JP2002334420A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JP2002334420A
JP2002334420A JP2001140524A JP2001140524A JP2002334420A JP 2002334420 A JP2002334420 A JP 2002334420A JP 2001140524 A JP2001140524 A JP 2001140524A JP 2001140524 A JP2001140524 A JP 2001140524A JP 2002334420 A JP2002334420 A JP 2002334420A
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Japan
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magnetic recording
protective layer
magnetic
perfluoropolyether
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JP2001140524A
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English (en)
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Toshiharu Uchiumi
俊治 内海
Masayoshi Sagane
正芳 砂金
Yuri Eguchi
友理 江口
Kazue Seki
和枝 関
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属磁性薄膜型の磁気記録媒体の耐久性、走
行性の向上を図る。 【解決手段】 非磁性支持体1上に、強磁性金属薄膜よ
りなる磁性層2、カーボン保護膜3が順次形成されて成
る磁気記録媒体10において、カーボン保護層3表面を
プラズマ処理し、保護層3に、末端に水酸基を有するパ
ーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル
化合物、および部分フッ化カルボン酸アルキルエステル
を組み合わせた潤滑剤を保持させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録媒体に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気記録媒体としては、酸化物磁
性粉末や合金磁性粉末等の強磁性粉末と結合剤と有機溶
剤等よりなる磁性塗料を非磁性支持体上に塗布すること
によって磁性層が形成される、いわゆる塗布型の磁気記
録媒体が広く使用されている。
【0003】これに対し、高記録密度、長時間記録への
要求の高まりとともに、Co,Co−Ni合金、Co−
Cr合金、Co−O等の強磁性金属材料をメッキや真空
薄膜形成技術(真空蒸着法やスパッタリング法、イオン
プレーティング法等)によって、ポリエステルフィル
ム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム等の非磁
性支持体上に直接被着して磁性層を形成した、いわゆる
強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体が使用されてきてお
り、例えば民生用コンスーマービデオフォーマット(8
ミリHi−8方式、DV方式)あるいは業務用ビデオフ
ォーマット(DVCAM)等において幅広く実用化され
ている。
【0004】このような金属薄膜型磁気記録媒体は、塗
布型の磁気記録媒体に比べて保磁力や角形比等の磁気特
性に優れ、短波長領域での電磁変換特性に優れ、かつ磁
性層の厚みを極めて薄くすることが可能であるため、記
録減磁や、再生時の厚み損失が著しく小さいこと、磁性
層中に非磁性材料である結合剤等を混入する必要がない
ため、磁性材料の充填密度を高めることができること
等、数々の利点を有している。
【0005】一般に、磁気記録媒体においては、信号の
記録、再生の過程で、磁気ヘッドが磁性層側表面を高速
に摺動するようになされ、磁気ヘッドの走行は円滑かつ
安定して行われなければならず、磁気ヘッドと磁性層側
表面における摩擦を低減化することが必要とされてい
る。また、磁気ヘッドとの接触による磨耗や損傷の発生
は可能な限り低減化させることが望ましいとされてい
る。
【0006】しかしながら、上記のような金属磁性薄膜
型の磁気記録媒体は、磁性層表面が極めて平滑であるた
め、磁性層側の最表面と磁気ヘッドとの実質的な接触面
積が大きくなり、凝着現象いわゆるハリツキが起きやす
くなったり、摩擦係数が大きいことから、耐久性や走行
性の劣化を招来するおそれがあるため、これらについて
改善する必要が生じる。
【0007】これに対応するため、例えば磁性層表面に
各種潤滑剤を塗布し、潤滑剤層を形成することによっ
て、耐久性や走行性を改善することが試みられている。
このような用途に適用する潤滑剤としては、例えば、有
機フッ化化合物が有効であることが知られている。
【0008】特に、特開平5−93059号公報等に
は、末端にカルボキシル基を有するエステル化合物等を
潤滑剤として用いることにより、厳しい使用条件下にお
いても良好な潤滑効果を発揮する磁気記録媒体について
の開示がなされている。また、特開平5−194970
号公報には、末端に水酸基を有するエステル化合物等を
潤滑剤として用いることにより、厳しい使用条件下にお
いても、良好な潤滑効果を発揮し、優れた耐久性や走行
性を実現した磁気記録媒体についての開示がなされてい
る。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したよ
うな強磁性金属薄膜型の磁気記録媒体においては、より
優れた耐久性を確保するために、一般的に磁性層上にカ
ーボン保護層が形成される。例えば、コンスーマービデ
オフォーマットであるDVC用テープや業務用ビデオフ
ォーマットであるDVCAM用テープ、更にはテープス
トリーマ用途であるAIT用テープ等に用いられる金属
薄膜型の磁気記録媒体としては、磁性層上にカーボン保
護層が形成されたものが実用化されている。
【0010】このようなカーボン保護層としては、特に
DLC(Diamond Like Carbon )膜が適用され、マグネ
トロンスパッタ法、イオンビームスパッタ法等のPVD
(Physical Vapor Deposition )法や、CVD(Chemic
al Vapor Deposition )法等によって形成することがで
きる。
【0011】しかしながら、上記カーボン保護層の表面
は、強磁性金属薄膜の表面と比較して表面エネルギーが
小さいため、耐久性や走行性の向上を図るべくカーボン
保護層上に潤滑剤を塗布する場合、潤滑剤とカーボン保
護層の表面との吸着性が弱く、潤滑剤の剥離を生じやす
くなり、安定かつ良好な潤滑効果が充分に発揮できなく
なるおそれがある。
【0012】そこで、本発明においては、上述した点に
鑑みて、長期に渡って潤滑剤の効果を充分に発揮でき、
かつ保護層と潤滑剤との密着性に優れ、走行性と耐久性
の向上を図った磁気記録媒体を提供することとした。
【0013】
【課題を解決するための手段】本出願の第1の発明に係
る磁気記録媒体においては、非磁性支持体上に、磁性層
と保護層が順次形成されてなるものとし、この保護層
は、表面を不活性ガスのプラズマ雰囲気下で処理されて
なるものとし、保護層には、下記〔化5〕に示す末端に
水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボ
ン酸とのエステル化合物、および下記〔化6〕で示され
る部分フッ化カルボン酸アルキルエステルを含有する潤
滑剤が保持されて成るものとする。
【化5】 R1 −COOCH2 −Rf −CH2 OCOR1 (但し、Rf はパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
1 は炭化水素基、又はフッ化炭化水素基を表わす。)
【化6】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
する)。
【0014】本出願の第2の発明に係る磁気記録媒体に
おいては、非磁性支持体上に、磁性層と保護層が順次形
成されてなるものとし、この保護層は、表面を不活性ガ
スのプラズマ雰囲気下で処理されてなるものとし、保護
層には、下記〔化7〕に示す末端にカルボキシル基を有
するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエ
ステル化合物、および下記〔化8〕で示される部分フッ
化カルボン酸アルキルエステルを含有する潤滑剤が保持
されて成るものとする。
【化7】R1 −OOC−Rf −CH2 COOR1 (但し、Rfはパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
1 は炭化水素基、またはフッ化炭化水素基を表す。)
【化8】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
する)。
【0015】上記第1の発明の磁気記録媒体において
は、潤滑剤塗布面であるカーボン保護層の表面が、不活
性ガスのプラズマ雰囲気下で処理されているので、上記
〔化5〕および〔化6〕よりなる潤滑剤との密着性が向
上される。さらに上記〔化5〕および〔化6〕を含有す
る潤滑剤を最外層である保護層に保持させることによっ
て、厳しい使用条件下においても、長期使用に渡って良
好な走行性および耐久性が実現される。
【0016】上記第2の発明の磁気記録媒体において
は、潤滑剤塗布面であるカーボン保護層の表面が、不活
性ガスのプラズマ雰囲気下で処理されているので、上記
〔化7〕および〔化8〕よりなる潤滑剤との密着性が向
上される。さらに上記〔化7〕および〔化8〕を含有す
る潤滑剤を最外層である保護層に保持させることによっ
て、厳しい使用条件下においても、長期使用に渡って良
好な走行性および耐久性が実現される。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の磁気記録媒体の一
実施形態について説明するが、本発明の磁気記録媒体
は、以下に示す例に限定されるものではない。
【0018】図1に本発明の磁気記録媒体10の一例の
概略断面図を示す。磁気記録媒体10は、非磁性支持体
1上に、強磁性金属薄膜よりなる磁性層2が形成され、
この磁性層2上に、最外層としてカーボン保護層3が順
次形成されて成る構成を有する。
【0019】非磁性支持体1としては、例えば、ポリエ
チレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の
ポリエステル類、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポ
リオレフィン類、セルローストリアセテート、セルロー
スダイアセテート等のセルロース誘導体、ポリ塩化ビニ
ル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂、ポリカーボ
ネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等
のプラスチックス、アルミニウム合金、チタン合金等の
軽金属、ガラス等のセラミックス等が挙げられる。この
非磁性支持体の形態としては、フィルム、シート、ディ
スク、カード、ドラム等のいずれでもよい。
【0020】非磁性支持体1は、表面性を制御するため
に、表面に微細な山状突起やしわ状突起、粒状突起等の
突起(図示せず)を適宜形成することもできる。
【0021】具体的には、上記山状突起は、例えば非磁
性支持体1を構成する高分子フィルムを成膜する時に、
例えば粒径50〜300〔nm〕程度の無機微粒子を内
添させることにより形成することができ、表面からの高
さは10〜100〔nm〕、密度はおよそ1×10
4 〔個/mm2 〕〜1×105 〔個/mm2 〕に形成す
ることが好適である。この山状突起を形成するための無
機微粒子としては、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ
等が好適である。
【0022】上記しわ状突起は、例えば特定の混合溶媒
を用いた樹脂の希薄溶液を非磁性支持体1上に塗布し乾
燥させることにより形成することができる。しわ状突起
の高さは、0.01〜10〔μm〕、好ましくは、0.
