JP2002308778A - 環状ホスファチジン酸誘導体を含む神経細胞の生存促進剤 - Google Patents

環状ホスファチジン酸誘導体を含む神経細胞の生存促進剤

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 神経細胞の生存率の向上又は神経細胞の伸長
の促進を通じて神経障害の治療及び/又は予防のために
有用な新規な薬剤を提供すること。 【解決手段】 一般式(I): 【化1】 (式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状ア
ルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケ
ニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アル
キニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳
香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子又は対カチオ
ンである。)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を
有効成分として含む、神経細胞の生存促進のための薬
剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リン脂質の1種で
ある環状ホスファチジン酸誘導体を含む薬剤に関する。
より詳細には、本発明は、環状ホスファチジン酸誘導体
を有効成分として含む、神経細胞の生存促進のための薬
剤、神経細胞の伸長促進のための薬剤、並びに神経障害
の治療及び/又は予防のための薬剤に関する。
【0002】
【従来の技術】生体膜を構成している主成分であるグリ
セロリン脂質は、一般にグリセロール骨格に疎水性の脂
肪酸が2分子結合し、さらにリン酸基を介してコリンや
エタノールアミンなどの親水性基が結合している。リン
脂質における疎水性部分と親水性部分とのバランスが、
安定な脂質二重層を形成する上では重要である。これに
対してリゾリン脂質は、脂肪酸が1分子のみ結合したも
のであり、疎水性部分が親水性基に対して相対的に小さ
くなるため、安定な膜構造をとれず、逆にそれを壊す界
面活性作用を示す。
【0003】しかし、近年、低濃度で特有の生理活性を
示すリゾリン脂質が多数見つかっており、そのうちの一
つとしてリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic aci
d;LPA)が挙げられる。LPAは最も単純な構造を持つリン
脂質の一つであり、グリセロールのsn-1位あるいは2位
の脂肪酸のどちらか一方が脱アシル化されている点でホ
スファチジン酸(phosphatidic acid;PA)とは相違する
(図1を参照)。
【0004】LPAは、生体内にごく微量(細胞全リン脂
質中の0.5%以下)しか存在しない。従来、LPAはリン脂
質生合成の中間産物又は分解中間物と考えられていた。
しかし、1970年代後半に、血漿中(Schumacher, K.A.,
他, Thromb. Haemostas., 42, 631-640(1979))やダイ
ズ粗レシチン画分中(Tokumura, A., 他, Lipids, 13,4
68-472(1978))に存在する血管収縮作用を示す物質がLP
Aであると同定された。更に、血清中の脂質性増殖因子
がLPAであることも示され(van Corven, E.,他, Cell 5
9, 45-54(1989))、LPAは生理活性脂質として注目され
るようになった。
【0005】LPAには、細胞増殖促進作用(Fischer D.
J.,他, Mol Pharmacol, 54, 979-988(1988))、癌細胞
の浸潤促進(Imamura, F.,他:Jpn.J.Cancer Res., 82,
493-496(1991);Imamura, F.,他:Biochem. Biophys. Re
s. Commun., 193, 497-503(1993);及びImamura, F.,
他: Int. J. Cancer, 65, 627-632(1996))、アポトー
シスの抑制(Umnaky, S.R.,他: Cell Death Diff., 4,
608-616(1997))などを含む多様な生理活性のあること
が今までに明らかにされている。特に、神経細胞に対し
ても、LPAは神経突起の退縮を引き起こすことが知られ
ている(Tigyi, G.,他:J. Biol. Chem., 267, 21360-21
367(1992);Jalink, K.,他: Cell Growth &Differ., 4,
247-255(1994);Jalink, K.,他: J. Cell Biol., 126,
801-810(1994);及びTigyi, G.,他: J. Nurochem., 6
6, 537-548(1996))。また、神経系株化細胞であるPC12
細胞では開口放出を誘導することも報告されている(Sh
iono,S.,他: Biochem. Biophys. Res Commun., 193, 66
3-667(1993))。さらに、1996年にChunらによって神経
上皮細胞層(ventriluar zone, vz)に特異的に発現するG
タンパク質関連受容体遺伝子(ventriluar zone gene-
1;vzg-1/edg-2)がクローニングされ、当該遺伝子を過
剰発現させた細胞の形態変化に血清中の脂質が必要であ
るという知見から、その特異的リガンドがLPAであるこ
とが明らかにされた(Hecht, J. H.,他:J. Cell Biol.
135, 1071-1083(1996))。これらの知見は、神経系にお
けるLPAシグナリングの重要性を示唆しており、神経の
発生や分化においてLPAが重要な役割を演じていると考
えられる。
【0006】一方、本発明者らは、以前より真性粘菌Ph
ysarum polycephalumを実験材料として、様々な細胞生
化学的解析を行っている。真性粘菌は、外部環境の変化
に応じて、形態変化を示し、その増殖・分化に伴って、
生体膜脂質の組成と代謝に著しい変化を見せることが明
らかにされてきた。1992年に単相体ミクソアメーバから
単離・同定された新規の脂質成分は、構造解析の結果、
グリセロール骨格のsn-1位にシクロプロパン環を含むヘ
キサデカン酸を持ち、sn-2位と3位にリン酸が環状にエ
ステル結合をしている物質であると確認された(Muraka
mi-Murofushi,K., 他: J. Biol. Chem.,267, 21512-215
17(1992))。この物質は、Physarum由来のLPA類似体で
あることから、PHYLPAと命名された(図2を参照)。
【0007】PHYLPAは、真核細胞のDNAポリメラーゼ
αの活性を抑え、動物培養細胞の増殖を抑制した脂質画
分より得られたものであり、PHYLPAがこれらの生理活性
を示すことが確認されている。PHYLPAは特徴的な脂肪酸
を有しているが、この脂肪酸部分を別の一般的な脂肪酸
に置換した構造類似体を有機合成し、それらの生理活性
を調べた結果、PHYLPAと同様の生理作用が示された(Mu
rakami-Murofushi, K., 他: Biochem.Biophys.Acta, 12
