JP2002299909A - 共振器のアンテナ結合方式及び結合アンテナ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィルタ装置の電磁結合の結合量の可変範囲
が広く、調整が容易で製造コストを低減可能な初段結合
方式を提供する。 【解決手段】 半同軸型共振器１４でなるフィルタ装置
１０の初段共振棒１５にＵ字型又はＪ字型の結合アンテ
ナ１３を使用して入力高周波信号を電磁結合する。結合
アンテナ１３の直線部分の一方の端部に入力端子１１と
接続し、他方の直線部分を共振棒１５に隣接して平行に
設置する。入力端子と接続した端部側のＵ字の直線部分
の近傍に結合量を調整する調整ねじ１７を上部から螺入
して設置する。前記結合アンテナ１３をプリント基板上
の導体パターンにより構成することができる。調整ねじ
の挿入量により結合量の調整を行う。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明が属する技術分野】本発明は、半同軸型共振器等
から構成されたフィルタ装置の初段結合方式に関し、特
に、高精度、低コストで、大量生産に適し、調整容易な
結合構造を有する共振器のアンテナ結合方式及び結合ア
ンテナに関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、半同軸型共振器等から構成された
共振棒を備えた共振器からなるフィルタ装置へ高周波信
号を供給する高周波信号の初段結合方式として、共振棒
に対するタップ結合方式、結合棒方式、アンテナ結合方
式などが知られている。

【０００３】図７はタップ結合方式の構成を示す図であ
り、図７（ａ）は共振棒と直角方向の断面図、図７
（ｂ）は共振棒の長手方向の断面図である。フィルタ装
置７０は、共振棒７５を備える複数の隣接した共振器で
なり、隣接する共振器７４が開口７６により互いに結合
する構造を有し、図示しない上部隔壁を構成する共振器
の開閉可能な蓋（カバー）により密閉された半同軸型共
振器の多段構成でなる。

【０００４】フィルタ装置７０の長手方向の初段共振器
の端部の外壁に絶縁して配置され、高周波信号が供給さ
れる入力端子（コネクタ）７１と、該入力端子７１から
初段共振器７４の内部に、絶縁材料等により被覆された
導体棒又はリード線（以下、導体棒ともいう）が外壁に
貫通、挿入され、導体棒７２の先端又は該先端に接続さ
れた導体７３が共振棒７５と直接はんだづけなどにより
接続され、前記導体棒７２により共振棒７５に高周波信
号が給電される構成を有する。

【０００５】タップ結合方式における共振棒７５への高
周波信号の結合強度の調整方法としては、共振棒７５と
はんだづけする導体棒の先端等の接続位置の変更等によ
り調整する手法と、タップ形状（リード線７３の配線形
状）を変更する手法が利用される。

【０００６】図８は結合棒方式の構成を示す図であり、
図８（ａ）は共振棒と直角方向の断面図、図８（ｂ）は
共振棒の長手方向の断面図である。図７と同様のフィル
タ装置及び高周波信号の入力部の構成例を示しており、
入力端子８１から初段共振器８４の内部に導体棒８２が
挿入され、導体棒８２の先端は、初段の共振棒８５と平
行に配置され共振器の底部側の隔壁から立設した結合棒
８３の一部にはんだづけなどで接続し、高周波信号は前
記結合棒８３から共振棒８５に電磁結合し励振される構
成を有する。結合強度は、蓋に螺入され結合棒８３上に
設置した調整ねじ８６により調整可能としている。

【０００７】図９はアンテナ方式の構成を示す図であ
り、図９（ａ）は共振棒と直角方向の断面図、図９
（ｂ）は共振棒の長手方向の断面図である。前記フィル
タ装置及び入力部の構成例を示しており、入力端子９１
から初段共振器９４の内部に導体棒９２が挿入され、導
体棒９２の先端にアンテナ９３を配置し、アンテナ９３
から初段共振棒９５に高周波信号を電磁結合して励振す
る構成を有する。結合強度は、蓋に螺入されアンテナ９
３上に設置した調整ねじ９６により調整可能としてい
る。

