JP2002224816A - シリンダブロック - Google Patents

シリンダブロック

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JP2002224816A
JP2002224816A JP2001024222A JP2001024222A JP2002224816A JP 2002224816 A JP2002224816 A JP 2002224816A JP 2001024222 A JP2001024222 A JP 2001024222A JP 2001024222 A JP2001024222 A JP 2001024222A JP 2002224816 A JP2002224816 A JP 2002224816A
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cylinder block
reinforcing material
porous
metal matrix
cylinder
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JP2001024222A
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English (en)
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Yasuaki Hasegawa
泰明 長谷川
Masahiko Shibahara
雅彦 芝原
Nobuyuki Oda
信行 小田
Yukihiro Sugimoto
幸弘 杉本
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Mazda Motor Corp
Original Assignee
Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】エッチング処理およびエッチング溶液の後処理
が一切不要で、表面粗さを小さくすることができて、摩
擦特性の向上とピストン摺動抵抗の低減とを図ることが
でき、またボア表面の強化材が多孔体であることに起因
して、油膜が良好に形成され、油保持性の向上を図るこ
とができるシリンダブロックを提供する。 【解決手段】少なくともシリンダボア摺動部3が、シリ
ンダブロック1を形成する金属マトリクスに、金属多孔
体で構成される強化材4が複合化されたシリンダブロッ
クであって、上記シリンダボア摺動部3の表面粗さはR
z1〜6μmで、かつ上記強化材4は金属マトリクス中
に短い方向の長さが10〜500μmの範囲で網目状ま
たは島上に分散し、金属マトリクス表面よりもボア径方
向内方へ所定量突出形成されたことを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、少なくともシリ
ンダボア摺動部が金属多孔体の強化材で複合強化された
ようなライナーレス構造のシリンダブロックに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリンダブロックとしてはアルミ
合金製のシリンダブロック本体のボア摺動部に鋳鉄製の
ライナ(詳しくはシリンダライナ)を圧入または鋳ぐるん
だものがある。しかし、この場合には母材としてのアル
ミ合金とライナの鋳鉄とで熱膨張率が異なる関係上、ラ
イナとピストンとの間にクリアランスを形成する必要が
あり、このクリアランスに起因して騒音が発生する問題
点があった。
【0003】またライナを構成する鋳鉄はアルミ合金に
対して熱伝導率が低く、放熱性が悪いので、エンジンの
出力構造を図るうえで不都合があった。一方、鋳鉄製の
ライナを設けないで、アルミ合金製の母材をそのままボ
ア摺動部に設定すると、耐摩耗性が確保できない問題点
があった。
【0004】このような問題点を解決するために従来よ
りセラミックス製多孔体や金属多孔体でシリンダボア摺
動部を強化する手段が既に発明されている。上述のセラ
ミックス製多孔体でシリンダボア摺動部を強化するもの
としては、例えば特開平9−14045号公報に記載の
ものがある。
【0005】すなわち、円筒状のセラミックス製多孔体
(いわゆるプリフォーム)をアルミニウム合金溶湯で鋳ぐ
るんだシリンダブロックであるが、この従来構造におい
ては、セラミック製の多孔体は合金溶湯との濡れ性がよ
