WO2002083148A1 - Promoteurs de survie des cellules nerveuses a base de derive cyclique d'acide phosphatidique - Google Patents

Promoteurs de survie des cellules nerveuses a base de derive cyclique d'acide phosphatidique Download PDF

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Description

明細書
環状ホス 酸誘導体を含む神経細胞の生存促進剤 技術分野
本発明は、 リン脂質の 1種である環状ホスファチジン酸誘導体を含む薬剤に関 する。 より詳細には、 本発明は、 環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として 含む、 神経細胞の生存促進のための薬剤、 神経細胞の伸長促進のための薬剤、 並 びに神経障害の治療及び 又は予防のための薬剤に関する。 背景技術
生体膜を構成している主成分であるダリセロリン脂質は、 一般にグリセロール 骨格に疎水性の脂肪酸が 2分子結合し、 さらにリン酸基を介してコリンゃェタノ ールァミンなどの親水性基が結合している。 リン脂質における疎水性部分と親水 性部分とのバランスが、 安定な脂質二重層を形成する上では重要である。 これに 対してリゾリン脂質は、 脂肪酸が 1分子のみ結合したものであり、 疎水性部分が 親水性基に対して相対的に小さくなるため、 安定な膜構造をとれず、 逆にそれを 壊す界面活性作用を示す。
しかし、 近年、 低濃度で特有の生理活性を示すリゾリン脂質が多数見つかって おり、そのうちの一つとしてリゾホスファチジン酸(lysophosphatidic acid ; LPA) が挙げられる。 LPA は最も単純な構造を持つリン脂質の一つであり、 グリセロー ルの sn_l位あるいは 2位の脂肪酸のどちらか一方が脱ァシル化されている点でホ スファチジン酸(phosphatidic acid; PA)とは相違する (図 1を参照)。
LPAは、 生体内にごく微量 (細胞全リン脂質中の 0. 5%以下) しか存在しない。 従来、 LPA はリン脂質生合成の中間産物又は分解中間物と考えられていた。 しか し、 1970年代後半に、 血漿中 (Schumacher, K. A. , 他, Thromb. Haemostas. , 42, 631-640 (1979) ) やダイズ粗レシチン画分中 (Tokumura, ; 他, Lipids, 13, 468-472 (1978) ) に存在する血管収縮作用を示す物質が LPAであると同定された。 更に、 血清中の脂質性増殖因子が LPAであることも示され (van Corven, E. , 他, Cell 59, 45-54 (1989) )、 LPAは生理活性脂質として注目されるようになった。
LPAには、 細胞増殖促進作用 (Fischer D. J.,他, Mol Pharmacol, 54, 979-988 (1988) )、 癌細胞の浸潤促進 ( Imamura, F. , 他: Jpn. J. Cancer Res. , 82, 493-496 (1991) ; Imamura, F. , 他 : Biochem. Biophys. Res. Commun. , 193, 497-503 (1993) ;及び Imamura, F. ,他: Int. J. Cancer, 65, 627-632 (1996) )、 アポトーシスの抑制 (Umnaky, S. R. ,他: Cell Death Diff. , 4, 608-616 (1997) ) などを含む多様な生理活性のあることが今までに明らかにされている。 特に、 神 経細胞に対しても、 LPA は神経突起の退縮を引き起こすことが知られている
(Tigyi, G. ,他: J. Biol. Chem. , 267, 21360-21367 (1992) ; Jalink, K.,他: Cell Growth & Differ. , 4, 247-255 (1994) ; Jalink, Κ· ,他: J. Cell Biol., 126, 801-810 (1994) ;及び Tigyi, G. ,他: J. Nurochera. , 66, 537-548 (1996) ) 0 また、 神経系株化細胞である PC12 細胞では開口放出を誘導することも報告されている
(Shiono, S. ,他: Biochem. Biophys. Res Commun. , 193, 663-667 (1993) ) 0 さら に、 1996年に Chunらによって神経上皮細胞層(ventri luar zone, vz)に特異的に 発現する Gタンパク質関連受容体遺伝子(ventri luar zone gene- 1; vzg- 1/edg - 2) がクローニングされ、 当該遺伝子を過剰発現させた細胞の形態変化に血清中の脂 質が必要であるという知見から、 その特異的リガンドが LPAであることが明らか にされた (Hecht, J. H.,他: J. Cell Biol. 135, 1071-1083 (1996) )。 これらの知 見は、 神経系における LPAシグナリングの重要性を示唆しており、 神経の発生や 分化において LPAが重要な役割を演じていると考えられる。
一方、 本発明者らは、 以前より真性粘菌 ¾7^r polycephaluwを実験材料と して、 様々な細胞生化学的解析を行っている。 真性粘菌は、 外部環境の変化に応 じて、 形態変化を示し、 その増殖 ·分化に伴って、 生体膜脂質の組成と代謝に著 しい変化を見せることが明らかにされてきた。 1992年に単相体ミクソアメーバか ら単離 ·同定された新規の脂質成分は、構造解析の結果、グリセ口ール骨格の Sn - 1 位にシクロプロパン環を含むへキサデカン酸を持ち、 sn-2位と 3位にリン酸が環 状にエステル結合をしている物質であると確認された(Murakami- Mur of ushi, K. , 他: J. Biol. Chem. , 267, 21512-21517 (1992) )。 この物質は、 Physarum由来の LPA 類似体であること力ゝら、 PHYLPAと命名された (図 2を参照)。
PHYLPAは、 真核細胞の D N Aポリメラーゼひの活性を抑え、 動物培養細胞の増 殖を抑制した脂質画分より得られたものであり、 PHYLPAがこれらの生理活性を示 すことが確認されている。 PHYLPAは特徴的な脂肪酸を有しているが、 この脂肪酸 部分を別の一般的な脂肪酸に置換した構造類似体を有機合成し、 それらの生理活 性を調べた結果、 PHYLPAと同様の生理作用が示された(Murakami-Murofushi, K., 他: Biochem. Biophys. Acta, 1258, 57-60 (1995) )。 このことより、 これらの生理 作用に重要な構造はグリセロール sn_2位、 3位の環状リン酸構造にあると推測さ れる。 この構造を持つ脂質は、 総称して環状ホスファチジン酸 (cycl ic phosphatidic acid; cPA) と称される (図 2を参照)。
cPA は真性粘菌特有の脂質ではなく、 広く生物界に存在していることが確認さ れた。 例えば、 ヒ ト血清アルブミン結合脂質より、 脂肪酸部分にパルミチン酸.
