JP2002208400A - アルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケル、それを用いたアルカリ二次電池、その特性評価方法およびその製造方法 - Google Patents

アルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケル、それを用いたアルカリ二次電池、その特性評価方法およびその製造方法

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JP2002208400A JP2001327760A JP2001327760A JP2002208400A JP 2002208400 A JP2002208400 A JP 2002208400A JP 2001327760 A JP2001327760 A JP 2001327760A JP 2001327760 A JP2001327760 A JP 2001327760A JP 2002208400 A JP2002208400 A JP 2002208400A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高温環境下における充電効率を向上させるこ
とが可能なアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケ
ルを提供する。 【解決手段】 粉末状をなすアルカリ二次電池正極活物
質用水酸化ニッケルを、その粉末を構成する粒子のプロ
トン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平均粒
径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×10
-6 が成立するようなものとする。水酸化ニッケルのプ
ロトン拡散係数とその粒子径との関係を適正化し、充電
時における粒子内のプロトン濃度の勾配を小さくして正
極電位の上昇を抑制することで、電解液の溶媒である水
の電気分解によって生じる酸素の発生を抑制でき、その
結果、高温環境下の大電流充電においても充電効率が良
好なものとなる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニッケル水素電
池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池の正
極活物質として用いることのできる水酸化ニッケルに関
し、また、それを正極活物質に用いたアルカリ二次電
池、その正極活物質としての特性を評価する方法および
その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム
電池等のアルカリ二次電池は、安定した電池出力が放電
末期まで得られるといったメリットから、ビデオカメ
ラ、ノートパソコン等の普及に伴い、情報関連機器の分
野で広く実用化されるに至っている。また、自動車の分
野では、環境問題、資源問題から、電気自動車の開発が
急がれ、既に、ガソリンエンジンと電気モータという2
つの異なるエネルギーによって駆動するハイブリッド電
気自動車(HEV)が実走行しており、このHVEの駆
動用電源としてアルカリ二次電池のうちでもエネルギー
密度の高いニッケル水素電池が採用されている。
【0003】このようなアルカリ二次電池では、正極活
物質として粉末状の水酸化ニッケル(Ni(OH)2
が用いられている。この水酸化ニッケルは、充電時にお
いて次式で表されるように反応する。
【0004】 Ni(OH)2 → NiOOH+H++e- つまり、正極において、水酸化ニッケル中からプロトン
(H+)が引き抜かれ、水酸化ニッケルはオキシ水酸化
ニッケル(NiOOH)に変化するといった充電反応で
ある。
【0005】アルカリ二次電池は電解液としてKOH等
の水溶液を採用しており、正極電位が高くなる場合、条
件によっては上記充電反応に伴って、溶媒としての水が
電気分解して酸素を発生することがよく知られている。
図1(a)に示すように、室温においては、充電反応の
電位と酸素発生反応の電位とは離れており、酸素発生反
応は生じ難いものとなっている。ところが、図1(b)
に示すように、60℃という高温環境下では、充電反応
と酸素発生反応電位とが接近し、例えば電流値i0の電
流で充電した場合、電流値i1に相当する充電反応の他
に、電流値i2に相当する酸素発生反応が生じることに
なる。つまり、充電しようとする電気量の一部が酸素発
生に消費されてしまう。したがって、高温環境下におい
て充電する場合、その充電効率は悪いものとなってい
た。
【0006】アルカリ二次電池に限らず一般の二次電池
は、少なからず内部抵抗を有するため、電池自体の発熱
は避けられない。特に、電気自動車用電源となる二次電
池では、車両が高温に晒される場合があるばかりでな
く、頻繁に充放電を繰り返すことから、電池の温度上昇
が大きくなる。そして、車両の制動時には大きなエネル
ギーを回生することが要求され、大きな電流による充電
を余儀なくされる。したがって、このような用途に供さ
れるアルカリ二次電池では、高温環境下において大電流
充電する場合にも、充電効率が良好であることが望まれ
ている。
【0007】この要求を満足すべく、正極にY23、Y
23を添加するという技術が存在する。この技術で
は、Y23、Yb23の酸素発生反応の過電圧を高くす
るという作用により、図1(b)に示すように、酸素発
生反応の電位を貴側(高電位側)へシフトさせること
で、高温環境下での充電効率を向上させている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記Y23
Yb23は、いずれも高価な希土類元素を構成元素とす
るものであり、例えば、Yb23を添加する場合は、現
状のHEV車用のニッケル水素電池パック(単1サイズ
で240本分)を用いると、かなりのコストアップにな
ってしまう。さらに、酸素発生が抑制されるでけでな
く、同時に充放電反応をも抑制してしまうという欠点を
も持ち合わせている。
【0009】本発明者は、アルカリ二次電池正極活物質
に関する研究の結果、上記従来技術と異なる着想の下、
正極における充電反応の電位を卑側(低電位側)にシフ
トさせる、言い換えれば、正極電位を上昇させないこと
で、高温環境下における大電流充電において酸素発生を
抑制することを考えた。
【0010】正極活物質として用いる水酸化ニッケルは
粉状体をなし、充電時には、ひとつひとつの粉末粒子の
表面において電解液中にプロトンを放出する。それに伴
い、正極の充電反応で生じるプロトンは、粒子内部から
粒子表面に向かって拡散移動する。粒子内のプロトンの
拡散は何らかの抵抗に抗って行われるため、粒子中心部
と粒子表面との間には、プロトンの濃度差が生じてい
る。つまり、粒子内部においてプロトン濃度の濃度勾配
が存在している。
