X2、X3、X4またはX5のうち少なくとも1
つはアラニンであり、好ましくは、X1、X2、X3、X4およびX5の全てが
それぞれアラニンである。このような実施態様では、アルギニンのような塩基性
アミノ酸残基は実質的にペプチドの少なくとも1つの面に沿って、典型的には1
つの面に沿って配置する。
【0096】 さらに、本発明に合致した好ましい形質導入タンパクは、合成アミノ酸配列で
あり、好ましくは少なくとも以下の一般式:B1−X1−X2−B2−B3−X
3−X4−B4で表されたペプチドを包含するペプチド配列である;式中、B1
、B2、B3およびB4はそれぞれ独立に、同一または異なった塩基性アミノ酸
であり;およびX1、X2、X3、およびX4はそれぞれ独立にアルファ−へリ
ックス増強アミノ酸であり、同一または異なっている。1つの実施態様では、B
1、B2、B3またはB4はのうち少なくとも1つはアルギニンであり、好まし
くはB1、B2、B3およびB4の全てがアルギニンである;およびX1、X2
、X3、およびX4はそれぞれ独立にアルファ−へリックス増強アミノ酸であり
、同一または異なっている。もう1つの実施態様では、B1、B2、B3および
B4はそれぞれ独立に、同一または異なった塩基性アミノ酸であり;およびX1
、X2、X3、またはX4のうち少なくとも1つはアラニンであり、好ましくは
、X1、X2、X3、およびX4の全てがアラニン残基である。このような実施
態様では、アルギニンのような塩基性アミノ酸残基は実質的にペプチドの少なく
とも1つの面に沿って、典型的には1つの面に沿って配置する。
【0097】 塩基性アミノ酸残基の「実質的な配置」などの用語によって、約3〜約4オン
グストローム、好ましくは約3.6オングストロームの概念的に説明されたアル
ファ−へリックス上で各残基がほかとの間隔を空けることができるように、塩基
性アミノ酸が少なくとも他の1つの塩基性アミノ酸に関して位置付けされること
を意味する。以下の図7に示すような標準ヘリカルホイールダイヤグラムの検査
を含む通常のいくつかの方法によって配置を達成することができる。好ましい形
質導入ドメインは約2、3、4、5、6、または約7個から約10個までの実質
的に配置した塩基性アミノ酸残基を示す。
【0098】 本発明のより好ましい形質導入タンパクは、以下の具体的なペプチド配列:Y
ARKARRQARR(配列番号3)、YARAAARQARA(配列番号4)
、YARAARRAARR(配列番号5)、YARAARRAARA(配列番号
6)、YARRRRRRRRR(配列番号7)、およびYAAARRRRRRR
(配列番号8)によって表される少なくとも1つのペプチドを包含する。特に好
ましいのは、以下のペプチド配列:YARKARRQARR(配列番号3)、Y
ARAAARQARA(配列番号4)、YARAARRAARR(配列番号5)
、YARAARRAARA(配列番号6)、YARRRRRRRRR(配列番号
7)、およびYAAARRRRRRR(配列番号8)から成る形質導入ペプチド
配列である。
【0099】 本発明における別の形質導入タンパクは、アミノ酸配列、好ましくは、TAT
の少なくとも49〜56番目のアミノ酸にて少なくとも1つのアミノ酸修飾を包
含する合成配列である。たとえば、1つの実施態様では、合成ペプチド配列は、
好適なTAT対照配列に比してそのTAT配列のアルファ螺旋性を高めるように
TAT配列を修飾したTATの47〜56、48〜56、47〜57、48〜5
7または49〜57番目のアミノ酸を少なくとも包含する。好ましくは、TAT
配列はアラニンのようなアルファ−へリックス増強アミノ酸による少なくとも1
つのアミノ酸置換を包含する。
【0100】 別の形質導入タンパクはアミノ酸配列であり、好ましくは2つ以上のアルギニ
ンのような塩基性アミノ酸が、そのTAT配列の少なくとも1つの面に沿って実
質的に配置するようにTAT配列を修飾したTATの47〜56、48〜56、
47〜57、48〜57または49〜57番目のアミノ酸を少なくとも包含する
合成ペプチド配列である。ヘリカルホイール上のアルファ−へリックスのように
TAT配列を可視化することを含めた多様なアプローチによって配置を円滑にす
ることができる。以下の図7を参照されたい。
【0101】 本発明のさらなる形質導入タンパクは、少なくともTATの49〜56番目の
アミノ酸、好ましくはTATの47〜56、48〜56、49〜56、47〜5
7、48〜57または49〜57番目のアミノ酸を包含し、そこではTAT配列
がアルファ−へリックス増強アミノ酸による少なくとも1つのアミノ酸置換を含
むようなペプチド配列である。この実施態様では、そのTAT配列の少なくとも
1つの面に沿って、好ましくはTAT配列の1面だけに沿って、2個以上のアル
ギニン残基を実質的に配置するようにアミノ酸置換を選択する。1つの実施態様
では、好ましくは、約2、3、4または5個のアルギニンをヘリックスの少なく
とも1面に沿って、より具体的にはへリックスの1面に沿って実質的に配置する
。たとえば、TAT配列の約1、2、3、4、または5個のアミノ酸残基から約
6個のまでのアミノ酸残基をアラニン残基で置換し、アルファ螺旋性を高め、へ
リックスの少なくとも1面でアルギニンを配置することができる。
【0102】 本発明に合致する別の形質導入タンパクは、少なくともAntp配列(配列番
号10;以下の表2を参照されたい)の形質導入部分、好ましくは特定のTAT
配列について上述した線に沿って修飾されたAntp配列を含むアミノ酸配列を
包含する。特に、修飾には、形質導入タンパクのアルファ螺旋性を高め、または
Antp配列の少なくとも1面に沿って塩基性アミノ酸残基(たとえばアルギニ
ン)を配置する、またはその両方のために選択された、少なくとも1個のアミノ
酸の置換、欠失または付加が含まれる。実例としては、たとえばAntp配列(
配列番号10)のような好適な対照ペプチドに比べて、2、5または10から1
00倍以上までの間でタンパクの形質導入効率を充分に高めるような少なくとも
1個のアミノ酸修飾を含むようにAntp配列を修飾したAntp配列を含む形
質導入タンパクである。
【0103】 さらに好ましいのは上述したようなクラスII形質導入アミノ酸配列である。
1つの実施態様では、クラスII配列は以下の式:X1−X2−RX3−(P/
X4)−(B/X5)−B−(P/X6)−X4−B−(B/X7)で表される
ペプチドであり、式中、X1、X2、X3、X4、X5、X6、X7はそれぞれ
、同一または異なった、アルファ螺旋性を促進する残基であり;(P/X4)お
よび(P/X6)はそれぞれ独立にプロリンまたはアルファ螺旋性を促進する残
基であり;Bは塩基性アミノ酸残基であり;(B/X5)(B/X7)はそれぞ
れ独立にBまたはアルファ螺旋性を促進する残基であり;およびRはアルギニン
(Arg)である。 好ましいアルファ螺旋性を促進する残基はアラニン(Al
a)である。好ましい塩基性アミノ酸は、アルギニン(Arg)、リジン(Ly
s)であり、特にArgである。特に好ましいクラスII形質導入アミノ酸配列
は少なくとも1個の、通常は約1個から約3個の間でプロリン残基を包含する。 より具体的に好ましいクラスIIペプチド配列は以下の実施例13(配列番号
36−41)に提供されている。
【0104】 ここで記載する形質導入ドメインの分子量は、意図する用途および所望の形質
導入効率のようなパラメータによって変化する。一般に形質導入ドメインは、S
DS−PAGEゲル電気泳動法またはそのほかの好適なアッセイによって約1、
2、3、5、10、20から約50kDaの間の分子量を示す。具体的に好まし
い形質導入ドメインは以下にさらに詳しく、以下の実施例の中に記載されている
【0105】 述べたように、本発明に合致する形質導入ドメインは増強された形質導入効率
を示す。その増強は、以下に具体的に記載するような1つまたは種々の常法によ
って評価することができる。ここでは形質導入効率アッセイまたは類似の用語で
呼ばれることもある1つの一般的なアプローチでは、所望の形質導入タンパクと
並行して1つか複数の好適な対照分子を細胞に形質導入するような、対照アッセ
イを参照することによって形質導入効率を測定する。好ましくは特定の形質導入
ドメインの形質導入率および細胞内の量を測定し、対照分子と比較する。好適な
実例としての対照分子にはTAT(配列番号1)の47〜57番目のアミノ酸、
TATの49〜57番目のアミノ酸およびAntp配列(配列番号10)が挙げ
られる。 本発明の2個以上のタンパク形質導入ドメイン、たとえば、約2、3、4、5
、6個から10個以上までのタンパク形質導入ドメインは、形質導入されるべき
所望の分子に共有結合することができる。この実施態様では、タンパク形質導入
ドメインを直列に結合することができ、また、所望のような好適なペプチドリン
カー少なくとも1つによって分離することができる。
【0106】 本発明の好ましい形質導入タンパクは、好適な対照配列、たとえば最小TAT
配列またはそのほかの好適な対照分子と比較した場合、約5〜10から100倍
以上形質導入効率が高まっていることを示す。好ましい形質導入アッセイの例を
以下の実施例7にて記載する。 本発明の形質導入タンパクは、種々の常法によって作成することができる。た
とえば、天然資源からDNAを単離することにより、また既知の合成法、たとえ
ばリン酸三エステル法によって、所望の形質導入タンパクをコードするDNAを
得ることができる。たとえば、オリゴヌクレオチド合成、IRL出版(M. Gait e
d., 1984)を参照されたい。市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて合 成オリゴヌクレオチドを調製してもよい。形質導入タンパクをコードした合成オ
リゴヌクレオチドを種々の好適なベクター(たとえば、pTATベクター)に挿
入し、適当な宿主細胞で発現させてもよい。一般にAusubel et al. およびSambr
ook et al.下記を参照されたい。
【0107】 議論したように、いくつかの方法で融合タンパクの成分を連結することができ
る。1つの実施態様では、形質導入ドメインは操作できるように細胞傷害性ドメ
イン(ここでは「CD」と呼ぶこともある)に連結する。また議論したように、
この例における細胞傷害性ドメインの融合は、特定の条件下で感染した細胞を殺
傷することができる細胞毒素を生じるためである。細胞傷害性ドメインは融合分
子の一部として細胞に形質導入され、病原体感染によって誘導される1つか複数
の特定のプロテアーゼの存在下で融合タンパクから放出されるように具体的に意
図されている。例えば、細胞毒素の放出は、宿主細胞のさらなる処理または成熟
を伴う。形質導入ドメインと細胞傷害性ドメインを操作できるように連結する、
好ましい方法は、同時に一緒に連結したものをコードする核酸配列を用いてイン
フレームで遺伝的な融合タンパクを形成することである。
【0108】 前述したように、本発明は種々の細胞傷害性ドメインに適合している。好まし
い細胞傷害性ドメインには既知のチモーゲンのような毒性を持った分子が挙げら
れる。一般に、チモーゲンのほとんどは不充分な触媒活性しか示さない。しかし
ながら、タンパク修飾および1つか複数のプロテアーゼ開裂部位における部分的
タンパク分解によって一旦活性化されると、チモーゲンは成熟酵素に変換される
。変換(成熟)にタンパク分解が含まれる例では、開裂はチモーゲンの部位特異
的な位置で起きる。チモーゲンから放出された断片はそれ自体が触媒活性を持つ
ことがあり、放出でさらに未熟酵素を処理し、ほとんど未熟ではない型、または
完全な成熟型となる。そのような断片を含むチモーゲンは自己触媒酵素と呼ばれ
ることが多い。ほかの場合では、しかしながら、断片は充分な触媒活性を欠き、
成熟酵素を形成するためには開裂しなければならない。特定の触媒断片が元々チ
モーゲンに会合していてもよいし、また常法によって組換え的にチモーゲンに付
加し、非相同性チモーゲンを形成してもよい。チモーゲンにおいて元々生じるプ
ロテアーゼ開裂部位は通常、チモーゲンの中でサブユニットを区分するように作
用する。
【0109】 本発明に合致して用いるための特定のチモーゲンには、アポトーシスに関連す
るもの、特にシステニルアスパラギン酸特異的プロテイナーゼ(カスパーゼ)お
よび特にカスパーゼ−3(CPP32、アポパイン、ヤマ)、カスパーゼ−5(
ICE−III、TY)、カスパーゼ−4(ICE−IITX、ICH−2)、
カスパーゼ−1(ICE)、カスパーゼ−7(Mch3、ICE−LAP3、C
MH−1)、カスパーゼ−6(Mch2)、カスパーゼ−8(MACH、FLI
CE、Mch5)、カスパーゼ−10(Mch4)、カスパーゼ−2(ICH−
1)、カスパーゼ−9(ICH−LAP6、Mch6)および相対的に不活性な
チモーゲン断片であるそれらの触媒活性断片が挙げられる。
【0110】 特にカスパーゼ−3(Casp3)の活性化は、カスパーゼ活性化DNエース
阻害剤(ICAD)の開裂によってアポトーシスを導き、結果的にはCADを活
性化し、最終的には細胞死を招くことが以前示された。 たとえば、Salvesen,
G. S., et al., カスパーゼ:タンパク分解による細胞内シグナル伝達、Cell, 9
1:443(1997); Henkart, P. A., ICEファミリープロテアーゼ:「あらゆるア ポトーシス細胞死に介在するか?」Immunity, 4:195(1996); Cohen, H. M., 「 カスパーゼ:アポトーシスの遂行者」、J. Biochem. 326(1997); Woo, M. et al
., 「カスパーゼ3/Casp3のアポトーシスへの本質的な寄与およびそれに 関連した核の変化」、Gene & Dev., 12:806(1998); Enari, M.,et al., 「カス パーゼ−アポトーシスの間にDNAを分解する活性化DNエース、およびその阻
害剤ICAD」、Nature 391:43(1998); Liu, X. et al.,「DFF40はアポト
ーシス中にDNAの断片化とクロマチンの濃縮を誘導する」、Proc. Natl. Acad
. Sci. USA, 15:8461(1998)を参照されたい。さらに、Caps3の活性化は不 活化Casp3の活性化の触媒となり、それによってアポトーシスシグナルを増
幅する。
【0111】 Casp3チモーゲンの構造は、N末端Proドメイン、次いでカスパーゼ開
裂認識部位、次に触媒Cys残基を含有するp17ドメイン、第2のカスパーゼ
開裂部位および最後にp12ドメインを包含することが知られている(図9A参
照)。Casp3のチモーゲン型は不活性のままである;しかしながら、アポト
ーシスのシグナル伝達の間にT細胞におけるカスパーゼ−8のような上流カスパ
ーゼによって開裂が起き、Proドメインを失って、活性型p17:p12ヘテ
ロ四量体となる。Woo, M. et al. (上記)を参照されたい。
【0112】 以下の実施例12ではHIV感染細胞を治療するためにHIVウイルス複製機
構の具体的な不活性化を説明する。作戦では、非感染細胞を損なわずに感染細胞
を殺すためにHIVプロテアーゼを利用する。実施例12にさらに詳しく記載さ
れているように、修飾されたカスパーゼ−3タンパク、TAT−Casp3を作
成した。この融合タンパクは感染細胞および非感染細胞の100%に形質を導入
する。しかしながら、HIVタンパク分解開裂部位に関して内因性開裂部位を置
換しているために、感染細胞におけるHIVプロテアーゼによってのみTAT−
Casp3が特異的に活性化され、アポトーシスを引き起こすが、非感染細胞で
は不活性のチモーゲン型のままである。Ratner, L. et al., AIDSウイルス の完全なヌクレオチド配列、HTLV−III、Nature, 313:277(1985)を参照 されたい。タンパク分解開裂部位を置換することによって、この作戦はC型肝炎
ウイルス、サイトメガロウイルスおよびマラリアのような特異的プロテアーゼを
コードするそのほかの病原体に応用することができた。Rice, C. M., Flaviviri
dae:ウイルスとその複製、Fields Virology (eds Fields, B. N., Knipe, D. M.
, & Howley, P. M.)931~960 (Lippincott~Raven Publishers, フィラデルフィア
1996);Welch,A. R. et al., 肝炎ウイルス成熟プロテアーゼ、アセンブリン: その遺伝子、推定活性部位ドメインおよび開裂部位、Proc. natl. Acad. Sci. U
SA, 88:10792(1991); Francis,SE, et al., マラリア原虫Plasmodium falciparu
mにおけるヘモグロビン代謝 Ann. Rev. Microbiol., 51:97(1997)を参照された い。
【0113】 また、Ratner, L. et al., AIDSウイルスの完全なヌクレオチド配列の開 示について、上記を参照されたい。また、HIV感染の治療に関する開示につい
てはWong, J.K.(1997) Science 278:1291およびFinzi, D. et al., (1997) Scie
nce 278:1295を参照されたい。 HIVウイルスの構造および機能に関するさらに具体的な情報については以下
を参照されたい:Wu, X. et al. EMBO J. (1997) 16:5113; Lillehoj, E.P. et
al.(1998); Kohl, N.E. et al. (1998) PNAS(USA)85:4686; Gottlinger, H.G. e
t al. (1998) PNAS(USA) 86:5781.
