JP2002332861A - 高炭素化された部材により構成される高温強度を向上させたvgsタイプターボチャージャの排気ガイドアッセンブリ - Google Patents

高炭素化された部材により構成される高温強度を向上させたvgsタイプターボチャージャの排気ガイドアッセンブリ

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐高温摩耗性、耐酸化性、高温強度及び硬度
等を向上させるとともに、生産性や経済性も向上させた
新規なVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッ
センブリを提供する。 【解決手段】 本発明は、可変翼1、タービンフレーム
2、可変機構3等の排気ガイドアッセンブリAの構成部
材を、耐熱金属を主要母材としCを0.15〜0.35
%、Siを1.5%以下、Mnを2%以下、Pを0.4
5%以下、Sを0.03%以下、Niを19〜22%、
Crを24〜26%(各元素とも全て重量%表示)含有
させ、溶解精錬後、高温スラブ加熱と圧延/鍛造後急冷
処理により、クロム炭化物及びセメンタイトを解離・固
溶させ、高炭素化させた耐熱部材で構成したことを特徴
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は自動車用エンジン等
に用いられるターボチャージャに関するものであって、
特にこのものに組み込まれる排気ガイドアッセンブリに
係るものである。
【0002】
【発明の背景】自動車用エンジンの高出力化、高性能化
の一手段として用いられる過給機としてターボチャージ
ャが知られており、このものはエンジンの排気エネルギ
によってタービンを駆動し、このタービンの出力によっ
てコンプレッサを回転させ、エンジンに自然吸気以上の
過給状態をもたらす装置である。ところでこのターボチ
ャージャは、エンジンが低速回転しているときには、排
気流量の低下により排気タービンが効率的に回るまでの
もたつき感と、その後の一挙に吹き上がるまでの所要時
間、いわゆるターボラグ等が生ずることを免れないもの
であった。またもともとエンジン回転が低いディーゼル
エンジンでは、ターボ効果を得にくいという欠点があっ
た。
【0003】このため低速回転域からでも効率的に作動
するVGSタイプのターボチャージャが開発されてきて
いる。このものは少ない排気量を可変翼(羽)で絞り込
み、排気の速度を増し、排気タービンの仕事量を大きく
することで、低速回転時でも高出力を発揮できるように
したものであり、特に近年その排気ガス中のNOx量が
問題とされているディーゼルエンジンにおいては、低速
回転時からエンジンの効率化を図ることのできる有用な
ターボチャージャである。このVGSタイプのターボチ
ャージャにおける排気ガイドアッセンブリは高温・排気
ガス雰囲気下で使用されるものであり、その製造には、
耐熱性を有する素材、例えばJIS規格、SUS、SU
H、SCH、NCF超合金等の耐熱材料が使用されてい
たが、非常に過酷な条件で使用されるものであるため、
その耐久寿命には、一定の限界があり、更なる耐久性の
向上が切望されている。
【0004】
【開発を試みた技術的課題】本発明はこのような背景を
認識してなされたものであって、700℃以上の高温を
伴う熱サイクル、排気ガス雰囲気下で、長時間使用され
る排気ガイドアッセンブリを構成する部材の高温摩耗
性、耐酸化性、高温強度及び硬度等の耐久性のみなら
ず、生産性及び経済性の向上をも試みたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち請求項1記載の
高炭素化された部材により構成される高温強度を向上さ
せたVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッセ
ンブリは、エンジンから排出される排気ガスの流量を適
宜調節して排気タービンを回転させる可変翼と、この可
変翼を排気タービンの外周部において回動自在に支持す
るタービンフレームと、この可変翼を適宜回動させ、排
気ガスの流量を調節する可変機構とを具え、少ない排気
流量を可変翼によって絞り込み、排気の速度を増し、低
速回転時にも高出力を発揮できるようにしたVGSタイ
プのターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリ
において、前記排気ガイドアッセンブリの構成する耐熱
