JP2002318992A - 分子計算装置、分子計算計画設計装置、分子計算方法及び分子計算プログラム及び分子計算結果解析プログラム - Google Patents

分子計算装置、分子計算計画設計装置、分子計算方法及び分子計算プログラム及び分子計算結果解析プログラム

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JP2002318992A
JP2002318992A JP2001398465A JP2001398465A JP2002318992A JP 2002318992 A JP2002318992 A JP 2002318992A JP 2001398465 A JP2001398465 A JP 2001398465A JP 2001398465 A JP2001398465 A JP 2001398465A JP 2002318992 A JP2002318992 A JP 2002318992A
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molecule
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Akira Suyama
明 陶山
Nobuhiko Morimoto
伸彦 森本
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Mitsui Knowledge Industry Co Ltd
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Mitsui Knowledge Industry Co Ltd
Olympus Optical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】従来の電子コンピュータよりも高速に計算を実
行する。 【解決手段】電子計算部21と分子計算部22とを具備
する分子計算装置であって、電子計算部21は通常の計
算処理に加えて、実質的に分子計算部22の機能を制御
し、その制御の下で分子による演算が実施される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、核酸分子を使用す
る新規な分子計算装置、分子計算計画設計装置、分子計
算方法及び分子計算プログラム及び分子計算結果解析プ
ログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】半導体シリコンを用いた計算機はその誕
生以来大きく性能を伸ばし、安価に複雑な計算をこなし
て人類に貢献してきた。これら半導体シリコンを用いた
計算機は主に0と1の2値で計算を進めるノイマン型計
算機である。
【0003】コンピュータ科学の分野において研究対象
として有名な問題の中にNP完全問題という問題があ
る。このようなNP完全問題の例は巡回サラリーマン問
題、蛋白質の3次元構造の予想などである。このような
問題を完全に解く従来の方法として代表的な2つが挙げ
られる。1つは、全ての可能な解を問題に当てはめて、
その問題が解けるか否かを検証していく方法である。他
の一つは、近似解を求めることによって問題を解く方法
である。
【0004】前者の方法では、解答を得るために要求さ
れる計算時間は、問題の規模に比例して指数関数的に増
加していく。また、後者の方法は、このような計算を高
速に行うために提案されたものである。近似解を求める
ためのアルゴリズムがいくつか提案されてきた。これら
のアルゴリズムでは厳密解が求まるとは限らず、解を見
落とす可能性がある。
【0005】前者の方法によって、全ての解を高速に求
めるためには、現在の技術では並列化した多数の電子計
算機を並行して計算することが考えられる。ところが計
算機数が増加すれば消費電力が増え、より広い設置場所
も要求される。また計算機を並列化するには計算機同士
の通信をどのようにするか、どんな接続法を採用するか
などの技術的課題も多い。
【0006】一方、ノイマン型計算機で解くのが難しい
問題を解くために、1994年にエイデルマン(Adl
eman)によってDNAコンピューティング(DNA
computing)と称される新たな計算機パラダ
イムが提案された(Science,266,1021
−4)。
【0007】エイデルマンの思想は、DNA分子を、情
報を記録したテープと見なし、情報処理の主体として酵
素を用いることによって、チューリング機械の計算過程
をDNA分子を用いて実行するというものである。即
ち、エイデルマンは小規模なハミルトン経路問題を解く
ために、DNAを用いて経路に対応するDNAを形成さ
せる。そして、そのDNAの中から解のDNAを選択す
る方法を用いた。また、DNA分子で加算を行うという
グアニエリ(Guanieri)らによる報告もある
(Science,273,220−3)。このように
分子による演算の可能性についての探索が行われてき
た。
【0008】DNAを演算に用いると次のような点で有
利であることが明らかになっている。例えば、数十塩基
程度の短いDNA分子の1pmol(=10−12mo
l)は、100μLの緩衝溶液に容易に溶解する。その
上、溶解液中の分子数は約6×1011個にものぼる。
従って、この膨大な数の分子が相互作用により解を表す
分子を形成するならば、従来のコンピュータを用いて行
う並列計算するよりも遙かに大きな並列数で解を求める
ことができる。また、1mLにも満たない溶液中でもこ
の反応は行えるため、その溶液の加温冷却を行ってもエ
ネルギーはほとんど消費されない。これらのDNAを使
った計算機は、多変数の大きな問題に適用したときにノ
イマン型計算機の処理速度を凌駕すると予測される。し
かしながら、現在のところ、実用化に耐えることがで
き、且つ、効果的にDNA分子により分子計算を行える
装置は開発されていない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】以上のような状況に鑑
み、本発明の目的は、基本的には、分子演算の並列性を
利用して従来の電子コンピュータよりも高速に計算を実
行することが可能な手法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の課題は、例えば以
下の手段により実現される。即ち、分子の化学反応によ
り分子計算を実行する分子計算方法であって、分子を核
酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付けて定義さ
れた変数及び定数と、前記符号分子の演算反応に対応付
けて定義された関数により記述されたプログラムを、前
記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反応の反応
制御を行う反応制御部を駆動させるための制御命令に変
換して前記制御命令の手順を生成し、前記制御命令の手
順を前記反応制御部に出力し、前記制御命令の手順に基
づき分子の化学反応の反応制御を行う方法である。
【0011】ここで、反応制御には、反応を生じさせる
操作(PCR反応等)の制御と、反応を生じさせる付随
的な操作(混合等)の制御を含む。この方法により、従
来の電子コンピュータよりも高速に並列計算処理するこ
とが可能である。
【0012】また、このような方法によって、例えば、
遺伝子型や遺伝子の発現の状態を決定すること等も可能
である。
【0013】更に、本発明の更なる目的は、上記方法を
実行するための計算装置を提供することである。上記の
課題は、以下の手段により解決される。即ち、電子計算
部と分子計算部とを具備する分子計算装置であって、前
記電子計算部は通常の計算処理に加えて、実質的に分子
計算部の機能を制御し、その制御の下で分子による演算
が実施される分子計算装置である。
【0014】このような装置は、NP完全問題等の困難
な数学的問題を解くために有利な、超並列計算を高速に
行う分子計算装置として有用である。もちろん、遺伝子
解析にも利用可能である。
【0015】また、上述の方法や装置は、その方法や装
置を実現する電子計算部で利用可能なプログラムや、プ
ログラムプロダクトのみならず、分子計算の実行計画を
作成する実行計画設定手法としても成立する。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の1の側面において、核酸
を用いた情報処理方法を実行するための計算機が開示さ
れる。
【0017】ここで使用する「核酸」とは、cDNA、
ゲノムDNA、合成DNA、mRNA、全RNA、hn
RNAおよび合成RNAを含む全てのDNAおよびRN
A、並びに、ペプチド核酸、モルホリノ核酸、メチルフ
ォスフォネート核酸およびS-オリゴ核酸などの人工合
成核酸を含む。また、ここにおいて「核酸」、「核酸分
子」および「分子」とは交換可能に使用され得る。
【0018】以下、例を用いて本発明を説明する。
【0019】I.分子計算装置 1.概要 本発明の好ましい態様に従うと、核酸を用いた情報処理
方法を実施するための計算装置が提供される。そのよう
な計算装置は、電子計算部と分子計算部とを具備する分
子計算装置であって、前記電子計算部が、実質的に分子
計算部の機能を制御し、その制御の基で分子による演算
が実施される分子計算装置である。分子計算部とは、分
子の化学反応を実行することにより実質的に計算を実行
する部分である。
【0020】本発明の計算装置において基礎となる計算
法は、上述したような分子演算の並列性を利用して分子
計算部が演算を行い、得られたデータを基に、電子計算
部が演算結果を表示する方法である。本発明は、核酸分
子を用いて計算を実施することによって、データの並列
処理や遺伝子解析を効率的に実行する計算装置を開示す
る。また、核酸分子によりデータやプログラムを表現
し、そのプログラムで定義された演算を分子反応に置き
換えて反応を実行することにより、従来の電子コンピュ
ータに比べて桁違いに大きなメモリ容量と高い並列処理
能力を実現する。
【0021】本計算装置を開発するに当たり、まず最初
に、本発明者らは、分子計算機を用いて演算を実行する
ときの計算プログラムの内容を、分子計算部で認識し且
つ実行可能なデータ形式に変更するのが好ましいことに
注目した。具体的には、分子計算部で計算を実施する前
に、予め分子を特定の符号に結びつけた符号分子に変換
する。そして、その変換規則を用いて計算プログラム中
の変数および定数などのデータを自動的に符号分子に変
換しておく。更に、このような変換操作を電子計算部に
おいて行うことが計算装置全体の計算速度の向上のため
に好ましいことを見出した。
【0022】言い換えれば、本発明の分子計算装置は、
分子計算部と電子計算部とが互いに補完的に機能を分担
する計算装置である。従って、使い勝手がよく、その
上、速い速度でNP完全問題を解くことや、核酸分子等
の生体分子の情報解析を直接行うことが可能である。即
ち、本発明の計算装置は、文字の入力や表示、単純な四
則計算が遅いというような分子計算部の欠点を、電子計
算部を用いてカバーする。これにより、計算装置全体と
しての計算速度向上を可能にした。従って、本発明の分
子計算装置は、電子計算機が高速に実現できる機能は電
子計算部が担当し、それ以外の部分を分子計算部が担当
するハイブリッド分子計算装置である。
【0023】本発明の基本となる計算装置を図1に示
す。本発明の計算装置は、電子計算部21及び分子計算
部22に大別される。また、電子計算部21には、デー
タを入力する入力部11及びデータを出力する出力部2
0が接続されている。また、分子計算部22には、デー
タを入力する入力部18及び出力部19が接続されてい
る。
【0024】電子計算部21は一般的な電子コンピュー
タにより実現される。具体的には、演算部14、記憶部
13、入出力制御部12及び通信部23を具備する。演
算部14に記憶部13、入出力制御部12及び通信部2
3が接続されている。また、入出力制御部12は入力部
11及び出力部20に接続されている。更に、その他の
一般的な電子コンピュータの構成要素を具備してもよ
い。演算部14は、例えばCPUなどにより実現され
る。記憶部13は半導体メモリなどにより実現される。
【0025】分子計算部22は、演算部15、記憶部1
6、入出力制御部17及び通信部24を具備する。演算
部15と記憶部16、入出力制御部17、入力部18及
び出力部19は分子や容器、ピペッタなどの反応機器に
より実現される。すなわち、分子の化学反応を実行する
ための装置により実現されるものであり、演算部15、
記憶部16、入出力制御部17などに装置構成が1:1
に対応するものではない。演算部15、記憶部16、入
出力制御部17などの構成は、分子計算部22の分子や
容器、ピペッタなどの反応機器を電子計算部21と同じ
概念として捉えた場合の構成の一例を示している。演算
部15,記憶部16及び入出力制御部17は通信部24
に接続されている。また、入出力制御部17は入力部1
8及び出力部19に接続される。これら分子や反応機器
により、演算とデータの記憶と分子データの入出力制御
とを同時に実現している。
【0026】本発明の計算装置では、電子計算部21が
分子計算部22を制御する。電子計算部21に所望する
プログラムが入力されると、入力された情報を基に、分
子計算部22において実行する分子計算の計画が生成さ
れる。また、目的とする分子計算に必要な分子の設計が
行われ、それにより得られた情報を分子計算部22に伝
える。分子計算部22は、得られた情報に基づき分子計
算を行う。例えば、当該分子計算の計画は、記憶部13
に記憶された入力情報と設計される分子計算が対応づけ
られたテーブルを演算部14が検索し、対応する計算を
選択することによりなされてもよい。また、分子の設計
は、記憶部13に記憶された入力情報と設計される分子
が対応づけられたテーブルを演算部14が検索し、対応
する分子を選択することによりなさてもよい。
【0027】電子計算部21側の入力部11は、例え
ば、キーボードおよびマウス等の一般的に人が情報を入
力することが可能な入力手段の何れかを使用することが
可能である。また、電子計算部21側の出力部20は、
ディスプレイおよびプリンタ等の一般的に情報を出力す
ることが可能な出力手段の何れかを使用することが可能
である。
【0028】これら計算装置の動作を実現するため、演
算部14は、例えば翻訳・計算計画立案・実行部14
a、核酸配列計算部14b、結果解析部14cなどとし
て機能する。これら各手段14a〜14cは、例えば記
憶部13から翻訳・計算計画立案・実行プログラム、核
酸配列計算プログラム、検出結果解析プログラムが読み
出されることにより実行される。また、演算部14で各
種機能を実行させるためのプログラムは、記録媒体に記
録されたプログラムプロダクトとして存在し、図示しな
い記録媒体読取装置により読み取られ、記憶部13に格
納された上で演算部14で実行されてもよい。また、演
算部14は、これら各手段14a〜14cとして機能す
る以外にも、通常の電子計算機が実行する手段としても
機能する。
【0029】更に、分子計算部22において得られた計
算結果の出力は、通信部24,23を介して電子計算部
21に送信され、演算部14などにより所望のデータ処
理が施されてもよい。例えば、それらの計算結果は、予
め記憶部13に記憶しておいた処理形式に応じた形式で
集計および演算処理される。その演算処理結果は、最終
的には出力部19または出力部20に所望する形態で出
力される。これらの処理の間、分子計算部22の演算部
15や記憶部16の状態は、電子計算部21において通
信部23、24を介して受信される情報として間接的に
把握されている。
【0030】一方、分子計算部22は、実験的に核酸分
子を合成したり、合成済みの核酸分子を用いて所望する
演算反応を行うことにより分子計算を実行する部分であ
る。分子計算部22において行われる分子計算の例は後
述する。
【0031】電子計算部21の演算部14は、通常の電
子計算機の演算部が行う処理に加えて、入力部11から
入力された初期値を符号分子表現に変換すること、計算
プログラムの手続または関数を対応する符号分子の演算
反応に変換すること、および記憶された計算プログラム
から演算反応の実行手順を作成すること等を行う。ま
た、電子計算部21にて行われることは、例えば、分子
の変数への割り当て、試薬などの反応用溶液収容容器の
割り当て、分子計算中の反応機器(例えば、ピペットチ
ップなど)や反応用溶液の配置の割り当て、コンテナや
ピペッタなどの反応機器の移動や操作の割り当て、サー
マルサイクラの温度制御の設定、並びに計算の実行シー
ケンスの決定などである。
【0032】基本的な計算装置の処理を図4の処理フロ
ーに従って説明する。
【0033】なお、以下の(S1)〜(S9)のうち、
(S1)、(S2)、(S3)、(S5)、(S8)、
(S9)の工程は電子計算部21で実行される。(S
4)は核酸合成装置30で実行される。(S6)及び
(S7)は分子計算部22で実行される。
【0034】(S1)所望する計算プログラム(原始プ
ログラム)は、電子計算部21の入力部11から入力さ
れ、入力された計算プログラム、計算プログラムの定数
および変数等の情報は記憶部13に記憶される。
【0035】(S2)プログラムの翻訳処理であり、
(S2a)〜(S2c)からなる。S1で記憶された原
始プログラムはまず順次プログラムに変換される(S2
a)。そして、この順次プログラムに含まれるデータ
(変数、定数)は、演算部14により記憶部13に予め
記憶された対応データに従って、符号分子表現に変換さ
れる。一方、順次プログラムに含まれる手続または関数
は、対応する符号分子の演算反応に変換される(S2
b)。この(S2b)により、演算反応により処理手順
を表現した演算手順テーブルが生成される。次に、演算
手順が実行手順に変換されて、実行手順テーブルが生成
される(S2c)。(S2)のプログラムの翻訳は、
「計算反応手順の作成」とも称す。
【0036】(S3)核酸配列の計算処理である。この
計算処理は、具体的には、(S2b)で得られた演算手
順テーブルに含まれる符号分子のうち、新たに生成が必
要な分子を得るためのシミュレーションである。この処
理は、予め設計しておいた核酸配列を用いるならば行わ
なくてもよい。
【0037】(S4)核酸合成処理である。(S3)で
得られた計算結果は核酸合成装置30に送られ、(S
3)において設計された各配列を有した核酸である符号
分子が合成される。予め設計し合成しておいた核酸を用
いるならばこの合成は必要ない。合成が行われない場
合、入力部18から合成済みの核酸を入力する。
【0038】(S5)実行手順テーブルの実行手順を、
分子計算部22に命令を与えるための制御命令に変換
し、制御命令手順テーブルが生成される。この制御命令
手順テーブルは分子計算部22に出力される。
【0039】(S6)分子計算部22は、(S5)で入
力された制御命令手順に従って、S4において準備され
た演算分子を用いて、プログラムの演算反応に相当する
分子の化学反応を実行する。これにより、分子を用いた
自動計算が行われる。
【0040】(S7)(S6)において行われた化学反
応により生じた反応産物の検出および同定を行う。
【0041】(S8)(S7)で得られた検出結果の解
析を行う。
【0042】(S9)予め記憶部13に記憶しておいた
出力形式に合わせるように、S7において算出された最
終データが処理され、出力部20から出力される。この
出力結果により、プログラムの計算結果を確認すること
ができる。
【0043】このような工程は、所望に応じてループ処
理を形成することも可能である。例えば、各工程により
得られた結果を、記憶部13に予め記憶された条件等と
比較し、その比較結果によってはそれ以前の何れかの工
程を単独で、または複数の工程を組み合わせて実施する
ことを、繰り返して行うように設定することも可能であ
る。
【0044】ループ処理を形成する場合の処理フローの
一例を図5に示す。図5に示すように、解析結果に基づ
き分岐処理の判定を実行する。この判定により分岐処理
後の処理すべきプログラムが決定される。そして、(S
2a)に戻り、この決定されたプログラムは順次処理へ
の変換などを経て再び分子計算部による自動実行(S
6)がなされる。
【0045】図5の場合、分岐処理毎に原始プログラム
のレベルから制御命令手順テーブルの生成が必要とな
る。これに代えて、図6に示す処理フローとすることも
できる。
【0046】図6は、予め原始プログラムにおける分岐
処理、分岐処理後のすべての制御命令手順が生成されて
いる場合である。この場合、分岐処理の判定結果さえ
(S10)で得られれば、(S12)に進み、予め(S
6)で生成された制御命令手順テーブルにおける次の制
御命令手順を決定するのみでよい。これにより、分岐処
理の度にプログラムを翻訳する処理が不要となる。
【0047】なお、これら図5及び図6に示したような
処理フローの適用は、分岐処理の場合に限られない。処
理において、一旦分子計算部22での計算結果を電子計
算部21にフィードバックさせ、その計算結果に基づき
手順が変更する場合のすべての処理に適用可能である。
