JP2002348540A - 導電性高分子を含有する造膜水液、該造膜水液製造方法、並びに該膜を備える構造体 - Google Patents

導電性高分子を含有する造膜水液、該造膜水液製造方法、並びに該膜を備える構造体

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JP2002348540A
JP2002348540A JP2001159265A JP2001159265A JP2002348540A JP 2002348540 A JP2002348540 A JP 2002348540A JP 2001159265 A JP2001159265 A JP 2001159265A JP 2001159265 A JP2001159265 A JP 2001159265A JP 2002348540 A JP2002348540 A JP 2002348540A
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Shiro Ogata
四郎 緒方
Yoshimitsu Matsui
義光 松井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 導電性高分子が有する性能と、過酸化チタン
が有する性能とを合わせ有し、かつ防錆性能を持続的に
発現する被膜を形成することのできる造膜水液に関する
技術の提供。 【解決手段】 100μm以下の外寸を有するポリアニ
リン等の導電性高分子微細粒子、及びアナターゼ型又は
アモルファス型の過酸化チタンを含有する造膜水液を形
成し、これを使用して被膜を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電性高分子が有
する性能と、ペルオキソ基を有するチタン酸化物の有す
る性能とを合わせ有する被膜を形成することのできる造
膜水液の技術に関する。より詳しくは、導電性高分子が
有する機能(導電性、帯電低減性及び電磁シールド性)
と、ペルオキソ基を有するチタン酸化物が有する機能
(防汚性、抗菌性、超親水性及び有機物質分解性等)
と、合わせて防錆性能を持つ被膜を形成することのでき
る造膜水液、該造膜水液の製造方法及び該被膜を有する
構造体に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリアニリンあるいはポリピロール等の
導電性高分子については、携帯電話,テレビ,パソコ
ン,家電製品等から発生する電磁波をシールドする電磁
波シールド材、電池用電極、静電防止剤、キャパシタ
ー、ダイオード,トランジス等の各種電子デバイス、エ
レクトロクロミック素子、各種センサー等への利用が期
待されて多くの研究開発が行われており、一部について
は実用化の段階に到達しているものもある。
【0003】この導電性高分子については、多くの物質
が既に開発されており、それには、前記したポリアニリ
ン、ポリピロールの外にも、ポリチオフェン、ポリチオ
フェンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアセチレ
ン、ポリアルキルピロール、ポリアルキルチオフェン、
ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリ
メトキシフェニレン、ポリフェニレンスルファイド、ポ
リフェニレンオキシド、ポリアントラセン、ポリナフタ
レン、ポリピレン、ポリアズレンあるいはこれらの誘導
体の重合体があげられる。なお、これらの導電性高分子
は、前記利用においては単独又は2種類以上の混合物と
して用いられるとされている。
【0004】これらの導電性高分子は、ドーピングする
ことができ、このドーピングにより導電性が向上し、そ
の結果電磁波シールド性が向上する。そのドーパントと
しては、Li,Na,K等のアルカリ金属、Ca等のア
ルカリ土類金属等のドナー型ドーパント、あるいはCl
2,Br2,I2等のハロゲン、PF3,AsF5,BF3
のルイス酸、HF,HCl,HNO3,H2SO4,HC
lO4等のプロトン酸、FeCl3,FeOCl2,Ti
Cl4,WCl3等の遷移金属化合物、Cl-,Br-,I
-,ClO4 -,PF3 -,BF3 -,AsF3 -等の電解質ア
ニオンのアクセプター型ドーパントが用いられる。
【0005】これらの導電性高分子を用いる前記した利
用は、もっぱらその高導電性という特性を活用するもの
であり、特に電磁波シールド材として利用する際には、
その特性が重要であることは前記のとおりである。ま
た、その特性は、酸化もしくは還元反応、特に電気的酸
化還元反応、又は酸もしくは塩基との反応により変化す
ることも知られている。特に電子供与体及び電子受容体
