JP2002286724A - タンパク質検出方法 - Google Patents

タンパク質検出方法

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JP2002286724A
JP2002286724A JP2001089983A JP2001089983A JP2002286724A JP 2002286724 A JP2002286724 A JP 2002286724A JP 2001089983 A JP2001089983 A JP 2001089983A JP 2001089983 A JP2001089983 A JP 2001089983A JP 2002286724 A JP2002286724 A JP 2002286724A
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peptide
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Tomohiro Suzuki
智博 鈴木
Takeshi Nomoto
毅 野本
Nobuko Yamamoto
伸子 山本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 短鎖のペプチドであっても、抗体分子と匹敵
する程、高い再現性で、大きな結合力が得られる、新規
な構成のペプチド・プローブをその表面に保持する固相
を利用する目的タンパク質の検出方法の提供。 【解決手段】 ペプチド・プローブをその表面に保持す
る固相は、モノマー分子と目的タンパク質と親和性を有
するペプチド鎖をその側鎖に有するモノマー分子とを共
重合してなる共重合体樹脂をその表面に有し、ペプチド
鎖をその側鎖に有するモノマー分子の含有比率は、主に
含有されるモノマー分子に対して、少量として、ペプチ
ド・プローブが、モノマー分子の側鎖として、表面に表
出しているものを用いて、目的タンパク質の検出をす
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、固相表面に目的タ
ンパク質を固定して検出する方法に関し、より具体的に
は、目的タンパク質に対して親和性を有するペプチド鎖
を利用し、固相表面に固定される前記ペプチド鎖との結
合を介して、固相表面に目的タンパク質を固定して検出
する方法、ならびに、かかる検出方法に利用する前記ペ
プチド鎖をその表面に固定した固相に関する。
【0002】
【従来の技術】タンパク質は生体を構成する主要な物質
の一つであり、例えば、筋肉組織など生体組織自体の構
成要素としてだけでなく、細胞質中や体液中に含まれ
る、酵素、ホルモン、生理活性物質など、様々な生理的
な機構に関与するタンパク質も多数存在している。生体
組織の大部分において、これらタンパク質は、それぞ
れ、その生体内での種々の機能を司る重要な役割を担っ
ていることから、必要なタンパク質の存在や機能の確認
は様々な観点から重要な作業とされている。
【0003】加えて、近年、種々の疾病において、その
疾病と密接な関連性を示すタンパク質が確認され、その
種のタンパク質を疾病のマーカー物質として、診断に利
用する技術が注目されている。この技術は、ある種の疾
病に冒された患者の体内には、その患部において、その
疾病に特有な、特定のタンパク質が産生されることを利
用し、例えば、血液検査等により、特定のタンパク質産
生の有無を調べれば、病気の診断に有用な情報が入手で
きるという技術である。例えば、代表的な例である腫瘍
マーカーは、ガンマーカーとも呼ばれ、生体内の組織が
ガン化することにより、異常産出されるタンパク質であ
り、具体的には、AFP(a-フェトプロテイン)、CEA(ガ
ン胎児性抗原)、BFP(塩基性胎児抗原)、PIVKA−II
(異常プロトロンビン)などがよく知られている。これ
ら腫瘍マーカーについて、そのタンパク質量を測定する
ことにより、より高い確度でガンの診断が可能となる。
腫瘍マーカー以外にも、様々な疾病に対して、それに特
異的なタンパク質の存在が判明してきており、診断への
応用が検討されており、実際に実用化しているものも少
なくない。
【0004】特定のタンパク質を検出する技術に関する
重要性は、当然、以前から認識されており、多くの研究
が行われている。生体内で産生されるタンパク質は、遺
伝子の塩基配列に従い、定まったアミノ酸配列を有する
ものの、そのアミノ酸配列は、個々のタンパク質が、そ
れぞれの機能を発揮するように、多様性に富んでいる。
加えて、生体内で産生されるタンパク質は、分子量が大
きいものの、体内での代謝に起因する不安定さを有する
ため、生体内において、ごく微量しか存在しないものも
多い。以上の要因が重なり、生体内で産生されるタンパ
ク質相互を区別して、検出する作業は困難を伴うことが
多い。
【0005】タンパク質は、通常20種類の天然L−アミ
ノ酸から構成されており、異なる種類のタンパク質は、
互いにアミノ酸配列が異なるものの、巨視的に見れば、
その物理的性質は類似しているため、低分子化合物では
有効な、通常のカラムクロマトグラフィーなどの物理化
学的な手法を利用して、特定のタンパク質の選択的な検
出や同定を行うことは困難な作業となっている。
【0006】一方で、生物学的な手法を利用して、特定
のタンパク質を選択的に検出する方法は、これまでにも
多くの技術が開発され、実用化されている。代表的な技
術としては、生体内における抗原抗体反応を応用し、特
異的抗体を作製し、それを用いて、検出を図る技術があ
る。この技術では、検出したい目的タンパク質(抗原)
に対し、特異的に反応する抗体を作用させて、得られる
抗原−抗体複合物を分離し、抗体に予め結合させておい
た標識、例えば、蛍光色素からの蛍光やヨウ素125など
の放射性同位体による放射線を測定することによって、
