JP5317405B2 - 脳機能の改善剤及びそのスクリーニング方法 - Google Patents
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Description
[1]NSFの機能を促進し得る物質を含む、脳機能の改善剤。
[2]NSFの機能を促進し得る物質が、下記式(I):
〔式中、
R1、R2は、各々独立して、水素であるか、又は置換基を有していてもよい、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル若しくはヘテロアリールアルキルであるか、あるいはR1及びR2はその隣接する窒素原子と一緒になって、置換基を有していてもよいN含有ヘテロ環を形成し、
R3は、水素であるか、あるいはアミノ、ハロゲン及びヒドロキシからなる群より選ばれる置換基を有していてもよい、C1−6アルキル又はC3−8シクロアルキルであり、
R4は、水素、−CH2R5、−C(O)R5、−SO2R5、又は−CONR6R7であり、
R5は、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロゲン化C1−6アルキル、−O−C1−6アルキル、−O−ハロゲン化C1−6アルキル、−CN、−SH、−S−C1−6アルキル、及び−S−ハロゲン化C1−6アルキルからなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい、アリール又はヘテロアリールであり、
R6、R7は、各々独立して、水素であるか、又はアミノ、ハロゲン及びヒドロキシからなる群より選ばれる置換基を有していてもよい、C1−6アルキル、C3−8シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル若しくはヘテロアリールアルキルであるか、あるいはR6及びR7はその隣接する窒素原子と一緒になって、アミノ、ハロゲン及びヒドロキシからなる群より選ばれる置換基を有していてもよいN含有ヘテロ環を形成し、
nは、1、2又は3であり、
−(CH2)n−におけるCH2は、各々独立して、メチル、ハロゲン及びヒドロキシからなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい〕で表される化合物又はその塩である、上記[1]の剤。
[3]式(I)で表される化合物が、下記式(II):
〔式中、
R1、R2、R3は、上記[2]と同義であり、
R8は、ハロゲン、C1−6アルキル、ハロゲン化C1−6アルキル、−O−C1−6アルキル、−O−ハロゲン化C1−6アルキル、−CN、−SH、−S−C1−6アルキル、及び−S−ハロゲン化C1−6アルキルからなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい、アリール又はヘテロアリールであり、
nは、1、2又は3であり、
−(CH2)n−におけるCH2は、各々独立して、メチル、ハロゲン及びヒドロキシからなる群より選ばれる1以上の置換基で置換されていてもよい〕で表される化合物である、上記[2]の剤。
[4]nが1であり、かつ−(CH2)n−におけるCH2が未置換である、上記[2]又は[3]の剤。
[5]R1、R2は、各々独立して、水素であるか、又は未置換のC1−6アルキルである、上記[2]〜[4]のいずれかの剤。
[6]NSFの機能を促進し得る物質が、2−[1−(4−クロロ−ベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]−N−メチル−アセトアミド又はその塩である、上記[1]の剤。
[7]脳機能の改善剤が、認知症あるいは学習又は記憶障害の予防又は治療剤である、上記[1]〜[6]のいずれかの剤。
[8]認知症が、老人性認知症、アルツハイマー認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン認知症からなる群より選択される疾患である、上記[7]の剤。
[9]脳機能の改善剤が、学習又は記憶の向上剤である、上記[1]〜[6]のいずれかの剤。
[10]上記式(I)で表される化合物又はその塩。
[11]式(I)で表される化合物が、上記式(II)で表される化合物である、上記[10]の化合物又はその塩。
[12]nが1であり、かつ−(CH2)n−におけるCH2が未置換である、上記[10]又は[11]の化合物又はその塩。
[13]R1、R2は、各々独立して、水素であるか、又は未置換のC1−6アルキルである、上記[10]〜[12]のいずれかの化合物又はその塩。
[14]上記式(I)で表される化合物が2−[1−(4−クロロ−ベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]−N−メチル−アセトアミドである、上記[10]の化合物又はその塩。
[15]上記[10]〜[14]のいずれかの化合物を含む、医薬。
[16]被験物質がNSFの発現又は機能を促進するか否かを評価することを含む、脳機能を改善し得る物質のスクリーニング方法。
[17]被験物質のNSFに対する結合能を測定することを含む、上記[16]の方法。
[18]以下(a)〜(d)の工程を含む方法により、被験物質のNSFに対する結合能が測定される、上記[17]の方法:
(a)被験物質、NSF結合性物質を、NSFに接触させる工程;
(b)被験物質の存在下におけるNSF結合性物質のNSFに対する結合量を測定する工程;
(c)(b)で測定された結合量を、被験物質の非存在下におけるNSF結合性物質のNSFに対する結合量と比較する工程;
(d)(c)の比較結果に基づいて、NSF結合性物質のNSFに対する結合量の低下をもたらす被験物質を選択する工程。
[19]NSF結合性物質が、DCP−LAあるいはインドメタシン又はそのアミド誘導体である、上記[18]の方法。
[20]動物を用いて、被験物質が脳機能の改善作用を有するか否かを確認することをさらに含む、上記[16]〜[19]の方法。