の性能を持つ導電性高分子はこれらの反応により電気的
特性変化を発現する。
【0006】例えば、ポリアニリンは、酸化もしくは還
元反応、又は酸もしくは塩基との反応により下記(1)
の反応式により変化することが知られている(「高分子
新素材 One Point−5 導電性ポリマー」、吉
村進著、高分子学会編17〜18頁)。その結果、ポリ
アニリンを酸化した場合には、電導度は金属状態で色は
緑色になり、還元した場合には電導度は絶縁状態で青色
から無色透明となる。また、酸と反応させ酸性化した場
合には、電導度は向上し緑色になり、塩基と反応させ塩
基性化した場合には、電導度は低下し色は青色となる。
【0007】
【式1】
【0008】導電性高分子は、以上のような特性を有す
るものではあるものの、それ単独では被膜形成すべき構
造体との結合力はほとんどなく、それを改善するために
樹脂等の結合成分を有機溶剤等に溶解した有機結合剤、
シリカゾル、シリコーン化合物あるいはITO等の結合
助剤と併用されるが、その場合においても結合性は十分
なものではなかった。
【0009】また、その際に強固に結合させるには高温
での処理が必要であったり、あるいは固着強度が期待し
たほど向上しない等の問題があった。なお、有機物質を
使用した場合には作業環境等に格別の配慮を必要とする
等の取扱上利便性に欠ける点もあった。さらに、その特
性も前述のとおり状態によって変化するものであり、導
電性も十分発現することができない場合があり、またペ
ルオキソ基を有するチタン酸化物が有する防汚性能又は
触媒性能等を有するものではない。
【0010】そして、ペルオキソ基を有するチタン酸化
物が基体上で造膜乾燥後ペルオキソ基が離脱したチタン
酸化物となり、光触媒性能、抗菌性能あるいは防汚性能
等を有することも既知である。また、それを用いて、板
ガラス、タイル等のセラミック、金属板、プラスチック
板、タンク、観賞用水槽等の各種基材又は構造物表面に
被膜を形成し、その被膜により光触媒性能、抗菌性能、
防汚性能、防曇性能等の各種機能を発現させることも従
来から行なわれているところであり、その特性の中に
は、導電性高分子と共通するものもある。
【0011】しかしながら、現状においては、防汚性
能、防曇性能については、光不存在での機能発現は十分
なものではなく、さらに電磁波シールドあるいは帯電防
止等で求められる導電性に関しても十分なものではな
く、そのため、これら特性に関し更なる向上が望まれて
いる。また、導電性高分子物質の機能と、ペルオキソ基
を有するチタン酸化物の機能とを合わせ発現するものの
存在は現在までのところ知られていない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】以上のとおりであるか
ら、導電性高分子物質の機能と、ペルオキソ基を有する
チタン酸化物の機能とを合わせ有し、かつ強固の結合力
が発現し、取扱利便性を有する被膜形成用造膜液の出現
が期待されており、更には導電性高分子物質と、ペルオ
キソ基を有するチタン酸化物とが有する各種機能を同時
に十分に発現させることができることも望まれていた。
【0013】また、被膜形成のために取扱上利便性に欠
ける特別な助剤、特に有機溶剤等の配合を必要としない
水系の造膜液、すなわち造膜水液の出現が望まれてい
た。さらには、導電性高分子物質及びペルオキソ基を有
するチタン酸化物が単独では発現することを期待されて
いなかった特性、例えば各種基材や化粧仕上材表面での
基板錆や、もらい錆の防止、工場排気等により生ずると
いわれている酸性雨(亜硫酸ガス等)からの防錆性等を
発現することができる造膜水液の出現が望まれていた。
【0014】本発明者等は、長年、過酸化チタンの固着
性能や光触媒性能の向上、活用手段等の関連技術の研究
開発に関与し、その成果を多数提案している。また、導
電性高分子は、前記したとおりの電気的特性を有してお
り、その特性が注目されていた。そのような状況の中
で、本発明者は、ペルオキソ基を有するチタン酸化物
と、導電性高分子に着目し、鋭意研究したところ、偶然
にも前記課題を解決することを見出すことができ、本発
明を完成したものである。
【0015】したがって、本発明は、ペルオキソ基を有
するチタン酸化物と導電性高分子との両者の特性を発現
させることができ、また取扱上利便性に欠ける有機溶剤
等の助剤を配合することなく結合性に優れた被膜が形成
でき、かつペルオキソ基を有するチタン酸化物と導電性
高分子との単独では従来発現することが期待されていな
かった特性を発現させることのできる造膜水液に係る技
術を提供することを発明の解決すべき課題とするもので
ある。
【0016】特に、各種基材や化粧仕上材表面での基板
錆や、もらい錆の防止、工場排気により生ずるといわれ
ている酸性雨(亜硫酸ガス等)からの防錆性等の優れた
