JP2002266827A - ネジおよびネジの製造法ならびにドライバー - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 眼鏡枠用ネジのような微細なネジの場合で
も、ネジの嵌合溝とドライバービットの嵌合刃部とが確
実に係合して、少ない回転力でも強固に締め付け、また
容易に解離できるネジとドライバーとを提供する。 【解決手段】 ネジ１の頭部２には均一な巾を持っ十字
型の嵌合溝３１，３２が頭部２の周辺面に達するように
貫通して設けられている。頭部上面の中心には円筒状の
垂直溝４が設けられ、その下には円錐形の凹溝５が連続
して設けられている。一方、ドライバーのビット部７は
十字型の嵌合刃部を備え、各嵌合刃部は均一な厚さを持
っている。従って、ビット部７をネジの嵌合溝に挿入す
ると、嵌合刃部と嵌合溝とは広い範囲Ｗ、Ｗで接触し、
少ない力でネジを緊定、解離をすることができる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ネジおよびそれを着脱
するためのドライバーに関し、特に、眼鏡枠等に使用す
る微細な金属製のネジおよびそれを着脱するためのドラ
イバーに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】十字型の嵌合溝を有するネジおよび十字
型のビットを有するドライバーとの組み合わせはプラス
ネジ、プラスドライバーと呼ばれて周知である。この従
来周知のプラスネジはネジの頭部中心に周辺部を残して
十字型の嵌合溝を有し、その嵌合溝は凹円錐状に形成さ
れている。一方、プラスドライバーは上記ネジの嵌合溝
の形状と合致するように十字型のビットの先端は円錐状
に形成されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】この従来周知のプラス
ネジは回転式のドライバーと組み合わせて使用すれば、
自動締め付け、自動解除が可能となり、業能率を著しく
向上させことができる。

【０００４】ところが、従来のプラスネジは頭部の狭い
面積の中に周囲を残して十字型の溝を収容しなければな
らないので、ネジの嵌合溝とドライバービットの嵌合刃
部との接触面積を大きくするためには、必然的に円錐状
の嵌合溝を深く構成しなければならなくなる。通常、嵌
合溝の円錐形の内角の角度は６０度であり、それに合致
するビットの嵌合刃部の先端突起部の内角の角度も６０
度となる。

【０００５】このようなネジの構造を、例えば、眼鏡枠
用などの微細なネジに適用した場合は、プラスドライバ
ーの先端嵌合部とプラスネジの嵌合溝との係合面積が少
ないうえに、両者の係合面に働く力が斜めに作用するの
で、スリップして空転しやすく、ネジの係合面を摩耗さ
せてネジが所謂ばかになりやすいという欠点がある。

【０００６】従来周知のプラスネジは、図８に示される
ように、螺子部の太さとほぼ同じ直径を有する金属製の
丸棒９１の一端を圧造して大きくして頭部９２を作成す
る。頭部９２の上面に形成される十字溝９３は丸棒の頭
を圧造でつぶすと同時に塑性加工して製造される。ま
た、螺子部９４には螺旋状ネジ溝９５がローラーねじ切
り法によって塑性加工される。

【０００７】ところが圧造で製造したネジは精度が悪
く、また首の根本で折れやすいので、ある程度大きなネ
ジにしか適用できない。また、ローラーねじ切り法は、
ロールで螺子部を絞り出すのでロットの太さが細い場合
は切れやすいという欠点がある。したがって、従来の製
造法は、長さ３ｍｍ、頭部の直径１．５〜２．０ｍｍの
ように極めて微細な眼鏡枠用のプラスネジの製造には向
かない。

【０００８】

【課題を解決するための手段】本発明の目的は、眼鏡枠
用ネジのような微細なネジの場合でも、ネジの嵌合溝と
ドライバービットの嵌合刃部とが確実に係合して、少な
い回転力でも強固に締め付け、また容易に解離できるネ
ジとドライバーとを提供することにある。

【０００９】本発明の他の目的は、ネジの緊定、解離に
際し、ドライバーの空転を防止し、ネジの嵌合溝の摩滅
を防ぎ、ネジがばかになりにくいネジとドライバーとを
提供することにある。

