JP2008242709A - ポルフィリン金属錯体の超分子構造によるオートマトン型計算を行なう計算方法 - Google Patents

ポルフィリン金属錯体の超分子構造によるオートマトン型計算を行なう計算方法 Download PDF

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Abstract

【課題】DNAとは異なる生化学物質を用いて計算を行なう計算方法を提供すること。
【解決手段】計算方法は、ポルフィリン金属錯体、又はその組合せからなるナノワイアを初期状態として準備するステップ138と、各々が複数種類のポルフィリン金属錯体のうちのいずれかを表す一連の要素からなる入力シーケンスの入力を受けるステップ134と、入力シーケンスにしたがった順番で、入力シーケンス内の要素に対応するポルフィリン金属錯体をナノワイアに順次与え、自己組織化により新たなナノワイアを順次作製するステップ142〜150と、作製されたナノワイアが、予め定められた複数通りのナノワイアからなる集合の要素か否かを判定するステップ152と、判定するステップでの判定結果にしたがって、入力シーケンスを受理するか否かを決定するステップ154及び156とを含む。
【選択図】 図3

Description

この発明はバイオテクノロジー技術を利用した計算方法に関し、特に、生体物質を計算資源として用いる計算方法に関する。
コンピュータは現代社会に不可欠な要素となっている。このようにコンピュータが普及したのは、半導体関連の技術の進歩とソフトウェアの進歩とによるところが大きい。またデータ通信のための社会基盤の整備も大きな役割を果たしている。
しかし、コンピュータの能力が高くなるにつれ、暗号化通信、遺伝子解析、地球規模での気象解析等、さらに高速の計算資源を必要とする技術が現れてきている。計算の対象には事実上限りがなく、したがって、コンピュータの能力をさらに高める要求はさらに強くなっている。
現在のコンピュータの大部分はいわゆるノイマン型コンピュータであり、本質的には直列的に命令を実行するものである。そうしたノイマン型コンピュータを高速化するためにはいくつかの方策がある。
第1の方策は、動作速度を規定するクロック信号の周波数を高くすることである。過去のコンピュータの高速化は、この方策によって実現されてきた。
しかし、クロック周波数が高くなると消費電力も高まり、また信号のスキューなどを回避するために回路をさらに高集積化する必要がある。したがって製造技術をさらに高度化するための技術の確立が必要である。しかしそれは容易なことではない。また現状で半導体を用いた回路の大きさはそろそろ限界に近づいているといわれており、例えば配線間でのマイグレーションやメモリにおけるソフトエラーなど、高密度化ゆえに起こる問題点に対処する必要がある。実際上、そうした問題を解決することは極めて困難である。
第2の方策は、処理の並列化を高めることである。並列化には少なくとも2種類ある。第1の種類の並列化は、コンピュータプログラムで実現される処理に内在する、並列化可能な部分を抽出し、異なるCPU(中央演算処理装置)で実行することである。1台のコンピュータに複数のCPUを搭載してもよいし、いわゆるグリッドコンピューティングのように、物理的に種々の場所に存在する多数のコンピュータを互いに通信網で接続することで並列処理を実現化してもよい。
しかしこの第1の種類の並列化では、単一の場所で実現するときには必然的にハードウェアが高価となる。また、単一のCPUで処理を実行する場合と比較して、複数のCPUで処理を行なうためのオーバヘッドが大きくなるという問題もある。特に、グリッドコンピューティングの場合には、物理的に隔たったコンピュータの間での通信量が増大するため、ネットワークに影響を及ぼす可能性もある。
第2の種類の並列化は、コンピュータのアーキテクチャそのものを見直し、本質的に並列処理が可能なアーキテクチャを採用することである。例えばデータ駆動型コンピュータ等はその典型である。この他にも有力な候補としてDNA(デオキシリボ核酸)コンピュータと呼ばれるものがある。