目的タンパク質を検出する。特に、抗体を酵素で標識
し、この標識酵素による発色反応を利用する方法は、エ
ンザイム・イムノアッセイ法と呼ばれ、広く一般的に利
用されている。
【0007】また、目的タンパク質に対して、強い親和
性を有する短鎖ペプチドを、ペプチド・ライブラリーな
どを利用してスクリーニングにより取得し、そのアミノ
酸配列を決定した上で、そのアミノ酸配列を有する短鎖
ペプチドを多量に人工的に合成し、この短鎖ペプチドと
目的タンパク質との複合体形成を利用する方法も近年検
討されている。例えば、特開平5−322901号公報
には、6merのペプチドによるエンドセリン−1の検出が
記載されている。この公報に記載する方法おいては、目
的タンパク質のエンドセリン−1に対する受容体のアミ
ノ酸配列を基に、この目的タンパク質との結合に関与す
る6merのアミノ酸配列を特定し、そのアミノ酸配列を含
むペプチドを検出用プローブとして利用している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記イムノアッセイ法
は、極めて選択性が高く、研究目的では既に確立された
手法となっている。その際、検出に必要となる特異抗体
は、通常、ウサギ、マウス、山羊等の動物を抗原により
免疫し、その血清(坑血清)より抗体(ポリクローナル
抗体)を得たり、更に、免疫細胞から、細胞融合法によ
り抗体産生性ハイブリドーマを作製・確立した上で、こ
のハイブリドーマを動物の腹腔または、フラスコ内で培
養して、腹水または培養液から、抗体(モノクローナル
抗体)を回収して、取得される。しかし、この動物の免
疫反応を利用した抗体の作製は、多くの手間と時間を必
要とする。加えて、ポリクローナル抗体の場合、産生量
が不安定であることや、製造したときの条件や動物によ
り親和性に誤差があったりするなどの問題がある。一
方、モノクローナル抗体は、その反応性には再現性があ
るものの、目的の性能の抗体を産生するハイブリドーマ
の作製に手間や時間がかかる等の問題がある。また、検
出プローブである抗体自体もタンパク質であることか
ら、温度、pHなどの条件によっては、その構造が不安
定であったり、共存するプロテアーゼにより、場合によ
っては、消化を受けるなど、不安定要素を内在すること
も少なくない。
【0009】一方、親和性を有するペプチドを用いた検
出は、プローブとするペプチドは、抗体に比べて安定性
が高く、一旦、そのアミノ酸配列が決定されると、合成
自体は、比較的に簡単である。また、温度、pHなどの
条件による構造変化がなく、検出操作はより単純化でき
る利点である。一般に、ペプチドとタンパク質間の結合
力は、特異抗体に比べて、弱いという難点を残してる。
【0010】プローブ・ペプチドあるいは特異抗体とタ
ンパク質との結合は、その結合に関与する部分アミノ酸
配列相互で、水素結合、疎水結合、分子間力などの弱い
結合力によって形成されている。抗体分子では、これら
個々には弱い結合を、一連の部分アミノ酸配列(エピト
ープ)を利用して多数形成することによって、抗体分子
全体として、大きな結合力と特異性を獲得している。そ
れに比較して、タンパク質との結合に関与するアミノ酸
配列長が限られている、短鎖のペプチドでは、抗体分子
と匹敵する程、高い再現性で、大きな結合力を獲得する
ことは容易なものでない。
【0011】本発明は前記の課題を解決するもので、本
発明の目的は、目的タンパク質の検出を、かかる目的タ
ンパク質に対して、特異的な親和性を有するペプチド・
プローブを利用し、このペプチド・プローブとの結合を
介してタンパク質を固相上に固定化して、分離・検出を
行う際、用いるペプチド・プローブを固相表面に強固に
固定するとともに、その状態で、短鎖のペプチドであっ
ても、抗体分子と匹敵する程、高い再現性で、大きな結
合力が得られる、新規な構成のペプチド・プローブをそ
の表面に保持する固相を利用する目的タンパク質の検出
方法を提供することにある。より具体的には、本発明の
目的は、特異的な親和性を有するペプチド・プローブを
樹脂表面に共有結合により固定した状態で、その固定さ
れたペプチド・プローブが、目的タンパク質に対し特異
的な親和性を示すアミノ酸配列により、より強固な結合
形成が可能な形態とされた、その表面にペプチド・プロ
ーブを固定した樹脂材料からなる目的タンパク質の検出
用の固相を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記の課
題を解決すべく、鋭意研究を進めたところ、目的タンパ
ク質を検出する際、目的タンパク質に対し特異的な親和
性を示すアミノ酸配列を有するペプチド鎖を樹脂表面に
固定する手段として、この樹脂を重合反応により作製す
る際、その原料モノマー分子の一部として、このペプチ
ド鎖を予めモノマー分子に共有結合により連結したもの
を用い、共重合体樹脂とすることにより、ペプチド鎖が
共重合体の基本骨格に対して側鎖として存在し、その樹
脂表面に均一な密度で配置されたものとできることを見
出した。特に、その重合を行う際、反応系内に、目的タ
ンパク質を溶解させ、モノマー分子に共有結合により連
結したペプチド鎖に目的タンパク質が結合した状態で共
重合体鎖の伸長を行うと、そのペプチド・プローブ部の
周囲の樹脂は、目的タンパク質の結合した形態に対応す
る微視的な表面形状となることをも見出した。本発明者
らは、前記の知見に加えて、その後、目的タンパク質を
ペプチド鎖から外して、樹脂表面にペプチド・プローブ
が共重合体の基本骨格に対して側鎖として存在するもの
を用いると、短鎖のペプチドであっても、抗体分子と匹
敵する程、高い再現性で、大きな結合力が得られること
を確認し、本発明を完成するに至った。
【0013】すなわち、本発明の目的タンパク質の検出
方法は、目的タンパク質に対する特異的な親和性を有す
るペプチド・プローブをその表面に保持する固相を利用
