JP2002357597A - 疾患関連遺伝子の用途 - Google Patents

疾患関連遺伝子の用途

Info

Publication number
JP2002357597A
JP2002357597A JP2001199318A JP2001199318A JP2002357597A JP 2002357597 A JP2002357597 A JP 2002357597A JP 2001199318 A JP2001199318 A JP 2001199318A JP 2001199318 A JP2001199318 A JP 2001199318A JP 2002357597 A JP2002357597 A JP 2002357597A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
protein
dna
amino acid
present
acid sequence
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP2001199318A
Other languages
English (en)
Inventor
Nobuyuki Koyama
信行 小山
Seiichi Tanida
清一 谷田
Toshifumi Watanabe
敏文 渡邉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takeda Chemical Industries Ltd filed Critical Takeda Chemical Industries Ltd
Priority to JP2001199318A priority Critical patent/JP2002357597A/ja
Publication of JP2002357597A publication Critical patent/JP2002357597A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Medicines That Contain Protein Lipid Enzymes And Other Medicines (AREA)
  • Medicines Containing Antibodies Or Antigens For Use As Internal Diagnostic Agents (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)
  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Preparation Of Compounds By Using Micro-Organisms (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】疾患関連遺伝子産物を用いる薬剤のスクリーニ
ング方法、疾患関連遺伝子産物に対する抗体、疾患関連
遺伝子の発現を抑制するアンチセンスDNAの提供な
ど。 【解決手段】疾患関連遺伝子産物を用いる薬剤のスクリ
ーニング方法、該スクリーニング方法によって得られる
化合物など。 【効果】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一も
しくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質
の活性を調節する化合物またはその塩、該タンパク質の
活性を調節する中和抗体は、例えば、心疾患などの疾病
の予防・治療剤として使用することができる。また、ア
ンチセンスDNAは、配列番号:1で表されるアミノ酸
配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有す
るタンパク質の発現を調節することができ、例えば、心
疾患などの疾病の予防・治療剤として使用することがで
きる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、疾患関連遺伝子の
用途に関する。さらに詳しくは、該疾患関連遺伝子産物
を用いる薬剤のスクリーニング方法、心筋症、心筋梗
塞、心不全、狭心症などの心疾患の診断マーカーとして
有用な疾患関連遺伝子に対するアンチセンスヌクレオチ
ド、該疾患関連遺伝子産物に対する抗体などに関する。
【0002】
【従来の技術】心不全とは、心筋の収縮不全と考えられ
ている。発症の機序としては、次のようなものが考えら
れる。心筋の障害、心臓ポンプの機械的異常、心臓ポン
プの機能的異常、高血圧及び肺高血圧による圧負荷及び
貧血、急性腎炎など容量負荷が原因となり、生体の需要
に応じた血液量を心臓が拍出し得なくなる状態に対し
て、心臓は交感神経系、神経―体液―内分泌系などの代
償機序を作動することにより、生体の恒常性を維持しよ
うとする。すなわち、心不全の代償機序としては、 1)前負荷が増大して心臓の収縮力が増す。従ってサル
コメアの長さが増大する結果として心拡大が生じる、
2)心筋の収縮単位が増す。その結果として心筋肥大が
生じる、3)全身に必要な血液を駆出できない状態を補
うため神経液性因子が活性化され、局所的には心筋繊維
化が進展する。基本的には与えられた負荷に対して修正
を加え、適応しようとする機序であるが、その発現が不
十分で心不全がより進展する場合もあるし、逆に過剰に
作動するため心筋傷害的に作用し、心不全を悪化させる
場合もあると理解されている。代償機序が作動した結果
として、心筋細胞が肥大することにより心肥大が生じ
る。しかしながら、前述の障害あるいは負荷が慢性的に
継続された場合、その代償機序の破綻が生じる。つま
り、肥大した心筋細胞に十分な量の血液が供給されず虚
血が生じ、これが原因で心筋収縮不全などの心筋障害が
生じ、心拍出量の低下、臓器循環障害、静脈鬱血、体液
貯留などを伴う心不全症候群を来すことになる。これに
対する治療としては、心筋細胞障害の改善、心保護作用
の強化、心筋収縮不全による心機能低下の回復及びその
原因である生体の代償破綻の抑制あるいは過剰な代償機
序の改善が必要となる。現在、該心不全症候群の治療に
は、臨床的には強心薬として1.ジゴキシンなどの強心
配糖体、2.ドブタミンなどの交感神経作動薬、3.ア
ムリノンなどのホスホジエステラーゼ阻害薬が、また血
管拡張薬としてはヒドララジン、カルシウム拮抗薬及び
アンジオテンシンI変換酵素阻害薬、アンジオテンシン
II受容体拮抗薬などが使用されている。また、他拡張型
心筋症の治療には、βブロッカーなどが使用されてい
る。しかしながら、過剰な代償性機序を抑制あるいは代
償破綻を抑制(アポトーシス抑制を含む)し得る治療薬
はない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、過剰な代償
機序あるいは代償破綻の抑制という観点から治療薬の開
発を目指し、その探索ターゲットの発掘を目的として、
心不全発症時に心臓において発現が上昇する遺伝子を発
見し、その遺伝子産物であるタンパク質の活性を調節す
る化合物のスクリーニング方法、該スクリーニング方法
で得られる化合物などを提供する。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、冠動脈結紮
による心筋梗塞モデルラットの心不全発症時において発
現が増加するmRNAを見出した。配列番号:2でcDNAとし
て表される当該mRNAの発現プロファイルを詳細に検討し
た結果、このmRNAは、術後1週でやや増加し、術後8週
で逆に減少し、術後20週、30週で顕著に増加するこ
とが明らかとなった。その塩基配列からラットCardiac
adriamycin responsive protein(以下CARPと略す。ザ・
ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.
B.C.)、第272巻、22800-22808項、1997年、デベロプメ
ント、第124巻、793-804項、1997年)であると判明し
た。なお、J.B.C.、第272巻、22800-22808項、1997年に
記載の配列及びNCBI(ジーンバンク)に登録されているU5
0736の919番目のTはCが正しく、本発明者らが得たCARP
遺伝子は、デベロプメント、第124巻、793-804項、1997
年で公表された配列に一致した。これらの知見に基づい
て、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至っ
た。
【0005】すなわち、本発明は、(1)配列番号:1
で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の
アミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプ
チドまたはその塩を用いることを特徴とする、配列番
号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に
同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部
分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化合物または
その塩のスクリーニング方法、(2)配列番号:1で表
されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ
ノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチド
またはその塩が、配列番号:1で表されるアミノ酸配列
と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタ
ンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩をコー
ドするDNAを含有するDNAで形質転換された形質転
換体の細胞質内に発現されたものである上記(1)記載
のスクリーニング方法、(3)CARPを発現し得る初
代心筋細胞または心筋由来細胞株(H9c2)に試験化
合物を投与した時および試験化合物を投与しない時にお
ける、それぞれのCARP発現量を測定することを特徴
とするCARPの発現促進薬または阻害薬のスクリーニ
ング方法、(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列
と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタ
ンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有
することを特徴とする、配列番号:1で表されるアミノ
酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有
するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩
の活性を調節する化合物またはその塩のスクリーニング
用キット、(5)上記(1)記載のスクリーニング方法
または(4)記載のスクリーニング用キットを用いて得
られる、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一も
しくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質
もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節す
る化合物またはその塩、(6)上記(1)記載のスクリ
ーニング方法または(3)記載のスクリーニング用キッ
トを用いて得られる、配列番号:1で表されるアミノ酸
配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有す
るタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の
活性を抑制する化合物またはその塩、(7)上記(1)
記載のスクリーニング方法または(4)記載のスクリー
ニング用キットを用いて得られる、配列番号:1で表さ
れるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ
酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチドま
たはその塩の活性を調節する化合物またはその塩を含有
してなる医薬、(8)心疾患の予防・治療剤である上記
(7)記載の医薬、(9)上記(7)記載の医薬を哺乳
動物に投与することを特徴とする心疾患の治療方法、
(10)心疾患の予防・治療剤を製造するための上記
(6)記載の化合物またはその塩の使用、(11)配列
番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的
に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質またはその部
分ペプチドをコードするDNAに相補もしくは実質的に
相補な塩基配列を有するアンチセンスDNA、(12)
上記(11)記載のアンチセンスDNAを含有してなる
医薬、(13)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
パク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対するモ
ノクローナル抗体、および(14)配列番号:1で表さ
れるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ
酸配列を有するタンパク質またはその部分ペプチドまた
はその塩に対する抗体を含有してなる診断薬または医薬
などを提供する。さらに、本発明は、(15)初代心筋
細胞または心筋由来細胞株(H9c2)が、配列番号:
1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一
のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペ
プチドまたはその塩をコードするDNAを含有するDN
Aで形質転換されている上記(3)記載のスクリーニン
グ方法、(16)CARP発現量を、配列番号:1で表
されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ
ノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチド
またはその塩をコードするDNAを用いたノーザンブロ
ッティング法で測定する上記(3)記載のスクリーニン
グ方法、(17)CARP発現量を、配列番号:1で表
されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミ
ノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部分ペプチド
またはその塩をコードするDNAを用いたTaqMan
PCR法で測定する上記(3)記載のスクリーニング
方法、(18)CARP発現量を抗CARPモノクロー
ナル抗体を用いて測定する上記(3)記載のスクリーニ
ング方法、(19)初代心筋細胞または心筋由来細胞株
(H9c2)を致命的な条件下で培養する上記(3)記
載のスクリーニング方法、(20)致命的な条件が血清
の除去であり、CARP発現量を低下する化合物をスク
リーニングする上記(19)記載のスクリーニング方
法、(21)致命的な条件がグルコース濃度の低下であ
り、CARP発現量を低下する化合物をスクリーニング
する上記(19)記載のスクリーニング方法、(22)
致命的な条件が心筋細胞に対して毒性の高い抗癌剤を投
与することであり、CARP発現量を増加する化合物を
スクリーニングする上記(19)記載のスクリーニング
方法、(23)心筋細胞に対して毒性の高い抗癌剤がア
ドリアマイシンである上記(22)記載のスクリーニン
グ方法、(24)低酸素条件下で当該初代心筋細胞また
は心筋由来細胞株(H9c2)に伸展刺激を与える上記
(3)記載のスクリーニング方法、(25)エンドセリ
ンまたはノルエピネフリンを投与して、初代心筋細胞ま
たは心筋由来細胞株(H9c2)に肥大刺激を与える上
記(3)記載のスクリーニング方法、(26)CARP
発現量を初代心筋細胞または心筋由来細胞株(H9c
2)の呼吸活性作用を指標として測定する上記(3)記
載のスクリーニング方法、(27)CARP発現量を初
代心筋細胞または心筋由来細胞株(H9c2)の形態変
化を指標として測定する上記(3)記載のスクリーニン
グ方法、(28)サルコメア構造の恒常性を維持する化
合物のスクリーニング方法である上記(3)記載のスク
リーニング方法、(29)CARP遺伝子のプロモータ
ー配列の下流にレポーター蛋白質をコードする遺伝子を
連結したプラスミドを導入した初代心筋細胞または心筋
由来細胞株(H9c2)に、試験化合物を投与した時お
よび試験化合物を投与しない時における、それぞれのレ
ポーター蛋白質の発現量または活性を測定することを特
徴とするCARPプロモーター活性促進薬または阻害薬
のスクリーニング方法、(30)レポーター蛋白質が酵
素である上記(29)記載のスクリーニング方法、(3
1)酵素がルシフェラーゼまたはベータガラクトシダー
ゼである上記(30)記載のスクリーニング方法、(3
2)上記(1)〜(3)のいずれかのスクリーニング方
法で得られた化合物の心機能または冠動脈流を測定する
ことを特徴とする強心作用を有する化合物か、または
虚血に対して心保護を有する化合物かを選別する方
法、(33)心機能または冠動脈流をランゲンドルフ灌
流心を用いて測定する上記(32)記載の方法、(3
4)心機能または冠動脈流を心筋梗塞モデル動物、高血
圧モデルまたは心肥大モデルを用いて測定する上記(3
2)記載のスクリーニング方法、(35)上記(1)〜
(3)のいずれかのスクリーニング方法で得られた化合
物の虚血耐性能を測定することを特徴とする強心作用
を有する化合物か、または虚血に対して心保護を有す
る化合物かを選別する方法、(36)虚血耐性能を梗塞
サイズまたは心機能を測定することによって行う上記
(35)記載の方法、(37)上記(1)〜(3)のい
ずれかのスクリーニング方法で得られた化合物を非ヒト
哺乳動物に投与した時の心臓重量を測定することを特徴
とする心肥大抑制作用または代償性心肥大の増強作用を
有する化合物の選別方法、および(38)上記(1)〜
(3)のいずれかのスクリーニング方法で得られた化合
物を非ヒト哺乳動物に投与した時の非ヒト哺乳動物の死
亡率または心循環動態を測定することを特徴とする哺乳
動物のQOL改善作用を有する化合物の選別方法などに
関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明で用いられる配列番号:1
で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一の
アミノ酸配列を有するタンパク質(以下、本発明のタン
パク質、本発明で用いられるタンパク質またはCARP
と称することもある)は、ヒトや温血動物(例えば、モ
ルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、
ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞(例えば、肝細胞、脾
細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、
メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上
皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、繊維芽細胞、
繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロフ
ァージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満
細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑
膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺
細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前
駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など)もしくはそれら
の細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部
位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床
下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵
臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副
腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血
管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾
丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などに由来す
るタンパク質であってもよく、合成タンパク質であって
もよい。
【0007】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と実
質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表
わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約6
0%以上、さらに好ましくは約70%以上、より好まし
くは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も
好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列
などが挙げられる。配列番号:1で表されるアミノ酸配
列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質と
しては、例えば、前記の配列番号:1で表されるアミノ
酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番
号:1で表されるアミノ酸配列を有するタンパク質と実
質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、心機能低下促進
活性などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの性
質が性質的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同
質であることを示す。したがって、心機能低下促進活性
が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.
1〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であること
が好ましいが、これらの活性の程度、タンパク質の分子
量などの量的要素は異なっていてもよい。心機能低下促
進活性などの活性の測定は、心エコー測定装置(セル、
第97巻、189項―198項、1999年)あるいは
心臓カテーテルによる心機能測定(サーキュレーション
リサーチ、第69巻、370−377項、1991年)
によって行うことができる。更に例えばアンジオテンシ
ンI変換酵素(ACE)などのレニンアンジオテンシン
系(RAS)の亢進を市販の測定キット(例えばペニス
ラー社やフェニックス社製)を用いて測定したり、血中
カテコラミンの増加活性(東ソー社製、全自動カテコー
ルアミン分析計)などを指標に該活性を測定することが
できる。
【0008】また、本発明で用いられるタンパク質とし
ては、例えば、配列番号:1で表されるアミノ酸配列
中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、
好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜
5)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、配列番
号:1で表されるアミノ酸配列に1または2個以上(好
ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜10個程
度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミノ酸が付
加したアミノ酸配列、配列番号:1で表されるアミノ
酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程
度、好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数
(1〜5)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、
配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1または2
個以上(好ましくは、1〜30個程度、好ましくは1〜
10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)のアミ
ノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または
それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパ
ク質などのいわゆるムテインも含まれる。
【0009】本明細書におけるタンパク質は、ペプチド
標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端
がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で
表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質をはじめ
とする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端が通
常カルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート
(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエステル
(−COOR)の何れであってもよい。ここでエステル
におけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プ
ロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1-6アルキ
ル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの
3-8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフ
チルなどのC6-12アリール基、例えば、ベンジル、フェ
ネチルなどのフェニル−C1-2アルキル基もしくはα−
ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1-2アルキル基
などのC7-14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基
などが用いられる。本発明で用いられるタンパク質がC
末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)
を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエ
ステル化されているものも本発明で用いられるタンパク
質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上
記したC末端のエステルなどが用いられる。さらに、本
発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残
基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例え
ば、ホルミル基、アセチル基などのC 1-6アルカノイル
などのC1-6アシル基など)で保護されているもの、生
体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピ
ログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上
の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾ
ール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保
護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1-6
ルカノイル基などのC1-6アシル基など)で保護されて
いるもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク
質などの複合タンパク質なども含まれる。本発明で用い
られるタンパク質の具体例としては、例えば、配列番
号:1で表されるラット由来のタンパク質などがあげら
れる。
【0010】本発明で用いられるタンパク質の部分ペプ
チドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質
の部分ペプチドであって、好ましくは、前記した本発明
で用いられるタンパク質と同様の性質を有するものであ
ればいずれのものでもよい。例えば、本発明で用いられ
るタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20
個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70
個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは
200個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用
いられる。また、本発明で用いられる部分ペプチドは、
そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、
1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)個)の
アミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1また
は2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好まし
くは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5)
個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に
1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より
好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜
5)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸
配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程
度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程
度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよ
い。
【0011】また、本発明で用いられる部分ペプチドは
C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレ
ート(−COO-)、アミド(−CONH2)またはエス
テル(−COOR)の何れであってもよい。さらに、本
発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で
用いられるタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基
(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護され
ているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタ
ミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミ
ノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されている
もの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなど
の複合ペプチドなども含まれる。本発明で用いられる部
分ペプチドは抗体作成のための抗原としても用いること
ができる。
【0012】本発明で用いられるタンパク質または部分
ペプチドの塩としては、生理学的に許容される酸(例、
無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などと
の塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加
塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸
(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、
あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、
フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、
リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸)との塩などが用いられる。本発明で用い
られるタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその
塩は、前述したヒトや温血動物の細胞または組織から自
体公知のタンパク質の精製方法によって製造することも
できるし、タンパク質をコードするDNAを含有する形
質転換体を培養することによっても製造することができ
る。また、後述のペプチド合成法に準じて製造すること
もできる。ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造す
る場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイ
ズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロ
マトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどの
クロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離
することができる。
【0013】本発明で用いられるタンパク質もしくは部
分ペプチドまたはその塩、またはそのアミド体の合成に
は、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることがで
きる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル
樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹
脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルア
ルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、
PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセト
アミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−
(2',4'-ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェ
ノキシ樹脂、4−(2',4'-ジメトキシフェニル−Fmocア
ミノエチル)フェノキシ樹脂などを挙げることができ
る。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基
を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の
配列通りに、自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で
縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質を切り出
すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で
分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタン
パク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を
取得する。上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タ
ンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いること
ができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジ
イミド類としては、DCC、N,N'-ジイソプロピルカルボジ
イミド、N-エチル-N'-(3-ジメチルアミノプロリル)カ
ルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化に
はラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt, HOOBt)とともに
保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無
水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとして
あらかじめ保護アミノ酸の活性化を行なった後に樹脂に
添加することができる。
【0014】保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用
いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用しう
ることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例え
ば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチル
アセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド
類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化
水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、
ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジ
ン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル
類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル
類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいは
これらの適宜の混合物などが用いられる。反応温度はタ
ンパク質結合形成反応に使用され得ることが知られてい
る範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜50℃の範
囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は
通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応
を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基
の脱離を行なうことなく縮合反応を繰り返すことにより
十分な縮合を行なうことができる。反応を繰り返しても
十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセ
チルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化
することによって、後の反応に影響を与えないようにす
ることができる。
【0015】原料のアミノ基の保護基としては、例え
ば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボ
ルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシ
カルボニル、Cl-Z、Br-Z、アダマンチルオキシカルボニ
ル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2
−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノ
チオイル、Fmocなどが用いられる。カルボキシル基は、
例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、
シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2
−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アル
キルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベ
ンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メ
トキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステ
ル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル
化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブト
キシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化な
どによって保護することができる。セリンの水酸基は、
例えば、エステル化またはエーテル化によって保護する
ことができる。このエステル化に適する基としては、例
えば、アセチル基などの低級(C1-6)アルカノイル
基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカ
ルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導
される基などが用いられる。また、エーテル化に適する
基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニ
ル基、t-ブチル基などである。チロシンのフェノール性
水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2-Bzl、2−
ニトロベンジル、Br-Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、
Tos、4-メトキシ-2,3,6-トリメチルベンゼンスルホニ
ル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmoc
などが用いられる。
【0016】原料のカルボキシル基の活性化されたもの
としては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エ
ステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノー
ル、2,4,5-トリクロロフェノール、2,4-ジニトロフェノ
ール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノー
ル、HONB、N-ヒドロキシスクシミド、N-ヒドロキシフタ
ルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原
料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対
応するリン酸アミドが用いられる。保護基の除去(脱
離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd-炭
素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、
また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオ
ロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれら
の混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルア
ミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなど
による塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによ
る還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応
は、一般に約−20℃〜40℃の温度で行なわれるが、
酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、
チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジ
メチルスルフィド、1,4-ブタンジチオール、1,2-エタン
ジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効で
ある。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用
いられる2,4-ジニトロフェニル基はチオフェノール処理
により除去され、トリプトファンのインドール保護基と
して用いられるホルミル基は上記の1,2-エタンジチオー
ル、1,4-ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による
脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニア
などによるアルカリ処理によっても除去される。
【0017】原料の反応に関与すべきでない官能基の保
護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関
与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段
から適宜選択しうる。タンパク質または部分ペプチドの
アミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カル
ボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化し
て保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖
を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端の
α−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部
分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除
去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これ
らのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶
媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同
様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペ
プチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を
除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ること
ができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各
種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥する
ことで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得
ることができる。タンパク質またはペプチドのエステル
体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−
カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸
エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド
体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエ
ステル体を得ることができる。
【0018】本発明で用いられる部分ペプチドまたはそ
れらの塩は、自体公知のペプチドの合成法に従って、あ
るいは本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダ
ーゼで切断することによって製造することができる。ペ
プチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合
成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明で用い
られる部分ペプチドを構成し得る部分ペプチドもしくは
アミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有
する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチド
を製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱
離としては、例えば、以下の〜に記載された方法が
挙げられる。 M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド・シン
セシス (Peptide Synthesis), Interscience Publisher
s, New York (1966年) SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptid
e), Academic Press, NewYork (1965年) 泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株)
(1975年) 矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タン
パク質の化学IV、 205、(1977年) 矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合
成、広川書店 また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留
・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー
・再結晶などを組み合わせて本発明で用いられる部分ペ
プチドを精製単離することができる。上記方法で得られ
る部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法ある
いはそれに準じる方法によって適当な塩に変換すること
ができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法ある
いはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変
換することができる。
【0019】本発明で用いられるタンパク質をコードす
るDNAとしては、前述した本発明で用いられるタンパ
ク質をコードする塩基配列を含有するものであればいか
なるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノム
DNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDN
A、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、
合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用する
ベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミ
ド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、前
記した細胞・組織よりtotalRNAまたはmRNA画分
を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Po
lymerase Chain Reaction(以下、RT-PCR法と略称
する)によって増幅することもできる。本発明で用いら
れるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、
配列番号:2で表される塩基配列を含有するDNA、ま
たは配列番号:2で表される塩基配列とハイストリンジ
ェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、
本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の性質を
有するタンパク質をコードするDNAであれば何れのも
のでもよい。
【0020】配列番号:2で表される塩基配列とハイス
トリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNA
としては、例えば、配列番号:2で表される塩基配列と
約50%以上、好ましくは約60%以上、さらに好まし
くは約70%以上、より好ましくは約80%以上、特に
好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上
の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用い
られる。ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あ
るいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クロ
ーニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook eta
l., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の
方法などに従って行なうことができる。また、市販のラ
イブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の
方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハ
イストリンジェントな条件に従って行なうことができ
る。ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリ
ウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20
mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜6
5℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mM
で温度が約65℃の場合が最も好ましい。より具体的に
は、配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するタン
パク質をコードするDNAとしては、配列番号:2で表
される塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
【0021】本発明で用いられる部分ペプチドをコード
するDNAとしては、前述した本発明で用いられる部分
ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであれば
いかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲ
ノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のc
DNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリ
ー、合成DNAのいずれでもよい。本発明で用いられる
部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配
列番号:2で表される塩基配列を有するDNAの一部分
を有するDNA、または配列番号:2で表される塩基配
列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズす
る塩基配列を有し、本発明で用いられるタンパク質と実
質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDN
Aの一部分を有するDNAなどが用いられる。配列番
号:2で表される塩基配列とハイブリダイズできるDN
Aは、前記と同意義を示す。ハイブリダイゼーションの
方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様の
ものが用いられる。
【0022】本発明で用いられるタンパク質、部分ペプ
チド(以下、これらをコードするDNAのクローニング
および発現の説明においては、これらを単に本発明のタ
ンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするD
NAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク
質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプ
ライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または
適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク
質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしく
は合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼ
ーションによって選別することができる。ハイブリダイ
ゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニ
ング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,
Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法
などに従って行なうことができる。また、市販のライブ
ラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法
に従って行なうことができる。DNAの塩基配列の置換
は、PCRや公知のキット、例えば、MutanTM−superEx
press Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造
(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、gapped duplex
法、Kunkel法等の公知の方法あるいはそれらに準じる方
法に従って行なうことができる。クローン化されたタン
パク質をコードするDNAは目的によりそのまま、また
は所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加し
たりして使用することができる。該DNAはその5’末
端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’
末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまた
はTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドン
や翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用
いて付加することもできる。本発明のタンパク質の発現
ベクターは、例えば、(イ)本発明のタンパク質をコー
ドするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、
(ロ)該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモー
ターの下流に連結することにより製造することができ
る。
【0023】ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミ
ド(例、pBR322,pBR325,pUC12,p
UC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB11
0,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド
(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバ
クテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイル
ス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、p
A1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RS
V、pcDNAI/Neoなどが用いられる。本発明で
用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用い
る宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなる
ものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場
合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、L
TRプロモーター、CMVプロモーター、HSV-TK
プロモーターなどが挙げられる。これらのうち、CMV
(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモ
ーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア
属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモ
ーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、
lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主が
バチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、S
PO2プロモーター、penPプロモーターなど、宿主
が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプ
ロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター
などが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘ
ドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好まし
い。
【0024】発現ベクターには、以上の他に、所望によ
りエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加
シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以
下、SV40oriと略称する場合がある)などを含有
しているものを用いることができる。選択マーカーとし
ては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、dhfr
と略称する場合がある)遺伝子〔メソトレキセート(M
TX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、Amp
rと略称する場合がある)、ネオマイシン耐性遺伝子
(以下、Neorと略称する場合がある、G418耐
性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイ
ニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マ
ーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含
まない培地によっても選択できる。また、必要に応じ
て、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質
のN端末側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である
場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列な
どが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラー
ゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列など
が、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、
SUC2・シグナル配列など、宿主が動物細胞である場
合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフ
ェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などが
それぞれ利用できる。このようにして構築された本発明
のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを
用いて、形質転換体を製造することができる。
【0025】宿主としては、例えば、エシェリヒア属
菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞な
どが用いられる。エシェリヒア属菌の具体例としては、
例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K1
2・DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル
・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユー
エスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),60
巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック・
アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),9
巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・オ
ブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molecul
ar Biology)〕,120巻,517(1978)〕,HB
101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジ
ー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネテ
ィックス(Genetics),39巻,440(1954)〕な
どが用いられる。バチルス属菌としては、例えば、バチ
ルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114
〔ジーン,24巻,255(1983)〕,207−21
〔ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(Journal of
Biochemistry),95巻,87(1984)〕などが用
いられる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス
セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,A
H22R-,NA87−11A,DKD−5D,20B
−12、シゾサッカロマイセス ポンベ(Schizosaccha
romyces pombe)NCYC1913,NCYC203
6、ピキア パストリス(Pichia pastoris)KM71
などが用いられる。
【0026】昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがA
cNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodop
tera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia ni
の中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のH
igh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞または
Estigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイル
スがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mor
i N 細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞
としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf
21細胞(以上、Vaughn, J.L.ら、イン・ヴィボ(In V
ivo),13, 213-217,(1977))などが用いられる。昆虫と
しては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔前田
ら、ネイチャー(Nature),315巻,592(198
5)〕。動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−
7,Vero,チャイニーズハムスター細胞CHO(以
下、CHO細胞と略記),dhfr遺伝子欠損チャイニ
ーズハムスター細胞CHO(以下、CHO(dhf
-)細胞と略記),マウスL細胞,マウスAtT−2
0,マウスミエローマ細胞,ラットGH3,ヒトFL細
胞、H9c2細胞などが用いられる。エシェリヒア属菌
を形質転換するには、例えば、プロシージングズ・オブ
・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンジイズ
・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci.
USA),69巻,2110(1972)やジーン(Gen
e),17巻,107(1982)などに記載の方法に従
って行なうことができる。
【0027】バチルス属菌を形質転換するには、例え
ば、モレキュラー・アンド・ジェネラル・ジェネティッ
クス(Molecular & General Genetics),168巻,
111(1979)などに記載の方法に従って行なうこと
ができる。酵母を形質転換するには、例えば、メソッズ
・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymolog
y),194巻,182−187(1991)、プロシ
ージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー(Proc. Na
tl. Acad. Sci. USA),75巻,1929(197
8)などに記載の方法に従って行なうことができる。昆
虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、バイオ
/テクノロジー(Bio/Technology),6, 47-55(1988))
などに記載の方法に従って行なうことができる。動物細
胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細
胞工学実験プロトコール.263−267(1995)
(秀潤社発行)、ヴィロロジー(Virology),52巻,
456(1973)に記載の方法に従って行なうことがで
きる。このようにして、タンパク質をコードするDNA
を含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を
得ることができる。宿主がエシェリヒア属菌、バチルス
属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される
培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質
転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が
含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコー
ス、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源と
しては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーン
スチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大
豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無
機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素
ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。ま
た、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加
してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましい。
【0028】エシェリヒア属菌を培養する際の培地とし
ては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地
〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクスペリメ
ンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス(Journa
l of Experiments in Molecular Genetics),431−
433,Cold Spring Harbor Laboratory, New York1
972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを
効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルア
クリル酸のような薬剤を加えることができる。宿主がエ
シェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜43℃で約
3〜24時間行ない、必要により、通気や撹拌を加える
こともできる。宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常
約30〜40℃で約6〜24時間行ない、必要により通
気や撹拌を加えることもできる。宿主が酵母である形質
転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホ
ールダー(Burkholder)最小培地〔Bostian, K. L.
