JP2002237659A - 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置 - Google Patents

窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置

Info

Publication number
JP2002237659A
JP2002237659A JP2001032274A JP2001032274A JP2002237659A JP 2002237659 A JP2002237659 A JP 2002237659A JP 2001032274 A JP2001032274 A JP 2001032274A JP 2001032274 A JP2001032274 A JP 2001032274A JP 2002237659 A JP2002237659 A JP 2002237659A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nitride semiconductor
mask
substrate
layer
laser device
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2001032274A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3869663B2 (ja
Inventor
Yuzo Tsuda
有三 津田
Shigetoshi Ito
茂稔 伊藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sharp Corp
Original Assignee
Sharp Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sharp Corp filed Critical Sharp Corp
Priority to JP2001032274A priority Critical patent/JP3869663B2/ja
Priority to PCT/JP2002/000062 priority patent/WO2002056435A1/ja
Priority to US10/466,339 priority patent/US6891201B2/en
Publication of JP2002237659A publication Critical patent/JP2002237659A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3869663B2 publication Critical patent/JP3869663B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】 レーザ発振寿命の長い窒化物半導体レーザ素
子を提供すること。 【解決手段】 窒化物半導体基板に積層された窒化物半
導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、マスク200
と窓部とを有するマスク基板があって、マスク基板を被
覆する窒化物半導体膜と、発光層106を有する発光素
子構造とを、マスク基板上に順次成長させ、マスク20
0における幅方向の中央をマスク中央とし、窓部におけ
る幅方向の中央を窓部中央とし、マスク200のストラ
イプ方向に向かってマスク中央から左右に1μm未満を
除く領域、かつ窓部のストライプ方向に向かって窓部中
央から左右に1μm未満を除く領域に、発光素子構造の
電流狭窄部分が作製される窒化物半導体レーザ素子。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザ発振寿命の
長寿命化を有する窒化物半導体レーザ素子と、その窒化
物半導体レーザ素子を利用した半導体光学装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、GaN基板上にSiO2マスクの
マスクパターンが形成され、前記SiO2マスクの上方
と、前記SiO2マスクが形成されていない窓部の上方
にGaN層が積層され、前記GaN層上に窒化物半導体
レーザ素子が形成されることが、Jpn.J.App
l.Phys.Vol.39(2000)pp.L64
7−650などで開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述し
た開示内容では、前記SiO2マスクを有するGaN基
板に形成される前記窒化物半導体レーザ素子の形成位置
について、詳細な説明がなされていなかった。
【0004】本明細書では、窒化物半導体基板に積層さ
れた窒化物半導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、
マスクと窓部とが形成されたマスク基板があって、前記
マスク基板に作製された窒化物半導体レーザ素子の電流
狭窄部分の形成位置が、詳細に説明される。本発明は、
前記電流狭窄部分の形成位置が適正化されることによっ
て、レーザ発振寿命の長寿命化を有する窒化物半導体レ
ーザ素子を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、窒化物半導体
基板に積層された窒化物半導体層に、もしくは窒化物半
導体基板に、窒化物半導体がエピタキシャル成長を抑制
する成長抑制膜から構成されるストライプ状のマスク
と、前記マスクが形成されていないストライプ状の窓部
と、が設けられたマスク基板があって、前記マスク基板
を被覆する窒化物半導体膜と、少なくともn型層とp型
層とによって挟まれた、井戸層または井戸層と障壁層と
から構成された発光層を有する発光素子構造とを、前記
マスク基板上に順次成長させ、前記マスクにおける幅方
向の中央をマスク中央とし、前記窓部における幅方向の
中央を窓部中央とし、前記マスクのストライプ方向に向
かって前記マスク中央から左右に1μm未満を除く領
域、かつ前記窓部のストライプ方向に向かって前記窓部
中央から左右に1μm未満を除く領域に、前記発光素子
構造の電流狭窄部分が作製されることによって、本発明
の課題である窒化物半導体レーザ素子のレーザ発振の長
寿命化が図られる。
【0006】ここで、本明細書で説明される成長抑制膜
とは、窒化物半導体がエピタキシャル成長されにくい膜
であると定義する。たとえば、成長抑制膜は、誘電体膜
あるいは金属膜から構成され得る。より具体的には、成
長抑制膜は、SiO2、SiNx、Al23、TiO2
タングステンまたはモリブデンなどである。
【0007】本明細書で説明される窓部とは、ある層の
上に前記成長抑制膜から構成されたマスクがあって、前
記ある層が前記マスクで被覆されていない部分(ある層
が露出している部分)であると定義する。
【0008】本明細書で説明される窒化物半導体基板と
は、少なくともAlxGayInzN(0≦x≦1、0≦
y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1)で構成された基
板である。前記窒化物半導体基板は、前記窒化物半導体
基板を構成している窒素元素の約10%以下(ただし、
六方晶系であること)が、As、PもしくはSbの元素
群のうち少なくともいずれかの元素で置換されても構わ
ない。また、前記窒化物半導体基板は、Si、O、C
l、S、C、Ge、Zn、Cd、MgもしくはBeの不
純物群のうち、少なくともいずれかの不純物が添加され
ても構わない。その不純物の総添加量は5×1017/c
3以上5×1018/cm3以下が好ましい。前記窒化物
半導体基板がn型導電性を有するための不純物は、前記
不純物群のうち、Si、OもしくはClのいずれかが特
に好ましい。
【0009】本明細書で説明される前記窒化物半導体基
板に積層された窒化物半導体層とは、少なくともAlx
GayInzN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、
x+y+z=1)で構成された層である。前記窒化物半
導体層は、前記窒化物半導体層を構成している窒素元素
の約10%以下(ただし、六方晶系であること)が、A
s、PもしくはSbの元素群のうち少なくともいずれか
の元素で置換されても構わない。また、前記窒化物半導
体層は、Si、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、
MgもしくはBeの不純物群のうち、少なくともいずれ
かの不純物が添加されても構わない。その不純物の総添
加量は5×1017/cm3以上5×101 8/cm3以下が
好ましい。前記窒化物半導体層がn型導電性を有するた
めの不純物は、前記不純物群のうち、Si、Oもしくは
Clのいずれかが特に好ましい。
【0010】本明細書で説明されるマスク基板とは、前
記窒化物半導体基板に積層された窒化物半導体層に、も
しくは前記窒化物半導体基板に、前記成長抑制膜から構
成されたマスクと前記窓部が設けられた基板であると定
義する(図2参照)。前記マスクの幅および前記窓部の
幅は、一定の周期を有していても良いし、種々異なる幅
を有していても構わない。
【0011】本明細書で説明される前記マスク基板に成
長する窒化物半導体膜とは、少なくともAlxGayIn
zN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+
z=1)から構成される。前記窒化物半導体膜は、前記
窒化物半導体膜を構成している窒素元素の約10%以下
(ただし、六方晶系であること)が、As、Pもしくは
Sbの元素群のうち少なくともいずれかの元素で置換さ
れても構わない。また、前記窒化物半導体膜は、Si、
O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgもしくはB
eの不純物群のうち、少なくともいずれかの不純物が添
加されても構わない。前記窒化物半導体膜がn型導電性
を有するための不純物は、前記不純物群のうち、Si、
OもしくはClのいずれかが特に好ましい。
【0012】本明細書で説明される膜付きマスク基板と
は、前記マスク基板の上に前記窒化物半導体膜を被覆し
た基板と定義する(図3参照)。
【0013】本明細書で説明される発光層とは、井戸層
もしくは井戸層と障壁層とから構成された層の総称を指
すものとする。たとえば、単一量子井戸構造の発光層
は、1つの井戸層のみから構成されるか、もしくは、障
壁層/井戸層/障壁層から構成される。また、多重量子
井戸構造の発光層は複数の井戸層と複数の障壁層とから
構成される。
【0014】本明細書で説明される発光素子構造とは、
前記発光層がn型層とp型層とに挟まれた構造であると
定義する。
【0015】本明細書で説明される電流狭窄部分とは、