【０００８】図１０は、前記アンテナ９３の構造を示す
図である。アンテナ形状には、入力端子９１から初段共
振器９４の内部に挿入された導体棒８２の先端に接続さ
れた導体でなる所定の形状構造を有し、金属材料の円筒
（円盤）状（図１０（ａ））、リボン（棒）状（図１０
（ｂ））及び板状（図１０（ｃ））の形状のものがあ
り、一般に製造精度の観点から同図に示すように比較的
簡単な形状が採用されている。

【０００９】

【発明が解決しようとする課題】従来のフィルタ装置の
初段結合方式において、図７に示すタップ結合方式で
は、大きな結合量を得やすいという利点を有する方法で
あるが、結合強度を調整するためには共振棒へはんだづ
け位置の変更とタップ形状を変更による手法しかないた
め、フィルタのカバーを開けたうえで、タップ形状を変
えたり、はんだ付けの位置変更をしなくてはならず、調
整工数がかかりコスト高の原因となるという問題があ
る。また入力端子（コネクタ）７１は、接地されている
共振棒に接続されているので、入力端子に直流電圧を印
加する場合には、別にＤＣカットを行う手段が必要にな
るという点で問題がある。

【００１０】また、図８に示す結合棒方式では、結合強
度の調整は、結合棒８３の上側の蓋に螺入して設置した
調整ねじ８６の挿入量により調整可能である。しかし、
結合棒方式は結合強度の調整可能範囲が狭いという点で
問題がある。またタップ結合方式と同様に、入力端子に
直流電圧を印加する場合、別にＤＣカットが必要になる
という点でも問題がある。

【００１１】更に、図９に示すアンテナ方式では、入力
端子９１に接続されているアンテナ９３は接地されてい
ないので、入力端子に直流電圧を印加する場合にＤＣカ
ット手段を設ける必要ないという利点を有し、結合強度
の調整は、アンテナ９３の近傍に設置した調整ねじ９６
により調整可能である。しかし、一般的にアンテナ方式
では結合量の調整可変範囲は結合棒方式と同程度である
のみならず、調整が困難でありコスト高や製作精度の点
で問題がある。

【００１２】（目的）本発明の主な目的は、共振器の入
力部の電磁結合の結合量の可変範囲が広く、調整が容易
で製造コストを低減可能な共振器のアンテナ結合方式及
び結合アンテナを提供することにある。

【００１３】本発明の他の目的は、電磁結合の結合量の
可変範囲が広く、特性が高精度で再現性の高い導体パタ
ーンにより形成した絶縁基板を用いた共振器のアンテナ
結合方式及び結合アンテナを提供することにある。

【００１４】

【課題を解決するための手段】本発明の共振器のアンテ
ナ結合方式は、共振棒を備える共振器を励振する共振器
のアンテナ結合方式において、高周波信号の供給端を構
成する一方の端部と開放端を構成する他方の端部とを有
し、前記他方の端部側の直線導体が前記共振棒の近傍に
並行に配置されたＵ字型又はＪ字型の導体でなる結合ア
ンテナと、前記結合アンテナの前記一方の端部側の導体
の近傍に配置されたアンテナ結合の結合量の調整ねじと
からなることを特徴とする。そして、前記結合アンテナ
の前記一方の端部側の導体の長さと前記他方の端部側の
直線導体の長さの差、及び前記他方の端部側の前記共振
棒と平行に隣接する直線導体の長さにより、前記調整ね
じの挿入量によるアンテナ結合の結合量の可変範囲を設
定することを特徴とする。

【００１５】前記Ｕ字型又はＪ字型の導体は、リボン状
の金属導体、又は絶縁基板上に形成された導体パターン
で構成されたことを特徴とする。前記共振器は、複数の
共振器を順次結合して構成したフィルタ装置の初段の共
振器であることを特徴とし、前記Ｕ字型又はＪ字型の導
体は、前記フィルタ装置の長手方向と略直角な面内に配
置されたことを特徴とする。