特性を発現する被膜を形成することができる造膜水液に
係る技術を提供することを発明の解決すべき課題とする
ものである。すなわち、光触媒性能や導電性高分子の持
つ電気的特性は、基材や化粧仕上材表面で機能化させる
ことで価値を持つものであり、かつ両機能が併存するこ
とのできる造膜水液にに係る技術を提供することを発明
の目的とするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題を解
決するために、造膜水液、該造膜水液の製造方法及び該
膜を備える構造体を提供するものである。そのうちの造
膜水液は、100μm以下の外寸を有する導電性高分子
微細粒子及びペルオキソ基を有するチタン酸化物微細粒
子を含有するものである。
【0018】また、その造膜水液の製造方法は、ペルオ
キソ基を有するチタン酸化物微細粒子含有分散水と、導
電性高分子微細粒子及び/又は該微細粒子分散液とを混
合するものである。さらに、その構造体は、前記造膜水
液により形成された被膜を有するものである。
【0019】そして、本発明の造膜水液では、導電性高
分子とペルオキソ基を有するチタン酸化物微細粒子とが
併用されており、その結果両者の特性を発現させること
ができる。すなわち、導電性高分子とペルオキソ基を有
するチタン酸化物とが発現する機能である、導電性、帯
電低減性、電磁シールド性、防汚性、抗菌性、防曇性、
超親水性あるいは有機物質分解性等の性能を発現するこ
とができる。
【0020】また、ペルオキソ基を有するチタン酸化物
は導電性高分子の粒子造膜と基体との結合力を向上させ
ることができ、その結果、本発明の造膜水液では導電性
高分子の固着力を向上させるための結合助剤を配合させ
る必要がない。さらに、本発明の造膜水液では、導電性
高分子分散液あるいはペルオキソ基を有するチタン酸化
物分散液では、期待されていない防錆性能を単層で発現
するという予想外の優れた効果も奏することができる。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明は、前述したとおり、導電
性高分子とペルオキソ基を有するチタン酸化物とが併用
されている造膜水液に係る技術を提供するものである。
この導電性高分子微細粒子における外寸とは、該粒子の
最も長い部分の径の長さを示すものである。該微細粒子
には球状以外の各種異形状のものも存在しており、その
場合には該粒子の最も長い部分の径の長さを外寸とい
う。
【0022】その電性高分子微細粒子には、電子供与体
及び受容体となるドーパントを有するものがあり、それ
を使用することにより導電性は任意に変化させることが
できる。また、ペルオキソ基を有するチタン酸化物にア
モルファス型あるいはアナターゼ型のいずれを使用して
も、造膜水液により形成された被膜は、特に特殊な手段
を施すことなく強固に結合させることができ、さらに導
電性向上物質を含有するせしめることによりペルオキソ
基を有するチタン酸化物の存在による導電性の向上が期
待できる。
【0023】そして、前記のような特性を有する造膜水
液は、ペルオキソ基を有するチタン酸化物含有分散液
と、導電性高分子微細粒子及び/又は該微細粒子分散液
とを混合することにより製造することができる。さら
に、これらの造膜水液を用いて、基材あるいは基板等の
各種構造物表面に被膜を有する構造体を形成することが
できる。
【0024】また、造膜された被膜の導電性高分子を絶
縁性状態とすることにより、分子における電子(e-
の供与・受容機能が向上し、その周辺の酸素、水素、水
等をラジカル活性化し、その高分子に光触媒性能を発現
させることが期待できる。さらに、導電性高分子を電子
(e-)の放射状態にすることにより防錆性能を発現さ
せることが期待できる。
【0025】本発明では、導電性高分子は、前記したポ
リアニリン、ポリピロールの外にも、ポリチオフェン、
ポリチオフェンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリ
アセチレン、ポリアルキルピロール、ポリアルキルチオ
フェン、ポリ−p−フェニレン、ポリフェニレンビニレ
ン、ポリメトキシフェニレン、ポリフェニレンスルファ
イド、ポリフェニレンオキシド、、ポリアントラセン、
ポリナフタレン、ポリピレン、ポリアズレンあるいはこ
れらの誘導体の重合体などの多くのものが使用できる。
【0026】本発明で使用する導電性高分子としては、
前記したとおり各種のものが使用でき特に制限されるも
のではないが、金属−絶縁体移転が起きる共役ポリマ
ー、ポリマー鎖内に結合交替の不整を有する共役ポリマ
ー、又は一次元的連鎖を有する共役ポリマーで、かつド
ーパミン機能、いわゆる電子供与体及び電子受容体機能
を有するものが好ましく使用できる。それにはポリアニ
