JP3801870B2 - 多変量空間処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、多変量空間処理技術に関し、とくにオブジェクトの多変量データ予測、補間、表示等する方法と装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
科学的可視化(scientific visualization)は、複雑な現象や大規模なデータを直観的に把握するための技術である。海流、竜巻など、時間変化する複雑な三次元オブジェクトを可視化するために、例えば三次元空間における各点の密度その他の属性をボクセルごとに与えて、その時間変化を逐次計算して表示することにより、大規模なデータの全体的な構造や動きを大まかに把握することができる。可視化は、現象全体の把握のほかに、仮定したモデルによるシミュレーションの有効性を簡便に把握する際にもツールとして利用される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
科学的可視化は、現象やモデルの全体的かつ簡便な把握を目的とする場合が多いにも拘わらず、実際には方程式や関数を立てて各点の時間変化をトレースし、これを表示空間へ変換するという一連のプロセスを経る。したがって、そのための計算負荷は必ずしも小さくはなく、場合により、可視化の手間に研究の速度が規定されることもある。
【0004】
本発明はこうした事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、より小さな負荷で三次元オブジェクトの変化を把握または表示する技術の提供にある。本発明の別の目的は、三次元を超える多変量オブジェクトの構造またはその変化をより簡便な方法で把握または表示するための技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
本発明のある態様は、多変量空間処理方法に関する。以下、変量はパラメータともよび、場合により次元と同義に使う。オブジェクトの変量というとき、オブジェクトの属性を意味することもある。
【0005】
この方法は、オブジェクトの多変量データを所定の三変量(以下x、y、tと表記する)に縮退せしめ、さらにその中で基準となる変量(以下、tと表記する)が第1の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を取得する工程と、前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を取得する工程と、取得されたふたつの二次元空間をそれぞれ第1画像および第2画像に見立ててそれらの間でマッチング計算を行う工程とを含む。
【0006】
「縮退」は単純にある次元を切り捨てるほか、その次元について特定の値を仮定する場合がある。たとえば、三次元空間を二次元空間に縮退させる場合、高さz=const.(定数)とする方法がある。ただし、ここでは縮退はn次元をそれ未満の次元に落とせばよく、三次元空間を単に任意の平面ax+by+cz+d=0に変換してもよい。さらには、三次元空間をax2+by+c=0のような曲面に変換してもよい。いずれにしても、変量の数が減れば縮退という。
【0007】
前記基準となる変量tは、たとえば時間である。したがって、残りの二変量x、yによって、ある時刻t=t0のときの第1画像と、時刻t=t1のときの第2画像が定義できる。これらの間で画像マッチングを計算すれば、t=[t0,t1]における二変量x、yのおよその振る舞いを把握することができる。このとき、二次元画像どうしのマッチングを計算すればよく、そのためのアルゴリズムの選択によって計算負荷を低減することができる。後述の「前提技術」はその条件を満たし、好適な可視化に貢献する。
【0008】
この態様によれば、多変量の複雑なオブジェクトでも、三変量の選択によって非常に単純なモデルへ変換できる。たとえば株価の決定要因はきわめて多数にのぼるが、経験則または総当たりのアルゴリズムによって三変量を仮決定し、第1画像と第2画像を生成し、t=t2におけるそれらの中間画像をマッチングによって生成し、この中間画像(以下これを「仮の中間画像」ともいう)とt=t2における現実の株価(以下、これを「真の中間画像」ともいう)を比較すれば、その三変量の選択の適否がわかる。つまり、仮の中間画像と真の中間画像が近ければ、その三変量が重要度を高いと判断することが許され、このことから逆に、その三変量を用いて別のタイミングにおける株価を解析、または予測することも可能である。このため、三変量の選択を変更したり、基準となる変量の選択を変更したり、基準となる変量の値を変更しながら仮の中間画像と真の中間画像とを比較してもよい。
【0009】
パラメータを3つへ落とし込む間、前述のようにいろいろな方法を採用することにより、株価モデルの簡略化と最適化を同時に実現することができる。これはあたかも、多次元の現象のパラメータをひとつずつ減らしていく際、オブジェクトをいろいろな角度から眺め、いずれの角度において最も特徴的な像が得られるかの検証を行い、オブジェクトをその角度で眺めるための縮退を繰り返しているといってもよい。簡単な例でいえば、三次元オブジェクトをその「影絵」、すなわち平面への射影で表現する場合、影絵からもとのオブジェクトを比較的容易に把握できる角度がある。この角度による射影演算が最適な縮退に当たる。
【0010】
前記マッチング計算は、第1画像について二次元的な探索を行って検出した特異点と、第2画像について二次元的な探索を行って検出した特異点との対応をもとに画素単位で行われてもよい。
【0011】
この方法はさらに、第1画像と第2画像を、それぞれ前記特異点を抽出することによって多重解像度化する工程と、同一解像度レベル間において第1画像と第2画像のマッチングを画素単位で計算する工程と、その結果を異なる解像度レベルにおけるマッチング計算に継承しながら最終的に最も解像度の細かいレベルにおける画素単位の対応関係を取得する工程とをさらに含んでもよい。
【0012】
本発明の別の態様も多変量空間処理方法に関する。この方法は、オブジェクトの三次元データを所定のxy平面に投影して第1画像および第2画像を取得する工程と、取得された第1画像と第2画像の間でマッチング計算を行う工程とを含む。この方法により、例えば竜巻の三次元データを二次元平面に投影した後、ふたつの時刻t=t0、t1における二次元画像を補間してt=[t0,t1]における中間状態を可視化することができる。マッチングさえ完了すれば、補間に必要な計算はさして多くなく、また時刻tを任意に変化させて補間をすることができるので、逐次三次元計算を行う従来の可視化に比べ、計算負荷がかなり小さい。したがって、現象やシミュレーションの結果をなるべく簡便に知りたいとき、この態様は効果的である。
【0013】
本発明のさらに別の態様は、多変量空間処理装置に関する。この装置は、オブジェクトの多変量データを所定の三変量に縮退せしめる前処理部と、さらにその三変量の中で基準となる変量が第1の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第1画像として取得し、前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第2画像として取得する変換部と、取得された第1画像および第2画像の間でマッチング計算を行うマッチングプロセッサとを含む。また、マッチングの結果をもとに第1画像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する中間画像生成部を含んでもよい。
【0014】
本発明のさらに別の態様も多変量空間処理装置に関する。この装置は、オブジェクトの三次元データを所定のxy平面に投影して第1画像および第2画像を取得する変換部と、取得された第1画像と第2画像の間でマッチング計算を行うマッチングプロセッサとを含む。
【0015】
以上の態様において、特異点を用いるマッチング方法は、本出願人が先に特許第2927350号にて提案した技術(以下「前提技術」という)の応用でもよく、前提技術は前記検出する工程に好適である。
【0016】
以上の各構成、工程を任意に入れ替えたり、方法と装置の間で表現を一部または全部入れ替え、または追加したり、表現をコンピュータプログラム、記録媒体等に変更したものもまた、本発明として有効である。
【0017】
【発明の実施の形態】
はじめに、実施の形態で利用する多重解像度特異点フィルタ技術とそれを用いた画像マッチング処理を「前提技術」として詳述する。これらの技術は本出願人がすでに特許第2927350号を得ている技術であり、本発明との組合せに最適である。本発明では、画像上にメッシュを設け、その格子点によって多数の画素を代表されるため、もともと前提技術のような画素単位のマッチング技術に対する適用効果が高いためである。ただし、実施の形態で採用可能な画像マッチング技術はこれに限られない。
【0018】
図18以降、前提技術を利用した画像データ符号化および復号技術を具体的に説明する。
[前提技術の背景]
ふたつの画像の自動的なマッチング、つまり画像領域や画素どうしの対応付けは、コンピュータビジョンやコンピュータグラフィックスにおける最も難しくかつ重要なテーマのひとつである。例えば、あるオブジェクトに関して異なる視点からの画像間でマッチングがとれれば、他の視点からの画像を生成することができる。右目画像と左目画像のマッチングが計算できれば、立体画像を用いた写真測量も可能である。顔の画像のモデルと他の顔の画像のマッチングがとれたとき、目、鼻、口といった特徴的な顔の部分を抽出することができる。例えば人の顔と猫の顔の画像間でマッチングが正確にとられたとき、それらの中割画像を自動的に生成することでモーフィングを完全自動化することができる。
【0019】
しかし従来一般に、ふたつの画像間の対応点は人がいちいち指定しなければならず、多大な作業工数を要した。この問題を解消するために数多くの対応点自動検出方法が提案されている。例えば、エピポーラ直線を用いることによって対応点の候補の数を減らす考えがある。しかし、その場合でも処理はきわめて複雑である。複雑さを低減するために、左目画像の各点の座標は通常右目画像でもほぼ同じ位置にあると想定される。しかし、こうした制約を設けると、大域的特徴及び局所的特徴を同時に満たすマッチングをとることは非常に困難になる。
