JP2002279617A - マスター情報担体および磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents

マスター情報担体および磁気記録媒体の製造方法

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JP2002279617A
JP2002279617A JP2002029655A JP2002029655A JP2002279617A JP 2002279617 A JP2002279617 A JP 2002279617A JP 2002029655 A JP2002029655 A JP 2002029655A JP 2002029655 A JP2002029655 A JP 2002029655A JP 2002279617 A JP2002279617 A JP 2002279617A
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JP2002029655A
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Tatsuro Ishida
達朗 石田
Ryuji Sugita
龍二 杉田
Kiyokazu Toma
清和 東間
Kazuya Yoshimoto
和也 吉本
Keizo Miyata
宮田  敬三
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 媒体SNやインターフェース性能など、他の
重要性能を犠牲にすることなく、プリフォーマット記録
時の生産性、およびプリフォーマット記録されたトラッ
ク端部の磁化遷移の急峻性を向上させる。 【解決手段】 基体の表面に情報信号に対応する凹凸形
状が形成され、凹凸形状の少なくとも凸部表面が、基体
面内保磁力500エルステッド以下の強磁性材料により構
成されたマスター情報担体4の表面を、強磁性薄膜ある
いは強磁性粉塗布層が形成されたシート状もしくはディ
スク状磁気記録媒体5の表面に接触させることにより、
凹凸形状に対応する磁化パターンを磁気記録媒体に記録
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、大容量、高記録密
度の磁気記録再生装置に用いられる磁気記録媒体への情
報信号の記録方法と、記録される情報信号を備えたマス
ター情報担体に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、磁気記録再生装置は、小型でかつ
大容量を実現するために、高記録密度化の傾向にある。
代表的な磁気記憶装置であるハードディスクドライブの
分野においては、すでに面記録密度1Gbit/in2を超える
装置が商品化されており、数年後には、10Gbit/in2の実
用化が議論されるほどの急激な技術進歩が認められる。
【0003】このような高記録密度化を可能とした技術
的背景としては、媒体性能、ヘッド・ディスクインター
フェース性能の向上やパーシャルレスポンス等の新規な
信号処理方式の出現による線記録密度の向上も大きな要
因である。しかしながら近年では、トラック密度の増加
傾向が線記録密度の増加傾向を大きく上回り、面記録密
度向上のための主たる要因となっている。これは、従来
の誘導型磁気ヘッドに比べてはるかに再生出力性能に優
れた磁気抵抗素子型ヘッドの実用化による寄与である。
現在、磁気抵抗素子型ヘッドの実用化により、わずか数
μmのトラック幅信号をSN良く再生することが可能と
なっている。一方、今後さらなるヘッド性能の向上にと
もない、近い将来にはトラックピッチがサブミクロン領
域に達するものと予想されている。
【0004】さて、ヘッドがこのような狭トラックを正
確に走査し、信号をSN良く再生するためには、ヘッド
のトラッキングサーボ技術が重要な役割を果たしてい
る。このようなトラッキングサーボ技術に関しては、例
えば、”山口:磁気ディスク装置の高精度サーボ技術、
日本応用磁気学会誌、Vol.20, No.3, pp.771, (1996)"
に詳細な内容が示されている。上記文献によれば、現在
のハードディスクドライブでは、ディスクの1周、すな
わち角度にして360度中において、一定の角度間隔でト
ラッキング用サーボ信号やアドレス情報信号、再生クロ
ック信号等が記録された領域を設けている(以下、プリ
フォーマットと称する)。磁気ヘッドは、一定間隔でこ
れらの信号を再生することにより、ヘッドの位置を確
認、修正しながら正確にトラック上を走査することがで
きるのである。
【0005】既述のトラッキング用サーボ信号やアドレ
ス情報信号、再生クロック信号等は、ヘッドが正確にト
ラック上を走査するための基準信号となるものであるの
で、その記録時には、正確な位置決め精度が要求され
る。例えば、”植松、他:メカ・サーボ、HDI技術の
現状と展望、日本応用磁気学会第93回研究会資料、93
-5, pp.35 (1996)"に記載された内容によれば、現在の
ハードディスクドライブでは、ディスクをドライブに組
み込んだ後、専用のサーボ記録装置を用いて厳密に位置
制御された磁気ヘッドによりプリフォーマット記録が行
われている。
【0006】このようなサーボ信号やアドレス情報信
号、再生クロック信号のプリフォーマット記録は、近年
商品化された大容量フレキシブルディスクや、ディスク
カートリッジが着脱可能なリムーバブルハードディスク
用媒体においても同様に、専用のサーボ記録装置を用い
て、磁気ヘッドにより行われている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記方
法によるサーボ信号やアドレス情報信号、再生クロック
信号のプリフォーマット記録においては、以下のような
課題が存在する。
【0008】まず第1の課題として、磁気ヘッドによる
記録は、基本的にヘッドと媒体との相対移動に基づく線
記録である。このため、専用のサーボ記録装置を用いて
磁気ヘッドを厳密に位置制御しながら記録を行う上記の
方法では、プリフォーマット記録に多くの時間を要する
