JP2002291947A - クラブヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 スイング時のヘッドの上下，左右方向のぶれ
を防止する。 【解決手段】 クラウン３の縁部３ａとソール４の縁部
４ａとの間にほぼソール７からトウ８に渡ってサイド面
５が形成され、このサイド面５に、その長手方向に沿っ
て断面形状が、例えば、円弧状の溝部９が形成されてい
る。ここで、この溝部９は、サイド面５が形成されてい
る範囲全体を最大として形成されており、また、溝部９
の深さａはサイド面５の幅ｂのほぼ１／２倍、または、
１／２倍以下としている。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ドライバーなどの
ウッドクラブのクラブヘッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】ゴルフのプレイでは、通常、第１打など
の飛距離を要する場合には、ドライバーなどのウッドク
ラブが使用される。ウッドクラブ、特に、ドライバーに
は、飛距離と方向性が要求される。このためには、クラ
ブヘッドのフェースが正確に目標方向に向き、かつゴル
フボールがフェースのスイートスポットに当たるよう
に、ウッドクラブをスイングする必要がある。

【０００３】そこで、従来のウッドクラブでは、プレー
ヤがスイングし易くして、上記のように、正しくゴルフ
ボールをヒットすることができるようにするために、ヘ
ッドを中空とし、さらに、薄肉化して軽量化するのが一
般的となっているが、飛距離や方向性をより高めるため
に、フェース以外の部分を比重の小さい材料を用いて肉
厚化することにより、ゴルフボールの打撃時でのエネル
ギーロスを低減するようにしたり（特開平１１ー３４７
１５５号公報）、フェースにフッ素系高分子素粒子が析
出したニッケルメッキ層を設けて、ゴルフボールの打撃
時の動摩擦係数を低減させ、スピンを低減させたり（特
開平５ー２２８２２９号公報）するものや、ヘッドのソ
ールの後半部に突起を設けることにより、フェースでの
スイートスポットを大きくしたり（特開平１１ー３４７
１５７号公報）、低重心でかつフェースでスイートスポ
ットの領域よりもその外側の領域の摩擦係数が大となる
ようにして（特開平５ー２３７２０６号公報）、フェー
スでのゴルフボールのヒット位置がぶれても、良好な飛
距離や方向性を維持できるような工夫が提案されてい
る。

【０００４】また、スイング中にクラブヘッドに揺れが
生ずると、ゴルフボールがフェースにスイートスポット
からはずれて当たったり、フェースが目標方向を正しく
向かないでゴルフボールに当たったりすることから、ク
ラブヘッドのソール（底面）にフェース側から後端部側
に向かって延び、かつ後端部側程幅が狭くなるる空気流
案内溝を設け、クラブヘッドの左右方向（フェースに沿
う方向）の揺れを規制するようにしたクラブヘッド（特
開平５ー３３７２２０号公報）や、クラブヘッドのクラ
ウン（頂面）に、フェースに垂直な方向に並べて、一対
の空気流案内凹部を設け、垂直方向の揺れを規制するよ
うにしたクラブヘッド（特開平５ー３３７２１９号公
報）が提案されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところで、発明者の実
験によると、スイングによる空気中のクラブヘッドの移
動とともに、このクラブヘッドの周りに空気流が生ずる
が、この空気流の乱れによってクラブヘッドの周辺に渦
流が生じ、しかも、かかる渦流が時間的に変化するため
に、クラブヘッドの周りに時間的に変動する押圧力が生
じて、クラブヘッドが上下左右方向（フェースに沿う互
いに垂直な方向）の揺れや、フェースに双方向やこれに
垂直な方向の軸を中心とする回動揺れが生ずることが分
かった。

【０００６】図１０はかかる実験の対象となった従来の
クラブヘッドを示し、同図（ａ）は側面側からみた斜視
図、同図（ｂ）は上面図であって、１’はクラブヘッ
ド、２はフェース、３はクラウン（上面）、３ａは縁
部、４はソール（底面）、４ａは縁部、５はサイド面、
６はホーゼル、７はヒール、８はトウである。

【０００７】図１０（ａ），（ｂ）において、このクラ
ブヘッド１’は、シャフト（図示せず）が結合されるホ
ーゼル６が設けられているクラウン３の縁部３ａとソー
ル４の縁部４ａとの間がサイド面５をなしている。この
サイド面５は、これらクラウン３とソール４との縁部に
沿い（以下、これら縁部３ａ，４ａに沿う方向をサイド
面５の長手方向という）、ほぼヒール７からトウ８まで
の間に渡って形成され、クラブヘッド１’を地面にソー
ルしたときにほぼ垂直な面をなすものである。