ら、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデ
ミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ザ・ユーエスエー
(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),77巻,450
5(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培
地〔Bitter, G. A. ら、プロシージングズ・オブ・ザ・
ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ
・ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. US
A),81巻,5330(1984)〕が挙げられる。
培地のpHは約5〜8に調整するのが好ましい。培養は
通常約20℃〜35℃で約24〜72時間行ない、必要
に応じて通気や撹拌を加える。宿主が昆虫細胞または昆
虫である形質転換体を培養する際、培地としては、Grac
e's Insect Medium(Grace, T.C.C.,ネイチャー(Natur
e),195,788(1962))に非動化した10%ウシ血清等の
添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpH
は約6.2〜6.4に調整するのが好ましい。培養は通
常約27℃で約3〜5日間行ない、必要に応じて通気や
撹拌を加える。宿主が動物細胞である形質転換体を培養
する際、培地としては、例えば、約5〜20%の胎児牛
血清を含むMEM培地〔サイエンス(Science),12
2巻,501(1952)〕,DMEM培地〔ヴィロロジ
ー(Virology),8巻,396(1959)〕,RPMI
1640培地〔ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・
メディカル・アソシエーション(The Journal of the A
merican Medical Association)199巻,519(19
67)〕,199培地〔プロシージング・オブ・ザ・ソ
サイエティ・フォー・ザ・バイオロジカル・メディスン
(Proceeding ofthe Society for the Biological Medi
cine),73巻,1(1950)〕などが用いられる。p
Hは約6〜8であるのが好ましい。培養は通常約30℃
〜40℃で約15〜60時間行ない、必要に応じて通気
や撹拌を加える。以上のようにして、形質転換体の細胞
質内または細胞外に本発明のタンパク質を生成せしめる
ことができる。
【0029】上記培養物から本発明のタンパク質を分離
精製するには、例えば、下記の方法により行なうことが
できる。本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞か
ら抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体ある
いは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音
波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌
体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過により
タンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられ
る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変
性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含
まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される
場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体ある
いは細胞と上清とを分離し、上清を集める。このように
して得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれるタ
ンパク質の精製は、自体公知の分離・精製法を適切に組
み合わせて行なうことができる。これらの公知の分離、
精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用
する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびS
DS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主とし
て分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラ
フィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティー
クロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方
法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差
を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を
利用する方法などが用いられる。
【0030】かくして得られるタンパク質が遊離体で得
られた場合には、自体公知の方法あるいはそれに準じる
方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られ
た場合には自体公知の方法あるいはそれに準じる方法に
より、遊離体または他の塩に変換することができる。な
お、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精
製後に適当な蛋白修飾酵素を作用させることにより、任
意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去する
こともできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリプ
シン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダー
ゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いら
れる。かくして生成する本発明のタンパク質の存在は、
特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウエスタ
ンブロッティングなどにより測定することができる。
【0031】本発明で用いられるタンパク質もしくは部
分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明で用い
られるタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩を
認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノク
ローナル抗体の何れであってもよい。本発明で用いられ
るタンパク質もしくは部分ペプチドまたはその塩(以
下、抗体の説明においては、これらを単に本発明のタン
パク質と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明
のタンパク質を抗原として用い、自体公知の抗体または
抗血清の製造法に従って製造することができる。 〔モノクローナル抗体の作製〕 (a)モノクロナール抗体産生細胞の作製 本発明のタンパク質は、温血動物に対して投与により抗
体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤と
ともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるた
め、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントア
ジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に
1回ずつ、計2〜10回程度行われる。用いられる温血
動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモッ
ト、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリが挙げら
れるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。モ
ノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原で免
疫された温血動物、例えばマウスから抗体価の認められ
た個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリン
パ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を同種ま
たは異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モ
ノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することが
できる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標
識化タンパク質と抗血清とを反応させたのち、抗体に結
合した標識剤の活性を測定することにより行なうことが
できる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミ
ルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256、495 (1
975)〕に従い実施することができる。融合促進剤として
は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセン
ダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが
用いられる。
【0032】骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、
P3U1、SP2/0、AP−1などの温血動物の骨髄
腫細胞が挙げられるが、P3U1が好ましく用いられ
る。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細
胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、
PEG(好ましくはPEG1000〜PEG6000)
が10〜80%程度の濃度で添加され、20〜40℃、
好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベート
することにより効率よく細胞融合を実施できる。モノク
ローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには
種々の方法が使用できるが、例えば、タンパク質抗原を
直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイク
ロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に
放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体
(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス
免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインA
を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する
方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着
させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性
物質や酵素などで標識したタンパク質を加え、固相に結
合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げら
れる。モノクローナル抗体の選別は、自体公知あるいは
それに準じる方法に従って行なうことができる。通常H
AT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を
添加した動物細胞用培地で行なうことができる。選別お
よび育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できる
ものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1
〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含む
RPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含
むGIT培地(和光純薬工業(株))あるいはハイブリ
ドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬
(株))などを用いることができる。培養温度は、通常
20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間
は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間であ
る。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができ
る。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清
中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0033】(b)モノクロナール抗体の精製 モノクローナル抗体の分離精製は、自体公知の方法、例
えば、免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アル
コール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換
体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ
過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロ
テインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結
合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行な
うことができる。
【0034】〔ポリクローナル抗体の作製〕本発明のポ
リクローナル抗体は、それ自体公知あるいはそれに準じ
る方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗
原(タンパク質抗原)自体、あるいはそれとキャリアー
蛋白質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体
の製造法と同様に温血動物に免疫を行ない、該免疫動物
から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取し
て、抗体の分離精製を行なうことにより製造することが
できる。温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原
とキャリアー蛋白質との複合体に関し、キャリアー蛋白
質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キ
ャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が
効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋
させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサ
イログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1
に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合で
カプルさせる方法が用いられる。また、ハプテンとキャ
リアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることが
できるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレ
イミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を
含有する活性エステル試薬等が用いられる。縮合生成物
は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自
体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際
して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバ
ントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよ
い。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜1
0回程度行なわれる。ポリクローナル抗体は、上記の方
法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは
血液から採取することができる。抗血清中のポリクロー
ナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と
同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製
は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫
グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0035】本発明で用いられるタンパク質または部分
ペプチドをコードするDNA(以下、アンチセンスヌク
レオチドの説明においては、これらのDNAを本発明の
DNAと略記する)に相補的な、または実質的に相補的
な塩基配列を有するアンチセンスヌクレオチドとして
は、本発明のDNAに相補的な、または実質的に相補的
な塩基配列を有し、該DNAの発現を抑制し得る作用を
有するものであれば、いずれのアンチセンスヌクレオチ
ドであってもよいが、アンチセンスDNAが好ましい。
本発明のDNAに実質的に相補的な塩基配列とは、例え
ば、本発明のDNAに相補的な塩基配列(すなわち、本
発明のDNAの相補鎖)の全塩基配列あるいは部分塩基
配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好
ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の
相同性を有する塩基配列などが挙げられる。特に、本発
明のDNAの相補鎖の全塩基配列うち、本発明のタンパ
ク質のN末端部位をコードする部分の塩基配列(例え
ば、開始コドン付近の塩基配列など)の相補鎖と約70
%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約9
0%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有す
るアンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンスDN
A)が好適である。アンチセンスヌクレオチド(例、ア
ンチセンスDNA)は通常、10〜40個程度、好まし
くは15〜30個程度の塩基から構成される。ヌクレア
ーゼなどの加水分解酵素による分解を防ぐために、アン
チセンスヌDNAを構成する各ヌクレオチドのりん酸残
基(ホスフェート)は、例えば、ホスホロチオエート、
メチルホスホネート、ホスホロジチオネートなどの化学
修飾りん酸残基に置換されていてもよい。これらのアン
チセンスヌクレオチドは、公知のDNA合成装置などを
用いて製造することができる。
【0036】以下に、本発明で用いられるタンパク質も
しくは部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のタン
パク質と略記する場合がある)、本発明のタンパク質ま
たは部分ペプチドをコードするDNA(以下、本発明の
DNAと略記する場合がある)、本発明のタンパク質も
しくは部分ペプチドまたはその塩に対する抗体(以下、
本発明の抗体と略記する場合がある)、および本発明の
DNAのアンチセンスヌクレオチド(以下、本発明のア
ンチセンスヌクレオチドと略記する場合がある)の用途
を説明する。
【0037】本発明のタンパク質は心筋梗塞後の心不全
移行期の心臓に発現が上昇するので、疾患マーカーとし
て利用することができる。すなわち、心筋梗塞後心不全
あるいは他の心疾患(例えば、狭心症、心筋症など)に
伴って起こる心不全における早期診断、症状の重症度の
判定、疾患進行の予測のためのマーカーとして有用であ
る。また、本発明のタンパク質をコードする遺伝子のア
ンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンスDNA)の
投与により心筋梗塞後心不全あるいは他の心疾患(例え
ば、狭心症、心筋症など)に伴って起こる心不全が抑制
されることから、本発明のタンパク質の活性を調節する
化合物もしくはその塩または本発明のタンパク質に対す
る抗体も同様の作用を示すと考えられる。したがって、
本発明のタンパク質をコードする遺伝子のアンチセンス
ヌクレオチド(例、アンチセンスDNA)、本発明のタ
ンパク質の活性を調節する化合物もしくはその塩または
本発明のタンパク質に対する抗体を含有する医薬は、例
えば、心筋梗塞後心不全あるいは他の心疾患(例えば、
狭心症、心筋症など)に伴って起こる心不全などの治療
・予防剤として使用することができる。
【0038】〔1〕疾病に対する医薬候補化合物のスク
リーニング 本発明のタンパク質は心筋梗塞後の心機能低下とともに
発現が増加するので、本発明のタンパク質の活性を調節
(阻害または抑制)する化合物またはその塩は、例え
ば、心筋梗塞後の心不全などの心疾患(特に心不全末期
における心不全)の治療・予防薬として使用できる。ま
た、本発明のタンパク質は心不全慢性期に発現低下が認
められるので、本発明のタンパク質の活性を調節(増
強)する化合物またはその塩は、例えば、心筋梗塞後の
心不全などの心疾患(特に心不全慢性期における心不
全)の治療・予防薬として使用できる。したがって、本
発明のタンパク質は、本発明のタンパク質の活性を調節
する化合物またはその塩のスクリーニングのための試薬
として有用である。すなわち、本発明は、(1)本発明
のタンパク質を用いることを特徴とする本発明のタンパ
ク質の活性を調節する化合物、例えば、代償破綻に伴う
心機能低下促進活性や過度の代償機序の抑制作用を調節
する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供す
る。具体的には、例えば(2)(i)本発明のタンパク質
を産生する能力を有する細胞を低酸素条件下で伸展刺激
を加えた場合と(ii)本発明のタンパク質を産生する能力
を有する細胞と試験化合物の混合物とを低酸素条件下で
伸展刺激を加えた場合との比較を行うことを特徴とする
本発明のタンパク質の活性を調節する化合物またはその
塩のスクリーニング方法を提供する。より具体的には、
上記スクリーニング方法においては、例えば、(i)と(i
i)の場合における、本発明のタンパク質の遺伝子発現量
を測定して、比較することを特徴とするものである。こ
こで、上記低酸素条件下とは例えば20%O2以下の酸素
濃度で例えば2%(ネイチャー、第394巻、485項
―490項、1998年)の条件を意味する。また、伸
展刺激とは心筋細胞を伸展可能なシリコン膜上に培養
し、シリコン膜を引っ張ることで機械的負荷を加える刺
激である(J.B.C.、第271巻、33592項―335
97項、1996年、サーキュレーション、第89巻、
2204項―2211項、1994年、J.B.C.、第27
1巻、3221項―3228項、1996年)。更に
(3)(iii)本発明のタンパク質を産生する能力を有す
る細胞あるいは本発明のタンパク質をコードするcDNAを
導入した細胞を致死的な条件下で培養を行った場合、具
体的には血清除去下あるいは心筋細胞に比較的毒性の強
いアドリアマイシンなどの抗癌剤を加えて培養した場合
と(iv) 本発明のタンパク質を産生する能力を有する細
胞あるいは本発明のタンパク質をコードするcDNAを導入
した細胞と試験化合物の混合物とを致死的な条件下で培
養を行った場合、具体的には血清除去下あるいは心筋細
胞に比較的毒性の強いアドリアマイシンなどの抗癌剤を
加えて培養した場合との比較を行うことを特徴とする調
節薬のスクリーニング方法を提供する。上記スクリーニ
ング方法においては、例えば、(iii)と(iv)の場合にお
ける、細胞保護作用と本発明のタンパク質の遺伝子発現
量を測定して、比較することを特徴とするものである。
細胞保護作用は、心筋細胞の活性化あるいは生存率によ
って示すことができる。具体的には一般によく用いられ
る呼吸活性を測定することができるMTT法やトリパンブ
ルー染色法あるいはTUNNEL染色法(セル、第97巻、1
89項―198項、1999年)で測定することができ
る。CARP遺伝子は心臓特異的な遺伝子の発現を負に調節
する機能を有すると考えられるため、過剰な発現は細胞
機能を障害すると考えられ、逆に極度の発現低下は必要
以上の細胞の活性化を惹起し、その結果として細胞障害
が生じるものと考えられる。更に(4)CARP遺伝子産物
によって発現が制御されている遺伝子、例えば心房性ナ
トリウム利尿ペプチド(J.B.C.、第272巻、22800-22808
項、1997年、デベロプメント、第124巻、793-804項、19
97年)などのプロモーターを用いたレポーター・ジーン
・アッセイにおいてその活性の調節を特徴とするスクリ
ーニング法を提供する。より具体的には初代心筋細胞あ
るいはH9c2 細胞株あるいはCARP遺伝子を導入した初代
心筋細胞あるいはH9c2 細胞株を宿主細胞としてレポー
ター・ジーン・アッセイを行う。レポーター・ジーン・
アッセイは、例えば心房性ナトリウム利尿ペプチド遺伝
子のプロモーター領域( J.B.C.、第272巻、22800-2280
8項、1997年、デベロプメント、第124巻、793-804項、1
997年)の下流にβガラクトシダーゼ、クロラムフェニ
コールアセチルトランスフェラーゼ、ルシフェラーゼな
どのレポーター・ジーンを連結させたプラスミドを構築
し、心筋細胞に導入した細胞を用いて行う。この細胞は
CARP蛋白質の発現量および活性化に依存してレポーター
・ジーンの酵素活性が上昇することを利用したスクリー
ニングシステムである。更に本系で作用を示す化合物
は、内因性CARP遺伝子の発現量および活性化に影響を与
える物質であることからこの系によってCARP活性増強薬
およびCARP活性阻害薬のいずれをも選択することができ
る。より好ましいスクリーニング方法としては、CARPを
発現し得る初代心筋細胞あるいは心筋由来細胞株(H9
c2)に試験化合物を投与した時および試験化合物を投
与しない時におけるそれぞれのCARPの発現を定量す
る方法を挙げることができる。ここで「CARPの発現」と
はCARP遺伝子の発現またはCARP蛋白質の産生を意味す
る。CARPを発現し得る初代心筋細胞あるいは心筋由来細
胞株(H9c2)としては、初代心筋細胞あるいは心筋
由来細胞株(H9c2)、あるいはCARP遺伝子を導入し
た初代心筋細胞あるいは心筋由来細胞株(H9c2)が
挙げられ、本発明のDNAで形質転換されている初代心
筋細胞あるいは心筋由来細胞株(H9c2)が好ましく
用いられる。定量は、本発明のタンパク質をコードする
DNAを用いたノーザンブロッティング法やTaqMa
n PCR法またはCARPのプロモーター配列(デベ
ロプメント、第126巻、4223項―4234項、1
999年)の下流にルシフェラーゼ、ベータガラクトシ
ダーゼなどのレポーター遺伝子を連結させたプラスミド
を初代心筋細胞あるいは心筋由来細胞株(H9c2)に
導入し、これらの酵素活性を測定することによって行う
ことができる。また、CARPの発現を抗CARP抗体
(好ましくは抗モノクローナル抗体)を用いて定量する
こともできる。発現を定量する時の条件として例えば血
清除去、培地中のグルコース濃度を低下させることによ
って発現を増加させた場合、またエンドセリンやノルエ
ピネフリン処理などの肥大刺激を与えることによって発
現を増加させた場合において、その発現を低下させる化
合物をスクリーニングすることができる。一方、アドリ
アマイシンなどの心筋細胞に比較的毒性の高い抗癌剤等
で処理することによりCARP遺伝子の発現を減少させ
た場合、その発現減少を抑制する化合物をスクリーニン
グすることができる。このようにして得られた化合物
は、次のようにして精査することができる。初代心筋細
胞あるいは心筋由来細胞株(H9c2)を用いて、例え
ば血清除去、培地中のグルコース濃度を低下させること
や肥大刺激(エンドセリンやノルエピネフリン処理な
ど)を与えること、アドリアマイシンなどの心筋細胞に
比較的毒性の高い抗癌剤等で処理することによって細胞
に障害を与えた場合に、当該試験化合物を投与した時お
よび試験化合物を投与しない場合における上記細胞の呼
吸活性などの活性作用を例えばMTT法などによって測
定し、比較することにより試験化合物の細胞活性化作用
を確認することができる。また、初代心筋細胞あるいは
心筋由来細胞株(H9c2)を用いて、上記と同様にし
て細胞に障害を与えた場合に、当該試験化合物を投与し
た時および試験化合物を投与しない場合における細胞の
形態観察(エオジンーヘマトキシリン染色やアクチン免
疫染色など)を行うことによってサルコメア構造の恒常
性を維持する化合物であることを確認することができ
る。また得られた化合物はランゲンドルフ灌流心を用い
て心機能や冠動脈流を測定することによって強心作用を
有するか、また虚血に対して心保護を有するかを調べる
ことができる。更に心筋梗塞モデル動物(冠動脈結窄、
ラット、マウス、犬、猫、フ゛タ等)や高血圧モデル(S
HR,大動脈結窄)や心肥大モデル(SHR、腹部大動
脈結窄)などに当該試験化合物を投与することによって
その試験化合物の薬効を評価することができる。該薬効
の評価は、虚血耐性能については自体公知の方法で梗塞
サイズを測定したり、心機能を測定することによって行
うことができる。また試験化合物投与前後の心臓重量を
測定し、体重で補正することによって当該試験化合物の
肥大抑制効果あるいは代償性心肥大の増強作用を調べる
ことができる。更に当該試験化合物の投与による上記モ
デル動物もしくは非ヒト哺乳動物(例、ラット、マウ
ス、犬、猫、フ゛タ等)の死亡率を測定すること、あるい
は心循環動態を測定することによってQOL改善作用を
調べることができる。試験化合物としては、例えば、ペ
プチド、タンパク、生体由来非ペプチド性化合物(糖
質、脂質など)、合成化合物、微生物培養物、細胞抽出
液、植物抽出液、動物組織抽出液などが挙げられ、これ
ら化合物は新規化合物であってもよいし、公知の化合物
であってもよい。上記のスクリーニング方法を実施する
には、本発明のタンパク質を産生する能力を有する細胞
をスクリーニングに適した培地を用いて培養する。培地
は、本発明のタンパク質の遺伝子発現に影響を与えない
ものであればいずれでもよい。本発明のタンパク質を産
生する能力を有する細胞としては、例えば、本来本発明
のタンパク質を産生する能力を有する初代心筋細胞ある
いは前述した本発明のタンパク質をコードするDNAを含
有するベクターで形質変換された宿主(形質転換体)が
用いられる。宿主としては、例えば、H9c2細胞などの動
物細胞が好ましく用いられる。CARP遺伝子を導入した初
代心筋細胞(本発明のタンパク質を産生する能力を有す
る初代心筋細胞)は例えば特願2000-194805号記載の方
法、その他五島喜輿太、金子洋之、心臓・血管研究方法
の開発 (江橋節郎編)、3頁、学会出版センター刊行(19
83)記載の方法にしたがって調製することができる。該
スクリーニングには、例えば、前述の方法で培養するこ
とによって、本発明のタンパク質を細胞内に発現させた
形質転換体が好ましく用いられる。本発明の遺伝子発現
量は、自体公知の方法、例えば、ノーザンブロッティン
グやReverse transcription-polymerase chain reactio
n(RT-PCR)やTaqMan polymerase chain reactionなどの
方法あるいはそれに準じる方法にしたがって測定するこ
とができる。例えば、上記(ii)の場合における遺伝子発
現量を、上記(i)の場合に比べて、約20%以上、好ましく
は30%以上、より好ましくは約50%以上阻害(抑制)する
あるいは増強する試験化合物を本発明のタンパク質の活
性を阻害(抑制)するあるいは増強する化合物として選
択することができる。選択された阻害(抑制)薬は、CA
RP遺伝子の発現増強が認められる心不全末期に投与する
ことにより心機能回復効果が期待できる。また増強薬は
発現低下が認められる心不全慢性期に投与することによ
り過剰な代償機序を抑制し、心筋細胞を保護(heart pr
otective effect)することによる心保護効果が期待で
きる。
【0039】本発明のスクリーニング用キットは、本発
明で用いられるタンパク質もしくは部分ペプチドまたは
その塩、または本発明で用いられるタンパク質もしくは
部分ペプチドを産生する能力を有する細胞を含有するも
のである。
【0040】本発明のスクリーニング方法またはスクリ
ーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩
は、上記した試験化合物、例えば、ペプチド、タンパク
質、生体由来非ペプチド性化合物(例、糖質、脂質な
ど)、合成化合物、微生物培養物、発酵生産物、細胞抽
出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などから選ば
れた化合物またはその塩であり、本発明のタンパク質の
活性(心機能低下促進活性など)を調節(促進または阻
害(抑制))する化合物またはその塩である。該化合物
の塩としては、前記した本発明のタンパク質の塩と同様
のものが用いられる。本発明のタンパク質の活性を調節
(促進または阻害(抑制))する化合物またはその塩
は、例えば、心筋梗塞後の心不全あるいは狭心症、心筋
症、および狭心症、心筋症などの疾患に由来する心不全
などの心機能の低下を特徴する疾病(心疾患)に対する
治療・予防剤などの医薬として有用である。
【0041】本発明のスクリーニング方法またはスクリ
ーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩
を上述の治療・予防剤として使用する場合、常套手段に
