JP2002247978A - 肝細胞オルガノイドおよびその製造方法 - Google Patents

肝細胞オルガノイドおよびその製造方法

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JP2002247978A
JP2002247978A JP2001048201A JP2001048201A JP2002247978A JP 2002247978 A JP2002247978 A JP 2002247978A JP 2001048201 A JP2001048201 A JP 2001048201A JP 2001048201 A JP2001048201 A JP 2001048201A JP 2002247978 A JP2002247978 A JP 2002247978A
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hepatocytes
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Kazumori Funatsu
和守 船津
Hiroyuki Ijima
博之 井嶋
Koji Nakazawa
浩二 中澤
Hiroshi Mizumoto
博 水本
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 人工肝臓用モジュールに適用することので
きる高密度で長期機能維持が可能な肝細胞組織体(肝細
胞オルガノイド)を提供すること。 【解決手段】 a)肝臓由来の細胞から形成され、b)
5×107cells/cm3を超える細胞密度を有し、c)細胞
2〜15層分の厚みを有し、d)各細胞が相互に三次元
的に接触しており、e)表面にスキン層を有し、f)肝
臓組織が本来有する機能を有する肝細胞オルガノイド。
中空糸内部又は外部に肝細胞を注入し、遠心力あるいは
静水圧を作用させる工程を含む該肝細胞オルガノイドの
製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、人工肝臓などに用
いることができる肝細胞組織体(オルガノイド)及びそ
の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】現在わが国における肝臓病患者は60万
人以上といわれており、年間約5万人の患者が肝臓病の
ために死亡している。このうち約千人が急性肝不全、残
りが肝がんを含めた慢性肝不全による死亡である。肝不
全などの肝臓病の根本的な治療法は肝移植であるが、臓
器提供者(ドナー)不足が大きな問題であり、人工肝臓
の開発が求められている。
【0003】しかし、500種類以上もの複雑多岐な肝
機能を人工的手段のみで代替することは困難であり、人
工肝臓として、最近では肝細胞そのものを利用するハイ
ブリッド型人工肝臓が定着しつつある。
【0004】ハイブリッド型人工肝臓としては、現在、
図1に示されるような体外設置型の治療システムが主流
である。図1に示すとおり、人工肝臓は、肝不全患者か
ら血液を引き出し循環させる生体側回路と、人工肝臓モ
ジュール側で血漿を循環させ、代謝・解毒を行う人工肝
臓モジュール側回路を、血漿分離器を介して物質交換さ
せることにより治療を行うものである。このような人工
肝臓モジュールには、分散した肝細胞を用いるのでは不
充分であり、生体肝臓に類似する組織体を構築して用い
ることが重要である。
【0005】このような観点から最近肝細胞の球状凝集
体(スフェロイド)を培養することが注目されている。
本発明者らは、スフェロイドの培養方法として、ポリウ
レタンフォーム(PUF)のようなポリマー基材内にス
フェロイドを形成する方法を開発した(特開平10−2
9951号公報、H.Ijima等 "Tissue Engineering"第4
巻、第2号、213−226頁(1998))。PUF
は主骨格と薄い膜梁構造を有する多孔質であり、PUF
孔間がある程度連通していることから、良好な物質交換
環境下で高密度培養が達成できる。PUF孔内で肝細胞
を培養すると約200個程度の肝細胞が次第に集合し、
粒径100μm程度のスフェロイドを自発的に多数形成
する。既に本発明者らは、この培養法を利用したスフェ
ロイドによるヒト臨床スケールの短期適用型(10日程
度)ハイブリッド型人工肝臓の開発に成功している。
【0006】さらに本発明者らは、よりコンパクトで長
期適用型の人工肝臓を追求していたところ、遠心力によ
って肝細胞を中空糸に高密度に充填できることを見出
し、モジュール当たり2.4×107cells/cm3の細胞密
度を有する人工モジュールを得た(「平成12年度(第
