JP2002294191A - 熱可塑性接着剤及び該接着剤を用いた接着方法並びに樹脂製積層体 - Google Patents
熱可塑性接着剤及び該接着剤を用いた接着方法並びに樹脂製積層体Info
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Abstract
できる無溶剤型のポリプロピレン発泡接着剤を提供す
る。 【解決手段】 結晶性ポリオレフィン:20〜70質量
%と、スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィ
ン:20〜70質量%と、ロジン系樹脂から成る粘着性
付与剤:5〜45質量%とを含有した熱可塑性接着剤を
加熱溶融させる共に、該接着剤中にガスを機械的に混入
して気泡を生じせしめながら接着させることを特徴とす
る。
Description
の車両用内装材などの積層体に適用し得る熱可塑性接着
剤、及びかかる熱可塑性接着剤を用いた接着方法、並び
に樹脂製積層体に関する。
塩化ビニル系樹脂の表皮を、ポリウレタンフォームを用
いてABS樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、お
よびポリプロピレン(以下、適宜、PPと略して表示す
る。)などの基材に積層した材料が使用されてきた。ポ
リウレタンフォーム層は、材料にクッション感を与え、
表皮裏面の凹凸を吸収し、表皮と基材とを強固に接着す
ることができる。ところで、環境保護対策の一環として
自動車を構成する材料のリサイクル率を向上することが
要求され、2002年には車両重量の90%以上をリサ
イクル可能な部品にすることが義務付けられることにな
っている。
ウレタンフォームとABS樹脂基材とからなる積層材料
では、異種材料で構成され、さらに熱可塑性樹脂と熱硬
化性樹脂とが併用されている上、これらが強固に接着さ
れているので、一旦積層された材料を分離してリサイク
ルするのは非常に困難である。そこで、内装材や外装材
として使用される樹脂材料を同種の樹脂に統一すれば、
リサイクルが容易になり、リサイクル率を高めることが
できると考えられる。
全てポリオレフィン系樹脂とし、特に表皮を型面の微細
凹凸形状の転写性に優れるパウダースラッシュ成形法に
より成形し、該表皮と芯材との間に発泡接着剤を充填し
て上記両者を接着することが考えられているが、従来の
発泡接着剤では、特に表皮の接着面に上記パウダースラ
ッシュ成形により発生する凹凸に起因する上記両者間の
クリアランス変動を充分に吸収することができないとい
う難点がある。
(パウダースラッシュ成形法)が適用でき、かつ、発泡
性や接着強度および耐熱性を含めてウレタンと同レベル
の性能を有するポリプロピレン発泡接着剤として、ま
ず、溶剤型のものが考えられる。しかし、この溶剤型の
接着剤の場合には、溶剤が揮発し切るまで接着可能であ
る(つまり、接着可能時間が長い)ので、例えば車両の
インストルメントパネルなどのような大物成形品に適用
できるという利点を有する反面、溶剤揮発工程に時間が
掛かり過ぎて成形サイクルタイムが余りに長く実用性に
欠け、しかも、溶剤が残存すると、後工程あるいは使用
時にある程度以上の熱が加わると、表皮と接着剤層との
間に剥離が生じて表面にも膨れが表れ、接着力および外
観性が著しく低下するという問題があった。
よび耐熱性を含めてウレタンと同レベルの性能を有し、
かつ、上記のような溶剤による不具合が生じることの無
い、つまり、無溶剤型のポリプロピレン発泡接着剤及び
該接着剤を用いた接着方法並びに樹脂製積層体を提供す
ることを目的としてなされたものである。
目的達成のために種々研究開発を重ねる中で、従来公知
の無溶剤型接着法の一種であるホットメルト法に着目し
た。このホットメルト接着剤とは、100%固形分で熱
を加えて溶融させながら接着面に塗布して用いられるも
ので、加熱して溶融させるので溶剤は一切不要である。
尚、特開昭60−203646号公報には、スチレン系
共重合体およびスルホン化スチレン重合体の少なくとも
1種の塩を含有して成る熱可塑性ホットメルト接着剤が
開示されている。この従来公報に開示された接着剤は、