【0011】大電流で充電する場合、粒子内を大量のプ
ロトンが表面に拡散移動しようとするため、その濃度勾
配は大きくならざるを得ない。この濃度勾配が正極電位
の上昇の一因となる。つまり粒子中のプロトン濃度の勾
配が大きいほど、言い換えれば、粒子中心部のプロトン
濃度に対する粒子表面のプロトン濃度が低いほど、充電
時における正極電位が上昇することになる。
【0012】そこで本発明者は、水酸化ニッケル粒子の
プロトン拡散能とその粒子径とに着目した結果、高いプ
ロトン拡散係数を有しかつ小さな粒子径を有する水酸化
ニッケルほど、充電時において、粒子中心部のプロトン
濃度に対する粒子表面のプロトン濃度を高く維持するこ
とができるという知見を得た。
【0013】本発明は、上記知見に基づくものであり、
正極活物質となる水酸化ニッケルのプロトン拡散係数と
その粒子径との関係を適正化し、充電時における粒子内
のプロトン濃度の勾配を小さくして正極電位の上昇を抑
制することで、電解液の溶媒である水の電気分解によっ
て生じる酸素の発生を抑制し、高温環境下における充電
効率を向上させることが可能なアルカリ二次電池正極活
物質用水酸化ニッケルを提供することを課題とする。
【0014】また、本発明は、上記水酸化ニッケルを正
極活物質に用いることで、安価であってかつ高温環境下
における充電効率の良好なアルカリ二次電池を提供する
ことを課題とし、さらに、用いられる水酸化ニッケルの
プロトン拡散係数とその粒子径との関係を調査すること
で、その水酸化ニッケルの正極活物質としての充電特性
を評価する方法を提供することを課題としている。そし
て、安価かつ充電効率の高い正極活物質となる上記水酸
化ニッケルを、連続的にかつ安定的に製造できる製造方
法を提供することをも課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】(1)アルカリ二次電池
正極活物質用水酸化ニッケル (A)本発明のアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニ
ッケルは、粉末状をなし、該粉末を構成する粒子のプロ
トン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平均粒
径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×10
-6 が成立することを特徴とする。
【0016】以下に、本発明の水酸化ニッケルの作用に
ついて、図を用いて詳しく説明する。図2に、充電時に
おける水酸化ニッケル粒子内部のプロトン濃度を模式的
に示す。本水酸化ニッケルは粉末状をなし、その粉末を
構成する粒子は略球状をなしていると考えることができ
ることから、その粒径(本明細書において「粒径」と
は、特に断りにない限り直径を示す)をaとしている。
図は、その粒子の中心を0とし、その中心からの距離に
対するプロトンの濃度を示している。したがって、粒子
表面は、その中心からの距離がa/2となる。
【0017】上述したように、充電状態にあっては、粒
子からプロトンが電解液に放出される。粒子表面付近に
存在するプロトンは直ちに放出され得るものの、粒子中
心部に存在するプロトンは粒子表面に向かって移動した
後に放出される。このプロトンの移動は拡散による移動
と考えられるが、この拡散移動には少なからず何らかの
抵抗が存在するため、図に示すように、粒子中心部と粒
子表面との間にプロトン濃度の濃度勾配が生じる。
【0018】濃度勾配が大きいつまり表面のプロトン濃
度が低い場合、正極における充電反応の電位は高くな
り、逆に、濃度勾配が小さいつまり表面のプロトン濃度
が高い場合に、充電反応の電位は低く抑えられる。図1
を用いて説明したように、正極での反応は、充電反応の
他に、電解液の溶媒である水の電気分解による酸素発生
反応をも生じ得る。充電反応の電位と酸素発生反応の電
位とは、室温環境下においては離れているが、高温環境
下においては接近している。そのため、大電流で充電す
るときには、充電反応以外に酸素発生反応をも生じるこ
ととなる。したがって、水酸化ニッケル粒子内の濃度勾
配を小さく、つまり、粒子表面のプロトン濃度を高く維
持できれば、充電反応の電位の上昇が抑制され、言い換
えれば、図1に示すように充電反応電位−電流曲線が低
電位側にシフトさせることができ、酸素発生反応は生じ
にくくなる。その結果、高温環境下での大電流充電にお
いても、その充電効率は良好なものとなる。
【0019】水酸化ニッケル粒子内部のプロトン濃度の
濃度勾配を小さくするためには、2つのが考えられる。
その一つは粒子のプロトン拡散能を高くすること、つま
り、プロトン拡散係数を高くすること、もう一つは、粒
子の粒径を小さくすることである。本水酸化ニッケルで
は、プロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子
の平均粒径をa(cm)とし、この両者を用いたパラメ
ータD/aを設定し、そのパラメータが所定の値以上と
なるものとすることで粒子内部のプロトン濃度の濃度勾
配を小さくしている。
【0020】所定の値とは、本発明者による実験によっ
て見出されたものであり、具体的には1×10-6という
値である。D/aがこの値以上となる場合において、そ
の水酸化ニッケルを用いたアルカリ二次電池は、高い充
電効率を有する二次電池となる。より具体的に言えば、
60℃という高温環境下において、1/3C(正極容量
を1時間で放電する電流を1Cとする)という大電流で
充電した場合でも、85%という高い充電効率を示すア
ルカリ二次電池となる。さらに、従来技術のように、Y
23、Yb23といった高価な希土類元素の酸化物を添
加していないことから、安価なアルカリ二次電池とな
る。
【0021】なお、ここでいうプロトン拡散係数D(c
2・s-1)および粒子の平均粒径a(cm)は、後述
する測定方法によって測定した値を採用するものとす
る。
【0022】(B)もう一つの本発明のアルカリ二次電
池正極活物質用水酸化ニッケルは、上記(A)で説明し
た水酸化ニッケルにおいて、前記プロトン拡散係数D
が、含まれるコバルトの割合をX(重量%)と、CuK
α線を用いた粉末法X線回折分析によって得られた(0
01)面の回折ピークの半値幅をY(°)とした場合
に、次式 D=7.912+0.566X−3.638
/Y により推定されることで、次式 (7.912+
0.566X−3.638/Y)/a≧1×10-6が成
立することを特徴とする。
【0023】正極活物質となる水酸化ニッケルは、充放
電反応におけるγ−NiOOHの生成を抑制することを
主目的として、水酸化コバルト(Co(OH)2)を固
溶させている。つまり、水酸化ニッケルの結晶における
Niサイトの一部に存在するNi原子をCo原子によっ
て置換した構造のものとなっている。このCoの存在
は、実用的な正極を達成するために必須であると考えら
れる。
【0024】ここで水酸化ニッケルの粒子について説明