【０００８】図１１はシミュレーションを用いた上記実
験から得られた図１０のクラブヘッド１’の周りの空気
の流れの時間平均を摸式的に示す図であり、空気の流れ
方向を矢印Ａ方向としている。従って、クラブヘッド
１’が、そのフェース２（図１０）を前面にして、矢印
Ａとは逆方向に移動しているものを想定している。

【０００９】得られた結果によると、フェース２を越え
た空気は、クラブヘッド１’のクラウン３やサイド面
５，ソール４などの外面にこびり付くようにして、不規
則な渦を巻いており、かかる不規則な渦が時間とともに
変化する。

【００１０】図１２（ａ），（ｂ）はシミュレーション
を用いた上記の実験によって得られた図１０のクラブヘ
ッド１’の周辺での異なる瞬時の空気流による圧力分布
を摸式的に示す図であって、分布が密なところは、圧力
変化が大きいことを示している。

【００１１】同図（ａ），（ｂ）において、圧力分布
は、クラブヘッド１’の背後には、大きな圧力の変化が
あり、この大きな圧力変化部分とクラブヘッド１’との
間に圧力が小さい部分が生ずるが、この部分では、負の
圧力となる。

【００１２】図１３は上記実験結果を解析して得られた
図１１に示す空気の流れ方向（矢印Ａ）に沿う圧力変化
の時間平均を示す図である。

【００１３】同図において、クラブヘッド１’のフェー
ス２までは、フェース２に近づくにつれて正の圧力が増
加していき、フェース２を越えると急激に負の圧力まで
低下し、その後、圧力は上昇していく。

【００１４】この負の圧力により、クラブヘッド１’の
周りに空気の渦が生ずるものであり、特に、上記の大き
な圧力の変化部分がクラブヘッド１’に近いため、クラ
ブヘッド１’の近傍で大きな負の圧力が生じ、図１１に
示したようなクラブヘッド１’の外面にこびりつくよう
な空気の渦流が生ずるのである。

【００１５】そして、このような大きな負の圧力が時間
的に変化しながらクラブヘッド１’の外面に加わること
により、クラブヘッド１’に上下，左右方向の大きな揺
れやフェースにほぼ平行な軸やこれに垂直な軸を中心と
する大きな回動揺れ（以下、これを、単に、回動揺れと
いう）が生ずるのである。

【００１６】従って、図１０に示すような形状のクラブ
ヘッド１’の場合には、先の特開平５ー３３７２２０号
公報に記載のように、クラブヘッドのソール（底面）に
フェース側から後端部側に向かって延び、かつ後端部側
程幅が狭くなる空気流案内溝を設けても、あるいはま
た、先の特開平５ー３３７２２０号公報に記載のよう
に、クラブヘッドのクラウン（頂面）に、フェースに垂
直な方向に並べて、一対の空気流案内凹部を設けても、
その外面に時間的に変化する不規則で大きな負の圧力が
生ずることにより、クラブヘッドに生ずる左右，上下方
向の揺れや回動揺れを効果的に抑制することができない
ことになる。

【００１７】本発明の目的は、かかる問題を解消し、外
周面に加わる負の圧力を低減し、上下，左右方向の揺れ
や回動揺れを効果的に抑圧することができるようにした
クラブヘッドを提供することにある。

【００１８】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、クラウンの縁部とソールの縁部との間に
サイド面が、その長手方向がヒールとトウとの一方側か
ら他方側に渡るように、形成されており、該サイド面
に、該サイド面の長手方向に沿って伸延する１以上の溝
部を設けた構成とする。

【００１９】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を
用いて説明する。図１は本発明によるクラブヘッドの一
実施形態を示し、同図（ａ）はその側面側からみた斜視
図、同図（ｂ）は上面図、同図（ｃ）は同図（ｂ）で矢
印Ｙ方向から一部を見た側面図、同図（ｄ）は同図
（ｂ）に示すＸ領域を拡大して示す部分断面図であっ
て、９は溝部、９ａはこの溝部９の先端部であり、図１
０に対応する部分には同一符号を付けて重複する説明を
省略する。

【００２０】図１（ａ），（ｂ）において、クラウン
（上面）３の縁部３ａとソール（底面）４の縁部４ａと
の間にほぼソール７からトウ８に渡ってサイド面５が設
けられており、このサイド面５に、その長手方向（ソー
ル７からトウ８方向に見た方向であって、クラウン３の
縁部やソール４の縁部に沿う方向）に沿って断面形状
が、例えば、円弧状の溝部９が形成されている。