部材が、鉄に対して所定重量%の炭素と、所定重量%の
他の合金元素群と不可避の不純物とを含有させて成る合
金であって、炭素及び他の合金元素群の重量%が、Cが
0.15〜0.35%、Siが1.5%以下、Mnが
2.0%以下Pが0.45%以下、Sが0.03%以
下、Niが19.0〜22.0%、Crが24.0〜2
6.0%となるようにそれぞれ設定し、溶解精錬後、高
温スラブ加熱と圧延/鍛造後急冷処理により、クロム炭
化物及びセメンタイトを解離・固溶させたことを特徴と
して成るものである。この発明によれば、高強度な当該
排気アッセンブリを製造することが可能となる。これは
当該処理により固溶炭素濃度が固溶限界に達し、いわゆ
る侵入型原子の固溶強化作用が最大限に発揮されるため
である。また本発明の合金鋼は、JIS規格SUS31
0Sに炭素を適量付加したものであるため、圧延・鍛造
等の加工が本来可能であるが、この解離固溶処理によっ
てそれが更に容易となり、しかも高温耐久性を付与する
ためのクロム炭化物被膜を行うに際し、SUS310S
では絶対に必要な侵炭処理を回避できるため、経済性に
優れている。
【0006】また請求項2記載の高炭素化された部材に
より構成される高温強度を向上させたVGSタイプター
ボチャージャの排気ガイドアッセンブリは、前記排気ガ
イドアッセンブリを構成する請求項1記載の耐熱部材の
表面を、非鋳造型耐熱鋼では必須の侵炭処理を行うこと
なく、クロム/チタニウム/タングステン等の炭化物で
被膜することを特徴として成るものである。この発明に
よれば、当該耐熱部材の耐高温摩耗性を向上させること
が可能となる。ここで被膜成分のクロム炭化物として
は、Cv23C6、Cr7C3 、Cr3C2 等があり、特に被膜性、高
温摩耗の観点からCr7C3 が好ましい。
【0007】
【発明の実施の形態】以下本発明について具体的に説明
する。説明にあたっては、本発明に係るVGSタイプの
ターボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリにつ
いて説明し、その後、排気ガイドアッセンブリAを構成
する耐熱部材の製造及び当該耐熱部材を使用した当該排
気アッセンブリの製造等について説明する。
【0008】〔1〕排気ガイドアッセンブリ 排気ガイドアッセンブリAは、特にエンジンの低速回転
時において排気ガスGを適宜絞り込んで排気流量を調節
するものであり、一例として図1に示すように、排気タ
ービンTの外周に設けられた実質的に排気流量を設定す
る複数の可変翼1と、可変翼1を回動自在に保持するタ
ービンフレーム2と、排気ガスGの流量を適宜設定すべ
く可変翼1を一定角度回動させる可変機構3とを具えて
成るものである。
【0009】まず可変翼1について説明する。このもの
は一例として図1に示すように排気タービンTの外周に
沿って円弧状に複数(一基の排気ガイドアッセンブリA
に対して概ね10個から15個程度)配設され、そのそ
れぞれが、ほぼ同程度づつ回動して排気流量を適宜調節
するものである。そして各可変翼1は、翼部11と、軸
部12とを具えて成る。翼部11は、主に排気タービン
Tの幅寸法に応じて一定幅を有するように形成されるも
のであり、その幅方向における断面が概ね翼状に形成さ
れ、排気ガスGが効果的に排気タービンTに向かうよう
に構成されている。なおここで翼部11の幅寸法を便宜
上、羽根高さhとする。軸部12は、翼部11と一体で
連続するように形成されるものであり、翼部11を動か
す際の回動軸に相当する部位となる。
【0010】また翼部11と軸部12との接続部位に
は、軸部12から翼部11に向かって窄まるようなテー
パ部13と、軸部12より幾分大径の鍔部14とが連な
るように形成されている。なお鍔部14の底面は、翼部
11の軸部12側の端面と、ほぼ同一平面上に形成さ
れ、この平面によって、可変翼1をタービンフレーム2
に取り付けた状態において円滑な回動状態を確保してい
る。更に軸部12の先端部には、可変翼1の取付状態の
基準となる基準面15が形成される。この基準面15
は、後述する可変機構3に対しカシメ等によって固定さ
れる部位であり、一例として図1に示すように、軸部1
2を対向的に切り欠いた平面が、翼部11に対してほぼ
一定の傾斜状態に形成されて成るものである。
【0011】次に本発明を実質的に適用したタービンフ
レーム2について説明する。このものは、複数の可変翼
1を回動自在に保持するフレーム部材として構成される