[21]被験物質がPKC−εの機能を調節するか否かを評価することをさらに含む、上記[16]〜[19]のいずれかの方法。
[22]以下(a)〜(e)から選ばれる少なくとも1つを用いて行われる、上記[16]〜[21]のいずれかの方法:
(a)NSF発現ベクターで形質転換された細胞;
(b)NSFタンパク質;
(c)PKC−ε阻害剤;
(d)CaMKII阻害剤;
(e)脳機能の改善作用を有する、NSFに対する結合能を有する化合物。
[23]脳機能を改善し得る物質が、認知症あるいは学習又は記憶障害を予防又は治療し得る物質である、上記[16]〜[22]のいずれかの方法。
[24]認知症が、老人性認知症、アルツハイマー認知症、脳血管性認知症、外傷後認知症、脳腫瘍により生じる認知症、慢性硬膜下血腫により生じる認知症、正常圧脳水腫により生じる認知症、髄膜炎後認知症、及びパーキンソン認知症からなる群より選択される疾患である、上記[23]の方法。
[25]脳機能を改善し得る物質が、学習又は記憶を向上し得る物質である、上記[16]〜[22]のいずれかの方法。
[26]被験物質がPKC−εの発現又は機能を調節するか否かを評価することを含む、脳機能を改善し得る物質のスクリーニング方法。
本発明の方法は、例えば、認知症、学習又は記憶障害などを含む種々の疾患を予防及び/又は治療し得る物質、あるいは学習又は記憶を向上し得る物質のスクリーニングに有用であり得る。
・(5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル)酢酸;
・(5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル)酢酸;
・(1−ベンジル−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル)酢酸;
・[1−(3,4−ジクロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3−クロロベンジル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジクロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジクロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・(1−ベンジル−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル)酢酸;
・[1−(4−クロロベンジル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジクロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジクロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・{5−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−1H−インドール−3−イル}酢酸;
・[1−(2,4−ジクロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(2,3−ジクロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(2,3−ジクロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・{1−[(6−クロロピリジン−3−イル)カルボニル]−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸;
・[1−(3−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3−クロロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジフルオロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(3,4−ジフルオロベンゾイル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(4−ブロモベンジル)−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(4−クロロベンジル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(4−フルオロベンジル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[5−ヒドロキシ−2−メチル−1−(3−メチルベンゾイル)−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・{1−[(4−クロロフェニル)スルホニル]−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸;
・{1−[(4−クロロフェニル)スルホニル]−5−ヒドロキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル}酢酸;
・[5−メトキシ−2−メチル−1−(ピペリジン−1−イルカルボニル)−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[5−ヒドロキシ−2−メチル−1−(3−フェニルプロプ−2−イノイル)−1H−インドール−3−イル]酢酸;
・[1−(4−クロロベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]酢酸。
(a)被験物質をNSFの発現を測定可能な細胞に接触させる工程;
(b)被験物質を接触させた細胞におけるNSFの発現量を測定する工程;
(c)(b)で測定された発現量を、被験物質を接触させない対照細胞におけるNSFの発現量と比較する工程;