(C16 : 0) を有する cPAが単離 ·同定され、 ミリスチン酸(C14 : 0)及ぴステアリン 酸(C18 : 0) が結合した cPAも少量存在することが示唆された。 血清中の cPAの濃 度は約 1 0 一 7 M と予想され、 これは LPA の血清中濃度の約 1 Z 1 0に相当する
(Kobayashi. T. , 他; Life Science, 65, 2185-2191 (1999) )。 その後、 LPA と同 様にヒ ト血清中やゥサギ涙腺液中にも cPAが存在することが確認された(Li l iom, K. , 他: Am. J. Physiol. , 274, C1065- 1074 (1998) )。
cPAの作用についても、 LPAと相反又は類似する生理活性を示すことが報告され ている。 例えば、 細胞増殖の抑制 (Murakami-Murofushi, K. , 他: Cell Struct. Funct. , 18, 363- 370 (1993) )、癌細胞の浸潤抑制(Mukai, M. 他: Int. J. Cancer, 81, 918-922 (1999) )、 および細胞内ス トレスファイバーの形成 (Fischer, D. J.,他: Mol. Pharmacol. , 54, 979-988 (1998) ) などが報告されている。
ところで、 神経細胞は、 神経栄養因子 (nerve growth factor; NGF) の供給を 遮断すると生存できないことが知られており、 例えば、 海馬では高濃度の NGFが 存在する (畠中寛:蛋白質核酸酵素, 35, 103-117, 1989)。 また、 NGF様の細胞 成長因子である繊維芽細胞成長因子 (fibroblast growth factor; FGF) 力 海馬 の神経細胞の生存率を高め、神経突起の伸長を促進するとの報告もある(畠中寛: 生化学, 61, 1351-1365, 1989)。 しかしながら、 cPA が神経細胞に及ぼす作用に ついてはこれまで報告がなされていない。 発明の開示
本発明は、 cPA の新しい生理活性の一つとして神経細胞への作用を解明し、 神 経細胞の生存率の向上又は神経細胞の伸長の促進を通じて神経障害の治療及び 又は予防のために有用な新規な薬剤を提供することを解決すべき課題とした。 本発明者らは、 上記課題を解決するために、 まず、 cPA の生合成の機構の解明 を試み、 次いで、 ゥシ脳中における cPAの検出を試みた。 そして、 ラット胎児脳 由来の初代培養系を用いて、 cPA が神経細胞の生存や神経突起の形成に及ぼす影 響について解析した。 これらの解析の結果、 本発明者らは、 cPA がラット海馬初 代培養神経系細胞の生存率を高め、 神経突起の伸長を促進することを明らかにす ることにより、 cPA が神経障害の治療に有用な治療剤となり得ることを見出し、 本発明を完成するに至った。
即ち、 本発明によれば、 一般式(I) :
Figure imgf000005_0001
(式中、 Rは、 炭素数 1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、 炭素数 2〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、 又は炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐 状アルキニル基であり、 これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいて もよい。 Mは、 水素原子又は対カチオンである。) で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む、 神経細胞の生存 促進のための薬剤が提供される。
' 本発明の別の側面によれば、上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘 導体を有効成分として含む、 神経細胞の伸長促進のための薬剤が提供される。 本発明のさらに別の側面によれば、上記一般式(I)で示される環状ホスファチジ ン酸誘導体を有効成分として含む、 神経障害の治療及び Z又は予防のための薬剤 が提供される。
神経障害は;例えば、痴呆、アルツハイマー病、アルツハイマー型老年痴呆症、 筋萎縮性側索硬化症、 パーキンソン氏病、 脳卒中、 脳梗塞または頭部外傷から選 択される。本発明で用いる一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体は好 ましくは 1—ォレオイル環状ホスファチジン酸である。
本発明のさらに別の側面によれば、
治療的有効量の上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体をヒ ト を含む哺乳動物に投与することを含む、 神経細胞の生存を促進する方法; 治療的有効量の上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体をヒ ト を含む哺乳動物に投与することを含む、神経細胞の伸長を促進する方法;並びに、 治療的有効量の上記一般式(I)で示される環状ホスフ了チジン酸誘導体をヒ ト を含む哺乳動物に投与することを含む、神経障害を治療及び 又は予防する方法; が提供される。
本発明のさらに別の側面によれば、
上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体の、神経細胞の生存促進 のための薬剤の製造における使用;
上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体の、神経細胞の伸長促進 のための薬剤の製造における使用 ;
並びに、上記一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体の、神経障害の 治療及び/又は予防のための薬剤の製造における使用 ;
が提供される。 図面の簡単な説明
図 1は、 ホスファチジン酸 (PA) とリゾホスファチジン酸 (LPA) の構造 を示す図である。
図 2は、 リゾリン脂質の構造を示す図である。 Aは 1一ァシル LPA、 Bは P
HYLPA、 Cは 1—ァシル c PAを示す。
図 3は、 ゥシ大脳からの脂質成分の抽出法の概要を示す図である。
図 4は、 薄層クロマトグラフィー (TLC) による cPAの精製法を示す図である。 図 5は、 ゥシ大脳由来部分精製物の TLC分析結果を示す図である。 鉛筆で囲ん だ部分はプリムリン試薬で検出された領域を示す。 ( a )は抽出物中の c P Aの検 出を示し、 (b) は抽出物中の c PA濃度の決定を示す。
図 6は、 BSA (a)、 cPA (b) 又は NGF ( c) の添加 48時間後の神経細胞の様 子を示す図である。
図 7は、 cPAの神経細胞密度に対する影響を示すグラフである。 (a) は細胞密 度と生存率の関係を示し、 (b) は最適細胞密度の決定を示す。
図 8は、 cPAの神経細胞の生存率に対する影響を示すグラフである。
図 9は、 細胞生存率の上昇に最適な cPA濃度を決定するためのデータとしての 神経細胞を示す図である。
図 10は、 cPA の神経突起伸長に対する影響を示すグラフである。 縦軸は、 2
4時間 (a)、 または 12時間 (b) 後のコントロール神経細胞の長さを 1とし、 それに対する比で表した。
図 1 1は、 cPA濃度と神経突起を有する細胞の割合を示すグラフである。
図 1 2は、 神経突起伸長と cPA濃度との関係を示す神経細胞の図である。
図 1 3は、 cPAによる生存率上昇作用に対する PI3K阻害剤の影響を示すグラフ である。 Wortmannin (30 n M)、 LY294002 (10 /zM)、 c P A ( 1 μ
M) 発明を実施するための最良の形態 以下、 本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明の薬剤は、 神経細胞の生存率向上、 神経細胞の伸長促進、 並びに神経障 害の治療及び/又は予防のために使用することができ、下記一般式(I)で示される 環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む。