p型層を介して発光層に実質的に電流が注入される部分
であると定義する。また、電流狭窄幅とは、前記電流狭
窄部分の幅であると定義する。具体的に図4を用いて前
記電流狭窄部分が説明される。たとえば、リッジストラ
イプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子の場合、前記
電流狭窄部分は、図4(a)で示されたリッジストライ
プ部に該当する。かくして、リッジストライプ構造を有
する窒化物半導体レーザ素子の、前記電流狭窄幅は、図
4(a)で示されたリッジストライプ幅に該当する。
【0016】同様に、たとえば、電流狭窄層を有する窒
化物半導体レーザ素子の場合、前記電流狭窄部分は、図
4(b)で示された2つの電流阻止層に挟まれた部分に
該当する。かくして、電流狭窄層を有する窒化物半導体
レーザ素子の前記電流狭窄幅は、図4(b)で示された
電流阻止層間幅に該当する。
【0017】本発明は、窒化物半導体基板に積層された
窒化物半導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、前記
マスクと前記窓部とが形成されたマスク基板があって、
前記マスク基板を被覆する窒化物半導体膜と、前記発光
素子構造とを、前記マスク基板上に順次成長させ、前記
マスクの上方の領域であって、なおかつ前記マスクのス
トライプ方向に向かって前記マスク中央から左右に1μ
m以上の領域に、前記発光素子構造の電流狭窄部分が作
製されることによって、さらにレーザ発振寿命を長寿命
化させることが可能である。
【0018】本発明は、窒化物半導体基板に積層された
窒化物半導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、前記
マスクと前記窓部とが形成されたマスク基板があって、
前記マスク基板を被覆する窒化物半導体膜と、前記発光
素子構造とを、前記マスク基板上に順次成長させ、前記
マスクの上方の領域と前記窓部の上方の領域に跨るよう
にして、前記発光素子構造の電流狭窄部分が作製される
ことによって、電流狭窄部分にクラックが発生してレー
ザ素子の歩留まり率が低下することを抑制し得る。
【0019】本発明は、前記マスク幅が5μm以上30
μm以下であることによって、レーザ発振寿命を長寿命
化させることが可能な領域に電流狭窄部分が作製され得
る。
【0020】本発明は、前記窓部の幅が2μm以上20
μm以下であることが好適である。本発明は、前記マス
ク幅が前記窓部幅よりも広いことによって、結晶歪が効
果的に緩和され、より一層のレーザ発振寿命を長寿命化
させることが可能である。
【0021】本発明は、前記窒化物半導体膜が少なくと
もAxGa1-xN(Al組成比xは0.01以上0.15
以下)から構成されることによって、より一層のレーザ
発振寿命特性の向上とクラックの発生率が抑制され得
る。
【0022】本発明は、前記窒化物半導体膜がInx
1-xN(In組成比xは0.01以上0.18以下)
から構成されることは、電流狭窄部部分が作製される領
域の違いによってレーザ発振寿命の相違が小さく、素子
不良率が低減し得る。
【0023】本発明は、As、PもしくはSbの元素群
のうち少なくともいずれかの元素が、前記井戸層に含有
されることによって、より一層のレーザ発振の長寿命化
を実現し得る。
【0024】本発明は、前記窒化物半導体基板に、S
i、O、Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、Mgもしく
はBeの不純物群のうち、少なくともいずれかの不純物
が添加されていて、その不純物の総添加量が5×1017
/cm3以上5×1018/cm3以下であることが好適で
ある。
【0025】本発明は、本発明の窒化物半導体レーザ素
子を利用した半導体光学装置に関する。前記半導体光学
装置は、本発明のレーザ発振寿命の長い高出力レーザ
(30mW)を用いているため、信頼性の高い製品を製
造することが可能となる。
【0026】
【発明の実施の形態】(実施の形態1)本発明は、窒化
物半導体基板に積層された窒化物半導体層に、もしくは
窒化物半導体基板に、マスクと窓部とが形成されたマス
ク基板があって、窒化物半導体膜と発光素子構造とを、
前記マスク基板上に順次成長させ、前記マスクのストラ
イプ方向に向かってマスク中央から左右に1μm未満を
除く領域、かつ前記窓部のストライプ方向に向かって窓
部中央から左右に1μm未満を除く領域に、前記発光素
子構造の電流狭窄部分が作製されることによって、本発
明の課題である窒化物半導体レーザ素子のレーザ発振の
長寿命化が図られる。
【0027】窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分が
膜付きマスク基板に形成される本発明の最適位置は、マ
スク基板を構成している基板が窒化物半導体基板の場合
に限られる。これは、以下の理由からである。
【0028】窒化物半導体基板以外の基板(以後、異種
基板と呼ぶ)が用いられたマスク基板上に成長された窒
化物半導体膜は、窒化物半導体基板が用いられたマスク
基板上に成長されたそれと比較して、強い応力歪を受け
る。これは、異種基板と窒化物半導体膜との間の熱膨張
係数差が、窒化物半導体基板と窒化物半導体膜との間の
それと比較して非常に大きいからである。したがって、
前記窒化物半導体基板が異種基板で置換されて、本発明
の最適位置に属するように窒化物半導体レーザ素子の電
流狭窄部分が作製されたとしても、マスク基板に被覆さ
れた窒化物半導体膜および発光素子構造中の結晶歪は、
本発明と同様に緩和され得ない。加えて、異種基板と窒
化物半導体膜との間の熱膨張係数差が、窒化物半導体基
板と窒化物半導体膜との間のそれと比べて非常に大きい
ことから、異種基板自体が反ってしまう。発光素子構造
を含む該基板が反ってしまうと、窒化物半導体レーザ素
子の電流狭窄部分が、再現性よく目的とする位置に作製
されることが困難になる。
【0029】(窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分
が作製される最適位置について)本発明者らは、窒化物
半導体レーザ素子の電流狭窄部分が膜付きマスク基板
(マスク基板が窒化物半導体膜で被覆された基板であ
る。また、マスク基板を構成している基板は、窒化物半
導体基板である。)のどの位置に形成されるかによっ
て、レーザ発振寿命が変化することを新知見として見出
した。
【0030】以下では、電流狭窄部分の最適位置が、リ
ッジストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子
(図4(a))を例に説明される。ここで、上述で説明
されたように、リッジストライプ構造を有する窒化物半
導体レーザ素子の電流狭窄部分は、該レーザ素子のリッ
ジストライプ部に該当する。また、リッジストライプ構
造を有する窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄幅は、該
レーザ素子のリッジストライプ幅に該当する。
【0031】まず、前記リッジストライプ部の形成位置
とレーザ発振寿命との関係が図5を用いて説明される。
【0032】図5は、横軸に膜付きマスク基板のマスク
中央cからリッジストライプ端aまでの距離を、縦軸に
レーザ出力30mW、雰囲気温度60℃の条件下でのレ
ーザ発振寿命を、それぞれ表している。ここで、マスク
中央cからリッジストライプ端aまでの距離(以後、c
−a距離と呼ぶ)は、マスク中央cから向かって右側を
正に、同じく向かって左側を負で表記される。また、図
5も含めて本明細書で説明されるレーザ発振寿命は以下
のようにして見積もられた。前記レーザ発振寿命は、窒
化物半導体レーザ素子を寿命試験装置にセットした初期
の閾値電流値の、1.5倍の閾値電流値に到達したとき
の時間である。図5で用いられた窒化物半導体レーザ素
子の構造および製造方法は、後述の実施の形態2と同様
にして作製される。また、図5で用いられた、リッジス
トライプ幅は2μmであり、マスク幅は18μmであ
り、窓部幅は8μmであり、マスクの厚みは0.1μm
であった。
【0033】(リッジストライプ部がマスクの上方に作
製される場合)まず、リッジストライプ部がマスクの上
方に作製された場合について述べる。図5を参照する
と、リッジストライプ部がマスクの上方に作製された窒
化物半導体レーザ素子のレーザ発振寿命は、リッジスト
ライプ部が窓部の上方に作製されたそれよりも長くなる
傾向を示した。さらに詳細に調べたところ、窒化物半導
体レーザ素子のリッジストライプ部がマスク上方に作製
されても、c−a距離が−3μmよりも大きく1μmよ
りも小さい領域に前記リッジストライプ部が作製される
と、レーザ発振寿命が劇的に減少する(数100時間か
ら1000時間未満)ことがわかった。ここで、前記リ
ッジストライプ部の幅(以後、リッジストライプ幅と呼
ぶ)が2μmであることを考慮して、前記c−a距離の
−3μmが、マスク中央cからリッジストライプ端bま
での距離(以後、c−b距離と呼ぶ)に換算されると、
c−b距離は−1μmとなる。つまり、窒化物半導体レ
ーザ素子のリッジストライプ部が、マスクのストライプ
方向(図2(b))に向かってマスク中央cから左右1
μm未満の領域に少なくとも含まれるようにして作製さ
れたとき、レーザ発振寿命が劇的に減少してしまうこと
がわかった。このレーザ発振寿命が劇的に減少する領域
を領域IIIと呼ぶことにする。したがって、窒化物半
導体レーザ素子のリッジストライプ部は、前記領域II
Iを除くマスクの上方の領域に、前記リッジストライプ
部全体(図5のa−b幅)が含まれるようにして作製す
ることが好ましい。
【0034】前記領域IIIは上記のマスク中央cから
左右1μm未満の範囲以外に、以下で述べる範囲を選択
すると、レーザ発振寿命特性の観点からさらに好まし
い。前記領域IIIがマスクのストライプ方向に向かっ
てマスク中央cから左右2μm未満の領域(図5のc−
a距離で表記すると、−4μmよりも大きく2μmより
も小さい領域に該当する)であって、前記のIII領域
を除くようにして、前記リッジストライプ部全体(図5
のa−b幅)がマスクの上方に含まれるようにして作製
される。このことにより、レーザ発振寿命が少なくとも
約3000から5000時間以上の寿命を得ることが可
能である。さらに、前記領域IIIがマスクのストライ
プ方向に向かってマスク中央cから左右3μm未満の領
域(図5のc−a距離で表記すると、−5μmよりも大
きく3μmよりも小さい領域に該当する)であって、前
記のIII領域を除くようにして、前記リッジストライ
プ部全体(図5のa−b幅)がマスクの上方に含まれる
ようにして作製されると、レーザ発振寿命が約1000
0時間以上の寿命を得ることが可能である。
【0035】ここで、マスクの上方の領域であって、な
