JP2002253221A - 植物培養細胞からの長期間安定な物質生産方法 - Google Patents
植物培養細胞からの長期間安定な物質生産方法Info
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Abstract
物質を生産する際に、その生産性を向上させ、長期間に
わたり安定に生産する方法を提供すること。 【解決手段】 (1)増粘剤を含む液体培地中で、目的
物質を産生する能力を有する植物培養細胞を培養する工
程と、前記培養後の植物培養細胞により産生された目的
物質を得る工程とを具備する植物培養細胞からの物質生
産方法、並びに、(2)増粘剤を含む液体培地中で、目
的物質を産生する能力を有する植物培養細胞を培養する
工程と、前記培養後の培養細胞を、増粘剤を含む液体培
地中で継代培養する工程と、前記継代培養後の培養細胞
により産生された目的物質を得る工程とを具備する植物
培養細胞からの物質生産方法。
Description
る植物培養細胞を用いて、その生産量を増大させて有用
物質を生産する方法、および長期間安定に有用物質を生
産する方法に関する。本方法は、アグリバイオ(バイオ
農業)、特に植物組織培養による有用物質生産の分野で
利用可能である。
の生産において、細胞の培養期間が長くなると目的物質
の生産量が低下するという問題があった。しかしこのよ
うな問題に対して、本発明のように、増粘剤の添加によ
り、植物細胞からの有用物質の生産量が増大し、その生
産が長期間にわたり安定に維持されたという報告はなさ
れていない。
術を用いて植物培養細胞から有用物質を生産する際に、
その生産性を向上させ、長期間にわたり安定に生産する
方法を提供することを目的とする。
を含む液体培地中で、目的物質を産生する能力を有する
植物培養細胞を培養すれば、目的物質の生産性が向上す
ること、および培養期間が長期にわたっても目的物質の
生産量が低下しないことを見出し、これにより本発明を
完成させるに至った。
は、増粘剤を含む液体培地中で、目的物質を産生する能
力を有する植物培養細胞を培養する工程と、前記培養後
の植物培養細胞により産生された目的物質を得る工程と
を具備する。
生産方法は、増粘剤を含む液体培地中で、目的物質を産
生する能力を有する植物培養細胞を培養する工程と、前
記培養後の培養細胞を、増粘剤を含む液体培地中で継代
培養する工程と、前記継代培養後の培養細胞により産生
された目的物質を得る工程とを具備する。
の物質生産方法を詳細に説明する。
剤を含む液体培地中で植物培養細胞を培養する第一の工
程と、前記培養後の植物培養細胞により産生された目的
物質を得る第二の工程とを含む。以下、第一の工程を増
殖培養ともいう。
て、増粘剤を含む液体培地中で植物培養細胞を培養する
第一の工程と、前記培養後の培養細胞を、増粘剤を含む
液体培地中で継代培養する第二の工程と、前記継代培養
後の培養細胞により産生された目的物質を得る第三の工
程とを含む。同様に、第一の工程を増殖培養ともいい、
第二の工程を継代培養ともいう。
において使用する植物培養細胞は、入手したい目的物質
を産生する能力を有する細胞であれば特に限定されず、
どの植物種に由来する培養細胞であってもよいし、更に
植物のどの部位から誘導された培養細胞であってもよ
い。「目的物質を産生する能力を有する細胞」とは、本
発明の方法に使用する際に、現に目的物質を細胞内に含
有している細胞であってもよいし、目的物質を細胞内に
は含有していないが潜在的に産生する能力を有している
細胞であってもよい。また、目的物質を得るための該培
養細胞は、カルスの状態で継代培養されているもの、ま
たは既に液体培養液中で培養されている細胞の何れであ
ってもよいし、あるいはプロトプラストを使用すること
もできる。好ましくは、植物特有の二次代謝産物等の有
用物質を生産する培養細胞が使用され、例えばブドウ培
養細胞、ヨウシュヤマゴボウ培養細胞を使用することが
できる。尚、カルスの誘導、液体培養細胞の調製、およ
びプロトプラストの調製は、当業者に既知の方法を用い
て、必要に応じて適宜改良を加えることにより行うこと
ができる。
する液体培地は、該培養細胞が増殖可能である培地であ
れば特に限定されない。好ましくは、当該培養細胞の培
養に一般に使用されているものであり、ブドウ培養細胞
であれば、必要な糖および植物ホルモンを含むGambolg
B5培地を主成分とする培地が一般に使用されている。な
お、B5培地については、O.L.Gamborg, R.A. Miller, K.