とともに、専用のサーボ記録装置が相当に高価であるこ
とにも起因して、非常にコスト高となる。
【0009】この課題は、磁気記録装置のトラック密度
が向上するほど深刻である。これは、ディスク径方向の
トラック数が増加することのみに起因するものではな
い。トラック密度が向上するほどヘッドの位置決めに高
精度が要求されるため、ディスクの1周、すなわち360
度中において、トラッキング用サーボ信号等が記録され
たサーボ領域を設ける角度間隔を小さくしなければなら
ない。このため高記録密度の装置ほどプリフォーマット
記録すべき信号量が多くなり、さらに多くの時間を要す
ることになる。
【0010】また、磁気ディスク媒体は小径化の傾向に
あるものの、依然として3.5インチや5インチの大径ディ
スクに対する需要も多い。ディスクの記録面積が大きい
ほどプリフォーマット記録すべき信号量が多くなるのは
必然であり、このような広面積ディスクのコストパフォ
ーマンスに関しても、プリフォーマット記録に要する時
間が大きく寄与している。
【0011】第2の課題として、ヘッド・媒体間スペー
シングや記録ヘッドのポール形状による記録磁界の広が
りのため、プリフォーマット記録されたトラック端部の
磁化遷移が急峻性に欠けるという点がある。
【0012】磁気ヘッドによる記録は、基本的にヘッド
と媒体との相対移動に基づく動的線記録であるため、ヘ
ッド・媒体間のインターフェース性能の観点から、一定
量のヘッド・媒体間スペーシングを設けざるを得ない。
また、現在の磁気ヘッドは通常、記録と再生を別々に担
う2つのエレメントを有する構造上、記録ギャップの前
縁側ポール幅が記録トラック幅に相等するのに対し、後
縁側ポール幅が記録トラック幅の数倍以上に大きくなっ
ている。
【0013】上記の2点は、いずれも、記録トラック端
部における記録磁界の広がりを生じる要因となり、結果
的にプリフォーマット記録されたトラック端部の磁化遷
移が急峻性に欠ける、あるいはトラック端両側に消去領
域を生じるという課題に帰着する。現在のトラッキング
サーボ技術は、ヘッドがトラックを外れて走査した際の
再生出力の変化量によって、ヘッドの位置検出を行うも
のである。従って、サーボ領域間に記録されたデータ情
報信号を再生する際のようにヘッドがトラック上を正確
に走査した際のSNに優れるだけではなく、ヘッドがト
ラックを外れて走査した際の再生出力変化量、すなわち
オフトラック特性が急峻であることが要求される。上記
の課題はこの要求に反するものであり、今後のサブミク
ロントラック記録における正確なトラッキングサーボ技
術の実現を困難なものとしている。
【0014】上記2つの課題の内、前者に対する解決策
としては、例えば特開昭63−183623号公報に磁
気転写技術を用いたトラッキングサーボ信号等の複写技
術が開示されている。このような磁気転写技術を用いれ
ば、プリフォーマット記録の際の生産性が改善されるこ
とは事実である。しかしながら上記技術は、フレキシブ
ルディスクのように比較的保磁力が低く、面記録密度の
小さい磁気ディスク媒体には有効であるが、今日のハー
ドディスク媒体のように数百メガビットからギガビット
オーダーの面記録密度を担う分解能を備えた高保磁力媒
体に対して使用することは不可能である。磁気転写技術
においては、転写効率を確保するために、被転写ディス
ク保磁力の1.5倍程度の振幅の交流バイアス磁界を印加
する必要がある。マスターディスクに記録されたマスタ
ー情報は磁化パターンであるので、この交流バイアス磁
界によってマスター情報が消磁されないためには、マス
ターディスクの保磁力において、被転写ディスクの保磁
力の3倍程度以上の値が要求されるのである。現在の高
密度ハードディスク媒体の保磁力は高面記録密度を担う
ために1500〜2500エルステッドもある。さらに将来の10
ギガビットオーダーの面記録密度を担うためには、この
値は3000〜4000エルステッドにも達するものと予想され
る。つまりマスターディスクには、現状において4500〜
7500エルステッド、将来的には9000〜12000エルステッ
ドの保磁力が要求されることになる。マスターディスク
においてこのような保磁力を実現することは、磁性材料
の選択の面から困難である。さらに、現状の磁気記録技
術を用いては、このような高保磁力を有するマスターデ
ィスク自体にマスター情報を記録する手段が存在しな
い。従って、磁気転写技術においては、マスターディス
クにおいて実現可能な保磁力値を考慮すると、必然的に
被転写ディスクの保磁力に制約を受けることになる。
【0015】また、例えば特開平7−153060号公
報によれば、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報
信号、再生クロック信号等に対応する凹凸形状を有する
ディスク媒体用基板をスタンパにより形成し、この基板
上に磁性層を形成するというプリエンボストディスク技
術が開示されている。この技術は、既述の2つの課題に
対して、ともに有効な解決策である。しかしながら、デ
ィスク表面の凹凸形状が記録再生時のヘッドの浮上特性
(あるいは接触記録の場合には媒体とのコンタクト状
態)に影響を及ぼし、ヘッド・媒体インターフェース性
能に課題を生じることが予想される。また、スタンパで
製造される基板は基本的にプラスチック基板であるた
め、媒体性能の確保のために必要な磁性層成膜時の基板
加熱ができず、必要な媒体SNが確保されないという問
題もある。
【0016】以上のような技術的背景から、既述の2つ
の課題に関しては、媒体SNやインターフェース性能な
ど、他の重要性能を犠牲にすることのない、真に有効な
解決策は見いだされていない。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は以上の課題に鑑
み、媒体SNやインターフェース性能など、他の重要性
能を犠牲にすることなく、プリフォーマット記録時の生
産性、およびプリフォーマット記録されたトラック端部
の磁化遷移の急峻性を向上させる手段を提供することを
目的とする。
【0018】以上の手段を実現するために本発明は、基