31回)繊維学会夏期セミナー講演要旨集」115〜1
18頁参照)。しかしながら、人工肝臓のベッドサイド
での操作性の向上、慢性的なドナー不足の解消を考える
と、さらにコンパクトで長期機能維持が可能な人工肝臓
が必要であり、そのために、より肝臓本来の機能に近い
機能を有する肝細胞の集合体を得ることが急務となって
いる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、人工肝臓用
モジュールに適用することのできる高密度で長期機能維
持が可能な肝細胞組織体(肝細胞オルガノイド)を提供
することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を鋭意検討した結果、人工肝臓用モジュールに適する高
密度な肝細胞組織体(肝細胞オルガノイド)を開発する
ことに成功した。すなわち、本発明者らは、細胞同士の
接触頻度を高めることにより細胞組織体が形成されるこ
とに着目し、細胞に遠心力又は静水圧のような物理的力
を作用させることにより高密度に充填することで、5×
107cells/cm3を超える細胞密度を有し、長期間の機能
維持が可能な肝細胞組織体を得ることができた。
【0009】より詳細には、本発明は、a)肝臓由来の
細胞から形成され、b)5×107cells/cm3を超える細
胞密度を有し、c)細胞2〜15層分の厚みを有し、
d)各細胞が相互に三次元的に接触しており、e)表面
にスキン層を有し、f)肝臓組織が本来有する機能を有
する肝細胞オルガノイドに関するものである。また、本
発明は、このような肝細胞オルガノイドを、遠心力や静
水圧を作用させることによって得ることを特徴とする製
造方法にも関するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下に、本発明について詳細に説
明する。本発明において、肝細胞オルガノイドとは、肝
細胞が集積した細胞組織体であって、肝臓組織が本来有
する機能を有する臓器(オルガン)に近似するものをい
う。本発明で得られた肝細胞が集積した組織体は、肝臓
組織が本来有するアンモニア除去効果やアルブミン分泌
効果などの肝機能を長期間維持することができるので肝
細胞オルガノイドといえるものである。
【0011】本発明の細胞源は、通常、マウス、ラッ
ト、モルモット、ウサギ、イヌ、ブタ、ヒヒ、ヒト等に
由来する正常肝細胞であるが、これらに限られるもので
はない。また、樹立された株化肝細胞も対象となる。正
常肝細胞の場合、肝臓をコラゲナーゼ溶液などの酵素液
で処理する一般的な酵素消化法を用いることによって単
離肝細胞を得ることができる。
【0012】本発明の肝細胞オルガノイドは、5×10
7cells/cm3を超える細胞密度を有する。細胞密度は高い
方がモジュールをコンパクトにできるので好ましい。ヒ
トの生肝における細胞密度は1〜2×108cells/cm3
あり、肝細胞オルガノイドの細胞密度も生肝の細胞密度
に近いのが望ましい。また、遠心力や静水圧を作用させ
て高密度に充填するときに、その負荷が高いほど高密度
には充填できるが、負荷が高すぎると肝細胞自体が損傷
を受けるかあるいは死滅してくるので肝細胞の機能を維
持できなくなる。したがって、本発明の肝細胞オルガノ
イドの細胞密度は、5×107cells/cm3を超え、2×1
8cells/cm3以下であり、8×107cells/cm3以上が好
ましく、9×107cells/cm3以上がより好ましい。
【0013】本発明の肝細胞オルガノイドの厚みは細胞
2〜15層分である。肝細胞の大きさは、20μm程度
であるから、2〜15層分は、40〜300μm程度の
厚さに相当する。2層分の厚みを有していれば、オルガ
ノイドとしての機能を発揮できる。厚みが15層を超え
ると、中心部分の細胞への酸素の供給ができなくなり、
細胞が壊死する可能性がある。したがって、本発明にお
いて肝細胞オルガノイドの厚みは細胞2〜15層分であ
るが、3〜10層分が好ましく、さらに4〜6層分がよ
り好ましい。ここで、厚みとは、オルガノイドの表層か
ら表層までの厚みをいうが、形成されるオルガノイドが
柱状構造の場合、長手方向の厚み(長さ)は、任意に設
定できる。
【0014】オルガノイドの細胞密度が高いと空隙が少
なくなるので、酸素の供給のために厚みをあまり大きく
することができず、一方細胞密度が本発明の範囲であっ
ても比較的小さいときには厚みが大きい方が良い。した
がって、本発明のオルガノイドにおいて、細胞密度と厚
みとは逆の相関関係を有するのがより好ましい。
【0015】本発明のオルガノイドでは、その表面を除
いて、各細胞が相互に三次元的に接触していることが重
要である。生肝中で肝細胞は、隣接する細胞同士がさま
ざまな細胞間結合を介して情報交換をし、機能発現をし
ていることが分かっている。本発明では、肝細胞に遠心
力や静水圧のような物理的力を作用させることで高密度
に充填し、細胞同士の接触頻度を飛躍的に向上させるこ
とにより細胞密度の高い組織体を形成させることができ
た。
【0016】また、本発明のオルガノイドは、その集積
体の表面にスキン層を有していることが必要である。肝
細胞に遠心力や静水圧のような物理的な力を負荷して3
〜5日培養を続けていると、オルガノイド表層の細胞が
扁平化し、且つオルガノイド表層が平滑化してきて、ス
キン層が出現してくる。このスキン層は、オルガノイド
表層の細胞状態と細胞分泌物によるものと思われる。本
発明者らは、オルガノイドがその表面にスキン層を有し
ていることがその機能を発揮するために必要であること
を初めて見出した。
【0017】図2には、本発明のオルガノイドにおい
て、細胞同士が三次元的に接触していることと、スキン
層を有していることを示す模式図を示した。図2におい
て1が肝細胞を示し、2がスキン層を示している。
【0018】肝臓は、ヒトの臓器のうちでも最大のもの
であり、蛋白質や糖質をはじめとする生体に必要な物質
の合成、貯蔵、あるいはアンモニアや薬物などの代謝解
毒、外分泌器官として胆汁酸などを放出し脂肪の消化や
ビタミンの吸収に関与するなど複雑多岐にわたる機能を
有している。本発明の肝細胞オルガノイドは、アンモニ
アの分解代謝や、アルブミン合成などの肝臓組織が本来
有している機能を有しており、その機能が長期間維持さ
れることを特徴としている。
【0019】本発明のオルガノイドを製造するには、分
散している肝細胞に遠心力、静水圧のような物理的力を
作用させて高密度に充填し培養することが必要である。
具体的には、本発明のオルガノイドの製造方法は、中空
糸の内部又は外部に肝細胞を注入し、遠心力あるいは静
水圧のような物理的力を作用させることによって高密度
化する工程を含む方法である。
【0020】例えば、複数本の中空糸を束にしてバンド
ルを作製し、バンドルの一端から細胞懸濁液を注入し、
細胞の高密度充填を図るために、遠心力あるいは静水圧
による物理的力を作用させる。遠心力負荷法の場合、細
胞を高密度化し、所定時間培養を行うことによって肝細
胞オルガノイドを得ることができる。静水圧負荷法にお
いても同様に所定時間静水圧を負荷し、培養することに
よって肝細胞オルガノイドを得ることができる。
【0021】本発明で用いる中空糸の材質はセルロース
系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスルホン
系、ポリプロピレン系、ポリエチレン系などいずれでも
良い。中空糸内径は特に限定されないが、好ましくは2
0〜1000μm、より好ましくは50〜500μm、さ
らに好ましくは50〜150μm程度である。該中空糸
の膜厚は10〜200μm程度が好ましい。中空糸の膜
孔径は物質交換性を考えると大きい方が望ましく、0.
001〜15μm程度が望ましいがこれに限定されるも
のではない。
【0022】中空糸への細胞の充填は、細胞を中空糸内
に充填して中空糸内にオルガノイドを形成する内部形成
法と、中空糸外に充填して中空糸外にオルガノイドを形
成する外部形成法のいずれでもよい。中空糸内部に遠心
力や静水圧などを用いて肝細胞オルガノイドを形成させ
る場合、1本または複数本の中空糸を束にして中空糸バ
ンドルを作製する。作製されたバンドルの一端を封止
し、他端から細胞懸濁液を注入する。中空糸外部に遠心
力や静水圧を用いて肝細胞オルガノイドを形成させる場
合、1本または複数本の中空糸を培養容器に入れた中空
糸モジュールを作製する。このようなモジュールとして
は、市販の透析あるいは血漿分離用モジュールが利用で
きる。さらに、形成させる肝細胞オルガノイドの良好な
生存率や機能発現を保持するために培養容器内の中空糸
を規則的に配管させたモジュールを用いることが好まし
い。モジュールの培養容器部分に1ヶ所以上の細胞注入
口を設け、細胞懸濁液を注入する。
【0023】細胞は、細胞懸濁液にして中空糸に注入す
るのが細胞に損傷を与えないために好ましい。細胞懸濁
液の濃度は細胞に損傷を与えず高密度化するために2×
10 7cells/ml以下が好ましく、0.1〜1×107cell
s/mlがより好ましい。高密度に充填するためには、中空
糸膜孔から培養液のみを除去しながら注入を行うことが
好ましい。
【0024】細胞を注入した中空糸バンドルに、5〜1
500Gの遠心力を30〜600秒程度作用させて細胞
の高密度化をはかる。1500Gを超えると細胞は損傷
を受けるかあるいは死滅してしまう。細胞をできるだけ
死滅させないために遠心力は、60G×90秒程度の負
荷が適当である。静水圧を負荷する場合には、細胞を注
入した中空糸バンドルに5〜25kPaの静水圧を4〜
120時間負荷する。10kPaの一定静水圧を24時
間負荷する程度が最も好ましい。
【0025】培養液としては、ウイリアムE培地(WE)
やダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などの基礎培地
にホルモンや無機塩を添加した無血清培地、あるいはWE
やDMEMなどの基礎培地に血清を添加した血清添加培地が
使用される。
【0026】以下に実施例を示して、本発明をより具体
的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではな
い。以下の実施例及び対照例において、肝細胞は次のよ
うにして調製した。 [肝細胞の調製法]初代ラット肝細胞を調製するために
0.5mg/mlのコラゲナーゼ(和光純薬社)溶液150mlを用
意した。7週齢の雄ウイスター系ラット(体重250g)の
門脈(肝臓に入る血管)にカニューレを導入し、脱血液
を30ml/minで5分間流した後、37℃に加温したコラゲナ
ーゼ溶液を15ml/minで10分間流した。コラゲナーゼに
よって処理された肝臓を培養液に入れ、メスとピペット
を使って肝細胞を分散させた。得られた肝細胞懸濁液を
3回洗浄し、肝細胞以外の細胞を取り除いた(95%以上
の純度)。肝細胞懸濁液の最終密度は2.5×105cells/m
l(単層培養用)、4.0×106cells/ml(遠心法オルガノ
イド用)および5.0×106cells/ml(静水圧法オルガノ
イド用)のものを作製し、それぞれの培養実験に使用し
た。
【0027】以下の実施例及び対照例において、機能活
性をはかるためのアンモニア除去速度及びアルブミン分
泌速度は次のようにして測定した。 [アンモニア除去速度]培養培地に1mMの濃度になる
ようにアンモニアを添加し、アンモニア濃度の経時的な
減少量を測定し、アンモニア除去速度(μmol/10
6cells/hr)を計算した。
【0028】[アルブミン分泌速度]培養培地中に分泌
されたアルブミンを酵素標識免疫測定法により定量し、
アルブミン分泌速度(μg/106cells/day)に換
算した。
【0029】
【実施例1】長さ5cmの血漿分離用中空糸(セルロース
トリアセテート製:内径285μm、外径387μm)6本から
構成される中空糸バンドルを作製した。バンドル一端に
は細胞導入用のポートを接続し、他端は完全に封止し
た。
【0030】コラゲナーゼ消化法により上記[肝細胞の
調製法]に調製した初代ラット肝細胞2.0×106個を中空
糸バンドルの中空糸内部に充填した。ここで、細胞に傷
害を与えず、高密度化を図るために、次のような2段階
の充填方法を確立した。まず、4.0×106cells/mlの細
胞懸濁液0.5mlを用意し、シリンジを使って中空糸膜孔
から培養液のみを除去しならがら細胞を中空糸バンドル
内に注入した。次に細胞間の空間を減少させるために遠
心(60×G、90秒)をかけ、高密度充填を行った。
【0031】遠心終了後、細胞が高密度に充填されたバ
ンドル下端から3cmの位置で中空糸を切断し、直径35mm
の培養ディッシュ(ファルコン製)に収め、Dulbecco's
modified eagle medium(ギブコ製)13.5g/Lに、60m
g/Lプロリン、50ng/ml EGF(フナコシ製)、10mg/L
インシュリン(シグマ製)、7.5mg/Lヒドロコルチゾン
(和光純薬製)、0.1μM硫酸銅・5水和物(和光純薬
製)、3μg/Lセレン酸(和光純薬製)、50pM硫酸亜鉛
・7水和物(和光純薬製)、50μg/Lリノール酸(シグ
マ製)、58.8mg/Lペニシリン(明治製菓製)、100mg/
Lストレプトマイシン(明治製菓製)1.05g/L炭酸水素
ナトリウム(和光純薬製)、1.19g/L HEPES(同人堂
製)を加えた無血清培地を2ml加え、5%炭酸ガス、95%大
気の雰囲気下、震盪器上で45rpmで旋回培養を行った。
【0032】培養の各期間において肝細胞の状態を顕微
鏡下で観察した。また、培養の各期間においてポリトロ
ンホモジナイザーにて肝細胞を中空糸バンドルごと破砕
して漏出した核をクリスタルバイオレッドにて染色し、
核数を計数をすることによって細胞数を測定した。
【0033】さらに、肝細胞の機能評価として、培養培
地に1mMの濃度になるようにアンモニアを添加し、アン
モニア濃度の経時的な減少量を測定することでその活性
を評価した。また、培養培地中に分泌されたアルブミン
を定量することでその活性を評価した。対照として、5.
0×105個の肝細胞を直径35mmのコラーゲンコートディッ
シュ(岩城硝子製)上で単層培養し、同様の評価を行う
ことでそれぞれの機能比較を行った。この対照例の単層
培養肝細胞は、初代ラット肝細胞から実施例1と同様に
上記[肝細胞の調製法]で調製して得られたものを細胞
源として用い、コラーゲンがコートされた培養ディシュ
(シャーレ)上に2.5×105cells/mlの懸濁液2mlを播種
して培養し、肝細胞が培養ディシュ上で単層(1層)の
状態となっているものである。
【0034】中空糸内部に遠心力によって充填した肝細
胞の割断面形態を図3に示す。この結果、肝細胞同士が
三次元的に密に接触した円柱状のオルガノイドを形成し
ていることが示された。また、オルガノイド表層部の細
胞は扁平化し、オルガノイド表層が平滑化されたスキン
層を形成していた。
【0035】また、培養の各期間において、中空糸内部
で形成されたオルガノイドの平均直径とオルガノイドを
構成する肝細胞密度の関係を表1に示す。
【表1】 形成されたオルガノイドの細胞密度は、8.0×107cell/
cm3以上であった。なお、実施例1において、細胞密度
は次のようにして求めた。平均径は、培養各期間におい
て中空糸内のオルガノイドを顕微鏡下で観察し、オルガ
ノイドの数ヶ所の直径を測定して平均して求める。オル
ガノイドは円柱状構造であることから、得られた平均径
をもとにオルガノイドの体積が求められる。オルガノイ
ドの体積を測定後、オルガノイドを含む中空糸ごと破砕
して細胞核を漏出させ、クリスタルバイオレットにより
細胞核を染色し、核数を計数する。細胞と核の割合は
1:1.45であることから、この関係をもとに細胞数
を算出する。この体積と細胞数から細胞密度を算出でき
る。
【0036】オルガノイドの機能評価の結果として、図
4に細胞数当りのアンモニア除去速度の経時変化、図5
にアルブミン分泌速度の経時変化を示す。図4及び図5
から本発明の遠心法によって得られた肝細胞オルガノイ
ドは、90日の経過後にもなおアンモニア除去活性及び
アルブミン分泌活性の機能を維持していることが分か
る。図4及び図5には、対照例である単層培養肝細胞の
アンモニア除去活性及びアルブミン分泌活性も示した。
これらの結果から、形成された肝細胞オルガノイドは単
層培養肝細胞に比べ、良好な機能発現を長期的に維持す
ることが示された。
【0037】
【実施例2】長さ7cmのセルローストリアセテート製血
漿分離膜(内径285μm、外径387μm)40本から構成され
る中空糸バンドル(中空糸内部の総体積;0.18 cm3)を
組み込んだモジュールを作製した。中空糸バンドルの一
端は細胞導入部とし、他端は完全に封止して導入した細
胞の漏出が起こらないようにした。細胞導入部にシリン
ジを接続し、5.0×106cells/mlの密度に調製した初代
ラット肝細胞懸濁液を中空糸バンドル内部に3.2ml導入
した。細胞導入後、細胞導入部から10kPaの一定静水圧
を24時間負荷した。
【0038】静圧を負荷したモジュールはWilliams' E
medium(シグマ社)10.8g/Lに、50ng/ml EGF(フナコ
シ社)、10mg/L インシュリン(シグマ社)、0.1μM硫
酸銅・5水和物(和光純薬社)、3μg/Lセレン酸(和光
純薬社)、50pM硫酸亜鉛・7水和物(和光純薬社)、50m
g/Lリノール酸(シグマ社)、58.8mg/Lペニシリン
(明治製菓社)、100mg/Lストレプトマイシン(明治製
菓社)1.05g/L炭酸水素ナトリウム(和光純薬社)、1.
19g/L HEPES(同人堂社)を加えた無血清培地を用い、
18ml/minの流量で灌流培養を行った。また、対照とし
て静圧を負荷しないモジュールを同様の培養条件下で培
養した。
【0039】肝細胞の機能評価として、培養培地に1mM
の濃度でアンモニアを負荷し、アンモニア濃度変化を定
量することでアンモニア除去活性の評価を行った。ま
た、培地中に分泌されたアルブミンを定量することでア
ルブミン分泌活性の評価を行った。
【0040】10kPaの静水圧を負荷した中空糸内の肝細
胞の割断面形態を図6に示す。この結果、肝細胞同士が
三次元的に密に接触した円柱状のオルガノイドを形成し
ていることが示された。また、オルガノイド表層部の細
胞は扁平化し、オルガノイド表層が平滑化されたスキン
層を形成していた。形成されたオルガノイドの平均直径
は100〜200μmであり、その細胞密度は約9.0×107cell
/cm3であった。この細胞密度は、次のようにして求め
たものである。すなわち、中空糸内のオルガノイドを顕
微鏡下で観察し、オルガノドの数カ所の直径を測定する
ことで平均直径を求めた。オルガノイドは円柱状構造で
あることから、得られた平均直径をもとオルガノイドの
体積が求められる。一方、中空糸に注入した細胞量はわ
かっており、これらの細胞がオルガノイドを構成してい
ることから、オルガノイドの細胞密度を算出できる。ま
た、オルガノイド表層から5層以上の内部を構成する肝
細胞は、核が脱落した壊死細胞であった。オルガノイド
を構成する細胞当りのアンモニア除去速度の経時変化を
図7、アルブミン分泌速度の経時変化を図8に示す。こ
れらの結果から、静水圧負荷により誘導されたオルガノ
イドは、静水圧負荷がない場合に比べ、高い機能を発現
することが示された。
【0041】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明で
は、高密度で肝組織本来の機能を有している肝細胞オル
ガノイドが得られた。本発明の肝細胞オルガノイドは、
コンパクトで長期間使用可能な人工肝臓に適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の肝細胞オルガノイドが適用される人工
肝臓の概念図を示す。
【図2】本発明の肝細胞オルガノイドの模式図である。
【図3】遠心力により誘導された肝細胞オルガノイドの
割断面写真である。
【図4】遠心力により誘導された肝細胞オルガノイドに
よるアンモニア除去速度の経時変化を単層培養肝細胞と
対比して示した図である。
【図5】遠心力により誘導された肝細胞オルガノイドに
よるアルブミン分泌除去速度の経時変化を単層培養肝細
胞と対比して示した図である。
【図6】静水圧により誘導された肝細胞オルガノイドの
割断面写真である。
【図7】静水圧により誘導された肝細胞オルガノイドに
よるアンモニア除去速度の経時変化を加圧なしの培養肝
細胞(対照例)と対比して示した図である。
【図8】静水圧により誘導された肝細胞オルガノイドに
よるアルブミン分泌除去速度の経時変化を加圧なしの培
養肝細胞(対照例)と対比して示した図である。
【符号の説明】
1:肝細胞 2:スキン層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 水本 博 福岡県福岡市西区大町団地15番406号 Fターム(参考) 4B029 AA02 AA21 BB11 CC03 CC12 DA04 DA06 DF10 DG01 DG06 DG10 4B065 AA91X AB10 AC20 BA30 BC07 BC22 BC26 BD50 CA44 CA46 4C077 AA07 EE01 NN03 PP28

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 a)肝臓由来の細胞から形成され、 b)5×107cells/cm3を超える細胞密度を有し、 c)細胞2〜15層分の厚みを有し、 d)各細胞が相互に三次元的に接触しており、 e)表面にスキン層を有し、 f)肝臓組織が本来有する機能を有する 肝細胞オルガノイド。
  2. 【請求項2】 中空糸の内部又は外部に肝細胞を注入
    し、遠心力を作用させる工程を含むことを特徴とする請
    求項1に記載の肝細胞オルガノイドの製造方法。
  3. 【請求項3】 中空糸の内部又は外部に肝細胞を注入
    し、静水圧を作用させる工程を含むことを特徴とする請
    求項1に記載の肝細胞オルガノイドの製造方法。
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