JP2002253270A - 組換え蛋白質の製造方法 - Google Patents

組換え蛋白質の製造方法

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JP2002253270A
JP2002253270A JP2001230493A JP2001230493A JP2002253270A JP 2002253270 A JP2002253270 A JP 2002253270A JP 2001230493 A JP2001230493 A JP 2001230493A JP 2001230493 A JP2001230493 A JP 2001230493A JP 2002253270 A JP2002253270 A JP 2002253270A
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JP2001230493A
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Takashi Ito
隆司 伊藤
Masayuki Kobayashi
昌行 小林
Hidekazu Sawada
秀和 澤田
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Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 N末端メチオニンの除去された組換え蛋白質
を効率良く生産する方法。 【解決手段】 遺伝子組換え蛋白質発現のための発現ベ
クターにより形質転換された宿主の培養において培養液
中の溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御する。 【効果】 培養液中の溶存酸素濃度を低く制御すること
により、そのような制御をしない場合に比べてN末端メ
チオニンの付加されていない組換え蛋白質の発現割合が
増加する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、遺伝子組換え蛋白
質の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】遺伝子組換え蛋白質(以下、単に「組換
え蛋白質」ということがある)の生産のための宿主とし
てはコスト等の面から大腸菌が最も広く用いられている
が、大腸菌で組換え蛋白質の発現を行った場合、動物細
胞で発現させた場合に見られるような正確なプロセッシ
ングがおこらない場合がある。大腸菌で発現させた場合
に見られる、開始コドンATGに由来するN末端のメチ
オニンの付加もそのような不正確なプロセッシングの一
つである。大腸菌で発現した組換え蛋白質のN末端に付
加されたメチオニンの除去は、通常、メチオニンアミノ
ペプチダーゼによって行われるが、この酵素はメチオニ
ンに続くアミノ酸がアルギニン、プロリンなどのアミノ
酸の場合にはほとんど作用しない。メチオニンに続くア
ミノ酸がセリン、アラニンなどの場合は比較的作用しや
すいものの、該組換え蛋白質の発現量が高い場合には、
発現した組換え蛋白質の大部分がN末端にメチオニンを
有したままであることが多い。N末端にメチオニンが付
加した組換え蛋白質とN末端にメチオニンが付加してい
ない組換え蛋白質を精製によって分離することが可能で
ある場合もあるが、通常、N末端メチオニンの有無しか
違わない両者を分離することは困難な場合が多く、精製
収率の点で不利となる。そのためN末端にメチオニンが
付加した組換え蛋白質の割合を低下させることは精製収
率の面においても効果が期待される。N末端にメチオニ
ンを付加した組換え蛋白質は、本来の活性が認められな
かったり、その組換え蛋白質を医薬品として用いる場合
には、抗原性が問題となることもある。N末端のメチオ
ニンを除去あるいは該メチオニンの付加していない組換
え蛋白質を生産する方法としてその他には、分泌発現を
行う方法(C.N. Changeら、Gene、189-196、55(198
7))、融合タンパクとして発現させる方法(板倉ら、Sc
ience, 198, 1056(1977))、発現後にアミノペプチダー
ゼを用いてメチオニンを除去する方法(中川ら、Biotec
hnology, 5, 824(1987))などが知られている。しか
し、分泌発現を行う方法に関しては通常の発現に比べて
生産量が低いという不都合がある。また、融合タンパク
として発現させる方法および発現後にアミノペプチダー
ゼを用いてメチオニンを除去する方法に関しては、発現
させた後に、融合タンパクの切断又はメチオニンの除去
の操作が必要となり、操作が煩雑になるだけでなく、最
終的な収率・純度の低下を招き不都合である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】高発現下においても、
大腸菌を宿主として、効率的にN末端のメチオニンが除
去された組換え蛋白質を発現するための培養法の確立が
課題とされていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、遺伝子組
換え蛋白質発現のための発現ベクターにより形質転換さ
れた大腸菌の培養において、培養液中の溶存酸素濃度を
約1ppm以下に制御し、溶存酸素濃度をこのような低
い状態で保ちながら培養を行うことにより、N末端のメ
チオニンが除去された組換え蛋白質を高効率に発現する
ことを見出し、本発明を完成した。
【0005】すなわち、本発明は、(1)遺伝子組換え
蛋白質発現のための発現ベクターにより形質転換された
宿主の培養において、培養液中の溶存酸素濃度を約1p
pm以下に制御することを特徴とする、N末端にメチオ
ニンの付加していない組換え蛋白質の製造方法、(2)
培養液中の溶存酸素濃度が、約0.01〜1.0ppm
である前記(1)記載の製造方法、(3)培養液中の溶
存酸素濃度が、0.05〜1.0ppmである前記
(1)記載の製造方法、(4)培養液の攪拌回転数を調
節することにより溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御
することを特徴とする前記(1)記載の製造方法、
(5)宿主がエシェリヒア属菌である前記(1)記載の
製造方法、(6)培養液に、さらに発現誘導物質を添加
することを特徴とする前記(1)記載の製造方法、
(7)発現誘導物質がイソプロピル−β−D−チオガラ
クトピラノシドである前記(6)記載の製造方法、
(8)発現誘導物質の培養液中の濃度が、約0.01〜
1mMである前記(6)記載の製造方法などを提供する
ものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明によれば、目的とする蛋白
質の遺伝子を大腸菌等の原核細胞の宿主に導入し、培養
液中の溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御して該組換
え原核細胞(好ましくは大腸菌)を培養することによ
り、N末端にメチオニンが付加されていない目的蛋白質
を効率良く得ることができる。
【0007】本明細書において目的蛋白質は、ペプチド
標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端
がC末端(カルボキシル末端)である。目的蛋白質とし
ては、例えば、成長因子類(例、FGF−9等)、イン
ターロイキン類(例、インターロイキン−2、インター
ロイキン−6等)、インターフェロン類、ケモカイン類
(例、RANTES、MIP−1α、MCP−1等)、
生理活性ペプチド類〔例、副甲状腺ホルモン(PT
H)、ガラニンレセプターに対するリガンドペプチド
(GALP)(WO 99/48920)、KiSS−
1ペプチド(WO 00/24890)、RFRP−1
(WO 00/29441)、PrRP(WO 97/2
4436)、アンジオテンシン、ブラジキニン、カルシ
トニン、コナントキン、コルチコトロピン放出因子、ダ
イノルフィン、エンドルフィン、エンケファリン、ガラ
ニン等〕、神経栄養因子類(例、GDNF等)、酵素類
(例、LCAT様リゾホスホリパーゼ等)などの真核生
物由来の蛋白質が挙げられる。これらの蛋白質はそれら
単独で用いられてもよく、またそれらのC末端側に塩基
性繊維芽細胞増殖因子(bFGF)、bFGFの誘導
体、グルタチオン−Sトランスフェラーゼ(GST)、
マルトースバインディングプロテイン(MBP)、グリ
ーンフルオレッセントプロテイン(GFP)などの他の
真核生物由来の蛋白質、原核生物由来の蛋白質またはポ
リヒスチジンなどのタグを融合して用いてもよい。目的
蛋白質は塩を形成していてもよく、目的蛋白質の塩とし
ては、とりわけ生理学的に許容されうる塩が好ましい。
この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リ
ン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例
えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン
酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安
息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との
塩などの酸付加塩などが用いられる。
【0008】目的とする蛋白質の遺伝子を宿主に導入す
るためのベクターとしては、pBR322(ジーン(Ge
ne)、2、95 (1977)),pBR313〔ジーン,,7
5(1977)〕,pBR324,pBR325(ジーン
(Gene)、4、121 (1978)),pBR327,pBR32
8〔ジーン,,287(1980)〕,pBR329
〔ジーン,17,79(1982)〕,pKY2289
〔ジーン,,1(1978)〕,pKY 2700〔生化
学,52,770(1980)〕,pACYC177,pA
CYC184〔ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J
ournal of Bacteriology),134,1141(197
8)〕,pRK248,pRK646,pDF〔メソッ
ズ・イン・エン ジーモロジー(Methods in Enzymolog
y),68,268(1979)〕,pUC12(ジーン
(Gene)、19、259 (1982)),pUC13(ジーン(Ge
ne)、19、259 (1982))、pUC18,pUC19〔ヤニ
シューペロンら,ジーン(Gene),33,103(198
5)〕などのエシェリヒア属菌などの原核細胞で複製可
能なベクターであればどのようなベクターでも用いるこ
とができる。目的とする蛋白質の遺伝子の転写のための
プロモーターとしては、trpプロモーター、lacプ
ロモーター、recAプロモーター、λPLプロモータ
ー、lppプロモーター、T7プロモーター、tacプ
ロモーターなどがあげられる。必要によりSD(シヤイ
ンアンドダルガーノ)配列をプロモーターの下流に挿入
してもよい。T7プロモーターの系を用いる場合には、
T7プロモーターとしては、T7DNA上で見いだされ
ている17種のプロモーター〔J. L. Oakley ら,Pro
c.Natl. Acad. Sci, U.S.A,74:4266-4270(1977),M.