(d)上記(c)の比較結果に基づいて、NSFの発現量を促進する被験物質を選択する工程。
以下、上記の工程(a)〜(d)を含む方法論を、方法論Iと省略する。
(a)被験物質を動物に投与する工程;
(b)被験物質を投与した動物におけるNSFの発現量を測定する工程;
(c)(b)で測定された発現量を、被験物質を投与しない対照動物におけるNSFの発現量と比較する工程;
(d)上記(c)の比較結果に基づいて、NSFの発現量を調節する被験物質を選択する工程。
以下、上記の工程(a)〜(d)を含む方法論を、方法論IIと省略する。
(a)被験物質をNSFに接触させる工程;
(b)被験物質のNSFに対する結合能を測定する工程;
(c)上記(b)の結果に基づいて、NSFに結合能を有する被験物質を選択する工程。
以下、上記の工程(a)〜(c)を含む方法論を、方法論IIIと省略する。
(a)被験物質、NSF結合性物質を、NSFに接触させる工程;
(b)被験物質の存在下におけるNSF結合性物質のNSFに対する結合量を測定する工程;
(c)(b)で測定された結合量を、被験物質の非存在下におけるNSF結合性物質のNSFに対する結合量と比較する工程;
(d)上記(c)の比較結果に基づいて、NSF結合性物質のNSFに対する結合量の低下をもたらす被験物質を選択する工程。
上記(a)〜(d)の工程を含む方法論を、方法論IVと省略する。
(a)被験物質の存在下において、PKC−εの活性を測定する工程;
(b)(a)で測定されたPKC−εの活性を、被験物質の不在下におけるPKC−εの活性と比較する工程;
(c)上記(b)の比較結果に基づいて、PKC−εを活性化する被験物質を選択する工程。
RT-PCR解析では、PC-12細胞(ラット褐色細胞種)は、PKC-vを除く全てのPKCアイソザイムを発現していた(データ省略)。本発明者は、ミエリン塩基性タンパク質上のリン酸化部位を誘導体化した合成PKC基質ペプチド (Yasuda et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 166: 1220-1227 (1990)) を用いてPC-12細胞におけるPKC活性をアッセイした。
PC-12細胞におけるPKC活性を、既報 (Heasley et al., J. Biol. Chem. 264: 8646-8652 (1989)) を改変した方法によりアッセイした。PC-12細胞を、96ウェルプレート (1×104細胞/ウェル) に蒔いた。細胞を、GF109203Xの存在下および非存在下において、ホルボール 12-ミリステート 13-アセテート (phorbol 12-myristate 13-asetate: PMA)、DCP-LA、又はリノール酸とともに37℃にて10分間処理した。次いで、細胞を100μlのCa2+フリーリン酸緩衝化生理食塩水 (PBS) でリンスし、50μlの137 mM NaCl、5.4 mM KCl、10 mM MgCl2、5 mM エチレングリコール-ビス (2-アミノエチルエーテル)-N,N,N’,N’-テトラ酢酸、0.3 mM Na2HPO4、0.4 mM K2HPO4、20 mM 4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジン-エタンスルホン酸 (pH 7.2)、50μg/mlジギトニン、25 mM グリセロール 2-ホスフェート、200μM ATP、および100μM合成PKC基質ペプチド中において30℃で15分間インキュベートした。上清を回収し、100℃で5分間煮沸することにより、反応を停止させた。溶液のアリコート (20μl) を逆相HPLC (LC-10ATvp, Shimadzu, Co., Kyoto, Japan) 上にロードした。基質ペプチドピークおよび新生成物ピークを214 nmの吸光度で検出した (SPD-10Avp- UV-VIS検出器、Shimadzu Co., Kyoto, Japan)。各ピークが、マトリクス支援レーザー吸着イオン化飛行時間型質量分析計 (Voyager ST-DER, PE Biosystems Inc., Foster City, USA) の解析における非リン酸化およびリン酸化基質ペプチドに対応することを確認した。リン酸化基質ペプチド量を、PKC活性の指標として算出した。
その結果、PKCアクチベータであるPMA (1μM) は、PC-12細胞におけるPKCを活性化したが、これは、PKCの選択的インヒビターであるGF109203X (100 nM) により無効化された(図1、2)。このことはPKCアッセイが信頼できるものであることを示す。DCP-LA (100 nM) はまたPKCを活性化したが、この作用はGF109203Xによりブロックされた(図1、2)。PKC活性に対するDCP-LA作用は、10 nM-100μMに及ぶ濃度で用量依存様式であり、その作用は100 nMで最大であった(図3)。同様のPKC活性化がリノール酸でも得られたが、その効力はDCP-LAよりも弱かった(図3)。これらの結果は、DCP-LAがPKCを活性化することを示唆する。
DCP-LA標的であるPKCアイソザイムを同定するため、PKC活性をセルフリーシステムによりアッセイした。
セルフリーシステムにおけるPKC活性は、既報 (Miyamoto et al., Mol. Brain Res. 117: 91-96 (2003); Ohta et al., Mol. Brain Res. 119: 83-89 (2003)) の方法により定量した。簡潔には、合成PKC基質ペプチドを、ホスファチジルセリン、ジアシルグリセロール、DCP-LA、又はリノール酸の存在下および非存在下において、20 mM Tris-HCl (pH 7.5)、5 mM Mg2+-アセテート、0.1 mM CaCl2、および10μM ATPを含む培地中において、種々のPKCアイソザイムと30℃で5分間反応させた。逆相HPLC (LC-10ATvp, Shimadzu Co., Kyoto, Japan) 上へのロード後に、基質ペプチドピークおよび新生成物ピークを214 nmの吸光度で検出した。リン酸化基質ペプチド量を、PKC活性を指標として算出した。