【００１６】本発明の共振器の結合アンテナは、共振棒
と前記共振棒の解放端側から挿入された調整ねじとを備
える共振器を励振する共振器の結合アンテナであって、
高周波信号の供給端を構成する一方の端部と開放端を構
成する他方の端部とを有し、前記他方の端部側の直線導
体が前記共振棒の近傍に並行に配置され、前記一方の端
部側の導体がアンテナ結合の結合量の調整ねじの近傍に
該調整ねじと平行して配置されるＵ字型又はＪ字型の導
体でなることを特徴とする。

【００１７】また、前記Ｕ字型又はＪ字型の導体はリボ
ン状の金属導体又は絶縁基板上に形成された導体パター
ンで構成されたことを特徴とする。前記共振器は、複数
の共振器を順次結合して構成したフィルタ装置の初段の
共振器であることを特徴とし、前記Ｕ字型又はＪ字型の
導体は、前記フィルタ装置の長手方向と略直角な面内に
配置されたことを特徴とする。

【００１８】本発明の共振器のアンテナ結合方式は、よ
り具体的には、フィルタ装置の共振棒に対してＵ字型又
はＪ字型の結合アンテナを使用し、前記結合アンテナの
一方の端部を入力端子（コネクタ）と接続し、他方の端
部の直線部分は初段共振棒に隣接して平行に設置する。
入力端子と接続した端部側又は同端部側の直線部分の近
傍に結合量を調整する調整ねじを設置する。入力端子と
Ｕ字型又はＪ字型の一方の端部とは絶縁被覆した導体
（中心導体）により接続する。

【００１９】また、本発明の共振器のアンテナ結合方式
は、フィルタ装置の共振棒に対してプリント基板上の導
体パターンにより構成した、Ｕ字型又はＪ字型の形状の
結合アンテナを使用する。前記結合アンテナの一方の端
部を入力端子（コネクタ）と接続し、他方の端部の直線
部分は初段共振棒に隣接して平行に設置する。入力端子
と接続した端部側又は同端部側の直線部分の近傍に結合
量を調整する調整ねじを設置する。入力端子とＵ字型又
はＪ字型の一方の端部とは絶縁被覆した導体（中心導
体）により接続する。入力端子と結合アンテナとの接続
は直接はんだ付けなどで接続する。

【００２０】（作用）共振器の共振棒に対しＵ字型又は
Ｊ字型の形状の導体で構成した結合アンテナを使用する
ことにより、結合量の可変範囲を拡大し調整容易な特性
を実現する。絶縁基板上の導体パターンにより構成する
ことにより、複雑なアンテナパターンの製作を容易に
し、アンテナ形状及び特性の再現性を高め、高精度化を
図る。

【発明の実施の形態】（構成の説明）次に、本発明の共
振器のアンテナ結合方式及び結合アンテナの一実施の形
態について図面を参照して以下説明する。

【００２１】図１は、本発明の実施の形態を示す図であ
り、図１（ａ）は共振棒と直角方向の断面図、図１
（ｂ）は共振棒の長手方向の断面図、図１（ｃ）はフィ
ルタ装置の長手方向に対し直角なアンテナ部分の断面図
である。

【００２２】図１に示すように、本実施の形態の共振器
のアンテナ結合方式では、フィルタ装置１０は、複数の
半同軸型共振器１４が開口１６を介して互いに結合する
構造を有し、各半同軸共振器１４は中央に筺体底部から
立設し、開放端部を有する共振棒１５を備え、図示しな
い上部隔壁を構成する開閉可能な蓋（カバー）により密
閉した半同軸型共振器の多段構成でなる。

【００２３】高周波信号の入力構造は、フィルタ装置１
０の長手方向の端部側の初段共振器１４の外壁に、該外
壁と絶縁した高周波信号の入力端子（コネクタ）１１
と、前記入力端子１１と接続され、絶縁材料等により被
覆することにより筺体と絶縁され共振器内部側に筺体を
貫通する導体棒１２と、前記導体棒１２の先端部と接続
され共振器１４内部の共振棒１５と電磁結合する結合ア
ンテナ１３とから構成される。