D. Rosa, Cell 16:815-825(1979),N. Panayotatos
ら,Nature,280:35(1979),J. J. Dunn ら,J. Mol. Bi
ol.,166:477-535(1983)〕のいずれでもよく、φ10プ
ロモーター〔A. H. Rosenberg ら,Gene,56:125-135(1
987)〕が好ましい。プロモーターDNAは公知の方法に
従って、ベクター中の適当な部位に挿入することができ
る。目的蛋白質をコードするDNAの挿入のために、通
常プロモーターDNAの下流に適当な制限酵素認識部位
を設けることができる。転写ターミネーターとしては、
大腸菌の系で作動するターミネーター、好ましくはTφ
ターミネーター〔F. W. Studier ら,J. Mol. Biol.,18
9:113-130(1986)〕が用いられる。T7RNAポリメラ
ーゼ遺伝子としてはT7遺伝子〔F. W. Studier ら,J.
Mol. Biol.,189:113-130(1986)〕を用いることが出来
る。
【0009】目的蛋白質の遺伝子は公知の方法に従っ
て、ベクター中のプロモーターDNAの下流に挿入する
ことができる。ベクターには、以上の他に、所望により
選択マーカーを含有しているものを用いることができ
る。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン耐性
遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子、カ
ナマイシン耐性遺伝子等があげられる。目的蛋白質をコ
ードするDNAが挿入された組換えベクターを用いて、
宿主を形質転換させることによって形質転換体を製造す
ることができる。宿主としては、例えば、エシェリヒア
属菌などの原核細胞が用いられる。エシェリヒア属菌の
具体例としては、エシェリヒア・コリ(Escherichia co
li)K12、DH1〔プロシージングズ・オブ・ザ・ナ
ショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・
ザ・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),6
0巻,160(1968)〕,JM103〔ヌクイレック
・アシッズ・リサーチ,(Nucleic Acids Research),
9巻,309(1981)〕,JA221〔ジャーナル・
オブ・モレキュラー・バイオロジー(Journal of Molec
ular Biology),120巻,517(1978)〕,HB
101〔ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジ
ー,41巻,459(1969)〕,C600〔ジェネテ
ィックス(Genetics),39巻,440(1954)〕,
MM294,JM109,BL21などが用いられる。
例えば、T7プロモーターの系を用いる場合、上記の菌
にT7 RNAポリメラーゼDNA(T7DNA1)
〔F. W. Studierら,J. Mol. Biol. 189:113−
130(1986)〕を組み込んだ大腸菌株、またはT7
RNAポリメラーゼDNA(T7DNA1)を他のプ
ラスミドと共に組込んだ大腸菌株などが用いられる。好
ましくはT7 DNA1を組み込んだλファージが溶原
化したMM294(DE3),JM109(DE3),
BL21(DE3)などが用いられる。
【0010】エシェリヒア属菌を形質転換するには、例
えば、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカ
デミー・オブ・サイエンジイズ・オブ・ザ・ユーエスエ
ー(Proc. Natl. Acad. Sci. USA),69巻,2110
頁(1972年)やジーン(Gene),17巻,107頁
(1982年)などに記載の方法に従って行うことがで
きる。宿主が原核細胞である形質転換体を培養する際、
目的蛋白質の製造のための形質転換体の培養に使用され
る培地としては液体培地が適当であり、培地中には該形
質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他
が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコ
ース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源
としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コー
ンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、
大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、
無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水
素ナトリウム、塩化マグネシウムなどがあげられる。ま
た、酵母エキス、ビタミン類、生長促進因子などを添加
してもよい。培地のpHは約5〜8が望ましく、約6〜
8がより好ましい。エシェリヒア属菌を培養する際の培
地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM
9培地〔ミラー(Miller),ジャーナル・オブ・エクス
ペリメンツ・イン・モレキュラー・ジェネティックス
(Journal of Experiments in Molecular Genetics),
431−433,Cold Spring Harbor Laboratory, New
York1972〕が好ましい。培養液には、必要によ
り、プロモーターを効率よく働かせるために、発現誘導
物質を添加してもよい。発現誘導物質としては、例え
ば、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド
(IPTG)、3β−インドリルアクリル酸などが用い
られる。使用濃度は、約0.01〜1.5mM、好まし
くは約0.01〜1mMである。発現誘導物質の添加時
期は、培養液中の溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御
する前後のいずれでもよく、好ましくは制御前である。
IPTGは、例えば、lacプロモーター、tacプロ
モーターなどを用いる場合に用いられる。また、T7プ
ロモーター系において、T7 RNAポリメラーゼDN
A(T7 DNA1)がlacプロモーターの下流に連
結されている場合においても、発現誘導物質としてIP
TGが用いられる。3β−インドリルアクリル酸は、例
えば、trpプロモーターを用いた場合に用いられる。
recAプロモーターをより効率良く働かせるため、す
なわちrecA遺伝子発現抑制機能を低下せしめるた
め、必要によりマイトマイシンC、ナルジキシン酸など
の薬剤の添加、紫外線照射、培養液のpHのアルカリ側
への変化などを行ってもよい。発現誘導は、発現誘導物
質の添加のみならず、培養温度を変化させることによっ
て行ってもよい。λcItsリプレッサーおよびλPL
−プロモーターを含有する発現ベクターを有する組換え
体を使用する場合、培養を、例えば約15〜36℃、好
ましくは約30〜36℃で行い、λcItsリプレッサ
ーの不活化による発現誘導を、例えば約37〜42℃で
行うのが好ましい。T7プロモータの系においても、T
7 RNAポリメラーゼDNA(T7 DNA1)がλ
PLプロモーターの下流に連結されている場合には、培
養の温度を上昇させることにより、生成するT7ファー
ジRNAポリメラーゼ1により特異的にT7プロモータ
ーを作動させる。培養は通常約15〜43℃、好ましく
は、約25〜43℃で約3〜24時間行ない、必要によ
り、通気や撹拌を加えることもできる。培養液中の溶存
酸素濃度を約1ppm以下に制御する方法としては、例
えば攪拌回転数、通気量、通気する気体の種類などを選
択する方法が挙げられ、単独で調整してもよいし、複数
組み合わせて調整してもよい。このうち、攪拌回転数を
調整することにより溶存酸素濃度を制御する方法が好ま
しい。これらの条件は、発現誘導時の菌体濃度、発現誘
導物質の濃度、発酵槽の大きさ、攪拌翼の形状などによ
って異なるため、適宜選択されればよく、溶存酸素濃度
が1ppmに維持されればよい。また、溶存酸素濃度を
モニターし、溶存酸素濃度が好ましい値に維持されるよ
うに、自動的に攪拌回転数、通気量または通気する気体
の酸素分圧を制御してもよい。これらの制御に関しては
連続的に行ってもよいし、段階的に行ってもよい。具体
的な条件として、例えば、3〜5L容量の発酵槽を用い
た場合、約37℃、通気量1〜3L/min、攪拌回転
数約300〜700rpmで攪拌することにより溶存酸
素濃度を目的の濃度に設定できる。攪拌速度または通気
量を上げることにより溶存酸素濃度を上げることがで
き、逆に攪拌速度または通気量を下げることにより溶存
酸素濃度を下げることができる。本発明において培養中
に維持される溶存酸素濃度は、N末端にメチオニンの付
加していない組換え蛋白質の割合を多くする濃度であれ
ば、いずれの濃度でもよい。好ましくは、N末端にメチ
オニンの付加していない組換え蛋白質が、N末端にメチ
オニンの付加している組換え蛋白質よりも多量(例え
ば、得られる蛋白質の約60%以上、好ましくは約70
%以上、より好ましくは約80%以上)に得られる濃度
であれば、いずれの濃度に変更してもよい。また、形質
転換細胞が目的蛋白質の生産に適した増殖を維持する限
り低くすることが好ましい。例えば、約1ppm以下、
好ましくは、約0.7ppm以下、さらに好ましくは約
0.5ppm以下で、あり、例えば、約0.01ppm
以上、好ましくは約0.05ppm以上、さらに好まし
くは約0.1ppm以上である。培養液中の溶存酸素濃
度の好ましい範囲は、例えば、約0.01〜1.0pp
m、好ましくは約0.05〜1.0ppm、さらに好ま
しくは約0.05〜0.7ppm、より好ましくは約
0.1〜0.5ppmである。上記と同様にして、エシ
ェリヒア属菌以外の原核細胞を形質転換し培養すること
ができる。このように、溶存酸素濃度を制御することに
より、得られる組換えタンパク質のうち、N末端にメチ