して、前記ペプチド・プローブとの結合を介して目的タ
ンパク質を固定して、目的タンパク質を検出する方法で
あって、前記ペプチド・プローブをその表面に保持する
固相は、モノマー分子と目的タンパク質と親和性を有す
る前記ペプチドをその側鎖に有するモノマー分子とを共
重合してなる共重合体樹脂をその表面に有し、目的タン
パク質と親和性を有する前記ペプチドをその側鎖に有す
るモノマー分子の含有比率は、主に含有されるモノマー
分子に対して、少量であり、前記ペプチド・プローブ
は、前記モノマー分子の側鎖として、表面に表出してい
ることを特徴とする目的タンパク質の検出方法である。
【0014】この本発明の検出方法においては、前記共
重合体樹脂として、前記モノマー分子と目的タンパク質
と親和性を有する前記ペプチドをその側鎖に有するモノ
マー分子とを含む溶液に、前記目的タンパク質をも溶解
させ、この目的タンパク質も混在した状態で共重合反応
して得られる共重合体樹脂を用いることが好ましい。
【0015】その際、前記共重合体樹脂において、その
共重合体の基本骨格を与える前記モノマー分子には、熱
可塑性樹脂を構成するモノマー分子を用いることができ
る。また、前記共重合体樹脂において、その共重合体の
基本骨格を与える前記モノマー分子には、熱硬化性樹脂
を構成するモノマー分子を用いることもできる。
【0016】例えば、前記共重合体樹脂において、その
共重合体の基本骨格を与える前記モノマー分子には、ポ
リアクリルアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ
塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ
アミド、ポリアセタール、フッ素樹脂のいずれかの熱可
塑性樹脂を構成するモノマー分子を用いることができ
る。あるいは、前記共重合体樹脂において、その共重合
体の基本骨格を与える前記モノマー分子には、尿素樹
脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウ
レタン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂の
いずれかの熱硬化性樹脂を構成するモノマー分子を用い
ることもできる。
【0017】本発明の検出方法では、前記共重合体樹脂
がその表面を構成する固相の形状は、微粒子状の粒子と
することができる。さらには、前記共重合体樹脂がその
表面を構成する固相は、ガラス基板、金属薄膜、プラス
チック基板のいずれかを基材とし、前記共重合体樹脂層
は、その表面に形成されているキャストフィルムである
ものとすることもできる。
【0018】本発明の検出方法は、検出対象とする前記
目的タンパク質が、シトクロムCである際にも、好適な
検出方法として適用できる。その際には、目的タンパク
質のシトクロムCに対して、特異的に親和性を有する前
記ペプチド・プローブは、下記のアミノ酸配列: (N末端) Thr-Leu-Pro-Pro-Gln-Gly-Leu-Ser-Pro-Se
r-Pro-Gly (C末端) を含むペプチドであることが好ましい。加えて、前記共
重合体樹脂を構成するモノマー分子として、メタクリル
酸を利用することができる。
【0019】加えて、本発明は、上記の構成を有する本
発明の目的タンパク質の検出方法において利用する、目
的タンパク質に対する特異的な親和性を有するペプチド
・プローブをその表面に保持する固相を構成する樹脂を
も提供し、その一例として、前記目的タンパク質のシト
クロムCを対象とする際に好適な樹脂として、下記する
構成の樹脂の発明をも提供する。
【0020】すなわち、本発明にかかる樹脂は、例え
ば、前記目的タンパク質のシトクロムCを対象とする際
に、好適な態様として記載すると、モノマー分子とペプ
チド鎖をその側鎖に有するモノマー分子とを共重合して
なる共重合体樹脂であって、前記ペプチド鎖をその側鎖
に有するモノマー分子の含有比率は、主に含有されるモ
ノマー分子に対して、少量であり、この共重合体の基本
骨格を与える前記モノマー分子は、メタクリル酸であ
り、前記ペプチド鎖は、下記のアミノ酸配列: (N末端) Thr-Leu-Pro-Pro-Gln-Gly-Leu-Ser-Pro-Se
r-Pro-Gly (C末端) を含むペプチドであることを特徴とする樹脂である。
【0021】
【発明の実施の形態】本発明の目的タンパク質の検出方
法では、検出対象となる目的タンパク質に対し抗体と同
程度もしくはそれに近い親和性を有し、抗体よりも化学
的に安定でかつ化学合成が比較的容易なペプチド鎖をそ
の表面に固定した樹脂を利用して、かかるペプチド・プ
ローブと目的タンパク質との結合を介して、固相上に固
定化することにより、短鎖のペプチドであっても、抗体
分子と匹敵する程、高い再現性で、大きな結合力を示す
ものとして、目的タンパク質の検出を行っている。
【0022】一般に、ペプチド・プローブと目的タンパ
ク質との結合は、その結合に関与するアミノ酸残基数が
増すほど、より大きな結合力を示し、また、多くの場
合、構成する全アミノ酸残基数が増すほど、すなわち、
ペプチド鎖長が長いほど、例えば、二次元構造を形成す
るなどして、その立体構造は安定化し、目的タンパク質
との結合における特異性も高くなる。従って、ペプチド
・プローブに利用するペプチドは、目的タンパク質との
結合に関与するアミノ酸配列として、少なくとも5アミ
ノ酸残基以上を有するものが好適に利用でき、そのペプ
チド鎖を化学合成を行う際の合成効率、あるいは、モノ
マー分子とペプチド鎖との連結を図る際における、取り
扱い上の利便性などを考慮すると、長くとも、ペプチド
鎖長が50アミノ酸残基を超えない範囲に選択すること
が望ましい。本発明の目的は、ペプチド・プローブに利
用するペプチドとして、容易に、高い収率で化学合成可
能なペプチドを利用する点にあることを考慮すると、5