Okajima, Exp. CellRes., 50 (1968) 151-156を参照さ
れたい。B5培地に加える糖としては、10〜50g/Lのスク
ロースが挙げられる。B5培地に加える植物ホルモンにつ
いては、オーキシンとして0.05〜5mg/L 2,4-ジクロロ
フェノキシ酢酸、サイトカイニンとして0〜0.5 mg/L
カイネチンを使用することができる(ここで、カイネチ
ン濃度を0からとしたのは、サイトカイニンを含有しな
い場合もあるからである)。また、培地のpHは、好ま
しくはpH 5.0〜6.5のものを使用することができる。
粘剤は、培地の粘度を増加させるものであって、且つ培
養細胞の生育に影響を及ぼさないものであれば特に限定
されない。増粘剤の例として、アルギン酸ナトリウム、
アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシ
メチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチ
ルスターチ、ポリアクリル酸ナトリウム、グアーガム、
ザンタンガム、ローカストビーンガムなどが挙げられ
る。好ましくは、アルギン酸もしくはその塩、またはカ
ルボキシメチルセルロースもしくはその塩を使用するこ
とができる。何れもその塩は、塩の形態をとるものであ
れば特に限定されない。例えば、ナトリウム、カリウム
等のアルカリ金属塩であっても、カルシウム、マグネシ
ウム等のアルカリ土類金属塩であってもよい。例えば、
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナ
トリウムを使用することができる。該増粘剤は、培地調
製時に培地に溶解させることにより添加することができ
る。
を付与できる濃度から培養細胞の物質生産能力に影響を
及ぼさない粘度の範囲まで適宜設定できる。アルギン酸
ナトリウムまたはカルボキシメチルセルロースについて
いえば、培地中に0.05〜5.0(w/v)%の濃度で含有させる
ことができ、好ましくは0.1〜1.0(w/v)%の濃度にす
る。
濃度が高い場合、培地中の成分と反応して培地が固化す
る場合があるが、本発明においては、培地を固化させる
濃度での増粘剤の使用は意図していない。本発明の方法
において、増粘剤添加後の培地の粘度は、好ましくは2
〜20cp、より好ましくは3〜10cpを意図している。
粘剤を含む液体培地中で増殖培養する工程は、当該分野
における既知の方法により無菌的に行うことができる。
例えば、植物ホルモンを含むB5培地中で培養細胞を旋回
培養もしくは振とう培養する方法が挙げられる。増殖培
養の条件としては、20〜30℃の温度、暗所下が好まし
く、旋回回数(もしくは振とう回数)は、50〜200rpm
(もしくは50〜200/min)が好ましい。
は、細胞の種類により異なるが7〜30日間であり、その
後、培養細胞により産生された目的物質を得る工程に移
してもよいし、継代培養の工程に移してもよい。つま
り、増粘剤入りの培地で増殖培養をした後すぐに、目的
物質を得てもよいし、増殖培養の後、継代培養を行い、
その後必要な時期に目的物質を得てもよい。尚、増殖培
養した後すぐに目的物質を得るのは本発明の第一の態様
に相当し、増殖培養した後、継代培養を経て目的物質を
得るのは本発明の第二の態様に相当する。
培養を意味し、先に培養した培養細胞の一部を新しい培
地に移し再度培養する工程の繰り返しをいい、一代の培
養期間はおよそ5〜20日である。その際の培養条件は、
上述の増殖培養と同様にして行うことが好ましい。即
ち、増殖培養で使用したのと同じ培地に同濃度の同増粘
剤を添加し、同じ条件下で継代培養を行うことが好まし
い。継代培養を続ける期間は、目的物質の生産量が減少
しない程度までの間行うことができるが、後述する本発
明の実施例においては、約250日間、生産量を維持して
いることが実証されている。このように増粘剤を添加し
て継代培養を行えば、継代培養を長期間行った後であっ
ても、培養細胞が含有している目的物質の量は維持され
ている。このため、継代培養をして生育させておいた培
