JP2002320428A - 核移植卵の作製方法、該方法により得られる核移植卵、該核移植卵を発生させて得られるクローン個体、及び該クローン個体の作製方法 - Google Patents

核移植卵の作製方法、該方法により得られる核移植卵、該核移植卵を発生させて得られるクローン個体、及び該クローン個体の作製方法

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JP2002320428A JP2001203442A JP2001203442A JP2002320428A JP 2002320428 A JP2002320428 A JP 2002320428A JP 2001203442 A JP2001203442 A JP 2001203442A JP 2001203442 A JP2001203442 A JP 2001203442A JP 2002320428 A JP2002320428 A JP 2002320428A
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nuclear transfer
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cells
nucleus
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JP2001203442A
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Sadahiro Azuma
貞宏 東
Minesuke Yokoyama
峯介 横山
Masayuki Anzai
政幸 安齋
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Mitsubishi Chemical Life Science Institute Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 比較的高い成功率で再現性高く体細胞核を除
核未受精卵に導入する方法を提供すること。 【解決手段】 齧歯類由来の体細胞を電気融合により除
核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作
製方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、齧歯類由来の体細
胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴
とする核移植卵の作製方法、該作製方法を用いて作製さ
れる核移植卵、該核移植卵を発生させて得られる胎仔、
該核移植卵を発生させて得られるクローン個体及びその
子孫、並びに、クローン個体の作製方法に関するもので
ある。本発明の方法は核移植卵による組織または臓器の
作製と移植、クローン個体の作製及び核移植クローン技
術を用いた遺伝子操作個体の作製に使用することができ
る。
【0002】
【従来の技術】クローン動物はイギリスのGurdonが1975
年にカエルで成功して以来多くの哺乳類でも試みられて
きた。しかし、成功したものはなくクローン動物が作製
できるのは、両生類までで、哺乳類についてはクローン
動物は実現できないものと考えられていた。1997年、そ
の考えを覆す出来事が、同じイギリスのwilmutのグルー
プによりNature誌上に発表された(Nature, 385, 810-8
13, 1997)。彼らはヒツジの乳腺細胞を培養し、核移植
前に血清濃度を0.5%と低下させることにより、飢餓培
養を行った乳腺細胞を第2成熟分裂中期の染色体を除去
した未受精卵の細胞質内に電気融合法で導入した。その
後ヒツジの卵管内で発生させ、次に借腹動物に移植する
ことにより、クローンヒツジ “ドリー"を誕生させ
た。続いて1998年にハワイ大学の若山らにより、成熟雌
個体から採取した卵丘細胞の核を用いたクローンマウス
誕生の報告がなされ、さらに彼らは成熟雄マウスの尾か
らの培養細胞からもクローン個体の作製が可能であるこ
とを報告している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】その若山らのクローン
マウス作製にはピエゾ素子を用いたマニピュレーターが
不可欠であり、また、除核未受精卵に大きなガラス針を
挿入して体細胞の核を導入することから核移植の成功率
が低く、また大きな細胞質を持つ細胞核を導入すること
は困難である。さらに彼らは体細胞の核を移植するにあ
たり体細胞の細胞質を除くことが、クローン個体誕生の
必須の条件としている。現在、世界中の研究室で再現実
験が行われているが、ハワイ大学が関わった研究以外
は、未だ成功の報告は得られておらず、またこの方法は
煩雑な操作で除核の際に受精卵に大きな障害をもたらす
方法であり、再現性の低い方法と言わざるをえない。さ
らに現在のゲノムプロジェクトによる遺伝子の解読が最
終局面にさしかかり、次に遺伝子機能の検索が大きな問
題となりつつある今、遺伝子の機能解析のためにも遺伝
子を導入し易くさらに採取が容易でしかも培養が簡便な
体細胞を用いた核移植技術が期待されている。即ち、本
発明が解決しようとする課題は、核移植を用いたクロー
ン個体の新規な作製方法を提供することである。より具
体的には、本発明が解決しようとする第1の課題は、比
較的高い成功率で再現性高く体細胞を除核未受精卵に導
入する方法を提供することである。さらに、本発明が解
決しようとする第2の課題は、比較的簡単な操作でクロ
ーンマウスを作製する方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、このよう
な再現性の低いマウス体細胞クローン個体の作製方法を
鋭意検討した結果、体細胞の細胞質を除かず、さらに卵
子に大きな障害を与えない電気により体細胞と除核未受
精卵を融合することにより、90%以上の成功率で再現
性高く体細胞核を導入する方法を開発することに成功し
た。またこの方法では、再現性が高いだけではなく、除
核未受精卵への体細胞の導入を短時間で数多く行うこと
が可能であった。さらに採取が容易でしかも培養が簡便
な胎仔由来の体細胞を用いて除核未受精卵と融合するこ
とができるので、ドナー細胞の入手を簡便に行うことが
できる。本発明はこれらの知見に基づいて完成したもの
である。
【0005】即ち、本発明によれば、以下の発明が提供
される。 (1) 齧歯類由来の体細胞を電気融合により除核未受
精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作製方
法。 (2) 齧歯類がマウスである、(1)に記載の核移植
卵の作製方法。 (3) 体細胞が胎仔細胞である、(1)又は(2)に
記載の核移植卵の作製方法。 (4) 齧歯類由来の体細胞を除核未受精卵の細胞膜に
隣接させ、電気融合用溶液を含むチャンバーの電極針の
間に置き、電気を印加することにより導入することを特
徴とする、(1)から(3)の何れかに記載の核移植卵
の作製方法。 (5) 電気融合用溶液中の陽イオンの合計濃度が1.