〜30アミノ酸残基の範囲に選択することがより好まし
い。なお、プローブとして利用される特定のアミノ酸配
列を有するペプチド鎖が、化学的な合成手段に依らず、
大量に、高い純度で入手可能な場合には、前記ペプチド
鎖のアミノ酸残基の範囲を超える、長いペプチド鎖長を
用いることも可能である。
【0023】例えば、長いペプチド鎖長のペプチド・プ
ローブを利用する際には、目的タンパク質との結合に関
与するアミノ酸配列を除き、そのペプチド鎖中、途中部
分のアミノ酸残基において、モノマー分子との連結を図
る形態とすることも可能である。また、ペプチド鎖長が
短い際には、目的タンパク質との結合に関与するアミノ
酸配列を除き、そのペプチド鎖のいずれかの末端部分
で、モノマー分子との連結を図る形態とすることが好ま
しい。
【0024】利用される樹脂表面は、目的タンパク質へ
の高い親和性を持たせるため、目的タンパク質に強い親
和性を示すペプチド鎖を樹脂の基本骨格に対して側鎖と
して含み、また、このペプチド鎖周囲の樹脂表面の微視
的な構造、分子レベルでの形状も、目的タンパク質の外
形に沿った、補足しやすいような形状となしている。そ
のため、目的タンパク質は、前記ペプチド鎖を中心とす
る相互作用点において、樹脂表面に対し特異的に結合さ
れ、保持されるが、ペプチド鎖に親和性のない他のタン
パク質は、樹脂表面に結合・保持されることはないた
め、この結合・保持力の差違を利用して、目的タンパク
質を選択的に分離、検出できる。
【0025】本発明の検出方法に利用する、樹脂表面に
ペプチド・プローブが共重合体の基本骨格に対して側鎖
として存在する樹脂の作製、ならびに、それを用いた目
的タンパク質の分離・検出は、例えば、以下に示す工程
によりなされる。 (1)検出対象とする目的タンパク質に強い親和性を有
するペプチドを探索し、そのアミノ酸配列を有するペプ
チドを化学合成する工程。 (2)共重合体樹脂を構成するモノマー分子に、先に合
成したペプチド鎖を結合する工程。 (3)目的タンパク質と、ペプチド鎖を結合したモノマ
ー分子、モノマー分子、必要に応じて、その他樹脂の骨
格を形成する分子とを混合し、その混合溶液に重合開始
剤を加えて、重合反応を行なう工程。 (4)共重合体樹脂を粉砕し、微粒子状に加工して、カ
ラムに充填し、樹脂表面のペプチド鎖との結合により目
的タンパク質の分離、測定を行なう工程。
【0026】または(4)共重合体樹脂を各種基板上で
フィルム状に加工し、フィルム表面のペプチド鎖と特異
的に結合した目的タンパク質を検出する工程。
【0027】前記の本発明を実施する際、最初の工程
(1)である、目的タンパク質に親和性のあるペプチド
の探索は、例えば、ファージ・ディスプレー法によって
作製されるランダム・ペプチド・ライブラリーからにス
クリーニングにより、容易に探索することができる。こ
のファージ・ディスプレー法によって作製されるランダ
ム・ペプチド・ライブラリーからのスクリーニングは、
例えば、BioLab社から市販されているキットを用い、所
定の操作方法に従って行うことで、特定のタンパク質に
親和性のあるペプチドを選別し、そのアミノ酸配列を知
ることができる。このファージ・ディスプレー法以外に
も、化学合成されたペプチド・ライブラリーの利用によ
って、目的タンパク質に親和性のあるペプチドを選び出
すことも可能である。この化学合成されたペプチド・ラ
イブラリーはビーズ状の樹脂の上に、ランダムなアミノ
酸配列を有する、約10merのペプチドが人工的に合成さ
れたもので、約20種のアミノ酸からなるあらゆる配列を
持ったペプチドを含んでいる。1つのビーズには、それ
ぞれ1種のペプチドが存在するため、目的タンパク質と
作用させ、強い親和性のあるビーズ樹脂を選び出し、ビ
ーズ上のペプチドのアミノ酸配列を解析すれば、目的タ
ンパク質に親和性を有するアミノ酸配列を選び出すこと
ができる。ファージ・ディスプレー法では、スクリーニ
ングの際、目的タンパク質をタイタープレートに吸着さ
せる必要があるのに対し、前記の化学合成されたペプチ
ド・ライブラリーを用いる方法では、遊離状態のタンパ
ク質を用いて、スクリーニング操作が可能である。どち
らの方法でも、例えば、目的タンパク質上の結合部位が
異なる、親和性のあるペプチドが複数得られてしまう可
能性があるが、必要に応じて1種に絞り込んでも良い
し、複数種のペプチドを選択しても良い。
【0028】なお、上記のスクリーニング手法を利用し
て、親和性を有するアミノ酸配列の探索を行わなくて
も、目的タンパク質に親和性のあるペプチドが既に文献
等に公表されている場合には、その情報をもとに、親和
性を有するアミノ酸配列を決定しても良い。例えば、目
的タンパク質に作用する酵素の認識部位や、その認識の
メカニズムが判明している際には、その情報をもとに目
的タンパク質に親和性のあるペプチドのアミノ酸配列を
決定しても良い。
【0029】得られた目的タンパク質に親和性を示すア
ミノ酸配列を含むペプチド合成は、一般的に行われる樹
脂上のFmoc固相合成法や、Boc法などの方法で、化学的
に合成することができる。
【0030】次いで、(2)の工程として、化学合成さ
れたペプチドは、後に重合反応で合成する共重合体樹脂
の原料モノマー分子に予め結合させ、ペプチド鎖が連結
されたモノマー分子とする。このペプチド鎖が連結され
たモノマー分子を、主成分のモノマー分子に対して、少
量用いて、重合反応により共重合体樹脂に作製する。な
お、この共重合体樹脂の作製に利用する主成分のモノマ
ー分子は、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリエ
チレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリカーボ
ネート、ポリアミド、ポリアセタール、フッ素樹脂など
のの熱可塑性樹脂や、尿素樹脂、フェノール樹脂、不飽
