JP2003517317A - 培養細胞からクローン化胚及び成体を作製する方法 - Google Patents

培養細胞からクローン化胚及び成体を作製する方法

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モムバーツ、ピーター
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モムバーツ、ピーター
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Abstract

(57)【要約】 核DNAの全部またはその部分を脱核卵母細胞に注入する核移植法が提供された。この方法は種々のドナー細胞に、望ましくはES細胞に適している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】 (発明の技術分野) インビトロで培養されている細胞から胚及び生きた子をクローン化する方法を
記述している。細胞は樹立細胞系が望ましく、胚性幹(ES)細胞がより望まし
い。また、クローン化胚から得た細胞株も開示されている。この方法が、核ドナ
ー細胞の細胞周期あるいはゲノム対に著しい依存はしないものであることを示す
、本発明の種々な態様を記述している。この方法は、目的突然変異を有するかあ
るいはそれがないクローン化組織及び器官を作製するのに潜在的な有用性を有す
る。先行技術では樹立細胞系の単細胞を出生まで胚の完全成長を維持することが
出来なかったので、その可能性は全く大きなものである。
【0002】 (発明の背景) 哺乳動物は既に脱核卵母細胞と核ドナー細胞を融合することによりクローン化
されている(Willadsen,Nature 320,63[1986])
。この方法は最初にヒツジについて記載され(Willadsen,Natur
e 320,63[1986])ついでヒツジ静止状態体細胞(Campbel
l,et al.,Nature 380,64[1996];Schniek
e et al.,Science 278,2130[1997];Wilm
ut,et al.,Nature 385,810[1997])、及びウシ
増殖体細胞(Cibelli,et al.,Science 280,125
6[1997];Kato,et al.,Science 282,2095
[1998];Renard,et al.,Lancet 353,1489
[1999];Wells,et al.,Biol.Reprod.60,9
96[1999])及びヤギ(Baguisi,et al.,Nature
Biotech.17,456[1999])にさらに応用された。これらの報
告に記載されている核ドナー細胞は動物からか、あるいは短期間初代細胞培養か
ら新たに単離されている。「ドーリー」と名付けられたヒツジは由来不明の哺乳
動物細胞からこの方法を使用してクローン化された(Wilmut,et al
.,Nature 385,810[1997])。
【0003】 最近クローニングの別の方法が発展し、その方法では成体哺乳動物の組織から
得たドナー細胞の核を選別し、それを脱核卵母細胞にマイクロインジェクション
する(Wakayama,et al.,Nature 394,369[19
98])。マイクロインジェクション法は、任意に遺伝子操作した生育できる胚
、生存仔及び健康成獣を作製するのに使用し得る。この核移植法の応用により、
雌にクローン化するために成体由来小丘細胞を(Wakayama,et al
.,Nature 394,369[1998])及び雄をクローン化するため
に尾由来細胞を(Wakayama&Yanagimachi,Nature
Genet.22,127[1999])使用して生産仔のクローニングが可能
になった。これらの動物のクローン起源について表現型及びゲノム分析による評
価が充分に行なわれた(Wakayama,et al.,Nature 39
4,369[1998])。
【0004】 細胞融合法及びマイクロインジェクション法のいずれも、核ドナーとして新た
に分離した細胞あるいは初代、しばしば誤った定義の細胞培養の細胞を使用する
と記載しているような欠点の影響を被っている。これは部分的には培養細胞にお
ける個体新生上の不安定性に基づいている(Dean,et al.,Deve
lopment 125,2273[1998])。このような問題を回避した
クローニング方法であれば、クローニング操作に核ドナーとして使用する前にイ
ンビトロで細胞を操作することが出来るであろう。これは非常に大きな有用性で
ある:例えば、目的とするゲノム上の突然変異を含むクローンを発生させたり、
クローン先駆細胞を長期保存したりすることが出来るであろう。
【0005】 培養胚性幹(ES)細胞(例えば、ES細胞系)は胚盤胞の内部細胞塊(IC
M)から由来し、インビトロにおいて異常な核型及び細胞遺伝学的安定性を示す
(Evans,et al.,Nature 292,154[1981];M
artin,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA
78,7634[1981];Hogan,et al.,Manipulat
ing the mouse embryo.2nd ed.[Cold Spr
ing Harbor Laboratory Press],pp 173−
181[1994])。マウスES細胞は発生多能性を示す:マウス胚に移植さ
れると、明らかに細胞型に限定されないES細胞の寄与が認められるキメラ仔を
発生する(Hogan,et al.,Manipulating the m
ouse embryo.2nd ed.[Cold Spring Harbo
r Laboratory Press],pp 173−181[1994]
;Bradley,et al.,Nature 309,255[1994]
)。しかし、ES細胞が個体の発生に充分に寄与するためには、発生胚とは異な
る系の細胞を伴う必要がある(したがって、胚はキメラである)。異系細胞は二
倍体胚(Bradley,et al.,Nature 309,255[19
84];Hooper,et al.,Nature 326,292[198
7])または四倍体胚(Nagy,et al.,Development 1
10,815[1990];Nagy,et al.,Proc.Natl.A
cad.Sci.USA 90,8424[1993];Zang,et al
.,Mech.Dev.62,137[1997])から由来する。発生胚の異
系細胞によって守られないと、ES細胞に完全な胚発生を完成させることは不可
能である。この完全発育が出来る胚発生を指令出来ないのがES細胞を使用する
ことの大きな障害である;したがってそれから仔を発生させるには予めキメラに
する必要がある。このことがもっぱらES細胞から子孫を得るために長い育種操
作を必要としている。
【0006】 ES細胞は標的ゲノムの改変を動物に導入するために使用することができる。
ES細胞における遺伝子ターゲティングは目的突然変異を有する多種のマウスを
作製するために広く使用されてきた(Capecchi,Science 24
4,1288[1989];Ramirez−Solis,et al.,Me
ts.Enzymol.225,855−878[1993])。目的突然変異
の導入は相同的組換えに利用され、ゲノムの標的部分を導入遺伝子で置換して「
ノックアウト」あるいは「ノックイン」する。変異の表現型上の効果は導入する
遺伝子の選択により調節することができ、この遺伝子は表現型を完全に変えるこ
ともあり潜在的なこともある。ES細胞からのクローニング動物は、遺伝子ター
ゲティング動物の生産を増強するために必要な遺伝子ターゲティングと動物のク
ローニングの利点を併せ持っている。もし、ES細胞系の核−インビトロで長期
に培養されたものであっても−が生存し、生殖能力のあるクローン動物を生産す
るのに使用できるならば、クローニングを介して哺乳動物ゲノムを操作するため
の第一選択となるであろう。しかし、適切な培養方法及びランダムでなく標的を
絞ったDNA変換によりES細胞を選別する効率的選択方法にこれまで困難があ
った。
【0007】 核移植がヒツジ、ウシ及びヤギの生産に使用されたとは言え、培養ES細胞系
あるいはES細胞様細胞系またはその他の樹立細胞系から核移植により直接に完
全発育できるということは、未だ先行技術では示されていない。例えば、Cam
pbell,et al.(Nature 380,64[1996])は、短
時間培養、胚由来上皮細胞から細胞融合法を用いた核移植によりヒツジのクロー
ニングをしたと報告した;しかし、この細胞は分化及び細胞特性に関連したマー
カーを示し、明らかにES細胞ではなかった。
【0008】 Stice,et al.(WO 95/17500)は、同時発生、低継代
ES様細胞との膜融合核移植によりウシ胚を生産したことを報告した。Stic
e,et al.は、これらのあるいはその他のES様細胞から核移植法により
仔(生産あるいは死産)を得ることに成功した例を提供していない、その理由は
妊娠60日以前に全ての妊娠が流産してしまったからである;最も長い妊娠期間
は、ウシの平均妊娠期間280日に対して、55日であった。
【0009】 Tsunoda and Kato(J.Reprod.Fert.98,5
37[1993])は、11−20代を経た系のES細胞核と(センダイウイル
ス及び電気融合により)融合させた脱核マウス卵をインビトロで2細胞、4細胞
、桑実胚及び胚盤胞段階に分化させたと報告した。しかし、得られた胚を代理母
に移植したが生存胎児を得ていない。
【0010】 これと著しく異なって、ここに開示する本発明の方法は一個の培養細胞の核か
ら生存仔を発生させることが出来ることである。
【0011】 (発明の要約) ここに記述した本発明は近い将来これらの問題解決をもたらす。一個の再構成
細胞から分化細胞のクローン増殖(例えば、完全動物の形に)をする方法を提供
する。ドナー核は典型的な方法で脱核宿主細胞、例えば卵母細胞あるいは卵割球
、に挿入されて、再構成細胞を生じる。生成した再構成細胞の発生を開始し、培
養する。したがって、関連する態様において、本発明は、(i)ES細胞の核含
有物を脱核卵母細胞の細胞質に挿入しそして再構成細胞を分化させることによる
ES細胞からの胚のクローン誘導、及び(ii)この方法により生産される培養
細胞あるいは動物を、提供する。
【0012】 一態様において、得られた再構成細胞の分化は1以上の特定された経路に沿っ
て進み、種々の異なる細胞型を生成する。もう一つの態様において、得られた再
構成細胞の分化は、育成しうる生産仔に分化する胚へと進む。ここに使用されて
いるように、用語「核」は核全体またはその一部を含むことを意図しており、そ
の核含有物は少なくとも非ミトコンドリアゲノムを欠いている細胞に発生を指令
することが出来る最低限の物質を含んでいる。得られた組織は、脱核卵母細胞に
注入するための核を提供した細胞(核ドナー)に由来するクローンである;子孫
を得る方法の場合には、仔は核ドナー細胞由来のクローンである。
【0013】 したがって、本発明は、培養ES細胞系から得た細胞の核を脱核卵母細胞に挿
入することによりES細胞系に由来する動物のクローニング法を提供する。核ド
ナーは樹立細胞系由来であるか、新規に誘導した細胞系である。ある動物種、例
えば哺乳動物、では樹立ES細胞系の大部分は雄由来であろう;つまり、XY核
型を有している。これに対して、鳥類では、樹立ES細胞系の大部分は雌由来で
あろう;つまり、XX核型を有している。そのようなXY細胞系由来の動物クロ
ーンはその起源を反映して雄である。したがって、雌由来細胞系からの核ドナー
を使用した態様においては、XX核型の動物クローンが作製され、雌となり、ま
たXY核型のES細胞から誘導された動物は逆になる。
【0014】 他の態様においては、本発明の方法に使用される細胞の由来はマウス以外に下
記群に含まれる動物種、これに限定するものではないが、霊長類、ヒツジ、ウシ
、ブタ、クマ、ネコ、ヤギ、イヌ、ウマ、クジラ及びネズミ及びその他のげっ歯
類を含む。望ましい態様においては、ES細胞はこれら動物種の胚盤胞のICM
から由来する。
【0015】 他の態様において、核ドナー細胞の起源となるES細胞は使用直前に樹立され
る。望ましい態様においては、ES細胞はクローン化細胞、例えばクローン動物
を作製するのに使用する直前に遺伝的な修飾を受ける。
【0016】 ES細胞核移植により再構成された細胞はインビトロで培養されて胚盤胞に発
育するか、発育がインビボ、例えばブタ、で行われる。ある態様において胚盤胞
を適当な代理母に移植して再構成細胞から由来するクローン動物を生産する。
【0017】 他の態様においては、本発明の方法により誘導したクローン化桑実胚あるいは
胚盤胞に、逆にクローン化胚を発生させるための核ドナーを供給するのに最初使
用した培養から由来するES細胞を集合した(注入した)。その結果、部分的に
クローン化胚由来細胞及び部分的に培養ES細胞の注入/集合した細胞に由来す
る胚を生じた。この集合及び注入法は当業者の間では確立されており、標準的な
遺伝子ターゲティングプロトコールにおいてキメラ胚を作製するのに使用される
ものと原理は同一である(Hogan,et al.,Manipulatin
g the mouse embryo,2nd ed.[Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press],pp.189−21
6[1994];Joyner [ed],Gene targeting.[
Oxford University Press],pp.107−146[
1993])。しかし、今公開する本発明の方法により発生する胚は核ゲノムに
関してはキメラではない、なぜなら得られた生産仔は遺伝的に同一のES細胞か
ら由来しているからである。方法のこの態様は、ES細胞からクローン化生産仔
を作製する効率を改善する。
【0018】 他の態様において、本発明の方法によりクローン化した桑実胚または胚盤胞は
胚盤胞の内部細胞塊(ICM)のような幹細胞の原料として利用することが出来
る。このような細胞は当業者に知られている方法にしたがって規定された経路に
沿った分化を生じさせることが出来る。したがって、本発明のこの態様によりい
ずれの核ドナー細胞の培養集団からも所定の型の分化細胞が作製される。この方
法により発生することが出来る細胞型は、制限なく、広い解剖学的部位に存在す
る細胞型、例えば上皮細胞、血液細胞及び繊維芽細胞など、及び著しく解剖学的
制限を示す細胞、例えば心筋細胞、造血細胞、神経細胞、グリア細胞、角化細胞
などを含んでいる。
【0019】 F1及び近交系マウス系統から由来する樹立ES細胞系のES細胞核からクロ
ーン化した生産仔を作製する方法をここに示す。本発明の一態様では、クローン
化生産仔は「2C」であるES細胞核から作製される;すなわち、細胞周期のG
0−またはG1−期にあるプレS期細胞に見られるゲノムDNAの2倍の相補体
を有している。
【0020】 本発明の他の態様では、ドナーES細胞核は‘2−4C’である。分割しつつあ
る細胞寿命のほとんどの間は2n染色体で示される2C DNAを含んでいるが
、細胞周期のS−期に続く期では染色体数は変わらないがDNA含量は1回のD
NA合成の複製により倍になる;したがって、その細胞は2nであるが、終期に
おいて2価染色体の姉妹染色分体が分離するまでは4nではない。本発明の一態
様において4C核を使用することにより生存、クローン化仔を作製した。このこ
とは、いずれの細胞型にも発育を指令する核にとってES細胞が都合よく細胞周
期のG0−あるいはG1−期にある必要はないことを示している。
【0021】 一態様において、ES細胞核ドナーは目的とする変異を宿すために遺伝的に変
換が行なわれた。したがって、遺伝的に変換されたES細胞から本発明の方法に
よりクローン化された動物または細胞種は変異を有しているであろう。ES細胞
の遺伝的変換は非指向性突然変異、変異誘発剤への曝露による変異誘発、または
外来性核酸あるいは核酸誘導体を既知の方法(電気穿孔、レトロウイルス感染な
ど)により細胞に導入することなどにより生じさせることができる。より望まし
くは、核ドナーとして使用されるES細胞は、1以上の特定遺伝子の部分あるい
は全部が正確に調節し得る方法で修飾されている、遺伝子ターゲティングにより
遺伝的変換が行なわれている。
【0022】 このようにして、本発明はクローン化し、遺伝的に変換した生産仔を、核移植
に先立ってインビトロで遺伝的に操作し特性付けすることが出来る細胞系(ES
細胞系を含むが、それに限定しない)から一世代で作製する方法を提供する。本
発明の方法はこのように対応する細胞系から遺伝子ターゲティング動物を作製す
ることによりスピード及び効率を改善する。
【0023】 (発明の詳細な説明) 本発明は、胚性幹(ES)細胞の核成分(染色体を含む)を脱核卵母細胞に挿
入し、生成した再構成細胞の出産までの発育を促進することにより生育し得る生
産仔が得られることを開示する。ES細胞は核移植に使用するまで長期間培養あ
るいは凍結保存することが出来る。マウスES細胞の単離、培養及び操作−相同
的組換えによる遺伝子ターゲティングを含む−は既に記述されている:Hoga
n,et al.,Manipulating the mouse embr
yo.2nd ed.(Cold Spring Harbor Laborat
ory Press),pp.253−290(1994)。樹立ES細胞ある
いはES細胞に似た細胞(ES細胞様細胞)に対する方法は、ウシ(Cibel
li,et al.,Theriogenology 47,241[1997
])、ハムスター(Doetschman,et al.,Dev.Biol.