オニンの付加していない組換え蛋白質を通常、約60%
以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80
%以上の割合で製造することができる。
【0011】上記培養物から目的蛋白質を分離・精製す
るには、例えば、下記の方法により行うことができる。
目的蛋白質を培養菌体から抽出するに際しては、培養
後、公知の方法で菌体を集め、これを適当な緩衝液に懸
濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解など
によって菌体を破壊したのち、遠心分離やろ過によりポ
リペプチドの粗抽出液を得る方法などが適宜用いられ
る。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどの蛋白質変
性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含ま
れていてもよい。培養液中に目的蛋白質が分泌される場
合には、培養終了後、公知の方法で菌体あるいは細胞と
上清とを分離し、上清を集める。このようにして得られ
た培養上清、あるいは抽出液中に含まれる目的蛋白質の
精製は、公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行う
ことができる。これらの公知の分離、精製法としては、
塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析
法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアク
リルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を
利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷
電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフ
ィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体
クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、
等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法など
が用いられる。なお、目的とするN末端にメチオニンの
付加していない組換え蛋白質は、公知の方法を用いてN
末端にメチオニンの付加している組換え蛋白質と分離・
精製することができるが、分離・精製せずにそのまま使
用してもよい。
【0012】かくして得られる目的蛋白質が遊離体で得
られた場合には、公知の方法あるいはそれに準じる方法
によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場
合には公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊
離体または他の塩に変換することができる。なお、組換
え体が産生する目的蛋白質を、精製前または精製後に適
当な蛋白修飾酵素を作用させることまたは化学反応によ
り、任意に修飾を加えたり、ペプチドを部分的に除去す
ることもできる。蛋白修飾酵素としては、例えば、トリ
プシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダー
ゼ、プロテインキナーゼなどが用いられる。化学反応と
しては、例えば、ブロムシアンを用いた切断反応、2−
ニトロ−5−チオシアノ安息香酸を用いた切断反応など
があげられる。
【0013】抽出した目的蛋白質または分離・精製した
目的蛋白質は必要により、蛋白質のリフォールディング
に付される。リフォールディングは、例えばタンパク質
のフォールディング、R.H.Pain編、245-279(1995)、シ
ュプリンガーフェアラーク東京に記載された公知の方法
あるいはそれに準じる方法により実施する事が可能であ
る。抽出剤(例えば、グアニジン塩酸塩、尿素のような
カオトロピック可溶化剤、n−ラウリルメチルグリシ
ン、SDSのような界面活性剤など)を含まないもしく
は低濃度の抽出剤を含む緩衝液で1段階もしくは他段階
での希釈や、半透膜を用いた透析、ゲル濾過を用いた緩
衝液の置換等により行うことが出来る。この場合、目的
蛋白質のアグリゲーションを防止するために、アルギニ
ン、ポリエチレングリコール、中性界面活性剤等を添加
することが出来る。蛋白質のジスルフィド結合形成のた
めに空気酸化、酸化還元緩衝液系等を用いることが出来
る。酸化還元緩衝液にはグルタチオン、システイン、ジ
チオスレイトール、2−メルカプトエタノール、または
システアミンをベースとしたものが挙げられる。
【0014】得られた目的蛋白質は、該蛋白質の性質に
よって異なるが、たとえば医薬、試薬、原料、飼料など
として使用することができる。目的蛋白質を医薬として
使用する場合、常套手段に従って実施することができ
る。例えば、必要に応じて糖衣や腸溶性被膜を施した錠
剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤な
どとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学
的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤など
の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、該化合
物またはその塩を生理学的に認められる担体、香味剤、
賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などととも
に一般に認められた単位用量形態で混和することによっ
て製造することができる。これら製剤における有効成分
量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにする
ものである。錠剤、カプセル剤などに混和することがで
きる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスター
チ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結
晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラ
チン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マ
グネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカ
リンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油または
チェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形
態がカプセルである場合には、前記タイプの材料にさら
に油脂のような液状担体を含有することができる。注射
のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活
性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油な
どを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤技術にした
がって製造することができる。注射用の水性液として
は、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を
含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニト
ール、塩化ナトリウムなど)などがあげられ、適当な溶
解補助剤、たとえばアルコール(たとえばエタノー
ル)、ポリアルコール(たとえばプロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤
(たとえばポリソルベート80TM、HCO−50)など
と併用してもよい。油性液としてはゴマ油、大豆油など
があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベン
ジルアルコールなどと併用してもよい。また、緩衝剤
(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、
無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカ
インなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポ
リエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジ
ルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配
合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプ
ルに充填される。このようにして得られる製剤は、例え
ば哺乳動物(例えば、ヒト、マウス、ラット、モルモッ
ト、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルな
ど)に対して投与することができる。
【0015】本明細書および図面において、塩基やアミ
ノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB
Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あ
るいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、
その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があ
り得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとす
る。 DNA :デオキシリボ核酸 cDNA :相補的デオキシリボ核酸 A :アデニン T :チミン G :グアニン C :シトシン M :AまたはC R :GまたはA W :AまたはT S :GまたはC Y :TまたはC K :GまたはT V :AまたはGまたはC H :AまたはCまたはT D :AまたはGまたはT B :GまたはCまたはT N :AまたはCまたはGまたはT RNA :リボ核酸 mRNA :メッセンジャーリボ核酸 dATP :デオキシアデノシン三リン酸 dTTP :デオキシチミジン三リン酸 dGTP :デオキシグアノシン三リン酸 dCTP :デオキシシチジン三リン酸 ATP :アデノシン三リン酸 EDTA :エチレンジアミン四酢酸 SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
【0016】 Gly :グリシン Ala :アラニン Val :バリン Leu :ロイシン Ile :イソロイシン Ser :セリン Thr :スレオニン Cys :システイン Met :メチオニン Glu :グルタミン酸 Asp :アスパラギン酸 Lys :リジン Arg :アルギニン His :ヒスチジン Phe :フェニルアラニン Tyr :チロシン Trp :トリプトファン Pro :プロリン Asn :アスパラギン Gln :グルタミン
【0017】本願明細書の配列表の配列番号は、以下の
配列を示す。 [配列番号:1]参考例2で用いられたプライマー1の
塩基配列を示す。 [配列番号:2]参考例2で用いられたプライマー2の
塩基配列を示す。 [配列番号:3]参考例2で用いられた合成DNA1の
塩基配列を示す。 [配列番号:4]参考例2で用いられた合成DNA2の
塩基配列を示す。 [配列番号:5]参考例2で用いられた合成DNA3の
塩基配列を示す。 [配列番号:6]参考例2で用いられた合成DNA4の
塩基配列を示す。 [配列番号:7]参考例3で用いられた合成DNA5の
塩基配列を示す。 [配列番号:8]参考例3で用いられた合成DNA6の
塩基配列を示す。 [配列番号:9]参考例3で用いられたプライマー3の
塩基配列を示す。 [配列番号:10]参考例3で用いられたプライマー4
の塩基配列を示す。 [配列番号:11]参考例3で用いられたプライマー5
の塩基配列を示す。 [配列番号:12]参考例3で用いられたプライマー6
の塩基配列を示す。 [配列番号:13]参考例3で用いられたプライマー7
の塩基配列を示す。 [配列番号:14][Cys35]ヒトPTH(1−8
4)のアミノ酸配列を示す。 [配列番号:15][Cys35]ヒトPTH(1−8
4)をコードする遺伝子の塩基配列を示す。 [配列番号:16]ヒトPTH(1−34)のアミノ酸
配列を示す。 [配列番号:17]ラットGALP−CS23融合蛋白
のアミノ酸配列を示す。 [配列番号:18]ラットGALP−CS23融合蛋白
をコードする遺伝子の塩基配列を示す。
【0018】後述の参考例1で得られた形質転換体エシ
ェリヒア・コリ(Escherichia coli)MM294(DE
3)/pTCPTHは、2000年7月27日から日本
国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番
号305−8566)の独立行政法人産業技術総合研究
所 特許生物寄託センター(旧:通商産業省工業技術院
生命工学工業技術研究所(NIBH))に寄託番号FE
RM BP−7245として、また1998年1月23
日から日本国大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17−
85の財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IF
O 16156として寄託されている。後述の参考例2
で得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichi
a coli)JM109/pGFPNPは、2000年7月
17日から独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物
寄託センター(旧:NIBH)に寄託番号FERM B
P−7223として、また2000年4月24日から財
団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO 16
426として寄託されている。後述の参考例4で得られ
た形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)
MM294(DE3)/pTFCRGALは、2000
年7月17日から独立行政法人産業技術総合研究所 特
許生物寄託センター(旧:NIBH)に寄託番号FER
M BP−7226として、また2000年4月24日
から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IFO
16429として寄託されている。後述の参考例5で
得られた形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia
coli)MM294(DE3)/pTFCS4は、200
0年7月17日から独立行政法人産業技術総合研究所
特許生物寄託センター(旧:NIBH)に寄託番号FE
RM BP−7227として、また2000年4月24
日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託番号IF
O 16430として寄託されている。後述の実施例2
で用いられたプラスミドpTCHGH−Naを保持する
形質転換体エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)
(MM294(DE3),pTCHGH−Na)は、1
997年12月10日から独立行政法人産業技術総合研
究所 特許生物寄託センター(旧:NIBH)に寄託番
号FERM BP−6888として、また1997年1
0月16日から財団法人・発酵研究所(IFO)に寄託
番号IFO 16124として寄託されている。
【0019】参考例1 [Cys35]ヒトPTH(1−
84)産生組み換え大腸菌の調製 大腸菌MM294(DE3)/pE−C35PTH(特
開平5−304976)より常法に従いプラスミドpE
−C35PTHを単離し、単離したプラスミドpE−C
35PTHをBglII、EcoRVで完全消化し、
[Cys35]ヒトPTH(1−84)遺伝子、T7プロ
モーター及びT7ターミネーターを含むDNA断片を
得、T4 DNAポリメラーゼで末端を平滑化した。こ
のDNA断片を、ScaIで消化したpBR322にT
4 DNAリガーゼで接続し、テトラサイクリン耐性を
マーカーにもつ発現プラスミドpTCPTH2を構築し
た(図1)。大腸菌MM294(DE3)にプラスミド
pTCPTH2を導入し、大腸菌MM294(DE3)
/pE−C35PTHを得た。
【0020】実施例1 [Cys35]ヒトPTH(1−
84)産生組み換え大腸菌の3Lジャーを用いた培養 大腸菌MM294(DE3)/pTCPTH2を10m
g/mlのテトラサイクリンを含むLB培地(1%ペプ
トン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)
1リットルで30℃、16時間振盪培養した。得られた
培養液を1.5Lの主発酵用培地(1.68%リン酸一
水素ナトリウム、0.3%リン酸二水素ナトリウム、
0.1%塩化アンモニウム、0.05%塩化ナトリウ
ム、0.024%硫酸マグネシウム、0.02%ニュー
ポールLB−625、0.0005%塩酸チアミン、
1.5%ブドウ糖、1.5%カザミノ酸)を仕込んだ3
L容ジャーに移植して、37℃、通気量1.5L/mi
n、攪拌回転数500rpmで通気攪拌培養を開始し
た。培養液の濁度が約500クレット単位になった時点
で、5.95mg/L分のイソプロピル−β−D−チオ
ガラクトピラノシド(IPTG)を添加した。IPTG
を添加した直後から、溶存酸素濃度が0.25、0.
5、1.0及び2.0ppmになるように攪拌回転数を
制御して培養を行った。また、IPTG添加時に0.7
5%のグルコースを添加し、さらにIPTG添加30分
後から1時間当たり0.3%のグルコースを追加フィー
ドして、培養開始24時間後まで培養を行った。IPT
G添加後、経時的に培養液0.5mlを抜き取り遠心分
離を行い、菌体を−20℃に保存した。凍結保存してお
いた菌体に7M塩酸グアニジン、10mMジチオスレイ
トール及び0.1%(W/V)トゥィーン20を含む
0.1Mトリスヒドロキシアミノメタン緩衝液(pH
8.0)を0.5mlを加え、十分に攪拌し、室温で3
分間超音波処理することにより菌体内容物の抽出を行っ
た後、15000rpm、5分間遠心分離して抽出上清
液を得た。この上清液を0.1%(V/V)トリフルオ
ロ酢酸溶液で10倍に希釈した後、15000rpm、
10分間遠心分離して得られた上清液0.1mlをAsah
ipak C4P-50 4E(昭和電工社製)カラムクロマトグラ
フィーに供し、[Cys35]ヒトPTH(1−84)及
びそのMet付加体の定量を行った。カラムクロマトグ
ラフィーは溶媒A:0.1%トリフルオロ酢酸、溶媒
B:80%アセトニトリルを含む0.1%トリフルオロ
酢酸の濃度勾配による溶出により行った。図2に逆相H
PLCのチャートを示す。培養14時間後の菌体抽出液
の[Cys35]ヒトPTH(1−84)及びそのMet
付加体の定量を行った結果を図3に示した。溶存酸素制
御値が低いほどMetの付加率は低下し、高い[Cys
35]ヒトPTH(1−84)生産性が得られた。
【0021】実施例2 [Cys35]ヒトPTH(1−
84)産生組み換え大腸菌の500L発酵槽を用いた培
養 大腸菌MM294(DE3)/pTCPTH2を10m
g/mlのテトラサイクリンを含むLB培地(1%ペプ
トン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウム)
1リットルで30℃、16時間振盪培養した。得られた
培養液を0.02%ニューポールLB−625及び50
mg/mlのアンピシリンを含む20LのLB培地を仕
込んだ50L容発酵槽に移植して、37℃、8時間通気
攪拌培養を行った。この培養液を360Lの主発酵用培
地(1.68%リン酸一水素ナトリウム、0.3%リン
酸二水素ナトリウム、0.1%塩化アンモニウム、0.