和ポリエステル樹脂、ポリウレタン、アルキド樹脂、エ
ポキシ樹脂、メラミン樹脂などの熱硬化性樹脂を与える
モノマー分子のいずれをも用いることができる。得られ
る共重合体樹脂は、前記の各種樹脂の基本骨格に対し
て、ペプチド鎖がその側鎖として、均一な密度で含有す
るものとなる。なお、本発明においては、利用可能な共
重合体樹脂は、ここに例示される種類の合成樹脂に限定
されるものではない。
【0031】なお、各種樹脂の基本骨格となるモノマー
分子は、共重合させて樹脂とするが、例えば、検出対象
となる目的タンパク質が熱的安定性に欠け、加熱下にお
ける重合に際して、構造変化を起こす懸念がある場合、
利用するモノマー分子として、加熱しなくとも、重合反
応を誘起できる樹脂原料、例えば、光反応性の重合が可
能な樹脂原料などを利用することもできる。
【0032】ペプチド鎖をモノマー分子に結合させる
際、ペプチドを構成するアミノ酸残基側鎖の複数の官能
基も、モノマー分子と反応する可能性を有する場合に
は、必要に応じて、このペプチドを構成するアミノ酸残
基側鎖上の官能基を保護基で保護した上で、ペプチド鎖
の末端でモノマー分子との結合を行った後、脱保護する
ことが好ましい。
【0033】本発明を実施する際、(3)の工程は、次
のような構成で行うことが好ましい。目的タンパク質
と、樹脂原料である、得られたペプチド鎖と連結された
モノマー分子、主成分のモノマー分子、必要に応じて、
架橋形成などに利用するその他の樹脂原料分子を混ぜ合
わせ、混合溶液とし、それに重合開始剤を加え、加熱し
て重合反応を行なう。得られる共重合体樹脂の性状は、
原料モノマー分子の種類、さらには、架橋形成などに利
用するその他の樹脂原料分子による架橋構造などの、樹
脂構造により、その性状は決定されるため、得られる共
重合体樹脂の利用形態に合わせて、樹脂原料モノマー分
子の種類や、その使用量、重合条件などを適宜調整す
る。例えば、予め、ある程度のモノマーが連なっている
重合体を、原料中に加えておくことで、架橋形成用原料
による、ポリマー間の架橋頻度を低減して、樹脂全体の
樹脂硬度を調整することも可能である。反対に、2つの
モノマー分子が重合反応に関与しない部分で結合させた
ダイマー分子をその他の原料として加えることで、ポリ
マー間に架橋構造を導入し、樹脂の硬度を上げることも
可能である。
【0034】目的タンパク質と原料のモノマー分子など
を混ぜ合わせ、混合溶液とすると、まず、目的タンパク
質に親和性を有するペプチド鎖が、そのアミノ酸配列に
起因する、水素結合や疎水結合、あるいはイオン結合な
どの機構により、含まれている目的タンパク質と複合体
を形成する。その複合体形成を終了した後、重合開始剤
を加えて、加熱していくと共重合反応が開始される。ペ
プチド鎖に連結されているモノマー分子も、共重合反応
をして、ポリマー中に取り込まれるが、共重合体樹脂の
部分形状は、そのペプチド鎖と複合体形成している目的
タンパク質を取り囲む鋳型状の微視的な表面構造に形成
される。従って、目的タンパク質に親和性を有するペプ
チド鎖が樹脂表面に配置されるだけでなく、かかるペプ
チド鎖の存在する樹脂表面部分では、共重合体樹脂の骨
格自体も、目的タンパク質の形状に対応した、鋳型状の
微視的な表面構造となるため、目的タンパク質の形状に
適合した窪み構造の中心に、相互作用点となるペプチド
鎖が配置され、ペプチド鎖自体の親和性に加えて、その
周囲の微視的な表面構造も、結合状態を維持する上で貢
献する。その結果、ペプチド鎖自体の親和性と比較する
と、かかる樹脂表面に保持されているペプチド鎖におけ
る、実効的な結合力は格段に向上される。図1に、上記
する樹脂合成の過程を示す。
【0035】得られた共重合体樹脂は、その表面には、
樹脂の側鎖として、ペプチド鎖が固定され、さらに、目
的タンパク質の形状に対応する鋳型状の微視的表面構造
を具えたものとなっており、加えて、ペプチド鎖は、そ
の表面上に均一に分散して存在するものとなる。その結
果、目的タンパク質は、かかるペプチド・プローブに対
して、高い結合力で特異的に結合する。
【0036】得られた共重合体樹脂をその表面に有する
固相は、目的タンパク質の測定あるいは検出を行う機
器、手法に応じて、好ましい形状に加工する必要があ
る。例えば、樹脂が固形物として得られる際には、目的
タンパク質と作用させる表面を、均一に露出させ、実効
的な接触表面積を広げるため、粉砕器により樹脂を微粒
子状にする。樹脂が液状で回収された場合には、基板上
に薄膜を形成させる等の方法によりフィルム状にし、表
面積を広げることができる。このような実効的な表面積
を広げる処理を施すことで、前記樹脂表面に形成されて
いる、ペプチド鎖を中心とする相互作用点は、目的タン
パク質を溶解する液とより高い頻度で接することが可能
となり、その結果、目的タンパク質との結合を起こす機
会を増すことができる。
【0037】より具体的には、検出手法として、カラム
クロマトグラフィーを利用する際には、前記樹脂を粉砕
し微少粒子にしたものを、粒径を揃えた上で、カラムの
充填剤として使用する。この粒子状樹脂を充填したカラ
ムにかけられた目的タンパク質は、樹脂表面上の、相互
作用点では、タンパク質分子の形状がその鋳型状の表面
構造に対しても、特異的に親和性を有するため、他のタ
ンパク質に比べカラム内の保持時間が長くなる。樹脂表
面に親和性を有するペプチド・プローブを持たないタン
パク質は、カラムに保持されないため、速やかに溶出し
た後、相互作用点に保持されていた目的タンパク質は、
遅れて溶出してくる成分として、検出される。そのた
め、前記の粒子状樹脂を充填したカラムを利用すること
で、目的タンパク質の高い純度での分離・検出が可能と
なる。
【0038】なお、樹脂を、基材のガラス基板や金属薄
膜などの表面にフィルム状に形成する場合は、樹脂の重
合過程で基板上にスピンコートしフィルムを形成してお
