JP2002373662A - 固体高分子型燃料電池用電極 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用電極

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唯啓 柴
Yuichiro Sugiyama
雄一郎 杉山
Kaoru Fukuda
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カーボン粒子に担持させる触媒の量を増やす
ことなく発電効率を向上させることができる固体高分子
型燃料電池用電極を提供する。 【解決手段】 電子伝導性粒子1の表面に触媒物質10
が担持された触媒担持粒子と、イオン伝導性ポリマー2
中に触媒物質20が分散した触媒含有高分子電解質とを
混在させた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固体高分子型燃料
電池用電極に係り、特に、触媒を有効に機能させる技術
に関する。
【0002】
【従来の技術】固体高分子型燃料電池は、平板状の電極
構造体の両側にセパレータが積層されて構成され、電極
構造体は、一般に、正極側の電極触媒層と負極側の電極
触媒層との間に高分子電解膜が挟まれ、各電極触媒層の
外側にガス拡散層がそれぞれ積層された積層体である。
このような燃料電池によると、例えば、負極側に配され
たセパレータのガス通路に水素ガスを流し、正極側に配
されたセパレータのガス通路に酸化性ガスを流すと、電
気化学反応が起こって電流が発生する。燃料電池の作動
中においては、ガス拡散層は電気化学反応によって生成
した電子を電極触媒層とセパレータとの間で伝達させる
と同時に燃料ガスおよび酸化性ガスを拡散させる。ま
た、負極側の電極触媒層は燃料ガスに化学反応を起こさ
せプロトン(H)と電子を発生させ、正極側の電極触
媒層は酸素とプロトンと電子から水を生成し、電解膜は
プロトンをイオン伝導させる。そして、正負の電極触媒
層を通して電力が取り出される。ここで、電極触媒層と
しては、表面にPt等の触媒粒子を担持させたカーボン
粒子とイオン伝導性ポリマーからなる電解質とを混合し
たものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、負極側で起
こるプロトンおよび電子の生成は、触媒、カーボン粒子
および電解質という三相の共存下で行われる。すなわ
ち、プロトンが伝導する電解質と電子が伝導するカーボ
ン粒子が共存し、さらに触媒が共存することで水素ガス
が還元される。したがって、カーボン粒子に担持させる
触媒が多い方が発電効率が高い。これは、正極について
も同様のことが言える。しかしながら、触媒はPt等の
貴金属であるため、カーボン粒子に担持させる触媒の量
を増やすと燃料電池の製造コストが増大するという問題
がある。したがって、本発明は、カーボン粒子に担持さ
せる触媒の量を増やすことなく発電効率を向上させるこ
とができる固体高分子型燃料電池用電極を提供すること
を目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明の固体高分子型燃
料電池用電極は、表面に触媒物質が担持された電子伝導
性粒子と、ポリマー中に触媒物質が分散されたイオン伝
導性ポリマーからなることを特徴としている。
【0005】図1は、本発明の固体高分子型燃料電池用
電極の作用を説明するための概念図である。図に示すよ
うに、本発明の燃料電池用電極は、例えば電子伝導性粒
子1とイオン伝導性ポリマー2とにより多数の空孔3を
有する多孔質体として構成される。電子伝導性粒子1の
表面には複数の触媒物質10が担持されている。また、
イオン伝導性ポリマー2には触媒物質20が分散してい
る。
【0006】水素ガス等の燃料ガスは空孔3を流通し、
触媒物質10の作用で還元されてプロトンと電子を生成
する。この作用は従来の燃料電池用電極と同じである
が、本発明者等は、イオン伝導性ポリマー2に分散した
触媒物質20にも同等の作用があることを見い出した。
すなわち、電子伝導性粒子1の表面の近傍の触媒物質2
0に水素ガスが接触すると、プロトンと電子を生成し、
プロトンはイオン伝導性ポリマー2中を伝導する。ま
た、電子は、触媒物質20の伝導ネットワークによって
電子伝導性粒子1に伝導するものと考えられる。ただ
し、以上はあくまでも推定であって、このような作用の
有無によって本発明が限定されないことは言うまでもな
い。なお、電子伝導性粒子1の表面の近傍とは表面から