【0048】また、自動化が難しい工程がある場合や、
自動化すると装置が大がかりになる場合、例えば、クロ
ーニングにおける培養やコロニーピッキングなど人力で
行うことが好ましい実験操作を行うときには、一度出力
部19に核酸を出力し、出力部20に行うべき実験操作
を表示する。この後、マニュアルによる分子計算部22
内の反応機器の操作を行ってから再び入力部18に核酸
を入力し、入力部11から再起動を入力してもよいし、
または入力を自動的に検出することで計算を再び始めて
もよい。このように、処理の一部を人間が実行するよう
に人間と計算機の処理分担を変えることもできる。
【0049】また、この工程において計算プログラムが
所望の分子を得ることを目的とし、計算結果を表示する
必要がない場合、(S6)で得られた所望の分子(反応
産物)を最終出力としてもよい。この場合、図4のフロ
ーでは、(S7)以降のステップは省略される。例え
ば、特定の遺伝子を特異的に検出するオリゴDNAを選
択する計算を実行した場合などである。この場合、分子
計算部22における検出が行われた結果として得られる
分子をそのまま出力部19より出力して得る。
【0050】また、原始プログラムの記述レベルまで計
算結果を変換せず、反応産物の検出を分子計算部22で
行った後、(S8)を実行せずに(S9)で計算の終了
を出力部20に出力してもよい。この場合、図7のよう
なフローとなる。
【0051】(S2)の工程における符号分子への変換
は、予め、記憶手段に記録しておいた分子変換テーブル
を読み出し、そこに含まれるデータを検索して対応する
データを読み出すことにより行うことが可能である。分
子変換テーブルは、例えば分子計算に使用する符号分子
と電子計算部21に入力する情報とを対応付けたもので
よい。
【0052】また、(S2)の工程における計算プログ
ラムの手続または関数の演算反応への変換は、予め、記
憶手段に記録しておいた手順変換テーブルを読み出し、
そのテーブルを参照して対応するデータを読み出すこと
により行うことが可能である。手順変換テーブルは、例
えば実際に行われる分子計算の工程、それを実施する順
序および繰り返し回数等と、電子計算部21に入力する
情報とを対応付けたものでよい。
【0053】また、以上の各工程で得られた情報は、工
程毎に全て記憶部13に記憶されても、少なくとも一部
分の工程で記憶されるものでもよい。
【0054】上述の手順では、分子計算部22に設けら
れた演算部15において、核酸分子の合成を行うように
記載したが、この演算部15に加えて分子計算部22に
分子合成部を配置して核酸分子の合成を行ってもよい。
この場合、分子合成部は分子計算部22および電子計算
部21に含まれず、しかし電子計算部21と分子計算部
22とに連結配置される。また、前述した通り、分子計
算を行うために必要なすべての符号分子が分子計算部2
2で既に準備されている場合は、核酸配列計算(S3)
及び核酸合成(S4)は不要である。この場合のフロー
を図8に示す。
【0055】また、分子計算部22における演算部15
は、核酸分子を用いた演算反応を行うために必要な以下
のような各部分を具備する。
【0056】そこにおいて各種反応を行うための反応
部、反応に必要な核酸を保持するための核酸保持部、反
応に必要な試薬および緩衝液等を保持するための試薬保
持部、反応に必要な酵素を保持するための酵素保持部、
各部分を所望に応じて加熱するための加熱手段、各部分
を所望に応じて冷却するための冷却手段、分注用ピペッ
ト等の分注手段、ピペットや反応容器等を洗浄するため
の洗浄手段、並びに各種操作を制御するための制御手段
を全て、またはその中の幾つかを組み合わせて具備する
ことが可能である。
【0057】また、演算部15は、目的の演算反応によ
り生じる反応産物を検出および同定するための検出部を
具備してもよい。しかしながら、検出部は、演算部15
に必ずしも包含される必要はない。検出部は使用する検
出手段によっては非常に大がかりな装置になる場合もあ
るからである。検出部は、電子計算部21および分子計
算部22に内包されずに、電子計算部21と分子計算部
22とに連結して存在するように配置することも可能で
ある。
【0058】例えば、本装置における検出は、演算反応
により生じた反応産物の電気泳動により行ってもよい。
この場合、電気泳動により得られるピークの位置を検出
することによって核酸分子の長さを判定して実施する。
または、反応産物をDNAシーケンサに供し、そこから
出てくるデータを基に配列を検出して実験最初に割り当
てていた符号化核酸の何れであるのかを判断してもよ
い。或いは、DNAマイクロアレイとスキャナを装備す
ることにより、符号化核酸の配列をハイブリダイゼーシ
ョン法により読み取ることにより実施してもよい。
【0059】(S6)における制御命令に基づく分子計
算部22の自動制御をマニュアルで行うことも可能であ
る。この場合のフローを図9に示す。図9に示すよう
に、(S6)の代わりに(S61)を設けてある。この
(S61)では、(S5)で生成され、予めプリンタな
どで制御命令手順テーブルを印刷した制御命令手順表を
参照し、オペレータがマニュアルで分子計算部22の各
装置を操作する。このように、オペレータがマニュアル
で操作する場合であっても、分子計算部22における制
御手順が明確に示されているため、従来の分子計算部2
2を用いた場合に比べ格段に効率的な計算処理が可能と
なる。
【0060】分子計算部22の反応結果を検出部で検出
することなく、出力を反応結果自体、すなわち核酸によ
り得ることも可能である。この場合、図9の(S61)
以下のステップは省略される。
【0061】電子計算部21において、一連の計算手
順、即ち、計算を実行するシーケンスを作成するために
は、入力されたプログラムと問題とその初期値とから、
一意に計算のための実行シーケンスが定まるのが好まし
い。例えば、3SATのプログラムの場合では、プログ
ラムのループを展開し、条件分岐については問題を参照
して予め判断しておく。これにより、翻訳・計算計画立
案・実行部14aによる計算計画を定めることができ
る。従って、プログラムの計算が始まる時点で全ての計
算計画を定めることができる。ただし、プログラムによ
ってはループの途中に配列検出操作を入れて配列を確認
してから条件分岐を行わなくてはならない場合もある。
その場合、検出操作を行ってからその結果に応じて次の
段階の計算計画を立てるように実行すればよい。
【0062】また、本発明の計算装置では、例えば、c
DNAの合成などを関数化し、計算のための分子計算部
22での操作と関連づけて電子計算部21の記憶部13
に記憶させておくことが可能である。これにより自動的
な手順の計画が可能となる。また、自動的に符号化反応
を行うことにより、それぞれの処理、例えば、論理演算
および/または配列検索を自動的に並列的に行うことが
できる。
【0063】本発明によれば、従来の実験用、臨床用お
よび製造用等の種々の作業用ロボットシステムを分子計
算部22に適用できる。この場合、事前に準備された電
子計算部側のプログラムに制約されることなく、目的を
最優先とした作業計画に対応するように動作させること
が可能となる。
【0064】本発明における符号化配列として、例え
ば、ヒトの遺伝子を変換する場合には、ウイルスなど、
異種で塩基配列のホモロジーが低い生物の部分配列を用
いることが好ましい。また、単に3SATなどの非生物
的な問題を解く場合には、クロスハイブリダイゼーショ
ンしないように、且つTmがほぼ等しいような配列を任
意に設計し、符号化配列として使用することも可能であ
る。また、数が多く必要であれば、電子計算部21にお
いて所望の条件を満たすように計算で求めた正規直交化
配列を用いる。
【0065】また、分子計算部22における分子を直接
的な入力とした化学反応により、電子計算部21が所望
する演算が可能になる。従って、例えば、遺伝子解析に
本発明を利用した場合には、実験誤差を最小に抑えるこ
とが可能である。即ち、核酸を符号化核酸に対応付けて
装置内で分子の状態のまま計算処理するので実験誤差が
抑えられる。また、本発明の分子計算装置の使用により
計算時間およびランニングコストが削減できる。
【0066】更に、遺伝子解析をプログラムにより表現
することで、実験を自動的に計算して実行することもで
きる。また、例えば発現遺伝子を符号化OLA(Oligon
ucleotide Ligation Assay)を行うことにより符号化核
酸に変換する。そして、符号化核酸の3’と5’末端に
ある共通配列によりPCR増幅すれば、正確にそれらの
発現比を検出してもよい。符号化OLAについての詳細
は後述する。なお、符号化核酸への変換は、符号化OL
A以外でも実現可能である。
【0067】2.詳細な説明 (1)分子計算装置の具体例 以下に更に詳細に本発明を説明する。本発明の計算装置
の具体例を図3に示す。図3に示した計算装置は、電子
計算部21と分子計算部22と核酸合成装置30からな
る。電子計算部21は通信部23を、分子計算部22は
通信部24を備える。これら通信部23及び通信部24
の間でデータの送受信を行うことにより、電子計算部2
1と分子計算部22との間の情報通信が可能となる。図
1の例では、核酸合成装置は分子計算部22内に組み込
まれる場合を示したが、図3では、分子計算部22とは
別個に設けられている。
【0068】電子計算部21の通信部23は核酸合成装
置30に電気的に接続され、通信部23から送信された
核酸合成命令に基づき核酸合成装置30が核酸合成を実
行できるように構成されている。核酸合成装置30は例
えば通信部23からの命令に基づき核酸容器や核酸分子
を制御する制御部を備える。そして、制御部の制御に基
づき合成された核酸は、核酸容器に収容されたまま容器
ごと分子計算部22に搬送される。なお、核酸合成装置
30を分子計算部22に設けることもできる。この場
合、核酸合成装置30から分子計算部22に搬送させる
搬送系を分子計算部22とは別個に設ける必要が無い。
核酸容器の搬送は搬送機構により行っても、マニュアル
で行ってもよい。
【0069】なお、核酸合成装置30は電子計算部21
と接続しなくてもよい。この場合、電子計算部21で核
酸合成に必要なデータを出力し、その出力結果に基づき
マニュアルで核酸合成を行えばよい。
【0070】電子計算部21は、図1の演算部14に相
当する構成として翻訳・計算計画立案・実行部14a、
核酸配列計算部14b、検出結果解析部14cを備え
る。記憶部13から所定のプログラムが読み出されるこ
とにより演算部14がこれら各部分14a〜14cとし
て機能する。また、これら各部分14a〜14cなどと
入出力制御部12を介して入力部11、図1の出力部2
0としての表示部20a及びプリンタ20bが接続され
る。
【0071】分子計算部22は、図1の演算部15、記
憶部16、入出力制御部17、入力部18、出力部19
として機能する自動制御部151,XYZ制御ピペッタ
152,サーマルサイクラ反応容器153、ビーズ容器
154、酵素容器155、緩衝液容器156、核酸容器
157、検出部158、温度制御手段159、搬送機構
160を有する。
【0072】分子計算部22は、通信部24に接続され
た自動制御部151を備える。この自動制御部151
は、XYZ制御ピペッタ152と、核酸の反応を実行す
るサーマルサイクラ反応容器153と、ビーズを保持す
るビーズ容器154と、酵素を保持する酵素容器155
と、緩衝液を保持する緩衝液容器156と、核酸を保持
する核酸容器157、温度制御手段159、搬送機構1
60を自動制御するため、これら各構成(152〜15
7、159、160)に駆動信号を出力する。これら各
構成(152〜157、159、160)は、この駆動
信号を受けて駆動することにより、分子の反応や反応条
件を制御する。従って、これら各構成(152〜15
7、159、160)は、全体として反応制御部として
機能し、それぞれは反応制御要素として機能する。
【0073】自動制御部151による制御は、通信部2
4を介して電子計算部21から送信された制御命令に基
づき実行される。反応容器153〜157は、ビーカ
ー、試験管若しくはマイクロチューブ等、核酸などを含
む溶液を収容する容器であれば何でもよい。
【0074】サーマルサイクラ反応容器153は、温度
調節の可能な反応容器でよい。例えば、一般的に使用さ
れているサーマルサイクラと組み合わせることにより実
現可能である。また、この例では、担体としてビーズを
用いた場合の例を示したが、他の担体を用いることも可
能である。その場合、ビーズ容器154に代えてまたは
ビーズ容器に加えて、適切な構成要素を具備することが
可能である。酵素容器155は、酵素を失活から守るた
めにクーラー等の温度制御手段159と共に具備されて
もよい。必要であれば、他の保持手段にもクーラーまた
はヒーター等の温度制御手段159を配置してもよい。
【0075】サーマルサイクラ反応容器153における
反応は、制御命令に沿って実行される。例えば、各種容
器154〜157などから所望する容量の内容物をXY
Z制御ピペッタ152により分取した後、所望する温度
等の条件に従って反応が実施される。各部分における動
きは、分子計算部内の自動制御部151により制御され
る。XYZ制御ピペッタ152は、自動制御部151に
より制御されて、所望に応じてXYZ方向および/また
は上下に移動するピペッタである。
【0076】搬送機構160は、自動制御部151から
の制御命令に基づき、例えば各容器153〜157を他
の図示しない容器収容手段との間で、あるいは検出部1
58との間で搬送する。
【0077】反応終了後、検出部158において反応産
物の検出および同定が実施される。検出部158は、電
気泳動装置、シークエンサー、化学発光測光器および蛍
光光度計等の一般的に核酸分子を検出および解析するた
めに使用される何れの検出手段または解析手段により実
現されてもよい。
【0078】電子計算部21で生成された制御命令は通
信部23に出力される。通信部23は、これら制御命令
を通信部24を介して分子計算部22に送信する。分子
計算部22は、受信した制御命令に基づき各構成を制御
することにより、分子計算を実行させる。計算結果は通
信部24により、通信部23を介して電子計算部21に
送信される。
【0079】通信部23,24は、ケーブル等の有線の
通信手段により実現されるものでも、また、電波等の無
線の通信手段によって実現されるものでもよい。
【0080】電子計算部21で生成された核酸合成命令
は通信部23に出力される。通信部23は、これら核酸
合成命令を核酸合成装置30に出力する。核酸合成装置
30は、受信した核酸合成命令に基づき各構成を制御す
ることにより、核酸合成を実行させる。合成の結果物と
しての核酸分子を収容した核酸容器は分子計算部22に
搬送される。もちろん、核酸容器中の核酸分子のみを分
子計算部22の核酸容器中に運ぶようにしてもよい。
【0081】電子計算部21の演算部14の機能の一例
を図10のフロー図に沿って以下説明する。
【0082】(翻訳・計算計画立案・実行部14a)翻
訳・計算計画立案・実行部14aは、入力部11から入
力された初期値を含む原始プログラムを翻訳して実行手
順テーブルを生成する翻訳処理((S2a)〜(S2
c))、実行手順テーブルを計算計画のレベル(制御命
令)に変換して制御命令手順テーブルを生成する制御命
令生成処理(S5)、生成された計算計画に基づき計算
計画を分子計算部22に実行させる計算計画実行処理の
3つの処理を実行する。
【0083】翻訳処理は、第1の変換処理〜第3の変換
処理からなる。
【0084】第1の変換処理(S2a)は、例えば分岐
処理やループ処理などのアルゴリズムを含む原始プログ
ラムを制御命令に変換可能な順次処理アルゴリズムを主
体とした順次処理プログラムに変換する処理である。
【0085】第2の変換処理(S2b)は、この順次処
理プログラムの各命令を符号分子及び符号分子の演算反
応を用いた化学反応レベルの表現に変換して演算反応手
順テーブルを生成する処理である。
【0086】第3の変換処理(S2c)は、演算反応手
順テーブルを分子計算部22の各構成の動作レベル表現
の駆動動作表現に変換して実行手順テーブルを生成する
処理である。
【0087】第1の変換処理を経由せずに第2,第3の
変換処理を先に実行した後、第1の変換処理を実行する
ようにしてもよい。
【0088】第2の変換処理は、原始プログラムで定義
される定数や変数などのデータを符号分子に対応付ける
とともに、原始プログラムで定義される手続または関数
を演算反応に対応付ける。データと符号分子の対応付け
は、予め記憶部13に格納された符号分子参照テーブル
を、手続または関数と演算反応の対応付けは手続または
関数−演算反応対応データテーブルを用いる。
【0089】符号分子参照テーブルは、ある符号分子と
他の符号分子の相関関係が定義されている。例えばある
符号分子をプログラム中のある変数に対応付けることを
第2の変換処理で決定した場合、他の変数と符号分子と
の対応付けは、符号分子参照テーブルを参照し、最初に
定義された符号分子との相関関係に基づき、適切な符号
分子に決定することにより実行される。相関関係とは、
例えばある符号分子と他の符号分子との相補性などであ
る。また、各符号分子は塩基配列のレベルまで特定され
ている。
【0090】手続または関数−演算反応対応データテー
ブルは、手続に対して複数の制御命令が対応付けられた
テーブルである。図11は手続または関数−演算反応変
換データテーブルの一例を示す図である。この図11で
は、演算反応を文章で表したが、実際に電子計算部21
上でデータテーブルとして格納するデータ形式として
は、動作、器具、配列、符号分子などの要素毎に区分け
してそれぞれを識別可能に表現しておく。
【0091】順次処理プログラムは、データと手続また
は関数の組み合わせにより定義されている。従って、手
続または関数を演算反応に置換した手順における要素の
一つである符号分子に、符号分子を割り当てることによ
り、演算反応手順テーブルが生成される。また、符号分
子の割り当てのみならず、器具や配列の割り当てを符号
分子の割り当てと同様に行ってもよい。
【0092】生成された演算反応手順テーブルの一例を
図12に示す。図12に示されるように、各演算手順毎
に演算反応とその演算反応を特定する変数や定数が示さ
れている。また、この演算手順では、分子計算部22の
各器具との対応付け(例えば試験管Tは5つある核酸容
器157のうちの2番目など)はなされていない。ま
た、演算反応を実行するための動作(例えば取り出すな
ど)は特定されるが、その動作の表現形式では未だ分子
計算部22の自動制御部151が各構成を制御する命令
として認識できるレベルではない。
【0093】なお、この第2の変換処理では、符号分子
参照テーブルを用いてデータ(変数、定数)と符号分子
の割り当てを実行したが、符号分子参照テーブルには、
実際に分子計算部22内で既に試薬として準備されてい
る符号分子以外は登録されていない。従って、登録され
ていない符号分子については、必要とする符号分子を得
るための核酸合成を行う必要がある。従って、翻訳・計
算計画立案・実行部14aは、登録されていない符号分
子の核酸配列取得命令を核酸配列計算部14bに行う。
核酸配列計算部14bの詳細な機能は後述する。
【0094】第3の変換処理は、演算反応−実行動作変
換テーブルを用いて演算反応手順テーブルを分子計算部
22の各構成の動作レベル表現の実行動作に変換して実
行手順テーブルを生成する。演算反応−実行動作変換テ
ーブルでは、通常1つの演算反応に対して複数の実行動
作が対応付けられている。通常、ある演算反応を実行す
るには、分子計算部22の構成を制御する動作が複数必
要だからである。もちろん、1つの演算反応に対して1
つの実行動作が対応付けられていてもよい。
【0095】この演算反応−実行動作変換テーブルを用
いて変換された実行手順テーブルの一例を図13に示
す。図13に示すように、ある演算手順が複数の実行動
作に対応付けられている。また、手順の内容は分子計算
部22の自動制御部151が各構成を制御する命令とし
て認識可能なレベルであるが、未だ分子計算部22の実
際の構成との対応付け(例えば試験管Tは5つある核酸
容器157のうちの2番目など)はなされていない。
【0096】計算計画生成処理は、翻訳処理で得られた
実行手順テーブルに基づき制御命令手順テーブルを生成
する。制御命令手順テーブルの生成には、装置データ及
び装置制約条件データが用いられる。
【0097】計算計画生成処理では、まず装置データを
参照し、実行手順テーブルの各実行手順を制御命令に変
換する。制御命令とは、自動制御部151に与えられる
命令である。この制御命令を受けて、自動制御部151
は分子計算部22の各装置(図3にいうピペッタ15
2、容器153〜157、搬送機構160など)を制御
する。
【0098】より具体的には、制御命令に変換するた
め、各実行手順の装置を装置データに基づき実際の装置
構成への割り当てを行う。この割り当てにより、各実行
動作は分子計算部22の実際の装置を特定し、その装置
に対して制御を行うことのできる命令のレベルとなる。
実行動作テーブルの実行動作では、自動制御部151は