05%塩化ナトリウム、0.024%硫酸マグネシウ
ム、0.02%ニューポールLB−625、0.000
5%塩酸チアミン、1.5%ブドウ糖、1.5%カザミ
ノ酸)を仕込んだ500L容発酵槽に移植して、37
℃、通気量260L/min、攪拌回転数120rpm
で通気攪拌培養を開始した。培養液の濁度が約1200
クレット単位(KU)になった時点で、5.95mg/
L分のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド
(IPTG)を添加した。IPTGを添加した後に、攪
拌回転数を120及び105rpmに変更して培養を行
った。IPTG添加時に0.75%のグルコースを添加
し、さらにIPTG添加30分後から1時間当たり0.
3%のグルコースをフィードして、培養開始24時間後
まで培養を行った。IPTG添加後、経時的に培養液
0.5mlを抜き取り遠心分離を行い、菌体を−20℃
に保存した。凍結保存した菌体より、実施例1と同様の
方法で生産量及びMet付加率を測定した(図4)。本
発明の培養法は、500L容発酵槽を用いた培養におい
ても低いMet付加率を示した。
【0022】実施例3 [Cys35]−PTH(1−8
4)からのPTH(1−34)の調製 本発明の培養法を用いて培養を行った菌体より、[Cy
35]ヒトPTH(1−84)を単離し、35位のシス
テイン残基をシアノ化した後、切断を行い、ヒトPTH
(1−34)を取得した。IPTG添加後の回転数を1
05rpmとし、実施例2に記載した培養方法で培養を
行なった。得られた菌体3kgの内容物を6Mグアニジ
ン塩酸塩及び0.1mM APMSFを加えた0.1M Tris
-HCl(pH8.0) 10Lで抽出した。8000rpmで2
0分間遠心分離を行い、得られた上清を1mM DTT
を含む20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)で約
40倍に希釈した。希釈液を10000rpmで連続遠
心分離を行い、不溶物(沈殿)を除去した。得られた上
清液を20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)で平
衡化したSP−トヨパール650Mカラム(30cm×
63cm、東ソー社)に添加し、0から1.0M Na
Clの直線濃度勾配で溶出した。この溶出液をペリコン
カセットシステム(分画分子量:1000、ミリポア
社)を用いて、0.1M酢酸を加えながら濃縮・脱塩を
行った。濃縮脱塩液2.5Lに尿素を6Mになるように加
えた後、1−シアノ−4−ジメチルアミノピリジニウム
塩(DMAP−CN)を2.2g添加し、室温で15分
間反応し、S−シアノ化を行った。S−シアノ化を行っ
た溶液を、20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)
で平衡化したSP−トヨパール650Mカラム(30c
m×63cm、東ソー社)に添加し、0.1から1.0
MNaClの直線濃度勾配で溶出した。この溶出液をペ
リコンカセットシステム(分画分子量:1000、ミリ
ポア社)を用いて濃縮・脱塩を行い、濃縮脱塩液2Lに
尿素を6Mになるように加えた後、終濃度が0.05Nに
なるように1N NaOHを添加し、氷冷下10分間、
S−シアノ化したシステイン部分での切断反応を行った
後、pHが5以下になるように酢酸を添加し反応を停止
した。この液を20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH
5)で平衡化したトヨパールHW−50Fカラム(30
cm×63cm、東ソー社)を用いたゲル濾過クロマト
グラフィーに供した。溶出液を2M尿素を含む20mM
酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)で平衡化したSP−
トヨパール650Sカラム(20cm×32cm、東ソ
ー社)に吸着させ、2M尿素を含む20mM酢酸アンモ
ニウム緩衝液(pH5)と2M尿素及び0.5M塩化ナ
トリウムを含む20mM MES緩衝液(pH8)の直
線濃度勾配により溶出を行った。溶出液を35%飽和硫
安を含む20mM酢酸アンモニウム(pH5.0)で平
衡化したフェニル−5PWカラム(10.8cm×20
cm、東ソー社)に添加し、平衡化緩衝液及び20mM
酢酸アンモニウム(pH5.0)の直線濃度勾配により
溶出を行った。溶出液を0.1%トリフルオロ酢酸で平
衡化したODS−120Tカラム(30cm×75c
m、東ソー社)に添加し、80%アセトニトリルを含む
0.1%トリフルオロ酢酸の直線濃度勾配により溶出を
行った。溶出液を20mM酢酸アンモニウム緩衝液(p
H5)で10倍に希釈した後、20mM酢酸アンモニウ
ム緩衝液(pH5)で平衡化したCM−トヨパール65
0Mカラム(4cm×50cm、東ソー社)に吸着さ
せ、20mM酢酸アンモニウム緩衝液(pH5)と1M
塩化ナトリウムを含む20mMトリス塩酸緩衝液(pH
8)の直線濃度勾配により溶出を行った。この溶出液を
蒸留水で平衡化したセファデックスG−10カラム(1
4cm×65cm、アマシャム ファルマシア・バイオ
テク社)に添加し、蒸留水で溶出を行い、PTH(1−
34)5.88gを得た。PTH(1−34)を4%チ
オグリコール酸を含む6N塩酸で110℃、24及び4
8時間気相加水分解し、アミノ酸分析計(日立L−85
00A Amino Acid Analyzer)を用いてアミノ酸組成を
決定した。(表1、表中、Ser、Thrは0hrに外
挿した値を、その他のアミノ酸は24、48hr平均値
を示す。)N末端アミノ酸配列分析を気相プロテインシ
ーケンサー(アプライドバイオシステムズ モデル47
7A)を用いて決定した。その結果、cDNA塩基配列
から予想されるアミノ酸配列と一致し、N末端のメチオ
ニンの付加はみられなかった。(表2)
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】参考例2 至適化配列探索用プラスミドの
構築 1)プラスミドpGFPuvqcの構築 pGFPuv(クロンテック社)のGFPuv構造遺伝
子内に存在するNdeI切断部位を消失させるためにプ
ライマー1:CGTTATCCGGATCACATGAAACGGCATG(配列番
号:1)及びプライマー2:CATGCCGTTTCATGTGATCCGGAT
AACG(配列番号:2)を用いて部位特異的変異導入(Qu
ickChangeTM Site Directed MutagenesisKit, STRATAGE
NE社製)により77番目のヒスチジンのコドンをCAT
からCACに置換し、プラスミドpGFPuvqcを得
た。 2)プラスミドpGFPuvqdの構築 プラスミドpGFPuvqcをHindIII(宝酒
造)及びKpnI(宝酒造)で切断し、アガロース電気
泳動により約3.3kbpのバンドを切り出し、ゲルよ
りQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いてD
NAを回収した。合成DNA1:AGCTTCATATGTTCGAAGTA
CTAGATCTGGTAC(配列番号:3)及び合成DNA2:CAG
ATCTAGTACTTCGAACATATGA(配列番号:4)各100pm
olをTE緩衝液に溶解し、90℃で10分間保持した
後に室温まで徐冷しアニーリングを行った。このアニー
リングを行ったDNA断片をpGFPuvqcのHin
dIII−KpnI部分にLigation kit ver.2(宝酒
造)を用いて挿入し、プラスミドpGFPuvqdを得
た。 3)プラスミドpGFPNPの構築 WO00/20439の参考例1に記載のpTCHGH
−NaのT7プロモーターを合成プロモーターNP2に
置換したプラスミドpNPHGHを以下のように構築し
た。プラスミドpTCHGH−NaをEcoRI(宝酒
造)及びXbaI(宝酒造)で切断し、アガロース電気
泳動により約4.6kbpのバンドを切り出し、ゲルよ
りQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いてD
NAを回収した。合成プロモーターNP2を含む合成D
NA3:AATTCTATAAAAATAATTGTTGACATATTTTATAAATTTTGG
CATAATAGATCTAATTGTGAGCGGATAACAATTCTGCAGAAGCTTGAGCT
CGGTACCCGGGGATCCT(配列番号:5)及びその相補塩基
配列を含む合成DNA4:CTAGAGGATCCCCGGGTACCGAGCTC
AAGCTTCTGCAGAATTGTTATCCGCTCACAATTAGATCTATTATGCCAAA
ATTTATAAAATATGTCAACAATTATTTTTATAG(配列番号:6)
を各100pmolをTE緩衝液に溶解し、90℃で1
0分間保持した後に室温まで徐冷しアニーリングを行っ
た。この二本鎖DNA断片をpTCHGH−NaのEc
oRI−XbaI部分にLigation kit ver.2(宝酒造)
を用いて挿入し、プラスミドpNPHGHを得た。プラ
スミドpNPHGHをBamHI(宝酒造)で切断し、
DNA Blunting Kit(宝酒造)を用いて末端部分を平滑化
した。次にNdeIで切断した後、アガロース電気泳動
により約4.6kbpのバンドを切り出し、ゲルよりQI
Aquick GelExtraction Kit(QIAGEN)を用いてDNAを