その結果、ここで試験した9種のPKCアイソザイム (α、βI、βII、γ、δ、ε、μ、ηおよびζ) のうち、DCP-LA (100μM) が、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロール、ジアシルグリセロール、およびホスファチジルセリン−ジオレオイルの非存在下において、他のPKCアイソザイムよりも7倍以上の効力で、新規PKCであるPKC-εを最も強力に活性化した (リン酸化8.96±0.76 pmol/分) (各PKCアイソザイムのDCP-LA誘導活性化と比較するとP<0.001, unpaired t検定)(図4)。このことは、DCP-LAがPKC-εの選択的かつ直接的アクチベータとして働くことを説明する。DCP-LAは、10 nM-100μMに及ぶ濃度にて用量依存様式でPKC-εを活性化し、その作用は100μMで最大であった(図5)。
GF109203X (GF) (100 nM) の存在又は非存在下において、DCP-LA (100 nM) による5分間の処理の前後5分間隔で10秒間、PKC-εを注入していない (なし) 又は注入した (+PKC-ε) (終濃度、〜1μg/ml) α7受容体発現卵母細胞にACh (100μM) をバスアプライ (bath-apply) した。電位を-60mVに固定して、DCP-LAで10分間処理した10分前 (-10分) および30分後にPKC-εを注入した卵母細胞にて、示された電流を記録した。
その結果、DCP-LAは、α7 ACh受容体電流を有意に増強した (P<0.01, ANOVA)(図6)。さらなる増強がPKC-ε注入により得られた (PKC-εを注入していない卵母細胞に対する増強と比較、P<0.01,ANOVA)(図6)。このことは、DCP-LAが、PKC、特にPKC-εを活性化することによりα7 ACh受容体応答を増強することを示唆する。
butandione monoxime (5 mM)、jasplakinolide (5μM)、又はlatrunculin B (1μM) の存在および非存在下で、DCP-LA (100 nM) による10分間の処理の前後に10分間隔で10秒間、ACh (100μM) をα7受容体発現卵母細胞にバスアプライ (bath-apply) した。
その結果、α7 ACh受容体電流の増強は、butandione monoxime、jasplakinolide、又はlatrunculin Bにより有意に阻害された (P<0.01, ANOVA)(図7)。このことは、DCP-LAが、サイトゾルから原形質膜へのα7 ACh受容体の小胞輸送を刺激することによりα7 ACh受容体応答を増強することを示唆する。
DCP-LA (100 nM) 未処理又は処理 (30分) のラット海馬切片を蔗糖密度勾配遠心分離法により13分画に分離し、抗α7 ACh受容体抗体および抗カドヘリン (細胞接着因子) 抗体にてウェスタンブロッティングを行った。
その結果、DCP-LA処理によりα7 ACh受容体の細胞質から原形質膜 (9-11分画) への移行が認められた(図8、9)。このことは、DCP-LAがα7 ACh受容体の細胞膜への移行を促進することを示唆する。
DCP-LA (100 nM) 未処理又は処理 (30分) のα7 ACh受容体強制発現PC-12細胞において細胞全体のα7 ACh受容体発現に対する細胞膜表面α7 ACh受容体発現の割合を抗α7 ACh受容体抗体を用いたウェスタンブロッティングにて検討した。詳細には、細胞表面タンパク質をビオチン化し、細胞溶解物を調製した後、アビジン結合ゲルを用いてビオチン化細胞表面タンパク質を分離し、ビオチン化した細胞表面タンパク質をゲルから溶出させ、次いで抗Hisタグ抗体を用いたイムノブロットでHisタグα7を検出した。
その結果、DCP-LAは、細胞表面α7 ACh受容体発現量を増加させ、その作用は選択的PKCインヒビター GF109203X (100 nM) あるいは小胞輸送インヒビターlatrunculin B (10μM) で抑制された(図10、11)。このことは、DCP-LAが細胞質から細胞膜へのα7 ACh受容体小胞輸送をPKC依存性に促進することを示す。
7.1.ラットNSFの免疫沈降
ウイスターラット (雄7週齢) の前脳を取り出し、予め4℃で冷却していたPBS (150 mM NaCl, 2.7 mM KCl, 10 mM Na2HPO4, 1.8 mM KH2PO4, pH 7.4)で洗浄後、Lysis Buffer (25 mM Tris-HCl (pH 7.5), 150 mM NaCl, 0.5% CHAPS, 1 mM PMSF, protease inhibitor cocktail (Nacalai tesque社)) に懸濁し、ホモジナイザーで粗く組織を砕いた後、超音波ホモジナイザー (BRANSON) により組織のタンパク質溶解液を作製した。得られた溶液を超遠心分離機 (ベックマン) 100,000g×1 hr×4℃で遠心分離し、可溶化分画である上清を得た。抗NSF抗体 (oncogene) とProtein G (アマシャム・バイオサイエンス) を架橋したビーズを100μl (溶液に対して1/10量) 上清に加え、コールドルームにて一晩ロータリーシェーカー (タイテック) で混合の後、卓上遠心機 (トミー機器) 15000 rpm×10 sec×4℃でビーズを沈殿させ、上清を取り除き、Wash Buffer (25 mM Tris-HCl (pH 7.5), 150 mM NaCl, 0.1% Tween 20) で3回洗いを繰り返し、変性溶液 (0.1 Mグリシン (pH 2.7)) により、タンパク質を溶出させ、中和溶液 (1 M Tris-HCl (pH 9.0)) にて中和し、ラットNSFタンパク質を含む溶液を得た。
7.2.インビトロDCP-LA結合アッセイ
