JP2002302459A - イヌリン製剤の製造方法及びイヌリン含有製剤 - Google Patents
イヌリン製剤の製造方法及びイヌリン含有製剤Info
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Abstract
じて等張化の薬剤を加えた後、60〜110℃まで10
分以上をかけて徐々に昇温して溶解するイヌリン含有製
剤の製造方法。 【効果】 再溶解性に優れ、安定で、取り扱い易いイヌ
リン製剤を得ることができ、これを用いれば、正確、簡
便かつ迅速にイヌリンクリアランスを求めることができ
る。
Description
定に用いる診断薬として有用なイヌリン含有製剤の製造
方法に関する。また、該製剤を用いた、正確性、簡便性
及び迅速性に優れたイヌリンクリアランスを求める方法
に関する。
増加に警告が発せられて久しい。腎疾患は全身的でかつ
多岐に亙った重篤な疾患を誘発する原因的な疾患に発展
し易いことから、腎臓に疾患を有する患者は定期的な病
状の進行確認が必須であり、そのための方法として、腎
血漿流量の測定、PSP排泄試験、インジゴカルミン試
験等の試験や、糸球体濾過量の測定が行われている。機
能検査に重要で、実態を把握できる試験である糸球体濾
過量の測定に用いられる物質としては、糸球体で自由に
濾過されるが、尿細管では分泌も再吸収もされず、更に
代謝されない、腎臓に蓄積されない、有毒でない、糸球
体濾過に影響しない、血液中および尿中の濃度が容易に
測定できる等の要件が必要とされるため、多くの物質が
適用され得るものではなく、従来使用又は検討されてき
た物質としても、イヌリンの他、チオ硫酸ナトリウム、
クレアチニン、イオヘキソース、イオタラム酸、EDT
A、DTPAがあるにすぎない。これらのうち、イオタ
ラム酸以下はラジオアイソトープラベルの物質であり、
諸外国では用いられているが、我国では放射性物質の使
用に制限が多いため使用されていない。イオヘキソース
はHPLCでの測定が試みられているが、評価は決定し
ていない。クレアチニンは我国で使用されているが、尿
細管での分泌、クリアランス値が安定でない等の問題が
ある。
物質であるが、我国においては医薬品としての使用は認
められておらず、低カロリー食品の補助材料として使用
されているに過ぎない。イヌリンを始めとする糖類の脱
色・精製方法としては、主に蔗糖の精製技術として開発
されたマグネシウム系吸着剤(特公昭60-34882号)、リ
ン酸及び石灰等(特公昭61-49960号)、クリストバル石
(特公平2-61320号)、ダイナミック膜(特公平5-10078
号)、粉末陰イオン交換樹脂等(特公平7-96082号)、
モノビニル芳香族モノマー等(特開平2-503634号)、天
然粘土鉱物のコロイド溶液(特開平4-248999号)、両性
イオン交換樹脂等(特公昭54-25513号)、キチン粉末
(特公昭56-13499号)、タンニン酸とキトサン(特公昭
58-20275号)、ヨウ素等(特公昭59-26280号)、各種の
活性炭(特開昭52-36887号、同60-211000号、特開平5-9
1900号、同212208号、特公昭54-25513号)などを用いる
方法が知られており、また、イヌリンに含まれる発熱物
質であるエンドトキシンの除去方法としては、カブトガ
ニ血球由来ペプチド(特開平6-116298号)、非イオン系
界面活性剤(特開平8-252301号)、低分子キトサン(特
公平6-41479号)、陽イオン交換体等(特許第2908455
号)、ヒアルロン酸等(特開昭54-67024号)、四級アン
モニウム塩(特開平5-345116号)などを用いる方法が知
られている。しかし、我国では、イヌリンは医薬品とし
て認められていないため、実際に医薬品としての純度ま
で追求したものは皆無であった。
は、アメリカにおいてはUSPXX Supplement 2に、イギリ
スにおいてはBP 1968 Addendum 1969に収載され、製造
及び使用が公的に承認されている。しかして、イヌリン
は常温で1gを完全に溶解させるのに水10000mL以上を
要し、等張液である生理的食塩水への溶解性は更に極め
て低い。また、イヌリン製剤にはその性格上、溶解補助
剤等の添加剤が一切使用できないことから、固体が存在
する製剤として製造し、これを用時に加温の上、短時間
で強く振って溶解させて適用する必要があり、取り扱い