物理的な構成を認識できない。従って、例えば2つのピ
ペッタ152が分子計算部22内に設けられていた場合
には、いずれのピペッタ152を動作させるものかは分
からない。これに対して制御命令は、2つのピペッタ1
52a,152bのうちのピペット152aを動作させ
るというレベルまで特定されている。
【0099】また、実行動作を制御命令に変換する毎
に、装置制約条件データを参照し、装置制約条件に基づ
く追加制御命令を付加する。装置制約条件データは、例
えば反応容器などの各容器153〜157の数及び容
量、XYZ制御ピペッタ152の数及び抽出量、試薬の
数や配置、温度制御手段159による温度制御速度、搬
送機構160の搬送速度、各構成間の距離などである。
実行動作の制御命令への変換の際には装置資源が無限で
あるという前提でなされている。しかし、実行動作を
1:1で制御命令に変換すると、分子計算部22の装置
の制約により、続行が不可能な処理が生じる場合があ
る。例えば、反応容器の数は2つであるため、3つの反
応容器を同時に用いる処理を続行できないなどである。
この場合、そのような装置制約条件を予め記憶部13に
登録しておき、これを参照することにより、続行できな
くなる場合の処置を設定することができる。処置の例と
しては、例えば図示しないアラームなどの報知手段によ
りオペレータに対して反応容器の追加を要求する警告を
発する制御命令の追加、反応容器が追加されたか否かを
図示しない検知器で検知する制御命令などである。この
装置制約条件に基づく追加制御命令毎に制御命令番号を
付加する。なお、制御命令番号には、演算手順番号、実
行手順番号などを関連づけておくのが好ましい。また、
得られた制御命令は、分子計算部22における制御対象
が明確になっているため、制御対象を関連づけておく。
【0100】このようにして得られた制御命令手順テー
ブルの一例を図14に示す。図14に示すように、制御
対象が明確になり、かつ装置制約条件を考慮したシーケ
ンスとなっている。
【0101】なお、XYZ制御ピペッタにより核酸溶液
を吸引する制御命令と、反応容器に移送する制御命令の
ように、一連の制御命令として定型化されるものがあれ
ば、手続を制御命令セットに変換し、この制御命令セッ
トを分子計算部22に送信してもよい。特に、1つの演
算反応から生じる複数の制御命令は、定型化が容易であ
る。この場合、自動制御部151には制御命令セットと
制御命令を対応付けたデータテーブルを有し、このデー
タテーブルに基づき制御命令セットを制御命令に変換
し、各構成を制御するのが好ましい。また、自動制御部
151がこのようなデータテーブルを持たず、各装置
(例えばXYZ制御ピペッタ152,搬送機構160な
ど)が制御命令セットを自動実行するようにしてもよ
い。
【0102】計算計画実行処理では、計算計画生成処理
で得られた制御命令手順テーブルに基づき、制御命令を
制御命令番号順に自動制御部151に出力する。これに
より、自動制御部151は自動で分子計算に必要な各装
置の制御を実行することができる。もちろん、装置の制
約に基づき人手が介在する必要がある場合には、そのよ
うな制御も装置に対して行う。例えば、反応容器を指定
位置に補充する警告がアラームされれば、オペレータは
指定された反応容器を指定位置に補充する。これによ
り、オペレータは分子計算部22の計算の進捗状況を常
に監視する必要が無くなる。
【0103】以上の処理例では、制御命令生成処理で装
置制約条件データに基づき装置制約を考慮した制御命令
を生成する場合を示したが、装置資源が充分にある場合
にはこの処理は無くてもよい。
【0104】また、予め制御命令手順テーブルを生成
し、制御対象を特定した後で分子計算を実行する場合を
示したが、これに限定されない。例えば、各制御命令を
実行する都度装置資源の利用の有無をチェックする利用
有無チェックセンサを各装置(XYZ制御ピペッタ15
2,容器153〜157など)に設け、そのセンサの検
出データに基づき自動制御部151が自動で制御対象を
割り当てていく方式でもよい。
【0105】また、装置データは、図3のような構成に
限られることなく、利用する分子計算機の装置構成に応
じて種々変更可能である。利用する分子計算機の装置構
成と、その装置における実行動作と演算反応との対応付
け(演算反応−実行動作変換テーブル)さえ装置データ
として登録しておけば、いかなる装置構成の分子計算機
であっても本発明の分子計算の対象とすることができ
る。すなわち、異なる分子計算部毎に装置データ、装置
制約条件データ、演算反応−実行動作変換テーブルを登
録すれば、電子計算部の他の構成を変えることなく容易
に異なる装置構成からなる分子計算部に分子計算を実行
させることができる。
【0106】また、第1変換処理〜第3変換処理は、必
ずしもすべて電子計算部21でなされる必要は無い。分
子計算部22の自動制御部151を電子計算部21の演
算部14と同様に機能させることにより、自動制御部1
51側で実行してもよい。
【0107】また、以上に示された翻訳・計算計画立案
・実行部14aは、プログラムを順次処理形式に変換し
て制御命令手順を作成する場合を示したが、これに限定
されるものではない。例えば、ある計算結果に基づく条
件分岐処理などがある場合には、その計算結果(検出結
果)を一旦検出部158から翻訳・計算計画立案・実行
部14aが受信する。そして、その計算結果に基づき条
件分岐処理を行い、分岐した後の制御命令手順を新たに
分子計算部22に与える。これにより、条件分岐した場
合でも自動で分子計算が続行できる。その他、制御命令
手順がすべて終了する前に一旦検出結果を電子計算部2
1が検出部158から受け取り、その検出結果を反映さ
せた分子計算を続行することにより、自動計算が実行で
きる。
【0108】また、第2変換処理におけるデータ−符号
分子対応付け処理は符号分子参照テーブルを参照して翻
訳・計算計画立案・実行部14aが自動で実行する場合
を示したが、これに限定されるものではない。変数や定
数と符号分子をマニュアルで行ってもよい。
【0109】(核酸配列計算部14b)核酸配列計算部
14bは、翻訳・計算計画立案・実行部14aにおける
翻訳処理のうち、データ−符号分子対応付け処理で与え
られた符号分子に対応する核酸配列を計算する。データ
−符号分子対応付け処理で与えられた符号分子は、数多
く与えられる。また、符号分子参照テーブルに登録され
ている符号分子は数に限りがある。従って、足りない符
号分子の塩基配列は、核酸配列計算部にて計算を行い配
列を設計する。具体的には、既に符号分子参照テーブル
に登録されている符号分子とクロスハイブリダイゼーシ
ョンを起こさないような、最適な二重鎖の融解温度(T
m)と、大きい2次構造の自由エネルギー値を持つ塩基
配列を設計する。クロスハイブリダイゼーションは、符
号分子参照テーブルに既にある配列とハイブリダイゼー
ションのシミュレーションを行いチェックする。融解温
度や自由エネルギー値は配列から容易に計算できる。従
って、適切な融解温度や自由エネルギー値の配列を選別
する。これらの計算により、合成すべき核酸の配列が決
定される。
【0110】核酸配列計算部14bは、得られた核酸配
列計算結果を核酸配列合成装置30に通信部23を介し
て送信する。核酸配列合成装置30は、与えられた核酸
配列計算結果に基づき、自動あるいはマニュアルで核酸
を合成し、得られた核酸溶液を核酸容器に収容して分子
計算部22に自動あるいはマニュアルで搬送する。核酸
配列合成装置30は、合成された核酸溶液が収容された
核酸容器を識別する核酸容器識別情報を翻訳・計算計画
立案・実行部14aに送信する。翻訳・計算計画立案・
実行部14aは、受信した核酸容器識別情報に基づき、
制御命令生成処理において制御命令手順テーブルを生成
する。これにより、装置データとして登録されていない
計算用機材が分子計算部22に導入される場合であって
も自動の分子計算に組み込むことができる。
【0111】なお、この核酸配列計算部14bは、別の
装置で核酸溶液を準備するものであれば電子計算部21
で実行する必要は無い。また、必要とする塩基配列を有
する核酸溶液がすべて登録されている場合には、この核
酸配列計算及び核酸合成は省略可能である。
【0112】(検出結果解析部14c)検出結果解析部
14cは、分子計算部22の検出部158で得られた検
出結果を通信部24,23を介して受信し、表示部20
aやプリンタ20aで出力する。また、検出結果のみな
らず、例えば検出結果を解析し、その解析結果を出力す
るのが好ましい。また、翻訳・計算計画立案・実行部1
4a及び核酸配列計算部14bなどで計算された結果を
適宜出力してもよい。
【0113】検出部158からの検出結果は、DNAの
反応結果そのものであり、利用者が希望する情報では無
いことが多い。従って、反応結果を利用者に分かる情報
に変換する作業が必要になる。この変換作業は、検出結
果解析部14cにより自動で実行することができる。な
ぜなら、この変換作業は、利用者に分かる情報としての
原始プログラムから、分子計算部22が認識可能な制御
命令手順テーブルへの変換作業の逆変換を行えばよいか
らである。
【0114】具体的には、検出結果の解析は、例えば記
憶部13から制御命令手順テーブル、装置データ、実行
手順テーブル、演算反応手順テーブル、符号分子参照テ
ーブル、手続または関数−演算反応変換テーブルなどを
参照することにより実行することができる。
【0115】ある反応結果から原始プログラムの解のレ
ベルへ変換を行う解析処理を行う場合を考える。反応結
果は、化学反応であり、その検出結果が検出部158で
得られる。この検出部158の検出結果のそれぞれのデ
ータがどの制御命令、実行手順、演算反応、符号分子に
対応しているかは、制御命令手順テーブル、実行手順テ
ーブル、演算反応手順テーブル、符号分子参照テーブ
ル、手続または関数−演算反応変換テーブルなどを参照
することにより可能である。この解析処理により、反応
結果は利用者に利用可能な情報に変換される。従って、
利用者は何ら電子計算部22における操作内容などを意
識することなく計算結果を理解することが可能となる。
【0116】なお、この解析処理は必須では無い。例え
ば、反応結果がそのまま利用者の必要とする情報である
場合である。この場合、検出部158からの検出結果を
全く変換せず、あるいは実行手順のレベル、制御命令の
レベル、演算反応のレベル、符号分子のレベルなど、種
々のデータ表現形式に解析することにより、利用者の必
要とする情報が得られる。特に、遺伝子情報解析の場合
には、遺伝子情報のレベルまで解析処理を行えばよい。
【0117】電子計算部における処理手順の例を説明す
る。
【0118】まず、入力部11から入力された初期値を
含む原始プログラムは入出力制御部12により内部コー
ドに変換されたのち記憶部13に記憶される。内部コー
ドとは、電子計算部21の演算部14が電気学的に認識
可能であってデータ処理可能なコードをいう。次に、こ
の内部コードに変換された原始プログラムが翻訳・実験
計画立案・実行部14aにおいて、符号分子および符号
分子の演算反応手順テーブルに変換され、且つ演算反応
の実行手順テーブルが生成される。続いて記憶部13に
記憶される。また、必要に応じて、核酸配列計算部14
bは、演算反応手順テーブルを基に符号分子を計算す
る。この計算結果は核酸合成装置30に送られる。核酸
合成装置30は、得られた計算結果に基づき核酸を合成
し、得られた結果物を分子計算部22に搬送する。ま
た、核酸合成装置30は、得られた結果物を自動計算に
組み込むため、得られた核酸溶液を装置として識別する
情報を電子計算部21に送信する。
【0119】これらの工程において扱われる情報は、常
に結果解析部14cを経て表示部に表示されてもよい。
或いは、所望する情報のみを随時表示されるように設定
されてもよい。必要に応じてプリントアウトされてもよ
い。
【0120】本発明において、分子計算部22は、ハイ
ブリダイゼーション反応、酵素反応、抗原抗体反応のよ
うな生物学的特異反応の開始から終了までに関わる工程
または手段を少なくとも含んでいるものとする。ここ
で、反応の開始時点は、早ければ反応対が有意に選択性
を示すと認められる段階を少なくとも含み、遅くとも検
出、分離等の目的が達成できる直前の時点を含んでい
る。また、反応の終了時点は、早ければ検出、分離等の
目的が達成できた最も早い時点を少なくとも含み、遅け
れば検出、分離等の目的が充分に達成できる経過時間よ
りも長い時点を含むことができる。
【0121】図2に、本発明の分子計算部22のより詳
細な配置例を示す。例えば、分子計算部には、8本取り
チップラック31、1本取りチップラック0番32、1
本取りチップラック1番33、96穴マルチタイタープ
レート(以下、MTPと称す)2番34、96穴MTP
0番35、1.5mLチューブラック36、96穴MT
P1番37、サーマルサイクラー96穴MTP38およ
びチップ廃棄口39を配置することが可能である。しか
しながら、これにより何ら制限されるものであり所望に
応じて各種変更が可能である。
【0122】(2)分子計算部における分子計算 (a)3SATへの適用 以下に説明する、本発明の1態様に従う分子計算装置に
おける分子計算は、上述した項目Iに記載した本発明の
各態様であってよい。
【0123】以下では、代表的なNP完全問題である三
和積形命題論理式の充足可能性判定問題(3SAT)を
解くための計算を本発明の分子計算装置を適用して実行
する例を説明する。
【0124】最初に従来のエーデルマン−リプトンパラ
ダイムに基付くDNA計算の問題点を説明する。エーデ
ルマン−リプトンパラダイムに基付くDNA計算の場
合、最初に全ての解の候補を表現するDNA分子のプー
ルを生成する必要があることが問題である。NP完全問
題の解の候補数は変数の数に対して指数関数的に増大す
るものである。従って、問題のサイズが大きくなると、
超大容量メモリを備えたDNAコンピュータでも全ての
解の候補を含む完全なプールを生成できない危険性が生
じる。これが、エーデルマン−リプトンパラダイムが内
包する深刻なスケール問題である。
【0125】エーデルマン−リプトンパラダイムを上述
の3SATに適用する場合を考える。論理変数の数を1
00とすると、解の候補は2100=1.3×1030
にもなる。1変数を15塩基対のDNA分子で表現する
と、完全なプローブを生成するためには少なくとも20
0万トンという非現実的な量のDNA分子が必要にな
る。1分子で一つの解の候補を表現したのでは計算反応
の途中で失われてしまう危険性が高い。従って、実際に
はより大量のDNA分子が必要である。変数の数が20
0になると、少なくとも地球の質量の約40兆倍ものD
NA分子が必要となる。これでは実際に問題を解くこと
は不可能であると言わざるを得ない。
【0126】そのような状況において、発明者らは、ダ
イナミック・プログラミングに基付いたアルゴリズムを
分子計算装置(DNAコンピュータとも称することがで
きる)で実行することによりNP完全問題を解くことを
考えた。即ち、エーデルマン−リプトンパラダイムのよ
うに最初から全ての解の候補を生成するのではなく、部
分の問題の解の候補を生成してその中から解を選択抽出
する。この操作を部分問題のサイズを逐次的に大きくし
ながら繰り返し、最終的に本来の問題の解を得るのであ
る。このようにすれば、生成される解の候補の数を大幅
に減らすことができる。
【0127】ここで、後述する(1.1)準備の項目お
いて記載する分子の設計は、まず原始プログラムから、
電子計算部の翻訳・実験計画立案・実行部において必要
な情報に変換される。その後、核酸配列計算部において
所望する条件に適切な核酸配列が設計される。また、前
記の工程は、電子計算部の演算部において行うことも可
能である。電子計算部において得られた情報に基付いて
核酸が合成され、分子計算部において分子計算が実行さ
れる。
【0128】(b)3SATのプログラム NP完全問題の代表例である3SATは、例えば、次の
ようなプログラムに従ってDNA計算を実行することに
より、ダイナミックプログラミングのアルゴリズムに基
付いて解くことができる。
【0129】
【数1】 ここで、記号の「∧」は論理積、「∨」は論理和、
「¬」は否定を表す。
【0130】
【数2】
【0131】本装置を用いて4変数10節の3SAT問
題を解いた。問題を数式1に、問題の解を数式2に示
す。数式1の問題の論理式はx1、、x、x
4つの変数からなり、3ラテラルの節が10個、論理積
で結合されている。この式を満たす変数の値の組、すな
わち解が有るかどうか、有るならばその変数の値の組を
求めるのが目的である。
【0132】
【数3】
【0133】この問題を解くために数式3に示すプログ
ラムを本装置で実行する。記述法はパスカルに準じてい
る。具体的には、数式3に示すプログラム(dna3s
at)を原始プログラムとして図1の入力部11で入力
する。入力された原始プログラムは、翻訳などを経て制
御命令手順テーブルが生成され、分子計算部22で分子
計算が実行される。そして、(s2)〜(s8)のステ
ップを経て数式3に示す計算結果が得られる。
【0134】関数dna3satが、問題を与えたとき
に解が存在した場合に解を出力するメイン関数である。
この関数dna3sat中には関数getuvsatが
組み込まれている。これら関数dna3satと関数g
etuvsatはget、amplify、appen
d、merge、detectの5つの基本関数で構成
されている。基本関数のうちget、amplify、
appendは、原始プログラムの手続または関数とし
て図15から図18に示す化学反応により実行される。
【0135】次に各基本関数に対応付けられた化学反
応、化学反応に付随する操作を説明する。最初に、図1
5に従ってget(T,+s)、get(T,−s)関
数について述べる。
【0136】関数getは、オリゴヌクレオチドの混合
溶液T(tube)から、sなる配列を含む1本鎖のオ
リゴヌクレオチドまたは該配列を含まないオリゴヌクレ
オチドを取得する反応操作を符号分子の演算反応として
定義した関数である。ここで、sとは数塩基または数十
塩基の特定の配列を示している。get(T,+s)は
s配列を含むオリゴヌクレオチドを、get(T,−
s)はsを含まないものを取得する。T,+s,−s
は、分子を核酸配列に基づき符号化した符号分子に対応
付けて定義される変数である。
【0137】まず、sに相補的な配列を持ち5’端ビオ
チンを標識したオリゴヌクレオチドをTに入れ、s配列
を備えたオリゴヌクレオチドとアニーリングさせる。
【0138】このアニーリングでできたハイブリッド
を、例えば、ストレプトアビジンを表面に結合した磁気
ビーズで捕獲する。このあとs配列に相補的なオリゴヌ
クレオチドのなすハイブリッドが解離しない温度で磁気
ビーズの緩衝溶液で洗浄する(即ち、コールドウォッシ
ュする)。これにより、s配列を持たないオリゴヌクレ
オチドを緩衝液から取得でき、get(T,−s)が実
行できる。
【0139】また、関数get(T,+s)の実行は、
コールドウォッシュが終わってから、ハイブリッドが解
離するような比較的高温の緩衝溶液で磁気ビーズを洗え
ばよい。これにより、その緩衝溶液からs配列を持つオ
リゴヌクレオチドを取得できる。即ち、1つの操作で2
つの関数が実行できる。
【0140】次に、図16に従って関数append
(T,s,e)の反応について述べる。eは、分子を核
酸配列に基づき符号化した符号化分子に対応付けて定義
される変数である。
【0141】この関数は、オリゴヌクレオチドの混合液
Tの中でe配列をその3’端に備えた1本鎖DNAの
3’端に、sなる配列を備えたオリゴヌクレオチドをラ
イゲーションにより連結し、そのs配列が連結された1
本鎖のオリゴヌクレオチドを取得する反応操作を符号分
子の演算反応として定義した関数である。ここで、s、
eとは先に述べたのと同様に数塩基若しくは数十塩基の
特定の配列を指す。
【0142】この関数append(T,s,e)の反
応では、次のオリゴヌクレオチドを用いる。
【0143】s配列のオリゴヌクレオチドは、この5’
端がリン酸化されている。また、連結オリゴヌクレオチ
ドは、5’端にビオチン標識されており、5’端側のs
に相補的な配列と3’端側のeに相補的な配列とを隣接
して含有する。これらをチューブTに入れて反応を始め
ると連結オリゴヌクレオチドは、T中の標的オリゴヌク
レオチド配列eとs配列オリゴヌクレオチドとでハイブ
リッドを形成する。このハイブリダイゼーション反応
は、ミスマッチのハイブリッドが形成されないように比
較的高温で行い、Taqライゲースなど高温で活性の高
い酵素を用いて連結される。このあとストレプトアビジ
ン磁気ビーズなどによりハイブリッドを捕獲し、ハイブ
リッドが解離するような高温で洗えば(即ち、ホットウ
ォッシュ)、3’末端にs配列が連結されたオリゴヌク
レオチドを回収することができる。
【0144】次に図17に従って、amplify
(T、T、....T)関数の反応について述べ
る。このamplify(T、T、....T)関
数の反応は、反応溶液Tに含まれるオリゴヌクレオチド
をPCR反応により増幅し、増幅され二本鎖になったオ
リゴヌクレオチドを1本鎖に変えてから、T、...