おかつ領域IIIを除く領域のことを、領域Iと呼ぶこ
とにする。この領域Iは、以下で示す領域IIよりも、
レーザ発振寿命の長い窒化物半導体レーザ素子を作製す
ることが可能な領域である。
【0036】(リッジストライプ部が窓部の上方に作製
される場合)次に、リッジストライプ部が窓部の上方に
作製された場合について述べる。リッジストライプ部が
窓部の上方に作製された場合についても、前述と同様の
説明がなされ得る。窒化物半導体レーザ素子のリッジス
トライプ部は、c−a距離が10μmよりも大きく14
μmよりも小さい領域に作製されると、前記窒化物半導
体レーザ素子のレーザ発振寿命が劇的に減少してしまっ
た。ここで、前記リッジストライプ幅が2μmであるこ
とを考慮して、前記c−a距離の10μmが窓部中央d
からリッジストライプ端bまでの距離(以後、d−b距
離と呼ぶ)に換算されると、d−b距離は1μmにな
る。同様にして、c−a距離の14μmが、窓部中央d
からリッジストライプ端aまでの距離(以後、d−a)
に換算されると、d−a距離は1μmになる。つまり、
窒化物半導体レーザ素子のリッジストライプ部が、窓部
の幅方向に沿って窓部中央dから左右1μm未満の範囲
内に含まれるようにして作製されたとき、レーザ発振寿
命が劇的に減少してしまうことがわかった。このレーザ
発振寿命が劇的に減少する領域(窓部中央dから左右1
μm未満の範囲)を領域IVと呼ぶことにする。
【0037】したがって、窒化物半導体レーザ素子のリ
ッジストライプ部は、前記領域IVを除く領域に、前記
リッジストライプ部全体(図5のa−b幅)が含まれる
ようにして作製されることが好ましい。ここで、窓部の
上方の領域であって、なおかつ窓部のストライプ方向に
向かって前記窓部中央dから左右1μm以上の領域(領
域IVを除く領域に該当する)を、領域IIと呼ぶこと
にする。この領域IIに作製された窒化物半導体レーザ
素子のレーザ発振寿命は、前述の領域Iに作製されたそ
れと比較して、短いものの、数千時間のレーザ発振寿命
を有することができた。以上の結果が、図6の模式図に
まとめられる。
【0038】図6は、前記領域Iから前記領域IVまで
が、膜付きマスク基板に記された模式図である。膜付き
マスク基板上に作製された窒化物半導体レーザ素子のリ
ッジストライプ部は、レーザ発振寿命の観点から、その
全体が領域Iに含まれることが最も好ましく、次にその
全体が領域Iと領域IIに跨って含まれる場合が好まし
く、続いてその全体が領域IIに含まれることが好まし
い。本発明の課題であるレーザ発振寿命の長寿命化がリ
ッジストライプ部の形成位置によって異なる理由は、恐
らく結晶歪の緩和のされ方が膜付きマスク基板内で違う
ためだと思われる。また、以上の結果を考慮すると、恐
らく、マスク基板のマスクの上方に形成された窒化物半
導体膜は、マスク基板の窓部の上方に形成されたそれよ
りも、窒化物半導体膜中の結晶歪の緩和効果が大きいも
のと思われる。
【0039】本発明者らの詳細な検討によると、リッジ
ストライプ部全体が領域Iと領域IIとに跨るように作
製されると、レーザ発振寿命の向上以外に、リッジスト
ライプ部にクラックが発生してレーザ素子の歩留まり率
が低下することを抑制し得るので好ましかった。
【0040】前述の「窒化物半導体レーザ素子の電流狭
窄部分が作製される最適位置について」では、リッジス
トライプ幅が2μmの場合について説明されたが、その
他のリッジストライプ幅が用いられても前述で示された
図5と同様の傾向が観られ得る。
【0041】前述で示されたリッジストライプ部の形成
位置とレーザ発振寿命との関係は、リッジストライプ構
造を有する窒化物半導体レーザ素子(たとえば図4
(a))に限られるものではない。たとえば、電流阻止
層を有する窒化物半導体レーザ素子の場合、前述のリッ
ジストライプ部は2つの電流阻止層に挟まれた部分に、
前述のリッジストライプ幅は電流阻止層間幅に該当する
(図4(b)を参照)。さらに一般的な表現を用いれ
ば、窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分が、図6に
示された領域Iおよび/または領域IIの上方に存在し
ていれば、本発明による効果が充分に得られる。なお、
窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分が領域Iと領域
IIとを跨るように作製されても良いことは言うまでも
無い。
【0042】(マスク幅について)マスク基板に形成さ
れるマスクのマスク幅は、5μm以上30μm以下、さ
らに好ましくは9μm以上25μm以下である。前記マ
スク幅の下限値と上限値は、以下のようにして見積もら
れた。
【0043】マスクの上方に窒化物半導体レーザ素子の
電流狭窄部分が作製される場合、前記マスクのマスク幅
の下限値は、窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分の
幅(電流狭窄幅)に依存する。上述のレーザ発振の長寿
命化の観点から、窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部
分(たとえば、リッジストライプ部)は、領域I(図6
参照)に作製されることが最も好ましい。したがって、
前記マスク幅の下限値は、少なくとも電流狭窄幅よりも
広くする必要がある。電流狭窄幅はおよそ1.5μm〜
3μm幅で形成され得るため、結局、前記マスク幅の下
限値は、領域IIIの幅2μm(領域IIIがマスクの
ストライプ方向に向かってマスク中央cから左右1μm
未満の領域の場合)と前記ストライプ幅(1.5μm)
×2を足して少なくとも5μm以上と見積もられる。さ
らに好ましくは、前記マスク幅の下限値が、領域III
の幅6μm(領域IIIがマスクのストライプ方向に向
かってマスク中央cから左右3μm未満の領域の場合)
と前記ストライプ幅(1.5μm)×2を足して9μm
以上と見積もられる。
【0044】他方、前記マスク幅の上限値は、特に制約
は無い。しかしながら、マスク基板に形成されたマスク
が窒化物半導体膜で完全に被覆されるためには、マスク
幅は30μm以下、さらに好ましくは25μm以下が必
要である。
【0045】また、前記マスク幅は、マスク基板に形成
される窓部の窓部幅よりも広い方が好ましい。なぜなら
ば、本発明の電流狭窄部分が形成され得る最も好ましい
領域Iに、多くの窒化物半導体レーザ素子が形成され得
るからである。加えて、窒化物半導体レーザ素子の素子
不良率が減少するため好ましい。
【0046】(窓部幅について)窓部の上方に窒化物半
導体レーザ素子の電流狭窄部分の全体が含まれる(領域
IIに作製される)場合、前記窓部の窓部幅の下限値
は、上述の「マスク幅について」と同様にして見積もら
れ、5μm以上である。他方、マスクの上方に窒化物半
導体レーザ素子の電流狭窄部分の一部が少なくとも含ま
れる場合、前記窓部幅の下限値は、領域IVの幅に該当
する2μm以上である。窓部幅の上限値については、特
に制約は無い。しかしながら、窓部幅が広くなれば広く
なる程、結晶歪みの緩和効果が小さくなるため、前記窓
部幅の上限値は20μm以下、さらに好ましくは10μ
m以下である。
【0047】(マスクのストライプ方向について)スト
ライプ状に作製されたマスクの、ストライプ方向が以下
で説明される。結晶成長面が{0001}C面を有する
窒化物半導体基板に作製されたマスクのストライプ方
向、もしくは窒化物半導体基板に積層された結晶成長面
が{0001}C面を有する窒化物半導体層に作製され
たマスクのストライプ方向は、窒化物半導体基板に対し
て<1−100>方向が最も好ましく、続いて<11−
20>方向が好ましかった。これらの方向は、{000
1}C面内で±5度程度の開き角度を有していても上記
関係は変わらなかった。
【0048】窒化物半導体基板の<1−100>方向に
沿ってマスクが形成されることの優位性は、結晶歪みと
クラック発生との抑制効果が非常に高いことである。こ
のような方向に沿って形成されたマスクに窒化物半導体
膜が被覆されると、前記窒化物半導体膜がマスク上で主
に{11−20}ファセット面を形成しながら前記マス
クを被覆した。この{11−20}ファセット面は窒化
物半導体基板表面に対して垂直であって、なおかつマス
クはエピタキシャル成長しにくい成長抑制膜で構成され
ている。そのためか、{11−20}ファセット面から
窒化物半導体が成長していた(図7(a)参照)。この
成長は、該基板表面に対して水平方向に成長する(以
後、横方向成長と呼ぶ)ため、結晶歪みとクラック発生
の抑制効果が非常に高かったと考えられる。そして、マ
スクのストライプ方向が<1−100>方向であること
と、本発明の電流狭窄部分の最適位置との構成を用いる
ことによって、より一層のレーザ発振の長寿命化とクラ
ック抑制による素子不良率の低減が図られ得る。
【0049】他方、窒化物半導体基板の<11−20>
方向に沿ってマスクが形成されることの優位性は、前記
マスクが窒化物半導体膜で埋められたとき、前記マスク
の上方に位置する前記窒化物半導体膜の表面モフォロジ
ーが良いことである。また、図7(b)に記された窪み
部分が基板の上方から眺められると、ほとんど蛇行する
ことなく窒化物半導体膜で被覆された。窒化物半導体膜
の表面モフォロジーが良好であって、なおかつ、前記窪
みがほとんど蛇行することなく窒化物半導体膜で被覆さ
れると、本発明の領域Iに形成された電流狭窄部を有す
る窒化物半導体素子の、素子不良率が低減し得た。これ
は以下の理由からだと考えられる。このような方向に沿
って形成されたマスクに窒化物半導体膜が被覆される
と、前記窒化物半導体膜がマスク上で主に{1−10
1}ファセット面を形成しながら、前記マスクを被覆し
ていた。この{1−101}ファセット面は非常に平坦
でかつ前記ファセット面と結晶成長面とが接するエッジ
部分も非常に急峻であった(図7(b))。このことが
窒化物半導体膜の表面モフォロジーに寄与したのではな
いかと考えられる。
【0050】前述のマスク(または窓部)は全てストラ
イプ形状であったが、マスク(または窓部)がストライ
プ形状であることは以下の点において好ましい。窒化物
半導体レーザ素子の電流狭窄部分は主にストライプ形状
であり、前記電流狭窄部分の最適位置(領域Iおよび/
または領域II)もストライプ形状である。そのため、
前記電流狭窄部分を前記最適位置に造りこむことが容易
になる。
【0051】(マスク基板を被覆する窒化物半導体膜に
ついて)本発明の電流狭窄部分の最適位置とマスク基板
を被覆する窒化物半導体膜の構成において、前記窒化物
半導体膜が、GaN膜、AlGaN膜またはInGaN
膜であると、以下の効果が得られる。ここで、前記窒化
物半導体膜はその膜中にSi、O、Cl、S、C、G
e、Zn、Cd、MgもしくはBeの不純物群のうち、