【００２１】ここで、この溝部９は、サイド面５の一部
に形成されているものと図示しているが、サイド面５の
形成範囲の全体に渡ってもよい。従って、上記のよう
に、サイド面５をほぼソール７からトウ８に渡って形成
する場合には、このサイド面５の長手方向に沿ってほぼ
ソール７からトウ８まで溝部９を形成してもよい。ま
た、溝部９の深さａはサイド面５の幅ｂのほぼ１／２
倍、あるいは１／２倍以下としている。

【００２２】また、図１（ｃ）に示すように、溝部９の
面は、サイド面５に対し、クラウン３側から内側に角度
αで傾斜し、また、ソール４側からも内側に角度βで傾
斜した面をなしている。ここで、角度α，βは、０゜＜
α，β≦９０゜である。

【００２３】さらに、トウ８側について示す図１（ｄ）
に示すように、溝部９の先端部９ａは、その面がサイド
面５に対して急激に内側に傾斜しており、段付き状とな
っている。即ち、この先端部９ａでのサイド面５の取り
付け部のサイド面５に対する傾斜角γは、大きい方（例
えば、９０゜に近い方）が好ましい。このことは、ヒー
ル７側の先端部についても同様である。

【００２４】以上の構成のクラブヘッド１を、図１０に
示したクラブヘッド１’に対して行なった実験と同様の
実験を行ない、次のような結果を得た。

【００２５】図２はシミュレーションを用いた上記実験
によって得られたクラブヘッド１の周りの空気の流れの
時間平均を摸式的に示すものであって、空気の流れ方向
を矢印Ａ方向としている。従って、クラブヘッド１が、
そのフェース２（図１）を前面にして、矢印Ａとは逆方
向に移動しているものと想定している。

【００２６】得られた結果によると、クラブヘッド１の
周囲に空気の渦流が生じたが、このクラブヘッド１の外
周面にこびりつくような渦流はほとんどみられなかっ
た。

【００２７】図３（ａ），（ｂ）はシミュレーションを
用いた上記の実験によって得られたクラブヘッド１の周
辺での異なる瞬時の空気流による圧力分布を摸式的に示
す図であり、分布が密なところは、圧力変化が大きいこ
とを示している。

【００２８】同図（ａ），（ｂ）において、圧力分布
は、クラブヘッド１の背後に大きな圧力の変化があり、
この大きな圧力変化部分とクラブヘッド１との間に負の
圧力が生ずる部分があるが、このこの大きな圧力変化部
分は、図１２に示した従来のクラブヘッド１’の場合よ
りもクラブヘッド１から離れた部分に生ずることがわか
った。

【００２９】図４は上記実験結果を解析して得られた図
２に示す空気の流れ方向（矢印Ａ）に沿う圧力変化の時
間平均を示す図である。

【００３０】同図において、図１３の場合と同様、クラ
ブヘッド１のフェース２までは、フェース２に近づくに
つれて正の圧力が増加していき、フェース２を越えると
急激に負の圧力まで低下し、その後、圧力は上昇してい
くが、図３に示したように、図１３の場合と比べて、大
きな圧力変化部分がクラブヘッド１から大きく離れて生
ずるだけ、発生する負の圧力が小さい。

【００３１】このため、図２に示したように、図１１の
場合と比べて、この負の圧力によってクラブヘッド１の
表面にこびり付くように発生する空気の渦が少ないので
あり、従って、クラブヘッド１を上下，左右方向に揺ら
す圧力や回動揺れを生じさせる圧力が小さくなる。

【００３２】図５は図１０に示した従来のクラブヘッド
１’と図１に示したこの実施形態のクラブヘッド１とで
の左右揺れを生じさせる横力(Side Force）の時間履歴
のシミュレーション結果を比較して示す図であり、同図
から明らかなように、クラブヘッド１の方が横力の変化
が小さく、従って、左右方向の揺れが少ないことが分か
る。上下方向の揺れや回転揺れを生じさせる圧力につい
ても、同様の結果が得られた。

【００３３】また、図６は図１０に示した従来のクラブ
ヘッド１’と図１に示したこの実施形態のクラブヘッド
１とでのスイングとは逆方向に作用する力の向きに相当
する抗力(Drag Foece）係数の時間履歴のシミュレーシ
ョン結果を比較して示す図であり、同図から明らかなよ
うに、クラブヘッド１の方が抗力が小さく、従って、ス
ムーズにスイングし易いことが分かる。