すれば、水酸化ニッケルの粒子は、略六角板状をなす単
結晶に近い一次粒子が凝集して二次粒子(本明細書にお
いて、「粒子」とは特に断りない限りこの「二次粒子」
を意味する)を形成するように構成されている。
【0025】本発明者は、水酸化ニッケルに存在するC
oが、粒子内のプロトンの拡散移動を助長すること、つ
まり、拡散抵抗を下げる作用を示すことを見出した。こ
の作用は、ニッケルイオンよりもコバルトイオンが小さ
いために上記一次粒子内のプロトンの移動が容易になる
というものである。したがって、水酸化ニッケルに含有
されるCo量(組成における重量割合)を多くすること
で、水酸化ニッケル粒子のプロトン拡散係数Dは大きく
なる。
【0026】また、本発明者は、上述した粒子構造にお
いて、その一次粒子と二次粒子との関係が粒子内のプロ
トン拡散移動に大きく影響することを見出した。一次粒
子中のプロトンの移動は、結晶中を移動するものであり
その移動速度は遅い、これに対し、一次粒子の粒塊に沿
って二次粒子中移動するプロトン移動速度は速いものと
考えられる。したがって、微細な一次粒子が凝集した二
次粒子として形成された水酸化ニッケル粒子は、その中
央部から表面へのプロトンの拡散移動が容易に行われる
ことになり、そのプロトン拡散係数Dは大きくなるもの
と考えられる。
【0027】一次粒子の微細化の程度は、粉末法による
X線回折分析によって得られる回折強度のスペクトルに
よって推定することが可能である。図3に、水酸化ニッ
ケルのX線回折スペクトルを示す。このスペクトルにお
いて、回折ピークの形状がシャープであるほど結晶性が
よく、つまり一次粒子が大きく成長しており、逆に、回
折ピークの形状がブロードであるほど結晶性が悪く、つ
まり一次粒子が成長せず微細化している。代表的な回折
ピーク、例えば、スペクトルに★で示す(001)面の
ピークを抽出し、このピークの半値幅を用いれば、一次
粒子の微細化の程度を数値化して表現できる。
【0028】上記2つの理論に基づき、本発明者は実験
を繰り返すことにより、水酸化ニッケルのプロトン拡散
係数Dが、それに含まれるコバルトの割合をX(重量
%)と、CuKα線を用いた粉末法X線回折分析によっ
て得られた(001)面の回折ピークの半値幅をY
(°)とした場合に、上記式により表現できることを確
認した。したがって、組成におけるコバルトの含有割合
と粒子構造とを適正化することにより、プロトン拡散係
数の高い水酸化ニッケルとなり、上記(A)におけるD
/aの値を大きくすることが可能になる。
【0029】したがって、本水酸化ニッケルでは、組
成、粒子構造、粒子の粒径の3つを適正化することによ
り、粒子内部のプロトン濃度の濃度勾配を小さくでき、
正極における充電反応の電位を低く維持することが可能
となる。この結果から、本水酸化ニッケルは、高温環境
下での大電流充電においても、酸素発生が抑制された、
つまり、充電効率の良好なアルカリ二次電池を構成する
ことが可能な正極活物質となる。
【0030】(C)さらに、本発明のアルカリ二次電池
正極活物質用水酸化ニッケルは、比表面積をS(cm2
・g-1)とした場合に、次式 S・a>50 が成立す
ることが望ましい。ここで、aは上述した水酸化ニッケ
ルの粉末を構成する粒子の平均粒径(cm)である。一
般に、粉末が、表面が平滑な球状をなす粒子から構成さ
れる場合、その比表面積S’は粒子の粒径が小さくなる
ほど大きくなる。つまり、比表面積S’は粒子の平均粒
径に反比例する。また、実際の比表面積Sと、粒子の表
面が平滑な球状をなすと仮定した場合の比表面積S’と
の比(S/S’)は、粒子表面にどれだけ凹凸があるか
を示す指標となる。これらを本発明の水酸化ニッケルに
当てはめると、S/S’∝S・aが成立することとな
る。すなわち、実際の比表面積Sと粒子の平均粒径aと
の積(S・a)は、粒子表面における凹凸の度合い、い
わゆる表面粗度を示す指標となる。ここで、S・aの値
が大きいということは、粒子表面の凹凸がより多いとい
うことを示す。そして、粒子表面の凹凸が多いほど、単
位重量当たりの電解液と接する面積が大きくなり、プロ
トンの移動量がより多くなる。本発明者は、実験によ
り、S・aの値が50を超える場合には、その水酸化ニ
ッケルを活物質として使用した正極の抵抗値が減少し、
電池の出力を大きくすることができることを見出した。
したがって、S・aの値が50を超える本発明の水酸化
ニッケルを正極活物質として用いることにより、上記充
電効率が良好であることに加え、出力密度の高いアルカ
リ二次電池を構成することができる。
【0031】(2)アルカリ二次電池 本発明のアルカリ二次電池は、粉末状をなし、該粉末を
構成する粒子のプロトン拡散係数をD(cm2・s-1
と、該粒子の平均粒径をa(cm)とした場合に、次式
D/a≧1×10-6 が成立する水酸化ニッケルを正
極活物質として用いたことを特徴とするものである。そ
してもう一つの本発明のアルカリ二次電池は、前記アル
カリ二次電池において、前記水酸化ニッケルは、前記プ
ロトン拡散係数Dが、含まれるコバルトの割合をX(重
量%)と、CuKα線を用いた粉末法X線回折分析によ
って得られた(001)面の回折ピークの半値幅をY
(°)とした場合に、次式 D=7.912+0.56
6X−3.638/Y により推定されることで、次式
(7.912+0.566X−3.638/Y)/a
≧1×10-6 が成立することを特徴とするものであ
る。さらに、好適な態様として、本発明のアルカリ二次
電池は、前記2つのアルカリ二次電池において、水酸化
ニッケルの比表面積をS(cm2・g-1)とした場合
に、次式 S・a>50 が成立するものであることが
望ましい。
【0032】つまり、これら本発明のアルカリ二次電池
は、上述した本発明の水酸化ニッケルを正極活物質とし
て用いたアルカリ二次電池である。正極活物質に本水酸
化ニッケルを用いること以外の構成は特に限定するもの
でなく、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池等
の一般的なニッケル系アルカリ二次電池の構成に従えば
よい。上述した本水酸化ニッケルの作用により、本発明
のアルカリ二次電池は、高温環境下での大電流充電にお
いても、高い充電効率を有する二次電池となる。また、
23、Yb23といった高価な希土類元素の酸化物を
添加していないことから、安価なアルカリ二次電池とな
る。さらに、上記好適な態様を採用した場合には、出力
密度の高い二次電池となる。
【0033】(3)水酸化ニッケルの特性評価方法 本発明の水酸化ニッケルの特性評価方法は、粉末状をな
す水酸化ニッケルにおいて、該粉末を構成する粒子のプ
ロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平均
粒径をa(cm)とした場合に、次式 D/a で表さ
れるパラメータにより、該水酸化ニッケルのアルカリ二
次電池用正極活物質としての充電特性を評価することを