くなく、多孔体の空隙内に用湯が含浸しにくいという問
題点があった。
【0006】このシリンダブロックの鋳造後、シリンダ
ボア摺動部が仕上げ加工(研摩加工)されてシリンダブロ
ックが完成するが、上述の仕上げ加工時(砥石による研
摩加工時)に金属多孔体の表面に母材のアルミ合金が塑
性流動してかぶる問題点が発生する。これによりピスト
ンとシリンダボアの焼付く恐れがある。
【0007】そこで、このような「かぶり」を解消する
ために電解エッチング処理を施して、強化材の表面にか
ぶったアルミ合金を優先的に溶かすが、工程の複雑化や
後処理の問題がある。さらに、エッチング溶液によるか
ぶりの除去時に金属多孔体およびアルミ合金の母材に小
孔が形成され、このためシリンダボア摺動部の表面粗さ
がRz7μm以上に粗くなる。ここにRzとは十点平均
粗さのことである。このように表面粗さがRz7μm以
上に粗くなると、相手部材に対する研摩性が高くなるの
で、相手部材としてのピストンリングが傷付く問題点が
あった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、シリンダ
ボア摺動部の表面粗さがRz1〜6μmで、かつ金属多
孔体で構成される強化材はシリンダブロックを形成する
金属マトリクス中に、短い方向の長さが10〜500μ
mの範囲で網目状または島状に分散し、上述強化材がマ
トリクス表面よりもボア径方向内方へ所定量突出形成す
ることで、強化材の1つの大きさが大きく、仕上げ加工
時に母材が強化材にかぶることがなく、これにより、エ
ッチング処理およびエッチング溶液の後処理が一切不要
で、表面粗さを小さくすることができて、摩擦特性の向
上とピストン摺動抵抗の低減とを図ることができ、また
ボア表面の強化材が多孔体であることに起因して、油膜
が良好に形成され、油保持性の向上を図ることができる
シリンダブロックの提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】この発明によるシリンダ
ブロックは、少なくともシリンダボア摺動部が、シリン
ダブロックを形成する金属マトリクスに、金属多孔体で
構成される強化材が複合化されたシリンダブロックであ
って、上記シリンダボア摺動部の表面粗さはRz1〜6
μmで、かつ上記強化材は金属マトリクス中に短い方向
の長さが10〜500μmの範囲で網目状または島上に
分散し、金属マトリクス表面よりもボア径方向内方へ所
定量突出形成されたものである。上記構成のシリンダブ
ロックを形成する金属マトリクスは、シリンダブロック
の母材のマトリクスであって、母材としてはアルミまた
はアルミ合金を用いることができる。
【0010】上記構成によれば、金属マトリクス中に分
散する強化材の短い方向の長さ(幅または径)が10〜5
00μmの範囲で、強化材の1つの大きさが大きく、仕
上げ加工時に母材が強化材にかぶることがなくなる。
【0011】上記数値が10μm未満の場合には「かぶ
り」の影響を受け、上記数値が500μmを超える場合
には相手材(ピストンリング)を支持する強化材の間隔が
大きくなりすぎ、アルミ合金母材が直接摺動することで
摩耗が進行するので、上記範囲内とする。
【0012】このように、「かぶり」がなくなることで
従来のエッチング処理およびエッチング溶液の後処理が
一切不要となり、この結果、表面粗さをRz1〜6μ
m、望ましくはRz1〜3μmに小さくすることができ
て、摩擦特性の向上と、ピストン摺動抵抗の低減とを図
ることができる。
【0013】さらに、シリンダボア摺動部の表面の強化
材が多孔体で、この強化材は金属マトリクス表面よりも
ボア径方向内方(つまりピストン側)へ所定量突出形成さ
れているので、油膜が良好に形成され、油保持性(潤滑
性能)の向上を図ることができる。
【0014】この発明の一実施態様においては、上記強
化材は表面部において金属マトリクス中の面積率が8〜
25%に設定されたものである。上記構成によれば、耐
摩耗性の向上と、金属多孔体を円筒状に成形する際の成
形性向上との両立を図ることができる。
【0015】上記面積率が8%未満の場合には、強化材
の量の過少に起因して充分な耐摩耗性が確保できず、逆
に面積率が25%を超える場合には、強化材の量の過多
に起因して、金属多孔体を円筒状に成す際の成形性が低
下するので、上述の範囲内とする。
【0016】この発明の一実施態様においては、上記分