DCP-LAのカルボキシル基にフルオレセインを結合させたDCP-LA-Flu(下記参照)200μMにNSF溶液0.5μgを加え、また一方は10 mM DCP-LAを競合物として加え、コールドルームにて一晩ロータリーシェーカーで混合し、10% アクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGE (ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動) にて、分子量ごとに分離し、DCP-LA-Fluと結合したタンパク質をバリアブル・イメージ・アナライザTyphoon 8600S (アマシャム・バイオサイエンス) で可視化した(図12)。
DCP-LA-Fluと結合したタンパク質ゲルバンドを1 mmの厚さに刻み、洗浄液 (50% アセトニトリル、25 mM重炭酸アンモニウム (pH 8.0)) 500μl×15分攪拌し、これを3回繰り返した後、100% アセトニトリル溶液500μl×5分でゲルを脱水させ、Speed-Vac (トミー機器) で30分乾燥させた。トリプシン (プロメガ) を10μg/ml、25 mM重炭酸アンモニウム (pH 8.0) で調製した酵素溶液を15μl加え、ゲルに吸収させた後37℃一夜インキュベートした。翌日、2倍量の抽出溶液 (50% アセトニトリル、5% トリフルオロ酢酸) を加え60分攪拌後、ペプチド溶液を新しいチューブに移し、再度等量の抽出溶液をゲルに加えて60分攪拌し、得られたペプチド溶液をSpeed-Vacで2μlが残るように液を蒸発させた。
7.4.MALDI-TOF MS
ペプチド溶液とマトリクス溶液 (飽和CHCA水溶液) 1μlを同量ずつTOF MSプレート上にて混合し、乾燥後、MALDI飛行時間型質量分析計Voyager (アプライド・バイオシステムズ) にてMSスペクトル(図13)を得た。
7.5.質量分析データベース解析
University of California San Francisco Mass Spectrometry Facilityがwebサイトで提供する解析ツール、MS-Fitを使用して得られたMSスペクトルを検索したところ、DCP-LAの結合タンパク質がNSFであることを示す結果が得られた。
ウイスターラット (雄5週齢) から、氷冷クレブス溶液 (10 mM Hepes, 129 mM NaCl, 5 mM NaHCO3, 4.8 mM KCl, 1.2 mM KH2PO4, 1.2 mM MgCl2, 1 mM CaCl2, 2.8 mMグルコース, pH 7.4) 中に脳を摘出し、冠状海馬切片を作製した。室温にて1時間二酸化炭素でバブリングしながらクレブス溶液に放置し、0.2 mg/ml pronase (Calbiochem) クレブス溶液中で15 min×31℃でインキュベートした後、0.2 mg/ml protease TypeX (Sigma) クレブス溶液中で15 min×31℃インキュベートして、切片を再度室温にて1時間二酸化炭素でバブリングしながらクレブス溶液に放置した。プラー (NARISIGE PB-7) を用いて400μm、280μm、200μmに引いたガラス管ピペットをヒートポリッシャー (NARISIGE MF-83) にて微調整を行い、酵素処理した切片の海馬CA1領域をガラス管ピペットで取り出し、タイロード溶液 (5 mM Hepes, 135 mM NaCl, 5 mM KCl, 1 mM MgCl2, 2.5 mM CaCl2, 10 mMグルコース, pH 7.3) 中にてバラバラに砕き、その細胞懸濁液をコラーゲンコートしたスライドガラス上に30分室温放置後、スライドグラス上に接着した細胞を4%パラホルムアルデヒドPBS溶液にて固定した。固定された細胞を、PBSにて5分間3回洗い、ブロッキング溶液 (10% BSA, 0.1% Triton-X 100, PBS) にて1時間室温で放置後、一次抗体 (NSFモノクローナル抗体 (oncogen)) 1/500が溶解した抗体希釈溶液 (10% BSA, 0.01% Triton-X 100, PBS) でコールドルームにて一晩放置した。一次抗体溶液中の細胞をPBSで3回洗い、二次抗体 (Alexa Fluor 633 ヤギ抗マウスIgG (H+L) (Invtrogen)) 1/500と10μM DCP-LA-Fluが溶解した抗体希釈溶液で室温にて2時間放置後、PBSにて5分間3回洗い、核染色液 (500 nM DAPI (Invtrogen), PBS) で5分間染色後、再度PBSにて5分間3回洗い、封入剤 (20%グリセロール, PBS) でカバーガラスに封入して共焦点レーザースキャン顕微鏡 (xiover/LSM 510 META (Carl Zeiss)) を用いて顕微鏡観察した。
その結果、フルオレセイン標識DCP-LAの局在は、NSFの局在と同じであった(データ示さず)。以上より、DCP-LAは、NSFとの結合を通じてNSFと共局在し、その機能を調節し得ることが示唆された。
DMFにインドメタシン(ナカライ社製)を溶解させ、NHS-フルオレセイン(Pierce社製)とEDC(Pierce社)を2倍量加え、室温で攪拌した。反応物に等量の滅菌水を加えて攪拌し、13000rpmで2分間遠心分離後、上清を除いた。再度DMFを加え沈殿物を溶解後、等量の滅菌水を加え攪拌、遠心分離と一連のステップを5回繰り返して純粋化した。最後に適当量のDMFに溶解し、-20℃で遮光保存した。
フルオレセイン標識インドメタシンが合成できているかどうかはクロロホルムーメタノール(9.8:0.2)に溶解し、薄層クロマトグラフィー(Rf値:0.37)で確認した。また、合成されたメチルフルオレセイン標識インドメタシンの粉末を適当量の0.1%トリフルオロサクサン50%アセトニトリル飽和α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸溶液に溶かし、質量分析用プレートに散布後、MALDI飛行時間型質量分析計(Voyager アプライド・バイオシステムズ)により解析し質量分析を行った(TOF MSによる実測値:854.975486)。