1〜10mM当量の範囲内であることを特徴とする、
(4)に記載の核移植卵の作製方法。
【0006】(6) 陽イオンがCaイオン及び/又は
Mgイオンである、(5)に記載の核移植卵の作製方
法。 (7) チャンバーの電極針のギャップが2mm以下で
あることを特徴とする、(4)から(6)の何れかに記
載の核移植卵の作製方法。 (8) 導入のための電気の印加を直流で行い、当該直
流の印加の前後に交流の電気を印加することを特徴とす
る、(4)から(7)の何れかに記載の核移植卵の作製
方法。 (9) 導入のための電気の印加を300V/cm以下
の直流で行うことを特徴とする、(4)から(8)の何
れかに記載の核移植卵の作製方法。 (10) 電気融合用溶液中のCaイオン及び/又はM
gイオンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内で、チ
ャンバーの電極針のギャップが2mm以下であり、かつ
導入のための電気の印加を300V/cm以下の直流で
行うことを特徴とする、(4)に記載の核移植卵の作製
方法。
【0007】(11) (1)から(10)の何れかに
記載の作製方法により作製される核移植卵。 (12) (11)に記載の核移植卵を発生させて得ら
れる胎仔。 (13) (11)に記載の核移植卵または(12)に
記載の胎仔を発生させて得られるクローン個体及びその
子孫。 (14) (a)(1)から(10)の何れかに記載の
方法により核移植卵を作製する工程; (b)上記工程(a)で得た核移植卵を活性化させ、胚
へ発生させる工程; (c)上記工程(b)で得た胚を仮親に移植する工程;
並びに(d)上記工程(c)で移植した胚を個体に発生
させる工程を含む、クローン個体の作製方法。 (15) 齧歯類由来の胎仔細胞を除核未受精卵に導入
して得られる核移植卵。 (16) 齧歯類がマウスである、(15)に記載の核
移植卵。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施方法及び実施
態様について詳細に説明する。本発明のクローン個体の
作製方法は、体細胞を体外の培養系に移し、人為的制御
下である体外で増殖、あるいは凍結保存した細胞を電気
融合法を用いて除核未受精卵に導入し核移植卵、胎仔、
またはクローン個体を作製する方法に関する。
【0009】成獣の体細胞からクローン個体を作製した
最初の報告は、ヒツジを使ったCampbell(Nature, 199
6)らであり、彼らは乳腺細胞を血清飢餓状態で培養し
て、細胞周期をG0/G1に調整した細胞をドナー核として
用いたことが成功の要因であると結論づけている。ま
た、その他の動物においては加藤(Science, 1998)ら
がウシで卵丘細胞と卵管上皮細胞をドナー細胞としてク
ローンウシの作製に成功している。彼らもまた血清の濃
度を低下させることにより、血清飢餓状態を作り細胞周
期をG0/G1に調整したドナー細胞を用いて成功してい
る。一方マウスにおいては若山(Nature, 1998)らがク
ローン個体の作製に成功している。彼らは、ピエゾ素子
を使ったマイクロマニピュレーターを用いることでクロ
ーンマウスの作製に成功した。具体的には、雌マウスか
ら採取した卵丘細胞をピィペッテングにより細胞質を除
いた核のみを除核未受精卵にピエゾマニピュレーターを
用いて導入することにより個体を得ることに成功してい
る。彼らの成功は先ずピエゾマニピュレーターを使うこ
とが成功の第一条件であり、また、ドナー細胞の細胞質
を除くことにより未受精卵の中に含まれるであろう初期
化因子を薄めることなくドナー核に作用させるために重
要であるとしていた。しかし家畜で用いられている方法
はマウスに用いると核移植を行った除核未受精卵が全て
死滅するかあるいは発生停止を起こしてしまい、若山ら
がマウスで行っている方法では、ピエゾマニピュレータ
ーの操作に並外れた習熟度が要求される。そこで本発明
者らは、より簡便に実施できるクローンマウスの作製方
法を開発した。
【0010】なお、核移植の方法、クローン個体の作製