03〜0.5〔μm〕とし、突起間の最短間隔は0.1
〜20〔μm〕程度に形成する。
【0023】このしわ状突起を形成するための樹脂とし
ては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレ
ンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリス
チロール、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリ
スルホン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ
ビニルブチラール、ポリフェニレンオキサイド、フェノ
キシ樹脂等の単体、混合体または共重合体等が挙げら
れ、可溶性溶剤を有するものが適している。
【0024】そして、これらの樹脂をその良溶媒に溶解
させた樹脂濃度1〜1000ppmの溶液に、その樹脂
の貧溶媒であって、上記良溶媒より高い沸点を有する溶
媒を、樹脂に対して10倍量〜100倍量添加した溶液
を、上記高分子フィルムの表面に塗布、乾燥させること
により、非常に微細なしわ状の凹凸を有する薄層を形成
させることができる。
【0025】上記粒状突起は、アクリル樹脂等の有機超
微粒子またはシリカ、金属紛等の無機微粒子を球状ある
いは半球状に付着させることにより形成することができ
る。この粒状突起の高さは、5〔nm〕〜50〔n
m〕、密度は1×106 〔個/mm2 〕〜5×10
7 〔個/mm2 〕程度が好適である。
【0026】非磁性支持体1上には、上述した突起のう
ちの少なくとも1種以上を形成することにより、磁性層
2の表面性を制御することができるが、2種以上を組み
合わせて形成することによって、効果を増大させること
ができる。特に山状突起を形成した非磁性支持体1上に
しわ状突起と粒状突起を形成することにより、耐久性お
よび走行性が著しく改善されることが確認された。この
場合、突起の全体としての高さは、10〜200〔n
m〕の範囲内であることが好ましく、その密度は1×1
5 〔個/mm2 〕〜1×107 〔個/mm2 〕である
ことが好ましい。
【0027】磁性層2は、例えば、Fe,Co,Ni等
の金属の他に、Co−Ni合金、Co−Pt合金、Co
−Ni−Pt合金、Fe−Co合金、Fe−Ni合金、
Fe−Co−Ni合金、Fe−Co−B合金、Co−N
i−Fe−B合金、Co−Cr合金、あるいはこれにP
t,Al等の金属が含有された強磁性金属材料を用いて
形成される。特に、Co−Cr合金を使用した場合には
垂直磁化膜が形成される。
【0028】磁性層2である強磁性金属薄膜は、真空蒸
着法やイオンプレーティング法、スパッタリング法等の
真空薄膜形成技術により連続膜として形成される。この
真空蒸着法は、1×10-2〜1×10-6〔Pa〕の高真
空下で、強磁性金属材料を抵抗加熱、高周波加熱、電子
ビーム加熱等により蒸発させ、非磁性支持体1上に被着
させるものであり、一般に高い保磁力を得るために、非
磁性支持体1に対して上記強磁性金属材料を斜めに蒸着
する、斜方蒸着が適用されている。また、酸素雰囲気中
で蒸着を行うことによって、さらにより高い保磁力を得
ることができる。
【0029】イオンプレーティング法も真空蒸着法の1
種であり、1×10-2〔Pa〕〜1×10-1〔Pa〕の
不活性ガス雰囲気中でDCグロー放電、RFグロー放電
を起こして、放電中で上記強磁性金属材料を蒸発させる
というものである。
【0030】スパッタリング法は、1×10-1〔Pa〕
〜1×10〔Pa〕のアルゴンガスを主成分とする雰囲
気中で、グロー放電を起こし、生じたアルゴンガスイオ
ンでターゲット表面の原子をたたき出すというものであ
り、グロー放電の方法により直流2極、3極スパッタ法
や、高周波スパッタ法、またはマグネトロン放電を利用
したマグネトロンスパッタ法等がある。このスパッタリ
ング法による場合には、CrやW,V等の下地膜を予め
形成しておいてもよい。
【0031】なお、上記いずれの方法においても、非磁
性支持体1上に予めBi,Sb,Pb,Sn,Ga,I
n,Cd,Ge,Si,Ti等の下地金属層を被着形成
しておき、この非磁性支持体1の表面に対して垂直方向
から成膜することにより、磁気異方性の配向がなく、面
内等方性に優れた磁性層2を形成することができ、特に
磁気記録媒体10を磁気ディスクとする場合には好適で
ある。また、上記方法によって形成される強磁性金属薄
膜の膜厚は0.01〔μm〕〜1〔μm〕とすることが
好適である。
【0032】磁性層2上の保護層3はカーボンから成
り、特に比較的硬度の高いダイヤモンドライクカーボン
より成るものが好適である。保護層3は、例えばCVD
法等により形成することができる。CVD法によって保
護層3を形成する場合には、例えば真空容器中に炭化水
素ガス、あるいは炭化水素ガスと不活性ガスの混合ガス
を導入し、10〔Pa〕〜100〔Pa〕程度の圧力に
保持した状態で、真空容器中で放電させて、炭化水素ガ
スのプラズマを発生させ、磁性層2上にカーボンの薄膜
を形成する。放電形式としては、外部電極方式、内部電
極方式のいずれでもよく、放電周波数については、実験
的に決定される。
【0033】また、強磁性金属薄膜が形成された非磁性
支持体1側に配された電極に0〜−3〔kV〕の電圧を
印加することにより、保護層3の硬度の増大を図った
り、密着性を向上させることができる。保護層3の材料
となる上記炭化水素ガスとしては、例えばメタン、エタ
ン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタ
ン、オクタン、エチレン、アセチレン、プロペン、ブテ
ン、ペンテン、ベンゼン等を用いることができる。
【0034】この保護層3は、スペーシングロスを少な
く、磁性層2の磨耗防止効果が得られるように、膜厚を
3〔nm〕〜15〔nm〕程度、特に5〜10〔nm〕
程度に成膜することが好適である。
【0035】本発明の磁気記録媒体10においては、保
護層3は、その表面が、不活性ガスのプラズマ雰囲気下
にさらすことによるプラズマ処理がなされているものと
する。このように保護層3の表面をプラズマ処理するこ
とにより、保護層3と、保護層3上に保持される潤滑剤
との間の密着性が向上し、潤滑剤の潤滑効果を長期間に
わたって持続させることができる。
【0036】保護層3の表面をプラズマ処理する方法と
しては、例えば保護層3が形成された磁気記録媒体を真
空室中に入れ、所定の真空度になるまで、ロータリーポ
ンプ等で排気した後に、不活性ガスを上記磁気記録媒体
の表面上に均等に供給し、上記真空室内の真空度を15
0〔Pa〕程度の圧力にする。その後数十ワットの電力
を印加して例えば13.56〔MHz〕程度の高周波を
加えてプラズマを発生させること用により処理すること
ができる。
【0037】この処理の際に注意すべき点は、プラズマ
処理による金属薄膜型の磁気記録媒体の劣化をできるだ
け低減下させることである。この点から、プラズマ発生
にはNe,Ar,Kr等の不活性ガスを用いるが、磁気
記録媒体の劣化を伴う反応を起こしにくい窒素ガス等も
使用できる。
【0038】このプラズマ処理時の不活性ガスのガス圧
は、1〔Pa〕〜3000〔Pa〕程度が好適であり、
さらに好ましくは、10〔Pa〕〜300〔Pa〕程度
とする。また、このときのガスの流量は前記ガス圧に到
達するような流量であれば問題なく、その値は使用する
装置によって異なるが、真空室の容積が20000cm
3 程度の場合には、50〔cm3 /分STP〕〜100
〔cm3 /分STP〕程度が好適である。
【0039】プラズマ発生源としては、高周波放電、マ
イクロ波放電、直流放電、交流放電、コロナ放電等、プ
ラズマ発生源として通常用いられているものがいずれも
使用できる。また、プラズマ重合時の真空度は1〔P
a〕〜300〔Pa〕とするのが好適である。また、プ
ラズマ処理で印加される電力は、放電可能領域であれば
よいが、20ワット〜150ワットが好適であり、さら
に好ましくは50ワット〜100ワットとする。
【0040】本出願の第1の発明に係る磁気記録媒体1
0においては、最外層となる保護層には、下記〔化9〕
に示す末端に水酸基を有するパーフルオロポリエーテル
と長鎖カルボン酸とのエステル化合物、および下記〔化
10〕で示される部分フッ化カルボン酸アルキルエステ