体の表面に情報信号に対応する凹凸形状が形成され、凹
凸形状の少なくとも凸部表面が、基体面内保磁力500エ
ルステッド以下の強磁性材料により構成されたマスター
情報担体の表面を、強磁性薄膜あるいは強磁性粉塗布層
が形成されたシート状もしくはディスク状磁気記録媒体
の表面に接触させることにより、凹凸形状に対応する磁
化パターンを磁気記録媒体に記録することを特徴とす
る。好ましくは、マスター情報担体表面を磁気記録媒体
表面に接触させる際において、マスター情報担体の凸部
表面を構成する強磁性材料を励磁するための直流磁界、
あるいは磁化パターンの記録を助成するための交流バイ
アス磁界を印加することを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】まず、上記に記載した本発明の構
成がもたらす作用について説明する。
【0020】本発明の構成においては、一方向に磁化さ
れたマスター情報担体表面凸部の強磁性材料より発生す
る記録磁界により、磁気記録媒体には、マスター情報担
体の凹凸形状に対応した磁化パターンが記録される。す
なわち、マスター情報担体表面に、トラッキング用サー
ボ信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等に対応
する凹凸形状を形成することにより、磁気記録媒体上に
はこれらに対応するプリフォーマット記録を行うことが
できるのである。
【0021】本発明は、凹凸形状による磁気抵抗変化に
起因して凸部の強磁性材料より発生する漏れ磁界により
記録を行う。従って記録機構の観点では、ヘッド記録ギ
ャップより発生する漏れ磁界により記録を行う、従来の
磁気ヘッドによる記録と同様である。一方、従来の磁気
ヘッドによる記録が、基本的にヘッドと媒体との相対移
動に基づく動的線記録であるのに対し、本発明の特徴
は、マスター情報担体と媒体との相対移動を伴わない静
的な面記録であるということである。上記の特徴により
本発明は、既述の2つの課題に対して極めて有効な効果
を発揮することができる。
【0022】第1に、面記録であるため、プリフォーマ
ット記録に要する時間は、従来の磁気ヘッドによる記録
方法に比べて、非常に短い。また、磁気ヘッドを厳密に
位置制御しながら記録を行うための高価なサーボ記録装
置も不要である。従って、本発明によれば、プリフォー
マット記録に関わる生産性を大幅に向上できるととも
に、生産コストに関しても低減することができる。
【0023】第2に、マスター情報担体と媒体との相対
移動を伴わない静的記録であるため、マスター情報担体
表面と磁気記録媒体表面を密着させることにより、記録
時の両者間のスペーシングを最小限にすることができ
る。さらに、磁気ヘッドによる記録のように、記録ヘッ
ドのポール形状による記録磁界の広がりを生じることも
ない。このため、プリフォーマット記録されたトラック
端部の磁化遷移は、従来の磁気ヘッドによる記録に比べ
て、優れた急峻性を有し、より正確なトラッキングが可
能となる。
【0024】一方本発明によれば、特開昭63−183
623号公報に開示された磁気転写技術や特開平7−1
53060号公報に開示されたプリエンボストディスク
技術において認められたような、プリフォーマット記録
される磁気記録媒体の構成や磁気特性に制約を受けると
いう課題を生じることもない。
【0025】例えば、特開昭63−183623号公報
に開示された磁気転写技術において、磁化パターンによ
り記録されたマスター情報を備えるマスターディスク
は、それ自体が磁気記録媒体であるために相応の磁気記
録媒体分解能を必要とする。このため、マスターディス
ク磁性層の磁束密度および膜厚を十分に大きくすること
ができず、発生する転写磁界の大きさが非常に小さいも
のとなってしまう。またマスター情報は磁化パターンに
より記録されているため、ダイビットの突き合わせ磁化
による減磁を生じ、磁化遷移領域における転写磁界勾配
も緩やかである。このような弱い転写磁界によっても十
分な転写効率を確保するために、磁気転写技術において
は、被転写ディスク保磁力の1.5倍程度もの振幅の交流
バイアス磁界を印加する必要が生じる。結果的に既述の
ように、被転写ディスクの保磁力において制約を受け、
比較的記録密度の低いフレキシブルディスク等にしか使
用することができなかった。
【0026】一方、本発明のマスター情報担体はマスタ
ー情報を凹凸形状パターンとして有しており、その凹凸
形状による磁気抵抗変化に起因して凸部の強磁性材料よ
り発生する漏れ磁界により記録を行う機構を有する、磁
気ヘッドに似た記録素子である。磁気転写技術における
マスターディスクのように磁気記録媒体としての分解能
を必要としないので、マスター情報担体表面凸部を構成
する強磁性材料の磁束密度や体積を従来の磁気ヘッドと
同等程度に大きくすることにより、磁気ヘッド並に急峻
で大きな記録磁界を発生することができる。これによ
り、通常のフレキシブルディスクやハードディスクから
将来的なギガビット記録を担う高保磁力媒体に至るま
で、あらゆる磁気記録媒体に対して十分な記録能力を発
揮することができるのである。
【0027】また、特開平7−153060号公報に開
示されたプリエンボストディスク技術においては既述の
ように、プリフォーマット記録されるディスク媒体の基
板材料と形状に制約を受けるため、媒体成膜時の基板温
度に関わる媒体SN性能およびヘッドの浮上特性(ある
いは接触記録の場合には媒体とのコンタクト状態)に関
わるヘッド・メディアインターフェース性能を犠牲にし
ていた。一方、本発明の構成では、上記のようにプリフ
ォーマット記録される磁気記録媒体の基板材料や表面形
状においては何等の制約も受けない。
【0028】以上のように本発明の構成は、プリフォー
マット記録される磁気記録媒体の構成や磁気特性を問わ
ずに静的な面記録を行うことができ、既述の2つの課題
に関して、媒体SNやインターフェース性能など、他の
重要性能を犠牲にすることなく、真に有効な解決策を提
供することができるのである。
【0029】なお、本発明の方法による記録過程におい
ても、時間の経過とともに減衰する交流バイアス磁界を