なるn個の反応溶液に分割する反応である。本実施
例ではTに含まれるオリゴヌクレオチドの両端には共通
な増幅用の配列が具備され、1組のプライマーにより全
てのT中のオリゴヌクレオチドを増幅できるようにして
いる。プライマーのうち、増幅対象のオリゴヌクレオチ
ドの3’端に相補的な配列をもつものの5’端にはビオ
チン標識が施されている。Tのオリゴヌクレオチドをこ
の共通プライマーにより増幅し、ストレプトアビジン磁
気ビーズにより捕獲する。これを94℃などの高温で全
ての2本鎖が解離するように洗浄すれば、もともとTに
含まれていた側の鎖が緩衝溶液中に抽出できる。この抽
出溶液を均等にT、...Tのn個の反応溶液に分
割すればよい。
【0145】関数mergeは、引数の複数の溶液を1
つの溶液に纏める反応操作を符号分子の演算反応として
定義した関数である。
【0146】最後に関数detectを図18に従って
説明する。検出は、手動による反応で実施することも可
能である。関数detectを本装置により行う方法の
例を以下に示す。ここではgraduated PCR
なる、エーデルマンの論文(Science, 266, 1021-4)に
おいて開示された検出手段を用いて行う例を示す。
【0147】図18において、本装置で生成される解を
示す核酸分子は、5’端から順に4つの変数が真(即
ち、T、true)または偽(即ち、F、false)を表
す配列が連結した配列を有す。この解の配列は、同じく
図18に示す全ての可能な解を検出できるようなプライ
マーにより個別にPCR増幅する。図中、配列名の上に
引いた横線は、相補配列を示す。仮に、図18の最初に
示すような配列の解が得られていると、図18の最後に
示すプライマーの組で、且つ図示した長さのPCR産物
が得られる。これら産物の存在と長さをゲル電気泳動に
て確認すれば、PCR産物の得られたプライマーから解
の配列が明らかになる。なお、関数detectは、D
NAチップによる出力も含まれる。
【0148】以上の関数を表1に纏めた。
【0149】
【表1】
【0150】上述の数式3に示すプログラムの主たる関
数はdna3satである。その中に先に述べた基本関
数と、基本関数からなる関数getuvsatが組み込
まれている。このように、基本関数を組み合わせて新た
に手続または関数を定義し、この手続または関数を用い
たプログラムを作成することが可能である。最初にプロ
グラム上の変数名の説明を行う。
【0151】Tとはチューブ(tube)の略であり、T
とはx、xの2変数の取りうる全ての真偽の組4つ
を表すオリゴヌクレオチドを含む溶液である。X
は、変数xの値が真であることを示すオリゴヌクレオ
チドで長さは22塩基である。X とは、変数x
値が偽であることを示すオリゴヌクレオチドであり、長
さは同じく22塩基である。よってTに含まれるオリ
ゴヌクレオチドの1つ、X は44塩基の長さ
の、x=1、x=0なる割り当てを表す1本鎖のオ
リゴヌクレオチドである。j、kはループの進行状態を
表す整数で、jは問題の論理式の何節目を計算している
かを示し、kは何番目の変数を計算しているかを表す。
u、v、wは問題の論理式の各節内のひとつひとつのリ
テラルを示す。各リテラルは、数式1の問題であれば、
=x、v=x、w=¬xとなる。配列名
Xの上にあるバーは相補配列を意味する。また、Xの右
肩のT/FはTおよびFを指し、XとXを意味す
る。
【0152】以下、数式3のプログラムを図20のフロ
ーチャートに沿って順を追って説明する。実際にはプロ
グラム解釈部がこのプログラムの関数および条件分岐、
forループを一連の実験操作に展開して実験計画を立
てる。最初に問題の理論式はプログラムでの処理を容易
にするために、各節で変数の添え字の昇順にリテラルを
並べ替えておく。また、2変数x、xに可能な割り
当てを全て行った溶液Tを準備しておく。
【0153】関数dna3satにおいて、最初のfo
rループのk=3、即ち、xに割り当てる値を決定す
るループについて説明する。最初にamplify関数
でT を増幅する。この場合、増幅後、Tと同じオリ
ゴヌクレオチドを持つT 、T に分注し、計3本
の溶液チューブを得る。次にkのループ内のjのfor
ループに入る。ここでは、論理式の第j番目の節の充足
性を評価する。第1の条件分岐で、j=1では第1節の
第3リテラルwがxと等しいかを調べる。これは、
電子計算部21で予め論理式を調べ、then以降を実
行するかどうかを判断し、実験計画に入れるかを決定し
ておく。ループ内第2の条件分岐で第1節の第3リテラ
ルwが¬xであるのでthen以降を実行する。
【0154】関数getuvsatは下段に別に定義さ
れており、それぞれの引数、Tに対しては最初にamp
lifyで生成したT チューブ(内容および濃度は
と同じ)、uに対してはu(=x)、vに対し
てはv(=x)を入力する。最初のT はT
の中からX を含むオリゴヌクレオチドを抽出して溶
液を生成する。これにより、T は{X
}という内容になる。次にT' はT
の中からX を含まないオリゴヌクレオチドを抽出
して溶液を生成する。これによりT' は{X
、X }という内容になる。3つ目にT
は、T' の中からX を含むオリゴヌクレオチ
ドを抽出して溶液を生成する。これによりT ={X
、X }という内容になる。ここで
のこの行は無視可能というコメントがあるが、生成され
る溶液の内容を見れば明白である。実験上エラーが生じ
ることのないように加えた行であるので、念のための実
行する。無視した場合は、前行のT' をT と読
み替える。4番目のT はT の中からX を含
むオリゴヌクレオチドを抽出して溶液を生成する。これ
により、T ={X }という内容になる。
最後に関数mergeにより、T とT が混合さ
れてTが生成され、returnにより出力される。
は{X 、X 、X
となりもとのdna3sat関数では溶液T と名を
代えて扱うことになる。Tの内容は第1節の第1、第
2のリテラルがx∨xなる形であるので、第2リテ
ラル¬xがいかなる値であろうとも第1節の第1節が
真であるx、xへの値の割り当ての組を示してい
る。以上により、関数getuvsatは既に2つのリ
テラルに値が割り当てられている節について、3つ目の
リテラルの変数に何を割り当ててもその節が真であるよ
うな割り当てを表すオリゴヌクレオチドを選別する関数
である。
【0155】次に、再びdna3sat内のk=3ルー
プでjを1つ増加させ、j=2で、第2節の計算に移
る。この節では第3リテラルは第1節と同様に¬x
ので条件分岐に効いてくるのは下段のif文である。第
1節と同様にgetuvsatを実行する。注意すべき
は先に行ったj=1でT を生成していることであ
る。また、vはv=¬xなる否定が入ったリテラ
ルなので、getuvsat関数のT を求める式に
おいてX は、X と読み替えて関数getを実行
する。こうすれば、j=2で新たに得られるT は、
{X 、X }となる。
【0156】以降、順にj=10まで実行する。途中、
例えば、5節目以降のように3番目のリテラルがk=4
である場合は、jの値をインクリメントし、ループの次
の処理を行う。k=3で10節分のループが終了すれ
ば、T の中の3’末端がX のオリゴヌクレオチド
に真を表すX をappendする。また、T
の3’末端がXのオリゴヌクレオチドに偽を表すX
をappendする。このあとappend後の溶液
をmergeし、k=4のループに移る。k=4のルー
プが終了すれば、最終的にループを脱し、Tチューブ
を関数detectで処理する。
【0157】以上のように計算を実行するので、変数の
数をn、節の数をmとすると各基本コマンドの実行回数
は、 (n−2)×(amplify+2×append+merge)+m×(3×get+
merge) である。即ち、変数の数と節の数にほぼ比例した時間で
3SAT問題を解くことができる。
【0158】また、本発明において、detect部分
は、必ずしも反応結果を測定することを意味せず、反応
結果が電子計算部へ利用可能に情報伝達されるか、或い
は利用者が利用できる形態に変化または抽出された状態
に特徴化されていればよい。また、detect部分は
測定可能な状態に特徴化されていればよく、測定を人が
行ってもよい。従って、本発明において、分子計算部
は、反応が終了すると共に利用者が利用できるような生
成物または成果物を提供するところまでを実施すればよ
い。利用者は、本発明の装置により提供された生成物ま
たは成果物を種々の目的、例えば、診断、治療、創薬、
学術的研究、生物学的データベースの構築、生物学的情
報の解読等へと最も効率よく利用することができる。
【0159】
【実施例】分子計算 上述で説明した数4のプログラムを本発明の分子計算装
置を用いて実行した。装置の構成を以下に記す。該プロ
グラムを実行した装置の構成を示す。本装置はプレシジ
ョン・システム・サイエンス(PSS)社の核酸自動抽
出装置SX8Gを改造して製作した。本装置は、制御の
ためのインテル社製PentiumIIICPU(登録
商標)を搭載した、OSがWindows98(登録商
標)のコンピュータ(電子計算部21に対応)と、演算
反応を実際に行うための試薬槽と反応槽、XYZの位置
制御のできるピペッタと、予備のピペッタ用チップ、温
度をコンピュータで制御できるサーマルサイクラ(MJ
Research社製のPTC−200)からなる反
応ロボット(分子計算部22に対応)からなる。分子計
算部22の上から見た反応用部材の配置を図2に示す。
【0160】これらの反応容器の間で溶液の受け渡しが
行われる。ストレプトアビジン磁気ビーズによるオリゴ
ヌクレオチドの抽出は、ピペッタの特殊チップとチップ
に近づけたり離したりできる永久磁石により行う。ただ
し、以上のシステムでは実行できなかった2つの操作、
即ち1μL程度の微量の酵素分注は人力で行い、関数d
etectでのキャピラリゲル電気泳動は、ベックマン
・コールター社製P/ACE−5510キャピラリ電気
泳動システムにより実行した。
【0161】試薬類とその初期配置を述べる。リガーゼ
酵素は先に述べたようにマニュアルで分注するので装置
外で保持した。分注はギルソン社製のピペットマン2μ
Lのピペッタを用いた。
【0162】Xで表される各変数の値を示すオリゴヌク
レオチドの長さは22塩基である。また、ここでX
と記した場合5’端側から順にXが真であるこ
とを表すオリゴヌクレオチド、Xが偽であることを示
すオリゴヌクレオチドの配列をもつ1本鎖オリゴヌクレ
オチドであることを示す。また、ここで、配列名
が「[]」に挟まれている場合は元の配列に相補的な配
列を意味する。このため、例えば[X ]なら
ばX に相補的なので、実際の配列は5端側か
らX に相補的な配列、X に相補的な配列の順に
なっている。
【0163】T溶液(X 、X
、X それぞれ5pmolをライ
ゲーション用緩衝溶液20μLに溶解した)をMTP3
5(即ち、マルチタイタープレート35)に保持した。
ライゲーション反応用緩衝溶液、ストレプトアビジン磁
気ビーズ、B&W溶液(TE溶液にNaClを加えて、
NaCIが1Mなる濃度にした溶液を以降このように呼
ぶ。この液はストレプトアビジン磁気ビーズにビオチン
化オリゴヌクレオチドを捕獲したり、ハイブリダイゼー
ション反応を行うときに用いる)は図2のMTP37に
保持した。
【0164】また、5’端がビオチン標識されているビ
オチン化オリゴヌクレオチド[bX ]、[b
]、[bX ]、[bX ]、[b
]、[bX ]、[bX ]、[bX
をぞれぞれ10pmoLずつB&W溶液20μLに溶解
したもの、5’端がリン酸化されているappendオ
リゴヌクレオチドpX、pX 、pX 、pX
、pX 、それぞれ10pmoLをライゲーション
緩衝溶液20μLに溶解したもの、5’端にビオチン標
識した連結オリゴヌクレオチド、[bX ]、
[bX ]、[bX ]、[bX
]、[bX ]、[bX ]、
[bX ]、[bX ]それぞれ10
pmolをライゲーション緩衝溶液20μLに溶解した
ものをMTP35に配置する。これらのオリゴヌクレオ
チド溶液および緩衝溶液などは分子計算機動作中は室温
で保持した。リガーゼ、関数detectで用いるPC
R用ポリメラーゼは装置の外で氷中で、PCR反応用緩
衝溶液は室温で維持した。
【0165】それぞれの関数に対応する反応での装置の
動作を順を追って説明する。
【0166】(a)関数amplify 関数amplifyは、左端の引数の溶液をテンプレー
トとし、PCR増幅して元の溶液の濃度に維持して複数
の溶液に分割する反応操作を符号分子の演算反応として
定義した関数である。厳密にはもとの溶液のオリゴヌク
レオチド濃度を測定してからでなければ増幅できない
が、実際には最初のTで各オリゴヌクレオチドが5p
molで20μLの溶液に溶解しているので、20μL
の溶液に各オリゴヌクレオチドが数pmo1溶解してい
るようにする。即ち、1溶液1オリゴヌクレオチドあた
り2pmolとするならば、PCR反応液の組成は次の
通りである。
【0167】 ポリメレース酵素(宝酒造)0.5μL(2.5U) 増幅DNAの溶液 1fmol程度の各々のオリゴヌクレオチドを含む dNTP混合溶液 8μL(2.5mM、付属品) 反応バッファ 10μL(10倍希釈で使用、付属品) プライマー 各オリゴヌクレオチドにforward、reverse 側とも5pmolずつ準備 滅菌蒸留水 全液量が100μLになるように加えた 増幅には宝酒造のPyrobestTM DNA Po
lymeraseのPCR増幅キットを用いた。反応温
度条件は、以下の通りである。
【0168】即ち、 1. 95℃ 30秒 2. 50℃ 30秒 3. 72℃ 60秒 1〜3を30サイクル である。
【0169】PCR反応液の量は分割する溶液の数に応
じて変えた。PCRの後、反応液からPCR産物をスト
レプトアビジン磁気ビーズ(ロシュダイアグノスティク
ス)で捕獲する。磁気ビーズ原液50μL(0.5m
g)をとり、ここから磁石により磁気ビーズのみを抽出
して液をB&W溶液50μLに置換する。この磁気ビー
ズ液とPCR反応液50μLとを混ぜてPCR産物を捕
獲する。捕獲した後、溶液をB&W溶液50μLに置換
し、88℃まで昇温して1本鎖オリゴヌクレオチドを解
離させて抽出した。
【0170】(b)関数get get(T,+S)とget(T,−S)は一連の操作
で同時に行う。
【0171】(1)抽出する溶液Tを50μL準備しサ
ーマルサイクラ38に吐出した。
【0172】(2)Tに捕獲する配列の相補鎖をビオチ
ン化したオリゴヌクレオチドを20pmolを含むB&
W溶液50μLをさらに加えて最初のハイブリダイゼー
ション反応を行った(下記反応温度条件の1,2)。
【0173】ピペッタは各MTPから液をとり反応を進
める。反応温度条件は以下の通りである。即ち、 1. 95℃ 1分 2. 25℃ 10分(1から2までは10℃/分で温
度を下げる) 3. 56℃ 3分(2から3までは10℃/分で温度
を上げる) 4. 75℃ 3分(3から4までは10℃/分で温度
を上げる) であり、ピペッティングの作業時間を確保しながらサー
マルサイクラを制御した。
【0174】(3)2の温度の途中で磁気ビーズ原液5
0μL分を分散したB&W溶液50μLを混合し、磁気
ビーズにビオチン化オリゴヌクレオチドのハイブリッド
を捕獲した。磁気ビーズは再びサーマルサイクラー96
穴MTP38に保持した。
【0175】磁気ビーズ液は装置のピペッタに一度吸い
込まれた後、ピペットのチップの中の空洞に保持され
る。このとき液を保持したチップにピペッタに取り付け
た移動可能な永久磁石を接近させてビーズを集める。こ
の間にピペットから排液して新たな溶液を吸引すれば溶
液の置換や、2本鎖核酸の相補鎖の分離を行うことがで
きる。磁気ビーズを溶液に分散するためには永久磁石を
離して数回ピペッティングを行えば十分に撹拌されて磁
気ビーズは溶液に分散する。
【0176】(4)次に3の温度条件に進む。ここでは
ハイブリダイゼーションしなかったオリゴヌクレオチド
を集めるコールドウォッシュ工程を行う。56℃にてB
&W溶液50μLにオリゴヌクレオチドを抽出しMTP
35に出力した。これがget(T,−S)の出力オリ
ゴヌクレオチド溶液である。
【0177】(5)温度条件4のホットウォッシュ工程
では4のようにさらに温度を上げて、磁気ビーズに捕獲
されているオリゴヌクレオチドをコールドウォッシュと
同様50μLのB&W溶液に抽出してMTP35に出力
した。これがget(T,+s)の出力オリゴヌクレオ
チド溶液である。
【0178】(c)関数merge ごく簡単なピペッティング操作で実行した。ピペッタで
混合する溶液をそれぞれ吸引し、全て1箇所のMTPの
ウェルに集めて混ぜることで実現した。
【0179】(d)関数append 図16に示す反応である。appendするオリゴヌク
レオチドが異なれば、別々の反応チューブで反応して同
時に行った。
【0180】(1)append反応する溶液を20μ
L、MTP35よりピペッタで吸引し、サーマルサイク
ラ38に吐出する。そのほか、append反応に必要
な下記の溶液を反応用ウェル38まで運搬した。
【0181】append反応には、New Engl
and Bio Labs社のTaqリガーゼとその専
用緩衝溶液とを用いた。
【0182】反応溶液は以下の通りである。
【0183】 Taqリガーゼ(NEB) 0.5μL(20U) 反応DNAの溶液 原液20μl 反応バッファ 12μL(10倍希釈で使用、付属品) 連結オリゴヌクレオチド 各10pmol appendオリゴヌクレオチド 各10pmol 滅菌蒸留水 全液量が120μLになるように加えた。
【0184】(2)ライゲーション反応を行った。サー
マルサイクラの制御は下のように行った。ライゲーショ
ン反応を行ったのは温度条件2の時である。反応温度条
件は以下の通りである。即ち、 1. 95℃ 1分 2. 58℃ 15分(1から2までは10℃/分で温
度を下げる) 3. 25℃ 10分(2から3までは10℃/分で温
度を下げる) 4. 70℃ 3分(3から4までは10℃/分で温度
を上げる) 5. 74℃ 3分(4から5までは10℃/分で温度