などの一般的技術については、国際公開WO99/37
143号公報、WO98/30683号公報、WO99
/01163号公報に記載されており、これらの公報に
記載の内容は全て引用により本明細書に取り込むものと
する。本発明でもこれらの公報に記載の技術を利用する
ことができる。
【0011】本発明の第1の側面は、齧歯類由来の体細
胞を電気融合により除核未受精卵に導入することを特徴
とする、核移植卵の作製方法に関する。齧歯類動物の種
類は特に限定されず、例えば、ウサギ、モルモット、マ
ウス、ハムスター、ラットなどが挙げられ、特に好まし
くはマウスである。また、本発明でドナー細胞として使
用する体細胞は成体由来の細胞でも胎仔細胞でもよく、
好ましくは胎仔細胞である。本発明で使用する体細胞は
特に好ましくはマウス由来の胎仔細胞である。
【0012】ここで、胎仔細胞であればいずれの細胞で
も導入に用いることができるが、遺伝子操作等が容易に
行えることから、初代培養が可能な細胞を用いることが
好ましい。細胞周期等にかかわらず通常状態で培養を行
ったものを用いることができるが、中でも線維芽細胞(f
ibroblast)が好ましい。線維芽細胞の場合には、初代培
養によって大量に得ることが容易であるが、出生直前の
胎仔ではすでに皮膚の形成が起こっているために回収率
が低下するので、妊娠12.5〜16.5日(交配確認日を0.5
日とする)の胎仔から取得することが好ましい。また、
かくして得られる胎仔細胞を遺伝子改変操作を行ってか
ら導入に用いることによって、初望の性質を有するクロ
ーン個体を作製することができる。
【0013】本発明では除核未受精卵を使用する。未受
精卵の単離方法及び除核方法は当業者に公知である。例
えば、マウスの場合、成熟雌マウスに妊馬血清生性腺刺
激ホルモン(PMSG)とヒト絨毛性性腺刺激ホルモン
(hCG)とを48時間間隔で投与し、hCG投与後、12
〜16時間に雌マウスを屠殺して卵管膨大部を回収し、
予めミネラルオイルで覆ったヒアルロニダーゼを含む卵
子培養用培地(Whitten, modife Whitten, k-som, mk-s
om等)に卵丘に包まれた未受精卵を回収し、1〜5分後卵
丘細胞がヒアルロニダーゼの作用により除去された卵子
を卵子用培地で2〜5回洗浄することにより、未受精卵を
回収する方法等があげられる。
【0014】洗浄された未受精卵を次いで、cytochalas
in Bを添加したHepesでpHを安定させた卵子培養培地で5
〜20分処理し、マニピュレターに取り付けた内径5〜8
μmのガラスピペットで第二減数分裂中期の染色体と第
一極体が存在するものは合わせて第一極体も吸引除去し
することにより除核することができる。このようにして
得られる除核未受精卵は培地で数回洗浄してドナー細胞
の導入まで培養することができる。培養は、15〜30
分程度行うことが好ましい。
【0015】次いで、齧歯類由来の体細胞を電気融合に
より除核未受精卵に導入する。電気融合による導入の方
法は、効率のよい導入を行うことができる限り特に限定
されないが、好ましくは、齧歯類由来の体細胞を除核未
受精卵の細胞膜に隣接させ、電気融合用溶液を含むチャ
ンバーの電気針の間に置き、電気を印加することにより
導入する。ここで、体細胞を除核未受精卵の細胞膜に隣
接させる方法としては、体細胞を除核未受精卵の透明帯
と卵子細胞膜の間の囲卵腔にキャピラリー等で注入する
方法、透明帯等を除去して直接接触させる方法などが挙
げられるが、囲卵腔にキャピラリー等で注入する方法が
好ましく用いられる。
【0016】本発明で用いる電気融合用溶液中には、C
aイオン、Mgイオン等の陽イオン、糖、PVA(ポリ
ビニルアルコール)、BSA(ウシ血清アルブミン)、
FCS(ウシ胎仔血清)等を必要に応じて添加すること
ができる。陽イオンとしては、通電可能なイオンであっ
て、低電気伝導性の溶液を調製できるものであればいか
なるものでもよいが、例えば、Ca、Mg、Na、K等
のイオンが挙げられる。これらは合計濃度が1.1〜1
0mM等量で用いることが好ましい。中でも、細胞接着