Figure imgf000008_0001
(式中、 Rは、 炭素数 1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、 炭素数 2〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、 又は炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐 状アルキニル基であり、 これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいて もよい。 Mは、 水素原子又は対カチオンである。)
一般式(I)において、置換基 Rが示す炭素数 1〜30の直鎖状若しくは分岐状アル キル基の具体例としては、例えば、 メチル基、ェチル基、 プロピル基、 ブチル基、 ペンチル基、 へキシル基、 ヘプチル基、 ォクチノレ基、 ノニノレ基、 デシノレ基、 ペン タデシル基、 ォクタデシル基などが挙げられる。
置換基 Rが示す炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基の具体例と しては、 例えば、 ァリル基、 ブテュル基、 オタテニル基、 デセニル基、 ドデカジ ェニル基、 へキサデカトリェニル基などが挙げられ、 より具体的には、 8—デセ ニル基、 8—ゥンデセニル基、 8—ドデセニル基、 8—トリデセニル基、 8—テ トラデセニル基、 8—ペンタデセニル基、 8—へキサデセニル基、 8 _ヘプタデ セニル基、 8—ォクタデセニル基、 8—ィコセニル基、 8—ドコセニル基、 ヘプ タデ力— 8 , 1 1 —ジェニル基、 ヘプタデカー 8 , 1 1 , 1 4ートリエ-ル基、 ノナデカー 4 , 7 , 1 0 , 1 3—テトラェニル基、 ノナデ力一 4 , 7 , 1 0 , 1 3 , 1 6—ペンタエ二ノレ基、 へニコサ一 3 , 6 , 9 , 1 2 , 1 5 , 1 8 —へキサ ェニル基などが挙げられる。 置換基 Rが示す炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキニル基の具体例と しては、 例えば、 8—デシニル基、 8—ゥンデシニル基、 8—ドデシニル基、 8 一トリデシニル基、 8—テトラデシニル基、 8—ペンタデシエル基、 8 —へキサ デシニル基、 8—ヘプタデシ二ル基、 8—オタタデシュル基、 8—ィコシェル基、 8—ドコシニル基、 ヘプタデカー 8 , 1 1ージィニル基などが挙げられる。
上記のアルキル基、 アルケニル基又はアルキニル基に含有されうるシクロアル カン環の具体例としては、 例えば、 シクロプロパン環、 シクロブタン環、 シクロ ペンタン環、 シクロへキサン環、 シクロオクタン環などが挙げられる。 シクロア ルカン環は、 1個以上のへテロ原子を含んでいてもよく、そのような例としては、 例えば、 ォキシラン環、 ォキセタン環、 テトラヒ ドロフラン環、 N—メチルプロ リジン環などが挙げられる。
上記のアルキル基、 アルケニル基又はアルキニル基に含有されうる芳香環の具 体例としては、 例えば、 ベンゼン環、 ナフタレン環、 ピリジン環、 フラン環、 チ ォフェン環などが挙げられる。
従って、 置換基 Rがシクロアルカン環によって置換されたアルキル基である場 合の具体例としては、 例えば、 シクロプロピルメチル基、 シクロへキシルェチル 基、 8 , 9—メタノペンタデシル基などが挙げられる。
置換基 Rが芳香環によつて置換されたアルキル基である場合の具体例としては、 ベンジル基、フェネチル基、 p—ペンチルフエ二ルォクチル基などが挙げられる。 一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸 (cPA) 誘導体中の Mは、 水素原子 又は対カチオンである。 Mが対カチオンである場合の例としては、 例えば、 アル カリ金属原子、 アルカリ土類金属原子、 置換若しくは無置換アンモニゥム基が挙 げられる。 アルカリ金属原子としては、 例えば、 リチウム、 ナトリウム、 力リウ ムなどが挙げられ、 アルカリ土類金属原子としては、 例えば、 マグネシウム、 力 ルシゥムなどが挙げられる。 置換アンモニゥム基としては、 例えば、 ブチルアン モ -ゥム基、 トリェチルアン乇ニゥム基、 テトラメチルアンモニゥム基などが挙 げられる。 本発明で用いられる一般式(I)で示される cPA の具体例としては、 ォレオイル cPAが特に好ましい。
一般式(I)で示される cPA誘導体は、 例えば、 特開平 5— 2 3 0 0 8 8号公報、 特開平 7— 1 4 9 7 7 2号公報、 特開平 7— 2 5 8 2 7 8号公報、 特開平 9一 2 5 2 3 5号公報に記載の方法等に準じて化学的に合成することができる。
あるいは、一般式(I)で示される cPA誘導体は、特願平 1 1— 3 6 7 0 3 2号明 細書に記載の方法に準じてリゾ型リン脂質にホスホリパーゼ Dを作用させること によって合成することもできる。 ここで用いるリゾ型リン脂質は、 ホスホリパー ゼ Dを作用しうるリゾ型リン脂質であれば特に限定されない。 リゾ型リン脂質は 多くの種類が知られており、 脂肪酸種が異なるもの、 エーテル又はビュルエーテ ル結合をもった分子種などが知られており、 これらは市販品として入手可能であ る。 ホスホリパーゼ Dとしては、 キャベツや落花生などの高等植物由来のものや Streptomyces chromofuscus. Ac tinqmadula sp. .などの微生物由来のもの力 S市販試 薬として入手可能であるが、 Actinomadula sp. No. 362 由来の酵素によって極め て選択的に cPAが合成される (特開平 1 1— 3 6 7 0 3 2号明細書)。 リゾ型リン 脂質とホスホリパーゼ Dとの反応は、 酵素が活性を発現できる条件であれば特に 限定されないが、 例えば、 塩化カルシウムを含有する酢酸緩衝液 (p H 5〜6程 度) 中で室温から加温下 (好ましくは 3 7 °C程度) で 1から 5時間程度反応させ ることにより行う。 生成した cPA誘導体は、 常法に準じて、 抽出、 カラムクロマ トグラフィー、 薄層クロマトグラフィー (T L C ) などにより精製することがで さる。
本発明において有効成分として用いる環状ホスファチジン酸誘導体は、 神経細 胞の生存率を向上させ、 また神経細胞の伸長を促進することができる。 従って、 本発明によれば、 当該環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む神経障 害の治療及び 又は予防のための薬剤が提供される。 本明細書で言う神経障害と は好ましくは脳神経障害であり、 その具体例としては、 神経変性疾患、 脳卒中、 脳梗塞、 痴呆、 頭部外傷などが挙げられる。 ここで言う神経変性疾患とは、 神経 細胞が萎縮又は変性脱落する病気であり、 例えば、 アルツハイマー病、 アルッハ イマ一型老年痴呆症、 筋萎縮性側索硬化症、 パーキンソン氏病等が挙げられる。 本発明の薬剤は、 1又は 2以上の製剤学的に許容される製剤用添加物と有効成 分である一般式(I)で示される cPA誘導体とを含む医薬組成物の形態で提供する ことが好ましい。
本発明の薬剤は、 種々の形態で投与することができるが、 主な作用部位が脳で あるため、 血液一脳関門を通過できる形態であることが好ましい。 そのような好 適な投与形態としては、 経口投与でも非経口投与 (例えば、 静脈内、 筋肉内、 皮 下又は皮内等への注射、 直腸内投与、 経粘膜投与など) でもよレ、。 経口投与に適 する医薬組成物としては、 例えば、 錠剤、 顆粒剤、 カプセル剤、 散剤、 溶 1?夜剤、 懸濁剤、 シロップ剤などを挙げることができ、 非経口投与に適する医薬組成物と しては、 例えば、 注射剤、 点滴剤、 坐剤、 経皮吸収剤などを挙げることができる 力 本発明の薬剤の剤形はこれらに限定されることはない。 さらに、 公知の技術 によつて持続性製剤とすることもできる。.