【0020】
ボリュームレンダリングでは、ボクセルを構成するために一連の断面画像が用いられる。この場合、従来一般に、上方の断面画像における画素が下方の断面画像の同一箇所にある画素と対応すると仮定され、これらの画素のペアが内挿計算に用いられる。このようにきわめて単純な方法を用いるため、連続する断面間の距離が遠く、オブジェクトの断面形状が大きく変化する場合、ボリュームレンダリングで構築されたオブジェクトは不明瞭になりがちである。
【0021】
立体写真測量法など、エッジの検出を利用するマッチングアルゴリズムも多い。しかしこの場合、結果的に得られる対応点の数が少ないため、マッチングのとれた対応点間のギャップを埋めるべく、ディスパリティの値を内挿計算しなければならない。一般にあらゆるエッジ検出器は、それらが用いる局所的なウィンドウの中で画素の輝度が変化したとき、これが本当にエッジの存在を示唆するかどうかを判断することが難しい。エッジ検出器は、本来的にすべてハイパスフィルタであり、エッジと同時にノイズも拾ってしまう。
【0022】
さらに別の手法として、オプティカルフローが知られている。二枚の画像が与えられたとき、オプティカルフローでは画像内のオブジェクト(剛体)の動きを検出する。その際、オブジェクトの各画素の輝度は変化しないと仮定する。オプティカルフローでは例えば(u,v)のベクトル場の滑らかさといった、いくつかの付加的な条件とともに、各画素の動きベクトル(u,v)を計算する。しかし、オプティカルフローでは画像間の大域的な対応関係を検出することはできない。画素の輝度の局所的な変化に注目するのみであり、画像の変位が大きい場合、システムの誤差は顕著になる。
【0023】
画像の大域的な構造を認識するために、多重解像度フィルタも数多く提案されてきた。それらは線形フィルタと非線形フィルタに分類される。前者の例としてウェーブレットがあるが、線形フィルタは一般に、画像マッチングにはさして有用ではない。なぜなら、極値をとる画素の輝度に関する情報がそれらの位置情報とともに次第に不鮮明になるためである。図1(a)と図1(b)は顔の画像に対して平均化フィルタを適用した結果を示している。同図のごとく、極値をとる画素の輝度が平均化によって次第に薄れるとともに、位置も平均化の影響でシフトしていく。その結果、目(輝度の極小点)の輝度や位置の情報は、このような粗い解像度レベルで曖昧になり、この解像度では正しいマッチングを計算することができない。したがって、粗い解像度レベルを設けるのが大域的なマッチングのためでありながら、ここで得られたマッチングは画像の本当の特徴(目、つまり極小点)に正確に対応しない。より精細な解像度レベルで目が鮮明に現れたとしても、大域的なマッチングをとる際に混入した誤差は、もはや取り返しがつかない。入力画像にスムージング処理を加えることにより、テクスチャ領域のステレオ情報が落ちてしまうこともすでに指摘されている。
【0024】
一方、最近地形学の分野で利用されはじめた非線形フィルタとして一次元の「ふるい(sieve)」演算子がある。この演算子は、所定の大きさの一次元ウィンドウ内の極小値(または極大値)を選択することにより、縮尺と空間の因果関係を保存しながら画像にスムージング処理を加える。その結果得られる画像は元の画像と同じ大きさであるが、小さな波の成分が取り除かれているため、より単純になる。画像の情報を落とすという点で、この演算子は広い意味での「多重解像度フィルタ」に分類することはできるが、実際にはウェーブレットのように画像の解像度を変えながら画像を階層化するわけではなく(つまり狭い意味での多重解像度フィルタではなく)、画像間の対応の検出には利用できない。
【0025】
[前提技術が解決しようとする課題]
以上をまとめれば以下の課題が認められる。
1.画像の特徴を正確に、かつ比較的簡単な処理で把握する画像処理方法が乏しかった。特に、特徴のある点に関する情報、例えば画素値や位置を維持しながら特徴を抽出できる画像処理方法に関する有効な提案が少なかった。
2.画像の特徴をもとに対応点を自動検出する場合、一般に処理が複雑であるか、ノイズ耐性が低いなどの欠点があった。また、処理に際していろいろな制約を設ける必要があり、大域的特徴及び局所的特徴を同時に満たすマッチングをとることが困難だった。
3.画像の大域的な構造または特徴を認識するために多重解像度フィルタを導入しても、そのフィルタが線形フィルタの場合、画素の輝度情報と位置情報が曖昧になった。その結果、対応点の把握が不正確になりやすかった。非線形フィルタである一次元ふるい演算子は画像を階層化しないため、画像間の対応点の検出には利用できなかった。
4.これらの結果、対応点を正しく把握しようとすれば、結局人手による指定に頼るほか有効な手だてがなかった。
【0026】
前提技術はこれらの課題の解決を目的としてなされたものであり、画像処理の分野において、画像の特徴の的確な把握を可能にする技術を提供するものである。
【0027】
[前提技術が課題を解決するための手段]
この目的のために前提技術のある態様は、新たな多重解像度の画像フィルタを提案する。この多重解像度フィルタは画像から特異点を抽出する。したがって、特異点フィルタともよばれる。特異点とは画像上特徴をもつ点をいう。例として、ある領域において画素値(画素値とは、色番号、輝度値など画像または画素に関する任意の数値を指す)が最大になる極大点、最小になる極小点、ある方向については最大だが別の方向については最小になるような鞍点がある。特異点は位相幾何学上の概念であってもよい。ただし、その他どのような特徴を有してもよい。いかなる性質の点を特異点と考えるかは、前提技術にとって本質問題ではない。
【0028】
この態様では、多重解像度フィルタを用いた画像処理が行われる。まず検出工程において、第一の画像に対し、二次元的な探索を行って特異点が検出される。つぎに生成工程において、検出された特異点を抽出して第一の画像よりも解像度の低い第二の画像が生成される。第二の画像には第一の画像のもつ特異点が引き継がれる。第二の画像は第一の画像よりも解像度が低いため、画像の大域的な特徴の把握に好適である。
【0029】
前提技術の別の態様は特異点フィルタを用いた画像マッチング方法に関する。この態様では、始点画像と終点画像間のマッチングがとられる。始点画像および終点画像とは、ふたつの画像の区別のために便宜的に与えた名称であり、本質的な違いはない。
【0030】
この態様では、第一工程にて、始点画像に特異点フィルタを施して解像度の異なる一連の始点階層画像が生成される。第二工程では、終点画像に特異点フィルタを施して解像度の異なる一連の終点階層画像が生成される。始点階層画像、終点階層画像とは、それぞれ始点画像、終点画像を階層化して得られる画像群をいい、それぞれ最低2枚の画像からなる。つぎに第三工程において、始点階層画像と終点階層画像のマッチングが解像度レベルの階層の中で計算される。この態様によれば、多重解像度フィルタによって特異点に関連する画像の特徴が抽出され、および/または明確化されるため、マッチングが容易になる。マッチングのための拘束条件は特に必要としない。
前提技術のさらに別の態様も始点画像と終点画像のマッチングに関する。この態様では、予め複数のマッチング評価項目のそれぞれに関して評価式を設け、それらの評価式を統合して総合評価式を定義し、その総合評価式の極値付近に注目して最適マッチングを探索する。総合評価式は、評価式の少なくもひとつに係数パラメータを掛けたうえでそれらの評価式の総和として定義してもよく、その場合、総合評価式またはいずれかの評価式がほぼ極値をとる状態を検出して前記パラメータを決定してもよい。「極値付近」または「ほぼ極値をとる」としたのは、多少誤差を含んでいてもよいためである。多少の誤差は前提技術にはさして問題とならない。
極値自体も前記パラメータに依存するため、極値の挙動、つまり極値の変化の様子をもとに、最適と考えられるパラメータを決定する余地が生じる。この態様はその事実を利用している。この態様によれば、元来調整の困難なパラメータの決定を自動化する途が拓かれる。
【0031】
[前提技術の実施の形態]
最初に[1]で前提技術の要素技術の詳述し、[2]で処理手順を具体的に説明する。さらに[3]で実験の結果を報告する。
[1]要素技術の詳細
[1.1]イントロダクション
特異点フィルタと呼ばれる新たな多重解像度フィルタを導入し、画像間のマッチングを正確に計算する。オブジェクトに関する予備知識は一切不要である。画像間のマッチングの計算は、解像度の階層を進む間、各解像度において計算される。その際、粗いレベルから精細なレベルへと順に解像度の階層を辿っていく。計算に必要なパラメータは、人間の視覚システムに似た動的計算によって完全に自動設定される。画像間の対応点を人手で特定する必要はない。
【0032】
本前提技術は、例えば完全に自動的なモーフィング、物体認識、立体写真測量、ボリュームレンダリング、少ないフレームからの滑らかな動画像の生成などに応用できる。モーフィングに用いる場合、与えられた画像を自動的に変形することができる。ボリュームレンダリングに用いる場合、断面間の中間的な画像を正確に再構築することができる。断面間の距離が遠く、断面の形状が大きく変化する場合でも同様である。
【0033】
[1.2]特異点フィルタの階層
前提技術に係る多重解像度特異点フィルタは、画像の解像度を落としながら、しかも画像に含まれる各特異点の輝度及び位置を保存することができる。ここで画像の幅をN、高さをMとする。以下簡単のため、N=M=2n(nは自然数)と仮定する。また、区間[0,N]⊂RをIと記述する。(i,j)における画像の画素をp(i,j)と記述する(i,j∈I)。
【0034】
ここで多重解像度の階層を導入する。階層化された画像群は多重解像度フィルタで生成される。多重解像度フィルタは、もとの画像に対して二次元的な探索を行って特異点を検出し、検出された特異点を抽出してもとの画像よりも解像度の低い別の画像を生成する。ここで第mレベルにおける各画像のサイズは2m×2m(0≦m≦n)とする。特異点フィルタは次の4種類の新たな階層画像をnから下がる方向で再帰的に構築する。