印加することは、さらに記録効率を向上する上で有効な
手段である。この際、マスター情報が磁化パターンによ
り記録された磁気転写技術とは異なり、本発明のマスタ
ー情報は凹凸形状によるパターンであるため、このよう
な交流バイアス磁界等の外部磁界が印加された場合にも
マスター情報自体が消失することはない。このような観
点から本発明においては、マスター情報担体表面凸部を
構成する強磁性材料の保磁力値に大きな制約を受けな
い。このため、磁気記録媒体にマスター情報を記録する
ための十分な記録磁界を発生することができる限りにお
いては、マスター情報担体表面凸部を構成する強磁性材
料としては、高保磁力材料に限らず、半硬質磁性や軟質
磁性を有する多くの材料から適切な材料を選択すること
ができる。
【0030】一方本発明の構成においては、凸部を構成
する強磁性材料は、記録過程において一方向に磁化され
て記録磁界を発生することが必要である。このため、半
硬質磁性材料や軟質磁性材料を用いる構成において安定
な一方向磁化が得られない場合や、比較的振幅の大きな
交流バイアス磁界を印加する場合においては、強磁性材
料を励磁して適切な記録磁界を発生するために直流励磁
磁界を別途印可する。この直流励磁磁界は、磁気ヘッド
において巻線電流により供給される励磁磁界に対応する
ものである。
【0031】以下には、本発明の実施の形態例について
詳細に説明する。まず、本発明のマスター情報担体表面
の一構成例を図1に示す。図1は、例えばディスク状磁
気記録媒体の周方向(すなわちトラック長さ方向)にお
いて一定角度毎に設けられるプリフォーマット領域に記
録されるマスター情報パターンを、ディスク媒体の径方
向(すなわちトラック幅方向)に10トラック分のみ示し
たものである。なお参考のため、マスター情報パターン
がディスク媒体に記録された後、ディスク媒体上でデー
タ領域となるトラック部分を破線により示した。実際の
マスター情報担体表面は、マスター情報が記録される磁
気ディスク媒体の記録領域に対応して、ディスクの周方
向において一定角度毎に、かつディスク媒体の径方向に
は全記録トラック分、図1のようなマスター情報パター
ンが形成されて構成されている。
【0032】マスター情報パターンは、例えば図1に示
されるように、クロック信号、トラッキング用サーボ信
号、アドレス情報信号の各々の領域がトラック長さ方向
に順次配列して構成される。本発明のマスター情報担体
においては、このマスター情報パターンは、情報パター
ンに対応する表面凹凸形状により形成されている。例え
ば図1においては、ハッチングを施した部分が凸部とな
っており、その表面が強磁性材料により構成されてい
る。
【0033】図1に示されるような情報信号に対応する
微細な凹凸形状パターンは、例えば光ディスク成形用マ
スタースタンパの形成プロセスや、半導体プロセス等に
おいて用いられる様々な微細加工技術を用いて容易に形
成することができる。特に、フォトリソグラフィ法をは
じめ、レーザビームや電子ビームを用いたリソグラフィ
技術のように、レジスト膜を露光、現像した後、ドライ
エッチングによって微細な凹凸形状パターンを形成する
方法が最も適している。もちろん、情報信号に対応する
微細な凹凸形状パターンが精度良く形成される限りにお
いては、レジスト膜を用いることなく、直接レーザや電
子ビーム、イオンビーム、あるいはその他の機械加工に
よって微細加工を施す等の方法を用いても構わない。
【0034】次に、図1に示した一点鎖線AA’におけ
るマスター情報担体のトラック長さ方向断面の構成例を
図2から図4に示す。
【0035】図2および図3は、平面状の基体1表面に
強磁性薄膜2を形成した後、マスター情報信号に対応す
る凹凸形状を形成した例である。凹凸形状形成に際して
は、図2に示すように凸部、凹部ともに強磁性薄膜2を
残留させても良いし、図3に示すように凹部の底を基体
1内にまで至らしめて凸部表面にのみ強磁性薄膜2を残
留させても良い。
【0036】図4は、図2および図3の構成とは異な
り、基体1表面に先に凹凸形状を形成した後、その上に
強磁性薄膜2を形成した例である。
【0037】図4の構成例では、凸部と凹部の境界にお
いて強磁性薄膜2表面に曲面形状を呈し、急峻な段差が
得られ難くなる。この場合、マスター情報を磁気ディス
ク媒体に記録する際に、凸部と凹部の境界における記録
磁界勾配が低下し、記録性能を劣化する可能性もあるの
で留意を要する。
【0038】一方、図2および図3の構成例は、凸部と
凹部の境界において十分に大きな勾配を有する急峻な記
録磁界が得られ易いので、一般的には図4の構成例より
も好ましい。しかしながら凹凸形状の形成に際しては、
強磁性薄膜表面に変質層やレジスト膜が残留しないよう
留意する必要がある。なぜならばこれらは、マスター情
報を磁気ディスク媒体に記録する際において記録スペー
シング損失を生じるからである。
【0039】基体材料に関しては、基体上に強磁性薄膜
2が形成でき、マスター情報信号に対応する凹凸形状が
精度良く形成できる限りにおいて特に制約はないが、凹
凸形状が形成される面の表面粗度が小さく、できる限り
平坦性の良いものが好ましい。表面粗度が大きい場合に
は、基体上に形成される強磁性薄膜の表面粗度も大きく
なり、マスター情報を磁気ディスク媒体に記録する際の
記録スペーシング損失を増加させてしまうからである。
従って、できる限り平坦性の良い表面を実現できる材料
として、例えば、従来より磁気ディスクや光ディスク用
の基板として用いられている種々のガラス基板、ポリカ
ーボネート等のプラスチック基板、Al等の金属基板の
他、Si基板やカーボン基板等が適している。
【0040】また、上記の記録スペーシング損失に関し
て言えば、マスター情報を磁気ディスク媒体に記録する
際にはマスター情報担体表面と磁気ディスク媒体表面が
密着し、良好な接触状態にあることが好ましい。特にマ
スター情報が記録される磁気ディスクがハードディスク
媒体の場合には、マスター情報担体表面が磁気ディスク
媒体表面の微妙なうねりや撓みにも追従して、ディスク
全面において良好な接触状態を実現することが必要であ
る。このため、マスター情報担体の基体材料としては、
