JP2002503326A - 剛性玉軸受のための保持器及び関連せる軸受 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 二つの軌道面の間に配された少なくとも一列の玉（１６）を保持するようになっている形式の保持器（１７）であって、保持器は、軸方向で玉に隣接するリング状部（１８）と、玉を収容するための複数のスロット溝（２２）とを有し、該スロット溝は凹弯曲面で形成されており、該スロット溝は上記リングの軸方向で一方の側に開口し、半径方向では両方の側に開口しており、上記スロット溝は、リップ（２１）を端部に形成して終わるようにしてリングに対して反対側へ延びている間隔形成部（１９）により分離形成されているものに関する。該凹弯曲面が球面部（２３）とつながる円錐台面部（２４）を有している。

Description

【発明の詳細な説明】 剛性玉軸受のための保持器及び関連せる軸受 本発明は、剛性玉軸受のための合成樹脂製保持器の分野に関する。 軸受に用いられる保持器は、複数の転動体を周方向に均等に間隔をもって常時 保持するためのものである。 合成樹脂製の保持器は、例えばナイロン６，６のようなプラスチックを射出成 形して作られ、このプラスチックはガラス繊維のような補強材料を含有したりし なかったりしている。 これらの保持器は、リングの軸方向で一方の面にてそして半径方向で両方の面 にて開口している球状のスロット溝をもつ環状のリングを有しており、各スロッ ト溝は、該スロット溝の閉じた側の端部から遠ざかるように軸方向に延びるリッ プによって軸方向に延長して形成されている。 この形式の保持器は、軸受の玉の列に対しての軸方向でのスナップ取付けによ り組み込まれ、上記玉は非常に小さな遊びのもとにスロット溝へ取り込まれる。 スロット溝の球面状の包囲面は、玉の列に対して保持器の軸方向位置を維持する と共に二つの対向軌道面に関して保持器をそれらの中央に位置せしめる。 これらの保持器は製造が経済的であり、重量も小さく、浸食等の問題もない。 しかし、苛酷な荷重そして速度条件が課せられる特定な応用分野については、こ れらの保持器が早期に損傷し、特に根元部で保持器の破損があるということが判 明した。 驚くべきことには、これらの損傷は、軸受の回転方向に位置するリップの領域 でのスロット溝の内側縁部の領域における、遠心力と印加荷重の影響のもとでの 、特に高い摩耗に起因しているということが判明した。 スロット溝の内側縁部は、軸受の回転軸に向けて位置しているスロ ット溝のこれらの縁部を意味するよう定義づけられる。 スロット溝の底部は、軸受の回転軸の最も近いスロット溝の部分を意味するよ う定義づけられる。 特定の速度と荷重条件のもとでは、玉とスロット溝との間の接触の危険域は、 軸受の回転方向におけるリップの領域での、スロット溝の下部に位置していると いうことが判っている。玉とスロット溝の間でのいわゆる“縁部”接触はこの危 険域で生じており、この接触は軸受荷重と回転速度条件に起因している。この縁 部接触は鋭い縁部で生じ、したがって、接触圧の観点からもそして局部的潤滑条 件の観点からも非常に悪い状況をもたらす。玉と接触すると、比較的撓み易いス ロット溝の溝部は変形する傾向を示す。この変形は、高接触圧、玉の回転により 発生する摩擦、そして接触部での不十分な潤滑と相俟って、早期のスロット溝で の摩耗につながる。 本発明の目的は、このような従来の保持器の欠点を解消し、接触域を鋭い縁部 から遠ざける方向に移すことによって、玉とスロット溝との接触条件を改善でき るスロット溝の形態をもつ保持器を提供することにある。 本発明による保持器は、二つの軌道面の間に配された少なくとも一列の玉を保 持するようになっている形式のものである。保持器は、軸方向で玉に隣接するリ ング状部と、玉を収容するための複数のスロット溝とを有している。スロット溝 は凹弯曲面で形成されており、該スロット溝は上記リングの軸方向で一方の側に 開口し、半径方向では両方の側に開口しており、上記スロット溝は、リップを端 部に形成して終わるようにしてリングに対して反対側へ延びている間隔形成部に より分離形成されている。凹弯曲面は球面部とつながる円錐台面部を有している 。 本発明の一つの実施形態では、円錐台面部はスロット溝の内側縁部に沿って形 成され、凹弯曲面の残部をなす球面部につながっており、保持器の回転軸の方向 に狭まっている。