127,224[1988])、ヒト(Thomson,et al.,Sci
ence 282,1145[1998])及びウサギ(Schoonjans
,et al.,Mol.Reprod Dev.45,439[1996])
について記述されている。
【0024】 本発明によるES細胞核から由来した子孫は、そのいずれの細胞の染色体も起源
の核ドナーES細胞から由来しているゲノムクローンである。
【0025】 望ましくは、ES細胞は、その幹細胞の性質が当業者に知られている標準的胚
盤胞注射法によりキメラ子孫における生殖系列寄与及び伝達を介して明らかにさ
れているES細胞に由来している(Bradley,et al.,Natur
e,309,255[1984];Hogan,et al.,Manipul
ating the mouse embryo.2nd ed.[Cold S
pring Harbor Laboratory Press],pp.19
6−204[1994])。この操作は一般的に受精から生じた胚盤胞の腔にE
S細胞を注射することを含んでいる。この細胞の状況において、ES細胞は発育
に関与し、一部は宿主胚盤胞から由来しそして一部は注射されたES細胞から由
来するキメラ動物を形成する。ES細胞は体組織を生じることが出来るし、また
キメラの生殖系を含めた全ての細胞型になることが出来る。広範囲の細胞型にな
ることが出来るES細胞の能力を「多能性」と称している。生殖系伝達における
ES多能性の発現は、これらの動物種に限定されていると信じる理由は判ってい
ないけれども、マウスとウシに限られている。ES細胞系は哺乳動物の遺伝学、
分化発生生物学及び医学の強力な研究手段を提供すると考えられている。
【0026】 ES細胞は樹立ES細胞系由来でよい。そのようなES細胞系はよく知られて
おり、それに限るものではないが、F1交雑系及び近交系マウス由来のものを含
んでいる。F1交雑系由来のES細胞系の例は、R1(Nagy,al et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90,8424[1
993])(例2参照)がある。近交系由来ES細胞の例は、129/01a−
由来雄系E14(Hooper,M.et al.,Nature 326,2
92[1987])(American Type Culture Coll
ection,Bethesda,MDから入手可能、[ATCC]numbe
r CRL−11632)、D3(ATCC number CRL−1934
)及びAB1及びAB2.2、Lexicon Geneticsから購入可能
、がある。
【0027】 マウスES細胞系に加えて、ES様細胞としては、ウシ(Cibelli,et
al.,Theriogenology 47,241[1997])、ハム
スター(Doetschman,et al.,Dev.Biol.127,2
24[1988])、ヒト(Thomson,et al.,Science
282,1145[1998])及びウサギ(Schoonjans et a
l.,Mol.Reprod.Dev.45,439[1996])がある。技
術的障壁が、まったく多能性であり生殖系を含めたほとんどのあるいは全ての細
胞になり得るこれらの動物から得たES細胞に、マウスと同じ基準を適用するこ
とを阻んでいる。ES細胞としての全ての規定条件を充たす実験的に実証された
ES細胞系がマウス以外の動物種で示されることが期待されている。
【0028】 ES細胞(あるいはICM由来細胞)以外の細胞を、ゲノム操作及び/または
動物クローニング操作における核ドナーとして使用するために、インビトロで培
養することはできる。この細胞型は動物種に限定されることなく、ヒト繊維芽細
胞、ブタ胚性生殖(EG)細胞(REF)、及びマウス胚性腫瘍(EC)細胞な
どで例示される(Stewart,&Mintz,J.Exp.Zool.22
4,465[1982];Hogan,et al.,Manipulatin
g the mouse embryo.2nd ed.[Cold Sprin
g Harbor Laboratory Press],p92[1994]
)。長期間培養及びインビトロ遺伝子操作をしやすい細胞の種類は増加している
ようである;全てこれらの細胞は本発明の方法における潜在的核ドナーである。
【0029】 ES細胞系は明らかにゲノムに関して操作することができる。これを達成する
方法は今では充分に確立しておりまた遺伝的(及びしばしば対応する表現型)特
性を持つ操作ES細胞系に関する文献に多くの報告がある(Mombaerts
,et al.,Proc.Nad.Acad Sci.USA,88,308
4[1991];Mombaerts,et al.,Nature 360,
225[1992];Itohara,et al.,Cell 72,337
[1993])。これは、例えば電気穿孔あるいはリポフェクションにより組換
えDNAを導入することによっても行なえる。変異ES細胞は培養中に自然に生
じることもあり、選択培養液中で濃縮することが出来る。例えば、ヒポキサンチ
ングアニンホスホリボシル転移酵素(HPRT)を欠失した変異ES細胞は、プ
リン同族体6−チオグアニンに対する耐性を利用した培養により選別されること
、及びこの変異ES細胞はHPRT欠失雄仔になる生殖系キメラを作製するのに
使用されることが報告されている(Hooper,et al.,Nature
326,292[1987])。
【0030】 ES細胞技術の重要な特徴はゲノム全体中の標的DNAを変換できることであ
る。これは、DNA配列が細胞内で相補的(マッチングあるいはほぼ同じ)ゲノ
ム配列と並列する、相同的組換えと呼ばれる現象に基づいている。この相補的配
列は相同的配列と呼ばれる。この配列は交換反応(交差)を生じることができ、
その結果として染色体上に存在する配列が侵入したDNAの配列に効率よく置き
換わる。もし、侵入配列が相手ゲノムとほぼ同じであるか、さらに他の無関係な
配列で変化を受けていると、この置換は新しい配列の所定位置導入となる。この
置換は、正常な役割がDNA修復及び維持にあると考えられている細胞酵素を利
用する。現在のところ理由はよく分からないが、ES細胞はその酵素に富んでお
り、またよく解析されている哺乳動物細胞のみが相同的(つまり位置指定)組換
えを行ないやすいことが知られている。遺伝子ターゲティングにより、1以上の
特定位置に正確な指示に従った修飾が行なわれたES細胞が作製される。遺伝子
ターゲティングの例としては、比較的短い(<〜25キロ塩基対[kbp])組
換えDNAセグメントの部分である侵入DNA配列を使用して「ノックアウト」
及び「ノックイン」マウスを作製したものがある。ES細胞様細胞についても、
ES細胞遺伝子ターゲティングに使用したのと同じ技術を使用して遺伝子ターゲ
ティングを行なえることが期待される。
【0031】 遺伝的に変換したマウスを作製するために遺伝子ターゲティングES細胞系を
使用する現在の方法は、操作ES細胞を桑実胚(約8細胞)あるいは胚盤胞(1
6細胞以上)と共に、または、の中に注入あるいは集合することを含んでいる。
移植によりその胚はキメラ親(F0)動物を生じる、この動物と野生型との間に
生れた動物はES細胞由来ゲノムを生存率(しばしば0)で生殖系に伝達する。
遺伝子ターゲティング修飾が伝達された第一世代(F1)の仔は表現型(例えば
、被毛の色)及びゲノムDNAの分析によって同定される(Joyner[ed
],Gene targeting.[Oxford University
Press],pp52−59[1993];Hogan,et al.,Ma
nipulating the mouse embryo.2nd ed.[C
old Spring Harbor Laboratory Press],
pp 291−324[1994])。
【0032】 F1ヘテロ接合体の繁殖は通常必要であり、ある場合には変異によりホモ接合
体の第二世代(F2)動物を発生する。したがって、遺伝子ターゲティング変異
によるホモ接合体動物を作製するには、現行方法では少なくとも3世代の動物が
含まれることになる。マウスでは、所与の変異対立遺伝子がホモ接合である純粋
な繁殖系を確立するには少なくとも6ヶ月が必要である。しかし、より長い妊娠
/成長期間を有する、商業的に価値のある種を含めて、多くの哺乳動物にとって
は、純粋な繁殖系を創り出すのに必要な時間は長すぎるであろう。例えば、ウシ
では、3世代は少なくとも3×280日、すなわち約2.3年を要するであろう
【0033】 ES細胞系はクローン(動物クローニングではなく、細胞クローニングの意味
で)であるので、それを動物クローニングに使用することにより本質的に限りな
い数の同じ動物を比較的早く作製できる。したがって、一種類のES細胞を核ド
ナーとして使用することにより対応する数の、出産まで発育させることが出来る
再構成細胞を発生させて、多数の同じ動物を作製することが出来るであろう。ほ
ぼ同じで、遺伝的に操作された動物は、ヒト及び動物の薬及び育種に対して大き
な利益をもたらすと期待される。例えば、遺伝的に変換された動物(大動物を含
め)は、高価な医薬品をその乳の中にあるいはその他の体液または組織、通常分
泌組織の中に造ることにより、生きた医薬品「工場」として働くことが出来る。
この製造方法はしばしば「pharming」と呼ばれる。
【0034】 マウス、モルモット、ラット及びハムスターのような研究動物を多数同一に生
産することは、医薬品を発見したりスクリーニングするのに使用できるので望ま
しいことである。ほとんど同一のマウスの集団が使用できることは、例えば、発
生分化及びヒトの病気の解析、及び新薬の試験に極めて有益である;個体間の先
天的変動を少なくするので比較試験が行ないやすい。
【0035】 本発明は、核移植によりES細胞のような培養細胞から動物のクローンのよう
な分化細胞集団を発生させる方法を記述している。この方法では、例えば樹立E
S細胞系から得たES細胞の核(あるいはその部分、少なくとも染色体を含む)
を受け入れた脱核卵母細胞からクローン化細胞が発育する。本発明の一態様にお
いて、本発明の方法により脱核卵母細胞のなかにES細胞の核を注入することに
よりクローン化マウスを作製することが出来る。他の態様では、ES細胞核ドナ
ーはES細胞系、E14、に由来する。ES細胞からクローン化された仔動物は
出産数日後に、核ドナーが由来したマウス系統の表現型を反映するその被毛の色
で確認することが出来る。現在使用し得る多くのES細胞系は129マウス系統
、129/Sv、から由来するものであり、これはJackson研究室におい
てDr.Leroy Stevensによって誘導された。
【0036】 本発明は、そのES細胞を単離し、培養によりES細胞系を形成することが可
能あるいはできそうな全ての動物、両生類、魚類、鳥類(例えば、ニワトリ、シ
チメンチョウ、アヒルなど)及び霊長類、ヒツジ、ウシ、ブタ、クマ、ネコ、イ
ヌ、ウマ、ヤギ、ネコなどのような哺乳動物、のクローニングに適用することが
出来る。
【0037】 本発明の方法のある態様は、下記の段階を含んでいる、(i)ES細胞核を卵
母細胞中に挿入した後、発生の活性化をする前に、脱核卵母細胞の細胞質と一定
時間(例えば、約6時間まで)接触させる、そして(ii)発生分化を開始する
ように再構成細胞を活性化する。
【0038】 一態様においては、2Cゲノム相補体を有するドナー核が使用される。核ドナ
ーが2Cである場合には、偽極体に染色体が追い出されるのを抑制するために微
小管及び/またはミクロフィラメント集合の阻害剤の存在下に活性化を行なうこ
とが望ましい。例えば4Cドナー核が使用された場合には、再構成細胞は約6時
間までの間培養した後、微小管/ミクロフィラメント集合の阻害剤を存在させず
に活性化を行なう;その場合には、偽極体が押し出されて再構成細胞の倍数性は
2nに回復する(形式的2n倍数性は原腸形成を超える胚発生分化を指令するに
は欠くことが出来ない)。
【0039】 本発明の望ましい態様では、ES細胞核は脱核卵母細胞の細胞質内にマイクロ
インジェクションにより注入される、そしてより望ましくはピエゾ電気駆動マイ
クロインジェクションによる。ピエゾ電気微細操作装置の使用によりES細胞の
ドナー核の取出し及び注入を一本の針で行なうことができるようになった。さら
に、卵母細胞の脱核及びES細胞核の注入がすばやく、効率よくそして既報の方
法(例えば、融合促進化合物、放電あるいは融合誘発ウイルスなどによるドナー
細胞と卵母細胞の融合)に比較して卵母細胞の外傷を少なくすることが出来る。
【0040】 マイクロインジェクションによる核物質の導入法は細胞融合による核物質の導
入とは、時間的にも、局所解剖学的にも区別される。本発明のマイクロインジェ
クション法では、最初にドナーES細胞の原形質膜に針が刺され、次いで脱核卵
母細胞に針が刺される。したがって、ドナー細胞の核(あるいは少なくとも染色
体を含むその部分)の取出しと、レシピエント細胞への核の供給とは時間的に分
離されている。核成分の単離と供給が空間的にも時間的にも分離されていること
は、両細胞を並置して一段階で融合させる細胞融合にはない特徴がある。
【0041】 さらに、本発明方法における核の取出しと導入の空間的時間的分離は、核に加
えて物質を調節して導入することを可能にする。(細胞質及び核質のような)無
関係の物質を除くことが出来ること、及び追加的物質あるいは試薬を導入できる
ことは、非常に望ましいことであろう。例えば添加物は続く発生分化に好ましい
影響を与えることであろう。そのような試薬としては、抗体、薬理的信号伝達阻
害剤、またはそれらの組み合わせがあり、抗体及び/または阻害剤は細胞分裂や
胚の発生分化に対して陰性調節作用を有するタンパク質あるいはその他の分子の
作用を抑制したり阻害したりする。試薬には、胚の発育の間に発現され発生分化