少なくともいずれかの不純物を添加することができる。
【0052】前記窒化物半導体膜がGaN膜であること
は、以下の点において好ましい。GaN膜は2元混晶で
あるため、結晶成長の制御性が良く、製造方法において
容易である。また、GaNの表面マイグレーション長は
AlGaN膜のそれと比較して長く、InGaN膜のそ
れと比較して短いため、マスクを完全かつ平坦に被覆し
つつ、適度な横方向成長を得ることができる。この横方
向成長が促進されると、マスク上方に被覆された窒化物
半導体膜中の結晶歪が緩和され得る。窒化物半導体膜と
して利用されるGaN膜の不純物濃度は、1×1017
cm3以上8×1018/cm3以下が好ましい。このよう
な濃度範囲で不純物が添加されると、窒化物半導体膜の
表面モフォロジーが良好になって、発光層の層厚が均一
化され、素子特性が向上し得る。
【0053】次に、前記窒化物半導体膜がAlGaN膜
であることは、以下の点において好ましい。AlGaN
膜がマスク基板を被覆すると、マスク上方にボイドが形
成されにくく、クラックの発生率が抑制された。また、
レーザ発振寿命特性が向上した。これは、以下の理由か
らだと考えられる。
【0054】AlGaN膜は、少なくとも窒化物半導体
膜にAlが含有されているため、GaN膜やInGaN
膜と比べて表面マイグレーション長が短い。この表面マ
イグレーション長が短いと言う事は、Alを含まないそ
の他の窒化物半導体膜と比べてAlGaN膜はマスクに
付着され易いことを意味する。このことが、マスク上方
にボイドを形成させにくくし、前記ボイドからのクラッ
ク発生を抑制し得たと考えられる。また、表面マイグレ
ーション長が短いため、図7で説明されたファセット面
の側壁から窒化物半導体膜が結晶成長し易く、横方向成
長がより顕著になって、結晶歪みが緩和され、結果的に
レーザ発振寿命特性が向上したと考えられる。
【0055】さらに、AlGaN膜について調べたとこ
ろ、AlxGa1-xN膜のAlの組成比xは、0.01以
上0.15以下が好ましく、さらに好ましくは、0.0
1以上0.07以下であった。Alの組成比xが0.0
1よりも小さいと、ボイドの発生を抑制することが難し
くなり得る。一方、Alの組成比xが0.15よりも大
きくなると、前述の表面マイグレーション長が短くなり
過ぎて(横方向成長が不十分)、マスク上方の結晶歪の
緩和効果が得られ難くなる可能性がある。
【0056】本発明はAlGaN膜に限らず、少なくと
も窒化物半導体膜にAlが含有されていれば上記と同様
の効果が得られる。また、窒化物半導体膜として利用さ
れるAlGaN膜の不純物濃度は、3×1017/cm3
以上8×1018/cm3以下が好ましい。このような濃
度範囲でAlと共に不純物が添加されると、窒化物半導
体膜の表面マイグレーション長が短くなって好ましい。
このことによって、より一層の結晶歪を緩和させること
が可能となる。
【0057】次に、前記窒化物半導体膜がInGaN膜
であることは、以下の点において好ましい。InGaN
膜がマスク基板を被覆すると、電流狭窄部部分が作製さ
れる領域(領域Iまたは領域II)の違いによって、レ
ーザ発振寿命の相違が小さくなった。このことによっ
て、素子不良率が低減した。これは、以下の理由からだ
と考えられる。
【0058】InGaN膜は、少なくとも窒化物半導体
膜にInが含有されているため、GaN膜やAlGaN
膜と比べて弾性力がある。そのため、InGaN膜はマ
スクを埋めて、窒化物半導体基板からの結晶歪を窒化物
半導体膜全体に伝播させ得る。これは、マスク上方の結
晶歪と窓部上方の結晶歪との間の差異を緩和させる働き
があると考えられる。
【0059】さらに、InGaN膜について調べたとこ
ろ、InxGa1-xN膜のInの組成比xは、0.01以
上0.18以下が好ましく、さらに好ましくは0.01
以上0.1以下であった。Inの組成比xが0.01よ
りも小さいと、前述のInが含有されたことによる弾性
力の効果が得られにくくなる可能性がある。また、In
の組成比xが0.18よりも大きくなると、InGaN
膜の結晶性が低下してしまう可能性がある。
【0060】本発明はInGaN膜に限らず、少なくと
も窒化物半導体膜にInが含有されていれば上記と同様
の効果が得られる。また、窒化物半導体膜として利用さ
れるInGaN膜の不純物濃度は、1×1017/cm3
以上4×1018/cm3以下が好ましい。このような濃
度範囲でInと共に不純物が添加されると、窒化物半導
体膜の表面モフォロジーが良好であってかつ弾力性を保
有し得るので好ましい。
【0061】(マスク基板を被覆する窒化物半導体膜の
膜厚について)マスク基板が、窒化物半導体膜で完全に
被覆されるためには、前記マスク基板を被覆する窒化物
半導体膜の被覆膜厚は、およそ2μm以上30μm以下
が好ましい。ここで、被覆膜厚とは、平坦な窒化物半導
体基板に、直接窒化物半導体膜を成長させたとき、前記
窒化物半導体膜の膜厚であると定義する。前記被覆膜厚
が2μmよりも薄くなると、マスク基板に形成されたマ
スク幅や窓部幅にも依存するが、概ね窒化物半導体膜で
マスク基板を完全かつ平坦に被覆させることが困難にな
り得る。一方、前記被覆膜厚が30μmよりも厚くなる
と、マスク基板による横方向成長よりも垂直方向(基板
表面に対して垂直方向)の成長の方が次第に強くなり、
結晶歪の緩和効果が充分に発揮されにくくなる。
【0062】(実施の形態2)本実施の形態2では、膜
付きマスク基板に作製されたリッジストライプ構造を有
する窒化物半導体レーザ素子の作製方法が説明される。
ここで、膜付きマスク基板とは、前述で定義されたよう
に、マスク基板に窒化物半導体膜が被覆された基板であ
る。その他の本発明に係る事柄については、実施の形態
1と同じである。
【0063】(膜付きマスク基板の作製方法)膜付きマ
スク基板の作製方法が図3を用いて説明される。図3の
模式図は、GaN基板101(窒化物半導体基板の一
例)上に作製されたマスク200から構成されるマスク
基板と、前記マスク基板上にn型Al0.03Ga0.97N膜
102(窒化物半導体膜の一例)が被覆された膜付きマ
スク基板を表している。
【0064】まず、前記マスク基板は、以下のようにし
て作製される。面方位が(0001)面であるGaN基
板101表面に、SiO2から構成される成長抑制膜が
厚さ0.1μmで蒸着された。前記成長抑制膜は、電子
ビーム蒸着法(EB法)または、スパッタリング法によ
り蒸着された。その後、従来のリソグラフィー技術を用
いて、GaN基板101の<1−100>方向に沿っ
て、ストライプ状のマスク200が形成された。前記ス
トライプ状のマスク200は、マスク幅が13μm、窓
部幅が7μmで形成された。このようにして、本実施の
形態2のマスク基板が完成された。
【0065】次に、前記マスク基板が十分に有機洗浄さ
れ、MOCVD(有機金属気相成長法)装置に搬送され
た。そして、前記マスク基板に、成長温度1050℃の
条件の下、V族原料のNH3(アンモニア)、III族
原料のTMGa(トリメチルガリウム)および同じくI
II族原料のTMAl(トリメチルアルミニウム)が供
給され、さらに前記原料にSiH4(Si不純物濃度1
×1018/cm3)が添加されて、厚さ15μmのn型
Al0.03Ga0.97N膜102(窒化物半導体膜の一例)
が積層された。このようにして、本実施の形態2の膜付
きマスク基板100が完成された(図3)。
【0066】上記で説明された成長抑制膜は、SiO2
以外にSiNx、Al23、TiO2、タングステンまた
はモリブデンなどで構成されても構わない。
【0067】上記で説明されたストライプ状のマスクの
ストライプ方向は、GaN基板101(窒化物半導体基
板の一例)に対して<1−100>方向に沿って形成さ
れたが、GaN基板101に対して<11−20>方向
に沿って形成されても構わない。
【0068】上記で説明された窒化物半導体基板は、
(0001)面を有するGaN基板101が用いられた
が、その他の面方位およびその他の窒化物半導体基板が
用いられても構わない。窒化物半導体基板の面方位に関
しては、C面{0001}、A面{11−20}、R面
{1−102}、M面{1−100}、{1−101}
面などを用いることが好ましい。また、上記面方位から
2度以内のオフ角度を有する基板であれば表面モフォロ
ジーが良好である。さらに、その他の窒化物半導体基板
として、たとえば、窒化物半導体レーザの場合、垂直横
モードの単峰化のためにはクラッド層よりも屈折率の低
い層が該クラッド層の外側に接していることが好まし
く、AlGaN基板が好ましく用いられる。
【0069】(リッジストライプ構造を有する窒化物半
導体レーザ素子の結晶成長方法)次に、前記膜付きマス
ク基板に作製される窒化物半導体レーザ素子が「リッジ
ストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子の結晶
成長方法」、その「プロセス工程」およびその「パッケ
ージ実装」に分けて順次説明される。
【0070】図1は膜付きマスク基板上に成長された窒
化物半導体レーザ素子が、チップ分割された後の窒化物
半導体レーザ素子チップを表している。
【0071】図1の窒化物半導体レーザ素子チップは、
膜付きマスク基板100、n型In 0.07Ga0.93Nクラ
ック防止層103、n型Al0.1Ga0.9Nクラッド層1
04、n型GaN光ガイド層105、発光層106、p
型Al0.2Ga0.8Nキャリアブロック層107、p型G
aN光ガイド層108、p型Al0.1Ga0.9Nクラッド
層109、p型GaNコンタクト層110、n電極11
1、p電極112、SiO2誘電体膜113およびn型
電極パッド114から構成される。ただし、前記膜付き
マスク基板100は、GaN基板101、マスク200
およびn型Al 0.03Ga0.97N膜102から構成されて
いる。
【0072】以下に、窒化物半導体レーザ素子の製造方
法が詳細に説明される。MOCVD装置を用いて、前記
膜付きマスク基板100に、V族原料のNH3とIII
族原料のTMGaまたはTEGa(トリエチルガリウ
ム)に、TMIn(トリメチルインジウム)のIII族
原料とSiH4が加えられ、800℃の成長温度でn型
In0.07Ga0.93Nクラック防止層103が40nm成
長された。次に、基板温度が1050℃に上げられ、T
MAlまたはTEAl(トリエチルアルミニウム)のI
II族原料が用いられて、1.2μm厚のn型Al0.1
Ga0.9Nクラッド層104(Si不純物濃度1×10
18/cm3)が成長され、続いてn型GaN光ガイド層
105(Si不純物濃度1×1018/cm3)が0.1
μm成長された。
【0073】その後、基板温度が800℃に下げられ、
3周期の、厚さ4nmのIn0.15Ga0.85N井戸層と厚
さ8nmのIn0.01Ga0.99N障壁層から構成された発
光層(多重量子井戸構造)106が、障壁層/井戸層/