特徴とする。
【0034】上述したように、水酸化ニッケル粒子内の
プロトン濃度勾配は、粒子のプロトン拡散係数Dおよび
平均粒径aによるパラメータD/aと関係付けられる。
このD/aが大きいほど、粒子内のプロトン濃度勾配は
小さく、つまり、粒子表面のプロトン濃度は高く、その
水酸化ニッケルを正極活物質として用いたアルカリ二次
電池の充電効率は高いものとなる。したがって、本特性
評価方法によれば、正確にその水酸化ニッケルの正極活
物質としての充電効率に関する特性を評価できる方法と
なる。
【0035】水酸化ニッケルのプロトン拡散係数は、電
位ステップ法、電流ステップ法等の電気化学的方法によ
って測定できるが、本明細書においては、定電流ステッ
プ法によって測定した値を採用するものとする。定電流
ステップ法によるプロトン拡散係数の測定については、
後述する。また、粒子の平均粒径の測定についても後述
する。
【0036】さらに本発明の水酸化ニッケルの特性評価
方法は、前記プロトン拡散係数Dを、前記水酸化ニッケ
ルに含まれるコバルトの割合をX(重量%)と、CuK
α線を用いた粉末法X線回折分析によって得られた(0
01)面の回折ピークの半値幅をY(°)とした場合
に、次式 D=7.912+0.566X−3.638
/Y により推定することもできる。
【0037】上述したように、プロトン拡散係数は、組
成と粒子構造とによって関係付けられる。すなわち、組
成におけるコバルトの含有割合と特定の回折ピークの形
状とから推定することができる。上記定電流ステップ法
は、電気化学的なセルを構成してプロトン拡散係数を測
定するものであり、多少の煩雑さを伴う。これに対し、
本特性評価方法は、組成分析(製造条件からの組成の推
定も可能)とX回折分析という極めて一般的な方法によ
り、プロトン拡散係数を正確に推定できることから、よ
り簡便な特性評価方法となる。
【0038】もう一つの本発明の水酸化ニッケルの特性
評価方法は、粉末状をなす水酸化ニッケルにおいて、比
表面積をS(cm2・g-1)と、該粉末を構成する粒子
の平均粒径をa(cm)とした場合に、次式 S・a
で表されるパラメータにより、該水酸化ニッケルのアル
カリ二次電池用正極活物質としての出力特性を評価する
ことを特徴とする。 上述したように、水酸化ニッケル
粒子の表面粗度は、比表面積Sおよび平均粒径aによる
パラメータS・aと関係付けられる。このS・aが大き
いほど、粒子表面の凹凸が多く、電解液との接触面積が
大きくなるため、その水酸化ニッケルを正極活物質とし
て用いたアルカリ二次電池の出力密度は高いものとな
る。したがって、本特性評価方法によれば、簡便にその
水酸化ニッケルの正極活物質としての出力特性を評価で
きる方法となる。水酸化ニッケルの比表面積は、BET
法等の気体吸着法、液相吸着法、透過法等、通常用いら
れる方法により測定すればよい。本明細書においては、
BET法によって算出した値を採用するものとする。B
ET法による比表面積の測定については、後述する。
【0039】(4)水酸化ニッケルの製造方法 本発明のアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケル
の製造方法は、粉末状をなし、該粉末を構成する粒子の
プロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平
均粒径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×
10-6 が成立するアルカリ二次電池正極活物質用水酸
化ニッケルの製造方法であって、水溶液中においてニッ
ケルイオンと錯化剤とを反応させてニッケル錯塩を生成
させ、次いで該ニッケル錯塩とアルカリ金属水酸化物と
を反応させて該水溶液中に水酸化ニッケルの粒子を析出
させることによって製造し、その製造は、水溶液が内在
する容器体内において、該容器体内の所定の一部を一方
向に向かって流れる該水溶液の還流を作り、該一方向の
水溶液の流れの中に前記ニッケルイオンおよび前記錯化
剤を単位時間当たり一定量投入し、かつ、該容器体内に
前記アルカリ金属水酸化物を単位時間当たり一定量投入
して行うことを特徴とする。
【0040】上記本発明の水酸化ニッケルはその製造方
法を特に限定するものではない。一般的な方法として、
水溶液中からの析出法を採用することができ、攪拌条
件、水溶液のpH等の条件を適正化して製造することが
できる。上述したように、本水酸化ニッケルは、比較的
小さな一次粒子が凝集して二次粒子を形成するような粒
子構造をもち、その二次粒子も比較的小さな粒径である
ことが望ましい。
【0041】本発明の製造方法は、水溶液の還流の中で
錯体形成反応と析出反応とを略同時に起こさせるもので
あり、その還流の速度を調整することにより、粒子構造
の調整つまり一次粒子および二次粒子の粒径の調整を容
易に達成することができることから、連続的にかつ安定
的に本発明の水酸化ニッケルを製造できる製造方法とな
る。
【0042】
【発明の実施の形態】以下に、本発明のアルカリ二次電
池正極活物質用水酸化ニッケル、それを用いたアルカリ
二次電池、その特性評価方法およびその製造方法の実施
形態について、水酸化ニッケル、アルカリ二次電池の構
成、特性評価の方法、水酸化ニッケルの製造方法の項目
に分けて詳しく説明する。
【0043】(1)水酸化ニッケル 本発明の水酸化ニッケルは、粉末状をなし、該粉末を構
成する粒子のプロトン拡散係数をD(cm2・s-1
と、該粒子の平均粒径をa(cm)とした場合に、次式
D/a≧1×10-6 が成立するものであればよい。
さらに、比表面積をS(cm2・g-1)とした場合に、
次式 S・a>50 が成立するものであればより好適
である。したがって、その組成および粒子構造を特に限
定するものではないが、望ましい形態としての組成およ
び粒子構造が存在する。以下に、これらについて説明す
る。
【0044】(A)組成 本水酸化ニッケルは、上述したように、充放電反応にお
けるγ−NiOOHの生成を抑制することを主目的とし
て、水酸化コバルトを固溶させることが望ましい。つま
り、水酸化ニッケルの結晶におけるNiサイトの一部に
存在するNi原子をCo原子によって置換した構造とす
ることが望ましい。また、このCo原子の存在は、プロ
トン拡散係数を大きくすることからその点においても、
本水酸化ニッケルはCoを含有するものであることが望
ましい。
【0045】具体的には、水酸化ニッケル中のコバルト
の含有割合は、0.5重量%以上10重量%以下とする
ことが望ましい。この好適範囲のものと比べ、コバルト
の含有割合が0.5重量%未満の場合は、プロトン拡散
係数が小さく、また、γ−NiOOHを容易に発生させ
ることとなり、また、10重量%を超える場合は、その
コストがアップし、また、容量が低下しすぎるからであ
る。アルカリ二次電池の特性のバランスを考えた場合、
上記好適範囲内において、コバルトの含有割合は、1.