に潜在的な陽性作用を有するタンパク質をコードする組換えプラスミドあるいは
トランスフォーミングベクター構築のような核酸配列及び/または細胞への試薬
の導入が脱核卵母細胞と核の結合、に先立って、その間にまたはその後に行われ
る核酸配列がある。
【0042】 ES培養細胞から核移植によりクローン化分化細胞集団を得るための本発明方
法の一態様における段階及び中間段階を図1に示す。
【0043】 要約すると、卵母細胞ドナー動物から卵母細胞が取出し(1)、望ましくは中
期I期の卵母細胞、そしてそれぞれの中期II(mII)板(mII染色体を含
む)を取り去り(2)脱核卵母細胞を形成する(母体由来染色体を除去)。レシ
ピエント卵母細胞は既知方法によりインビトロであるいは他の研究者により記述
されているようにインビボで成熟させることができる。本発明の異なる態様に順
応している、小径(典型的には10μm)あるいは大径(典型的には18μm)
の細胞を含むインビトロ培養から健康に見えるES細胞を選択する(3,4)。
1個の核を脱核卵母細胞の細胞質の中に注入する(5)。核は脱核卵母細胞の細
胞質の中に6時間まで留置する(6)。一態様においては、この期間は最低約0
−5分である。望ましい態様において、この期間は1−3時間である。
【0044】 次いで卵母細胞は、部分的に移植時のドナー核の細胞周期段階によって反映さ
れる倍数性または侵入核のゲノム同等性に応じて、微小管及び/またはミクロフ
ィラメント集合の阻害剤の存在下にあるいは非存在下に活性化を行なう(7)。
分裂細胞周期は、DNA複製の複写過程に続いて活発に分裂する細胞は二個の娘
細胞に同等の遺伝物質を分譲する。DNA合成は細胞周期を通して行なわれるの
ではなく、その一部に限られている;合成期、S−期。これに続いてギャップ期
、G2−期、があり、この期間に細胞は中期(M−期)に入る前にさらに分裂の
準備を行なう。したがって、生れたばかりの娘細胞はもう一つのギャップ期、G
1−期、に入れられる。ある分裂しない細胞、例えばインビボで分化し終わった
細胞、は周期のこの段階に止まっている−この期は分裂しつつある細胞のG1−
期に相当し、この期はS−期に進む。この細胞は、しばしば「静止」と称され、
細胞周期から外れてG0−期に入る。細胞周期のG0−あるいはG1−期にある
細胞の核は二倍体であり、2C DNA含有に相当する2n染色体を持っている
;それぞれ形態的に異なる常染色体(非X、非Y)の2コピー、及び動物種によ
って、XX(雌)かあるいはXY対のいずれかを有している。DNA複製を終了
した細胞周期のG2−期にある細胞核はまだ染色体数に関しては2nであるが、
4C DNA含有となっている。S−期の間に、異なる染色体のそれぞれの2コ
ピーの各々にあるDNAは複製されるが、そのコピー(一価姉妹クロマチド)は
各染色体のセントロメアに繋ぎ止められている。同期しない分裂をするES細胞
培養の中では、定義により、細胞周期の全ての段階が現れていることが期待され
る。その結果、ES細胞培養は直径の範囲に現れる細胞の混合を含んでいる;そ
の範囲は約10μmから約18μmである。比較的小さな細胞(約10μm径)
は二倍体(2n)でゲノムDNAに関して2Cであるらしい、なぜならこれらの
細胞は比較的最近分裂し、比較的少ししか細胞質容量が増加していない。最大(
約18μm径)に近い細胞はS−期を超えて進んでいるようである。
【0045】 ES細胞ドナー核が二倍体で2Cである場合には、核移植に続いて細胞質分裂
の阻害剤の存在下に再構成細胞を活性化する。偽極体の形成の抑制及び染色体の
排出防止により、再構成細胞の2n倍体を保持する。核がS−期後にあると考え
られる(大きな細胞の範囲にあるので)場合には、偽極体の形成に伴って卵母細
胞の倍数が2n,2Cに減少するように、細胞質分裂阻害剤を存在させずに卵母
細胞を活性化する。活性化期間中に、偽極体の形成を観察することが出来る。
【0046】 ES核ドナー細胞の培養液中のウシ胎児血清(FCS)濃度は広い範囲で変化
させることができる;FCS濃度は、本発明の方法によりクローン化生存仔の発
育を維持する培養ES細胞核の能力に著しい影響を及ぼすとは思われていない。
【0047】 小さいか大きいかいずれかの細胞の核を移植した後、偽前核を形成した卵母細
胞(8)は、1から約3.5日の胚培養を行なうために新鮮な培養液に移す(9
)。培養に続いて、胚を代理母に移植し(10)、発育させ生存仔を出産させる
(11)。そうでなければ、発生した胚は(9)ES細胞様細胞誘導培養におけ
るICM細胞源として使用することができる。
【0048】 このように、本発明方法の一態様には下記段階からなる哺乳動物のクローニン
グが記載されている:(a)少なくとも染色体を含む、ES細胞のような細胞核
の全部または部分を採取する;(b)それを脱核卵母細胞に挿入する;(c)再
構成細胞を胚に発生分化させる;そして(d)胚を胎児及び生存仔に発育させる
、あるいはインビトロで培養する胚の細胞にする。これらの段階のそれぞれにつ
いて、代表例としてES細胞核ドナーを用いて、以下に詳細に記述する。
【0049】 ES細胞核(または染色体を含む核構成成分)を、既述のように2−4Cのゲ
ノムDNA相補体を有するES細胞から採取することが出来る。望ましくは、E
S細胞核を脱核卵母細胞の細胞質中に挿入する。望ましくは核の挿入はマイクロ
インジェクションによって、またより望ましくはピエゾ電気駆動マイクロインジ
ェクションによって行なう。他の態様においては、核ドナー細胞とレシピエント
、脱核卵母細胞とを融合させることにより核を導入することができる(Will
adsen,Nature 320,63[1986])。
【0050】 再構成細胞の活性化はES細胞核の挿入の前に、その間に、またはその後に行
なうことができる。一態様においては、活性化段階はES細胞核の挿入の0から
約6時間後に行なう。活性化されるまでの時間の間に核はmII卵母細胞の細胞
質と接触する(侵入成分により潜在的に修飾される)。活性化は次のような種々
の方法で行われるが、これに限定されない;電気活性化、あるいはエタノール、
精子細胞質因子、卵母細胞受容体リガンドペプチド類似体、Ca2+放出刺激薬(
例えばカフェイン)、Ca2+イオノフォア(例えばA2318、イオノマイシン
)、リン酸タンパク質シグナリング調節剤、タンパク合成阻害剤など、あるいは
それらの組合せへの曝露。本発明の一態様においては、この活性化はストロンチ
ウムイオン(Sr2+)に細胞を曝露することにより行なう。
【0051】 2C DNAを含む核を注入された再構成細胞の活性化は、微小管及び/また
はミクロフィラメント集合の阻害剤に曝露することにより極体の形成を防止して
行なうことが望ましい(下記参照)。これはドナー核からの染色体をすべて再構
成細胞中にとどめるのに有利に作用する。2−4C核を持つ再構成細胞は偽極体
を形成させるために阻害剤を存在させずに活性化を行なうことが望ましい、これ
によりゲノム相補体は2Cに減少する。一態様においては、2Cゲノム相補体は
2n染色体に対応している。
【0052】 胚を発育させる段階は、胚を生存胎児(つまり、着床に成功した胚が出産まで
成長することが出来る)に発育させるレシピエント代理母に胚を移植する中間段
階を含んでいる。胚は、当業者に知られているように、インビトロ発育のどの段
階、2細胞から桑実胚/胚盤胞、においても移植することができる。
【0053】 本発明の追加的態様の初めから10段階までで、図1の段階(1)から(10
)にしたがって、クローン化桑実胚または胚盤胞が作製される。一態様において
は、これに続いて、クローン化胚を代理レシピエント母に移植する前に、少なく
とも1個、通常は5−15個のES細胞をクローン化胚の中に、当業者には知ら
れている方法にしたがって集合技術あるいは胚盤胞注入により、導入する。この
「二次」ES細胞は元のままであり、また核ドナーが由来した細胞と同一の培養
から由来してもよく、あるいはその培養の継続から、または別の培養、あるいは
混合から由来してもよい。二次ES細胞の機能の一つはクローン化胚の発生分化
の潜在能力を助けあるいは増強して、完全に発育する確率を大きくすることであ
る。生じた胚はクローン由来胚細胞及び二次的に導入したES細胞の混合したも
のを含んでいる。次いでこの混合細胞胚は雌代理レシピエントに移植され、胚は
生存胎児に発育する。同じES細胞培養が核ドナー及び二次ES細胞の両者に使
用された場合には、生じた胚は遺伝的にキメラではない。異なるES細胞培養が
使用された場合には、生じた胚は遺伝的にキメラであることもあり得る。
【0054】 本発明の別の態様において、脱核卵母細胞に核成分を移植することにより再構
成した細胞にインビトロで胚発生活性化の信号を与え、既述したように培養する
。しかし、生じた胚はインビトロで更に培養して細胞系を得るのに使用する。望
ましい態様では、胚を胚盤胞段階まで培養し、当業者に知られている方法にした
がって、胚性幹(ES)細胞系あるいはES細胞様細胞系を得るために使用する
。さらに別の態様では、このようにして得た系の細胞を、インビトロ培養条件を
変えることにより、指定の経路に沿って分化するように誘導する。ES細胞ある
いはES細胞様細胞は、心筋細胞(Klug,et al.,J.Clin.I
nvest.98,216[1996])、神経細胞(Bain,et al.
,Dev.Biol.168,342[1995])あるいは血液細胞(Wil
es,&Keller,Development 111,259[1991]
)を含む、これに限定されない、種々の細胞種の集団を作製するために分化すべ
く、当業者により、誘導することができる。このような細胞は、例えば組織工学
のような新興分野において、大きな有用性を有している(Kaihara&Va
cnti,Arch.Surg.134,1184[1999]に記述されてい
る)。
【0055】 マイクロインジェクションは、ES細胞核の脱核卵母細胞への供給及びその結
果としてのES細胞核の再構成に関連して、下記のような多くの利点を有してい
る。第一、マイクロインジェクションによる核の全部あるいは一部の供給(つま
り、脱核卵母細胞へ一部を供給し、染色体成分を含む核成分を含有するES核の
結果としての再構成)は、−インビトロで育成したのかインビボで育成したのか
−サイズ、形態、核ドナーの発生段階などに関係なく、幅広い種々の細胞型に適
用しうる。第二、マイクロインジェクションによる核供給は、核注入の際に脱核
卵母細胞の中に一緒に導入される核ドナー細胞の細胞質及び核質の容量を注意深
く調節することができる。無関係な物質が発生分化の潜在能力に悪影響を与える
場合には、特に適切である。第三、マイクロインジェクションによる核供給は、
核注入時に卵母細胞に追加の試薬を(ドナー核と)一緒に注入するのを注意深く
調節することができる:このような試薬は下記に例示する。第四、マイクロイン
ジェクションによる核供給は、活性化に先立ってドナー核を脱核卵母細胞の細胞
質に曝露する期間を置くことを容易にする。この曝露は、続く胚の成長に都合の
よいクロマチンリモデリング、リプログラミング及び移植クロマチンにおけるそ
の他の変化(例えば、母体由来転写因子の動員)を促進する。第五、マイクロイ
ンジェクションによる核供給は続く活性化プロトコールの広範囲の選択を可能に
する(一態様においては、Sr2+の使用);異なる活性化プロトコールは発生分
化能力に対して異なる効果を及ぼし得る。第六、活性化はミクロフィラメント分
離剤(一態様においては、サイトカラシンB)の存在下に行われ、染色体の押し
出しを防ぐ、また細胞分化の調節剤(異なる態様において、ジメチルスルフォキ
シド、または9−cis−レチノイン酸)の存在により望ましい発生分化結果を
生じる。第七、一態様において、ピエゾ電気駆動マイクロインジェクションによ
り行なった核供給は、サンプルの処理をすばやく効率的に行なうことができ、そ
の結果操作した細胞の外傷を少なくすることができた。この外傷減少は、部分的
にはドナー細胞核の調製及び卵母細胞への導入を同じ注射針で行なうことによる
ものある;対照的に、従来のマイクロインジェクションの使用では、透明帯の切
り離しと卵母細胞形質膜の穿刺の間に少なくとも1回は針の交換を必要とする。
第八、個々の段階のみならず、それらの相互関係が、本発明方法の特徴である。
ここにこれらの個別の段階を詳細に示すと共にそれらが本発明において相互にど
のように配置されているか示す。
【0056】 詳細な説明1:レシピエント卵母細胞。脱核のために採取し、核移植のレシピ
エントとして調製するのに先立つインビボにおける卵母細胞の成熟段階は、クロ
ーニング方法の成果に大きく影響する。ドナー核の注入は発生のどの段階にあっ
ても卵母細胞あるいはその前駆体に行なうことができる。本発明の望ましい態様
では、核をレシピエントである成熟、mII卵母細胞に移植している;そのmI
I卵母細胞は通常受精精子により活性化されるタイプである。卵母細胞細胞質の
化学は成熟過程を通して変化する。これはM期促進因子(MPF)に代表される
、サイクリンB2及びcdc2プロテインキナーゼの2量体複合体である。MP
F活性が高い細胞は細胞周期のM期にある。例えば、マウスにおいて、MPFと
関係する細胞質活性は、第一減数分裂のM期(M期I、mI)に止まっている未
成熟卵母細胞において最大である。MPF活性は、次いで一次極体(Pb1)の
押し出しと共に低下し、再び第二M期、mII、で高レベルに達する。この高レ
ベルは維持され、mIIに卵母細胞をとどめるのに役立ち、受精精子あるいはS
2+により提供されるような細胞周期を再開する(活性化)シグナルを卵母細胞
が受けると急速に減少する。ES細胞核がmII卵母細胞の細胞質に注入される
と、高いMPF活性は核膜を分解し、付随するクロマチンの濃縮、ES細胞由来
M期染色体を形成する。
【0057】 本発明方法に使用することができる卵母細胞には、未成熟段階卵母細胞(卵胞
として知られる完全な核を持っているもの)及び成熟段階(つまり、mIIにあ