が難しく煩雑である。このため、イヌリン製剤は、有用
であることが認識されているに拘わらず、我国でも現在
まで開発する企業がなく、医薬品として登録されている
国でも殆ど使用されていないのが現状である。
(イヌリンクリアランス)を測定する際には、イヌリン
を被験者の静脈に投与し、その前後で経時的に単回又は
複数回採取した被験者の血漿及び/又は尿について、イ
ヌリン濃度を測定する。イヌリン濃度は、通常、キャリ
ブレータを使用してキャリブレーションを行って測定さ
れる。また、測定上の誤差を調整するため、精度管理用
試料を用い、数検体ごとに精度管理を行う。
してイヌリンを強酸で加熱して加水分解し、産生するフ
ルフラールをアンスロン等と反応させて発色させる方法
が多用されてきた。しかし、強酸での加熱操作が煩雑で
危険性が高く、また自動分析機等への適用が困難で、迅
速性、安全性に欠けるという問題があった。また、反応
が非特異的で、グルコース等の他の糖類の影響を受ける
ため、正確性に欠けるという問題もあり、クリアランス
に好適な物質としてのイヌリンの長所を損なうことにな
る。
定する方法として、種々の酵素法が開発されてきた。こ
れらは、イヌリンを一般にイヌリナーゼとよばれる酵素
を用いて単糖に分解し、生じたフルクトースを種々の方
法で測定するものである。
トースをヘキソキナーゼ・ホスホグルコイソメラーゼ・
グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼと共役反応さ
せ、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン
酸(NADPH)の上昇を測定する方法が;臨床化学、
第10巻第64〜69頁(1981)には、フルクトー
スをソルビトールデヒドロゲナーゼと共役反応させ、還
元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD
H)の減少をレート法で測定する方法が;臨床化学、第
23巻第164〜169頁(1994)には、フルクト
ースをフルクトキナーゼ・ホスホグルコイソメラーゼ・
グルコース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いる方法
と共役反応させてNADPHの上昇を測定する方法が;
特公昭59-35592号には、フルクトースを酸素の存在下で
フルクトースデヒドロゲナーゼを用いて電子受容体と反
応させ、生成する5−ケト−D−フルクトース又は還元
型電子受容体の増加、又は酸化型電子受容体若しくは酸
素の減少を測定する方法が、それぞれ開示されている。
影響を受けずに測定することができ、また、反応時間を
20分以上に設定可能な特定の自動分析機への適用が可
能となり(臨床化学、第23巻第164〜169頁(1
994))、正確性、簡便性の向上が確認されている。
しかしながら、これらの方法においても、反応時間は予
備加温時間を含めて26分を要する。これは、主に、イ
ヌリナーゼの酵素活性が、イヌリンを短時間で完全に単
糖に分解するには不十分であるためと考えられる。
含まれるグルコースをターミナル(末端)として、フラ
クトースがn=2〜60で直鎖に結合した多糖類であ
る。また、イヌリンは熱又は溶解液のpH等の影響によ
り加水分解されやすい物質である(生化学実験講座4、
糖質の化学(上)第109〜111頁(東京化学同
人))。このため、製法の違いにより、イヌリンの平均
分子量、分子量分布、純度等は異なるものとなる。
ーゼは、末端から1単糖ずつ分解していくエキソ型と糖
鎖の真中を切断するエンド型の2タイプに大別される
が、これらの分解反応速度は、イヌリンを短時間で完全
に単糖に分解するには、いずれも不十分である。前記の
測定法では、イヌリナーゼの反応時間を長くしてこれら
の問題を回避することができるが、近年主流の汎用自動
分析機では、反応時間を最長でも20分以上に延ばすこ
とはできない。
る分解反応が遅いため、汎用の自動分析機に適用される
反応時間内に生成するフルクトースの量が少なくかつ変
動するので、これを感度良く正確に測定することはでき
ない。また、従来のイヌリンの分解反応は、イヌリナー
ゼのエキソ型及びエンド型の比率に影響されるため、比
率の異なるイヌリナーゼを用いる場合には、一定時間内
に生成するフルクトースの量が異なるという問題もあっ
た。フルクトース測定用の試薬等への不純物や、測定対
象である血液や尿に由来する種々の化学物質が、イヌリ