5重量%以上6重量%以下とすることがより望ましい。
【0046】また、本水酸化ニッケルは、過充電時のγ
−NiOOHの生成を抑制するという目的で、亜鉛(Z
n)を含有するものであることが望ましい。この場合の
亜鉛の含有割合は、1重量%以上10重量%以下とする
ことが望ましい。この好適範囲のものと比べ、亜鉛の含
有割合が1重量%未満の場合は、過充電時にγ−NiO
OHが生成し易くなり、また、10重量%を超える場合
は、結晶性が低下するからである。アルカリ二次電池の
特性のバランスを考えた場合、上記好適範囲内におい
て、亜鉛の含有割合は、2重量%以上7重量%以下とす
ることがより望ましい。
【0047】なお、本水酸化ニッケルは、アルカリ二次
電池の種々の特性改善を目的として、上記コバルト、亜
鉛以外の他の元素を若干量添加含有することを妨げるも
のではない。
【0048】(B)粒子構造 本発明の水酸化ニッケルにおいは、充電効率を向上させ
るといった観点からすれば、粉末を構成する粒子の粒径
が小さいほうが、プロトン拡散係数が大きくなり有利で
ある。ところが、本水酸化ニッケルは、発泡ニッケル多
孔体に水酸化ニッケル含む正極ペーストを充填させて形
成する発泡式電極として使用されるのが一般的であり、
このような発泡式電極の場合、粒子の平均粒径が1μm
を下回ると、結着剤量が多くなりすぎ、高い活物質密度
の正極が得られなくなる。また、粒子の平均粒径が40
μmを上回ると、発泡ニッケル多孔体へ充填することが
困難となる。これらの点を考慮すれば、本水酸化ニッケ
ルは、その粒子の平均粒径が1μm(1×10-4cm)
以上40μm(4×10-3cm)以下とするのが望まし
い。さらに充電効率を勘案すれば、1μm以上15μm
以下とするのが望ましく、電池容量とのバランスおよび
より充電効率が高くすることを考えれば、1.5μm以
上5μm以下であることがさらに望ましい。
【0049】水酸化ニッケルの粉末粒子は、概ね六角板
状をなす略単結晶に近い一次粒子が凝集して二次粒子を
形成している。この一次粒子の粒径もプロトン拡散係数
を左右する。上述したように、微細な一次粒子であるほ
ど、二次粒子中央部に存在するプロトンが一次粒子の粒
塊に沿って拡散移動することが易しくなり、プロトン拡
散係数が大きな値を示す。ただし、一次粒子の粒径があ
まり小さすぎると、一次粒子間の空隙が増加し、粒子密
度が低下するという問題が生じる。そこで、本水酸化ニ
ッケルにおいては、具体的な数値で表せば、一次粒子の
平均粒径(六角形の対向する2辺の辺間距離を粒径とす
る)が、0.1μm以上5μm以下であることが望まし
い。さらに、プロトン拡散係数の低下の抑制および正極
板形成における充てん量の向上という点を考慮すれば、
0.5μm以上3μm以下であることがより望ましい。
【0050】一次粒子の微細度は、上述したように、粉
末法によるX線回折分析によって得られる回折ピークの
形状によっても判断できる。結晶性が良好なものつまり
結晶が成長しているものほど、回折ピークはシャープに
なる。代表的な回折ピークである(001)面の回折ピ
ークの半値幅で表せば、本水酸化ニッケルにおいては、
その半値幅が0.4°以上1°以下であることが望まし
い。この好適範囲のものと比べて、0.4°未満の場合
は、結晶が成長しすぎて一次粒子の粒径が大きくなりす
ぎ、充電効率に劣るものとなる。逆に、1°を超える場
合は、結晶性が悪すぎることになり、充放電に伴う結晶
構造の崩壊から、電池としての容量低下を招きやすくな
る。 (2)アルカリ二次電池の構成 本発明のアルカリ二次電池は、上記本発明の水酸化ニッ
ケルを正極活物質として用いたアルカリ二次電池であ
る。正極活物質に本水酸化ニッケルを用いることを除く
他の構成は特に限定するものでなく、ニッケルカドミウ
ム電池、ニッケル水素電池等の一般的なニッケル系アル
カリ二次電池の構成に従えばよい。以下に、代表的なも
のとして、発泡式電極板からなるニッケル水素電池とし
ての実施形態を例示する。
【0051】正極は、三次元の網目構造の発泡ニッケル
多孔体に、正極活物質として上記本発明の水酸化ニッケ
ルを保持させたものである。まず、上記水酸化ニッケル
に、正極内において導電性ネットワークを形成させるた
めの水酸化コバルト、酸化コバルト等を混合し、結着剤
としてメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース
等を含む水溶液を添加して混練し、正極ペーストを調製
する。そしてこの正極ペーストを、発泡ニッケル多孔体
に充填し、乾燥後、加圧成形を施して正極を作製するこ
とができる。
【0052】負極は、正極同様の発泡ニッケル多孔体
に、負極活物質として、例えば、AB 5型水素吸蔵合金
を保持させたものである。AB5型水素吸蔵合金は、希
土類系の合金を使用でき、例えば、LaNi5をベース
として、Laを希土類元素の混合物であるミッシュメタ
ルで置換し、Niの一部をCo、Mn、Al等で置換し
たものを用いることができる。まず、水素吸蔵合金粉末
に、結着剤としてメチルセルロース、カルボキシメチル
セルロース等を含む水溶液を添加して混練し、負極ペー
ストを調製する。そして、正極の作製の場合と同様に、
この負極ペーストを、発泡ニッケル多孔体に充填し、乾
燥後、加圧成形を施して負極を作製することができる。
【0053】正極と負極との間には、両極を隔離しかつ
電解液を保持するセパレータを挟装する。セパレータに
はポリアミド系、ポリオレフィン系等の不織布を用いる
ことができる。また、電解液は、水酸化カリウム、水酸
化リチウム、水酸化ナトリウム等から選ばれる水酸化物
を2種以上含む水溶液を用いることができる。
【0054】以上のものから構成される本発明のアルカ
リ二次電池の一例としてのニッケル水素電池であるが、
その形状は円筒型、積層型、コイン型等、種々のものと
することができる。いずれの形状を採る場合であって
も、正極および負極を、その間にセパレータを挟装して
積層あるいは捲回し、電極体を形成し、それぞれの電極
から外部に通ずる正極端子および負極端子までの間を集
電用リード等を用いて接続し、この電極体を電解液とと
もに電池ケースに密閉して電池を完成することができ
る。
【0055】(3)特性評価の方法 (A)本発明の特性評価方法は、粉末状をなす水酸化ニ
ッケルにおいて、その粉末を構成する粒子のプロトン拡
散係数D(cm2・s-1)を測定し、その粒子の平均粒
径をa(cm)を測定し、両者の値からD/aというパ
ラメータを算出し、そしてそのパラメータD/aの値か
ら、その水酸化ニッケルのアルカリ二次電池用正極活物
質としての充電特性を評価する。
【0056】プロトン拡散係数Dは、以下に説明する環
境温度25℃における定電流ステップ法によって測定し
算出した値を採用する。まず、測定対象となる水酸化ニ
ッケルを正極活物質に用いた発泡式電極と、希土類系水
素吸蔵合金を負極活物質に用いた負極とを作製し、これ