リン、ポリフェニレン等があり、特にはイオン性ポリマ
ーであるポリアニリンが好ましい。
【0027】本発明の造膜水液において、導電性高分子
と併用するペルオキソ基を有するチタン酸化物は、前述
したとおりアモルファス型あるいはアナターゼ型のいず
れを使用してもよい。ペルオキソ基を有するチタン酸化
物は前記ペルオキソ基を有するチタン酸化物以外の光触
媒物質も併用でき、それには、酸化チタン、ZnO、S
rTiOP3、CdS、CdO、CaP、InP、In2
3、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe23
Ta23、WO3、NiO、Cu2O、SiC、Si
2、MoS3、InSb、RuO2、CeO2等が使用可
能である。
【0028】本発明の造膜水液において導電性高分子と
併用するペルオキソ基を有するチタン酸化物としては、
アナターゼ型が光触媒性能に優れていると共に導電性高
分子の結合性助剤としての性能にも優れており、特に好
ましい。また、アモルファス型のペルオキソ基を有する
チタン酸化物は、光触媒性能がなく、そのため光触媒性
能を発現させるためには、前記した各種の光触媒性能を
併用するのがよい。
【0029】また、この造膜水液には、ペルオキソ基を
有するチタン酸化物の電気伝導性を向上せしめるために
導電性向上物質を含有せしめることができ、かかる物質
としては、チタン酸化物単独含有の被膜形成水液により
形成される被膜に比し、導電性を向上せしめることがで
きるものであれば、金属塩等の各種物質が使用可能であ
る。
【0030】そのための金属塩としては、例えば、アル
ミニウム、錫、クロム、ニッケル、アンチモン、鉄、
銀、セシウム、インジウム、セリウム、セレン、銅、マ
ンガン、カルシウム、白金、タングステン、ジルコニウ
ム、亜鉛等の金属塩があり、それ以外にも一部の金属あ
るいは非金属等については水酸化物あるいは酸化物も使
用可能である。
【0031】それらについてより具体的に物質名で示す
と、塩化アルミニウム、塩化第1及び第2錫、塩化クロ
ム、塩化ニッケル、塩化第1及び第2アンチモン、塩化
第1及び第2鉄、硝酸銀、塩化セシウム、三塩化インジ
ウム、塩化第1セリウム、四塩化セレン、塩化第2銅、
塩化マンガン、塩化カルシウム、塩化第2白金、四塩化
タングステン、オキシ二塩化タングステン、タングステ
ン酸カリウム、塩化第2金、オキシ塩化ジルコニウム、
塩化亜鉛等の各種の金属塩が例示できる。また、金属塩
以外の化合物としては、水酸化インジウム、ケイタング
ステン酸、シリカゾル、水酸化カルシウム等が例示でき
る。
【0032】本発明の造膜水液を使用して被膜を形成す
る対象構造体としては、光触媒性能、抗菌性能、防汚性
能、防曇性能、帯電防止能、電磁シールド性、あるいは
防錆性等の各種機能が要求される各種素材の構造物ある
いは各種形状の構造物が該当し、特に制限されるもので
はない。それらの素材としては、板ガラス、セラミッ
ク、ステンレス,アルミ等の金属板、アクリル,ポリカー
ボネート,PET等のプラスチック板、綿布あるいは繊
維等が例示できる。
【0033】また、構造体の形状としては、建築物,自
動車等の窓ガラス、自動車等の車両外装材、タンク、観
賞用等の各種水槽、金属,プラスチック等のパイプ、衛
生陶器、眼鏡、レンズ、レンズフィルター、貯湯器、浴
槽機器、洗面機器、流し台、ドア取手、水道用活栓、道
路用ミラー、電磁シールド材、基板等の半導体材料、複
写機内部部品等の各種ものが例示できる。
【0034】本発明の造膜水液の製造は、まずペルオキ
ソ基を有するチタン酸化物の分散水を形成し、それに導
電性高分子微細粒子及び/又は該微細粒子分散水とを混
合することにより行う。例えば、アナターゼ型過酸化チ
タンの場合には、以下のように行う。まず、希薄四塩化
チタン溶液を準備し、これに希薄アンモニア水等の希薄
アルカリ溶液を添加し中和して水酸化チタンを沈殿させ
る。この沈殿物を純水で洗浄し、水酸化物の含有液を作
製する。
【0035】次いで、この含有液を冷却しながら過酸化
水素を添加し攪拌することによりアモルファス型過酸化
チタン分散液が得られる。これを純水で希釈して希薄化
し、調製された希薄アモルファス型過酸化チタン分散液
が得られる。得られた過酸化チタン分散液を所定時間加
熱することにより過酸化チタンがアナターゼ型に転位
し、アナターゼ型過酸化チタン分散液が調製できる。
【0036】その際のアモルファス型及びアナターゼ型
の過酸化チタン分散液の製造プロセスを図示すると図1
のとおりである。また、前記図1には、導電性向上物質
の添加についても図示されており、そこに図示された適
宜時期にチタン化合物中に含有させることができ、導電
性向上物質が含有した過酸化チタン分散水液を得ること
ができる。