多少なりとも可撓性を有するもの、例えばシート状もし
くはディスク状のプラスチック基板や金属薄板等がより
好ましい。
【0041】なお、図4に示すマスター情報担体断面の
構成例をレジスト膜を用いて形成する場合においては、
マスター情報担体の基体表面にレジスト膜を塗布するこ
とになるので、一般的には基体材料としてプラスチック
基板を用いることはできない。この場合には、基体表面
に別途薄膜を形成してバッファ層とし、このバッファ層
上にレジスト膜を形成する等の工夫が必要である。
【0042】図2から図4の構成例における凹部深さ、
すなわち凸部表面と凹部底面の段差は、マスター情報が
記録される磁気ディスク媒体の表面性やマスター情報の
ビットサイズにもよるが、一般的には0.05μm以上、好
ましくは0.1μm以上とする。特に図2や図4の構成のよ
うに凹部底面に強磁性材料が残留する場合、凹部深さが
0.1μm以下とすると、凸部と凹部の境界において十分に
勾配の大きい急峻な記録磁界が得られにくい。また、マ
スター情報を磁気ディスク媒体に記録する際のマスター
担体表面と磁気ディスク媒体表面のコンタクト状態の観
点からも、0.1μmから0.5μm程度の範囲が好ましい。
【0043】強磁性薄膜2の形成は、スパッタリング
法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、CVD法
等、従来より一般的な薄膜形成方法を用いて行うことが
できる。
【0044】強磁性薄膜材料には、既述したように、硬
質磁性材料、半硬質磁性材料、軟質磁性材料を問わず、
多くの種類の材料を用いることが可能であるが、マスタ
ー情報が記録される磁気ディスク媒体の種類に依らず、
十分な記録磁界を発生するためには、その飽和磁束密度
が大きいほどよい。特に2000エルステッドを超える高保
磁力媒体や、磁性層厚の大きいフレキシブルディスク媒
体に対しては、飽和磁束密度が0.8T以下となると十分な
記録が行われない場合があるので、一般的には0.8T以
上、好ましくは1.0T以上の飽和磁束密度を有する材料を
用いる。
【0045】また、強磁性薄膜の膜厚も、磁気ディスク
媒体への記録能力に影響を及ぼす。磁気ディスク媒体の
種類に依らず、十分な記録磁界を発生するためには強磁
性薄膜には一定以上の膜厚が必要であるが、一方でマス
ター情報のビット形状との兼ね合いから反磁界の影響を
も考慮しなければならない。すなわち本発明の構成で
は、磁気ディスク媒体が垂直磁気記録媒体であるような
特殊な場合を除いて、一般的にマスター情報担体凸部の
強磁性薄膜を膜面内においてトラック方向に磁化し、記
録磁界を発生させる。しかし、膜厚が厚すぎる場合には
反磁界の影響によって漏れ磁束が減少し、かえって記録
能力に欠ける結果となる。従って強磁性薄膜の膜厚に関
しては、マスター情報のビット長に応じて適切な値を設
定する必要がある。例えばマスター情報の最短ビット長
が1μm程度の場合には、0.1μmから1μm程度の範囲が適
切である。
【0046】なお、これらの強磁性材料における好まし
い磁気特性については、マスター情報の磁気ディスク媒
体への記録方法との関連からも、別途後述する。
【0047】図5には、図1に示した一点鎖線AA’に
おけるマスター情報担体断面の別の構成例を示す。図5
は、図2から図4の構成例とは異なり、基体自体が強磁
性材料よりなる構成例である。すなわち図5の構成で
は、強磁性材料よりなる基体3の表面にマスター情報信
号に対応する凹凸形状を形成することにより、強磁性薄
膜を形成するプロセスを省くことができるので、図2か
ら図4の構成に比べてマスター情報担体自体の生産性を
向上することができる。
【0048】一方、強磁性材料基体3として焼結体のよ
うなバルク材料を用いると、マスター情報担体の表面粗
度が比較的大きくなる場合が多い。この場合、マスター
情報を磁気ディスク媒体に記録する際において記録スペ
ーシング損失を増加させることになるので、できる限り
平坦な表面性を有する基体材料を選択することが必要で
ある。また一般的に焼結体のようなバルク材料において
は、可撓性を実現できない。従って図5の構成例は、ハ
ードディスク媒体への記録よりも、フレキシブルディス
ク媒体への記録により適する構成である。
【0049】次に、上述のマスター情報担体を用いて、
磁気記録媒体にマスター情報信号を記録する方法につい
て、実施の形態例を述べる。
【0050】図6には、(a)マスター情報担体を用い
た面内磁気記録媒体へのマスター情報信号の記録方法
と、(b)磁気記録媒体に記録された記録磁化パター
ン、および(c)上記の記録磁化を磁気抵抗型(MR)
ヘッドを用いて再生した際の信号波形の一例を示すもの
である。なお、(a)、(b)は、いずれも磁気記録媒
体のトラック長さ方向における断面の構成例として示し
てある。
【0051】面内磁気記録媒体に記録を行う場合には
(a)に示されるように、マスター情報担体4の凸部を
構成する強磁性材料には、磁気記録媒体5表面と平行に
トラック長さ方向に磁化6を与える。この磁化6は、例
えば凸部を構成する強磁性材料が高保磁力材料よりなる
場合には、これを予めトラック長さ方向に直流飽和させ
ることによって生じる残留磁化によって与えられる。な
お、上記のような強磁性材料に適した高保磁力材料とし
ては、例えば、Sm−Co、Ne−Fe−Bをはじめと
する希土類−遷移金属系材料等が、保磁力、飽和磁束密
度ともに大きく適している。
【0052】マスター情報担体4表面には凹凸形状によ
る磁気抵抗変化を生じるため、凸部強磁性材料の磁化6
によって記録磁界7を発生する。この記録磁界7は、マ
スター情報担体4の凸部表面と凹部表面とで逆極性とな
るため、結果的に磁気記録媒体5には、(b)に示すよ
うな凹凸形状に対応する記録磁化8のパターンが記録さ
れることになる。
【0053】本発明の記録方法による記録磁化8から磁
気ヘッド再生される再生波形状は、(c)に示すよう
に、従来の磁気ヘッドを用いて記録された記録磁化から
の再生波形状と基本的に同様である。従って、信号処理
上でも、特に不都合を生じることはない。むしろ本発明