ウィスターラット(雄6週齢)全脳をホモジネートし、抗NSF抗体でNSFの免疫沈降を行った。得られたNSF含有サンプルを電気泳動し、上述の通り作製した蛍光標識インドメタシンを用いてアッセイを行った。詳細には、1) 無標識インドメタシン非存在下での蛍光標識インドメタシン(1 mM)の反応、2) 無標識インドメタシン(10 mM)存在下(同時処理)での蛍光標識インドメタシン(1 mM)の反応、3) 無標識インドメタシン(10 mM)処置後の蛍光標識インドメタシン(1 mM)の反応を行った。NSFと結合した蛍光標識インドメタシンは蛍光バンドとして捕らえることができる。無標識インドメタシン存在下及び前処置群では蛍光標識インドメタシンとNSFと結合が競合阻害されるため、蛍光バンド強度は減少・消失する。
その結果、無標識インドメタシン存在下及び前処置群で蛍光バンド強度の減少・消失が確認された(図14)。このことは、インドメタシンがNSFに結合することを示す。また、蛍光標識インドメタシンもNSFに結合した(図14、レーン1)ことから、インドメタシンにおけるインドール環の3位の置換基は、NSFとの結合に本質的に影響を及ぼし得ないことが示された。
次いで、培養ラット海馬神経細胞の免疫組織化学を行った。ウィスターラット(雌妊娠17日)胎児脳から海馬を分離し、海馬神経細胞をニューロベーサル溶液で2週間培養した。その後、4%ホルムアルデヒドPBS溶液で細胞を固定後、PBSで3回洗浄し、2%トライトンPBS溶液に5分間浸した。続いて、10%ヤギ血清0.01%トライトンPBS溶液で30分間ブロッキングを行い、1/500希釈の抗NSF抗体を含む10%ヤギ血清0.01%トライトンPBS溶液により免疫反応を4℃で1晩行った。その後、0.01%トライトンPBS溶液で3回洗浄し、1/500希釈の抗マウス633二次抗体(モレキュラープローブ社)とフルオロセイン標識インドメタシンを1 mM含む10%ヤギ血清0.01%トライトンPBS溶液を用いて、1時間室温で免疫反応を行った。反応後、0.01%トライトンPBS溶液で3回洗浄後、PBS溶液で満たして、共焦点レーザースキャン顕微鏡(Axiovert/LSM510 META ツアイス社)で蛍光観察を行った。
その結果、フルオレセイン標識インドメタシンの局在は、NSFの局在と同じであった(データ示さず)。以上より、インドメタシンは、NSFとの結合を通じてNSFと共局在し、その機能を調節し得ることが示唆された。
ウィスターラット(雌妊娠17日)胎児脳から海馬を分離し、海馬神経細胞をニューロベーサル溶液で2週間培養した。培養海馬神経細胞に対してKN-93 (3μM) 存在下および非存在下においてインドメタシン(10-100μM) を37℃にて10分間処理した。続いて、氷冷PBSで洗浄した後、50μlの反応溶液[137 mM NaCl, 5.4 mM KCl, 10 mM MaCl2, 5 mM EGTA, 0.3 mM Na2HPO4, 0.4 mM K2HPO4, 50μg/ml digitonin, 25 mM β-glycerophosphate, 100μM ATP, 20 mM HEPES(pH 7.2)]と40μM 合成CaMKII基質ペプチドautocamtide-2(biomol社)を加え、35℃で5分間反応後、100℃で反応を停止させた。上清液をスピンカラム(コスモスピンフィルターH、ナカライテスク社)でスピンダウンし、その内10μlを逆相HPLC (LC-10ATvp, Shimadzu, Co., Kyoto, Japan) 上にロードした。基質ペプチドピークおよび新生成物ピークを214 nmの吸光度で検出した (SPD-10Avp- UV-VIS検出器、Shimadzu Co., Kyoto, Japan)。リン酸化基質ペプチド量をCaMKII活性の指標として算出した。
その結果、コントロールと比較してインドメタシン存在下では有意にCaMKII活性が増加した(図15)。この活性はCaMKIIの選択的抑制剤であるKN-93により抑制されたことから、海馬神経細胞内において、インドメタシンはCaMKIIを活性化することが示された。
ウィスターラット(雄6週齢)から調製された海馬切片のCA1錐体神経細胞にホールセルパッチクランプを施行し、インドメタシン(100μM)投与前後のmEPSPを記録した。
その結果、コントロール(無処理)と比較して、インドメタシン (100μM) 投与によりmEPSC発現頻度は有意に増加した (P<0.01, Kolmogorov-Smirnov test)(図16、17)。この結果は、インドメタシンがシナプス前終末からのグルタミン酸放出を刺激することを示す。
ウィスターラット(雄6週齢)から調製された海馬切片のCA1錐体神経細胞にホールセルパッチクランプを施行し、選択的CaMKII抑制剤KN-93 (3μM)非存在下および存在下で、インドメタシン(100μM)投与前後のmEPSPを記録した。
その結果、インドメタシン (100μM) によるmEPSC発現頻度の増加はKN-93 (3μM) で有意に抑制された (P<0.01, Kolmogorov-Smirnov test)(図18、19)。この結果は、インドメタシンによるシナプス前終末からのグルタミン酸放出増加がCaMKII経路を介することを示す。
ウィスターラット(雄6週齢)を断頭後、脳から海馬を分離し、海馬切片(400μM) を作製して、95% O2、5% CO2で飽和した人工髄液 (117 mM NaCl, 3.6 mM KCl, 1.2 mM NaH2PO4, 1.2 mM MgCl2, 2.5 mM CaCl2, 25 mM NaHCO3, 11.5 mM glucose) 中で1時間、室温でインキュベーションした。ラット海馬切片に高濃度K+(80 mM) 脱分極刺激を加え、KN-93 (3μM) 非存在下・存在下でインドメタシン (100μM) を加え、放出されたグルタミン酸を高速液体クロマトグラフィーで測定した。