【0114】 特に実施例12では、内因性の開裂部位についてHIVタンパク分解開裂部位
を置換する、形質導入可能な、修飾した、アポトーシスを促進するカスパーゼ−
3タンパク(すなわちTAT−Casp3)を示す。さらに、融合分子は、効率
的に〜100%の細胞に形質導入するが、非感染細胞では不活性のままである。
HIV感染細胞では、TAT−Casp3はHIVプロテアーゼにより処理され
、活性型となり、感染細胞におけるアポトーシスを引き起こす。付随する実施例
および考察で明らかなように、この特異的な作戦は一般に、C型肝炎ウイルス、
サイトメガロウイルスおよびマラリアのような特異的プロテアーゼをコードする
その他の病原体に適用でき、戦うのに用いることができる。
【0115】 さらに好ましいチモーゲンはグランザイムBである。 さらに好ましいチモーゲンはBidである。Bidタンパクは、アポトーシス
調節タンパクであるBcl/Baxファミリーに関連した20kDaのタンパク
であることが報告されている。Luo et al. (1998) Cell 94:481; Li et al. (19
98 Cell 94:491; Wang et al. (1996) Gene & Dev.10: 2859を参照されたい。マ
ウスのBid配列はゲンバンク受入番号:U75506;NID:g16695
13で見つけることができる。実施例11を参照されたい。
【0116】 前述したように、質量作用は、抗病原体システムの特定の実施態様の活性を高
めることが知られている。さらに特に、極めて低い用量(すなわち、ナノモルレ
ベル)で多くの例に抗病原体システムを投与するのは可能であると考えられる。
この特徴は、抗病原体システムに対して細胞(および患者)の認容性を高めるこ
とができるので特に有利である。
【0117】 さらに具体的には、細胞傷害性ドメインの開裂は、感染細胞において別の融合
分子を描き出すと思われ、それによってこのような感染細胞中に細胞傷害性ドメ
インと細胞毒素の特異的な濃度を生じる。その濃度はある種の細胞毒素、特に最
適な効果を示す濃度を要求するようなものにとって特に重要でありうる。そのよ
うな細胞毒素の実例には、トロンビンおよびフィブリンのような血液凝固プロテ
アーゼ、トリプシン、キモトリプシン、ジフテリア毒素、リシン、シガ毒素、ア
ブリン、コレラ毒素、サポニン、シュードモナス外毒素(PE)、ヤマゴボウ抗
ウイルスタンパクおよびゲロニンが挙げられる。追加の例にはジフテリア毒素A
鎖およびリシンA鎖の生物活性のある断片が含まれる。
【0118】 さらに好ましいのは、タンパク特に、壊死に関連した特定のキナーゼおよびヌ
クレオシドデアミナーゼを包含する細胞傷害性ドメインである。そのような酵素
には、たとえばHSVチミジンキナーゼのようなウイルス性チミジンキナーゼ、
およびシトシンデアミナーゼ、および触媒活性のあるそれらの断片が含まれる。
【0119】 さらに好ましいチモーゲンには、ホスフォリパーゼ酵素、特にホスフォリパー
ゼCのような病原体に感染した細胞表面で活性のあるものが含まれる。 好ましいチモーゲンおよび酵素は一般に、たとえばトリパンブルー除外法のよ
うな好適な細胞生存アッセイによって測定されるように細胞を殺すことができる
。さらに好ましいチモーゲンおよび酵素は、常法によって測定されるような、約
5、10、20、30、40、50kDから100〜500kD以上までの間の
分子量を有する。SDS−PAGEゲル電気泳動法、沈降遠心法およびカラムク
ロマトグラフィのような従来からの多くの技術によって分子量を測定することが
できる。 特に好ましいチモーゲンはカスパーゼ−3(CPP32、アポパイン、ヤマ)
または触媒活性のあるその断片である。以下の実施例5−6を参照されたい。
【0120】 もう1つの特に好ましい酵素は、HSV−1チミジンキナーゼまたは触媒活性
のあるその断片である。以下の実施例8を参照されたい。 一般に発明の融合分子の調製には、たとえば、ポリメラーゼ鎖増幅反応(PC
R)、プラスミドDNAの調製、制限酵素によるDNAの開裂、オリゴヌクレオ
チドの調製、DNAの連結、mRNAの単離、好適な細胞へのDNAの導入およ
び細胞の培養を含む通常の組換えステップが含まれる。さらに、カオトロピック
剤および周知の電気泳動、遠心分離およびクロマトグラフィ法を用いて融合分子
を単離し、精製することができる。一般に、このような方法に関する開示につい
ては、Sambrook et al., 分子クローニング:実験室マニュアル(第2版 (1989)
);およびAusubel et al., 分子生物学における現在のプロトコール、John Wil
ey & Sons, New York(1989)を参照されたい。 以下の表1に、病原体特異的なプロテアーゼおよび既知の多くの病原体のプロ
テアーゼ開裂部位の例を示す。載せられているプロテアーゼ開裂部位は本発明に
従って用いることができるものの実例である。
【0121】
【表1】
【0122】 また、Gluzman,I.Y. et al., J. Clin. Invest., 94:1602(1994); Grakoui, A
. et al., J. Virol., 67:2832(1993); Kolykholov, AA. et al., J. Virol., 6
8:7525(1994); およびBarrie, K.A. et al., Virology, 219:407(1996)を参照さ
れたい。これらの開示は参考として明細書に取り入れる。
【0123】 追加の病原体特異的プロテアーゼおよび特定の開裂部位が記載されており、抗
病原体システムに従って用いることができる。 たとえば、HSV−1成熟プロテアーゼおよびプロテアーゼ開裂部位が記載さ
れている。たとえば、Hall, M.R.T and W. Gibson, Virology, 227:160(1997)を
参照されたい。これらの開示は参考として明細書に取り入れる。
【0124】 さらに、プラスメプシンIおよびIIと呼ばれる2つのアスパラギン酸プロテ
イナーゼがP. falciparumの消化胞で見い出された。相当するプロテイナーゼ開 裂部位も記載された。たとえば、Moon, R. P., Eur. J. Biochem. 244:552(1997
)を参照されたい。 部位が意図されたように病原体特異的プロテアーゼで特異的に切断される限り
、上で引用したプロテアーゼ開裂部位はいかなるものも所望のように(たとえば
部位特異的突然変異誘発によって)修飾できるのは喜ばしいことである。例えば
、特異的なタンパク分解的開裂に必要な最小配列を決めることは、たとえば、融
合タンパクに関してサイズおよび空間的事項を最適化するために有用かも知れな
い。そのような最小配列は病原体特異的な多くの開裂部位について報告されてい
る。別の方法としては、所望の開裂部位に対する最小配列は、突然変異誘発、特
に欠失解析および部位特異的突然変異誘発(たとえば、アラニンスキャニング突
然変異誘発)によって容易に得ることができる。修飾された開裂部位は、以下に
記載したような標準プロテアーゼ開裂アッセイによって容易に測定することがで
きる。
【0125】 用語「特異的に切断される」によって、病原体感染によって誘導される1つ以
上のプロテアーゼにより、特定のプロテアーゼ切断部位が特異的に破壊される(
すなわち加水分解される)ことが意味される。すなわち、プロテアーゼ切断部位
は、ハウスキーピングプロテアーゼに言及されるプロテアーゼのような感染され
たまたは未感染の細胞に天然に存在するプロテアーゼによって破壊されない。こ
れらのプロテアーゼの特異的な切断は、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳
動法を含む多様な技術によってモニターされ得る。
【0126】 好ましい病原体特異的プロテアーゼ切断部位としては、HSV−1プロテアー
ゼ切断部位p17−p24(SQVSQNY−−−PIVQNLQ;配列番号9
)、p7−pI(CTERQN−−−FLGKIWP;配列番号10)、および
pr−RT(IGCTLNF−−−PISPIET;配列番号11)が挙げられ
る。上述の表1および以下の実施例を参照のこと。
【0127】 特に好ましい融合タンパク質としては、配列中で作動可能に連結される(Nか
らC末端):1)TATまたはその適切な形質導入フラグメント(例えば、最小
TAT配列)/p17−p24またはプロテアーゼ−RT切断部位/HSV T
K;2)TATまたはその適切な形質導入フラグメント(例えば、最小TAT配
列)/プロテアーゼ−RT切断部位/CPP32のラージドメイン/p17−2
4切断部位/およびCPP32の小サブユニット;3)TATまたはまたはその
適切な形質導入フラグメント(例えば、最小TAT配列)/p17−p24また
はプロテアーゼ−RT切断部位/およびp16野生型またはその変異体形態、お
よび4)TATまたはその適切な形質導入フラグメント(例えば、最小TAT配
列)/(p7−p1)プロテアーゼ切断部位/HIVプロテアーゼが挙げられる
【0128】 上記のように、本発明の抗病原体系の使用は、誤って折畳まれた形態において
融合タンパク質を提供することにより促進される。例えば、ネイティブな融合タ
ンパク質は、本発明の抗病原体系に従って使用される場合、対応の誤って折畳ま
れた配列よりも非常に効率悪く形質されることが見出された。従って、本発明の
融合タンパク質が本発明の抗病原体系において使用される前に完全にまたは部分
的に変性されることが一般に好ましい。タンパク質を完全にまたは部分的に変性
するための方法は周知であり、および尿素、特に約6〜8Mの尿素、β−メルカ プトエタノール、DTT、SDS、または他の界面活性剤、特にイオン性の界面
活性剤のような認識されるカオトロピックな薬剤での処理を含む。さらに意図さ
れるものは、加熱処理および超音波処理のようなタンパク質およびポリぺプチド
を変性し得る物理的処理である。また想定されるものは、1つ以上のカオトロピ
ックな薬剤および物理的処理を包含する方法である。
【0129】 本発明の好ましい方法において、融合タンパク質は誤って折畳まれた融合タン
パク質として細胞に導入される。以前に記載されるように、細胞に取込まれる融
合タンパク質の速度および量は、低いエネルギーおよび効率のネイティブな配座
において同じ細胞に導入される同じ融合タンパク質に比較される場合、有意に増
強される。
【0130】 本発明はさらに、本発明の融合タンパク質をコードする核酸および特にDNA
配列を提供する。好ましくは、DNA配列はファージ、ウイルス、プラスミド、
ファージミド、コスミド、YAC、またはエピソームのような染色体外複製に適
するベクターにより運搬される。特に、所望の融合タンパク質をコードするDN
Aベクターは、本明細書中に記載される調製方法を容易にするために、および融
合タンパク質の有意な量を得るために使用され得る。DNA配列は、適切な発現
ベクター(すなわち、挿入されたタンパク質をコードする配列の転写および翻訳
に必要なエレメントを含むベクター)に挿入され得る。多様な宿主−ベクター系
がタンパク質をコードする配列を発現するために利用され得る。これらとしては
、ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)で感染された
哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞
系;酵母ベクターを含有する酵母のような微生物、またはバクテリオファージD
NA、プラスミドDNA、もしくはコスミドDNAで形質変換された細菌が挙げ
られる。利用される宿主−ベクター系に依存して、多くの適切な転写および翻訳
エレメントの任意の1つが使用され得る。概してSambrookら、前出、およびAusu
belら、前出を参照のこと。
【0131】 一般に、本発明の好ましいDNAベクターは、リン酸ジエステル結合により連
結されるヌクレオチド配列を含み、5’〜3’の方向に、タンパク質形質導入ド
メイン、作動可能に連結される細胞傷害ドメインをコードする配列をコードする
第1のヌクレオチド配列の導入のための第1のクローニング部位を含み、。好ま
しくは、コードされる細胞傷害ドメインは、チモーゲンのようなコードされる潜
在的に毒性の分子についてのさらなるクローニング部位を含む。細胞傷害ドメイ
ンがコードされるプロテアーゼ切断部位についてのさらなるクローニング部位を
含むことは、さらに好ましい。
【0132】 図3A、B及び図4Aは、本発明の特に好ましいDNAベクターを描く。DN
Aベクターは、図1において図示されるpTAT/pTAT−HAベクターに由
来する。pTAT/pTAT−HAベクターとの使用のために好ましい核酸リン
カー配列は、図2において示される。
【0133】 ほとんどの場合において、DNAによりコードされる融合タンパク質成分のそ
れぞれが「カセット」形式において提供されることが好ましい。「カセット」に
より、各成分が別の成分を標準的な組換え法によって容易に置換えられ得ること
が意味される。特に、カセット形式に配置されるDNAベクターは、コードされ
る融合タンパク質が血清型を発生する能力を有し得るかまたは有する病原体に対
して使用される場合、特に望ましい。 より具体的には、いくつかの場合において、ある病原体血清型が、その血清型
に特異的な個々のプロテアーゼ切断部位と関連し得ることが想定される。この場
合において、カセットとして形式化されるDNAベクター中の1つ以上の既存の
プロテアーゼ切断部位は、別の予め決定されたプロテアーゼ切断部位で必要とさ
れるように置換えられ得る。特定のプロテアーゼ切断部位は、個々の患者におけ
る病原体の存在に従って選択され得る。
【0134】 より一般には、本発明のDNAベクターは、必要とされるように融合タンパク
質成分を付加または置換する手段を提供することによって、哺乳動物および特に
ヒトの処置の間に病原体血清型の出現を最小にするかまたは排除するカセットと
して形式化される。 特に、HIVのような病原性ウイルスに関して、DNAベクターは、新規なH
IVタンパク質分解性切断部位を融合タンパク質中に置換する手段を提供するこ
とによって、ウイルスの特定の株またはウイルスの将来の変異に適合するように
特異的に形式化される。これらの部位は、患者から得られるDNAのポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR)増幅、および標準的なプライマーを使用するウイルス切断
部位をわたるDNA配列決定により、患者において容易に決定され得る。例えば
、多様な適切なオリゴヌクレオチドプライマーは、公開された配列に従って、増
幅のために選択され得た。次いで、新規な/変化された切断部位は、融合タンパ
ク質、例えば、以下の実施例において記載されるpTAT−CPP32細菌発現
ベクターに挿入され、タンパク質が精製され得および誤って折畳まれ得、次いで
比較的短い時間枠(約3〜4週間)において患者に投与され得る。
【0135】 重要なことに、本発明の抗病原体系は従って、インビトロおよびインビボで病
原体血清型の変化を記録し得る有効な「警告系」として作用し得る。特に病原体
血清型の発生は、抗病原体系による減少された殺傷および傷害により明らかであ
る。遺伝子変化された病原体の血清型の出現を迅速に検出する能力は特に、関連
の治療を開発することに関連し、そして例えば、上記のように融合タンパク質を
改変することによっておよび/または以下に記載するように「カクテル」治療ア
プローチを実行することによって改善され得る。 用語「クローニング部位」は、少なくとも1つの制限エンドヌクレアーゼ部位
を含むことが意図される。典型的に、複数の異なる制限エンドヌクレアーゼ部位
(例えば、ポリリンカー)が、核酸内に含まれる。DNAベクター中のクローニ
ング部位の至適な配置は、カセット形式を容易にする。
【0136】 本発明の融合タンパク質は、公知の技術の適切な組み合わせによって分離およ
び精製され得る。これらの方法としては、例えば、可溶性を利用する方法(例え
ば、塩沈降および溶媒沈降)、分子量における差異を利用する方法(例えば、透
析、限外濾過、ゲル濾過、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動)、
電気的変化における差異を利用する方法(例えば、イオン交換カラムクロマトグ
ラフィー)、特異的な親和性を利用する方法(例えば、アフィニティークロマト グラフ)、疎水性における差異を利用する方法(例えば逆相高速液体クロマトグ ラフィー)、ならびに等電点における差異を利用する方法(例えば、等電点電気
泳動、Ni−NTAのような金属アフィニティーカラム)が挙げられる。これら
の方法に関連する開示について概して、SambrookらおよびAusubelら、前出を参 照のこと。
【0137】 本発明の融合タンパク質は、実質的に純粋であることが好ましい。すなわち、
融合タンパク質は、それに天然で付随する細胞成分から単離されて、それによっ
て融合タンパク質は少なくとも80%、または90%〜95%の均一性(w/w
)で存在する。少なくとも98〜99%の均一性(w/w)を有する融合タンパ
ク質は、多くの薬学的、臨床的、および研究的な適用に最も好ましい。一旦実質
的に精製されると、融合タンパク質は、治療学的な適用について実質的に夾雑物
がないべきである。一旦部分的にまたは実質的な純度に精製されると、可溶性融
合タンパク質は治療学的に、または本明細書中に記載されるようなインビボもし
くはインビトロアッセイを行うにおいて、使用され得る。実質的な純度は、クロ
マトグラフィーおよびゲル電気泳動のような多様な標準的な技術によって決定さ
れ得る。
【0138】 上述で考察されるように、本発明の融合タンパク質は、不溶性形態において発
現され得る。これは、融合タンパク質のタンパク質分解を回避し得、タンパク質
収量を有意に増加し得、および標的細胞への融合タンパク質の送達を増加し得る
。不溶性タンパク質は、アフィニティークロマトグラフィーまたは上述で詳述さ
れる他の方法のような公知の手順によって精製され得る。 概して上記されるように、宿主細胞は所望の融合タンパク質をコードする核酸
を増殖する調製目的のために使用され得る。従って、宿主細胞は、融合タンパク
質の産生が特に意図される原核生物細胞または真核生物細胞を含み得る。従って
、細胞は、融合物をコードする核酸を増殖し得る酵母、ハエ、ケムシ、植物、カ
エル、哺乳動物の細胞および器官を特に含む。使用され得る哺乳動物細胞株の制
限されない例としては、CHO dhfr−細胞(UrlaubおよびChasm、Proc. N
atl. Acad. Sci. USA、77:4216(1980))、293細胞(Grahamら、J. Gen. Vi
rol.、36:59(1977))、またはSP2またはNSOのような骨髄腫細胞(Galfr
eおよびMilstein、Meth. Enzymol.、73(B):3(1981))が挙げられる。
【0139】 所望の融合タンパク質をコードする核酸を増殖し得る宿主細胞は、非哺乳動物
真核生物細胞をまた含み、昆虫(例えば、Sp. frugiperda)、酵母(例えば、S.
cerevisiae、S. pombe、P. pastoris.、K. lactis、H. polymorpha;Fleer、R.
、Current Opinion in Biotechnology、3(5):486496(1992)により概説される )、真菌、および植物の細胞が挙げられる。また意図されるものは、E.coliおよ
びBacillusのようなある原核生物である。
【0140】 所望の融合タンパク質をコードする核酸は、細胞をトランスフェクトするため
の標準的な技術によって宿主細胞に導入され得る。用語「トランスフェクトする
」または「トランスフェクション」は、核酸を宿主細胞に導入するための全ての従
来の技術を含むことが意図され、リン酸カルシウム同時沈澱、DEAE−デキス
トラン媒介性のトランスフェクション、リポフェクション、エレクトロポレーシ
ョン、マイクロインジェクション、ウイルス形質導入、および/またはインテグ
レーションが挙げられる。宿主細胞をトランスフェクトするための適切な方法は
、Sambrookら、前出および他の実験室教科書において見出され得る。
【0141】 本発明はさらに、目的の融合タンパク質を単離するための生成プロセスを提供
する。プロセスにおいて、宿主細胞(例えば、酵母、真菌、昆虫、細菌、または
動物の細胞)は、調節配列に作動可能に連結された目的のタンパク質をコードす
る核酸が導入されており、目的の融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列
の転写を刺激するために、融合タンパク質の存在下で培養培地中で生産規模で増
殖される。続いて、目的の融合タンパク質は採集された宿主細胞からまたは培養
培地から単離される。標準的なタンパク質精製技術が、培地からまたは採集され
た細胞から目的のタンパク質を単離するために使用され得る。特に、精製技術は
、多様な器具(回転式ボトル、攪拌フラスコ、組織培養プレート、バイオリアク
ター、または発酵器を含む)から大規模で(すなわち、少なくともミリグラムの
量において)所望の融合タンパク質を発現および精製するために使用され得る。
【0142】 より詳細には、本発明に従う使用のための誤って折畳まれた融合タンパク質は
、多様な方法によって生成され得る。例えば、好ましい方法において、所望の融
合タンパク質は適切な細菌細胞中で発現され、次いでこれらの細胞から封入体と
して単離される。続いて融合タンパク質は、約6〜8M尿素のような強力なカオ トロピックな薬剤中で変成され、次いで第1のカラムに対するクロマトグラフィ
ーによりそれに付随する他の細菌細胞成分から融合タンパク質が分離される。次
いで結合された融合タンパク質は、標準的な手段によりカラムから溶出され、次
いで適切な緩衝液中で透析されるかまたは第2のカラムに対してさらにクロマト
グラフィーされて尿素が取り除かれる。このような透析またはクロマトグラフィ
ーは、配座の混合物として融合タンパク質を提供し、最も低いエネルギーの正確
に再折畳みされた配座が小さな部分でのみ生じ、例えば、タンパク質の約25%
が、低いエネルギーの折畳まれた形態にあり得る。本明細書中で言及されるよう
に、少なくとも部分的に変性される融合タンパク質は、タンパク質サンプルの少
なくとも部分(例えば、実質的に純粋な融合タンパク質サンプルにおけるアミノ
酸残基の総数の少なくとも約10、15、20、30、40、50、60、70
、または75パーセント)が、最も低いエネルギーの再折畳みされた配座以外の
配座にあることを意味する。
【0143】 次いで、配座の混合物に誤って折畳まれる融合タンパク質は、所望の細胞に形
質導入され得る。例えば、融合タンパク質は、培養細胞に、またはそれらの細胞
が増殖されている培地に直接的に添加され得る。 理論に束縛されることを望まないが、本発明の融合タンパク質のより高いエネ
ルギーの変性された形態は、目的の細胞により容易に形質導入され得るより低い
エネルギーの配座を採用し得ることが考えられる。対照的に、その好ましい折畳
まれた配座におけるタンパク質は、必然的に低いエネルギー状態で存在し、そし
て比較的より高いエネルギーを採用し得ず、従ってより容易に細胞に導入される
不安定な配座である。
【0144】 以前に記載されるように、本発明は従って、ウイルス感染のような病原体の感
染およびウイルスと関連する疾患に対する処置の方法を提供し、この方法は概し
て、病原体感染を被るまたはその疑いのある動物、特にヒトへの、上述で考察さ
れる融合タンパク質の1つ以上の治療学的有効量の投与を包含する。 例えば、本発明の融合タンパク質は、免疫不全病を特にヒトにおいて引き起こ
し得るウイルスで感染された細胞を処置するために有用である。融合タンパク質