の記録方法では、磁気ヘッドによる記録に比べて記録磁
界の対称性がよいこと、マスター情報担体と磁気記録媒
体の相対移動を伴わない静的記録であることに起因し
て、再生波形の対称性にも優れる傾向が認められる。
【0054】本発明の記録過程においては既述したよう
に、時間の経過とともに減衰する交流バイアス磁界を印
加することにより、さらに記録効率を向上することがで
きる。本発明を応用する技術分野を考慮すると、本発明
の記録方法では、基本的にディジタル飽和記録を行うこ
とが好ましい。しかしながら記録すべき情報信号パター
ンや磁気記録媒体の磁気特性によっては、記録能力が若
干不足する場合もある。このような場合には、上記の時
間の経過とともに減衰する交流バイアス磁界の印加は、
十分な飽和記録を助成するために有効な手段である。
【0055】交流バイアス磁界の印加による記録機構
は、基本的に従来のアナログ交流バイアス記録の機構と
同様である。ただし本発明の記録方法は、マスター情報
担体と磁気記録媒体の相対移動を伴わない静的記録であ
るため、交流バイアス磁界の周波数に関する制約は、従
来のアナログ交流バイアス記録に比べてはるかに小さ
い。従って、本発明の記録方法において印加される交流
バイアス磁界の周波数は、例えば家庭用交流電源に用い
られている50Hzあるいは60Hzの周波数で十分である。
【0056】交流バイアス磁界の減衰時間は交流バイア
ス周期に比べて十分に長く、好ましくは交流バイアス5
周期以上に設定する。例えば、交流バイアス磁界の周波
数が50Hzあるいは60Hzの場合には、その減衰時間を100m
s程度以上とすれば十分である。
【0057】一方、図6に示した構成においては、交流
バイアス磁界の最大振幅を、マスター情報担体4の凸部
を構成する強磁性材料の保磁力よりも小さくする必要が
ある。図6に示した構成において強磁性材料の保磁力よ
りも大きな交流バイアス磁界を与えた場合には、凸部強
磁性材料の磁化6が減少して十分な記録磁界7が得られ
なくなる。
【0058】上記では、マスター情報担体の凸部を構成
する強磁性材料が高保磁力材料よりなる場合に主眼をお
いて述べた。しかしながら、高保磁力材料を用いる場合
には、マスター情報担体表面の凹凸パターン形状によっ
ては、強磁性材料の磁化容易軸を磁気記録媒体のトラッ
ク長さ方向に与えて、十分な磁化6を得ることが困難な
場合がある。
【0059】例えば、マスター情報担体の凸部で与えら
れるマスター情報信号のビット形状が磁気記録媒体のト
ラック長さ方向よりもトラック幅方向に細長い場合に
は、凸部を構成する強磁性材料にトラック幅方向の形状
異方性を生じ、トラック幅方向が磁化容易軸となり易
い。従って、強磁性材料をトラック長さ方向に直流飽和
させることによって生じる残留磁化が小さく、トラック
長さ方向成分の記録磁界が十分に得られなくなる。ま
た、硬質磁性を有する高保磁力材料は、一般的に磁気異
方性の制御が困難であり、上記のようなビット形状の寄
与を補償できるほどの異方性をトラック長さ方向に誘導
することも困難である。
【0060】マスター情報担体の凸部を構成する強磁性
材料を軟質磁性材料、あるいは比較的低保磁力を有する
硬質もしくは半硬質磁性材料により構成する場合には、
上記の問題を比較的容易に解決できるので好ましい。な
お、硬質磁性材料と半硬質磁性材料の区別は曖昧である
ので、以下、本願においては、比較的低保磁力を有する
硬質もしくは半硬質磁性材料を半硬質磁性材料として総
称して用いることとする。
【0061】これらの軟質磁性材料や半硬質磁性材料で
は、材料の形成プロセス中に様々な種類のエネルギーを
意図的に与える手段や、材料形成後の磁界中アニールな
どの手段によって、高保磁力を有する硬質磁性材料に比
べて、適切な磁気異方性を容易に誘導することができ
る。このため、既述のようなビット形状の寄与による形
状異方性に関しても、比較的容易に補償できる場合が多
い。さらに、軟質磁性材料あるいは半硬質磁性材料にお
いては、マスター情報担体の凸部を構成する強磁性材料
として適した高飽和磁束密度を有する材料も豊富であ
る。本発明のマスター情報担体の凸部を構成する強磁性
材料に適した軟質磁性材料としては、例えば磁気ヘッド
コア材料として一般的に用いられているNi−Fe、F
e−Al−Si等の結晶材料、Co−Zr−Nb等のC
o基のアモルファス材料、Fe−Ta−N等のFe系微
結晶材料がある。また比較的低保磁力を有する半硬質磁
性材料としては、たとえばFe、Co、Fe−Co等が
適している。
【0062】本発明の構成において凸部を構成する強磁
性材料は、記録過程において一方向に磁化されて記録磁
界を発生することが必要であるが、軟質磁性材料や半硬
質磁性材料では、もともと残留磁化状態において安定な
一方向磁化が得られないものが多い。従って軟質磁性材
料や半硬質磁性材料を用いる構成においては多くの場
合、これらを励磁して適切な記録磁界を発生するための
直流励磁磁界を別途印可する。既述したようにこの直流
励磁磁界は、磁気ヘッドにおいて巻線電流により供給さ
れる励磁磁界に対応するものと考えることができる。
【0063】図7に、上記のような直流励磁磁界を用い
たマスター情報信号の記録方法の構成例を示す。図7も
図6と同様に、磁気記録媒体のトラック長さ方向におけ
る断面の構成例として示してある。
【0064】マスター情報担体の凸部を構成する軟質磁
性材料もしくは半硬質磁性材料は、直流励磁磁界9によ
り、磁気記録媒体5のトラック長さ方向に安定に磁化さ
れ、記録磁界7を発生する。直流励磁磁界9は磁気記録
媒体5にも印加されることになるので、あまり大きな値
とすることはできない。多くの場合には、磁気記録媒体
の保磁力と同等程度の大きさが好ましい。直流励磁磁界
9の大きさが磁気記録媒体の保磁力と同等程度以下であ
れば、凸部を構成する軟質磁性材料もしくは半硬質磁性
材料から発生する記録磁界7の方が十分に大きいので、
図6の構成と同様に、凹凸形状に対応する記録磁化パタ
ーンを記録することができる。実際には、適切な直流励
磁磁界9の大きさは、マスター情報担体の凸部を構成す
る軟質磁性材料や半硬質磁性材料の磁気特性、磁気記録