その結果、インドメタシン処理によりラット海馬切片からのグルタミン酸放出は有意に増加し、また、この効果は、選択的カルシウム/カルモデュリン依存性タンパク質リン酸化酵素II (CaMKII )阻害剤KN-93で抑制された(図20)。この結果は、インドメタシンがカルシウム/カルモデュリン依存性タンパク質リン酸化酵素IIの経路を介してグルタミン酸放出を刺激することを示す。
ウィスターラット(雄6週齢)から調製された海馬切片のシェーファー側枝を電気刺激し (0.03 ヘルツ、0.1 ミリ秒間)、CA1領域からの細胞外興奮性シナプス後電位 (fEPSP) をインドメタシン10分間投与前後で記録した。
その結果、インドメタシン10分間処理により海馬シナプス伝達は濃度依存性に促進した(図21)。この結果は、インドメタシンに認知機能亢進作用があることを示唆する。
ウィスターラット(雄6週齢)から調製された海馬切片のシェーファー側枝を電気刺激し (0.03 ヘルツ、0.1 ミリ秒間)、CA1領域からの細胞外興奮性シナプス後電位 (fEPSP) を記録した。選択的カルシウム/カルモデュリン依存性タンパク質リン酸化酵素II (CaMKII) 阻害剤KN-93 (3μM)、選択的タンパク質リン酸化酵素C (PKC) 阻害剤GF109203 (100 nM)、選択的タンパク質リン酸化酵素A (PKA) 阻害剤H-89 (1μM)、選択的α7ニコチン性アセチルコリン受容体阻害剤α-ブンガロトキシン (bungarotoxin)(100 nM) 存在下でインドメタシン100μMを10分間処理した。
その結果、インドメタシンの海馬シナプス伝達促進作用はKN-93で抑制された(図22)。この結果は、インドメタシンがCaMKIIの経路を介して海馬シナプス伝達を促進することを示す。
正常ウィスターラット(雄6週齢)をインドメタシン (1 mg/kg) 非投与群 (コントロール)、投与群 (インドメタシン) に分け、水迷路試験を1日1回、5日間行った。インドメタシンは0.2 N NaOHで溶解し、Tris-HCl (0.05%) で中和した。水迷路試験1時間前に、コントロール群はインドメタシン非溶解液を、インドメタシン投与群はインドメタシン溶解液をそれぞれ100μl腹腔内注入した。インドメタシン投与群のプラットホームへの到達時間 (潜時) を5日間調べた。また、5日間の学習試験後、プラットホームを取り除き、プラットホームがあった場所にどれ位の時間留まるか (停滞時間) を調べた。
その結果、インドメタシン投与群のプラットホームへの到達時間(潜時)は、コントロール群と比較して有意に短縮した(図23)。この結果は、インドメタシンが正常ラットの空間学習脳を高めることを意味する。また、インドメタシン投与群の停滞時間は、コントロール群と比較して有意に延長していた (ANOVA)(図24)。この結果は、インドメタシンが、正常ラットの空間記憶能を高めることを意味する。
スコポラミン (1 mg/kg) をウィスターラット(雄6週齢)腹腔内に注入し、記憶障害モデルを作製した (M. Diez-Ariza, et al., Psychopharmacology (Berl) Vol. 169, p35, 2003.)。そのコントロール群として生理食塩水を腹腔内に注入した。コントロール群、スコポラミン処理記憶障害ラットに対してインドメタシン (1 mg/kg) 非投与群 (スコポラミン)、投与群 (スコポラミン+インドメタシン) に対し、水迷路試験を1日1回、4日間行った。インドメタシンは0.2 N NaOHで溶解し、Tris-HCl (0.05%) で中和した。水迷路試験1時間前に、コントロール群とインドメタシン非投与群 (スコポラミン) はインドメタシン溶解液をそれぞれ100μl、スコポラミンと同時に腹腔内注入した。インドメタシン投与群のプラットホームへの到達時間 (潜時) を5日間調べた。また、5日間の学習試験後、プラットホームを取り除き、プラットホームがあった場所にどれ位の時間留まるか (停滞時間) を調べた。
その結果、スコポラミン処理群の潜時は、コントロール群と比較して延長していた(図25)。この結果は、スコポラミン処理により空間学習が障害されることを示す。インドメタシン投与群(スコポラミン+インドメタシン)の潜時は、非投与群(スコポラミン)と比較して有意に短縮した(図25)。この結果は、インドメタシンがスコポラミン処理学習障害を改善することを意味する。
また、インドメタシン非投与スコポラミン処理ラットの停滞時間は、コントロール群と比較して短縮していた(図26)。この結果は、スコポラミン処理により空間記憶が障害されることを示す。インドメタシン投与群(スコポラミン+インドメタシン)の停滞時間は、非投与群(スコポラミン)と比較して延長していた(図26)。この結果は、インドメタシンがスコポラミン処理空間記憶障害を改善する傾向があることを示唆する。
老化促進マウス (SAMP) に対してインドメタシン (1 mg/kg) 非投与群 (−インドメタシン)、投与群 (+インドメタシン)、SAMPのコントロールとして正常マウスSAMR群に対し、水迷路試験を1日2回、5日間行った。インドメタシンは0.2 N NaOHで溶解し、Tris-HCl (0.05%) で中和した。水迷路試験1時間前に、SAMR群とインドメタシン投与群 (-インドメタシン) はインドメタシン非溶解液を、インドメタシン投与群 (+インドメタシン) はインドメタシン溶液をそれぞれ50μl腹腔内注入した。SAMPインドメタシン非投与又はインドメタシン投与群のプラットホームへの到達時間 (潜時) を5日間調べた。また、5日間の学習試験後、プラットホームを取り除き、プラットホームがあった場所にどれ位の時間留まるか (停滞時間) を調べた。
その結果、SAMPインドメタシン非投与群のプラットホームへの到達時間 (潜時) はSAMR群と比較して延長していた(図27)。この結果は、老化促進マウスは空間学習が障害されていることを示す。また、SAMPインドメタシン投与群(+インドメタシン)の潜時はSAMPインドメタシン非投与群と比較して有意に短縮した(図27)。この結果は、インドメタシンがSAMPの空間学習障害を改善することを意味する。