障壁層/井戸層/障壁層/井戸層/障壁層の順序で成長
された。その際、障壁層と井戸層の両方にSiH4(S
i不純物濃度は1×1018/cm3)が添加された。障
壁層と井戸層、または井戸層と障壁層との間に、1秒以
上180秒以内の成長中断が実施されても構わない。こ
のことにより、各層の平坦性が向上し、発光半値幅が減
少して好ましい。
【0074】発光層にAsが添加される場合はAsH3
(アルシン)またはTBAs(ターシャリブチルアルシ
ン)を、発光層にPが添加される場合はPH3(ホスフ
ィン)またはTBP(ターシャリブチルホスフィン)
を、発光層にSbが添加される場合はTMSb(トリメ
チルアンチモン)またはTESb(トリエチルアンチモ
ン)をそれぞれ添加すると良い。また、発光層が形成さ
れる際、N原料として、NH3以外にN24(ジメチル
ヒドラジン)が用いられても構わない。
【0075】次に、基板温度が再び1050℃まで昇温
されて、厚み20nmのp型Al0. 2Ga0.8Nキャリア
ブロック層107、0.1μmのp型GaN光ガイド層
108、0.5μmのp型Al0.1Ga0.9Nクラッド層
109と0.1μmのp型GaNコンタクト層110が
順次成長された。前記p型不純物としてMg(EtCP
2Mg:ビスエチルシクロペンタジエニルマグネシウ
ム)が5×1019/cm3〜2×1020/cm3で添加さ
れた。p型GaNコンタクト層110のp型不純物濃度
は、p電極112の方向に向かって、p型不純物濃度を
多くした方が好ましい。このことによりp電極形成によ
るコンタクト抵抗が低減する。また、p型不純物である
Mgの活性化を妨げているp型層中の残留水素を除去す
るために、p型層成長中に微量の酸素が混入されても構
わない。
【0076】この様にして、p型GaNコンタクト層1
10が成長された後、MOCVD装置のリアクター内が
全窒素キャリアガスとNH3に変えられ、60℃/分で
温度が降下された。基板温度が800℃に達した時点
で、NH3の供給量が停止され、5分間、前記基板温度
で待機されてから、室温まで降下された。上記基板の保
持温度は650℃から900℃の間が好ましく、待機時
間は、3分以上10分以下が好ましかった。また、降下
温度の到達速度は、30℃/分以上が好ましい。このよ
うにして作製された成長膜がラマン測定によって評価さ
れた結果、前記手法により、従来のp型化アニールが実
行されなくても、成長後すでにp型化の特性が示されて
いた(Mgが活性化していた)。また、p電極形成によ
るコンタクト抵抗も低減していた。上記に加えて従来の
p型化アニールが組み合わせられれば、Mgの活性化率
がより向上して好ましかった。
【0077】上記で説明されたIn0.07Ga0.93Nクラ
ック防止層103は、In組成比が0.07以外であっ
ても構わないし、InGaNクラック防止層自体がなく
ても構わない。しかしながら、クラッド層とGaN基板
との格子不整合が大きくなる場合は、前記InGaNク
ラック防止層が挿入された方がクラック防止の点でより
好ましい。
【0078】上記で説明された発光層106は、障壁層
で始まり障壁層で終わる構成であったが、井戸層で始ま
り井戸層で終わる構成であってもよい。また、井戸層の
層数は、前述の3層に限らず、10層以下であれば閾値
電流密度が低く、室温連続発振が可能であった。特に2
層以上6層以下のとき閾値電流密度が低く好ましかっ
た。さらに上記で説明された発光層に、Alが含有され
ても構わない。
【0079】上記で説明された発光層106は、井戸層
と障壁層との両層にSi(SiH4)が1×1018/c
3添加されたが、Siが添加されなくても構わない。
しかしながら、Siが発光層に添加された方が発光強度
は強かった。発光層に添加される不純物は、前記Si以
外にO、C、Ge、ZnもしくはMgの不純物群のう
ち、少なくともいずれかの不純物が添加されても構わな
い。また、前記不純物群の添加量の総和は、約1×10
17〜8×1018/cm3程度が好ましかった。さらに、
不純物が添加される層は、井戸層と障壁層との両層に限
らず片方の層のみに前記不純物が添加されても良い。
【0080】上記で説明されたp型Al0.2Ga0.8Nキ
ャリアブロック層107は、Al組成比が0.2以外で
あっても構わないし、キャリアブロック層自体が無くて
も構わない。しかしながら、前記キャリアブロック層を
設けた方が閾値電流密度が低くかった。これは、キャリ
アブロック層が発光層にキャリアを閉じ込める働きがあ
るからである。前記キャリアブロック層のAl組成比
は、高くすることによってキャリアの閉じ込めが強くな
って好ましい。また、キャリアの閉じ込めが保持される
程度までAl組成比を小さくすれば、キャリアブロック
層内のキャリア移動度が大きくなり電気抵抗が低くなっ
て好ましい。
【0081】上記の説明では、p型クラッド層とn型ク
ラッド層として、Al0.1Ga0.9N結晶が用いられた
が、Alの組成比が0.1以外のAlGaN3元結晶で
あっても構わない。Alの混晶比が高くなると発光層と
のエネルギーギャップ差および屈折率差が大きくなり、
キャリアや光が該発光層に効率良く閉じ込められ、レー
ザ発振閾値電流密度の低減が図られる。また、キャリア
および光の閉じ込めが保持される程度までAl組成比を
小さくすれば、クラッド層でのキャリア移動度が大きく
なり、素子の動作電圧を低くすることができる。
【0082】上記で説明されたAlGaNクラッド層の
厚みは、0.7μm〜1.5μmが好ましい。このこと
により、垂直横モードの単峰化と光り閉じ込め効率が増
し、レーザの光学特性の向上とレーザ閾値電流密度の低
減が図れる。
【0083】上記で説明されたクラッド層は、AlGa
N3元混晶であったが、AlInGaN、AlGaN
P、AlGaNAsなどの4元混晶であっても良い。さ
らに、p型クラッド層は、電気抵抗を低減するために、
p型AlGaN層とp型GaN層とからなる超格子構
造、またはp型AlGaN層とp型InGaN層とから
なる超格子構造を有していても良い。
【0084】上記では、MOCVD装置による結晶成長
方法が説明されたが、分子線エピタキシー法(MB
E)、ハイドライド気相成長法(HVPE)が用いられ
ても構わない。
【0085】(プロセス工程)続いて、前述の「リッジ
ストライプ構造を有する窒化物半導体レーザ素子の結晶
成長方法」で作製されたエピウエハーがMOCVD装置
から取り出され、窒化物半導体レーザ素子チップに加工
するためのプロセス工程が説明される。ここで、窒化物
半導体レーザ素子を作製し終えた前記エピウエハーの表
面は平坦であり、マスク基板に形成されたマスクおよび
窓部は窒化物半導体膜と発光素子構造とで完全に埋没さ
れていた。
【0086】n電極111は、ドライエッチング法を用
いて、エピウエハーの表側からn型Al0.03Ga0.97
膜102を露出させてから、Hf/Alの順序で形成さ
れた。そして、前記n電極111の上にn型電極パッド
114としてAuが蒸着された。前記n電極材料の他
に、Ti/Al、Ti/MoまたはHf/Auなどが用
いられても構わない。n電極にHfが用いられるとn電
極のコンタクト抵抗が下げられるため好ましい。マスク
基板は、窒化物半導体基板で構成されているため、マス
ク基板の裏面側からn電極が形成されても構わない(図
8参照のこと)。ただし、前記窒化物半導体基板は、n
型の極性を有するように不純物がドーピングされる必要
がある。
【0087】p電極部分は、マスクのストライプ方向と
同じ方向に沿ってストライプ状にエッチングされ、リッ
ジストライプ部(図1)が形成された。前記リッジスト
ライプ部は、マスク中央から4μm離れた位置に領域I
IIを除くようにして形成された。前記リッジストライ
プ部の幅は1.7μmであった。その後、SiO2誘電
体膜113が蒸着され、p型GaNコンタクト層110
が露出されて、p電極112がPd/Mo/Auの順序
で蒸着されて形成された。前記p電極材料の他に、Pd
/Pt/Au、Pd/Au、またはNi/Auのいずれ
かが用いられても構わない。
【0088】最後に、前記エピウエハーは、前記リッジ
ストライプ方向に対して垂直方向にへき開され、共振器
長500μmのファブリ・ペロー共振器が作製された。
共振器長は一般に300μmから1000μmが好まし
い。マスクのストライプ方向が<1−100>方向に沿
って形成された窒化物半導体レーザ素子の共振器端面
は、窒化物半導体結晶のM面({1−100}面)であ
る。共振器端面を形成するためのへき開および窒化物半
導体レーザ素子のチップ分割は、マスク基板の裏面側か
らスクライバーで行われた。ただし、前記へき開は、ウ
エハー全面にスクライバーによる罫書き傷がつけられて
からへき開されるのではなく、ウエハーの一部、たとえ
ば、ウエハーの両端にのみスクライバーによる罫書き傷
がつけられてへき開された。これらのことにより、共振
器端面の急峻性やスクライブによる削りカスがエピ表面
に付着しないため歩留まりが向上する。前記レーザ共振
器の帰還手法以外に、一般に知られているDFB(Di
stributed Feedback)、DBR(D
istributed Bragg Reflecto
r)が用いられても構わない。前記ファブリ・ペロー共
振器の共振器端面が形成された後、該端面に70%の反
射率を有するSiO2とTiO2の誘電体膜が交互に蒸着
され、誘電体多層反射膜が形成された。前記誘電体材料
以外に、SiO 2/Al23が誘電多層反射膜として用
いられても構わない。以上のようにして図1の窒化物半
導体レーザ素子チップが作製された。
【0089】(パッケージ実装)次に、上記半導体レー
ザ素子チップがパッケージに実装される方法について述
べられる。高出力(30mW以上)窒化物半導体レーザ
素子チップは、放熱対策に注意を払わなければならな
い。たとえば、前記高出力窒化物半導体レーザ素子チッ
プは、Inはんだ材を用いて、Junction do
wnでパッケージ本体に接続されることが好ましい。ま
た、前記高出力窒化物半導体レーザ素子チップは、直接
パッケージ本体やヒートシンク部に取り付けられるので
はなく、Si、AlN、ダイヤモンド、Mo、CuW、
BN、Fe、Cu、SiCまたはAuのいずれかのサブ
マウントを介して接続されても構わない。
【0090】以上の結果、本発明の最適位置に窒化物半
導体レーザ素子の電流狭窄部分が作製されることによっ
て、レーザ出力30mW、雰囲気温度60℃の条件の
下、レーザ発振寿命約13000時間が達成された。
【0091】本実施の形態2で述べられたリッジストラ
イプ部の形成位置、マスク幅および窓部幅は、前述の実
施の形態1で述べた条件を満足していれば、その他の数
値で作製されても構わない。
【0092】(実施の形態3)本実施の形態3は、実施
の形態2で述べられたリッジストライプ構造を有する窒
化物半導体レーザ素子を、電流阻止層を有する窒化物半