媒体の磁気特性、凹凸パターン形状等の要因によって様
々に変化する。従って磁気記録媒体の保磁力値を目安と
し、各々の場合に応じて最も記録特性が優れるよう、実
験的に最適化を図る必要がある。
【0065】上記の観点から、マスター情報担体の凸部
を構成する軟質磁性材料や半硬質磁性材料は、磁気記録
媒体の保磁力と同等程度の直流励磁磁界9により、ほぼ
磁気飽和に達するものが好ましい。軟質磁性材料の場合
には、低磁界で良好な飽和特性を示す場合が多い。しか
しながら、半硬質磁性材料の中には比較的大きな飽和磁
界を必要とする場合があるので、材料選択に留意を要す
る。本発明者らの実験結果によれば、現状の一般的な保
磁力を有するハードディスク媒体や大容量フレキシブル
ディスク媒体に記録を行う場合には、半硬質磁性材料と
して500エルステッド以下の保磁力を有するものが好ま
しい。保磁力が500エルステッドよりも大きい場合に
は、半硬質磁性材料を磁気記録媒体5のトラック長さ方
向に安定に磁化するために必要な直流励磁磁界9が媒体
保磁力に比べて大きくなるので、分解能に優れた記録を
行うことが困難になる。
【0066】図7に示したような直流励磁磁界を与える
記録方法は、マスター情報担体凸部を構成する強磁性材
料が高保磁力材料よりなる構成においても、特にその保
磁力よりも大きな交流バイアス磁界を与える場合に有効
である。既述のように、図6に示した構成において強磁
性材料の保磁力よりも大きな交流バイアス磁界を与えた
場合には、凸部強磁性材料の磁化6が減少して十分な記
録磁界7が得られなくなる。この際、直流励磁磁界を重
畳して与えることによって、強磁性材料の磁化6と逆極
性に印加されるトータルの外部磁界が低減され、交流バ
イアス磁界を与えない場合と同様に安定な記録磁界を発
生することが可能となる。上記のように、時間とともに
減衰する交流バイアス磁界と直流励磁磁界を重畳して印
加する構成は、マスター情報担体凸部を構成する強磁性
材料が半硬質磁性材料あるいは軟質磁性材料よりなる場
合においても、もちろん有効である。
【0067】マスター情報担体表面の凹凸形状パターン
によっては、図8に示すように、磁気記録媒体を予め直
流飽和消去し、一方向への初期磁化10を与えておくこ
とにより、より良好な記録が可能となる場合がある。
【0068】凹凸形状パターンは、各々の応用例に必要
な情報信号に応じて、様々な形態を有する。このため凹
凸形状パターンによっては、凸部表面上の記録磁界と凹
部表面上の記録磁界の一方が他方よりも小さくなり、小
さい方の極性において十分な飽和記録が困難になる、あ
るいは記録の線形性を損なうといった現象を生じるので
ある。図8に示す構成においては、凸部表面上の記録磁
界と凹部表面上の記録磁界の両者の内、小さい方の記録
磁界と同じ極性に予め磁気記録媒体5を直流飽和消去し
ておくことにより、同極性方向への飽和記録を助成する
ことができる。
【0069】なお図8では、磁気記録媒体5を凸部表面
上の記録磁界と同じ極性に直流飽和消去する例について
示したが、上記から明らかなように、磁気記録媒体を直
流飽和消去すべき極性は、各々の場合によって異なるの
で注意を要する。また図8においては、図7と同様に直
流励磁磁界9を与える場合について示したが、直流励磁
磁界9を与えない場合においても、同様に直流飽和消去
の効果は得られる。
【0070】以上においては、面内磁気記録媒体に記録
を行う場合を主眼において述べた。一方、本発明の記録
方法における構成は、磁気記録媒体の種類によって様々
な変更を行うことが可能であり、また上記と同様に発明
の効果を得ることができる。
【0071】典型的な例として、磁気記録媒体が垂直磁
気記録媒体である場合の本発明の記録方法の構成を図9
に示す。図9は、(a)マスター情報担体を用いた垂直
磁気記録媒体へのマスター情報信号の記録方法と、
(b)垂直磁気記録媒体に記録された記録磁化パター
ン、および(c)上記の記録磁化を磁気抵抗型(MR)
ヘッドを用いて再生した際の信号波形の一例を示すもの
である。なお、(a)、(b)は、図6から図8と同様
に、いずれも磁気記録媒体のトラック長さ方向における
断面の構成例として示してある。
【0072】垂直磁気記録媒体に記録を行う場合には
(a)に示されるように、マスター情報担体4の凸部を
構成する強磁性材料には、磁気記録媒体5表面と直交す
る垂直方向に磁化6を与えることになる。従って、例え
ば凸部を構成する強磁性材料が強磁性薄膜である場合、
垂直方向における反磁界を低減するために、強磁性薄膜
の膜厚を十分に大きくすることが好ましい。
【0073】また直流励磁電流9を与える場合にも、面
内磁気記録媒体に記録を行う場合とは異なり、磁気記録
媒体5表面に対して垂直方向に印加する。さらに、磁気
記録媒体5を予め直流飽和消去し、一方向への初期磁化
10を与えておく場合にも、直流飽和消去は垂直方向に
行われ、垂直方向の初期磁化10を残留させることにな
る。
【0074】本発明の構成は上記の他、様々な磁気記録
媒体への応用が可能である。例えば上記の本発明の実施
の形態例には、主に磁気ディスク媒体に主眼をおいて記
述を行ったが、本発明はこれに限られるものではなく、
磁気カードや磁気テープ等の磁気記録媒体においても応
用可能であり、上記と同様に発明の効果を得ることがで
きる。
【0075】また、磁気記録媒体に記録される情報信号
に関しては、トラッキング用サーボ信号やアドレス情報
信号、再生クロック信号等のプリフォーマット信号に主
眼をおいて記述を行ったが、本発明の構成が応用可能な
情報信号も、上記に限られたものではない。例えば、本
発明の構成を用いて様々なデータ信号やオーディオ、ビ
デオ信号の記録を行うことも原理的に可能である。この
場合には、本発明のマスター情報担体とこれを用いた磁
気記録媒体への記録方法によって、ソフトディスク媒体
の大量複写生産を行うことができ、安価に提供すること
が可能である。
【0076】上記のような様々な本発明の応用の形態
が、その特徴に応じて変更された様々な構成の形態とと
もに、本発明の範疇に属することは言うまでもない。
【0077】
【発明の効果】本発明によれば、磁気記録媒体、特に固