ルを含有する潤滑剤が保持されている。
【化9】 R1 −COOCH2 −Rf −CH2 OCOR1 (但し、Rf はパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
1 は炭化水素基、又はフッ化炭化水素基を表わす。)
【化10】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
する)。
【0041】このような〔化9〕で示される化合物およ
び〔化10〕で示される化合物を含有する潤滑剤は、い
わゆる厳しい使用条件下においても密着性や潤滑性が好
適に保たれ、かつ長期に亘り潤滑効果が持続するという
特性を有するものである。
【0042】上記〔化9〕に示す末端に水酸基を有する
パーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステ
ル化合物は、例えば末端に水酸基を有するパーフルオロ
ポリエーテルと長鎖カルボン酸クロリドとをトルエン中
で塩基を触媒として反応させることによって得られる。
【0043】ここで、上記末端に水酸基を有するパーフ
ルオロポリエーテルとしては、水酸基を両末端に有する
ものが好ましく、例えば、下記〔化11〕に示すものが
挙げられるが、下記の化合物に限定されるものではな
い。
【0044】
【化11】HO−CH2 CF2 (OC2 4 p (OC
2 q OCF2 CH2 OH (但し、上記〔化11〕中p,qは1以上の整数をそれ
ぞれ表わす。)
【0045】この末端に水酸基を有するパーフルオロポ
リエーテルの分子量は、特に制約されるものではない
が、実用的には600〜5000程度が好ましく、10
00〜4000のものがより好ましい。分子量が大きす
ぎると、末端基の吸着基としての効果が薄れると同時
に、パーフルオロポリエーテル鎖が大きくなる分、既存
の炭化水素系溶媒に溶解しにくくなる。逆に分子量が小
さすぎると、パーフルオロポリエーテル鎖による潤滑効
果が失われてしまう。
【0046】なお、この末端に水酸基を有するパーフル
オロポリエーテルにおいては、パーフルオロポリエーテ
ル鎖が部分水素化されていてもよい。すなわち、パーフ
ルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部(50%以
下)を水素原子で置換してもよい。この場合には、パー
フルオロポリエーテルとして部分水素化したパーフルオ
ロポリエーテルを使用すればよい。
【0047】一方、上記長鎖カルボン酸クロリドとして
は、市販品、あるいは合成品のいずれも使用可能であ
る。このように末端に水酸基を有するパーフルオロポリ
エーテルと長鎖カルボン酸クロリドとを反応させること
により、〔化9〕に示すようなパーフルオロポリエーテ
ルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物が合成される。
【0048】ここで、上記長鎖カルボン酸、すなわち合
成材料の長鎖カルボン酸クロリドのカルボン酸部分は、
カルボキシル基を有する任意の構造であればよく、例え
ば、分岐構造、異性体構造、脂環構造、不飽和結合の有
無によらず、任意に選択することができる。また、この
長鎖カルボン酸は分子量に関しても任意であるが、分子
量が小さくなるに伴って通常の炭化水素系の有機溶媒に
溶解し難くなることから、少なく路もアルキル基の炭素
数が10以上であることが好ましい。
【0049】また、上述したように、本発明の磁気記録
媒体に用いられる潤滑剤には、上記〔化9〕に示すエス
テル化合物と、上記〔化10〕に示す部分フッ化カルボ
ン酸アルキルエステルが含有されている。
【0050】上記〔化10〕に示される部分フッ化カル
ボン酸アルキルエステル中におけるRの炭素数は7〜2
1であるものとする。この炭素数が6以下であると潤滑
剤の効果が充分に得られなくなり、炭素数が21を越え
ると有機溶剤への溶解性が低下してしまうので、炭素数
は7〜21が好適である。また、上記〔化10〕中の
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であれば、そ
れぞれ特に限定されるものではない。
【0051】また、この〔化10〕に示される部分フッ
化カルボン酸アルキルエステルは、部分フッ化カルボン
酸と飽和脂肪族アルコールとをほぼ等モル量で反応させ
ることによって容易に合成することができる。
【0052】上記部分フッ化カルボン酸アルキルエステ
ルの合成の具体的な反応式は、以下に示すものである。
先ず、部分フッ化カルボン酸が次のようにして合成され
る。はじめに不飽和カルボン酸を出発原料として、〔化
12〕、〔化13〕、〔化14〕、および〔化15〕に
示す一連の反応を経ることによって部分フッ化カルボン
酸が合成される。
【0053】詳しくは〔化12〕に示すように、不飽和
カルボン酸がアルコールとエステル化反応して不飽和エ
ステルとなる。その後〔化13〕に示すように、この不
飽和エステルがフッ化炭素のヨウ化物と付加反応してフ
ッ素およびヨウ素が付加される。そして〔化14〕に示
すように還元することによって部分フッ化エステルが生
じる。その後〔化15〕に示すように、この部分フッ化
エステルを加水分解することによって、最終的に部分フ
ッ化カルボン酸が得られる。
【0054】
【化12】
【0055】
【化13】
【0056】
【化14】
【0057】
【化15】
【0058】次に、このようにして得られた部分フッ化
カルボン酸を、下記〔化16〕に示すように、飽和脂肪
族アルコールとほぼ等量反応させることによって、最終
的に、部分フッ化カルボン酸アルキルエステルが得られ
る。
【0059】
【化16】
【0060】なお、ここで重要なのは上記部分フッ化カ
ルボン酸アルキルエステルのアルコール部位のアルキル
鎖が、不飽和結合を含まないアルキル鎖から選定されて
いることである。このような不飽和結合を含まないエス
テルを用いることにより、長期間の保存においても、初
期の潤滑特性を維持することができる。
【0061】さらに、磁気記録媒体10に使用される潤
滑剤においては、上記〔化9〕に示す末端に水酸基を有
するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエ
ステル化合物と、上記〔化10〕に示す部分フッ化カル
ボン酸アルキルエステルとの混合比は、重量比で10:
90〜90:10であることが好適である。この範囲を
越えて混合すると、充分な本発明において目的とする潤
滑効果が得られなくなるためである。
【0062】次に、本出願の第2の発明に係る磁気記録
媒体に適用する潤滑剤について説明する。本出願の第2
の発明に係る磁気記録媒体10においては、最外層とな
る保護層には、下記〔化17〕に示す末端にカルボキシ
ル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコー
ルとのエステル化合物、および下記〔化18〕で示され
る部分フッ化カルボン酸アルキルエステルを含有する潤
滑剤が保持されている。
【化17】R1 −OOC−Rf −CH2 COOR1 (但し、Rfはパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
1 は炭化水素基、またはフッ化炭化水素基を表す。)
【化18】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
する)。
【0063】このような〔化17〕で示される化合物お
よび〔化18〕で示される化合物を含有する潤滑剤は、
いわゆる厳しい使用条件下においても密着性や潤滑性が
好適に保たれ、かつ長期に亘り潤滑効果が持続するとい
う特性を有するものである。
【0064】上記〔化17〕に示す末端にカルボキシル
基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコール
とのエステル化合物は、例えば、末端にカルボキシル基
を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールと
を、無水トルエン中でp−トルエンスルホン酸や濃硫酸
を触媒として反応させることによって得られるものであ
る。
【0065】ここで、上記末端にカルボキシル基を有す