は、細胞およびヒト、特にHIV感染されたヒト細胞において、レトロウイルス
の感染を処置するために特に有用である。本発明に従って処置され得るレトロウ
イルス感染の特定の例としては、HIV−1、HIV−2、およびヒトT細胞リ
ンパ球向性ウイルス(HTLV)(例えば、HTLV−IまたはHTLV−II
)の感染のようなヒトレトロウイルス感染が挙げられる。
【0145】 本発明はまた、インフルエンザ(インフルエンザAおよびBを含む)のような
ウイルスによって引き起こされるか、またはそうでなければこのウイルスと関連
する他の疾患、ならびにヘルペスファミリーのウイルス(例えば、単純ヘルペス
ウイルス(HSV)(単純ヘルペスI型ウイルスおよび単純ヘルペスII型ウイ
ルス(HSV1、HSV2)、水痘−帯状ヘルペスウイルス(VZV;帯状ヘル
ペス)、ヒトヘルペス6型ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプス
タイン−バーウイルス(EBV))、および他のヘルペスウイルスの感染(例え
ば、ネコヘルペスウイルスの感染)と関連する疾患、ならびに肝炎ウイルス(C
型肝炎ウイルスを含む)と関連する疾患の処置の方法を提供する。このようなウ
イルスによって引き起こされる臨床的な状態の例としては、ヘルペス性の角膜炎
、ヘルペス性の脳炎、口辺ヘルペス、および生殖感染(単純ヘルペスによって引
き起こされる)、水痘および帯状ヘルペス(水痘−帯状ヘルペスによって引き起
こされる)、ならびにCMV−肺炎および網膜炎(特に、腎臓および骨髄移植患
者を含む免疫無防備状態の患者、および後天性免疫不全症候群(AIDS)を伴
う患者において)が挙げられる。エプスタイン−バーウイルスは、感染性の単核
球症を引き起こし得、そしてまた、上咽頭ガン、免疫芽細胞リンパ腫、およびバ
ーキットリンパ腫の原因因子として示唆される。
【0146】 病原体は、病原性形態、潜伏性形態、または減弱化形態において存在し得るこ
とが意図される。また意図されるものは、これらの形態の混合物を含む病原体の
集団である。目的の特定の病原体の例は、ウイルス(例えば、CMV、HSV−
1、HCV、特にHCV C型、HIV−1、HIV−2、KSH、黄熱病ウイ
ルス、あるフラビウイルスおよびライノウイルス)である。さらに、病原体は、
例えばP.falciparum、P.vivax、P.avale、またはP.malariaeのようなウイルスに
関連するマラリアまたは医学的状態を引き起こし得る任意の病原体であり得る。
典型的に、プラスモディウム属は、マラリアまたはマラリアに関連する種々の医
学的合併症を引き起こす。本発明は、既存の状態を処置するために使用され得る
か、または1つ以上の病原体による感染を防止するために予防的に使用され得る
【0147】 本発明の抗病原体系および特に融合タンパク質は、1つまたは組合せのストラ
テジーによってインビボまたはインビトロで細胞に投与され得る。 例えば、上記されるように、融合タンパク質は、一般に細胞と融合タンパク質
とを接触する工程および特定の期間融合タンパク質を細胞を介して形質導入させ
る工程を包含する従来の細胞培養技術によって、インビトロで培養において増殖
する一次または不死化細胞に投与され得る。典型的に、細胞培地は、融合タンパ
ク質の濃度を増加するために接触の前に細胞から除去される。
【0148】 さらに、融合タンパク質は、例えば、細胞への融合タンパク質の導入に適切な
特定の送達機構を使用することによって、インビボでこれらの細胞に投与され得
る。一般に、選択される送達機構のタイプは、細胞の位置、病原体により感染さ
れる細胞を殺傷または傷害するために必要とされる形質導入の程度、および細胞
の全体的な健常性を含むいくつかの考慮により導かれる。 特に、本発明の融合タンパク質は、常態、特にヒトのような増進者に投与され
得、多様な適切な経路としては、経口、局所(経皮、頬、または舌下を含む)、
鼻および非経口(腹腔内、皮内、静脈内、皮内、または筋肉内を含む)の注射が
挙げられる。概して、Remington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Pub.Co.、
Easton、PA、1980を参照のこと。有意な接触を導く鼻および経口経路は、1つ以
上の融合タンパク質を考慮し、気道上皮、肺組織が一般に好ましい。
【0149】 本発明の融合タンパク質は、本明細書中に提供されるような1つ以上の他の融
合タンパク質と組み合わせて、またはジデオキシヌクレオシドのような逆転写酵
素インヒビター(AZT、ddI、ddC、d4T、3TC、FTC、DAPD
、1592U89、またはCS92を含む);TATアンタゴニスト(例えば、
Ro3−3335およびRo24−7429);および他の薬剤(例えば、9−
(2−ヒドロキシエトキシメチル)グアニン(アシクロビル)、ガンシクロビル
、もしくはペンシクロビル、インターフェロン(例えばα−インターフェロン)
、もしくはインターロイキンIIのような他の薬物との組み合わせて、または他
の免疫調節剤(ウシ骨髄またはリンパ球移植片を含む)もしくは他の処方物(例
えば、適切にリンパ球の数および/または機能を増加するレバミゾールまたはチ
モシンのような他の薬物と組み合わせて、唯一の活性な薬剤として投与され得る
【0150】 本発明の1つ以上の融合タンパク質と同時投与され得るさらなる薬物としては
、Goodman,G.ら(1993)、The Pharmacological Basts of Therapeutics、第8
版、McGraw~Hill Inc. 978~998頁において開示されるような標準的な抗マラリア
剤を含む。好ましい抗マラリア剤としては、クロロキン、クロログアニジン、ピ
リメタニン、メフロキン、プリマキン(primaquaine)、およびキニンが挙げら れる。 本発明の融合タンパク質を含む上記の薬剤の2つ以上の投与は、「カクテル」
または「カクテル」治療の例である。
【0151】 本発明の1つ以上の融合タンパク質は単独で投与され得るが、これらはまた従
来の腑形剤、好ましくは以前に記載されるように経口および鼻送達に一般に適切
である薬学的に受容される有機または無機キャリア物質との混合物中の薬学的組
成物の部分として存在し得る。しかし、いくつかの場合において、投与の他の態
様が、融合タンパク質が、非経口、経口、または他の所望の投与に適切なベヒク
ルと組み合される場合において、ならびに融合タンパク質と有害に反応しないお
よびそのレシピエントに対して有害でない場合において、示され得る。適切な薬
学的に受容されるキャリアとしては、水、塩溶液、アルコール、植物油、ポリエ
チレングリコール、ゼラチン、ラクトース、アミロース、マグネシウムステアレ
ート、タルク、ケイ酸、粘性パラフィン、香油、脂肪酸モノグリセリドおよびジ
グリセリド、石油脂肪酸エステル、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピ
ロリドンなどが挙げられるが、これらに制限されない。薬学的調製物は滅菌され
得、所望であれば、補助剤(例えば、融合タンパク質と有害に反応しない潤滑剤
、保存剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、浸透圧を影響するための塩、緩衝液、発色
剤、香料、および/または芳香族物質など)と混合され得る。
【0152】 非経口投与について、特に適切であるのは、溶液、好ましくは油性または水性
溶液、および懸濁液、乳濁液、または移植片(坐薬を含む)である。アンプルは
簡便な単位投薬量である。 経腸投与について、特に適切であるのは、タルクおよび/または炭水化物キャ リア結合剤などを有する錠剤、ドラジェ、またはカプセルである。キャリアは、
好ましくはラクトースおよび/またはコーンスターチおよび/またはジャガイモ
スターチである。シロップ、エリキシルなどが使用され得、ここでは加糖ベヒク
ルが用いられる。これらを含む持続性放出組成物が処方され得、ここでは有効成
分は、マイクロカプセル化、複数のコーティングなどにより異なって分解される
コーティング剤で保護される。
【0153】 本発明の治療学的融合タンパク質は、リポソーム中に取込まれ得る。取込みは
、公知のリポソーム調製手順(例えば、超音波処理および押し出し成形)に従っ
て行われ得る。 所定の治療において使用される活性な融合タンパク質の実際の好ましい量は、
利用される特定の融合タンパク質、処方される特定の抗病原系、適用の態様、投
与の特定の部位などに従って変化することが理解される。投与の所定のプロトコ
ルについての至適な投与速度は、上述の指針に関して行われる従来の投薬量決定
試験を使用して、当業者によって容易に確認され得る。 一般に、病原体感染(例えば、HIV感染のようなウイルス感染)の処置のた
めに、適切な有効用量の1つ以上の融合タンパク質が、1日当たりレシピエント
の体重の1kg当たり0.01〜100ミリグラムの範囲、好ましくは、1日当
たりレシピエントの体重の1kg当たり0.1〜50ミリグラムの範囲、より好
ましくは、1日当たりレシピエントの体重の1kg当たり1〜20ミリグラムの
範囲である。所望の用量は、毎日1回、または数回のサブ用量であり、例えば、
2〜5回のサブ用量が1日を介して適切な間隔で、または他の適切なスケジュー
ルで投与される。 以前に記載されるように、投与の好ましい態様は、エアロゾル形式であり、特
に鼻および経口経路による。
【0154】 本発明の別の局面は、本発明の抗病原体系の成分を含むキットに関する。この
ようなキットは、1つ以上の予め決定される病原体により感染される細胞を殺傷
または傷害するために使用され得る。1つの実施態様において、キットはその中
の囲まれた区画に少なくとも2つの容器手段を備え:第1の容器手段は本発明の
1つ以上の融合タンパク質を含み、および必要に応じて第2の容器手段は融合タ
ンパク質をコードする組換えベクターを含む。 キットの成分を用いる場合、抗病原体系を使用するために、融合タンパク質は
上記の方法に従ってインビトロまたはインビボで細胞に投与される。
【0155】 本発明は、病原体の1つまたは組み合わせによって感染された細胞を殺傷また
は傷害することが所望される多様な状況に広範に適用可能である。上述で詳述さ
れた使用に加えて、本発明はまた、植物、昆虫、または動物起源の細胞(例えば
、霊長類、およびあるトリ、イヌ、ネコ、ウマ、ヒツジ、ウシなどを含む家畜の
ような他の哺乳動物からの細胞)のような真核生物細胞の病原体感染の機構を研
究することに適用可能である。さらに、本発明は病原体攻撃に対する作物または
食物材料の防御のために使用され得る。
【0156】 本発明の別の局面において、抗病原体系は、感染された細胞におけるあるタン
パク質、および特に病原体特異的プロテアーゼを阻害する治療学的能力について
候補化合物をスクリーニングするために使用され得る。特に、好ましいスクリー
ニング法は、抗病原体を所望の細胞、好ましくは培養細胞(不死化および一次細
胞を含む)に形質導入する工程;病原体で細胞を感染する工程、病原体特異的プ
ロテアーゼを阻害し得る潜在的な治療学的能力を有する候補化合物を添加する工
程、および例えば、従来の細胞生存度アッセイを行うことによって、病原体に対
する耐性について細胞を試験する工程を包含する。
【0157】 アッセイは通常、ベースラインコントロールに比較されて、細胞に対する目的
の化合物の効果(例えば、得られる表現型)を決定する。さらに、候補化合物は
、抗病原体系での細胞を形質導入する前、間、または後に添加され得る。 ベースラインコントロールは、融合タンパク質の導入の前の細胞、融合タンパ
ク質が導入されなかった細胞、または融合タンパク質が機能的でない(例えば、
非機能的な転写アクチベーター領域を有する)細胞であり得る。1つ以上の予め
決定された病原体が、化合物の投与の前、後、または間に細胞に添加され得る。
【0158】 目的の候補化合物は、いくつかの分子の1つであり得、サイトカイン、腫瘍抑
制因子、抗体、レセプター、ムテイン、このようなタンパク質のフラグメントま
たは部分、および活性なRNA分子(例えば、アンチセンスRNA分子もしくは
リボザイム)、または薬物が挙げられる。例えば、AZTのような公知の HI
V RTインヒビターの誘導体のコンビナトリアルライブラリーは、本発明の方
法によって容易に試験され得る。本発明の好ましい化合物は、トリパンブルー排
除試験によるような標準的な細胞生存度アッセイによってアッセイされるように
、細胞殺傷を少なくとも約40%、50%、60%、70%、好ましくは少なく
とも約80%、およびより好ましくは少なくとも90%以上まで減少し得る。
【0159】 病原体特異的プロテアーゼを阻害する治療学的能力について候補化合物をスク
リーニングするための好ましい方法は、以下の工程: a)細胞の集団に本発明の融合タンパク質を形質導入し、病原体特異的プロテ
アーゼを発現または誘導し得るプロテアーゼで細胞を感染し、そしてプロテアー
ゼを発現する工程、 b)サイトトキシンを生成するのに十分な病原体特異的プロテアーゼと融合タ
ンパク質とを接触する工程;および c)病原体特異的プロテアーゼを調節する候補化合物の治療学的能力に任意の
細胞傷害効果を相関する工程、を包含する。
【0160】 タンパク質形質導入ドメインは、TAT、アンテナペディア・ホメオドメイン
、HSV VP22;その適切なフラグメント;または形質導入し得る任意の天
然に存在しない配列から選択され得る。細胞傷害ドメインは、カスパーゼおよび
1つ以上のプロテアーゼ切断部位を含み得る。
【0161】 本明細書中に記載されるDNAおよびタンパク質の配列は、具体的に記載され
る供給源のような多様な公共の供給源から得ることができる。好ましい供給源は
、米国国立医学図書館、38A 8N05、Rockville Pike, Bethesda,MD 20894の生物
工学情報センター(NCBI)−遺伝子配列データバンク(ジェンバンク:Genbank )である。ジェンバンクはまた、「http://www.nbi.nlm.nih.gov.」にてインタ ーネットで利用可能である。ジェンバンクの記載については概して、Benson, D.
A.ら、Nucl. Acids. Res.、25:1(1997)を参照のこと。 実施例において使用された、抗体、細胞、およびウイルスのような他の試薬は
、Linscott’s Directory(40 Glen Drive、Mill Valley California 94941)、
およびアメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)12301 Parklawn Drive
,Rockville、MD 20852のような認識される市販のまたは公共の供給源から得る ことができる。
【0162】 本明細書中に記載される全ての書類は本明細書中に参考として援用される。 本発明はさらに以下の実施例によって説明される。これらの実施例は本発明の
理解を補助するために提供され、本発明の制限として解釈されない。
【0163】 実施例1−TAT融合タンパク質発現ベクターの生成 TAT融合タンパク質発現ベクターについての好ましいプラスミドを、以下の
ように調製した。このプラスミドのマップを図面の図1において描く。図2は、
pTATリンカーのヌクレオチド配列(配列番号12)およびアミノ酸配列(配
列番号13)、ならびにpTAT−HAリンカーのヌクレオチド配列(配列番号
14)およびアミノ酸配列(配列番号15)を示す。 pTATおよびpTAT−HA(tag)細菌発現ベクターを、TATドメイ
ン(G−RKKRRQRRR−G)(配列番号16)の自由な結合回転を考慮す
るためにグリシン残基に隣接される11アミノ酸のTATドメインに対応するオ
リゴヌクレオチドをpREST−A(Invitrogen)のBamHI部位
に挿入することによって作製した。NcoI部位(5’またはN’)およびEc
oRI部位に第2のオリゴヌクレオチドを挿入することによって、ポリリンカー
をTATドメインのC’末端に添加し、これはNcoI−KpnI−AgeI−
XhoI−SphI−EcoRIクローニング部位を含んだ(図1を参照のこと
)。これに、BstBI−HindIII部位を含むpREST−Aプラスミド
の残存する元来のポリリンカーが続いた。 pTAT−HAプラスミドを、グリシンに隣接されるHAタグ(YPYDVP
DYA;配列番号17;図2を参照のこと、ここでは配列が太字で示される)を
コードするオリゴヌクレオチドをpTATのNcoI部位に挿入することによっ
て作製した。5’またはN’ NcoI部位を上述のポリリンカーが続くHAタ
グの3’またはC’のみを残して不活化した。HAタグは、12CA5抗HA抗
体を使用することにより、イムノブロット、免疫沈降、または免疫組識染色によ
る融合タンパク質の検出を許容する。 各リンカーのヌクレオチドおよびアミノ酸配列は、図2において記載される。
pRSET−A骨格は、アンピシリン耐性、fl、ori、ColE1 ori
(プラスミド複製)をコードし、そして転写は、T7 RNAポリメラーゼプロ
モーターによって駆動される。
【0164】 実施例2−誤って折畳まれたTAT融合タンパク質の調製 以下に記載されるTAT融合タンパク質を宿主細胞から精製し、そして形質導
入を増強するために意図的に誤って折畳んだ。より具体的には、5時間の1L培
養物から得られたトランスフェクトしたBL21(DE3)pLysS細胞(No
vagen)の超音波処理によって、融合タンパク質を精製した。培養物を10ml の緩衝液A(8M 尿素/20mM HEPES(pH7.2)100mM NaCl)中、一晩培養物から の100mlで接種した。細胞溶解物を遠心分離により分離し、緩衝液A+20
mM イミダゾール中でNi−NTAカラム(Qiagen)にロードした。次いで、
カラムを10×カラム容量中で洗浄し、緩衝液A中のイミダゾールの濃度を増加
する(段階的に行う)ことによって溶出し、次いで4M尿素/20mM HEPES(pH7.2(
50mM NaCl))中でFPLC(Pharmacia)上のMono−Qカラムに適用した。TA
T融合タンパク質を1M NaCl工程で溶出し、PD−10脱塩カラム(Phar
macia)においてPBSまたは20m M HEPES [pH7.2]/137mM NaClに脱塩し、そ して10%グリセロール中で−80℃にて凍結した。 FITC標識されたTAT融合タンパク質を、蛍光標識化(Pierce)によって
作製し、次いでFPLC(Pharmacia)に付着されるS−12カラムにおいてP BS中でゲル精製し、そして培養培地に直接的に添加した。
【0165】 実施例3−TAT p16融合タンパク質の生成 HIVプロテアーゼ切断部位(p17−p24またはp7−p1)を含むTA
T p16融合タンパク質を以下の方法に従って作製した。 A.pTAT−(HIV切断部位)構築物の調製: このプラスミドを、p17−p24およびp7−p1 HIV切断部位をコー
ドする2本鎖オリゴマーをpTATおよびpTAT−HAのNcoI部位に挿入
することによって作製した。切断部位は14アミノ酸からなり、HIV切断部位
の各側は7アミノ酸であった。 p17−p24部位(57 mer)、ポジティブな鎖: 5’ CAT GTC AGG CTC CCA GGT GTC ACA GAA CTA TCC AAT CGT GCA GAA CCT GCA
GGG CGC 3’(配列番号18) p7−p1 HTV切断部位(60 mer)、ポジティブ鎖: 5’ CAT GCA TTC AGG CTG CAC CGA ACG CCA GGG TAA CTT CCT GGG CAA AAT CTG
GCC AGG CGC 3’(配列番号19) HIV切断部位p17−p24(配列番号18)またはp7−p1(配列番号
19)に対応するオリゴヌクレオチドを、実施例1において記載されるpTAT
ベクターに融合して(PTD部位に対して3’)、それぞれ、pTAT−HIV
1またはpTAT−HIV2ベクターを生成した。pTAT−HIV1、2ベク
ターは、図3A、B及び図4Aにおいて実施例のために示される構築物について
の親ベクターとして作用した。p16タンパク質cDNA配列を、p17−p2
4 HIV切断部位に融合して、インフレームのTAT−16融合タンパク質c
DNAを生成した(図4A)。第2のp16融合タンパク質を、p16cDNA
をpTAT−HIV2ベクターに融合することによって作製した。各ベクター構
築物中の成分の順番(N’末端からC’末端)は:HIS~TAT~PTD~CLEAVAGE SITE~
p16~PROTEIN であり、ここで「開裂部位(cleavage site)」は、それぞれ、p17−p24ま たはp7−p1切断部位を示す。上述の実施例2において記載される方法に従っ
て、融合タンパク質をぞれぞれ精製し、そして誤って折畳んだ。TAT−p16
cDNAベクターを、DH5−α細菌中で増殖した。 精製されたp16融合タンパク質を、HIVにより感染されたJurkat
T細胞に個々に形質導入した。HIVでJurkat T細胞を感染するための
方法および融合タンパク質を形質導入する方法は以下の実施例において記載され
る。4、8、および12時間後、細胞を、市販の抗p16抗体(Santa Cruz)を
使用するウェスタン/イムノブロット分析により融合タンパク質の切断について 分析した。対照として、p16 cDNAを実施例1において記載されるpTA
Tベクターに融合して、図4Bにおいて示されるベクター(HIVプロテアーゼ
切断部位がない)を生成した。このベクターは、感染された細胞において切断さ
れないTATに融合されるp16融合タンパク質をコードした。しかし、効率的
な切断が、図4Aにおいて示されるベクターによりコードされるp16融合タン
パク質で観察され、ThtはHIV切断部位を含んだ。
【0166】 実施例4−p16融合タンパク質内側形質導入化細胞の検出 p16融合タンパク質がHIV感染された細胞の細胞質ゾルに残存し得るか否
かを見るために、実施例3において生成されたTAT−HIV1、2 p16融
合タンパク質を上記のように精製し、そしてFITCで標識した。次いで、約3
5〜45ナノモルの標識された融合タンパク質を、以下の実施例6に従ってHI
V(NLHX株)感染されたJurkat T細胞および未感染のJurkat
T細胞に添加した。次いで、形質導入されたJurkat T細胞をFACS
により分析した。HIV感染された/未感染の細胞の混合集団において全て(1
00%)の細胞が、FITC結合融合タンパク質の添加の1、2、4、8、およ
び16時間後にp16タンパク質で形質導入された。しかし、細胞を新鮮な培地
中で洗浄し、そして濃度勾配に起因してPTDが細胞の外に押し出された場合、
FACSにより分析されるようにFITCで標識されたp16の継続される存在
によって決定されるように、感染された細胞は切断された物質(p16タンパク
質)を保持したが、未感染の対照は形質導入されたタンパク質の全てを喪失した
(これは、形質導入を戻した)。
【0167】 実施例5−TAT−CPP32融合タンパク質の生成 ヒトCPP32 cDNA(Alnemriら、J.Biol.Chem.、269:30761(1994);
ジェンバンク・アクセス番号U13737)を、CPP32 p17およびp12ドメ
インを個々にPCRし(すなわち、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)工程を行い
)、次いでこれらのDNAフラグメントをともに添加し、そして外側のPCRプ
ライマーを使用してPCRすることにより作製した。プロトコルは図6において
概説される。これは、二重PCRクローニングアプローチと呼ばれ、および2つ
の独立したDNAフラグメントをともに連結するための一般的な方法論的アプロ