るもの)のいずれも含まれる。成熟卵母細胞は次のようにして得ることができる
、例えば性腺刺激あるいは他のホルモン(例えば、ウマ及びヒト絨毛性性腺刺激
ホルモン連続投与)の注射により動物に過排卵をおこさせ、そして、排卵の短時
間後に外科的に卵を採取する(例えば、マウスでは発情開始から13−15時間
後、ウシでは発情開始から72−96時間後、そしてネコでは発情開始から80
−84時間後)。
【0058】 卵母細胞の入手が未成熟卵母細胞に限られている場合には、成熟促進培養液中
でmIIに進むまで培養することができる;これはインビトロ成熟(IVM)と
して知られている。未成熟ウシ卵母細胞のIVM方法はWO 98/07841
に記載されており、未成熟マウス卵母細胞についてはEppig&Telfer
(Mets.Enzymol.[Academic Press]225,pp
77−84,[1993])に記載されている。本発明のその他の態様では、
未成熟卵母細胞はIVM無しにレシピエント細胞として使用することができる、
例えば、卵母細胞は脱核の前にインビトロで成熟させることができる。
【0059】 詳細な説明2:卵母細胞脱核。卵母細胞脱核は既知方法により行なうことがで
きる。望ましくは、卵母細胞は脱核の前及びその間に、微小管及び/またはミク
ロフィラメント集合の阻害剤を含有する液に曝露する。アクチン含有ミクロフィ
ラメントあるいはチュブリン含有微小管の分解は、細胞膜及び/またはその下に
ある表層細胞質に流動性を与える、細胞内構造に対する傷害を最少にして、その
ため膜に囲まれた卵母細胞の部分は容易にピペットの中に吸い取ることができる
。選択されるミクロフィラメント分解剤はサイトカラシンB(5μ/ml)であ
る。ノコダゾール、6−ジメチルアミノプリン及びコルヒチンのような、適切な
微小管分解剤は、当業者に知られている。その他のミクロフィラメント分解剤と
しては、これに限るものではないが、サイトカラシンD、ジャスプラキノリド、
ラトランクリンAなどがある。
【0060】 本発明の望ましい態様においては、mII卵母細胞の脱核はピエゾ電気駆動マ
イクロピペットを使用して吸引することにより行われる。脱核微小手術を通して
、mII卵母細胞は通常の固定マイクロピペットで固定される。ピエゾ電気駆動
脱核マイクロピペットの平らなチップ(内径〜7μm)を透明帯に接触させる。
適当なピエゾ電気駆動ユニットはPiezo Micromanipulato
r/Piezo Impact Drive Unitの名称でPrime T
ech Ltd.(筑波、茨城県、日本)から発売されている。このユニットは
、高度に調節され、すばやく、マイクロインジェクションピペットチップを短距
離(約0.5μm)進めるピエゾ電気効果を利用している。強さとパルス間隔は
調節装置により変化させたり調節することができる。ピエゾパルス(例えば、強
さ=1−5、速度=4−16)を適用して、その中を少し引圧に保って、マイク
ロピペットを透明帯を通して進める(孔を開ける)。この様にして、マイクロピ
ペットチップは速やかに透明帯を通過し、mII板(染色体−紡錘体複合体を含
みそしていくつかの動物種のmII卵母細胞の細胞質中に半透明領域として確認
することができ、しばしば一次極体の近くにある)に隣接した位置に進められる
。M期板を含む卵母細胞細胞質は穏やかにそして手際よくマイクロインジェクシ
ョンピペットの中に最少容量で吸引し、インジェクションピペット(今はmII
染色体が入いっている)を引き抜く。この操作の効果は、mII染色体を含む卵
母細胞細胞質の部分を摘み出すことである。次いでマイクロインジェクションピ
ペットを引いて透明帯を取り除き、そして次の卵母細胞から染色体を微小手術除
去をする前に染色体を周囲の液中に放出する。適当であるなら、卵母細胞の群に
ついて、完全に脱核されていることを確認するスクリーニングをすることができ
る。顆粒性細胞質を持つ卵母細胞(例えば、ブタ、ヒツジ及びネコ卵母細胞)に
ついては、DNA特異的蛍光色素(例えば、Hoeschst 33342)で
染色し、そして低強度UV照射の下で簡単な検査(ある場合には、画像強調ビデ
オモニターにより増強される)をすることが脱核の効率を確かめるのに有利であ
る。
【0061】 mII卵母細胞の脱核は、U.S.Patent No.4,994,384
に記載されているような、他の方法によって行なうことができる。例えば、脱核
はピエゾ電気駆動に対するものとして、従来のマイクロピペットを使用して微小
手術的に行なうことができる。最初に卵母細胞のmII染色体の位置に回近い透
明帯の外周に沿って10−20%にガラス針でスリットをいれることにより脱核
を行なうことができる。卵母細胞は顕微鏡ステージ上のサイトカラシンBを含む
液滴の中に置かれる。染色体は、鈍化させた、斜めに切ったチップを持つ脱核ピ
ペットで除去される。
【0062】 脱核の後には、卵母細胞はES細胞核を受け入れる準備が出来ている。脱核卵
母細胞は、ドナー核挿入の約2時間前以内に調製されることが望ましい。
【0063】 詳細な説明3:ES細胞系の調製及び維持。ES細胞の単離、培養及び操作は
、例えば、下記に記載されている:Hogan,et al.,Manipul
ating the mouse embryo.2nd ed.(Cold S
pring Harbor Laboratory Pres)(1994). 記載の要点をここに要約した。
【0064】 初代マウスES細胞は、(受精のような)発生分化の活性化後少なくとも約3
.5日に膨張した胚盤胞から単離することができる。胚はDMEM(10%ウシ
胎児血清及び25mM HEPES,pH7.4を添加)のような液で動物の子
宮角から流し出し、そして、予め作製した下記の支持細胞層及びES細胞培養液
1mlを入れた10mmウエル培養皿に個別に入れた。胚培養のこの最初の段階
は、支持細胞なしで軽パラフィン油下のES培養液の小滴中でインキュベートし
ても行なうことができる。1−2日間さらに培養した後、胚は透明帯から「孵化
」して、栄養外胚葉(TE)系統の細胞の遊走により組織培養皿の表面に接着す
る。胚の接着の直後に内部細胞塊(ICM)はTE系統の細胞とは容易に区別で
きるようになり、そして急速に成長する。合計4−5日の胚盤胞培養の後、IC
Mから由来した(ES)細胞は下層の細胞から精巧に引いたパスツールピペット
のシール端を使用して取出す。
【0065】 細胞はトリプシンで処理し、ES細胞塊を通常3または4個の細胞を含む小さ
な群に分解する。これを次いで新鮮な支持細胞組織培養ウエルに移す。初代ES
細胞様コロニーは以下に記述するようにその形態により確認し得る。
【0066】 ES細胞及び遺伝的に操作した細胞は、正常な核型を維持するために、厳密な
生育条件の下に培養される;これにより使用するたびに生殖細胞として機能する
潜在的能力を有することを保証する。最適でない培養条件ではES細胞の変異体
を生じ、これは核型の変化、染色体の再編成及び/またはその他の変異を起こし
、増殖速度を増し、インビボにおける発生分化能力を減ずることが、知られてい
る。最適培養条件はES細胞を培養している業者には知られており、必要濃度の
栄養素及び成長因子の供給及び非常に高密度での培養の回避を含んでいる。高密
度での細胞培養は、その表面の細胞が限定された多能性を持つ内胚葉様細胞に分
化した塊を形成する望ましくない傾向がある。望ましい培養密度は、2−3日毎
に培養を1:2から1:6に分割し、標準的方法にしたがって、タンパク分解酵
素、トリプシン、で緩和に処理して3−4細胞の塊を1細胞に分離することによ
り得られる。培養中の健康なES細胞は、典型的に「滑らかな」外観を持つ密集
した群に増殖する。「粗い」内胚葉のコロニー表面の存在あるいは培養基盤上に
広がった細胞は、なかんずく当業者に知られている最適でない条件の現われであ
る。
【0067】 全ての培養液、添加物などはエンドトキシンを除去してある。最もよく使用さ
れる培溶液はダルベッコー修正イーグル培地(DMEM)及び4.5mg/ml
グルコースであり、任意に1mMピルビン酸ナトリウムを加える。DMEMは約
35℃の5%CO2を含む空気中でpH7.2−7.4になるようにした重炭酸
バッファー培養液である。DMEMは通常使用直前に次のようなものが添加され
る:(a)2mMグルタミン;(b)0.1mM非必須アミノ酸;(c)0.1
mM β−メルカプトエタノール;(d)50μg/mlゲンタマイシン、また
は各100U/mlペニシリン及びストレプトマイシン、あるいは抗生剤なし;
(e)15%ウシ胎児血清(FCS;下記参照);及び任意に、(f)分化抑制
因子(DIA)としても知られている白血病阻害因子(LIF)(下記参照)。
【0068】 ES細胞の植え継ぎ及び採取には、それを組織培養皿からはがして、Ca2+
Mg2+を含まないリン酸バッファー食塩液中でトリプシン及びエチレンジアミン
テトラ酢酸ジナトリム(EDTA)(例えば、それぞれ0.025%及び75m
Mの最終濃度)の混合物で処理してお互いを切り離す。
【0069】 ウシ胎児血清としても知られるFCSは、DMEMに添加されてES細胞培養
に使用される。典型的には、FCSは15%(v/v)で使用される。しかし、
低濃度(例えば、1−5%)のFCSはES細胞の培養を維持し、その核を本発
明方法における胎児及び生存仔への発生分化を進行させることを可能にする。さ
らに、この低濃度のFCSは活発な増殖培養を維持し、細胞周期の全ての段階に
ある細胞を示し得ることを暗示しており、本発明の方法に使用し得る。
【0070】 白血病阻害因子(LIF)は分泌型サイトカインであり、ES細胞の自発的分
化を抑制する。それはバッファローラット肝(BRL)細胞順化培地の活性成分
の一つであり、ES細胞を増殖するために使用されることが知られている。ES
細胞共存培養では、培地に精製LIFを添加してもよいが、支持細胞がLIFを
活性型で発現する。支持細胞で順化した細胞除去培地はES細胞培養を維持する
には充分でなく、例えば、精製LIFの添加を必要とする(下記参照)。
【0071】 ES細胞培養を支持細胞なしでLIFを添加した培地中で行なうことは可能で
あるが、ほとんどの研究室はES細胞の増殖を促進し、そして分化段階を維持す
るための因子を供給するために支持細胞層に頼っている。最も一般的に使用され
ている二種の支持細胞は、マウス胚繊維芽細胞(MEF)の初代培養であり、当
業者に既知の方法で12.5から14.5dpc胚から採取したものであり、ま
たSIMマウス繊維芽細胞細胞のチオグアニン及びウワバイン抵抗性亜系である
STOマウス繊維芽細胞細胞系である。分裂に不活性の支持細胞はマイトマイシ
ンCあるいはγ線照射の処理により調製される。
【0072】 ES細胞様細胞を誘導する方法は他の動物種について既に記載されている、そ
れらはウシ(Cibelli,et al.,Theriogenology
47,241[1997])、ハムスター(Doetschman,et al
.,Dev.Biol,127,244[1988])、ヒト(Thomson
,et al.,Science 282,1145[1998])及びウサギ
(Schoonjans et al.,Mol.Reprod.Dev.45
,439[1996])。これらの方法は、当業者がES細胞様細胞を誘導する
のに適した動物種に適用することができる。
【0073】 詳細な説明4:遺伝的修飾あるいは遺伝子ターゲティングES細胞。ES細胞
に既知の方法で遺伝的に修飾することができる。「遺伝子ターゲティング」によ
りES細胞に修飾を施すことが望ましい。遺伝子ターゲティングとは、指向性が
あり無秩序でない方法でゲノム変異を導入する方法である。この方法により、特
異的変異を全ゲノム配列の中に導入することができる。ES細胞は個体を発生さ
せるのに使用することができるので、遺伝子ターゲティング変換をしたES細胞
は目的突然変異を含む動物を生産することができる。方法−「ターゲティング構
築」の設計及び構築−の重要な特徴は当業者には既知である。ターゲティング構
築は典型的には少なくとも一つの宿主ゲノムには本来ないヌクレオチド配列を含
んでいる。本来ない配列は導入する変異に対応しており、宿主ゲノムの配列と同
一でないとしても、高度に保存された広範囲な領域(典型的には>5kbp)で
並列する。これはひとたび細胞内に入ると保存/同等配列は、標的ゲノム上の相
補的対応配列と相同組換えを行なえることを意味する。
【0074】 所与のES細胞型のゲノムに変異を導入するために、ターゲティング構築DNA
を比較的純粋な形態で調製し、ES細胞にこのDNAを下記から選んだ方法によ
り取り込ませる、野生型または組換えレトロウイルスの感染、リポフェクション
、トランスフェクション、など及び望ましくは電気穿孔(Hogan,et a
l.,Manipulating the mouse embryo.2nd
ed.[Cold Spring Harbor Laboratory Pr
ess],pp.277−278[1994];Joyner[ed],Gen
e targeting.[Oxford University Press
][1993])。
【0075】 遺伝子ターゲティングの効率は、それぞれのターゲティング構築配列、DNA
調製あるいはES細胞系に固有の変動の組み合わせに依存している;しかしこれ
らは当業者内の日常の実験に必要であるに過ぎない。例えば、効率は、同質遺伝
子的に対する非同質遺伝子的DNAの使用、ターゲティング構築内の相補的配列
の長さ、ターゲティングDNA及び内在遺伝子に存在する同じ配列の連続長の程
度、ターゲティングDNAに並列する相補性の長さなどの影響を受ける。遺伝子
ターゲティングES細胞を作成する方法は当業者には既知である。本発明に使用
するのに適した代表的遺伝子ターゲティングES細胞は、これに限るものではな
いが、下記に記載されている:Mombaerts,et al.,Proc.