るパーフルオロポリエーテルとしては、カルボキシル基
を両末端に有するものが好ましく、例えば、下記〔化1
9〕に示すものが挙げられるが、下記の化合物に限定さ
れるものではない。
【0066】
【化19】HOOC−CF2 (OC2 4 p (OCF
2 q OCF2 COOH (但し、上記〔化15〕中p,qは1以上の整数をそれ
ぞれ表わす。)
【0067】また、この末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルの分子量は、特に制約される
ものではないが、実用的には600〜5000程度が好
ましい。分子量が大きすぎると、末端基の吸着基として
の効果が薄れると同時に、パーフルオロポリエーテル鎖
が大きくなる分、既存の炭化水素系溶媒に溶解しにくく
なる。逆に分子量が小さすぎると、パーフルオロポリエ
ーテル鎖による潤滑効果が失われる。
【0068】なお、この末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルにおいては、パーフルオロポ
リエーテル鎖が部分水素化されていてもよい。すなわ
ち、パーフルオロポリエーテル鎖のフッ素原子の一部
(50%以下)を水素原子で置換してもよい。この場合
には、パーフルオロポリエーテルとして部分水素化した
パーフルオロポリエーテルを使用すればよい。
【0069】一方、長鎖アルコールとしては、市販品、
あるいは合成品をいずれも使用可能である。このよう
に、末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエ
ーテルと長鎖アルコールとを反応させることによって、
上記〔化17〕に示すような、末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとの
エステル化合物が得られる。
【0070】ここで、上記長鎖アルコールは、分子量に
関しても任意であるが、分子量が小さくなるに伴って通
常の炭化水素系の有機溶媒に溶解し難くなることから、
少なくともアルキル基の炭素数が6以上であることが望
ましい。
【0071】また、上述したように、本出願の第2の発
明に係る磁気記録媒体に適用される潤滑剤には、上記
〔化17〕に示すエステル化合物と、上記〔化18〕に
示す部分フッ化カルボン酸アルキルエステルが含有され
ている。
【0072】上記〔化18〕に示される部分フッ化カル
ボン酸アルキルエステル中におけるRの炭素数は7〜2
1であるものとする。この炭素数が6以下であると潤滑
剤の効果が充分に得られなくなり、炭素数が21を越え
ると有機溶剤への溶解性が低下してしまうので、炭素数
は7〜21が好適である。また、上記〔化18〕中の
m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であれば、そ
れぞれ特に限定されるものではない。
【0073】また、この〔化18〕に示される部分フッ
化カルボン酸アルキルエステルは、部分フッ化カルボン
酸と飽和脂肪族アルコールとをほぼ等モル量で反応させ
ることによって容易に合成することができ、具体的に
は、上記〔化10〕に示した部分フッ化カルボン酸アル
キルエステルを合成する反応式である〔化12〕〜〔化
15〕の一連の反応を経ることにより部分フッ化カルボ
ン酸が合成され、次に、〔化16〕に示すように飽和脂
肪族アルコールとほぼ等モル量反応させることによっ
て、最終的に部分フッ化カルボン酸アルキルエステルが
得られる。
【0074】なお、この場合においても、上記部分フッ
化カルボン酸アルキルエステルのアルコール部位のアル
キル鎖が、不飽和結合を含まないアルキル基から選定さ
れることが重要である。このような不飽和結合を含まな
いエステルを用いることにより、長期間の保存において
も、初期の潤滑特性を維持することができる。
【0075】さらに、本出願の第2の発明に係る磁気記
録媒体10に使用される潤滑剤においては、上記〔化1
7〕に示す末端にカルボキシル基を有するパーフルオロ
ポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化合物と、
上記〔化18〕に示す部分フッ化カルボン酸アルキルエ
ステルとの混合比は、重量比で10:90〜90:10
であることが好適である。この範囲を越えて混合する
と、充分な本発明において目的とする潤滑効果が得られ
なくなるためである。
【0076】また、本出願の第1の発明および第2の発
明に係る磁気記録媒体10において、潤滑剤を最外層に
保持させる方法としては、磁性層2の表面や保護層3の
表面に潤滑剤をトップコートする方法が挙げられる。
【0077】ここで、潤滑剤の塗布量は、0.05〔m
g/m2 〕〜100〔mg/m2 〕であることが好まし
く、より好ましくは、0.1〔mg/m2 〕〜50〔m
g/m2 〕であるものとする。潤滑剤の塗布量が少なす
ぎると、摩擦係数の低下、耐磨耗性、耐久性の向上の効
果が得られず、塗布量が多すぎると、摺動部材と磁性層
2との間で、ハリツキ現象が起こり、走行性が悪化す
る。
【0078】以上のように、本発明の磁気記録媒体10
は、密着性や潤滑性の点で非常に優れた特性の潤滑剤を
組み合わせて適用しているので、良好な走行性および耐
久性を確実に得ることができる。
【0079】また、磁気記録媒体10においては、最外
層として、カーボンよりなる保護層3が形成されている
とともに、その表面がプラズマ処理されているので、用
いられる潤滑剤と、保護層3との密着性が向上し、更に
良好な耐久性を実現することができる。
【0080】また、本発明の磁気記録媒体10は、磁性
層2を強磁性金属薄膜としているので、高密度記録、長
時間記録にも充分対応可能である。
【0081】なお、本発明の磁気記録媒体10において
は、必要に応じて防錆剤を併用してもよい。防錆剤とし
ては、通常磁気記録媒体の防錆剤として使用されるもの
であればいずれも使用可能であり、例えばフェノール
類、ナフトール類、キノン類、窒素原子を含む複素環化
合物、酸素原子を含む複素環化合物、硫黄原子を含む複
素環化合物等が挙げられる。
【0082】また、磁気記録媒体10においては、非磁
性支持体1上の磁性層2形成面側とは反対側の主面に、
いわゆるバックコート層4が形成されていてもよく、こ
のバックコート層4は、粉末成分と結合剤樹脂とを有機
溶媒に混合分散させたバックコート用塗料を、非磁性支
持体1上に塗布することにより形成される。
【0083】ここで、バックコート層4用塗料に使用さ
れる結合剤樹脂としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、
塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸エ
ステル−アクリロニトリル共重合体、熱可塑性ポリウレ
タンエラストマー、塩化ビニリデン−アクリロニトリル
共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポ
リアミド樹脂、ポリビニルブチラール、セルロース誘導
体、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹
脂、ポリウレタン硬化型樹脂、メラミン樹脂、アルキッ
ド樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−ポリアミド樹脂、
ニトロセルロース−メラミン樹脂、高分子量ポリエステ
ル樹脂とイソシアネートプレポリマーの混合物、メタク
リル酸塩共重合体とジイソシアネートプレポリマーの混
合物、ポリエスエルポリオールとポリイソシアネートと
の混合物、尿素ホルムアルデヒド樹脂、低分子量グリコ
ール/高分子量ジオール/トリフェニルメタントリイソ
シアネートとの混合物、ポリアミン樹脂およびこれらの
混合物等が挙げられる。あるいは粉末成分の分散性の改
善を図るために、親水性極性基を有する結合剤樹脂を使
用してもよい。
【0084】バックコート層4の粉末成分としては、導
電性を付与するためのカーボン系微粉末や表面粗度のコ
ントロールおよび耐久性向上のために添加される無機顔
料が挙げられる。上記カーボン系微粉末としては、例え
ばファーネスカーボン、チャネルカーボン、アセチレン
カーボン、サーマルカーボン、ランプカーボン等が例示
され、上記無機顔料としては、α−FeOOH,α−F