ーチであり、以下のようである: CPP32 cDNAのp17ドメインを、A(+鎖)およびB(−鎖)プラ
イマー(以下を参照のこと)を使用してPCRし、そしてp12ドメインをB(
+鎖)およびC(−鎖)プライマーを使用することによりPCRした。Aプライ
マーは、CPP32 p17ドメインコード配列とインフレームにp17−p1
HIV切断部位をコードし、そしてBプライマーは、p17−p24 HIV
切断部位をコードする。この第1のPCR後、2つの精製されたフラグメントを
ともに混合し、そしてA(+鎖)およびC(−鎖)プライマーのみを使用してP
CRした。p17のPCRされたドメインの3’末端は、p12のPCRされた
ドメインの5’末端の(−)鎖を含んだので2つのDNAフラグメント塩基対は
調和した。このPCR後、得られるDNAフラグメントを5’末端をXhoIで
、および3’末端をEcoRIで消化して、約900bpのフラグメントを得た
。このフラグメントをpTATおよびpTAT−HAプラスミドのXhoIおよ
びEcoRI部位にクローン化した。タンパク質、TAT−CPP32野生型を
、上述で概説されるようにBL2I(DE3)細胞中で生成した。 A(+鎖)プライマー、(90 mer): 5’ CGC CTC GAG GGC GGC TGC ACC GAA CGC CAG GCT AAC TTC CTG GGC AAA ATC
TGG CCA GGC GGA ATA TCC CTG GAC AAC AGT TAT AAA ATG 3’(配列番号20 ) B(+鎖)プライマー、(72 mer): 5’ GGC GGC TCC CAG GTG TCA CAG AAC TAT CCA ATC GTG CAG AAC CTG CAG GGG
GGT GTT GAT GAT GAC ATG GCG 3’(配列番号21) B(−鎖)プライマー、(75 mer): 5’ ACC GCC CTG CAG GTT CTG CAC GAT TGG ATA GTT CTG TGA CAC CTG GGA GCC
GCC TGT CTC AAT GCC ACA GTC CAG 3’(配列番号22) C(−鎖)プライマー、(37 mer): 5’ CGA GCT ACG CGA ATT CTT AGT GAT AAA AAT AGA GTT C 3’(配列番号2 3) 得られる構築物中の成分の順番(N’末端からC’末端)は:HIS−TAT
−PTD−HIV2−CPPのサブユニット−HIV1−CPP32の小サブユ
ニットであった。HIS−TAT−PTD−HIV2−CPP32 CDNAの
大サブユニット−HIV−CPP32 cDNAの小サブユニット融合タンパク
質をコードするベクターをぞれぞれ、DH5−α細菌中で増殖した。上述の実施
例2において記載されるように融合タンパク質を発現させ、そして精製した。H
IS−TAT−PTD−HIV2−CPP32の大サブユニット−HIV1−C
PP32の小サブユニットの融合タンパク質は、「TAT−CPP32」と呼ば
れる。
【0168】 実施例6−TAT−CPP32融合タンパク質での特異的な細胞殺傷 実施例5において生成されたTAT−CPP32融合タンパク質がHIVで感
染された細胞を殺傷し得ることを示すために、融合タンパク質を、実施例2にお
いて上記されるように精製し、そしてFITCで検出可能に標識した。標識され
たTAT−CPP32融合タンパク質を以下の方法によって試験した。 約5×106個のJurkat T細胞を、HIV(NLHX株:1ml当たり約1
×105〜1×106感染性ウイルス)により感染した。細胞をRPMI培地中で増殖
した。感染の約4〜7日間後、培地をプレートから除去し、そして約35〜45
ナノモルのTAT−CPP32融合タンパク質を細胞に添加した。細胞を融合タ
ンパク質とともに約30分間インキュベートして、細胞に形質導入させた。FA
CS分析を用いて、細胞の約100%が融合タンパク質によって形質導入された
ことが見出された。続いて、培地をプレートに戻し、そして形質導入の約18時
間後、従来のトリパンブルー排除および顕微鏡を使用して、細胞を細胞殺傷につ
いて試験した。 ほとんどすべての感染された細胞が、TAT−CPP32によって殺傷された
ことが見出された。この結果は、これがTAT−CPP32融合タンパク質がH
IVで感染された細胞を特異的に殺傷するが、集団中の未感染の細胞を殺傷しな
いことを示すので重要である。
【0169】 実施例7−TAT CPP32殺傷活性の阻害 1.HIVプロテアーゼインヒビターの投与 TAT−CPP32融合タンパク質がHIV−プロテアーゼの特異的な導入を
必要とする機構によりHIVで感染されたJurkat T細胞を殺傷したこと
を示すために、プロテアーゼインヒビターのリトナビル(Ritonavir)(Abbott )を、融合タンパク質の形質導入後、感染された細胞に添加した。簡潔には、細
胞を上述の実施例6において記載されるように感染および形質導入した。形質導
入後、約1μg/mlのリトナビルを細胞培地に添加し、そして約18時間細胞
とともにインキュベートした。次いで、細胞を従来のトリパンブルー排除および
顕微鏡によって細胞殺傷についてアッセイした。 リトナビルの投与は、感染された細胞を殺傷するTAT−CPP32の能力を
本質的にブロックしたことが見出された。従って、TAT−CPP32融合タン
パク質がHIVで感染された細胞を殺傷するには、活性なHIVプロテアーゼを
必要とする。
【0170】 2.CPP32融合タンパク質の変異(TAT−CPP32変異体C163M TAT−CPP細胞殺傷が、HIV特異的切断後のCPP32タンパク質の活
性化に起因したことを実証するために、CPP32を163残基で触媒性システ
インをメチオニンに変異することによって不活化した。簡潔には、実施例5にお
いて作製されたTAT−CPP32分子を、部位特異的変異誘発により活性部位
における触媒的に活性なCys残基(163番目)をMetに変化するように、
変異誘発した。以下の2本鎖オリゴマーヌクレオチドをStuI部位(インサー
トの5’末端にてp17ドメインにおいて)およびPstI部位(TAT−CP
P32中のp17ドメインとp12ドメインとの間のp17−p24 HIV切
断部位中に存在する)に挿入した。2本鎖オリゴマーは、StuI 5’末端で
平滑末端を有し、そしてPstI 3’末端で3’オーバーハングを有する。 ポジティブ鎖オリゴ(85 mer): 5’ CCA TGC GTG CTA CCG AAC TGG ACT GTG GCA TTG AGA CAG GCG GCT CCC AGG
TGT CAC AGA ACT ATC CAA TCG TGC AGA ACC TGC A 3’ (配列番号24)(太字はCysからMetへのコドンの変化を示す)。
【0171】 融合タンパク質は、CPP32融合タンパク質の163位で変異された触媒性
Cys残基を示すために、「TAT−CPP32mut」または「TAT−CP
P32変異体」と呼ばれた。 TAT−CPP32変異体融合タンパク質を、実施例6において上記されるよ
うに精製し、そしてHIVで感染されたJurkat T細胞に形質導入した。
この融合タンパク質は、HIVで感染された細胞を殺傷し得ないことが見出され
た。対照的に、実施例6の結果は、TAT−CPP32融合タンパク質(野生型
の触媒性Cys残基を有する)がHIVで感染されたJurkat細胞を特異的
に殺傷したことを示す。 カスパーゼおよび特にCPP32の活性化がアポトーシスを誘発することが認
識され、当該分野において「帰らざる点(point~of~no~return)」として知られ
る。結果はこの認識と一致する。結果は、TAT−CPP32融合タンパク質が
、HIVで感染された細胞をおそらくアポトーシスを受けることによって特異的
に殺傷することを示す。特に、放出されるCPP32分子は、PARPのような
特異的な基質を切断することによりまたはその切断により内因性カスパーゼを活
性化することによって、感染された細胞においてのみアポトーシスを開始すると
考えられる。
【0172】 HIV複製は、その感染性の生活環の部分として成熟のために、gagおよびg ag−polのようなウイルスポリタンパク質を切断およびプロセスするのにH
IVプロテアーゼの存在および特異的な活性を一般に必要とすることが、当該分
野において認識される。HIV複製を受けるHIVで感染された細胞への抗HI
V殺傷分子の形質導入は、本発明の任意の抗HIV殺傷分子における操作された
HIV切断部位の特異的な認識を生じ、これを不活性なタンパク質から活性な殺
傷分子へ変換するが、未感染の細胞へ形質導入はこれを生じない。しかし、未感
染の細胞は、HIV特異的プロテアーゼを含まず、それゆえ、未感染の細胞中に
存在するがこれは不活性な形態のままである。 任意の特定の理論に束縛されることを望まないが、TAT−CPP32分子の
ような抗HIV融合タンパク質にり形質導入された細胞はアポトーシスを受け、
それによって新規にパッケージングされたウイルス粒子のウイルス群発を減少す
る。さらに、いくつかのタンパク質はビリオンの内側にパッケージングされ、プ
ロテアーゼおよびRTを含むので、任意の逃避するパッケージングされたウイル
ス粒子は、1)新規な細胞の感染の前に粒子を殺傷し得るか、または2)新規に
感染された細胞中でアポトーシスを開始し得る(もしそうであれば、任意のウイ
ルス粒子の複製の前に生じるべきである)活性なHIV殺傷分子を含み得る。
【0173】 実施例8−TAT−TK融合タンパク質の生成およびこの融合タンパク質での
特異的な細胞殺傷 図4は、TKを含有する融合タンパク質を細胞に形質導入し、次いで形質導入
された細胞とプロドラッグ(アシクロビル(Glaxo Wellcome))とを接触するこ
とによって、HIVで感染されたJurkat T細胞を殺傷するための方法を
概説する。融合タンパク質から放出されるTKはアシクロビルを活性な殺傷分子
に変換し、それによって感染された細胞を殺傷する。しかし、未感染(対照)の
細胞は、TK融合タンパク質の形質導入およびアシクロビルの導入により傷つけ
られない。 TAT−TK融合タンパク質は、以下の方法によって作製された。HSV−1
TK配列を、ジェンバンク(アクセス番号J02224)から得た。TKのN’およ
びC’に対応するPCRプライマーを作製した。PCR後、DNAフラグメント
をNcoIおよびEcoRIで切断し、そしてpTAT−(HIV p17−p
24切断部位)またはpTAT−(HIV p7−p1切断部位)のNcoIお
よびEcoRI部位に挿入した。 TK正方向PCRプライマー(34 mer): 5’ CGG GCC GGC CCC ATG GCT TCG TAC CCC TGC CAT C 3’(配列番号25) TK逆方向プライマー(39 mer): 5’ GGC GGG CCG GGA ATT CTC AGT TAG CCT CCC CCA TCT CCC 3’(配列番号 26)
【0174】 融合タンパク質を、実施例2において上述で考察されるようにそれぞれ精製し
、そして誤って折畳んだ。 約5×10 Jurkat T細胞を、実施例6において上記されるように
HIV(NLHX株)によって感染した。感染の約4〜7日後、培地をプレートから
除去し、そして約35〜45ナノモルのTAT−TK融合タンパク質(p17−
p24またはp7−p1切断部位)を細胞に添加した。細胞を融合タンパク質と
ともに約30分間インキュベートして、細胞に形質導入させた。FACS分析を
用いて、細胞の約100%が融合タンパク質によって形質導入されたことが見出
された。 形質導入された細胞を約18時間インキュベートさせてTAT−TK融合タン
パク質から切断されたTKを確立させた。この期間の後、細胞を培地中で洗浄し
、そしてさらに4時間インキュベートさせた。この時点で、約1〜100ナノモ
ルのアシクロビルをプレートに添加した。約3日後、感染された細胞および非感
染細胞を、従来のトリパンブルー排除および顕微鏡により細胞殺傷について試験
した。感染された細胞の総数の約100%が、TAT−TK融合タンパク質およ
びアシクロビルの投与によって殺傷されたことが見出された。 結果は、TK酵素が感染された細胞中に特異的に濃縮されたことを示した。し
かし、未感染の細胞において、TK酵素は濃縮されず;TAT−TK融合タンパ
ク質は、洗浄後これらの細胞の外に形質導入が戻ることが見出された。従って、
HSV TKは、これが保持される細胞、感染された細胞においてのみ、プロド
ラッグを活性な殺傷薬物にプロセスし、ヒト/哺乳動物 TKがプロドラッグを
プロセスし得ないことに起因して正常な細胞においてプロセスしないことが考え
られる。従って、結果はTAT−TK融合タンパク質が有効な抗HIV殺傷分子
であることを実証する。
【0175】 TKに加えて、HSVシトシンデアミナーゼcDNAはTK遺伝子について容
易に置換され得、当該分野において公知のあるヌクレオチドアナログと組み合わ
せて、HSVで感染された細胞の特異的な殺傷または傷害を提供する。 詳細に記載されるTAT−TKおよびTAT−CPP融合タンパク質は、注射
可能な形態として、または好ましくは融合タンパク質が血流中に形質導入される
肺に融合タンパク質を送達するための吸入デバイスを介してのいずれかでHIV
で感染された患者に投与され得る。融合タンパク質は、全ての接触された細胞(
気道および肺組識、血球など)に形質導入され、血流中のある免疫細胞のような
HIVで典型的に感染される細胞を含む。 実験的および理論的モデリングに基づいて、インビボでのHIVで感染された
T細胞の平均半減期は約1.6日であることが報告されている。それゆえ、HI
Vで感染された細胞についての好ましい処置プロトコルは、注射、およびより好
ましくはいくつかの7日間周期の吸入による。方法の有効性は、血液のような生
物学的液体中のHIVウイルス粒子を検出するための周知の操作(例えば、PC
R)を行うことによってモニターされ得る。このプロセスは、患者のウイルス負
荷を見積もるとして時折知られる。操作は、単独でまたは以前に記載されるよう
な抗HIV薬物と組み合わせてのいずれかでの融合タンパク質の正確な投薬量を
決定することを補助し得る。
【0176】 実施例9−TAT−HIVプロテアーゼでの未感染のJurkat T細胞の
形質導入 HIV感染は、インビトロでモニターすることが困難であり得ること、および
感染される細胞のパーセントに関してしばしば変化し得ることが認識される。さ
らに、病原体によって感染され得る全ての細胞が、HIVウイルスによって感染
されるわけではない。これらの問題を克服するために、およびTAT−CPP3
2融合タンパク質により誘導される殺傷をさらに理解することを補助するために
、同時形質導入実験を、TATに融合されたHIVプロテアーゼを用いて行った
。目的は、2つの融合タンパク質で未感染のJurkat T細胞を同時形質導
入することであり、第1の融合タンパク質は、細胞殺傷分子を含み(TAT−C
PP32)、および第2の融合タンパク質は、第1の融合タンパク質を切断する
ためのHIVプロテアーゼを含む(TAT−プロテアーゼ)。 簡潔には、形質導入可能なHIVプロテアーゼを、pTAT−(p7−p1切
断部位)ベクターにHIV NLHX株由来のプロテアーゼをPCRクローニン
グすることによって構築した。PCRプライマーを、プロテアーゼの開始ATG
(メチオニン)および翻訳終結部位に対応して合成した。DNAフラグメントを
、NcoI 5’/N’末端およびEcoRI部位 3’/C’末端にて、pT
AT−(p7−p1切断部位)ベクターに挿入した。タンパク質を、BL21(
DE3)細胞中でプラスミド、pTAT−(p7−p1)−プロテアーゼから発
現し、そして上記のように精製した。融合タンパク質は、「TAT−プロテアー
ゼ」と呼ばれる。
【0177】 TAT−プロテアーゼによるTAT−CPP32の活性化を試験するために、
2×10 Jurkat T細胞を2mlの培養(RPMI培地)中に置いた
。これらの細胞に対して、対照および実験的な形質導入可能なタンパク質の種々
の組み合わせを、50〜100nMの範囲に以下のように添加した: 1. 対照 2. TAT−プロテアーゼ(50〜100nM) 3. TAT−CPP32野生型(50〜100nM) 4. TAT−CPP32変異体(50〜100nM) 5. TAT−CPP32野生型+TAT−プロテアーゼ 6. TAT−CPP32変異体+TAT−プロテアーゼ 7. Ritonavir(HIVプロテアーゼインヒビター) 8. TAT−CPP32野生型+Ritnovir 9. TAT−CPP32変異体+Ritnovir 細胞を、トリパンブルー排除色素顕微鏡により添加の18時間後での生存につ
いてアッセイした。TAT−プロテアーゼ、TAT−CPP32野生型および変
異体タンパク質は、単独で添加される場合最小の細胞傷害を示した。図7および
図8を参照のこと。しかし、TAT−CPP32野生型+TAT−プロテアーゼ
の添加は、生存細胞の実質的な喪失、従ってTAT−CPP32野生型タンパク
質の活性化を生じたが、変異体+TAT−プロテアーゼの添加では生じなかった
。この実験へのプロテアーゼインヒビターの添加は、特異的なTAT−CPP3
2野生型殺傷の喪失を生じた。従って、TAT−CPP32の活性化は、HIV
プロテアーゼの存在を必要とする。総合すれば、これらの観察は、HIVプロテ
アーゼを発現する細胞においてのみTAT−CPP32タンパク質の活性化の特
異性を実証する。 同時形質導入法は、HIVウイルスによって通常感染されない細胞を殺傷また
は傷害するために一般に適用可能であると考えられる。このような細胞の例とし
ては、CD4−(マイナス)免疫細胞および非免疫細胞(例えば、線維芽細胞)
が挙げられる。従って、この方法は、本明細書中に記載される他の形質導入融合
タンパク質(例えば、プロドラッグの投与を必要とする本明細書中に記載される
TAT融合タンパク質(例えば、TAT−TKおよびアシクロビル))を含むよ
うに容易に適応されることが理解される。
【0178】 実施例10−増強された形質導入効率を伴う合成形質導入ドメイン 以下の人工的な(すなわち、合成の)ペプチドを、上記のように従来のペプチ
ド合成によって作製した。この実験の目的は、形質導入された細胞中の細胞内濃
度により判断されるように、より効率的に形質導入し得る形質導入ドメインを生
成することである。形質導入ドメインを、適切な対照に対して試験し、これは典
型的に「天然の」TATまたはAntp形質導入ドメインであった。簡潔には、
FITC基は、各ペプチドの100%のN末端に合成的に付加され、それによっ
て形質導入速度および各ペプチドの細胞内濃度は、平衡状態で定量され得た。T
AT形質導入ドメインは、α−螺旋であるとして認識される。各合成ペプチド配
列において、α−螺旋は、1つの表面上に種々の量のArgを伴って構築される
。すなわち、表面上に種々の量のArg残基を含み、およびAla残基で置換し
た一連の合成ペプチドが設計された。AlaおよびArg残基の両方は、α−螺
旋構造を維持するための最も高い可能性/エネルギー論を有する。図9及び図1
0を参照のこと、これは螺旋車輪投影図として各ペプチドを描く。ペプチドは表
2において以下に示される。
【0179】
【表2】
【0180】 合成ペプチドを、実施例4において上述される道筋に沿って、Jurkat
T細胞に形質導入した。表2において見られ得るように、合成ペプチドの全てが
、細胞に形質導入された。データは、最も好ましい速度および細胞内ペプチド濃
度を有する合成ペプチドは、置換されたAla残基に起因してα螺旋構造を有す
る最も高い可能性を有したことを示す(天然に存在するTATに比較して)。さ
らに、最も良好な合成ペプチドは、螺旋車輪図によって示唆されるように、螺旋
の単一の表面上に配列されるArg残基を有した。図9及び図10を参照のこと
。特に、配列番号3〜8によって示される改変された合成ぺプチドは、天然に存
在するTAT(配列番号1)に比較した場合細胞内濃度の約5〜10倍の増加を
示した。 データは、TATと比較して増強された形質導入効率を有する合成ペプチドを
設計することが可能であることを示す。例えば、データは、ペプチド中のα螺旋
ヘリックス形成の可能性を増加することによって、および単一のペプチド螺旋面
上に少なくとも2つのArg残基を配列することによって、天然に存在するTA
Tの形質導入効率を増加することが可能であることを示す。表2において示され
る合成ペプチド配列は、合成ペプチド配列に融合された多様なアミノ酸配列(例
えば、2、5、10、20、50、および100アミノ酸の付加)の形質導入効
率を増加するために使用され得る。合成ペプチド配列はまた、約10、15、2
0、30、50、または約100、約500kD以上のタンパク質配列に融合さ
れ得る。得られる融合タンパク質は、上記のように形質導入効率の増加について
試験され得る。
【0181】 天然に存在するAntpペプチド(配列番号10)は、典型的にTATペプチ
ドよりも遅い形質導入速度を示す。従って、上記の天然に存在するTATおよび
合成ペプチドはしばしば、アミノ酸配列および特に大きなタンパク質を細胞に形
質導入するために好ましい。 表2は、細胞膜を介する細胞への増強された形質導入により迅速な輸送を生じ
る合成ペプチド配列を示す。データは、1)強力なα螺旋性質および2)Arg
によって覆われる少なくとも1つの面/表面を有するそれらのペプチドが、最も
良好な形質導入ドメインであることを示す。図7は残基の置換を示す螺旋車輪プ
ロットを示す。全ての合成ペプチドは、TAT(47〜57)の形質導入速度に
近い形質導入速度を有するが、いくつかは細胞内濃度の増加を生じる。特定のペ
プチド配列は、Argのような塩基残基を含有する螺旋の面を少なくとも有する
【0182】 実施例11−改変されたTAT−Bidタンパク質の形質導入によりHIV/
病原体感染された細胞を殺傷する プロアポトーシスタンパク質Bidは、20kDaのタンパク質であり、アポ
トーシス調節タンパク質のBcl2/Baxファミリーに関連する。Bidは、
細胞質中のチモーゲン前駆形態に存在する。Fasのようなレセプターを介する
シグナル伝達によってアポトーシスを受ける細胞の活性化は、2つの別々のプロ
アポトーシスカスケード/経路を生じる。さらに、Caspase−8活性化は
、Asp59残基(マウスにおいてアスパラギン残基59およびヒトにおいてA
sp60)で細胞質ゾルp20Bidの直接的な切断を生じる。これは、Bid
の5kDaの「プロ」ドメインの喪失を生じ、そしてミトコンドリアへのpl5
Bidの迅速な移行を生じ、チトクロームcの放出およびミトコンドリアの減
弱、続いて死を生じる。従って、Bidは、不活性な前駆形態/チモーゲンとし
て存在し、これはタンパク質分解性の切断によって特異的に活性化され得、DN
A分解経路を介するCaspase−3(CPP32)とは異なる経路を介して
アポトーシス誘導を生じる。
【0183】 形質導入可能なTAT−Bidタンパク質は、N’末端にTATを添加し、B
idの内因性Caspase切断部位を除去し、そしてこれをHIV切断部位で
置換えることによって作製され得る(TAT−p5 Bid−HIV切断−pl
5 Bid)。目的は、HIVで感染された細胞またはHIVプロテアーゼを発
現する細胞を殺傷するにおける融合タンパク質の有効性を試験することであった
。 TAT−HIV切断−pl5 Bidタンパク質はまた、2つの形質導入可能
なBidタンパク質間の比較を提供するために作製され得る。クローニングスト
ラテジーは、以下に概説され、そしてTAT−CPP32タンパク質でのように
、任意の病原体プロテアーゼ切断部位がこの殺傷タンパク質にクローン化され得
た。HIV切断部位は、モデル系のようにこの実施例において使用される。さら