【0037】このようにして得られたアモルファス型過
酸化チタン分散液又はアナターゼ型過酸化チタン分散液
に、導電性高分子の微粉末又は導電性高分子微粉末分散
液を添加することにより、それぞれアモルファス型過酸
化チタンの微細粒子と導電性高分子微細粒子とを含有す
る造膜水液、及びアナターゼ型過酸化チタンの微細粒子
と導電性高分子微細粒子とを含有する造膜水液が調製で
きる。なお、その際アナターゼ型を使用した場合には、
得られた過酸化チタン分散水液は、光触媒性能を有する
ものとなるが、アモルファス型を使用した場合には光触
媒性能を有しないものとなる。
【0038】本発明の造膜水液においては、ペルオキソ
基を有するチタン酸化物は、導電性高分子の構造物の結
合助剤としての機能を合わせ有しており、その結果導電
性高分子を構造物に強固に結合させるための助剤の配合
は敢えて必要としないが、基体となる構造物の耐熱、耐
薬品性が許容される範囲で諸性能及び固着性能を維持
持、向上させるために、シリコーン化合物、シリカゾ
ル、あるいは導電性に優れたITO等の結合助剤を併用
することを排除するものではない。特にシリカゾルは無
機物質でもあり併用しても特段の支障はない。また、造
膜の平滑性、均一性、化粧性を出すためにメタノール、
エタノール、プロパノール等の低級アルコール溶媒を混
合することができる。
【0039】この造膜水液により形成された被膜の優れ
た機能及びそれを生かした用途に再度言及すると、まず
導電性高分子の存在による、導電材料、電磁シールド、
スイッチング、光記録材料、光電池,触媒等を生かす機
能材等がある。また、光触媒物質の存在による、防汚、
抗菌、超親水、ガス分解、脱臭、水分解等があり、更に
両者はその機能を相互に補完することができる。
【0040】特に、本発明では、導電性高分子とペルオ
キソ基を有するチタン酸化物とが共存することにより、
両者の機能を補完し、そのため優れた防錆機能を発現す
ることができる。その結果、従来建材、工作物、各種機
器等に形成される最表面の必要機能であると考えられな
がら達成されることのなかった、防汚と防錆(基体錆、
貰い錆)の両機能を達成することが可能となり、そのこ
とは実験的には確認している。更に言及すれば、本発明
では、導電性高分子とペルオキソ基を有するチタン酸化
物とが共存することにより単層で防錆機能を発現するこ
と可能となった。
【0041】本発明の造膜水液で形成される被膜では、
図2に図示するようにペルオキソ基を有するチタン酸化
物と、導電性高分子微粒子とが混在しており、その補完
機能の原理については直接的に解明しているわけではな
いが、一応以下のように推測している。まず、防汚機能
について言及すると、光励起時、すなわち紫外線等の励
起波長の電磁波照射時には、被膜表面に存在するH
2O、O2に光触媒物質より放出された電子(e-)が反
応し、・OH、O2 -ラジカルが生成する。これらに無機
ガスや有機化合物が接触することによって分子間結合の
解離作用が生じ、CO2やH2O等の安定化合物へ変化す
る反応が生ずる。
【0042】他方、このような被膜の形成されていない
構造体表面においては、浮遊中の油分が接触し付着し、
それが蓄積されて視覚的に汚染性状を示すことになる。
それに対して、前記被膜が形成されている構造体表面に
おいては、被膜表面に接触し付着した油分は、前記解離
作用が生じ安定化合物に変化する反応が起こり、そのた
め油分が蓄積されことはなく汚染が観察されないものと
解している。
【0043】ついで、防錆機能について言及すると、ペ
ルオキソ基を有するアナターゼ型チタン酸化物のみで被
膜が形成されている場合は、光触媒励起時には、構造物
の基体より電子(e-)が放出され、形成された空孔に
はその近傍の光触媒物質より放出された電子(e-)が
着地することで、基体の酸化を防止することができる。
しかしながら、光触媒物質が光励起していないときには
光触媒物質からの放出がなく、そのため酸化の進行を抑
制することのできる電子(e-)の供給がなく、その結
果錆びが進行することになる。
【0044】それに対して、導電性高分子とペルオキソ
基を有するアナターゼ型チタン酸化物が共存している場
合には、励起波長の電磁波の照射がなく、そのため該チ
タン酸化物が励起していない状態でも、電子(e-)を
放出することにより基体に形成された空孔に、共存する
導電性高分子から放出された電子が供給され、その結
果、基体の酸化の進行が抑制され、錆びの進行が抑えら
れることになる。
【0045】以上の機構により導電性高分子とペルオキ
ソ基を有するアナターゼ型チタン酸化物が共存した造膜
水液を使用して被膜を形成することにより、酸化の進行
を抑制し防錆機能を発現するものと解している。また、
導電性高分子と該チタン酸化物とが、共存することで両
者の機能が相互に補完されることになる。このような酸