球面部は保持器の外側縁部に 形成されている。玉とスロット溝との接触の領域は、かくして、スロット溝の内 側縁部から離れて位置するようになって、鋭い角部での玉とスロット溝との間の 縁部接触が回避されるようになり、これはこの領域での接触特性を著しく改善し 、結果として、保持器の摩耗が良好に低減される。さらには、より大きな潤滑剤 空間を形成するスロット溝の基部における円錐形状によって潤滑も改善される。 軸受の正規の運転にとって大いに好ましい潤滑剤の貯留部がスロット溝の基部に 形成される。従来の保持器と比べ、本発明の保持器は、保持器のスロット溝内に 玉を保持器の軸方向そして半径方向に保持する能力を維持する。 本発明の一つの形態では、円錐台面部は球面部と接線方向につながる。 本発明の他の形態では、円錐台面部は球面部と交叉するよう、好ましくは凹角 あるいは撓みを形成するように球面部とつながるのが良い。 で、Ｙ＝（Ｄｉ²＋Ｄｐ²-Ｄａ²）／（４×Ｄｐ）で、Ｄｉが保持器の内径の直径 で、Ｄｐがスロット溝の球面部の中心を通る円の直径であるとしたときに、円錐 台面部の角αが０とπ−２arcsin（２×Ｘ／Ｄａ）との間にあるとすることであ る。 スロット溝の円錐台面部の基部と球面部の中心との間の距離ｄは０とＤｐ／２ −Ｙの間であり、ここでＤｐはスロット溝の球面部の中心を通る円の直径で、Ｙ ＝（Ｄｉ²＋Ｄｐ²−Ｄａ²）／（４×Ｄｐ）である。 円錐台面部の基部での直径Ｂは２×ＸとＤａとの間であり、ここでＤａはスロ ット溝の直径である。 本発明は、又、上述のごとくの保持器を有する玉軸受にも関する。 この保持器は、かくして、玉と保持器との間のいわゆる「縁部」接触の改善そ して良好な潤滑の故に、耐摩耗性を呈し、これによって保持器の破損による軸受 の早期損傷という危険を低減する。 本発明は、限定されないように選択され添付図面に示された一つの実施形態の 詳細な説明を研究することにより、より良好に理解できる。 図１は従来の玉軸受の軸方向断面図である。 図２は従来の保持器の部分的正面図である。 図３は図１でのIII-III断面図である。 図４は従来の保持器でのスロット溝と玉との接触面の概要図である。 図５は従来の保持器について二つの直角方向での接触圧の分布を示す概要図で ある。 図６は本発明による保持器の図５に類似する図である。 図７は本発明による保持器の部分断面図である。 図８は本発明による保持器の斜視図である。 図１ないし図３に見られるように、従来型の軸受１は、内周面に環状の軌道面 ３が形成された外輪２と、外周面に環状の軌道面５が形成された内輪４と、外輪 ２の軌道面３と内輪４の軌道面との間に配された一列の転動体６、例えば玉を有 している。 転動体６の列は、合成樹脂製の保持器７により保持されており、該保持器７は 、転動体６の列の一方の側で外輪２と内輪４との間に配されたリング状部８と、 外輪２と内輪４との間にあってかつ転動体６同士の間に配された間隔形成部９と を有している。リング８と間隔形成部９とは、転動体６が収容される球面状のス ロット溝１０を周方向に均等に位置せしめるようにして形成している。この間隔 形成部９は、転動体６に関して保持器７を保持するリップ１１を端部に形成する ようにしてリング８に対して軸方向反対側に延出している。 図４はスロット溝と転動体との間での理論的接触面を図示するものである。保 持器の動作を研究するために、この面はいくつかの区画に分けられている。灰色 に影付けがなされた区画で、保持器と転動体との間の接触圧が最も高くなってい ることを示していることが判る。この灰色に影付けされた区画は、回転方向で保 持器のリップに近いスロット溝の内側縁部に対応している。 転動体と保持器との間における、二つの直角な方向における接触圧が図５に示 されている。これらの圧力は比較的高く、スロット溝の内側縁部の角部の領域で 生じていることが判る。 これとは対照的に、図６に見られるように、本発明による保持器と転動体との 間に作用する接触圧は、はるかに低く、特に半径方向にてそうであり、スロット 溝内側縁部の角部から或る程度離れた部位で生じていることが判る。 図６、図７そして図８に見られるように、各要素の参照符号は前出の図におけ る類似の要素のものに対して、数字１０だけ増えている。保持器１７は、球面部 ２３とつながる円錐台面部をもった凹弯曲状のスロット溝２２が形成されている 。円錐台面部２４は、保持器のスロット溝の内側縁部の部位にあって、保持器の 回転軸線の方向に収束した形となっている。