に関与するイオンであることから、Caイオン及び/ま
たはMgイオンを用いるのが好ましい。これらのイオン
は単独で用いてもよいし、混合して用いることもでき、
Ca/Mgの場合、その合計濃度の下限は通常0.55
mM、好ましくは1mMであり、上限は通常5mM、好
ましくは3.5mMである。Caイオン及び/またはM
gイオンの合計濃度の好ましい範囲は、通常上記下限の
濃度と上限の濃度を組み合わせた濃度範囲が適当である
が、特に1.7mMが好ましい。
【0017】糖としては、電気を通さず等張を維持でき
るものであればいかなるものでもよいが、マンニトー
ル、スクロース、ソルビトール等が用いられ、中でもマ
ンニトールが好ましい。糖の濃度は等張状態に調整でき
る濃度とすればよく、例えば、マンニトールの場合は
0.3Mが好ましい。
【0018】PVA、BSA、FCS等は、チャンバー
内で卵が壁等に非特異的に接着するのを防止する効果を
有するため、添加することが好ましい。中でも、PVA
は、合成高分子物質であるので、BSAやFCSのよう
な生体由来のタンパク質とは異なり塩等のコンタミがほ
とんどなく、イオン濃度に影響しにくいために好ましく
用いられる。例えば、分子量7万〜10万のPVAを用
いた場合には、0〜1mg/ml、好ましくは0〜0.
5mg/ml、特に好ましくは0.1mg/ml添加す
るのが好ましい。PVAの分子量は、例えば、3万〜7
万程度のものを用いても同様の効果を得ることができ
る。
【0019】チャンバーの電極針のギャップは、狭く設
定することで印加する電圧を下げることができ、好まし
くは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。電
極針としては、細いものを用いることにより抵抗値が下
がるために印加する電圧を低くすることができることか
ら、板状のものよりも針状のものを選択することが好ま
しい。
【0020】除核未受精卵への体細胞の導入のための電
気の印加は、300V/cm以下の直流(DC)で行
う。好ましくは、200V/cm以下、より好ましくは
80〜150V/cm、特に好ましくは90〜100V
/cmで行う。印加時間は、細胞の状態によって選択す
ればよいが、例えば、5〜20μ秒、好ましくは10〜
14μ秒で、複数回印加することが好ましい。印加する
回数は1〜3回、好ましくは2回である。また、体細胞
の導入のための電気の印加の前後に、交流(AC)電圧
の印加を行ってもよい。前処理として行う交流電圧の印
加は、例えば、5〜15V/cmで10μ秒の印加を1
〜2回、好ましくは2回行うことができるが、これによ
り溶液中の卵を電極針に対して垂直に整列させ、同時に
1〜5個の卵の電気融合を行う場合でも均等に融合を起
こさせることができる。また、後処理として行う印加
は、融合をさらに安定化させるために行うことができ、
例えば、交流で2V/cm、25秒印加することができ
る。電気融合溶液中の陽イオンの合計濃度、チャンバー
の電極針のギャップ、並びに電圧を上記した範囲に調節
することにより、効率よく核移植を達成することができ
る。これらを組み合わせた好ましい範囲としては、例え
ば、電気融合用溶液中のCaイオン及び/またはMgイ
オンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内で、チャン
バーの電極針のギャップが2mm以下であり、かつ導入
のための電気の印加を300V/cm以下の直流で行う
方法が好ましく用いられる。
【0021】上記のようにして得られた核移植卵の活性
化、核移植卵の借腹マウスへの移植、並びに胎仔または
個体への発生のための方法は、当業者に公知であり、例
えば、国際公開WO99/37143号公報、WO98
/30683号公報、WO99/01163号公報に記
載の方法又はその改良法、あるいは具体的には以下の実
施例に記載の手順で行うことができる。
【0022】例えば、核移植卵の活性化は、電気融合を
行った卵を核膜が消失するまで卵培養用培地で培養して