従って製剤化することができる。例えば、錠剤、カプセ
ル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤、無菌性溶
液、懸濁液剤などとすることができる。このようにして
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒト
または温血動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒ
ツジ、ブタ、ウシ、ウマ、トリ、ネコ、イヌ、サル、チ
ンパンジーなど)に対して経口的にまたは非経口的に投
与することができる。該化合物またはその塩の投与量
は、その作用、対象疾患、投与対象、投与ルートなどに
より差異はあるが、例えば、心不全治療の目的で本発明
のタンパク質の活性を調節する化合物またはその塩を経
口投与する場合、一般的に成人(体重60kgとして)
においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.
1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より
好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投
与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投
与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、心
不全治療の目的で本発明のタンパク質の活性を調節する
化合物またはその塩を注射剤の形で通常成人(60kg
として)に投与する場合、一日につき該化合物またはそ
の塩を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1
〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程
度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動
物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与するこ
とができる。
【0042】〔2〕本発明のタンパク質、その部分ペプ
チドまたはその塩の定量 本発明のタンパク質に対する抗体(以下、本発明の抗体
と略記する場合がある)は、本発明のタンパク質を特異
的に認識することができるので、被検液中の本発明のタ
ンパク質の定量、特にサンドイッチ免疫測定法による定
量などに使用することができる。すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化された本発
明のタンパク質とを競合的に反応させ、該抗体に結合し
た標識化された本発明のタンパク質の割合を測定するこ
とを特徴とする被検液中の本発明のタンパク質の定量
法、および(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の
抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時ある
いは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の
活性を測定することを特徴とする被検液中の本発明のタ
ンパク質の定量法を提供する。上記(ii)の定量法にお
いては、一方の抗体が本発明のタンパク質のN端部を認
識する抗体で、他方の抗体が本発明のタンパク質のC端
部に反応する抗体であることが望ましい。
【0043】また、本発明のタンパク質に対するモノク
ローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体と称
する場合がある)を用いて本発明のタンパク質の定量を
行なえるほか、組織染色等による検出を行なうこともで
きる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いても
よく、また、抗体分子のF(ab')2 、Fab'、あるい
はFab画分を用いてもよい。本発明の抗体を用いる本
発明のタンパク質の定量法は、特に制限されるべきもの
ではなく、被測定液中の抗原量(例えば、タンパク質
量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の
量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知
量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算
出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよ
い。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリッ
ク法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感
度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるの
が特に好ましい。標識物質を用いる測定法に用いられる
標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光
物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素とし
ては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14
C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活
性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダ
ーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファター
ゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用い
られる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミ
ン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられ
る。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノー
ル誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられ
る。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオ
チン−アビジン系を用いることもできる。
【0044】抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物
理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵
素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用
いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキス
トラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレ
ン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、ある
いはガラス等が挙げられる。サンドイッチ法においては
不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応
させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノ
クローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化
担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中の
本発明のタンパク質量を定量することができる。1次反
応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行な
ってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤
および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができ
る。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、
固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ず
しも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等
の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。本
発明のサンドイッチ法による本発明のタンパク質の測定
法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明
のモノクローナル抗体は、本発明のタンパク質の結合す
る部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわ
ち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例え
ば、2次反応で用いられる抗体が、本発明のタンパク質
のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体
は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗
体が用いられる。
【0045】本発明のモノクローナル抗体をサンドイッ
チ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメト
リック法あるいはネフロメトリーなどに用いることがで
きる。競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体
に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原
(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し
(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被
検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として
可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコー
ル、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、お
よび、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるい
は、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相
化抗体を用いる固相化法とが用いられる。イムノメトリ
ック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の
標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離
するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗
体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化
抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。
次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量
を定量する。また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるい
は溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の
量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の
沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用す
るレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
【0046】これら個々の免疫学的測定法を本発明の定
量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の
設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の
条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発
明のタンパク質の測定系を構築すればよい。これらの一
般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参
照することができる。例えば、入江 寛編「ラジオイム
ノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編
「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発
行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭
和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第
2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編
「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年
発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochem
ical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochem
ical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochem
ical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochem
ical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、
同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Mono
clonal Antibodies and General Immunoassay Method
s))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part
I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodie
s))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照する
ことができる。以上のようにして、本発明の抗体を用い
ることによって、本発明のタンパク質を感度良く定量す
ることができる。さらには、本発明の抗体を用いて本発
明のタンパク質の濃度を定量することによって、(1)
本発明のタンパク質の濃度の増加が検出された場合、例
えば、心筋梗塞後の心不全あるいは狭心症、心筋症、お
よび狭心症、心筋症などの心疾患に由来する心不全など
の心機能の低下を特徴する疾病などの疾病である、また
は将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存
在する本発明のタンパク質を検出するために使用するこ
とができる。また、本発明のタンパク質を精製するため
に使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発
明のタンパク質の検出、被検細胞内における本発明のタ
ンパク質の挙動の分析などのために使用することができ
る。
【0047】〔3〕遺伝子診断剤 本発明のDNAは、例えば、プローブとして使用するこ
とにより、ヒトまたは温血動物(例えば、ラット、マウ
ス、モルモット、ウサギ、トリ、ヒツジ、ブタ、ウシ、
ウマ、ネコ、イヌ、サル、チンパンジーなど)における
本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードす
るDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出す
ることができるので、例えば、該DNAまたはmRNA
の損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたは
mRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤と
して有用である。本発明のDNAを用いる上記の遺伝子
診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼー
ションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomic
s),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロ
シージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オ
ブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceeding
s ofthe National Academy of Sciences of the United
States of America),第86巻,2766〜2770
頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより発現過
多が検出された場合やPCR−SSCP法によりDNA
の突然変異が検出された場合は、例えば、心機能低下を
伴う心疾患などの疾病である可能性が高いと診断するこ
とができる。
【0048】〔4〕アンチセンスヌクレオチドを含有す
る医薬 本発明のDNAに相補的に結合し、該DNAの発現を抑
制することができる本発明のアンチセンスヌクレオチド
(例、アンチセンスDNA)は低毒性であり、生体内に
おける本発明のタンパク質または本発明のDNAの機能
(心機能低下促進活性など)を調節(阻害、抑制)する
ことができるので、例えば、心機能低下を伴う心疾患な
どの治療・予防剤として使用することができる。上記ア
ンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンスDNA)を
上記の治療・予防剤として使用する場合、自体公知の方
法に従って製剤化し、投与することができる。例えば、
該アンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンスDN
A)を用いる場合、該アンチセンスヌクレオチド(例、
アンチセンスDNA)を単独あるいはレトロウイルスベ
クター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソ
シエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに
挿入した後、常套手段に従って、ヒトまたは哺乳動物
(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イ
ヌ、サルなど)に対して経口的または非経口的に投与す
ることができる。該アンチセンスヌクレオチド(例、ア
ンチセンスDNA)は、そのままで、あるいは摂取促進
のために補助剤などの生理学的に認められる担体ととも
に製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのよう
なカテーテルによって投与できる。該アンチセンスヌク
レオチド(例、アンチセンスDNA)の投与量は、対象
疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、
例えば、心不全の治療の目的で本発明のアンチセンスヌ
クレオチド(例、アンチセンスDNA)を経口投与する
場合、一般的に成人(体重60kg)においては、一日
につき該アンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンス
DNA)を約0.1〜100mg投与する。さらに、該
アンチセンスヌクレオチド(例、アンチセンスDNA)
は、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発
現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプロー
ブとして使用することもできる。
【0049】〔5〕本発明の抗体を含有する医薬 本発明のタンパク質の活性を中和する作用を有する本発
明の抗体は、心筋梗塞後の心不全あるいは狭心症、心筋
症、および狭心症、心筋症などの疾患に由来する心不全
などの心機能の低下を特徴する心疾患などに対する予防
・治療剤として使用することができる。本発明の抗体を
含有する上記疾病の予防・治療剤は低毒性であり、その
まま液剤として、または適当な剤型の医薬組成物とし
て、ヒトまたは哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツ
ジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して経口
的または非経口的に投与することができる。投与量は、
投与対象、対象疾患、症状、投与ルートなどによっても
異なるが、例えば、成人の心不全の治療・予防のために
使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常
0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜
10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5
mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは
1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合
である。他の非経口投与および経口投与の場合もこれに
準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合
には、その症状に応じて増量してもよい。本発明の抗体
は、それ自体または適当な医薬組成物として投与するこ
とができる。上記投与に用いられる医薬組成物は、上記
抗体またはその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈
剤もしくは賦形剤とを含むものである。かかる組成物
は、経口または非経口投与に適する剤形として提供され
る。すなわち、例えば、経口投与のための組成物として
は、固体または液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、
フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散
剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ
剤、乳剤、懸濁剤などがあげられる。かかる組成物は自
体公知の方法によって製造され、製剤分野において通常
用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有するもの
である。例えば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳
糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムなどが
用いられる。
【0050】非経口投与のための組成物としては、例え
ば、注射剤、坐剤などが用いられ、注射剤は静脈注射
剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤
などの剤形を包含する。かかる注射剤は、自体公知の方
法に従って、例えば、上記抗体またはその塩を通常注射
剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁
または乳化することによって調製する。注射用の水性液
としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補
助薬を含む等張液などが用いられ、適当な溶解補助剤、
例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコー
ル(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコー
ル)、非イオン界面活性剤〔例、ポリソルベート80、
HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of
hydrogenated castor oil)〕などと併用してもよい。
油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いら
れ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアル
コールなどを併用してもよい。調製された注射液は、通
常、適当なアンプルに充填される。直腸投与に用いられ
る坐剤は、上記抗体またはその塩を通常の坐薬用基剤に
混合することによって調製される。上記の経口用または
非経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するよ
うな投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。
かかる投薬単位の剤形としては、錠剤、丸剤、カプセル
剤、注射剤(アンプル)、坐剤などが例示され、それぞ
れの投薬単位剤形当たり通常5〜500mg、とりわけ
注射剤では5〜100mg、その他の剤形では10〜2
50mgの上記抗体が含有されていることが好ましい。
なお前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ま
しくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有し
てもよい。
【0051】〔6〕DNA転移動物 本発明は、外来性の本発明のタンパク質等をコードする
DNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)また
はその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記す
る場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。す
なわち、本発明は、(1)本発明の外来性DNAまたは
その変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、(2)非ヒト
哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)記載の動物、(3)
ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第(2)記載の
動物、および(4)本発明の外来性DNAまたはその変
異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換え
ベクターを提供するものである。本発明の外来性DNA
またはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、
本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受
精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対
して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発
生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞
の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウ
ム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マ
イクロインジェクション法、パーティクルガン法、DE
AE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転
移することによって作出することができる。また、該D
NA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞な
どに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培
養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これ
ら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により
融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出す
ることもできる。
【0052】非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、
ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモッ
ト、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。な
かでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生およ
び生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ
歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57
BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6
C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BA
LB/c系統,ICR系統など)またはラット(例え
ば、Wistar,SDなど)などが好ましい。哺乳動
物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動
物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどが
挙げられる。本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動
物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん
哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩
基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、
具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換など
が生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含
まれる。該異常DNAとしては、異常な本発明のタンパ
ク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発
明のタンパク質の機能を抑制するタンパク質を発現させ
るDNAなどが用いられる。本発明の外来性DNAは、
対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物
由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物
に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現
させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンスト
ラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本
発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高
い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサ
ギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マ
ウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモータ
ーの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコン
ストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精
卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクション
することによって本発明のDNAを高発現するDNA転
移哺乳動物を作出することができる。
【0053】本発明のタンパク質の発現ベクターとして
は、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミ
ド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリ
オファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィ
ルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなど
の動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由
来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由
来のプラスミドなどが好ましく用いられる。上記のDN
A発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、
ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイル
ス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイ
ルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモ
ーター、各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、
モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の
プロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、
ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、
エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸
性タンパク質ク、グルタチオンS−トランスフェラー
ゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およ
びK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリック
AMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジス
トロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、
心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキ
ナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリ
ウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPas
e)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインI
およびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビタ
ー、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レ
ニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダ
ーゼ(TPO)、ポリペプチド鎖延長因子1α(EF−
1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシ
ン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロ
ブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(V
NP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビ
ン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケ
ファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用
いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサ
イトメガロウイルスプロモーター、ヒトポリペプチド鎖
延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよ
びニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
【0054】上記ベクターは、DNA転移哺乳動物にお
いて目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する
配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有しているこ
とが好ましく、例えば、ウィルス由来および各種哺乳動
物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましく
は、シミアンウィルスのSV40ターミネターなどが用
いられる。その他、目的とする外来性DNAをさらに高
発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、
エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部など
をプロモーター領域の5´上流、プロモーター領域と翻
訳領域間あるいは翻訳領域の3´下流 に連結すること
も目的により可能である。正常な本発明のタンパク質の
翻訳領域は、各種哺乳動物(例えば、ヒト、ウサギ、イ
ヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスな
ど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来D
NAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲ
ノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎
臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法
により調製された相補DNAを原料として取得すること
が出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞ま
たは組織より得られた正常なタンパク質の翻訳領域を点
突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製すること
ができる。該翻訳領域は転移動物において発現しうるD
NAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流
および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常
のDNA工学的手法により作製することができる。受精
卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対
象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在する
ように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞
において、本発明の外来性DNAが存在することは、作
出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のす
べてに本発明の外来性DNAを保持することを意味す
る。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の
子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外
来性DNAを有する。
【0055】本発明の外来性正常DNAを転移させた非
ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持
することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼
育環境で継代飼育することが出来る。受精卵細胞段階に
おける本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の
胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確
保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において
本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動
物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発
明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発
明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はそ
の胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNA
を過剰に有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つ
ホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配す
ることによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するよ
うに繁殖継代することができる。本発明の正常DNAを
有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現
させられており、内在性の正常DNAの機能を促進する
ことにより最終的に本発明のタンパク質の機能亢進症を
発症することがあり、その病態モデル動物として利用す
ることができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物
を用いて、本発明のタンパク質の機能亢進症や、本発明
のタンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこ
れらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能であ
る。また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳
動物は、遊離した本発明のタンパク質の増加症状を有す
ることから、本発明のタンパク質に関連する疾患に対す
る治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
【0056】一方、本発明の外来性異常DNAを有する
非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保
持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼
育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とす
る外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科とし
て用いることができる。プロモーターとのDNAコンス
トラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製する
ことができる。受精卵細胞段階における本発明の異常D
NAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の
全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出
動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在する
ことは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細
胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味す
る。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の
子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異
常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持
つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配
することによりすべての子孫が該DNAを有するように
繁殖継代することができる。本発明の異常DNAを有す
る非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させ
られており、内在性の正常DNAの機能を阻害すること
により最終的に本発明のタンパク質の機能不活性型不応
症となることがあり、その病態モデル動物として利用す
ることができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物
を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症の
病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行な
うことが可能である。また、具体的な利用可能性として
は、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のタンパ
ク質の機能不活性型不応症における本発明の異常タンパ
ク質による正常タンパク質の機能阻害(dominant negat
ive作用)を解明するモデルとなる。また、本発明の外
来異常DNAを転移させた哺乳動物は、遊離した本発明
のタンパク質の増加症状を有することから、本発明のタ
ンパク質の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリー
ニング試験にも利用可能である。
【0057】また、上記2種類の本発明のDNA転移動
物のその他の利用可能性として、例えば、 組織培養のための細胞源としての使用、 本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはR
NAを直接分析するか、またはDNAにより発現された
タンパク質組織を分析することによる、本発明のタンパ
ク質により特異的に発現あるいは活性化するタンパク質
との関連性についての解析、 DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により
培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織から
の細胞の機能の研究、 上記記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高
めるような薬剤のスクリーニング、および 本発明の変異タンパク質を単離精製およびその抗体作
製などが考えられる。さらに、本発明のDNA転移動物
を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性型不応症な
どを含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の臨床症
状を調べることができ、また、本発明のタンパク質に関
連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的
所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾
患による二次的疾患の研究および治療に貢献することが
できる。また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取
り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素
により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養また
はその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さ
らに、本発明のタンパク質産生細胞の特定化、アポトー
シス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにお
けるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べるこ
となどができ、本発明のタンパク質およびその作用解明
のための有効な研究材料となる。さらに、本発明のDN
A転移動物を用いて、本発明のタンパク質の機能不活性
型不応症を含む、本発明のタンパク質に関連する疾患の
治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量
法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリー
ニング法を提供することが可能となる。また、本発明の
DNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクタ
ーを用いて、本発明のタンパク質が関連する疾患のDN
A治療法を検討、開発することが可能である。
【0058】〔7〕ノックアウト動物 本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳
動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳
動物を提供する。すなわち、本発明は、(1)本発明の
DNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
(2)該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来の
β−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不
活性化された第(1)項記載の胚幹細胞、(3)ネオマ
イシン耐性である第(1)項記載の胚幹細胞、(4)非
ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(1)項記載の胚幹
細胞、(5)ゲッ歯動物がマウスである第(4)項記載
の胚幹細胞、(6)本発明のDNAが不活性化された該
DNA発現不全非ヒト哺乳動物、(7)該DNAがレポ
ーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ
遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポー
ター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制
御下で発現しうる第(6)項記載の非ヒト哺乳動物、
(8)非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第(6)項記
載の非ヒト哺乳動物、(9)ゲッ歯動物がマウスである
第(8)項記載の非ヒト哺乳動物、および(10)第
(7)項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポータ
ー遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のD
NAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化
合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0059】本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺
乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明
のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの
発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしてい
る本発明のタンパク質の活性を実質的に喪失させること
により、DNAが実質的に本発明のタンパク質の発現能
を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称す
ることがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES
細胞と略記する)をいう。非ヒト哺乳動物としては、前
記と同様のものが用いられる。本発明のDNAに人為的
に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手
法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNA
を挿入または置換させることによって行なうことができ
る。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠
をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を
破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製
すればよい。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺
乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細
胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の
具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が
有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネ
オマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を
代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガ
ラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコー
ルアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレ
ポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能
を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に
遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA
付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーR
NAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子
を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖
(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例
えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得ら
れたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近
傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼ
ーション解析あるいはターゲッティングベクター上のD
NA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本
発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマー
としたPCR法により解析し、本発明のノックアウトE
S細胞を選別することにより得ることができる。
【0060】また、相同組換え法等により本発明のDN
Aを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述
のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知
EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでも
よい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的
には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的
背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免
疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなど
の目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/
6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善し
たBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF
1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BD
F1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であると
いう利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つ
ので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウ
スを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロ
スすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに
代えることが可能である点で有利に用い得る。また、E
S細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚
盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤
胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚
を取得することができる。また、雌雄いずれのES細胞
を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キ
メラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手
間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行な
うことが望ましい。ES細胞の雌雄の判定方法として
は、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の
遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例として挙げる
ことができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析
をするのに約106個の細胞数を要していたのに対し
て、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むの
で、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを
雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の
選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削
減できる。
【0061】また、第二次セレクションとしては、例え
ば、G−バンディング法による染色体数の確認等により
行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常
数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の
関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウト
した後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n
=40である細胞)に再びクローニングすることが望ま
しい。このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その
増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすい
ので、注意深く継代培養することが必要である。例え
ば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上
でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養
器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5
%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養
するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプ
シン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシ
ン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%ト
リプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、
新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などが
とられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なう
が、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が
見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望ま
れる。ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るま
で単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊
培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々
のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J.
Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292
巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディング
ス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス
・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第7
8巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschmanら、ジャーナ
ル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメン
タル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発
明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現
不全細胞は、インビトロにおける本発明のタンパク質の
細胞生物学的検討において有用である。本発明のDNA
発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知
方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較するこ
とにより、正常動物と区別することが可能である。該非
ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられ
る。
【0062】本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物
は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティン
グベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入
し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のD
NAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えに
より、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の
本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることに
より、本発明のDNAをノックアウトさせることができ
る。本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発
明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブと
したサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッ
ティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティング
ベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の
近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法に
よる解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹
細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明
のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、そ
の細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動
物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠
させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された
動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変
異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成さ
れるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部
が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキ
メラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体
群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のD
NA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コート
カラーの判定等により選別することにより得られる。こ
のようにして得られた個体は、通常、本発明のタンパク
質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のタンパク質の
ヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本
発明のタンパク質のホモ発現不全個体を得ることができ
る。卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマ
イクロインジェクション法でDNA溶液を注入すること
によりターゲッティングベクターを染色体内に導入した
トランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、
これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、
遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のある
ものを選択することにより得られる。
【0063】このようにして本発明のDNAがノックア
ウトされている個体は、交配により得られた動物個体も
該DNAがノックアウトされていることを確認して通常
の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。さらに、
生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよ
い。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を
交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両
方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホ
モザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,
ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することに
より効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物
の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有する
ホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代
する。本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物
胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を
作出する上で、非常に有用である。また、本発明のDN
A発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のタンパク質によ
り誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明
のタンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病の
モデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治
療法の検討に有用である。
【0064】〔7a〕本発明のDNAの欠損や損傷など
に起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物
のスクリーニング方法 本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のD
NAの欠損や損傷などに起因する疾病(例、心筋梗塞後
の心不全あるいは狭心症、心筋症、および狭心症、心筋
症などの疾患に由来する心不全などの心機能の低下を特
徴する疾病(心疾患)など)に対して治療・予防効果を
有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺
乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測
定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷
などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化
合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。該
スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA
発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが
挙げられる。試験化合物としては、例えば、ペプチド、
タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産
物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿な
どが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であっても
よいし、公知の化合物であってもよい。具体的には、本
発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で
処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、
組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の
治療・予防効果を試験することができる。試験動物を試
験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、
静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物
の性質などにあわせて適宜選択することができる。ま
た、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性
質などにあわせて適宜選択することができる。例えば、
心不全に対して治療・予防効果を有する化合物をスクリ
ーニングする場合、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳
動物に圧負荷をかける処置、例えば冠動脈狭窄手術など
の心不全形成手術を行ない、圧負荷処置前または処置後
に試験化合物を投与し、該動物の心循環動態、体重変化
などを経時的に測定する。また、腹部大動脈などを狭窄
することによる圧負荷心肥大モデルでの心循環動態の測
定あるいは心肥大の有無を調べる。該スクリーニング方
法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該
試験動物の心肥大が約10%以上、好ましくは約30%
以上、より好ましくは約50%以上低下した場合、該試
験化合物を心不全に対して治療・予防効果を有する化合
物として選択することができる。
【0065】本発明のスクリーニング方法を用いて得ら
れる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物
であり、本発明のタンパク質等の欠損や損傷などによっ
て引き起こされる疾患(例、心不全など)に対して治療
・予防効果を有するので、該疾患に対する安全で低毒性
な治療・予防剤などの医薬として使用することができ
る。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から
誘導される化合物も同様に用いることができる。該スク
リーニング方法で得られた化合物は塩を形成していても
よく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸
(例、無機酸、有機酸)や塩基(例アルカリ金属)など
との塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付
加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸
(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、
あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、
フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、
リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼ
ンスルホン酸)との塩などが用いられる。該スクリーニ
ング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬
は、前記した本発明のタンパク質の活性を調節する化合
物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性である
ので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、ラット、マウ
ス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、
ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができ
る。該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与
対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、心
不全の治療目的で該化合物を経口投与する場合、一般的
に成人(体重60kgとして)においては、一日につき
該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0
〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与す
る。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量
は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例え
ば、心不全の治療目的で該化合物を注射剤の形で通常成
人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化
合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1
〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程
度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動
物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与するこ
とができる。
【0066】〔7b〕本発明のDNAに対するプロモー
ターの活性を促進する化合物をスクリーニング方法 本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、
試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出す
ることを特徴とする本発明のDNAに対するプロモータ
ーの活性を促進する化合物またはその塩のスクリーニン
グ方法を提供する。上記スクリーニング方法において、
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記
した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、
本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することによ
り不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNA
に対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用い
られる。試験化合物としては、前記と同様のものが挙げ
られる。レポーター遺伝子としては、前記と同様のもの
が用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lac
Z)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはル
シフェラーゼ遺伝子などが好適である。本発明のDNA
をレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不
全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のD
NAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レ
ポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースする
ことにより、プロモーターの活性を検出することができ
る。
【0067】例えば、本発明のタンパク質をコードする
DNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ
遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明
のタンパク質の発現する組織で、本発明のタンパク質の
代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例
えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−
ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラク
トシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することによ
り、簡便に本発明のタンパク質の動物生体内における発
現状態を観察することができる。具体的には、本発明の
タンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルア
ルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PB
S)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または
37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組
織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄すること
によって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色
を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコー
ドするmRNAを検出してもよい。
【0068】上記スクリーニング方法を用いて得られる
化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれ
た化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター
活性を促進または阻害する化合物である。該スクリーニ
ング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、
該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、
無機酸)や塩基(例、有機酸)などとの塩が用いられ、
とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。こ
の様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リ
ン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例
えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン
酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安
息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との
塩などが用いられる。本発明のDNAに対するプロモー
ター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のタ
ンパク質の発現を促進し、該タンパク質の機能を促進す
ることができるので、例えば、心筋梗塞後の心不全ある
いは狭心症、心筋症、および狭心症、心筋症などの疾患
に由来する心不全などの心機能の低下を特徴する疾病
(心疾患)などに対する安全で低毒性な治療・予防剤な
どの医薬として有用である。
【0069】該スクリーニング方法で得られた化合物ま
たはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のタンパ
ク質またはその塩を含有する医薬と同様にして製造する
ことができる。このようにして得られる製剤は、安全で
低毒性であるので、例えば、哺乳動物(例えば、ヒト、
ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、
ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与する
ことができる。該化合物またはその塩の投与量は、対象
疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、
例えば、心不全の治療目的で本発明のDNAに対するプ
ロモーター活性を促進する化合物を経口投与する場合、
一般的に成人(体重60kgとして)においては、一日
につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約
1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg
投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回
投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、
例えば、心不全の治療目的で本発明のDNAに対するプ
ロモーター活性を促進する化合物を注射剤の形で通常成
人(60kgとして)に投与する場合、一日につき該化
合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1
〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程
度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動
物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与するこ
とができる。このように、本発明のDNA発現不全非ヒ
ト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの
活性を促進する化合物またはその塩をスクリーニングす
る上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起
因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に
大きく貢献することができる。また、本発明のタンパク
質のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その
下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、こ
れを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニッ
ク動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にその
タンパクを合成させ、その生体での作用を検討すること
も可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレ
ポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞
株を樹立すれば、 本発明のタンパク質そのものの体内
での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持
つ低分子化合物の探索系として使用できる。また該プロ
モーター部分を解析することにより新たなシスエレメン
トやそれに結合する転写因子を見つけることも可能であ
る。
【0070】本明細書および図面において、塩基やアミ
ノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB
Commission on Biochemical Nomenclature による略号
あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであ
り、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体
があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すもの
とする。 DNA :デオキシリボ核酸 cDNA :相補的デオキシリボ核酸 A :アデニン T :チミン G :グアニン C :シトシン RNA :リボ核酸 mRNA :メッセンジャーリボ核酸 dATP :デオキシアデノシン三リン酸 dTTP :デオキシチミジン三リン酸 dGTP :デオキシグアノシン三リン酸 dCTP :デオキシシチジン三リン酸 ATP :アデノシン三リン酸 EDTA :エチレンジアミン四酢酸 SDS :ドデシル硫酸ナトリウム Gly :グリシン Ala :アラニン Val :バリン Leu :ロイシン Ile :イソロイシン Ser :セリン Thr :スレオニン Cys :システイン Met :メチオニン Glu :グルタミン酸 Asp :アスパラギン酸 Lys :リジン Arg :アルギニン His :ヒスチジン Phe :フェニルアラニン Tyr :チロシン Trp :トリプトファン Pro :プロリン Asn :アスパラギン Gln :グルタミン pGlu :ピログルタミン酸
【0071】また、本明細書中で繁用される置換基、保
護基および試薬を下記の記号で表記する。 Me :メチル基 Et :エチル基 Bu :ブチル基 Ph :フェニル基 TC :チアゾリジン−4(R)−カルボキサミド基 Tos :p−トルエンスルフォニル CHO :ホルミル Bzl :ベンジル Cl2-Bzl :2,6−ジクロロベンジル Bom :ベンジルオキシメチル Z :ベンジルオキシカルボニル Cl−Z :2−クロロベンジルオキシカルボニル Br−Z :2−ブロモベンジルオキシカルボニル Boc :t−ブトキシカルボニル DNP :ジニトロフェニル Trt :トリチル Bum :t−ブトキシメチル Fmoc :N−9−フルオレニルメトキシカルボニル HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール HOOBt :3,4−ジヒドロ−3−ヒドロキシ−4−オキソ− 1,2,3−ベンゾトリアジン HONB :1-ヒドロキシ-5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
【0072】本願明細書の配列表の配列番号は、以下の
配列を示す。 〔配列番号:1〕ラットCARPのアミノ酸配列を示
す。 〔配列番号:2〕配列番号:1で表されるアミノ酸配列
を有するラットCARPをコードするDNAの塩基配列
を示す。 〔配列番号:3〕実施例3で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:4〕実施例3で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:5〕実施例4で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:6〕実施例4で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:7〕実施例5で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:8〕実施例5で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:9〕実施例7で用いられたプライマーの塩
基配列を示す。 〔配列番号:10〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:11〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:12〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:13〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:14〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:15〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:16〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:17〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:18〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:19〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。 〔配列番号:20〕実施例7で用いられたプライマーの
塩基配列を示す。
【0073】
【実施例】以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体
的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではな
い。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュ
ラー・クローニング(Molecular cloning), 2nd, J.Sa
mbrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press,1989
年に記載されている方法に従った。
【0074】
【実施例1】心筋梗塞モデルラットの作製 渡邉らの報告(サーキュレーションリサーチ、第69
巻、370−377項、1991年)に従い雄性ウイス
ターラット(11週齢:体重300-400g)をペントバル
ビタール(50mg/kg,i.p.)で麻酔し、人工呼吸下で正中
にて開胸した。心嚢膜を切開後、心臓を露出させた。冠
動脈の左前下行枝起始部で、糸付き縫合針(エルプ社、
5―0シルク)にて心筋ごと冠動脈を絹糸で縛った後閉
胸した。偽手術群は糸を縛らずに閉胸した。麻酔から回
復後、通常飼育した。
【0075】
【実施例2】Total RNAの抽出 術後1週経過、8週経過、20週経過、30週経過した
ラットをペントバルビタール麻酔下で開胸し、心臓を摘
出した後、生理食塩水で大動脈より逆行性に冠動脈を潅
流して血液を洗い流した。摘出した心臓からハサミで左
心室以外の組織を取り除いた後、梗塞形成を確認した後
に梗塞領域(スカー形成部位)を取り除き、非梗塞領域
のみとした。これをハサミで細かく細断した後、ISO
GEN(和光純薬社製)を用いてTotal RNAを
抽出した。
【0076】
【実施例3】ラットCARP遺伝子のクローニング Total RNAからゲノムDNAを除去する目的でenzyme s
et for DD(宝酒造社製)を用いてDNA分解操作を加えた
後、Fluorescence Differenti
al Display kit Fluorescei
n version(宝酒造社製)を用いてディファレ
ンシャルディスプレー(DD)を行った。対象組織とし
て偽手術した後8週経過した左心室由来のTotal
RNAを用いた。その結果、対象組織と比較して術後1
週、20週、30週経過した組織で顕著な増加を示し、
術後8週で逆に低下するバンドを見出した。このバンド
をアクリルアミドゲルからカッターで切り出し、滅菌蒸
留水に懸濁し、95℃、10分間加熱することによりゲルか
ら遺伝子断片を抽出した。次にPCRで再増幅した後、
DNA塩基配列を解読した。そこで明らかとなった塩基
配列を基に公のデータベースであるGenebleデー
タベースを用いてBlastNによるホモロジー検索を
行ったところ、本遺伝子断片は、公知のラットCARP(J.
B.C.、第272巻、22800-22808項、1997年、デベロプメン
ト、第124巻、793-804項、1997年)をコードしている塩
基配列であることが判明した。次に術後1週経過した左
心室由来のTotal RNAからPEアプライドバイ
オシステムズ社の逆転写反応キットを用いてcDNAライブ
ラリーを作製し、これを鋳型としてCARP遺伝子5’
非翻訳領域(配列番号:3)と3’非翻訳領域(配列番
号:4)の2種のプライマーDNAを用いてPCRを行
い、ラットCARP遺伝子の全長を取得した(配列番号
1)。反応はPfu DNAポリメラーゼ(東洋紡社
製)を用いてサーマルサイクラーgene amp P
CR system 9700(パーキンエルマー社
製)にて行い、95℃で10秒、60℃で30秒、72
℃で3分を1サイクルとして33サイクルを繰り返し
た。このようにして得られた全長CARP遺伝子をZe
ro Blunt TOPO PCR cloning
Kit(インビトロジェン社製)を用いてpCR II-Blu
nt TOPOベクターにクローニングした。さらに公知の合
成プライマー(T7 プライマーとSP6プライマー)を用
い、PEアプライドバイオシステムズ社のサイクルシー
ケンスキットによって反応を行い、蛍光DNAシーケン
サー(ABI PRISM 377,パーキンエルマー
社製)で分析し、その遺伝子断片がラットCARP遺伝
子であることを確認した。
【0077】
【実施例4】正常ラットにおけるCARP遺伝子の組織分布
の解析 ノーザンブロッティング用のプローブを得るために、実
施例3で得られたCARP遺伝子を鋳型とし、配列番号:5
と6を用いて実施例3の方法でPCRを行った。ノーザン
用膜はクロンテック社製ラットMTN Blotとマウス RNA M
aster Blotを用いた。ハイブリダイゼション溶液として
Express Hyb Hybridization solution(クロンテック社
製)を使用して、68℃でプレハイブリダイゼーション
を行った。一方、プローブとして上記で調製したCARP遺
伝子断片を[α-32P]dCTPとBcaBEST Labeling Kit(宝酒
造社製)を用いて標識した。ハイブリダイゼーションは
標識プローブを含むExpress Hyb Hybridization soluti
on(クロンテック社製)中で68℃、1時間の条件で行っ
た。膜は最終的に0.1XSSC,0.1%SDS液中50℃で洗浄
し、検出にはBAS-2000(フジフィルム社製)を用いた。そ
の結果(図1及び2)、心臓がラット CARP遺伝子の主
要発現部位であり、弱いながら肺と骨格筋でも発現が認
められた。
【0078】
【実施例5】心筋梗塞モデルラットでのCARP遺伝子
の経時変化の解析 実施例2で説明した心筋梗塞形成術後1週、8週、20
週、30週経過ラットの左心室の非梗塞領域由来のTo
tal RNAとその対象として用いた偽手術した後8
週経過した左心室由来のTotal RNAをTaqM
an Reverse Transcription
Reagents(PEアプライドバイオシステムズ社
製)を用いてcDNAを合成した。次にCARP特異的
プライマーとして配列番号:5と7を用い、プローブと
して配列番号:8(PEアプライドバイオシステムズ社
製)の蛍光ラベル体によってPCRによるCARP遺伝
子のコピー数の定量をABI Prism 7700
sequence Detection System
によって行った。なお、反応はTaqMan PCR
Core Reagents kit(PEアプライド
バイオシステムズ社製)を使用し、その全ての方法は添
付されている説明書に従って行った。定量化用スタンダ
ードの調製法は以下に記す。心筋梗塞形成術後1週経過
ラット左心室の非梗塞領域由来のTotal RNAを
TaqMan Reverse Transcript
ion Reagents(PEアプライドバイオシス
テムズ社製)を用いてcDNAを合成した。次にCAR
P特異的プライマーとして配列番号:5と7を用いてP
CRを行い、得られたCARP遺伝子の部分配列を有す
る遺伝子断片をそのスタンダードとした。更に算出され
たコピー数を内部コントロールとしてCARP遺伝子の
コピー数と同様に算出したグリセロール3りん酸脱水素
酵素のコピー数で補正した後、対象組織と比較し、その
変動率としてデータ化した(図3)。その結果、CAR
P遺伝子は術後1週でやや増加(5.9倍)した後、術
後8週で減少(0.47倍)し、術後20週、30週で
大きく(それぞれ21.4、12.3倍)増加すること
が明らかとなった。
【0079】手術直後から1週経過時は、梗塞が形成さ
れつつある時期と考えられ、結窄された冠動脈から下流
領域の心筋細胞が急速に死滅、脱落し、リンパ球の浸潤
により炎症が生じていると推測される。また術後20週
から30週は死亡例が見られる直前であることから術後
8週は代償機序が作動している時期であり術後20週以
降は十分な代償機序が作動していないか、あるいは過剰
な代償機序により代償破綻が生じている時期であると考
えられる。そこで術後1週経過時を急性期、術後8週経
過時を慢性期、術後20週以降を末期と考えた。心筋梗
塞から心不全への移行に関わる代償機序は、次のように
考えられる。心筋細胞が脱落(壊死あるいはアポトーシ
ス)すると失った心筋細胞の有していた機能を心臓全体
で代償するために残存心筋細胞は肥大し、心拡張や線維
化を伴う心臓の再構築(心リモデリング)が生じる。こ
れによって機能的に心機能は代償されることになるが、
一方でこの心リモデリングあるいは過剰な代償機序その
ものが心不全を発症する危険性をはらんでいると考えら
れている(内科、第79巻、2―20項、1997年)。し
かしながら代償破綻そのものに関与する分子は未だ同定
されておらず、従ってそのメカニズムも明らかにされて
いない。上記実施例で示したとおり、上記ラット心筋梗
塞モデルを用いて、慢性期から末期に至る過程で発現量
の変化する遺伝子を網羅的に調べた結果、顕著に発現変
動する遺伝子としてCARP遺伝子を見出した。本遺伝子は
慢性期に低下し、末期で顕著に増加していた。この遺伝
子は、心臓に対して保護的に働くと考えられている心房
性ナトリウム利尿ペプチドと心収縮蛋白質の一つである
トロポニンCの発現を抑制することが報告されている。
更に心臓の発生に重要な役割を演じている転写因子とし
て考えられている。またCARP遺伝子産物の標的となる遺
伝子は未だ十分な解析はされていないが心機能維持に必
須な心臓特異的な遺伝子であろうと推測されている(J.