散する強化材はピストン摺動方向の間隔がピストンリン
グの厚みよりも小さく設定されたものである。上記構成
によれば、シリンダボア摺動部において金属マトリクス
中に分散する強化材相互の間隔がピストンリングの厚み
(一般的に1.2〜1.5mm程度)よりも小さいので、ピ
ストン摺動時の抵抗とならない。
【0017】この発明の一実施態様においては、上記金
属多孔体はFe、Cr、Niのうちの少なくとも2種以
上の金属から構成されたものである。上記構成によれ
ば、FeとCrの構成、CrとNiの構成、FeとNi
の構成またはFe、Cr、Niの構成の何れにおいて
も、耐摩耗性に優れたシリンダブロックを構成すること
ができる。
【0018】この発明の一実施態様においては、上記金
属多孔体はFe、Cr、Niを含む複数の金属から構成
されたものである。上記構成のFe、Cr、Niの重量
配分において望ましい重量配分は、Cr=18wt%、N
i=8wt%、Feが残部であるが、これに限定されるも
のではない。
【0019】上記構成によれば、高耐摩耗性のFe合金
が形成されるので、NiとCrのみの金属から成る金属
多孔体に対して、耐摩耗性をより一層向上させることが
できる。
【0020】
【実施例】この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳
述する。図1は金属多孔体で複合強化されたエンジンの
シリンダブロック(いわゆる金属多孔体複合強化ライナ
ス・アルミブロック)を示し、このシリンダブロック1
において、2はアルミ合金製のシリンダブロック本体、
3はシリンダボア摺動部、4は該ボア摺動部3に分散す
る強化材である。
【0021】この強化材4は金属多孔体で構成され、こ
の金属多孔体がシリンダブロック本体2を形成するアル
ミ合金の溶湯で鋳ぐるまれて当該シリンダブロック1が
形成されたものである。
【0022】すなわち、金属多孔体でシリンダボア摺動
部を強化するには、まず、金属粉末をウレタン等に塗布
し、次に燒結工程にてウレタンを除去して金属多孔体を
形成し、この多孔体を円筒状に成形する。そして円筒状
に成形された金属多孔体をシリンダブロック鋳造用金型
のキャビティに設置した状態下においてアルミ合金の溶
湯を注入し、金属多孔体を鋳ぐるむようにしてシリンダ
ブロックを鋳造する。
【0023】図2は上記シリンダブロック1の製造工程
を示し、まず、ステップS1(第一の工程)でシート状の
金属多孔板を形成する。この場合、金属多孔体としては
Fe、Cr、Niのうちの少なくとも2種以上の金属
(これらの組合せとしてはFeとCr、CrとNi、F
eとNiまたはFeとCrとNiとの各組合せがある)
を含むものを用い、望ましくは、Fe、Cr、Niの全
ての金属を含むものを用い、さらに望ましくはCr=1
8wt%、Ni=8wt%、Fe=残部の組成割合のものを
用いる。
【0024】次にステップS2(第二の工程)で、シート
状の金属多孔板をシリンダボア形状に対応させて円筒状
に成し、かつ金属多孔体とする。次にステップS3(第
三の工程)で、円筒状の金属多孔体を金型のキャビティ
に設置する。
【0025】次にステップS4(第四の工程)で、上述の
金属多孔体がキャビティに設置された状態下においてア
ルミ合金の溶湯を注入すると、ステップS5(第五の工
程)でシリンダブロックが形成され、金属多孔体はアル
ミ合金の母材に鋳ぐるまれた状態となる。
【0026】次にステップS6(第六の工程)で、シリン
ダブロック形成後において予め荒加工を行った後に、シ
リンダボア摺動部3をプラトーホーニングして、その表
面粗さがRz6μm以下、望ましくはRz3μm以下と
なり、かつ、金属多孔体による強化材4が金属マトリク
スとしてのアルミ合金の母材表面よりも所定量H(図5
参照)シリンダボア径方向内方つまりピストン側へ突出
するように構成する。
【0027】ここで、プラトーホーニング(plateau hor
ning)とは、ホーニング目の頂点を研摩砥石にて1μm
以下で再研摩し、平担部(プラトー)を形成する処理のこ
とである。
【0028】図3はプラトーホーニング加工後における
シリンダボア摺動部3の上死点付近の拡大説明図であっ
て、図中、白抜きで示す部分5はアルミ合金の母材であ
り、黒で塗り潰した部分は金属多孔体で構成される強化
材の4である。
【0029】同様に図4はプラトーホーニング加工後に
おけるシリンダボア摺動部3の下死点付近の拡大説明図