スチレン系重合体は含有するものの、非結晶性ポリオレ
フィン中に含有されるものではない。つまり、スチレン
系ポリマー含有の非結晶性ポリオレフィンを含むもので
はない。
用いた場合には、以下のような技術的な課題が生じる。
すなわち、 パウダースラッシュ表皮裏面の凹凸を埋め合わせる
体積膨張機能がない(つまり、発泡性がない)。 加熱溶融後冷えると接着性を失うので接着可能時間
が短い。 ある程度以上の温度下で圧痕回復性が低くクッショ
ン性に劣る(発泡性および耐熱剛性の問題)。 ある程度以上の温度下での接着強度が低い(耐熱性
の問題)。
ねた結果、ホットメルト接着剤内にガスを機械的に混入
させて気泡を生じせしめることにより、ホットメルト接
着剤をある程度フォーム状(泡状)にでき、これにより
必要な発泡性を付与し得ることを見出した。また、この
ように、ガスを機械的に混入させて発泡せしめることに
より接着強度も向上することを知見した。
系ホットメルト接着剤に、芳香環物質の1種であるスチ
レン系ポリマー樹脂を添加することにより、耐熱性(特
に、熱時剛性)が向上すること、また更に、この場合に
おいて、粘着性付与剤にロジン系樹脂を用いることによ
り高耐熱性のものとなり、ある程度の高温下でも接着性
を確保できることを見出した。尚、特開平1−1907
81号公報には、熱可塑性エラストマー,エステル体等
のロジン類誘導体から成る粘着性付与樹脂等を含有した
発泡接着剤が開示されているが、この従来公報に記載さ
れた接着剤は、結晶性と非結晶性の両方のポリオレフィ
ンを含有したものではない。
は、以上のような研究開発活動の結果として得られたも
のであり、結晶性ポリオレフィン:20〜70質量%
と、スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィン:
20〜70質量%と、ロジン系樹脂から成る粘着性付与
剤:5〜45質量%と、を含有し、ガス混入により被発
泡性を有することを特徴としたものである。
剤の含有量を上記範囲としたのは、バリと付着による脱
型変形を防止する観点から45質量%以下であることが
好ましく、一方、耐熱性と接着強度とのバランスを維持
する観点から5質量%以上であることが好ましいからで
ある。
は、上記第1の発明において、上記結晶性ポリオレフィ
ンを25〜45質量%と、上記スチレン系ポリマー含有
の非結晶ポリオレフィンを35〜55質量%と、上記ロ
ジン系樹脂から成る粘着性付与剤を10〜25質量%
と、が含有されるようにしたものである。
上記範囲としたのは、成形時のバリと付着による脱型変
形を防止する観点から25質量%以上であることが好ま
しく、一方、接着強度を確保する観点および耐熱性と接
着強度とのバランスを維持する観点から45質量%以下
であることが好ましいからである。また、ロジン系樹脂
から成る粘着性付与剤の含有量を上記範囲としたのは、
バリと付着による脱型変形を防止する観点から25質量
%以下であることがより好ましく、一方、耐熱性と接着
強度とのバランスを維持する観点から10質量%以上で
あることがより好ましいからである。
は、上記第1の発明において、上記結晶性ポリオレフィ
ンは、結晶性ポリプロピレン中に結晶性ポリエチレンを
5〜50質量%配合して成ることを特徴としたものであ
る。
は、上記第3の発明において、上記スチレン系ポリマー
含有の非結晶ポリオレフィンは、非結晶ポリプロピレン
であることを特徴としたものである。
は、上記第1の発明において、上記非結晶ポリオレフィ
ン中のスチレン系ポリマーの含有量は、1〜40質量%
であることを特徴としたものである。
記範囲としたのは、クッション性確保の観点から40質
量%以下であることが好ましく、一方、耐熱性と接着強
度とのバランスを維持する観点から1質量%以上である
ことが好ましいからである。
は、上記第4の発明において、上記ロジン系樹脂から成
る粘着性付与剤は、ロジンエステルが配合されて成るこ
とを特徴としたものである。
は、上記第1〜第6の何れか一の発明において、結晶性
ポリプロピレン及び非結晶性ポリプロピレンの重量平均
分子量(Mw)が、0.5〜2.5×105であること
を特徴としたものである。
性ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)としたの
は、接着強度を確保する観点から0.5×105以上の
重量平均分子量が必要であり、一方、充填性を確保する
観点からは重量平均分子量を2.5×105以下とする
ことが好ましいからである。尚、自動車のインストルメ
ントパネルのような大型部品に適用する場合には、この
範囲中でも、0.6〜2.0×105とすることが更に
好ましい。
用いた接着方法は、上記第1〜第7の何れか一の発明に
係る熱可塑性接着剤を加熱溶融させると共に、該接着剤
中にガスを機械的に混入して気泡を生じせしめながら接
着させることを特徴としたものである。
用いた接着方法は、上記第8の発明において、接着させ
るべき被接着部材を所定の型内にセットした上で該型を
閉じ、この型閉じ状態で型内の被接着部材間に上記熱可
塑性接着剤を適用して接着することを特徴としたもので
ある。
を用いた樹脂製積層体は、上記第8または第9の発明に
係る熱可塑性接着剤を用いた接着方法により、樹脂製表
皮材と樹脂製基材とが接着されて成ることを特徴とした
ものである。
性、耐熱性の向上および低粘度化を有効に図りつつ、熱
間時における接着強度を高めることができ、発泡性や接
着強度および耐熱性を含めてウレタンと同レベルの性能
を有し、かつ、溶剤を含有することによる不具合が生じ
ることの無い、つまり、無溶剤型のポリプロピレン発泡
接着剤が得られる。
明によれば、第1の発明の効果をより高次元で達成する
ことが可能になる。特に、結晶性ポリオレフィンの含有
量およびロジン系樹脂から成る粘着性付与剤の含有量を
上記の範囲にそれぞれ制限したことにより、成形時のバ
リと付着による脱型変形を防止し、且つ、充分な接着強
度を確保することが可能になる。
明によれば、結晶性PEを配合したことにより、ポリプ
ロピレン成分だけでは発揮できない接着層の強度・靭性
の向上を得ることが可能になる。
明によれば、ポリプロピレンに相溶する成分を分子鎖中
に持つこととにより馴染み性が向上する。
明によれば、特に、スチレン系ポリマーの含有量を上記
範囲に制限したことにより、クッション性を良好に確保
し、且つ、耐熱性と接着強度とのバランスをより高次元
で維持することが可能になる。
明によれば、粘着性付与剤にロジンエステルを配合した
ことにより、極性を下げることができ、ポリプロピレン
との馴染み性を更に向上させることが可能になる。
した本願第7の発明によれば、結晶性ポリプロピレン及
び非結晶性ポリプロピレンの重量平均分子量(Mw)を
上記範囲としたことにより、充分な接着強度を確保し、
且つ、より高い充填性を確保することができ、より大型
の部品への適用も可能となる。
の何れか一の発明に係る熱可塑性接着剤を加熱溶融させ
ると共に、該接着剤中にガスを機械的に混入して気泡を
生じせしめながら接着させることにより、確実かつ容易
に発泡させることができ、また、この発泡により接着時
にフォームが断熱機能を持ち接着剤の硬化を遅らせるこ
とにより、接着可能時間を延長し、より大型の部品への
適用が可能になる。
明によれば、型閉じ状態で型内の被接着部材間に上記熱
可塑性接着剤を適用して接着することにより、容易かつ
短時間で接着が可能になる。尚、この方法は、接着剤が
溶剤を含有しないことにより実現できるものである。
れば、上記第8または第9の発明に係る熱可塑性接着剤
を用いた接着方法により、樹脂製表皮材と樹脂製基材と
が接着されて成るので、該接着剤中にガスを機械的に混
入して気泡を生じせしめながら接着させることにより、
確実かつ容易に発泡させることができ、また、この発泡
により接着時にフォームが断熱機能を持ち接着剤の硬化
を遅らせることにより、接着可能時間を延長し、例えば
自動車のインストルメントパネルのようなより大型の部
品への適用が可能になる。
に説明する。本実施の形態では、溶剤を含有することに
よる不具合が生じることの無い、つまり、無溶剤型のポ
リプロピレン発泡接着剤を得るために、ホットメルト接
着剤の内部にガスを機械的に混入させて気泡を生じせし
めることにより、ホットメルト接着剤をフォーム状(泡
状)とし、このフォーム状のホットメルト接着剤の特性
を種々調査し、所望の特性を得るための改良を行った。