2 3 ,Cr2 3 ,TiO2,ZnO,SiO,S
iO2 ,SiO2 ・2H2 O,Al2 3 ,CaC
3 ,MgCO3 ,Sb2 3 等が挙げられる。
【0085】さらに、上記バックコート層4用の塗料に
用いる有機溶剤としては、例えばアセトン、メチルエチ
ルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン
等のケトン系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチ
ル、乳酸エチル、酢酸グリコールモノエチルエーテル等
のエステル系溶剤、グリコールジメチルエーテル、グリ
コールモノエチルエーテル、ジオキサン等のグリコール
エーテル系溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳
香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭
化水素系溶剤、メチレンクロライド、エチレンクロライ
ド、四塩化炭素、クロロホルム、エチレンクロロヒドリ
ン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素系溶剤、汎用
の溶剤をもちいることができる。
【0086】さらに、バックコート層4には潤滑剤を併
用してもよい。この場合バックコート層4中に潤滑剤を
内添させる方法、あるいは、バックコート層4上に潤滑
剤を被着させる方法がある。いずれにしても潤滑剤とし
ては、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド、金属石
鹸、脂肪族アルコール等、シリコーン系潤滑剤等、従来
周知の潤滑剤を使用することができる。
【0087】上述したような本発明に係る磁気記録媒体
10は、以下のようにして作製することができる。先
ず、非磁性支持体1上に、例えば真空蒸着法により磁性
層2となる強磁性金属薄膜を形成する。その後、磁性層
2上に例えばプラズマCVD法により保護層3を形成す
る。さらにこの保護層3の表面に対してプラズマ処理を
行う。そして、この保護層3上に、上述した各潤滑剤を
トップコートして、保護層3に潤滑剤を保持させて、第
1の発明および第2の発明にかかる磁気記録媒体10が
作製される。なお、必要に応じてバックコート層4やそ
の他の機能層を形成してもよい。
【0088】磁気記録媒体10を構成する磁性層2を形
成する装置の一例の真空蒸着装置の概略図を図2に示
す。この真空蒸着装置30は、いわゆる斜方蒸着用とし
て構成され、内部が1×10-3〔Pa〕程度の真空にさ
れた真空室11内に、例えば−20℃程度に冷却され、
図2中矢印A方向に回転する冷却キャン12と、これと
対向するように強磁性金属薄膜形成用の蒸着源13が配
置されてなる構成を有する。
【0089】また、この真空蒸着装置30においては、
真空室11内に、供給ロール14と巻き取りロール15
とが配設されており、非磁性支持体1は、供給ロール1
4から図2中矢印B方向に繰り出され、冷却キャン12
の周面に沿って走行した後、巻き取りロール15に巻き
取られる。
【0090】なお、供給ロール14と冷却キャン12と
の間、および冷却キャン12と巻き取りロール15との
間には、それぞれガイドロール17、18が配置され、
供給ロール14から冷却キャン12、および冷却キャン
12から巻き取りロール15に従って走行する非磁性支
持体1に所定のテンションをかけ、非磁性支持体1が円
滑に走行するようになされている。
【0091】蒸着源13は、ルツボ等の容器にCo等の
強磁性金属材料が収容されたものであり、この真空蒸着
装置においては、この蒸着源13の強磁性金属材料を加
熱し、蒸発させるための電子ビーム発生源19も配設さ
れている。すなわち、電子ビーム発生源19から電子ビ
ーム20を蒸着源13の強磁性金属材料に加速照射し
て、これを図2中矢印Cで示す方向に蒸発させる。蒸発
した強磁性金属材料は、冷却キャン12の周面に沿って
走行する非磁性支持体1上に被着し、非磁性支持体1上
に強磁性金属薄膜が形成される。
【0092】なお、この真空蒸着装置30においては、
蒸着源13と冷却キャン12との間に防着板21を設
け、この防着板21にシャッター22を位置調節可能に
設け、非磁性支持体1に対して所定の角度で入射する蒸
着粒子のみを通過させる。こうして斜め蒸着法によって
強磁性金属薄膜が形成されるようになされている。
【0093】さらに、このような強磁性金属薄膜の蒸着
に際し、図示しないが酸素ガス導入口を介して非磁性支
持体1の表面近傍に酸素ガスを供給し、これによって強
磁性金属薄膜の磁気特性、耐久性、および耐候性の向上
が図られるようにすることが望ましい。また、蒸着源1
3を加熱するまえには、上述のような電子ビームによる
加熱手段の他、例えば抵抗加熱手段、高周波加熱手段、
レーザ加熱手段等の公知の手段を使用できる。
【0094】ここでは、斜め蒸着法によりCoからなる
強磁性金属薄膜を形成する例について説明したが、強磁
性金属薄膜を形成する方法としては、この方法の他、垂
直蒸着法やスパッタリング法等従来公知の薄膜形成法が
適用可能であり、また、この強磁性金属薄膜の材料とし
ては、Coの他にNi,Fe等やこれらの合金が適用可
能である。また、このときの強磁性金属薄膜の厚さは、
0.01〜1〔μm〕程度が好適である。
【0095】次に、本発明の磁気記録媒体10を構成す
る保護層3の形成方法について説明する。保護層3は、
例えばCVD法によって形成することができる。CVD
法によって保護層3を形成する場合には、先ず真空容器
中に炭化水素ガス、あるいは炭化水素と不活性ガスとの
混合ガスを導入し、10〜100〔Pa〕程度の圧力に
保持した状態で、真空容器内に放電させて、炭化水素ガ
スのプラズマを発生させ、強磁性金属薄膜上に保護層3
を形成する。放電方式としては、外部電極方式、内部電
極方式のいずれでもよく、放電周波数については、実験
的に決めることができる。また強磁性金属薄膜が形成さ
れた非磁性支持体1側に配された電極に0〜−3〔k
V〕の電圧を印加することにより保護層3の硬度の増
大、および密着性の向上を図ることができる。
【0096】保護層3の材料となる炭化水素としては、
例えばメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、
ヘキサン、ヘプタン、オクタン、エチレン、アセチレ
ン、プロペン、ブテン、ペンテン、ベンゼン等を用いる
ことができる。この保護層3は、スペーシングロスを少
なく、かつ強磁性金属薄膜の磨耗防止の効果が得られる
よう、膜厚は3〔nm〕〜15〔nm〕程度、特に5
〔nm〕〜10〔nm〕程度とすることが好ましい。
【0097】ここでは、CVD法により保護層を形成す
る例について説明したが、保護層3を形成する方法とし
ては、この方法の他に、マグネトロンスパッタ法、イオ
ンビームスパッタ法、イオンビームプレーティング法等
従来公知の薄膜形成方法を用いることができる。
【0098】この保護層3の表面に対して、不活性ガス
のプラズマ雰囲気下にさらすことによりプラズマ処理を
施す。保護層3の表面に対してプラズマ処理を施すこと
により、保護層3と保護層3上に塗布する潤滑剤との間
の密着性を向上させることができる。
【0099】保護層3の表面をプラズマ処理するには、
例えば、保護層3が形成された磁気記録媒体を真空室中
に入れ、所定の真空度になるまでロータリーポンプ等で
排気する。その後に不活性ガスを磁気記録媒体の表面上
に均一に供給し、上記真空室の真空度を150〔Pa〕
程度の圧力にしてから、数十ワットの電力を印加して1
3.56〔MHz〕の高周波を加えることでプラズマを
発生させる。そして、この不活性ガスのプラズマ雰囲気
下に保護層3をさらすことにより、保護層3の表面に対
してプラズマ処理が施される。
【0100】ここで、このプラズマ処理の際には、金属
薄膜型磁気記録媒体の劣化をできるだけ小さく抑えるこ
とが重要である。この点から、プラズマ発生にはNe,
Ar,Kr等の不活性ガスを用いるが、磁気記録媒体の
劣化に伴う反応を起こしにくい窒素ガス等も使用するこ
とができる。
【0101】このプラズマ処理時の不活性ガスのガス圧
は、1〔Pa〕〜3000〔Pa〕が好ましく、さらに
好ましくは10〔Pa〕〜300〔Pa〕である。ま