らを用いて正極容量規制(負極容量よりも正極容量が小
さく、負極の特性が電池の特性を支配しないことを意味
する)の模擬電池を作製する。そしてこの模擬電池の容
量を測定することにより、正極の容量を測定する。な
お、正極面積も測定しておく。
【0057】上記模擬電池を完全充電後、通電しない状
態で保持し、平衡状態に達した後、酸化水銀参照電極に
対する正極電位を測定する。平衡状態に達した後とは、
具体的には電位変化が0.1mV/h以下となったとき
とする。次いで、上記正極容量を一時間で放電する電流
を1Cとした場合における1/5Cの電流で1.25時
間放電し、平衡状態に達した後、参照電極に対する正極
電位を測定する。この放電および電位測定を、模擬電池
が完全放電状態となるまで繰り返す。
【0058】これらの測定により、水酸化ニッケル中の
プロトンの存在量に応じた5つの充電状態、言い換えれ
ば正極活物質の組成がそれぞれNiOOH、NiOH
0.25OH、NiOH0.5OH、NiOH0.75OH、Ni
(OH)2となる5つの充電状態における正極電位が得
られる。この各充電状態における正極電位から、充電状
態をNiO21+nと標記したときのnの値と正極電位の
値Eとから補間することにより、nとdE/dnとの関
係を求める。ちなみにn=0は完全充電状態、n=1
は、完全放電状態を意味する。
【0059】上記模擬電池を再び充電し、同じ1/5C
の電流で2.5時間放電し、平衡状態に達した後、正極
電位を測定し(この正極電位をEeqとする)、今度は7
Cの電流で8秒間充電する。この充電終了直後からの正
極の時間的変化を測定し、充電終了後t時間経過後の正
極電位とEeqとの差をΔEとする。
【0060】ここで、上記ΔEとtとの間には、次式で
表される関係が存在する。
【0061】ΔE={IVmτ(dE/dn)}/{F
A(πDt)0.5} I:充電電流値(7C) Vm:水酸化ニッケルのモル体積(22.61cm3;β
水酸化ニッケル換算) τ:通電時間(8s) F:ファラデー定数(96500) A:正極面積 D:プロトン拡散係数 上記の充放電によって得られた各種値を上記式に代入す
ることにより、その水酸化ニッケルのプロトン拡散係数
Dを算出する。以上が、プロトン拡散係数Dを環境温度
25℃における定電流ステップ法によって測定し算出す
る方法である。
【0062】水酸化ニッケルの粉末粒子の平均粒径は、
走査型電子顕微鏡(SEM)による観察の結果求めた値
を採用する。対象となる水酸化ニッケルの粒子が100
個程度視野に収まるような倍率でSEM観察を行い、視
野に存在する粒子の直径をそれぞれ目視にて測定し、そ
の水酸化ニッケルの平均粒径aを計算により求めるもの
とする。
【0063】上記プロトン拡散係数Dおよび平均粒径a
の値から、D/aを算出する。ちなみに、プロトン拡散
係数Dは、その単位がcm2・s-1となる値を使用し、
平均粒径aは、その単位がcmとなる値によって算出す
るものとする。そして、D/aの値の大小により、その
水酸化ニッケルの正極活物質としての充電特性を評価す
る。D/aの値が大きいほどその水酸化ニッケルは、充
電効率の高いアルカリ二次電池を構成できる正極活物質
となる。上述した本発明の水酸化ニッケルである場合
は、D/aの値は1×10-6以上となる。
【0064】(B)また、もう一つの本発明の特性評価
方法は、上記(A)に説明した方法において、プロトン
拡散係数Dを、水酸化ニッケルに含まれるコバルトの割
合と、CuKα線を用いた粉末法X線回折分析によって
得られた(001)面の回折ピークの半値幅とにより推
定するものである。プロトン拡散係数Dの実測は、上記
のように、模擬電池(電気化学セル)を構成して行わな
ければならず、ある程度の煩雑さを伴う。この方法によ
れば、そういった煩わしさがなく、通常行う化学分析の
手法を用いるだけで、容易にその正極活物質としての充
電効率を評価できる。
【0065】水酸化ニッケルに含まれるコバルトの割合
を測定する方法は、定量的な組成分析を行うことのでき
る方法であればよく、その方法を特に限定するものでは
ない。例えば、ICP−AES分析、原子吸光分光光度
分析、蛍光X線分析等の方法によって行えばよい。な
お、このような分析を行わずとも、水酸化ニッケルの製
造における原料物質の混合比等から、製造した水酸化ニ
ッケルの組成を特定することもできる。測定するコバル
トの割合は、水酸化ニッケル全体を100重量%とした
場合におけるコバルトの重量%である。
【0066】(001)面の回折ピークの半値幅につい
ても、通常の粉末法によるX線回折分析によって得られ
るスペクトルから求めることができる。なお、半値幅に
ついては、その単位を(°)として求める。
【0067】上記測定したコバルトの割合をX(重量
%)とし、(001)面の回折ピークの半値幅をY
(°)とした場合に、それぞれの値を D=7.912
+0.566X−3.638/Y という式に代入し
て、プロトン拡散係数を算出する。その後は、上記
(A)に説明した方法に従って、その水酸化ニッケルの
正極活物質としての充電特性を評価すればよい。
【0068】(C)さらに、本発明の特性評価方法は、
粉末状をなす水酸化ニッケルにおいて、比表面積S(c
2・g-1)を測定し、その粉末を構成する粒子の平均
粒径a(cm)を測定し、両者の値からS・aというパ
ラメータを算出し、そのパラメータS・aの値から、そ
の水酸化ニッケルのアルカリ二次電池用正極活物質とし
ての出力特性を評価する。比表面積Sは、以下に説明す
るBET法によって算出した値を採用する。まず、測定
する水酸化ニッケルをサンプル管に入れ、N2とHeと
の混合ガスを流してN2を吸着させる。そして、水酸化
ニッケルのN2吸着量を熱伝導度セルにより検出し、B
ET理論で仮定するような吸着等温線から水酸化ニッケ
ルの比表面積を算出する。このように算出した比表面積
Sおよび上記平均粒径aの値から、S・aを算出する。
ちなみに、比表面積Sは、その単位がcm2・g-1とな
る値を使用し、平均粒径aは、その単位がcmとなる値
によって算出するものとする。なお、比表面積Sを、そ
の単位がm2・g-1となる値を使用し、平均粒径aを、
その単位がμmとなる値を使用して算出した場合も同等
である。そして、S・aの値の大小により、その水酸化
ニッケルの正極活物質としての出力特性を評価する。S
・aの値が大きいほどその水酸化ニッケルは、出力密度
の高いアルカリ二次電池を構成できる正極活物質とな
る。上述した出力密度の大きい本発明の水酸化ニッケル
である場合は、S・aの値は50を超える値となる。
【0069】(4)水酸化ニッケルの製造方法 (A)上記本発明の水酸化ニッケルは、その製造方法を
特に限定するものではない。上述したD/aの値が1×
10-6以上となる水酸化ニッケルが製造できる方法であ
れば、いかなる製造方法を採用することができる。一例
として、以下に水溶液からの析出による方法を示す。
【0070】本方法は、水溶液中でニッケルイオンと錯