【００１０】本発明の他の目的は、ネジの嵌合溝にドラ
イバーの嵌合刃部を容易に挿入することが可能で、特
に、眼鏡枠用のネジの様な微細なネジの場合でも、容易
に挿入でき、ビットの刃先で眼鏡枠を傷つける恐れの少
ないネジとドライバーとを提供することにある。

【００１１】本発明の他の目的は、眼鏡枠用のネジの様
な微細なネジであっても、強度および精度の高いプラス
ネジを製造できるネジの製造法を提供することにある。

【００１２】本発明では、ネジの頭部中心に円筒状の垂
直溝を設け、この垂直溝の直径よりも巾が狭く上記頭部
の垂直回転軸と直交し、該頭部の周辺面に達する２つの
均一な巾を持っ嵌合溝を互いに９０度の角度で交叉する
ように該頭部上面に設けると共に、上記垂直溝の底面に
円錐形の凹溝を設けることによって、上記目的を達成す
るネジを提供する。

【００１３】また、本発明では、十字型のビットの先端
の嵌合刃部を円錐状に突出して突起部を形成すると共
に、少なくともネジの嵌合溝と係合する部分の各嵌合刃
部の厚みを均一にしたことによって、上記目的を達成す
る十字型のビットを有するドライバーを提供する。

【００１４】さらに、本発明では、切削加工によって、
頭部の十字型の嵌合溝、円筒状の垂直溝および円錐形の
凹溝を形成することによって、上記目的を達成するプラ
スネジの製造方法を提供する。

【００１５】

【発明の実施の形態】本発明のネジの円錐形の凹溝は上
記ドライバーの先端突起部を受け入れて中心軸がぶれな
いようにドライバーを回転させるためのものであるの
で、ドライバーの先端突起部の断面内角と同じ内角を持
つ凹溝に構成するのが好ましい。すなわち、円錐形の凹
溝の断面内角は１００度〜１２０度が好ましく、特に好
ましくは１１０度である。

【００１６】本発明のドライバーの先端突起部の断面内
角は１００度〜１２０度が好ましく、特に好ましくは１
１０度である。この内角が１００度よりも小さくすると
ドライバーの十字型の嵌合刃部とネジの嵌合溝とが接触
する面積が小さくなり、ドライバーが空転したり、ドラ
イバーとネジとの係合がはずれやすく、嵌合溝や眼鏡枠
等の周囲を傷つけたりする。また、ドライバーの回転ト
ルクがネジに十分に伝達できないので、過大な回転力を
加えてネジを傷つけ、ネジを所謂ばかにする結果を招き
やすくなる。

【００１７】一方、この内角の角度を１２０度よりも大
きくすると、ドライバーの嵌合刃部とネジの嵌合溝との
接触面積は大きくなる点では好ましいが、ネジの嵌合溝
への挿入が難しくなり、嵌合溝の周囲を傷つける恐れが
大きくなる。

【００１８】本発明のネジの製造方法は、ネジの頭部と
ほぼ同じ直径を有する金属製丸棒の一端に頭部を残して
最終の螺子部の直径より若干太い螺子溝用丸棒部を切削
加工によって形成する工程、上記頭部に十字型の嵌合溝
を、また頭部中心に円筒状の垂直溝をそれぞれ切削加工
によって形成する工程、上記円筒状の垂直溝の底面に円
錐形の凹溝を切削加工によって形成する工程および上記
螺子溝用丸棒部に螺旋状ネジ溝を塑性加工によって形成
する工程よりなることを特徴とする。

【００１９】一例を挙げれば、螺子用丸棒部の切削加工
は自動旋盤で行う。頭部の十字型嵌合溝はカッターで、
頭部中心の円筒状垂直溝はドリルでそれぞれ切削加工す
る。十字型の嵌合溝および円筒状の垂直溝の加工順序に
は特に制限はない。円筒状垂直溝底面の円錐形凹溝の切
削加工にはドリルを用いる。螺子溝用丸棒部に螺旋状ネ
ジ溝を形成するにはダイスによって塑性加工する。な
お、頭部およびネジの先端のアール加工や角取りは任意
の中間工程中または最終工程で行っても良い。