【００２４】本実施の形態の結合アンテナ１３の構成
は、図１（ｃ）に示すように、高周波信号が供給される
端部（パターン）１９と該端部１９から開放端となる他
の端部２０まで延び、少なくとも開放端２０側には共振
器の共振棒１５の近傍に平行して隣接配置可能な直線導
体を有するＵ字型又はＪ字型の導体でなる。つまり、前
記導体棒の先端部１２と接続される端部（パターン）１
９からＵ字型又はＪ字型に屈曲した導体、好適にはフィ
ルタ装置の長手方向と直角方向の面内でＵ字型又はＪ字
型に屈曲した導体でなり、Ｕ字型又はＪ字型の導体の略
直線状の遊端２０側が共振棒１５の立設方向と略平行に
配置された形状構造を有する。

【００２５】更に、本実施の形態では、前記結合アンテ
ナ１３と共振棒１５との結合量の調整手段として、図１
に示すように、調整ねじ１７がフィルタ装置１０の上部
隔壁から螺入により配置される。また、調整ねじ１７
は、好適にはＵ字型又はＪ字型の導体でなる結合アンテ
ナ１３の前記導体棒１２と接続する端部１９側の導体近
傍に前記Ｕ字型又はＪ字型の導体と平行に配置される。

【００２６】図２は、本実施の形態の結合アンテナの形
状構造の各種の例を示す図である。アンテナの形状とし
て、同図（ａ）に示すＵ字型のアンテナの形状、及び同
図（ｂ）、（ｃ）に示すＪ字型のアンテナの形状が使用
され、形状に応じて図２に示すようにそれぞれの結合量
（結合強度）が決定される。結合アンテナ１３の一方の
端部は入力端子１１からの導体棒（リード線の中心導
体）１２と接続され、他方の直線導体は初段共振棒１５
に隣接して平行に設置され、結合アンテナ１３から初段
共振棒１３へ電磁結合して励振する構造を有し、更に、
入力端子１１と接続されている側の結合アンテナ１３の
導体部分の近傍に調整ねじ１７が設けられ、結合量の調
整を可能にしている。

【００２７】本実施の形態の結合アンテナ１３は、共振
棒１５やフィルタ装置１０の外壁（ケース）に接触して
いないので、入力端子にＤＣ電圧を印加する場合でも、
ＤＣカットを別途設ける必要がないというアンテナ結合
方式の本来の利点も有する。

【００２８】以上の実施の形態では、Ｕ字型又はＪ字型
構造のアンテナの形状を金属材料の細長いリボン（棒）
導体で実現した例を説明したが、本発明の他の実施の形
態として板状の絶縁基板上に同様のアンテナの形状を導
体パターンとして配置することにより構成することが可
能である。

【００２９】図３は、本発明の結合アンテナの他の実施
の形態として絶縁基板上の導体パターンにより構成した
例を示す図である。アンテナを配置する基板（アンテナ
基板）３８は、絶縁基板でなりその一面に形成した、高
周波信号が供給される端部（パターン）３９と該端部３
９から他の開放端となる端部４０を有し、少なくとも開
放端側には共振器の共振棒３５の近傍に平行して隣接配
置可能な直線導体を有するＵ字型又はＪ字型の導体パタ
ーン３３、好適にはフィルタ装置の長手方向と直角方向
の面内のアンテナ基板３８上の導体パターン３３を有
し、アンテナ基板３８は、前記導体パターン３３を形成
した面の反対側の基板面からスルーホールを介して、入
力端子と接続する導体棒３２を挿入してはんだづけ等に
より接続されて支持されている。

【００３０】高周波信号は、入力端子（コネクタ）３１
と導体棒３２を介して導体パターン３３に直接供給さ
れ、アンテナ基板３８の導体パターン３３から共振棒３
５に電磁結合して励振する。アンテナ基板３８は、共振
棒３５やフィルタ装置３０の外壁（ケース）に接触して
いないので、前記実施の形態と同様に入力端子３１にＤ
Ｃ電圧が印加された場合でも、ＤＣカット手段を設ける
必要はない。

【００３１】図４は、アンテナ基板上の導体パターン及
び共振棒、調整ねじの配置関係を示す図であり、共振棒
３５側からみたアンテナ基板及び他の部品との配置関係
を示している。この例では、結合アンテナの導体パター
ンはＪ字型の導体でなり、Ｊ字型の導体パターンの一方
の端部３９の直線導体は入力端子から導体棒とはんだづ
けなどで接続され、他方の端部４０の直線導体は共振棒
と近接して平行になり、この部分が初段結合棒との電磁
結合に関与する。入力端子コネクタ中心導体上に調整ね
じを設け、結合量の調整を可能としている。

【００３２】アンテナ基板３８にはアンテナを構成する
導体パターン３３のみが形成され、通常の配線基板のよ
うなグランドは設けられていない。また、図中に点線で
示すように、入力端子と接続されている導体棒（中心導
体）の近傍上部には調整ねじ３７が設けられ、結合量の
調整を可能としている。この実施の形態における結合ア
ンテナの導体パターン３３としては、図２（ａ）〜
（ｃ）に示す他の導体形状の導体パターンとすることが
できることは云うまでもない。

【００３３】図１に示す実施の形態において、Ｕ字型又
はＪ字型の形状をした結合アンテナ１３で初段共振棒と
の電磁結合の結合量の調整方法としては、（１）例え
ば、図２（ａ）〜（ｃ）に示すようにアンテナの形状を
変更する、（２）結合アンテナとフィルタ初段共振棒と
の間隔を変更する、（３）結合アンテナ近傍の調整ねじ
を調整する、などの手法により調整することが可能であ
る。

【００３４】（動作の説明）次に、本実施の形態のフィ
ルタ装置の結合方式による高周波信号の結合動作、結合
特性及びその調整について以下説明する。

【００３５】Ｕ字型又はＪ字型の結合アンテナの一方の
端部は入力端子（コネクタ）から導体棒の中心導体とは
んだづけなどで接続されており、入力端子から供給され
た電磁エネルギーは、Ｕ字型又はＪ字型の結合アンテナ
の一方の端部から他方の端部へ流れる。結合アンテナの
前記他方の端部側の直線部分は共振棒と近接して平行に
配置されているから、主にこの部分において初段共振棒
と電磁結合し、初段共振器が励振される。

【００３６】結合アンテナの前記他方の端部側の直線部
分での前記励振による結合の強さは、図２に示すよう
に、共振棒との平行、隣接する長さと、前記一方の導体
の長さの関係により制御することが可能であり、また、
前記励振による結合量は、入力端子と接続されている前
記一方の側の結合アンテナの直線部分に近接して設けら
れた調整ねじにより調整が可能である。

【００３７】調整ねじによる結合量の調整においては、
調整ねじの挿入により結合アンテナの直線部とねじの重
なる部分が長くなるほど結合量は弱くなる。これは、調
整ねじがアンテナ部分を通過する電磁エネルギーに影響
を与え、結合に関与する他方の直線部分へ届く電磁エネ
ルギーを抑制するからである。この調整ねじによる抑制
量はかなり大きいので、結合アンテナと共振棒とを接近
させて設置することにより結合量の可変範囲を大きくと
ることが可能となる。

【００３８】図５は、本実施の形態と従来例とのＱｅｘ
ｔの特性の相違を示す図である。横軸は調整ねじの挿入
量、縦軸は結合量を表すＱｅｘｔ（外部Ｑ）である。こ
こでＱｅｘｔの値は、大きいほど結合が弱く、小さいほ
ど結合が強いことを意味する。

【００３９】同図に示すように従来例の特性は、結合ア
ンテナへの調整ねじの挿入量に応じてＱｅｘｔの値が低
下する傾向を示し、また、調整ねじの挿入量が小さい間
はＱｅｘｔの変化量は少なく、挿入量が大きくなるにつ
れて変化量が大きくなるという特徴を有している。

【００４０】これに対し本発明のＵ字型又はＪ字型の結
合アンテナの場合は、結合アンテナと平行に挿入した調
整ねじの挿入量に応じてＱｅｘｔの値が上昇する傾向を
示し、また、調整ねじの挿入量が大きい領域でのＱｅｘ
ｔの変化量は大きく、挿入量が小さい領域での変化量が
小さいという特徴を有している。特に、Ｑｅｘｔの値の
全体の可変幅は、従来例と比べて３倍以上（結合量の可
変幅も３倍以上）である。そして、Ｑｅｘｔの値の全体
の可変幅は、前述のようにＵ字型又はＪ字型の結合アン
テナの形状の設計により設定可能である。このようにＵ
字型又はＪ字型の結合アンテナは、従来例の特性とは逆
の関係にあり、の値の変化量は、結合ねじの挿入量が減
少するほど小さく、結合の弱い領域で大きい。

【００４１】ところで、フィルタ特性の通常の調整方法
としては、初段共振器への高周波信号の結合を一旦、弱
くしてから徐々に結合を強めるようにして特性上の最適
な結合量の位置に調整する。

【００４２】したがって従来例のように、調整の開始点
（Ｑｅｘｔが大きい領域）より調整の終了点（Ｑｅｘｔ
の小さい領域）の方が変化量が大きいよりも、調整の開
始点の方で変化量が大きく調整の終了点の方で変化量が
少ない方が調整が容易であることは明らかであり、Ｕ字
型又はＪ字型の結合アンテナによるフィルタ装置の調整
は従来例の特性と比較しても格段に容易である。

【００４３】図５に示す例は、フィルタ装置に対する所
望のＱｅｘｔを２０程度に設計したものである。従来例
のＱｅｘｔの可変範囲は１０〜３４程度であり、一番大
きくしてもＱｅｘｔ＝３４程度である。これに対しＵ字
型又はＪ字型の結合アンテナでは、Ｑｅｘｔの可変範囲
は１５〜８０程度以上まで可能であり、一番大きくする
とＱｅｘｔ＝８０以上とすることも可能であり、従来例
の２倍以上にＱｅｘｔを大きくすることが可能である。

【００４４】Ｕ字型又はＪ字型の結合アンテナの前述し
た特性により、調整ねじを一旦深く挿入し、その後挿入
量を減少させることにより、Ｑｅｘｔ＝８０程度から結
合量を変化させ、結合量の変化量の少ない目標のＱｅｘ
ｔ＝２０程度の微妙な調整までを一気に行うことが可能
となる。

【００４５】（他の実施の形態）本発明の初段結合方式
は、フィルタ装置に応用されるものとして説明したが、
フィルタを組み合わせた装置、例えばデュプレクサ装
置、トリプレクサ装置などに適用することが可能であ
る。以下、この一例としてデュプレクサ装置の実施の形
態について説明する。

【００４６】図６は、デュプレクサ装置の基本構成を示
す図である。デュプレクサ装置は、単一の送受信アンテ
ナと送信用回路及び受信用回路の間の送受信を相互干渉
することなく動作させるためのフィルタ機能をも有する
高周波回路である。図６（ａ）に示すように、送受信ア
ンテナに接続するアンテナ接続端子６１、送信用回路の
出力部に接続される送信用接続端子６８、受信用回路の
入力部に接続される受信用接続端子６９を備え、アンテ
ナ接続端子６１はＴ分岐部の分岐点に接続され、Ｔ分岐
部は送信側の帯域通過フィルタであるフィルタ１を介し
て前記送信用接続端子６８に、また、同様に受信側の帯
域通過フィルタ２を介して前記受信用接続端子６９にそ
れぞれ接続される。

【００４７】図６（ｂ）は、共振器として円筒（円柱）
形状の半同軸型共振器を利用するデュプレクサ装置に本
発明を適用した例を示す図である。フィルタ装置６０
は、送受信アンテナ側の端子６１と送信用回路及び受信
用回路側の端子６８、６９の間に複数の円筒形状の半同
軸型共振器６４が開口６６を介して結合する構成を有し
ている。また、各半同軸型共振器は、半同軸型共振器は
中央部に底部側より立設した長さλｇｏ／４（λｇｏ：
高周波の管内波長）長の共振棒を備えている。

【００４８】本実施の形態では、２つの並行配置したフ
ィルタを構成するための半同軸型共振器の初段共振器
に、Ｕ字型又はＪ字型の導体パターンを形成したアンテ
ナ基板６３を実装しており、送受信アンテナ側の端子６
１との間には共振棒の長手方向に同図形状のように形成
した溝等に沿って絶縁被覆導体がＴ分岐部を構成するよ
うに挿入、配置された構成を有している。２つのアンテ
ナ部６３がそれぞれの半同軸型共振器の初段共振棒６５
と電磁結合するように配置される。ここでアンテナ基板
６３に代えてＵ字型又はＪ字型のアンテナ導体により構
成することも可能である。

【００４９】フィルタ装置６０は、図示しない上蓋によ
りフィルタ上部は密閉された構造でなり、上部の蓋に
は、Ｕ字型又はＪ字型導体又は導体パターンの導体棒の
先端が接続される一端部側の近傍に先端位置が調整でき
る調整ねじが螺入される。

【００５０】本実施の形態においても、前記実施の形態
と同様の結合量の調整方法を採用することが可能であ
り、特に調整ねじによる調整においては、上蓋の取り外
しが不要であることから調整が簡易に行える。また、基
板上にアンテナを形成する導体は、所定のパターンとし
て予め形成するものであるから、その製作精度は高くタ
ップ結合等と比べて再現性が高い。

【００５１】本発明の他の実施の形態として、図１、
２、６に示す実施の形態において、Ｕ字型又はＪ字型の
導体としてのリボンや基板上の導体パターンに代えて金
属ワイヤーを使用することが可能である。金属ワイヤー
を使用することにより、Ｕ字型又はＪ字型状の形状の調
整が容易に行うことが可能となる。また、図３、６に示
す実施の形態において、絶縁基板としてフィルム板、発
泡スチロール板、プラスティク板などの板状絶縁体を使
用することが可能である。また、アンテナ基板の導体パ
ターンとしてはＵ字型又はＪ字型形状を変形した形状と
することが可能である。

【００５２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の共振器の
アンテナ結合方式は、Ｕ字型又はＪ字型の導体形状で結
合アンテナを構成するものであり、従来例と比べて結合
量の可変範囲を３倍以上に広くすることが可能であるか
ら、結合量及び共振特性の調整が容易である。

【００５３】また、結合量の可変範囲を大きくとること
が可能であることに加えて、調整ねじによる所望の結合
量に近づく領域での変化量の小さい特性を実現すること
が可能であるから、変化量の小さい領域での微調整も容
易に行えるものであり、調整工数が低減でき、共振器を
使用するフィルタ装置の低価格化、大量生産に好適であ
り、生産性の向上につながる。

【００５４】また、本発明の結合アンテナを基板上に形
成した導体パターンにより構成することにより、Ｕ字型
又はＪ字型の結合アンテナの各種形状が高精度の導体パ
ターンとして構成することが可能であり、結合アンテナ
製造時の形状及び特性における再現性が良く、高精度な
結合アンテナを安価に実現することが可能である。

【００５５】また、本発明の結合アンテナは、共振棒及
びフィルタ装置の筺体（フィルタケース）と接触しない
ので、入力端子にＤＣを印加する場合でも、ＤＣカット
手段を別途設ける必要はなく、ＤＣカットを必要とする
構成に対して優位である。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の共振器のアンテナ結合方式及び結合
アンテナの一実施の形態を示す図である。

【図２】 結合アンテナを構成する導体形状の例を示す
図である。

【図３】 本発明の共振器のアンテナ結合方式及び結合
アンテナの他の実施の形態を示す図である。

【図４】 結合アンテナを構成するアンテナ基板の例を
示す図である。

【図５】 調整ねじによる結合アンテナと共振棒の結合
量を示す図である。

【図６】 本発明の共振器のアンテナ結合方式及び結合
アンテナの他の実施の形態を示す図である。

【図７】 従来のタップ結合方式を示す図である。

【図８】 従来の結合棒方式を示すアウである。

【図９】 従来のアンテナ方式を示す図である。

【図１０】 アンテナの構造例を示す図である。

【符号の説明】

１０ フィルタ装置 １１、３１、６１、７１、８１、９１ 入力端子 １２、３２、６２、７２、８２、９２ 導体棒 １３、３３、６３、９３ 結合アンテナ １４、６４、７４、８４、９４ 共振器 １５、３５、６５、７５、８５、９５ 共振棒 １６、６６、７６ 開口 １７、３７、８６、９３ 調整ねじ １９、３９ 高周波信号の供給端部パターン ２０、４０ 開放端部 ３８ 基板（アンテナ基板）

Claims (11)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 共振棒を備える共振器を励振する共振器
   のアンテナ結合方式において、 高周波信号の供給端を構成する一方の端部と開放端を構
   成する他方の端部とを有し、前記他方の端部側の直線導
   体が前記共振棒の近傍に並行に配置されたＵ字型又はＪ
   字型の導体でなる結合アンテナと、前記結合アンテナの
   前記一方の端部側の導体の近傍に配置されたアンテナ結
   合の結合量の調整ねじとからなることを特徴とする共振
   器のアンテナ結合方式。
2. 【請求項２】 前記結合アンテナの前記一方の端部側の
   導体の長さと前記他方の端部側の直線導体の長さの差、
   及び前記他方の端部側の前記共振棒と平行に隣接する直
   線導体の長さにより、前記調整ねじの挿入量によるアン
   テナ結合の結合量の可変範囲を設定することを特徴とす
   る請求項１記載の共振器のアンテナ結合方式。
3. 【請求項３】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体はリボン状
   の金属導体で構成されたことを特徴とする請求項１又は
   ２記載の共振器のアンテナ結合方式。
4. 【請求項４】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体は、絶縁基
   板上に形成された導体パターンで構成されたことを特徴
   とする請求項１又は２記載の共振器のアンテナ結合方
   式。
5. 【請求項５】 前記共振器は、複数の共振器を順次結合
   して構成したフィルタ装置の初段の共振器であることを
   特徴とする請求項１、２、３又は４記載の共振器のアン
   テナ結合方式。
6. 【請求項６】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体は、前記フ
   ィルタ装置の長手方向と略直角な面内に配置されたこと
   を特徴とする請求項５記載の共振器のアンテナ結合方
   式。
7. 【請求項７】 共振棒と前記共振棒の解放端側から挿入
   された調整ねじとを備える共振器を励振する共振器の結
   合アンテナであって、 高周波信号の供給端を構成する一方の端部と開放端を構
   成する他方の端部とを有し、前記他方の端部側の直線導
   体が前記共振棒の近傍に並行に配置され、前記一方の端
   部側の導体がアンテナ結合の結合量の調整ねじの近傍に
   該調整ねじと平行して配置されるＵ字型又はＪ字型の導
   体でなることを特徴とする共振器の結合アンテナ。
8. 【請求項８】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体はリボン状
   の金属導体で構成されたことを特徴とする請求項７記載
   の共振器の結合アンテナ。
9. 【請求項９】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体は、絶縁基
   板上に形成された導体パターンで構成されたことを特徴
   とする請求項７記載の共振器の結合アンテナ。
10. 【請求項１０】 前記共振器は、複数の共振器を順次結
    合して構成したフィルタ装置の初段の共振器であること
    を特徴とする請求項７、８又は９記載の共振器の結合ア
    ンテナ。
11. 【請求項１１】 前記Ｕ字型又はＪ字型の導体は、前記
    フィルタ装置の長手方向と略直角な面内に配置されたこ
    とを特徴とする請求項１０記載の共振器の結合アンテ
    ナ。