化進行抑制及び防錆の作用が図3に概略的に図示されて
いる。
【0046】以上のような防錆機能は異種金属同士の電
位差による錆びの発生もしくは浮遊金属粒子の付着によ
って生成する酸化錆等による構造体表面の汚染あるいは
化粧剤(樹脂ペイント等)の劣化抑制の場合にも有効で
ある。また、工場排気や石油系燃料の不完全燃焼により
発生するNOX、SOXが雨水に溶けた酸性雨による錆の
発生や、仕上げ剤の劣化抑制として同様に有効である。
【0047】本発明の造膜水液においては、ペルオキソ
基を有する酸化チタン、及びそれと併用する光触媒物質
の導電性を向上させるために導電性向上物質を含有せし
めることは前述のとおりであり、さらに導電性高分子の
導電性を向上せしめるためにも導電性向上物質を含有さ
せることができ、それにはシリカゲル、酸化マグネシウ
ム、酸化チタンあるいは酸化アルミニウム等がある。
【0048】また、本発明の造膜水液では、ペルオキソ
基を有する酸化チタン及び導電性高分子以外の導電性を
向上せしめるために無機物質を配合することが可能であ
り、それには前述した各種の化合物が使用可能である。
例えば、導電性高分子は、その機能を発現させるために
導電性基板にもっぱら造膜されるが、前記無機物質の配
合により、造膜前の構造体表面が絶縁性であっても、前
記無機物質配合の造膜水液で被膜を形成することにより
電導性表面膜の形成が可能となる。
【0049】
【実施例】以下に、本発明の実施例である、造膜水液の
製造例及びその水液を使用して構造体に被膜を形成した
造膜基板例を示す。さらに、その造膜基板例を用いて光
触媒性能及び防錆性能評価試験を行い、その結果により
両性能を評価する。
【0050】[製造例1]純水500gに50wt%四塩
化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し
純水を加え1000gにした溶液を準備する。これに2
5%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍に希釈し
て調製した希釈アンモニア水を滴下してpH6.9に調
整して水酸化チタンを沈殿させた。この沈殿物を純水で
上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄
を継続し、導電率が0.738mS/mになったところ
で洗浄を終了すると0.73wt%濃度の水酸化物の含
有液が430g作製された。
【0051】次いで、この含有液を1〜5℃に冷却しな
がら35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を25
g添加し16時間攪拌すると淡黄褐色の0.86wt%
濃度のアモルファス型過酸化チタン分散液450gが得
られた。これにTi含有量に対しポリアニリンの微粉末
(オルメコン社製P4000W)を1:2の比率になる
ように分散させた。さらに、分散性と造膜性を向上させ
る添加剤を加えて、ポリアニリン粒子+アモルファス型
過酸化チタンコーティング用分散液、すなわち造膜水液
を作製した。
【0052】[製造例2]純水500gに50wt%四塩
化チタン溶液(住友シチックス(株)製)10gを添加し
純水を加え1000gにした溶液を準備する。これに2
5%アンモニア水(高杉製薬(株)製)を10倍に希釈し
て調製した希釈アンモニア水を滴下してpH6.9に調
整して水酸化チタンを沈殿させた。この沈殿物を純水で
上澄み液の導電率が0.8mS/m以下になるまで洗浄
を継続し、導電率が0.738mS/mになったところ
で洗浄を終了すると0.73wt%濃度の水酸化物の含
有液が430g作製された。
【0053】次いで、この含有液を1〜5℃に冷却しな
がら35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を25
g添加し16時間攪拌すると淡黄褐色の0.86wt%
濃度のアモルファス型過酸化チタン分散液450gが得
られた。この過酸化チタン分散液を100g秤量し10
0℃で5時間加熱すると淡黄色のアナターゼ型過酸化チ
タン分散液が1.52wt%濃度で55g得られた。
【0054】これを純水で希釈して造膜塗布用の0.8
5wt%アナターゼ型過酸化チタン分散液98gに調製
した。これにTi含有量に対しポリアニリンの微粉末
(オルメコン社製P4000W)を1:2の比率になる
ように分散させた。さらに、分散性と造膜性を向上させ
る添加剤を加えて、ポリアニリン粒子+アナターゼ型過
酸化チタンコーティング用分散液、すなわち造膜水液を
作製した。
【0055】[製造例3]純水500gに純度97%Cu
Cl2・2H20(日本化学産業(株)製)0.463gを
完全に溶かした溶液に、更に30wt%シリカゾル2.