くことも可能である。なお、熱可塑性の樹脂である場合
には、樹脂合成後、加熱してフィルム状に加工すること
が可能である。樹脂をガラス基板などの表面にフィルム
化した場合には、検体溶液中の目的タンパク質を予め蛍
光色素などにより標識しておくと、基板表面に検体を作
用させた後、基板からの蛍光等を測定することで目的タ
ンパク質の検出を行うことも可能となる。
【0039】
【実施例】以下、実施例を示して、本発明をより具体的
に説明する。なお、これら実施例は本発明の最良の実施
の形態の一例ではあるものの、本発明は、かかる実施例
により限定を受けるものではない。
【0040】(実施例1) シトクロムCに親和性を持つ樹脂の合成 [1] シトクロムCに親和性を有するペプチドの探索 シトクロムCに親和性を有するペプチドの探索は、ラン
ダム・ペプチド・ライブラリーとして、BioLab社から市
販されているPhage Display Peptide LibraryKitを利用
し、親和性スクリーニングより行った。用いた前記キッ
トは、ランダムなアミノ酸配列を有する12merのペプチ
ドをファージに結合させて、発現させて、ランダム・ペ
プチド・ライブラリーを構成するものであり、約2×1
9種類の配列の異なるペプチドが含まれている。親和
性スクリーニングの標的タンパク質であるシトクロムC
は、Sigma社より市販されている、Bovin Heart由来のも
のを使用した。このキットを用いて、所定の操作に従っ
てスクリーニングを行い、シトクロムCと親和性を有す
る12merのペプチド1種を見出した。この選択された1種
のペプチドのアミノ酸配列は、下記の通りである。 (N末端) Thr-Leu-Pro-Pro-Gln-Gly-Leu-Ser-Pro-Se
r-Pro-Gly (C末端) [2] ペプチドの合成 渡辺化学工業社製の樹脂Fmoc-NH-SAL-Resin 2.5g
をNMP(N−メチルピロリドン)により膨潤させた。
膨潤した樹脂を、PPD(ピペリジン)の20%NMP溶
液で処理し、Fmoc基を除去した。樹脂をNMPで洗浄
し、PPDを完全に除去した。その後、3当量のFmoc−グ
リシン、縮合剤PyBOP、触媒HOBt及び6当量の
ジイソプロピルエチルアミンを加え、C末端のグリシン
として、Fmoc−グリシンを結合させた。次いで、カイザ
ーテストにより、樹脂表面へのアミノ酸(Fmoc−グリシ
ン)の導入を確認した。アミノ酸が導入されたことを確
認した後、PPDの20%NMP溶液を加え、Fmoc基の
除去を行った。続いて、多量のNMPにより、樹脂表面
を洗浄し、PPDを完全に除去した。
【0041】引き続き、上記アミノ酸配列に従い、C末
端のグリシンに加えて、そのN末端のトレオニンに至る
まで、Fmocアミノ酸の結合から、Fmoc基の除去、PPD
の洗浄までの一連の操作を、各アミノ酸毎に繰り返し、
目的のペプチドを固相合成した。なお、このFmoc法を利
用するペプチドの固相合成工程において、側鎖の保護が
必要なアミノ酸は、必要に応じて、トリフルオロ酢酸に
より脱保護可能な保護基を予め側鎖に結合したものを使
用した。
【0042】樹脂からのペプチドの切り出しは、m−ク
レゾール、チオアニソールの存在下、トリフルオロ酢酸
を用いて行った。また、アミノ酸側鎖の各保護基も、ト
リフルオロ酢酸により脱保護されるため、樹脂からのペ
プチド切り出しと、同時にアミノ酸側鎖の各保護基は全
て除去される。側鎖における脱保護と、C末での切り出
しを終えた後、液中のペプチドはジエチルエーテル中で
沈澱させ、デカンテーションにより繰り返し洗浄した。
【0043】得られた粗ペプチドは、C18逆相カラムを
装着したHPLCにより精製した。展開溶媒は、0.1%TFA存
在下、水とアセトニトリルの混合溶媒を使用した。な
お、ペプチドの検出は、220nmの吸収を測定するこ
とにより行った。HPLCで分離される目的画分より、上記
のアミノ酸配列を有する、精製ペプチド2100mgを
回収した。
【0044】[3] ペプチド鎖とのメタクリル酸アミ
ドの合成 メタクリル酸235mgと、先に合成したペプチド2100mgをD
MF5mlに溶解させた。完全に溶解したことを確認した
後、この溶液を氷浴に移し、ジシクロヘキシルカルボジ
イミド564mgとHOBt 369mgを添加した。氷浴上で2時間
攪拌して、反応させた後、液を、室温に戻し、さらに2
4時間攪拌して、アミド化反応を完了させた。反応終了
後、析出したウレアをろ過した後、反応液を冷却したジ
エチルエーテルに滴下した。
【0045】析出した白色の粉末を遠心分離により回収
し、数回ジエチルエーテルで洗浄し、メタクリル酸とペ
プチド鎖とがアミド結合で連結された、ペプチド鎖との
メタクリル酸アミドの粗精製物1950mgを得た。反応式を
図2に示す。
【0046】[4] 樹脂の合成 シトクロムC 1000mgを、下記式(1)で示されるエチ
レングリコール ジメタクリレート 5200mg、メタクリ
ル酸 520mg、先に合成したペプチド鎖とのメタクリル
酸アミド 1950mg、重合開始剤アゾビスイソブチロニト
リル 60mgとともに、10mlの水−アセトニトリル混合溶
媒(容積比1:2)に溶解し、試験管に注いだ。窒素ガス
を用いて、この液を十分に脱気した後、窒素雰囲気下で
試験管を封印した。その状態で、オイルバスにて90℃で
24時間重合反応を行った。得られた架橋を有する共重
合体の沈澱物を取り出し、水及びアセトニトリルで洗浄
した。この架橋を有する共重合体樹脂は、乾燥した後、
樹脂を細かく粉砕し、Alpine multiplex 100MZRを用い
て、粒径45μm〜60μmの樹脂片を回収した。図3
に、前記の樹脂合成過程の反応式を、図4に、式(1)
のエチレングリコール ジメタクリレートによりポリマ
ーが架橋されている状態を示す構造式をそれぞれ示す。
【0047】
【化1】