【数1】
ただしここで、
【数2】
とする。以降これら4つの画像を副画像(サブイメージ)と呼ぶ。minx≦t≦x+1、maxx≦t≦x+1をそれぞれα及びβと記述すると、副画像はそれぞれ以下のように記述できる。
【0035】
P(m,0)=α(x)α(y)p(m+1,0)
P(m,1)=α(x)β(y)p(m+1,1)
P(m,2)=β(x)α(y)p(m+1,2)
P(m,3)=β(x)β(y)p(m+1,3)
すなわち、これらはαとβのテンソル積のようなものと考えられる。副画像はそれぞれ特異点に対応している。これらの式から明らかなように、特異点フィルタはもとの画像について2×2画素で構成されるブロックごとに特異点を検出する。その際、各ブロックのふたつの方向、つまり縦と横について、最大画素値または最小画素値をもつ点を探索する。画素値として、前提技術では輝度を採用するが、画像に関するいろいろな数値を採用することができる。ふたつの方向の両方について最大画素値となる画素は極大点、ふたつの方向の両方について最小画素値となる画素は極小点、ふたつの方向の一方について最大画素値となるとともに、他方について最小画素値となる画素は鞍点として検出される。
【0036】
特異点フィルタは、各ブロックの内部で検出された特異点の画像(ここでは1画素)でそのブロックの画像(ここでは4画素)を代表させることにより、画像の解像度を落とす。特異点の理論的な観点からすれば、α(x)α(y)は極小点を保存し、β(x)β(y)は極大点を保存し、α(x)β(y)及びβ(x)α(y)は鞍点を保存する。
【0037】
はじめに、マッチングをとるべき始点(ソース)画像と終点(デスティネーション)画像に対して別々に特異点フィルタ処理を施し、それぞれ一連の画像群、すなわち始点階層画像と終点階層画像を生成しておく。始点階層画像と終点階層画像は、特異点の種類に対応してそれぞれ4種類ずつ生成される。
【0038】
この後、一連の解像度レベルの中で始点階層画像と終点階層画像のマッチングがとれらていく。まずp(m,0)を用いて極小点のマッチングがとられる。次に、その結果に基づき、p(m,1)を用いて鞍点のマッチングがとられ、p(m,2)を用いて他の鞍点のマッチングがとられる。そして最後にp(m,3)を用いて極大点のマッチングがとられる。
【0039】
図1(c)と図1(d)はそれぞれ図1(a)と図1(b)の副画像p(5,0)を示している。同様に、図1(e)と図1(f)はp(5,1)、図1(g)と図1(h)はp(5,2)、図1(i)と図1(j)はp(5,3)をそれぞれ示している。これらの図からわかるとおり、副画像によれば画像の特徴部分のマッチングが容易になる。まずp(5,0)によって目が明確になる。目は顔の中で輝度の極小点だからである。p(5,1)によれば口が明確になる。口は横方向で輝度が低いためである。p(5,2)によれば首の両側の縦線が明確になる。最後に、p(5,3)によって耳や頬の最も明るい点が明確になる。これらは輝度の極大点だからである。
【0040】
特異点フィルタによれば画像の特徴が抽出できるため、例えばカメラで撮影された画像の特徴と、予め記録しておいたいくつかのオブジェクトの特徴を比較することにより、カメラに映った被写体を識別することができる。
【0041】
[1.3]画像間の写像の計算
始点画像の位置(i,j)の画素をp(n) (i,j)と書き、同じく終点画像の位置(k,l)の画素をq(n) (k,l)で記述する。i,j,k,l∈Iとする。画像間の写像のエネルギー(後述)を定義する。このエネルギーは、始点画像の画素の輝度と終点画像の対応する画素の輝度の差、及び写像の滑らかさによって決まる。最初に最小のエネルギーを持つp(m,0)とq(m,0)間の写像f(m,0):p(m,0)→q(m,0)が計算される。f(m,0)に基づき、最小エネルギーを持つp(m,1)、q(m,1)間の写像f(m,1)が計算される。この手続は、p(m,3)とq(m,3)の間の写像f(m,3)の計算が終了するまで続く。各写像f(m,i)(i=0,1,2,…)を副写像と呼ぶことにする。f(m,i)の計算の都合のために、iの順序は次式のように並べ替えることができる。並べ替えが必要な理由は後述する。
【0042】
【数3】
ここでσ(i)∈{0,1,2,3}である。
【0043】
[1.3.1]全単射
始点画像と終点画像の間のマッチングを写像で表現する場合、その写像は両画像間で全単射条件を満たすべきである。両画像に概念上の優劣はなく、互いの画素が全射かつ単射で接続されるべきだからである。しかしながら通常の場合とは異なり、ここで構築すべき写像は全単射のディジタル版である。前提技術では、画素は格子点によって特定される。
【0044】
始点副画像(始点画像について設けられた副画像)から終点副画像(終点画像について設けられた副画像)への写像は、f(m,s):I/2n−m×I/2n−m→I/2n−m×I/2n−m(s=0,1,…)によって表される。ここで、f(m,s)(i,j)=(k,l)は、始点画像のp(m,s) (i,j)が終点画像のq(m,s) (k,l)に写像されることを意味する。簡単のために、f(i,j)=(k,l)が成り立つとき画素q(k,l)をqf(i,j)と記述する。
【0045】
前提技術で扱う画素(格子点)のようにデータが離散的な場合、全単射の定義は重要である。ここでは以下のように定義する(i,i’,j,j’,k,lは全て整数とする)。まず始めに、始点画像の平面においてRによって表記される各正方形領域、
【数4】
を考える(i=0,…,2m−1、j=0,…,2m−1)。ここでRの各辺(エッジ)の方向を以下のように定める。
【数5】
この正方形は写像fによって終点画像平面における四辺形に写像されなければならない。f(m,s)(R)によって示される四辺形、
【数6】
は、以下の全単射条件を満たす必要がある。
【0046】
1.四辺形f(m,s)(R)のエッジは互いに交差しない。
2.f(m,s)(R)のエッジの方向はRのそれらに等しい(図2の場合、時計回り)。
3.緩和条件として収縮写像(リトラクション:retractions)を許す。
【0047】
何らかの緩和条件を設けないかぎり、全単射条件を完全に満たす写像は単位写像しかないためである。ここではf(m,s)(R)のひとつのエッジの長さが0、すなわちf(m,s)(R)は三角形になってもよい。しかし、面積が0となるような図形、すなわち1点または1本の線分になってはならない。図2(R)がもとの四辺形の場合、図2(A)と図2(D)は全単射条件を満たすが、図2(B)、図2(C)、図2(E)は満たさない。
【0048】
実際のインプリメンテーションでは、写像が全射であることを容易に保証すべく、さらに以下の条件を課してもよい。つまり始点画像の境界上の各画素は、終点画像において同じ位置を占める画素に写影されるというものである。すなわち、f(i,j)=(i,j)(ただしi=0,i=2m−1,j=0,j=2m−1の4本の線上)である。この条件を以下「付加条件」とも呼ぶ。
【0049】
[1.3.2]写像のエネルギー
[1.3.2.1]画素の輝度に関するコスト
写像fのエネルギーを定義する。エネルギーが最小になる写像を探すことが目的である。エネルギーは主に、始点画像の画素の輝度とそれに対応する終点画像の画素の輝度の差で決まる。すなわち、写像f(m,s)の点(i,j)におけるエネルギーC(m,s) (i,j)は次式によって定まる。
【数7】
ここで、V(p(m,s) (i,j))及びV(q(m,s) f(i,j))はそれぞれ画素p(m,s) (i,j)及びq(m,s) f(i,j)の輝度である。fのトータルのエネルギーC(m,s)は、マッチングを評価するひとつの評価式であり、つぎに示すC(m,s) (i,j)の合計で定義できる。
【数8】
[1.3.2.2]滑らかな写像のための画素の位置に関するコスト
滑らかな写像を得るために、写像に関する別のエネルギーDfを導入する。このエネルギーは画素の輝度とは関係なく、p(m,s) (i,j)およびq(m,s) f(i,j)の位置によって決まる(i=0,…,2m−1,j=0,…,2m−1)。点(i,j)における写像f(m,s)のエネルギーD(m,s) (i,j)は次式で定義される。
【数9】
ただし、係数パラメータηは0以上の実数であり、また、
【数10】
【数11】
とする。ここで、
【数12】
であり、i’<0およびj’<0に対してf(i’,j’)は0と決める。E0は(i,j)及びf(i,j)の距離で決まる。E0は画素があまりにも離れた画素へ写影されることを防ぐ。ただしE0は、後に別のエネルギー関数で置き換える。E1は写像の滑らかさを保証する。E1は、p(i,j)の変位とその隣接点の変位の間の隔たりを表す。以上の考察をもとに、マッチングを評価する別の評価式であるエネルギーDfは次式で定まる。
【数13】
[1.3.2.3]写像の総エネルギー
写像の総エネルギー、すなわち複数の評価式の統合に係る総合評価式はλC(m,s) f+D(m,s) fで定義される。ここで係数パラメータλは0以上の実数である。目的は総合評価式が極値をとる状態を検出すること、すなわち次式で示す最小エネルギーを与える写像を見いだすことである。
【数14】
λ=0及びη=0の場合、写像は単位写像になることに注意すべきである(すなわち、全てのi=0,…,2m−1及びj=0,…,2m−1に対してf(m,s)(i,j)=(i,j)となる)。後述のごとく、本前提技術では最初にλ=0及びη=0の場合を評価するため、写像を単位写像から徐々に変形していくことができる。仮に総合評価式のλの位置を変えてC(m,s) f+λD(m,s) fと定義したとすれば、λ=0及びη=0の場合に総合評価式がC(m,s) fだけになり、本来何等関連のない画素どうしが単に輝度が近いというだけで対応づけられ、写像が無意味なものになる。そうした無意味な写像をもとに写像を変形していってもまったく意味をなさない。このため、単位写像が評価の開始時点で最良の写像として選択されるよう係数パラメータの与えかたが配慮されている。