から、5〜10mMストロンチュームと5μg/mlの
cytochalasinBを含みCa不含の卵培養地
(mk−SOM)で3〜6時間処理して活性化させるこ
とができる。すなわち、ここで、ストロンチュームによ
り卵内においてCa放出が起こって活性化され、cyt
ochalasinBにより、活性化によって導入され
た核が卵外に放出されないよう維持される。次に2〜3
時間5μg/mlのcytochalasinB、Ca
を含む培地(mWM)で培養した後に、cytocha
lasinBを除くために4〜8回培地で洗浄して、活
性化され核が形成されている卵を得ることができる。ま
た、さらに、2細胞期または胚盤胞期まで培養すること
により、胚盤胞から既知の方法により、該体細胞の核を
有するES細胞を作製すること等もできる。また、該胚
を発生させて、個体およびその子孫を得ることもでき
る。
【0023】また、本発明の別の側面は、齧歯類由来の
胎仔細胞を除核未受精卵に導入して得られる核移植卵に
関する。該核移植卵は、上記したように本発明の方法を
用いて作製することができる。マウス由来の胎仔細胞を
ドナー細胞として用いて核移植した例は本発明者が知る
限りこれまでに報告はない。以下の実施例により本発明
を具体的に説明するが、本発明は実施例により限定され
るものではない。
【0024】
【実施例】実施例1:ドナー細胞と除核未受精卵の調製
ドナー細胞は妊娠12.5〜16.5日目(交配確認日を0.5と
して)のマウス胎仔を採取して、内臓を取り除き鋭利な
ハサミで細切し、0.025%〜0.25%トリプシンを含む溶
液で10〜40分処理して細胞を溶出させ、次にウシ胎仔血
清(FCS)を含むDMEMでトリプシンの反応を中和して
遠沈後、細胞を回収して、初代培養を行った。胎仔由来
の細胞は10%FCSを添加したDMEMで培養した。胎仔由
来の細胞が培養皿一杯になった時点で5〜10倍に希釈し
て細胞を播き替えた。続いて5〜10倍に増やした細胞が
培養皿一杯になった場合、10%DMSO、20%FCSを含む
DMEMで-80℃〜196℃で凍結保存した。細胞は使用2〜7日
前に凍結保存してあるものを融解して、直後あるいは1
〜3回継代して核移植のドナー細胞として用いた。また
一部の細胞は核移植前日に血清を全く含まない培地で培
養し、血清飢餓培養の効果を検討することとした。
【0025】核移植を受ける除核未受精卵は、成熟雌マ
ウスに妊馬血清生性腺刺激ホルモン(PMSG)5〜7.5
iuとヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)5〜7.5iuを48
時間間隔で投与し、hCG投与後、12〜16時間に雌マウス
を屠殺して卵管膨大部を回収し、予めミネラルオイルで
覆った150〜300uヒアルロニダーゼを含む卵子培養用培
地(mk-SOM)に卵丘に包まれた未受精卵を回収し、1
〜5分後卵丘細胞がヒアルロニダーゼの作用により、除
去された卵子を卵子用培地で2〜5回洗浄した。
【0026】洗浄された卵子は5μg/mlにcytochalasin
Bを添加したHepesでpHを安定させた卵子培養培地(mk
−SOM)で5〜20分処理後に、マニピュレターに取り
付けた内径5〜8μmのガラスピペットで第二減数分裂
中期の染色体と第一極体が存在するものは合わせて第一
極体も吸引除去しすることにより除核した。除核未受精
卵は培地で数回洗浄してドナー細胞の導入まで15〜3
0分培養した。
【0027】ドナー細胞の準備は、先ず培養している培
地を吸引除去し、0.025〜0.25%トリプシンを含む溶液
で2〜10分処理して細胞を培養皿より剥がし、10%FCSを
含む細胞培養培地でトリプシンを中和してピペッテング
で単一の細胞に分散させ、遠沈して上清を除き細胞を再
び10%FCSを含む細胞培養用培地(DMEM)に再懸濁
して、使用時まで氷中で保存した。
【0028】実施例2:核移植 除核未受精卵の透明帯と卵子細胞膜の間の囲卵腔に胎仔
由来の細胞をマニピュレーターに取り付けたキャピラリ
ーで注入して、電気融合用溶液(0.3Mマンニトール、1.