であって、図中白抜きで示す部分5はアルミ合金の母材
であり、黒で塗り潰した部分は金属多孔体で構成される
強化材4である。
【0030】図3、図4から明らかなようにシリンダボ
ア摺動部3において上述の強化材4はアルミ合金の母材
(金属マトリクス)中に短い方向の長さ(幅または径)が1
0〜500μmの範囲で網目状または島上に分散してい
る。
【0031】ここで、上述の短い方向の長さが10μm
未満の場合には砥石による研摩加工時に「かぶり」の影
響を受け、500μmを超える場合には相手材としての
ピストンリングに対する研摩性が大となるので、上述の
10〜500μmの範囲に設定したものである。
【0032】しかも、シリンダボア摺動部3の表面部に
おいてアルミ合金の母材(図3、図4の部分5参照)に対
する強化材4の面積率は8〜25%、望ましくは10〜
20%に設定されている。
【0033】ここで、上述の面積率が8%未満の場合に
は、強化材4の量の過少に起因して充分な耐摩耗性が確
保できず、逆に面積率が25%を超える場合には、強化
材4の量の過多に起因して、金属多孔体を円筒状に成形
する時(図2のステップS2参照)の成形性が低下するの
で、上述の8〜25%の範囲に設定したものである。
【0034】図5はプラトーホーニング後においてシリ
ンダボア摺動部3の上死点付近の表面性状を触針式測定
器を用いて実測した結果(但し、プラトーホーニングに
より表面粗さをRz3μmに仕上げたもので、未使用の
状態)を示す。
【0035】この図5は横軸にシリンダボアの高さ方向
(上下方向)をとり、縦軸に粗さをとったもので、アルミ
合金の母材中に分散する強化材4はピストン摺動方向
(図5の横軸方向)り間隔Lかピストンリングの厚み(一
般的に1.2〜1.5mm)よりも小さく設定されてい
る。
【0036】また強化材4がボア径方向内方へ突出する
突出高さHは約1μm前後に設定されている。ここで、
上述の突出高さHが存在することは、アルミ合金の母材
がかぶっていないことを意味する。
【0037】図6は図5で示した表面性状のシリンダブ
ック1に対してピストンリングテストピースを圧力20
MPaで押し付け、回転数210rpmで潤滑往復摺動させた
後の表面性状を触針式測定器による触針法にて実測した
結果を示し、図6の横軸および縦軸は図5のそれと同一
である。
【0038】図7は図2で示した製造工程により表面粗
さRz1μm、Rz3μm、Rz6μmに仕上げた本実
施例品と、エッチング処理を施した表面粗さRz8μm
の比較品と、金属多孔体を一切有さずにアルミダイキャ
ストがシリンダボア摺動面にむき出し形成された比較品
とのそれぞれの摩耗量測定結果を示す。
【0039】この図7においてハッチングを施さない状
態で示す特性a,c,e,g,iはシリンダボア摺動部
の摩耗量を示し、ハッチングを施した状態で示す特性
b,d,f,h,jは相手材としてのトップリングの摩
耗量を示す。
【0040】図7から明らかなようにエッチング処理が
施された比較品は、エッチング溶液により小孔が形成さ
れ、これにより相手部材に対する研摩性が大きくなるの
で、特性hで示すようにトップリングの摩耗量が約5μ
mと大きくなり、さらに特性gで示すようにシリンダボ
ア摺動部の摩耗量が約3μmと大きくなる。またアルミ
ダイキャストがシリンダボア摺動面にむき出し形成され
た比較品はシリンダボア摺動部の耐摩耗性が極めて低い
ので、特性iで示すようにシリンダボア摺動部の摩耗量
が約16μmと極めて大きくなる。
【0041】これに対して本実施例品の表面粗さがRz
6μm以下のもの(但し、Rz6μmのものを含む)、望
ましくは表面粗さがRz3μm以下のものは、それぞれ
特性a〜fで示すようにシリンダボア摺動部3および相
手材としてのトップリングの何れも充分に低い磨耗量を
確保することができた。
【0042】図8は図2で示した製造工程により表面粗
さRz1μm、Rz3μm、Rz6μmに仕上げた本実
施例品(特性u,v,w参照)のシリンダブロック側テス
トピースと、ピストン側テストピースとを用いて、圧力
20MPaの条件下にて摩擦係数を測定した結果を示し、
同図から明らかなように表面粗さRz1μm、Rz3μ
m、Rz6μmの何れの本実施例品においても摩擦係数
が0.08以下の優れた結果を得ることができた。
【0043】図9は比較例として鋳鉄ライナのものにお
いてプラトーホーニングを施さない表面粗さRz4μm
のもの(特性x参照)と、プラトーホーニングを施した表