5gと50wt%四塩化チタン溶液(住友シチックス
(株)製)10gを添加し純水を加え1000gにした溶
液を準備する。これに25%アンモニア水(高杉製薬
(株)製)を10倍希釈した希釈アンモニア水を滴下して
pH6.9に調整して水酸化銅と水酸化チタンとの混合
物を沈殿させた。
【0056】この沈殿物を純水で上澄み液中の導電率が
0.8mS/m以下になるまで洗浄を継続し、導電率が
0.688mS/mになったところで洗浄を終了する
と、0.96wt%濃度の水酸化物の含有液が345g
作製された。次いで、この含有液を1〜5℃に冷却しな
がら35%過酸化水素(タイキ薬品工業(株)製)を25
g添加し16時間攪拌すると青緑色の透明な銅とシリカ
がドープされた1.05wt%のアモルファス型過酸化
チタンの分散液370gが得られた。
【0057】この得られたアモルファス型過酸化チタン
分散液を20g計量し、これにTiの含有量に対しポリ
アニリン分散液(オルメコン社製D1002W:4.0
wt%」)を1:4の比率になるように5.25g添加
し、ポリアニリン粒子+銅、シリカドープアモルファス
型過酸化チタンコーティング用分散液、すなわち造膜水
液を作製した。
【0058】[使用造膜用基板及び使用造膜用水液]前記
製造例1ないし3で製造した造膜水液を使用してステン
レス(SUS304)基板に被膜を形成して造膜基板例
1ないし3とする。その際使用するステンレス基板のサ
イズは100×100mm、厚さは0.8mmであり、
表面はヘアライン仕上げしたものである。なお、比較対
照として、製造例1ないし3の各造膜水液に導電性高分
子であるポリアニリンが含有されていないものを調製
し、これを使用して被膜を形成し比較基板例1ないし3
とする。
【0059】[造膜基板例及び比較基板例の調製、並び
に調製条件等]前記基板の片面に、製造例1ないし3の
造膜水液及び比較対照用の造膜水液を使用して造膜し、
造膜後200℃で、15分間加熱して造膜基板例及び比
較基板例を調製する。
【0060】[防錆性能試験]前記で調製された造膜基板
及び比較基板を、濃度3wt%に調製した塩化ナトリウ
ム水溶液に下部約1/3を浸漬させ、ついで浸漬した基
板を引き上げ乾燥させる。この浸漬、乾燥の作業を8時
間ごとに繰り返し総計96時間行ない、基板の表面状態
を目視で観察し評価する。
【0061】《評価基準》その際の評価基準は以下のと
おりである。 ○:錆の発生が認められない △:若干錆の発生が認められる。 ×:錆の発生が認められる。
【0062】[防錆性能試験結果]この防錆性能試験結果
は、表1に示すとおりである。その結果によれば、本発
明の造膜基板例においては、導電性高分子がポリアニリ
ンの場合は、粉末、分散液をいずれを使用して造膜水液
を調製した場合においても、過酸化チタンがアモルファ
ス型、アナターゼ型のいずれの場合でも、優れた防錆性
能を発現することがわかる。それに対して導電性高分子
が配合されていない比較対照用の造膜水液を使用して調
製した比較基板においては、アモルファス型過酸化チタ
ンの場合には多少の防錆性能を有するものの、アナター
ゼ型の場合には全く防錆性能がないことがわかる。
【0063】[光触媒性能試験]防錆性能試験と同様に前
記で調製された造膜基板及び比較基板に、市販のパイロ
ット社製赤インク(有機染料)を純水で200倍に希釈
した赤色水を60g/m2の量でスプレー法にて塗布し
て着色し、乾燥の上基板の半分を市販のアルミホイルに
包み屋外の直射日光にて暴露して、アルミホイルで包ん
だ部分との対比で消色状態を目視で観察した。
【0064】[光触媒性能試験結果]この光触媒性能試験
結果も、表1に示すとおりである。その結果によれば、
造膜基板と比較基板とで、光触媒性能に差異がなく、導
電性高分子であるポリアニリンの共存によって、その性
能は何ら影響されないことがわかる。
【0065】[導電性試験]防錆性能試験と同様に製造例
1ないし3の造膜水液及び比較対照用の造膜水液を使用
して、100×100mmのタイルに造膜(0.3μ
m)し、80℃、15分乾燥後、造膜表面抵抗値を測定
した(測定には、三菱化学(株)製ロレスターUP又はロ