ナーゼのエキソ型、エンド型の活性比率に影響を与える
場合には、反応性差が拡大する要因になりうる。さら
に、イヌリナーゼのエキソ型、エンド型比率にロット間
差があると、反応性差がより大きくなると考えられる。
以上のように、酵素法によっても、従来のイヌリン製剤
をそのまま用いると、汎用自動分析機への適用を考えた
場合、迅速性と正確性を両立させることは困難であっ
た。
は、再溶解性に優れ、安定で、取り扱い易いイヌリン製
剤の製造方法を提供することにある。また、本発明の目
的は、正確性、簡便性及び迅速性に優れたイヌリンクリ
アランスを求める方法を提供することにある。
発明者らは鋭意研究を行なった結果、イヌリンに水を加
え、特定の温度まで徐々に昇温して溶解するか;イヌリ
ンに熱水を加えて溶解した後に、特定の温度まで冷却す
るか;又はイヌリンに熱水を加えて溶解した後に、凍結
乾燥することにより、再溶解性に優れ、安定で、取り扱
い易いイヌリン含有製剤が得られることを見出した。ま
た、当該イヌリン含有製剤を用いて酵素法によりイヌリ
ンを測定すれば、正確、簡便かつ迅速にイヌリンクリア
ランスを求めることができることを見出し、本発明を完
成した。
水を加え、必要に応じて等張化の薬剤を加えた後、60
〜110℃まで10分以上をかけて徐々に昇温して溶解
することを特徴とするイヌリン含有製剤の製造方法を提
供するものである。また、本発明は、イヌリン又はこれ
に必要に応じて等張化の薬剤を加えた混合物に60〜1
00℃の熱水を加えて溶解した後、5〜−40℃まで冷
却することを特徴とするイヌリン含有製剤の製造方法を
提供するものである。また、本発明は、イヌリンに60
〜100℃の熱水を加えて溶解した後、該溶液を20〜
70℃に冷却して容器に充填し、凍結乾燥することを特
徴とするイヌリン含有製剤の製造方法を提供するもので
ある。また、本発明は、食品用イヌリンを温湯に溶解
し、熱時に活性炭及びメンブランフィルターで処理して
冷却した後、濾液にアセトンを加えて攪拌し、生じた沈
澱を濾取することを特徴とする平均分子量約4000の
イヌリンの製造方法を提供するものである。また、本発
明は、イヌリンを静脈内投与した後、採取した尿中及び
/又は血液中のイヌリンを、イヌリン分解酵素を用いて
測定することによるイヌリンクリアランスを求める方法
において、当該尿及び/又は血液が、前記の方法により
得られたイヌリン含有製剤を用いて調製した注射剤を静
脈内投与した患者に由来するものであることを特徴とす
るイヌリンクリアランスを求める方法を提供するもので
ある。
は、現在イヌリンを医薬品として認めている国がごく少
数であり、医薬品原料としてのイヌリンが入手困難であ
るため、食品用として市販されているイヌリン又はこれ
を精製して用いることができる。食品用イヌリンは、通
常、平均分子量3000〜7000であり、このいずれ
をも使用することができる。イヌリンとしては、再溶解
性の点から、特に平均分子量約4000のものが好まし
い。また、イヌリンとしては、発熱物質を含有しないも
のが好ましいが、発熱物質を含有するイヌリンを用いた
場合には、イヌリンを加温して溶解した溶液を熱時パイ
ロジェンフリーの活性炭で処理して発熱物質を除去して
使用することもできる。
温湯に溶解し、熱時に活性炭及びメンブランフィルター
で処理して冷却した後、濾液から採取することができ
る。ここで、温湯の温度はイヌリンを効率よく溶解でき
ればよいが、60〜90℃の範囲が好ましい。また、用
いる温湯の量は、温度、攪拌の強さ等の条件により異な
るが、イヌリンの約3〜10重量倍、特に3〜5重量倍
が好ましい。また、活性炭としては、パイロジェンフリ
ーの活性炭が好ましく、日本薬局方第2部収載の薬用炭
を使用できる。活性炭の種類は特に限定されないが、発
熱物質のほか、着色性物質除去の能力を有する注射用グ
レードの活性炭を、イヌリンに対して1〜20重量%用
いるのが好ましい。次いで、メンブランフィルターで濾
過滅菌して得られる濾液から、通常、平均分子量約50
00のイヌリンが得られる。本発明においては、この濾
液にアセトンを加えて攪拌し、生じた沈澱を濾取して得
られる平均分子量約4000のイヌリンを用いるのが好
ましい。アセトンは、濾液に対して5〜20重量倍、好
ましくは5〜10重量倍添加するのが好ましい。なお、
平均分子量はGPCクロマトグラフィーを用いて既知標
準品プルランとの比較から求めた値である。