【００２０】

【実施例】図１は本発明のネジの実施例を示すもので、
１はネジ本体、２はネジ１の頭部、３は頭部２にも設け
られた十文字状の嵌合溝、４は頭部２の上面中心に設け
られた円筒状の垂直溝、５はこの円筒状の垂直溝の底面
に設けられた円錐形の凹溝、１１はネジ本体１に設けら
れた螺旋状のネジ溝である。

【００２１】図３はネジ１の頭部２の平面図であって、
嵌合溝３は２つの嵌合溝３１，３２が直角に交叉して設
けられている。円筒状の垂直溝４の直径ｂは嵌合溝３
１，３２の交点に形成される仮想正方形３３の対角線ａ
よりも大きい。従って、ドライバーの先端部８を嵌合溝
３に挿入する操作が容易になる。

【００２２】さらに、２つの嵌合溝３１，３２は均一な
巾を持ち、その両端は頭部２の円周面２１にまで突き抜
けている。従って、頭部２いっぱいの大きなドライバー
でも使用でき、又、通常のマイナスドライバーも使用す
ることができる。

【００２３】図２に示されている円錐形の凹溝５は垂直
溝４の底面に連続して形成されている。凹溝５の円錐形
の斜面の角度はネジ１の回転軸に対して５０度〜６０度
である。従って、凹溝５の円錐形の頂点の内角α１は１
００度〜１２０度である。最も好ましい内角α１は１１
０度である。

【００２４】図４において、６はドライバーであって、
その先端のビット部７には図５、図６に示されるように
４つの十字型の嵌合刃部７１，７２，７３，７４が設け
られている。ビット７の先端に設けられた円錐状の先端
部８の形状はネジ１の円錐形の凹溝５と同じ形状の円錐
形をしている。すなわち図４に示されるように、円錐状
の突起部８の内角α２は１００度〜１２０度であり、最
も好ましい内角α２は１１０度である。なお、６１は把
持部、７５は突起部８の先端である。

【００２５】また、図５，図６に示されるように、突起
部８における嵌合刃部７１，７２，７３，７４がネジ１
の嵌合溝３と嵌合する部分の厚さｃはネジ１の嵌合溝３
の溝巾よりも若干薄い均一な厚さを持つ。

【００２６】図２に示すように、従来のプラスドライバ
ー９７の先端部の角度は一般的に６０度である。この場
合の嵌合刃部とネジの嵌合溝との接合面は嵌合刃部９８
の線に沿う僅かな区域に限られている。

【００２７】一方、本発明のネジ１とドライバー６の組
み合わせの場合は、ネジの嵌合溝３が均一な巾を持ち、
一方、それに係合するドライバーの先端部８における嵌
合刃部７１，７２，７３，７４も図６に示すように均一
な巾ｃを持っているので、両者が係合された場合、図２
のＷ、Ｗで示される広い面積で接触する。

【００２８】しかも、嵌合溝３１と嵌合刃部７１，７３
とは平行状態で接触している（嵌合溝３２と嵌合刃部７
２，７４も同様）ので、ドライバーの回転力は嵌合溝の
壁に対して垂直方向に作用し、その回転力は無駄なくネ
ジの回動に利用される。すなわち、少ない力でネジを容
易に緊定又は解離できる。

【００２９】（製造法の実施例）図７に示すように、ネ
ジの頭部８２とほぼ同じ直径を有する金属製（眼鏡枠用
のネジの場合は１８金または白金）の丸棒８１をバイト
で切削して部分８６をカットして螺子溝用丸棒部８３を
細く削り出す。次に頭部８２に十字型の嵌合溝８４をカ
ッターで切削し、円筒状の垂直溝、円錐形の凹溝をドリ
ルで切削して形成する。最後に、螺子溝用丸棒部８３に
螺旋状ネジ溝８５をダイスで塑性加工して形成する。

【００３０】

【発明の効果】（１）本発明のネジの頭部に設けた十字
型の嵌合溝は頭部の周辺面に達する均一の巾を持ち、ま
た、本発明のドライバーのビット尖端の十字型の嵌合刃
部も均一の巾を持っているので、両者は緊密に係合して
ドライバーの空転を防止すると共に、ドライバーの回転
力は垂直にネジの嵌合溝の垂直壁に加わるので、少ない
力でネジを緊定、解離することができる。

【００３１】（２）本発明のネジは、十字型の嵌合溝の
中心に嵌合溝の巾よりも大きな直径を持つ円筒状の垂直
溝を設けたので、本発明のドライバーの尖端突起部をネ
ジの嵌合溝に挿入する操作が容易になり、ネジの周囲に
傷を付けることを防止できる。

【００３２】（３）本発明のネジは、円筒状の垂直溝の
下に円錐形の凹溝を連続して設けたので、ドライバーの
先端の突起部がその中に収まり、ドライバーの中心軸が
ぶれることなく回転して、ドライバーの離脱を防止する
と共に、ネジを正しい姿勢で螺入することができる。

【００３３】（４）本発明のネジの凹溝は１００度〜１
２０度の縦断面内角を持ち、本発明のドライバーの尖端
突起部も同じ縦断面内角を持っているので、ドライバー
が奥まで入り、力のかかる面積が多くなり、ネジの緊
定、解離作用を容易、確実にすることができる。

【００３４】（５）本発明のネジは、頭部の周辺面に達
する嵌合溝を設けたので、マイナスドライバーの使用も
可能にする。

【００３５】（６）本発明のネジの製造方法は圧造によ
らず、切削加工によって、頭部の嵌合溝を形成している
ので、精度が高く、強度の高いネジを製造することがで
きる。

【００３６】（７）本発明によれば、眼鏡枠用のネジの
ような微細なネジに適したネジおよびドライバーを提供
できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のネジの側面図。

【図２】図１のＡ−Ａ線縦断面図。

【図３】本発明のネジの平面図。

【図４】本発明のドライバーの側面図。

【図５】本発明のネジの底面図。

【図６】図４のＢ−Ｂ線横断面図。

【図７】本発明のネジの製造方法の説明図。

【図８】従来のネジの製造方法の説明図。

【符号の説明】

１ ネジ ２ 頭部 ３ 嵌合溝 ４ 垂直溝 ５ 凹溝 ６ ドライバー ７ ビツト部 ８ 突起部

Claims (6)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ネジの頭部中心に円筒状の垂直溝を設
   け、この垂直溝の直径よりも巾が狭く該ネジの垂直回転
   軸と直交し、該頭部の周辺面に達する均一の巾を持つ２
   つの嵌合溝を互いに９０度の角度で交叉するように該頭
   部上面に設けると共に、上記垂直溝の底面に円錐形をな
   す凹溝を設けたことを特徴とするネジ。
2. 【請求項２】 上記凹溝の円錐形の縦断面内角を１００
   度〜１２０度に形成したことを特徴とする請求項1記載
   のネジ。
3. 【請求項３】 眼鏡枠用金属製ネジの頭部中心に円筒状
   の垂直溝を設け、この垂直溝の直径よりも巾が狭く、該
   ネジの垂直回転軸と直交し、該頭部の周辺面に達する均
   一な巾を持つ２つの嵌合溝を互いに９０度の角度で交叉
   するように該頭部上面に設けると共に、上記垂直溝の底
   面に縦断面内角が１００度〜１２０度の円錐形をなす凹
   溝を設けたことを特徴とするネジ。
4. 【請求項４】 ネジの頭部とほぼ同じ直径を有する金属
   製丸棒の一端に頭部を残して最終の螺子部の直径より若
   干太い螺子溝用丸棒部を切削加工によって形成する工
   程、上記頭部に十字型の嵌合溝を、また頭部中心に円筒
   状の垂直溝をそれぞれ切削加工によって形成する工程、
   上記円筒状の垂直溝の底面に円錐形の凹溝を切削加工に
   よって形成する工程および上記螺子溝用丸棒部に螺旋状
   ネジ溝を塑性加工によって形成する工程よりなることを
   特徴とするネジの製造方法。
5. 【請求項５】 十字型の嵌合刃部を有するドライバーで
   あって、該十字型の嵌合刃部の先端に円錐状に形成した
   突起部を設けると共に、少なくともネジの嵌合溝と係合
   する部分の各嵌合刃部の厚みを均一にしたことを特徴と
   するドライバー。
6. 【請求項６】 上記突起部の縦断面内角を１００度〜１
   ２０度としたことを特徴とする請求項５記載のドライバ
   ー。