機械的にガスを混入させることにより発泡状態が得られ
ることの確認試験(発泡状態確認試験)を実施した。ホ
ットメルト接着剤に対して機械的にガスを混入させるた
めの装置としては、ノードソン株式会社のフォームメル
ト・アプリケータ:品番「フォームメルト150」を用
いた。この装置は、2ステージ構造のギヤポンプを有
し、このギヤポンプ内にホットメルト接着剤を投入した
上でガス(窒素ガス:N2)を混入させ、ギヤポンプの
作用によりこのガスを微細化する。そして、これを大気
圧に解放することで発泡が開始されフォーム化するもの
である。
接着剤」の化学組成は、以下の通りであった。 ・結晶性ポリオレフィン:43質量% (結晶性PP:結晶性PE=74:26) ・低分子量PP:45質量% ・フェノール系酸化防止剤と脂肪族系炭化水素:12質
量%
った。 ・試験温度:200℃ ・N2ガス圧力:3.92×105Pa この結果、フォーム化することにより、2.8倍の発泡
倍率が得られた。また、ホットメルト接着剤の表面にも
目視で確認できるほどの発泡痕跡が見られ、更に、内部
断面を顕微鏡観察することにより、250〜300μm
程度の独立した気泡が無数に見られ、良好な発泡状態が
得られることが確認された。
機械的にガスを混入させてフォーム化することによる接
着可能時間および接着強度(剥離強度)への影響を調べ
る試験を実施した。以下の試験では、例えば図1に示す
ように、表皮表面層1(表皮材)とPP基材4との間に
接着剤層3を介在させることにより、表皮表面層1とP
P基材4とを接着剤層3で接着・積層した積層体Sを供
試材として作成し、これを所定の形状寸法に切り出して
試験片を得た。上記のような供試材(積層体S)の特に
表皮表面層1は、種々の公知の手法で作成することがで
き、例えばパウダースラッシュ成形法によっても作成す
ることができる。
験片について剥離強度を調べるもので、およそ次のよう
な手順で行われる。図2に示すように、まず表皮材F1
とPP基材4とを試験接着剤(接着剤層3)で貼り合わ
せて試験片としての積層体Sを製作し、この積層体Sを
所定期間にわたって室温で養生する。次に、この積層体
Sを、表皮材F1が下向きとなるように室温下で保持し
た上で、表皮材F1の一端に錘25を懸垂する。そし
て、この錘を次第に重くして行き、表皮材F1が長手方
向に剥離したときの錘の重さを測定する。この剥離した
ときの重さが積層体Sの(つまり、接着剤の)剥離強度
の指標となる。すなわち、軽い錘で剥離するほど、剥離
強度が低いことになる。尚、ここでは、接着面は、幅2
5mm×長さ50mmの矩形とした。
9.8[N/25mm]以上の剥離強度を得ることを目
標とした。この値は、接着面の幅を25mmとした場合
に、剥離を生じさせる錘の重さを示すものである。尚、
剥離強度が上記の値をある程度下回る場合には、接着剤
を適用した積層体の成形工程における脱型の際に、積層
体表面と型面との付着力によって接着が剥がれてしまう
場合もある。
する剥離強度(9.8N/25mm以上)を確保した上
での最長の接着可能時間(塗布後経過時間[秒])は、
従来のホットメルト接着剤では約20秒(剥離強度:1
1.8N/25mm)であるのに対して、フォーム化し
たホットメルト接着剤では60秒(剥離強度:9.8N
/25mm)になっており、ホットメルト接着剤をフォ
ーム化することにより、所定の剥離強度を確保した上で
の接着可能時間を延長させることができることが確認さ
れた。換言すれば、同一の接着可能時間(塗布後経過時
間)に対しては、フォーム化することにより、ホットメ
ルト接着剤の接着強度を向上させることができることが
確かめられた。
(泡)が断熱材の役目を果たし放熱を遅らせていること
によるものと考えられる。従って、従来のホットメルト
接着剤のように加熱溶融後すぐに冷えて接着性を失うこ
とが抑制でき、大型部品への適用が可能となる。
察した結果、フォーム化したホットメルト接着剤の場合
には、フォーム化により表皮裏面の凹凸を埋め合わせな
がらポーラス部(多孔質部)に浸透していることが確認
され、これにより、接着強度が向上したものと考えられ
る。この接着強度向上は、圧着(型締め)時に、その圧
力により気泡が破裂し、ガスが孔部内に逃げ込む際に、