Nad.Acad.Sci.USA,88,3084(1991);Momba
erts,et al.,Nature 360,225(1992);Ito
hara,et al.,Cell 72,337(1993);U.S.Pa
tent 5,859,307など)。
【0076】 詳細な説明5:ES細胞ドナー核の調製。培養の後、コンフルエントに至らな
い培養のES細胞を組織培養皿からはがし、Ca2+−Mg2+を含まないリン酸バ
ッファー食塩液中でトリプシン及びエチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリム(E
DTA)(例えば、それぞれ0.025%及び75mMの最終濃度)の混合物で
処理してお互いを切り離す。細胞懸濁は次いで顕微鏡ステージ上の12%ポリビ
ニルピロリドンを含むCZB・H培地の滴に移す。
【0077】 詳細な説明6:ドナー核の脱核卵母細胞への挿入。核(あるいは少なくとも染
色体を含む核成分)をマイクロインジェクション技術により脱核卵母細胞の細胞
質中に直接注入することができる。脱核卵母細胞へのES細胞核の望ましい注入
法では、ピエゾ電気駆動マイクロピペットを使用し、その場合に本質的には(卵
母細胞の脱核に関して)既述した装置と技術を使用することができ、ここにその
応用を詳述した。
【0078】 例えば、マイクロインジェクション針は、既述のとおり内径約5μmの平らなチ
ップを持つように作製する。針はそのチップの近くに水銀を含んでおり、供給業
者の説明書によるとピエゾ電気駆動ユニットの中に入れてある。マイクロインジ
ェクションピペットのチップの近くにある水銀滴の存在はチップの前進に必要な
勢いを増強し、したがって調節された方法でチップの貫通能力を強める。個々に
選択された核を含むマイクロインジェクションピペットのチップを脱核卵母細胞
の透明帯と密に接触するようにし、そして数回のピエゾパルス(強度1−5、速
度4−6の設定範囲の調節器を使用して調節)を施して、任意にない圧をわずか
に低圧に保った、マイクロピペットを前進させる。ピペットチップが透明帯を通
過したら、できた帯の「コア」を卵周囲スペースに排出し、そしてマイクロピペ
ットの中にある予め選択した核をチップの近くまで進める。次いでピペットチッ
プを形質膜(透明帯)に隣接させ、そして卵母細胞のほとんど反対側の面に至る
まで(卵母細胞の反対面の方向に)進める。卵母細胞形質膜はインジェクション
針の周りに深く窪む。1から2のピエゾパルス(例えば、強度1−2、速度1)
の適用により、速やか−そして典型的に認識できる−透明帯の弛緩に示されるよ
うに、チップの位置で形質膜に孔があく。次いで核を卵母細胞質の中に最少量( 〜1pl)の付随培地で排出する。マイクロピペットを次いで注意深く引きぬ
き、卵母細胞の細胞質の中に新たに導入した核を残す。典型的には、それまで培
養条件に維持されている脱核卵母細胞の15−20個の群についてこの方法をき
びきびと、実施する。
【0079】 この他の変法として従来のマイクロインジェクションによるドナー核の挿入も
使用することができる。ハムスター卵母細胞への精子核を挿入するために従来の
マイクロインジェクションを使用した一方法が記載されている:Yanagid
a,Biol.Reprod.44,440(1991)、この方法に関係する
この報告を参照文献に採用した。
【0080】 詳細な説明7:ドナー核と発育調節因子の同時注入。本発明の一態様において
、胚の発育結果を変動させる能力を持つ試薬の一つ以上をドナー核と脱核卵母細
胞を結合する以前に、その間に、あるいはその後に、導入することができる。例
えば、核と一緒に本発明方法の成績に影響する理論的あるいは既知の効力を有す
るタンパク質に作用することを目的とした機能調節抗体を注入することができる
。このような分子としては、これに限定するものではないが、小胞輸送に含まれ
るタンパク質(例えば、シナプトタグミン)、クロマチン−卵母細胞質連絡を仲
介するタンパク質(例えば、Chk1のようなDNA損傷細胞周期チェックポイ
ント分子)、卵母細胞シグナル伝達に推定上の機能を有するタンパク質(例えば
、転写因子、STAT3)またはDNAを修飾するタンパク質(例えば、DNA
メチル転移酵素)がある。この類の分子は、本発明方法においてマイクロインジ
ェクションにより導入される薬理的調節剤の(間接的)標的であり、それは抗体
に類似した機能調節作用を有している。抗体及び薬理的試薬のいずれもそれぞれ
の標的分子あるいはそれぞれの標的分子のリガンドに結合することにより効果を
発現する。標的が発育結果に抑制作用を有する場合には、この結合は標的機能を
低下させ、標的が発生分化結果に陽性効果を有する場合には、この結合はその機
能を亢進する。あるいは、クローニング過程に重要な機能の調節は、それに結合
する試薬よりはその因子(あるいは類似活性を持つ因子)を注入することにより
直接行なうことができる。
【0081】 本発明の他の態様においては、リボ核酸(RNA)あるいはデオキシリボ核酸
(DNA)をドナー核の挿入の前に、またはそれに続いてマイクロインジェクシ
ョンにより卵母細胞に導入すことができる。例えば、必要なcis活性信号を含
む組換えDNAの注入により、元からあった転写因子によるかあるいは同時に注
入した転写因子によって組換えDNA上に存在する配列の転写を生じることがで
きる;その結果発現するコードされたタンパク質は、胚の発育に対して抑制的な
因子に拮抗作用を有するか、あるいは陽性因子に増強作用を有するかのいずれか
であろう。さらに、転写は、発育能力を減ずるmRNAコードタンパク質に対し
てアンチセンス調節活性を有する。あるいは、そのような調節は直接アンチセン
ス機能を有する核酸(またはその誘導体)(例えば、アンチセンスmRNA)を
直接供給することにより行なうことができる;これにより卵母細胞内におけるア
ンチセンス調節分子を生産するための転写は不必要になる。好ましい態様におい
て、この供給はマイクロインジェクションによる。最後に、転写は初期胚におい
ては遺伝子発現の転写調節に重大な影響を及ぼす。そのような影響はやはり、翻
訳に影響する追加的分子種のマイクロインジェクションにより仲介することがで
きるであろう。
【0082】 本発明方法により導入された組換えDNA(環状か線状)は、1以上の発現さ
れる機能遺伝子を含む機能的複製子を含むことができる。この遺伝子は、狭い、
広いあるいは中間の発生分化の発現プロフィールを示し得る活性を持つ1以上の
プロモーターの支配下にある。例えば、初期接合体においてのみ活性なプロモー
ターは、その関係遺伝子の即時、しかし短時間の発現を指示する。導入されたD
NAは多分胚の発生分化の間に失われるか、あるいは1以上のゲノム位置に取り
込まれ生じた形質転換個体の生涯を通して安定して複製される。一態様において
、テロメラーゼ、スーパーオキシドヂスムターゼあるいはその他の酸化防止タン
パク質のような、うわさの「抗老化」タンパク質をコードしたDNA構築をマイ
クロインジェクションにより卵母細胞に導入することができる。あるいは、精子
因子タンパク質のようなタンパク質を直接注入することもできる。
【0083】 詳細な説明8:再構成細胞の発生分化の活性化。本発明の一態様において、ド
ナー核を受け入れた脱核卵母細胞は、活性化の前に0−6時間の間培養条件に戻
される;こうして、脱核卵母細胞にドナー核を挿入してから約6時間後までには
いつでも卵母細胞を活性化することができる。われわれはこの間を「潜伏期間」
と呼んでいる。望ましい態様において潜伏期間は1−3時間である。活性化は、
限定されることなく、電気的に、1以上の卵母細胞活性化物質の注入により、あ
るいは卵母細胞を1以上の卵母細胞活性化物質を含む培地に移すことにより行な
うことができる。
【0084】 活性化刺激(または活性化刺激の組合せ)をもたらすことができる試薬として
は、これに限るものではないが、精子の細胞質因子(可溶性活性に対応するタン
パク質、オシローゲン、に例示される)及びある種の薬理的化合物(6−ジメチ
ルアミノプリン[DMAP]、IP3及びその他の信号伝達調節剤により例示さ
れる);これらはドナー核の挿入により細胞が再構成される前に、同時に、ある
いはそれに続いて、マイクロインジェクションにより導入することができる。再
構成細胞(直ちにあるいは潜伏期の後)を1あるいは複数の活性化化合物を含む
培地に移して1以上の活性化刺激を与えることができる。このような化合物群と
しては、限定するものではないが、Ca2+放出促進剤(例えば、カフェイン、エ
タノール、及びA23187及びイオノマイシンのようなCa2+イオノフォアー
)、リン酸化タンパク質シグナル伝達調節剤(例えば、2−アミノプリン、スタ
ウロスポリン及びスフィンゴシン)、タンパク質合成抑制剤(例えば、A231
87及びシクロヘキサミド)、DMAPあるいは上記の組合せ(例えばDMAP
とイオノマイシン)がある。本発明の一態様においては、再構成細胞の活性化は
、10mM SrCl2で供給する2価ストロンチウムイオン、Sr2+、を含む
Ca2+除去CZB培地中で1−6時間培養することにより行なうことができる。
【0085】 ドナー核の挿入と同時に、あるいはその後に、活性化刺激を適用するような本
発明の態様においては、再構成細胞は活性化刺激の適用時に、あるいはその直後
に、サイトカラシンB5μg/mlジメチルスルホキシドのようなミクロフィラ
メント分解剤を1以上含む培地に移すことができる;これは細胞質分裂を抑制し
、したがって偽極体を介する染色体の消失を抑制する。細胞質分裂抑制剤の存在
下における培養は4−12時間の間であるが、6時間がより望ましい。この態様
は、ドナー核が2C DNAを含有している場合に適用することが望ましい。
【0086】 その他の態様においては、卵母細胞をドナー核の挿入に先立って上記活性化法
により活性化することができる。活性化刺激に曝露した後、卵母細胞を上記のよ
うに2C核を注入する前に約6時間まで培養する。この態様では、新規に導入し
た染色体は急速に前核様構造と結びつきそして細胞質分裂抑制剤との培養により
偽極体排出を抑制するには好ましくない。
【0087】 詳細な説明9:生存胎児及び生産仔をつくるための発育。再構成された細胞を
前核、インビトロ培養により発育できる1細胞胚、をつくるために活性化する。
胚を細胞質分裂阻害剤により偽極体排出を抑制した場合には、胚をミクロフィラ
メントあるいは微小管分解剤を含まない新鮮な培地に移す。培養を2細胞から桑
実胚/胚盤胞段階にまで継続することができ、この時点で胚を偽妊娠代理母の卵
管あるいは子宮に移すことができる。
【0088】 あるいは、単細胞再構成から由来する仔の数を増大することにより収量を改善
する目的で、胚を分割し、細胞クローンを拡大する。
【0089】 別の態様では、本発明方法により誘導した胚を、連続核移植によりさらに胚を
発生させるために使用する。これを達成するために、再構成細胞を活性化し、上
記のようにインビトロ培養により発育させる。他の態様においては、培養は適当
な代理母に移植した後インビボで行われる。数日、望ましくは3−5日、の継続
した培養の後に、生じた胚の細胞を、トリプシンのようなタンパク質分解酵素の
緩和な処理あるいは当業者には既知の機械的方法により切り離す。この胚から得
た個別の細胞を次いで核ドナーとして使用する;それぞれの核を取出しそして脱
核卵母細胞に挿入する、そしてこれは次いで活性化され、発生分化させられる。
ドナー核挿入、脱核、発生分化の活性化及び胚培養の方法は上に記述した。
【0090】 詳細な説明10:分化細胞集団の作製。追加的態様において、本発明の方法に
より発生したクローン化胚は、ES細胞様細胞インビトロ培養を樹立するために
使用する。これは当業者に既知の方法により行われ、下記に記載されている:H
ogan,et al.,Manipulating the mouse e
mbryo.2nd ed.(Cold Spring Harbor Labo
ratory Press),265−272(1994)。この培養は記述の
ように発生分化を誘導することができ、それにより特別な遺伝子型の細胞の潜在
的に無限な源を発生する。この分化を誘導する方法は神経細胞(Bain,et
al.,Dev.Biol.168,342[1995])、心筋細胞(Kl
ug,et al.,J.Clin.Invest.98,216[1996]
)及び造血細胞(Wiles&Keller,Development 111
,259[1991])の豊富な集団を得るために記載されている。一例として
、これは移植に使用するための免疫学的に適合した細胞の増殖を可能にする。移
植レシピエントから本発明方法により誘導されたクローンであるので、細胞は適
合することができる。その他の態様では、増殖した細胞の遺伝子的を修飾して、
例えば、非霊長類細胞を霊長類に移植することを阻んでいるGa1α1−3Ga
1分子のような免疫調査の標的分子をもはや発現しないようにする。インビトロ
マトリックス上のクローン化細胞の増殖は、クローニング技術と組織工学を結合
させるものである(Kaihara&Vacanti,Arch.Surg.1
34,1184[1999])。したがって、本発明方法により作製される細胞
集団は移植医療に有用性を有している。
【0091】 このなかで使用した定義 2C,4C:細胞のゲノム相補体。1Cは単位ゲノムを表し、したがって「C
」とする。1Cは、各位置が一度表されている半数体、複製前の細胞のゲノムを
示す。
【0092】 2n:二倍体状態の細胞、「n」は染色体の半数体(単位)数を示す。
【0093】 分化:通常は遺伝子発現における変化の結果として、細胞群が増殖しつつ特異
化する過程。
【0094】 クローン化動物:クローニングにより作製された動物。核ゲノムが一細胞から
由来し、キメラでない多細胞動物。
【0095】 クローニング:核ドナー細胞の核染色体を、染色体を取り去ったレシピエント
細胞に移植して分化した細胞集団を作製すること;この方法では、レシピエント
細胞として脱核卵母細胞を使用することが望ましい。これにより、非ミトコンド
リアDNAが一培養細胞、核ドナー、から由来した仔を発生させることができる
【0096】 卵:卵母細胞または受精したばかりの雌配偶子。
【0097】 胚:卵母細胞の発生分化を活性化した後の時期、または他の細胞型において卵
母細胞の活性化に類似した段階に続く時期。
【0098】 胚性幹(ES)細胞:着床前胚(胚盤胞)の内部細胞塊(ICM)から由来し
た下記のような性質を有する細胞:(i)長期間の実験室培養及び保存に馴染み
やすい、(ii)未分化状態を維持する、(iii)2n倍数性を維持する、(
iv)胚の細胞と混合し、キメラ胚を作製するために培養すると、発生分化プロ
グラムを再開することができ、機能的生殖細胞を含めて、いずれの細胞型にも分
化することかできる。ES細胞は、遺伝子ターゲティングにおけると同様に、操
作し得る相同組換えを示す。
【0099】 ES細胞様細胞:胚盤胞のICMから誘導される培養細胞であるが、ES細胞
の特徴を完全には示さない。
【0100】 胎児:胎盤形成から出産(誕生あるいは仔の出産)までの発育段階。
【0101】 生産仔:生きている仔。
【0102】 ミクロフィラメント:細胞骨格重合アクチン。
【0103】 微小管:染色体を固定し定位させるチュブリンサブユニットからなる細胞内繊
維。
【0104】 核:その成分に、他の非ミトコンドリアゲノムを欠失した細胞に発生分化の指
令をすることができる最少の物質を含む、核全体あるいはその一部。
【0105】 仔:少なくとも出産まで成長した個体。
【0106】 卵母細胞:分裂の第一M期を過ぎて第二M期(M期II)に止まっている雌配
偶子。したがって、卵母細胞は受精していないが、正常な受精を行ない得る発生
段階にある。卵母細胞は、インビボでは排卵により発生し得るし、インビトロで
成熟させることができる未成熟前駆体を外科的に取出し、成熟させることにより
得ることができる。
【0107】 多能性:複数の細胞型のいずれにも分化することができる能力。典型的に、幹
細胞に使う。
【0108】 再構成細胞:核ドナー細胞に存在する染色体中の、継続する発生分化を指令す
るのに必要な最少成分を少なくとも含んでいる物質を、脱核細胞に挿入する操作
により作られる細胞。望ましい態様においては、再構成細胞はES細胞の核を挿
入した脱核卵母細胞である。
【0109】 出産予定日:完全妊娠期間。子宮中で胚発生分化のプログラムを完全に行なっ
た状態、妊娠期間に相当。
【0110】 接合子:受精したばかりの雌配偶子、1細胞胚としても知られている。
【0111】 例 以下の例により本発明方法及びES細胞系E.14,AB2.2及びR1の細
胞核を注入した卵母細胞から生存仔への発育を説明する。これらの系はF1及び
近交系マウスから誘導された、樹立され、広く使用されている細胞系である。M
72は目的突然変異を持つE.14の誘導系である。下記例は、動物卵母細胞、
ES細胞、ES細胞様細胞、培地及び本発明の操作に使用される応用の説明の助
けとなることを意図したものであり、限定されることを意図していない;さらに
、本発明の態様の例は当業者には容易に理解されるであろう。
【0112】 試薬。全ての有機及び無機化合物は実験室規格またはそれ以上の規格であり、
特記しない限りSigma Chemical Co.(St.Louis,M
O)から購入した。一般的にそして特記しない限り、卵母細胞培養は5.56m
M D−グルコースを添加したCZB培地(Chatot,et al.,19
89.J.Reprod Fert.86,679−688)中で行なった。C
ZB培地は: 81.6 mM NaCl,4.8 mM KCl,1.7 m
M CaCl2,1.2 mM MgSO4,1.8 mM KH2PO4,25.