DNAコンピュータは、RSA公開暗号化方式の提案者の一人でもあるコンピュータ科学者Leonard Adleman(レナード エイデルマン)により発案され、1994年にその実験結果が公表されてコンピュータ技術者及び生物化学者の間に大きな波紋を広げた(非特許文献1を参照されたい。)。エイデルマンは、DNAを計算資源として用いていわゆるNP完全問題のひとつであるハミルトン経路問題(Hamilton Path Problem:以下「HPP」と呼ぶ。)を解く実験を行ない、実際にその解を得たのである。
エイデルマンの提案したDNAコンピュータは、DNAの持つ符号としての特性を利用して、HPPにおいて出現する「都市」とそれらを結ぶ「道」とを符号化し、さらにDNAの相補性を利用して、それら都市と道とを表すDNA断片を生化学反応で結合させることにより、問題に対する解の候補(都市を表すDNAと道を表すDNAとが様々な組合せで連結したもの)を得る。得られた候補の中から所定の条件を充足するDNA配列を選択して解とする。
このDNAコンピュータがノイマン型コンピュータと異なるのは、処理が、多数のDNA断片を用いて本質的に高度に並列的に行なわれるという点である(「超並列性」)。しかもDNAの相補性を利用しているため、解の候補は自律的に得られ、反応の過程で特に操作を必要としない。このDNAコンピューティングの技術を用いたものも既に製品化されている(特許文献1)。
特開2002−318992号公報 レナード M. エイデルマン、「組合せ問題に対する解の分子計算」、サイエンス、第266巻、第11号、1021頁〜1024頁、1994年(Leonard M.Adleman,"Molecular Computation of Solutions to Combinatorial Problems",SCIENCE,Vol.266,No.11,pp.1021−1024,1994)
エイデルマンの論文発表後、種々のDNA計算手法が発表されている。しかしそれらはいずれもエイデルマンの基本的な考え方にしたがいDNAを計算資源として用いるものである。DNA等以外の生化学分子を用いてコンピュータの基礎となるものを実現しようとする試みはほとんど見られない。したがって、DNA以外の生化学分子として利用できるものを見出し、それを用いたコンピューティング技術を確立することが望ましい。
特に、コンピューティング技術の基礎をなしているといわれる有限オートマトンをDNA以外を用いて実現できれば、それに基づいて今までとは異なるコンピューティング技術を発展させることが期待できる。
それゆえに本発明の目的は、DNAとは異なる生化学物質を用いて計算を行なうことが可能な計算方法を提供することである。
本発明の他の目的は、DNAとは異なる生化学物質を用いて、高速に計算を行なうことが可能な計算方法を提供することである。
本願発明に係る計算方法は、複数種類のポルフィリン金属錯体を用いて計算を行なう計算方法であって、複数種類のポルフィリン金属錯体のいずれか、又はそれらの組合せからなるナノワイアを初期状態として準備するステップと、各々が複数種類のポルフィリン金属錯体のうちのいずれかを表す一連の要素からなる入力シーケンスの入力を受けるステップと、入力シーケンスにしたがった順番で、入力シーケンス内の要素に対応するポルフィリン金属錯体をナノワイアに順次与え、自己組織化により新たなナノワイアを順次作製するステップと、作製するステップにより作製されたナノワイアが、予め定められた複数通りのナノワイアからなる集合の要素か否かを判定するステップと、判定するステップにおいて、ナノワイアが集合の要素であると判定されたか否かにしたがって、入力シーケンスを受理するか否かを決定するステップとを含む。
この計算方法によれば、複数種類のポルフィリン金属錯体をアルファベット、複数種類のポルフィリン金属錯体のいずれか、又はそれらの組合せからなるナノワイアを初期状態、ナノワイアに対してポルフィリン金属錯体を与えたときに自己組織化により新たなナノワイアが生成される過程を状態遷移関数、ポルフィリン金属錯体の組合せにより得られる可能性のあるナノワイアの集合を状態集合、判定するステップで使用されるナノワイアの集合を受理状態集合とする有限オートマトンを実現することができる。ポルフィリン金属錯体という、自己組織化によってナノワイアを生成する物質を用いることにより、有限オートマトンを実現できる。有限オートマトンを実現できるということは、有限オートマトンを基礎とした計算理論による計算機構をやはりポルフィリン金属錯体を用いて実現できるということを意味する。その結果、DNAとは異なる生化学物質を用いて計算を行なうことが可能な計算方法を提供することができる。