100nm以内で、触媒物質20の一部は電子伝導性粒
子1と接触しているものと推測される。
【0007】本発明者等の検討によれば、イオン伝導性
ポリマー2に分散させる触媒物質20の量は極めて微量
でも効果があることが判明している。つまり、微量の触
媒物質20をイオン伝導性ポリマー2に分散させること
により、電子伝導性粒子1に担持させる触媒物質10の
量を増やすことなく発電効率を向上させることができる
わけである。
【0008】したがって、イオン伝導性ポリマー中には
触媒物質が均一に分散されていることが望ましく、イオ
ン伝導性ポリマーと電子伝導性粒子との接触面およびそ
の近傍に触媒物質が偏在していればさらに好適である。
また、電子伝導性粒子の表面に担持された触媒物質は、
電子伝導性粒子とイオン伝導性ポリマーとを混在させる
前に導電性粒子の表面に予め固着されたものであること
が望ましい。さらに、イオン伝導性ポリマーと電子伝導
性粒子との接触面およびその近傍に偏在している触媒物
質は、電子伝導性粒子とイオン伝導性ポリマーとを混在
させる前に電子伝導性粒子の表面に予め固着された触媒
物質と、電子伝導性粒子とイオン伝導性ポリマーとを混
在させた後にイオン伝導性ポリマー中に均一に分散させ
た触媒物質とからなることが望ましい。
【0009】電子伝導性粒子としては例えばカーボンブ
ラック粒子を用いることができ、触媒物質としては白
金、パラジウム等の白金族金属を用いることができる。
また、イオン伝導性ポリマーとしてはフッ素樹脂系イオ
ン交換樹脂を用いることができる。
【0010】イオン伝導性ポリマーに分散された触媒物
質は、電子伝導性粒子に担持された触媒物質よりも小さ
いことが望ましい。すなわち、より微細な触媒物質がイ
オン伝導性ポリマーに分散することにより、燃料ガスが
活性化される点が増加して触媒物質の利用率が向上する
からである。イオン伝導性ポリマーに分散された触媒物
質の平均粒径は、0.5〜5nmが望ましく、1〜3n
mであればさらに好適である。また、電子伝導性粒子に
担持された触媒物質の平均粒径は、1〜8nmが望まし
く、3〜5nmであればさらに好適である。
【0011】イオン伝導性ポリマーに分散された触媒物
質の量は、触媒物質の総量の1〜80重量%とすること
が望ましい。この触媒物質の量が1%未満では、活性化
過電圧が高くなって利用に供し得る電圧が低下し、触媒
担持粒子のみによって触媒物質を賄う場合に対する利点
が得難くなる。また、イオン伝導性ポリマーに分散され
る触媒物質の量が80重量%を超えると、ほとんどの触
媒物質をイオン伝導性ポリマー中に分散させることとな
り、耐久性を考慮すると発電に必要な触媒物質量の担持
が困難となる。例えば、触媒イオンの置換・還元のみで
触媒物質を導入する場合は、イオン伝導性ポリマーのイ
オン交換容量で触媒物質量が決定するが、触媒物質を増
加させるには置換・還元を繰り返し行うかイオン伝導性
ポリマー量を多くすることが挙げられる。しかしなが
ら、前者では触媒物質の粒径の成長が起こり、後者では
電極中のガス拡散性が低下するという問題がある。イオ
ン伝導性ポリマーに分散される触媒物質の量は、全体の
触媒物質の量の3〜50重量%であるとより望ましく、
3〜20重量%であればさらに好適である。また、電子
伝導性粒子に担持させた触媒物質を増加させることによ
り、イオン伝導性ポリマーと電子伝導性粒子との接触面
およびその近傍に前記触媒物質を偏在させることがで
き、触媒の利用率を大きくすることができる。さらに、
イオン伝導性ポリマー中に触媒物質を均一に分散させる
ことにより、有効な電子伝導ネットワークを構築するこ
とができる。
【0012】本発明は、電子伝導性粒子の比表面積が2
00m/gを超える場合にその効果が特に発揮され
る。すなわち、このような比表面積の大きな電子伝導性
粒子では表面に微細孔が数多く存在し、ガス拡散性が良
好である一方で、微細孔に存在する触媒物質はイオン伝
導性ポリマーと接触しないために反応に寄与しない。こ
の点、本発明ではイオン伝導性ポリマーに分散した触媒
物質は微細孔に進入しないために有効に活用される。つ
まり、本発明では、反応効率を維持しつつガス拡散性を
向上させることができる。
【0013】上記とは逆に、電子伝導性粒子の比表面積
が200m/g以下の場合にも本発明の効果が発揮さ
れる。すなわち、電子伝導性粒子の比表面積が小さいと
撥水性が増加し、イオン伝導性ポリマーのガス拡散性が
増加することが知られている。しかしながら、その場合
には、触媒物質どうしの距離が短くなり、上述した触媒