気泡表面の樹脂を孔部に浸透させる結果となり、いわ
ば、一種のアンカー効果が生じるためであると推定され
る。
ることによる圧痕復元性への影響を調べる試験を実施し
た。この圧痕復元性試験は、およそ次のような手順で測
定される。図3に示すように、まず、テストピースとし
て、広がり面の形状が30mm×30mmの積層体Sを
準備し、その厚さを測定する。次に、積層体Sを加熱し
て30分間所定温度(90℃又は110℃)に保つ。こ
の後、オーブン内において、積層体Sの上に治具26を
介して2kgのおもり27を1分間載せる。なお、治具
26の、積層体Sとの当接面26aは、直径20mmの
円形である。そして、上記治具26及びおもり27を取
り除いて、積層体Sを常温に30分間保持した後の該積
層体Sの厚さを測定し、初期の厚さとの差(へこみ量)
を求める。このへこみ量が圧痕復元性の指標となる。
を得ることを目標とした。試験結果は表2に示す通りで
あり、フォーム化することにより、90℃試験では従来
のホットメルト接着剤と差がないが、110℃試験で
は、従来のホットメルト接着剤に比べて大幅に圧痕回復
性が向上することが確認できた。しかしながら、目標と
するウレタンの圧痕回復性と比較すると、90℃試験で
若干の差があり、また、110℃試験では0.24mm
の圧痕が残り、熱時剛性の向上を図る必要があることが
判った。
剤は、結晶性PP(ポリプロピレン)のマトリックス中
に低分子量PPを配合させた基本配合を有している。こ
のホットメルト接着剤の耐熱特性を向上させるために、
主成分樹脂の一つである低分子量PP中に、芳香環物質
であるスチレン系ポリマー樹脂(具体的には、SEB
S,SEPS,SBR,SISなど)を添加することを
検討した。これにより、熱時に変形しにくくなって耐熱
特性の向上が期待できる。
を高めると、通常の粘着性付与剤では接着性が低下して
しまうことが考えられる。従って、この粘着性付与剤を
高耐熱性のものとする必要がある。従来のオレフィンP
P系ホットメルト接着剤の代表的な粘着性付与剤は、図
4に示すように、C5系石油樹脂のものであるが、これ
に対して、耐熱性向上手段として、以下のような変更を
加えた。
せる観点から、脂肪鎖から芳香環に変更した。 (ii)熱安定性を向上させる観点から、二重構造を取り
酸化しにくくした。つまり、水素添加(水添)を行っ
た。 (iii)SP値を変えずに耐熱性を向上させる観点か
ら、ОHを取り除き極性を低くした。 以上により、最終的に、図4に示すように、天然ロジン
系樹脂であるロジンエステルを得た。
ットメルト接着剤の主成分樹脂の一つである低分子量P
P中に、芳香環物質であるスチレン系ポリマー樹脂を添
加し、且つ、粘着性付与剤を上記天然ロジン系樹脂であ
るロジンエステルとした接着剤(以下、これを「フォー
ム化高耐熱タイプ」と称する。)について、種々の試験
を行った。
プルとしての「フォーム化高耐熱タイプ」の接着剤の化
学組成は、以下の通りであった。 A)結晶性ポリオレフィン:38質量% (結晶性PP:結晶性PE=77:23) B)スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィン
(低分子量PP) ・低分子量PP:40.5質量% ・スチレン系ポリマー:4.5質量% C)天然ロジン系樹脂から成る粘着性付与剤:17質量
% これらの成分を含有したものにフォームメルト・アプリ
ケーターで窒素ガスを混入させ発泡性を持たせた。
倍の発泡倍率が得られ、良好な発泡特性を有することが
確認できた。また、前述の接着可能時間と剥離強度を調
べる試験を実施したところ、目標の剥離強度(ウレタン
同等:9.8N/25mm)を確保できる接着可能時間
は80秒であった。更に、塗布後経過時間を10秒とし
たときの剥離強度(初期剥離強度)は、78.4N/2
5mmであった。尚、表皮裏面の凹凸の埋め合わせも、
フォーム化ホットメルト接着剤の場合と同じく良好であ
った。
準として、接着剤を表皮材と基材との間に充填する際の
充填性の指標となる流動性を比較する試験を行ったとこ
ろ、フォーム化ホットメルト接着剤が1.3倍であるの
に対して、「フォーム化高耐熱タイプ」の接着剤は2.