【0050】
オプティカルフローもこの前提技術同様、画素の輝度の差と滑らかさを考慮する。しかし、オプティカルフローは画像の変換に用いることはできない。オブジェクトの局所的な動きしか考慮しないためである。前提技術に係る特異点フィルタを用いることによって大域的な対応関係を検出することができる。
【0051】
[1.3.3]多重解像度の導入による写像の決定
最小エネルギーを与え、全単射条件を満足する写像fminを多重解像度の階層を用いて求める。各解像度レベルにおいて始点副画像及び終点副画像間の写像を計算する。解像度の階層の最上位(最も粗いレベル)からスタートし、各解像度レベルの写像を、他のレベルの写像を考慮に入れながら決定する。各レベルにおける写像の候補の数は、より高い、つまりより粗いレベルの写像を用いることによって制限される。より具体的には、あるレベルにおける写像の決定に際し、それよりひとつ粗いレベルにおいて求められた写像が一種の拘束条件として課される。
【0052】
まず、
【数15】
が成り立つとき、p(m−1,s) (i’,j’)、q(m−1,s) (i’,j’)をそれぞれp(m,s) (i,j)、q(m,s) (i,j)のparentと呼ぶことにする。[x]はxを越えない最大整数である。またp(m,s) (i,j)、q(m,s) (i,j)をそれぞれp(m−1,s) (i’,j’)、q(m−1,s) (i’,j’)のchildと呼ぶ。関数parent(i,j)は次式で定義される。
【数16】
p(m,s) (i,j)とq(m,s) (k,l)の間の写像f(m,s)は、エネルギー計算を行って最小になったものを見つけることで決定される。f(m,s)(i,j)=(k,l)の値はf(m−1,s)(m=1,2,…,n)を用いることによって、以下のように決定される。まず、q(m,s) (k,l)は次の四辺形の内部になければならないという条件を課し、全単射条件を満たす写像のうち現実性の高いものを絞り込む。
【数17】
ただしここで、
【数18】
である。こうして定めた四辺形を、以下p(m,s) (i,j)の相続(inherited)四辺形と呼ぶことにする。相続四辺形の内部において、エネルギーを最小にする画素を求める。
【0053】
図3は以上の手順を示している。同図において、始点画像のA,B,C,Dの画素は、第m−1レベルにおいてそれぞれ終点画像のA’,B’,C’,D’へ写影される。画素p(m,s) (i,j)は、相続四辺形A’B’C’D’の内部に存在する画素q(m,s) f(m)(i,j)へ写影されなければならない。以上の配慮により、第m−1レベルの写像から第mレベルの写像への橋渡しがなされる。
【0054】
先に定義したエネルギーE0は、第mレベルにおける副写像f(m,0)を計算するために、次式に置き換える。
【数19】
また、副写像f(m,s)を計算するためには次式を用いる。
【数20】
こうしてすべての副写像のエネルギーを低い値に保つ写像が得られる。式20により、異なる特異点に対応する副写像が、副写像どうしの類似度が高くなるように同一レベル内で関連づけられる。式19は、f(m,s)(i,j)と、第m−1レベルの画素の一部と考えた場合の(i,j)が射影されるべき点の位置との距離を示している。
【0055】
仮に、相続四辺形A’B’C’D’の内部に全単射条件を満たす画素が存在しない場合は以下の措置をとる。まず、A’B’C’D’の境界線からの距離がL(始めはL=1)である画素を調べる。それらのうち、エネルギーが最小になるものが全単射条件を満たせば、これをf(m,s)(i,j)の値として選択する。そのような点が発見されるか、またはLがその上限のL(m)maxに到達するまで、Lを大きくしていく。L(m)maxは各レベルmに対して固定である。そのような点が全く発見されない場合、全単射の第3の条件を一時的に無視して変換先の四辺形の面積がゼロになるような写像も認め、f(m,s)(i,j)を決定する。それでも条件を満たす点が見つからない場合、つぎに全単射の第1及び第2条件を外す。
【0056】
多重解像度を用いる近似法は、写像が画像の細部に影響されることを回避しつつ、画像間の大域的な対応関係を決定するために必須である。多重解像度による近似法を用いなければ、距離の遠い画素間の対応関係を見いだすことは不可能である。その場合、画像のサイズはきわめて小さなものに限定しなければならず、変化の小さな画像しか扱うことができない。さらに、通常写像に滑らかさを要求するため、そうした画素間の対応関係を見つけにくくしている。距離のある画素から画素への写像のエネルギーは高いためである。多重解像度を用いた近似法によれば、そうした画素間の適切な対応関係を見いだすことができる。それらの距離は、解像度の階層の上位レベル(粗いレベル)において小さいためである。
【0057】
[1.4]最適なパレメータ値の自動決定
既存のマッチング技術の主な欠点のひとつに、パレメータ調整の困難さがある。大抵の場合、パラメータの調整は人手作業によって行われ、最適な値を選択することはきわめて難しい。前提技術に係る方法によれば、最適なパラメータ値を完全に自動決定することができる。
【0058】
前提技術に係るシステムはふたつのパレメータ、λ及びηを含む。端的にいえば、λは画素の輝度の差の重みであり、ηは写像の剛性を示している。これらのパラメータの値は初期値が0であり、まずη=0に固定してλを0から徐々に増加させる。λの値を大きくしながら、しかも総合評価式(式14)の値を最小にする場合、各副写像に関するC(m,s) fの値は一般に小さくなっていく。このことは基本的にふたつの画像がよりマッチしなければならないことを意味する。しかし、λが最適値を超えると以下の現象が発生する。
【0059】
1.本来対応すべきではない画素どうしが、単に輝度が近いというだけで誤って対応づけられる。
2.その結果、画素どうしの対応関係がおかしくなり、写像がくずれはじめる。
【0060】
3.その結果、式14においてD(m,s) fが急激に増加しようとする。
4.その結果、式14の値が急激に増加しようとするため、D(m,s) fの急激な増加を抑制するようf(m,s)が変化し、その結果C(m,s) fが増加する。
したがって、λを増加させながら式14が最小値をとるという状態を維持しつつC(m,s) fが減少から増加に転じる閾値を検出し、そのλをη=0における最適値とする。つぎにηを少しづつ増やしてC(m,s) fの挙動を検査し、後述の方法でηを自動決定する。そのηに対応してλも決まる。
【0061】
この方法は、人間の視覚システムの焦点機構の動作に似ている。人間の視覚システムでは、一方の目を動かしながら左右両目の画像のマッチングがとられる。オブジェクトがはっきりと認識できるとき、その目が固定される。
【0062】
[1.4.1]λの動的決定
λは0から所定の刻み幅で増加されていき、λの値が変わる度に副写像が評価される。式14のごとく、総エネルギーはλC(m,s) f+D(m,s) fによって定義される。式9のD(m,s) fは滑らかさを表すもので、理論的には単位写像の場合に最小になり、写像が歪むほどE0もE1も増加していく。E1は整数であるから、D(m,s) fの最小刻み幅は1である。このため、現在のλC(m,s) (i,j)の変化(減少量)が1以上でなければ、写像を変化させることによって総エネルギーを減らすことはできない。なぜなら、写像の変化に伴ってD(m,s) fは1以上増加するため、λC(m,s) (i,j)が1以上減少しない限り総エネルギーは減らないためである。
【0063】
この条件のもと、λの増加に伴い、正常な場合にC(m,s) (i,j)が減少することを示す。C(m,s) (i,j)のヒストグラムをh(l)と記述する。h(l)はエネルギーC(m,s) (i,j)がl2である画素の数である。λl2≧1が成り立つために、例えばl2=1/λの場合を考える。λがλ1からλ2まで微小量変化するとき、
【数21】
で示されるA個の画素が、
【数22】
のエネルギーを持つより安定的な状態に変化する。ここでは仮に、これらの画素のエネルギーがすべてゼロになると近似している。この式はC(m,s) fの値が、
【数23】
だけ変化することを示し、その結果、
【数24】
が成立する。h(l)>0であるから、通常C(m,s) fは減少する。しかし、λが最適値を越えようとするとき、上述の現象、つまりC(m,s) fの増加が発生する。この現象を検出することにより、λの最適値を決定する。
【0064】
なお、H(h>0)及びkを定数とするとき、
【数25】
と仮定すれば、
【数26】
が成り立つ。このときk≠−3であれば、
【数27】
となる。これがC(m,s) fの一般式である(Cは定数)。
【0065】
λの最適値を検出する際、さらに安全を見て、全単射条件を破る画素の数を検査してもよい。ここで各画素の写像を決定する際、全単射条件を破る確率をp0と仮定する。この場合、
【数28】
が成立しているため、全単射条件を破る画素の数は次式の率で増加する。
【数29】
従って、
【数30】
は定数である。仮にh(l)=Hlkを仮定するとき、例えば、
【数31】
は定数になる。しかしλが最適値を越えると、上の値は急速に増加する。この現象を検出し、B0λ3/2+k/2/2mの値が異常値B0thresを越えるかどうかを検査し、λの最適値を決定することができる。同様に、B1λ3/2+k/2/2mの値が異常値B1thresを越えるかどうかを検査することにより、全単射の第3の条件を破る画素の増加率B1を確認する。ファクター2mを導入する理由は後述する。このシステムはこれら2つの閾値に敏感ではない。これらの閾値は、エネルギーC(m,s) fの観察では検出し損なった写像の過度の歪みを検出するために用いることができる。
【0066】
なお実験では、副写像f(m,s)を計算する際、もしλが0.1を越えたらf(m,s)の計算は止めてf(m,s+1)の計算に移行した。λ>0.1のとき、画素の輝度255レベル中のわずか「3」の違いが副写像の計算に影響したためであり、λ>0.1のとき正しい結果を得ることは困難だったためである。
【0067】
[1.4.2]ヒストグラムh(l)