養細胞から、いつでも必要に応じて安定して目的物質を
得ることが可能となる。
養した細胞から、もしくは引き続き継代培養を行った細
胞から目的物質を得る工程は、当業者に既知の抽出方
法、精製方法を用いて行うことができる。入手したい目
的物質の種類などに応じて、抽出方法は当業者が適宜選
択することができる。例えば、ブドウ培養細胞からアン
トシアニン色素を得る場合は、実施例で後述するとお
り、0.1% HClメタノール中で一昼夜かけて抽出するこ
とにより行うことができる。また、ヨウシュヤマゴボウ
カルスからベタシアニン色素を得る場合も同様にして
(0.1% HClメタノール中で一昼夜かけて抽出すること
により)行うことができる。
前記増粘剤を含む培地中で、培養細胞を増殖培養し、得
られた培養細胞が含有している有用物質を抽出し定量す
る。あるいは、本発明の第二の態様の生産方法に従っ
て、前記増粘剤を含む培地中で培養細胞を増殖培養し、
次いでその培養細胞を、増粘剤を含む培地中で継代培養
し、得られた培養細胞が含有している有用物質を抽出し
定量する。第一の態様および第二の態様ともに、それぞ
れ増粘剤なしの対照と有用物質の生産量を比較すること
により、本発明の効果を明らかにすることができる。
と長期安定生産]ブドウカルス(植物細胞から誘導され
た未分化の細胞塊)は、通常、植物ホルモンを含むGamb
olg B5培地を主成分とする培地で増殖培養される。ブド
ウカルスの細胞内にアントシアニン色素は蓄積生産さ
れ、塩酸メタノールで抽出することにより、その生産量
を測定することができる。
ム塩(CMC, 10g/L溶液で10〜12 cpの粘度を示す)を
0.2〜1.0(W/V)%の各濃度で添加し、CMC添加培地
を調製した。各CMC濃度の培地(70 mL)を含む200 m
L容の三角フラスコ内にて、カルス誘導後3年を経てア
ントシアニン生産能力のあるブドウカルス(約2g)を
7日間培養し、その後アントシアニン含量を測定した。
アントシアニン含量の定量測定は、0.1% HClメタノー
ル中で一昼夜かけて抽出し、530nmの吸光度を測定す
ることにより行った。
濃度[%(W/V)]を表す。縦軸はそれぞれ、−○−が細
胞あたりのアントシアニン生産量[mg/g- fresh weigh
t]を表し、−△−が培地1Lあたりのアントシアニン
生産量[mg/L]を表し、−●−が細胞増殖量[g- fres
h weight/L]を表す。
き最も効果があり、培養器(200 mL三角フラスコ)あた
りで、約5倍のアントシアニン生産量を示すことが分か
る。
め、反復回分培養(継代培養と同義)を行った。1回の
培養は7日間を要する。その結果を図2に示す。図2に
おいて横軸は、回分培養回数を表し、縦軸は培地1Lあ
たりのアントシアニン生産量[mg/L]を表す。−●−
は、増粘剤としてCMCを0.8(W/V)%添加した場合
を、−○−は増粘剤を添加していない場合を示す。
は、30回の培養までアントシアニン色素の高含量が維持
されている。これは、CMCを添加しない対照実験が、
培養回数12回でアントシアニン生産量を10 mg/L以下ま
で低下させたのに対し、約3倍の長期安定生産に相当す
る。
していない細胞を、CMC入りの培地で培養したとこ
ろ、数回の繰り返し回分培養した後に生産量が回復する
ことが観察された(データ示さず)。
たことによる細胞塊表面への流体力学的ストレスの緩和
と、これに伴う細胞粒径の増大によるものと思われる。
このようなメカニズムが効果の主因であるならば、増粘
剤添加による生産性の増大効果は、他の有用物質生産植
物培養系へも適用可能であるため、汎用性の高い手法と
考えられる。実際、ほかの色素生産細胞であるヨウシュ
ヤマゴボウカルスでもベタシアニン色素の含量増大およ
び生産の長期安定化が観察されている。
有用物質を生産する際に、その生産性を向上させ、長期
間にわたって安定に生産することが可能である。
せず、従来の培地をそのまま使用し、ただアルギン酸ナ
トリウムなどの増粘剤を添加するだけで効果が得られる
ため簡便である。更に、有用物質を産生する能力を有す
る培養細胞でありさえすれば、増殖培地に増粘剤を添加
することで有用物質の生産性を向上させることができる
ため、有用物質を産生する培養細胞全てに利用可能な汎
用性が非常に高い方法である。
継代培養期間にわたって増粘剤を添加することにより、
有用物質の生産量を維持することができ、これは、実際
の有用物質生産にあたって非常に有用である。すなわ
ち、従来は、継代培養期間が延長されると、細胞の有用
物質の含有量は減少し、その生産効率は低下していた
が、本発明の方法により、継代培養期間に増粘剤を添加
しておくだけで、長期間にわたりいつでも必要なときに
安定して有用物質を生産することが可能になった。
たことを示すグラフ。
れたことを示すグラフ。
Claims (3)
- 【請求項1】 増粘剤を含む液体培地中で、目的物質を
産生する能力を有する植物培養細胞を培養する工程と、 前記培養後の植物培養細胞により産生された目的物質を
得る工程とを具備することを特徴とする植物培養細胞か
らの物質生産方法。 - 【請求項2】 増粘剤を含む液体培地中で、目的物質を
産生する能力を有する植物培養細胞を培養する工程と、 前記培養後の培養細胞を、増粘剤を含む液体培地中で継
代培養する工程と、 前記継代培養後の培養細胞により産生された目的物質を
得る工程とを具備することを特徴とする植物培養細胞か
らの物質生産方法。 - 【請求項3】 前記増粘剤が、アルギン酸もしくはその
塩、またはカルボキシメチルセルロースもしくはその塩
であることを特徴とする請求項1または2に記載の方
法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001060225A JP4038567B2 (ja) | 2001-03-05 | 2001-03-05 | 植物培養細胞からの長期間安定な物質生産方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2001060225A JP4038567B2 (ja) | 2001-03-05 | 2001-03-05 | 植物培養細胞からの長期間安定な物質生産方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2002253221A true JP2002253221A (ja) | 2002-09-10 |
JP4038567B2 JP4038567B2 (ja) | 2008-01-30 |
Family
ID=18919675
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001060225A Expired - Lifetime JP4038567B2 (ja) | 2001-03-05 | 2001-03-05 | 植物培養細胞からの長期間安定な物質生産方法 |
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JP (1) | JP4038567B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019037175A (ja) * | 2017-08-25 | 2019-03-14 | 曽田香料株式会社 | メチルケトン類の製造方法 |
-
2001
- 2001-03-05 JP JP2001060225A patent/JP4038567B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2019037175A (ja) * | 2017-08-25 | 2019-03-14 | 曽田香料株式会社 | メチルケトン類の製造方法 |
JP7013635B2 (ja) | 2017-08-25 | 2022-02-15 | 曽田香料株式会社 | メチルケトン類の製造方法 |
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JP4038567B2 (ja) | 2008-01-30 |
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