に、TAT−Bidによる殺傷は、いくつかの細胞型/疾患においてTAT−C
PP32よりも有効であり得るか、またはおそらくTAT−CPP32に補足的
であり、両方の殺傷タンパク質の同時形質導入は、感染された細胞のさらなる殺
傷に対する相乗効果を、潜在的により低い濃度レベルで生じ得る。
【0184】 1.クローニングストラテジー −マウスBidを、以下のDNAプライマーを利用することによってPCR増
幅し、二重PCRを行うことにより最終産物がNcoI(DNA切断部位)−p
S Bidドメイン−HIVタンパク質分解部位(コードされたタンパク質にお
ける)−p15 Bidドメインを生じる。TAT−HIV切断−plS Bi
dもまた記載され、構築中である。 先ず、p5ドメインをプライマーIFおよび2RでPCR増幅し、そして別個
のPCR反応においてpISドメインを、プライマー2Fおよび4RでPCRす
る。これらのDNAフラグメントを精製し、ともに混合し、そしてそれぞれのD
NAフラグメントの3’および5’末端に存在する2Fおよび2Rに存在する共
通の領域を介してハイブリダイズする。このDNAフラグメントの末端を伸長し
、そして最終のPCR反応を完全長DNAフラグメントを選択するプライマーI
Fおよび4Rのみを使用して行う。これは一般的なクローニング技術である。次
いで、5’末端にてNcoIでのおよび3’末端にてEcoRIでの切断により
、完全長のフラグメントをpTAT−HAにクローン化/連結する。得られるプ
ラスミドpTAT−Bidを、DH5α E.coli株に、次いでB121(
DE3)pLysS E.coli株に形質転換し、そしてタンパク質をTAT
−CPP32タンパク質について概説されたように精製した。得られるタンパク
質は、TAT−p5とp15ドメインとの間にHIVプロテアーゼ切断部位を接
触し、およびTAT−p5−HIV−p15 Bidと命名される。 TAT−HV−p15 Bidは、単回のPCR反応が必要とされる以外は上
述に類似して構築され得る。プライマー3Fは、NcoI DNA切断部位、続
いてHIVタンパク質分解性切断部位、およびp15 Bidドメインの5’末
端に相同なDNA配列を含む。プライマー3Fおよびプライマー4RとのPCR
反応から作製されるDNAフラグメントを、上述で概説されるように、NcoI
およびEcoRIで消化し、そしてpTAT−HAのNcoIおよびEcoRI
部位にクローン化する。
【0185】 2.プライマー: プライマーIF(87 mer):CgC gCC ATg ggC ggC TCC CAg gTg TCA CA
g AAC TAT CCA ATC gTg CAg AAC CTg CAg ggC ggC gAC TCT gAg gTC AgC AAC gg
T TCC(配列番号27) プライマー2F(52 mer):TTC CTg ggC AAA ATC Tgg CCA ggC ggC Ag
C CAg gCC AgC CgC TCC TTC AAC C(配列番号28) プライマー2R(46 mer):gTT AgC CTg gCg TTC ggT gCA gCC TgT CT
g CAg CTC gTC TTC gAg g(配列番号29) プライマー3F(88 mer):CgC gCC ATg ggC ggC TgC ACC gAA CgC C
Ag gCT AAC TTC CTg ggC AAA ATC Tgg CCA ggC ggC AgC CAg gCC AgC CgC TCC T
TC AAC C(配列番号30) プライマー4R(71 mer):CgC gAA TTC TCA gTC AgC ATA gTC Tgg gA
g gTC ATA Tgg ATA gCC gTC CAT CTC gTT TCT AAC CAA gTT CC(配列番号31) TAT−p5−HIV−p15およびTAT−HIV−p15をクローン化す
る上記のストラテジーは、図11A〜Cにおいて図示される。
【0186】 実施例12−HIVプロテアーゼ活性化Caspase−3タンパク質の形質
導入によるHIVで感染された細胞の殺傷 HIVプロテアーゼ活性化Caspase−3タンパク質を、HIVウイルス
によって感染された細胞を特異的に殺傷するために作製した。融合タンパク質を
以下のように作製した: 先ず、改変されたCasp3タンパク質を、Casp3における2つの内因性
カスパーゼ切断部位(Asp−Ser)からの2残基の欠失およびHIV p1
7−p24gag切断部位(「A」部位)およびp7−p1切断部位(「D」部
位)20を含む14残基の挿入によって作製した(図1A)。細胞に改変された
Casp3を導入するために、完全長のタンパク質を細胞に形質導入する以前に
記載された方法を使用した。Barrie,K.A.ら、HIV−1プロテアーゼ、gag p17およびp6、およびgag/polポリタンパク質内のプロテアーゼ切
断部位における天然の変異:ヒト免疫不全ウイルスI型によって感染される母親
および子供におけるプロテアーゼインヒビターの不在下でのアミノ酸の置換、Vi
rology 219:407(1996);Ezhevsky, S.A.ら、サイクリンD:Cdk4/6複合体
による網膜芽腫タンパク質の低リン酸化は活性なpRbを生じる、Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 94:10699(1997);Lissy,N.A.ら、TCR抗原誘導性の細胞死(
AID)はG1後期細胞周期チェックポイントから生じる、Immunity 8:57(199
8);Nagahara,H.ら、哺乳動物細胞への直接的な完全長TAT融合タンパク質の高
効率の形質導入:p27kip1は細胞移入を媒介する、Nature Med.(印刷中 )(1998);Vocero~Akbani,Aら、哺乳動物細胞への直接的な完全長TAT癒合
タンパク質の形質導入:TCR活性化誘導性の細胞死(AID)の分析、Method
in Enzymology(Reed,J.C.編)(Academic Press,San Diego)(印刷中)(1
998)を参照のこと。
【0187】 簡潔には、細菌により生成され、誤って折畳まれた、HIV TAT由来のイ
ンフレームのN’末端タンパク質形質導入ドメインを含有する融合タンパク質は
、約100%の全ての標的細胞型(抹消血リンパ球(PBL)、全血中に存在す
る全ての細胞、二倍体線維芽細胞、線維肉腫細胞、肝細胞ガン腫細胞、および白
血病T細胞を含む)に迅速におよび濃度依存性の様式で形質導入し得る。Ezhevs
ky, S.A.ら、Lissy,N.A.ら、Nagahara,Hら、およびVocero~Akbaniら(前出) を参照のこと。改変されたCasp3のProドメインを除去し、そしてTAT
形質導入ドメインで置換してTAT−Casp3WT融合タンパク質を得た(図
12)。さらに、触媒的に不活性なTAT−Casp3変異体タンパク質をCa
sp3活性部位のCys’63残基をMet残基で置換することによって作製し
た(TAT−Casp3MUT)。 細胞に形質導入するTAT−Casp3の能力を試験するために、TAT−C
asp3タンパク質をフルオレセイン(FITC)に結合し、次いでJurka
t T細胞の培地に直接的に添加し、そしてフローサイトメトリー(FACS)
によって分析した(図13A及びB)。TAT−Casp3 WTおよびTAT
−Casp3MUTタンパク質は、約100%の細胞に迅速に形質導入し、20
分間未満で最大細胞内濃度を達成した。さらに、FITC標識化タンパク質の添
加の前および後の狭いピーク幅に基づいて、集団内の個々の細胞は、TAT−C
asp3−FITCタンパク質の理想的に近い細胞内濃度を含む。共焦点顕微鏡
分析は、細胞質区画および核区画の両方においてTAT−Casp3FITCタ
ンパク質の存在を示し、細胞膜にはほとんど付着されなかった。3、6、および
12nM TAT−Casp3WT−FITCタンパク質の添加の1時間後の平
衡状態での形質導入された細胞のFACS分析は、タンパク質形質導入について
濃度依存性を実証した(図13D)。従って、TAT−Casp3タンパク質は
、迅速なおよび濃度依存性の様式で100%の全ての細胞に容易に形質導入する
。 形質導入された異種基質のHIVプロテアーゼ切断の概念を試験するために、
モデル基質を以前に特徴付けられたTAT−p16融合タンパク質にHIVタンパ ク質分解性切断部位を挿入することによって作製した。Ezhevsky, S.A.ら、Liss
y,N.A.ら、およびVocero~Akbaniら(前出)を参照のこと。HIV A切断部位
をTATドメインとp16ドメインとの間に挿入し、TAT−A−p16融合タ
ンパク質を得た(図12)。さらに、形質導入可能なHIVプロテアーゼ(TA
T−HIV Pr)を作製した。図12を参照のこと。FITC−標識化TAT
−A−p16、TAT−16タンパク質(Ezhevsky, S.A.ら、Vocero~Akbaniら (前出)を参照のこと)およびTAT−HIV Prタンパク質(図13C)は
、100%の細胞に迅速に形質導入したことが見出された。
【0188】 図12A及び図13において示されるTAT融合タンパク質の作製および形質
導入は、以下により詳細に説明される:図12、HIV切断部位配列およびTA
T融合タンパク質のドメインを描く図面。図13A〜C、0、20、および30
分で細胞に添加されたフルオレセイン(FITC)標識化TAT−Casp3W
T、TAT−Casp3MUT、およびTAT−HIV Prタンパク質のFA
CS動力学分析。図13D、添加の1時間後での、細胞に添加された3、6、お
よび12nM TAT−Casp3WT−FITCタンパク質のFACS用量分
析。対照対形質導入細胞のFACSピーク幅により測定されるように、約100
%の細胞への全てのFITCで標識されたタンパク質の迅速な、濃度依存性の形
質導入、および集団内の理想に近い細胞内濃度に注目のこと。 インビボ切断についてアッセイするために、p16(−)Jurkat T細
胞を100mM TAT−Ap16または対照TAT−p16タンパク質(HI
V切断部位なし)で、単独でまたは50nM TATHIV Pr融合タンパク
質と組み合わせて5時間形質導入し、そしてHIV Aタンパク質分解性切断部
位でのインビボ切断について抗p16イムノブロットにより分析した(図14A
)。TAT−A−p16タンパク質基質とTAT−HIV Prとの同時形質導
入は、特異的な基質切断を生じたが、対照TAT−p16タンパク質(HIV切
断部位なし)は切断されなかった。切断されたTAT−A−p16タンパク質の
サイズ分析は、p16のN’末端に存在する残りのHIVの半分の部位の保持と
一致した(図14A、レーン4対5を参照のこと)。このアッセイにおいて、H
IV A部位がTAT−Dp16タンパク質を含有するD部位よりも優先的に切
断されたことがまた注目された。
【0189】 さらに、TAT−Casp3MUTタンパク質を、TAT−HIV Prタン
パク質と組み合わせて細胞に形質導入した(図14B)。TAT−Casp3と
TAT−HIV Prとの同時形質導入は、HIVプロテアーゼ依存性の様式に
おいて、p17とp12ドメインとの間のHIV「A」部位にてTAT−Cas
p3の特異的な切断の検出を生じ、TAT−D部位 p17−Aの半分の部位の
タンパク質を生じた。これらの観察は、異種HIV切断部位を含有する形質導入
されたTAT−Ap16およびTAT−Casp3タンパク質が、インビボでT
AT−HIVプロテアーゼにより基質として認識され得ることを実証する。 図14Aおよび図14Bにおいて示される同時形質導入された細胞におけるイ
ンビボプロセシングは、以下により詳細に説明される。図14A、p16(−)
Jurkat T細胞の培養物を、TATHIV Prタンパク質を組み合わせ
てTAT−p16またはTAT−A−p16で5時間形質導入し、抗p16イム
ノブロット分析に供した。TAT−p16タンパク質とTAT−HIV Prタ
ンパク質との同時投与は、HIV A部位での特異的な切断を生じた。野生型内
因性p16;A−p16を含有するWCE、HepG2全細胞溶解物は、TAT
−A−16産物を切断し、p16においてHIVの半分の部位を保持した。図1
4Bに示されるように、Jurkat T細胞の培養物を、TATCasp3M
UTタンパク質(TAT−「D」部位−p17ドメイン−「A」部位−p12ド
メイン)単独でまたはTAT−HIV Pr(Pr)タンパク質と組み合わせて
形質導入し、そしてp17ドメインに特異的な抗Caspase−3抗体でイム
ノブロットした。TAT−D−p17−Aは、N’末端のHIV Aの半分の部
位を含有するTAT−Casp3の産物を切断した。
【0190】 さらに、TAT−HIV Prタンパク質で同時形質導入された細胞中でアポ
トーシスを誘導するTAT−Casp3タンパク質の能力を試験した。Jurk
at T細胞を100nM TAT−Casp3WTまたはTATCasp3M
UTタンパク質単独でまたは50nM TAT−HIV Prタンパク質と組み
合わせて処理し、そして処理の16時間後の細胞生存度についてアッセイした(
図15A)。細胞へのTAT−Casp3WTタンパク質単独の形質導入は、小
レベルの細胞傷害を実証した。しかし、細胞へのTAT−Casp3WTとTA
T HIV Prタンパク質との同時形質導入は、顕著な細胞傷害を生じた。細
胞へのTAT−Casp3MUTとTAT−HIV Prタンパク質との同時投
与は、かろうじて細胞傷害を示し、細胞に対するTAT−HIVプロテアーゼ細
胞傷害の効果の不在をまた実証した。TAT−Casp3タンパク質を活性化す
るためのHIVプロテアーゼの必要性をさらに実証するために、細胞を先ずHI
VプロテアーゼインヒビターのRitonavir(1μg/ml)で予め処理
し、次いでTAT−HIV Prタンパク質と組み合わせてTAT−Casp3
WTまたはTAT−CaspMUTで同時形質導入した(図15A)。Rito
navirでの細胞の予めの処理は、TAT−HIV Prタンパク質と同時形
質導入される場合、TAT−Casp3WTタンパク質の細胞傷害効果からの防
御を生じた。TAT−Casp3−依存性細胞死の動力学的分析は、形質導入の
4時間後に検出される細胞死との線形の殺傷曲線を実証した(図15B)。これ
らの結果は、細胞傷害が触媒的に活性なTAT−Casp3WTタンパク質の存
在下でのみ生じること、およびTAT−Casp3WTの活性化が活性なHIV
プロテアーゼを必要とすることを実証し、TAT−Casp3のHIVプロテア
ーゼ切断と一致する(図14B)。Salvensen,G.S.ら、Henkart,P.A.、Cohen ,G.M.、Woo,M.ら、Enari,M.ら、Liu,X.ら(前出)を参照のこと。
【0191】 図15Aおよび図15Bにおいて示される同時形質導入された細胞におけるT
AT−Casp3の活性化およびアポトーシスの誘導は、以下により詳細に説明
される。Jurkat T細胞の図15Aの培養物を、TAT−Casp3WT
(WT)、TAT−Casp3MUT(MUT)、およびTAT−HIVプロテ
アーゼ(Pr)タンパク質の組み合わせで16時間形質導入し、そして細胞生存
度について分析した。TAT−HIV Prタンパク質とTAT−Casp3W
Tとの同時形質導入は、特異的な細胞傷害を生じたが、TAT−Casp3MU
TとTAT−HIV Prとの形質導入は生じなかった。HIVプロテアーゼイ
ンヒビターのRitonavir(Rit)の包含は、TAT−Casp3WT
タンパク質の活性化をブロック死、そして細胞傷害効果から細胞を防御した。図
15BのJurkat T細胞の培養物を、TAT−HIV Pr(Pr)タン
パク質と組み合わせてTAT−Casp3WT(WT)、TAT−Casp3M
UT(MUT)タンパク質で同時形質導入し、そして示されるように細胞の生存
度の動力学について分析した。 さらに、形質導入された培養物をTUNELアッセイによって分解されたゲノ
ムDNAについて試験した。Coates,P.J.、組識におけるアポトーシスの同定の
ための分子方法、J. Histotechnology 17:261(1994)。細胞への100nM TAT−Casp3WT、100nM TAT−Casp3MUT、または50
nM TAT−HIV Prタンパク質単独の形質導入は、TUNELポジティ
ブ細胞のバックグラウンドレベルのみを示した(図16A)。しかし、TAT−
Casp3WTとTAT−HIV Prタンパク質との同時形質導入は、TUN
ELポジティブ細胞の顕著な増加を生じた。TAT−Casp3MUTとTAT
−HIV Prタンパク質との同時形質導入は、バックグラウンドのTUNEL
ポジティブ細胞のみを示した(図16A)。TAT−Casp3の活性化をまた
、人工的なCaspase−3基質を切断するその能力によりアッセイした。J
urkat T細胞を、100nM TAT−Casp3WTまたはTAT−C
asp3MUTタンパク質単独で、または50nM TAT−HIV Prタン
パク質と組み合わせて6時間処理し、次いで蛍光AFCの放出によってDEVD
−AFCの切断についてアッセイした(図16B)。Xiang,J.ら、Bax誘導 性の細胞死はインターロイキン1B転換酵素様プロテアーゼしないかもしれない
、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:14550(1996)。上述からのTUNELの結 果と一致して、細胞へのTAT−Casp3WTとTAT−HIV Prタンパ
ク質との同時形質導入は、カスパーゼ活性の顕著な増加を生じ、これはαFAS
処理よりも大きかった。
【0192】 図16A〜Bにおいて示されるようにHIVプロテアーゼが、TAT−Cas
p3WTタンパク質を活性化することが以下により詳細に説明される。図16A
、Jurkat T細胞の培養物を、TAT−Casp3WT(WT)およびT
AT−HIV Pr(Pr)タンパク質で同時形質導入して、特異的なTUNE
Lポジティブ細胞、アポトーシスの末端マーカーを得た。しかし、TAT−HI
V Prタンパク質と組み合わせたTAT−Casp3MUT(MUT)の形質
導入およびTAT−Casp3WT、TAT−Casp3MUT、またはTUT
−HIV Prタンパク質の単一の形質導入は、TUNELポジティブ細胞のバ
ックグラウンドレベルのままであった。横座標:高倍率の顕微鏡場当たりのTU
NELポジティブ細胞;Ctrl、培養物へのPBSのコントロール添加;エラ
ーバーはSDを示す。図16B、上述のようなTAT−HIVプロテアーゼと組
み合わせたTAT−Casp3WTの形質導入は、DEVDAFC切断および酵
素活性として報告されるAFC蛍光により測定されるようにCaspase−3
活性の特異的な活性化を生じる。Ctrl、コントロールPBS添加;αFAS
架橋、ポジティブコントロール。
【0193】 TAT−Casp3WT、TAT−Casp3MUT、またはTAT−HIV
Pr単独の形質導入は、バックグラウンドレベルのカスパーゼ活性のみを示し
た。さらに、2N DNA含量未満を含有する細胞の出現が、TAT−Casp
3およびTAT−HIV Prの同時形質導入細胞において検出され、Casp
ase−3の伝統的な特徴は、壊死とは対照的にアポトーシスを誘導した。Wo
o, M.ら(前出)を参照のこと。これらの観察は、形質導入されたTAT−
Casp3WTタンパク質は、HIVプロテアーゼを欠損する細胞中で不活性な
ままであるが、アポトーシスの特徴および最終的に死を導く活性なHIVプロテ
アーゼを保有する細胞中で特異的に活性化されるようになることを実証する。
【0194】 HIVについての一般的な動物モデルの不在に起因して、TATCasp3W
Tタンパク質が培養において生きたHIVで感染された細胞を殺傷し得るか否か
を決定することは興味深かった。 この決定を行うために、Jurkat T細胞をHIV−1のNLHX株で7
〜14日間感染し、そしてHIV細胞変性効果について顕微鏡で実験した。Westerv
elt,P.らHIV−1表面エンベロープ糖タンパク質内の決定基の同定は培養さ れた一次単球の生産的な感染に重要である、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:30
97(1991)。各形質導入実験の開始時に、約50%の培養物がHIVポジティブ
であった。HIVで感染された培養物を、100nM TAT−Casp3WT
またはTATCasp3MUTタンパク質で16時間形質導入し、次いで細胞生
存度についてアッセイした(図17)。TAT−Casp3WTタンパク質での
HIVで感染された細胞の処理は、培養物からのHIVポジティブ細胞の劇的な
喪失を生じた。さらに、本発明者らは、TAT−Casp3で処理した細胞にお
いて2N DNA含量未満を含有する細胞および縮合された核を有する細胞の両
方の出現を検出した。しかし、TATCasp3MUTタンパク質の形質導入は
、ほとんど効果を示さなかった。
【0195】 TAT−Casp3WT誘導性のアポトーシスが感染された培養物中の活性な
HIVプロテアーゼに依存したかを決定するために、HIVで感染された培養物
を、100nM TAT−Casp3WTタンパク質での形質導入の前に1μg
/ml Ritonavirで予め処理した(図6)。上述の実験と一致して、
RitonavirでのHIVで感染された培養物の予めの処理は、TAT−C
asp3WT誘導性のアポトーシスからの防御を生じた。さらに、Ritona
virで処理される細胞の観察される増加された生存は、プロテアーゼインヒビ
ターで処理したHIVで感染された細胞の増加された長生と一致する。Coffin,
J.M.ら(前出)を参照のこと。これらの観察は、活性なHIVプロテアーゼを含
有するTAT−Casp3WTタンパク質によるHIVで感染される細胞の特異
的な殺傷を実証し、細胞におけるアポトーシス誘導の欠損はHIVプロテアーゼ
活性がないことを実証する。
【0196】 図6において示されるHIVで感染された細胞の特異的な殺傷は、以下により
詳細に説明される。Jurkat T細胞をHIV株 NLHXで7〜14日間
感染し、次いでTAT−Casp3WT(WT)またはTAT−Casp3MU
T(MUT)タンパク質で16時間形質導入し、そして細胞生存度についてアッ
セイした。TAT−Casp3WTタンパク質は、単一の投与でHIVポジティ
ブ細胞の大きなパーセントを効率的に殺傷するが、触媒的に不活性なTAT−C
asp3MUTタンパク質は、効果を有しなかった。HIVプロテアーゼインヒ
ビターRitonavir(Rit)でのHIVで感染された細胞の予めの処理
は、TAT−Casp3WTタンパク質殺傷から感染された細胞を防御した。C
trl、培養物へのPBSのコントロール添加;横座標、形質導入開始時での集
団中のHIVポジティブ細胞の生存度の%;エラーバーはSDを示す。
【0197】 本実施例は、HIVで感染された細胞を殺傷するための新規なストラテジーを
実証する。重要なことに、このストラテジーは、タンパク質形質導入送達系と組
み合わせてアポトーシス誘導因子、Casp3の改変されたチモーゲン形態を利
用することによって、HIVにコードされるプロテアーゼを利用する。結果は、
細胞へのタンパク質の形質導入は迅速な、濃度依存性のプロセスであり、約10
0%の細胞を標的することを示す。重要なことに、TAT−Casp3タンパク
質は、未感染の細胞において不活性であり、そしてHIVで感染された細胞にお
いてHIVプロテアーゼ依存性の切断によって特異的に活性化される。この特異
性の程度は、HIVで感染された細胞をこのようなストラテジーによって殺傷す
ることが、患者において高い治療学的指数を生じる得ることを示唆する。