C(m,s) fの検査はヒストグラムh(l)に依存しない。全単射及びその第3の条件の検査の際、h(l)に影響を受けうる。実際に(λ,C(m,s) f)をプロットすると、kは通常1付近にある。実験ではk=1を用い、B0λ2とB1λ2を検査した。仮にkの本当の値が1未満であれば、B0λ2とB1λ2は定数にならず、ファクターλ(1−k)/2に従って徐々に増加する。h(l)が定数であれば、例えばファクターはλ1/2である。しかし、こうした差は閾値B0thresを正しく設定することによって吸収することができる。
【0068】
ここで次式のごとく始点画像を中心が(x0,y0)、半径rの円形のオブジェクトであると仮定する。
【数32】
一方、終点画像は、次式のごとく中心(x1,y1)、半径がrのオブジェクトであるとする。
【数33】
ここでc(x)はc(x)=xkの形であるとする。中心(x0,y0)及び(x1,y1)が十分遠い場合、ヒストグラムh(l)は次式の形となる。
【数34】
k=1のとき、画像は背景に埋め込まれた鮮明な境界線を持つオブジェクトを示す。このオブジェクトは中心が暗く、周囲にいくに従って明るくなる。k=−1のとき、画像は曖昧な境界線を持つオブジェクトを表す。このオブジェクトは中心が最も明るく、周囲にいくに従って暗くなる。一般のオブジェクトはこれらふたつのタイプのオブジェクトの中間にあると考えてもさして一般性を失わない。したがって、kは−1≦k≦1として大抵の場合をカバーでき、式27が一般に減少関数であることが保障される。
【0069】
なお、式34からわかるように、rは画像の解像度に影響されること、すなわちrは2mに比例することに注意すべきである。このために[1.4.1]においてファクター2mを導入した。
【0070】
[1.4.3]ηの動的決定
パラメータηも同様の方法で自動決定できる。はじめにη=0とし、最も細かい解像度における最終的な写像f(n)及びエネルギーC(n) fを計算する。つづいて、ηをある値Δηだけ増加させ、再び最も細かい解像度における最終写像f(n)及びエネルギーC(n) fを計算し直す。この過程を最適値が求まるまで続ける。ηは写像の剛性を示す。次式の重みだからである。
【数35】
ηが0のとき、D(n) fは直前の副写像と無関係に決定され、現在の副写像は弾性的に変形され、過度に歪むことになる。一方、ηが非常に大きな値のとき、D(n) fは直前の副写像によってほぼ完全に決まる。このとき副写像は非常に剛性が高く、画素は同じ場所に射影される。その結果、写像は単位写像になる。ηの値が0から次第に増えるとき、後述のごとくC(n) fは徐々に減少する。しかしηの値が最適値を越えると、図4に示すとおり、エネルギーは増加し始める。同図のX軸はη、Y軸はCfである。
【0071】
この方法でC(n) fを最小にする最適なηの値を得ることができる。しかし、λの場合に比べていろいろな要素が計算に影響する結果、C(n) fは小さく揺らぎながら変化する。λの場合は、入力が微小量変化するたびに副写像を1回計算しなおすだけだが、ηの場合はすべての副写像が計算しなおされるためである。このため、得られたC(n) fの値が最小であるかどうかを即座に判断することはできない。最小値の候補が見つかれば、さらに細かい区間を設定することによって真の最小値を探す必要がある。
【0072】
[1.5]スーパーサンプリング
画素間の対応関係を決定する際、自由度を増やすために、f(m,s)の値域をR×Rに拡張することができる(Rは実数の集合)。この場合、終点画像の画素の輝度が補間され、非整数点、
【数36】
における輝度を持つf(m,s)が提供される。つまりスーパーサンプリングが行われる。実験では、f(m,s)は整数及び半整数値をとることが許され、
【数37】
は、
【数38】
によって与えられた。
【0073】
[1.6]各画像の画素の輝度の正規化
始点画像と終点画像がきわめて異なるオブジェクトを含んでいるとき、写像の計算に元の画素の輝度がそのままでは利用しにくい。輝度の差が大きいために輝度に関するエネルギーC(m,s) fが大きくなりすぎ、正しい評価がしずらいためである。
【0074】
例えば、人の顔と猫の顔のマッチングをとる場合を考える。猫の顔は毛で覆われており、非常に明るい画素と非常に暗い画素が混じっている。この場合、ふたつの顔の間の副写像を計算するために、まず副画像を正規化する。すなわち、最も暗い画素の輝度を0、最も明るいそれを255に設定し、他の画素の輝度は線形補間によって求めておく。
【0075】
[1.7]インプリメンテーション
始点画像のスキャンに従って計算がリニアに進行する帰納的な方法を用いる。始めに、1番上の左端の画素(i,j)=(0,0)についてf(m,s)の値を決定する。次にiを1ずつ増やしながら各f(m,s)(i,j)の値を決定する。iの値が画像の幅に到達したとき、jの値を1増やし、iを0に戻す。以降、始点画像のスキャンに伴いf(m,s)(i,j)を決定していく。すべての点について画素の対応が決まれば、ひとつの写像f(m,s)が決まる。
あるp(i,j)について対応点qf(i,j)が決まれば、つぎにp(i,j+1)の対応点qf(i,j+1)が決められる。この際、qf(i,j+1)の位置は全単射条件を満たすために、qf(i,j)の位置によって制限される。したがって、先に対応点が決まる点ほどこのシステムでは優先度が高くなる。つねに(0,0)が最も優先される状態がつづくと、求められる最終の写像に余計な偏向が加わる。本前提技術ではこの状態を回避するために、f(m,s)を以下の方法で決めていく。
【0076】
まず(s mod 4)が0の場合、(0,0)を開始点としi及びjを徐々に増やしながら決めていく。(s mod 4)が1の場合、最上行の右端点を開始点とし、iを減少、jを増加させながら決めていく。(s mod 4)が2のとき、最下行の右端点を開始点とし、i及びjを減少させながら決めていく。(smod 4)が3の場合、最下行の左端点を開始点とし、iを増加、jを減少させながら決めていく。解像度が最も細かい第nレベルには副写像という概念、すなわちパラメータsが存在しないため、仮にs=0及びs=2であるとしてふたつの方向を連続的に計算した。
【0077】
実際のインプリメンテーションでは、全単射条件を破る候補に対してペナルティを与えることにより、候補(k,l)の中からできる限り全単射条件を満たすf(m,s)(i,j)(m=0,…,n)の値を選んだ。第3の条件を破る候補のエネルギーD(k、l)にはφを掛け、一方、第1または第2の条件を破る候補にはψを掛ける。今回はφ=2、ψ=100000を用いた。
【0078】
前述の全単射条件のチェックのために、実際の手続として(k,l)=f(m,s)(i,j)を決定する際に以下のテストを行った。すなわちf(m,s)(i,j)の相続四辺形に含まれる各格子点(k,l)に対し、次式の外積のz成分が0以上になるかどうかを確かめる。
【数39】
ただしここで、
【数40】
【数41】
である(ここでベクトルは三次元ベクトルとし、z軸は直交右手座標系において定義される)。もしWが負であれば、その候補についてはD(m,s) (k,l)にψを掛けることによってペナルティを与え、できるかぎり選択しないようにする。
【0079】
図5(a)、図5(b)はこの条件を検査する理由を示している。図5(a)はペナルティのない候補、図5(b)はペナルティがある候補をそれぞれ表す。隣接画素(i,j+1)に対する写像f(m,s)(i,j+1)を決定する際、Wのz成分が負であれば始点画像平面上において全単射条件を満足する画素は存在しない。なぜなら、q(m,s) (k,l)は隣接する四辺形の境界線を越えるためである。
【0080】
[1.7.1]副写像の順序
インプリメンテーションでは、解像度レベルが偶数のときにはσ(0)=0、σ(1)=1、σ(2)=2、σ(3)=3、σ(4)=0を用い、奇数のときはσ(0)=3、σ(1)=2、σ(2)=1、σ(3)=0、σ(4)=3を用いた。このことで、副写像を適度にシャッフルした。なお、本来副写像は4種類であり、sは0〜3のいずれかである。しかし、実際にはs=4に相当する処理を行った。その理由は後述する。
【0081】
[1.8]補間計算
始点画像と終点画像の間の写像が決定された後、対応しあう画素の輝度が補間される。実験では、トライリニア補間を用いた。始点画像平面における正方形p(i,j)p(i+1,j)p(i,j+1)p(i+1,j+1)が終点画像平面上の四辺形qf(i,j)qf(i+1,j)qf(i,j+1)qf(i+1,j+1)に射影されると仮定する。簡単のため、画像間の距離を1とする。始点画像平面からの距離がt(0≦t≦1)である中間画像の画素r(x,y,t)(0≦x≦N−1,0≦y≦M−1)は以下の要領で求められる。まず画素r(x,y,t)の位置(ただしx,y,t∈R)を次式で求める。
【数42】
つづいてr(x,y,t)における画素の輝度が次の式を用いて決定される。
【数43】
ここでdx及びdyはパラメータであり、0から1まで変化する。
【0082】
[1.9]拘束条件を課したときの写像
いままでは拘束条件がいっさい存在しない場合の写像の決定を述べた。しかし、始点画像と終点画像の特定の画素間に予め対応関係が規定されているとき、これを拘束条件としたうえで写像を決定することができる。
【0083】
基本的な考えは、まず始点画像の特定の画素を終点画像の特定の画素に移す大まかな写像によって始点画像を大まかに変形し、しかる後、写像fを正確に計算する。
【0084】
まず始めに、始点画像の特定の画素を終点画像の特定の画素に射影し、始点画像の他の画素を適当な位置に射影する大まかな写像を決める。すなわち、特定の画素に近い画素は、その特定の画素が射影される場所の近くに射影されるような写像である。ここで第mレベルの大まかな写像をF(m)と記述する。
【0085】
大まかな写像Fは以下の要領で決める。まず、いくつかの画素について写像を特定する。始点画像についてns個の画素、
【数44】
を特定するとき、以下の値を決める。
【数45】
始点画像の他の画素の変位量は、p(ih,jh)(h=0,…,ns−1)の変位に重み付けをして求められる平均である。すなわち画素p(i,j)は、終点画像の以下の画素に射影される。