B.C.、第272巻、22800-22808項、1997年、デベロプメン
ト、第124巻、793-804項、1997年、デベロプメント、第
126巻、4223-4234項、1999年)。最近、心筋梗塞モデル
ラットにおける遺伝子発現を網羅的に解析した結果が報
告(サーキュレーション・リサーチ、第86巻、939項,20
00年)され、本発見と同様に急性期においてCARP遺伝子
の微弱な発現増強を示している。しかしこれは術後16
週までの観察結果であり、慢性期と末期での顕著な発現
変動には触れていない。更に上記論文で用いられている
遺伝子発現解析法は、ジーン・チップを用いたディファ
レンシャル・ハイブリダイゼーション法である。この方
法は、上記実施例で示したTaqMan PCR法と比較して、明
らかに感度が低いと思われる。このため、慢性期におけ
るCARP遺伝子の発現低下を検出できなかったのではない
かと推察された。上記実施例で明らかになったCARP遺伝
子の詳細な発現プロファイルは次のように考察すること
ができる。すなわち、慢性期での発現低下によって、CA
RP遺伝子産物による抑制系の解除が生じ、その結果とし
て心臓特異的遺伝子群の発現増強が考えられる。つまり
代償機序の強化が生じていると思われる。更に末期に進
行していくとその発現は逆に増大してゆき、結果として
代償機序の低下が生じ、代償破綻によるポンプ機能の低
下により死亡していくと考えられる。心疾患予防・治療
薬としては、過剰な代償機序と代償破綻をともに抑制す
ることが重要である。CARP遺伝子の発現を適切にコント
ロールすることは、この課題を解決する上で重要であ
る。発現低下は過剰な代償機序を誘導し、発現増加は代
償破綻を加速すると考えられる。従って、CARP遺伝子の
発現や遺伝子産物の機能を調節する薬剤は心疾患の新た
な予防・治療剤として有用である。
【0080】
【参考例1】ラット新生仔由来初代心筋細胞の調製 実験は全てチャールスリバー社製のウイスターラットの
新生仔(生後1日以内のもの)を使用して行った。ラッ
ト新生仔をエーテル麻酔し、70 %エタノールで消毒
後、ピンセットで心臓を摘出した。摘出した心臓はリン
酸緩衝生理食塩水(タカラ社製T900)で洗浄後、手術用の
ハサミで細片化した。これをリン酸緩衝生理食塩水で4
〜5回洗浄して大部分の血液由来の非心筋細胞を除去し
てから酵素消化を行った。血液由来の非心筋細胞の洗浄
除去は、セルストレイナー(ファルコン社製)に心臓組
織片を入れてリン酸緩衝生理食塩水で洗浄することで行
った。酵素消化は、新生仔10匹分の組織片に対して5 ml
の酵素液(1mlのPBS(-) に1.25 mgのトリプシン(ディ
フコ社製)と0.25 mgのコラゲナーゼ(シグマ社製)を
溶解したもの)を加えて15分間処理した後、15分ご
とに2.5 mlの酵素液を二回追加し、37℃に保ちながらス
ターラーで攪拌して行った。この過程で個々の細胞は組
織片から分離された。反応終了後10 %牛胎仔血清(バイ
オウィカー社製)を含むMedium 199(ギブコ社製)を酵素
液の1/2量添加して酵素反応を停止させ、これをセルス
トレイナーで濾過後、400 x gで5分間遠心分離して細
胞を集めた。次に新生仔10匹分の細胞を50 mlの10 %牛
胎仔血清を含むMedium 199に懸濁し、100 mmシャーレ
(イワキ社製)に10 mlずつまいて5 % CO2、37 ℃に設
定したCO2インキュベーター中で1時間培養した。浮遊
状態の細胞を回収してセルストレイナーで濾過後、400
x gで5分間遠心分離して心筋細胞を集めた。次に新生
仔10匹分の心筋細胞を2 mlの低張液(8.29 g NH4Cl, 1.0
g KHCO3, 37mg EDTA/2Naを1リットルの水に溶かしたも
の)に懸濁し、3分間放置して赤血球を破砕した。これに
10 mlの10 %牛胎仔血清を含むMedium 199を加えてか
ら、400x gで5分間遠心分離して心筋細胞を集めた。こ
れを10 %牛胎仔血清を含むMedium 199に懸濁してセルス
トレイナーで濾過した。得られた細胞懸濁液の一部を取
ってこれに0.3 %のトリパンブルーを添加した後に軽く
混合して心筋細胞数を血球計算板を用いて計数した。ラ
ット新生仔10匹分の心臓から赤血球をほとんど含まない
心筋細胞が1.4 x 107個得られた。
【0081】
【実施例6】発現プロファイルの作成 上記で調製した初代心筋細胞を12ウエルプレートに1ウエル
あたり300000細胞、10%血清入りの培地で18
時間培養し、その後血清を抜いた同培地にて実験を行っ
た。測定は実施例5に記載したTaqManによる定量
法にてその発現量を定量した。その結果、血清を抜くこ
とによって細胞死を誘導することができるが、培養後4
時間経過時と比較して24時間後では約2倍のCARP
遺伝子の発現増強が認められた。更に心不全時にその分
泌が増加することが知られている液性因子、ノルエピネ
フリンやエンドセリンを10nM、100nM、100
0nM培地に添加したところ、双方とも最大約3倍の発
現増強が認められた。これらの液性因子は、心筋細胞の
肥大促進作用を有しており、これら肥大刺激に応答して
CARP遺伝子の発現が増強することが明らかとなっ
た。本系は各種肥大刺激あるいは細胞死誘導時における
CARP遺伝子の発現を定量的に測定することが可能で
あり、CARP遺伝子発現調節薬のスクリーニングに用
いることができる。
【0082】
【実施例7】組換えアデノウイルスの作製 実施例3でクローニングしたラットCARPcDNAのウイ
ルスベクターへのクローニングは、宝酒造株式会社のア
デノカスタムサービスにて作製した。宝酒造社製adenov
irus expression vector kit (6150)を用い、その添付
されている方法に従ってクローニングを行い、CARP
センス鎖発現アデノウイルスを作製した。高純度精製ウ
イルスの調製及び力価の測定は、公知の方法(実験医学
別冊 新遺伝子工学ハンドブック、238項〜244
項)を用いて行い、最終的に3.6X1010 pfu/ml濃
度の精製ウイルス原液を調製した。ヌルウイルス(イン
サートを含まないウイルス)の調製も上記に従い作製
し、最終的に1.3X109 pfu/ml濃度の精製ウイルス
原液を調製した。
【0083】手術の準備 渡邉らの報告(サーキュレーションリサーチ、第69
巻、370−377項、1991年)に従い雄性ウイス
ターラット(8週齢:体重250-300g)をペントバルビタ
ールナトリウム(50mg/kg,i.p.)で麻酔した。バリカン
にて胸部及び頸部の腹側被毛を削毛し、仰臥位に手術台
に寝かせた。四肢及び上顎切歯にたこ糸をかけ手術台に
固定し、80%エタノール溶液にて術部を消毒した。頸部
皮膚及びその直下の筋肉を切開し、気管を露出させた。
肉眼で確認しながら14Gの留置針外筒(テルモ社)を口
腔より気管内に導管し、人工呼吸器に接続した。人工呼
吸器がはずれないように手術用絹糸(夏目、ブレード絹
製縫合糸3-0)を用いて口唇と留置針外筒を結びつけ
た。
【0084】胸腔の切開と心臓の露出 ラット胸骨より約5ミリメートル左側付近の皮膚及び体
幹皮筋を正中方向に約4センチメートル切開した。次に
切開部直下にある第2から第5肋軟骨の胸骨付近を切開
した。外科バサミにて肋間筋を剥離し、止血後、開胸器
により胸腔を約3センチメート開口した。さらに、心嚢
膜を綿棒にて鈍性剥離、開口し、心臓を露出させた。
【0085】胸部大動脈狭窄用絹糸の設置 胸腺を持ち上げ、心臓より出ている胸部大動脈の心臓付
近の結合組織を綿棒にて剥離した。手術用絹糸(夏目、
ブレード絹製縫合糸5-0)を先曲がり虹彩無鈎ピンセッ
トにてつまみ、胸部大動脈左側から右側にかけて背部を
回して通し、ループ上にして胸部大動脈に狭窄用の絹糸
を設置した。設置した絹糸を内径約1ミリメートルの狭
窄用のテフロン(登録商標)製チューブに通し、この絹
糸をテフロンチューブにて引き締めるようにしてはさ
み、胸部大動脈が狭窄出来るようにした。
【0086】左心室へのウイルス溶液の投与 綿棒を用いて心耳を軸に心尖側より心臓を反転させ、左
心室を腹側へ移動させた。高純度CARP発現ウイルス
ベクター水溶液を生理食塩水にて希釈し、10 8 pfu/ml
濃度の溶液を調製し、それを27G注射針をつけた1mlシ
リンジ(テルモ)に計り取った。体重1キログラムあた
り2X108 pfuのウイルスを投与した。その方法は冠
動・静脈を避けて左心室へ注射針をつきさし、その後テ
フロンチューブを引き締めることによって胸部大動脈を
狭窄した。狭窄確認後、ウイルス溶液を左心室内へゆっ
くりと投与し、左心室内に還流させた。投与に伴って左
心室が拡張するため、約5秒間に一度、テフロンチュー
ブの引き締めをゆるめ、ウイルス溶液を全身に還流さ
せ、左心室の拡張による2次的な影響を防いだ。この投
与とテフロンチューブの引き締めをゆるめる操作を合計
3回繰り返して、ウイルス溶液を左心室内へ全量還流さ
せた。
【0087】胸部大動脈狭窄用絹糸の撤去と閉胸 胸部大動脈狭窄用絹糸のループの一方を切除し、もう一
方を引き抜くことで絹糸を撤去した。胸腔内の血液を綿
棒にて吸収排除後、縫合用絹糸にて胸壁及び皮膚を約5
ミリメートルの間隔で縫合した。頸部の導管時に切開し
た皮膚及びその直下の筋肉も同様の方法にて縫合した。
手術直後から1時間以上、人工呼吸器にて強制呼吸をさ
せた後、動物が麻酔より覚めた状態で動物の自発呼吸を
確認した後、導管を撤去した。手術後の動物は飼育用ケ
ージに収容した。
【0088】心機能の測定 渡邉らの報告(サーキュレーションリサーチ、第69
巻、370−377項、1991年)に従い次のように
して心機能を測定した。術後1週間経過したラットを秤
量した後、ペントバルビタールナトリウム(50mg/kg,i.
p.)で麻酔した。バリカンにて胸部及び頸部の腹側被毛
を削毛し、仰臥位に手術台に寝かせた。腹側頸部を外科
用ハサミで切開し、直下の筋肉をピンセットで切開し、
気管直横の頸部大動脈を結合組織から剥離した後、その
血管に縫合用絹糸(夏目、ブレード絹製縫合糸3-0)を
かけ、頭部側を結び、腹部側を動脈クレンメで止血し
た。その後、外科用ハサミで血管を切開し、血管内にミ
ラーカテーテル(ミラー社製、2F,140cm,カタログナン
バー800-0509)を挿入し、左心室にその先端を装着し
た。ミラーカテーテルはNEC社製ポリグラフに接続
し、ブラウン管(日本光電、ブラウン管モニター)にて圧
変動をモニターすることによって、ミラーカテーテルの
左心室への装着を確認し、左心室内圧を測定した。平均
血圧は血管に挿入した時点で測定した。左心室内圧、心
拍、左室内圧変化率(LV+dp/dt及びLV-dp/dt)の測定値は
マックラボで計算し、算出した。なお、ミラーカテーテ
ルの較正は、キャリバー(オメダ社製、Xcaliber,PN072
490-000-000)を用いて実験開始直前に0mmHg、1
00mmHgの2点で行った。その結果、CARP発現
ウイルスを導入した群ではヌルウイルス投与群と比較し
て有意に左室内圧変化率(LV+dp/dt)が減少した。その他
のパラメーターには有意な変化は認められなかった。
【0089】左心室重量の測定 心機能の測定を終了した後、開胸し、心臓をピンセット
でつまみ血管、結合組織を取り除き、心臓を摘出した。
心臓は生理食塩水中で洗浄した。更に摘出した心臓に付
着している大動脈にシリンジを挿入し、生理食塩水を心
臓全体に灌流させて血液を除去した。その後、心房を取
り除き、心室組織のみを秤量し、体重で補正することに
よって心臓重量を測定した。その結果、CARP発現ウ
イルス投与群とヌルウイルス投与群間で有意な差は認め
られなかった。秤量後の心臓は左心室と右心室が均等に
分配されるように外科用ハサミを用いて縦断することに
よって組織解析用サンプルと遺伝子解析用サンプルを調
製した。なお、術後生存した個体はヌルウイルス投与群
11匹、CARP発現ウイルス投与群7匹であった。し
かし心機能測定中にヌルウイルス投与群の2匹が死亡し
たため、遺伝子解析及び心重量測定はヌルウイルス投与
群11匹で行ったが、心機能測定はヌルウイルス投与群
9匹のデータを用いて解析を行った。
【0090】遺伝子発現解析 Total RNAの調製 遺伝子解析用サンプルから右心室部分を取り除き、左心
室だけを外科用ハサミで細かく細断した後、ISOGE
N(和光純薬社製)を用いてTotal RNAを抽出
した。
【0091】cDNAの合成 Total RNAをTaqMan Reverse
Transcription Reagents(PE
アプライドバイオシステムズ社製)を用いてcDNAを
合成した。
【0092】TaqMan PCRによる発現解析 発現解析は、CARP遺伝子の導入を確認する目的でC
ARP遺伝子のコピー数を調べた。更に心肥大のマーカ
ー遺伝子であるANP,収縮蛋白質であるミオシン軽
鎖、ミオシン重鎖、心臓型アクチンのコピー数を調べ
た。実施例2で記載したCARP特異的プライマーとし
て配列番号:5と7を用い、プローブとして配列番号:
8(PEアプライドバイオシステムズ社製)の蛍光ラベ
ル体によってPCRによるCARP遺伝子のコピー数の
定量をABI Prism 7700 sequenc
e Detection Systemによって行っ
た。なお、反応はTaqMan PCR Core R
eagentskit(PEアプライドバイオシステム
ズ社製)を使用し、その全ての方法は添付されている説
明書に従って行った。定量化用スタンダードの調製法は
以下に記す。心筋梗塞形成術後1週経過ラット左心室の
非梗塞領域由来のTotalRNAをTaqMan R
everse Transcription Reag
ents(PEアプライドバイオシステムズ社製)を用
いてcDNAを合成した。次にCARP特異的プライマ
ーとして配列番号:5と7を用いてPCRを行い、得ら
れたCARP遺伝子の部分配列を有する遺伝子断片をそ
のスタンダードとした。更に算出されたコピー数を内部
コントロールとしてCARP遺伝子のコピー数と同様に
算出したグリセロール3りん酸脱水酵素のコピー数で補
正した後、ヌルウイルス投与群と比較した。その結果、
CARP発現ウイルス投与群が有意に高くCARP遺伝
子を発現していることが明らかになった。ANPは、特
異的プライマーとして配列番号:9と10を用い、プロ
ーブとして配列番号:11(PEアプライドバイオシス
テムズ社製)を用いて行った。ミオシン軽鎖は、特異的
プライマーとして配列番号:12と13を用い、プロー
ブとして配列番号:14(PEアプライドバイオシステ
ムズ社製)を、ミオシン重鎖は、特異的プライマーとし
て配列番号:15と16を用い、プローブとして配列番
号:17(PEアプライドバイオシステムズ社製)を、
心臓型アクチンは、特異的プライマーとして配列番号:
18と19を用い、プローブとして配列番号:20(P
Eアプライドバイオシステムズ社製)を用いて行った。
その結果、両群間でANP発現量に有意な差はなく、心
重量に変化がなく肥大が生じていなかったことと整合性
のある結果となった。また収縮蛋白質のうち、ミオシン
重鎖がCARP発現ウイルス投与群で有意に増加していたこ
とから、本群では心筋のサルコメア構成異常が生じてい
たと考察できる。以上の結果の統計処理は、ヌルウイル
ス投与群とCARP発現ウイルス投与群との間でt-検
定を行った。P<0.05をもって有意とした。
【0093】病理学的分析 顕微鏡用切片の作製 CARP遺伝子をウイスルベクターにて心筋細胞に直接導入
することで心筋細胞の形態学的変化が想定された。そこ
でCARP遺伝子導入群とヌル導入群で心筋細胞の形態学的
変化を病理学的に比較検索することでCARP遺伝子導入に
よる心筋細胞に及ぼす影響について調べた。ウイルスベ
クターにて遺伝子を導入し、経時的に動物の心機能を測
定後、心臓全体を摘出し、10ml注射筒を用い10ml生理食
塩水にて潅流洗浄した。その後、組織解析用サンプルと
した心臓を4%パラホルムアルデヒドリン酸緩衝液10mlを
用いて固定した。さらに4%パラホルムアルデヒドリン酸
緩衝液中にて4℃にて一晩、後固定した。固定終了後、
組織片を蒸留水にて洗浄し、長軸に対して垂直方向に二
分割した。これらの心臓を70%エタノール、80%エタノー
ル、90%エタノール、100%エタノールを2回、キシレン2
回の順で各々2時間浸漬し、組織の脱水、透徹を行っ
た。次に約56℃のパラフィンに2回、各々2時間浸漬し、
組織カセットを土台としたパラフィンブロックを作製し
た。パラフィンブロックは一晩以上冷蔵庫にて急速に冷
却し、完全に固めた。切片はパラフィンブロックを室温
に戻してから、ミクロトームにて5μmに薄切して作製
した。マスコートを施したスライドグラス上で温浴しな
がら切片をマウントした。マウントした切片をパラフィ
ン伸展機にて乾燥後、37℃に加温した乾燥機内に一晩放
置した。さらに伸展のため、60℃、1時間加熱した。脱
パラフィン及び一般染色(ヘマトキシリンエオジン二重
染色法)は下記を参考に定法に従って行った。(組織学
研究法、佐野豊、南山堂、1985年)。染色後の切片の脱
水は70%エタノール、80%エタノール、90%エタノール、1
00%エタノールを2回、キシレン2回の順で行った。透
徹、封入は下記を参考に行った。(組織学研究法、佐野
豊、南山堂、1985年)。
【0094】横紋構造の観察 微分干渉装置を組み込んだ光学顕微鏡を用い、拡大倍率
1000倍にて染色後の切片を検鏡した。以下に検鏡した心
筋組織の代表例について記述する。ヌル導入群の心筋細
胞はエオジン好性の細胞質に富み、心筋細胞の横紋構造
が明瞭に観察された。一方、CARP遺伝子導入群の心臓で
は心筋細胞の方向性や核の位置及び心臓壁の厚さに関し
てはヌル導入群と同様であったが、心筋細胞の横紋構造
の欠失している部位が観察された。以上のことから、CA
RP遺伝子導入による心収縮力低下作用の原因の一つが横
紋構造の欠失に起因することが推察された。
【0095】以上の結果、CARP遺伝子の心臓における過
剰発現は、収縮蛋白質の発現に変化を与え、その結果と
してそれらの構成単位であるサルコメア構造の変質を来
たし、横紋構造の破壊が生じると考えられる。このた
め、心機能(心収縮力)の低下が生じるものと考えられ
る。CARPについて公知の情報と心不全モデルでの発現プ
ロファイルから、その機能は心臓特異的遺伝子の負の調
節因子であると考えその発現増強は心機能低下を来たす
ものと推定していたが、本実施例において検討した心臓
特異的な遺伝子について、CARP導入によってインビボで
発現低下した遺伝子を見出すことができなかった。逆
に、ミオシン重鎖の発現増加が認められた。この結果か
らCARPの機能は、1)正常ラットにおいてはCARPの負の
調節因子としての作用に対してその代償機序が働き、収
縮蛋白質遺伝子の発現調節系がみだされ、収縮蛋白質の
発現が増強され、結果として、心機能低下に至った。一
方心不全では代償機序そのものが破綻しており、CARPの
負の調節因子としての作用によって直接的に心機能低下
に至るものと考えられる。2)CARPは蛋白質レベルで収縮
蛋白質の機能を調節する可能性が示されている(ジャー
ナル・オブ・セル・バイオロジー、第153巻、413項から
423項、2001年)。CARPが収縮蛋白質の発現だけでな
く、サルコメア構造の維持に直接関与しているとする
と、その過剰発現が、サルコメア構造を破壊するという
今回の結果は整合性がとれていると考えられる。CARPは
正常時には収縮蛋白質の発現とサルコメア構造の維持に
必須の蛋白質であるが、その発現が過剰に増えたり、あ
るいは減少することによって心筋収縮の恒常性が破壊さ
れ、心機能低下に至る心不全原因遺伝子の1つであると
考えられる。
【0096】
【実施例8】H9c2細胞を用いた探索系の構築 H9c2細胞は、ラット心筋細胞由来の細胞株であり、
ATCCより購入した。この細胞を10%牛血清入りD
MEM培地で培養後、トリプシンを用いて細胞を回収し
た後、12ウエルプレートに100000細胞/穴で播種
し、10%牛血清入りDMEM培地で12時間培養し
た。その後、血清を除去したDMEM培地に培地交換
し、ノルエピネフリンを10nM、100nMになる様
培地に添加し、4時間後、8時間後のCARP遺伝子発
現量をTaqMan PCRで定量した。またグリセロ
ール3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(G3PDH)のコ
ピー数を同様に定量し、算出されたCARP遺伝子のコ
ピー数をG3PDHで補正したところ、ノルエピネフリ
ンの用量依存的にCARP遺伝子の発現量は増加し、最
大約2倍の増加であった。従って、肥大刺激に応答して
CARP遺伝子の発現が細胞株を用いても増強すること
が明らかとなった。本系は各種肥大刺激あるいは細胞死
誘導時におけるCARP遺伝子の発現を定量的に測定す
ることが可能であり、CARP遺伝子発現調節薬のスク
リーニングに用いることができる。更にCARP遺伝子
のプロモーターを用いたレポータージーンアッセイを行
うことによって、低変動率を高変動率に変え、高感度化
を行うことによってハイスループットスクリーニングが
行うことができる。
【0097】
【発明の効果】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
パク質の活性を調節する化合物またはその塩、該タンパ
ク質の活性を調節する中和抗体は、例えば、心疾患など
の疾病の予防・治療剤として使用することができる。ま
た、アンチセンスDNAは、配列番号:1で表されるア
ミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列
を有するタンパク質の発現を抑制することができ、例え
ば、心疾患などの疾病の予防・治療剤として使用するこ
とができる。