いが、医薬品注射製剤に用いるものについては、注射用
水又は蒸留水の使用が必要である。
に室温下で水を加え、60〜110℃まで10分以上を
かけて徐々に昇温して溶解して、イヌリン含有製剤を製
造する。ここで用いられる水の量は、イヌリンに対して
5〜200重量倍であるのが好ましい。このとき、必要
に応じて等張化の薬剤を加えることもできる。等張化の
薬剤としては、糖類以外の無機塩類及び有機酸類等が挙
げられ、特に塩化ナトリウムが好ましい。塩化ナトリウ
ムを用いる場合、その濃度は0〜5重量%であるのが好
ましく、特に、製剤を直接人体に適用する場合には、体
液の浸透圧比に近い0.9重量%が好ましい。また、室
温とは、1〜30℃の温度をいう。次に、これを60〜
110℃まで、好ましくは70〜80℃まで10分以
上、好ましくは20分以上をかけて徐々に昇温する。昇
温速度は、前記の範囲になれば特に制限されないが、1
〜4℃/分、特に1〜3℃/分であるのが好ましい。本
発明においては、このように徐々に昇温してイヌリンを
溶解することが必要であり、それにより、再溶解性に優
れたイヌリン含有製剤を得ることができる。
は、20〜70℃、特に20〜60℃に冷却するのが好
ましい。また、冷却した溶液は、必要に応じて濃度及び
pHの調整、滅菌処理を行なった後、容器に充填し、更
に5〜−40℃まで、特に−5〜−40℃に冷却するの
が好ましい。滅菌処理は、通常の方法により行なうこと
ができ、例えばメンブランフィルターにより濾過すれば
よい。滅菌後、溶液を1時間以上放置してイヌリンを析
出させて懸濁液とした後、容器に充填することもでき
る。容器としては、バイアル、アンプル等が挙げられ、
充填後、常法により打栓又は熔閉すればよい。冷却速度
は、−0.5〜−4℃/分、特に−0.5〜−2℃/分
で、目的温度まで0.5〜1時間であるのが好ましい。
冷却後の温度で、10時間程度、特に1〜2時間程度保
持するのが好ましい。
リン又はイヌリンに必要に応じて等張化の薬剤を加えた
混合物に60〜100℃の熱水を加えて攪拌溶解する。
熱水は、イヌリンに対して5〜200重量倍であるのが
好ましい。等張化の薬剤としては、前記と同様のものを
同様にして用いることができる。溶解後の溶液は、5〜
−40℃、好ましくは−5〜−40℃に冷却する。冷却
速度は、−0.5〜−4℃/分、特に−0.5〜−2℃
/分で、目的温度まで0.5〜1時間であるのが好まし
い。冷却後の温度で、10時間程度、特に1〜2時間程
度保持するのが好ましい。また、イヌリンに熱水を加え
て溶解した後に、該溶液を20〜70℃に冷却し、必要
に応じて濃度及びpHの調整、滅菌処理を行ない、容器
に充填した後、5〜−40℃に冷却することもできる。
滅菌処理、容器への充填は、前記と同様に行なうことが
できる。
リンに60〜100℃の熱水を加えて攪拌溶解する。熱
水は、イヌリンに対して5〜200重量倍であるのが好
ましい。また、イヌリンとともに、必要に応じて等張化
の薬剤を溶解することもできる。等張化の薬剤として
は、前記と同様のものを同様にして用いることができ
る。イヌリンを溶解した溶液は、20〜70℃に冷却
し、必要に応じて濃度及びpHの調整、滅菌処理を行な
い、容器に充填した後、凍結乾燥する。滅菌処理、容器
への充填は、前記と同様に行なうことができる。凍結乾
燥は、常法により行なえばよく、例えばイヌリンを溶解
した溶液を充填した容器を、−10℃以下に冷却して溶
液を凍結させた後、0.2mbar以下の減圧条件下で徐々
に加温し、内容水分を昇華させて乾燥することにより、
凍結乾燥製剤を得ることができる。
含有製剤は、腎機能を把握するための、糸球体濾過量の
測定(イヌリンクリアランス)に用いる診断薬として有
用である。
は、前記の方法で調製したイヌリン含有製剤を用いて調
製した注射剤を、静脈内投与した後、投与前後で採取し
た尿及び/又は血液中のイヌリン量を、イヌリン分解酵
素を用いて測定することにより求める。静脈投与の際、
前記イヌリン含有製剤は注射剤として用いることがで
き、当該イヌリン含有製剤中のイヌリンが結晶化してい
る場合には、必要に応じて、加温溶解し放冷の後、生理
食塩水で希釈して、静脈内に投与することができる。
の測定には、まず、イヌリン分解酵素を用いてイヌリン
を単糖に分解する。イヌリン分解酵素としては、イヌリ
ンを単糖に分解する能力を有するものであれば特に制限
されないが、例えばエキソイヌリナーゼ(EC3.2.