【数46】
ただしここで、
【数47】
【数48】
とする。
【0086】
つづいて、F(m)に近い候補写像fがより少ないエネルギーを持つように、その写像fのエネルギーD(m,s) (i,j)を変更する。正確には、D(m,s) (i,j)は、
【数49】
である。ただし、
【数50】
であり、κ,ρ≧0とする。最後に、前述の写像の自動計算プロセスにより、fを完全に決定する。
【0087】
ここで、f(m,s)(i,j)がF(m)(i,j)に十分近いとき、つまりそれらの距離が、
【数51】
以内であるとき、E2 (m,s) (i,j)が0になることに注意すべきである。そのように定義した理由は、各f(m,s)(i,j)がF(m)(i,j)に十分近い限り、終点画像において適切な位置に落ち着くよう、その値を自動的に決めたいためである。この理由により、正確な対応関係を詳細に特定する必要がなく、始点画像は終点画像にマッチするように自動的にマッピングされる。
[2]具体的な処理手順
[1]の各要素技術による処理の流れを説明する。
図6は前提技術の全体手順を示すフローチャートである。同図のごとく、まず多重解像度特異点フィルタを用いた処理を行い(S1)、つづいて始点画像と終点画像のマッチングをとる(S2)。ただし、S2は必須ではなく、S1で得られた画像の特徴をもとに画像認識などの処理を行ってもよい。
【0088】
図7は図6のS1の詳細を示すフローチャートである。ここではS2で始点画像と終点画像のマッチングをとることを前提としている。そのため、まず特異点フィルタによって始点画像の階層化を行い(S10)、一連の始点階層画像を得る。つづいて同様の方法で終点画像の階層化を行い(S11)、一連の終点階層画像を得る。ただし、S10とS11の順序は任意であるし、始点階層画像と終点階層画像を並行して生成していくこともできる。
【0089】
図8は図7のS10の詳細を示すフローチャートである。もとの始点画像のサイズは2n×2nとする。始点階層画像は解像度が細かいほうから順に作られるため、処理の対象となる解像度レベルを示すパラメータmをnにセットする(S100)。つづいて第mレベルの画像p(m,0)、p(m,1)、p(m,2)、p(m,3)から特異点フィルタを用いて特異点を検出し(S101)、それぞれ第m−1レベルの画像p(m−1,0)、p(m−1,1)、p(m−1,2)、p(m−1,3)を生成する(S102)。ここではm=nであるため、p(m,0)=p(m,1)=p(m,2)=p(m,3)=p(n)であり、ひとつの始点画像から4種類の副画像が生成される。
【0090】
図9は第mレベルの画像の一部と、第m−1レベルの画像の一部の対応関係を示している。同図の数値は各画素の輝度を示す。同図のp(m,s)はp(m,0)〜p(m,3)の4つの画像を象徴するもので、p(m−1,0)を生成する場合には、p(m,s)はp(m,0)であると考える。[1.2]で示した規則により、p(m−1,0)は例えば同図で輝度を記入したブロックについて、そこに含まれる4画素のうち「3」、p(m−1,1)は「8」、p(m−1,2)は「6」、p(m−1,3)を「10」をそれぞれ取得し、このブロックをそれぞれ取得したひとつの画素で置き換える。したがって、第m−1レベルの副画像のサイズは2m−1×2m−1になる。
【0091】
つづいてmをデクリメントし(図8のS103)、mが負になっていないことを確認し(S104)、S101に戻ってつぎに解像度の粗い副画像を生成していく。この繰り返し処理の結果、m=0、すなわち第0レベルの副画像が生成された時点でS10が終了する。第0レベルの副画像のサイズは1×1である。
【0092】
図10はS10によって生成された始点階層画像をn=3の場合について例示している。最初の始点画像のみが4つの系列に共通であり、以降特異点の種類に応じてそれぞれ独立に副画像が生成されていく。なお、図8の処理は図7のS11にも共通であり、同様の手順を経て終点階層画像も生成される。以上で図6のS1による処理が完了する。
【0093】
前提技術では、図6のS2に進むためにマッチング評価の準備をする。図11はその手順を示している。同図のごとく、まず複数の評価式が設定される(S30)。[1.3.2.1]で導入した画素に関するエネルギーC(m,s) fと[1.3.2.2]で導入した写像の滑らかさに関するエネルギーD(m,s) fがそれである。つぎに、これらの評価式を統合して総合評価式を立てる(S31)。[1.3.2.3]で導入した総エネルギーλC(m,s) f+D(m,s) fがそれであり、[1.3.2.2]で導入したηを用いれば、
ΣΣ(λC(m,s) (i,j)+ηE0 (m,s) (i,j)+E1 (m,s) (i,j)) (式52)
となる。ただし、総和はi、jについてそれぞれ0、1…、2m−1で計算する。以上でマッチング評価の準備が整う。
【0094】
図12は図6のS2の詳細を示すフローチャートである。[1]で述べたごとく、始点階層画像と終点階層画像のマッチングは互いに同じ解像度レベルの画像どうしでとられる。画像間の大域的なマッチングを良好にとるために、解像度が粗いレベルから順にマッチングを計算する。特異点フィルタを用いて始点階層画像および終点階層画像を生成しているため、特異点の位置や輝度は解像度の粗いレベルでも明確に保存されており、大域的なマッチングの結果は従来に比べて非常に優れたものになる。
【0095】
図12のごとく、まず係数パラメータηを0、レベルパラメータmを0に設定する(S20)。つづいて、始点階層画像中の第mレベルの4つの副画像と終点階層画像中の第mレベルの4つの副画像のそれぞれの間でマッチングを計算し、それぞれ全単射条件を満たし、かつエネルギーを最小にするような4種類の副写像f(m,s)(s=0,1,2,3)を求める(S21)。全単射条件は[1.3.3]で述べた相続四辺形を用いて検査される。この際、式17、18が示すように、第mレベルにおける副写像は第m−1レベルのそれらに拘束されるため、より解像度の粗いレベルにおけるマッチングが順次利用されていく。これは異なるレベル間の垂直的参照である。なお、いまm=0であってそれより粗いレベルはないが、この例外的な処理は図13で後述する。
一方、同一レベル内における水平的参照も行われる。[1.3.3]の式20のごとく、f(m,3)はf(m,2)に、f(m,2)はf(m,1)に、f(m,1)はf(m,0)に、それぞれ類似するように決める。その理由は、特異点の種類が違っても、それらがもともと同じ始点画像と終点画像に含まれている以上、副写像がまったく異なるという状況は不自然だからである。式20からわかるように、副写像どうしが近いほどエネルギーは小さくなり、マッチングが良好とみなされる。
【0096】
なお、最初に決めるべきf(m,0)については同一のレベルで参照できる副写像がないため、式19に示すごとくひとつ粗いレベルを参照する。ただし、実験ではf(m,3)まで求まった後、これを拘束条件としてf(m,0)を一回更新するという手続をとった。これは式20にs=4を代入し、f(m,4)を新たなf(m,0)とすることに等しい。f(m,0)とf(m,3)の関連度が低くなり過ぎる傾向を回避するためであり、この措置によって実験結果がより良好になった。この措置に加え、実験では[1.7.1]に示す副写像のシャッフルも行った。これも本来特異点の種類ごとに決まる副写像どうしの関連度を密接に保つ趣旨である。また、処理の開始点に依存する偏向を回避するために、sの値にしたがって開始点の位置を変える点は[1.7]で述べたとおりである。
【0097】
図13は第0レベルにおいて副写像を決定する様子を示す図である。第0レベルでは各副画像がただひとつの画素で構成されるため、4つの副写像f(0,s)はすべて自動的に単位写像に決まる。図14は第1レベルにおいて副写像を決定する様子を示す図である。第1レベルでは副画像がそれぞれ4画素で構成される。同図ではこれら4画素が実線で示されている。いま、p(1,s)の点xの対応点をq(1,s)の中で探すとき、以下の手順を踏む。
【0098】
1.第1レベルの解像度で点xの左上点a、右上点b、左下点c、右下点dを求める。
2.点a〜dがひとつ粗いレベル、つまり第0レベルにおいて属する画素を探す。図14の場合、点a〜dはそれぞれ画素A〜Dに属する。ただし、画素A〜Cは本来存在しない仮想的な画素である。
3.第0レベルですでに求まっている画素A〜Dの対応点A’〜D’をq(1,s)の中にプロットする。画素A’〜C’は仮想的な画素であり、それぞれ画素A〜Cと同じ位置にあるものとする。
4.画素Aの中の点aの対応点a’が画素A’の中にあるとみなし、点a’をプロットする。このとき、点aが画素Aの中で占める位置(この場合、右下)と、点a’が画素A’の中で占める位置が同じであると仮定する。
5.4と同様の方法で対応点b’〜d’をプロットし、点a’〜d’で相続四辺形を作る。
6.相続四辺形の中でエネルギーが最小になるよう、点xの対応点x’を探す。対応点x’の候補として、例えば画素の中心が相続四辺形に含まれるものに限定してもよい。図14の場合、4つの画素がすべて候補になる。
【0099】
以上がある点xの対応点の決定手順である。同様の処理を他のすべての点について行い、副写像を決める。第2レベル以上のレベルでは、次第に相続四辺形の形が崩れていくと考えられるため、図3に示すように画素A’〜D’の間隔が空いていく状況が発生する。
【0100】
こうして、ある第mレベルの4つの副写像が決まれば、mをインクリメントし(図12のS22)、mがnを超えていないことを確かめて(S23)、S21に戻る。以下、S21に戻るたびに次第に細かい解像度のレベルの副写像を求め、最後にS21に戻ったときに第nレベルの写像f(n)を決める。この写像はη=0に関して定まったものであるから、f(n)(η=0)と書く。
【0101】
つぎに異なるηに関する写像も求めるべく、ηをΔηだけシフトし、mをゼロクリアする(S24)。新たなηが所定の探索打切り値ηmaxを超えていないことを確認し(S25)、S21に戻り、今回のηに関して写像f(n)(η=Δη)を求める。この処理を繰り返し、S21でf(n)(η=iΔη)(i=0,1,…)を求めていく。ηがηmaxを超えたときS26に進み、後述の方法で最適なη=ηoptを決定し、f(n)(η=ηopt)を最終的に写像f(n)とする。