物質どうしの凝集や焼結の問題が生じる。この点、本発
明では、電子伝導性粒子に多くの触媒物質を担持させる
必要が無いので、そのような不具合を解消することがで
きる。
【0014】電子伝導性粒子に対するイオン伝導性ポリ
マーの重量比は、1.2以下にすることが望ましい。イ
オン伝導性ポリマーの量が少ないと空孔率が増加してガ
ス拡散性が向上する。その一方で触媒担持粒子を被覆す
る触媒含有高分子電解質の量が少なくなり、燃料ガスが
活性化される点が減少して触媒物質の利用率が低下す
る。この点、本発明においては、触媒含有高分子電解質
に含まれる触媒物質の存在により、燃料ガスが活性化さ
れる点が補われるから、触媒物質の利用率を低下させる
ことなく活性化過電圧を低下させることができる。
【0015】本発明の燃料電池用電極は、次のようにし
て製造することができる。先ず、表面に触媒物質を担持
させた電子伝導性粒子とイオン伝導性ポリマーとを混合
し、この混合物を触媒物質を含む溶液で処理してイオン
置換する。例えば、イオン伝導性ポリマーがスルホン基
を有する場合には、スルホン基のプロトンが触媒物質を
含む陽イオンによって置換される。次いで、イオン置換
後の混合物を還元雰囲気にさらすことにより、微細な触
媒物質をイオン導電性物質中に分散させることができ
る。
【0016】還元方法は、水素や一酸化炭素などの還元
性ガスを用いる気相法(乾式)と、NaBH、ホルム
アルデヒド、ブドウ糖、ヒドラジン等を用いる液相法
(湿式)に大きく分けることができる。本発明ではいず
れの還元方法も採用することができるが、液相法の方が
好ましい。その理由は、液相法による還元では、イオン
伝導性ポリマー中の触媒金属イオンが全て還元され、イ
オン伝導性ポリマー中に触媒物質が均一に分散されるか
らである。
【0017】表面に触媒物質を担持した電子伝導性粒子
とイオン伝導性ポリマーとを混合して電極ペーストと
し、この電極ペーストをシート状に形成してから上記の
イオン置換を行うことができる。あるいは、電極ペース
ト作製後、これを乾燥固化して粉砕し、粉末化した状態
でイオン置換・還元を行った後に、ペースト状にしてシ
ート状に成形することもできる。また、ペースト作製後
にイオン置換・還元を行うこともできる。シート状に成
形するには、電極ペーストを膜電極複合体作製後に剥が
すことになるフィルムに塗布する方法、または電極ペー
ストをカーボンペーパーや電解膜に塗布する方法等、公
知の製造方法で作製することができる。
【0018】イオン置換には、触媒金属が白金の場合に
は、Pt(NH(OH)、Pt(NH
、PtCl等の溶液を用いることができる。ま
た、イオン置換される触媒金属イオンは、Pt等の金
属イオンそのものの他、Pt(NH 2+のような
錯体イオンであってもよい。なお、イオン置換を用いな
いでも触媒物質をイオン伝導性ポリマーに分散させるこ
とができる。たとえば、Pt(NH(N
、HPtCl、HPt(OH)等をイ
オン伝導性ポリマーと良く混合し、その後に触媒金属イ
オンを還元することで触媒含有高分子電解質とすること
もできる。なお、触媒金属イオンとは、触媒金属イオン
のみならず、錯体イオン等触媒物質を含むイオン等まで
含まれる。
【0019】
【実施例】次に、具体的な実施例により本発明を詳細に
説明する。 [実施例1]イオン伝導性ポリマー(Nafion SE5112 Du
pont社製)100gと、カーボンブラックと白金との重
量比を50:50とした白金担持カーボン粒子(TEC10E
50E、田中貴金属工業社製、)10gと、グリセリン
(関東化学社製)5gとを混合し、触媒ペーストとし
た。次いで、触媒ペーストをFEP(テトラフルオロエ
チレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)製のシー
トに塗布し乾燥した。このときの白金の塗布量は0.3
2mg/cmである。
【0020】得られた電極シートをPt(NH
(OH)水溶液に浸漬してイオン置換を行った後、
これをNaBH水溶液に浸漬して還元を行った。この
ときの白金量は、上記白金と併せて0.34mg/cm
であった。次いで、電極シートを硝酸および水で洗浄
した後、100℃で乾燥した。なお、この洗浄は、上記
水溶液に含まれる白金以外の不要分を除去するためのも
のである。次いで、電極シートをデカール法にて高分子
電解膜(Nafion製)の両面に転写し、膜電極複合体(M
EA)を得た。なお、デカール法による転写とは、電極
シートを高分子電解膜に熱圧着した後にFEPシートを
剥離することを言う。
【0021】得られた膜電極複合体の両面に水素ガスお