【0098】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> Takeda Chemical Industries, Ltd. <120> Use of Disease-Related Gene <130> B01265 <150> JP 2000-203104 <151> 2000-06-30 <160> 20 <210> 1 <211> 319 <212> PRT <213> Rat <400> 1 Met Met Val Phe Arg Val Glu Glu Leu Val Thr Gly Lys Lys Asn Ser 5 10 15 Asn Gly Ser Ser Gly Glu Phe Leu Pro Gly Glu Phe Arg Asn Gly Glu 20 25 30 Tyr Glu Ala Ala Val Ala Leu Glu Lys Gln Glu Asp Leu Lys Thr Leu 35 40 45 Pro Ala Asn Ser Val Asn Leu Gly Glu Glu Gln Arg Lys Ser Glu Lys 50 55 60 Val Arg Glu Ala Glu Leu Lys Lys Lys Lys Leu Glu Gln Arg Ser Lys 65 70 75 80 Leu Glu Asn Leu Glu Asp Leu Glu Ile Ile Val Gln Leu Lys Lys Arg 85 90 95 Lys Lys Tyr Lys Lys Thr Lys Val Pro Val Val Lys Glu Pro Glu Pro 100 105 110 Glu Ile Ile Thr Glu Pro Val Asp Val Pro Arg Phe Leu Lys Ala Ala 115 120 125 Leu Glu Asn Lys Leu Pro Val Val Glu Lys Phe Leu Ser Asp Lys Asn 130 135 140 Ser Pro Asp Val Cys Asp Glu Tyr Lys Arg Thr Ala Leu His Arg Ala 145 150 155 160 Cys Leu Glu Gly His Leu Ala Ile Val Glu Lys Leu Met Glu Ala Gly 165 170 175 Ala Gln Ile Glu Phe Arg Asp Met Leu Glu Ser Thr Ala Ile His Trp 180 185 190 Ala Cys Arg Gly Gly Asn Leu Asp Val Leu Lys Leu Leu Leu Asn Lys 195 200 205 Gly Ala Lys Ile Ser Ala Arg Asp Lys Leu Leu Ser Thr Ala Leu His 210 215 220 Val Ala Val Arg Thr Gly His Tyr Glu Cys Ala Glu His Leu Ile Ala 225 230 235 240 Cys Glu Ala Asp Leu Asn Ala Lys Asp Arg Glu Gly Asp Thr Pro Leu 245 250 255 His Asp Ala Val Arg Leu Asn Arg Tyr Lys Met Ile Arg Leu Leu Met 260 265 270 Thr Phe Gly Ala Asp Leu Asn Val Lys Asn Cys Ala Gly Lys Thr Pro 275 280 285 Met Asp Leu Val Leu His Trp Gln Asn Gly Thr Lys Ala Ile Phe Asp 290 295 300 Ser Leu Lys Glu Asn Ala Tyr Lys Asn Ser Arg Ile Ala Thr Phe 305 310 315 <210> 2 <211> 957 <212> DNA <213> Rat <400> 2 atgatggttt ttcgagtaga ggagctggta acgggcaaaa agaacagcaa tgggtcctca 60 ggggagttcc ttcctggcga gttcagaaat ggagagtatg aagctgctgt tgccttggag 120 aaacaagagg acttgaagac acttccagcc aacagtgtga acctggggga agaacaacgg 180 aaaagtgaga aagttcgaga ggcagagctc aaaaagaaaa aactagaaca aagatcaaag 240 cttgaaaact tagaagacct tgaaataatt gttcaactga agaaaagaaa aaaatacaag 300 aaaactaaag ttccagttgt gaaggaaccg gagcctgaaa ttattactga acctgtggat 360 gtgccaaggt ttctgaaagc tgcactggag aacaaactgc cagttgtaga gaaattcctg 420 tcagacaaga acagccccga cgtctgcgat gagtataaac ggaccgctct ccatagagca 480 tgcttagaag gacacttggc gatcgtggag aagttaatgg aggctggagc ccagattgaa 540 ttccgagata tgctggaatc cacagccatc cactgggcat gtcgtggagg aaacctggat 600 gtcctgaaac tgttgctaaa caaaggtgcc aaaatcagtg cccgagacaa gctgctcagc 660 acagcgctgc acgtggcggt gaggaccggt cactacgagt gtgctgagca cctcatcgcc 720 tgcgaggcgg atctcaatgc caaggacaga gaaggagaca cccctctgca tgatgcggtg 780 aggttgaatc gctacaagat gatccggctc ttgatgacct tcggtgcgga cctcaatgtc 840 aagaactgtg ctgggaagac ccctatggat ctggtgttgc actggcagaa tggaaccaaa 900 gcgatattcg acagcctcaa ggagaatgcc tacaaaaact cgcgcatagc tacgttc 957 <210> 3 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 3 acatagacta acggctgcca ac 22 <210> 4 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 4 agctcctgtc gagtctcttt cc 22 <210> 5 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 5 gcagaatgga accaaagcga ta 22 <210> 6 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 6 aagtgaggac acaaaaggga gat 23 <210> 7 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 7 gaacgtagct atgcgcgagt tt 22 <210> 8 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 8 tcgacagcct caaggagaat gcctaca 27 <210> 9 <211> 19 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 9 tcttcctggc cttttggct 19 <210> 10 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 10 atctgtgttg gacaccgcac t 21 <210> 11 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 11 ccaggccata ttggagcaaa tcccgt 26 <210> 12 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 12 agcagaccca gatccaggag tt 22 <210> 13 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 13 tgtcaatgaa gccgtctctg tt 22 <210> 14 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 14 aaggaggcct tcacaatcat ggacca 26 <210> 15 <211> 21 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 15 atgacaactc ctcccgcttt g 21 <210> 16 <211> 25 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 16 ccagaaggta ggtctctatg tctgc 25 <210> 17 <211> 29 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 17 agttcatcag gatccacttt ggagccaca 29 <210> 18 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 18 tgtacgccaa caatgtcctg tc 22 <210> 19 <211> 22 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 19 cagtgcggta atttcctttt gc 22 <210> 20 <211> 26 <212> DNA <213> Artificial Sequence <220> <223> Primer <400> 20 aggcaccacc atgtaccctg gaattg 26
【0099】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例4で示したノーザンブロッティング法に
よる正常ラットでのCARP遺伝子の組織分布を示す。
図中1,2,3,4,5,6,7および8はそれぞれ、
心臓、脳、脾臓、肺、肝臓、骨格筋、腎臓および精巣を
示す。
【図2】実施例4で示したドットブロット法による正常
ラットでのCARP遺伝子の組織分布を示す。
【図3】実施例5で示した心筋梗塞モデルラットでのC
ARP遺伝子の経時変化を偽手術群の測定値で割ること
によって変動率を算出した。これをFold increaseとし
た。図中縦軸は、左心室におけるCARP遺伝子のコピー数
(発現量)をハウスキーピング遺伝子であるグリセロー
ル3リン酸脱水素酵素遺伝子のコピー数で割ることによ
り補正した後、偽手術群の測定値で割ることによってFo
ld increaseを算出した。横軸Time course (week)は用
いた心不全モデルの経過を追ったサンプル名を示した。
sham 8wは偽手術群、MI 1wは手術後1週経過、MI 8wは
手術後8週経過、MI 20wは手術後20週経過、MI 30wは
手術後30週経過した心臓を分析した際のサンプル名で
ある。
【図4】ラットCARP遺伝子の塩基配列およびコード
しているアミノ酸配列を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) A61K 45/00 A61K 48/00 4C085 48/00 A61P 9/04 4C086 A61P 9/04 9/08 4H045 9/08 9/10 9/10 C07K 14/47 ZNA C07K 14/47 ZNA 16/18 16/18 C12Q 1/68 A C12N 15/09 G01N 33/50 Z C12Q 1/68 33/53 D G01N 33/50 C12P 21/08 33/53 C12N 15/00 A // C12P 21/08 A61K 37/02 Fターム(参考) 2G045 AA40 DA12 DA13 DA36 FB02 FB03 4B024 AA01 AA11 BA41 CA01 GA11 HA15 4B063 QA01 QA19 QQ08 QQ53 QR32 QR55 QS34 QX01 4B064 AG01 AG27 CA10 CA19 CC24 DA01 DA13 4C084 AA02 AA06 AA07 AA13 AA17 BA01 BA08 BA22 BA23 MA01 NA14 ZA362 ZA372 ZA392 ZA402 4C085 AA13 AA14 CC32 EE01 GG01 4C086 AA01 AA02 AA03 AA04 EA16 MA01 MA04 NA14 ZA36 ZA37 ZA39 ZA40 4H045 AA10 AA11 AA30 BA10 CA40 DA76 EA23 EA50 FA74

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同
    一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパ
    ク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を用いるこ
    とを特徴とする、配列番号:1で表されるアミノ酸配列
    と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタ
    ンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活性
    を調節する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  2. 【請求項2】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同
    一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパ
    ク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩が、配列番
    号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に
    同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もしくはその部
    分ペプチドまたはその塩をコードするDNAを含有する
    DNAで形質転換された形質転換体の細胞質内に発現さ
    れたものである請求項1記載のスクリーニング方法。
  3. 【請求項3】CARPを発現し得る初代心筋細胞または
    心筋由来細胞株(H9c2)に試験化合物を投与した時
    および試験化合物を投与しない時における、それぞれの
    CARP発現量を測定することを特徴とするCARPの
    発現促進薬または阻害薬のスクリーニング方法。
  4. 【請求項4】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同
    一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパ
    ク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有する
    ことを特徴とする、配列番号:1で表されるアミノ酸配
    列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有する
    タンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の活
    性を調節する化合物またはその塩のスクリーニング用キ
    ット。
  5. 【請求項5】請求項1記載のスクリーニング方法または
    請求項4記載のスクリーニング用キットを用いて得られ
    る、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしく
    は実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もし
    くはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化
    合物またはその塩。
  6. 【請求項6】請求項1記載のスクリーニング方法または
    請求項3記載のスクリーニング用キットを用いて得られ
    る、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしく
    は実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もし
    くはその部分ペプチドまたはその塩の活性を抑制する化
    合物またはその塩。
  7. 【請求項7】請求項1記載のスクリーニング方法または
    請求項4記載のスクリーニング用キットを用いて得られ
    る、配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしく
    は実質的に同一のアミノ酸配列を有するタンパク質もし
    くはその部分ペプチドまたはその塩の活性を調節する化
    合物またはその塩を含有してなる医薬。
  8. 【請求項8】心疾患の予防・治療剤である請求項7記載
    の医薬。
  9. 【請求項9】請求項7記載の医薬を哺乳動物に投与する
    ことを特徴とする心疾患の治療方法。
  10. 【請求項10】心疾患の予防・治療剤を製造するための
    請求項6記載の化合物またはその塩の使用。
  11. 【請求項11】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
    同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
    パク質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相
    補もしくは実質的に相補な塩基配列を有するアンチセン
    スDNA。
  12. 【請求項12】請求項11記載のアンチセンスDNAを
    含有してなる医薬。
  13. 【請求項13】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
    同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
    パク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対するモ
    ノクローナル抗体。
  14. 【請求項14】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と
    同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を有するタン
    パク質またはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗
    体を含有してなる診断薬または医薬。
JP2001199318A 2000-06-30 2001-06-29 疾患関連遺伝子の用途 Withdrawn JP2002357597A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001199318A JP2002357597A (ja) 2000-06-30 2001-06-29 疾患関連遺伝子の用途

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000203104 2000-06-30
JP2000-203104 2000-06-30
JP2001199318A JP2002357597A (ja) 2000-06-30 2001-06-29 疾患関連遺伝子の用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2002357597A true JP2002357597A (ja) 2002-12-13

Family

ID=26595396

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001199318A Withdrawn JP2002357597A (ja) 2000-06-30 2001-06-29 疾患関連遺伝子の用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2002357597A (ja)

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2002112772A (ja) 新規ポリペプチドおよびそのdna
WO2001036633A1 (en) Novel protein and dna thereof
WO2001002564A1 (fr) Nouveau polypeptide et adn de ce polypeptide
WO2004048565A9 (ja) アポトーシス関連蛋白質およびその用途
JP4451158B2 (ja) 転写制御シスエレメント及びそれに特異的に結合する転写調節因子並びにそれらの用途
WO2000071581A1 (fr) Nouveau polypeptide
WO2001000799A1 (fr) Nouvelle proteine et son adn
JP2004073182A (ja) インスリン抵抗性改善剤
JP2002357597A (ja) 疾患関連遺伝子の用途
WO2002003063A1 (fr) Utilisation d&#39;un gene associe a une maladie
EP1323734A1 (en) Irap-binding protein
JP4300008B2 (ja) 新規タンパク質およびそのdna
JP2002348299A (ja) Irap結合タンパク質
JP2001299363A (ja) 新規タンパク質およびそのdna
JP2001299364A (ja) 新規タンパク質およびそのdna
JP2001228146A (ja) 疾患関連遺伝子の用途
JP2000053700A (ja) 新規タンパク質およびそのdna
JP2004147642A (ja) 新規タンパク質およびその用途
WO2000029570A1 (fr) Nouvelle proteine et son utilisation
JP2004041003A (ja) 新規タンパク質、そのdnaおよびその用途
JPH11266870A (ja) 新規タンパク質およびそのdna
JP2004173677A (ja) 新規タンパク質およびそのdna
WO2002036772A1 (fr) Nouveau gene associe a une maladie et son utilisation
WO2002033082A1 (fr) Nouveau gene associe a des maladies et son utilisation
JP2002355065A (ja) 心臓および骨格筋で高発現する新規遺伝子およびその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20080902