また、ポルフィリン金属錯体を用いるため、反応は本来的に同時並列的に行なわれる。これは、計算処理が同時並列的に実行されることを意味する。したがって、高度の並列性を実現することができる。その結果、DNAとは異なる生化学物質を用いて、高速に計算を行なうことが可能な計算方法を提供することができる。
[第1の実施の形態]
《ポルフィリンについて》
生化学上で重要な物質に、ポルフィリンがある。ポルフィリンとは、4つのピロール環がα位置で4つのメチン基と交互に結合した構造を持つ、大環状化合物とその誘導体とをいう。ポルフィリン自体は天然には存在しないが、その誘導体は金属錯体として天然に見出される。代表的なものに、鉄との錯体であるヘモグロビン、マグネシウムとの錯体であるクロロフィル等がある。以下、このように金属との錯体を形成可能なポルフィリン誘導体を単にポルフィリンと呼ぶ。
ポルフィリンは様々な金属との間で錯体を作る。例えば鉄(Fe)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、マンガン(Mn)、銅(Cu)等との錯体が代表的なものである。またポルフィリン錯体は自己組織化と呼ばれる性質を持ち、互いに連結してナノワイア状構造体を形成することでも知られている。この場合の自己組織化は、ポルフィリン間の何らかのメカニズムに基づく分子構造認識による自発的な集合体生成によるものと思われる。ポルフィリン錯体中の金属は、こうした構造体の骨格形成を担っていると考えられる。
一方、分子構造中の金属を同定する技術が進み、ポルフィリン錯体中の金属についても同定することが可能になっている。したがって、自己組織化により得られた構造体中で、どのポルフィリン金属錯体中にどの金属が含まれているかを確認することができる。
《有限オートマトンについて》
このようなポルフィリンの性質を利用すると、以下に述べるように一種の有限オートマトンを構成することができる。
オートマトンとは、コンピュータを抽象化して得られる数学的モデルである。中でも、有限オートマトンは、有限の状態を持ち、ある状態のときにある入力が与えられると、次の状態が定まるような数学的モデルをいう。一般に、有限オートマトンは次に述べる5つ組によって表現される。
<Q,Σ,σ,S,F>
Qは有限な状態の集合である。Σはアルファベットと呼ばれ、入力される記号の有限集合のことをいう。σは状態遷移関数と呼ばれる、Q×ΣからQへの関数である。S∈Qは初期状態を指す。F⊂Qは、受理状態と呼ばれる状態の集合である。
オートマトンは、初期状態Sから入力シーケンス内の入力を1つずつ受け入れ、現在の状態と入力とに基づき、状態遷移関数にしたがって次の状態に遷移する。この動作を入力がある限り続け、入力が終了したときのオートマトンの状態が受理状態の集合Fに属するか否かにより、最初の入力シーケンスが受理されるか否かが決定される。
本実施の形態では、Qに属する状態を、ポルフィリン金属錯体のナノワイア(ポルフィリン金属錯体の列)で表す。すなわち、どのような種類のポルフィリン金属錯体がどのような順序で結合しているかによって、状態を表す。
また、アルファベットΣとして、16種類のポルフィリン金属錯体からなる集合を用いる。したがって、この有限オートマトンへの入力は、ポルフィリン金属錯体のシーケンスである。
状態遷移関数σは、ポルフィリン金属錯体のナノワイアに対し、どのポルフィリン金属錯体が新たな入力として与えられたかにより、自己組織化によっておのずから定まる関数である。すなわち、ポルフィリン金属錯体のナノワイアにポルフィリン金属錯体の分子が1つ与えられると、そのポルフィリン金属錯体の分子が既存のポルフィリン金属錯体のナノワイアに対し、自己組織化によって定まる位置に結合する。この前後におけるナノワイアの状態変化が状態遷移関数σに相当する。
初期状態S∈Qは、集合Q内の状態の中から任意に選ぶことができる。すなわち、どのようなポルフィリン金属錯体のナノワイア(分子1個のみのものも含む。)でも、初期関数Sとして用いることができる。
受理状態の集合Fとしては、集合Qの任意の部分集合を用いることができる。本実施の形態では、生体内に見出されるポルフィリン金属錯体からなる集合を受理状態の集合Fとする。
以上のように、ポルフィリン金属錯体により、一種の有限オートマトンを構成することが可能であると考えられる。以下に述べる本発明の実施の形態は、そのような有限オートマトンに関する。