導体レーザ素子(図4(b))に変えた事以外は実施の
形態1または実施の形態2と同様である。
【0093】以下に電流阻止層を有する窒化物半導体レ
ーザ素子が、図9を用いて説明される。
【0094】図9は、膜付きマスク基板100、n型I
0.07Ga0.93Nクラック防止層103、n型Al0.1
Ga0.9Nクラッド層104、n型GaN光ガイド層1
05、発光層106、p型Al0.2Ga0.8Nキャリアブ
ロック層107、p型GaN光ガイド層108、p型A
0.1Ga0.9N第1クラッド層109a、電流阻止層1
20、p型Al0.1Ga0.9N第2クラッド層109b、
p型GaNコンタクト層110、n電極111、p電極
112から構成される。
【0095】電流阻止層120は、p型電極112から
注入された電流が、図9で示された電流阻止層間幅のみ
を通過できるように電流を阻止する層であれば良い。た
とえば、電流阻止層120として、n型Al0.25Ga
0.75N層を用いても良い。前記電流阻止層のAl組成比
は0.25に限らず、その他の値でも構わない。
【0096】本実施の形態3では、マスク基板に形成さ
れたマスクの幅が10μm、窓部の幅が5μm、マスク
の厚みが0.1μmおよび電流阻止層間幅が1.8μm
で作製された。また、2つの電流阻止層120に挟まれ
た部分の一端が、マスク中央から3μm離れた位置に形
成され、なおかつ前記2つの電流阻止層120に挟まれ
た部分がマスク中央の上方を含まないように作製された
(本発明の領域Iに該当する位置)。
【0097】(実施の形態4)本実施の形態4は、窒化
物半導体基板に積層された窒化物半導体層上に、マスク
が作製されたこと意外は、実施の形態1から3のいずれ
かと同様である。本実施の形態4の、膜付きマスク基板
の作製方法が以下で説明される。
【0098】まず、面方位が(0001)面であるGa
N基板(窒化物半導体基板の一例)がMOCVD装置に
装填された。そして、550℃の成長温度で、NH3
TMGaが前記GaN基板に供給されて、低温GaNバ
ッファ層が形成された。次に、成長温度が1050℃ま
で昇温され、NH3、TMGaおよびSiH4が供給され
て、前記低温GaNバッファ層上にn型GaN層(窒化
物半導体層の一例)が形成された。前記n型GaN層が
形成された後、該基板がMOCVD装置から取り出され
た。
【0099】続いて、MOCVD装置から取り出された
該基板の前記n型GaN層の表面に、SiNxから構成
される成長抑制膜が厚さ0.15μmで蒸着された。前
記SiNxは、スパッタリング法で蒸着された。その
後、従来のリソグラフィー技術を用いて、前記GaN基
板の<1−100>方向に沿って、ストライプ状のSi
xのマスクが形成された。前記マスクは、マスク幅が
8μm、窓部幅が2μmで形成された。このようにし
て、本実施の形態4のマスク基板が完成された。
【0100】次に、前記マスク基板が十分に有機洗浄さ
れ、MOCVD(有機金属気相成長法)装置に搬送され
た。そして、前記マスク基板に、成長温度1050℃の
条件の下、V族原料のNH3、III族原料のTMGa
およびSiH4(Si不純物濃度1×1018/cm3)が
供給されて、厚さ20μmのGaN膜(窒化物半導体膜
の一例)が積層された。このようにして、本実施の形態
4の膜付きマスク基板が完成された。
【0101】本実施の形態4で説明された低温GaNバ
ッファ層は、低温AlxGa1-xNバッファ層(0≦x≦
1)であれば良く、また、前記低温バッファ層自体が形
成されなくても構わない。しかしながら、現在、供給さ
れているGaN基板は表面モフォロジーが好ましくない
ため、低温AlxGa1-xNバッファ層(0≦x≦1)が
挿入された方が、表面モフォロジーが改善されて好まし
い。ここで、低温バッファ層とは、約450℃〜600
℃の成長温度で形成されるバッファ層のことを指す。こ
れらの成長温度範囲で作製されたバッファ層は多結晶も
しくは非晶質である。
【0102】本実施の形態4で述べられたマスク基板に
形成されるマスク幅および窓部幅は、実施の形態1で述
べた条件を満足していれば、その他の数値で作製されて
も構わない。
【0103】本実施の形態4の膜付きマスク基板の作製
方法に関わるその他の事柄については、実施の形態1と
同様である。
【0104】(実施の形態5)本実施の形態5は、A
s、PもしくはSbの元素群のうち少なくともいずれか
の元素を窒化物半導体レーザ素子の発光層に含有したこ
と以外は、上記実施の形態1から実施の形態4のいずれ
かと同様である。
【0105】本発明は、As、PもしくはSbの元素群
のうち少なくともいずれかの元素が、窒化物半導体発光
レーザ素子を構成している発光層のうち少なくとも井戸
層に含有される。このとき、前記井戸層に含有された元
素群の総和の組成比をXとし、同じく前記井戸層のN元
素の組成比をYとするとき、XはYよりも小さく、X/
(X+Y)は0.3(30%)以下であり、好ましくは
0.2(20%)以下である。また、前記元素群の総和
の下限値は、1×1018/cm3以上である。前記元素
群の総和の組成比Xが20%よりも高くなると、井戸層
内のある領域ごとに前記元素の組成比の異なる濃度分離
が次第に生じ始める。さらに前記元素群の総和の組成比
Xが30%よりも高くなると、今度は濃度分離から六方
晶系と立方晶系が混在する結晶系分離に移行し始めて井
戸層の結晶性が低下し始める。一方、前記元素群の総和
の添加量が1×1018/cm3よりも小さくなると、井
戸層に前記元素を含有したことによる効果が得られにく
くなる。
【0106】本実施の形態5による効果は、井戸層に前
記元素群のうち少なくともいずれかの元素が含有される
ことによって、井戸層の電子とホールの有効質量が小さ
く、また、井戸層の電子とホールの移動度が大きくな
る。半導体レーザ素子の場合、前者は少ない電流注入量
でレーザ発振のためのキャリア反転分布が得られること
を意味し、後者は発光層で電子とホールが発光再結合に
よって消滅しても新たに電子・ホールが拡散により高速
に注入されることを意味する。すなわち、現在報告され
ている、発光層にAs、PもしくはSbの元素群のうち
何れも含有しないInGaN系窒化物半導体レーザ素子
と比べて、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、閾値電
流密度が低く、自励発振特性の優れた(雑音特性に優れ
た)半導体レーザを作製することが可能である。
【0107】(実施の形態6)本実施の形態6は、本発
明に係る窒化物半導体レーザ素子が半導体光学装置に適
用された場合について説明される。
【0108】本発明による青紫色(380〜420nm
の発振波長)窒化物半導体レーザ素子は半導体光学装
置、たとえば光ピックアップ装置に利用されると以下の
点において好ましい。前記窒化物半導体レーザ素子は、
高出力(30mW)、高温雰囲気中(60℃)で安定し
て動作し、なおかつレーザ発振寿命が長寿命であること
から、信頼性の高い高密度記録再生用光ディスク装置に
最適である(発振波長が短いほど、より高密度に記録再
生が可能となる)。
【0109】図10に本発明の窒化物半導体レーザ素子
が半導体光学装置に利用された一例として、光ディスク
装置(光ピックアップを有する装置。たとえば、DVD
装置など)の概略図が示される。図10のレーザ光は、
入力情報に応じて光変調器で変調され、レンズを通して
ディスク上に記録される。再生時は、ディスク上のピッ
ト配列によって光学的に変化を受けたレーザ光がスプリ
ッターを通して光検出器で検出され、再生信号となる。
これらの動作は制御回路によって制御される。レーザ出
力については、通常、記録時は30mWで、再生時は5
mW程度である。
【0110】本発明は、上記光ピックアップ装置を有す
る光ディスク装置の他に、たとえば、レーザプリンタ
ー、バーコードリーダー、光の三原色(青色、緑色、赤
色)レーザによるプロジェクターなどにも利用可能であ
る。
【0111】なお、今回開示された実施の形態はすべて
の点で例示であって制限的なものではないと考えられる
べきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特
許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の
意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意
図される。
【0112】
【発明の効果】本発明により、レーザ発振寿命の長寿命
化を有する窒化物半導体レーザ素子と前記窒化物半導体
レーザ素子を利用した半導体光学装置を提供することが
できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 マスク基板に窒化物半導体膜が被覆される状
態を表した図である(n電極とp電極は、互いに同一の
向きで配置される)。
【図2】 マスク基板の一例を示した模式図であり、そ
のうち(a)はマスク基板の一例の断面を、(b)はマ
スク基板の一例の上面を、それぞれ表している。
【図3】 膜付きマスク基板の一例である。
【図4】 窒化物半導体レーザ構造の模式図であり、そ
のうち(a)はリッジストライプ構造を有する窒化物半
導体レーザ素子の一例であり、(b)は電流阻止層を有
する窒化物半導体レーザ素子の一例である。
【図5】 膜付きマスク基板上に作製された窒化物半導
体レーザ素子のリッジストライプ部の形成位置とレーザ
発振寿命との関係が表された図である。
【図6】 窒化物半導体レーザ素子の電流狭窄部分が膜
付きマスク基板上に作製され得る、好ましい作製領域が
表された模式図である。
【図7】 マスク基板に窒化物半導体膜が被覆される様
を表した図であり、そのうち(a)は{11−20}フ
ァセット面から窒化物半導体が成長する様子を示す図
で、(b)は窪み部分が窒化物半導体膜で被覆される様
子を示す図である。
【図8】 リッジストライプ部を有する窒化物半導体レ
ーザ素子チップである(n電極とp電極は、互いに対向
する位置に配置される)。
【図9】 電流阻止層を有する窒化物半導体レーザ素子
チップの一例である。
【図10】 本発明を用いた半導体光学装置の一例であ
る(光ピックアップ装置)。
【符号の説明】
100 膜付きマスク基板、101 GaN基板、10
2 n型Al0.03Ga 0.97N膜、103 n型In0.07
Ga0.93Nクラック防止層、104 n型Al 0.1Ga
0.9Nクラッド層、105 n型GaN光ガイド層、1
06 発光層、107 p型Al0.2Ga0.8Nキャリア
ブロック層、108 p型GaN光ガイド層、109
p型Al0.1Ga0.9Nクラッド層、110 p型GaN
コンタクト層、111 n電極、112 p電極、11
3 SiO2誘電体膜、114 n型電極パッド、12
0 電流阻止層、200 マスク。