この円錐台面部２４は、球面部２３ と接線方向につながっていても、数度の角度をもって交叉するようにつながって いても良い。特に摩耗現象に大きな影響をもたらす半径方向成分に関しては、接 触圧の大きさは著しく小さくなっていることが、特に図６において良く判る。 玉と保持器との接触がスロット溝の内側縁部を境界づけている鋭い角部から離 れている位置で生じていることにも注目すべきである。さらに、この内側縁部に おいては、転動体１６とスロット溝２２の円錐台面部２４との間に小さな空間が 存在していて、この空間が軸受の正規の運転にとって好ましい潤滑剤のための貯 留部を形成する。 図にて、次の符号、 Ｄａ−スロット溝の直径 Ｄｉ−保持器の内径 Ｄｐ−スロット溝の球面部の中心を通る円の直径 は、球面部２３と円錐台面部２４のそれぞれ可能な寸法を定義するように選ばれ ている。 もし、保持器がスロット溝の球面部の中心を通る面で断面されると、 その断面内で直交するＹＯＸ軸系が各スロット溝に設定でき、Ｏは保持器の回転 軸線上に位置し、軸ＯＹはスロット溝の中心を通り、軸ＯＸはＯにてＯＹと直交 するようになる。 もし、断面においてスロット溝の球形と保持器の円径円との理論上の交点をＰ で表わすと、上記ＹＯＸ軸系での点Ｐの横座標はＸで表わされ、点Ｐの縦座標は Ｙで表わされる。 Ｂは、円錐台面部の基位置での直径、すなわち円錐台面部と球面部との交わる 点での直径であり、 ｄは、スロット溝の円錐台面部の基位置と球面部の中心との距離であり、 αは円錐台面部の頂角である。 十分満足した運転をする保持器を得るためには、次の範囲での変更の選択が好 ましい。 ここで Ｙ＝（Ｄｉ²＋Ｄｐ²−Ｄａ²）／（４ｘＤｐ） したがって、本発明は玉とスロット溝とが接触する領域をスロット溝の内側縁 部から遠ざけ、これによって鋭い角部における縁部接触を回避し、かくして、こ の領域における接触圧特性を著しく改善する。保持器の摩耗は激減する。この特 徴は、潤滑剤のためにより大きい空間を提供するスロット溝の基部の円錐形状に もとづく潤滑における改善によってさらに助長される。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．二つの軌道面の間に配された少なくとも一列の玉（１６）を保持するように なっている形式の保持器（１７）であって、保持器は、軸方向で玉に隣接するリ ング状部（１８）と、玉を収容するための複数のスロット溝（２２）とを有し、 該スロット溝は凹弯曲面で形成されており、該スロット溝は上記リングの軸方向 で一方の側に開口し、半径方向では両方の側に開口しており、上記スロット溝は 、リップ（２１）を端部に形成して終わるようにしてリングに対して反対側へ延 びている間隔形成部（１９）により分離形成されており、該凹弯曲面が球面部（ ２３）とつながる円錐台面部（２４）を有しているものにおいて、円錐台面部は 保持器のスロット溝の内側縁部に形成され、保持器の回転軸の方向に狭まってお り、球面部がスロット溝の残部を占めていることを特徴とする保持器。 ２．円錐台面部は球面部と接線方向につながることを特徴とする請求の範囲１． に記載の装置。 ３．円錐台面部は球面部と交叉するように球面部とつながることを特徴とする請 求の範囲１．に記載の装置。 ｉ²＋Ｄｐ²−Ｄａ²）／（４×Ｄｐ）で、Ｄｉが保持器の内径の直径で、Ｄｐが スロット溝の球面部の中心を通る円の直径であるとしたときに、円錐段面部の角 αが０とπ−２arcsin（２×Ｘ／Ｄａ）との間にあるとすることを特徴とする請 求の範囲１．ないし３．のうちの一つに記載の装置。 ５．Ｄｐがスロット溝の球面部の中心を通る円の直径で、Ｙが（Ｄｉ²＋Ｄｐ²− Ｄａ²）／（４×Ｄｐ）に等しく、Ｄａがスロット溝の直径で、Ｄｉが保持器の 内径の直径で、Ｄｐがスロット溝の球面部を通る円の直径であるとしたときに、 スロット溝の円錐台面部の基部と球面部の中心との間の距離ｄは０とＤｐ／２− Ｙの間であり、ここでＤｐはス ロット溝の球面部の中心を通る円の直径で、Ｙ＝(Ｄｉ²＋Ｄｐ²−Ｄａ²)／（４ ×Ｄｐ）であることを特徴とする請求の範囲１．ないし４．のうちの一つに記載 の装置。 ６．円錐台面部の基部での直径Ｂは２×ＸとＤａとの間であることを特徴とする 請求の範囲１．ないし５．のうちの一つに記載の装置。 ７．請求の範囲１．ないし６．のうちの一つに記載の保持器を有する玉軸受。