化剤とを反応させてニッケル錯塩を形成させ、そのニッ
ケル錯塩をアルカリ金属水酸化物と反応させて水酸化ニ
ッケルの粒子を析出させる方法である。
【0071】使用可能なニッケルイオンの原料は、水溶
液中で生成するニッケルイオンが錯化剤とで錯体を形成
可能なものであればよく、特に限定するものではない。
使用可能なニッケルイオン原料としては、硫酸ニッケ
ル、硝酸ニッケル、塩化ニッケル等を挙げることができ
る。これらの中でも、ニッケルイオン原料としては、生
産コストが低く、揮発性の酸性ガスを発生させないとい
う理由から、硫酸ニッケルを用いることが望ましい。ニ
ッケルイオン原料は、均一な反応を起こさせるために、
ニッケル塩水溶液として使用することが望ましく、その
場合の水溶液の濃度は1〜15wt%とするのが好まし
く、5〜12wt%とすることがさらに好ましい。
【0072】使用可能な錯化剤としては、アンモニア、
アンモニウムイオン供給物、ヒドラジン、エチレンジア
ミン四酢酸、ニトリト酢酸、ウラシル二酢酸、グリシン
等を挙げることができる。これらの中でも、錯体形成能
力が高いという理由から、アンモニウムイオン供給物を
採用することが望ましい。アンモニウムイオン供給物と
しては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、酢酸ア
ンモニウム等を挙げることができる。また、錯化剤も水
溶液として用いることが望ましい。この場合、反応溶液
のpHが低くなりすぎるときは、適当なアルカリを用い
て中和することが望ましい。反応させる錯化剤は、錯体
を充分に形成させうるため、上記ニッケルイオン1mo
lに対して、1〜15molの量とするのがよく、その
濃度は、溶液のpHを大きく変化させないという理由か
ら、1〜10Mとすることが望ましい。
【0073】水酸化ニッケルに水酸化コバルトを固溶さ
せる、つまりコバルトを含有させる場合は、上記ニッケ
ルイオン原料とともにコバルトイオン原料を反応させれ
ばよい。使用可能なコバルトイオン原料としては、硫酸
コバルト、硝酸コバルト、塩化コバルト等を挙げること
ができ、ニッケルイオン原料の場合と同様の理由から、
硫酸コバルトを用いることがより望ましい。また、コバ
ルトイオン原料は、同様に、コバルト塩水溶液として用
いることが望ましい。コバルトイオンの量は、目的とす
る水酸化ニッケルの組成、つまりニッケルとコバルトの
組成比に応じた割合とすればよい。また、コバルトイオ
ン原料の水溶液の濃度は、ニッケルイオンの水溶液濃度
に従えばよい。
【0074】水酸化ニッケルに亜鉛を含有させる場合
は、同様に上記ニッケルイオン原料とともに亜鉛イオン
原料を反応させればよい。使用可能な亜鉛イオン原料と
しては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛等を挙げること
ができる。こららの中でも、望ましい主原料である硫酸
ニッケルと共通イオンを有するという理由から、硫酸亜
鉛を使用することが望ましい。また、亜鉛イオン原料
は、同様に、亜鉛塩水溶液として用いることが望まし
い。亜鉛イオンの量、亜鉛イオン原料の水溶液の濃度に
ついては、上記コバルトイオン原料のそれらに従えばよ
い。
【0075】錯体形成反応は、具体的には、上記ニッケ
ル塩水溶液と、必要に応じて上記コバルト塩水溶液、亜
鉛塩水溶液と、錯化剤水溶液とを、これら水溶液を攪拌
可能な所定の反応容器に連続的に添加して混合し、攪拌
させつつニッケル錯塩を生成させればよい。
【0076】反応温度、つまり反応溶液の温度は、10
〜90℃とすることが望ましく、30〜50℃とするこ
とがより望ましい。また、上述したように、中和は必要
な場合は、NaOH、KOH等のアルカリを予めあるい
は原料となる水溶液の添加と同時に添加することが望ま
しい。
【0077】次いで、上記錯体形成反応で生成したニッ
ケル錯塩をアルカリ金属水酸化物と反応させて水酸化ニ
ッケルの粒子を析出させる析出反応を行う。具体的に
は、ニッケル錯塩を含む上記水溶液にアルカリ金属水酸
化物水溶液を添加し、pHが8.5〜13.5、より好
ましくは9〜12.5となるように調整して行う。この
際に用いることのできるアルカリ金属水酸化物として、
水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることがで
きる。
【0078】反応温度、つまり反応溶液の温度は、10
〜90℃とすることが望ましく、30〜50℃とするこ
とがより望ましい。つまり、上記錯体形成反応における
反応温度を維持すればよい。また、この析出反応におい
ても、上記錯体形成反応と同様、反応溶液を攪拌するこ
とが望ましい。析出反応を行わせる時間は、10〜50
時間であることが好ましい。
【0079】析出する水酸化ニッケル粒子の結晶性、粒
子構造は、反応容器の形状、攪拌の方法、反応溶液中の
反応物の濃度、反応時間、反応温度、反応の際の反応溶
液のpH等に依存する。具体的には、例えば、反応温度
を高くすれば、反応速度が速くなり、一次粒子核発生反
応が促進され、粒子成長が抑制されることととなり、逆
に低すぎる場合は、中和反応が充分に進行せず、未反応
物が存在する原因となる。また、攪拌を極めて激しく行
う場合は、粒子どうしおよび粒子と反応装置との衝突が
過大となって、二次粒子破壊の原因となり、非常に緩や
かに行う場合は、反応が充分に進行しない上に、粒子が
装置底部に堆積する原因となる。反応溶液のpHが高い
場合は、反応速度が速くなって、一次粒子、二次粒子と
もに小さくなり、また高すぎる場合は、結晶性が低下す
る原因となる。逆に、反応溶液のpHが低い場合は、一
次粒子、二次粒子ともに大きくなり、また低すぎる場合
は未反応物が存在する原因となる。反応溶液中の反応物
の濃度を高くしすぎると、反応装置内を均一に保つこと
が困難となり、逆に低くしすぎると、生産性の低下を招
く。さらに、反応時間を長くすることによって、一次粒
子径を維持しつつ二次粒子径のみ大きくすることがで
き、反応時間を短くすることによって、一次粒子径を維
持しつつ二次粒子径のみを小さくすることができる。本
発明の水酸化ニッケルを製造する場合、これらの種々の
反応条件を一つ一つ適正化し、最適な条件の下で製造す
ればよい。
【0080】水酸化ニッケルが析出した反応溶液は、ス
ラリー状となっている。このスラリーは、副生成物とな
る塩類を含んでおり、こららの塩類はデンカンテーショ
ン等での水洗によって除去し、その後、濾別、乾燥によ
って水分を除去して、正極活物質として使用可能な粉末
状の水酸化ニッケルを得ることができる。
【0081】(B)本発明の製造方法 本発明の製造方法は、上述したように、上記錯体形成反
応および上記析出反応を、水溶液が内在する容器体内に
おいて、その容器体内の所定の一部を一方向に向かって
流れる水溶液の還流を作り、その一方向の水溶液の流れ
の中にニッケルイオンおよび錯化剤を単位時間当たり一