7mM MgCl2、0.1mg/ml PVA)で1〜2回洗浄して溶液を置
換し、該溶液30〜50mlで満たした融合チャンバー(ベッ
クス社製)の電極針(ギャップ1mm)の間に1〜5個並
べて置いた。装置としては、高電圧パルス式細胞融合装
置LF101(ベックス社製)を用いた。
【0029】電気の印加は交流電圧(AC)が5〜14V/c
m、10μ秒2回、直流(DC)90〜100V/cm、10〜14μ秒2
回印加し、さらに交流電圧(AC)2V/cm、25秒印加す
ることにより、電気融合による導入を行った。ここまで
の実験操作の概要を図1に示す。電気を印加した後、He
pes緩衝培地で数回洗浄し、胎仔由来の細胞と除核未受
精卵の融合を確認するまで1〜2時間37℃で観察した。融
合が確認された核移植卵は卵培養用培地で数回洗浄して
Hepesを除き核膜が消失するまで培養した。
【0030】実施例3:核移植卵の活性化 核膜が消失した核移植卵は10mMストロンチュームと5μg
/ml cytochalasinBを含みCa不含の卵培養培地(mk
−SOM)で3〜6時間処理して活性化を促し、次に2〜3
時間5μg/ml cytochalasinB、Caを含む培地(mW
M)で培養した後に、cytochalasinBを除くために4〜8
回培地で洗浄した後、活性化され核が形成されている卵
を判定し、活性化卵子数とした。その後、2細胞期また
は胚盤胞期まで培養した。
【0031】実施例4:核移植卵の借腹マウスへの移植 借腹に使う雌マウスは精管結紮雄と同居させ交配を確認
した雌マウスを用いた(交配を確認した日をday0.5とす
る)。核移植後培養により2細胞期に発生した卵子はDay
0.5の雌の卵管采から卵管に移植した。
【0032】 実施例5:胎仔または個体への発生借腹雌マウスへ移植
後10日目で開腹して核移植卵の胎仔への発生能力を着床
痕を観察することにより判定した。また、個体への発生
能力の検査は妊娠満了日に帝王切開して生存産仔を確認
することにより行った。実施例2における電気融合によ
る細胞融合以降の実験操作の概要を図2に示す。
【0033】(結果) 1.核移植 血清濃度0%で培養したドナー細胞を用いた核移植で
は、284個の未受精卵を用い256(90.1%)と高い確率で
第二減数分裂中期の染色体を除去することに成功した。
また融合による核移植でも高率に240(84.5%)の核移
植卵が作製でき、またその全てに置いて卵子の活性化に
成功した。2細胞期への発生能では132個(46.5%)の核
移植卵が正常な2細胞期へと発生することが確認され
た。また胚盤胞期への発生率は数%と低率であった。10
%血清で培養された細胞をドナー細胞核とした場合、45
9/496(92.5%)上記同様、高い率で染色体除去に成功
し、融合は430/459(91.0%)と非常に高い成功率であ
りまた、続く活性化412/430(83.1%)、2細胞期への
発生率は264/412(53.2%)であった。このことから、
血清濃度の差は核移植卵の発生にほぼ影響せず、むしろ
血清濃度10%で培養したドナー細胞を用いた場合に、
より高い成功率を示すことが分かった。上記した電気融
合法を用いた核移植成績の結果を以下の表1にまとめ
る。
【0034】
【表1】
【0035】2.生存胎仔への発生 10%血清添加培地で胎仔への発生では、借腹雌マウスに
移植した15個の核移植2細胞期胚のうち13個までもが着
床し、そのうちの1匹が生存胎仔であった。これは、借
腹雌を帝王切開して正常胎仔であることを肉眼的に確認
した。
【0036】3.生存産仔への発生 借腹雌マウス6匹に合計72個の核移植胚を移植し妊娠が
成立した借腹雌マウスは1匹であった。妊娠が成立した
雌マウスを妊娠満了日に帝王切開した結果、1匹の生存
産仔が確認された。この産仔はホスターマザーに保育さ
せた。生後14日には毛色の遺伝子型から核を提供した胎
仔細胞由来のクローンマウスであることが確認できた。
またこのクローンマウスは雄で生後8週令で毛色の遺伝
子型の異なる雌マウスと交配した結果、正常に生殖細胞
を形成していることが確認された。生存胎仔および生存
産仔への発生の結果を以下の表2にまとめる。
【0037】
【表2】
【0038】
【発明の効果】本発明の方法では、比較的高い成功率で
再現性高く体細胞核を除核未受精卵に導入することがで
き、また比較的簡単な操作でクローン個体を作製するこ