た、このときのガスの流量は前記のガス圧に到達するよ
うな流量であれば問題なく、その値は使用する装置によ
って異なるが、真空室の容積が20000〔cm3 〕程
度の場合には、50〔cm3 〕/分STP〜100〔c
3 〕/分STP程度が好適である。プラズマ発生源と
しては、高周波放電、マイクロ放電、直流放電、交流放
電、コロナ放電等、プラズマ発生源として通常用いられ
ているものが適用できる。また、プラズマ処理で印加さ
れる電力は、放電可能領域であればよいが、20ワット
〜150ワットが好ましく、さらに好ましくは50ワッ
ト〜100ワット程度とする。
【0102】その後、保護層3上に上述したような構成
を有する潤滑剤を塗布し、これを保持させることによっ
て、目的とする磁気記録媒体が作製される。
【0103】以上のように、本発明の磁気記録媒体10
は、密着性や潤滑性の点で非常に優れた特性の潤滑剤を
組み合わせて適用しているので、良好な走行性および耐
久性を確実に得ることができ、さらには保護層3の表面
がプラズマ処理されているので、潤滑剤と保護層3との
密着性が向上し、良好な耐久性を実現することができ
る。
【0104】次に、上述した本出願の第1の発明〜第3
の発明に係る磁気記録媒体10について、それぞれ具体
的な〔実施例〕および〔比較例〕を挙げて説明する。
【0105】〔第1の発明に係る実験〕図1に示す構成
の磁気記録媒体10の保護層3に保持させる潤滑剤を作
製する。本例においては、末端に水酸基を有するパーフ
ルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合
物、および部分フッ化カルボン酸アルキルエステルを含
有する潤滑剤を使用する。
【0106】上記〔化9〕に示した末端に水酸基を有す
るパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエス
テル化合物を合成する。原料となる末端に水酸基を有す
るパーフルオロポリエーテルとしては、分子量2000
の下記〔化20〕に示す化合物を適用する。
【化20】HOCH2 CF2 (OC2 4 p (OCF
2 q OCF2 CH2 OH (但しp、qはそれぞれ1以上の整数を表わす。)
【0107】〔化20〕の末端に水酸基を有するパーフ
ルオロポリエーテルとモル比で2倍当量となるトリエチ
ルアミンを有機溶媒中に溶解させ、この溶液中に更にモ
ル比で2倍当量のステアリン酸クロリドを30分かけて
滴下した。滴下終了後1時間攪拌し、続いて30分間加
熱還流を行った。そして、冷却した後、蒸留水、希塩酸
水溶液の順で洗浄し、再度蒸留水により洗浄液が中性に
なるまで洗浄した。続いて、有機溶媒を除去し、得られ
た化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用い
て精製してエステル化合物を得た。このエステル化合物
を〔化合物1〕とする。
【0108】次に、上述した〔化合物1〕と同様にし
て、下記〔表1〕中に示される、末端に水酸基を有する
パーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステ
ル化合物である〔化合物2〕〜〔化合物5〕を合成し
た。尚、〔表1〕中p、q、nは1以上の整数をそれぞ
れ表わす。
【0109】
【表1】
【0110】次に、サンプルの磁気テープを作製する。
非磁性支持体である7.0〔μm〕の厚さのポリエチレ
ンテレフタレートフィルムに、図2に示した真空蒸着装
置を用いて斜方蒸着法によりCoを被着させ、磁性層2
となる強磁性金属薄膜を180〔nm〕の厚さに形成し
た。
【0111】次に、上記磁性層2上に、エチレンとアル
ゴンの混合ガスの高周波プラズマにより、電極と磁気記
録媒体原反自身を対向電極として、原反に−1.5〔k
V〕の直流電圧を印加し、放電を行い、磁性層上に約8
〔nm〕の厚さのカーボン保護層3を形成した。
【0112】次に、上記ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムの、磁性層2が形成された面と反対側の面に、カ
ーボン及びポリウレタン樹脂よりなる膜厚0.5〔μ
m〕のバックコート層4を形成した。
【0113】次に、上記保護層3の表面を、アルゴンガ
ス圧150〔Pa〕、印加電圧が100〔W〕、周波数
が13.56〔MHz〕の条件で発生させた高周波プラ
ズマに10〔秒間〕さらしてプラズマ処理を施した。
【0114】次に上記〔表1〕中に示した〔化合物1〕
〜〔化合物5〕のいずれかと、下記〔表2〕中に示す部
分フッ化カルボン酸アルキルエステルとを、ヘキサン溶
媒に溶解して作製した潤滑剤溶液を、上記カーボン保護
層3上に、塗布量が5〔mg/m2 〕となるように塗布
し、下記〔表2〕に示すように21種類の磁気記録媒体
を作製した。これらを6.35〔mm〕幅に裁断して、
それぞれ〔実施例1〕〜〔実施例8〕、および〔比較例
1〕〜〔比較例13〕となるサンプルの磁気記録媒体を
作製した。
【0115】
【表2】
【0116】なお、〔表2〕に示すように、〔比較例
1〕、〔比較例2〕のサンプルの磁気記録媒体は、潤滑
剤として〔表1〕中の〔化合物1〕、〔化合物3〕を単
独で用いたもの、〔比較例3〕〜〔比較例10〕のサン
プルの磁気記録媒体は、保護層3の表面を高周波プラズ
マ処理を施さなかったもの、〔比較例11〕〜〔比較例
13〕のサンプルの磁気記録媒体は、潤滑剤を構成する
部分フッ化カルボン酸アルキルエステルが不飽和結合を
有するものとした。
【0117】(耐久性及び走行性の評価)上述のように
して作製した〔表2〕の〔実施例1〕〜〔実施例8〕お
よび〔比較例1〕〜〔比較例13〕の、21種類の各サ
ンプルの磁気記録媒体についての特性を評価した。ここ
では、耐久性と走行性を評価することとし、具体的には
摩擦係数、スチル耐久性、およびシャトル耐久性を評価
した。これを評価する際の環境条件としては、本発明者
等が検討した上で、最も厳しいと想定される使用環境を
採用した。
【0118】(1)摩擦係数の測定方法 摩擦係数の測定は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、
湿度80%RHに制御し、この恒温槽中で各サンプルの
磁気記録媒体を100パス走行させて測定した。なお、
摩擦走行100パス目の数値を摩擦係数とした。 (2)スチル耐久性の測定方法 スチル耐久性の評価は、−5℃に制御された恒温槽中で
行うものとし、市販のデジタルビデオカムレコーダー
(ソニー社製、機種名:DVC−VX1000)を用い
て、各サンプルの磁気記録媒体の再生出力が3〔dB〕
落ちるまでの時間を測定した。 (3)シャトル耐久性の測定方法 シャトル耐久性は、恒温槽中の環境条件を温度40℃、
湿度20%RHに制御し、この恒温槽中で市販のデジタ
ルビデオカムレコーダー(ソニー社製、機種名:DVC
−VX1000)を用いて、各サンプルの磁気記録媒体
を100パスシャトル走行させて、100パス走行後に
その再生出力が初期出力から何〔dB〕落ちるかを測定
して評価した。
【0119】なお、これらの評価は、潤滑剤を塗布した
直後と、各サンプルの磁気記録媒体を温度45℃、湿度
80%RHの環境下で30日間保存した後のそれぞれに
おいて行った。上述のようにして作製した潤滑剤を塗布
した直後の初期の摩擦係数、スチル耐久性、シャトル耐
久性の測定結果を下記〔表3〕に示し、温度45℃、湿
度80%RHの環境下で30日間保存した後の摩擦係
数、スチル耐久性、シャトル耐久性の測定結果を下記
〔表4〕に示す。
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】上記〔表3〕および〔表4〕に示すよう
に、カーボン保護層3の表面を不活性ガスのプラズマ雰
囲気下で処理し、さらにカーボン保護層3上に、末端に
水酸基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボ
ン酸とのエステル化合物、および、部分フッ化カルボン
酸アルキルエステルを組み合わせた潤滑剤を塗布した磁
気記録媒体である〔実施例1〕〜〔実施例8〕において
は、いずれも高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々な
使用条件下においても、摩擦係数やスチル耐久性、シャ