1mM NaHCO3,0.1mM Na2EDTA,31mM乳酸ナトリウム,
0.3mMピルビン酸ナトリウム,7U/mlペニシリンG,5U/ml硫酸ス
トレプトマイシン,及び4mg/mlウシ血清アルブミン(BSA)。輸卵管中
の排卵卵母細胞の採取及び続く顕微鏡ステージ上の微細操作は、20mM He
pesを添加し、NaHCO3(5mM)及びBSA(3mg/ml)の濃度を
減らした、修正CZB(ここでCZB・Hと名付ける)中で行なった;CZB・
Hは7.4のpHを有する。CZB・H中のBSAは0.1mg/mlポリビニ
ルアルコール(PVA;冷水可溶、平均相対分子量〜103)で置換することが
できる;BSA及びPVAの機能は微細操作中の注入ピペット壁の粘着性を減少
させることである。PVAの潤滑効果はBSAよりも長く続くので、多くの微細
操作を一つのマイクロピペットを使用して反復する間それが含まれていることが
望ましい。適切であれば、卵母細胞または再構成細胞は、CaCl2(つまりC
2+)を含まず、卵母細胞活性化を誘導する薬剤及び、場合によっては、細胞質
分離を抑制する薬剤を添加したCZB中で培養する。
【0113】 ES細胞はES細胞用ダルベッコー修正イーグル培地(DMEM)(Spec
ialty Media,Lavallette,NJ),以下を添加、0.5
%−15%(v/v)加熱不活化ウシ胎児血清(FCS;HyClone La
boratories,Logan,UT)、100U/mlペニシリン‐10
0μg/mlストレプトマイシン(Specialty Media)、0.2
mM L−グルタミン酸(Specialty Media)、1%(v/v)
非必須アミノ酸カクテル(Specialty Media)、1%(v/v)
2−β−メルカプトエタノール(Specialty Media)、1%(v
/v)ヌクレオシドカクテル(Specialty Media)、及び100
0U/ml組換え白血病阻害因子(LIF)(GIBCO,Grand Isl
and,NY)。FCSは使用前に56℃25分間加熱不活化した。
【0114】 動物。この実験に使用した動物は、研究資源国家研究協議機構の実験動物の飼
育と使用に関する委員会によって作成された連邦ガイドラインにしたがって維持
した(DHEW出版no.[NIH]80−23、1985年改訂)。
【0115】 例1:樹立ES細胞系、E14、から核ドナー細胞の調製 この例では脱核卵母細胞へマイクロインジェクションする核の供給源として樹
立し広く使用されているES細胞系、E14を使用した。E14細胞系は系統1
29/Olaマウス胚盤胞から誘導した(Hooper,et al.,Nat
ure 326,292[1987])。129/Ola母系はA(agout
i)遺伝子について同型接合であり、そのcchp/cchp遺伝子型(チンチラ被
毛色はぼやけた黄色)を反映するチンチラ被毛色を持っている。ES細胞系、E
14、は一つのマウス系統;129/Ola,から Edinburgh,UK
のDr.Martin Hooper研究室において誘導された。上記仔の被毛
色によってES細胞核からクローン化した仔を確認するために、ES細胞が由来
したマウス系統の被毛色と異なる被毛色を持つ卵母細胞ドナー及び育成母の系統
を選ぶ必要がある。一態様において、E14細胞の核(遺伝的にチンチラ)を脱
核B6D2F1卵母細胞(遺伝的に黒)に移植し、そして再構成細胞をCD−1
代理母(遺伝的に白)に移植して発生分化させた。
【0116】 E14細胞の低い継代(すなわち、11回より少ない継代)の一部を1990
年に得た、そして3個所の異なる研究室でさらに培養を続け、合計31−39代
となった。ここに報告されている例においてE14細胞を選択したことは、それ
が遺伝子ターゲティングマウスにかなり使用されていることにより支持されてい
る(Mombaerts,et al.,Proc.Nad.Acad.Sci
.USA,88,3084[1991];Mombaerts,et al.,
Nature 360,225[1992];Itohara,et al.,
Cell 72,337[1993];Rodriguez,et al.,C
ell 87,199[1999])。この様に、E14細胞は、遺伝子ターゲ
ティングマウスの系統を樹立する生殖系キメラを発生するのに有効であることが
証明されている。E14の培養は、約10μmから約18μm径の範囲の細胞を
提示する。理論に捕らわれることなく、小細胞(約10μmから12μm)は前
S期にあるようでありしたがって2Cゲノム相補体(2n染色体において)を含
み、そして大細胞(約16μmから18μm)は概して後S期であり、2−4C
DNA(2n染色体)を含んでいるようである。
【0117】 ES細胞は、0.5−15%(v/v)加熱不活化ウシ胎児血清(FCS)(H
yclone)、1000U白血病阻害因子(LIF)/ml(Gibco)、
及び下記試薬(Specialty Media):1%(v/v)ペニシリン
−ストレプトマイシン、1%(v/v)L−グルタミン、1%(v/v)非必須
アミノ酸、1%(v/v)ヌクレオシド、及び1%(v/v)β−メルカプトエ
タノールを添加した「ES細胞用DMEM」中で増殖した。細胞は約12時間の
細胞周期を反映して、24時間毎に1:3あるいは1:4に分割する。適切であ
れば、培養は13.5日のマウス胚から誘導したマイトマイシンC処理初代胚性
繊維芽細胞の支持層上で行なった。微細操作の前少なくとも1週間は支持細胞の
ない条件でES細胞を培養した;核移植の時点では培養中に支持細胞は認められ
なかった。
【0118】 支持細胞が存在しないES細胞培養は、15%(v/v)FCS及び1000
U/ml LIFを添加した培地中で行なった。低[FCS]での増殖が望まし
い場合には、FCS濃度を段階的に減少させた。5%(v/v)FCSの濃度に
おいて、細胞は明らかな分化を伴わずに、15%(v/v)におけるとほとんど
同様に活発に分裂した。しかし、FCS濃度が4%(v/v)かそれ以下の場合
には、細胞の増殖は明らかに遅くなった。0.75%または0.5%(v/v)
FCSの培地、ある細胞型を「餓死」させまた細胞周期から追い出す(つまり、
G0に入る)条件、で細胞を培養した場合には、著しい細胞死を生じた。
【0119】 培養から個別のES細胞の懸濁を作成するために、まず細胞をリン酸バッファ
ー食塩液(PBS)で洗浄した。次いでトリプシン(0.025%[w/v])
及びエチレンジアミンテトラ酢酸ジナトリウム塩(EDTA;0.75 mM)
混合物のCa2+/Mg2+を含まないPBS液で処理することにより細胞相互及び
容器からの分離を行なった。細胞を3回緩和な遠心分離(2000g 5分間)
及び再懸濁(2回DMEMで、1回はPBSで)して洗浄し、PBS培地に約1
7/mlの濃度になるように再懸濁した。
【0120】 ES細胞を採取するのに先立って2日間まで(しかし通常は採取の直前)、E
S細胞懸濁の約2μlの滴を12%(w/v)ポリビニルピロリドン(PVP)
(平均分子量、3.6×105)を添加したCZB・H 20μlと混合した;
ここでこれをCZB・H−PVPと呼ぶ。この混合物を微細操作のために顕微鏡
のステージに移した。
【0121】 卵母細胞の脱核。卵母細胞の脱核は、Model MB−Uユニット(Pri
me Tech Ltd.,筑波、茨城県、日本)を使用したピエゾ動力により
卵母細胞透明帯を貫通したマイクロピペット(内径6μm)のなかへ吸引するこ
とにより行なった。ピエゾ電気を使用したこのユニットは、マイクロピペットチ
ップを高速でパルス毎に非常に短距離(約0.5μm)前進させる。パルスの強
度と速度は調節器により調節した、典型的な透明帯貫通のセッティングはそれぞ
れ2及び4である。
【0122】 成熟卵母細胞は、卵母細胞採取のそれぞれ64及び13−16時間前に5U妊
娠雌ウマ血清ゴナドトロピン(PMSG)及び5Uヒト絨毛ゴナドトロピン(h
CG)の連続腹腔内投与により過排卵させられた8−12週齢のB6D2F1マ
ウス雌の輸卵管から採取した。卵母細胞は、0.1%(w/v)ウシ精巣ヒアル
ロニダーゼ(300U/mg,ICN Biochemicals Inc.,
Costa Mesa,CA)を含有する CZB・H中で25−30℃におい
て5−10分間処理して取り巻く小丘細胞から切り離した。小丘細胞を取り除い
た卵母細胞は、ピペットを使用して連続的に移すことにより、4回CZB・H(
ヒアルロニダーゼを含まない)で洗浄した。次いで、洗浄した卵母細胞は、微細
操作のために調製した、水を飽和した、37oCで4%(v/v空気中)CO2
平衡させた鉱油(E.R.Squibb and Sons,Princeto
n,NJ)下のCZB(10−30μl)のなかに入れた。
【0123】 小丘を含まない卵母細胞の群(通常15−20)を顕微鏡ステージ上の5μg
/mlサイトカラシンBを含むCZB・Hの滴の中に移した。微細手術を受ける
卵母細胞は穴あけピペット及び脱核ピペットにピエゾパルスを数回適用して「コ
アになった」透明帯によって保持される。mII染色体−紡錘体複合体(透明領
域として認めることができる)は卵母細胞細胞質の最少容量でピペット中へ吸引
した。比較的高温度(30℃近く)ではその透過性が増すためmII板は見分け
易くなる。一群の全卵母細胞の脱核(約10分間を要す)の後に、サイトカラシ
ンBを含まないCZB中に移し、再び操作を行なうために顕微鏡ステージに戻す
前に2時間までの間37℃に維持した。
【0124】 マイクロインジェクションによるES細胞核の脱核卵母細胞への移植。ここで
、ES細胞核は上記のように調製された脱核卵母細胞の中に移植される。この移
植は、卵母細胞の脱核に使用したのと同じマイクロピペットで行なうことが好ま
しい。
【0125】 脱核卵母細胞中にドナー核をマイクロインジェクションするために、プラステ
ィック皿(100mm×15mm;Falcon Plastics,Oxna
rd,CA,カタログ番号1001)のカバー(厚さ約5mm)を利用してマイ
クロインジェクションチャンバーを作製した。2つの丸い小滴及び1つの長い滴
を有する列を一つかそれ以上皿の中心線に沿って配置した。最初の滴(約2μl
;2mm径)、マイクロインジェクションピペットの洗浄用、はCZB・H−P
VPである。二番目の滴(約2μl;2mm径)はCZB・H−PVP中にドナ
ー核細胞の懸濁を含んでいる。三番目の(長い)滴(約6μl;2×6mm)、
脱核卵母細胞用、はCZB・Hである。滴を含めて皿全体を鉱物油(Squib
b)の中に沈めた。微細操作に備えて、Hoffmanコントラスト変換光学系
を装着した倒立顕微鏡のステージの上に皿を置いた。
【0126】 ドナー細胞核の卵母細胞へのマイクロインジェクションはピエゾ電気作動マイ
クロインジェクションにより行なった。核をESドナー細胞から取出し、核から
細胞質性物質が大部分見えなくなるまでマイクロピペット(内径約7μm)に吸
引及び排出を行なった。これは核成分に細胞質が混入するのを防ぐのに役立つ。
ある場合には、ピエゾパルス(低強度セッティング)の少数回(典型的には1回
)の適用によりドナー細胞の形質膜を破ることが必要であった。核膜の破裂が生
じた場合は、非染色体核質成分を洗い流すことができた。
【0127】 個々の核は、別々の脱核卵母細胞に、ピペットに抽出してから5−10分以内
にマイクロインジェクションした。核移植の操作は、通常脱核卵母細胞を含む滴
のなかにマイクロピペットを移動させる前に数個(典型的には7個まで)の細胞
の核を取出しマイクロピペットの中に裸の核の列を作ることにより加速すること
ができた。
【0128】 脱核卵母細胞を顕微鏡ステージ上の5μg/mlサイトカラシンBを含むCZ
B培地の滴のなかに入れた。脱核卵母細胞の透明帯を固定ピペットのチップに接
着させ、緩和に吸引することにより場所に固定した。注入ピペットのチップを真
っ直ぐに進め、透明帯にぴったりと接着させた。数回のピエゾパルス(例えば、
強度1−2、速度1−2)を適用し、その中の弱い引圧を保って、ピペットを進
めた。ピペットのチップが透明帯を貫通したとき、ピペットの中に生じた帯物質
の柱状のコアを卵周囲空間に排出した。注入ピペット内(典型的には迅速に続け
て採取した7核までを含む)の最も前にあるドナー核を、針チップの近くまで進
めた。今度は、ピペットを、そのチップが卵母細胞の反対側の膜にほとんど近づ
くまで、機械的に進めた。これにより脱核卵母細胞の形質膜(透明帯)に深い窪
みをつくった。窪んだ透明帯は1または2ピエゾパルス(典型的には、強度1−
2、速度1)の適用により穿孔し、ES細胞核成分を<1plの随伴培地と共に
卵質中に排出した。ピペットを静かに引き抜き、卵細胞質中に核を残した。各脱
核卵細胞に1個の核を注入した。この方法より約15−20個の脱核卵母細胞に
対して典型的には10−15分でマイクロインジェクションを行なった。インジ
ェクションはすべて通常25−30℃の範囲の室温で行なった。
【0129】 卵母細胞活性化。ES細胞培養は、典型的に細胞周期の異なる段階にある細胞
を含んでいる、ある細胞は2n細胞に代表的な2C相補体DNAを含み、他の細
胞はDNA合成の複製過程(S期)を終えて細胞分裂に備えて二倍量(4C D
NA)を含んでいる。このDNA含量の相違は本発明方法では予期されており、
したがって核移植後の再構成細胞の処理を変える必要がある。細胞周期の異なる
段階にある細胞(例えば、異なるDNA含量をもつ)の区別は次のようなことで
ある;ここでは2C DNAを有する比較的小さい径(10−12μm、「小」
と呼ぶ)の細胞と4C DNAを有する比較的大きな径(16−18μm、「大
」と呼ぶ)の細胞の関係を述べる。
【0130】 小ES細胞の核を受け入れた卵母細胞に対応する再構成細胞を4%(v/v)
CO2を含む空気中飽和湿度37℃で平衡した鉱物油下のCZB中で1−3時間
培養した。次いでこの細胞を、10mMSrCl2及び5μl/mlサイトカラ
シンB(ジメチルスルホキシド[DMSO]100倍溶液から加えた)を含むC
2+除去CZBに6時間移した。この処理により発生分化活性化を誘導し、他方
では原形質分離、したがって偽極体の形成による染色体損失を阻止した。6時間
後、細胞をSr2+/サイトカラシンBを含まない新鮮CZBに移し、4%(v/
v)CO2を含む空気中飽和湿度37℃で培養を続けた。このようにして、S−