図1に、このポルフィリン金属錯体による有限オートマトンの概念図を示す。本実施の形態では、16種類の別々の金属とのポルフィリン金属錯体の集合10を、上記したΣ(アルファベット)として用いる。
初期状態Sとして例えば、単一のある金属とのポルフィリン金属錯体を準備する。この状態Sに、集合10から入力シーケンスにしたがって選んだポルフィリン金属錯体20の分子を投入することにより、自己組織化によってポルフィリン金属錯体の2つの分子が連結したナノワイアが生成される。この状態がS∈Qである。さらにこの状態Sに集合10から選んだ他のポルフィリン金属錯体22の分子を投入することにより、自己組織化によってポルフィリン金属錯体の3つの分子が連結したナノワイアが生成される。この状態がS∈Qである。以下同様にして、入力シーケンスにしたがって集合10から選んだポルフィリン金属錯体24などの分子を、各状態にあるナノワイアに付加していくことにより、この有限オートマトンの状態が変化していく。入力シーケンスにしたがって全てのポルフィリン金属錯体がこのナノワイアに与えられた後に自己組織化によって生成され残ったナノワイアにより表される状態が、集合Fに属するか否かによって、入力シーケンスが受理されるか否かが判定できる。
有限オートマトンは、オートマトンのうちで最も単純であり、したがって「コンピュータ」としての能力は弱い。しかし有限オートマトンは、他の高級オートマトンの基礎を成すものであって、有限オートマトンが構成できれば、それに基づいてより強力な「コンピュータ」を実現することができる。
《構成》
図2に、本実施の形態に係る計算方法を実施するためのシステムのブロック図を示す。図2を参照して、このシステムは、上記したポルフィリン金属錯体による自己組織化が生じるように予め準備された反応系54と、反応系54内に自己組織化により生成されるポルフィリン金属錯体のナノワイアを走査し、ナノワイアの高分解能の画像データを出力するためのSEM(走査型電子顕微鏡)52と、SEM52の出力を受け、予め格納されたナノワイアの画像データベースとの照合を行なうことにより、ナノワイアの構造、したがってこの有限オートマトンの状態を確認する処理を行なうためのコンピュータシステム50とを含む。
反応系54は、金からなる薄膜70と、薄膜70の上に、予め準備された16種類のポルフィリン金属錯体のうちの任意のものを1分子ずつ滴下可能な、コンピュータシステム50により制御されるマイクロピペットシステム74とを含む。
コンピュータシステム50は、DVD(Digital Versatile Disc)ドライブ110を備えたコンピュータ100と、コンピュータ100に接続されたキーボード106、マウス108、及びモニタ102とを含む。なお、コンピュータシステム50のより詳細な構成については後述する。
反応系54の制御は手操作で行なうこともできる。しかし本実施の形態では、コンピュータシステム50により、以下の制御構造を有するコンピュータプログラムによって、反応系54の制御と、入力シーケンスを有限オートマトンが受理するか否かに関する判定とを行なう。
図3に、このコンピュータプログラムの制御構造をフローチャート形式で示す。図3を参照して、このプログラムは、コンピュータ各部の初期化処理を行なうステップ130と、上記したような有限オートマトンを定義する定義ファイルを読込むステップ132と、受理されるか否かを判定する対象となる入力シーケンスXを受けるステップ134とを含む。初期処理では、記憶領域の確保、変数領域のクリア、変数への初期値の設定などを実行する。有限オートマトンの定義としては、上記した5つ組に関する情報を用いれば十分である。入力シーケンスXの入力は、キーボード106、マウス108及びモニタ102を用いて実現するGUI(グラフィカル・ユーザ・インターフェイス)を使用して行なってもよいし、ファイル形式で図2には図示しないハードディスクに予め格納されたものの内の任意のものから読出すようにしてもよい。
このプログラムはさらに、入力シーケンスX中の全てのアルファベット(ポルフィリン金属錯体)の要素数を、以下に述べる繰返しの最大数を表す変数MAXに代入するステップ136と、ステップ132で読込まれた有限オートマトンの定義ファイルのうち、初期状態を定める情報にしたがって、反応系54の薄膜70上に初期状態に対応するポルフィリン金属錯体の分子又はナノワイアを含む処理対象液72を準備するステップ138と、以下の繰返しを制御するための繰返し制御変数iに0を代入するステップ140とを含む。これ以後は、入力シーケンスX中の各要素に対して同様の処理を繰返し行なう一連のステップである。
この一連のステップは、変数iに1を加算するステップ142と、変数iの値が、繰返しの最大数MAXを超えたか否かを判定し、判定結果に応じて処理を分岐させるステップ144と、ステップ144において変数iの値が最大数MAXを超えていないと判定されたことに応答して実行され、入力シーケンスX中のi番目の要素に対応するポルフィリン金属錯体の分子を薄膜70上の処理対象液72にマイクロピペットシステム74から滴下するステップ146と、ステップ146の後、処理対象液72中にポルフィリン金属錯体の自己組織化により形成されるナノワイアの像をSEM52から受取るステップ148と、ステップ148の後、ステップ148で得られたナノワイアの像に基づき、処理対象液72中のナノワイアが、オートマトンの状態集合Q中のどの状態に対応しているかを判定するステップ150とを含む。ステップ150の後、制御はステップ142に戻る。
ステップ150では、予めコンピュータ100中に蓄積されているナノワイアの高解像度像のデータベースとSEM52から得られた画像との照合を行なうことにより、ナノワイアの形状及びそれらを構成するポルフィリン金属錯体の種類を判定し、処理対象液72中に生成されているナノワイアに対応する状態を判定する。
このプログラムはさらに、ステップ144において変数iの値が最大数MAXを超えていると判定されたことに応答して実行され、現在の状態が受理状態集合Fに属しているか否かを判定し、判定結果に応じて制御を分岐させるステップ152と、ステップ152において現在の状態が受理状態集合Fに属していると判定されたことに応答して実行され、入力シーケンスXを受理し、対応する所定の処理を実行した後、処理を終了するステップ154と、ステップ152において現在の状態が受理状態集合Fに属していないと判定されたことに応答して実行され、入力シーケンスXを受理しないことを決定し、対応する所定の処理を実行した後、処理を終了するステップ156とを含む。
<動作>
図2に示すシステムは以下のように動作し、ポルフィリン金属錯体を用いた有限オートマトンを実現する。予めコンピュータ100のハードディスクには、実現しようとする有限オートマトンの定義ファイルが格納されている。この定義ファイルは前述した5つ組
<Q,Σ,σ,S,F>
を特定する情報を含んでいる。また、コンピュータ100のハードディスクには、様々な手順で作製されたナノワイアをSEM52で撮像した高精細な画像からなる画像データベースが準備されている。さらに、マイクロピペットシステム74には、アルファベットΣを構成するポルフィリン金属錯体が個別に準備されているものとする。
コンピュータ100において、この有限オートマトンを実現するプログラムが起動されると、まず初期化処理を実行し(ステップ130)、次にコンピュータ100内のハードディスクから有限オートマトンの定義ファイルを読込む(ステップ132)。
ユーザがモニタ102、キーボード106及びマウス108を用いたGUIにより入力シーケンスXをコンピュータ100に与えると(ステップ134)、コンピュータ100は最大数MAXに入力シーケンスXを構成するアルファベットの個数を代入する(ステップ136)。コンピュータ100はさらに、マイクロピペットシステム74のマニピュレータを操作して、有限オートマトンの初期状態Sに相当するポルフィリン金属錯体を処理対象液72に形成する(ステップ138)。このとき、初期状態Sがナノワイアに相当するものであれば、所定の手順で順次ポルフィリン金属錯体を処理対象液72に滴下していくことにより、このナノワイアを作製することができる。
以下、変数iを1から順次加算しながら実行する繰返し処理である。繰返しの各ステップでは、入力シーケンスXのうちi番目の要素に対応するポルフィリン金属錯体の分子を処理対象液72に滴下するようにマイクロピペットシステム74がコンピュータ100により制御される。