レスターGPを使用した。なお、測定器の性能上1×1
8未満の測定にはロレスターGPを使用する。)。
【0066】[導電性試験結果]この導電性試験結果も表
1に示すとおりである。その結果によれば、過酸化チタ
ンがアモルファス型、アナターゼ型のいずれの場合で
も、過酸化チタンと導電性高分子であるポリアニリンが
共存した造膜水液を使用した場合の方が導電性に優れて
いることがわかる。
【0067】
【表1】
【0068】
【発明の効果】本発明の造膜水液では、導電性高分子と
過酸化チタンとが併用されており、その結果両者の特性
を発現させることができる。すなわち、導電性高分子と
過酸化チタンとが発現する機能である、導電性、帯電低
減性、電磁シールド性、防汚性、抗菌性、防曇性、超親
水性あるいは有機物質分解性等の性能を発現することが
できる。
【0069】また、過酸化チタンは導電性高分子の粒子
造膜と基体との結合力を向上させることができ、その結
果、本発明の造膜水液では導電性高分子の固着力を向上
させるための結合助剤を配合させる必要がない。さら
に、本発明の造膜水液では、導電性高分子分散液あるい
は過酸化チタン分散液では期待されていない防錆性能を
発現するという予想外の優れた効果も奏することができ
る。特に単層で防錆性能を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用する過酸化チタン分散液であるア
モルファス型及びアナターゼ型の製造プロセスを図示す
る。
【図2】本発明の造膜水液で形成される被膜中における
過酸化チタン分散液と、導電性高分子微粒子とが混在す
る状態を図示する。
【図3】本発明の造膜水液で形成される被膜の酸化進行
抑制及び防錆の作用を概略的に図示する。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // H01B 1/14 H01B 1/14 (72)発明者 松井 義光 佐賀県藤津郡嬉野町大字岩屋川内甲476番 地 サスティナブル・テクノロジー株式会 社佐賀研究所内 Fターム(参考) 4J038 DC001 DF051 DJ001 DK001 HA126 HA216 HA246 HA336 KA12 KA20 MA02 MA08 MA10 NA17 NA20 NA21 PB02 PB05 PB06 PB07 PB08 PB09 PC02 PC03 PC08 PC10 5G301 DA28 DA33 DD05 DD06 DD10

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 100μm以下の外寸を有する導電性高
    分子微細粒子及びペルオキソ基を有するチタン酸化物微
    細粒子を含有する造膜水液。
  2. 【請求項2】 導電性高分子微細粒子が電子供与体及び
    受容体となるドーパントを有し、導電性を任意に変化さ
    せることができるものである請求項1記載の造膜水液。
  3. 【請求項3】 ペルオキソ基を有するチタン酸化物がア
    モルファス型及び/又はアナターゼ型である請求項1又
    は2に記載の造膜水液。
  4. 【請求項4】 導電性向上物質を更に含有する請求項
    1、2又は3に記載の造膜水液。
  5. 【請求項5】 ペルオキソ基を有するチタン酸化物微細
    粒子含有分散水と、導電性高分子微細粒子及び/又は該
    微細粒子分散液とを混合する造膜水液の製造方法。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし4のいずれか1項に記載
    の造膜水液により形成された被膜を有する構造体。
  7. 【請求項7】 被膜が絶縁性の状態となっている請求項
    6記載の構造体。
  8. 【請求項8】 被膜が防錆性能と光触媒性能を発揮する
    構造及び状態となっている請求項6記載の構造体。
  9. 【請求項9】 被膜が帯電防止もしくは電磁シールド性
    能と、光触媒性能とを発揮する構造及び状態となってい
    る請求項6記載の構造体。
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