【0198】 考察されるように、プロテアーゼインヒビターでのHIVで感染された細胞の
現在の処置は、感染された細胞の増加された長生を導く。プロテアーゼインヒビ
ターでの処理と全く対照的に、TAT−Casp3タンパク質はHIVで感染さ
れた細胞を特異的に殺傷する。さらに、広範な範囲のインヒビターに耐性なHI
Vプロテアーゼを与える変異の選択は、HIVの流行と合わせて継続するおよび
増大する問題である。しかし、HIV切断部位を置換することによって、本実施
例および本明細書の開示の他のどこかにおいて提供されるアプローチは、HIV
株タンパク質分解性切断部位の分散および/または変異へのTAT−Casp3
タンパク質の継続的な適合性を許容する。 本明細書中に記載されるTAT−Casp3タンパク質は、関連の病原体特異
的プロテアーゼ切断部位を含むようにタンパク質を操作することによって、他の
病原体と闘うために使用され得る。
【0199】 以下の方法が本実施例において使用された。 1.細胞培養−p16(−)Jurkat T細胞(ATCC)を記載される
ように増殖した。Lissy,N.A.ら(前出)を参照のこと。インビボ基質切断のた めに、1×10細胞を100nM TAT−p16、TAT−A−p16、T
AT−Casp3MUT、および/または50nM TAT−HIV Prタン
パク質で示されるように1、5、または8時間形質導入し、そして抗p16(Sa
nta Cruz)または抗Casp3(Pharmingen)イムノブロット分析によって分析
した。Ezhevsky,S.A.ら(前出)を参照のこと。未感染の細胞に対するTAT−
Casp3の細胞傷害について、1×10細胞を100nM TAT−Cas
p3WT、TAT−Casp3MUT、および/または50nM TAT−HI
V Prタンパク質で16時間形質導入し、そしてトリパンブルー排除および/
またはTUNELアッセイ(Trevigen)によるゲノムDNA障害によって生存度
についてアッセイした。高倍率の顕微鏡場当たり報告されるTUNELポジティ
ブ細胞の数を、実験当たり4場で平均した。TAT−Casp3活性を、20μ
gの全細胞溶解物と50μM DEVD−AFCとのインキュベーションによっ
て測定し、そして蛍光AFC形成を、記載されるようにFL500マイクロプレ
ート蛍光読み取り器(Bio~Tek)において測定した。Xiang,J.ら(前出)を参照
のこと。細胞を形質導入の前に1μg/ml Ritonavir(Abbott Lab
s)で1時間予めインキュベートした。感染された細胞に対するTAT−Cas p3の細胞傷害について、Jurkat培養物を100ng p24 Ag相当
のNLHX HIV−1株で7〜14日間感染し、細胞変性効果について顕微鏡
でアッセイし、次いで1×10/mlで反復し、そして100nMのTAT−
Casp3WTまたはTAT−Casp3MUTタンパク質で16時間形質導入
し、続いて排除色素生存度アッセイを行った。感染された細胞を、TAT−Ca
sp3WTタンパク質での形質導入の前に1μlg/ml Ritonavir
で24時間予め処理した。Xiang, J.ら(前出)を参照のこと。フローサイトメ トリー(FACS)分析について、フルオレセイン(FITC)結合TAT融合
タンパク質をJurkat T細胞培養培地に添加し、そして1×10細胞を
記載されるようにFACSによって分析した。Ezhevsky,S.A.ら(前出)を参照
のこと。
【0200】 2.TAT融合タンパク質−pTAT−A/D−p16発現ベクターをHIV
p17−p24(「A」)切断部位(単一のアミノ酸コード:SQVSQNY−
PIVQNLQ 配列番号9)またはHIV p7−p1(「D」)切断部位(
CTERQAN−FLGKIWP;配列番号10)の14残基をコードする2本
鎖オリゴマー核酸を、pTAT−p16のNcoI部位に挿入することによって
構築した。Ratner,L.ら、Welch,A.R.ら、Nagahara, H.ら、およびVocero~Akba
ni,Aら(前出)を参照のこと。pTAT−Casp3WTベクターを、プライ マー(p17正方向プライマー: 5’- CGCCTCGAGGGCGGCTGCACCGAACGCCAGGCTAACTTCCTGGGCAAAATCTGGCCAGGCGGAATA
TCCCTGGACAACAGTTATAAAATG~3’(配列番号32); p17逆方向プライマー: 5’~CCGCCCTGCAGGTTCTGCACGATTGGATAGTTCTGTGACACCTGGGAGCCGCCTGT CTCAATGCCACAGTCCAG 3’(配列番号33); p12正方向プライマー: 5’~GGCGGCTCCCAGGTGTCACAGAACTATCCAATCGTGCAGAACCTGCAGGGCGGTGTTGATGATGACA
TGGCG 3’(配列番号34); p12逆方向プライマー: 5’~CGAGCTACGCGAATTCTTAGTGATAAAAATAGAGTTC 3’(配列番号35)) 中に操作されたHIV AおよびD切断部位を含有するp17およびp12ドメ
インを独立してPCR増幅し、次いでPCR産物を混合し、そしてp17正方向
プライマーおよびp12逆方向プライマー(p17逆方向プライマー配列および
p12正方向プライマー配列は重複する)を使用してPCR増幅することによっ
て構築した。得られるPCRフラグメントをpTAT−HA23 24にサブク
ローン化して、TAT−D−p17−A−p12配座を得た(図12を参照のこ
と)。pTAT−Casp3MUTベクターを2本鎖オリゴマーヌクレオチド(
ポジティブ鎖: 5’CCATGCGTGGTACCGAACTGGACTGTGGCATTGAGACAGGCGGCTCCCAGGTGTCACAGAACTATCCA
ATCGTGCAGAACCTGCA~3’(配列番号36) 活性部位Cys’63残基の代わりにMet残基を含有する)をTAT−Cas
p3WTベクターのStuIおよびPstI部位に挿入することによって構築し
た。
【0201】 pTAT−HIV Prベクターを、HXBR HIV株からHIVプロテア
ーゼ遺伝子をPCRクローン化し(正方向プライマー: 5’CGGTCCATGGGCGGCGGCCCTCAGGTCACTCTTTGGCAACG 3’(配列番号37);逆方
向プライマー: 5’CGGGAATTCTCAAAAATTTAAAGTGCAACCAATCTG~3’(配列番号38))、 そしてpTAT23 24にクローン化することによって構築した。簡潔には、
TAT融合タンパク質を、高発現するBL21(DE3)pLysS(Novagen )の8M尿素中での超音波処理によって精製し、Ni−NTAカラム上で精製し 、そして23 24に記載されるようにMono Sカラム上で誤って折畳んだ
。FITC結合TAT融合タンパク質を、フルオレセインイソチオシアネート標
識(Pierce)によって作製し、次いでFPLC(Pharmacia)またはPD −10脱塩カラム(Pharmacia)に付着されるS−12カラム上でPBS中でゲ ル精製し、次いで細胞培地中の細胞に直接的に添加して、FACSまたは顕微鏡
によって分析した。
【0202】 実施例13−クラスII合成形質導入ドメインの生成および試験 螺旋円柱の下方のアルギニン残基の面を伴う強力なα螺旋構造を必要とする合
成形質導入ドメイン(現在クラスI型の合成形質導入ドメインと呼ばれる)のさ
らなる調査の過程において、明らかな第2のクラスの形質導入ドメイン(クラス
II型と呼ばれる)が発見された。クラスII合成形質導入ドメインはまた、ア
ルギニンまたはリシン(しかし、好ましくはアルギニン)のような塩基残基を必
要とするが、プロリン残基の包含に起因する二次構造におけるよじれの導入が、
クラスIドメインからこれらを区別する。 以下は、クラスII型の合成形質導入ドメインおよびHIV TAT 47−
57に比較される相対的な形質導入能の列挙される6つの例であり、一文字アミ
ノ酸コードを使用する。
【0203】
【表3】
【0204】 本発明は、その好ましい実施態様に関して詳細に記載された。しかし、本開示
を考慮して、当業者が改変および改良を本発明の精神および範囲内でなし得るこ
とが理解される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1はpTAT/pTAT−HAのプラスミドマップである。
【図2】 図2はpTATリンカーとpTAT HAリンカーのヌクレオチド配列とアミ ノ酸配列を示す。最小のTATドメインは太字部分である。下線を付した配列は
グリシン残基が側面を接する最小のTATドメインを示す。
【図3】 図3A〜BはpTAT/pTAT−HAプラスミドにもとづく本発明による例
示としてのDNAベクターを図示したものである。図3Aは、TAT−HSV TK融合タンパク質ベクター、図3BはTAT−カスパーゼ−3融合タンパク質
ベクターである。HISと指定した四角の囲みは6XHISタグを任意に付加し
たことを意味する;タンパク質形質導入ドメイン(PTD);HIVプロテアー
ゼ−RT切断部位(HIV1)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HS
V TK);大型カスパーゼ−3ドメイン(Lg);小型カスパーゼ−3ドメイ ン(Sm);HIVp17−p24プロテアーゼ切断部位(HIV2);p16
(突然変異体または野生型p16タンパク質)。ベクター分子量の概数を示して
ある。
【図4】 図4A〜BはpTAT/pTAT−HAプラスミドにもとづく本発明による例
示としてのDNAベクターを図示したものである。図4AはTAT−p16融合
タンパク質ベクター、および図4BはPTD−p16融合ベクターである。HI
Sと指定した四角の囲みは6XHISタグを任意に付加したことを意味する;タ
ンパク質形質導入ドメイン(PTD);HIVプロテアーゼ−RT切断部位(H
IV1)、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV TK);大型カス パーゼ−3ドメイン(Lg);小型カスパーゼ−3ドメイン(Sm);HIVp
17−p24プロテアーゼ切断部位(HIV2);p16(突然変異体または野
生型p16タンパク質)。ベクター分子量の概数を示してある。
【図5】 図5はプロドラッグを活性薬物に変換し得る酵素を含んでなる融合タンパク質
により細胞を殺す概略模式図である。HIV1,2については上記の図3及び図
4に定義してある。
【図6】 図6は本発明によるTAT−CPP32融合タンパク質を構築する1つの方法
を示す模式図である。
【図7】 図7はTAT融合タンパク質を形質導入し、抗HIV薬物で処理した後の生存
細胞の百分比を示す棒グラフである。
【図8】 図8は図7の棒グラフに用いた生存細胞の百分比(2欄)を示す表である。
【図9】 図9は本発明の好適な形質導入タンパク質のらせんホイール型射影を示す図面
である。「TAT(47〜57)」はTATペプチド(配列番号2)のアミノ酸
47〜57を意味する。「SFD」は特定された形質導入ドメイン配列を意味す
る。図9の「相対細胞内濃度」という用語はTATペプチドに関係する形質導入
ペプチド配列の細胞内量を意味する。
【図10】 図10も本発明の好適な形質導入タンパク質のらせんホイール型射影を示す図
面である。「TAT(47〜57)」はTATペプチド(配列番号2)のアミノ
酸47〜57を意味する。「SFD」は特定された形質導入ドメイン配列を意味
する。図10の「相対細胞内濃度」という用語はTATペプチドに関係する形質
導入ペプチド配列の細胞内量を意味する。
【図11】 図11A〜Cは種々のタンパク質構築物を説明する図面である。図11Aはp
5およびp15ドメインを強調するビッド(Bid)タンパク質の図式である。
Arg59でのカサパーゼ切断部位を示す。図11BはTAT−p5−HIV−
p15融合タンパク質のクローニングを概説する。図11CはTAT−HIV−
p15融合タンパク質を示す。プライマー名称の説明については本文参照。斜線
枠=HIV切断を表すプライマー2Rと2F間の張り出し部分。
【図12】 図12はTAT融合タンパク質の生成と形質導入を示す図面である。図12は
カスパーゼ3(Casp3)タンパク質とCasp3p17およびp12ドメイ
ンを用いて作製された種々のTAT/HIV融合タンパク質を示す。
【図13】 図13A〜DはTAT融合タンパク質の生成と形質導入による種々のフルオレセ
イン(FITC)標識TAT融合タンパク質のFACS分析を示すグラフである
【図14】 図14A〜Bはジャーカット(Jurkat)T細胞において種々のTAT融合タン
パク質の生体内プロセシングを示す免疫ブロットの描写である。免疫ブロットは
抗p−16抗体(図14A)または抗カスパーゼ−3抗体(図14B)により探
査した。
【図15】 図15A〜Bは同時導入細胞におけるTAT−Casp3の活性化およびアポ
トーシス誘導を示すグラフである。図15AはHIVプロテアーゼ阻害剤リトナ
ビル(Ritonavir)(Rit)とともに種々のTAT融合タンパク質で形質導入 した後の細胞生存度を示す。図15Bは種々のTAT融合タンパク質で形質導入
した後の細胞生存度を図解する。
【図16】 図16A〜BはHIVプロテアーゼがTAT−Casp3wtタンパク質を活
性化することを示すグラフである。図16AはTAT融合タンパク質を用いるT
UNEL陽性細胞(アポトーシス性終末マーカー)の結果を示す。図16BはT
AT融合タンパク質を用いるカスパーゼ−3酵素アッセイの結果を示す。
【図17】 図17はHIV感染細胞の特異的殺滅を図示するグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C12Q 1/68 A61K 37/18 G01N 33/53 37/465 (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW,ML, MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,GM,K E,LS,MW,SD,SZ,UG,ZW),EA(AM ,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM) ,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG, BR,BY,CA,CH,CN,CU,CZ,DE,D K,EE,ES,FI,GB,GE,GH,GM,HR ,HU,ID,IL,IS,JP,KE,KG,KP, KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,L V,MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ ,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI, SK,SL,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,U S,UZ,VN,YU,ZW Fターム(参考) 4B024 AA01 BA21 CA04 DA03 GA11 HA01 4B063 QA01 QQ02 QQ43 QQ96 QR32 QR55 QS34 4C084 AA02 BA44 MA01 NA13 NA14 ZB332 4C085 AA05 BA02 BA69 BA78 BA83 BA92 BB24 CC08 4H045 AA11 BA10 BA41 CA40 DA01 DA75 EA29 FA74

Claims (86)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 共有結合により結合したタンパク質形質導入ドメインおよ び細胞障害性ドメインを含んでなる融合タンパク質を含んでなることを特徴とす
    る抗病原体システム。
  2. 【請求項2】 該細胞障害性ドメインがさらに少なくとも1つの病原体特 異プロテアーゼ切断部位を含んでなることを特徴とする請求項1記載の抗病原体
    システム。
  3. 【請求項3】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、1 )形質導入ドメイン、2)第一の病原体特異プロテアーゼ切断部位、および3)
    チモーゲンを含んでなることを特徴とする請求項2記載の抗病原体システム。
  4. 【請求項4】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、1 )形質導入ドメイン、2)第一の病原体特異プロテアーゼ切断部位、3)触媒チ
    モーゲンフラグメント、および4)第一のチモーゲンサブユニットを含んでなる
    ことを特徴とする請求項2記載の抗病原体システム。
  5. 【請求項5】 該融合タンパク質が第一のチモーゲンサブユニットのC− 末端に共有結合により結合して、5)第二の病原体特異プロテアーゼ切断部位、
    および6)第二のチモーゲンサブユニットを含んでなることを特徴とする請求項
    4記載の抗病原体システム。
  6. 【請求項6】 該チモーゲンがカスパーゼ(caspase)、トロンビン、細菌
    外毒素、グランザシムBまたは無脊椎動物毒素である請求項3記載の抗病原体シ
    ステム。
  7. 【請求項7】 該カスパーゼがカスパーゼ−3(CPP32アポペイン(a
    popain)、ヤーナ(Yarna))、カスパーゼ−5(ICErel−III、TY )、カスパーゼ−4(ICErel−II TX、ICH−2)、カスパーゼ− 1(ICE)、カスパーゼ−7(Mch3、ICE−LAP3、CMH−1)、
    カスパーゼ−6(Mch2)、カスパーゼ−8(MACH、FLICE、Mch
    5)、カスパーゼ−10(Mch4)、カスパーゼ−2(ICH−1)、カスパ
    ーゼ−9(ICH−LAP6、Mch6)、または触媒活性チモーゲンからなる
    群から選択される請求項6記載の抗病原体システム。
  8. 【請求項8】 該カスパーゼがカスパーゼ−3(CPP32アポペイン、
    ヤーナ)またはその触媒活性フラグメントである請求項7記載の抗病原体システ
    ム。
  9. 【請求項9】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、1 )形質導入ドメイン、2)病原体特異プロテアーゼ切断部位、および3)酵素を
    含んでなることを特徴とする請求項2記載の抗病原体システム。
  10. 【請求項10】 該酵素がチミジンキナーゼ、シトシンデアミナーゼ、ま たはその触媒活性酵素フラグメントである請求項9記載の抗病原体システム。
  11. 【請求項11】 該酵素がチミジンキナーゼである請求項10記載の抗病 原体システム。
  12. 【請求項12】 該病原体特異プロテアーゼ切断部位がサイトメガロウイ ルス(CMV)、単純ヘルペスウイルスタイプ−1(HSV−1)、C型肝炎ウ
    イルス(HCV)、熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)、HIV−1、HIV
    −2およびカポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)プロテアーゼ切断部位
    からなる群から選択される請求項2記載の抗病原体システム。
  13. 【請求項13】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、 1)TATまたはそのタンパク質形質導入化フラグメント、2)カスパーゼ−3
    プロドメイン、3)第一HSV−1プロテアーゼ切断部位、4)カスパーゼ−3
    大型サブユニット、5)第二HSV−1プロテアーゼ切断部位、および6)カス
    パーゼ−3小型サブユニットを含んでなり、その場合、該大型および小型サブユ
    ニットが二量化して細胞毒を形成し得るものである請求項2記載の抗病原体シス
    テム。
  14. 【請求項14】 該タンパク質形質導入ドメインがTAT、アンテナペデ ィア・ホメオドメイン、HSV VP22またはそのフラグメントである請求項 2記載の抗病原体システム。
  15. 【請求項15】 共有結合により結合したタンパク質形質導入ドメインお よび細胞障害性ドメインを含んでなることを特徴とする実質的に純粋な融合タン
    パク質。
  16. 【請求項16】 請求項1記載の融合タンパク質をエンコードする核酸セ グメント。
  17. 【請求項17】 請求項16記載の核酸セグメントを含んでなることを特 徴とするDNAベクター。
  18. 【請求項18】 請求項1記載の抗病原体システムの治療有効量を哺乳動 物に投与することを特徴とする哺乳動物の病原体感染抑制方法。
  19. 【請求項19】 さらに、逆転写酵素阻害剤、サイトカイン、または免疫 調節剤を含んでなる医薬の治療有効量を投与することを特徴とする請求項18記
    載の方法。
  20. 【請求項20】 該医薬が、AZT、ddI、ddC、d4T、3TC、 FTC、DAPD、1592U89、CS92、アシクロビル、ガンシクロビル
    、ペンシクロビル、またはインターフェロンの少なくとも1種を含んでなる請求
    項19記載の方法。
  21. 【請求項21】 該抗病原体システムをエアロゾルとして投与する請求項 18記載の方法。
  22. 【請求項22】 該投与が経口または鼻腔投与である請求項21記載の方 法。
  23. 【請求項23】 細胞の所定母集団にアポトーシスを誘導する方法であっ て、病原体の存在下、請求項1記載の抗病原体システムの治療有効量を哺乳動物
    に投与することをを特徴とする方法。
  24. 【請求項24】 該病原体が弱毒化したものである請求項23記載の方法 。
  25. 【請求項25】 病原体特異プロテアーゼを阻害する治療能力につき候補 化合物をスクリーニングする方法であって、 請求項1記載の融合タンパク質を細胞の母集団に形質導入し、 病原体特異プロテアーゼを発現または誘導し得る病原体で該細胞を感染させ、
    かつ該プロテアーゼを発現させ、 該融合タンパク質を、細胞毒を産生するのに十分な病原体特異プロテアーゼと
    接触させ、そして いずれかの細胞障害性効果を、病原体特異プロテアーゼを調節する候補化合物
    の治療能力と相関させること、 を特徴とする方法。
  26. 【請求項26】 該タンパク質形質導入ドメインがTAT、アンテナペデ ィア・ホメオドメイン、HSV VP22またはそのフラグメントである請求項 25記載の方法。
  27. 【請求項27】 該細胞障害性ドメインがカスパーゼおよび1つまたはそ れ以上のプロテアーゼ切断部位を含んでなることを特徴する請求項26記載の方
    法。
  28. 【請求項28】 該細胞障害性ドメインが1つまたはそれ以上のHIV− 1プロテアーゼ切断部位、チミジンキナーゼまたはシトシンデアミナーゼを含ん
    でなることを特徴する請求項25記載の方法。
  29. 【請求項29】 さらに、タンパク質精製または同定タグを含んでなるこ とを特徴する請求項1記載の融合タンパク質。
  30. 【請求項30】 該タンパク質精製または同定タグがポリヒスチジン、E E、MYCまたはHA配列である請求項1記載の融合タンパク質。
  31. 【請求項31】 融合タンパク質を細胞内に入れるためのタンパク質形質 導入ドメインを含んでなる融合タンパク質、および1つまたはそれ以上の病原体
    による感染に応答して細胞毒を特異的に産生する細胞障害性ドメインを含んでな
    る抗病原体システム、 を含んでなることを特徴とするキット。
  32. 【請求項32】 哺乳動物の病原体感染を抑制する方法であって、 共有結合により結合したタンパク質形質導入ドメインと細胞障害性ドメインを