ポルフィリン金属錯体を滴下すると、処理対象液72中のポルフィリン金属錯体又はナノワイアと、新たに滴下されたポルフィリン金属錯体とからなる新たなナノワイアが自己組織化により生成される。SEM52はナノワイアの画像を撮像し、そのデータをコンピュータ100に与える。コンピュータ100はこのデータを取り込み、メモリ上に展開する(ステップ148)。そしてこの画像を、コンピュータ100中のハードディスクに準備されているナノワイアの画像データベースと比較し、処理対象液72中に生成されているナノワイアがどのような構成のものか、すなわちこの有限オートマトンがこの繰返し処理においてどのような状態となっているかを判定する(ステップ150)。
こうした処理を変数iを1ずつ加算しながら(ステップ142)繰返し、変数iの値が最大値MAXを超えたときに、繰返し処理を終了する。
そして、処理対象液72について最後にステップ150で判定して得た状態が、有限オートマトンの定義ファイルに保持されていた受理状態集合Fに属するか否かを判定する(ステップ152)。最後の状態が有限状態集合Fに属する場合には入力シーケンスXを受理することを示す何らかの処理を行ない(ステップ154)、そうでないときには入力シーケンスXを受理しないことを示す何らかの処理を行なって(ステップ156)、処理を終了する。
以上のように本実施の形態によれば、コンピュータ理論の基礎をなす有限オートマトンを、コンピュータ上ではなく、ポルフィリン金属錯体によって実現することができる。なお、図3のステップ150において判定された状態に応じて何らかの出力をコンピュータ100から出すようにすれば、この有限オートマトンを有限状態機械として動作させることもできる。
以上のように本実施の形態では、DNAを用いず、複数種類のポルフィリン金属錯体とそれらの自己組織化により得られるナノワイアを有限オートマトンとして動作させることができる。有限オートマトンは単純なものであるが、計算理論の基礎をなすものであり、したがって本実施の形態の考え方を用いることにより、ポルフィリン金属錯体及びその誘導体を用いた計算方法を実現することができる。
《コンピュータの構成》
以上述べたように、コンピュータシステム50によって反応系54を制御し、ポルフィリン金属錯体を用いた有限オートマトンを実現することができる。コンピュータシステム50のハードウェア構成について以下に説明する。
図4は、図2に示すコンピュータシステム50の内部構成を示す。図4を参照して、コンピュータ100は、DVDドライブ110に加えて、CPU(中央処理装置)170と、CPU170及びDVDドライブ110に接続されたバス178と、ブートアッププログラム等を記憶する読出専用メモリ(ROM)172と、バス178に接続され、プログラム命令、システムプログラム、及び作業データ等を記憶するランダムアクセスメモリ(RAM)174とを含む。
コンピュータ100はさらに、バス178に接続されたハードディスク176と、バス178に接続されたシリアルポート180とを含む。シリアルポート180には、着脱可能型の半導体メモリ182、SEM52、及びマイクロピペットシステム74等が接続される。
ここでは示さないが、コンピュータ100はさらにローカルエリアネットワーク(LAN)への接続を提供するネットワークアダプタボードを含んでもよい。
コンピュータシステム50にポルフィリン金属錯体の反応系を制御させるように動作させるためのコンピュータプログラムは、DVDドライブ110に挿入されるDVD184又は半導体メモリ182に記憶され、さらにハードディスク176に転送される。又は、プログラムは図示しないネットワークを通じてコンピュータ100に送信されハードディスク176に記憶されてもよい。プログラムは実行の際にRAM174にロードされる。DVD184から、半導体メモリ182から、又はネットワークを介して、直接にRAM174にプログラムをロードしてもよい。
このプログラムは、コンピュータ100にこの実施の形態のポルフィリン金属錯体の反応系を制御するコンピュータシステム50として動作を行なわせる複数の命令を含む。この動作を行なわせるのに必要な基本的機能のいくつかはコンピュータ100上で動作するオペレーティングシステム(OS)若しくはサードパーティのプログラム、又はコンピュータ100にインストールされる各種ツールキットのモジュールにより提供される。したがって、このプログラムはこの実施の形態のシステム及び方法を実現するのに必要な機能全てを必ずしも含まなくてよい。このプログラムは、命令のうち、所望の結果が得られるように制御されたやり方で適切な機能又は「ツール」を呼出すことにより、上記したポルフィリン金属錯体の反応系を制御するコンピュータシステム50としての動作を実行する命令のみを含んでいればよい。コンピュータシステム50の動作は周知であるので、ここでは繰返さない。