面粗さRz4μmのもの(特性y参照)と、プラトーホー
ニングを施した表面粗さRz2μmのもの(特性z参)と
を構成し、これら比較品のシリンダブロック側テストピ
ースと、ピストン側テストピースとを用いて圧力20MP
aの条件下にて摩擦係数を測定した結果を示し、同図の
特性x,y,zから明らかなように鋳鉄ライナの各比較
品では何れも摩擦係数が0.1を超え、摩擦特性が不充
分であった。
【0044】図10は強化材4を構成する金属多孔体と
してNiとCrとの2種の金属を含む本実施例品のもの
と、同様に強化材4を構成する金属多孔体としてFe、
Ni、rの3種の金属を含むステンレス鋼(いわゆるS
US)の本実施例品のものと、比較例としての鋳鉄製ラ
イナ(比較品)とに対して、それぞれスカッフ限界(焼付
き限界)を測定した結果を示す。
【0045】図10から明らかなように比較品としての
鋳鉄製ライナにおいては約16MPaでスカッフ限界が現
れるのに対して、本実施例品のものはNiとCrとを有
するもの、または、FeとNiとCrとを有するものの
何れもが従来の鋳鉄ライナに対して充分に高いスカッフ
限界を確保することができた。
【0046】以上要するに上記実施例の金属多孔体で複
合強化されたシリンダブロック1は、少なくともシリン
ダボア摺動部3が、シリンダブロック1を形成する金属
マトリクス(母材としてのアルミ合金の部分参照)に、金
属多孔体で構成される強化材4が複合化されたシリンダ
ブロックであって、上記シリンダボア摺動部3の表面粗
さはRz1〜6μmで、かつ上記強化材4は図3、図4
に示す如く金属マトリクス中に短い方向の長さが10〜
500μmの範囲で網目状または島上に分散し、金属マ
トリクス表面よりもボア径方向内方へ所定量H(図5参
照)突出形成されたものである。
【0047】この構成によれば、金属マトリクス中に分
散する強化材4の短い方向の長さ(幅または径)が10〜
500μmの範囲で、強化材4の1つの大きさが大き
く、仕上げ加工時にアルミ合金母材が強化材4にかぶる
ことがなくなる。
【0048】ここで、数値が10μm未満の場合には
「かぶり」の影響を受け、上記数値が500μmを超え
る場合には相手材(ピストンリング)に対する研摩性が高
くなるので、上記範囲内に設定している。
【0049】このように、「かぶり」がなくなることで
従来のエッチング処理およびエッチング溶液の後処理が
一切不要となり、この結果、表面粗さをRz6μm以
下、望ましくはRz3μm以下に小さくすることができ
て、摩擦特性の向上と、ピストン摺動抵抗の低減とを図
ることができる。
【0050】さらに、シリンダボア摺動部3の表面の強
化材4が多孔体で、この強化材4は金属マトリクス表面
よりもボア径方向内方(つまりピストン側)へ所定量H
(図5参照)突出形成されているので、油膜が良好に形成
され、油保持性(潤滑性能)の向上を図ることができる。
【0051】しかも、上記強化材4は図3、図4で示し
たように表面部において金属マトリクス中の面積率が8
〜25%に設定されたものである。この構成によれば、
耐摩耗性の向上と、金属多孔耐を円筒状に成形する際の
成形性向上との両立を図ることができる。
【0052】ここで、上記面積率が8%未満の場合に
は、強化材4の量の過少に起因して充分な耐摩耗性が確
保できず、逆に面積率が25%を超える場合には、強化
材4の量の過多に起因して、金属多孔体を円筒状に成す
際の成形性が低下するので、上述の範囲内に設定してい
る。
【0053】また、上記分散する強化材4はピストン摺
動方向(図5の横軸方向)の間隔Lがピストンリングの厚
みよりも小さく設定されたものである。この構成によれ
ば、シリンダボア摺動部3において金属マトリクス中に
分散する強化材4…相互の間隔Lがピストンリングの厚
み(一般的に1.2〜1.5mm程度)よりも小さいので、
ピストン摺動時の抵抗とならない。
【0054】加えて、上記金属多孔体はFe、Cr、N
iのうちの少なくとも2種以上の金属から構成されたも
のである。この構成によれば、耐摩耗性に優れたシリン
ダブロック1を構成することができる。
【0055】さらに、上記金属多孔体はFe、Cr、N
iを含む複数の金属から構成されたものである。ここ
で、上記構成のFe、Cr、Niの重量配分において望
ましい重量配分は、Cr=18wt%、Ni=8wt%、F
eが残部であるが、これに限定されるものではない。
【0056】この構成によれば、高耐摩耗性のFe合金