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 窒化物半導体基板に積層された窒化物半
    導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、 窒化物半導体がエピタキシャル成長を抑制する成長抑制
    膜から構成されるストライプ状のマスクと、 前記マスクが形成されていないストライプ状の窓部と、
    を有するマスク基板があって、 前記マスク基板を被覆する窒化物半導体膜と、 少なくともn型層とp型層とによって挟まれた、井戸層
    または井戸層と障壁層とから構成された発光層を有する
    発光素子構造とを、 前記マスク基板上に順次成長させ、 前記マスクにおける幅方向の中央をマスク中央とし、 前記窓部における幅方向の中央を窓部中央とし、 前記マスクのストライプ方向に向かって前記マスク中央
    から左右に1μm未満を除く領域、 かつ前記窓部のストライプ方向に向かって前記窓部中央
    から左右に1μm未満を除く領域に、 前記発光素子構造の電流狭窄部分が作製されることを特
    徴とする窒化物半導体レーザ素子。
  2. 【請求項2】 窒化物半導体基板に積層された窒化物半
    導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、 前記マスクと前記窓部とが形成されたマスク基板があっ
    て、 前記マスク基板を被覆する窒化物半導体膜と、前記発光
    素子構造とを、 前記マスク基板上に順次成長させ、 前記マスクの上方の領域であって、 なおかつ前記マスクのストライプ方向に向かって前記マ
    スク中央から左右に1μm以上の領域に、 前記発光素子構造の電流狭窄部分が作製されることを特
    徴とする請求項1記載の窒化物半導体レーザ素子。
  3. 【請求項3】 窒化物半導体基板に積層された窒化物半
    導体層に、もしくは窒化物半導体基板に、 前記マスクと前記窓部とが形成されたマスク基板があっ
    て、 前記マスク基板を被覆する窒化物半導体膜と、前記発光
    素子構造とを、 前記マスク基板上に順次成長させ、 前記マスクの上方の領域と前記窓部の上方の領域とに跨
    るようにして前記発光素子構造の電流狭窄部分が作製さ
    れることを特徴とする請求項1記載の窒化物半導体レー
    ザ素子。
  4. 【請求項4】 前記マスクの幅が5μm以上30μm以
    下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに
    記載の窒化物半導体レーザ素子。
  5. 【請求項5】 前記窓部の幅が2μm以上20μm以下
    であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記
    載の窒化物半導体レーザ素子。
  6. 【請求項6】 前記マスクの幅が前記窓部幅よりも広い
    ことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の窒
    化物半導体レーザ素子。
  7. 【請求項7】 前記窒化物半導体膜が少なくともAx
    1-xN(Al組成比xは0.01以上0.15以下)
    から構成されることを特徴する請求項1から3のいずれ
    かに記載の窒化物半導体レーザ素子。
  8. 【請求項8】 前記窒化物半導体膜がInxGa1-x
    (In組成比xは0.01以上0.18以下)から構成
    されることを特徴する請求項1から3のいずれかに記載
    の窒化物半導体レーザ素子。
  9. 【請求項9】 As、PもしくはSbの元素群のうち少
    なくともいずれかの元素が、前記井戸層に含有されるこ
    とを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の窒化
    物半導体レーザ素子。
  10. 【請求項10】 前記窒化物半導体基板は、Si、O、
    Cl、S、C、Ge、Zn、Cd、MgもしくはBeの
    不純物群のうち、少なくともいずれかの不純物が添加さ
    れていて、その不純物の総添加量が5×1017/cm3
    以上5×101 8/cm3以下であることを特徴とする請
    求項1記載の窒化物半導体レーザ素子。
  11. 【請求項11】 請求項1から10のいずれかに記載の
    窒化物半導体レーザ素子を利用した半導体光学装置。
JP2001032274A 2001-01-15 2001-02-08 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置 Expired - Fee Related JP3869663B2 (ja)