以上のとおり、本発明に係る方法によれば、ポルフィリン金属錯体を用いて有限オートマトンを実現することができる。有限オートマトンを実現できるということは、有限オートマトンを基礎とした計算理論による計算機構をやはりポルフィリン金属錯体を用いて実現できるということを意味する。また、ポルフィリン金属錯体を用いるため、反応は本来的に同時並列的に行なわれる。これは、計算処理が同時並列的に実行されることを意味する。したがって、高度の並列性を実現することができる。
なお、上記記載から明らかなように、初期状態と特定のポルフィリン金属錯体の特定のシーケンスとが定まれば、最終的に得られるナノワイアの構成も定まる。逆に、あるナノワイアの構成が得られたときには、初期状態がわかれば入力されたポルフィリン金属錯体のシーケンスが分かる。したがって、上記した有限オートマトンを用いると、初期状態と最終のナノワイアから入力シーケンスを特定できる。この性質を使用し、かつ入力シーケンスは、それを構成するポルフィリン金属錯体の順序によって、ある符号を表すことができることを利用すると、ポルフィリン金属錯体を使用した暗号化方法を実現することができる。
また、上記記載から明らかなように、最終のナノワイアを目的物質としたときには、初期状態からどのようなポルフィリン金属錯体のシーケンスを用いれば目的物質を作製することができるかを、有限オートマトンの定義ファイルの内容から知ることができる。したがって、上記した方法を、特定の構成を有するナノワイアの作製方法として用いることもできる。
今回開示された実施の形態は単に例示であって、本発明が上記した実施の形態のみに制限されるわけではない。本発明の範囲は、発明の詳細な説明の記載を参酌した上で、特許請求の範囲の各請求項によって示され、そこに記載された文言と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含む。
ポルフィリン金属錯体を用いた有限オートマトンを模式的に示す図である。 本発明の一実施の形態に係る方法において、ポルフィリン金属錯体の反応系を制御するコンピュータシステム50の外観図である。 第1の実施の形態における入力シーケンスを模式的に示す図である。 図2に示すコンピュータ100のブロック図である。
符号の説明
10 アルファベットの集合
20,22,24 ポルフィリン金属錯体
50 コンピュータシステム
52 SEM
54 反応系
70 薄膜
72 処理対象液
74 マイクロピペットシステム
100 コンピュータ
102 モニタ
106 キーボード
108 マウス
110 DVDドライブ
170 CPU
172 ROM
174 RAM
176 ハードディスク
178 バス
180 シリアルポート
182 半導体メモリ

Claims (1)

  1. 複数種類のポルフィリン金属錯体を用いて計算を行なう計算方法であって、
    前記複数種類のポルフィリン金属錯体のいずれか、又はそれらの組合せからなるナノワイアを初期状態として準備するステップと、
    各々が前記複数種類のポルフィリン金属錯体のうちのいずれかを表す一連の要素からなる入力シーケンスの入力を受けるステップと、
    前記入力シーケンスにしたがった順番で、前記入力シーケンス内の要素に対応するポルフィリン金属錯体を前記ナノワイアに順次与え、自己組織化により新たなナノワイアを順次作製するステップと、
    前記作製するステップにより作製されたナノワイアが、予め定められた複数通りのナノワイアからなる集合の要素か否かを判定するステップと、
    前記判定するステップにおいて、前記ナノワイアが前記集合の要素であると判定されたか否かにしたがって、前記入力シーケンスを受理するか否かを決定するステップとを含む、計算方法。
JP2007080922A 2007-03-27 2007-03-27 ポルフィリン金属錯体の超分子構造によるオートマトン型計算を行なう計算方法 Pending JP2008242709A (ja)

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