【００３４】以上のように、この実施形態では、サイド
面５に溝部９を設けたことにより、上記のようなぶれを
効果的に低減することができ、かかるぶれによるフェー
ス２でのゴルフボールのヒットの不具合を回避できるも
のである。

【００３５】ところで、上記の実施形態では、溝部９の
断面形状をほぼ円弧状としたが、それ以外の断面形状、
例えば、図７（ａ）に示すような楕円状や同図（ｂ）に
示すような矩形状，同図（ｃ）に示すような三角形状，
同図（ｄ）に示すような台形状，同図（ｅ）に示すよう
な任意の曲線状，同図（ｆ）に示すような複数の形状の
複合形状など、任意の断面形状とすることができる。勿
論、以上のような溝部９の底面での上下の両サイドに、
例えば、図７（ｇ）に示すように、ｒ面を設けるように
してもよい。さらには、以上説明した溝部９の幅（上下
方向）は、サイド面５の幅（上下方向）ほぼ全体に渡る
ものとしたが、例えば、図７（ｈ）に示すように、溝部
９の幅をサイド面５の幅の一部としてもよい。このよう
に溝部９の断面形状をいずれにしても、図１で説明した
ように、かかる溝部９の深さａはサイド面５の幅ｂのほ
ぼ１／２倍、あるいは１／２倍以下とする。しかし、こ
の深さａをサイド面５の幅ｂの１／２倍以上としても良
いことは勿論であるが、これによって所期の効果が格別
顕著になるものではなかった。

【００３６】また、サイド面５での溝部９の形成範囲と
しては、図１（ｂ）で説明したようなほぼヒール７から
トウ８までを最大範囲としたが、この最大範囲を越えて
溝部９を形成することもできる。しかし、これによって
上記のような効果が著しく向上するわけではなかった。

【００３７】さらに、上記の実施形態では、サイド面５
に溝部９を１つ設けるものとしたが、図８に示すよう
に、２以上の溝部９を、互いに平行に、サイド面５の幅
方向に並べて設けるようにしてもよいし、また、図９
（ａ），（ｂ）に示すように、サイド面５の長手方向に
２個または３個以上の溝部９₁，９₂，９₃を並べて形成
するようにしてもよく、さらには、図８，図９を組み合
わせたように溝部を形成するようにしてもよい。

【００３８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明によると、
スイング時でのクラブヘッドに作用する圧力の変動を抑
圧して、上下左右方向の揺れや回転揺れを効果的に防止
することができ、ゴルフボールの飛距離や方向性を大幅
に高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるクラブヘッドの一実施形態を示す
図である。

【図２】シミュレーションを用いた実験による図１に示
したクラブヘッドの周辺での空気の流れを摸式的に示す
図である。

【図３】シミュレーションを用いた実験による図１に示
したクラブヘッドの周辺での圧力分布を摸式的に示す図
である。

【図４】実験結果を解析して得られた図１に示したクラ
ブヘッドでの圧力変化を示す図である。

【図５】従来のクラブヘッドと図１に示したクラブヘッ
ドとでの左右揺れを生じさせる横力の時間履歴の解析結
果を比較して示す図である。

【図６】従来のクラブヘッドと図１に示したクラブヘッ
ドとでのスイングとは逆方向に作用する力の向きに相当
する抗力係数の時間履歴の解析結果を比較して示す図で
ある。

【図７】図１に示した実施形態での溝部の断面形状の他
の具体例を示す図である。

【図８】図１に示した実施形態での溝部の他の具体例を
示す図である。

【図９】図１に示した実施形態での溝部のさらに他の具
体例を示す図である。

【図１０】従来のクラブヘッドの一例を示す図である。

【図１１】シミュレーションを用いた実験による図１０
に示した従来のクラブヘッドの周辺での空気の流れを摸
式的に示す図である。

【図１２】シミュレーションを用いた実験による図１０
に示した従来のクラブヘッドの周辺での圧力分布を摸式
的に示す図である。

【図１３】実験結果を解析して得られた図１０に示した
従来のクラブヘッドでの圧力変化を示す図である。

【符号の説明】 １ クラブヘッド ２ フェース ３ クラウン（上面） ４ ソール（底面） ５ サイド面 ６ ホーゼル ７ ヒール ８ トウ ９，９ａ，９ｂ，９₁〜９₃ 溝部

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Ｆターム(参考） 2C002 AA02 CH04

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 クラウンの縁部とソールの縁部との間に
   サイド面が、ヒール側からトウ側の方向をその長手方向
   として、形成されたクラブヘッドにおいて、 該サイド面に、該サイド面の長手方向に沿って伸延する
   １以上の溝部を設けたことを特徴とするクラブヘッド。