【0102】
図15は図12のS21の詳細を示すフローチャートである。このフローチャートにより、ある定まったηについて、第mレベルにおける副写像が決まる。副写像を決める際、前提技術では副写像ごとに最適なλを独立して決める。
【0103】
同図のごとく、まずsとλをゼロクリアする(S210)。つぎに、そのときのλについて(および暗にηについて)エネルギーを最小にする副写像f(m,s)を求め(S211)、これをf(m,s)(λ=0)と書く。異なるλに関する写像も求めるべく、λをΔλだけシフトし、新たなλが所定の探索打切り値λmaxを超えていないことを確認し(S213)、S211に戻り、以降の繰り返し処理でf(m,s)(λ=iΔλ)(i=0,1,…)を求める。λがλmaxを超えたときS214に進み、最適なλ=λoptを決定し、f(m,s)(λ=λopt)を最終的に写像f(m,s)とする(S214)。
【0104】
つぎに、同一レベルにおける他の副写像を求めるべく、λをゼロクリアし、sをインクリメントする(S215)。sが4を超えていないことを確認し(S216)、S211に戻る。s=4になれば上述のごとくf(m,3)を利用してf(m,0)を更新し、そのレベルにおける副写像の決定を終了する。
【0105】
図16は、あるmとsについてλを変えながら求められたf(m,s)(λ=iΔλ)(i=0,1,…)に対応するエネルギーC(m,s) fの挙動を示す図である。[1.4]で述べたとおり、λが増加すると通常C(m,s) fは減少する。しかし、λが最適値を超えるとC(m,s) fは増加に転じる。そこで本前提技術ではC(m,s) fが極小値をとるときのλをλoptと決める。同図のようにλ>λoptの範囲で再度C(m,s) fが小さくなっていっても、その時点ではすでに写像がくずれていて意味をなさないため、最初の極小点に注目すればよい。λoptは副写像ごとに独立して決めていき、最後にf(n)についてもひとつ定まる。
【0106】
一方、図17は、ηを変えながら求められたf(n)(η=iΔη)(i=0,1,…)に対応するエネルギーC(n) fの挙動を示す図である。ここでもηが増加すると通常C(n) fは減少するが、ηが最適値を超えるとC(n) fは増加に転じる。そこでC(n) fが極小値をとるときのηをηoptと決める。図17は図4の横軸のゼロ付近を拡大した図と考えてよい。ηoptが決まればf(n)を最終決定することができる。
【0107】
以上、本前提技術によれば種々のメリットが得られる。まずエッジを検出する必要がないため、エッジ検出タイプの従来技術の課題を解消できる。また、画像に含まれるオブジェクトに対する先験的な知識も不要であり、対応点の自動検出が実現する。特異点フィルタによれば、解像度の粗いレベルでも特異点の輝度や位置を維持することができ、オブジェクト認識、特徴抽出、画像マッチングに極めて有利である。その結果、人手作業を大幅に軽減する画像処理システムの構築が可能となる。
【0108】
なお、本前提技術について次のような変形技術も考えられる。
(1)前提技術では始点階層画像と終点階層画像の間でマッチングをとる際にパラメータの自動決定を行ったが、この方法は階層画像間ではなく、通常の2枚の画像間のマッチングをとる場合全般に利用できる。
【0109】
たとえば2枚の画像間で、画素の輝度の差に関するエネルギーE0と画素の位置的なずれに関するエネルギーE1のふたつを評価式とし、これらの線形和Etot=αE0+E1を総合評価式とする。この総合評価式の極値付近に注目してαを自動決定する。つまり、いろいろなαについてEtotが最小になるような写像を求める。それらの写像のうち、αに関してE1が極小値をとるときのαを最適パラメータと決める。そのパラメータに対応する写像を最終的に両画像間の最適マッチングとみなす。
【0110】
これ以外にも評価式の設定にはいろいろな方法があり、例えば1/E1と1/E2のように、評価結果が良好なほど大きな値をとるものを採用してもよい。総合評価式も必ずしも線形和である必要はなく、n乗和(n=2、1/2、−1、−2など)、多項式、任意の関数などを適宜選択すればよい。
【0111】
パラメータも、αのみ、前提技術のごとくηとλのふたつの場合、それ以上の場合など、いずれでもよい。パラメータが3以上の場合はひとつずつ変化させて決めていく。
(2)本前提技術では、総合評価式の値が最小になるよう写像を決めた後、総合評価式を構成するひとつの評価式であるC(m,s) fが極小になる点を検出してパラメータを決定した。しかし、こうした二段回処理の代わりに、状況によっては単に総合評価式の最小値が最小になるようにパラメータを決めても効果的である。その場合、例えばαE0+βE1を総合評価式とし、α+β=1なる拘束条件を設けて各評価式を平等に扱うなどの措置を講じてもよい。パラメータの自動決定の本質は、エネルギーが最小になるようにパラメータを決めていく点にあるからである。
(3)前提技術では各解像度レベルで4種類の特異点に関する4種類の副画像を生成した。しかし、当然4種類のうち1、2、3種類を選択的に用いてもよい。例えば、画像中に明るい点がひとつだけ存在する状態であれば、極大点に関するf(m,3)だけで階層画像を生成しても相応の効果が得られるはずである。その場合、同一レベルで異なる副写像は不要になるため、sに関する計算量が減る効果がある。
(4)本前提技術では特異点フィルタによってレベルがひとつ進むと画素が1/4になった。例えば3×3で1ブロックとし、その中で特異点を探す構成も可能であり、その場合、レベルがひとつ進むと画素は1/9になる。
(5)始点画像と終点画像がカラーの場合、それらをまず白黒画像に変換し、写像を計算する。その結果求められた写像を用いて始点のカラー画像を変換する。それ以外の方法として、RGBの各成分について副写像を計算してもよい。
【0112】
[多変量空間処理に関する実施の形態]
以上の前提技術を利用した多変量空間処理技術を説明する。図18は、実施の形態に係る多変量空間処理装置10の構成を示す。この装置は、オブジェクトデータODである多変量データを入力する前処理部12と、前処理部12によって三変量へ縮退されたデータを受け取り、第1および第2画像を生成する変換部14と、第1画像I1と第2画像I2に対してマッチング計算を施すマッチングプロセッサ16と、マッチングの結果得られた対応点ファイルFを保存する対応点ファイル保存部18と、第1画像I1、第2画像I2および対応点ファイルFをもとに中間画像を生成する中間画像生成部20と、生成された中間画像を表示するための処理をおこなう表示制御部22を含む。変換部14はまた、第1画像I1および第2画像I2の間に存在する真の中間画像AIFを生成し、これを比較部24へ出力する。中間画像生成部20は、第1画像I1および第2画像I2から生成した仮の中間画像VIFを比較部24へ出力する。比較部24は、これら2つの中間画像を比較し、その比較結果を比較結果ファイル保存部26へ格納する。
前処理部12は、過去の処理の際、ユーザによって選択された三変量を選択変量記憶部28へ記録する。前処理部12はまた、比較結果ファイル保存部26から過去の比較結果を参照する。すなわち前処理部12は、過去ユーザによって選ばれた三変量、または過去比較の結果が良好であった三変量をユーザへ表示する。ユーザはこの表示を利用して、今回利用すべき三変量を選択することができる。
【0113】
図19は、多変量空間処理装置10における処理の概要を示すフローチャートである。オブジェクトデータODはまず前処理部12へ入力され、ここで三変量への縮退がおこなわれる(S300)。この際、前処理部12は、前述のごとく、過去ユーザが選んだ三変量のいずれについて真の中間画像AIFと仮の中間画像VIFの近似度が高かったかを表示する。このことによりユーザは、多数の変量のうちいずれの変量にターゲットを絞って可視化するかを判断することができる。この方法は、特に同程度のに重要な変量が多く存在する場合有効である。
【0114】
前処理部12はさらに、過去ユーザによって実際に選択された変量をオブジェクトデータODのタイプ毎にユーザへ表示する。このことにより、ユーザが過去に興味をもった変量、または実際に所定の目的をもって選択した変量をユーザに通知することができ、ユーザによる選択の便宜が図られる。
【0115】
前処理部12による縮退は、いろいろな方法で実現できる。最も簡単な例は、ユーザが選択した三変量をそのまま選び、残りの変量を無視する方法である。それ以外の方法として、変量を減らしていく際に前述のごとく任意のタイミングで残りの変量に変換処理を加えることができる。そうした変換が加えられた場合、これも選択変量記憶部28へ記録しておいてもよい。
【0116】
三変量へ縮退されたオブジェクトデータODは変換部14へ投入される。変換部14は、三変量のうちいずれの変量を基準とするかをユーザへ問い合わせる。ユーザが基準となる変量(以下単に基準変量という)を指定したとき、この基準変量にふたつの具体的な値を設定することにより、第1画像I1および第2画像I2を生成する(S302)。
【0117】
生成された第1画像I1および第2画像I2はマッチングプロセッサ16および中間画像生成部20へ出力される。マッチングプロセッサ16は、前提技術で述べた方法により、特異点を中心とするマッチング計算をおこなう(S304)。マッチングの結果生成された対応点ファイルFは対応点ファイル保存部18へ格納される。
【0118】
中間画像生成部20は、第1画像I1、第2画像I2および対応点ファイルFをもとに、補間計算によって仮の中間画像VIFを生成する(S306)。補間計算も前提技術で説明したとおりである。生成された中間画像は表示制御部22へ出力され、ここで必要な処理を受けたのち表示装置へ出力される。生成された仮の中間画像VIFは、比較部24へも出力され、表示と並行して必要な後処理がおこなわれる(S308)。
【0119】