SAMPインドメタシン非投与群の停滞時間はSAMR群と比較して短縮していた(図28)。この結果は、老化促進マウスは、空間記憶が障害されていることを示す。また、SAMPインドメタシン投与群の停滞時間は、非投与群と比較して延長していたが有意な差はなかった(図28)。
ボランティアの健常成人100人 (20-45歳) を対象とし、コントロール群50人 (男性24人、女性26人)、インドメタシン (商品名: インダシン) 服用群50人 (男性30人、女性20人) に分け、試験を行った。試験は無作為に選んだ5桁の数字を3種類1秒毎に提示し、その5分後と3日後にどれだけ記憶しているかを検討した。1回目の試験終了翌日から、コントロール群はインダシンに類似したカプセルに入った消化剤を、インドメタシン服用群はインダシンカプセル (インドメタシン25 mg含有) をそれぞれ1日3回 (食後) に6日間服用した。消化剤カプセル、インダシンカプセル服用3日後に、1回目と同じ試験 (数字は異なる) を行った。正解した数字の数をスコアとした (満点は15)。
その結果、インドメタシン服用群は、コントロール群と比較し、5分後、3日後に記憶している数字の数が有意に増加していた(図29)。この結果は、インドメタシンに学習・記憶機能亢進作用があることを示す。
インドメタシン(ナカライ社製)(1.0等量)とメチルアミン塩酸塩(1.2等量)にDMF(インドメタシンの10V/W)を加えた後、WSCD(1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド:peptide institute, INC.社製)(1.2等量)を加え室温で攪拌した。反応物に容量の2倍量の滅菌水と酢酸エチルを加え攪拌後、3000rpmで2分間遠心分離した。上清の酢酸エチル層を新しいチューブに移し、そこに等量の飽和重曹水を加え攪拌し、3000rpmで2分間で遠心分離した。再度上清の酢酸エチル層に等量の10%塩酸を加え、攪拌、3000rpmで2分間遠心分離後、上清を等量の滅菌水で二回洗浄し、最後に適量の硫酸マグネシウムを加え、攪拌後、得られた上清を乾燥機で乾燥させた。
インドメタシンアミド誘導体である2-[1-(4-クロロ-ベンゾイル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インドール-3-イル]-N-メチル-アセトアミドが合成できているかどうかはクロロホルムーメタノール (9.8:0.2) に溶解し薄層クロマトグラフィー(Rf値:0.525)で確認した。また、合成されたインドメタシンアミド誘導体の粉末を適当量の0.1%トリフルオロサクサン50%アセトニトリル飽和α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸溶液に溶かし、質量分析用プレートに散布後、MALDI飛行時間型質量分析計(Voyager アプライド・バイオシステムズ)により解析し質量分析を行った(TOF MSによる実測値:370.685474)。
ウィスターラット(6 週齢)の海馬切片を作製し、95% O2、5% CO2で飽和したテトロドトキシン(0.5μM)添加人工脳脊髄液(117 mM NaCl, 3.6 mM KCl, 2.5 mM CaCl2, 1.2 mM MgCl2, 1.2 mM NaH2PO4, 25 mM NaHCO3, 11.5 mMグルコース)に浸した。海馬切片に高濃度K+(20 mM)脱分極刺激を与え、KN-93 (3μM)非存在下ならびに存在下でインドメタシン (100μM) あるいはインドメタシンアミド誘導体(100μM)を34℃で20分間処理した。その後、上清をNBD-Fで蛍光標識し、高速液体クロマトグラフィーによりグルタミン酸を定量した。海馬スライスのタンパク量はBCA法で測定し、放出されたグルタミン酸量を補正した。インドメタシンアミド誘導体である2-[1-(4-クロロ-ベンゾイル)-5-メトキシ-2-メチル-1H-インドール-3-イル]-N-メチル-アセトアミドは、実施例22で合成したものを用いた。
その結果、インドメタシンアミド誘導体はインドメタシンよりも有意にグルタミン酸放出を増加させていた(図30)。このことは、インドメタシンアミド誘導体が認知機能亢進作用・認知機能障害改善作用についてインドメタシンよりも優れていることを示唆する。また、インドメタシンおよびインドメタシンアミド誘導体によるグルタミン酸放出増加は選択的CaMKII抑制剤KN-93で抑制された。このことは、インドメタシンと同様にインドメタシンアミド誘導体によるグルタミン酸放出もCaMKII経路に依存していることを示す。
本発明者は、NSFが脳機能の改善における作用標的であり得ることを見出した。
例えば、インドメタシンはNSFに結合し、シナプス前終末からのグルタミン酸放出をCaMKII依存性に刺激し、海馬シナプス伝達を促進し得る、即ち、認知機能を亢進する、又は認知機能障害を改善する作用を有し得る。
DCP-LAはNSFに結合し、直接的PKC-ε活性化を通してα7ニコチン性アセチルコリン受容体の細胞膜への輸送を刺激し、シナプス前終末α7ニコチン性アセチルコリン受容体反応を増大し得る。その結果、DCP-LAはシナプス前終末からのグルタミン酸放出を刺激し、海馬シナプス伝達を促進し得る、即ち、認知機能を亢進する、又は認知機能障害を改善する作用を有し得る。
Claims (2)
- 2−[1−(4−クロロ−ベンゾイル)−5−メトキシ−2−メチル−1H−インドール−3−イル]−N−メチル−アセトアミド又はその塩を含む、脳機能の改善剤であって、脳機能の改善が、NSFの機能を促進して海馬からのグルタミン酸放出を促進することによるものである、剤。
- 認知症あるいは学習又は記憶障害の予防又は治療剤、若しくは学習又は記憶の向上剤である、請求項1記載の剤。
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