回収した。プラスミドpGFPuvqdをNdeI及び
StuIで切断し、アガロース電気泳動により約0.8
kbpのバンドを切り出し、ゲルよりQIAquick Gel Ext
raction Kit(QIAGEN)を用いてGFPuvの構造遺伝
子を含むDNAを回収した。回収したDNAをpNPH
GHのNdeI−BamHI(平滑化)部分にLigation
kit ver.2(宝酒造)を用いて挿入し、N末端至適化配
列選択用プラスミドpGFPNPを得た(図5)。プラ
スミドpGFPNPはNP2プロモーターにより転写さ
れるGFPuv構造遺伝子を含み、GFPuv構造遺伝
子の上流にNdeI、ScaI及びAgeI切断部位を
有する発現プラスミドであり、これらの制限酵素部位を
利用してDNA断片を挿入することが出来る。プラスミ
ドpGFPNPを用いて大腸菌JM109を形質転換
し、大腸菌JM109/pGFPNPを得た。
【0026】参考例3 ラットGALP発現用至適化配
列の探索 pGFPNPをNdeI(宝酒造)及びScaI(宝酒
造)で切断し、アガロース電気泳動により約4.9kb
pのバンドを切り出し、ゲルよりQIAquick GelExtracti
on Kit(QIAGEN)を用いてDNAを回収した。ラットG
ALP(ラット・ガラニンレセプターに対するラット型
リガンドペプチド(1−60);WO99/4892
0)のN末端部アミノ酸をコードするランダム塩基配列
は以下のように調製を行った。混合塩基を含む合成DN
A5:AGGTAACCAGCACTATTTAAAGTCCANCCNCCNCGNCCNCGRTG
NGCNGGNGCCATATGTATATCTCCTTCTTAAAG(配列番号:7)
及び合成DNA6:AGGTAACCAGCACTATTTAAAGTCCANCCNCC
YCTNCCYCTRTGNGCNGGNGCCATATGTATATCTCCTTCTTAAAG(配
列番号:8)を鋳型として、プライマー3:CTTTAAGAAG
GAGATATACATATG(配列番号:9)をプライマーとして用
いてPfu DNA polymerase (STRATAGENE)により二本鎖
DNAを調製した。該伸長反応液はPfu DNA polymerase
を5μL、添付の10xReaction buffer 及びdNTP mixtur
e(宝酒造)を各5μL、合成DNA3(42.2 μmol/
L)、合成DNA4(5 μmol/L)及びプライマー3(10
0 μmol/L)を各1μL、蒸留水を32μL加えて調製し
た。該伸長反応は94℃・30秒間−58℃・30秒間−70℃20
分間により行った。伸長反応後の反応液をマイクロコン
30(日本ミリポア社)を用いて濃縮及び脱塩を行なっ
た後に、NdeI(宝酒造)により二本鎖DNAの切断
を行った。NdeIによる二本鎖DNAの切断は以下の
ように行った。濃縮・脱塩後の反応液10μL、Buffer H
(宝酒造) 2μL、蒸留水7μL及びNdeI 1μLから
なる反応液を37℃で3時間保持し切断反応を行った。
このNdeI切断後の反応液からQIAquick Gel Extract
ion Kit (QIAGEN)を用いてDNA断片を精製した。こ
のDNA断片をpGFPNPのNdeI−ScaI部分
にLigation kit ver.2(宝酒造)を用いて挿入し、GF
PuvのN末端部分にラットGALPのN末端部分アミ
ノ酸をコードするランダム塩基配列を有する発現プラス
ミドpGFPNPRGを構築した。(図6) この発現プラスミドpGFPNPRGを用いて大腸菌J
M109株を形質転換し、10mg/mlのテトラサイ
クリンを含むLB寒天培地に塗布し、37℃で一晩培養
しコロニーを形成させた。形成したコロニーを354n
mのUVランプ下で観察し、強い蛍光を発するコロニ
ー:2株、弱い蛍光を示すコロニー:16株を選択し
た。このコロニーをプライマー4:TTCATACACGGTGCCTGA
CTGCGTTAG(配列番号:10)及びプライマー5:TCAAC
AAGAATTGGGACAACTCC(配列番号:11)を用いてコロニ
ーPCRを行い、アガロース電気泳動により目的のDN
A断片の挿入を確認した。またコロニーPCRの産物を
QIAquick PCR PurificationKit (QIAGEN)を用いて精
製し、プライマー4及びプライマー5を用いて塩基配列
分析を行った結果、表3に示す塩基配列が得られた。こ
れらのうちNo.1及びNo.2の塩基配列は強い蛍光
を示す大腸菌クローンから得られたものである。
【0027】
【表3】 (N末端Metを残基番号:0とした)
【0028】参考例4 天然型塩基配列ラットGALP
発現株の構築 ラットGALP発現プラスミドは以下のように、T7プ
ロモータ−によりラットGALP−CS23融合蛋白
(ラットGALPとヒトbFGFムテインCS23(E
P0281822)との融合蛋白)として発現が行われ
るプラスミドpTFCRGALを構築した(図7)。W
O99/48920の実施例21に記載のプラスミドp
TFCをNdeI及びAvaIで切断し、アガロース電
気泳動により約3.9kbpのバンドを切り出し、ゲル
よりQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて
DNAを回収した。ラットGALP構造遺伝子をクロー
ニングしたプラスミドpGR2RL4(WO99/48
920の実施例18)よりラットGALP構造遺伝子の
上流に開始コドンATG及びNdeI認識部位を有する
プライマー6:AGCATATGGCACCTGCTCACAGG(配列番号:
12)及びGALP構造遺伝子の下流にシステインをコ
ードするTGC及びAvaI認識部位を有するプライマ
ー7:CCCTCGGGGCAGGTCATCCTTGGAGAG(配列番号:1
3)を用いてPCR反応によりラットGALP構造遺伝
子を含む断片を増幅した。この断片をTOPO TA Cloning
Kit を用いてクローニングを行いプラスミドpCR2.1TOPO
/rGALを取得した。プラスミドpCR2.1TOPO/rGALをNde
I及びAvaIで切断し、アガロース電気泳動により約
0.2kbpのバンドを切り出し、ゲルよりQIAquick G
el Extraction Kit(QIAGEN)を用いてDNAを回収し
た。このDNA断片をpTFCのNdeI−AvaI部
分にLigation kit ver.2(宝酒造)を用いてライゲーシ
ョンを行ない、プラスミドpTFCRGALを得た。発
現プラスミドpTFCRGALを用いて大腸菌MM29
4(DE3)の形質転換を行い、ラットGALP−CS
23融合蛋白発現能を有する大腸菌MM294(DE
3)/pTFCRGALを得た。
【0029】参考例5 ラットGALP発現用至適化配
列を用いた発現 pTFCRGALのラットGALP構造遺伝子のN末端
部分の塩基配列を天然型塩基配列から参考例3で強い蛍
光を発するコロニーから得られた塩基配列への置換は以
下のように行った。(図8) 天然型塩基配列をコードするラットGALP−CS23
発現プラスミドpTFCRGALをXbaI及びEco
O65Iで切断し、アガロース電気泳動により約4.5
kbpのバンドを切り出し、ゲルよりQIAquick Gel Ext
raction Kit(QIAGEN)を用いてDNAを回収した。参
考例3で得られたコロニーNo.1の株を10mg/L
のテトラサイクリンを含むLB培地に接種し、37℃で
一晩培養し、得られた菌体よりQIAprep8 Miniprep Kit
(QIAGEN)を用いてプラスミドpGFPNP/rGAL
1を精製した。このプラスミドpGFPNP/rGAL
1をXbaI及びEcoO65Iで切断し、アガロース
電気泳動により約0.1kbpのバンドを切り出し、ゲ
ルよりQIAquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用い
てDNAを回収した。このDNA断片をpTFCRGA
LのXbaI−EcoO65I部分にLigation kit ve
r.2(宝酒造)を用いてライゲーションを行ない、参考
例3で選択したNo.1のクローンから得られた塩基配列を
ラットGALPのN末端部分に有するラットGALP−
CS23融合蛋白の発現プラスミドpTFCS4を得
た。発現プラスミドpTFCS4を用いて大腸菌MM2
94(DE3)の形質転換を行い、ラットGALP−C
S23融合蛋白発現能を有する大腸菌MM294(DE
3)/pTFCS4を得た。
【0030】実施例4 ラットGALP−CS23融合
蛋白産生組み換え大腸菌の3Lジャーを用いた培養 上記の大腸菌MM294(DE3)/pTFCS4を1
0mg/mlのテトラサイクリンを含むLB培地(1%
ペプトン、0.5%酵母エキス、0.5%塩化ナトリウ
ム)1リットルで30℃、16時間振盪培養した。得ら
れた培養液を1.5Lの主発酵用培地(1.68%リン
酸一水素ナトリウム、0.3%リン酸二水素ナトリウ
ム、0.1%塩化アンモニウム、0.05%塩化ナトリ
ウム、0.024%硫酸マグネシウム、0.02%ニュ
ーポールLB−625、0.0005%塩酸チアミン、
1.5%ブドウ糖、1.5%カザミノ酸)を仕込んだ3L
容ジャーに移植して、37℃、通気量1.5L/mi
n、攪拌回転数500rpmで通気攪拌培養を開始し
た。培養開始後、溶存酸素濃度が2.0ppm以下にな
った時点で、溶存酸素濃度が2.0ppmになるように