1.80)、エンドイヌリナーゼ(EC3.2.1.
7)等が挙げられる。これらのイヌリナーゼは、例えば
アスペルギルス(Aspergillus)属、キリベロマイセス
(Klyberomyces)属等の微生物などにより得ることがで
き、また、これらの遺伝子組換え微生物より製造された
ものや、遺伝子的に性質を改変されたものを用いること
もできる。これらのイヌリナーゼは、単独又は2種以上
を組み合わせて用いることができ、例えばエキソイヌリ
ナーゼとエンドイヌリナーゼを組み合わせて用いると、
イヌリンの分解速度を高めることができる。イヌリナー
ゼを用いてイヌリンを分解する反応は、水溶液、緩衝液
中で行われ、該緩衝液はpH3〜8.5、特にpH4〜
7に調製されるのが好ましい。また、反応温度は10〜
70℃、特に25〜40℃が好ましく、汎用自動分析機
では37℃で行われる。イヌリナーゼの濃度は、試料中
のイヌリン濃度やイヌリナーゼの起源等によって異なる
が、通常1〜100U/mLの範囲であるのが好ましい。
反応溶液中には、イヌリナーゼの反応に特に悪い影響を
及ぼさない範囲で、測定試薬に用いる追随酵素、色原
体、界面活性剤、防腐剤等を添加することもできる。
測定する。かかる単糖測定方法としては特に制限されな
いが、例えば特開昭62-205799号、臨床化学 第10巻第6
4〜69頁(1981)、臨床化学 第23巻第164〜169頁(199
4)、特公昭59-35592号等に記載の方法により、行うこ
とができる。具体的には、以下の(1)〜(4)の方法
が挙げられる。
を、ヘキソキナーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、グル
コース−6−リン酸デヒドロゲナーゼを用いてグルコネ
ート−6−ホスフェートとする反応と、酸化型ニコチン
アミドアデニンジヌクレオチドリン酸の還元反応との共
役反応により生じた還元型ニコチンアミドアデニンジヌ
クレオチドリン酸を測定する方法。 (2)イヌリン分解により生成した単糖を、ソルビトー
ルデヒドロゲナーゼを用いてソルビトールとする反応
と、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドの酸
化反応との共役反応により減少する還元型ニコチンアミ
ドアデニンジヌクレオチドを測定する方法。 (3)イヌリン分解により生成した単糖を、フルクトキ
ナーゼ、ホスホグルコイソメラーゼ、グルコース−6−
リン酸デヒドロゲナーゼを用いてグルコネート−6−ホ
スフェートとする反応と、酸化型ニコチンアミドアデニ
ンジヌクレオチドリン酸の還元反応との共役反応により
生じた還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリ
ン酸を測定する方法。 (4)イヌリン分解により生成した単糖を、酸素の存在
下、フルクトースデヒドロゲナーゼを用いて電子受容体
を作用させ、生成する5−ケト−D−フルクトース又は
還元型電子受容体の増加、又は酸化型電子受容体若しく
は酸素の減少を測定する方法。
メトキシ−5−メチルフェナジニウムメチルスルフェー
ト(1−メトキシ−PMS)が電子受容体であった場
合、これを介して酸素との反応により生成する過酸化水
素の増加をエンドポイント法及び/又はレート法で測定
することができる。過酸化水素の増加は、4−アミノア
ンチピリンとアニリン系トリンダー試薬がペルオキシダ
ーゼで触媒され、カップリングして生成するキノン色素
の増加等で測定することができる。アニリン系トリンダ
ー試薬としては特に制限されないが、N−エチル−N−
(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチル
アニリン(TOOS)が、酸化縮合したときのモル吸光
係数感度が高く、呈色が安定しているなどの点から好ま
しい。また、テトラゾリウム塩が電子受容体であった場
合、反応により生成するホルマザン色素の増加を、エン
ドポイント法及び/又はレート法で測定することができ
る。
を共存せしめることもできる。かかる添加剤としては、
特に制限されないが、例えばN−トリス(ヒドロキシメ
チル)メチル−2−アミノエタンスルホニックアシッド
(TES)等のグッド緩衝液、酢酸−酢酸ナトリウム緩
衝液等の各種緩衝液;ポリオキシエチレンオクチルフェ
ニルエーテル等の界面活性剤;塩化ナトリウム等の塩
類;アルブミン、ポリエチレングリコール等の高分子化
合物;アミノ酸類、糖類、シクロデキストリン類等の安
定化剤;抗生物質、アジ化ナトリウム等の防腐剤;ED
TA又はその塩等のキレート剤などが挙げられる。
リン測定の際のキャリブレーションに用いるキャリブレ
ータ、精度管理に用いる精度管理用試料として好適に使
用することができる。キャリブレータ及び精度管理用試
料は、イヌリンの分子量分布等の差異による測定誤差を
回避する等の観点から、注射剤と同様の方法で製造した
イヌリン含有製剤を使用するのが好ましい。
発明のイヌリン含有製剤を、精製水に、必要に応じて緩
衝液、界面活性剤等の溶解補助剤を溶解して水性溶液と
して用いることもできるし、血清溶液、尿溶液、又はB
SA、ポリエチレングリコール、各種塩類等を用いて作
製された血清様物質若しくは尿様物質として用いること
もできる。キャリブレータ及び精度管理用試料のイヌリ
ン濃度は特に制限されないが、測定試薬の定量性を考慮
して設定され、1〜1000mg/dLの範囲であるのが好
ましい。このようにして調製されたキャリブレータ及び
精度管理用試料は、通常、水溶液としては、精製水溶解
で低温〜室温保存の広い範囲で長期間流通使用に耐え得
る。また、血清溶液、尿溶液、血清様物質、尿様物質と
しては、液状凍結品又は凍結乾燥品として長期間流通す
ることができ、用時に融解、溶解し、その後数週間は使
用することができる。
料を用いたキャリブレーション及び精度管理は、通常の
方法により行うことができる。キャリブレーションは、
例えば被検体の測定前、同時又は測定後に、本発明のキ
ャリブレータ及び精製水を測定し、次の計算式を用いて
行うことができる。
前、同時又は測定後に、本発明の精度管理用試料を被検
体と同様に測定し、その測定値を管理図を用いて評価す
るか、表示値又は実績値を対照にあらかじめ定められた
許容範囲で管理することができる。
本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
製)100gに80℃の温湯500mLを加えて10分間
攪拌し、溶解を確認後、熱時にパイロジェンフリーの活
性炭(白鷺P、武田薬品工業社製)10gを投入し、更
に液温を保持して10分間攪拌を継続した。この溶液を
熱時に0.2〜0.5μmのメンブランフィルター(米
国ミリポア社製)により濾過滅菌した後、40℃に冷却
し、濾液に10重量倍のアセトンを加えて攪拌した。生
じた沈殿を濾取し、風乾後40℃で減圧乾燥して、90
gの精製イヌリンを得た。得られた精製イヌリンは平均
分子量約4000、白色の結晶性粉末で無味無臭、パイ
ロジェン試験に陰性であった。
て、沈殿物85gを得た。得られた精製イヌリンはパイ
ロジェンフリーであったが、平均分子量は約5000で
あった。
製)100gに80℃の温湯500mLを加えて10分間
攪拌し、溶解を確認後、熱時にパイロジェンフリーの活
性炭10gを投入して、更に液温を保持して10分間攪
拌を継続した。この溶液を熱時に0.2〜0.5μmの
メンブランフィルターにより濾過後、熱時、スプレード
ライヤーにより乾燥した。 得られた精製イヌリンはパ
イロジェンフリーであったが、平均分子量は約5000
であった。
射用水70mL及び塩化ナトリウム0.9gを加え、30
分で80℃まで徐々に加温して溶液とした。溶解を確認
後、溶液を60℃に冷却し、0.01mol/Lの水酸化ナ
トリウム水溶液でpH6.5に調整した後、注射用水を
加えて100mLとした。これを、0.8及び0.22μ
mのメンブランフィルターで濾過滅菌した後、その20
mLをバイアルに充填し、打栓してイヌリン2gを含有す
る製剤を得た。
熱した注射用水90mLを加えて溶解し、これに塩化ナト
リウム0.9gを加えて更に撹拌溶解した。溶液を60
℃に冷却し、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液
でpH6.5に調整した後、注射用水を加えて100mL
とした。これを、0.22μmのメンブランフィルター
で濾過滅菌した後、その20mLをバイアルに充填し、ゴ
ム打栓、アルミ締めによりバイアルを密封した。このバ
イアルを直ちに冷却機により−10℃/10分の速度で
−10℃まで冷却し、その温度に1時間保持後、10℃
/10分の速度で20℃まで加温して、イヌリン2gを
含有する製剤を得た。
射用水90mL及び塩化ナトリウム0.9gを加え、30
分で70℃まで徐々に加温して溶液とした。溶解を確認
後、溶液を50℃に冷却し、0.01mol/Lの水酸化ナ
トリウム水溶液でpH6.5に調整した後、注射用水を
加えて100mLとした。これを、0.22μmのメンブ
ランフィルターで濾過滅菌した後、その20mLをバイア
ルに充填し、ゴム打栓、アルミ締めによりバイアルを密
封した。このバイアルを直ちに冷凍機を用いて−10℃
/10分の速度で−20℃まで冷却し、その温度に2時
間保持後、10℃/10分の速度で室温まで加温して、
イヌリン2gを含有する製剤を得た。
射用水90mLを加えて溶解し、この溶液を40℃に冷却
後、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH
6.5に調整し、注射用水を加えて100mLとした。こ
れを、0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌
した後、その20mLをバイアルに充填し、常法により凍
結乾燥し、ゴム打栓、アルミ締めを行い、イヌリン2g
を含有する凍結乾燥製剤を得た。
製)10gに、室温下、注射用水90mL及び塩化ナトリ
ウム0.9gを加え、30分で70℃まで徐々に加温し
て溶液とした。溶解を確認後、溶液を60℃に冷却し、
0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5
に調整した後、注射用水を加えて100mLとした。これ
を、0.22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌し
た後、その10mLをバイアルに充填し、打栓して、イヌ
リン1gを含有する製剤を得た。得られた製剤はパイロ
ジェン試験で陽性であったが、加温して溶解した溶液に
熱時パイロジェンフリーの活性炭2gで処理することに
より、実施例1と同様の製剤を得た。
射用水90mLを加え、30分で80℃まで徐々に加温し
て溶液とした。溶解を確認後、溶液を40℃に冷却し、
0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5
に調整した後、注射用水を加えて100mLとした。0.
22μmのメンブランフィルターで濾過滅菌した後、6
時間室温放置して懸濁液とし、その10mLを各バイアル
に充填し、打栓して、イヌリン1gを含有する懸濁液の
製剤を得た。
注射用水890mL及び塩化ナトリウム9gを加え、25
分で70℃まで徐々に加温して溶液とした。溶解を確認
後、溶液を50℃に冷却し、0.01mol/Lの水酸化ナ
トリウム水溶液でpH6.5に調整した後、注射用水を
加えて1000mLとした。0.8μm及び0.22μm
のメンブランフィルターで濾過滅菌した後、5時間冷却
放置してイヌリンを析出させ、均一懸濁液とした。その
10mLをバイアルに充填し、打栓して、イヌリン1gを
含有する懸濁液製剤を得た。
射用水90mLを加えて溶解し、これに塩化ナトリウム
2gを加えて更に攪拌溶解した。溶液を60℃に冷却
し、0.01mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液でpH
6.5に調整した後、注射用水を加えて100mLとし
た。これを、0.22μmのメンブランフィルターで濾
過滅菌した後、その10mLをバイアルに充填し、ゴム打
栓、アルミ締めによりバイアルを密封した。このバイア
ルを直ちに冷却機により−10℃/10分の速度で−1
0℃まで冷却し、その温度に2時間保持後、10℃/1
0分の速度で室温まで戻して、イヌリン1gを含有する
製剤を得た。
射用水90mL及び塩化ナトリウム0.9gを加え、30
分かけて70℃まで徐々に加温して溶液とした。溶解を
確認後、溶液を40℃に冷却し、0.01mol/Lの水酸
化ナトリウム水溶液でpH6.5に調整した後、注射用
水を加えて100mLとした。これを、0.8μmのメン
ブランフィルターで濾過滅菌した後、その20mLをアン
プルに注入し、熔閉して、イヌリンを2gを含有するア
ンプル製剤を得た。
80℃及び沸騰水浴中での再溶解性を評価した。結果を
表1に示す。イヌリン2gを含有する0.9%生理食塩
水溶液20mLの製剤を各被験体とした。実施例4の製剤
については、バイアルに20mLとなるように注射用水を
注入して、試験に供した。対照製剤として用いた従来の
イヌリン製剤は、USP適合である米国クエストコア社
のイヌリン製剤を用いた。再溶解性は、温度制御可能な
薬液溶解バス(坂口電熱社製)又は実験用ウォーターバ
スにより、再溶解時間を測定した。
及びC(3ロット)を製造した。このイヌリン含有製剤
をそれぞれ精製水で30mg/dLとなるように調製し、下
記の試薬及び測定法によりイヌリン濃度を測定し、測定
感度の相対%を求めた。比較として、市販のイヌリンを
用いて同様に測定した。結果を表2に示す。