よび空気を供給して発電を行った。水素ガスおよび空気
の温度はともに80℃とした。そのときの水素ガスの利
用率(消費量/供給量)は50%、空気の利用率は50
%であった。また、水素ガスの湿度は50%RH、空気
の湿度は50%RHであった。この発電における電流密
度と電圧との関係を図3に示す。
【0022】[比較例1,2]Ptのイオン置換を行わ
ずに白金担持Ptカーボン粒子のみで白金を賄った点
と、白金の塗布量を0.3mg/cmと0.5mg/
cmにした以外は実施例1と同様にして膜電極複合体
を作製し、これらを比較例1,2とした。作製した膜電
極複合体に対して実施例1と同じ条件で発電を行った。
この発電における電流密度と電圧との関係を図3に併記
した。
【0023】図3から明らかなように、実施例1では、
比較例1よりも白金の塗布量が少ないにもかかわらず、
電圧が高く、特に、比較例2と比較すると格段に高い。
したがって、本発明では、少ない触媒物質で高い発電効
率が得られることが確認された。
【0024】実施例1および比較例1,2における白金
塗布量と電流密度が0.5A/cm のときの電圧との
関係を図2に示した。図2に示すように、実施例1で
は、0.02mg/cmの白金をイオン置換によって
加えることにより、白金担持カーボン粒子だけで白金を
賄う比較例1,2と比較して格段に電圧が高いことが判
る。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように本発明においては、
電子伝導性粒子の表面に触媒物質が担持された触媒担持
粒子と、イオン伝導性ポリマー中に触媒物質が分散した
触媒含有高分子電解質とを混在させているので、カーボ
ン粒子に担持させる触媒の量を増やすことなく発電効率
を向上させることができる等の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の作用を説明するための固体高分子型
燃料電池用電極の概念図である。
【図2】 本発明の実施例における白金塗布量と電圧と
の関係を示す線図である。
【図3】 本発明の実施例における電流密度と電圧との
関係を示す線図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 福田 薫 埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会 社本田技術研究所内 Fターム(参考) 5H018 AA02 AA06 AS02 AS03 BB08 CC06 DD08 DD10 EE03 EE05 EE17 EE18 5H026 AA02 AA06 BB04 CX05 EE02 EE05 EE18

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に触媒物質が担持された電子伝導性
    粒子と、ポリマー中に触媒物質が分散されたイオン伝導
    性ポリマーからなる固体高分子型燃料電池用電極。
  2. 【請求項2】 前記イオン伝導性ポリマー中には触媒物
    質が均一に分散されていることを特徴とする請求項1に
    記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  3. 【請求項3】 前記イオン伝導性ポリマーと前記電子伝
    導性粒子との接触面およびその近傍に前記触媒物質が偏
    在していることを特徴とする請求項1または2に記載の
    固体高分子型燃料電池用電極。
  4. 【請求項4】 前記電子伝導性粒子の表面に担持された
    触媒物質は、前記電子伝導性粒子と前記イオン伝導性ポ
    リマーとを混在させる前に前記電子伝導性粒子の表面に
    予め固着されたものであることを特徴とする請求項1〜
    3のいずれかに記載の固体高分子型燃料電池用電極。
  5. 【請求項5】 前記イオン伝導性ポリマーと前記電子伝
    導性粒子との接触面およびその近傍に偏在している触媒
    物質は、前記電子伝導性粒子と前記イオン伝導性ポリマ
    ーとを混在させる前に前記電子伝導性粒子の表面に予め
    固着された触媒物質と、前記電子伝導性粒子と前記イオ
    ン伝導性ポリマーとを混在させた後に前記イオン伝導性
    ポリマー中に均一に分散させた触媒物質とからなること
    を特徴とする請求項3に記載の固体高分子型燃料電池用
    電極。
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