が形成されるので、NiとCrのみの金属から成る金属
多孔体に対して、耐摩耗性をより一層向上させることが
できる。
【0057】この発明の構成と、上述の実施例との対応
において、この発明の金属マトリクスは、実施例のシリ
ンダブロック本体2を構成するアルミ合金のマトリクス
に対応するものであるが、この発明は、上述の実施例の
構成のみに限定されるものではない。例えば、金属マト
リクスとしては、鋳鉄であってもよい。
【0058】
【発明の効果】この発明によれば、シリンダボア摺動部
の表面粗さがRz1〜6μmで、かつ金属多孔体で構成
される強化材はシリンダブロックを形成する金属マトリ
クス中に、短い方向の長さが10〜500μmの範囲で
網目状または島状に分散し、上述強化材がマトリクス表
面よりもボア径方向内方へ所定量突出形成したので、強
化材の1つの大きさが大きく、仕上げ加工時に母材が強
化材にかぶることがなく、これにより、エッチング処理
およびエッチング溶液の後処理が一切不要で、表面粗さ
を小さくすることができて、摩擦特性の向上とピストン
摺動抵抗の低減とを図ることができ、またボア表面の強
化材が多孔体であることに起因して、油膜が良好に形成
され、油保持性の向上を図ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のシリンダブロックを示す断面図。
【図2】 シリンダブロックの製造方法を示す工程図。
【図3】 シリンダボア摺動部の上死点付近の拡大説明
図。
【図4】 シリンダボア摺動部の下死点付近の拡大説明
図。
【図5】 シリンダボア摺動部の上死点付近の表面形状
を示す説明図。
【図6】 摺動後における表面性状の説明図。
【図7】 本実施例品と比較品との摩耗量の対比を示す
特性図。
【図8】 本実施例品の摩擦係数測定結果を示す特性
図。
【図9】 比較品の摩擦係数測定結果を示す特性図。
【図10】 本実施例品の比較品とのスカッフ限界の対
比する説明図。
【符号の説明】
1…シリンダブロック 2…シリンダボア摺動部 4…強化材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小田 信行 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 (72)発明者 杉本 幸弘 広島県安芸郡府中町新地3番1号 マツダ 株式会社内 Fターム(参考) 3G024 AA22 AA23 AA26 BA02 CA05 FA06 FA14 GA02 GA06 GA08 GA12 HA02 HA05 HA17

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】少なくともシリンダボア摺動部が、シリン
    ダブロックを形成する金属マトリクスに、金属多孔体で
    構成される強化材が複合化されたシリンダブロックであ
    って、上記シリンダボア摺動部の表面粗さはRz1〜6
    μmで、かつ上記強化材は金属マトリクス中に短い方向
    の長さが10〜500μmの範囲で網目状または島上に
    分散し、金属マトリクス表面よりもボア径方向内方へ所
    定量突出形成されたシリンダブロック。
  2. 【請求項2】上記強化材は表面部において金属マトリク
    ス中の面積率が8〜25%に設定された請求項1記載の
    シリンダブロック。
  3. 【請求項3】上記分散する強化材はピストン摺動方向の
    間隔がピストンリングの厚みよりも小さく設定された請
    求項1または2記載のシリンダブロック。
  4. 【請求項4】上記金属多孔体はFe、Cr、Niのうち
    の少なくとも2種以上の金属から構成された請求項1,
    2または3記載のシリンダブロック。
  5. 【請求項5】上記金属多孔体はFe、Cr、Niを含む
    複数の金属から構成された請求項4記載のシリンダブロ
    ック。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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WO2019043932A1 (ja) * 2017-09-04 2019-03-07 日産自動車株式会社 内燃機関

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