ものであって、一例として図1に示すように、フレーム
セグメント21と保持部材22とによって可変翼1を挟
み込むように構成される。そしてフレームセグメント2
1は、可変翼1の軸部12を受け入れるフランジ部23
と、後述する可変機構3を外周に嵌めるボス部24とを
具えて成る。なおこのような構造からフランジ部23に
は、周縁部分に可変翼1と同数の受入孔25が等間隔で
形成されるものであり、本発明では特に、この受入孔2
5を高効率に形成し、また高精度に仕上げるものであ
る。このため本発明の実質的な適用対象物は、フレーム
セグメント21となる。
【0012】また保持部材22は、図1に示すように中
央部分が開口された円板状に形成されている。そしてこ
れらフレームセグメント21と保持部材22とによって
挟み込まれた可変翼1の翼部11を、常に円滑に回動さ
せ得るように、両部材間の寸法は、ほぼ一定(概ね可変
翼1の翼幅寸法程度)に維持されるものであり、一例と
して受入孔25の外周部分に、四カ所設けられたカシメ
ピン26によって両部材間の寸法が維持されている。こ
こで上記カシメピン26を受け入れるためにフレームセ
グメント21及び保持部材22に開口される孔をピン孔
27とする。
【0013】なおこの実施の形態では、フレームセグメ
ント21のフランジ部23は、保持部材22とほぼ同径
のフランジ部23Aと、保持部材22より幾分大きい径
のフランジ部23Bとの二つのフランジ部分から成るも
のであり、これらを同一部材で形成するものであるが、
同一部材での加工が複雑になる場合等にあっては、径の
異なる二つのフランジ部を分割して形成し、後にカシメ
加工やブレージング加工等によって接合することも可能
である。
【0014】次に可変機構3について説明する。このも
のはタービンフレーム2のボス部24の外周側に設けら
れ、排気流量を調節するために可変翼1を回動させるも
のであり、一例として図1に示すように、アッセンブリ
内において実質的に可変翼1の回動を生起する回動部材
31と、この回動を可変翼1に伝える伝達部材32とを
具えて成るものである。回動部材31は、図示するよう
に中央部分が開口された略円板状に形成され、その周縁
部分に可変翼1と同数の伝達部材32を等間隔で設ける
ものである。なおこの伝達部材32は、回動部材31に
回転自在に取り付けられる駆動要素32Aと、可変翼1
の基準面15に固定状態に取り付けられる受動要素32
Bとを具えて成るものであり、これら駆動要素32Aと
受動要素32Bとが接続された状態で、回動が伝達され
る。具体的には四角片状の駆動要素32Aを、回動部材
31に対して回転自在にピン止めするとともに、この駆
動要素32Aを受け入れ得るように略U字状に形成した
受動要素32Bを、可変翼1の先端の基準面15に固定
し、四角片状の駆動要素32AをU字状の受動要素32
Bに嵌め込み、双方を係合させるように、回動部材31
をボス部24に取り付けるものである。
【0015】なお複数の可変翼1を取り付けた初期状態
において、これらを周状に整列させるにあたっては、各
可変翼1と受動要素32Bとが、ほぼ一定の角度で取り
付けられる必要があり、本実施の形態においては、主に
可変翼1の基準面15がこの作用を担っている。また回
動部材31を単にボス部24に嵌め込んだままでは、回
動部材31がタービンフレーム2と僅かに離反した際、
伝達部材32の係合が解除されてしまうことが懸念され
るため、これを防止すべく、タービンフレーム2の対向
側から回動部材31を挟むようにリング33等を設け、
回動部材31のタービンフレーム2側への押圧傾向を賦
与するものである。このような構成によって、エンジン
が低速回転を行った際には、可変機構3の回動部材31
を適宜回動させ、伝達部材32を介して軸部12に伝達
し、図1に示すように可変翼1を回動させ、排気ガスG
を適宜絞り込んで、排気流量を調節するものである。
【0016】〔2〕排気ガイドアッセンブリの製造 (1)耐熱部材(合金)の製造 本発明の合金は、JIS規格SUS310Sに炭素を付
加することにより製造されるものであり、具体的には、
以下の工程で行われる。また具現化された実施の形態
は、後掲の表1に示すとおりである。転炉精錬で組成制
御を行い、炉外精錬にて更に組成の精緻化を図った後、
連続鋳造機でスラブとする。その後1200℃以上均熱
1時間以上のスラブ加熱を行い、初期軽圧下でのシュテ
ッケルミル等の熱間圧延を行い、圧延下限温度を950
℃以上に操作しながら熱延を行い、最後に大量の冷却注