トル耐久性、ヘッド磨耗特性の劣化が極めて少なく非常
に良好な結果が得られた。また、長期保存後において
も、摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の劣化が
極めて少なく良好な結果が得られた。
【0123】一方、カーボン保護層3上に、末端に水酸
基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸
とのエステル化合物のみを含有する潤滑剤を用いた〔比
較例1〕および〔比較例2〕では、上記種々の使用条件
下において摩擦係数、スチル耐久性、シャトル耐久性の
劣化が大きかった。
【0124】また、保護層3の表面にプラズマ処理を施
さなかった〔比較例3〕〜〔比較例10〕では、上記種
々の使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性、シャ
トル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得られなかっ
た。
【0125】さらに、上記〔実施例1〕と〔比較例1
1〕〜〔比較例13〕とを比較することにより、不飽和
結合を有さない部分フッ化カルボン酸アルキルエステル
を用いることにより、長期保存後においても初期の磁気
特性を維持できることがわかった。
【0126】上述したように、カーボン保護層3の表面
を不活性ガスのプラズマ雰囲気下で処理し、さらにカー
ボン保護層3上に、末端に水酸基を有するパーフルオロ
ポリエーテルと長鎖カルボン酸との化合物、および部分
フッ化カルボン酸アルキルエステルを組み合わせた潤滑
剤を塗布した場合においては、高温多湿、高温低湿或い
は低温等の様々な使用条件下においても、密着性や潤滑
性が保たれ、かつ長期にわたり潤滑効果が持続するた
め、良好な走行性および耐久性を有する磁気記録媒体が
得られることがわかった。
【0127】〔第2の発明に係る実験〕同様に図1に示
す構成の磁気記録媒体10の保護層3に保持させる潤滑
剤を作製する。本例においては、末端にカルボキシル基
を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールと
のエステル化合物、および部分フッ化カルボン酸アルキ
ルエステルを含有する潤滑剤を使用した場合の効果を測
定する。
【0128】先ず、上記〔化17〕に示した、末端にカ
ルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖
アルコールとのエステル化合物を合成する。原料となる
末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテ
ルとしては、分子量2000の下記〔化21〕に示す化
合物を適用する。
【化21】HOOC−CF2 (OC2 4 p (OCF
2 q OCF2 COOH (但しp,qはそれぞれ1以上の整数を表わす。)
【0129】上記〔化21〕の末端にカルボキシル基を
有するパーフルオロポリエーテルとモル比で2倍当量と
なるステアリルアルコールを無水トルエン中で少量のp
−トルエンスルホン酸と濃硫酸を触媒として加熱還流さ
せた。このとき生成される水分を除去しながら反応を行
った。
【0130】反応後、トルエンを除去した後、得られた
化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーを用いて
精製し、その後溶媒を除去し、エステル化合物を得た。
このようにして得られた末端にカルボキシル基を有する
パーフルオロポリエーテルとステアリルアルコールとの
エステル化合物を〔化合物6〕とする。
【0131】次に、上記〔化合物6〕と同様にして、下
記〔表5〕中に示される、末端にカルボキシル基を有す
るパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエス
テル化合物である〔化合物7〕〜〔化合物10〕を合成
した。尚、〔表5〕中、p,q,nは1以上の整数をそ
れぞれ表わす。
【0132】
【表5】
【0133】次に、サンプルの磁気テープを作製する。
非磁性支持体である7.0〔μm〕の厚さのポリエチレ
ンテレフタレートフィルムに、図2に示した真空蒸着装
置を用いて斜方蒸着法によりCoを被着させ、磁性層2
となる強磁性金属薄膜を180〔nm〕の厚さに形成し
た。
【0134】次に、上記磁性層2上に、エチレンとアル
ゴンの混合ガスの高周波プラズマにより、電極と磁気記
録媒体原反自身を対向電極として、原反に−1.5〔k
V〕の直流電圧を印加し、放電を行い、磁性層上に約8
〔nm〕の厚さのカーボン保護層3を形成した。
【0135】次に、上記ポリエチレンテレフタレートフ
ィルムの、磁性層2が形成された面と反対側の面に、カ
ーボン及びポリウレタン樹脂よりなる膜厚0.5〔μ
m〕のバックコート層4を形成した。
【0136】次に、上記保護層3の表面を、アルゴンガ
ス圧150〔Pa〕、印加電圧が100〔W〕、周波数
が13.56〔MHz〕の条件で発生させた高周波プラ
ズマに10〔秒間〕さらしてプラズマ処理を施した。
【0137】次に、上記〔表5〕中に示した〔化合物
6〕〜〔化合物10〕のいずれかと、下記〔表6〕中に
示される部分フッ化カルボン酸アルキルエステルとを、
ヘキサン溶媒に溶解したものを、上記カーボン保護層3
上に、塗布量が5〔mg/m2〕となるように塗布し、
下記〔表6〕に示すように21種類の磁気記録媒体を作
製した。これらを6.35〔mm〕幅に裁断して、それ
ぞれ〔実施例9〕〜〔実施例16〕、〔比較例14〕〜
〔比較例26〕となるサンプルの磁気記録媒体を作製し
た。
【0138】
【表6】
【0139】なお、〔表6〕に示すように、〔比較例1
4〕、〔比較例15〕のサンプルの磁気記録媒体は、潤
滑剤として〔表5〕中の〔化合物6〕、〔化合物8〕を
それぞれ単独で用いたもの、〔比較例16〕〜〔比較例
23〕のサンプルの磁気記録媒体は、保護層3の表面を
高周波プラズマ処理を施さなかったもの、〔比較例2
4〕〜〔比較例26〕のサンプルの磁気記録媒体は、潤
滑剤を構成する部分フッ化カルボン酸アルキルエステル
が不飽和結合を有するものとした。
【0140】(耐久性及び走行性の評価)上述のように
して作製した〔実施例9〕〜〔実施例16〕および〔比
較例14〕〜〔比較例26〕の、21種類の各サンプル
の磁気記録媒体についての特性を評価した。ここでは、
耐久性と走行性を評価することとし、具体的には摩擦係
数、スチル耐久性、およびシャトル耐久性を評価した。
摩擦係数の測定方法、スチル耐久性の測定方法、シャト
ル耐久性の測定方法については、上述した第1の本発明
に係る磁気記録媒体に対して行った測定方法と同様とし
た。なお、これらの評価は、潤滑剤を塗布した直後と、
各サンプルの磁気記録媒体を温度45℃、湿度80%R
Hの環境下で30日間保存した後のそれぞれにおいて行
った。潤滑剤を塗布した直後の初期の摩擦係数、スチル
耐久性、シャトル耐久性の測定結果を下記〔表7〕に示
し、温度45℃、湿度80%RHの環境下で30日間保
存した後の摩擦係数、スチル耐久性、シャトル耐久性の
測定結果を下記〔表8〕に示す。
【0141】
【表7】
【0142】
【表8】
【0143】上記〔表7〕および〔表8〕に示すよう
に、カーボン保護層3の表面を不活性ガスのプラズマ雰
囲気下で処理し、さらにカーボン保護層3上に、末端に
カルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長
鎖アルコールとのエステル化合物と、部分フッ化カルボ
ン酸アルキルエステルとを組み合わせた潤滑剤を塗布し
た磁気記録媒体である〔実施例9〕〜〔実施例16〕に
おいては、いずれも高温多湿、高温低湿或いは低温等の
様々な使用条件下においても、摩擦係数やスチル耐久
性、シャトル耐久性、ヘッド磨耗特性の劣化が極めて少
なく非常に良好な結果が得られた。また、長期保存後に
おいても、摩擦係数やスチル耐久性、シャトル耐久性の
劣化が極めて少なく良好な結果が得られた。
【0144】一方、カーボン保護層3上に、末端にカル
ボキシル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖ア
ルコールとのエステル化合物のみを含有する潤滑剤を用