Priority Applications (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001032274A JP3869663B2 (ja) 2001-02-08 2001-02-08 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置
PCT/JP2002/000062 WO2002056435A1 (en) 2001-01-15 2002-01-09 Nitride semiconductor laser element and optical device containing it
US10/466,339 US6891201B2 (en) 2001-01-15 2002-01-09 Nitride semiconductor laser element and optical device containing it

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001032274A JP3869663B2 (ja) 2001-02-08 2001-02-08 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置

Related Child Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2006243015A Division JP2006339675A (ja) 2006-09-07 2006-09-07 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2002237659A true JP2002237659A (ja) 2002-08-23
JP3869663B2 JP3869663B2 (ja) 2007-01-17

Family

ID=18896234

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001032274A Expired - Fee Related JP3869663B2 (ja) 2001-01-15 2001-02-08 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3869663B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7633983B2 (en) 2006-12-14 2009-12-15 Sharp Kabushiki Kaisha Semiconductor laser device

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US7633983B2 (en) 2006-12-14 2009-12-15 Sharp Kabushiki Kaisha Semiconductor laser device

Also Published As

Publication number Publication date
JP3869663B2 (ja) 2007-01-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4703014B2 (ja) 窒化物半導体発光素子、光学装置、および半導体発光装置とその製造方法
US6614824B2 (en) Nitride semiconductor laser device and optical device using the same
US6984841B2 (en) Nitride semiconductor light emitting element and production thereof
US6815728B2 (en) Nitride semiconductor light-emitting device and optical device and light-emitting apparatus with the nitride semiconductor light-emitting device
US6891201B2 (en) Nitride semiconductor laser element and optical device containing it
JP2002151796A (ja) 窒化物半導体発光素子とこれを含む装置
JP2003133649A (ja) 窒化物半導体レーザ素子及び窒化物半導体レーザ素子の製造方法及びこれを備えた半導体光学装置
US6891189B2 (en) Nitride semiconductor laser device and optical pickup apparatus therewith
JP3910043B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子、その製造方法および半導体光学装置
WO2002056434A1 (fr) Puce d'element electroluminescent a semiconducteur au nitrure et dispositif dans lequel elle est incorporee
JP4854133B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子とこれを含む光学装置
JP2007131527A (ja) 窒化物半導体基板、窒化物半導体レーザ素子、窒化物半導体基板の製造方法、および窒化物半導体レーザ素子の製造方法
JP4426980B2 (ja) 半導体発光素子の製造方法
JP2001156327A (ja) 半導体発光装置
JP4683731B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子とこれを含む光学装置
JP4683730B2 (ja) 窒化物半導体発光素子とこれを含む装置
JP4936598B2 (ja) 窒化物半導体発光素子とその製法
JP4146881B2 (ja) 窒化物半導体発光素子およびエピウエハとその製造方法
JP5031674B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子および窒化物半導体レーザ素子の製造方法
JP4656782B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子とその半導体光学装置
JP2004146420A (ja) 窒化物半導体レーザ素子、その製造方法及びそれを備えた半導体光学装置
JP4251813B2 (ja) 窒化物半導体発光素子の製造方法
JP3869663B2 (ja) 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置
JP5074863B2 (ja) 窒化物半導体発光素子およびエピウエハとその製造方法
JP2006339675A (ja) 窒化物半導体レーザ素子および半導体光学装置

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060425

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060620

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20060711

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060907

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20060914

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20061010

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20061013

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 3869663

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091020

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101020

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111020

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121020

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131020

Year of fee payment: 7

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees