JP2002245455A - 多変量空間処理方法および装置 - Google Patents

多変量空間処理方法および装置

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 多変量のオブジェクトデータを簡便な方法で
可視化する技術が望まれていた。 【解決手段】 前処理部12は、オブジェクトデータを
三変量へ縮退する。変換部14はそれらのうち基準変量
を特定し、基準変量の具体的な2つの値について残りの
二変量の値を決定し、第1および第2画像を生成する。
マッチングプロセッサ16はそれらの画像のマッチング
を取り、中間画像生成部20はその結果をもとにそれら
の画像の中間画像を生成し、表示制御部22はその中間
画像を表示する。モデリングのプロセスを経ずに、画像
処理のみによって可視化をおこなう。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、多変量空間処理
技術に関し、とくにオブジェクトの多変量データ予測、
補間、表示等する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】科学的可視化(scientific visualizati
on)は、複雑な現象や大規模なデータを直観的に把握す
るための技術である。海流、竜巻など、時間変化する複
雑な三次元オブジェクトを可視化するために、例えば三
次元空間における各点の密度その他の属性をボクセルご
とに与えて、その時間変化を逐次計算して表示すること
により、大規模なデータの全体的な構造や動きを大まか
に把握することができる。可視化は、現象全体の把握の
ほかに、仮定したモデルによるシミュレーションの有効
性を簡便に把握する際にもツールとして利用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】科学的可視化は、現象
やモデルの全体的かつ簡便な把握を目的とする場合が多
いにも拘わらず、実際には方程式や関数を立てて各点の
時間変化をトレースし、これを表示空間へ変換するとい
う一連のプロセスを経る。したがって、そのための計算
負荷は必ずしも小さくはなく、場合により、可視化の手
間に研究の速度が規定されることもある。
【0004】本発明はこうした事情に鑑みてなされたも
のであり、その目的は、より小さな負荷で三次元オブジ
ェクトの変化を把握または表示する技術の提供にある。
本発明の別の目的は、三次元を超える多変量オブジェク
トの構造またはその変化をより簡便な方法で把握または
表示するための技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】本発明のある態様は、多
変量空間処理方法に関する。以下、変量はパラメータと
もよび、場合により次元と同義に使う。オブジェクトの
変量というとき、オブジェクトの属性を意味することも
ある。
【0005】この方法は、ブジェクトの多変量データを
所定の三変量(以下x、y、tと表記する)に縮退せし
め、さらにその中で基準となる変量(以下、tと表記す
る)が第1の値にあるときに残りの二変量によって形成
される二次元空間を取得する工程と、前記基準となる変
量が第2の値にあるときに残りの二変量によって形成さ
れる二次元空間を取得する工程と、取得されたふたつの
二次元空間をそれぞれ第1画像および第2画像に見立て
てそれらの間でマッチング計算を行う工程とを含む。
【0006】「縮退」は単純にある次元を切り捨てるほ
か、その次元について特定の値を仮定する場合がある。
たとえば、三次元空間を二次元空間に縮退させる場合、
高さz=const.(定数)とする方法がある。ただ
し、ここでは縮退はn次元をそれ未満の次元に落とせば
よく、三次元空間を単に任意の平面ax+by+cz+
d=0に変換してもよい。さらには、三次元空間をax
+by+c=0のような曲面に変換してもよい。いず
れにしても、変量の数が減れば縮退という。
【0007】前記基準となる変量tは、たとえば時間で
ある。したがって、残りの二変量x、yによって、ある
時刻t=t0のときの第1画像と、時刻t=t1のとき
の第2画像が定義できる。これらの間で画像マッチング
を計算すれば、t=[t0,t1]における二変量x、
yのおよその振る舞いを把握することができる。このと
き、二次元画像どうしのマッチングを計算すればよく、
そのためのアルゴリズムの選択によって計算負荷を低減
することができる。後述の「前提技術」はその条件を満
たし、好適な可視化に貢献する。
【0008】この態様によれば、多変量の複雑なオブジ
ェクトでも、三変量の選択によって非常に単純なモデル
へ変換できる。たとえば株価の決定要因はきわめて多数
にのぼるが、経験則または総当たりのアルゴリズムによ
って三変量を仮決定し、第1画像と第2画像を生成し、
t=t2におけるそれらの中間画像をマッチングによっ
て生成し、この中間画像(以下これを「仮の中間画像」
ともいう)とt=t2における現実の株価(以下、これ
を「真の中間画像」ともいう)を比較すれば、その三変
量の選択の適否がわかる。つまり、仮の中間画像と真の
中間画像が近ければ、その三変量が重要度を高いと判断
することが許され、このことから逆に、その三変量を用
いて別のタイミングにおける株価を解析、または予測す
ることも可能である。このため、三変量の選択を変更し
たり、基準となる変量の選択を変更したり、基準となる
変量の値を変更しながら仮の中間画像と真の中間画像と
を比較してもよい。
【0009】パラメータを3つへ落とし込む間、前述の
ようにいろいろな方法を採用することにより、株価モデ
ルの簡略化と最適化を同時に実現することができる。こ
れはあたかも、多次元の現象のパラメータをひとつずつ
減らしていく際、オブジェクトをいろいろな角度から眺
め、いずれの角度において最も特徴的な像が得られるか
の検証を行い、オブジェクトをその角度で眺めるための
縮退を繰り返しているといってもよい。簡単な例でいえ
ば、三次元オブジェクトをその「影絵」、すなわち平面
への射影で表現する場合、影絵からもとのオブジェクト
を比較的容易に把握できる角度がある。この角度による
射影演算が最適な縮退に当たる。
【0010】前記マッチング計算は、第1画像について
二次元的な探索を行って検出した特異点と、第2画像に
ついて二次元的な探索を行って検出した特異点との対応
をもとに画素単位で行われてもよい。
【0011】この方法はさらに、第1画像と第2画像
を、それぞれ前記特異点を抽出することによって多重解
像度化する工程と、同一解像度レベル間において第1画
像と第2画像のマッチングを画素単位で計算する工程
と、その結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング
計算に継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベル
における画素単位の対応関係を取得する工程とをさらに
含んでもよい。
【0012】本発明の別の態様も多変量空間処理方法に
関する。この方法は、オブジェクトの三次元データを所
定のxy平面に投影して第1画像および第2画像を取得
する工程と、取得された第1画像と第2画像の間でマッ
チング計算を行う工程とを含む。この方法により、例え
ば竜巻の三次元データを二次元平面に投影した後、ふた
つの時刻t=t0、t1における二次元画像を補間して
t=[t0,t1]における中間状態を可視化すること
ができる。マッチングさえ完了すれば、補間に必要な計
算はさして多くなく、また時刻tを任意に変化させて補
間をすることができるので、逐次三次元計算を行う従来
の可視化に比べ、計算負荷がかなり小さい。したがっ
て、現象やシミュレーションの結果をなるべく簡便に知
りたいとき、この態様は効果的である。
【0013】本発明のさらに別の態様は、多変量空間処
理装置に関する。この装置は、オブジェクトの多変量デ
ータを所定の三変量に縮退せしめる前処理部と、さらに
その三変量の中で基準となる変量が第1の値にあるとき
に残りの二変量によって形成される二次元空間を第1画
像として取得し、前記基準となる変量が第2の値にある
ときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第
2画像として取得する変換部と、取得された第1画像お
よび第2画像の間でマッチング計算を行うマッチングプ
ロセッサとを含む。また、マッチングの結果をもとに第
1画像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する中
間画像生成部を含んでもよい。
【0014】本発明のさらに別の態様も多変量空間処理
装置に関する。この装置は、オブジェクトの三次元デー
タを所定のxy平面に投影して第1画像および第2画像
を取得する変換部と、取得された第1画像と第2画像の
間でマッチング計算を行うマッチングプロセッサとを含
む。
【0015】以上の態様において、特異点を用いるマッ
チング方法は、本出願人が先に特許第2927350号
にて提案した技術(以下「前提技術」という)の応用で
もよく、前提技術は前記検出する工程に好適である。
【0016】以上の各構成、工程を任意に入れ替えた
り、方法と装置の間で表現を一部または全部入れ替え、
または追加したり、表現をコンピュータプログラム、記
録媒体等に変更したものもまた、本発明として有効であ
る。
【0017】
【発明の実施の形態】はじめに、実施の形態で利用する
多重解像度特異点フィルタ技術とそれを用いた画像マッ
チング処理を「前提技術」として詳述する。これらの技
術は本出願人がすでに特許第2927350号を得てい
る技術であり、本発明との組合せに最適である。本発明
では、画像上にメッシュを設け、その格子点によって多
数の画素を代表されるため、もともと前提技術のような
画素単位のマッチング技術に対する適用効果が高いため
である。ただし、実施の形態で採用可能な画像マッチン
グ技術はこれに限られない。
【0018】図18以降、前提技術を利用した画像デー
タ符号化および復号技術を具体的に説明する。 [前提技術の背景]ふたつの画像の自動的なマッチング、
つまり画像領域や画素どうしの対応付けは、コンピュー
タビジョンやコンピュータグラフィックスにおける最も
難しくかつ重要なテーマのひとつである。例えば、ある
オブジェクトに関して異なる視点からの画像間でマッチ
ングがとれれば、他の視点からの画像を生成することが
できる。右目画像と左目画像のマッチングが計算できれ
ば、立体画像を用いた写真測量も可能である。顔の画像
のモデルと他の顔の画像のマッチングがとれたとき、
目、鼻、口といった特徴的な顔の部分を抽出することが
できる。例えば人の顔と猫の顔の画像間でマッチングが
正確にとられたとき、それらの中割画像を自動的に生成
することでモーフィングを完全自動化することができ
る。
【0019】しかし従来一般に、ふたつの画像間の対応
点は人がいちいち指定しなければならず、多大な作業工
数を要した。この問題を解消するために数多くの対応点
自動検出方法が提案されている。例えば、エピポーラ直
線を用いることによって対応点の候補の数を減らす考え
がある。しかし、その場合でも処理はきわめて複雑であ
る。複雑さを低減するために、左目画像の各点の座標は
通常右目画像でもほぼ同じ位置にあると想定される。し
かし、こうした制約を設けると、大域的特徴及び局所的
特徴を同時に満たすマッチングをとることは非常に困難
になる。
【0020】ボリュームレンダリングでは、ボクセルを
構成するために一連の断面画像が用いられる。この場
合、従来一般に、上方の断面画像における画素が下方の
断面画像の同一箇所にある画素と対応すると仮定され、
これらの画素のペアが内挿計算に用いられる。このよう
にきわめて単純な方法を用いるため、連続する断面間の
距離が遠く、オブジェクトの断面形状が大きく変化する
場合、ボリュームレンダリングで構築されたオブジェク
トは不明瞭になりがちである。
【0021】立体写真測量法など、エッジの検出を利用
するマッチングアルゴリズムも多い。しかしこの場合、
結果的に得られる対応点の数が少ないため、マッチング
のとれた対応点間のギャップを埋めるべく、ディスパリ
ティの値を内挿計算しなければならない。一般にあらゆ
るエッジ検出器は、それらが用いる局所的なウィンドウ
の中で画素の輝度が変化したとき、これが本当にエッジ
の存在を示唆するかどうかを判断することが難しい。エ
ッジ検出器は、本来的にすべてハイパスフィルタであ
り、エッジと同時にノイズも拾ってしまう。
【0022】さらに別の手法として、オプティカルフロ
ーが知られている。二枚の画像が与えられたとき、オプ
ティカルフローでは画像内のオブジェクト(剛体)の動
きを検出する。その際、オブジェクトの各画素の輝度は
変化しないと仮定する。オプティカルフローでは例えば
(u,v)のベクトル場の滑らかさといった、いくつか
の付加的な条件とともに、各画素の動きベクトル(u,
v)を計算する。しかし、オプティカルフローでは画像
間の大域的な対応関係を検出することはできない。画素
の輝度の局所的な変化に注目するのみであり、画像の変
位が大きい場合、システムの誤差は顕著になる。
【0023】画像の大域的な構造を認識するために、多
重解像度フィルタも数多く提案されてきた。それらは線
形フィルタと非線形フィルタに分類される。前者の例と
してウェーブレットがあるが、線形フィルタは一般に、
画像マッチングにはさして有用ではない。なぜなら、極
値をとる画素の輝度に関する情報がそれらの位置情報と
ともに次第に不鮮明になるためである。図1(a)と図
1(b)は顔の画像に対して平均化フィルタを適用した
結果を示している。同図のごとく、極値をとる画素の輝
度が平均化によって次第に薄れるとともに、位置も平均
化の影響でシフトしていく。その結果、目(輝度の極小
点)の輝度や位置の情報は、このような粗い解像度レベ
ルで曖昧になり、この解像度では正しいマッチングを計
算することができない。したがって、粗い解像度レベル
を設けるのが大域的なマッチングのためでありながら、
ここで得られたマッチングは画像の本当の特徴(目、つ
まり極小点)に正確に対応しない。より精細な解像度レ
ベルで目が鮮明に現れたとしても、大域的なマッチング
をとる際に混入した誤差は、もはや取り返しがつかな
い。入力画像にスムージング処理を加えることにより、
テクスチャ領域のステレオ情報が落ちてしまうこともす
でに指摘されている。
【0024】一方、最近地形学の分野で利用されはじめ
た非線形フィルタとして一次元の「ふるい(sieve)」
演算子がある。この演算子は、所定の大きさの一次元ウ
ィンドウ内の極小値(または極大値)を選択することに
より、縮尺と空間の因果関係を保存しながら画像にスム
ージング処理を加える。その結果得られる画像は元の画
像と同じ大きさであるが、小さな波の成分が取り除かれ
ているため、より単純になる。画像の情報を落とすとい
う点で、この演算子は広い意味での「多重解像度フィル
タ」に分類することはできるが、実際にはウェーブレッ
トのように画像の解像度を変えながら画像を階層化する
わけではなく(つまり狭い意味での多重解像度フィルタ
ではなく)、画像間の対応の検出には利用できない。
【0025】[前提技術が解決しようとする課題]以上を
まとめれば以下の課題が認められる。 1.画像の特徴を正確に、かつ比較的簡単な処理で把握
する画像処理方法が乏しかった。特に、特徴のある点に
関する情報、例えば画素値や位置を維持しながら特徴を
抽出できる画像処理方法に関する有効な提案が少なかっ
た。 2.画像の特徴をもとに対応点を自動検出する場合、一
般に処理が複雑であるか、ノイズ耐性が低いなどの欠点
があった。また、処理に際していろいろな制約を設ける
必要があり、大域的特徴及び局所的特徴を同時に満たす
マッチングをとることが困難だった。 3.画像の大域的な構造または特徴を認識するために多
重解像度フィルタを導入しても、そのフィルタが線形フ
ィルタの場合、画素の輝度情報と位置情報が曖昧になっ
た。その結果、対応点の把握が不正確になりやすかっ
た。非線形フィルタである一次元ふるい演算子は画像を
階層化しないため、画像間の対応点の検出には利用でき
なかった。 4.これらの結果、対応点を正しく把握しようとすれ
ば、結局人手による指定に頼るほか有効な手だてがなか
った。
【0026】前提技術はこれらの課題の解決を目的とし
てなされたものであり、画像処理の分野において、画像
の特徴の的確な把握を可能にする技術を提供するもので
ある。
【0027】[前提技術が課題を解決するための手段]こ
の目的のために前提技術のある態様は、新たな多重解像
度の画像フィルタを提案する。この多重解像度フィルタ
は画像から特異点を抽出する。したがって、特異点フィ
ルタともよばれる。特異点とは画像上特徴をもつ点をい
う。例として、ある領域において画素値(画素値とは、
色番号、輝度値など画像または画素に関する任意の数値
を指す)が最大になる極大点、最小になる極小点、ある
方向については最大だが別の方向については最小になる
ような鞍点がある。特異点は位相幾何学上の概念であっ
てもよい。ただし、その他どのような特徴を有してもよ
い。いかなる性質の点を特異点と考えるかは、前提技術
にとって本質問題ではない。
【0028】この態様では、多重解像度フィルタを用い
た画像処理が行われる。まず検出工程において、第一の
画像に対し、二次元的な探索を行って特異点が検出され
る。つぎに生成工程において、検出された特異点を抽出
して第一の画像よりも解像度の低い第二の画像が生成さ
れる。第二の画像には第一の画像のもつ特異点が引き継
がれる。第二の画像は第一の画像よりも解像度が低いた
め、画像の大域的な特徴の把握に好適である。
【0029】前提技術の別の態様は特異点フィルタを用
いた画像マッチング方法に関する。この態様では、始点
画像と終点画像間のマッチングがとられる。始点画像お
よび終点画像とは、ふたつの画像の区別のために便宜的
に与えた名称であり、本質的な違いはない。
【0030】この態様では、第一工程にて、始点画像に
特異点フィルタを施して解像度の異なる一連の始点階層
画像が生成される。第二工程では、終点画像に特異点フ
ィルタを施して解像度の異なる一連の終点階層画像が生
成される。始点階層画像、終点階層画像とは、それぞれ
始点画像、終点画像を階層化して得られる画像群をい
い、それぞれ最低2枚の画像からなる。つぎに第三工程
において、始点階層画像と終点階層画像のマッチングが
解像度レベルの階層の中で計算される。この態様によれ
ば、多重解像度フィルタによって特異点に関連する画像
の特徴が抽出され、および/または明確化されるため、
マッチングが容易になる。マッチングのための拘束条件
は特に必要としない。前提技術のさらに別の態様も始点
画像と終点画像のマッチングに関する。この態様では、
予め複数のマッチング評価項目のそれぞれに関して評価
式を設け、それらの評価式を統合して総合評価式を定義
し、その総合評価式の極値付近に注目して最適マッチン
グを探索する。総合評価式は、評価式の少なくもひとつ
に係数パラメータを掛けたうえでそれらの評価式の総和
として定義してもよく、その場合、総合評価式またはい
ずれかの評価式がほぼ極値をとる状態を検出して前記パ
ラメータを決定してもよい。「極値付近」または「ほぼ
極値をとる」としたのは、多少誤差を含んでいてもよい
ためである。多少の誤差は前提技術にはさして問題とな
らない。極値自体も前記パラメータに依存するため、極
値の挙動、つまり極値の変化の様子をもとに、最適と考
えられるパラメータを決定する余地が生じる。この態様
はその事実を利用している。この態様によれば、元来調
整の困難なパラメータの決定を自動化する途が拓かれ
る。
【0031】[前提技術の実施の形態]最初に[1]で前
提技術の要素技術の詳述し、[2]で処理手順を具体的
に説明する。さらに[3]で実験の結果を報告する。 [1]要素技術の詳細 [1.1]イントロダクション 特異点フィルタと呼ばれる新たな多重解像度フィルタを
導入し、画像間のマッチングを正確に計算する。オブジ
ェクトに関する予備知識は一切不要である。画像間のマ
ッチングの計算は、解像度の階層を進む間、各解像度に
おいて計算される。その際、粗いレベルから精細なレベ
ルへと順に解像度の階層を辿っていく。計算に必要なパ
ラメータは、人間の視覚システムに似た動的計算によっ
て完全に自動設定される。画像間の対応点を人手で特定
する必要はない。
【0032】本前提技術は、例えば完全に自動的なモー
フィング、物体認識、立体写真測量、ボリュームレンダ
リング、少ないフレームからの滑らかな動画像の生成な
どに応用できる。モーフィングに用いる場合、与えられ
た画像を自動的に変形することができる。ボリュームレ
ンダリングに用いる場合、断面間の中間的な画像を正確
に再構築することができる。断面間の距離が遠く、断面
の形状が大きく変化する場合でも同様である。
【0033】[1.2]特異点フィルタの階層 前提技術に係る多重解像度特異点フィルタは、画像の解
像度を落としながら、しかも画像に含まれる各特異点の
輝度及び位置を保存することができる。ここで画像の幅
をN、高さをMとする。以下簡単のため、N=M=2
(nは自然数)と仮定する。また、区間[0,N]⊂R
をIと記述する。(i,j)における画像の画素をp
(i,j)と記述する(i,j∈I)。
【0034】ここで多重解像度の階層を導入する。階層
化された画像群は多重解像度フィルタで生成される。多
重解像度フィルタは、もとの画像に対して二次元的な探
索を行って特異点を検出し、検出された特異点を抽出し
てもとの画像よりも解像度の低い別の画像を生成する。
ここで第mレベルにおける各画像のサイズは2×2
(0≦m≦n)とする。特異点フィルタは次の4種類の
新たな階層画像をnから下がる方向で再帰的に構築す
る。
【数1】 ただしここで、
【数2】 とする。以降これら4つの画像を副画像(サブイメー
ジ)と呼ぶ。minx≦t ≦x+1、max
x≦t≦x+1をそれぞれα及びβと記述すると、副画
像はそれぞれ以下のように記述できる。
【0035】 P(m,0)=α(x)α(y)p(m+1,0) (m,1)=α(x)β(y)p(m+1,1) (m,2)=β(x)α(y)p(m+1,2) P(m,3)=β(x)β(y)p(m+1,3) すなわち、これらはαとβのテンソル積のようなものと
考えられる。副画像はそれぞれ特異点に対応している。
これらの式から明らかなように、特異点フィルタはもと
の画像について2×2画素で構成されるブロックごとに
特異点を検出する。その際、各ブロックのふたつの方
向、つまり縦と横について、最大画素値または最小画素
値をもつ点を探索する。画素値として、前提技術では輝
度を採用するが、画像に関するいろいろな数値を採用す
ることができる。ふたつの方向の両方について最大画素
値となる画素は極大点、ふたつの方向の両方について最
小画素値となる画素は極小点、ふたつの方向の一方につ
いて最大画素値となるとともに、他方について最小画素
値となる画素は鞍点として検出される。
【0036】特異点フィルタは、各ブロックの内部で検
出された特異点の画像(ここでは1画素)でそのブロッ
クの画像(ここでは4画素)を代表させることにより、
画像の解像度を落とす。特異点の理論的な観点からすれ
ば、α(x)α(y)は極小点を保存し、β(x)β
(y)は極大点を保存し、α(x)β(y)及びβ
(x)α(y)は鞍点を保存する。
【0037】はじめに、マッチングをとるべき始点(ソ
ース)画像と終点(デスティネーション)画像に対して
別々に特異点フィルタ処理を施し、それぞれ一連の画像
群、すなわち始点階層画像と終点階層画像を生成してお
く。始点階層画像と終点階層画像は、特異点の種類に対
応してそれぞれ4種類ずつ生成される。
【0038】この後、一連の解像度レベルの中で始点階
層画像と終点階層画像のマッチングがとれらていく。ま
ずp(m,0)を用いて極小点のマッチングがとられ
る。次に、その結果に基づき、p(m,1)を用いて鞍
点のマッチングがとられ、p m,2)を用いて他の鞍
点のマッチングがとられる。そして最後にp(m,3)
を用いて極大点のマッチングがとられる。
【0039】図1(c)と図1(d)はそれぞれ図1
(a)と図1(b)の副画像p(5, 0)を示してい
る。同様に、図1(e)と図1(f)はp(5,1)
図1(g)と図1(h)はp(5,2)、図1(i)と
図1(j)はp(5,3)をそれぞれ示している。これ
らの図からわかるとおり、副画像によれば画像の特徴部
分のマッチングが容易になる。まずp(5,0)によっ
て目が明確になる。目は顔の中で輝度の極小点だからで
ある。p(5,1)によれば口が明確になる。口は横方
向で輝度が低いためである。p(5,2)によれば首の
両側の縦線が明確になる。最後に、p(5,3)によっ
て耳や頬の最も明るい点が明確になる。これらは輝度の
極大点だからである。
【0040】特異点フィルタによれば画像の特徴が抽出
できるため、例えばカメラで撮影された画像の特徴と、
予め記録しておいたいくつかのオブジェクトの特徴を比
較することにより、カメラに映った被写体を識別するこ
とができる。
【0041】[1.3]画像間の写像の計算 始点画像の位置(i,j)の画素をp(n) (i,j)
と書き、同じく終点画像の位置(k,l)の画素をq
(n) (k,l)で記述する。i,j,k,l∈Iとす
る。画像間の写像のエネルギー(後述)を定義する。こ
のエネルギーは、始点画像の画素の輝度と終点画像の対
応する画素の輝度の差、及び写像の滑らかさによって決
まる。最初に最小のエネルギーを持つp(m,0)とq
(m,0)間の写像f(m,0):p(m,0)→q
(m,0)が計算される。f(m,0 に基づき、最小
エネルギーを持つp(m,1)、q(m,1)間の写像
(m ,1)が計算される。この手続は、p(m,3)
とq(m,3)の間の写像f m,3)の計算が終了す
るまで続く。各写像f(m,i)(i=0,1,2,
…)を副写像と呼ぶことにする。f(m,i)の計算の
都合のために、iの順序は次式のように並べ替えること
ができる。並べ替えが必要な理由は後述する。
【0042】
【数3】 ここでσ(i)∈{0,1,2,3}である。
【0043】[1.3.1]全単射 始点画像と終点画像の間のマッチングを写像で表現する
場合、その写像は両画像間で全単射条件を満たすべきで
ある。両画像に概念上の優劣はなく、互いの画素が全射
かつ単射で接続されるべきだからである。しかしながら
通常の場合とは異なり、ここで構築すべき写像は全単射
のディジタル版である。前提技術では、画素は格子点に
よって特定される。
【0044】始点副画像(始点画像について設けられた
副画像)から終点副画像(終点画像について設けられた
副画像)への写像は、f(m,s):I/2n−m×I
/2 n−m→I/2n−m×I/2n−m(s=0,
1,…)によって表される。ここで、f
(m,s)(i,j)=(k,l)は、始点画像のp
(m,s) (i, j)が終点画像のq(m,s)
(k,l)に写像されることを意味する。簡単のため
に、f(i,j)=(k,l)が成り立つとき画素q
(k,l)をqf(i ,j)と記述する。
【0045】前提技術で扱う画素(格子点)のようにデ
ータが離散的な場合、全単射の定義は重要である。ここ
では以下のように定義する(i,i’,j,j’,k,
lは全て整数とする)。まず始めに、始点画像の平面に
おいてRによって表記される各正方形領域、
【数4】 を考える(i=0,…,2−1、j=0,…,2
1)。ここでRの各辺(エッジ)の方向を以下のように
定める。
【数5】 この正方形は写像fによって終点画像平面における四辺
形に写像されなければならない。f(m,s)(R)に
よって示される四辺形、
【数6】 は、以下の全単射条件を満たす必要がある。
【0046】1.四辺形f(m,s)(R)のエッジは
互いに交差しない。 2.f(m,s)(R)のエッジの方向はRのそれらに
等しい(図2の場合、時計回り)。 3.緩和条件として収縮写像(リトラクション:retrac
tions)を許す。
【0047】何らかの緩和条件を設けないかぎり、全単
射条件を完全に満たす写像は単位写像しかないためであ
る。ここではf(m,s)(R)のひとつのエッジの長
さが0、すなわちf(m,s)(R)は三角形になって
もよい。しかし、面積が0となるような図形、すなわち
1点または1本の線分になってはならない。図2(R)
がもとの四辺形の場合、図2(A)と図2(D)は全単
射条件を満たすが、図2(B)、図2(C)、図2
(E)は満たさない。
【0048】実際のインプリメンテーションでは、写像
が全射であることを容易に保証すべく、さらに以下の条
件を課してもよい。つまり始点画像の境界上の各画素
は、終点画像において同じ位置を占める画素に写影され
るというものである。すなわち、f(i,j)=(i,
j)(ただしi=0,i=2−1,j=0,j=2
−1の4本の線上)である。この条件を以下「付加条
件」とも呼ぶ。
【0049】[1.3.2]写像のエネルギー [1.3.2.1]画素の輝度に関するコスト 写像fのエネルギーを定義する。エネルギーが最小にな
る写像を探すことが目的である。エネルギーは主に、始
点画像の画素の輝度とそれに対応する終点画像の画素の
輝度の差で決まる。すなわち、写像f(m,s)の点
(i,j)におけるエネルギーC(m,s) (i,j)
は次式によって定まる。
【数7】 ここで、V(p(m,s) (i,j))及びV(q
(m,s) f(i,j))はそれぞれ画素p(m,s)
(i,j)及びq(m,s) f(i,j)の輝度であ
る。fのトータルのエネルギーC(m,s)は、マッチ
ングを評価するひとつの評価式であり、つぎに示すC
(m,s) (i,j)の合計で定義できる。
【数8】 [1.3.2.2]滑らかな写像のための画素の位置に
関するコスト 滑らかな写像を得るために、写像に関する別のエネルギ
ーDfを導入する。このエネルギーは画素の輝度とは関
係なく、p(m,s) (i,j)およびq(m ,s)
f(i,j)の位置によって決まる(i=0,…,2
−1,j=0,…,2−1)。点(i,j)における
写像f(m,s)のエネルギーD(m,s (i,j)
は次式で定義される。
【数9】 ただし、係数パラメータηは0以上の実数であり、ま
た、
【数10】
【数11】 とする。ここで、
【数12】 であり、i’<0およびj’<0に対してf(i’,
j’)は0と決める。Eは(i,j)及びf(i,
j)の距離で決まる。Eは画素があまりにも離れた画
素へ写影されることを防ぐ。ただしEは、後に別のエ
ネルギー関数で置き換える。Eは写像の滑らかさを保
証する。Eは、p(i,j)の変位とその隣接点の変
位の間の隔たりを表す。以上の考察をもとに、マッチン
グを評価する別の評価式であるエネルギーDは次式で
定まる。
【数13】 [1.3.2.3]写像の総エネルギー 写像の総エネルギー、すなわち複数の評価式の統合に係
る総合評価式はλC m,s) +D(m,s) で定
義される。ここで係数パラメータλは0以上の実数であ
る。目的は総合評価式が極値をとる状態を検出するこ
と、すなわち次式で示す最小エネルギーを与える写像を
見いだすことである。
【数14】 λ=0及びη=0の場合、写像は単位写像になることに
注意すべきである(すなわち、全てのi=0,…,2
−1及びj=0,…,2−1に対してf
(m ,s)(i,j)=(i,j)となる)。後述のご
とく、本前提技術では最初にλ=0及びη=0の場合を
評価するため、写像を単位写像から徐々に変形していく
ことができる。仮に総合評価式のλの位置を変えてC
(m,s) +λD(m ,s) と定義したとすれば、
λ=0及びη=0の場合に総合評価式がC(m, s)
だけになり、本来何等関連のない画素どうしが単に輝度
が近いというだけで対応づけられ、写像が無意味なもの
になる。そうした無意味な写像をもとに写像を変形して
いってもまったく意味をなさない。このため、単位写像
が評価の開始時点で最良の写像として選択されるよう係
数パラメータの与えかたが配慮されている。
【0050】オプティカルフローもこの前提技術同様、
画素の輝度の差と滑らかさを考慮する。しかし、オプテ
ィカルフローは画像の変換に用いることはできない。オ
ブジェクトの局所的な動きしか考慮しないためである。
前提技術に係る特異点フィルタを用いることによって大
域的な対応関係を検出することができる。
【0051】[1.3.3]多重解像度の導入による写
像の決定 最小エネルギーを与え、全単射条件を満足する写像f
minを多重解像度の階層を用いて求める。各解像度レ
ベルにおいて始点副画像及び終点副画像間の写像を計算
する。解像度の階層の最上位(最も粗いレベル)からス
タートし、各解像度レベルの写像を、他のレベルの写像
を考慮に入れながら決定する。各レベルにおける写像の
候補の数は、より高い、つまりより粗いレベルの写像を
用いることによって制限される。より具体的には、ある
レベルにおける写像の決定に際し、それよりひとつ粗い
レベルにおいて求められた写像が一種の拘束条件として
課される。
【0052】まず、
【数15】 が成り立つとき、p(m−1,s) (i’,j’)、q
(m−1,s) (i’, j’)をそれぞれp(m,s)
(i,j)、q(m,s) (i,j)のparentと
呼ぶことにする。[x]はxを越えない最大整数であ
る。またp(m,s (i,j)、q(m,s)
(i,j)をそれぞれ
(m−1,s) (i’,j ’)、q(m−1,s)
(i’,j’)のchildと呼ぶ。関数parent
(i,j)は次式で定義される。
【数16】 (m,s) (i,j)とq(m,s) (k,l)の間
の写像f(m,s)は、エネルギー計算を行って最小に
なったものを見つけることで決定される。f m,s)
(i,j)=(k,l)の値はf(m−1,s)(m=
1,2,…,n)を用いることによって、以下のように
決定される。まず、q(m,s) (k, l)は次の四辺
形の内部になければならないという条件を課し、全単射
条件を満たす写像のうち現実性の高いものを絞り込む。
【数17】 ただしここで、
【数18】 である。こうして定めた四辺形を、以下p(m,s)
(i,j)の相続(inherited)四辺形と呼ぶことにす
る。相続四辺形の内部において、エネルギーを最小にす
る画素を求める。
【0053】図3は以上の手順を示している。同図にお
いて、始点画像のA,B,C,Dの画素は、第m−1レ
ベルにおいてそれぞれ終点画像のA’,B’,C’,
D’へ写影される。画素p(m,s) (i,j)は、相
続四辺形A’B’C’D’の内部に存在する画素q
(m,s) f(m)(i,j)へ写影されなければなら
ない。以上の配慮により、第m−1レベルの写像から第
mレベルの写像への橋渡しがなされる。
【0054】先に定義したエネルギーEは、第mレベ
ルにおける副写像f(m,0)を計算するために、次式
に置き換える。
【数19】 また、副写像f(m,s)を計算するためには次式を用
いる。
【数20】 こうしてすべての副写像のエネルギーを低い値に保つ写
像が得られる。式20により、異なる特異点に対応する
副写像が、副写像どうしの類似度が高くなるように同一
レベル内で関連づけられる。式19は、f
(m,s)(i,j)と、第m−1レベルの画素の一部
と考えた場合の(i,j)が射影されるべき点の位置と
の距離を示している。
【0055】仮に、相続四辺形A’B’C’D’の内部
に全単射条件を満たす画素が存在しない場合は以下の措
置をとる。まず、A’B’C’D’の境界線からの距離
がL(始めはL=1)である画素を調べる。それらのう
ち、エネルギーが最小になるものが全単射条件を満たせ
ば、これをf(m,s)(i,j)の値として選択す
る。そのような点が発見されるか、またはLがその上限
のL(m)maxに到達するまで、Lを大きくしてい
く。L(m)maxは各レベルmに対して固定である。
そのような点が全く発見されない場合、全単射の第3の
条件を一時的に無視して変換先の四辺形の面積がゼロに
なるような写像も認め、f(m,s)(i,j)を決定
する。それでも条件を満たす点が見つからない場合、つ
ぎに全単射の第1及び第2条件を外す。
【0056】多重解像度を用いる近似法は、写像が画像
の細部に影響されることを回避しつつ、画像間の大域的
な対応関係を決定するために必須である。多重解像度に
よる近似法を用いなければ、距離の遠い画素間の対応関
係を見いだすことは不可能である。その場合、画像のサ
イズはきわめて小さなものに限定しなければならず、変
化の小さな画像しか扱うことができない。さらに、通常
写像に滑らかさを要求するため、そうした画素間の対応
関係を見つけにくくしている。距離のある画素から画素
への写像のエネルギーは高いためである。多重解像度を
用いた近似法によれば、そうした画素間の適切な対応関
係を見いだすことができる。それらの距離は、解像度の
階層の上位レベル(粗いレベル)において小さいためで
ある。
【0057】[1.4]最適なパレメータ値の自動決定 既存のマッチング技術の主な欠点のひとつに、パレメー
タ調整の困難さがある。大抵の場合、パラメータの調整
は人手作業によって行われ、最適な値を選択することは
きわめて難しい。前提技術に係る方法によれば、最適な
パラメータ値を完全に自動決定することができる。
【0058】前提技術に係るシステムはふたつのパレメ
ータ、λ及びηを含む。端的にいえば、λは画素の輝度
の差の重みであり、ηは写像の剛性を示している。これ
らのパラメータの値は初期値が0であり、まずη=0に
固定してλを0から徐々に増加させる。λの値を大きく
しながら、しかも総合評価式(式14)の値を最小にす
る場合、各副写像に関するC(m,s) の値は一般に
小さくなっていく。このことは基本的にふたつの画像が
よりマッチしなければならないことを意味する。しか
し、λが最適値を超えると以下の現象が発生する。
【0059】1.本来対応すべきではない画素どうし
が、単に輝度が近いというだけで誤って対応づけられ
る。 2.その結果、画素どうしの対応関係がおかしくなり、
写像がくずれはじめる。
【0060】3.その結果、式14においてD
(m,s) が急激に増加しようとする。 4.その結果、式14の値が急激に増加しようとするた
め、D(m,s) の急激な増加を抑制するようf
(m,s)が変化し、その結果C(m,s) が増加す
る。したがって、λを増加させながら式14が最小値を
とるという状態を維持しつつC(m,s) が減少から
増加に転じる閾値を検出し、そのλをη=0における最
適値とする。つぎにηを少しづつ増やしてC(m,s)
の挙動を検査し、後述の方法でηを自動決定する。そ
のηに対応してλも決まる。
【0061】この方法は、人間の視覚システムの焦点機
構の動作に似ている。人間の視覚システムでは、一方の
目を動かしながら左右両目の画像のマッチングがとられ
る。オブジェクトがはっきりと認識できるとき、その目
が固定される。
【0062】[1.4.1]λの動的決定 λは0から所定の刻み幅で増加されていき、λの値が変
わる度に副写像が評価される。式14のごとく、総エネ
ルギーはλC(m,s) +D(m,s) によって定
義される。式9のD(m,s) は滑らかさを表すもの
で、理論的には単位写像の場合に最小になり、写像が歪
むほどEもEも増加していく。Eは整数であるか
ら、D(m,s) の最小刻み幅は1である。このた
め、現在のλC(m,s) (i,j)の変化(減少量)
が1以上でなければ、写像を変化させることによって総
エネルギーを減らすことはできない。なぜなら、写像の
変化に伴ってD(m,s) は1以上増加するため、λ
(m,s) (i,j)が1以上減少しない限り総エネ
ルギーは減らないためである。
【0063】この条件のもと、λの増加に伴い、正常な
場合にC(m,s) (i,j)が減少することを示す。
(m,s) (i,j)のヒストグラムをh(l)と記
述する。h(l)はエネルギーC(m,s) (i,j)
がlである画素の数である。λl≧1が成り立つた
めに、例えばl=1/λの場合を考える。λがλ
らλまで微小量変化するとき、
【数21】 で示されるA個の画素が、
【数22】 のエネルギーを持つより安定的な状態に変化する。ここ
では仮に、これらの画素のエネルギーがすべてゼロにな
ると近似している。この式はC(m,s) の値が、
【数23】 だけ変化することを示し、その結果、
【数24】 が成立する。h(l)>0であるから、通常C
(m,s) は減少する。しかし、λが最適値を越えよ
うとするとき、上述の現象、つまりC(m,s) の増
加が発生する。この現象を検出することにより、λの最
適値を決定する。
【0064】なお、H(h>0)及びkを定数とすると
き、
【数25】 と仮定すれば、
【数26】 が成り立つ。このときk≠−3であれば、
【数27】 となる。これがC(m,s) の一般式である(Cは定
数)。
【0065】λの最適値を検出する際、さらに安全を見
て、全単射条件を破る画素の数を検査してもよい。ここ
で各画素の写像を決定する際、全単射条件を破る確率を
と仮定する。この場合、
【数28】 が成立しているため、全単射条件を破る画素の数は次式
の率で増加する。
【数29】 従って、
【数30】 は定数である。仮にh(l)=Hlを仮定するとき、
例えば、
【数31】 は定数になる。しかしλが最適値を越えると、上の値は
急速に増加する。この現象を検出し、Bλ
3/2+k/2/2の値が異常値B0thresを越
えるかどうかを検査し、λの最適値を決定することがで
きる。同様に、Bλ3/2 +k/2/2の値が異常
値B1thresを越えるかどうかを検査することによ
り、全単射の第3の条件を破る画素の増加率Bを確認
する。ファクター2を導入する理由は後述する。この
システムはこれら2つの閾値に敏感ではない。これらの
閾値は、エネルギーC(m,s) の観察では検出し損
なった写像の過度の歪みを検出するために用いることが
できる。
【0066】なお実験では、副写像f(m,s)を計算
する際、もしλが0.1を越えたらf(m,s)の計算
は止めてf(m,s+1)の計算に移行した。λ>0.
1のとき、画素の輝度255レベル中のわずか「3」の
違いが副写像の計算に影響したためであり、λ>0.1
のとき正しい結果を得ることは困難だったためである。
【0067】[1.4.2]ヒストグラムh(l) C(m,s) の検査はヒストグラムh(l)に依存し
ない。全単射及びその第3の条件の検査の際、h(l)
に影響を受けうる。実際に(λ,C(m,s) )をプ
ロットすると、kは通常1付近にある。実験ではk=1
を用い、Bλ とBλを検査した。仮にkの本当
の値が1未満であれば、BλとBλは定数にな
らず、ファクターλ(1−k)/2に従って徐々に増加
する。h(l)が定数であれば、例えばファクターはλ
1/2である。しかし、こうした差は閾値B
0thresを正しく設定することによって吸収するこ
とができる。
【0068】ここで次式のごとく始点画像を中心が(x
,y)、半径rの円形のオブジェクトであると仮定
する。
【数32】 一方、終点画像は、次式のごとく中心(x,y)、
半径がrのオブジェクトであるとする。
【数33】 ここでc(x)はc(x)=xの形であるとする。中
心(x,y)及び(x,y)が十分遠い場合、
ヒストグラムh(l)は次式の形となる。
【数34】 k=1のとき、画像は背景に埋め込まれた鮮明な境界線
を持つオブジェクトを示す。このオブジェクトは中心が
暗く、周囲にいくに従って明るくなる。k=−1のと
き、画像は曖昧な境界線を持つオブジェクトを表す。こ
のオブジェクトは中心が最も明るく、周囲にいくに従っ
て暗くなる。一般のオブジェクトはこれらふたつのタイ
プのオブジェクトの中間にあると考えてもさして一般性
を失わない。したがって、kは−1≦k≦1として大抵
の場合をカバーでき、式27が一般に減少関数であるこ
とが保障される。
【0069】なお、式34からわかるように、rは画像
の解像度に影響されること、すなわちrは2mに比例す
ることに注意すべきである。このために[1.4.1]
においてファクター2mを導入した。
【0070】[1.4.3]ηの動的決定パラメータη
も同様の方法で自動決定できる。はじめにη=0とし、
最も細かい解像度における最終的な写像f(n)及びエ
ネルギーC(n) を計算する。つづいて、ηをある値
Δηだけ増加させ、再び最も細かい解像度における最終
写像f(n)及びエネルギーC(n) を計算し直す。
この過程を最適値が求まるまで続ける。ηは写像の剛性
を示す。次式の重みだからである。
【数35】 ηが0のとき、D(n) は直前の副写像と無関係に決
定され、現在の副写像は弾性的に変形され、過度に歪む
ことになる。一方、ηが非常に大きな値のとき、D
(n) は直前の副写像によってほぼ完全に決まる。こ
のとき副写像は非常に剛性が高く、画素は同じ場所に射
影される。その結果、写像は単位写像になる。ηの値が
0から次第に増えるとき、後述のごとくC(n) は徐
々に減少する。しかしηの値が最適値を越えると、図4
に示すとおり、エネルギーは増加し始める。同図のX軸
はη、Y軸はCである。
【0071】この方法でC(n) を最小にする最適な
ηの値を得ることができる。しかし、λの場合に比べて
いろいろな要素が計算に影響する結果、C(n) は小
さく揺らぎながら変化する。λの場合は、入力が微小量
変化するたびに副写像を1回計算しなおすだけだが、η
の場合はすべての副写像が計算しなおされるためであ
る。このため、得られたC(n) の値が最小であるか
どうかを即座に判断することはできない。最小値の候補
が見つかれば、さらに細かい区間を設定することによっ
て真の最小値を探す必要がある。
【0072】[1.5]スーパーサンプリング 画素間の対応関係を決定する際、自由度を増やすため
に、f(m,s)の値域をR×Rに拡張することができ
る(Rは実数の集合)。この場合、終点画像の画素の輝
度が補間され、非整数点、
【数36】 における輝度を持つf(m,s)が提供される。つまり
スーパーサンプリングが行われる。実験では、f
(m,s)は整数及び半整数値をとることが許され、
【数37】 は、
【数38】 によって与えられた。
【0073】[1.6]各画像の画素の輝度の正規化 始点画像と終点画像がきわめて異なるオブジェクトを含
んでいるとき、写像の計算に元の画素の輝度がそのまま
では利用しにくい。輝度の差が大きいために輝度に関す
るエネルギーC(m,s) が大きくなりすぎ、正しい
評価がしずらいためである。
【0074】例えば、人の顔と猫の顔のマッチングをと
る場合を考える。猫の顔は毛で覆われており、非常に明
るい画素と非常に暗い画素が混じっている。この場合、
ふたつの顔の間の副写像を計算するために、まず副画像
を正規化する。すなわち、最も暗い画素の輝度を0、最
も明るいそれを255に設定し、他の画素の輝度は線形
補間によって求めておく。
【0075】[1.7]インプリメンテーション 始点画像のスキャンに従って計算がリニアに進行する帰
納的な方法を用いる。始めに、1番上の左端の画素
(i,j)=(0,0)についてf(m,s)の値を決
定する。次にiを1ずつ増やしながら各f
(m,s)(i,j)の値を決定する。iの値が画像の
幅に到達したとき、jの値を1増やし、iを0に戻す。
以降、始点画像のスキャンに伴いf(m,s)(i,
j)を決定していく。すべての点について画素の対応が
決まれば、ひとつの写像f(m,s)が決まる。あるp
(i,j)について対応点qf(i,j)が決まれば、
つぎにp(i, j+1)の対応点qf(i,j+1)
決められる。この際、qf(i,j+1 の位置は全単
射条件を満たすために、qf(i,j)の位置によって
制限される。したがって、先に対応点が決まる点ほどこ
のシステムでは優先度が高くなる。つねに(0,0)が
最も優先される状態がつづくと、求められる最終の写像
に余計な偏向が加わる。本前提技術ではこの状態を回避
するために、f(m,s)を以下の方法で決めていく。
【0076】まず(s mod 4)が0の場合、(0,
0)を開始点としi及びjを徐々に増やしながら決めて
いく。(s mod 4)が1の場合、最上行の右端点を
開始点とし、iを減少、jを増加させながら決めてい
く。(s mod 4)が2のとき、最下行の右端点を開
始点とし、i及びjを減少させながら決めていく。(s
mod 4)が3の場合、最下行の左端点を開始点と
し、iを増加、jを減少させながら決めていく。解像度
が最も細かい第nレベルには副写像という概念、すなわ
ちパラメータsが存在しないため、仮にs=0及びs=
2であるとしてふたつの方向を連続的に計算した。
【0077】実際のインプリメンテーションでは、全単
射条件を破る候補に対してペナルティを与えることによ
り、候補(k,l)の中からできる限り全単射条件を満
たすf(m,s)(i,j)(m=0,…,n)の値を
選んだ。第3の条件を破る候補のエネルギーD(k、
l)にはφを掛け、一方、第1または第2の条件を破る
候補にはψを掛ける。今回はφ=2、ψ=100000
を用いた。
【0078】前述の全単射条件のチェックのために、実
際の手続として(k,l)=f(m ,s)(i,j)を
決定する際に以下のテストを行った。すなわちf
(m,s)(i,j)の相続四辺形に含まれる各格子点
(k,l)に対し、次式の外積のz成分が0以上になる
かどうかを確かめる。
【数39】 ただしここで、
【数40】
【数41】 である(ここでベクトルは三次元ベクトルとし、z軸は
直交右手座標系において定義される)。もしWが負であ
れば、その候補についてはD(m,s) (k,l にψ
を掛けることによってペナルティを与え、できるかぎり
選択しないようにする。
【0079】図5(a)、図5(b)はこの条件を検査
する理由を示している。図5(a)はペナルティのない
候補、図5(b)はペナルティがある候補をそれぞれ表
す。隣接画素(i,j+1)に対する写像f(m,s)
(i,j+1)を決定する際、Wのz成分が負であれば
始点画像平面上において全単射条件を満足する画素は存
在しない。なぜなら、q(m,s) (k,l)は隣接す
る四辺形の境界線を越えるためである。
【0080】[1.7.1]副写像の順序 インプリメンテーションでは、解像度レベルが偶数のと
きにはσ(0)=0、σ(1)=1、σ(2)=2、σ
(3)=3、σ(4)=0を用い、奇数のときはσ
(0)=3、σ(1)=2、σ(2)=1、σ(3)=
0、σ(4)=3を用いた。このことで、副写像を適度
にシャッフルした。なお、本来副写像は4種類であり、
sは0〜3のいずれかである。しかし、実際にはs=4
に相当する処理を行った。その理由は後述する。
【0081】[1.8]補間計算 始点画像と終点画像の間の写像が決定された後、対応し
あう画素の輝度が補間される。実験では、トライリニア
補間を用いた。始点画像平面における正方形p
(i,j)(i+1,j)(i,j+1)
(i+1,j+1)が終点画像平面上の四辺形q
f(i,j)f(i+1,j)f(i,j+1)
f(i +1,j+1)に射影されると仮定する。簡単の
ため、画像間の距離を1とする。始点画像平面からの距
離がt(0≦t≦1)である中間画像の画素r(x,
y,t)(0≦x≦N−1,0≦y≦M−1)は以下の
要領で求められる。まず画素r(x,y,t)の位置
(ただしx,y,t∈R)を次式で求める。
【数42】 つづいてr(x,y,t)における画素の輝度が次の式
を用いて決定される。
【数43】 ここでdx及びdyはパラメータであり、0から1まで
変化する。
【0082】[1.9]拘束条件を課したときの写像 いままでは拘束条件がいっさい存在しない場合の写像の
決定を述べた。しかし、始点画像と終点画像の特定の画
素間に予め対応関係が規定されているとき、これを拘束
条件としたうえで写像を決定することができる。
【0083】基本的な考えは、まず始点画像の特定の画
素を終点画像の特定の画素に移す大まかな写像によって
始点画像を大まかに変形し、しかる後、写像fを正確に
計算する。
【0084】まず始めに、始点画像の特定の画素を終点
画像の特定の画素に射影し、始点画像の他の画素を適当
な位置に射影する大まかな写像を決める。すなわち、特
定の画素に近い画素は、その特定の画素が射影される場
所の近くに射影されるような写像である。ここで第mレ
ベルの大まかな写像をF(m)と記述する。
【0085】大まかな写像Fは以下の要領で決める。ま
ず、いくつかの画素について写像を特定する。始点画像
についてn個の画素、
【数44】 を特定するとき、以下の値を決める。
【数45】 始点画像の他の画素の変位量は、p(ih,jh)(h
=0,…,n−1)の変位に重み付けをして求められ
る平均である。すなわち画素p(i,j)は、終点画像
の以下の画素に射影される。
【数46】 ただしここで、
【数47】
【数48】 とする。
【0086】つづいて、F(m)に近い候補写像fがよ
り少ないエネルギーを持つように、その写像fのエネル
ギーD(m,s) (i,j)を変更する。正確には、D
(m ,s) (i,j)は、
【数49】 である。ただし、
【数50】 であり、κ,ρ≧0とする。最後に、前述の写像の自動
計算プロセスにより、fを完全に決定する。
【0087】ここで、f(m,s)(i,j)がF
(m)(i,j)に十分近いとき、つまりそれらの距離
が、
【数51】 以内であるとき、E (m,s) (i,j)が0になる
ことに注意すべきである。そのように定義した理由は、
各f(m,s)(i,j)がF(m)(i,j)に十分近い限
り、終点画像において適切な位置に落ち着くよう、その
値を自動的に決めたいためである。この理由により、正
確な対応関係を詳細に特定する必要がなく、始点画像は
終点画像にマッチするように自動的にマッピングされ
る。 [2]具体的な処理手順 [1]の各要素技術による処理の流れを説明する。 図6は前提技術の全体手順を示すフローチャートであ
る。同図のごとく、まず多重解像度特異点フィルタを用
いた処理を行い(S1)、つづいて始点画像と終点画像
のマッチングをとる(S2)。ただし、S2は必須では
なく、S1で得られた画像の特徴をもとに画像認識など
の処理を行ってもよい。
【0088】図7は図6のS1の詳細を示すフローチャ
ートである。ここではS2で始点画像と終点画像のマッ
チングをとることを前提としている。そのため、まず特
異点フィルタによって始点画像の階層化を行い(S1
0)、一連の始点階層画像を得る。つづいて同様の方法
で終点画像の階層化を行い(S11)、一連の終点階層
画像を得る。ただし、S10とS11の順序は任意であ
るし、始点階層画像と終点階層画像を並行して生成して
いくこともできる。
【0089】図8は図7のS10の詳細を示すフローチ
ャートである。もとの始点画像のサイズは2×2
する。始点階層画像は解像度が細かいほうから順に作ら
れるため、処理の対象となる解像度レベルを示すパラメ
ータmをnにセットする(S100)。つづいて第mレ
ベルの画像p(m,0)、p(m,1)
(m,2 、p(m,3)から特異点フィルタを用い
て特異点を検出し(S101)、それぞれ第m−1レベ
ルの画像p(m−1,0)、p(m−1,1)、p
(m−1 ,2)、p(m−1,3)を生成する(S10
2)。ここではm=nであるため、p(m,0)=p
(m,1)=p(m,2)=p(m,3)=p(n)
あり、ひとつの始点画像から4種類の副画像が生成され
る。
【0090】図9は第mレベルの画像の一部と、第m−
1レベルの画像の一部の対応関係を示している。同図の
数値は各画素の輝度を示す。同図のp(m,s)はp
(m, 0)〜p(m,3)の4つの画像を象徴するもの
で、p(m−1,0)を生成する場合には、p
(m,s)はp(m,0)であると考える。[1.2]
で示した規則により、p(m−1,0)は例えば同図で
輝度を記入したブロックについて、そこに含まれる4画
素のうち「3」、p(m−1,1)は「8」、p
(m−1 ,2)は「6」、p(m−1,3)を「10」
をそれぞれ取得し、このブロックをそれぞれ取得したひ
とつの画素で置き換える。したがって、第m−1レベル
の副画像のサイズは2m−1×2m−1になる。
【0091】つづいてmをデクリメントし(図8のS1
03)、mが負になっていないことを確認し(S10
4)、S101に戻ってつぎに解像度の粗い副画像を生
成していく。この繰り返し処理の結果、m=0、すなわ
ち第0レベルの副画像が生成された時点でS10が終了
する。第0レベルの副画像のサイズは1×1である。
【0092】図10はS10によって生成された始点階
層画像をn=3の場合について例示している。最初の始
点画像のみが4つの系列に共通であり、以降特異点の種
類に応じてそれぞれ独立に副画像が生成されていく。な
お、図8の処理は図7のS11にも共通であり、同様の
手順を経て終点階層画像も生成される。以上で図6のS
1による処理が完了する。
【0093】前提技術では、図6のS2に進むためにマ
ッチング評価の準備をする。図11はその手順を示して
いる。同図のごとく、まず複数の評価式が設定される
(S30)。[1.3.2.1]で導入した画素に関す
るエネルギーC(m,s) と[1.3.2.2]で導
入した写像の滑らかさに関するエネルギーD(m,s)
がそれである。つぎに、これらの評価式を統合して総
合評価式を立てる(S31)。[1.3.2.3]で導
入した総エネルギーλC(m,s) +D(m, s)
がそれであり、[1.3.2.2]で導入したηを用い
れば、 ΣΣ(λC(m,s) (i,j)+ηE (m,s) (i,j)+E (m ,s) (i,j) ) (式52) となる。ただし、総和はi、jについてそれぞれ0、1
…、2−1で計算する。以上でマッチング評価の準備
が整う。
【0094】図12は図6のS2の詳細を示すフローチ
ャートである。[1]で述べたごとく、始点階層画像と
終点階層画像のマッチングは互いに同じ解像度レベルの
画像どうしでとられる。画像間の大域的なマッチングを
良好にとるために、解像度が粗いレベルから順にマッチ
ングを計算する。特異点フィルタを用いて始点階層画像
および終点階層画像を生成しているため、特異点の位置
や輝度は解像度の粗いレベルでも明確に保存されてお
り、大域的なマッチングの結果は従来に比べて非常に優
れたものになる。
【0095】図12のごとく、まず係数パラメータηを
0、レベルパラメータmを0に設定する(S20)。つ
づいて、始点階層画像中の第mレベルの4つの副画像と
終点階層画像中の第mレベルの4つの副画像のそれぞれ
の間でマッチングを計算し、それぞれ全単射条件を満た
し、かつエネルギーを最小にするような4種類の副写像
(m,s)(s=0,1,2,3)を求める(S2
1)。全単射条件は[1.3.3]で述べた相続四辺形
を用いて検査される。この際、式17、18が示すよう
に、第mレベルにおける副写像は第m−1レベルのそれ
らに拘束されるため、より解像度の粗いレベルにおける
マッチングが順次利用されていく。これは異なるレベル
間の垂直的参照である。なお、いまm=0であってそれ
より粗いレベルはないが、この例外的な処理は図13で
後述する。一方、同一レベル内における水平的参照も行
われる。[1.3.3]の式20のごとく、f
(m,3)はf(m,2)に、f(m,2)はf
(m,1)に、f (m,1)はf(m,0)に、それぞ
れ類似するように決める。その理由は、特異点の種類が
違っても、それらがもともと同じ始点画像と終点画像に
含まれている以上、副写像がまったく異なるという状況
は不自然だからである。式20からわかるように、副写
像どうしが近いほどエネルギーは小さくなり、マッチン
グが良好とみなされる。
【0096】なお、最初に決めるべきf(m,0)につ
いては同一のレベルで参照できる副写像がないため、式
19に示すごとくひとつ粗いレベルを参照する。ただ
し、実験ではf(m,3)まで求まった後、これを拘束
条件としてf(m,0)を一回更新するという手続をと
った。これは式20にs=4を代入し、f(m,4)
新たなf(m,0)とすることに等しい。f(m,0)
とf(m,3)の関連度が低くなり過ぎる傾向を回避す
るためであり、この措置によって実験結果がより良好に
なった。この措置に加え、実験では[1.7.1]に示
す副写像のシャッフルも行った。これも本来特異点の種
類ごとに決まる副写像どうしの関連度を密接に保つ趣旨
である。また、処理の開始点に依存する偏向を回避する
ために、sの値にしたがって開始点の位置を変える点は
[1.7]で述べたとおりである。
【0097】図13は第0レベルにおいて副写像を決定
する様子を示す図である。第0レベルでは各副画像がた
だひとつの画素で構成されるため、4つの副写像
f(0,s はすべて自動的に単位写像に決まる。図1
4は第1レベルにおいて副写像を決定する様子を示す図
である。第1レベルでは副画像がそれぞれ4画素で構成
される。同図ではこれら4画素が実線で示されている。
いま、p(1,s)の点xの対応点をq(1,s)の中
で探すとき、以下の手順を踏む。
【0098】1.第1レベルの解像度で点xの左上点
a、右上点b、左下点c、右下点dを求める。 2.点a〜dがひとつ粗いレベル、つまり第0レベルに
おいて属する画素を探す。図14の場合、点a〜dはそ
れぞれ画素A〜Dに属する。ただし、画素A〜Cは本来
存在しない仮想的な画素である。 3.第0レベルですでに求まっている画素A〜Dの対応
点A’〜D’をq(1 ,s)の中にプロットする。画素
A’〜C’は仮想的な画素であり、それぞれ画素A〜C
と同じ位置にあるものとする。 4.画素Aの中の点aの対応点a’が画素A’の中にあ
るとみなし、点a’をプロットする。このとき、点aが
画素Aの中で占める位置(この場合、右下)と、点a’
が画素A’の中で占める位置が同じであると仮定する。 5.4と同様の方法で対応点b’〜d’をプロットし、
点a’〜d’で相続四辺形を作る。 6.相続四辺形の中でエネルギーが最小になるよう、点
xの対応点x’を探す。対応点x’の候補として、例え
ば画素の中心が相続四辺形に含まれるものに限定しても
よい。図14の場合、4つの画素がすべて候補になる。
【0099】以上がある点xの対応点の決定手順であ
る。同様の処理を他のすべての点について行い、副写像
を決める。第2レベル以上のレベルでは、次第に相続四
辺形の形が崩れていくと考えられるため、図3に示すよ
うに画素A’〜D’の間隔が空いていく状況が発生す
る。
【0100】こうして、ある第mレベルの4つの副写像
が決まれば、mをインクリメントし(図12のS2
2)、mがnを超えていないことを確かめて(S2
3)、S21に戻る。以下、S21に戻るたびに次第に
細かい解像度のレベルの副写像を求め、最後にS21に
戻ったときに第nレベルの写像f(n)を決める。この
写像はη=0に関して定まったものであるから、f
(n)(η=0)と書く。
【0101】つぎに異なるηに関する写像も求めるべ
く、ηをΔηだけシフトし、mをゼロクリアする(S2
4)。新たなηが所定の探索打切り値ηmaxを超えて
いないことを確認し(S25)、S21に戻り、今回の
ηに関して写像f(n)(η=Δη)を求める。この処
理を繰り返し、S21でf(n)(η=iΔη)(i=
0,1,…)を求めていく。ηがηmaxを超えたとき
S26に進み、後述の方法で最適なη=ηoptを決定
し、f(n)(η=ηopt)を最終的に写像f (n)
とする。
【0102】図15は図12のS21の詳細を示すフロ
ーチャートである。このフローチャートにより、ある定
まったηについて、第mレベルにおける副写像が決ま
る。副写像を決める際、前提技術では副写像ごとに最適
なλを独立して決める。
【0103】同図のごとく、まずsとλをゼロクリアす
る(S210)。つぎに、そのときのλについて(およ
び暗にηについて)エネルギーを最小にする副写像f
(m, s)を求め(S211)、これをf
(m,s)(λ=0)と書く。異なるλに関する写像も
求めるべく、λをΔλだけシフトし、新たなλが所定の
探索打切り値λmaxを超えていないことを確認し(S
213)、S211に戻り、以降の繰り返し処理でf
(m,s)(λ=iΔλ)(i=0,1,…)を求め
る。λがλ maxを超えたときS214に進み、最適な
λ=λoptを決定し、f(m,s (λ=λopt
を最終的に写像f(m,s)とする(S214)。
【0104】つぎに、同一レベルにおける他の副写像を
求めるべく、λをゼロクリアし、sをインクリメントす
る(S215)。sが4を超えていないことを確認し
(S216)、S211に戻る。s=4になれば上述の
ごとくf(m,3)を利用してf(m,0)を更新し、
そのレベルにおける副写像の決定を終了する。
【0105】図16は、あるmとsについてλを変えな
がら求められたf(m,s)(λ=iΔλ)(i=0,
1,…)に対応するエネルギーC(m,s) の挙動を
示す図である。[1.4]で述べたとおり、λが増加す
ると通常C(m,s) は減少する。しかし、λが最適
値を超えるとC(m,s) は増加に転じる。そこで本
前提技術ではC(m,s) が極小値をとるときのλを
λoptと決める。同図のようにλ>λoptの範囲で
再度C(m,s) が小さくなっていっても、その時点
ではすでに写像がくずれていて意味をなさないため、最
初の極小点に注目すればよい。λoptは副写像ごとに
独立して決めていき、最後にf(n)についてもひとつ
定まる。
【0106】一方、図17は、ηを変えながら求められ
たf(n)(η=iΔη)(i=0,1,…)に対応す
るエネルギーC(n) の挙動を示す図である。ここで
もηが増加すると通常C(n) は減少するが、ηが最
適値を超えるとC(n) は増加に転じる。そこでC
(n) が極小値をとるときのηをηoptと決める。
図17は図4の横軸のゼロ付近を拡大した図と考えてよ
い。ηoptが決まればf(n)を最終決定することが
できる。
【0107】以上、本前提技術によれば種々のメリット
が得られる。まずエッジを検出する必要がないため、エ
ッジ検出タイプの従来技術の課題を解消できる。また、
画像に含まれるオブジェクトに対する先験的な知識も不
要であり、対応点の自動検出が実現する。特異点フィル
タによれば、解像度の粗いレベルでも特異点の輝度や位
置を維持することができ、オブジェクト認識、特徴抽
出、画像マッチングに極めて有利である。その結果、人
手作業を大幅に軽減する画像処理システムの構築が可能
となる。
【0108】なお、本前提技術について次のような変形
技術も考えられる。 (1)前提技術では始点階層画像と終点階層画像の間で
マッチングをとる際にパラメータの自動決定を行った
が、この方法は階層画像間ではなく、通常の2枚の画像
間のマッチングをとる場合全般に利用できる。
【0109】たとえば2枚の画像間で、画素の輝度の差
に関するエネルギーEと画素の位置的なずれに関する
エネルギーEのふたつを評価式とし、これらの線形和
ot=αE+Eを総合評価式とする。この総合
評価式の極値付近に注目してαを自動決定する。つま
り、いろいろなαについてEtotが最小になるような
写像を求める。それらの写像のうち、αに関してE
極小値をとるときのαを最適パラメータと決める。その
パラメータに対応する写像を最終的に両画像間の最適マ
ッチングとみなす。
【0110】これ以外にも評価式の設定にはいろいろな
方法があり、例えば1/Eと1/Eのように、評価
結果が良好なほど大きな値をとるものを採用してもよ
い。総合評価式も必ずしも線形和である必要はなく、n
乗和(n=2、1/2、−1、−2など)、多項式、任
意の関数などを適宜選択すればよい。
【0111】パラメータも、αのみ、前提技術のごとく
ηとλのふたつの場合、それ以上の場合など、いずれで
もよい。パラメータが3以上の場合はひとつずつ変化さ
せて決めていく。 (2)本前提技術では、総合評価式の値が最小になるよ
う写像を決めた後、総合評価式を構成するひとつの評価
式であるC(m,s) が極小になる点を検出してパラ
メータを決定した。しかし、こうした二段回処理の代わ
りに、状況によっては単に総合評価式の最小値が最小に
なるようにパラメータを決めても効果的である。その場
合、例えばαE+βEを総合評価式とし、α+β=
1なる拘束条件を設けて各評価式を平等に扱うなどの措
置を講じてもよい。パラメータの自動決定の本質は、エ
ネルギーが最小になるようにパラメータを決めていく点
にあるからである。 (3)前提技術では各解像度レベルで4種類の特異点に
関する4種類の副画像を生成した。しかし、当然4種類
のうち1、2、3種類を選択的に用いてもよい。例え
ば、画像中に明るい点がひとつだけ存在する状態であれ
ば、極大点に関するf(m,3)だけで階層画像を生成
しても相応の効果が得られるはずである。その場合、同
一レベルで異なる副写像は不要になるため、sに関する
計算量が減る効果がある。 (4)本前提技術では特異点フィルタによってレベルが
ひとつ進むと画素が1/4になった。例えば3×3で1
ブロックとし、その中で特異点を探す構成も可能であ
り、その場合、レベルがひとつ進むと画素は1/9にな
る。 (5)始点画像と終点画像がカラーの場合、それらをま
ず白黒画像に変換し、写像を計算する。その結果求めら
れた写像を用いて始点のカラー画像を変換する。それ以
外の方法として、RGBの各成分について副写像を計算
してもよい。
【0112】[多変量空間処理に関する実施の形態]以
上の前提技術を利用した多変量空間処理技術を説明す
る。図18は、実施の形態に係る多変量空間処理装置1
0の構成を示す。この装置は、オブジェクトデータOD
である多変量データを入力する前処理部12と、前処理
部12によって三変量へ縮退されたデータを受け取り、
第1および第2画像を生成する変換部14と、第1画像
I1と第2画像I2に対してマッチング計算を施すマッ
チングプロセッサ16と、マッチングの結果得られた対
応点ファイルFを保存する対応点ファイル保存部18
と、第1画像I1、第2画像I2および対応点ファイル
Fをもとに中間画像を生成する中間画像生成部20と、
生成された中間画像を表示するための処理をおこなう表
示制御部22を含む。変換部14はまた、第1画像I1
および第2画像I2の間に存在する真の中間画像AIF
を生成し、これを比較部24へ出力する。中間画像生成
部20は、第1画像I1および第2画像I2から生成し
た仮の中間画像VIFを比較部24へ出力する。比較部
24は、これら2つの中間画像を比較し、その比較結果
を比較結果ファイル保存部26へ格納する。前処理部1
2は、過去の処理の際、ユーザによって選択された三変
量を選択変量記憶部28へ記録する。前処理部12はま
た、比較結果ファイル保存部26から過去の比較結果を
参照する。すなわち前処理部12は、過去ユーザによっ
て選ばれた三変量、または過去比較の結果が良好であっ
た三変量をユーザへ表示する。ユーザはこの表示を利用
して、今回利用すべき三変量を選択することができる。
【0113】図19は、多変量空間処理装置10におけ
る処理の概要を示すフローチャートである。オブジェク
トデータODはまず前処理部12へ入力され、ここで三
変量への縮退がおこなわれる(S300)。この際、前
処理部12は、前述のごとく、過去ユーザが選んだ三変
量のいずれについて真の中間画像AIFと仮の中間画像
VIFの近似度が高かったかを表示する。このことによ
りユーザは、多数の変量のうちいずれの変量にターゲッ
トを絞って可視化するかを判断することができる。この
方法は、特に同程度のに重要な変量が多く存在する場合
有効である。
【0114】前処理部12はさらに、過去ユーザによっ
て実際に選択された変量をオブジェクトデータODのタ
イプ毎にユーザへ表示する。このことにより、ユーザが
過去に興味をもった変量、または実際に所定の目的をも
って選択した変量をユーザに通知することができ、ユー
ザによる選択の便宜が図られる。
【0115】前処理部12による縮退は、いろいろな方
法で実現できる。最も簡単な例は、ユーザが選択した三
変量をそのまま選び、残りの変量を無視する方法であ
る。それ以外の方法として、変量を減らしていく際に前
述のごとく任意のタイミングで残りの変量に変換処理を
加えることができる。そうした変換が加えられた場合、
これも選択変量記憶部28へ記録しておいてもよい。
【0116】三変量へ縮退されたオブジェクトデータO
Dは変換部14へ投入される。変換部14は、三変量の
うちいずれの変量を基準とするかをユーザへ問い合わせ
る。ユーザが基準となる変量(以下単に基準変量とい
う)を指定したとき、この基準変量にふたつの具体的な
値を設定することにより、第1画像I1および第2画像
I2を生成する(S302)。
【0117】生成された第1画像I1および第2画像I
2はマッチングプロセッサ16および中間画像生成部2
0へ出力される。マッチングプロセッサ16は、前提技
術で述べた方法により、特異点を中心とするマッチング
計算をおこなう(S304)。マッチングの結果生成さ
れた対応点ファイルFは対応点ファイル保存部18へ格
納される。
【0118】中間画像生成部20は、第1画像I1、第
2画像I2および対応点ファイルFをもとに、補間計算
によって仮の中間画像VIFを生成する(S306)。
補間計算も前提技術で説明したとおりである。生成され
た中間画像は表示制御部22へ出力され、ここで必要な
処理を受けたのち表示装置へ出力される。生成された仮
の中間画像VIFは、比較部24へも出力され、表示と
並行して必要な後処理がおこなわれる(S308)。
【0119】図20は、図19のS300の処理の詳細
を示す。前処理部12はまず、比較結果ファイル保存部
26および選択変量記憶部28を参照し、参照情報が存
在するか否かを判定する(S300A)。ここで参照情
報とは、過去の比較結果およびユーザによる過去の変量
の選択記録の総称である。参照情報が存在すれば(S3
00AのY)、その情報を表示し(S300B)、一
方、参照情報が存在しなければ(S300AのN)参照
情報の表示をスキップし、ユーザによる変量の指定を待
つ(S300C)。
【0120】ユーザは、表示された参照情報をコンファ
ームし、またはあらたに変量を指定することにより、三
変量を選択する(S300CのY)。前処理部12はこ
ののち、選択された三変量へオブジェクトデータODを
縮退せしめる(S300D)。
【0121】図21は図18におけるS302の詳細を
示す。三変量のデータを受けた変換部14は、それらの
うちいずれの変量を基準変量(以下これをtで表記す
る)とするかをユーザへ問い合わせる。ここでユーザが
基準変量を指定したとき(S302A)、変換部14は
続いてその基準変量tの2つの具体的な値をユーザへ問
い合わせる。これらは第1画像I1および第2画像I2
を生成するための値である。ユーザが2つの値t=t
1、t2を指定したとき(S302B)、変換部14は
これを取得する。基準変量tに具体的な値を代入するこ
とによって残りの2つの変量の値が確定するため、変換
部14において、それら2つの変量によって表される第
1画像I1および第2画像I2が確定する(S302
C)。以下、対応点ファイル保存部18および中間画像
生成部20による処理は前述のとおりである。
【0122】図22は、図19におけるS308の詳細
を示す。中間画像生成部20によって中間画像が生成さ
れたとき、表示制御部22はこの中間画像および必要に
応じて第1画像I1および第2画像I2を入力し、これ
を表示装置へ表示可能なデータ形式へ変換する。これに
より、2次元画像による可視化が実現する(S308
A)。
【0123】一方、比較部24は、真の中間画像AIF
と仮の中間画像IFを比較する(S308B)。たとえ
ばいま、t=t1およびt=t2の中点であるt=(t
1+t2)/2における比較を考える。変換部14は、
基準変量としてt=(t1+t2)/2を代入すること
により、その値における残りの2つの変量を確定し、2
次元画像を生成することができる。この画像は、オブジ
ェクトの実際のデータをもとに生成されたものであり、
その意味から真の中間画像と表現される。一方、同じ基
準変量の値t=(t1+t2)/2が中間画像生成部2
0へ通知され、ここで補間計算によってその基準変量の
値における中間画像が生成される。比較部24はこれら
2つの画像の差分をとり、その大小によって結果の良否
を判定し、これを比較結果ファイル保存部26へ格納す
る(S308C)。別の方法として、比較部24は単に
差分を計算しこれを比較結果ファイル保存部26へ格納
してもよい。その場合前処理部12が比較結果の良否を
判定すればよい。
【0124】図23、図24、図25は、本実施の形態
による可視化の実験結果を示す。ここでは、オブジェク
トデータとして竜巻の中心付近における気圧データを採
用した。図23、図24はそれぞれ、所定の時刻t=t
1およびt=t2における気圧の分布を横方向から見た
状態を示す。一方図25は、それらの2つの画像、すな
わち第1画像I1および第2画像I2の中間画像であ
り、t=(t1+t)/2における仮の中間画像であ
る。いま仮に、z軸をこの竜巻の縦方向に取ったとき、
図23および図24に示す第1画像I1および第2画像
I2は、オブジェクトデータをz軸に平行な平面に投影
して得られる2次元の情報、および時刻によって形成さ
れる三変量のデータと考えることができる。したがっ
て、この例における前処理部12の処理は、オブジェク
トデータをz軸に平行な平面に投影するとともに、時刻
のパラメータを保存する処理である。
【0125】一方、変換部14の処理は、時刻tを基準
変量として、その具体的な2つの値t1、t2における
画像を取得したと考えることができる。図25に示す結
果からもわかるとおり、本実施の形態により簡易的な方
法で良好な可視化結果を得ることができる。
【0126】以上、実施の形態をもとに本発明を説明し
た。なお本発明はこの実施の形態に限定されることな
く、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として
有効である。そうした例を述べる。
【0127】実施の形態では、3次元空間における現象
としての竜巻を例にとった。しかし本発明はこれに限ら
れることなく、さらに多変量のオブジェクトを扱うこと
ができる。たとえば、複雑な経済現象を解析する場合に
おいて、さまざまなパラメータのうち、ユーザが注目す
べき三変量を指定することにより、同様の可視化を簡便
におこなうことができる。その際、三変量の選び方を変
えていくことにより、その経済現象においていずれの変
量がどの程度重要性をもっているかをある程度知ること
ができる。また、比較部24における比較結果をもと
に、ケースバイケースでその経済現象において重要であ
った変量を特定することも可能である。
【0128】すなわち、本発明による多変量空間の処理
方法は、従来シミュレーションや複雑な構造の解析の際
に前提となったモデリングを省略し、非常に簡便な方法
で現象の可視化を実現するものである。したがってその
科学的な意味は、任意の現象をモデリングなしに2次元
画像のマッチングのみによって把握するという新たな方
法論の提案および実現にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)とは図1(b)は、ふたりの人物
の顔に平均化フィルタを施して得られる画像、図1
(c)と図1(d)は、ふたりの人物の顔に関して前提
技術で求められるp(5,0)の画像、図1(e)と図
1(f)は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求め
られるp(5,1)の画像、図1(g)と図1(h)
は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求められるp
(5,2)の画像、図1(i)と図1(j)は、ふたり
の人物の顔に関して前提技術で求められるp(5,3)
の画像をそれぞれディスプレイ上に表示した中間調画像
の写真である。
【図2】 図2(R)はもとの四辺形を示す図、図2
(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)、図2
(E)はそれぞれ相続四辺形を示す図である。
【図3】 始点画像と終点画像の関係、および第mレベ
ルと第m−1レベルの関係を相続四辺形を用いて示す図
である。
【図4】 パラメータηとエネルギーCの関係を示す
図である。
【図5】 図5(a)、図5(b)は、ある点に関する
写像が全単射条件を満たすか否かを外積計算から求める
様子を示す図である。
【図6】 前提技術の全体手順を示すフローチャートで
ある。
【図7】 図6のS1の詳細を示すフローチャートであ
る。
【図8】 図7のS10の詳細を示すフローチャートで
ある。
【図9】 第mレベルの画像の一部と、第m−1レベル
の画像の一部の対応関係を示す図である。
【図10】 前提技術で生成された始点階層画像を示す
図である。
【図11】 図6のS2に進む前に、マッチング評価の
準備の手順を示す図である。
【図12】 図6のS2の詳細を示すフローチャートで
ある。
【図13】 第0レベルにおいて副写像を決定する様子
を示す図である。
【図14】 第1レベルにおいて副写像を決定する様子
を示す図である。
【図15】 図12のS21の詳細を示すフローチャー
トである。
【図16】 あるf(m,s)についてλを変えながら
求められたf(m, s)(λ=iΔλ)に対応するエネ
ルギーC(m,s) の挙動を示す図である。
【図17】 ηを変えながら求められたf(n)(η=
iΔη)(i=0,1,…)に対応するエネルギーC
(n) の挙動を示す図である。
【図18】 実施の形態に係る多変量空間処理装置の構
成図である。
【図19】 実施の形態による処理の手順の概略を示す
フローチャートである。
【図20】 図19におけるS300の詳細を示すフロ
ーチャートである。
【図21】 図19におけるS302の詳細を示すフロ
ーチャートである。
【図22】 図19におけるS308の詳細を示すフロ
ーチャートである。
【図23】 実験に用いた竜巻のデータ(t=t1)を
示す図である。
【図24】 実験に用いた竜巻のデータ(t=t2)を
示す図である。
【図25】 実験の結果得られた中間画像を示す図であ
る。
【符号の説明】
10 多変量空間処理装置、 12 前処理部、 14
変換部、 16 マッチングプロセッサ、 20 中
間画像生成部、 24 比較部。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 5B050 AA01 AA06 BA07 BA08 BA09 CA07 EA05 EA18 EA24 EA27 EA28 FA02 FA08 5L096 AA06 BA18 FA09 FA69 GA55 JA13 JA20

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 オブジェクトの多変量データを所定の三
    変量に縮退せしめ、さらにその中で基準となる変量が第
    1の値にあるときに残りの二変量によって形成される二
    次元空間を取得する工程と、 前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変
    量によって形成される二次元空間を取得する工程と、 取得されたふたつの二次元空間をそれぞれ第1画像およ
    び第2画像に見立ててそれらの間でマッチング計算を行
    う工程と、 を含むことを特徴とする多変量空間処理方法。
  2. 【請求項2】 前記マッチング計算は、第1画像につい
    て二次元的な探索を行って検出した特異点と、第2画像
    について二次元的な探索を行って検出した特異点との対
    応をもとに画素単位で行われる請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 第1画像と第2画像を、それぞれ前記特
    異点を抽出することによって多重解像度化する工程と、 同一解像度レベル間において第1画像と第2画像のマッ
    チングを画素単位で計算する工程と、 その結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング計算
    に継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベルにお
    ける画素単位の対応関係を取得する工程と、 をさらに含む請求項2に記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記マッチングの結果をもとに第1画像
    と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する工程をさ
    らに含む請求項1から3のいずれかに記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記中間画像を表示する工程をさらに含
    む請求項6に記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記マッチングから得られた仮の中間画
    像と、前記オブジェクトの多変量データが現実にとった
    値をもとに得られる真の中間画像とを比較する工程をさ
    らに含む請求項4に記載の方法。
  7. 【請求項7】 前記三変量の選択を変更しながら前記仮
    の中間画像と真の中間画像とを比較する請求項6に記載
    の方法。
  8. 【請求項8】 前記基準となる変量の選択を変更しなが
    ら前記仮の中間画像と真の中間画像とを比較する請求項
    6に記載の方法。
  9. 【請求項9】 前記第1の値と第2の値を変更しながら
    前記仮の中間画像と真の中間画像とを比較する請求項6
    に記載の方法。
  10. 【請求項10】 ふたつの前記二次元空間に所定の変換
    を施した後、前記仮の中間画像と真の中間画像とを比較
    する請求項6に記載の方法。
  11. 【請求項11】 オブジェクトの三次元データを所定の
    xy平面に投影して第1画像および第2画像を取得する
    工程と、 取得された第1画像と第2画像の間でマッチング計算を
    行う工程と、 を含むことを特徴とする多変量空間処理方法。
  12. 【請求項12】 前記マッチング計算は、第1画像につ
    いて二次元的な探索を行って検出した特異点と、第2画
    像について二次元的な探索を行って検出した特異点との
    対応をもとに画素単位で行われる請求項11に記載の方
    法。
  13. 【請求項13】 第1画像と第2画像を、それぞれ前記
    特異点を抽出することによって多重解像度化する工程
    と、 同一解像度レベル間において第1画像と第2画像のマッ
    チングを画素単位で計算する工程と、 その結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング計算
    に継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベルにお
    ける画素単位の対応関係を取得する工程と、 をさらに含む請求項12に記載の方法。
  14. 【請求項14】 前記マッチングの結果をもとに第1画
    像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する工程を
    さらに含む請求項11から13のいずれかに記載の方
    法。
  15. 【請求項15】 オブジェクトの多変量データを所定の
    三変量に縮退せしめる前処理部と、 さらにその三変量の中で基準となる変量が第1の値にあ
    るときに残りの二変量によって形成される二次元空間を
    第1画像として取得し、前記基準となる変量が第2の値
    にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空
    間を第2画像として取得する変換部と、 取得された第1画像および第2画像の間でマッチング計
    算を行うマッチングプロセッサと、 を含むことを特徴とする多変量空間処理装置。
  16. 【請求項16】 前記マッチングプロセッサは、第1画
    像について二次元的な探索を行って検出した特異点と、
    第2画像について二次元的な探索を行って検出した特異
    点との対応をもとに画素単位で行われる請求項15に記
    載の装置。
  17. 【請求項17】 前記マッチングプロセッサは、第1画
    像と第2画像を、それぞれ前記特異点を抽出することに
    よって多重解像度化し、同一解像度レベル間において第
    1画像と第2画像のマッチングを画素単位で計算し、そ
    の結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング計算に
    継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベルにおけ
    る画素単位の対応関係を取得する請求項16に記載の装
    置。
  18. 【請求項18】 前記マッチングの結果をもとに第1画
    像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する中間画
    像生成部をさらに含む請求項15から17のいずれかに
    記載の装置。
  19. 【請求項19】 オブジェクトの三次元データを所定の
    xy平面に投影して第1画像および第2画像を取得する
    変換部と、 取得された第1画像と第2画像の間でマッチング計算を
    行うマッチングプロセッサと、 を含むことを特徴とする多変量空間処理装置。
  20. 【請求項20】 前記マッチングプロセッサは、第1画
    像について二次元的な探索を行って検出した特異点と、
    第2画像について二次元的な探索を行って検出した特異
    点との対応をもとに画素単位で行われる請求項19に記
    載の装置。
  21. 【請求項21】 前記マッチングプロセッサは、第1画
    像と第2画像を、それぞれ前記特異点を抽出することに
    よって多重解像度化し、同一解像度レベル間において第
    1画像と第2画像のマッチングを画素単位で計算し、そ
    の結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング計算に
    継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベルにおけ
    る画素単位の対応関係を取得する請求項20に記載の装
    置。
  22. 【請求項22】 前記マッチングの結果をもとに第1画
    像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する中間画
    像生成部をさらに含む請求項19から21のいずれかに
    記載の装置。
  23. 【請求項23】 オブジェクトの多変量データを所定の
    三変量に縮退せしめ、さらにその中で基準となる変量が
    第1の値にあるときに残りの二変量によって形成される
    二次元空間を取得する工程と、 前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変
    量によって形成される二次元空間を取得する工程と、 取得されたふたつの二次元空間をそれぞれ第1画像およ
    び第2画像に見立ててそれらの間でマッチング計算を行
    う工程と、 をコンピュータに実行せしめることを特徴とするプログ
    ラム。
  24. 【請求項24】 オブジェクトの三次元データを所定の
    xy平面に投影して第1画像および第2画像を取得する
    工程と、 取得された第1画像と第2画像の間でマッチング計算を
    行う工程と、 をコンピュータに実行せしめることを特徴とするプログ
    ラム。
  25. 【請求項25】 前記前処理部は、過去に選択されたも
    のを参照して前記三変量を選択する請求項15に記載の
    装置。
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