    含んでなる融合タンパク質を含んでなる抗病原体システムの治療有効量を哺乳動
    物に投与し、 該哺乳動物の細胞に該融合タンパク質を形質導入し、 該融合タンパク質を切断して、該融合タンパク質から細胞障害性ドメインを十
    分に放出させ、 該細胞中の細胞障害性ドメインを濃縮し、そして 哺乳動物において病原性感染を抑制するのに十分な細胞毒を産生させる、 ことを特徴とする方法。
  33. 【請求項33】 該細胞毒がトロンビン、フィブリン、トリプシン、キモ トリプシン、ジフテリア毒素、リシン、志賀毒素、アブリン、コレラ毒素、サポ
    ニン、シュードモナス外毒素(PE)、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク
    質、ゲロニン、ジフテリア毒素A鎖、リシンA鎖、ホスフォリパーゼCまたはシ
    トシンデアミナーゼ、またはそれらの触媒活性フラグメントからなる群から選択
    される請求項32記載の方法。
  34. 【請求項34】 さらに、プロドラッグを投与し、該プロドラッグと濃縮 された細胞障害性ドメインとを接触させることにより細胞毒を産生させることを
    特徴とする請求項32記載の方法。
  35. 【請求項35】 該プロドラッグがアシクロビルであり、該濃縮された細 胞障害性ドメインがHSV−1チミジンキナーゼである請求項34記載の方法。
  36. 【請求項36】 該タンパク質形質導入ドメインが合成ペプチドまたは他 の形質導入タンパク質である請求項2記載の抗病原性システム。
  37. 【請求項37】 該哺乳動物がウイルス感染症またはウイルス関連疾患に 罹患しているか、または罹患し易いものである請求項18、19、20、21ま
    たは22のいずれかに記載の方法。
  38. 【請求項38】 該哺乳動物がレトロウイルス感染症に罹患している請求 項37記載の方法。
  39. 【請求項39】 該哺乳動物がHIV感染症に罹患している請求項38記 載の方法。
  40. 【請求項40】 該哺乳動物がプラスモジウム感染症またはプラスモジウ ム感染症と関連する疾患に罹患しているか、または罹患し易いものである請求項
    18、19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
  41. 【請求項41】 該哺乳動物がウイルス感染症またはウイルス関連疾患に 罹患しているか、または罹患し易いものである請求項23または24に記載の方
    法。
  42. 【請求項42】 該哺乳動物がレトロウイルス感染症に罹患している請求 項41記載の方法。
  43. 【請求項43】 該哺乳動物がHIV感染症に罹患している請求項42記 載の方法。
  44. 【請求項44】 該哺乳動物がプラスモジウム感染症またはプラスモジウ ム感染症と関連する疾患に罹患しているか、または罹患し易いものである請求項
    23または24に記載の方法。
  45. 【請求項45】 該哺乳動物がウイルス感染症またはウイルス関連疾患に 罹患しているか、または罹患し易いものである請求項32、33、34または3
    5のいずれかに記載の方法。
  46. 【請求項46】 該哺乳動物がレトロウイルス感染症に罹患している請求 項45記載の方法。
  47. 【請求項47】 該哺乳動物がHIV感染症に罹患している請求項46記 載の方法。
  48. 【請求項48】 該哺乳動物がプラスモジウム感染症またはプラスモジウ ム感染症と関連する疾患に罹患しているか、または罹患し易いものである請求項
    32、33、34または35のいずれかに記載の方法。
  49. 【請求項49】 該哺乳動物がヘルペス感染症に罹患しているか、または 罹患し易いものである請求項37、41または45のいずれかに記載の方法。
  50. 【請求項50】 該哺乳動物が肝炎感染症に罹患しているか、または罹患 し易いものである請求項37、41または45のいずれかに記載の方法。
  51. 【請求項51】 該ウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、単純 ヘルペスウイルス、例えば、タイプ−1(HSV−1)、肝炎ウイルス、例えば
    、C型(HCV)、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHVまたはヒトヘル
    ペスウイルス8)、黄熱病ウイルス、フラビウイルス、およびライノウイルスか
    らなる群から選択される請求項37、41または45のいずれかに記載の方法。
  52. 【請求項52】 該レトロウイルス感染症が、ヒト免疫不全ウイルスタイ プ1(HIV−1、HTLV−III、LAVまたはHTLV−III/LAV
    )またはヒト免疫不全ウイルスタイプ2(HIV−2)と関連している請求項3
    8、41または45のいずれかに記載の方法。
  53. 【請求項53】 プラスモジウム感染症が以下のプラスモジウムのいずれ か1種またはそれ以上と関連する請求項40、40または48のいずれかに記載
    の方法:熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、または
    四日熱マラリア原虫。
  54. 【請求項54】 融合タンパク質を細胞に導入する方法であって、該融合 タンパク質が共有結合により結合したタンパク質形質導入ドメインおよび細胞障
    害性ドメインを含んでなり、該方法が、宿主細胞から融合タンパク質を単離し、
    該融合タンパク質をミスフォールディングし、次いで融合タンパク質を細胞中に
    形質導入することからることを特徴とする方法。
  55. 【請求項55】 下記式により示される少なくとも1つのペプチドを含ん でなることを特徴とするタンパク質形質導入ドメイン: B−X−X−X−B−X−X−B ただし、式中B、BおよびBはそれぞれ独立に同一または異なって塩基性
    アミノ酸である;X、X、X、XおよびXはそれぞれ独立に同一また
    は異なってαヘリックス増強アミノ酸である。
  56. 【請求項56】 下記式により示されるタンパク質形質導入ドメイン: B−X−X−X−B−X−X−B ただし、式中B、BおよびBはそれぞれ独立に同一または異なって塩基性
    アミノ酸である;X、X、X、XおよびXはそれぞれ独立に同一また
    は異なってαヘリックス増強アミノ酸である。
  57. 【請求項57】 少なくとも1種の塩基性アミノ酸がアルギニンである請 求項55または56に記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  58. 【請求項58】 少なくとも1種のαヘリックス増強アミノ酸がアラニン である請求項55または56に記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  59. 【請求項59】 少なくとも1種のαヘリックス増強アミノ酸がアラニン であり、複数個の塩基性アミノ酸が該ペプチドの少なくとも一面にそって実質的
    に配列されているアルギニンである請求項55または56に記載のタンパク質形
    質導入ドメイン。
  60. 【請求項60】 下記式により示される少なくとも1つのペプチドを含ん でなることを特徴とするタンパク質形質導入ドメイン: B−X−X−B−B−X−X−B ただし、式中B、B、BおよびBはそれぞれ独立に同一または異なって
    塩基性アミノ酸である;X、X、XおよびXはそれぞれ独立に同一また
    は異なってαヘリックス増強アミノ酸である。
  61. 【請求項61】 下記式により示されるタンパク質形質導入ドメイン: B−X−X−B−B−X−X−B ただし、式中B、B、BおよびBはそれぞれ独立に同一または異なって
    塩基性アミノ酸である;X、X、XおよびXはそれぞれ独立に同一また
    は異なってαヘリックス増強アミノ酸である。
  62. 【請求項62】 少なくとも1種の塩基性アミノ酸がアルギニンである請 求項60または61に記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  63. 【請求項63】 少なくとも1種のαヘリックス増強アミノ酸がアラニン である請求項60または61に記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  64. 【請求項64】 少なくとも1種のαヘリックス増強アミノ酸がアラニン であり、複数個の塩基性アミノ酸が該ペプチドの少なくとも一面にそって実質的
    に配列されているアルギニンである請求項56または61に記載のタンパク質形
    質導入ドメイン。
  65. 【請求項65】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: AGRKKRRQRRR(配列番号2)。
  66. 【請求項66】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YARKARRQARR(配列番号3)。
  67. 【請求項67】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YARAAARQARA(配列番号4)。
  68. 【請求項68】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YARAARRAARR(配列番号5)。
  69. 【請求項69】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YARAARRAARA(配列番号6)。
  70. 【請求項70】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YARRRRRRRRR(配列番号7)。
  71. 【請求項71】 少なくとも以下の配列を含んでなるタンパク質形質導入 ドメイン: YAAARRRRRRR(配列番号8)。
  72. 【請求項72】 形質導入ドメインが、AGRKKRRQRRR(配列番 号2)、 YARKARRQARR(配列番号3)、 YARAAARQARA(配列番号4)、 YARAARRAARR(配列番号5)、 YARAARRAARA(配列番号6)、 YARRRRRRRRR(配列番号7)または、 YAAARRRRRRR(配列番号8) からなる請求項65〜71のいずれかに記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  73. 【請求項73】 少なくとも以下の配列の1つを含んでなるタンパク質形 質導入ドメイン: YARAAPRRR; YARAPRRARRR; YARAPRRPRRR; YARAAARPARA; YARAPARQARA;または、 YARAPARPARA。
  74. 【請求項74】 該形質導入ドメインの分子量が約1kDaないし50k Daである請求項58〜73のいずれかに記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  75. 【請求項75】 形質導入効率アッセイにより定量したとき、該タンパク 質形質導入ドメインが約5〜約10倍ないし約100倍まで形質導入効率を上昇
    させている請求項58〜73のいずれかに記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  76. 【請求項76】 形質導入効率が形質導入ドメインの細胞内濃度の上昇と して表される請求項75記載のタンパク質形質導入ドメイン。
  77. 【請求項77】 請求項58〜73に記載のタンパク質形質導入ドメイン のいずれか1つをエンコードするDNAセグメント。
  78. 【請求項78】 請求項58〜73に記載のタンパク質形質導入ドメイン のいずれか1つを含んでなる融合分子。
  79. 【請求項79】 該融合分子が、遺伝子枠内融合として遺伝子的に形質導 入ドメインに結合したアミノ酸配列を含んでなる請求項78記載の融合分子。
  80. 【請求項80】 融合分子を細胞内に形質導入する方法であって、該方法 が融合分子を供与し、該融合分子を該細胞内に形質導入することからなり、その
    際の融合分子が該細胞に形質導入すべき分子に共有結合により結合している請求
    項58〜73に記載のタンパク質形質導入ドメインのいずれか1つを含んでなる
    ことを特徴とする方法。
  81. 【請求項81】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、 1)形質導入ドメイン、2)第一のチモーゲンサブユニット、3)プロテアーゼ
    切断部位、および4)第二のチモーゲンサブユニットを含んでなることを特徴と
    する請求項2記載の抗病原体システム。
  82. 【請求項82】 該形質導入ドメインがTATであり、該第一のチモーゲ ンサブユニットがp5ビッドであり、該プロテアーゼ切断部位がHIVプロテア
    ーゼ切断部位であり、かつ、該第二のチモーゲンサブユニットがp15ビッドで
    ある請求項81記載の抗病原体システム。
  83. 【請求項83】 該融合タンパク質が配列内に共有結合により結合した、 1)形質導入ドメイン、2)第一のプロテアーゼ切断部位、3)第一のチモーゲ
    ンサブユニット、4)第二のプロテアーゼ切断部位、および5)第二のチモーゲ
    ンサブユニットを含んでなることを特徴とする請求項2記載の抗病原体システム
  84. 【請求項84】 該形質導入ドメインがTATであり、該第一のプロテア ーゼ切断部位がHIV p7−p1プロテアーゼ切断部位であり、該第一のチモ ーゲンサブユニットがp17カスパーゼ−3であり、該第二のプロテアーゼ切断
    部位がHIV p17−p24プロテアーゼ切断部位であり、かつ、該第二のチ モーゲンサブユニットがp12カスパーゼ−3である請求項83記載の抗病原体
    システム。
  85. 【請求項85】 該p17カスパーゼ−3がCys163からMet16 への突然変異を含んでなる請求項84記載の抗病原体システム。
  86. 【請求項86】 HIV感染細胞を殺滅する方法であって、該方法が該細 胞を融合タンパク質の有効用量と接触させることからなり、その際の融合タンパ
    ク質が配列内に共有結合により結合した、1)形質導入ドメイン、2)第一のチ
    モーゲンサブユニット、3)プロテアーゼ切断部位、および4)第二のチモーゲ
    ンサブユニットを含んでなるか、または1)形質導入ドメイン、2)第一のプロ
    テアーゼ切断部位、3)第一のチモーゲンサブユニット、4)第二のプロテアー
    ゼ切断部位、および5)第二のチモーゲンサブユニットを含んでなることを特徴
    とする方法。
JP2000524312A 1997-12-10 1998-12-10 抗病原体システムおよびその使用方法 Pending JP2002505077A (ja)

Applications Claiming Priority (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
US6901297P 1997-12-10 1997-12-10
US60/069,012 1997-12-10
US8240298P 1998-04-20 1998-04-20
US60/082,402 1998-04-20
PCT/US1998/026358 WO1999029721A1 (en) 1997-12-10 1998-12-10 Anti-pathogen system and methods of use thereof

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002505077A true JP2002505077A (ja) 2002-02-19

Family

ID=26749601

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2000524312A Pending JP2002505077A (ja) 1997-12-10 1998-12-10 抗病原体システムおよびその使用方法

Country Status (6)

Country Link
US (2) US6221355B1 (ja)
EP (1) EP1037911A4 (ja)
JP (1) JP2002505077A (ja)
AU (1) AU1818299A (ja)
CA (1) CA2314267A1 (ja)
WO (1) WO1999029721A1 (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2009051078A1 (ja) * 2007-10-15 2009-04-23 Takara Bio Inc. 治療用遺伝子発現システム
JP2010535508A (ja) * 2007-08-07 2010-11-25 パデュー リサーチ ファンデイション キナーゼ阻害薬およびその使用
JP2014513926A (ja) * 2011-03-11 2014-06-19 メルツ ファルマ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーアーアー ボツリヌス神経毒生物活性の決定のための方法
US9327008B2 (en) 2008-12-10 2016-05-03 Purdue Research Foundation Cell-permeant peptide-based inhibitor of kinases
US9452218B2 (en) 2012-03-09 2016-09-27 Purdue Research Foundation Compositions and methods for delivery of kinase inhibiting peptides
US9493508B2 (en) 2007-01-10 2016-11-15 Purdue Research Foundation Polypeptide inhibitors of HSP27 kinase and uses therefor
US9890195B2 (en) 2009-07-27 2018-02-13 Purdue Research Foundation MK2 inhibitor compositions and methods to enhance neurite outgrowth, neuroprotection, and nerve regeneration

Families Citing this family (110)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6645490B2 (en) * 1998-03-02 2003-11-11 Yissum Research Development Company Of The Hebrew University Of Jerusalem Chimeric proteins with cell-targeting specificity and apoptosis-inducing activities
CA2354044A1 (en) * 1998-12-10 2000-06-15 Washington University Protein transduction system and methods of use thereof
JP2003514765A (ja) * 1999-02-28 2003-04-22 ワシントン ユニバーシティー 新規形質導入分子およびその使用方法
JP3734634B2 (ja) * 1999-03-03 2006-01-11 ヒゲタ醤油株式会社 タンパク質の活性化方法及び該装置
US20030219826A1 (en) * 1999-09-01 2003-11-27 Robbins Paul D. Identification of peptides that facilitate uptake and cytoplasmic and/or nuclear transport of proteins, DNA and viruses
US20030104622A1 (en) * 1999-09-01 2003-06-05 Robbins Paul D. Identification of peptides that facilitate uptake and cytoplasmic and/or nuclear transport of proteins, DNA and viruses
US6881825B1 (en) 1999-09-01 2005-04-19 University Of Pittsburgh Of The Commonwealth System Of Higher Education Identication of peptides that facilitate uptake and cytoplasmic and/or nuclear transport of proteins, DNA and virues
AU7577600A (en) * 1999-09-13 2001-04-17 Cornell Research Foundation Inc. Delivering to eucaryotic cells bacterial proteins that are secreted via type iiisecretion systems
US6864355B1 (en) 2000-05-02 2005-03-08 Yale University Inhibition of NF-κB activation by blockade of IKKβ-NEMO interactions at the NEMO binding domain
US6890896B1 (en) * 1999-11-18 2005-05-10 Ceremedix, Inc. Compositions and methods for counteracting effects of reactive oxygen species and free radicals
CA2392490A1 (en) * 1999-11-24 2001-05-31 Mcs Micro Carrier Systems Gmbh Polypeptides comprising multimers of nuclear localization signals or of protein transduction domains and their use for transferring molecules into cells
CA2393333A1 (en) * 1999-12-16 2001-06-21 University Of Louisville Research Foundation Incorporated Compositions and methods for caspase-induced apoptosis
EP1244796A2 (en) * 2000-01-07 2002-10-02 ARTEMIS Pharmaceuticals GmbH Transduction of recombinases for inducible gene targeting
MXPA02007939A (es) * 2000-02-24 2003-02-10 Genentech Inc Terapia con profarmacos activados por la caspasa.