撹拌回転数を制御して培養を継続した。培養液の濁度が
約2400クレット単位になった時点で、5.95mg
/L分のイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシ
ド(IPTG)を添加した。IPTGを添加した直後か
ら、1基は2.0ppmの溶存酸素濃度制御のまま培養
を継続し、別の1基は撹拌回転数を550rpmに固定
して培養液中の溶存酸素濃度を低く保った条件下で培養
を継続した。また、IPTG添加時に0.75%のグル
コースを添加し、さらにIPTG添加30分後から1時
間当たり0.3%のグルコースをフィードして、培養開
始24時間後まで培養を行った。IPTG添加後、経時
的に培養液0.5mlを抜き取り遠心分離を行い、菌体
を−20℃に保存した。凍結保存しておいた菌体を融解
した後、0.15mol/Lの塩化ナトリウムを含む20
mmol/L Tris-HCl緩衝液(pH7)0.5mlに懸濁
し、その50μLをサンプルバッファー(125mM Tris-HC
l、1%ドデシル硫酸ナトリウム、15%グリセロー
ル、5% 2−メルカプトエタノール、0.005%ブ
ロムフェノールブルー)と混合し、マルチゲル15/25
(第一化学薬品)で電気泳動を行った。泳動後のゲルを
ラピッド CBB KANTO(関東化学社)で染色を行った。
その結果を図10に示す。両培養条件において発現量に
大きな差は見られなかった。
【0031】実施例5 実施例4で発現を行ったラット
GALP−CS23融合蛋白のN末端アミノ酸分析 実施例4で凍結保存しておいた菌体を融解した後、0.
15mol/Lの塩化ナトリウムを含む20 mmol/L Tris
-HCl緩衝液(pH7)0.5mlに懸濁し、超音波破砕
機(オリンパス社製)により菌体の超音波破砕を行い、
15000rpmで5分間遠心分離を行い、封入体とし
て発現したラットGALP−CS23融合蛋白を得た。
この封入体をサンプルバッファー(125mM Tris-HCl、1
%ドデシル硫酸ナトリウム、15%グリセロール、5%
2-メルカプトエタノール、0.005%ブロムフェノ
ールブルー)に溶解した後、マルチゲル15/25(第一化
学薬品)で電気泳動を行った。泳動後のゲルより蛋白を
PVDF膜へ転写した後、ラットGALP−CS23融
合蛋白に相当するバンドを切り取り、N末端アミノ酸を
気相プロテインシーケンサー(アプライドバイオシステ
ムズ モデル472)を用いて決定し、Met体及びD
es−Met体の割合を算出した。図11に培養17及
び20時間後の測定結果を示す。溶存酸素濃度を2.0
ppmに制御して培養を行った場合には、約70%にM
etの付加が見られたのに対し、IPTG添加後の撹拌
回転数を550rpmに固定して培養を行ったもので
は、約30%までMetの付加が低下し、本培養法によ
るN末端Metの除去効果が見られた。
【0032】
【発明の効果】本発明によりN末端のメチオニンが除去
された組換え蛋白質を高効率に発現することができる。
【0033】
【配列表】 [SEQUENCE LISTING] <110> Takeda Chemical Industries, Ltd. <120> Method of Culture for Recombinant Escherichia coli. <130> P2001-184 <150> JP 2000-232389 <151> 2000-7-31 <160> 18 <210> 1 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 1 cgttatccgg atcacatgaa acggcatg 28 <210> 2 <211> 28 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 2 catgccgttt catgtgatcc ggataacg 28 <210> 3 <211> 33 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 3 agcttcatat gttcgaagta ctagatctgg tac 33 <210> 4 <211> 25 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 4 cagatctagt acttcgaaca tatga 25 <210> 5 <211> 109 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 5 aattctataa aaataattgt tgacatattt tataaatttt ggcataatag atctaattgt 60 gagcggataa caattctgca gaagcttgag ctcggtaccc ggggatcct 109 <210> 6 <211> 109 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 6 ctagaggatc cccgggtacc gagctcaagc ttctgcagaa ttgttatccg ctcacaatta 60 gatctattat gccaaaattt ataaaatatg tcaacaatta tttttatag 109 <210> 7 <211> 77 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 7 aggtaaccag cactatttaa agtccanccn ccncgnccnc grtgngcngg ngccatatgt 60 atatctcctt cttaaag 77 <210> 8 <211> 77 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 8 aggtaaccag cactatttaa agtccanccn ccyctnccyc trtgngcngg ngccatatgt 60 atatctcctt cttaaag 77 <210> 9 <211> 24 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 9 ctttaagaag gagatataca tatg 24 <210> 10 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 10 ttcatacacg gtgcctgact gcgttag 27 <210> 11 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 11 tcaacaagaa ttgggacaac tcc 23 <210> 12 <211> 23 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 12 agcatatggc acctgctcac agg 23 <210> 13 <211> 27 <212> DNA <213> Artificial sequence <220> <223> Synthetic DNA <400> 13 ccctcggggc aggtcatcct tggagag 27 <210> 14 <211> 84 <212> PRT <213> Human <400> 14 Ser Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn 1 5 10 15 Ser Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val His 20 25 30 Asn Phe Cys Ala Leu Gly Ala Pro Leu Ala Pro Arg Asp Pro Gly Ser 35 40 45 Gln Arg Pro Arg Lys Lys Glu Asp Asn Val Leu Val Glu Ser His Glu 50 55 60 Lys Ser Leu Gly Glu Ala Asp Lys Ala Asp Val Asn Val Leu Thr Lys 65 70 75 80 Ala Lys Ser Gln 84 <210> 15 <211> 258 <212> DNA <213> Human <400> 15 atgtctgtgt ccgagattca gttaatgcat aaccttggca aacatttgaa ctcgatggag 60 cgtgtagaat ggctgcgtaa gaagttgcag gatgtgcaca atttttgcgc cttaggtgcc 120 ccattggctc ctcgtgatcc tggttcccaa agaccacgta aaaaggaaga caatgtctta 180 gttgagagcc atgaaaaatc cctaggcgag gcagacaagg ccgatgtgaa tgtattaact 240 aaagctaaat cccagtaa 258 <210> 16 <211> 34 <212> PRT <213> Human <400> 16 Ser Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn 1 5 10 15 Ser Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val His 20 25 30 Asn