0倍であった。すなわち、発泡倍率,接着可能時間およ
び初期剥離強度,流動性のいずれにおいても、「フォー
ム化高耐熱タイプ」の接着剤は、従来のホットメルト接
着剤及びフォーム化ホットメルト接着剤よりも高い値を
示すことが判った。
接着剤の耐熱特性を確認するために種々の試験を行っ
た。まず、圧痕回復性の比較試験を行った。尚、この試
験方法は、前述の圧痕回復性試験と同様である。試験結
果は表3に示す通りであり、フォーム化高耐熱タイプの
接着剤では、90℃試験および110℃試験の両方にお
いて、目標としたウレタンの特性値と同等の値が得ら
れ、通常のフォーム化ホットメルト接着剤から「フォー
ム化高耐熱タイプ」とすることによる効果が確認され
た。
は、90℃の加熱温度下で72時間保持した後の接着強
度を測定した。試験結果は以下の通りであった。 ・従来のホットメルト接着剤:39.2N/25mm ・通常のフォーム化ホットメルト接着剤:47.0N/
25mm ・「フォーム化高耐熱タイプ」の接着剤:78.4N/
25mm すなわち、通常のフォーム化ホットメルト接着剤から
「フォーム化高耐熱タイプ」とすることにより、接着強
度が大幅に向上することが確認された。
に負荷耐熱性試験を行った。この試験は、剥離試験(図
参照)における場合と同様の25mm幅の試験片を用い
て、表皮側に1kgの錘をぶら下げ、38℃で15分間
保持し、その後、試験片の温度を5分間に2℃の割合で
上昇させて行き、錘が落下したときの試験片の温度を測
定することにより行った。尚、要求特性(目標温度)は
120℃とした。
「フォーム化高耐熱タイプ」とすることにより、負荷耐
熱性が飛躍的に向上し、目標温度を大きく越える特性が
得られることが確認された。
ットメルト接着剤,「フォーム化高耐熱タイプ」の接着
剤の3種類のホットメルト接着剤について、以上の各試
験で得られた特性値を一覧表にしてまとめると、表4の
ようになる。
接着剤の好適な化学組成範囲を調べるために、接着剤に
含有させるべき各化学成分量を種々変えて各種の試験を
実施し、得られた特性値に基づいて、それぞれ好適な成
分量を求めた。まず、各成分の適用分子量の範囲につい
ては、表5に示す範囲で、主成分である結晶性PP,非
結晶性PPの重量平均分子量(Mw)を変え、接着強度
と充填性(流動性)との関係を調べた。
を確保する観点から0.5×105以上の重量平均分子
量が必要であり、一方、充填性を確保する観点からは重
量平均分子量を2.5×105以下とすることが好まし
い。また、自動車のインストルメントパネルのような大
型部品に適用する場合には、この範囲中でも、0.6〜
2.0×105とすることが更に好ましい。
量範囲についての調査結果を表6に、接着強度向上に効
果的なロジン樹脂量範囲についての調査結果を表7に、
更に、耐熱性と接着強度のバランスを考慮して好適な範
囲を判定した結果を表8に、それぞれ示す。
表8より、クッション性確保の観点から40質量%以下
であることが好ましい。一方、耐熱性と接着強度とのバ
ランスを維持する観点から1質量%以上であることが好
ましい。つまり、スチレン添加量範囲については、1〜
40質量%の範囲が好ましい。
7及び表8より、バリと付着による脱型変形を防止する
観点から45質量%以下であることが好ましく、25質
量%以下であることが更に好ましい。一方、耐熱性と接
着強度とのバランスを維持する観点から5質量%以上で
あることが好ましく、12質量%以上(約10質量%以
上)であることが更に好ましい。つまり、ロジン系樹脂
量範囲については、5〜45質量%の範囲が好ましく、
10〜25質量%の範囲が更に好ましい。
は、表7及び表8より、バリと付着による脱型変形を防
止する観点から24質量%(約25質量%)以上である
ことが好ましく、一方、接着強度を確保する観点および
耐熱性と接着強度とのバランスを維持する観点から44
質量%(約45質量%)以下であることが好ましい。つ
まり、結晶性PP樹脂量範囲については、25〜45質
量%の範囲が好ましい。
ホットメルト接着剤を用い、積層体としての自動車用の
インストルメントパネルを製造するに際し、従来のウレ