を上げる) 6. 88℃ 3分(5から6までは10℃/分で温度
を上げる) とした。
【0185】(3)反応温度条件3の25℃に下がって
から磁気ビーズによる捕獲を行った。このとき、磁気ビ
ーズを分散している溶液は捨て、ビーズをチップ内に保
持したままサーマルサイクラ38からライゲーション緩
衝溶液を直接ピペッタで吸引した。すなわちライゲーシ
ョン緩衝溶液中で捕獲反応を行った。緩衝溶液が捕獲の
ための液でないため念のため60回吸引吐出を行い十分
な量を捕獲できるようにした。磁気ビーズはサーマルサ
イクラ38に保持した。
【0186】(4)続いて1回目のコールドウォッシュ
を行った。核酸ハイブリッドの長さと溶液の塩濃度から
70℃が適温である。4の70℃まで昇温したらサーマ
ルサイクラ38から磁気ビーズ液を吸引し、永久磁石で
ビーズを集め、溶液のみをMTP35に吐出した。この
溶液は廃液である。
【0187】(5)そのまま、ピペッタでMTP37の
B&W溶液50μLを吸引し、永久磁石を離して磁気ビ
ーズを分散させてサーマルサイクラ38に戻した。サー
マルサイクラ38では反応温度5にし、2回目のコール
ドウォッシュを実行した。ここでは(4)と同様に適温
になったらサーマルサイクラ38から吸引し、永久磁石
でビーズを集めてB&W溶液のみをMTP35に吐出し
た。この溶液も廃液である。
【0188】(6)このあと、さらに再びピペッタでM
TP37のB&W溶液50μLを吸引し、永久磁石を離
して磁気ビーズを分散させてサーマルサイクラ38に戻
した。サーマルサイクラ38で反応温度6になったと
き、溶液中にappend反応の済んだ1本鎖オリゴヌ
クレオチドが解離してくるのでこれをサーマルサイクラ
38から吸引し、永久磁石でビーズを集め、溶液のみを
MTP25に吐出し保持した。
【0189】(e)関数detect 図18に示す反応と、キャピラリゲル電気泳動による検
出でおこなった。最終的に得られた解を表すオリゴヌク
レオチドを含むであろう溶液をテンプレートとし、gr
aduated PCRを行った。PCRはプライマー
の組ごとに反応液を分けて行い、それぞれのPCR産物
の有無および長さを検出することで解の配列を調べた。
【0190】(1)解を含むと考えられるオリゴヌクレ
オチド溶液をテンプレートとする。プログラム中でam
plifyによりオリゴヌクレオチドの濃度は維持され
ているので、それからテンプレート濃度を推定し液量を
定める。
【0191】PCR反応液の組成は、 ポリメラーゼ酵素(宝酒造) 0.5μL(2.5U) 増幅するDNAの溶液 1fmol程度の各々のオリゴヌクレオチドを含むだけの 量 dNTP混合溶液 8μL(2.5mM、付属品) 反応バッファ 10μL(10倍希釈で使用、付属品) プライマー 各オリゴヌクレオチドにforward,reverse側とも5pmolず つ準備 滅菌蒸留水 全液量が100μLになるように加えた とした。
【0192】増幅には宝酒造のPyrobest DN
A Polymerase PCR増幅キットを用い
た。反応温度条件は、 1. 95℃ 30秒 2. 50℃ 30秒 3. 72℃ 60秒 1〜3を30サイクルであっ
た。
【0193】本実験で用いたプライマーは次の12組で
ある。
【0194】(X ,[X ])、(X ,[X
])、(X ,[X ])、(X ,[X
])、(X ,[X ])、(X
[X ])、(X ,[X ])、(X
[X ])、(X ,[X ])、(X
[X ])、(X ,[X ])、(X
[X ])。
【0195】これらをMTP35の異なるウェルに保持
しておく。PCR反応時にプライマー溶液はピペッタで
吸引してサーマルサイクラ38の異なるウェルに吐出
し、反応に必要な溶液を加えてサーマルサイクラ38を
設定通りに動作させれば反応は完了する。この作業は容
易に自動化できる。この後のキャピラリゲル電気泳動装
置での試料のキャピラリヘの導入も自動化できる。キャ
ピラリゲル電気泳動ではペックマン・コールター社のd
s1000ゲルキットを使用した。プライマーX
はFITCが標識されているため泳動像が観察された。
今回の実施例では以上のdetectの作業はキャピラ
リゲル電気泳動も自動では行わず、マニュアルで行っ
た。以上の方法でプログラムの各関数を実行して得られ
た結果を図21に示した。例えば関数detectに対
応する配列の同定方法としては、図19に示すような手
法がある。
【0196】分子計算装置によるゲノム情報解析という
計算パラダイムの有効性を示すために、実際に遺伝子の
発現情報解析を行うDNA計算の実験を行った。計算は
ダイナミックプログラミングで3SATの問題を解くと
きに使用するget、append、amplify、
mergeおよびdetectの基本命令を用いて実行
することができる。最初の計算反応はエンコード反応で
ある。単一試験管内で行える計算反応で、遺伝子の転写
産物の情報がappend命令によりDCNに変換され
る。変換テーブルは、アダプター分子Aiで表現され、
2桁n進数のDCNへ1:1で変換される。200種の
DCNは、2桁100進数のDCNとして利用すること
により、最大10,000種類の遺伝子をエンコードす
ることができる。その後、amplify命令により増
幅とn本の試験管への分注反応が行われる。最後にn本
の試験管に対してappendとget命令によりDC
Nをデコードする計算反応が行われる。デコード反応は
n本の試験に対して並列に行うことができる。移植断片
対宿主病関連の転写産物に特異的な配列を有するDNA
オリゴヌクレオチドを入力データとして実験を行ったと
ころ、計算反応が特異的且つ定量的に進むことが確認さ
れた。
【0197】DCNに対するDNA計算により、遺伝子
の発現情報解析を行う方法は、DNAチップで直接に転
写産物分子を解析する方法に比べて優れた点をいくつか
有している。性質が一様なDCNに変換してから増幅す
るので、もとの頻度分布を崩さずに増幅して解析するこ
とが可能である。また、DCNデコードで「get」命令
を並列に行うためのDNAチップは、同じDCNの体系
である限り同じものを使用することができる。その上、
DNAプローブの数も大幅に少ない。DNAチップを作
製する手間とコストが大幅に軽減される。更に、正規直
交化されたプローブのハイブリダイゼーション反応は最
適化されており、正確な計算処理を行うことが可能であ
る。また、転写産物分子をラベルする必要はなく、その
効率のばらつきによる誤差も生じない。これらの利点に
加えて単なる発現プロファイルの計測にとどまらず、プ
ロファイルに関する様々な情報解析をDCNに対するD
NA計算で行うことが可能である。
【0198】なお、以上は5つの基本関数(関数amp
lify、関数get、関数merge、関数appe
nd、関数detect)を例に挙げたが、これらに限
定されるものではない。例えば、関数encode、関
数decode、関数cleaveなども、分子計算機
における計算を定義するのに有効である。
【0199】関数encodeとは、分子の入った試験
管Tに特定の配列siを含む分子が存在したときに、そ
れに1:1に対応した配列ciを出力する関数であり、
例えばencode(T,s1,s2,…,sn,c1,c
2,…,cn)などで表現される。
【0200】関数decodeとは、分子の入った試験
管Tに特定の配列siを含む分子が存在したときに、s
iに隣接する配列ciの相補配列を含む分子を出力する
関数であり、例えばdecode(T,si)などで表
現される。
【0201】関数cleaveとは、分子の入った試験
管Tの中の特定の配列sを含む分子を切断する関数であ
り、例えばcleave(T,s)などで表現される。
この関数cleaveは2通り存在する。第1は、試験
管Tの中の分子を特定の配列sで切断する関数、第2
は、分子の入った試験管Tの中の特定の配列から特定数
の塩基だけ離れた配列を切断する関数である。この関数
cleaveは、分子計算部22では、制限酵素の切断
として定義される。
【0202】もちろん、この3つの基本関数を含めた8
つの基本関数のみで表現する必要は無く、他の基本関数
を設定することも可能である。
【0203】以下の表2に、基本関数と、電子計算部2
1における処理体系としての表現、分子計算部22にお
ける処理体系としての表現を示す。なお、分子計算部2
2における処理体系は、表2に示したものに限定される
ものではなく、あくまで電子計算部21における処理体
系を表現する一態様である。
【0204】表2に示すように、基本関数(手続または
関数)は、符号分子の演算反応に対応付けて定義され、
変数及び定数は、分子を核酸配列に基づき符号化した符
号分子に対応付けて定義されている。
【0205】
【表2】
【0206】このような本発明の態様によれば、上述し
たような分子計算機の高い並列計算性を活かし、しかも
分子計算機だけでは実現することが難しい機能を電子計
算機により補完することにより、操作する者が分子計算
のための反応操作手順や符号化分子の割り当て等を行う
必要はなくなる。
【0207】また、本計算装置を用いて遺伝子解析を行
った場合、特定の配列を有する核酸を標的としてそれら
の存在または不存在を評価することや、またそれによっ
て、例えば、遺伝子型や遺伝子の発現の状態を決定する
ことが、小さい実験誤差で、低コストで、且つ簡便に行
うことが可能である。
【0208】更にまた、本発明は、上述の記載に基づい
て以下の方法および分子計算用ソフトウェアも提供す
る。即ち、電子計算部と分子計算部とを、電気学的プロ
グラムが認識可能に表現された分子情報に基づいて一体
的に機能させることを特徴とする分子計算方法を提供す
るものである。
【0209】また、電子計算部と分子計算部とを具備す
る分子計算装置に適用するためのソフトウェアであっ
て、前記電子計算部および/または前記分子計算部に適
用され、前記電子計算部による計算作業と前記分子計算
部による計算作業とを、各計算部で電気学的に認識可能
な情報形式で機能させることを特徴とする分子計算用ソ
フトウェア、詳しくは、分子計算部により計算した情報
を、電子計算部の電気学的プログラムに適合するような
情報形式に変換する機能を有することを特徴とする分子
計算用ソフトウエア、更に詳しくは、電子計算部により
計算した情報を、分子計算部の計算作業に適合するよう
な情報形式に変換する機能を有する分子計算用ソフトウ
エアを提供することである。
【0210】本発明の分子計算ソフトウェアを用いるこ
とにより、上述の本発明の計算装置の実行を容易に行う
ことが可能である。また、当該分子計算ソフトウェア
は、本発明の計算装置を総括して管理しても、またその
構成要素の一部分を独立して管理しても、または構成要
素の幾つかの部分を組み合わせて連動して管理してもよ
い。
【0211】II.遺伝子解析の適用例 1.概要 本発明者らは、遺伝子の解析を、核酸分子を入力データ
として用いる計算として捉えるというオリジナルなアイ
デアを着想した。この着想は、Iで示した分子計算装置
を用いて実現可能である。例えば、発現mRNAおよび
ゲノム上の遺伝子を符号核酸のデータに変換し、それら
データの論理和、論理積、否定を計算することで、遺伝
子型判定や特定の疾患での遺伝子の発現条件を求めるこ
とができる。
【0212】以下に示す2.〜4.の第1の例〜第3の
例は、Iに示した分子計算装置を適用して実現される。
【0213】2.分子計算装置を遺伝子解析に適用する
第1の例 本発明の1態様に従う分子計算装置に適した問題の例
は、NP完全問題や3SAT等の純粋に数学的問題、ゲ
ノム情報解析のように入力データが核酸分子で与えれら
れるような問題、機能性分子の設計、および機能の評価
を電子コンピュータで行うことが困難な問題等である。
【0214】以下に、分子計算装置により行う更なるゲ
ノム情報解析の例を示す。まず、ゲノム情報を正規直交
化DNA塩基配列で表現した数字である体系に変換す
る。その後、そのDCNに対するDNA計算を純粋に数
学的問題を解くときのように行い、その計算結果からも
のゲノム情報を解析する。
【0215】この方法では、以下に示すような2種類の
核酸プローブ、即ち、プローブAおよびプローブBが使
用される(図22(a))。
【0216】プローブAは、標的核酸の一部の領域の塩
基配列Fに相補的な配列F’と、これに結合した結合分
子からなる。
【0217】ここで、結合分子は、互いに特異的に高親
和性を有する2つの物質の内の何れか一方の物質であ
る。例えば、ビオチンまたはアビジン若しくはストレプ
トアビジン等である。また、結合分子は、直接に配列
F’に結合しても、或いは任意の配列を解して間接的に
配列F’に結合してもよい。間接的に結合する場合の任
意の配列は、如何なる塩基配列であっても、如何なる塩
基数であってもよい。好ましくは、標的核酸上の塩基配
列に非相補的な配列である。
【0218】プローブBは、標的核酸の一部の領域の塩
基配列Sに相補的な配列S’とフラッグとからなる。本
例におけるフラッグは二本鎖からなる。前記二本鎖は、
複数のユニットからなる任意の配列を有す。また、フラ
ッグは、これ自身が標的核酸と結合はせず、また、これ
らは互いに如何なる相互作用も示さないことが必要であ
る。
【0219】本方法に使用される配列F’および配列
S’は、1以上の塩基数を有し、より好ましくは15以
上の塩基数を有する。
【0220】ユニットの設計例を図23(a)に示す。
フラッグFLの複数のユニットの各1ユニットは、10
塩基数以上としてよく、より好ましくは約15塩基数で
ある。フラッグFLのユニット数は、何れでもよいが、
解析の容易さから4ユニットが好ましい。しかし、これ
に限られるものではない。
【0221】複数の標的核酸を同時に検出する場合に
は、多種類のユニットを組み合わせてフラッグFLを構
築する。たとえば、SD、D0、D1、EDの4ユニッ
トからなるフラッグFLを設計する場合を例とすると、
先ず、22種類のユニットを設計し、その中から2種類
を選択してプライマーとなるSDユニットと、もう1つ
のプライマーであるEDユニットとする。残りの20種
類のユニットを用いて、各標的核酸の種類毎に、選択す
る2つのユニットの種類を変えることによりD0、D1
を設計すると、100種類の異なる核酸配列を検出する
ことが可能である(図23(a))。
【0222】22種類のユニットは、正規直交化された
塩基配列により設計することが好ましい。正規直交化さ
れた塩基配列はTm値が揃っており、相補配列以外とは
安定したハイブリッドは形成しない。また、相補配列と
のハイブリッド形成を阻害するような安定した2次構造
は形成しない。これにより、最終的な検出時のミスハイ
ブリを少なくし、ハイブリの形成速度を上げることが可
能になる。したがって、検出精度を向上すること、およ
び検出時間を短縮することが可能になる。また、ユニッ
ト数を増すことや、ユニットの種類を増すことにより、
10000種類の異なる核酸配列をも検出することが可
能である。
【0223】図22(a)〜図22(i)を用いて、本
例の方法を更に説明する。図22(a)に、4ユニット
からなるフラッグFLの例を示した。該4ユニットは、
ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase cha
in reaction;以後、PCR増幅またはPC
R反応と称す)においてプライマーとなるSDユニット
と、標的核酸の種類を認識するための認識用ユニット、
即ち、D0ユニットおよびD1ユニットと、およびもう
1つのプライマー配列であるEDユニットとからなる。
これらの各ユニットは、後の工程においては、夫々が読
み取り枠となる。
【0224】検出は、まず上記のプローブAとプローブ
Bを、標的核酸と混合する(図22(a))ことにより
行う。このとき、試料に含まれる標的核酸は、複数の異
なる核酸分子群であってもよい。例えば、検出されるべ
き標的核酸の種類が100種類以下であるならば、D0
ユニットは、D0−1からD0−10の10種類の中か
ら選択され、且つD1ユニットは、D1−1からD1−
10の10種類の中から選択される(図23(a))。
【0225】次に、プローブA、プローブB、および標
的核酸をハイブリダイゼーションに適した条件で一定時
間インキュベーションし、ハイブリダイゼーションを行
なう(図22(b))。ハイブリダイゼーションの条件
は、例1に示す通りでよい。
【0226】かかるハイブリダイゼーションにより、プ
ローブAおよびプローブBの両方が同一の標的核酸上に
結合する(図22(b))。
【0227】次に、標的核酸にハイブリダイズしたプロ
ーブAおよびプローブBを連結する(図22(c))。
連結の条件は、例1に示す通りでよい。
【0228】また、フラッグFLのTm値は、配列F’
およびS’より高い温度に設計することが好ましい。こ
れにより本検出方法におけるハイブリダイゼーション、
ライゲーションおよび変性等の操作の加熱または冷却の
際に、検出感度の低下をもたらすフラッグの変性を防ぐ
ことが可能である。
【0229】次に、得られたフラッグFLの情報をB/
F分離する(図22(d))。具体的には、プローブ
(A+B)に具備される結合分子を、その対となるべき
結合分子を介して固相担体に補足する(図22
(e))。
【0230】前記固相担体は、基板、ビーズ等の粒子、
容器、繊維、管、フィルター、アフィニティ・カラム、
電極等を用いることが可能であるが、好ましくはビーズ
である。
【0231】次に、結合分子に捕捉された状態で、プロ
ーブ(A+B)のフラッグFLを変性し一本鎖にする
(図22(f))。得られた液相中の一本鎖配列FL’
に対してPCR増幅を行なう(図22(g))。上述し
たように、予めフラッグFLには、2つのプライマー配
列SDおよびEDが配置してある。従って、このプライ
マー配列を利用してPCR反応が容易に行ない得る。ま
た、このとき、PCRに使用する2つのプライマーの一
方、たとえばSD配列に、ビオチン等の結合分子を結合
しておくことが好ましい。このときのPCRの詳細な条
件は、設計したフラッグFLに依存する。
【0232】続いて、該PCR反応の終了後、結合分子
を固相した固相担体に結合することによって、PCR産
物である二本鎖配列を回収する(図22(h))。ここ
で、固相化された担体は、前記結合分子と対になる結合
対のもう一方の物質である。さらに、変性により配列F
L’を除き、一本鎖配列FLのみを固相担体上で回収す
る(図22(i))。
【0233】続いて、固相上の一本鎖フラッグ配列FL
の解析を行なう。まず、一本鎖フラッグ配列FLが結合
した前記固相担体を10等分する(D1ユニットがD1
−1からD1−D10の場合)。各々に、標識分子と結
合したD1−1’からD1−10’配列の一つおよび全
てのD0’配列(D0−1’からD0−10’)を加
え、フラッグ配列FLにハイブリダイズする。
【0234】続いて、ハイブリダイズした2つの核酸分
子をライゲーションにより連結する。ここで、ライゲー
ションの条件および標識物質に関する定義は上述した通
りである。その後、変性により連結された分子を液相に
回収する。
【0235】得られた標識された核酸分子の解析は、予
めD0−1からD0−10の核酸分子を固相化したDN
AチップまたはDNAキャピラリ等に対して、ハイブリ
ダイズすることにより行うことができる。特に、DNA
キャピラリは、D0−1からD0−10で10等分に分
けられたものを同時に処理できるので、これにより分析
は容易になるであろう。
【0236】例えば、各10種類のD0−1からD0−
10と、D1−0からD1−10の配列を用いてフラッ
グFLを設計した場合、図23(a)の1の位置にはD
0−1に相当する配列が固定され、標識されたD1−
1’分子と連結された拡散分子63にハイブリダイズさ
れる。同様に、他の位置には列により相当するD0配列
が固定され、行により相当するD1’分子と連結された
拡散分子にハイブリダイズされる。このような行列の配
置を、後述するDNAキャピラリに対して用いる(図2
3(b))と解析が容易に行える。
【0237】ここでは、10種類のユニットを用いた例
を挙げたが、ユニットの種類は10種類に限られるもの
ではなく、それ以下でも、それ以上でもよい。
【0238】ここで使用する「DNAキャピラリ」と
は、標的核酸を検出するための装置であり、その内側に
該標的核酸に対する相補的配列が結合されており、該相
補的配列に標的核酸を結合することにより、該標的分子
を検出する装置をいう。図23(b)に示す通り、多数
のDNAキャピラリを同時に使用し、且つ斜線で示した
部分に、互いに異なるプローブを配置することにより、
同時に多くの標的核酸を検出することが可能である。
【0239】また、本方法では、フラッグ配列FLの各
ユニットには正規直交化配列が使用されているので、実
施されるハイブリダイズの反応温度等の条件を均一化す
ることが可能である。これにより、ミスハイブリを防止
でき、高い精度が得られる。また、同一条件の下で一度
に多くの解析を行なうことが可能であるため、検出時間
の短縮化を達成することが可能である。また、本方法に
より複雑なゲノム情報をDNAの塩基配列で表現した数
値に変換することも可能となり、DNA分子反応を利用
した計算を行うことにより、多種類の情報や、互いに連
鎖した複雑な遺伝子情報を容易に解析することが可能に
なる。また、コード化したのちに容易にコード化核酸を
増幅できるので、少ないコピー数の標的配列であっても
正確に且つ定量的に検出することが可能である。また、
コード化することにより、多くの情報を圧縮することが
可能である。従ってDNAチップまたはキャピラリーア
レイ等の検出手段の所要数を節約することが可能であ
る。
【0240】ここで使用する「エンコード反応」とは、
ある塩基配列を、正規直交化塩基配列で表現されるコー
ドに変換することをいう。上述の図22(a)〜図22
(f)の工程がこれに相当する。
【0241】また、ここで使用する「デコード反応」と
は、前記で変換されたコードの読み取りを行ない、それ
により元の情報を復元することをいう。上述の図22
(a)〜図22(i)の工程がこれに相当する。
【0242】この方法では、上述したような1種類の標
的核酸を検出するのみに留まらず、複数種類のフラッグ
配列を設計すれば、同様な工程を経ることにより複数種
類の標的核酸を同時に検出することも可能である。
【0243】3.分子計算装置を遺伝子解析に適用する
第2の例 本発明の更なる1側面では、上述のような分子計算装置
を用いて、ゲノム情報解析を行う一般的な計算方法論が
提案される。特に、該ゲノム情報解析方法では、以下の
ような利点が得られる。即ち、そのような方法では、先
ず、特定の遺伝子の塩基配列に対して、任意に設計した
所望配列を任意に割り当てる。そして、その割り当てに
従って、該特定の遺伝子の塩基配列を設計された配列に
変換し、変換後に得られた安定性の高い配列を演算に使
用することが可能である。従って、反応の設計における
自由度が高くなり、且つ正確な反応を実施することが可
能になる。
【0244】(a)第1の実施の形態 (1)概要 遺伝子解析に適用する本発明の第1の実施の形態につい
て述べる。第1の実施の形態は、核酸分子による演算に
よって、遺伝子の有無を判定する遺伝子解析の例を示
す。
【0245】その概要は以下の通りである。まず、細胞
で発現された遺伝子群を基にcDNA群を作製する。得
られたcDNA群に含まれる発現遺伝子と、含まれない
非発現遺伝子に関する情報、即ち、標的遺伝子の有無に
関する情報を、人工的に設計した配列をもつDNA分子
の形態に変換し、表現様式を変更する。この変換によっ
て得られたDNA分子を、演算用核酸に対してハイブリ
ダイゼーションする。以上の過程が演算解析の過程であ
る。ここで、前記DNA分子は、特定の標的遺伝子が存
在しているか否かの情報を担う一種の信号として機能す
る。
【0246】例えば、ある標的遺伝子が存在することを
確認することによって、当該遺伝子が発現遺伝子である
ことが判定できる。或いは、その標的遺伝子が存在しな
いことを確認することによって、当該遺伝子が非発現遺
伝子であることが判定できる。従って、本解析方法で
は、サンプル中に含まれる標的分子を検出することが可
能であるばかりではなく、同時に、サンプル中に含まれ
ない標的分子に関しては、それが存在しないとい情報を
得ることが可能である。
【0247】(1.1)準備 本発明の1態様である計算方法には以下のような分子が
必要である。実質的な計算に先駆けて、以下の分子を調
製することが必要である。当該調製はそれ自身公知の方
法により行うことが可能である。
【0248】溶液に含まれるcDNAを検出するために
図24に示す2つのプローブ、即ち、点線で囲まれたa
とAを準備する。aは、標的のcDNAの一部の
配列に相補的な配列を含み且つ5’端にビオチンを標識
したオリゴヌクレオチドである。Aなるオリゴヌクレ
オチドは部分的にハイブリダイゼーションにより2本鎖
になったオリゴヌクレオチドである。Aを構成する2
本鎖のうちの一方のオリゴヌクレオチドは、人工的に設
計されたSD、DCNおよびEDなる塩基配列を3’
端側に有し、標的のcDNAの一部分の配列に相補的で
あり且つa分子の標的に相補的な配列に隣接するよう
な配列を5’端側に有する。また、前記人工的に設計し
た塩基配列は、当該相補的な配列よりも3’末端側に配
置される。また、Aの標的cDNAに相補的な配列の
5’端はリン酸化されている。2本鎖Aを構成するも
う1方の鎖はSD、DCNおよびEDの配列に相補的
な配列をもつオリゴヌクレオチドである。aおよびA
は、検出したい標的遺伝子毎に任意に設計する。ここ
でいう「標的遺伝子」とは、溶液中に存在するまたは存
在しないことを検出したい遺伝子である。またこのと
き、DCNの配列は標的ごとに異なる配列になるよう
に設計し、SDおよびEDはすべてのAで共通する配
列になるように設計する。これらの人工的な配列は、任
意に設計可能であるので、所望するTm値を設定するこ
とが可能である。従って、安定に且つミスハイブリダイ
ゼーションの少ない反応を行うことが可能である。
【0249】更に、図28に示すような5’端にビオチ
ン標識をしたSD配列と同じ配列を有するプライマー1
と、ED配列に相補的な配列を有するプライマー2が必
要である(図28)。
【0250】また更に、図31に示すような「標的が存
在すること」を示すDCNに相補的な配列を有する存
在オリゴヌクレオチド3(図31)と、「標的が存在し
ないこと」を示すDCN に相補的な配列を有する不
存在オリゴヌクレオチド6(図35)が必要である。
【0251】また、図32に示すような反転オリゴヌク
レオチド4が必要である。これは、DCNに対応する
ように人工的に設計され且つDCNとは異なる配列を
有した塩基配列であるDCN を5’端側に具備し、
その3’端側にはDCN配列を具備するオリゴヌクレ
オチド(図32)である。
【0252】(1.2)存在分子と不存在分子への変換 本発明の方法では、まず、サンプル中に、特定の標的分
子が存在しているという情報を「存在分子」に変換し、
特定の標的分子がある系に存在していないという情報を
「不存在分子」に変換する。ここで使用する「存在分
子」と「存在オリゴヌクレオチド」の語は互いに交換可
能に使用される。また「不存在分子」と「不存在オリゴ
ヌクレオチド」も同様に交換可能に使用される。
【0253】このような分子の存在、不存在を分子形態
表現に変換する方法について図24から図35を用いて
説明する。図24から図45は、それぞれの工程におけ
る系に存在する分子を模式的に示したものである。
【0254】図中、DNAを矢印により示し、矢印の元
部をDNAの5’端とし先端を3’端とする。矢印の途
中に入る該矢印への短い垂線は、塩基配列の区切りを示
す部分である。また、図中の矢印の近くに示す、
「a」、「A」および「DCN」等のアルファベットは
配列の名前を示す。また、「a」、「A」および「DC
N」等のアルファベットに付された添え字「i」および
「k」は整数であり、それぞれの配列が、どの遺伝子に
対応するかを表示するために付されたものである。ここ
では「i」および「k」により任意の配列が示される。
また、ここでは便宜的に「i」は発現遺伝子を、「k」
は非発現遺伝子を示す。また、図中、配列名の上に線が
引かれている場合は、相補的な配列を示す。図中の斜線
のある円はビオチン分子を示し、白い大きい円は磁気ビ
ーズを現す。磁気ビーズから右横に伸びる黒い十字は、
該磁気ビーズに固定されたビオチン分子と特異的に結合
するストレプトアビジン分子を模式的に示している。
【0255】a.「標的が存在する」という情報の「存
在分子」への変換 標的が存在する場合の存在分子への変換は図24から図
42に示す工程を逐次的に行うことにより実施される。
【0256】まず、図24を参照されたい。上述の通り
合成したaおよびAを、Taqライゲースのような
高温で活性の高い酵素の反応バッファ中でcDNAと反
応させる。但し、このライゲーション反応の温度はA
オリゴヌクレオチドの2本鎖部分が解離しない温度とす
る。この反応の結果、標的が存在した場合は、図25の
ようにライゲースによりaとAは連結される。次
に、この反応溶液から図26に示すようにストレプトア
ビジンを表面に結合した磁気ビーズにて前記連結オリゴ
ヌクレオチドを抽出する。このとき、未反応のa分子
もビーズに捕獲されるが、以後の反応には関係しない。
【0257】続いて、熱をかけることで、磁気ビーズで
捕獲したAとaの連結分子からA部分の相補鎖を
分離抽出する(図27)。この操作によって、最初の溶
液にcDNAが存在していれば、それに対応するDCN
配列に相補的な配列を含んだオリゴヌクレオチドが抽
出される(図27)。この抽出オリゴヌクレオチドをテ
ンプレートとして、5’端にビオチン標識をしたSD配
列と同じプライマーと、ED配列に相補的なプライマー
にて図28のようにPCR増幅反応を行う(図28)。
これにより存在していると判明した遺伝子を検出するD
CN配列が増幅される。
【0258】このPCR増幅による2本鎖の産物を、図
29に示すようにストレプトアビジン結合磁気ビーズに
より捕獲する(図29)。捕獲した2本鎖のPCR産物
を捕獲したままで熱をかけて1本鎖にし、解離させた相
補鎖を緩衝液交換により除去する(図30)。続いて図
31のように、DCNに相補的な配列をもつ存在オリ
ゴヌクレオチドを、ビーズに捕獲されたPCR産物にハ
イブリダイズする(図31)。このハイブリダイゼーシ
ョンの後、過剰な存在オリゴヌクレオチドを除去し、続
いて、改めて熱をかけることによってビーズに捕獲され
ているDCNの相補鎖(即ち、存在オリゴヌクレオチ
ド3)をバッファ中に抽出する。ここで抽出されたDC
に相補的な塩基配列を有する存在オリゴヌクレオチ
ド3が、もとのcDNA溶液中に標的遺伝子が存在する
ことを示す存在分子である。
【0259】b.「標的が存在しない」という情報の
「不存在分子」への変換 上述の工程により、存在した標的遺伝子を、それが存在
するという情報を示す存在分子(即ち、存在オリゴヌク
レオチド)に変換した後で、存在しないという情報をこ
れを示す分子(即ち、不存在オリゴヌクレオチド)に変
換する。標的が存在しない場合には、存在しなかったこ
とを示す不存在オリゴヌクレオチドが抽出される。この
抽出は以下の通りに実施される。
【0260】予め、図32にあるような反転オリゴヌク
レオチドを全ての検出対象の遺伝子のDCNについて準
備する。上述した通り、反転オリゴヌクレオチドは、D
CN に対応するように人工的に設計され、且つDCN
とは異なる配列を有した塩基配列DCN を5’端
側に具備し且つ3’端側に隣接してDCN配列を具え
たオリゴヌクレオチドである。このような反転オリゴヌ
クレオチドと存在分子とのハイブリダイゼーション反応
を利用することにより、「存在しない標的」を検出可能
な「不在分子」に変換することが可能である。
【0261】まず、図32に示す工程において、反転オ
リゴヌクレオチド4に対して、図31の過程で抽出した
発現遺伝子に対応するDCNの存在オリゴヌクレオチ
ド33をハイブリダイズし、ポリメラーゼにより伸長反
応を行う(図32)。その結果、発現遺伝子のDCN
は伸長し、DCN の配列の部分まで相補鎖が合成さ
れる(図32)。一方、図33の通り、標的分子が非発
現遺伝子(ここではDCNと示す)であった場合、D
CNに相補的なオリゴヌクレオチドは反応液中に存在
しないため、反転オリゴヌクレオチド5は1本鎖のまま
で存在する(図33)。これら2本鎖と1本鎖の混合物
は、ヒドロキシアパタイトを含むカラムに通すことで1
本鎖の反転オリゴヌクレオチド5のみを抽出することが
できる(図34)。
【0262】このように抽出した非発現遺伝子に対応す
るDCNをもつ反転オリゴヌクレオチド5を、ストレ
プトアビジンを結合した磁気ビーズに捕獲する(図3
5)。次に、上述した存在オリゴヌクレオチド3のみの
抽出と同様に、DCN に相補的なオリゴヌクレオチ
ド6をハイブリダイゼーションし、過剰なオリゴヌクレ
オチドを除去して非発現遺伝子を示すDCN にハイ
ブリダイゼーションした不存在オリゴヌクレオチド6の
みを抽出することができる(図35)。
【0263】不存在オリゴヌクレオチド6を得るための
工程は以下のようにも実施できる。即ち、DCNオリ
ゴヌクレオチドの5’端にFITCなどの蛍光分子を標
識しておき、DCNに相補的な配列を有するプローブ
を含むDNAマイクロアレイにおいてハイブリダイゼー
ション反応を行う。これをスキャナなどで読み取り、ど
のDCNが存在するかを検出する。このとき同時に、
これにより存在していないDCNもわかる。従って、
これらのデータから、次の演算のためにDCN なる
不存在オリゴヌクレオチド6を準備する。以上により存
在しない核酸をその核酸に対応する不存在を示す核酸に
変換することが達成される。これにより演算用核酸上で
の論理演算が可能になる。
【0264】また、この不存在オリゴヌクレオチド6を
作る工程において、1本鎖の反転オリゴヌクレオチド5
を鋳型として不存在オリゴヌクレオチド6を増幅しても
よい。増幅は、例えば、図40から図45に示される各
工程を経て実施することが可能である。ここで、図40
から図45は、それぞれの工程を示すものであり、且つ
各系に存在する分子を模式的に示したものである。各図
中に示される記号等の詳細は上述した通りである。ま
ず、図34の工程に従って、抽出された1本鎖のままの
反転オリゴヌクレオチド5を得る(図34)。この反転
オリゴヌクレオチド5に対して、図40に示すような、
3’端側でSDに相補的な配列と、且つ5’端側でED
配列に相補的な配列と結合したDCN に相補的な配
列を有したオリゴヌクレオチド7をハイブリダイゼーシ
ョンすることで不存在オリゴヌクレオチド6を抽出す
る。続いて、FIG.36から22に示すような工程に
より、存在オリゴヌクレオチド3と同様に増幅したDC
を得ることができる。即ち、図41に示す工程
で、図40の工程において得たオリゴヌクレオチド7に
対してビオチン標識したSD配列を有するプライマー1
と、ED配列に相補的な配列を有するプライマー2を用
いてPCR増幅する(図41)。次に、PCR産物をビ
オチンをストレプトアビジン分子に結合することにより
回収する(図42)。続いて、熱変性により、PCR産
物を1本鎖にする(図43)。続いて、DCN に相
補的な配列をもつ不存在オリゴヌクレオチドを、ビーズ
に捕獲されたPCR産物にハイブリダイズする(図4
4)。このハイブリダイゼーションの後、過剰な存在オ
リゴヌクレオチドを除去し、続いて、改めて熱をかける
ことによってビーズに捕獲されているDCN の相補
鎖(即ち、不存在オリゴヌクレオチド6)をバッファ中
に抽出する。ここで抽出されたDCN に相補的な塩
基配列を有する不存在オリゴヌクレオチド6が、即ち、
もとのcDNA溶液中に標的遺伝子が存在しないことを
示す不存在分子である。
【0265】(1.3)演算工程 演算工程では、上述で得られた存在分子および不存在分
子と、以下に説明する演算用核酸とのハイブリダイゼー
ションおよび相補鎖合成とを行い、それによって、所望
する条件を現す演算式を解き、該条件を満たす解を求め
る並列計算を行う。
【0266】演算の例として演算式として数式4を用い
る。ある特定の配列DCN、DCN、DCNおよ
びDCNを標的配列とし、その有無の条件について論
理式として示した数式4を、演算用核酸と存在分子およ
び不存在分子とのハイブリダイゼーション反応と伸長に
よって、演算し、値を評価する。数式4は、DCN
DCN、DCNおよびDCNについての所望する
有無についての組合せを所望の条件として示している。
即ち、本例では数式4の解を求めるということは、ある
サンプル中における複数の標的配列の有無を同時に評価
することである。
【0267】
【数4】 式中、「¬」は「否定」、「∧」は「論理積」、「∨」
は「論理和」を表す記号である。
【0268】演算用核酸に設定した条件を満たす場合
は、当該式の値は「1」、即ち「真」となる。また、演
算用核酸に設定した条件が満たされない場合は、当該式
の値は「0」、即ち「偽」となる。また本発明は、基本
的な排他的論理和を達成している。従って、この組合せ
を用いればブール代数の全ての論理演算を実現できる。
【0269】図36に示すのが演算用核酸8の配列構造
である。演算用核酸は1本鎖のオリゴヌクレオチドであ
り、図では矢印で示している。矢印の向きは5’端から
3’端に向かっている。5’端にはビオチン分子が付い
ている。演算用核酸は複数のユニットを含む。その塩基
配列は、5’端から順に、マーカー分子が結合する
、DCNが存在しないときに得られるオリゴヌク
レオチドを検出する配列DCN 、DCN、ポリメ
ラーゼによる相補鎖伸長が止まるような配列を具えたス
トッパ配列S、2つ目のマーカーが付くM、DC
、DCN である。この演算用核酸の配列は、論
理式の各項の並びにほぼ対応する。論理式の「否定」も
そのままの配列となる。例えば、「DCN」配列の存
在が「否定」される場合には、「DCN 」の配列を
用いる。ここで、DCN は上述した通りのDCN
の対応するように設計された人工的な配列である。ま
た、「論理和」記号はS配列に置き換えればよい。「論
理積」は演算用核酸上の配列として置き換える必要はな
い。式1のための演算用核酸の演算は、表3の各条件を
満たすときに、その値が1になる。表3中「―」はどの
ような状態でもよいことを示す。
【0270】
【表3】
【0271】以下、論理式を評価する核酸反応につい
て、その工程を説明する。演算工程は図37から図39
の工程を含み、演算反応は次の手順で行う。先に述べた
論理式の演算を行うときには、図36に挙げた配列を具
備した演算用核酸を準備する。1つのチューブに対して
1種類の演算用核酸を入れ、それに先の工程で得た存在
オリゴヌクレオチドと不存在オリゴヌクレオチドを含む
溶液を入れ、ハイブリダイゼーション反応を行う(図3
7)。ここで、仮に、DCN、DCN、DCN
存在し、DCNが不存在であるならば、演算用核酸に
ハイブリダイゼーションするのはDCNのみである
(図37)。また、ハイブリダイゼーション反応後、T
aqポリメラーゼなど高温でも活性のある酵素により、
ミスハイブリダイゼーションがおきない条件下で伸長反
応を行うと、図38のようにM配列部分は2本鎖とな
りS配列で伸長が止まる(図38)。
【0272】次に、ストレプトアビジン磁気ビーズによ
り反応が終了した演算用核酸を捕獲する(図39)。最
後に、検出反応としてマーカーオリゴヌクレオチドのハ
イブリダイゼーション反応を行う(図39)。図39で
は、担体上に固定された演算用核酸を示しており、その
5’端のビオチン分子は担体上にあるストレプトアビジ
ン分子に結合している。さらにマーカー検出配列に相補
的な配列をもつマーカーオリゴヌクレオチドM、M
を準備する。これらマーカーオリゴヌクレオチドの5’
端には蛍光を発する分子が付いている。この例では、演
算用核酸のM配列は2本鎖化されていないので、当該
マーカーは演算用核酸に結合することが可能である(図
39)。このあと、結合していないマーカーを除去して
ビーズを蛍光観察すれば、マーカーオリゴヌクレオチド
がハイブリダイゼーションして蛍光を発するため演
算結果得られる論理式の値は「1」であることが分か
る。
【0273】上述では、S配列をストッパーとして使用
したが、S配列を必ずしも配置する必要はない。その代
わりとしてS配列をなくし、相補鎖が形成されないよう
に人工的な塩基を具えたヌクレオチドを含ませてもよ
い。このとき、演算用核酸をS配列の両側に配置すれば
よい。例えば、S配列は、他の配列部分にシトシン塩基
が含まれないように設計し、S配列の塩基配列にシトシ
ン塩基が含まれるように設計してもよい。この場合、図
38に示す演算用核酸上での伸長反応の際にモノマーと
してdGTPを別途加えなければ伸長反応はS配列上で
停止する。また或いは、ポリメラーゼが伸長反応を停止
し易いグアニンやシトシンの連続した塩基配列としても
ストッパーとしての目的を達成できる。或いは、S配列
に相補的なPNAを演算用核酸にハイブリダイゼーショ
ンさせておいてもよい。この場合、DNAとDNAのハ
イブリッドよりも、DNAとPNAのハイブリッドは安
定であるため、5’エクソヌクレアーゼ活性のあるポリ
メラーゼであっても除去することなできない。従って、
S配列がストッパーとして機能する。
【0274】また、マーカーオリゴヌクレオチドの蛍光
標識の種類を増やしてもよい。現在は、数多くの蛍光色
素が開発されており異なる核酸に異なる蛍光色素を標識
することが可能である。そのようにすれば、同時に多く
の演算用核酸を標識することができる。例えば、この実
施の形態において、Mマーカーオリゴヌクレオチドと
マーカーオリゴヌクレオチドとの間で蛍光分子を変
えれば、検出した際に論理式の括弧で囲まれたどちらの
条件が充足されたのかが判明する。また、演算用核酸毎
にマーカー配列を変え、マーカーオリゴヌクレオチドに
標識する蛍光分子も変えれば、1つのチューブに複数種
類の演算用核酸を入れて同時に演算反応をすることもで
きる。更にまた、蛍光強度は演算核酸の表現する論理式
の充足度に比例するので、その大きさを知ることも可能
である。
【0275】また、演算結果を得るに当たって、次のよ
うなこともできる。即ち、この実施の形態における存在
オリゴヌクレオチドと不存在オリゴヌクレオチドを増幅
する工程において、PCR反応を増幅が飽和するように
十分なサイクル数行えば、「存在」を「1」、「不存
在」を「0」とする2値の論理演算が可能である。一
方、PCR反応を増幅を飽和させず、元のcDNAの存
在量に比例した量だけ得られるようにサイクル数を抑え
れば、論理式を区間[0,1]で確率的に評価すること
ができる。例えば、発現遺伝子の場合は発現量に応じた
結果が得られ、ゲノム配列であれば、ヘテロ接合かホモ
接合かの違いを演算結果で知ることができる。
【0276】さらに演算用核酸をDNAマイクロアレイ
のように、基板上に微小スポット状に固定し、その場所
と演算用核酸の論理式が対応するようにアドレシングし
ておいてもよい。このようにしたときはマーカーオリゴ
ヌクレオチドには蛍光標識をしておくのが好ましい。先
に述べた演算反応をマイクロアレイ上の演算用核酸で行
うと、DNAマイクロアレイの読みとり用スキャナで演
算結果を読みとることができる。
【0277】また、このマーカーオリゴヌクレオチドに
ビオチン分子を標識していてもよい。このとき、演算用
核酸の5’端にはビオチンを付けず、3’端、5’端に
クローニングのための制限酵素認識配列を含むものにす
る。さらに反応においては図39に示すような演算用核
酸をストレプトアビジン磁気ビーズにより捕獲する工程
を行わない。この場合の検出反応はマーカーオリゴヌク
レオチドをハイブリダイゼーション反応した後で、スト
レプトアビジン磁気ビーズによって演算用核酸をハイブ
リダイズしたマーカーオリゴヌクレオチドもそうでない
ものも両方とも捕獲し、捕獲された演算用核酸をクロー
ニングし、シーケンサーで塩基配列を読み取る。それに
より演算結果が「1」となる演算用核酸を確認すること
ができる。このようにすれば1つのチューブに複数種の
演算用核酸を入れて反応を行うことができる。
【0278】ここでは、4つの標的配列を用いた例を用
いたが、更に多くの標的配列を対象とすることも可能で
ある。また、ここでは、ビオチンとストレプトアビジン
を回収を行うためのタグとして使用したが、これに限ら
れるものではなく、タグとこれに対して高親和性を有す
るものであればどのような物質を使用してもよい。
【0279】(b)第2の実施の形態 本発明の好ましい態様に従うと、上述した方法におい
て、DCN配列として正規直交化配列を用いてもよい。
「正規直交化配列」とは人工的に設計した塩基配列であ
って、「正規」とは融解温度(T)が揃っていること
を示し、「直交化」とはミスハイブリダイゼーションが
起きず、自己分子内で安定な構造をとらないということ
を意味する。
【0280】例えば、15塩基の正規直交化配列を求め
るには、任意の5塩基をランダムに生成する。これら短
い塩基配列を「タプル」と呼ぶことにする。5塩基長の
タプルは4=1024種類ある。これらタプルの中か
ら3つを選んで連結し15塩基を構成する。この連結に
用いたタプルに相補的なタプルは以降の連結には用いな
い。ここで、これらを連結した15塩基の配列のT
±3℃以内に揃うような15塩基のセットを作る。ま
た、自己分子内で安定な構造を取るかどうかも計算し、
安定な構造をなすならばそのような15塩基は排除す
る。
【0281】最後に全ての配列同士で互いに安定な2本
鎖を形成しないかを検証する。以上の方法で生成した1
5塩基の配列は反応温度を適切に選べば互いにハイブリ
ッドを形成せず、混在しても独立したハイブリダイゼー
ション反応をするのでより好ましい。これら正規直交化
配列を特定の遺伝子塩基配列と対応関係を持つように核
酸aとAの配列を選び第1の実施の形態に従って反
応を行えば、反応条件がより簡単になり、しかもより正
確な演算反応を行うことが可能である。
【0282】(c)第3の実施の形態 続いて、本発明の好ましい態様に従うと、複数の遺伝子
座にそれぞれ特定の塩基配列が存在することで決まるよ
うな遺伝子型を判定するためにも使用できる。ここで
は、そのような遺伝子型を判定する方法の例を示す。
【0283】遺伝子型に対応する論理式を設定し、その
論理式に基づき演算用核酸を設計する。それにより、電
子計算機や判定表を用いずに遺伝子型を判定することが
できる。具体的には、例えば遺伝子座1で塩基A、遺伝
子座2で塩基T、遺伝子座3で塩基Gであるとき遺伝子
型Aと判定でき、また、遺伝子座1で塩基A、遺伝子座
2で塩基C、遺伝子座3で塩基Tであるとき遺伝子型B
であり、また、遺伝子座1で塩基A、遺伝子座2で塩基
C、遺伝子座3で配列Gであるとき遺伝子型Cと判定で
きるならば、それぞれを満たす論理式は表4の右端欄に
示す通りになる。
【0284】
【表4】
【0285】遺伝子型判定はそれぞれの論理式と対応す
る演算用核酸により演算反応を行う。先ず、式の各要素
について遺伝子座に特定の配列が存在する場合の値を1
とし不存在の時を0とし、最終的に式全体の値が1とな
る式があるならば、その式に対応する遺伝子型が判定結
果となる。このような核酸を用いた演算いる本発明の方
法により、遺伝子座が多くあり且つ遺伝子型は極少ない
ような遺伝子の型判定が、複雑な表や電子計算機を必要
としない簡便なものとなる。
【0286】(d)第4の実施の形態 更に、本発明の好ましい態様に従うと、上述の方法は、
癌細胞の遺伝子発現において各種遺伝子がどのような発
現、非発現の条件(即ち、状態)下にあるかのを調べる
ことにも利用できる。上述した第1の実施の形態に対す
ると、第3の実施の形態は、所謂「逆問題」とも呼ぶこ
とも可能である。
【0287】予め、様々な論理式を表す演算用核酸を準
備する。この演算用核酸は、5’端をリン酸化した各種
の論理式要素、すなわちDCN、DCN 、S、M
等からなる配列を有する。これらに加えて、例えば、図
45に示すような論理式要素を連結するための連結用相
補核酸9を準備する。連結用相補核酸9の配列は、連結
を所望する仕切部分に隣接して存在する2つの部分の配
列に相補的な配列を有すればよい。
【0288】これら核酸をハイブリダイゼーションし、
ライゲースで連結反応すれば任意に論理式要素が結合さ
れた演算用核酸が得られる。連結用相補核酸の配列を十
分考慮して設計することで論理式として不適当なものが
生成されないようにできる。
【0289】この演算用核酸を用いて逆問題を解くに
は、癌細胞から取得したcDNAを第1の実施の形態に
したがって、論理式要素の配列に変換し、あらかじめ準
備しておいた様々な論理式を表す演算用核酸により論理
演算を行う。最後にこれら演算用核酸が表現する論理式
のうち、満たされるものがあるかどうかを検出する。こ
のうち、論理式の値が1となった演算用核酸の意味する
内容を解釈することによって、どのような遺伝子の発
現、非発現状態が満たされる条件にあるのかを解明する
ことが可能である。或いは少なくともその部分条件を解
明することが可能である。
【0290】任意に作製した演算用核酸の配列を同定す
るには、先ず、1つの容器において反応する。次に、第
1の実施の形態のビオチン分子を結合したマーカーオリ
ゴヌクレオチドにてストレプトアビジン磁気ビーズに演
算用核酸を回収する。続いて、シーケンシングを行い、
演算分子の内容を読みとる方法で論理式を読み取ること
が好ましい。また、任意に演算用核酸を作製せずとも、
論理式を決めて連結により演算用核酸を合成する方法で
おこなってもよい。この場合には、それら論理式をDN
Aマイクロアレイにアドレシングして固定し、検出時に
論理式を確認してもよい。または、1つの容器に1種類
の演算用核酸を入れて反応を行っても良い。
【0291】これらの結果を正常細胞と比較すれば、未
知のゲノム塩基配列の組み合わせにより生ずる遺伝病
や、未知の遺伝子発現の組み合わせによって生ずる遺伝
子異常による癌などの疾病の原因遺伝子を容易に特定す
ることができる。
【0292】(e)考察 従来の技術には、特定の核酸が存在しないことを核酸表
現に変換できる技術はなく、また、そのような思想すら
ない。例えば、mRNAの発現状態を検出するにはDN
Aマイクロアレイがよく用いられている。このマイクロ
アレイには既知の遺伝子塩基配列をもとに設計したオリ
ゴDNA、またはあらかじめ取得したcDNAをプロー
ブとしてスライドガラス上にアレイ状に固定している。
【0293】このマイクロアレイで発現を検出するに
は、mRNAから蛍光標識したcDNAを作製し、マイ
クロアレイのプローブと該cDNAとをハイブリダイゼ
ーション反応をさせ、特定の配列のプローブを固定した
場所に特定の標識したcDNAが結合して光ることで検
出する。ところが、発現していないmRNAからは標識
cDNAが作製できないので、遺伝子が発現していない
ことを検出できない。すなわち、実験中にmRNAが失
われたり、遺伝子が発現しているにもかかわらず生成さ
れる蛍光標識cDNAが少ないために不存在であると判
定されることがある。このような従来の方法とは異な
り、本発明の1態様に従うと、不在の核酸の情報を可視
化することが可能である。
【0294】また、遺伝子核酸を反応させるとき、数多
くの遺伝子が混在した状態では思わぬ核酸同士がハイブ
リッドを形成して反応することがある。また、塩基配列
に含まれるグアニンやシトシンなどの塩基の数は2本鎖
核酸の構造を安定化する。このような塩基が、取り扱う
遺伝子核酸毎にまちまちであれば、ハイブリッドを形成
する最適な温度が異なる。そのため、全ての核酸がミス
マッチのない、適切なハイブリッドを形成できるとは限
らない。また、自己分子内で構造をとり、標的配列との
反応性が低くなるような塩基配列をもつ核酸が混在して
いる場合には、理論的に予想される反応が進まないこと
もあり得る。このような従来の方法に比較して、本発明
の態様に従う方法では、情報を、好ましい条件で設計し
た核酸分子に、置き換えてから、反応に使用するので、
安定した反応を行うことが可能である。
【0295】また、化学発光など酵素を用いた検出法は
高感度であるが、検出のための処理が面倒で時間がかか
る。更に、1チューブ内で複数の種類の化学発光を行う
ことは難しい。また、演算用核酸を用いて演算した場
合、その結果を見るのに単一の発色もしくは発光反応で
は1チューブで1種類の演算用核酸しか反応できない。
これに対して、本発明の態様に従えば、感度よく、多数
の標的核酸を同時に感度よく検出することが可能であ
る。
【0296】また、従来の方法では、核酸の存在条件の
みに基づいて作った論理式が演算用核酸に書き換えられ
ている。ところがおよそ世の中に存在する問題は所謂
「逆問題」である。例えば遺伝病における各遺伝子の発
現状態について調べたとき、どのような遺伝子核酸の存
在、不存在の条件が満たされれば病気になるのかが問題
である。従って、遺伝子核酸の存在および不存在の論理
式を求めることこそが問題なのである。従来では、この
ような問題は、DNAマイクロアレイのデータを大型計
算機によりクラスタ解析して解いていた。従って、非常
に多くの時間と費用とが必要とされていた。本発明の態
様に従うと、短時間に、且つ経済的にそのような問題を
解くことが可能である。
【0297】ここでは、遺伝子解析のための方法につい
ても示したが、これに限定されず、本発明の範囲を超え
ることなく種々の並列計算による情報処理を行うことが
可能である。即ち、遺伝子解析以外の情報の、例えば、
数学的な問題を並列処理を行って解く場合においても、
優れた利点を得られる当業者には容易に理解されるであ
ろう。
【0298】III.その他の適用例 上述したように本発明の1態様は、分子の化学反応によ
り分子計算を実行する分子計算方法であって、分子を核
酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付けて定義さ
れた変数及び定数と、前記符号分子の演算反応に対応付
けて定義された関数により記述されたプログラムを、前
記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反応の反応
制御を行う反応制御部を駆動させるための制御命令に変
換して前記制御命令の手順を生成し、前記制御命令の手
順を前記反応制御部に出力し、前記制御命令の手順に基