期完了後の正常減数分裂は6時間後に妨げられることはなかった。
【0131】 大ES細胞の核を受け入れた卵母細胞に対応する再構成細胞は、4%(v/v
)CO2を含む空気中飽和湿度37℃で平衡した鉱物油下のCZB中で2時間ま
での間培養した。活性化前培養により、分裂及び原形質分離を再開する刺激に先
立って機能的に完成すべき高分子成分(例えば、紡錘微小管)の合成を行なわせ
る。分裂の再開(活性化)は、4%(v/v)CO2を含む空気中飽和湿度37
℃で10mMSrCl2を含むCa2+除去CZBに1時間細胞を移すことにより
開始した。この培地はサイトカラシンBあるいはその他の原形質分離阻害剤を含
んでいないことに注意する。したがって、この活性化により細胞は偽2次極体の
排出を行なう。移植したESドナー細胞核は4C DNAを含んでいたので、そ
の結果得られた姉妹クロマチドの分離及び染色体損失により、胚は2CゲノムD
NAを回復した。
【0132】 活性化に続いて、胚培養のために再構成細胞を4%(v/v)CO2を含む空
気中飽和湿度37℃で新鮮CZBに移した。このようにして発生した胚は活性化
後約5時間には通常2偽前核及び1個の偽2次極体を持っている。
【0133】 細胞周期段階に基づくES核ドナー細胞の選択。われわれは、小細胞はG1期
(2C DNA)にあり、他方大細胞はG2/M期(後S期、4C DNA)に
対応すると推測した。これは迅速なそして非侵襲的な細胞倍数性の物差しを提供
する。細胞周期段階の診断に応じて転写指示するプロモーターの管理の下に、破
壊せずに測定し得るレポーター遺伝子(例えば、変異緑色蛍光タンパク質、EG
FP)の誘導体を操作導入したES細胞系を使用することにより確認される。そ
のような例としては、サイクリンD(細胞周期のG1期に限定される)あるいは
サイクリンB2(細胞周期のM期に限定される)を指示するものがある。このレ
ポータータンパク質はサイクリンタンパク質に存在するような標的破壊配列(破
壊ボックス)を含んでいる。このことは、半減期が短く、そしてその存在がタン
パク質の寿命よりもプロモーター活性(したがって細胞周期段階)を反映するこ
とを確実にしている。レポーターがEGFPである場合には、ある所与の細胞周
期段階にある細胞は、長波長蛍光顕微鏡を使用して検査することにより、非同期
培養の中から容易に非侵襲的に同定することができる;細胞周期段階特異的プロ
モーターが活性な細胞のみが蛍光を発するので、直ちに核移植のドナーとして同
定及び選択することができる。
【0134】 最後に、R1 ES細胞を、3μg/mlの微小管分解剤ノコダゾール(Si
gma)に12時間曝露した。このように処理した培養は、処理をしていない培
養に比較すると、劇的に変化し、多数の丸い、浮かぶ細胞が現れた。この処理は
、細胞にM期の完了をさせないのでES細胞培養を同期させるのに役立つた。S
期における複製DNA合成の非減数過程を完了しているので、この細胞のゲノム
含有量は4Cである。
【0135】 胚移植。水飽和、4%(空気中v/v)CO237℃で平衡した鉱物油(Sq
uibb)の下のCZB(10−30μl)滴中で3.5−4日の培養の後、桑
実胚/胚盤胞を検査し、適しているならば、精管切除CD−1雄と3日前に交配
したレシピエント白色CD−1雌マウスの子宮角に移植した;これにより、胚発
生分化と子宮内膜との適切な協調が保たれる。雌には出産させ、代理仔を養育さ
せるか、あるいは交配から19.5日後に帝王切開により仔を取出し、適当な哺
乳里親に養育させた。
【0136】 例2:ES細胞核を用いたクローニング。 実験は、脱核卵母細胞に種々のES細胞系、マウスの近交系及びF1系統から
元来誘導した代表的な、樹立細胞系、の細胞核をマイクロインジェクションして
行なった。核ドナーES細胞を種々の条件で培養した実験における仔の発生を記
述し、さらにことなる倍数体のドナー細胞を用いた本発明方法を示す。
【0137】 脱核卵母細胞へ核移植した後のES細胞染色体の発育。実験系1(図2)にお
いて、E14核を受け入れた脱核卵母細胞は活性化刺激を受けていない。したが
って、その再構成卵母細胞はmIIに止まっていた。小細胞の核をマイクロイン
ジェクションした2−4時間後に調べたところ、51%の再構成卵母細胞は散在
する状態の凝縮染色体を有していた。これに対して、大細胞の核を注入された卵
母細胞の68%は、成熟M期II卵母細胞における母体由来染色体の配置に似た
正規配置に並んだ凝縮染色体を有していた。
【0138】 実験系2(図3)において、核移植の後活性化刺激(ストロンチウムイオン、
Sr2+)した再構成細胞を使用した。小及び大の細胞ではDNA含量に潜在的な
違いがあることを予想して、各細胞型に対する核移植プロトコールを適用した。
小細胞の核で再構成した卵母細胞は核のマイクロインジェクションの〜4時間後
にCZB培地から取出し、Sr2+(活性化するため)及びサイトカラシンB(原
形質分離を阻害するため)を含む培地に移した。それが存在しないと、ドナー染
色体は偽2次極体へほとんど無秩序に排出され、生存不可能な低倍数胚を発生し
てしまうので、サイトカラシンBを加えた。活性化から〜6時間後に調べた小細
胞核から発生させた胚の78%は2個の偽前核を含んでいた(図3)、多分細胞
内の染色体は前核を形成する前に通常2個の塊を形成するからであろう。
【0139】 これに対して、大ES細胞の核で再構成した卵母細胞の活性化は、サイトカラ
シンBを存在させずに行なった、というのは原形質分離と偽2次極体の排出によ
り多くの場合に再構成細胞中に正常2C DNAを確立すると期待したからであ
る。サイトカラシンBが存在しない活性化の後、1細胞胚の68%は1個の偽前
核を有しておりそして偽2次極体を排出した(図3)。
【0140】 E14細胞からクローン化したマウスの妊娠期間発育。図4には、1765個
の卵母細胞を異なるサイズのまたことなる濃度のFCSの存在下においたE14
細胞の核を使用して再構成した、実験系3から得られた結果を要約した。桑実胚
/胚盤胞段階に発生分化することを指令するES細胞核の能力に対して、培養液
中のFCS濃度が著しい影響を与える証拠は見当たらなかった。
【0141】 小細胞の核を移植した後、活性化卵母細胞の17%が桑実胚/胚盤胞を作った
。適当な代理母に移植した後、生じた胚の62%が着床し、活性化後20日(d
pa)で9胎児を生じた;4匹の生存仔が帝王切開により得られ、そして5胎児
は15−17dpaで発育を停止した。
【0142】 生産仔の1匹は里親がいなかったので安楽死させた、そして2匹は出生後24
時間以内に死亡した。1匹のマウス(「Hooper」と呼ばれた)は生存し、
チンチラ被毛色及びピンク眼を持つ雄である。このような特徴は、E14が12
9/Olaマウス系統の雄から由来したXY細胞系であることから、予測されて
いた;129/Olaマウスはチンチラ被毛色及びピンク眼を持っている。出産
まで成長した仔はすべて色素のない眼を持った雄であった。Hooperは、C
D−1雌と交配して、3腹に合計33匹の外見的に正常な仔をつくった。
【0143】 大細胞の核の移植後、活性化に成功した卵母細胞の37%はインビトロ培養の
3.5日後に桑実胚/胚盤胞の段階まで発育した。移植した胚の67%は子宮に
着床した。1匹の充分に成長し、外見的に異常のない仔及び3匹の死亡胎児(1
5−17dpaに発育を停止)は帝王切開により20dpaに取出した。ES細
胞由来クローン化マウスの胎盤及びHooperの耳バイオプシーからゲノムD
NAを単離し、サンプルをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)にかけ多形マーカー
及びY染色体特異的遺伝子、Zfy、の存在を分析した。この分析によりさらに
クローン仔のE14起源を確認した。
【0144】 この効率の程度は、本発明方法が容易に再現できることを意味する。しかし、
方法の効率は、胚が本発明方法にしたがう核移植により発生したES細胞及びE
S細胞由来胚性細胞の混合から作られる、本発明の追加的な態様の組み合わせに
おいて増加することができる。
【0145】 R1 ES細胞から核移植後の胚の発育。実験系4(図5)において、129
/Sv×129/Sv−CpのF1雑種から誘導した細胞系R1を用いた108
7核移植を行なった。クローニング成績にFCS濃度の顕著な影響はなかった。
しかし、クローニングの効率はE14細胞よりR1細胞のほうが著しく高かった
。314個の移植桑実胚/胚盤胞から、26生産クローン仔(8.3%)を得た
。そのクローン起源はPCR分析により確認された。
【0146】 E14大細胞の核は適切な実験条件の下で移植後の完全発育を支持することが
できたので、5番目の実験系(系5)ではR1細胞を使用して類似の実験を行な
った。単純にR1大細胞を選び出したが、核移植の12時間前に培養をノコダゾ
ールに曝露し、4C DNAを含むように培養中の細胞をM期に同期させた。得
られた生存仔の率はR1小細胞から得られた対応する値から著しく異なるもので
はなかった。このことは、核ドナーの倍数性も、細胞周期段階もクローニングに
対して重要なパラメーターではないことを示唆している。
【0147】 例3:遺伝子ターゲティングES細胞の核を使用したクローニング この方法の有用性は目的突然変異を持つES細胞系から仔を発生させることに
使用することによって説明される。
【0148】 遺伝子ターゲティングES細胞の生成。目的突然変異を含むES細胞系はE1
4から誘導した。この系統(Zheng&Mombaertsにより記載;出版
準備中)はM72→VRi2−IRES−tauGFP構築を電気穿孔でE14
細胞に導入して発生させ、続いて記載のように培養した(Mombaerts,
et al.,Cell 87,675[1996])。突然変異を持っている
一細胞系、T15、は体組織及び胚盤胞注入による生殖系の大規模なコロニー形
成をもったキメラを生じた。本発明のクローニング方法における核ドナーを供給
するためにこの系の能力を評価した。
【0149】 遺伝子ターゲティングE14細胞系、T15、からクローン化したマウスの発
育。小T15細胞(推定平均径約12μm及び2n,2Cの倍数を持つ)を選び
、その核を上記のように再構成細胞をつくるために核移植した。252細胞をこ
の方法のT15核移植により再構成し、そしてインビトロで培養した。3.5日
の培養後、91個(36%)は桑実胚/胚盤胞段階に発育した。これを発育を継
続することができる偽妊娠代理母に移植した。
【0150】 交尾後19.5日の代理母の帝王切開により、8死亡胎児(移植胚の9%)及
び1生産クローンを認めた。このことは、目的突然変異を含む細胞の核はここに
記載した本発明の方法によりクローン仔を発生するために使用することができる
ことを示している。
【0151】 例4:ES細胞様細胞の誘導。 胚は、インビトロ受精によるか、あるいは自然交配及び採取により作製する。
インビトロにおける胚盤胞までの着床前胚の発育は、Gardner,et a
l.,Fertil.Steril.69,84(1998)により記載されて
いるようにG1.2またはG2.2培地中で行なう。選んだ胚盤胞のICMの細
胞を既述(Thomson,et al.,Proc.Nad.Acad.Sc
i.USA 92,7844[1995];Solter,&Knowles,
Proc.Nad.Acad Sci.USA 72,5099[1995])
のようにBeWo細胞に対するウサギ抗血清を使用して免疫外科的に単離した。
照射マウス胚性繊維芽細胞の予め作製した層及び1mlの培養液を入れた10m
mウエル組織培養皿に細胞を個別に入れた。培養液は、20%FCS(Hycl
one),1mMグルタミン、0.1mMβ−メルカプトエタノール(Sigm
a)及び1%非必須アミノ酸ストック(GIBCO−BRL)を添加した80%
ダルベッコ修正イーグル培地(ピルビン酸塩除去、高グルコース処方、;Gib
co−BRL)からなる。
【0152】 9−15日さらに培養した後、1mMエチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA
)を含みCa2+及びMg2+を含まないリン酸バッファー食塩液に曝露するか、ジ
スパーゼに曝露するか、あるいはパスツールピペットで機械的に分散することに
より、内部細胞塊から由来した生成物を典型的には3か4細胞を含む塊に分離す
る。この小塊を新鮮な支持細胞の入った組織培養ウエルに移す。更に生育した後
、一様で、分化していない形態を持った個々のコロニーを選び、再度上記のよう
に分離した。
【0153】 形態により識別できる初代ES細胞様コロニーを継代し、タイプIVコラゲナ
ーゼ(1mg/ml; GIBCO−BRL)に曝露するか、あるいはパスツー
ルピペットで個別のコロニーを選択して、拡大した。
【0154】 最適でない培養条件では、その増殖速度を増加してインビボにおける発育を減
少させる核型変化、染色体再編成及び/またはその他の変異を行なったES細胞
変種を生じることが知られている。各ES細胞様細胞系は2−7代で核型が確認
され、異常な核型は廃棄した。
【0155】 最適培養条件は当業者には知られている。全ての培養液、添加物、プラスチッ
ク製品などは、エンドトキシンを含んでいてはならない。ES細胞様細胞培養は
ウシ(Cibelli,et al.,Theriogenology 47,
241[1997])、ハムスター(Doetschman,et al.,D
ev.Biol.127,224[1988])、ヒト(Thomson,et
al.,Science 282,1145[1998])、及びウサギ(S
choonjans et al.,Mol.Reprod.Dev.45,4
39[1996])について記述されている。
【0156】 ここに引用した全ての特許及び参照文献は参照として取り入れた。さらに、Wa
kayama et al.,Proceeding National Ac
ademy of Sciences,U.S.A.,96(26):1498
4−14989(December 21,1999)をそっくりそのまま参照
に特別に取り入れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、本発明のクローニング手順を図式的に示したものであり、本文中で説
明する。
【図2】 図2は、脱核卵母細胞にE14核を挿入したが活性化刺激を行なわない実験の