タンを用いたパウダースラッシュ工法が適用できるか否
かを調べる試作を行った。この試作の詳細は以下の通り
であった。図5に示すように、この積層体S(インスト
ルメントパネル)の製造工程は、表皮表面層1および表
皮裏面層2からなる表皮材F1を形成する表皮材形成工
程(工程〜)と、PP基材15を形成する基材形成
工程(工程)と、表皮材F1と基材15とを接着して
積層体Sを完成させる積層体成形工程(工程)とに大
別される。
明する。表皮材形成工程において、工程(表皮パウダ
リング工程)では、第1容器5内に収容されている表皮
用パウダー6が、加熱された型枠7内に投入される。こ
のとき型枠7の型面近傍の表皮用パウダー6は軟化ない
しは溶融して型枠7の型面に付着し、表皮中間体8とな
る。工程(パウダー交換工程)では、型枠7内の余剰
の表皮用パウダー6が第1容器5に戻される一方、第2
容器9に収容された、発泡剤を含むフォーム用パウダー
10(発泡剤を含む熱可塑性樹脂)が準備される。
程)では、第2容器9内に収容されているフォーム用パ
ウダー10が、表皮中間体8が付着している型枠7内に
投入され、このとき表皮中間体8の表面近傍のフォーム
用パウダー10は、表皮中間体8の上に固着し、プリフ
ォーム層11となる。この後、型枠7内の余剰のフォー
ム用パウダー10が第2容器9に戻される。
程)では、表皮中間体8とプリフォーム層11とが固着
してなる積層物が、型枠7から取り外される。この後、
この積層物が加熱され、これによりプリフォーム層11
内の発泡剤が発泡し、プリフォーム層11は表皮裏面層
2(フォーム層)となる。なお、表皮中間体8は表皮表
面層1となり、表皮表面層1と表皮裏面層2とで表皮材
F1を形成する。基材形成工程、つまり工程(射出成
形工程)では、射出機12に供給された原料ペレット1
3(PP)が溶融し、射出機12から射出成形型14の
キャビティ内に射出され、基材15が成形される。
1金型19a(第1の型)と第2金型19b(第2の
型)とからなる成形型19が準備される。第1金型19
aと第2金型19bとは、詳しくは図示していないが、
ヒンジ部材19cによって開閉可能に連結されている。
そして、第1金型19aには、前記の表皮材形成工程で
形成された、表皮表面層1と表皮裏面層2とからなる表
皮材F1がセットされる。なお、表皮材F1は、表皮表
面層1が第1金型19aの成形面と当接するようにし
て、第1金型19aに付設された真空吸着手段(図示せ
ず)によりセットされる。第2金型19bには、前記の
基部形成工程で形成された基材15がセットされる。
尚、以上の工程は、従来の発泡ウレタンを用いた工法に
おける場合と同じである。
いて、表皮材F1の片面に向けて上述の「フォーム化高
耐熱タイプ」のホットメルト接着剤17が注入充填され
る。この工程のみが従来工法と異なるが、両者の相違点
は、基本的には、接着剤が異なることと、これに伴なっ
てアプリケータ16が異なることだけである。その後、
型締めを行い、所定時間後に型を開いて脱型が行われ
る。
以下に更に詳しく説明する。本試作で用いた装置(アプ
リケータ)および各試作条件は、以下の通りとした。
およびサイクルタイム内訳は、以下の通りであった。 コア及び表皮を型内にセット(25秒) 表皮側にホットメルト充填(158秒) 型締め(180秒) 型開き 脱型(5秒)
もの(従来品)と比較して表すと、以下の通りであっ
た。 24時間養生後の接着強度(N/25mm) ・試作品:77.5 ・従来品: 2.94 長期耐熱後(90℃×72時間後)の接着強度(N/
25mm) ・試作品:79.4 ・従来品: 9.80 圧痕回復性(へこみ量:mm) ・試作品:−0.15 ・従来品:−0.14 成形サイクルタイム(分) ・試作品:6.13 ・従来品:8.00(充填時間:120秒/型締め:3
00秒)
ータを変更するだけで、従来のウレタン注入工法と略同
じ工程(加熱発泡が不要であり、むしろ簡略化された工
程)で、しかも短い成形サイクルでインストルメントパ
ネルの成形を支障なく行うことができた。