水によって急冷する。こうして得られた熱延コイルを冷
間圧延し、焼鈍(なまし)は、連続設備にて基地鉄の炭
化物生成を回避するため、1100℃程度で行って製品
素材とする。なお炭素含有率を0.15〜0.35%と
するのは、炭素が本発明の処理により固溶し、非侵炭に
てクロム炭化物が被膜され得る範囲に限定したことによ
る。
【0017】(2)排気ガイドアッセンブリ部材の製造 転炉精錬で組成制御を行い、連続鋳造したスラブを12
50℃以上の高温加熱し、その後、圧延/鍛造急冷工程
を経て耐熱部材が製造される。
【0018】(3)高強度化 以下表1に高温硬度のデータを示す
【0019】
【表1】
【0020】〔3〕排気ガイドアッセンブリの被膜 (1)本発明における合金の表面の被膜は、当該耐熱材
料中で大部分解離・固溶している炭素を利用して行うも
のであり、具体的には以下の工程で行われる。この部材
を洗浄後、500℃で予熱し、次いで酸化クロム/チタ
ニウム/タングステン等を含む塩浴中に浸漬し、その後
中和処理を行う。 (2)高摩耗性 上記表1に高温硬度及び高温摩耗性に関するデータを示
す。
【0021】
【発明の効果】本発明によれば、VGSのタイプのター
ボチャージャにおける排気ガイドアッセンブリを構成す
る耐熱部材の経済的量産の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るタービンフレームを組み込んだV
GSタイプのターボチャージャを示す斜視図(a)、並
びに排気ガイドアッセンブリを示す分解斜視図(b)で
ある。
【符号の説明】
1 可変翼 2 タービンフレーム 3 可変機構 11 翼部 12 軸部 13 テーパ部 14 鍔部 15 基準面 21 フレームセグメント 22 保持部材 23 フランジ部 23A フランジ部(小) 23B フランジ部(大) 24 ボス部 25 受入孔 26 カシメピン 27 ピン孔 31 回動部材 32 伝達部材 32A 駆動要素 32B 受動要素 33 リング A 排気ガイドアッセンブリ h 羽根高さ G 排気ガス T 排気タービン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) F01D 25/24 F01D 25/24 M N // C23C 10/24 C23C 10/24 10/26 10/26

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エンジンから排出される排気ガスの流量
    を適宜調節して排気タービンを回転させる可変翼と、 この可変翼を排気タービンの外周部において回動自在に
    支持するタービンフレームと、 この可変翼を適宜回動させ、排気ガスの流量を調節する
    可変機構とを具え、 少ない排気流量を可変翼によって絞り込み、排気の速度
    を増し、低速回転時にも高出力を発揮できるようにした
    VGSタイプのターボチャージャにおける排気ガイドア
    ッセンブリにおいて、 前記排気ガイドアッセンブリの構成する耐熱部材が、鉄
    に対して所定重量%の炭素と、所定重量%の他の合金元
    素群と不可避の不純物とを含有させて成る合金であっ
    て、炭素及び他の合金元素群の重量%が、 Cが0.15〜0.35%、Siが1.5%以下、Mn
    が2.0%以下、Pが0.45%以下、Sが0.03%
    以下、Niが19.0〜22.0%、Crが24.0〜
    26.0%となるようにそれぞれ設定し、溶解精錬後、
    高温スラブ加熱と圧延/鍛造後急冷処理により、クロム
    炭化物及びセメンタイトを解離・固溶させたことを特徴
    とする、 高炭素化された部材により構成される高温強度を向上さ
    せたVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッセ
    ンブリ。
  2. 【請求項2】 前記排気ガイドアッセンブリを構成する
    請求項1記載の耐熱部材の表面を、非鋳造型耐熱鋼では
    必須の侵炭処理を行うことなく、クロム/チタニウム/
    タングステン等の炭化物で被膜することを特徴とする、 高炭素化された部材により構成される高温強度を向上さ
    せたVGSタイプターボチャージャの排気ガイドアッセ
    ンブリ。
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