づき分子の化学反応の反応制御を行う方法を提供する。
【0299】また、この態様では、分子の化学反応のう
ち、核酸配列の反応の規則性に着目し、その規則性を演
算反応に対応付けた。核酸配列の反応の規則性のみなら
ず、分子の他の生物学的及び生化学的な規則性に基づき
生じる化学反応を演算反応に対応付けることにより、同
様の分子計算が可能となる。
【0300】例えば、本発明の核酸配列以外の生物学的
および生化学的物質、例えば、ペプチド、オリゴペプチ
ドおよびポリペプチド、蛋白質、並びに抗原および抗体
などの生物学的および生化学的な要素を用いることがで
きる。この場合、これら要素を核酸配列に替えて符号化
し、符号化されたこれら各要素に対して対応付けて定義
された変数および定数と、符号化された要素の演算反応
に対応付けて定義された関数により記述されたプログラ
ムにより原始プログラムを作成すればよい。
【0301】この明細書には、以下の発明が含まれるこ
とを確認する。
【0302】分子の化学反応により分子計算を実行する
分子計算の計画を設定する分子計算計画設計装置であっ
て、分子を該分子の生物学的性質又は生化学的性質に基
づき符号化した符号分子に対応付けて定義された変数及
び定数と、前記符号分子の演算反応に対応付けて定義さ
れた関数により記述されたプログラムを、前記符号分子
の演算反応に対応する分子の化学反応の反応制御を行う
反応制御部を駆動させるための制御命令に変換して前記
制御命令の手順を生成する制御命令生成部と、前記制御
命令の手順を出力する出力部。
【0303】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、分
子計算機の高い並列計算性を活かし、しかも分子計算機
だけでは実現することが難しい機能を電子計算機により
補完することにより、従来の電子コンピュータよりも高
速に計算を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分子計算装置を示すブロック図。
【図2】本発明の分子計算装置の各部の配置を示す模式
図。
【図3】本発明の分子計算装置を示すブロック図。
【図4】本発明の分子計算方法の処理のフローチャー
ト。
【図5】分子計算方法の処理の変形例を示すフローチャ
ート。
【図6】分子計算方法の処理の変形例を示すフローチャ
ート。
【図7】分子計算方法の処理の変形例を示すフローチャ
ート。
【図8】分子計算方法の処理の変形例を示すフローチャ
ート。
【図9】分子計算方法の処理の変形例を示すフローチャ
ート。
【図10】分子計算方法のデータフロー図。
【図11】手続または関数−演算反応変換データテーブ
ルの一例を示す図。
【図12】演算反応手順テーブルの一例を示す図。
【図13】実行手順テーブルの一例を示す図。
【図14】制御命令手順テーブルの一例を示す図。
【図15】コマンドの処理の概要を示すフローチャー
ト。
【図16】コマンドの処理の概要を示すフローチャー
ト。
【図17】コマンドの処理の概要を示すフローチャー
ト。
【図18】コマンドの処理の概要を示すフローチャー
ト。
【図19】配列の同定方法の例を示す概念図。
【図20】プログラムの流れを示すフローチャート。
【図21】配列同定の結果を示すチャート。
【図22】遺伝子解析のためのエンコード反応とデコー
ド反応とを示すフローチャート。
【図23】遺伝子解析のための分子設計例を示す図。
【図24】遺伝子検出反応工程における各分子の状態を
示す模式図。
【図25】標的が存在した場合の反応系における各分子
の状態を示す模式図。
【図26】ストレプトアビジン磁気ビーズによる捕獲工
程における各分子の状態を示す模式図。
【図27】DCNの抽出工程における各分子の状態を
示す模式図。
【図28】抽出工程で得られたDCNに相補的な配列
の増幅の模式図。
【図29】図28の増幅により得られた増幅産物を捕獲
する工程における各分子の状態を示す模式図。
【図30】熱変性により一本鎖化する工程における各分
子の状態を示す模式図。
【図31】発現遺伝子の情報を存在分子に変換する工程
における各分子の挙動を示す模式図。
【図32】非発現遺伝子を検出し、不存在分子に変換す
るための最初の工程における反転オリゴヌクレオチドと
存在分子の反応を示す模式図。
【図33】ある非発現遺伝子のための反転オリゴヌクレ
オチドの状態を示す模式図。
【図34】反転オリゴヌクレオチドの抽出工程における
分子の状態を示す模式図。
【図35】ストレプトアビジンを固定した磁気ビーズに
よるDCN*の捕捉とハイブリダイゼーションによる
抽出工程における各分子の状態を示す模式図。
【図36】演算用核酸を示す模式図。
【図37】演算用核酸と存在分子および不存在分子との
ハイブリダイゼーション工程における各分子の状態を示
す模式図。
【図38】図37の工程の後に演算用核酸にハイブリッ
ドした前記分子を伸長する工程における各分子の状態を
示す模式図。
【図39】マーカーオリゴヌクレオチドMおよびM
による計算結果の検出工程における各分子の状態を示す
模式図。
【図40】不存在分子の増幅のために不存在分子を抽出
回収する工程における各分子の状態を示す模式図。
【図41】不存在分子の増幅のためのPCR工程におけ
る各分子の状態を示す模式図。
【図42】図41の工程により生じた増幅産物を捕獲す
る工程における各分子の状態を示す模式図。
【図43】図42の工程で回収された増幅産物を1本鎖
にする工程における各分子の状態を示す模式図。
【図44】図43の工程の1本鎖に対する不存在分子の
ハイブリダイゼーションを行う工程における各分子の状
態を示す模式図。
【図45】演算用核酸のランダムライブラリの作成方法
において使用する連結用相補核酸と、連結対象となる演
算用核酸の一部分を示す模式図。
【符号の説明】
11…入力部 12…入出力制御部 13…記憶部 14…演算部 14a…翻訳・計算計画立案・実行部 14b…核酸配列計算部 14c…結果解析部 15…演算部 16…記憶部 17…入出力制御部 18…入力部 19…出力部 20…出力部 21…電子計算部 22…分子計算部 23,24…通信部 30…核酸合成装置 151…自動制御部 152…XYZ制御ピペッタ 153…サーマルサイクラ反応容器 154…ビーズ容器 155…酵素容器 156…緩衝液容器 157…核酸容器 158…検出部 159…温度制御手段 160…搬送機構
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 AA11 AA19 CA01 HA11

Claims (30)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電子計算部と分子計算部とを具備する分
    子計算装置であって、前記電子計算部は通常の計算処理
    に加えて、実質的に分子計算部の機能を制御し、その制
    御の下で分子による演算が実施される分子計算装置。
  2. 【請求項2】 分子の化学反応により分子計算を実行す
    る分子計算装置であって、 分子の化学反応の反応制御を行う反応制御部を備えた分
    子計算部と、 分子を核酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付け
    て定義された変数及び定数と、前記符号分子の演算反応
    に対応付けて定義された関数により記述されたプログラ
    ムを、前記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反
    応の反応制御を行う前記反応制御部を駆動させるための
    制御命令に変換して前記制御命令の手順を生成する制御
    命令生成部と、 前記制御命令の手順を出力する出力部とを有する電子計
    算部を備える分子計算装置。
  3. 【請求項3】 前記反応制御部は、 駆動信号に基づき駆動し反応を実行させる複数の反応制
    御要素と、 前記制御命令生成部から入力された制御命令の手順に基
    づき前記複数の反応制御要素に順次駆動信号を出力する
    自動制御部と、 前記反応制御要素における反応結果を検出する検出部か
    らなる請求項2に記載の分子計算装置。
  4. 【請求項4】 前記反応制御要素は、反応の対象となる
    核酸溶液を収容する収容容器と、前記収容容器内の核酸
    溶液の抽出及び前記収容容器への核酸溶液の注入を行う
    核酸溶液分注器具、前記核酸溶液の温度制御する温度制
    御装置の少なくとも一つを含む請求項3に記載の分子計
    算装置。
  5. 【請求項5】 前記制御命令生成部は、 前記関数と分子の演算反応を対応付けた関数−演算反応
    変換テーブルに基づき、前記プログラムに含まれる前記
    関数を前記分子の反応手順に変換する演算手順生成部
    と、 分子の演算反応と前記反応制御部の駆動動作を対応付け
    た演算反応−制御命令変換テーブルに基づき前記反応手
    順を制御命令の手順に変換する制御命令手順生成部を備
    える請求項2に記載の分子計算装置。
  6. 【請求項6】 前記制御命令生成部は、前記関数に前記
    反応制御部の少なくとも一つの制御命令動作が対応付け
    られたデータテーブルに基づき前記関数を前記制御命令
    に変換する請求項2に記載の分子計算装置。
  7. 【請求項7】 前記反応制御部は複数の反応制御要素か
    らなり、 前記制御命令生成部は、前記制御命令に駆動の対象とす
    る反応制御要素を識別する要素識別データを対応付けて
    設定する請求項2に記載の分子計算装置。
  8. 【請求項8】 前記反応制御部は複数の反応制御要素か
    らなり、 前記制御命令生成部は、前記反応制御要素を識別する要
    素識別データを駆動の対象とする反応制御要素に対応付
    けて仮制御命令の手順を生成する仮制御命令生成部と、 前記反応制御要素の制約条件に基づき、前記仮制御命令
    の手順による制御が可能か否かを判定し、可能でないと
    判定した場合には前記制約を解決する制約解決命令を前
    記仮制御命令の手順に付加して前記制御命令を生成する
    制約解決命令付加部を有する請求項2に記載の分子計算
    装置。
  9. 【請求項9】 前記化学反応の反応制御により生じた前
    記分子の化学反応の検出結果を出力する検出結果出力部
    をさらに備える請求項2に記載の分子計算装置。
  10. 【請求項10】 前記化学反応の反応制御により生じた
    前記分子の化学反応の検出結果を前記プログラムの記述
    形式に変換して前記プログラムの計算結果を導出する検
    出結果解析部と、 前記検出結果解析部の計算結果を出力する解析結果出力
    部とをさらに備える請求項2に記載の分子計算装置。
  11. 【請求項11】 前記関数は、特定の配列を含むデータ
    を選択する第1の関数、あるいは特定の配列を含まない
    データを選択する第2の関数である請求項2に記載の分
    子計算装置。
  12. 【請求項12】 前記関数は、データ中の第1の特定の
    配列に第2の特定の配列を付加する第3の関数である請
    求項2に記載の分子計算装置。
  13. 【請求項13】 前記関数は、それぞれ配列を有する
    複数のデータを含むデータ集合を得る第4の関数である
    請求項2に記載の分子計算装置。
  14. 【請求項14】 前記関数は、複数の配列を有するデ
    ータから、配列を有する複数のデータに分割する第5の
    関数である請求項2に記載の分子計算装置。
  15. 【請求項15】 前記関数は、配列に含まれる特定の配
    列を、前記配列から分割する第6の関数、あるいは前記
    配列に含まれる第1の特定の配列から特定の位置だけ離
    れた第2の配列を前記配列から分割する第7の関数であ
    る請求項2に記載の分子計算装置。
  16. 【請求項16】 前記関数は、配列に含まれる第1の特
    定の配列に予め対応付けられた第2の特定の配列を得る
    第8の関数である請求項2に記載の分子計算装置。
  17. 【請求項17】 前記関数は、第1の特定の配列を含む
    第1のデータがある場合に、前記第1の特定の配列に対
    応付けられた第2の特定の配列を含む第2のデータを得
    る請求項2に記載の分子計算装置。
  18. 【請求項18】 前記関数は、配列に含まれる特徴を得
    る第10の関数である請求項2に記載の分子計算装置。
  19. 【請求項19】 前記分子計算部は、符号分子を合成す
    る合成部を備える請求項2に記載の分子計算装置。
  20. 【請求項20】 前記分子は核酸分子である請求項2に
    記載の分子計算装置。
  21. 【請求項21】 分子の化学反応により分子計算を実行
    する分子計算の計画を設定する分子計算計画設計装置で
    あって、 分子を核酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付け
    て定義された変数及び定数と、前記符号分子の演算反応
    に対応付けて定義された関数により記述されたプログラ
    ムを、前記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反
    応の反応制御を行う反応制御部を駆動させるための制御
    命令に変換して前記制御命令の手順を生成する制御命令
    生成部と、 前記制御命令の手順を出力する出力部からなる分子計算
    計画設計装置。
  22. 【請求項22】 分子の化学反応により分子計算を実行
    する分子計算方法であって、 分子を核酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付け
    て定義された変数及び定数と、前記符号分子の演算反応
    に対応付けて定義された関数により記述されたプログラ
    ムを、前記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反
    応の反応制御を行う反応制御部を駆動させるための制御
    命令に変換して前記制御命令の手順を生成し、 前記制御命令の手順を前記反応制御部に出力し、 前記制御命令の手順に基づき分子の化学反応の反応制御
    を行う分子計算方法。
  23. 【請求項23】 前記反応制御は、 前記制御命令の手順に基づき複数の反応制御要素を駆動
    する駆動信号を制御命令で指定された反応制御要素に順
    次出力する請求項22に記載の分子計算方法。
  24. 【請求項24】 前記反応制御により実行された分子の
    化学反応の反応結果を検出する請求項22に記載の分子
    計算方法。
  25. 【請求項25】 前記反応制御により実行された分子の
    化学反応の反応結果を検出し、 前記検出結果に基づき前記プログラムの記述形式に変換
    して前記プログラムの計算結果を導出する請求項22に
    記載の分子計算方法。
  26. 【請求項26】 電子計算部と分子計算部とを、電気学
    的プログラムが認識可能に表現された分子情報に基づい
    て一体的に機能させる分子計算方法。
  27. 【請求項27】 コンピュータシステムに、分子の化学
    反応による分子計算の実行を制御させる分子計算プログ
    ラムであって、この分子計算プログラムは、前記コンピ
    ュータシステムを、 分子を核酸配列に基づき符号化した符号分子に対応付け
    て定義された変数及び定数と、前記符号分子の演算反応
    に対応付けて定義された関数により記述されたプログラ
    ムを、前記符号分子の演算反応に対応する分子の化学反
    応の反応制御を行う反応制御部を駆動させるための制御
    命令に変換して前記制御命令の手順を生成する指令を前
    記コンピュータシステムに与える第1の手段と、 前記記録媒体に記録され、前記制御命令の手順を出力す
    る指令を前記コンピュータシステムに与える第2の手段
    と、 前記記録媒体に記録され、前記反応制御部による反応制
    御により実行された分子の化学反応の検出結果を受信
    し、前記プログラムの記述形式に変換して前記プログラ
    ムの計算結果を導出する指令を前記コンピュータシステ
    ムに与える第3の手段として機能させる分子計算プログ
    ラム。
  28. 【請求項28】 電子計算部と分子計算部とを具備する
    分子計算装置に、分子の化学反応による分子計算の実行
    をさせる分子計算プログラムであって、この分子計算プ
    ログラムは、前記電子計算部を、 前記記録媒体に記録され、前記電子計算部および/また
    は前記分子計算部に適用され、前記電子計算部による計
    算作業と前記分子計算部による計算作業とを、各計算部
    で電気学的に認識可能な情報形式で機能させる指令を前
    記各計算部に与える手段として機能させる分子計算プロ
    グラム。
  29. 【請求項29】 分子計算部に分子の化学反応による分
    子計算の実行をさせる指令を与える電子計算部に対して
    指令を与える分子計算結果解析プログラムであって、こ
    の分子計算結果解析プログラムは、前記電子計算部を、 前記分子計算部により計算した情報を、前記電子計算部
    の電気学的プログラムに適合する情報形式に変換する指
    令を前記電子計算部に与える手段として機能させる分子
    計算結果解析プログラム。
  30. 【請求項30】 分子計算部に分子の化学反応による分
    子計算の実行をさせる指令を与える電子計算部に対して
    指令を与える分子計算プログラムであって、この分子計
    算プログラムは、前記電子計算部を、 前記電子計算部により計算した情報を、前記分子計算部
    の計算作業に適合するような情報形式に変換する指令を
    前記電子計算部に対して与える手段として機能させる分
    子計算プログラム。
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