接着剤の充填を行う所謂オープンモールド方式によるも
のであったが、この代わりに、例えば図6に示すよう
に、型50を閉じた状態で接着剤の注入充填を行うクロ
ーズド充填工法を適用することも可能である。この場
合、PP基材51と例えば1層のPP表皮材52とを型
50内にセットした後、型50を閉じる。この型50及
び表皮材52には、予め小孔50h,52hが明けられ
ており、これに接着剤ノズル55(上述のアプリケータ
のノズルに相当する)を位置合せした上で、該ノズル5
5から接着剤を注入する。
に接着剤層53が形成され、両者51,52が接着され
る。本実施の形態では、200℃に溶融した接着剤樹脂
に窒素ガスを混入しながら39.2×105Paの圧力
で注入を行ったところ、支障無く積層体の成形が行え
た。この工法によれば、脱型後のバリ除去などの後手間
を少なくすることが可能である。
のインストルメントパネルの製造についてのものであっ
たが、本発明の熱可塑性接着剤およびそれを用いた接着
方法は、かかる場合に限定されるものではなく、他の積
層体、例えば自動車について言えば、グローブリッドや
コンソールリッド等の樹脂製の積層体の製造にも有効に
適用できるものである。
図である。
学構造を示す図である。
を示す製造工程図である。
ある。
…接着剤層、4,15,51…PP基材、16…アプリ
ケータ。
Claims (10)
- 【請求項1】 A)結晶性ポリオレフィン:20〜70
質量%と、 B)スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィン:
20〜70質量%と、 C)ロジン系樹脂から成る粘着性付与剤:5〜45質量
%と、を含有し、ガス混入により被発泡性を有すること
を特徴とする熱可塑性接着剤。 - 【請求項2】 請求項1記載の熱可塑性接着剤におい
て、 A)結晶性ポリオレフィン:25〜45質量%と、 B)スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィン:
35〜55質量%と、 C)ロジン系樹脂から成る粘着性付与剤:10〜25質
量%と、を含有することを特徴とする熱可塑性接着剤。 - 【請求項3】 請求項1記載の熱可塑性接着剤におい
て、 A)結晶性ポリオレフィンは、結晶性ポリプロピレン中
に結晶性ポリエチレンを5〜50質量%配合して成るこ
とを特徴とする熱可塑性接着剤。 - 【請求項4】 請求項3記載の熱可塑性接着剤におい
て、 B)スチレン系ポリマー含有の非結晶ポリオレフィン
は、非結晶ポリプロピレンであることを特徴とする熱可
塑性接着剤。 - 【請求項5】 請求項1記載の熱可塑性接着剤におい
て、 B)非結晶ポリオレフィン中のスチレン系ポリマーの含
有量は、1〜40質量%であることを特徴とする熱可塑
性接着剤。 - 【請求項6】 請求項4記載の熱可塑性接着剤におい
て、 C)ロジン系樹脂から成る粘着性付与剤は、ロジンエス
テルが配合されて成ることを特徴とする熱可塑性接着
剤。 - 【請求項7】 請求項1〜請求項6の何れか一に記載の
熱可塑性接着剤において、 結晶性ポリプロピレン及び非結晶性ポリプロピレンの重
量平均分子量(Mw)が、0.5〜2.5×105であ
ることを特徴とする熱可塑性接着剤。 - 【請求項8】 上記請求項1〜請求項7の何れか一に記
載の熱可塑性接着剤を加熱溶融させると共に、該接着剤
中にガスを機械的に混入して気泡を生じせしめながら接
着させることを特徴とする熱可塑性接着剤を用いた接着
方法。 - 【請求項9】 請求項8記載の接着方法であって、 接着させるべき被接着部材を所定の型内にセットした上
で該型を閉じ、この型閉じ状態で型内の被接着部材間に
上記熱可塑性接着剤を適用して接着することを特徴とす
る熱可塑性接着剤を用いた接着方法。 - 【請求項10】上記請求項8または請求項9に記載の熱
可塑性接着剤を用いた接着方法により、樹脂製表皮材と
樹脂製基材とが接着されて成ることを特徴とする熱可塑
性接着剤を用いた樹脂製積層体。
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