58, 57-60(1995))。このことより、これらの生理作用
に重要な構造はグリセロールsn-2位、3位の環状リン酸
構造にあると推測される。この構造を持つ脂質は、総称
して環状ホスファチジン酸(cyclic phosphatidic aci
d;cPA)と称される(図2を参照)。
【0008】cPAは真性粘菌特有の脂質ではなく、広く
生物界に存在していることが確認された。例えば、ヒト
血清アルブミン結合脂質より、脂肪酸部分にパルミチン
酸(C16:0)を有するcPAが単離・同定され、ミリスチン
酸(C14:0)及びステアリン酸(C18:0)が結合したcPAも
少量存在することが示唆された。血清中のcPAの濃度は
約10-7Mと予想され、これはLPAの血清中濃度の約1/
10に相当する(Kobayashi.T., 他; Life Science, 6
5, 2185-2191(1999))。その後、LPAと同様にヒト血清
中やウサギ涙腺液中にもcPAが存在することが確認され
た(Liliom, K.,他:Am. J. Physiol., 274, C1065-1074
(1998))。
【0009】cPAの作用についても、LPAと相反又は類似
する生理活性を示すことが報告されている。例えば、細
胞増殖の抑制(Murakami-Murofushi, K., 他: Cell Str
uct.Funct., 18, 363-370(1993))、癌細胞の浸潤抑制
(Mukai, M. 他:Int.J.Cancer, 81, 918-922 (199
9))、および細胞内ストレスファイバーの形成(Fische
r,D.J.,他: Mol.Pharmacol., 54, 979-988(1998))など
が報告されている。
【0010】ところで、神経細胞は、神経栄養因子(ne
rve growth factor;NGF)の供給を遮断すると生存でき
ないことが知られており、例えば、海馬では高濃度のNG
Fが存在する(畠中寛:蛋白質核酸酵素,35, 103-117,
1989)。また、NGF様の細胞成長因子である繊維芽細胞
成長因子(fibroblast growth factor;FGF)が、海馬
の神経細胞の生存率を高め、神経突起の伸長を促進する
との報告もある(畠中寛:生化学,61, 1351-1365,198
9)。しかしながら、cPAが神経細胞に及ぼす作用につい
てはこれまで報告がなされていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、cPAの新し
い生理活性の一つとして神経細胞への作用を解明し、神
経細胞の生存率の向上又は神経細胞の伸長の促進を通じ
て神経障害の治療及び/又は予防のために有用な新規な
薬剤を提供することを解決すべき課題とした。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために、まず、cPAの生合成の機構の解明を
試み、次いで、ウシ脳中におけるcPAの検出を試みた。
そして、ラット胎児脳由来の初代培養系を用いて、cPA
が神経細胞の生存や神経突起の形成に及ぼす影響につい
て解析した。これらの解析の結果、本発明者らは、cPA
がラット海馬初代培養神経系細胞の生存率を高め、神経
突起の伸長を促進することを明らかにすることにより、
cPAが神経障害の治療に有用な治療剤となり得ることを
見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】即ち、本発明によれば、一般式(I):
【化4】 (式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状ア
ルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケ
ニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アル
キニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳
香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子又は対カチオ
ンである。)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を
有効成分として含む、神経細胞の生存促進のための薬剤
が提供される。
【0014】本発明の別の側面によれば、上記一般式
(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分
として含む、神経細胞の伸長促進のための薬剤が提供さ
れる。本発明のさらに別の側面によれば、上記一般式
(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分
として含む、神経障害の治療及び/又は予防のための薬
剤が提供される。
【0015】神経障害は、例えば、痴呆、アルツハイマ
ー病、アルツハイマー型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬化
症、パーキンソン氏病、脳卒中、脳梗塞または頭部外傷
から選択される。本発明で用いる一般式(I)で示される
環状ホスファチジン酸誘導体は好ましくは1−オレオイ
ル環状ホスファチジン酸である。
【0016】本発明のさらに別の側面によれば、治療的
有効量の上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン
酸誘導体をヒトを含む哺乳動物に投与することを含む、
神経細胞の生存を促進する方法;治療的有効量の上記一
般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体をヒト
を含む哺乳動物に投与することを含む、神経細胞の伸長
を促進する方法;並びに、治療的有効量の上記一般式
(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体をヒトを含
む哺乳動物に投与することを含む、神経障害を治療及び
/又は予防する方法;が提供される。
【0017】本発明のさらに別の側面によれば、上記一
般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体の、神
経細胞の生存促進のための薬剤の製造における使用;上
記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体
の、神経細胞の伸長促進のための薬剤の製造における使
用;並びに、上記一般式(I)で示される環状ホスファチ
ジン酸誘導体の、神経障害の治療及び/又は予防のため
の薬剤の製造における使用;が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の薬剤は、神経細胞の生存率
向上、神経細胞の伸長促進、並びに神経障害の治療及び
/又は予防のために使用することができ、下記一般式
(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分
として含む。
【0019】
【化5】
【0020】(式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若し
くは分岐状アルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは
分岐状アルケニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しく
は分岐状アルキニル基であり、これらの基はシクロアル
カン環又は芳香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子
又は対カチオンである。)
【0021】一般式(I)において、置換基Rが示す炭素
数1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基の具体例と
しては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブ
チル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチ
ル基、ノニル基、デシル基、ペンタデシル基、オクタデ
シル基などが挙げられる。
【0022】置換基Rが示す炭素数2〜30の直鎖状若し
くは分岐状アルケニル基の具体例としては、例えば、ア
リル基、ブテニル基、オクテニル基、デセニル基、ドデ
カジエニル基、ヘキサデカトリエニル基などが挙げら
れ、より具体的には、8−デセニル基、8−ウンデセニ
ル基、8−ドデセニル基、8−トリデセニル基、8−テ
トラデセニル基、8−ペンタデセニル基、8−ヘキサデ
セニル基、8−ヘプタデセニル基、8−オクタデセニル
基、8−イコセニル基、8−ドコセニル基、ヘプタデカ
−8,11−ジエニル基、ヘプタデカ−8,11,14
−トリエニル基、ノナデカ−4,7,10,13−テト
ラエニル基、ノナデカ−4,7,10,13,16−ペ
ンタエニル基、ヘニコサ−3,6,9,12,15,1
8−ヘキサエニル基などが挙げられる。
【0023】置換基Rが示す炭素数2〜30の直鎖状若し
くは分岐状アルキニル基の具体例としては、例えば、8
−デシニル基、8−ウンデシニル基、8−ドデシニル
基、8−トリデシニル基、8−テトラデシニル基、8−
ペンタデシニル基、8−ヘキサデシニル基、8−ヘプタ
デシニル基、8−オクタデシニル基、8−イコシニル
基、8−ドコシニル基、ヘプタデカ−8,11−ジイニ
ル基などが挙げられる。
【0024】上記のアルキル基、アルケニル基又はアル
キニル基に含有されうるシクロアルカン環の具体例とし
ては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シ
クロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環
などが挙げられる。シクロアルカン環は、1個以上のヘ
テロ原子を含んでいてもよく、そのような例としては、
例えば、オキシラン環、オキセタン環、テトラヒドロフ
ラン環、N−メチルプロリジン環などが挙げられる。上
記のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基に含有
されうる芳香環の具体例としては、例えば、ベンゼン
環、ナフタレン環、ピリジン環、フラン環、チオフェン
環などが挙げられる。
【0025】従って、置換基Rがシクロアルカン環によ
って置換されたアルキル基である場合の具体例として
は、例えば、シクロプロピルメチル基、シクロヘキシル
エチル基、8,9−メタノペンタデシル基などが挙げら
れる。置換基Rが芳香環によって置換されたアルキル基
である場合の具体例としては、ベンジル基、フェネチル
基、p−ペンチルフェニルオクチル基などが挙げられ
る。
【0026】一般式(I)で示される環状ホスファチジン
酸(cPA)誘導体中のMは、水素原子又は対カチオンであ
る。Mが対カチオンである場合の例としては、例えば、
アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換若しく
は無置換アンモニウム基が挙げられる。アルカリ金属原
子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム
などが挙げられ、アルカリ土類金属原子としては、例え
ば、マグネシウム、カルシウムなどが挙げられる。置換
アンモニウム基としては、例えば、ブチルアンモニウム
基、トリエチルアンモニウム基、テトラメチルアンモニ
ウム基などが挙げられる。本発明で用いられる一般式
(I)で示されるcPAの具体例としては、オレオイルcPAが
特に好ましい。
【0027】一般式(I)で示されるcPA誘導体は、例え
ば、特開平5−230088号公報、特開平7−149
772号公報、特開平7−258278号公報、特開平
9−25235号公報に記載の方法等に準じて化学的に
合成することができる。あるいは、一般式(I)で示され
るcPA誘導体は、特願平11−367032号明細書に
記載の方法に準じてリゾ型リン脂質にホスホリパーゼD
を作用させることによって合成することもできる。ここ
で用いるリゾ型リン脂質は、ホスホリパーゼDを作用し
うるリゾ型リン脂質であれば特に限定されない。リゾ型
リン脂質は多くの種類が知られており、脂肪酸種が異な
るもの、エーテル又はビニルエーテル結合をもった分子
種などが知られており、これらは市販品として入手可能
である。ホスホリパーゼDとしては、キャベツや落花生
などの高等植物由来のものやStreptomyces chromofuscu
s, Actinomadula sp.などの微生物由来のものが市販試
薬として入手可能であるが、Actinomadula sp. No.362
由来の酵素によって極めて選択的にcPAが合成される
(特開平11−367032号明細書)。リゾ型リン脂
質とホスホリパーゼDとの反応は、酵素が活性を発現で
きる条件であれば特に限定されないが、例えば、塩化カ
ルシウムを含有する酢酸緩衝液(pH5〜6程度)中で
室温から加温下(好ましくは37℃程度)で1から5時
間程度反応させることにより行う。生成したcPA誘導体
は、常法に準じて、抽出、カラムクロマトグラフィー、
薄層クロマトグラフィー(TLC)などにより精製する
ことができる。
【0028】本発明において有効成分として用いる環状
ホスファチジン酸誘導体は、神経細胞の生存率を向上さ
せ、また神経細胞の伸長を促進することができる。従っ
て、本発明によれば、当該環状ホスファチジン酸誘導体
を有効成分として含む神経障害の治療及び/又は予防の
ための薬剤が提供される。本明細書で言う神経障害とは
好ましくは脳神経障害であり、その具体例としては、神
経変性疾患、脳卒中、脳梗塞、痴呆、頭部外傷などが挙
げられる。ここで言う神経変性疾患とは、神経細胞が萎
縮又は変性脱落する病気であり、例えば、アルツハイマ
ー病、アルツハイマー型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬化
症、パーキンソン氏病等が挙げられる。
【0029】本発明の薬剤は、1又は2以上の製剤学的
に許容される製剤用添加物と有効成分である一般式(I)
で示されるcPA誘導体とを含む医薬組成物の形態で提供
することが好ましい。
【0030】本発明の薬剤は、種々の形態で投与するこ
とができるが、主な作用部位が脳であるため、血液−脳
関門を通過できる形態であることが好ましい。そのよう
な好適な投与形態としては、経口投与でも非経口投与
(例えば、静脈内、筋肉内、皮下又は皮内等への注射、
直腸内投与、経粘膜投与など)でもよい。経口投与に適
する医薬組成物としては、例えば、錠剤、顆粒剤、カプ
セル剤、散剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などを挙げ
ることができ、非経口投与に適する医薬組成物として
は、例えば、注射剤、点滴剤、坐剤、経皮吸収剤などを
挙げることができるが、本発明の薬剤の剤形はこれらに
限定されることはない。さらに、公知の技術によって持
続性製剤とすることもできる。
【0031】本発明の薬剤の製造に用いられる製剤用添
加物の種類は特に限定されず、当業者が適宜選択可能で
ある。例えば、賦形剤、崩壊剤又は崩壊補助剤、結合
剤、滑沢剤、コーティング剤、基剤、溶解剤又は溶解補
助剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、緩衝剤、抗酸化剤、防
腐剤、等張化剤、pH調節剤、溶解剤、安定化剤などを用
いることができ、これらの目的で使用される個々の具体
的成分は当業者に周知されている。
【0032】経口投与用の製剤の調製に用いることがで
きる製剤用添加物として、例えば、ブドウ糖、乳糖、D-
マンニトール、デンプン、又は結晶セルロース等の賦形
剤;カルボキシメチルセルロース、デンプン、又はカル
ボキシメチルセルロースカルシウム等の崩壊剤又は崩壊
補助剤;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、又は
ゼラチン等の結合剤;ステアリン酸マグネシウム又はタ
ルク等の滑沢剤;ヒドロキシプロピルメチルセルロー
ス、白糖、ポリエチレングリコール又は酸化チタン等の
コーティング剤;ワセリン、流動パラフィン、ポリエチ
レングリコール、ゼラチン、カオリン、グリセリン、精
製水、又はハードファット等の基剤を用いることができ
る。
【0033】注射あるいは点滴用の製剤の調製に用いる
ことができる製剤用添加物としては、注射用蒸留水、生
理食塩水、プロピレングリコール等の水性あるいは用時
溶解型注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブド
ウ糖、塩化ナトリウム、D-マンニトール、グリセリン等
の等張化剤;無機酸、有機酸、無機塩基又は有機塩基等
のpH調節剤等の製剤用添加物を用いることができる。
【0034】本発明の薬剤はヒトを含む哺乳動物に投与
することができる。本発明の薬剤の投与量は患者の年
齢、性別、体重、症状、及び投与経路などの条件に応じ
て適宜増減されるべきであるが、一般的には、成人一日
あたりの有効成分の量として1μg/kgから1,00
0mg/kg程度の範囲であり、好ましくは10μg/
kgから100mg/kg程度の範囲である。上記投与
量の薬剤は一日一回に投与してもよいし、数回(例え
ば、2〜4回程度)に分けて投与してもよい。
【0035】本発明の薬剤は、神経障害の治療又は予防
に有効な他の薬剤、脳神経にエネルギーを供給するよう
な栄養剤等と併用することもできる。なお、cPAそれ自
体は、後記する実施例1及び2の結果から明らかなよう
に哺乳類の脳に存在する物質であり、生体にとって安全
であると考えられる。以下の実施例により本発明を具体
的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるこ
とはない。
【0036】
【実施例】実施例1:ホスホリパーゼD(PLD)によ
るcPAの生合成 実施例1では、放線菌由来PLDを用いてリゾホスファチ
ジルコリン(LPC)からcPAを生成できること、並びに哺
乳類の脳中にcPAを生成する酵素が存在することを明ら
かにした。 (A)材料及び方法(A−1)実験材料 放線菌Streptomyces chromofuscus (S.chromofuscus)
由来のPLD、キャベツ由来のPLDは、Sigma社より購入し
た。Actinomadura sp. No. 362(A. sp. No.362)由来のP
LDは、名糖産業より購入した。1−オレオイルLPC(1-o
leoyl LPC)、リゾホスファチジルセリン(lysophospha
tidylserine;LPS)は、Avanti Polar lipid, INC.社よ
り購入し、リゾホスファチジルエタノールアミン(lyso
phosphatidylethanolamine;LPE)は、Doosan Serdary
Res. Lad.社より、1−アルキルリゾホスファチジルコ
リン(1-alkyl lysophosphatidylcholine;1-alkyl LP
C)、1−アルケニルホスファチジルコリン・プラズマ
ロゲン(1-alkenyl phosphatidylcholine plasmaloge
n;1-alkenyl LPC)は、Sigma社より購入した。また、K
obayashi, S.,他: Tetrahedron Lett., 34, 4047-4050
(1993)に記載の方法に準じて有機合成したオレオイルcP
A(oleoyl cPA)も使用した。
【0037】(A−2)1-NBD-LPCの合成 cPA生成活性測定の為の基質として、蛍光標識されたLPC
の調製を行った。すなわち、1−ヘキサデカノイル−2
−(12−(7−ニトロベンズ−2−オキサ−1,3−
ジアゾール−4−イル))−sn−グリセロ−3−ホスホ
コリン(2-NBD-HPC;Avanti Polar lipids, INC.社製)
を出発原料とし、リパーゼ(Rhizopus delemer由来;生
化学工業社製)で1位の脂肪酸のみを脱アシル化した後、
トリス塩酸バッファー(pH=9)中で、2位の蛍光アシル
基を1位に転位させ、高速液体クロマトグラフィー(HPL
C)を用いて精製したものを1-NBD-LPCとした。
【0038】(A−3) cPA生成活性測定 基質として、1-NBD-LPCと卵黄由来のLPCを1:99で混ぜ合
わせたものを使用した(1% NBD-LPC)。100μM 1%NBD-L
PC存在下、10mM塩化カルシウムを含む100mM酢酸バッ
ファー(pH=5.6)中で酵素アッセイを行った。酵素源と
して、放線菌S.chromofuscus由来のPLD2.2μg/ml、また
は、放線菌A.sp.No.362由来のPLD1.4μg/mlを用いた。
反応は30℃(S.chromofuscusの場合)または、37℃(A.
sp.No.362の場合)で行った。反応終了時に反応液の0.3
倍容の0.1Mクエン酸を加えて、溶液を酸性にした後に、
クロロホルム:メタノール(2:1)混液を反応液の5.4倍量
加え、遠心(1,400×g、5分)して下層に、脂質を抽出し
た。もう一度、クロロホルム:メタノール(2:1)混液抽
出操作を同様に繰り返した後に、下層を合わせて窒素気
流下で濃縮・乾固させた。得られた脂質を少量のクロロ
ホルム:メタノール(2:1)混液に再溶解させて、シリカ
ゲル(Silica Gel)60F 薄層クロマトグラフィープレー
ト(TLC; E.Merck社製)にスポットし、展開溶媒;クロロ
ホルム/メタノール/酢酸/5%二亜硫酸ナトリウム水溶
液(100:40:12:5)で脂質を分離し、各蛍光スポットの強
さを、蛍光イメージ分析器(fluoroimage analyzer)FL
A-2000(富士フィルム社製)で定量分析した。
【0039】(A−4)ESI-MS/MSによる構造解析 エレクトロスプレー型イオン源をタンデム四重極型質量
分析計に装備したクアットロII(Quattro II;Micromas
s社製)とHPLCを連結した装置を使用して、陰イオンモ
ードで分析した。ヒューレットパッカードモデル(Hewl
ett Packerd model)1050 HPLCポンプ(Hewlett Packer
d社製)を用いて、アセトニトリル/メタノール(1:1)混
液により5μl/分の流速で溶出した。サンプルは、0.1%
ギ酸アンモニウムを含むアセトニトリル/メタノール
(1:1)混液中に10〜50pmol/μlの濃度になるように脂質
を溶かしたものを、3〜5μl注入した。ギ酸とアンモニ
アは、サンプルがイオン化される時に、それぞれプロト
ンの供与体、受容体として働く。HPLCとMSのインターフ
ェイスは80℃に維持し、溶媒を蒸発させる窒素ガスは圧
力40psi、流速0.4 l/分に設定した。MS分析においてcon
e voltage−30eVで分子イオンを、MS/MS分析においてco
ne voltage−90eVで脂肪酸を、−170eVでリン酸をモニ
ターした。MS/MS分析の際には、不活性ガスを導入して
局部的に高圧な部位を作り、分子イオンを衝突活性開裂
(collision induced dissociation ;CID)させてドータ
ーイオンを発生させる手法を組み合わせた。衝突ガス
(collision gas)にはアルゴン(圧力 3.0〜4.5e-4Tor
r)を用い、衝突エネルギー(collision energy)は−50
eVに設定した。
【0040】(A−5)NIH−3T3における各種リゾリン
脂質の添加によるストレスファイバーの形成 マウス由来繊維芽細胞NIH-3T3は、10%のウシ胎児血清
(fetal bovine serum;FBS;Moregate社製)を含むダ
ルベッコ改変イーグル培地(Dulbecoo's Modified Eagl
e's Medium;DMEM)で培養しているものを実験に用い
た。NIH-3T3を22mm径のカバーガラスを敷き詰めたシャ
ーレ(10cm径)中に2.5×104細胞で植え継ぎ、24時間後に
FBSを含まない培地に変え、その後48時間血清飢餓状態
で培養した。10μMのリゾリン脂質を加え、37℃、30分
間インキュベートすることで細胞に刺激を与えた後に、
3.7%パラホルムアルデヒドと0.1%トリトン(Triton)X-
100を含むダルベッコのPBS(Dalbecco's PBS)で室温に
て、10分間固定した。その後、5単位/mlのローダミン
ファロイジン(rhodamine phalloidin;フナコシ社製)
で37℃、1時間染色した。カバーガラスをPBSで3回洗浄
した後に、共焦点レーザー顕微鏡TCS NTレーザー制御走
査型顕微鏡(Control Laser Scanning Microscope;Lei
ca社製)で観察した。
【0041】(A−6)ラット脳中のcPA生成活性の測
材料として、雄4週齢のスプラグ−ドーレイ系ラット(S
prague-Dawley rat)を用いた。ラットはエーテル麻酔
をかけた後、断頭し、全脳を摘出し、−80℃で保存し
た。保存してあったラット全脳の左右いずれかの半分
(約0.8g)に、10倍量の0.32Mショ糖液を加え、ポリトロ
ンホモジナイザー(Polytron Homogenizer;Polytron社
製)、パワーコントロール(power control)7で、20秒
間2回ホモジナイズした。この液の体積の2倍量のヘペス
バッファー(Hepes buffer)を加え、ホモジネート溶液
とした。cPA生成活性の測定は、以下の溶液組成で行っ
た。すなわち、基質として1%NBD-LPC 40nmolまたは、1
位脂肪酸のカルボキシル基の炭素を放射標識した14C-LP
Cと非標識のLPCを2:55の比率で混ぜたもの(120nCi)を用
い、オレイン酸ナトリウム450μM存在下のホモジネート
溶液100μl中37℃で反応させた。反応終了後の処理につ
いては、放線菌PLDアッセイの条件に準じた。
【0042】(B)結果(B−1)放線菌PLDによるLPA/cPAの生成 1%1-NBD-LPCを基質として、リン酸基転位活性の強弱の
異なる2種類の放線菌由来のPLDを用いてcPAの生成が見
られるか否かを検討した。S.chromofuscus由来のPLDを
用いた場合、20分間反応させると、主な生成物として1-
NBD-LPAのみが得られた。しかし、リン酸基転移活性が
高いとされているA.sp.362由来のPLDを用いると、LPAと
は異なった生成物が主に得られ、この化合物のRf値は、
有機合成したcPA標品(オレオイルcPA)と一致した。こ
れらの反応の違いを確認するため、それぞれの酵素の濃
度依存性、さらに反応の時間依存性を検討した。S.chro
mofuscus由来のPLDを用いた場合は、基質であるLPCが減
少するのに伴って、LPAの生成のみが見られた。それに
対し、A.sp.362由来のPLDを用いた場合には、cPAに相当
する生成物の増加が見られたのみで、LPAの生成はほと
んど見られなかった。このことは、PLDの種類によっ
て、基質が同じであっても生成物が異なることを示して
いる。また、酵素学的解析の進んでいるキャベツ由来の
PLDを用いたときには、LPAとcPAの両方が約6:4の割合で
生成した。
【0043】ここで、cPA相当の化合物を生成するA.sp.
362由来の酵素について、さらに基質特異性を調べてみ
た。基質として各100μMの1-acyl LPC、1-alkyl LPC、1
-alkenyl LPC、LPS、LPEを用い、標準的なPLDアッセイ
条件に準じて反応を行わせた。それぞれの基質からの生
成物をTLCを用いて分離し、LPA、cPA相当のスポットを
かきとり、リン定量を行って、生成量を測定した。いず
れの基質においてもLPAの生成はほとんど見られなかっ
た。LPC、1-alkyl LPC、あるいは1-alkenyl LPCを基質
として用いた場合には、時間依存的にcPAが生成した
が、LPS、LPEを基質として用いた場合にはcPAは生成さ
れなかった。この結果より、A.sp.362由来PLDは、極性
基部分にコリン(choline)を有するリゾリン脂質から
効率よくcPAを生成することが示された。また、alkyl、
alkenyl型LPCもcPA生成の基質になりうることがわかっ
た。
【0044】(B−2)A.sp.362由来PLD反応生成物の
構造解析 1位脂肪酸にオレイン酸を持つ1-oleoyl LPCを基質とし
てA.sp.362由来PLDで反応させたときの主生成物(cPAと
同じRf値を持つ化合物)について、その構造解析を行う
為、質量分析を用いた。まず、質量分析の条件を設定す
るため、スタンダードとして有機合成した1-oleoyl cPA
をESI-MS/MSにかけ、陰イオンモードで分析した。その
結果、上記した条件で、1-oleoyl cPAの分子イオン[M−
H]-に合致するm/z 417のピークが観察された。同一条件
下でPLD反応生成物ついて分析したところ、同様にm/z 4
17のピークが強く観察された。分子イオンに相当するピ
ーク群について、さらに構造情報を得るため、in-sourc
e fragmentationによるタンデムマススペクトリー(MS/
MS)を行った。スタンダードcPAの分子イオンm/z 417を
親イオンとしたドータースキャンの結果、いくつかの特
徴的イオンピークが発生し、以下のように解釈された。
すなわち、m/z 281はC17H33COO-、m/z 153は[M−C17H33
CO]-、m/z 79はPO3 -に相当する。一方、PLD反応によっ
て得られたm/z 417ピークについて同様にMS/MS分析をし
た結果、同一の特徴的なフラグメントピーク群が認めら
れた。以上より、A.sp.362由来PLD反応によって作られ
た化合物がcPAであることが確認された。
【0045】(B−3)PLD反応生成物によるNIH-3T3細
胞でのストレスファイバーの形成 放線菌A.sp.362由来PLD反応で得られた生成物がcPAと同
一の化合物であることを更に確認するために、その生物
活性を検討した。すなわち、cPAの持つ生理活性の1つ
である、繊維芽細胞でのアクチンストレスファイバーの
形成能を調べた。血清飢餓状態にしたサブコンフルエン
ト(subconfluent)状態の、マウス由来繊維芽細胞株で
あるNIH-3T3に10μMのLPA、化学合成されたPHYLPA、あ
るいはPLD反応生成物であるcPAをそれぞれ37℃で30分間
与え、ローダミンファロイジンでアクチンのストレスフ
ァイバーを染色し、観察を行った。脂質を添加しなかっ
たコントロールの細胞では、ストレスファイバーの生成
が見られなかったのに対し、用いた3種のリゾリン脂質
でいずれもストレスファイバーの形成が見られた。
【0046】(B−4)ラット脳におけるcPAの生成 ラット脳中にcPA生成活性があるか否かを検討した。異
なる複数の条件下で検討を行った結果、最終的にショ糖
水溶液(0.32M)でホモジネートを作成し、20mMヘペスバ
ッファー(pH 7.2)中、オレイン酸(450μM)存在下で活性
の測定を行ったところ、37℃で60分間インキュベーショ
ン後、cPA相当のスポットが確認された。
【0047】(C)まとめ 上記結果より、PLDと総称されるリン脂質加水分解酵素
のうちの特定の酵素によってcPAを生成できることが示
された。現在精製品として市販されているPLDの中で
も、その酵素源が異なると、LPCを基質にした場合、異
なる生成物が得られることがわかった。実施例1におい
て、ラット脳ホモジネート中にLPCからcPAを生成する酵
素活性が検出できたことは、ホスファチジル基転移反応
が、生理活性脂質であるcPAの産出に積極的に貢献して
いることを示している。哺乳類の脳の中には、cPAが存
在することが示され、また、PLD活性についても脳は比
較的高い活性を有することが分かった。基質のLPCは、
通常の生理活性条件下では脳内にほとんど検出されない
が、ある種のPLA2の活性化を経て生成されると考えられ
る。
【0048】放線菌A.sp.362由来PLDを用いることによ
り、効率よくcPAが調製できることはcPAの構造類似体を
作成する上で有用である。このような酵素を用いた調製
法では、1-alkenyl LPCからcPAを調製することが可能で
ある。1-alkenyl LPAはウサギ角膜損傷時に検出され、
細胞増殖活性を有し、創傷の治癒に関与していることが
考えられている。この他、脂肪酸の異なったLPCから、
対応するLPA/cPAを調製することが可能である。
【0049】実施例2:ウシ大脳からの環状ホスファチ
ジン酸の検出 実施例2では、哺乳動物の脳中のcPAの検出を目的とし
て、ウシの大脳にcPAが存在することを確認した。 (A)材料及び方法(A−1)実験材料 標準品として用いたoleoyl-cPA(有機合成品)は、Kobaya
shi, S.,他: Tetrahedron Lett., 34, 4047-4050(1993)
に記載の方法に準じて有機合成した。ウシ脳は東京芝浦
臓器株式会社より購入した。(A−2)ウシ脳からの脂質成分の抽出 ウシの大脳を出発材料として、cPAの存在を確かめた。
図3にその手順をまとめた。すなわち、ウシ大脳の一部
40gに、水160ml、クロロホルム・メタノール混液(2:1)
800mlを加え、ホモジナイズした後、分液漏斗に移し、
撹拌後室温で静置した後、下層(クロロホルム層)を分取
し、残りの上・中間層をクロロホルム・メタノール混液
(17:3)(v/v)560mlで4回抽出し、下層を分取した。その
後、上・中間層にメタノール80ml、1Mクエン酸を加え
て、pHを約3に合わせ、そのまま撹拌しながら30分間放
置した。さらに、クロロホルム・メタノール混液(17:
3)560mlを加え、3回抽出し、下層を分取した。得られた
クロロホルム層をすべて合わせ、pH7になるようにクロ
ロホルム・メタノール・3%アンモニア水(6:5:1)で中
和した後、窒素エバポレーターで乾固させた。この抽出
物をクロロホルム・メタノール混液(1:1)に再懸濁し、
脂質画分として以下の精製に用いた。
【0050】(A−3)薄層クロマトグラフィー(TL
C)による精製 ウシ大脳由来の脂質抽出物を、次の展開溶媒系を用いた
薄層クロマトグラフィーによって順次分離した(図
4)。分離にはシリカゲル60 TLCプレート(E. Merck N
o.5745;E. Merck社製)を用いた。 I:クロロホルム/メタノール/7Mアンモニア水(12:1
2:1)(v/v) II:クロロホルム/メタノール/酢酸/水(25:15:4:
2)(v/v)
【0051】スタンダードとして、有機合成したoleoyl
-cPAをプレートの端にのせ、展開後スタンダード部分の
みをリン特異的呈色試薬であるディットマー(Dittme
r)試薬で発色させた。抽出物をのせた部分のプレート
について、スタンダードのRf値に相当する領域をかきと
った。シリカ粉末から脂質をクロロホルム・メタノール
混液(1:2)、(1:1)、(2:1)の順でそれぞれの溶媒を用
いて2回ずつ抽出した。抽出溶液を合わせて、窒素ガス
で溶媒を除去した。これをクロロホルム・メタノール
(1:1)に再懸濁し、シリカゲルを除いた後、この精製標
品を次の展開溶媒を用いた二次元TLCで分析した。分離
にはシリカゲル60 TLCプレート(E.Merck No.5721;E.Me
rck社製)を用いた。 III:クロロホルム/メタノール/水(60:40:9) IV:クロロホルム/メタノール/酢酸/アセトン/水(1
0:2:2:4:1) プレート上の脂質の呈色には、脂質全般を発色するプリ
ムリン試薬を噴霧した後、UVランプで蛍光スポットを検
出し、鉛筆で印をつけた。その後、ディットマー試薬を
噴霧してリン脂質を含むスポットを検出し、定量した。
【0052】(B)結果 精製は湿重量40gのウシ大脳より開始した。クロロホル
ム・メタノール混液で抽出を繰り返したところ、6.95g
相当の粗脂質画分が抽出された。この抽出物1gをクロロ
ホルム・メタノール混液(1:1)2mlに溶解後、その1mlを
厚さ2mmのTLCプレートにスポットした。TLCは、上記展
開溶媒系I、IIを順次用いて、それぞれRf値が0.80〜0.9
8、0.74〜0.85の範囲をかきとった。この部分精製サン
プルを、上記展開溶媒系III、IVを用いて二次元TLCで分
析したところ、スタンダードcPAと同一のRf値を示すス
ポットが確認された(図5(a))。次に、上記展開溶媒
系IIIを用いたTLCによって、リン脂質特異的呈色試薬で
あるディットマー試薬による発色を、既知量のスタンダ
ードcPAを用いて作成した標準曲線と比較することによ
って、抽出物中に含まれるcPAの濃度を決定した(図5
(b))。以上のcPAの量を概算すると、湿重量40gのウシ
大脳から、約2.1mgのcPAが精製されたことになる。
【0053】(C)まとめ 一般に、脂質は哺乳動物の脳湿重量の5〜15%、乾燥重量
の65%を占め、脳は脂質を最も多く含む臓器の一つであ
ると言える。実施例2では、40gのウシ大脳から約7gの
総脂質が抽出された。さらに、最終的には約2.1mgのcPA
相当の脂質が検出された。精製途中でのロスを考えて
も、これは、脳中の全脂質重量の0.1%以下に相当する値
である。ラット脳中の主要なリン脂質であるホスファチ
ジルエタノールアミン(PE)やホスファチジルコリン
(PC)の総脂質に対する割合がそれぞれ約20%であるこ
とを考えると、cPAはこれらの約1/200以下に相当
する微量な成分であるが、哺乳動物の脳中にcPAが存在
することが証明された。
【0054】実施例3:ラット胎児脳由来の初代培養系
神経細胞に対する環状ホスファチジン酸の作用(生存率
と神経突起への影響) 実施例3では、ラット胎児脳由来の初代培養系を用いて
cPAが神経細胞の生存や神経突起の形成に及ぼす影響に
ついて解析した結果、cPAの新規な生理活性として、神
経細胞への作用(神経細胞の生存率の向上及び神経突起
の伸長促進)が実証された。
【0055】(A)材料及び方法(A−1)ラット胎児脳海馬由来の初代培養神経細胞の
調製と培養 材料として妊娠16日齢のスプラグ−ドーレイ系ラットを
用いた。ラットはエーテル麻酔をかけ、胎児を取り出
し、実体顕微鏡下で脳全体を取り出した後、大脳皮質の
内側にある海馬を摘出した。摘出した海馬を、15ml遠心
用チューブに集め、2.5%トリプシン0.5mlに培養液を加
えて5mlとし、これを37℃で15分インキュベートした。
その後、3,000rpmで15分遠心後、上清を取り除き、培養
液を5ml加えて、3,000rpmで15分遠心した。これをさら
に2回繰り返し、3〜5mlの培養液を加え、パスツールピ
ペットでピペッティングし、次に注射針(TERUMO NEEDLE
(0.70x38mm);テルモ社製)を用いてピペッティングし
た。最後にセルストレーナー(FALCON Cell Strainer 70
μm;FALCON社製)に通して解離させた細胞を、プレート
を用いて初代培養した。また、神経細胞が凝集を起こさ
ないように培養できる培養液、プレートのコーティング
方法を検討した。なお、本試験に用いたcPA誘導体は、
実施例1に記載した方法に従って、基質として、オレオ
イルLPCを使用し、酵素源として、放線菌A.sp.No.362由
来のPLDを用いて合成したオレオイルcPAである。
【0056】(A−2)神経細胞の生存率の測定 (A−1)に記載した方法で初代培養を行い、プレート
に細胞を播いたのと同時に、それぞれ異なる密度の神経
細胞にオレオイルcPA(5μm)を添加し、一定時間後に位
相差顕微鏡を用いて、写真を撮り(倍率20倍、24穴プレ
ートの1ウェルにつき5枚の写真)、その写真上で細胞の
生死を形態的に判別して生存率を算出した。さらに、細
胞生存率の上昇に最適なcPAの濃度を決定するために、
神経細胞の生存率が最も高かった細胞密度(3.0×105
胞/cm2)で培養を行い、0.5、1.0、5.0または10.0μMの
オレオイルcPAを細胞を播くのと同時に、細胞培養液に
添加して同様に写真を撮り、その写真上で細胞の生死を
判別した。
【0057】(A−3)神経突起伸長の測定 神経突起の伸長に対するcPAの影響を調べるために、
(A−1)に記載した方法で初代培養を行い、培養を始
めてから12、18、24時間後に写真を撮り、それぞれの時
間における細胞一個あたりの神経突起の平均長、およ
び、神経突起を持つ細胞の数を画像解析ソフト(NIH Im
age 1.62)を用いて解析した。
【0058】(A−4)細胞内シグナル伝達系の解析 ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害
剤である、ウォルトマンニン(Wortmannin;Sigma社製)
とLY294002(Sigma社製)をそれぞれ10mM、50mMの濃度
でDMSOに溶解後、PBSで希釈し、それぞれ最終濃度30n
M、10μMになるように細胞培養液に添加した。阻害剤
は、cPAを加える2時間前に細胞培養液に添加し、前処理
を行った。cPAの添加後48時間経た時点での細胞の写真
を撮り、その写真上で細胞の生死を形態的に判別して生
存率を算出した。
【0059】(B)結果(B−1)神経細胞初代培養条件に関する実験系の確立 予備実験として、様々な培養条件を検討し、神経細胞が
プレートに接着するコーティング、培養液で実験した結
果、培養液はハムのF-12(Ham's F-12)、プレートのコー
ティングはポリ−L−リジン(Poly-L-lysine)または
ポリ−L−オルニチン(Poly-L-ornithine)が適してい
たので、以後、ポリ−L−リジンがコーティングされた
プレート(IWAKI MICROPLATE;IWAKI社製)を用いた。
また、血清中にはcPAやLPAがすでに存在している可能性
があるため、無血清培地を用いた。なお、血清の代わり
に、増殖促進因子(無血清培養補助因子)としてN1サプ
リメント(インシュリン5μg/ml、トランスフェリン5μ
g/ml、プロゲステロン20nM、プトレシン100μM、亜セ
リン酸ナトリウム30nMを含む;Sigma社製)を添加した。
【0060】(B−2)ラット胎児海馬由来の初代培養
神経細胞の生存率に対するcPAの作用 まず、5μMのオレオイルcPAを上記(B−1)に記載し
た培養条件下の神経細胞培養液に添加したところ、cPA
無添加のコントロールに比べて、細胞の生存が良好とな
り、さらに神経突起の伸長も観察された。そのときの代
表的な細胞を図6に示す。次に、細胞の密度と生存率の
関係について、さらに詳細に解析を行った。まず、3.0
×105、1.0×105、7.5×104、あるいは、5.0×104細胞
/cm2の密度で細胞を播いて、48時間後の生存率を比較
した結果、3.0×105細胞/cm2の細胞密度で播いた場合
の細胞生存率が最も高かった(図7(a))。
【0061】次に、細胞密度を4.5×105、あるいは6.0
×105細胞/cm2に高めた結果、細胞の生存率は3.0×105
細胞/cm2の場合よりも低下した(図7(b))。従って、c
PAが最も効果的に細胞の生存率を高めるためには、3.0
×105 細胞/cm2の細胞密度が適していることが明らかと
なった。次に、細胞生存率の上昇に最適なcPAの濃度を
決定するために、細胞を播いた後、0.5、1.0、5.0、ま
たは10.0μMのcPAを培地に添加して生死を判別した。そ
の結果、cPAの濃度が1.0μMの時に、細胞の生存に最も
効果的であることが明らかとなった(図8及び図9)。
【0062】(B−3)神経突起の伸長に対するcPAの
作用 5μMのオレオイルcPAを細胞培養液に添加し、24時間
後、48時間後、72時間後に写真を撮って、画像解析ソフ
ト(NIH Image 1.62)で解析し、細胞1個当たりの神経
突起の平均長を解析した。その結果、cPA添加によっ
て、24時間後ではコントロールに比べ、2倍の平均長が
観察され、48時間後(1.5倍)や72時間後(1.2倍)に比べて、
効果が最も強く現れた(図10(a))。そこで、より早
い時間で、cPAの神経突起伸長に関する作用を評価する必
要があると考え、12時間、18時間、24時間後の神経突起
伸長に対する、各濃度のcPAの影響を調べた。その結
果、cPA濃度1.0μMを添加したものの神経突起の伸び
が、12時間後の時点で、コントロールの約1.7倍にな
り、最大値を示した(図10(b))。この値は、50ng/ml
(最適濃度)のNGF添加に匹敵する値であった。
【0063】初代培養系において、神経突起はすべての
神経細胞に満遍なく存在するのではなく、突起を有する
細胞とそうでない細胞が混在する。そこで、神経突起を
持つ細胞の割合についてもcPAの効果を解析したとこ
ろ、24時間後では、cPA濃度1.0μMを添加したものにお
いて、神経突起を有する細胞の割合が高かった。これ
は、NGF添加時と比較しても高い値であった(図11及
び図12)。
【0064】(B−4)cPAによる生存率上昇における
細胞内シグナル伝達系の解析 ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)の阻害
剤である、ウォルトマンニン、あるいはLY294002をそれ
ぞれ培地に添加し、ウォルトマンニンによって生存率が
コントロールレベル近くまで低下した。また、LY294002
の場合は、コントロール値以下の低い生存率を示した。
細胞はつぶれて、変形したものが多かった。これはLY29
4002nによる細胞毒性が現れた結果とも考えられる。以
上の結果から、cPAによる生存率上昇作用において、PI3
Kの活性を介した細胞内シグナル伝達系が関与している
ことが示唆された(図13)。
【0065】(C)まとめ 上記結果より、cPAは1.0μMの濃度においてラット海馬
初代培養神経系細胞の生存率を向上させ、また神経突起
の伸長を促進することが明らかとなった。今回の試験で
は、特に、cPAの長期作用として神経細胞伸長作用があ
ることが明らかになり、cPAは長期的には神経細胞の分
化を促進している可能性がある。
【0066】
【発明の効果】本発明により、一般式(I)で示されるcPA
誘導体が、哺乳類の海馬由来の神経細胞の生存率を高
め、神経突起の伸長を促進することが確認された。従っ
て、本発明で用いる一般式(I)で示されるcPA誘導体が、
痴呆、アルツハイマー病、アルツハイマー型老年痴呆
症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン氏病、脳卒中、
脳梗塞または頭部外傷などの神経障害治療剤として有用
であることが明らかとなった。本発明によれば、神経細
胞の生存率を高め、且つ、神経突起の伸長を促すことに
よって、脳神経細胞の死滅によって起こる種々の疾患の
予防、治療、リハビリ等に非常に有効な神経障害治療剤
及び予防剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ホスファチジン酸(PA)とリゾホス
ファチジン酸(LPA)の構造を示す図である。
【図2】図2は、リゾリン脂質の構造を示す図である。
【図3】図3は、ウシ大脳からの脂質成分の抽出法の概
要を示す図である。
【図4】図4は、薄層クロマトグラフィー(TLC)によ
るcPAの精製法を示す図である。
【図5】図5は、ウシ大脳由来部分精製物のTLC分析結
果を示す図である。
【図6】図6は、BSA、cPA又はNGFの添加48時間後の神
経細胞の様子を示す図である。
【図7】図7は、cPAの神経細胞密度に対する影響を示
すグラフである。
【図8】図8は、cPAの神経細胞の生存率に対する影響
を示すグラフである。
【図9】図9は、細胞生存率の上昇に最適なcPA濃度を
決定するためのデータとしての神経細胞を示す図であ
る。
【図10】図10は、cPAの神経突起伸長に対する影響
を示すグラフである。
【図11】図11は、cPA濃度と神経突起を有する細胞
の割合を示すグラフである。
【図12】図12は、神経突起伸長とcPA濃度との関係
を示す神経細胞の図である。
【図13】図13は、cPAによる生存率上昇作用に対す
るPI3K阻害剤の影響を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4C086 AA01 AA02 DA37 MA01 MA04 NA14 ZA02 ZA15 ZA16 ZA36 ZB22

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(I): 【化1】 (式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状ア
    ルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケ
    ニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アル
    キニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳
    香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子又は対カチオ
    ンである。)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を
    有効成分として含む、神経細胞の生存促進のための薬
    剤。
  2. 【請求項2】 一般式(I): 【化2】 (式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状ア
    ルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケ
    ニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アル
    キニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳
    香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子又は対カチオ
    ンである。)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を
    有効成分として含む、神経細胞の伸長促進のための薬
    剤。
  3. 【請求項3】 一般式(I): 【化3】 (式中、Rは、炭素数1〜30の直鎖状若しくは分岐状ア
    ルキル基、炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケ
    ニル基、又は炭素数2〜30の直鎖状若しくは分岐状アル
    キニル基であり、これらの基はシクロアルカン環又は芳
    香環を含んでいてもよい。Mは、水素原子又は対カチオ
    ンである。)で示される環状ホスファチジン酸誘導体を
    有効成分として含む、神経障害の治療及び/又は予防の
    ための薬剤。
  4. 【請求項4】 神経障害が、痴呆、アルツハイマー病、
    アルツハイマー型老年痴呆症、筋萎縮性側索硬化症、パ
    ーキンソン氏病、脳卒中、脳梗塞または頭部外傷から選
    択されることを特徴とする、請求項1から3の何れかに
    記載の薬剤。
  5. 【請求項5】 一般式(I)で示される環状ホスファチジ
    ン酸誘導体が、1−オレオイル環状ホスファチジン酸で
    ある、請求項1から4の何れかに記載の薬剤。
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