本発明の薬剤の製造に用いられる製剤用添加物の種類は特に限定されず、 当業 者が適宜選択可能である。 例えば、 賦形剤、 崩壊剤又は崩壊補助剤、 結合剤、 滑 沢剤、 コーティング剤、基剤、溶解剤又は溶解補助剤、 分散剤、 懸濁剤、乳化剤、 緩衝剤、 抗酸化剤、 防腐剤、 等張化剤、 pH調節剤、 溶解剤、 安定化剤などを用い ることができ、 これらの目的で使用される個々の具体的成分は当業者に周知され ている。
経口投与用の製剤の調製に用いることができる製剤用添加物として、 例えば、 ブドウ糖、 乳糖、 D-マンニトール、 デンプン、 又は結晶セルロース等の賦形剤; カルボキシメチルセルロース、 デンプン、 又はカルボキシメチルセルロースカル シゥム等の崩壊剤又は崩壊補助剤; ヒ ドロキシプロピルセルロース、 ヒ ドロキシ プロピルメチルセルロース、 ポリビュルピロリ ドン、 又はゼラチン等の結合剤; ステアリン酸マグネシウム又はタルク等の滑沢剤; ヒ ドロキシプロピルメチルセ ルロース、 白糖、 ポリエチレングリコール又は酸化チタン等のコーティング剤; ワセリン、 流動パラフィン、 ポリエチレングリコール、 ゼラチン、 カオリン、 グ リセリン、 精製水、 又はハードフアット等の基剤を用いることができる。
注射あるいは点滴用の製剤の調製に用いることができる製剤用添加物どしては、 注射用蒸留水、 生理食塩水、 プロピレングリコール等の水性あるいは用時溶解型 注射剤を構成しうる溶解剤又は溶解補助剤;ブドウ糖、 塩化ナトリゥム、 D-マン 二トール、 グリセリン等の等張化剤;無機酸、 有機酸、 無機塩基又は有機塩基等 の pH調節剤等の製剤用添加物を用レ、ることができる。
本発明の薬剤はヒ トを含む哺乳動物に投与することができる。
本発明の薬剤の投与量は患者の年齢、 性別、 体重、 症状、 及び投与経路などの 条件に応じて適宜増減されるべきであるが、 一般的には、 成人一日あたりの有効 成分の量として 1 gZk g力 ら 1, 00 Omg/k g程度の範囲であり、好まし くは 10 gZkgから l OOmgZk g程度の範囲である。 上記投与量の薬剤 は一日一回に投与してもよいし、 数回 (例えば、 2〜4回程度) に分けて投与し てもよい。
本発明の薬剤は、 神経障害の治療又は予防に有効な他の薬剤、 脳神経にェネル ギーを供給するような栄養剤等と併用することもできる。
なお、 cPA それ自体は、 後記する実施例 1及び 2の結果から明らかなように哺 乳類の脳に存在する物質であり、 生体にとって安全であると考えられる。
本出願の優先権主張の基礎となる出願である特願 200 1— 1 15925号の 明細書に開示した内容は全て引用により本明細書に開示したものとする。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、 本発明は実施例によって限 定されることはない。
実施例
実施例 1 : ホスホリパーゼ D (PLD) による cPAの生合成
実施例 1では、放線菌由来 PLDを用いてリゾホスファチジルコリン (LPC) から cPAを生成できること、 並びに哺乳類の脳中に cPAを生成する酵素が存在するこ とを明らかにした。
(A) 材料及び方法
(A - 1 ) 実験材料
お 鹵 Streotomyces chromofuscus (S. chromofuscus) 由来の PLD、 キャベツ由 来の PLDは、 Sigma社より購入した。 Actinomadura sp. No. 362 {A. sp. No. 362) 由来の PLDは、 名糖産業より購入した。 1ーォレオイル LPC (1- oleoyl LPC)、 リ ゾホスファチジノレセジン (lysophosphatidylserine; LPS)は、 Avanti Polar lipid, INC. 社 よ り 購入 し 、 リ ゾ ホ ス フ ァ チ ジルエ タ ノ ール ァ ミ ン (lysophosphatidylethanolamine; LPJI は、 Doosan Serdary Res. Lad.社より、 1 —アルキルリゾホスファチジルコリン (1-alk.yl lysophosphatidylcholine; 1-alkyl LPC) , 1—アルケニルホスファチジルコリン 'プラズマロゲン(1- alkenyl pnosphatidylcholine plasmalogen; 1一 alkenyl LPC) fま、 Sigma社より購入し 7こ。 また、 Kobayashi, S.,他: Tetrahedron Lett. , 34, 4047- 4050 (1993)に記載の方 法に準じて有機合成したォレオイル cPA (oleoyl cPA) も使用した。
(A - 2 ) 1 - BD-LPCの合成
cPA生成活性測定の為の基質として、 蛍光標識された LPCの調製を行った。 す なわち、 1 —へキサデカノィル一 2— (1 2— ( 7 —ニトロべンズ _ 2 —ォキサ - 1 , 3 —ジァゾール一 4 —ィル)) 一 sn—グリセ口一 3 —ホスホコ リ ン ( 2-NBD-HPC ; Avanti Polar l ipids, INC.社製)を出発原料と し、 リパーゼ {Rhizopus delemer由来;生化学工業社製)で 1位の脂肪酸のみを脱ァシル化し た後、 トリス塩酸バッファー (PH=9) 中で、 2位の蛍光ァシル基を 1位に転位さ せ、 高速液体クロマトグラフィー (HPLC) を用いて精製したものを 1-NBD- LPCと した。
(A - 3 ) cPA生成活性測定
基質として、 1 - NBD - LPCと卵黄由来の LPCを 1 : 99で混ぜ合わせたものを使用し た(1% NBD- LPC)。 ΙΟΟμΜ 1%NBD- LPC存在下、 lOmM塩化カルシウムを含む 100 mM酢酸バッファー(pH=5.6)中で酵素アツセィを行った。 酵素源として、 放線菌 5. chromofuscus由来の PLD2.2 μ g/ml、または、放線菌 A. sp. No.362由来の PLDl.4 μ g/ralを用いた。反応は 30°C (5. chromofuscusの場合)または、 37°C (A. sp. No.362 の場合) で行った。 反応終了時に反応液の 0.3倍容の 0.1Mクェン酸を加えて、溶 液を酸性にした後に、 クロ口ホルム:メタノール(2: 1)混液を反応液の 5.4倍量加 え、 遠心(l,400Xg、 5 分)して下層に、 脂質を抽出した。 もう一度、 クロ口ホル ム:メタノール (2:1)混液抽出操作を同様に繰り返した後に、下層を合わせて窒素 気流下で濃縮'乾固させた。得られた脂質を少量のクロロホルム:メタノール (2:1) 混液に再溶解させて、 シリカゲル (Silica Gel) 60F 薄層クロマトグラフィープ レート(TLC; E.Merck社製)にスポットし、 展開溶媒; クロ口ホルムノメタノール 酢酸 Z5%二亜硫酸ナトリゥム水溶液(100:40: 12:5)で脂質を分離し、各蛍光スポ ットの強さを、 蛍光イメージ分析器 (f luoroimage analyzer) FLA- 2000 (富士フィ ルム社製)で定量分析した。