GB2360771A (en) * 2000-03-28 2001-10-03 Antisoma Res Ltd Compounds for targeting
US7049395B2 (en) 2000-05-02 2006-05-23 Yale University Anti-inflammatory compounds and uses thereof
US6664040B2 (en) * 2000-05-23 2003-12-16 The Regents Of The University Of California Compositions and methods for delivery of a molecule into a cell
US7807780B2 (en) * 2000-07-21 2010-10-05 Revance Therapeutics, Inc. Multi-component biological transport systems
US20040220100A1 (en) * 2000-07-21 2004-11-04 Essentia Biosystems, Inc. Multi-component biological transport systems
DK1320387T3 (da) 2000-09-13 2012-07-16 Glaxosmithkline Llc Farmaceutiske sammensætninger til vedvarende afgivelse af peptider
US7273722B2 (en) 2000-11-29 2007-09-25 Allergan, Inc. Neurotoxins with enhanced target specificity
DE10128832A1 (de) * 2001-06-15 2003-02-06 Jochen Reis Vektor und dessen Verwendung in gentherapeutischen Verfahren
WO2003004599A2 (en) * 2001-07-02 2003-01-16 Insight Biopharmaceuticals Ltd. Methods of making and using expression constructs for the expression of recombinant proteins
DE10133307A1 (de) * 2001-07-12 2003-02-06 Deutsches Krebsforsch PNA-Konjugat zur Therapie von mit HIV in Zusammenhang stehenden Erkrankungen
US7374896B2 (en) * 2001-08-28 2008-05-20 Allergan, Inc. GFP-SNAP25 fluorescence release assay for botulinum neurotoxin protease activity
US7332567B2 (en) * 2001-08-28 2008-02-19 Allergan, Inc. Fret protease assays for clostridial toxins
US8022172B2 (en) * 2001-08-28 2011-09-20 Allergan, Inc. Luminescence resonance energy transfer (LRET) assays for clostridial toxin activity
US20030083262A1 (en) * 2001-08-30 2003-05-01 Praecis Pharmaceuticals Inc. Methods and compositions for treating inflammatory disorders
AU2003208275A1 (en) * 2002-01-27 2003-09-02 Viromics Gmbh Trojan inhibitors, method for the production and use thereof
JP4959110B2 (ja) * 2002-02-07 2012-06-20 マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー 抗病原体治療
AU2003217415B2 (en) * 2002-02-14 2009-01-08 William J Rutter Chimeric molecules for cleavage in a treated host
EP1357127A1 (de) * 2002-04-10 2003-10-29 Immusystems GmbH CD4+ T-Lymphozyten spezifische Hepatitis C Virus-Epitope
ATE489462T1 (de) * 2002-04-25 2010-12-15 Toagosei Co Ltd Antimikrobielles polypeptid und nutzung davon
US7118877B2 (en) * 2002-07-08 2006-10-10 Wyeth Caspase 9 activation and uses therefor
KR100472937B1 (ko) * 2002-07-25 2005-03-10 학교법인 한림대학교 세포침투성 티에이티-사이토신 디아미네이즈 융합단백질및 그 용도
US20050287648A1 (en) * 2002-08-05 2005-12-29 University Of Rochester Protein Transducing Domain/Deaminase Chimeric Proteins, Related Compounds, and Uses Thereof
US20040043949A1 (en) * 2002-08-30 2004-03-04 Christopher Richardson Therapeutic system targeting pathogen proteases and uses thereof
US7183066B2 (en) 2002-09-27 2007-02-27 Allergan, Inc. Cell-based fluorescence resonance energy transfer (FRET) assays for clostridial toxins
SI2656854T1 (sl) 2003-02-04 2015-09-30 Cornell Research Foundation, Inc. Uporabe aromatsko-kationskega peptida
KR101161823B1 (ko) 2003-05-01 2012-07-03 코넬 리서치 화운데이션,인크. 세포로 분자를 전달하는 방법 및 이것을 위한 캐리어 복합체
US6936288B2 (en) * 2003-06-10 2005-08-30 Klearsen Corporation Method and composition for the treatment of shingles and related afflictions
AU2004316996A1 (en) * 2003-06-20 2005-09-15 The Regents Of The University Of California Polypeptide transduction and fusogenic peptides
ATE554108T1 (de) 2003-07-25 2012-05-15 Amgen Inc Verfahren bezüglich ldcam und crtam
US20090123468A1 (en) * 2003-10-24 2009-05-14 Gencia Corporation Transducible polypeptides for modifying metabolism
US8133733B2 (en) 2003-10-24 2012-03-13 Gencia Corporation Nonviral vectors for delivering polynucleotides to target tissues
US8062891B2 (en) 2003-10-24 2011-11-22 Gencia Corporation Nonviral vectors for delivering polynucleotides to plants
US8507277B2 (en) 2003-10-24 2013-08-13 Gencia Corporation Nonviral vectors for delivering polynucleotides
JP4838722B2 (ja) * 2003-10-24 2011-12-14 ゲンシア コーポレーション ポリヌクレオチドを送達する方法、及び送達用組成物
US7674771B2 (en) 2003-10-29 2010-03-09 Toagosei Co., Ltd Antimicrobial peptides and utilization of the same
NZ549393A (en) 2004-01-23 2009-07-31 Cornell Res Foundation Inc Methods for reducing oxidative damage
US9211248B2 (en) 2004-03-03 2015-12-15 Revance Therapeutics, Inc. Compositions and methods for topical application and transdermal delivery of botulinum toxins
SG10201803560WA (en) 2004-03-03 2018-06-28 Revance Therapeutics Inc Compositions And Methods For Topical Application And Transdermal Delivery Of Botulinum Toxins
AU2005251676B2 (en) * 2004-03-03 2011-09-29 Revance Therapeutics, Inc. Compositions and methods for topical diagnostic and therapeutic transport
US7514088B2 (en) 2005-03-15 2009-04-07 Allergan, Inc. Multivalent Clostridial toxin derivatives and methods of their use
JP4507080B2 (ja) 2004-07-30 2010-07-21 東亞合成株式会社 抗菌ペプチド及びその利用
US20060068469A1 (en) * 2004-08-17 2006-03-30 Research Development Foundation Bacterial vector systems
US20090098049A1 (en) * 2004-09-07 2009-04-16 The Regents Of The University Of California Targeting transducible molecules to specific cell types
EP1805210A4 (en) * 2004-09-09 2007-10-24 Auckland Uniservices Ltd NOVEL PEPTIDES AND METHODS FOR THE TREATMENT OF INFLAMMATORY DISEASE
US7399607B2 (en) 2004-09-22 2008-07-15 Allergan, Inc. Fluorescence polarization assays for determining clostridial toxin activity
JP4730584B2 (ja) 2004-12-06 2011-07-20 東亞合成株式会社 抗菌ペプチド及びその利用
AU2006218431B2 (en) 2005-03-03 2012-12-06 Revance Therapeutics, Inc. Compositions and methods for topical application and transdermal delivery of botulinum toxins
EP1856139B1 (en) * 2005-03-03 2011-04-27 Revance Therapeutics, Inc. Compositions and methods for topical application and transdermal delivery of an oligopeptide
US7465537B2 (en) * 2005-05-01 2008-12-16 The Board Of Trustees Of The University Of Arkansas Compounds and methods for inhibiting hepatitis C virus replication
CN103784937B (zh) 2005-09-16 2017-04-26 科内尔研究基金会 用于减少cd36表达的方法
ES2341892T5 (es) 2005-09-19 2019-03-27 Allergan Inc Toxina clostridial activable por toxinas clostridiales
JP2009511081A (ja) 2005-10-18 2009-03-19 ナショナル ジューイッシュ メディカル アンド リサーチ センター 条件的に不死化された長期幹細胞およびそのような細胞を作製および使用する方法
BRPI0618753A2 (pt) 2005-11-17 2011-09-13 Revance Therapeutics Inc composição para liberação transdérmica de toxina botulìnica e método de administração
JP2009532017A (ja) * 2006-02-10 2009-09-10 ザ レジェンツ オブ ザ ユニヴァースティ オブ カリフォルニア PTD/CPPSへのdsRNA結合ドメイン融合体によるsiRNAの導入可能な送達
CN101506368B (zh) * 2006-07-12 2017-02-08 加利福尼亚大学董事会 通过可逆的磷酸三酯电荷中和保护基转导运输核酸
US8993295B2 (en) * 2006-07-20 2015-03-31 The General Hospital Corporation Methods, compositions, and kits for the selective activation of protoxins through combinatorial targeting
EP2074138A4 (en) * 2006-09-19 2009-12-30 Phylogica Ltd NEUROPROTECTIVE PEPTIDE AP-1 SIGNALING INHIBITORS AND USES THEREOF
US20100021502A1 (en) * 2006-12-28 2010-01-28 Waugh Jacob M Compositions and Methods of Topical Application and Transdermal Delivery of Botulinum Toxins Stabililzed with Polypeptide Fragments Derived from HIV-TAT
KR20080076622A (ko) * 2007-02-16 2008-08-20 포항공과대학교 산학협력단 올리고머화된 단백질 전달체와 이를 이용한 세포내바이러스 벡터 전달 방법
US8822409B2 (en) 2007-06-20 2014-09-02 Phylogica Limited Compositions and uses thereof for the treatment of acute respiratory distress syndrome (ARDS) and clinical disorders associated with therewith
AU2008278593B2 (en) * 2007-07-26 2015-04-09 Revance Therapeutics, Inc. Antimicrobial peptide, compositions , and methods of use
ES2328776B1 (es) * 2007-11-19 2010-07-06 Proyecto De Biomedicina Cima S.L. Peptidos con capacidad para unirse a escurfina y aplicaciones.
US20110023194A1 (en) * 2007-12-11 2011-01-27 Syngenta Participations Ag Engineering zymogen for conditional toxicity
CA2712900A1 (en) * 2008-01-30 2009-08-06 Oregon Health & Science University Dna repair polypeptides and methods of delivery and use
CN101939019B (zh) 2008-02-07 2014-07-16 康奈尔大学 用于预防或治疗胰岛素抵抗性的方法
GB0803352D0 (en) 2008-02-22 2008-04-02 Ntnu Technology Transfer As Oligopeptidic compounds and uses thereof
EP2262520B1 (en) 2008-02-26 2017-05-03 Cornell University Compositions for prevention and treatment of renal injury
EP2285832B1 (en) * 2008-05-16 2020-08-26 Taiga Biotechnologies, Inc. Antibodies and processes for preparing the same
US8709758B2 (en) * 2008-07-28 2014-04-29 University Of Louisville Research Foundation, Inc. Methods and compositions for inhibition of neutrophil exocytosis
ES2561599T3 (es) 2008-08-28 2016-02-29 Taiga Biotechnologies, Inc. Moduladores de MYC, métodos de uso de los mismos, y métodos para identificar agentes que modulan MYC
CN103933542A (zh) 2009-03-20 2014-07-23 通用医疗公司以马萨诸塞州通用医疗公司名义经营 预防和治疗烧伤损伤和继发性并发症的方法
EP3427746A1 (en) * 2009-08-12 2019-01-16 Cornell University Methods for preventing or treating metabolic syndrome
SI3708178T1 (sl) 2009-08-24 2024-01-31 Stealth Biotherapeutics Inc. Peptid za uporabo pri preprečevanju ali zdravljenju degeneracije makule
EP2485749A4 (en) * 2009-10-05 2013-07-24 Univ Cornell METHODS FOR PREVENTING OR TREATING HEART FAILURE
GB201001602D0 (en) 2010-02-01 2010-03-17 Cytovation As Oligopeptidic compounds and uses therof
US9321847B2 (en) 2010-09-20 2016-04-26 Ramot At Tel Aviv University Ltd. Activatable toxin complexes comprising a cleavable inhibitory peptide
CA2879667C (en) 2012-07-20 2021-11-16 Taiga Biotechnologies, Inc. Enhanced reconstitution and autoreconstitution of the hematopoietic compartment comprising a myc polypeptide
CA2880869A1 (en) 2012-08-20 2014-02-27 The Regents Of The University Of California Polynucleotides having bioreversible groups
US9701714B2 (en) * 2012-10-22 2017-07-11 University Of Virginia Patent Foundation Compositions and methods for regulating arterial tone
WO2014066916A2 (en) 2012-10-28 2014-05-01 Revance Therapeutics, Inc. Compositions and methods for safe treatment of rhinitis
CN105228642A (zh) * 2013-02-22 2016-01-06 纽约市哥伦比亚大学理事会 通过抑制转录因子atf5来抑制肿瘤细胞的组合物和方法
US9365825B2 (en) 2013-03-11 2016-06-14 Taiga Biotechnologies, Inc. Expansion of adult stem cells in vitro
US10272115B2 (en) 2013-03-11 2019-04-30 Taiga Biotechnologies, Inc. Production and use of red blood cells
US11484580B2 (en) 2014-07-18 2022-11-01 Revance Therapeutics, Inc. Topical ocular preparation of botulinum toxin for use in ocular surface disease
GB201507722D0 (en) 2015-05-06 2015-06-17 Norwegian Univ Sci & Tech Ntnu Anti-bacterial agents and their use in therapy
KR20190092472A (ko) 2016-12-02 2019-08-07 타이가 바이오테크놀로지스, 인코포레이티드 나노입자 제제
WO2018152446A2 (en) 2017-02-20 2018-08-23 Sapience Therapeutics, Inc. Cell-penetrating atf5 polypeptides and uses thereof
EP3375871A1 (en) 2017-03-13 2018-09-19 SIT Biotech GmbH Selective cell death-inducing enzyme system
WO2019006455A1 (en) 2017-06-30 2019-01-03 Solstice Biologics, Ltd. AUXILIARIES OF CHIRAL PHOSPHORAMIDITIS AND METHODS OF USE THEREOF
US10149898B2 (en) 2017-08-03 2018-12-11 Taiga Biotechnologies, Inc. Methods and compositions for the treatment of melanoma
CA3203983A1 (en) 2018-01-03 2019-07-11 Sapience Therapeutics, Inc. Atf5 peptide variants and uses thereof
GB201915454D0 (en) 2019-10-24 2019-12-11 Norwegian Univ Sci & Tech Ntnu Antibacterial bone cement and uses thereof
EP4125992A4 (en) * 2020-03-24 2024-04-03 Young Therapeutics Llc PROTEIN KINASE C MODULATORS
GB202006699D0 (en) 2020-05-06 2020-06-17 Therapim Pty Ltd Dosage regimen
GB202008888D0 (en) 2020-06-11 2020-07-29 Norwegian Univ Of Science And Technology (Ntnu) Peptides for sepsis treatment
CN111778269B (zh) * 2020-06-11 2022-05-17 军事科学院军事医学研究院军事兽医研究所 抗h5n1病毒入胞抗体ptd-3f及其应用

Family Cites Families (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5132213A (en) 1986-10-02 1992-07-21 Massachusetts Institute Of Technology Method for producing proteins and polypeptides using ubiquitin fusions
AU3756789A (en) * 1988-06-16 1990-01-12 St. Louis University Antagonists of viral transactivating proteins
US5747641A (en) * 1989-12-21 1998-05-05 Biogen Inc Tat-derived transport polypeptide conjugates
US5283173A (en) 1990-01-24 1994-02-01 The Research Foundation Of State University Of New York System to detect protein-protein interactions
US5219990A (en) 1991-01-28 1993-06-15 Biogen, Inc. Papillomavirus e2 trans-activation repressors
US5532142A (en) 1993-02-12 1996-07-02 Board Of Regents, The University Of Texas System Method of isolation and purification of fusion polypeptides
US5589362A (en) 1993-06-14 1996-12-31 Basf Aktiengesellschaft Tetracycline regulated transcriptional modulators with altered DNA binding specificities
GB9718609D0 (en) * 1997-09-02 1997-11-05 Imp College Innovations Ltd Fusion protein
WO1999055899A1 (en) * 1998-04-28 1999-11-04 Washington University Methods for transducing fusion molecules

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US8741849B2 (en) 2007-01-10 2014-06-03 Purdue Research Foundation Kinase inhibitors and uses thereof
US9447158B2 (en) 2007-01-10 2016-09-20 Purdue Research Foundation Kinase inhibitors and uses thereof
US9493508B2 (en) 2007-01-10 2016-11-15 Purdue Research Foundation Polypeptide inhibitors of HSP27 kinase and uses therefor
US9649354B2 (en) 2007-01-10 2017-05-16 Purdue Research Foundation Polypeptide inhibitors of HSP27 kinase and uses therfor
JP2010535508A (ja) * 2007-08-07 2010-11-25 パデュー リサーチ ファンデイション キナーゼ阻害薬およびその使用
WO2009051078A1 (ja) * 2007-10-15 2009-04-23 Takara Bio Inc. 治療用遺伝子発現システム
US9327008B2 (en) 2008-12-10 2016-05-03 Purdue Research Foundation Cell-permeant peptide-based inhibitor of kinases
US9890195B2 (en) 2009-07-27 2018-02-13 Purdue Research Foundation MK2 inhibitor compositions and methods to enhance neurite outgrowth, neuroprotection, and nerve regeneration
JP2014513926A (ja) * 2011-03-11 2014-06-19 メルツ ファルマ ゲーエムベーハー ウント コンパニー カーゲーアーアー ボツリヌス神経毒生物活性の決定のための方法
US9452218B2 (en) 2012-03-09 2016-09-27 Purdue Research Foundation Compositions and methods for delivery of kinase inhibiting peptides
US10034839B2 (en) 2012-03-09 2018-07-31 Purdue Research Foundation Compositions and methods for delivery of kinase inhibiting peptides

Also Published As

Publication number Publication date
US20030054000A1 (en) 2003-03-20
EP1037911A4 (en) 2003-07-23
WO1999029721A1 (en) 1999-06-17
US6221355B1 (en) 2001-04-24
AU1818299A (en) 1999-06-28
US6645501B2 (en) 2003-11-11
CA2314267A1 (en) 1999-06-17
EP1037911A1 (en) 2000-09-27

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6645501B2 (en) Anti-pathogen system and methods of use thereof
JP2002531113A (ja) 蛋白質の形質導入システムおよびその使用法
CA2364690A1 (en) Novel transduction molecules and methods for using same
JP4522697B2 (ja) プロテアーゼ検出系
AU711126B2 (en) Protein targeting into HIV virions based on HIV-1 VPR fusion molecules
CA2362560A1 (en) Controlling protein levels in eucaryotic organisms
AU2002330756A1 (en) System for detecting protease
US6001985A (en) Fusion protein delivery systems and uses thereof
Wu et al. Inhibition of human and simian immunodeficiency virus protease function by targeting Vpx-protease-mutant fusion protein into viral particles
US6271354B1 (en) Chimeric viral proteins
JP4927546B2 (ja) ヘプタペプチドパターン及び細胞透過ドメインを含む相互作用ポリペプチド
Boross et al. Drug targets in human T-lymphotropic virus type 1 (HTLV-1) infection
Mariani et al. Identification of the RT–RH/IN cleavage site of HTLV-I
CA2236036A1 (en) Signal-regulated, cleavage-mediated toxins
Chen HIV-1 Tat targets microtubules and a microtubule-associated death molecule Bim to induce apoptosis
AU743113C (en) Fusion protein delivery system and uses thereof
CA2371846A1 (en) Methods and reagents for inhibiting proliferation of smooth muscle cells
Janardhan Identification of immediate downstream effectors of HIV-1 Nef in T lymphocytes
Badley HIV Protease (PR) and Cell Death