【0048】(実施例2) [1] 樹脂のカラムへの充填 実施例1で得られた樹脂の粉末を、ステンレス製のHPLC
用カラムに充填した。そのカラムサイズは、内径3m
m、長さ250mmのステンレス製カラムを使用した。
樹脂粉末を充填密度が均一となるよう十分に注意してカ
ラムに充填し、カラムをHPLCに接続した。HPLCはWaters
製HPLCシステムを使用し、検出はフォトダイオードアレ
イによる吸光度測定により行なった。カラム温度を50℃
に設定し、水−アセトニトリルの混合溶媒(容積比3:
1)でカラム内の樹脂を充分洗浄した。
【0049】[2] 標的タンパク質;シトクロムCの
分離特性の検証 続いて、前記カラムに、タンパク質の混合物をインジェ
クトした。インジェクトしたタンパク質の混合溶液サン
プルは、BSA(ウシ血清アルブミン:SIGMA社製)、Insu
lin(SIGMA社製)、シトクロムC(Bovine Heart由
来:SIGMA社製)の混合物で、各タンパク質の濃度は全
て100μMとした。展開溶媒には、水−アセトニトリ
ルの混合溶媒(容積比3:1)を用い、流速は0.3 ml /
分とした。
【0050】タンパク質の混合溶液をインジェクトした
後、1.5ml(5min)付近に280nm付近に吸収をもつ成分
が溶出した。このピークは、450nm付近の吸収を持たな
いため、シトクロムC以外のタンパク質であると考えら
れる。続いて、5.0ml(17min)付近から、280nm付近
及び410nm付近の吸収を併せ持つ成分が溶出された。こ
の2つの吸収は、シトクロムCに特徴的な吸収であり、
この成分が、シトクロムCであることがわかった。
【0051】以上の実験の結果から、かかる樹脂は、シ
トクロムCに対して、特異的な親和性を有しており、こ
の樹脂を用いることで、シトクロムCの分離・検出が可
能であることが検証された。すなわち、樹脂を構成する
架橋を有する共重合体は、上記アミノ酸配列の、シトク
ロムCに対して特異的な親和性を有するペプチド鎖との
メタクリル酸アミドを構成ユニットとして含み、その重
合の際、かかるペプチド鎖に対して、反応系に添加した
シトクロムCが結合した状態で反応を行った結果、前記
ペプチド鎖は、樹脂表面上に位置するものとなってい
る。従って、インジェクトしたタンパク質の混合物中、
このペプチド鎖が特異的な親和性を示すシトクロムCの
みが、一旦ペプチド鎖と結合して固定され、他のタンパ
ク質が溶出した後、遅れて溶出される画分として、分離
・検出されている。
【0052】
【発明の効果】本発明の目的タンパク質の検出方法で
は、検出対象となる目的タンパク質に対し抗体と同程度
もしくはそれに近い親和性を有し、抗体よりも化学的に
安定でかつ化学合成が比較的容易なペプチド鎖をその表
面に固定した樹脂を利用して、かかるペプチド・プロー
ブと目的タンパク質との結合を介して、固相上に固定化
することにより、短鎖のペプチドであっても、高い再現
性で、大きな結合力を示すものとなり、高い選択性で目
的タンパク質の分離、検出を可能としている。具体的に
は、本発明にかかる樹脂は、本発明の検出方法に利用さ
れる固相に利用され、その樹脂表面は、目的タンパク質
への高い親和性を持たせるため、目的タンパク質に強い
親和性を示すペプチド鎖を樹脂の基本骨格に対して側鎖
として含み、また、このペプチド鎖周囲の樹脂表面の微
視的な構造、分子レベルでの形状も、目的タンパク質の
外形に沿った、補足しやすいような形状となしている。
そのため、目的タンパク質は、前記ペプチド鎖を中心と
する相互作用点において、樹脂表面に対し特異的に結合
され、保持されるが、ペプチド鎖に親和性のない他のタ
ンパク質は、樹脂表面に結合・保持されることはないた
め、この結合・保持力の差違を利用して、目的タンパク
質を選択的に分離、検出できる。従って、本発明による
タンパク質を認識する樹脂は、動物を用いた抗体の創
製、生産といった煩雑な工程を必要とせず、高い再現性
で、一定の分離性能を有するものが作製でき、さらに
は、この樹脂を例えば、カラム充填剤として利用する
と、精製精度のよい目的タンパク質の分離・精製用アフ
ィティーカラムとしても利用可能である。
【0053】
【配列表】 SEQUENCE LISTING <110> CANON INC. <120> A Method for Detecting a Protein <130> 4062001 <160> 1 <170> Microsoft Word <210> 1 <211> 12 <212> PRT <213> Artificial Sequence <220> <223> Peptide having a binding affinity to cytochrome C <400> 1 Thr Leu Pro Pro Gln Gly Leu Ser Pro Ser Pro Gly 1 5 10
【図面の簡単な説明】
【図1】樹脂モノマー、架橋用の樹脂ダイマー、ペプチ
ド鎖と連結された樹脂モノマー、ならびに、前記ペプチ
ド鎖と特異的に結合するタンパク質を含む液から、架橋
を有する共重合体樹脂を合成する過程を模式的に示す図
である。
【図2】ペプチド鎖のアミノ基に対して、メタクリル酸
を結合させ、アミド結合によりペプチド鎖とメタクリル
酸とが連結された、ペプチド鎖とのメタクリル酸アミド
を合成する反応式を示す図である。
【図3】メタクリル酸と、ペプチド鎖とのメタクリル酸
アミドとから、ラジカル重合により共重合体を合成する
反応式を示す図である。
【図4】架橋性ユニットとして、エチレングリコール
ジメタクリレートを利用することで、ポリマーに架橋が