結果を示した表である。
【図3】 図3は、脱核卵母細胞にE14核を挿入し、核移植後にストロンチウムイオン
で活性化した実験の結果を示した表である。
【図4】 図4は、1765個の卵母細胞を異なる大きさのE14細胞の核を使用して再
構成し、異なる濃度のFCSで増殖させた実験結果を要約した表である。
【図5】 図5は、129/SV×129/SV−CPのF1雑種から由来した細胞系R
1で1087核移植を行なった実験結果を示した表である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,CY, DE,DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,I T,LU,MC,NL,PT,SE,TR),OA(BF ,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GW, ML,MR,NE,SN,TD,TG),AP(GH,G M,KE,LS,MW,MZ,SD,SL,SZ,TZ ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ, MD,RU,TJ,TM),AE,AG,AL,AM, AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,B Z,CA,CH,CN,CR,CU,CZ,DE,DK ,DM,DZ,EE,ES,FI,GB,GD,GE, GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,J P,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR ,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK, MN,MW,MX,MZ,NO,NZ,PL,PT,R O,RU,SD,SE,SG,SI,SK,SL,TJ ,TM,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ, VN,YU,ZA,ZW (72)発明者 ペリー、アンソニー、シー.エフ. アメリカ合衆国、マサチューセッツ、ボス トン、 ウォーレン アベニュー 29 (72)発明者 モムバーツ、ピーター アメリカ合衆国、ニューヨーク、ニューヨ ーク、イー.シックスティサード 504、 ナンバー 25 アール (72)発明者 ワカヤマ テルヒコ アメリカ合衆国、マサチューセッツ、ウス ター、 メイン ストリート 600、ナン バー1203 Fターム(参考) 4B024 AA01 AA10 AA20 BA80 CA20 DA02 GA12 GA18 GA25 GA27 HA20 4B065 AA90X AA90Y AA91X AA91Y AB01 AB10 AC20 BA04 BA16 BA24 BA30 BB01 BD50 CA43 CA44

Claims (72)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)培養細胞の核を採取する; (b)細胞を再構成するために(a)の核または少なくとも染色体を含むその部
    分を脱核卵母細胞にマイクロインジェクションする;及び (c)再構成した細胞を胚として発育させる、 段階からなる胚をクローニングする方法。
  2. 【請求項2】 マイクロインジェクションがピエゾ電気作動マイクロインジ
    ェクションである請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 胚を生存可能な仔に発育させる請求項1に記載の方法。
  4. 【請求項4】 胚を生存可能な仔に発育させる段階がさらに胚を雌代理レシ
    ピエントに移植する中間段階を含む請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 培養細胞が胚性幹(ES)細胞である請求項1に記載の方法
  6. 【請求項6】 ES細胞がES細胞系由来である請求項5に記載の方法。
  7. 【請求項7】 ES細胞系がF1マウス系統由来である請求項6に記載の方
    法。
  8. 【請求項8】 ES細胞系がR1である請求項7に記載の方法。
  9. 【請求項9】 ES細胞系がマウス近交系由来である請求項6に記載の方法
  10. 【請求項10】 ES細胞系がE14である請求項9に記載の方法。
  11. 【請求項11】 培養細胞がES細胞様細胞である請求項1に記載の方法。
  12. 【請求項12】 ES細胞様細胞が、霊長類、ヒツジ、ウシ、ブタ、クマ、
    ネコ、ヤギ、イヌ、ウマ、クジラ、げっ歯類、鳥類、両生類、爬虫類及び魚類を
    含む群から選択された動物から由来した請求項9に記載の方法。
  13. 【請求項13】 培養細胞が胚性生殖(EG)細胞である請求項1に記載の
    方法。
  14. 【請求項14】 EG細胞が、霊長類、ヒツジ、ウシ、ブタ、クマ、ネコ、
    ヤギ、イヌ、ウマ、クジラ及びネズミのようなげっ歯類を含む群から選択された
    哺乳動物から由来した請求項12に記載の方法。
  15. 【請求項15】 哺乳動物がブタである請求項15に記載の方法。
  16. 【請求項16】 段階(a)の細胞核が2n染色体を有する請求項1に記載
    の方法。
  17. 【請求項17】 段階(a)の細胞核が2−4CゲノムDNAを含有する請
    求項1に記載の方法。
  18. 【請求項18】 段階(a)の細胞が遺伝的に変換されている請求項1に記
    載の方法。
  19. 【請求項19】 遺伝的変換が遺伝子ターゲティングによって行なわれてい
    る請求項18に記載の方法。
  20. 【請求項20】 細胞核がES細胞由来である請求項16に記載の方法。
  21. 【請求項21】 細胞核がES細胞由来である請求項17に記載の方法。
  22. 【請求項22】 遺伝的に変換されている細胞がES細胞である請求項18
    に記載の方法。
  23. 【請求項23】 遺伝的変換が遺伝子ターゲティングによって行なわれてい
    る請求項22に記載の方法。
  24. 【請求項24】 段階(b)の脱核卵母細胞が第二減数分裂の中期で停止し
    ている請求項1に記載の方法。
  25. 【請求項25】 細胞核またはその部分を挿入する前に、またはその間に、
    あるいはその後に卵母細胞の活性化をする段階をさらに含む請求項1に記載の方
    法。
  26. 【請求項26】 挿入段階の後約0−6時間に活性化段階を行なう請求項2
    5に記載の方法。
  27. 【請求項27】 細胞核またはその部分を挿入後約1−3時間に活性化段階
    を行なう請求項25に記載の方法。
  28. 【請求項28】 活性化段階が電気活性化あるいは化学的活性化剤への曝露
    からなる請求項25に記載の方法。
  29. 【請求項29】 化学的活性化剤が、エチルアルコール、精子細胞質因子、
    卵母細胞受容体リガンドペプチド類似体、薬理的Ca2+遊離促進剤、Ca2+イオ
    ノフォア、ストロンチウムイオン、リン酸タンパク質シグナル伝達調節剤、タン
    パク質合成阻害剤、またはそれらの組合せからなる群から選択されている請求項
    28に記載の方法。
  30. 【請求項30】化学的活性化剤がカフェイン、Ca2+イオノフォアA231
    87、エタノール、2−アミノプリン、スタウロスポリン(staurospu
    rine)、スフィンゴシン、シクロヘキサミド、イオノマイシン、6−ジメチ
    ルアミノプリン、可溶性受精卵母細胞活性化因子I(SOAF−IS)あるいは
    それらの組合せからなる群から選択されている請求項28に記載の方法。
  31. 【請求項31】 活性化剤がSr2+を含んでいる請求項28に記載の方法。
  32. 【請求項32】 挿入段階(b)の前あるいはその後の時間間隔中に卵母細
    胞の微小管及び/またはミクロフィラメント集合を破壊する段階をさらに含む請
    求項1に記載の方法。
  33. 【請求項33】 時間間隔が約0−6時間である請求項32に記載の方法。
  34. 【請求項34】 微小管集合がノコダゾールまたはジメチルアミノプリンに
    よって阻害される請求項32に記載の方法。
  35. 【請求項35】 ミクロフィラメント集合がサイトカラシンB,サイトカラ
    シンD、ジャスプラキノリド、ラクトランクリンA,またはその組み合わせによ
    り破壊される請求項32に記載の方法。
  36. 【請求項36】 段階(b)が卵母細胞の細胞質の中に細胞核の部分に加え
    て試薬を挿入することをさらに含む請求項1に記載の方法。
  37. 【請求項37】 試薬が外来性タンパク質、外来性タンパク質の誘導体、抗
    体、薬理的作用物質及びその組み合わせからなる群から選択されている請求項3
    4に記載の方法。
  38. 【請求項38】 試薬が外来性核酸または核酸誘導体である請求項37に記
    載の方法。
  39. 【請求項39】 (a)ES細胞の核を採取する; (b)再構成細胞を形成するために脱核卵母細胞に染色体を含むES細胞核の部
    分をマイクロインジェクションする; (c)活性化の前に0−6時間再構成細胞をインキュベートする; (d)再構成細胞の発育を活性化する;及び (e)再構成細胞を発育させる、 段階からなる分化細胞をクローン化する方法。
  40. 【請求項40】 段階(a)の核が2Cである請求項39に記載の方法。
  41. 【請求項41】 段階(a)の核が2−4Cである請求項39に記載の方法
  42. 【請求項42】 段階(e)の再構成細胞をさらに胚に発育させる請求項3
    9に記載の方法。
  43. 【請求項43】 活性化段階(d)が化学的活性化剤に曝露することを含む
    請求項39に記載の方法。
  44. 【請求項44】 活性化剤がSr2+を含む請求項43に記載の方法。
  45. 【請求項45】 曝露が約6時間以内の時間である請求項43に記載の方法
  46. 【請求項46】 活性化段階(d)に微小管及び/またはミクロフィラメン
    ト集合の阻害剤が存在する請求項39に記載の方法。
  47. 【請求項47】 微小管及び/またはミクロフィラメント集合の阻害剤がサ
    イトカラシンBを含む請求項45に記載の方法。
  48. 【請求項48】 (a)細胞の核を採取する; (b)再構成細胞を形成するために脱核卵母細胞に少なくとも染色体を含む(a
    )の細胞核の部分をマイクロインジェクションする; (c)再構成細胞を桑実胚/胚盤胞に発育させる; (d)ES細胞を採取する; (e)(d)のES細胞を(c)の桑実胚/胚盤胞の中に導入する; (f)(e)の再構成胚を発育させる、 段階からなる分化細胞をクローン化する方法。
  49. 【請求項49】 段階(f)の再構成細胞をさらに生存可能な胚に発育させ
    る請求項48に記載の方法。
  50. 【請求項50】 段階(a)の細胞がES細胞である請求項48に記載の方
    法。
  51. 【請求項51】 ES細胞がインビトロで培養された請求項50に記載の方
    法。
  52. 【請求項52】 段階(a)の細胞が段階(d)のES細胞と同じ培養から
    由来するES細胞である請求項48に記載の方法。
  53. 【請求項53】 請求項1に記載の方法により作製された分化細胞。
  54. 【請求項54】 その核染色体が培養細胞の核から由来する請求項1の方法
    により作製された動物。
  55. 【請求項55】 培養細胞がES細胞であった請求項54に記載の方法によ
    り作製された動物。
  56. 【請求項56】 ES細胞が組換えDNAを含みそして生じた動物が組換え
    DNAを含む請求項54に記載の動物。
  57. 【請求項57】 組換えDNAがゲノムに取り込まれている請求項54に記
    載の動物。
  58. 【請求項58】 組換えDNAが遺伝子ターゲティングにより導入されてい
    る請求項57に記載の動物。
  59. 【請求項59】 動物が哺乳類、両生類、魚類及び鳥類から選択されている
    請求項57に記載の動物。
  60. 【請求項60】 動物が哺乳動物である請求項57に記載の動物。
  61. 【請求項61】 哺乳動物が霊長類、ヒツジ、ウシ、ブタ、クマ、ネコ、ヤ
    ギ、イヌ、ウマ、クジラ及びネズミからなる群から選択されている請求項60に
    記載の動物。
  62. 【請求項62】 哺乳動物がマウスである請求項61に記載の動物。
  63. 【請求項63】 哺乳動物がブタである請求項61に記載の動物。
  64. 【請求項64】 哺乳動物が雌ウシである請求項61に記載の方法。
  65. 【請求項65】 (a)再構成細胞を形成するためにES細胞の核と脱核卵
    母細胞を結合する; (b)結合段階の前に、その間に、またはその後に、卵母細胞の細胞質の中に試
    薬を挿入する;そして (c)試薬処理再構成細胞を発育させる、 段階を含む胚発育を調節する方法。
  66. 【請求項66】 段階(c)の再構成細胞をさらに生存可能な胚に発育させ
    る請求項65に記載の方法。
  67. 【請求項67】 段階(b)の試薬が外来性タンパク質、外来性タンパク質
    の誘導体、抗体、薬理的作用物質、及び外来性核酸、外来性核酸の誘導体あるい
    はその組み合わせからなる群から選択されている請求項65に記載の方法。
  68. 【請求項68】 ES細胞がDNAの正常量の2倍含有している請求項65
    に記載の方法。
  69. 【請求項69】 マイクロインジェクションがピエゾ電気作動マイクロイン
    ジェクションである請求項68に記載の方法。
  70. 【請求項70】 生じた胚を分解してその細胞を1以上の細胞系に分化させ
    る請求項1に記載の方法。
  71. 【請求項71】 細胞系が心筋細胞、神経細胞あるいは造血細胞である請求
    項1に記載の方法。
  72. 【請求項72】 請求項70に記載の方法により作製された細胞。
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