いた〔比較例14〕および〔比較例15〕では、上記種
々の使用条件下において摩擦係数、スチル耐久性、シャ
トル耐久性の劣化が大きかった。
【0145】また、カーボン保護層3の表面にプラズマ
処理を施さなかった〔比較例16〕〜〔比較例23〕で
は、上記種々の使用条件下において摩擦係数、スチル耐
久性、シャトル耐久性の劣化が大きく、良好な結果が得
られなかった。
【0146】さらに、上記〔実施例9〕と〔比較例2
4〕〜〔比較例26〕とを比較することにより、不飽和
結合を有さない部分フッ化カルボン酸アルキルエステル
を用いることにより、長期保存後においても初期の磁気
特性を維持できることがわかった。
【0147】上述したように、カーボン保護層3の表面
を不活性ガスのプラズマ雰囲気下で処理し、さらにカー
ボン保護層3上に、末端にカルボキシル基を有するパー
フルオロポリエーテルと長鎖アルコールとのエステル化
合物、および部分フッ化カルボン酸アルキルエステルと
を組み合わせた潤滑剤を塗布した場合においては、高温
多湿、高温低湿或いは低温等の様々な使用条件下におい
ても、密着性や潤滑性が保たれ、かつ長期にわたり潤滑
効果が持続するため、磁気記録媒体の良好な走行性およ
び耐久性が得られることがわかった。
【0148】
【発明の効果】上述したように、本出願に係る第1の発
明によれば、予めカーボン保護層の表面をプラズマ処理
し、この保護層上に、末端に水酸基を有するパーフルオ
ロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエステル化合物お
よび部分フッ化カルボン酸アルキルエステルを組み合わ
せた潤滑剤を保持させたことにより、優れた密着性、潤
滑性を実現でき、長期間にわたって優れた潤滑効果を持
続することができ、高温多湿、高温低湿或いは低温等の
様々な使用条件下においても、摩擦係数やスチル耐久
性、シャトル耐久性、ヘッド磨耗特性の劣化が極めて少
なく非常に良好な特性結果が得られた。
【0149】また、本出願に係る第2の発明によれば、
予め保護層の表面をプラズマ処理し、この保護層上に、
末端にカルボキシル基を有するパーフルオロポリエーテ
ルと長鎖アルコールとのエステル化合物、および部分フ
ッ化カルボン酸アルキルエステルを組み合わせた潤滑剤
を保持させたことにより、優れた密着性、潤滑性を実現
でき、長期間にわたって優れた潤滑効果を持続すること
ができ、高温多湿、高温低湿或いは低温等の様々な使用
条件下においても、摩擦係数やスチル耐久性、シャトル
耐久性、ヘッド磨耗特性の劣化が極めて少なく非常に良
好な特性結果が得られた。
【0150】上記第1の発明および第2の発明のいずれ
においても、潤滑剤に含有される部分フッ化カルボン酸
アルキルエステルを不飽和結合を有さない構成のものに
することによって、長期保存後も初期の特性を維持した
磁気記録媒体が得られた。
【0151】また、本発明の磁気記録媒体においては、
磁性層を強磁性金属薄膜として形成することによって、
高密度記録下が実現でき、長時間記録にも充分対応可能
とすることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気記録媒体の概略断面図を示す。
【図2】磁性層を形成する際に用いる真空蒸着装置の一
例の概略断面図を示す。
【符号の説明】
1 非磁性支持体、2 磁性層、3 カーボン保護層、
4 バックコート層、10 磁気記録媒体、11 真空
槽、12 冷却キャン、13 蒸着源、14供給ロー
ル、15 巻き取りロール、17,18 非磁性支持
体、19 電子ビーム発生源、20 電子ビーム、21
防着板、22 シャッター
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C10N 30:00 C10N 30:00 C Z 30:06 30:06 30:08 30:08 40:18 40:18 (72)発明者 江口 友理 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 (72)発明者 関 和枝 東京都品川区北品川6丁目7番35号 ソニ ー株式会社内 Fターム(参考) 4H104 BD07A CD04A LA03 LA04 LA13 LA20 PA16 5D006 AA01 AA05 BB01 EA03 FA02 FA05

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性支持体上に、磁性層と、該磁性層
    上に保護層を有してなる磁気記録媒体であって、 上記保護層は、表面を不活性ガスのプラズマ雰囲気下で
    処理されてなるものであり、 上記保護層には、下記〔化1〕に示す末端に水酸基を有
    するパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエ
    ステル化合物、 および下記〔化2〕で示される部分フッ化カルボン酸ア
    ルキルエステルを含有する潤滑剤が保持されて成ること
    を特徴とする磁気記録媒体。 【化1】 R1 −COOCH2 −Rf −CH2 OCOR1 (但し、Rf はパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
    1 は炭化水素基、又はフッ化炭化水素基を表わす。) 【化2】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
    m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
    する。)
  2. 【請求項2】 上記〔化1〕に示す末端に水酸基を有す
    るパーフルオロポリエーテルと長鎖カルボン酸とのエス
    テル化合物と、 上記〔化2〕に示す部分フッ化カルボン酸アルキルエス
    テルとの混合比が、重量比で、10:90〜90:10
    であることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒
    体。
  3. 【請求項3】 上記磁性層が、強磁性金属薄膜よりなる
    ことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記保護層が、カーボン膜であることを
    特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 非磁性支持体上に、磁性層と、該磁性層
    上に保護層を有してなる磁気記録媒体であって、 上記保護層は、表面を不活性ガスのプラズマ雰囲気下で
    処理されてなるものであり、 上記保護層には、下記〔化3〕に示す末端にカルボキシ
    ル基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコー
    ルとのエステル化合物および下記〔化4〕で示される部
    分フッ化カルボン酸アルキルエステルを含有する潤滑剤
    が保持されて成ることを特徴とする磁気記録媒体。 【化3】R1 −OOC−Rf −CH2 COOR1 (但し、Rfはパーフルオロポリエーテル鎖を表わし、
    1 は炭化水素基、またはフッ化炭化水素基を表す。) 【化4】Cn 2n+1(CH2 m COOR (但し、上記Rは炭素数7〜21のアルキル基を表し、
    m,nは、m+n≧8を満足する正の整数であるものと
    する。)
  6. 【請求項6】 上記〔化3〕に示す末端にカルボキシル
    基を有するパーフルオロポリエーテルと長鎖アルコール
    とのエステル化合物と、 上記〔化4〕に示すフッ化カルボン酸アルキルエステル
    との混合比が、重量比で、10:90〜90:10であ
    ることを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
  7. 【請求項7】 上記磁性層が、強磁性金属薄膜よりなる
    ことを特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
  8. 【請求項8】 上記保護層が、カーボン膜であることを
    特徴とする請求項5に記載の磁気記録媒体。
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