図20は、図19のS300の処理の詳細を示す。前処理部12はまず、比較結果ファイル保存部26および選択変量記憶部28を参照し、参照情報が存在するか否かを判定する(S300A)。ここで参照情報とは、過去の比較結果およびユーザによる過去の変量の選択記録の総称である。参照情報が存在すれば(S300AのY)、その情報を表示し(S300B)、一方、参照情報が存在しなければ(S300AのN)参照情報の表示をスキップし、ユーザによる変量の指定を待つ(S300C)。
【0120】
ユーザは、表示された参照情報をコンファームし、またはあらたに変量を指定することにより、三変量を選択する(S300CのY)。前処理部12はこののち、選択された三変量へオブジェクトデータODを縮退せしめる(S300D)。
【0121】
図21は図18におけるS302の詳細を示す。三変量のデータを受けた変換部14は、それらのうちいずれの変量を基準変量(以下これをtで表記する)とするかをユーザへ問い合わせる。ここでユーザが基準変量を指定したとき(S302A)、変換部14は続いてその基準変量tの2つの具体的な値をユーザへ問い合わせる。これらは第1画像I1および第2画像I2を生成するための値である。ユーザが2つの値t=t1、t2を指定したとき(S302B)、変換部14はこれを取得する。基準変量tに具体的な値を代入することによって残りの2つの変量の値が確定するため、変換部14において、それら2つの変量によって表される第1画像I1および第2画像I2が確定する(S302C)。以下、対応点ファイル保存部18および中間画像生成部20による処理は前述のとおりである。
【0122】
図22は、図19におけるS308の詳細を示す。中間画像生成部20によって中間画像が生成されたとき、表示制御部22はこの中間画像および必要に応じて第1画像I1および第2画像I2を入力し、これを表示装置へ表示可能なデータ形式へ変換する。これにより、2次元画像による可視化が実現する(S308A)。
【0123】
一方、比較部24は、真の中間画像AIFと仮の中間画像IFを比較する(S308B)。たとえばいま、t=t1およびt=t2の中点であるt=(t1+t2)/2における比較を考える。変換部14は、基準変量としてt=(t1+t2)/2を代入することにより、その値における残りの2つの変量を確定し、2次元画像を生成することができる。この画像は、オブジェクトの実際のデータをもとに生成されたものであり、その意味から真の中間画像と表現される。一方、同じ基準変量の値t=(t1+t2)/2が中間画像生成部20へ通知され、ここで補間計算によってその基準変量の値における中間画像が生成される。比較部24はこれら2つの画像の差分をとり、その大小によって結果の良否を判定し、これを比較結果ファイル保存部26へ格納する(S308C)。別の方法として、比較部24は単に差分を計算しこれを比較結果ファイル保存部26へ格納してもよい。その場合前処理部12が比較結果の良否を判定すればよい。
【0124】
図23、図24、図25は、本実施の形態による可視化の実験結果を示す。ここでは、オブジェクトデータとして竜巻の中心付近における気圧データを採用した。図23、図24はそれぞれ、所定の時刻t=t1およびt=t2における気圧の分布を横方向から見た状態を示す。一方図25は、それらの2つの画像、すなわち第1画像I1および第2画像I2の中間画像であり、t=(t1+t)/2における仮の中間画像である。いま仮に、z軸をこの竜巻の縦方向に取ったとき、図23および図24に示す第1画像I1および第2画像I2は、オブジェクトデータをz軸に平行な平面に投影して得られる2次元の情報、および時刻によって形成される三変量のデータと考えることができる。したがって、この例における前処理部12の処理は、オブジェクトデータをz軸に平行な平面に投影するとともに、時刻のパラメータを保存する処理である。
【0125】
一方、変換部14の処理は、時刻tを基準変量として、その具体的な2つの値t1、t2における画像を取得したと考えることができる。図25に示す結果からもわかるとおり、本実施の形態により簡易的な方法で良好な可視化結果を得ることができる。
【0126】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。なお本発明はこの実施の形態に限定されることなく、そのさまざまな変形例もまた、本発明の態様として有効である。そうした例を述べる。
【0127】
実施の形態では、3次元空間における現象としての竜巻を例にとった。しかし本発明はこれに限られることなく、さらに多変量のオブジェクトを扱うことができる。たとえば、複雑な経済現象を解析する場合において、さまざまなパラメータのうち、ユーザが注目すべき三変量を指定することにより、同様の可視化を簡便におこなうことができる。その際、三変量の選び方を変えていくことにより、その経済現象においていずれの変量がどの程度重要性をもっているかをある程度知ることができる。また、比較部24における比較結果をもとに、ケースバイケースでその経済現象において重要であった変量を特定することも可能である。
【0128】
すなわち、本発明による多変量空間の処理方法は、従来シミュレーションや複雑な構造の解析の際に前提となったモデリングを省略し、非常に簡便な方法で現象の可視化を実現するものである。したがってその科学的な意味は、任意の現象をモデリングなしに2次元画像のマッチングのみによって把握するという新たな方法論の提案および実現にある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)とは図1(b)は、ふたりの人物の顔に平均化フィルタを施して得られる画像、図1(c)と図1(d)は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求められるp(5,0)の画像、図1(e)と図1(f)は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求められるp(5,1)の画像、図1(g)と図1(h)は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求められるp(5,2)の画像、図1(i)と図1(j)は、ふたりの人物の顔に関して前提技術で求められるp(5,3)の画像をそれぞれディスプレイ上に表示した中間調画像の写真である。
【図2】 図2(R)はもとの四辺形を示す図、図2(A)、図2(B)、図2(C)、図2(D)、図2(E)はそれぞれ相続四辺形を示す図である。
【図3】 始点画像と終点画像の関係、および第mレベルと第m−1レベルの関係を相続四辺形を用いて示す図である。
【図4】 パラメータηとエネルギーCfの関係を示す図である。
【図5】 図5(a)、図5(b)は、ある点に関する写像が全単射条件を満たすか否かを外積計算から求める様子を示す図である。
【図6】 前提技術の全体手順を示すフローチャートである。
【図7】 図6のS1の詳細を示すフローチャートである。
【図8】 図7のS10の詳細を示すフローチャートである。
【図9】 第mレベルの画像の一部と、第m−1レベルの画像の一部の対応関係を示す図である。
【図10】 前提技術で生成された始点階層画像を示す図である。
【図11】 図6のS2に進む前に、マッチング評価の準備の手順を示す図である。
【図12】 図6のS2の詳細を示すフローチャートである。
【図13】 第0レベルにおいて副写像を決定する様子を示す図である。
【図14】 第1レベルにおいて副写像を決定する様子を示す図である。
【図15】 図12のS21の詳細を示すフローチャートである。
【図16】 あるf(m,s)についてλを変えながら求められたf(m,s)(λ=iΔλ)に対応するエネルギーC(m,s) fの挙動を示す図である。
【図17】 ηを変えながら求められたf(n)(η=iΔη)(i=0,1,…)に対応するエネルギーC(n) fの挙動を示す図である。
【図18】 実施の形態に係る多変量空間処理装置の構成図である。
【図19】 実施の形態による処理の手順の概略を示すフローチャートである。
【図20】 図19におけるS300の詳細を示すフローチャートである。
【図21】 図19におけるS302の詳細を示すフローチャートである。
【図22】 図19におけるS308の詳細を示すフローチャートである。
【図23】 実験に用いた竜巻のデータ(t=t1)を示す図である。
【図24】 実験に用いた竜巻のデータ(t=t2)を示す図である。
【図25】 実験の結果得られた中間画像を示す図である。
【符号の説明】
10 多変量空間処理装置、 12 前処理部、 14 変換部、 16 マッチングプロセッサ、 20 中間画像生成部、 24 比較部。
Claims (2)
- オブジェクトの多変量データを所定の三変量に縮退せしめる前処理部と、
さらにその三変量の中で基準となる変量が第1の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第1画像として取得し、前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第2画像として取得する変換部と、
取得された第1画像および第2画像の間でマッチング計算を行うマッチングプロセッサと、
前記マッチングの結果をもとに第1画像と第2画像の中間画像を補間計算にて生成する中間画像生成部と、
前記生成された中間画像を表示装置に表示せしめる表示制御部と、
を含むことを特徴とする多変量空間処理装置。 - オブジェクトの多変量データを所定の三変量に縮退せしめる前処理部と、
さらにその三変量の中で基準となる変量が第1の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第1画像として取得し、前記基準となる変量が第2の値にあるときに残りの二変量によって形成される二次元空間を第2画像として取得する変換部と、
取得された第1画像および第2画像の間でマッチング計算を行うマッチングプロセッサと、
を含み、
前記前処理部は、過去に選択されたものを参照して前記三変量を選択することを特徴とする多変量空間処理装置。
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