なされている状態を示す構造式を模式的に示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) // C07K 7/08 C07K 7/08 17/08 ZNA 17/08 ZNA (C08F 246/00 C08F 220:60 220:60) C08L 33:10 C08L 33:10 (72)発明者 山本 伸子 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2G045 AA25 DA36 FA11 FA27 FA29 FB06 GC10 4F071 AA32X AA33X AA35X AF01Y AH02 BA02 BB02 BC02 BC17 4H045 AA30 BA16 BA62 EA50 FA10 GA26 4J011 PA55 PB40 PC02 PC08 4J100 AA02P AA03P AB02P AC03P AC21P AJ02R AL08Q AL62P AM15P BA34Q BA36Q CA04 CA05 FA03 JA15 JA50 JA53

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 目的タンパク質に対する特異的な親和性
    を有するペプチド・プローブをその表面に保持する固相
    を利用して、前記ペプチド・プローブとの結合を介して
    目的タンパク質を固定して、目的タンパク質を検出する
    方法であって、 前記ペプチド・プローブをその表面に保持する固相は、 モノマー分子と目的タンパク質と親和性を有する前記ペ
    プチドをその側鎖に有するモノマー分子とを共重合して
    なる共重合体樹脂をその表面に有し、 目的タンパク質と親和性を有する前記ペプチドをその側
    鎖に有するモノマー分子の含有比率は、主に含有される
    モノマー分子に対して、少量であり、 前記ペプチド・プローブは、前記モノマー分子の側鎖と
    して、表面に表出していることを特徴とする、目的タン
    パク質の検出方法。
  2. 【請求項2】 前記共重合体樹脂は、前記モノマー分子
    と目的タンパク質と親和性を有する前記ペプチドをその
    側鎖に有するモノマー分子とを含む溶液に、前記目的タ
    ンパク質をも溶解させ、この目的タンパク質も混在した
    状態で共重合反応して得られる共重合体樹脂であること
    を特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  3. 【請求項3】 前記共重合体樹脂において、その共重合
    体の基本骨格を与える前記モノマー分子は、熱可塑性樹
    脂を構成するモノマー分子であることを特徴とする請求
    項1に記載の検出方法。
  4. 【請求項4】 前記共重合体樹脂において、その共重合
    体の基本骨格を与える前記モノマー分子は、熱硬化性樹
    脂を構成するモノマー分子であることを特徴とする請求
    項1に記載の検出方法。
  5. 【請求項5】 前記共重合体樹脂において、その共重合
    体の基本骨格を与える前記モノマー分子は、ポリアクリ
    ルアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニ
    ル、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、
    ポリアセタール、フッ素樹脂のいずれかの熱可塑性樹脂
    を構成するモノマー分子であることを特徴とする請求項
    1に記載の検出方法。
  6. 【請求項6】 前記共重合体樹脂において、その共重合
    体の基本骨格を与える前記モノマー分子は、尿素樹脂、
    フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタ
    ン、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂のいず
    れかの熱硬化性樹脂を構成するモノマー分子であること
    を特徴とする請求項1に記載の検出方法。
  7. 【請求項7】 前記共重合体樹脂がその表面を構成する
    固相の形状は、微粒子状の粒子であることを特徴とする
    請求項1に記載の検出方法。
  8. 【請求項8】 前記共重合体樹脂がその表面を構成する
    固相は、ガラス基板、金属薄膜、プラスチック基板のい
    ずれかを基材とし、前記共重合体樹脂層は、その表面に
    形成されているキャストフィルムであることを特徴とす
    る請求項1に記載の検出方法。
  9. 【請求項9】 検出対象とする前記目的タンパク質が、
    シトクロムCであることを特徴とする請求項1に記載の
    検出方法。
  10. 【請求項10】 目的タンパク質のシトクロムCに対し
    て、特異的に親和性を有する前記ペプチド・プローブ
    は、下記のアミノ酸配列: (N末端) Thr-Leu-Pro-Pro-Gln-Gly-Leu-Ser-Pro-Se
    r-Pro-Gly (C末端) を含むペプチドであることを特徴とする請求項9に記載
    の検出方法。
  11. 【請求項11】 前記共重合体樹脂を構成するモノマー
    分子が、メタクリル酸であることを特徴とする請求項1
    0に記載の検出方法。
  12. 【請求項12】 モノマー分子とペプチド鎖をその側鎖
    に有するモノマー分子とを共重合してなる共重合体樹脂
    であって、 前記ペプチド鎖をその側鎖に有するモノマー分子の含有
    比率は、主に含有されるモノマー分子に対して、少量で
    あり、 この共重合体の基本骨格を与える前記モノマー分子は、
    メタクリル酸であり、 前記ペプチド鎖は、下記のアミノ酸配列: (N末端) Thr-Leu-Pro-Pro-Gln-Gly-Leu-Ser-Pro-Se
    r-Pro-Gly (C末端) を含むペプチドであることを特徴とする樹脂。
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