Phe 34 <210> 17 <211> 204 <212> PRT <213> Rat <400> 17 Ala Pro Ala His Arg Gly Arg Gly Gly Trp Thr Leu Asn Ser Ala Gly 1 5 10 15 Tyr Leu Leu Gly Pro Val Leu His Leu Ser Ser Lys Ala Asn Gln Gly 20 25 30 Arg Lys Thr Asp Ser Ala Leu Glu Ile Leu Asp Leu Trp Lys Ala Ile 35 40 45 Asp Gly Leu Pro Tyr Ser Arg Ser Pro Arg Met Thr Cys Pro Glu Asp 50 55 60 Gly Gly Ser Gly Ala Phe Pro Pro Gly His Phe Lys Asp Pro Lys Arg 65 70 75 80 Leu Tyr Cys Lys Asn Gly Gly Phe Phe Leu Arg Ile His Pro Asp Gly 85 90 95 Arg Val Asp Gly Val Arg Glu Lys Ser Asp Pro His Ile Lys Leu Gln 100 105 110 Leu Gln Ala Glu Glu Arg Gly Val Val Ser Ile Lys Gly Val Ser Ala 115 120 125 Asn Arg Tyr Leu Ala Met Lys Glu Asp Gly Arg Leu Leu Ala Ser Lys 130 135 140 Ser Val Thr Asp Glu Cys Phe Phe Phe Glu Arg Leu Glu Ser Asn Asn 145 150 155 160 Tyr Asn Thr Tyr Arg Ser Arg Lys Tyr Thr Ser Trp Tyr Val Ala Leu 165 170 175 Lys Arg Thr Gly Gln Tyr Lys Leu Gly Ser Lys Thr Gly Pro Gly Gln 180 185 190 Lys Ala Ile Leu Phe Leu Pro Met Ser Ala Lys Ser 195 200 204 <210> 18 <211> 612 <212> DNA <213> Rat <400> 18 gcaccagcgc atcgtgggcg tggtggttgg actttaaata gtgctggtta cctcctgggt 60 cctgtcctcc acctttcctc aaaggccaac cagggcagga agacagactc agctcttgag 120 atcctagacc tgtggaaggc catagatggg ctcccttatt cccgctctcc aaggatgacc 180 tgccccgagg atggcggcag cggcgccttc ccgcccggcc acttcaagga ccccaagcgg 240 ctgtactgca aaaacggggg cttcttcctg cgcatccacc ccgacggccg agttgacggg 300 gtccgggaga agagcgaccc tcacatcaag ctacaacttc aagcagaaga gagaggagtt 360 gtgtctatca aaggagtgag cgctaatcgt tacctggcta tgaaggaaga tggaagatta 420 ctagcttcta agtctgttac ggatgagtgt ttcttttttg aacgattgga atctaataac 480 tacaatactt accggtcaag gaaatacacc agttggtatg tggcactgaa acgaactggg 540 cagtataaac ttggatccaa aacaggacct gggcagaaag ctatactttt tcttccaatg 600 tctgctaaga gc 612
【図面の簡単な説明】
【図1】プラスミドpTCPTH2の構築図である。
【図2】実施例1で得られた逆相クロマトグラムであ
る。Des−Met体は[Cys35]ヒトPTH(1−
84)のピークを、Met体は[Cys35]ヒトPTH
(1−84)のMet付加体のピークを示す。
【図3】実施例1の培養24時間後の[Cys35]ヒト
PTH(1−84)及びそのMet付加体の生産量を示
す。□は[Cys35]ヒトPTH(1−84)の、黒四
角は[Cys35]ヒトPTH(1−84)のMet付加
体の生産量を示す。
【図4】実施例2の培養経過を示す。グラフ(上)にお
いて、−は溶存酸素濃度を、…は攪拌回転数を示す。グ
ラフ(下)において、○は[Cys35]ヒトPTH(1
−84)の、●は[Cys35]ヒトPTH(1−84)
のMet付加体の生産量を示し、□は培養液の濁度(ク
レット単位(KU))を示す。
【図5】プラスミドpGFPNPの構築図を示す。
【図6】プラスミドpGFPNPRGの構築図を示す。
【図7】プラスミドpTFCRGALの構築図を示す。
【図8】プラスミドpTFCS4の構築図を示す。
【図9】実施例4の培養経過を示す。グラフ(上)にお
いて、○は2.0ppmの溶存酸素濃度制御のまま培養
を継続した場合の攪拌回転数を、●は撹拌回転数を55
0rpmに固定して培養を継続した場合の攪拌回転数を
示す。グラフ(下)において、○は2.0ppmの溶存
酸素濃度制御のまま培養を継続した場合の溶存酸素濃度
を、●は撹拌回転数を550rpmに固定して培養を継
続した場合の溶存酸素濃度を示す。
【図10】実施例4で行われた、各培養経過時の培養液
の電気泳動像を示す。「2.0ppm制御」は2.0p
pmの溶存酸素濃度制御のまま培養を継続した場合の培
養液を、「攪拌550rpm」は撹拌回転数を550r
pmに固定して培養を継続した場合の培養液を示し、
「7」、「10」、「14」、「17」、「20」は培
養開始後の経過時間(hr)を示す。
【図11】実施例4の培養17及び24時間後のラット
GALP−CS23融合蛋白及びそのMet付加体の割
合を示す。□はラットGALP−CS23融合蛋白の、
黒四角はラットGALP−CS23融合蛋白のMet付
加体の生産割合(%)を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4B024 BA01 BA80 CA02 CA07 CA20 DA06 EA04 FA01 FA10 GA11 GA19 HA03 4B064 AG01 AG15 CA02 CA19 CC03 CC06 CC09 CC10 CC12 CC15 CC24 CD09 CE03 CE06 CE08 CE10 DA01 DA13

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 遺伝子組換え蛋白質発現のための発現ベ
    クターにより形質転換された宿主の培養において、培養
    液中の溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御することを
    特徴とする、N末端にメチオニンの付加していない組換
    え蛋白質の製造方法。
  2. 【請求項2】 培養液中の溶存酸素濃度が、約0.01
    〜1.0ppmである請求項1記載の製造方法。
  3. 【請求項3】 培養液中の溶存酸素濃度が、0.05〜
    1.0ppmである請求項1記載の製造方法。
  4. 【請求項4】 培養液の攪拌回転数を調節することによ
    り溶存酸素濃度を約1ppm以下に制御することを特徴
    とする請求項1記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 宿主がエシェリヒア属菌である請求項1
    記載の製造方法。
  6. 【請求項6】 培養液に、さらに発現誘導物質を添加す
    ることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
  7. 【請求項7】 発現誘導物質がイソプロピル−β−D−
    チオガラクトピラノシドである請求項6記載の製造方
    法。
  8. 【請求項8】 発現誘導物質の培養液中の濃度が、約
    0.01〜1mMである請求項6記載の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPWO2004058959A1 (ja) * 2002-12-26 2006-04-27 日本新薬株式会社 PNPaseの製造法
WO2006129751A1 (ja) * 2005-06-03 2006-12-07 Nipro Corporation メチオニンアミノペプチダーゼ遺伝子を含む高コピー高発現ベクター

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JPWO2004058959A1 (ja) * 2002-12-26 2006-04-27 日本新薬株式会社 PNPaseの製造法
WO2006129751A1 (ja) * 2005-06-03 2006-12-07 Nipro Corporation メチオニンアミノペプチダーゼ遺伝子を含む高コピー高発現ベクター

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