(A- 4) ESI- MS/MSによる構造解析
エレク トロスプレー型ィオン源をタンデム四重極型質量分析計に装備したクァ ットロ II (Quattro II; Micromass社製) と HPLCを連結した装置を使用して、 陰 イオンモードで分析した。 ヒューレッ トパッカー ドモデル (Hewlett Packerd model) 1050 HPLCポンプ (Hewlett Packerd社製) を用いて、 ァセトニトリル メタノール(1:1)混液により 5 /xl/分の流速で溶出した。 サンプルは、 0.1%ギ酸 アンモニゥムを含むァセトニトリル/メタノール(1:1)混液中に 10〜50ρπιο1/ μ 1の濃度になるように脂質を溶かしたものを、 3〜5 1注入した。 ギ酸とアンモニ ァは、 サンプルがイオン化される時に、 それぞれプロ トンの供与体、 受容体とし て働く。 HPLCと MSのインターフェイスは 80°Cに維持し、 溶媒を蒸発させる窒素 ガスは圧力 40psi、流速 0.41/分に設定した。 MS分桁において cone voltage— 30eV で分子イオンを、 MS/MS分析において cone voltage— 90eVで脂肪酸を、 —170eV でリン酸をモニターした。 MS/MS 分析の際には、 不活性ガスを ¾入して局部的に 高圧な部位を作 り 、 分子イ オンを衝突活性開裂(collision induced dissociation; CID)させてドーターイオンを発生させる手法を組み合わせた。 衝 突ガス (collision gas) にはアルゴン(圧力 3. 0〜4. 5e- 4Torr)を用い、 衝突ェ ネルギー (collision energy) は一 50eVに設定した。
(A - 5 ) NIH-3T3における各種リゾリン脂質の添加によるス トレスファイバー の形成
マウス由来繊維芽細胞 NIH- 3T3は、 10%のゥシ胎児血清 (fetal bovine serum; FBS; Moregate社製) を含むダルベッコ改変イーグル培地 (Dulbecoo's Modified Eagle's Medium; DMEM) で培養しているものを実験に用いた。 NIH-3T3を 22mm径 のカバーガラスを敷き詰めたシャーレ( 10cm径)中に 2. 5 X 104細胞で植え継ぎ、 24 時間後に FBSを含まない培地に変え、その後 48時間血清飢餓状態で培養した。 10 Μのリゾリン脂質を加え、 37°C、 30分間インキュベートすることで細胞に刺激 を与えた後に、 3. 7%パラホルムアルデヒ ドと 0. 1%トリ トン (Triton) Χ-100を含 むダルベッコの PBS (Dalbecco's PBS) で室温にて、 10分間固定した。 その後、 5 単位 Zmlのローダミンファロィジン (rhodamine phalloidin; フナコシ社製) で 37°C、 1時間染色した。 カバーガラスを PBSで 3回洗浄した後に、 共焦点レーザ 一顕微鏡 TCS NT レーザー制御走査型顕微鏡 (Control Laser Scanning Microscope; Leica社製) で観察した。
(A— 6 ) ラット脳中の cPA生成活性の測定
材料として、 雄 4週齢のスプラグ—ドーレイ系ラット (Sprague- Dawley rat) を用いた。 ラットはエーテル麻酔をかけた後、 断頭し、 全脳を摘出し、 _80°Cで 保存した。保存してあったラット全脳の左右いずれかの半分 (約 0. 8g)に、 10倍量 の 0. 32Mショ糖液を加え、 ポリ トロンホモジナイザー (Polytron Homogenizer; Polytron社製)、 パワーコント口ール (power control) 7で、 20秒間 2回ホモジ ナイズした。 この液の体積の 2倍量のへぺスバッファー(Hepes buff er) を加え、 ホモジネート溶液とした。 cPA 生成活性の測定は、 以下の溶液組成で行った。 す なわち、 基質として l%NBD-LPC 40nmolまたは、 1位脂肪酸のカルボキシル基の炭 素を放射標識した 14C- LPCと非標識の LPCを 2 : 55の比率で混ぜたもの(120nCi)を 用レ、、ォレイン酸ナトリゥム 450 μ Μ存在下のホモジネート溶液 100 μ 1中 37°Cで 反応させた。反応終了後の処理については、放線菌 PLDァッセィの条件に準じた。
( B ) 結果
( B— 1 ) 放線菌 PLDによる LPA/cPAの生成
1%1-NBD-LPCを基質として、 リン酸基転位活性の強弱の異なる 2種類の放線菌 由来の PLDを用いて cPAの生成が見られるか否かを検討した。 S. chromofuscus由 - 来の PLDを用いた場合、 20分間反応させると、 主な生成物として 1- NBD-LPAのみ が得られた。 しかし、 リン酸基転移活性が高いとされている A. sp. 362由来の PLD を用いると、 LPAとは異なった生成物が主に得られ、 この化合物の Rf値は、 有機 合成した cPA標品 (ォレオイル cPA) と一致した。 これらの反応の違いを確認す るため、 それぞれの酵素の濃度依存性、 さらに反応の時間依存性を検討した。
S. chromofuscus由来の PLDを用いた場合は、基質である LPCが減少するのに伴つ て、 LPAの生成のみが見られた。 それに対し、 A. sp. 362由来の PLDを用いた場合 には、 cPAに相当する生成物の増加が見られたのみで、 LPAの生成はほとんど見ら れなかった。 このことは、 PLD の種類によって、 基質が同じであっても生成物が 異なることを示している。 また、 酵素学的解析の進んでいるキャベツ由来の PLD を用いたときには、 LPAと cPAの両方が約 6 : 4の割合で生成した。
ここで、 cPA相当の化合物を生成する A. sp. 362由来の酵素について、 さらに基 質特異性を調べてみた。 基質として各 ΙΟΟ μ Μ の 1- acyl LPC, 1-alkyl LPC、 1-alkenyl LPC, LPS, LPEを用い、 標準的な PLDアツセィ条件に準じて反応を行 わせた。 それぞれの基質からの生成物を TLCを用いて分離し、 LPA、 cPA相当のス ポットをかきとり、 リン定量を行って、 生成量を測定した。 いずれの基質におい ても LPAの生成はほとんど見られなかつた。 LPC、 1-alkyl LPC、あるいは 1-alkenyl LPCを基質として用いた場合には、 時間依存的に cPAが生成したが、 LPS、 LPEを 基質として用いた場合には cPAは生成されなかった。 この結果より、 A. sp. 362由 来 PLD は、 極性基部分にコリン (chol ine) を有するリゾリン脂質から効率よく cPAを生成することが示された。 また、 alkyl、 alkenyl型 LPCも cPA生成の基質 になりうることがわかった。
( B— 2 ) A. sp. 362由来 PLD反応生成物の構造解析
1位脂肪酸にォレイン酸を持つ 1-oleoyl LPCを基質として A. sp. 362由来 PLD で反応させたときの主生成物 (cPAと同じ Rf値を持つ化合物) について、 その構 造解析を行う為、 質量分析を用いた。 まず、 質量分析の条件を設定するため、 ス タンダードとして有機合成した 1- oleoyl cPAを ESI - MS/MSに力け、陰イオンモー ドで分析した。 その結果、 上記した条件で、 l_oleoyl cPAの分子イオン [M— H]— に合致する m/z 417のピークが観察された。 同一条件下で PLD反応生成物ついて 分析したところ、 同様に m/z 417のピークが強く観察された。 分子イオンに相当 するピーク群について、 さらに構造情報を得るため、 in-source fragmentat ion によるタンデムマススぺク トリー (MS/MS) を行った。 スタンダード cPAの分子ィ オン m/z 417を親イオンとしたドータースキャンの結果、 いくつかの特徴的ィォ ンピークが発生し、 以下のように解釈された。 すなわち、 m/z 281は C17H33C00—、 m/z 153は [M— C17H33C0] _、 m/z 79は P03 _に相当する。 一方、 PLD反応によって得 られた ra/z 417ピークについて同様に MS/MS分析をした結果、 同一の特徴的なフ ラグメントピーク群が認められた。 以上より、 A. sp. 362由来 PLD反応によって作 られた化合物が cPAであることが確認された。
( B - 3 ) PLD反応生成物による NIH- 3T3細胞でのストレスファイバーの形成 放線菌 A sp. 362由来 PLD反応で得られた生成物が cPAと同一の化合物であるこ とを更に確認するために、 その生物活性を検討した。 すなわち、 cPA の持つ生理 活性の 1つである、 繊維芽細胞でのアク^ンス トレスファイバーの形成能を調べ た。 血清飢餓状態にしたサブコンフルェント (subconfluent) 状態の、 マウス由 来繊維芽細胞株である NIH- 3T3に 10 Mの LPA、 化学合成された PHYLPA、 あるい は PLD反応生成物である cPAをそれぞれ 37°Cで 30分間与え、 ローダミンファロ ィジンでァクチンのス トレスファイバーを染色し、 観察を行った。 脂質を添加し なかったコントロールの細胞では、 ス トレスファイバーの生成が見られなかった のに対し、 用いた 3種のリゾリン脂質でいずれもストレスファイバーの形成が見 られた。
( B - 4 ) ラット脳における cPAの生成
ラット脳中に cPA生成活性があるか否かを検討した。 異なる複数の条件下で検 討を行った結果、 最終的にショ糖水溶液(0. 32M)でホモジネートを作成し、 20raM へぺスバッファー(pH 7. 2)中、 ォレイン酸(450 // M)存在下で活性の測定を行った ところ、 37°Cで 60分間ィンキュベーション後、 cPA相当のスポットが確認された。
( C ) まとめ
上記結果より、 PLD と総称されるリン脂質加水分解酵素のうちの特定の酵素に よって cPAを生成できることが示された。 現在精製品として市販されている PLD の中でも、 その酵素源が異なると、 LPC を基質にした場合、 異なる生成物が得ら れることがわかった。
実施例 1において、 ラット脳ホモジネート中に LPCから cPAを生成する酵素活 性が検出できたことは、 ホスファチジル基転移反応が、 生理活性脂質である cPA の産出に積極的に貢献していることを示している。 哺乳類の脳の中には、 cPA が 存在することが示され、 また、 PLD 活性についても脳は比較的高い活性を有する ことが分かった。 基質の LPCは、 通常の生理活性条件下では脳内にほとんど検出 されないが、 ある種の PLA2の活性化を経て生成されると考えられる。
放線菌 A ^p. 362由来 PLDを用いることにより、効率よく cPAが調製できること は cPAの構造類似体を作成する上で有用である。 このような酵素を用いた調製法 では、 1- alkenyl LPCから cPAを調製することが可能である。 1-alkenyl LPAはゥ サギ角膜損傷時に検出され、 細胞増殖活性を有し、 創傷の治癒に関与しているこ とが考えられている。 この他、 脂肪酸の異なった LPCから、 対応する LPAん PAを 調製することが可能である。 実施例 2 : ゥシ大脳からの環状ホスファチジン酸の検出
実施例 2では、 哺乳動物の脳中の cPAの検出を目的として、 ゥシの大脳に cPA が存在することを確認した。
(A) 材料及び方法 ~
(A - 1 ) 実験材料
標準品と して用いた oleoyl-cPA (有機合成品)は、 Kobayashi, S.,他: Tetrahedron Lett. , 34, 4047- 4050 (1993)に記載の方法に準じて有機合成した。 ゥシ脳は東京芝浦臓器株式会社より購入した。
(Α - 2 ) ゥシ脳からの脂質成分の抽出
ゥシの大脳を出発材料として、 cPA の存在を確かめた。 図 3にその手順をまと めた。 すなわち、 ゥシ大脳の一部 40gに、 水 160ml、 クロロホノレム 'メタノール 混液(2 : l) 800ml を加え、 ホモジナイズした後、 分液漏斗に移し、 撹拌後室温で 静置した後、下層(クロ口ホルム層)を分取し、残りの上 ·中間層をクロ口ホルム . メタノール混液(17: 3) (v/v) 560mlで 4回抽出し、 下層を分取した。 その後、 上 . 中間層にメタノール 80ml、 1 Mクェン酸を加えて、 pHを約 3に合わせ、 そのまま 撹拌しながら 30 分間放置した。 さらに、 クロ口ホルム .メタノール混液(17: 3) 560mlを加え、 3回抽出し、 下層を分取した。 得られたクロ口ホルム層をすベて 合わせ、 pH7 になるようにクロロホルム ·メタノール . 3%アンモニア水 : 5: 1)で中和した後、窒素エバポレーターで乾固させた。この抽出物をクロ口ホルム · メタノール混液(1: 1)に再懸濁し、 脂質画分として以下の精製に用いた。 (A - 3 ) 薄層クロマトグラフィー (TLC) による精製
ゥシ大脳由来の脂質抽出物を、 次の展開溶媒系を用いた薄層クロマ .
—によって順次分離した (図 4 )。 分離にはシリカゲル 60 TLCプレート(E. Merck No. 5745 ; Ε· Merck社製)を用いた。
I : クロ口ホルムノメタノール / 7 Mアンモニア水(12 : 12 : 1) (v/v)
Π: クロ口ホルム/メタノールノ酢酸 Z水(25 : 15 : 4 : 2) (v/v)
スタンダードとして、有機合成した oleoyl- cPAをプレートの端にのせ、展開後 スタンダード部分のみをリン特異的呈色試薬であるディットマ一(Dittmer)試薬 で発色させた。抽出物をのせた部分のプレートについて、 スタンダードの Rf値に 相当する領域をかきとった。 シリカ粉末から脂質をクロ口ホルム · メタノール混 液(1 : 2)、 (1 : 1)、 (2 : 1)の順でそれぞれの溶媒を用いて 2回ずつ抽出した。 抽 出溶液を合わせて、 窒素ガスで溶媒を除去した。 これをクロ口ホルム ·メタノー ル(1 : 1)に再懸濁し、 シリカゲルを除いた後、 この精製標品を次の展開溶媒を用 いた二次元 TLC で分析した。 分離にはシリカゲル 60 TLC プレート(E. Merck No. 5721; E. Merck社製)を用いた。
III : クロ口ホルムノメタノール 水(60 : 40 : 9)
IV: クロ口ホルム Zメタノールノ酢酸/ァセトン 水(10 : 2 : 2 : 4 : 1) プレート上の脂質の呈色には、 脂質全般を発色するプリムリン試薬を噴霧した 後、 UVランプで蛍光スポットを検出し、 鉛筆で印をつけた。 その後、 ディットマ 一試薬を噴霧してリン脂質を含むスポットを検出し、 定量した。
( B ) 結果
精製は湿重量 40gのゥシ大脳より開始した。 クロ口ホルム 'メタノール混液で 抽出を繰り返したところ、 6. 95g相当の粗脂質画分が抽出された。 この抽出物 lg をクロロホルム .メタノール混液(1 : l) 2mlに溶解後、 その 1mlを厚さ 2匪の TLC プレートにスポットした。 TLCは、 上記展開溶媒系 I、 II を順次用いて、 それぞ れ Rf値が 0. 80〜0. 98、 0. 74〜0. 85の範囲をかきとった。 この部分精製サンプル を、 上記展開溶媒系 III、 IVを用いて二次元 TLCで分析したところ、 スタンダー ド cPAと同一の Rf値を示すスポットが確認された (図 5 (a) )。
次に、 上記展開溶媒系 IIIを用いた TLCによって、 リン脂質特異的呈色試薬で あるディットマ一試薬による発色を、 既知量のスタンダード cPAを用いて作成し た標準曲線と比較することによって、 抽出物中に含まれる cPAの濃度を決定した
(図 5 (b) )。以上の cPAの量を概算すると、湿重量 40gのゥシ大脳から、約 2. lmg の cPAが精製されたことになる。
( C ) まとめ
一般に、 脂質は哺乳動物の脳湿重量の 5〜15%、 乾燥重量の 65%を占め、 脳は脂 質を最も多 含む臓器の一つであると言える。 実施例 2では、 40g のゥシ大脳か ら約 7gの総脂質が抽出された。 さらに、最終的には約 2. lmgの cPA相当の脂質が 検出された。 精製途中でのロスを考えても、 これは、 脳中の全脂質重量の 0. 1%以 下に相当する値である。 ラット脳中の主要なリン脂質であるホスファチジルエタ ノールァミン (PE) やホスファチジルコリン (PC) の総脂質に対する割合がそれ ぞれ約 20%であることを考えると、 cPAはこれらの約 1 2 0 0以下に相当する微 量な成分であるが、 哺乳動物の脳中に cPAが存在することが証明された。 実施例 3 : ラット胎児脳由来の初代培養系神経細胞に対する環 ^
酸の作用 (生存率と神経突起への影響)
実施例 3では、 ラット胎児脳由来の初代培養系を用いて cPAが神経細胞の生存 や神経突起の形成に及ぼす影響について解析した結果、 cPA の新規な生理活性と して、 神経細胞への作用 (神経細胞の生存率の向上及び神経突起の伸長促進) が 実証された。
(A) 材料及び方法
(A— 1 ) ラット胎児脳海馬由来の初代培養神経細胞の調製と培養 材料として妊娠 16 日齢のスプラグ一ドーレイ系ラットを用いた。ラットはエー テル麻酔をかけ、 胎児を取り出し、 実体顕微鏡下で脳全体を取り出した後、 大脳 皮質の内側にある海馬を摘出した。摘出した海馬を、 15ml遠心用チューブに集め、 2. 5%トリプシン 0. 5ralに培養液を加えて 5ml とし、 これを 37°Cで 15分ィンキュ ベートした。 その後、 3,000rpmで 15分遠心後、 上清を取り除き、 培養液を 5ml 加えて、 3, OOOrpmで 15分遠心した。 これをさらに 2回繰り返し、 3〜5mlの培養 液を加え、 パスツールピぺッ トでピぺッティングし、 次に注射針(TERUM0 NEEDLE (0. 70x38讓) ;テルモ社製)を用いてピペッティングした。 最後にセルスト レーナ一(FALCON Cel l Strainer 70 μ m ; FALC0N社製)に通して解離させた細胞を、 プレートを用いて初代培養した。 また、 神経細胞が凝集を起こさないように培養 できる培養液、 プレートのコーティング方法を検討した。
なお、 本試験に用いた cPA誘導体は、 実施例 1に記載した方法に従って、 基質 として、ォレオイル LPCを使用し、酵素源として、放線菌 A sp. No. 362由来の PLD を用いて合成したォレオイル cPAである。
(A— 2 ) 神経細胞の生存率の測定
( A - 1 ) に記載した方法で初代培養を行い、 プレートに細胞を播いたのと同 時に、 それぞれ異なる密度の神経細胞にォレオイル cPA ^ /z ra)を添加し、 一定時 間後に位相差顕微鏡を用いて、 写真を撮り(倍率 20倍、 24穴プレートの 1ゥエル にっき 5枚の写真)、その写真上で細胞の生死を形態的に判別して生存率を算出し た。
さらに、 細胞生存率の上昇に最適な cPAの濃度を決定するために、 神経細胞の 生存率が最も高かった細胞密度(3. 0 X 105細胞 Zcm2)で培養を行い、 0. 5、 1. 0、 5. 0 または 10. Ο μ Μのォレオイル cPAを細胞を播くのと同時に、 細胞培養液に添加し て同様に写真を撮り、 その写真上で細胞の生死を判別した。
(A— 3 ) 神経突起伸長の測定 神経突起の伸長に対する cPAの影響を調べるために、 (A— 1 )に記載した方法 で初代培養を行い、 培養を始めてから 12、 18、 24時間後に写真を撮り、 それぞれ の時間における細胞一個あたりの神経突起の平均長、 および、 神経突起を持つ細 胞の数を画像解析ソフ ト (NIH Image 1. 62) を用いて解析した。
( A— 4 ) 細胞内シグナル伝達系の解析
ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ (PI3K) の阻害剤である、 ウォルトマ ンニン(Wortmannin; Sigma社製)と LY294002 (Sigma社製)をそれぞれ 10mM、 50mM の濃度で DMS0に溶解後、 PBSで希釈し、 それぞれ最終濃度 30ηΜ、 ΙΟ ^ Μになるよ うに細胞培養液に添加した。 阻害剤は、 cPAを加える 2時間前に細胞培養液に添 加し、 前処理を行った。 cPAの添加後 48時間経た時点での細胞の写真を撮り、 そ の写真上で細胞の生死を形態的に判別して生存率を算出した。
( B ) 結果
( B— 1 ) 神経細胞初代培養条件に関する実験系の確立
予備実験として、 様々な培養条件を検討し、 神経細胞がプレートに接着するコ 一ティング、 培養液で実験した結果、 培養液はハムの F- 12 (Ham's F- 12)、 プレー トのコ一ティングはポリ一 L—リジン(Poly- L- lysine)またはポリ— L一オル二 チン (Poly- L- ornithine) が適していたので、 以後、 ポリ _ L一"リジンがコーテ イングされたプレート (IWAKI MICR0PLATE; IWAKI 社製) を用いた。 また、 血清 中には cPAや LPAがすでに存在している可能性があるため、無血清培地を用レヽた。 なお、 血清の代わりに、 増殖促進因子 (無血清培養補助因子) として N1サブリメ ント(インシュリン 5 z gZml、 トランスフェリン 5 / g/ml、プロゲステロン 20nM、 プトレシン 100 / M、亜セリン酸ナトリゥム 30nMを含む; Sigma社製)を添加した。
( B - 2 ) ラット胎児海馬由来の初代培養神経細胞の生存率に対する cPAの作用 まず、 5 μ Μのォレオイル cPAを上記 (B— 1 ) に記載した培養条件下の神経細 胞培養液に添加したところ、 cPA無添加のコントロールに比べて、 細胞の生存が 良好となり、 さらに神経突起の伸長も観察された。 そのときの代表的な細胞を図 6に示す。 次に、 細胞の密度と生存率の関係について、 さらに詳細に解析を行つ た。 まず、 3, 0X105、 1.0X10 7.5X104、 あるいは、 5.0 X 104細胞/ cm2の密度 で細胞を播いて、 48 時間後の生存率を比較した結果、 3.0X105細胞 Zcm2の細胞 密度で播いた場合の細胞生存率が最も高かった (図 7 (a))。
次に、 細胞密度を 4.5X105、 あるいは 6. OX 105細胞/ cm2に高めた結果、 細胞の 生存率は 3.0X105細胞 /cm2の場合よりも低下した (図 7 (b))。 従って、 cPAが最 も効果的に細胞の生存率を高めるためには、 3.0X105細胞 /cm2の細胞密度が適し ていることが明らかとなった。
次に、 細胞生存率の上昇に最適な cPAの濃度を決定するために、 細胞を播いた 後、 0.5、 1.0、 5.0、 または 10. ΟμΜの cPAを培地に添カ卩して生死を判別した。 そ の結果、 cPAの濃度が 1·0μΜの時に、 細胞の生存に最も効果的であることが明ら かとなつた (図 8及び図 9)。
(Β— 3) 神経突起の伸長に対する cPAの作用
5μΜのォレオイル cPAを細胞培養液に添加し、 24時間後、 48時間後、 72時間 後に写真を撮って、 画像解析ソフ ト (NIH Image 1.62) で解析し、 細胞 1個当た りの神経突起の平均長を解析した。 その結果、 cPA添加によって、 24時間後では コント口一ルに比べ、 2倍の平均長が観察され、 48時間後(1.5倍)や 72時間後(1.2 倍)に比べて、効果が最も強く現れた (図 10 (a))。 そこで、 より早い時間で、 cPA の神経突起伸長に関する作用を評価する必要があると考え、 12時間、 18時間、 24 時間後の神経突起伸長に対する、 各濃度の cPA の影響を調べた。 その結果、 cPA 濃度 1.0/zMを添加したものの神経突起の伸びが、 12時間後の時点で、 コント口 一ルの約 1.7倍になり、 最大値を示した (図 10 (b))。 この値は、 50ng/ml (最適 濃度) の NGF添加に匹敵する値であった。
初代培養系において、 神経突起はすべての神経細胞に満遍なく存在するのでは なく、 突起を有する細胞とそうでない細胞が混在する。 そこで、 神経突起を持つ 細胞の割合についても cPAの効果を解析したところ、 24時間後では、 cPA濃度 1. 0 を添加したものにおいて、神経突起を有する細胞の割合が高かった。これは、 NGF添カ卩時と比較しても高い値であった (図 1 1及び図 1 2 )。
( B - 4 ) cPAによる生存率上昇における細胞内シグナル伝達系の解析
ホスファチジルイノシトール 3-キナーゼ (PI3K) の阻害剤である、 ウォルトマ ンニン、あるいは LY294002をそれぞれ培地に添加し、 ウォルトマンニンによって 生存率がコントロールレベル近くまで低下した。 また、 LY294002の場合は、 コン トロール値以下の低い生存率を示した。 細胞はつぶれて、 変形したものが多かつ た。 これは LY294002 nによる細胞毒性が現れた結果とも考えられる。
以上の結果から、 cPAによる生存率上昇作用において、 PI3Kの活性を介した細 胞内シグナル伝達系が関与していることが示唆された (図 1 3 )。
( C ) まとめ
上記結果より、 cPAは 1. (^ Mの濃度においてラット海馬初代培養神経系細胞の 生存率を向上させ、 また神経突起の伸長を促進することが明らかとなった。 今回 の試験では、 特に、 cPA の長期作用として神経細胞伸長作用があるごとが明らか になり、 cPAは長期的には神経細胞の分化を促進している可能性がある。 産業上の利用の可能性
本発明により、一般式(I)で示される cPA誘導体が、哺乳類の海馬由来の神経細 胞の生存率を高め、 神経突起の伸長を促進することが確認された。 従って、 本発 明で用いる一般式(I)で示される cPA誘導体が、痴呆、 アルツハイマー病、 ァルツ ハイマー型老年痴呆症、 筋萎縮性側索硬化症、 パーキンソン氏病、 脳卒中、 脳梗 塞または頭部外傷などの神経障害治療剤として有用であることが明らかとなつた。 本発明によれば、 神経細胞の生存率を高め、 且つ、 神経突起の伸長を促すことに よって、 脳神経細胞の死滅によって起こる種々の疾患の予防、 治療、 リハビリ等 に非常に有効な神経障害治療剤及び予防剤が提供される。

Claims

請求の範囲
一般式(I)
Figure imgf000027_0001
(式中、 Rは、 炭素数 1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、 炭素数 2〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、 又は炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐 状アルキニル基であり、 これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいて もよレ、。 Μは、 水素原子又は対カチオンである。)
で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む、 神経細胞の生存 促進のための薬剤。
2 . 一般式(I) :
Figure imgf000027_0002
(式中、 Rは、 炭素数 1〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、 炭素数 2〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、 又は炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐 状アルキニル基であり、 これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいて もよい。 Mは、 水素原子又は対カチオンである。)
で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む、 神経細胞の伸長 促進のための薬剤。
3 . 一般式(I) :
Figure imgf000028_0001
(式中、 Rは、 炭素数 1〜30の直鎖状若しくは分岐状アルキル基、 炭素数 2〜30 の直鎖状若しくは分岐状アルケニル基、 又は炭素数 2〜30の直鎖状若しくは分岐 状アルキニル基であり、 これらの基はシクロアルカン環又は芳香環を含んでいて もよい。 Mは、 水素原子又は対カチオンである。)
で示される環状ホスファチジン酸誘導体を有効成分として含む、 神経障害の治療 及ぴ 又は予防のための薬剤。
4 . 神経障害が、 痴呆、 アルツハイマー病、 アルツハイマー型老年痴呆症、 筋萎縮性側索硬化症、 パーキンソン氏病、 脳卒中、 脳梗塞または頭部外傷から選 択されることを特徴とする、 請求項 1から 3の何れかに記載の薬剤。
5 . 一般式(I)で示される環状ホスファチジン酸誘導体が、 1ーォレオイル環 状ホスファチジン酸である、 請求項 1から 4の何れかに記載の薬剤。
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