定ハードディスク媒体、リムーバブルハードディスク媒
体、大容量フレキシブル媒体等のディスク状媒体に、短
時間に生産性良く、かつ安価に、トラッキング用サーボ
信号やアドレス情報信号、再生クロック信号等のプリフ
ォーマット記録を行うことが可能である。
【0078】また本発明の記録方法によれば、従来の方
法に比べて、より高トラック密度領域において高精度の
トラッキングが可能となる。
【0079】なお、本発明は上記の効果を実現するため
に、磁気記録媒体SNやヘッド・媒体インターフェース
性能など、他の重要性能をいささかも犠牲にすることは
なく、従来技術の課題に対して、真に有効な解決策を提
供することができる。すなわち本発明は、磁気記録再生
装置の分野において、将来のギガビットオーダー以上の
面記録密度を担うために有効な技術である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のマスター情報担体表面の構成例を示す
【図2】本発明のマスター情報担体のトラック長さ方向
の断面図
【図3】本発明のマスター情報担体のトラック長さ方向
の断面図
【図4】本発明のマスター情報担体のトラック長さ方向
の断面図
【図5】本発明のマスター情報担体のトラック長さ方向
の断面図
【図6】(a)本発明のマスター情報担体を用いた磁気
記録媒体へのマスター情報信号の記録方法の説明図 (b)磁気記録媒体に記録された記録磁化パターンの模
式図 (c)磁気記録媒体に記録された記録磁化パターンから
のヘッド再生波形図
【図7】本発明のマスター情報担体を用いた磁気記録媒
体へのマスター情報信号の記録方法の説明図
【図8】本発明のマスター情報担体を用いた磁気記録媒
体へのマスター情報信号の記録方法の説明図
【図9】(a)本発明のマスター情報担体を用いた磁気
記録媒体へのマスター情報信号の記録方法の説明図 (b)磁気記録媒体に記録された記録磁化パターンの模
式図 (c)磁気記録媒体に記録された記録磁化パターンから
のヘッド再生波形図
【符号の説明】
1 マスター情報担体の基体 2 強磁性薄膜 3 マスター情報担体の強磁性材料よりなる基体 4 マスター情報担体 5 磁気記録媒体 6 マスター情報担体の凸部を構成する強磁性材料の磁
化 7 記録磁界 8 磁気記録媒体の記録磁化 9 直流励磁磁界 10 磁気記録媒体の初期磁化
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G11B 5/86 G11B 5/86 C 101 101B (72)発明者 東間 清和 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 吉本 和也 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 (72)発明者 宮田 敬三 大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器 産業株式会社内 Fターム(参考) 5D006 BB01 BB07 CB01 DA02 DA03 DA04 EA03 5D112 AA02 AA05 AA20 AA24 BA01 BB01 FA01

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁気記録媒体に磁化パターンを記録する
    ためのマスター情報担体であって、前記マスター情報担
    体の表面に情報信号に対応する凹凸形状が形成され、前
    記凹凸形状の少なくとも凸部表面に基体面内保磁力500
    エルステッド以下の強磁性薄膜が形成されたことを特徴
    とするマスター情報担体。
  2. 【請求項2】 前記情報信号は、トラッキング用サーボ
    信号、アドレス情報信号、または、再生クロック信号の
    うち少なくともいずれか一つを含む情報信号であること
    を特徴とする請求項1記載のマスター情報担体。
  3. 【請求項3】 基体が、可撓性を有するシート状もしく
    はディスク状の基板により構成されたことを特徴とする
    請求項1記載のマスター情報担体。
  4. 【請求項4】 基体の凸部表面を構成する強磁性薄膜
    が、軟質磁性薄膜であることを特徴とする請求項1記載
    のマスター情報担体。
  5. 【請求項5】 基体の表面に情報信号に対応する凹凸形
    状が形成され、前記凹凸形状の少なくとも凸部表面が、
    基体面内保磁力500エルステッド以下の強磁性材料によ
    り構成されたマスター情報担体の表面を、強磁性薄膜あ
    るいは強磁性粉塗布層が形成されたシート状もしくはデ
    ィスク状磁気記録媒体の表面に接触させることにより、
    前記凹凸形状に対応する磁化パターンを磁気記録媒体に
    記録することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記記録過程において、交流バイアス磁
    界を印加することを特徴とする請求項5記載の磁気記録
    媒体の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記記録過程において、前記マスター情
    報担体の凸部表面を構成する強磁性材料を励磁するため
    の直流磁界を印加することを特徴とする請求項5記載の
    磁気記録媒体の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記記録過程において、交流バイアス磁
    界を印加し、かつ前記マスター情報担体の凸部表面を構
    成する強磁性材料を励磁するための直流磁界を印加する
    ことを特徴とする請求項5記載の磁気記録媒体の製造方
    法。
  9. 【請求項9】 前記マスター情報担体表面を前記磁気記
    録媒体表面に接触させるに先だって、前記磁気記録媒体
    を予め直流磁界消去しておくことを特徴とする請求項5
    〜8のいずれかに記載の磁気記録媒体の製造方法。
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