U/mL 1−メトキシ−PMS 100mg/L R2(濃度はR2中) TES緩衝液(pH7.5) 0.05mol/L ペルオキシダーゼ(東洋紡績社製) 10U/mL 4−アミノアンチピリン 0.1g/L アニリン系トリンダー試薬(TOOS) 1g/L (2)組成2:組成1において、イヌリナーゼを120U
/mLに増量したもの。
L添加し、37℃にて5分間インキュベーションし、第
1反応とした。その後、R2を180μL添加して5分
間インキュベーションし、第2反応とした。第1反応及
び第2反応の吸光度を液量補正した各吸光度の差をとる
2ポイントエンド法で546nmにおける吸光度を測定し
た。測定には日立7170形自動分析機を用いた。
定感度の差はほとんど見られないが、比較品では、いず
れも測定感度が低く、また、イヌリナーゼの添加量で測
定感度が変動することがわかる。
定) 実施例10のイヌリン含有製剤を、それぞれ精製水で、
イヌリン20mg/dL水溶液とし、キャリブレータとし
た。次に、実施例10で用いた試薬組成1及び方法でイ
ヌリン濃度を測定し、測定感度を求めた。調製後、10
℃保存で13ヶ月後まで安定性を確認した。結果を表3
に示す。
も、安定性に優れていた。
定) 実施例1のイヌリン含有製剤を、プール血清、プール尿
に溶解し、血清で4、20、40mg/dL、尿で16、8
0、320mg/dLの精度管理用試料を作製した。これら
について、実施例10で用いた試薬組成1及び方法でイ
ヌリン濃度を測定し、試料として精製水、キャリブレー
タ、精度管理用試料を同時に測定した。各精度管理用試
料のイヌリン濃度は、精製水、キャリブレータの感度換
算により求めた。調製後、4℃及び−20℃で保存した
ときの安定性を、4℃保存で7日間、−20℃保存で1
3ヶ月まで確認した。−20℃保存については、凍結融
解を3回まで繰り返した後の安定性も確認した。結果を
表4〜6に示す。
有製剤は、血清又は尿に溶解した後も、4℃及び−20
℃において安定性が良好であることが確認された。ま
た、凍結融解に対しても安定性は良好であった。
で、取り扱い易いイヌリン製剤を得ることができ、腎機
能の把握に用いられる糸球体濾過量の測定に有用であ
る。すなわち、当該イヌリン製剤を用いれば、酵素反応
によりイヌリンを迅速かつ正確に測定することができ、
汎用自動分析機への適用も可能となり、正確、簡便かつ
迅速にイヌリンクリアランスを求めることができる。
Claims (11)
- 【請求項1】 イヌリンに室温下で水を加え、必要に応
じて等張化の薬剤を加えた後、60〜110℃まで10
分以上をかけて徐々に昇温して溶解することを特徴とす
るイヌリン含有製剤の製造方法。 - 【請求項2】 昇温してイヌリンを溶解後、該溶液を2
0〜70℃まで冷却する請求項1記載の製造方法。 - 【請求項3】 20〜70℃まで冷却した溶液を容器に
充填し、更に5〜−40℃まで冷却する請求項2記載の
製造方法。 - 【請求項4】 イヌリン又はこれに必要に応じて等張化
の薬剤を加えた混合物に60〜100℃の熱水を加えて
溶解した後、5〜−40℃まで冷却することを特徴とす
るイヌリン含有製剤の製造方法。 - 【請求項5】 熱水を加えて溶解後、該溶液を20〜7
0℃に冷却して容器に充填し、更に5〜−40℃まで冷
却する請求項4記載の製造方法。 - 【請求項6】 イヌリンに60〜100℃の熱水を加え
て溶解した後、該溶液を20〜70℃に冷却して容器に
充填し、凍結乾燥することを特徴とするイヌリン含有製
剤の製造方法。 - 【請求項7】 容器が、バイアル又はアンプルである請
求項3、5又は6記載の製造方法。 - 【請求項8】 イヌリンが、発熱物質を含有しないもの
である請求項1〜7のいずれか1項記載の製造方法。 - 【請求項9】 食品用イヌリンを温湯に溶解し、熱時に
活性炭及びメンブランフィルターで処理して冷却した
後、濾液にアセトンを加えて攪拌し、生じた沈澱を濾取
することを特徴とする平均分子量約4000のイヌリン
の製造方法。 - 【請求項10】 原料イヌリンが、請求項9記載の方法
により得られる平均分子量約4000のイヌリンである
請求項1〜8記載の製造方法。 - 【請求項11】 請求項1〜8及び10のいずれか1項
記載の方法により得られるイヌリン含有製剤。
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- 2002-01-31 JP JP2002023742A patent/JP3816403B2/ja not_active Expired - Lifetime
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