とが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、実施例の実験操作の前半部分の概要を
示す図である。
【図2】図2は、実施例の実験操作の後半部分の概要を
示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安齋 政幸 東京都町田市南大谷11号 株式会社三菱化 学生命科学研究所内 Fターム(参考) 4B024 AA10 DA02 GA09 GA11 GA18 HA20 4B065 AA90X AA90Y AB01 AC20 BA03 BB02 CA60

Claims (16)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 齧歯類由来の体細胞を電気融合により除
    核未受精卵に導入することを特徴とする、核移植卵の作
    製方法。
  2. 【請求項2】 齧歯類がマウスである、請求項1に記載
    の核移植卵の作製方法。
  3. 【請求項3】 体細胞が胎仔細胞である、請求項1又は
    2に記載の核移植卵の作製方法。
  4. 【請求項4】 齧歯類由来の体細胞を除核未受精卵の細
    胞膜に隣接させ、電気融合用溶液を含むチャンバーの電
    極針の間に置き、電気を印加することにより導入するこ
    とを特徴とする、請求項1から3の何れか1項に記載の
    核移植卵の作製方法。
  5. 【請求項5】 電気融合用溶液中の陽イオンの合計濃度
    が1.1〜10mM当量の範囲内であることを特徴とす
    る、請求項4に記載の核移植卵の作製方法。
  6. 【請求項6】 陽イオンがCaイオン及び/又はMgイ
    オンである、請求項5に記載の核移植卵の作製方法。
  7. 【請求項7】 チャンバーの電極針のギャップが2mm
    以下であることを特徴とする、請求項4から6の何れか
    1項に記載の核移植卵の作製方法。
  8. 【請求項8】 導入のための電気の印加を直流で行い、
    当該直流の印加の前後に交流の電気を印加することを特
    徴とする、請求項4から7の何れか1項に記載の核移植
    卵の作製方法。
  9. 【請求項9】 導入のための電気の印加を300V/c
    m以下の直流で行うことを特徴とする、請求項4から8
    の何れか1項に記載の核移植卵の作製方法。
  10. 【請求項10】 電気融合用溶液中のCaイオン及び/
    又はMgイオンの合計濃度が0.55〜5mMの範囲内
    で、チャンバーの電極針のギャップが2mm以下であ
    り、かつ導入のための電気の印加を300V/cm以下
    の直流で行うことを特徴とする、請求項4に記載の核移
    植卵の作製方法。
  11. 【請求項11】 請求項1から10の何れか1項に記載
    の作製方法により作製される核移植卵。
  12. 【請求項12】 請求項11に記載の核移植卵を発生さ
    せて得られる胎仔。
  13. 【請求項13】 請求項11に記載の核移植卵または請
    求項12に記載の胎仔を発生させて得られるクローン個
    体及びその子孫。
  14. 【請求項14】 (a)請求項1から10の何れか1項
    に記載の方法により核移植卵を作製する工程; (b)上記工程(a)で得た核移植卵を活性化させ、胚
    へ発生させる工程; (c)上記工程(b)で得た胚を仮親に移植する工程;
    並びに(d)上記工程(c)で移植した胚を個体に発生
    させる工程を含む、クローン個体の作製方法。
  15. 【請求項15】 齧歯類由来の胎仔細胞を除核未受精卵
    に導入して得られる核移植卵。
  16. 【請求項16】 齧歯類がマウスである、請求項15に
    記載の核移植卵。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN110157742A (zh) * 2019-05-28 2019-08-23 南开大学 一种基于微流道的机器人化体细胞核移植操作方法
CN112014183A (zh) * 2020-09-02 2020-12-01 广东中科英海科技有限公司 一种实验动物胎仔骨骼标本的制备装置及标记方法

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