定量投入し、かつ、容器体内に前記アルカリ金属水酸化
物を単位時間当たり一定量投入して行うものである。
【0082】本製造方法を実施するための装置を、図4
に模式的に示す。図4に示す装置は、反応溶液(水酸化
ニッケルが分散した水溶液)1が入っている容器体(反
応槽)2と、容器体2の中心部に反応溶液1に液没して
配設されたドラフトチューブ3と、ドラフトチューブ内
に設けられ反応溶液1の還流を作り出すための攪拌羽根
4とから構成される。
【0083】反応溶液1は、攪拌羽根4によって、ドラ
フトチューブ3の内部を下向きに流れ、ドラフトチュー
ブ3の下部より排出された後は容器体1の内部の周囲を
上向きに流れ、そして再びドラフトチューブ3の上部か
らドラフトチューブ3の内部に導かれるという還流(循
環流)が作り出されている。つまり、容器体1の内部に
おけるドラフトチューブ3という所定の一部を反応溶液
1が一方向に向かって流れるような還流である。
【0084】反応溶液1の上方であってかつドラフトチ
ューブ3の上方には、2本の滴下パイプ5が配設されて
おり、それぞれニッケルイオンの原料となるニッケルイ
オン原料水溶液と錯化剤水溶液とが、時間当たり一定量
つまり一定の滴下速度で、反応溶液1に滴下される。滴
下されたそれぞれの水溶液は、まず、還流の作用により
ドラフトチューブ3内に導かれ、初期の錯体形成反応は
このドラフトチューブ3内の流れの中で行われる。
【0085】また、容器体1の下部には、アルカリ金属
水酸化物水溶液を反応溶液1に投入するための投入パイ
プ6が配設され、時間当たり一定量つまり一定速度の投
入速度で、アルカリ金属水酸化物水溶液が投入される。
このアルカリ金属水酸化物水溶の投入により、反応溶液
1は一定のpHが維持されることとなる。そして一定の
pHが維持された反応溶液の中で、錯体形成反応の直後
あるいは略同時に水酸化ニッケル粒子の析出反応が行わ
れることになる。反応溶液1は、析出した水酸化ニッケ
ル粒子が分散したスラリーになっており、容器上部に取
付けられたオーバーフロー口7から容器体1の外部へ、
それぞれの水溶液の投入量の合計量が一定速度で排出さ
れる。
【0086】本装置の特徴、つまり本装置を用いて行う
水酸化ニッケルの製造方法の特徴は、一定の定常状態の
中で錯体形成反応および析出反応が行われることにあ
る。すなわち、反応溶液中の原料の濃度、攪拌程度、p
H値、原料投入量と水酸化ニッケル析出量等が、常に一
定の状態を維持しつつ行うことができる。このことか
ら、粒子構造が一定で安定した特性の水酸化ニッケル
が、連続して製造できる方法となる。
【0087】また、錯体形成反応の初期の段階をドラフ
トチューブ内の比較的速い流速の反応溶液中で行うこと
ができ、均一な反応が担保されるとともに、その反応初
期の段階から、次の析出反応が開始されることから、析
出反応において結晶成長の開始点となる結晶核が数多く
発生し、さらに結晶の成長(一次粒子の成長)および二
次粒子の成長が抑制されて、一次粒子および二次粒子が
ともに微細な構造となる水酸化ニッケルを容易に製造す
ることができる。
【0088】この意味において、本製造方法では、還流
の速度、特に容器体の中心付近を通過するドラフトチュ
ーブ内の還流の速度が、重要な製造条件となる。粒子構
造の充分なる微細化を達成するためには、中心部の還流
の速度を0.7m/s以上とすることが望ましい。他の
製造条件については、上述したように、それぞれを適正
化して行えばよい。
【0089】なお、上記製造装置によって水酸化ニッケ
ルを製造する場合、水酸化ニッケルにコバルトを含有さ
せるときあるいは亜鉛を含有させるときは、その含有す
る割合に応じた一定量を、それぞれを原料水溶液とし
て、ニッケルイオン原料水溶液と同様に滴下すればよ
い。
【0090】(5)他の実施形態の許容 以上、本発明のアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニ
ッケル、それを用いたアルカリ二次電池、その特性評価
方法およびその製造方法のそれぞれの実施形態について
説明したが、上述した実施形態は一実施形態にすぎず、
本発明のアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケ
ル、それを用いたアルカリ二次電池、その特性評価方法
およびその製造方法は、上記実施形態を始めとして、当
業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の
形態で実施することができる。
【0091】
【実施例】上記実施形態に基づき実際に正極活物質とな
る水酸化ニッケルを製造し、また、市販されている正極
活物質用水酸化ニッケルを調達し、これらを分析した。
次いで、これらの水酸化ニッケルを用いてニッケル水素
電池を作製し、それぞれの電池の充電効率および正極に
おける抵抗値を調査することで、それぞれの水酸化ニッ
ケルを評価した。以下に、これらについて説明する。
【0092】〈正極活物質となる水酸化ニッケル〉上記
実施形態に示す製造方法で、製造条件を種々変更して、
6種類の水酸化ニッケルを製造した。この製造した水酸
化ニッケルをそれぞれ#1〜#6の水酸化ニッケルとし
た。また、現状市販されている正極活物質用水酸化ニッ
ケルを調達し、この水酸化ニッケルを#7の水酸化ニッ
ケルとした。これら#1〜#7の水酸化ニッケルに対
し、組成分析、SEM観察、粉末法によるX線回折分析
を行った。これらの結果として、それぞれの水酸化ニッ
ケルの、Ni、Co、Znの組成(含有割合)、平均粒
径、(001)面の回折ピークの半値幅を、下記表1に
示す。ちなみに、上述の図3に示したX線回折スペクト
ルは、#4の水酸化ニッケルのものである。
【0093】
【表1】
【0094】〈充電効率の調査〉上記製造した#1〜#
7の水酸化ニッケルを用いてニッケル水素電池を作製
し、それぞれの電池に対して充放電試験を行い充電効率
を調査した。以下、詳しく説明する。
【0095】(1)ニッケル水素電池用正極および負極
の作製 上記#1〜#7のそれぞれの水酸化ニッケルを正極活物
質に用いてニッケル水素電池用の正極を作製した。それ
ぞれの水酸化ニッケル9gとCoO粉末1gとをポリ容
器に入れ、60rpmで1時間回転させて機械的に混合
した。この混合物に濃度2重量%のメチルセルロース水
溶液を結着剤として3g添加し、充分に混練して正極ペ
ーストを調製した。この正極ペーストを発泡ニッケル集
電体に充填し、乾燥した後、100MPaの圧力で加圧
成形し正極板を得た。正極板のサイズは、厚さ約0.7
mmであり、幅15mm、長さ40mmとした。ちなみ
に、容量測定により、それぞれの正極の一枚当たりの容
量は、いずれも約150mAhであることを確認した。
【0096】次に上記正極に対向させる負極を作製し
た。まず、活物質となる希土類系水素吸蔵合金10gに
濃度2重量%のメチルセルロース水溶液を結着剤として
3g添加し、混練して負極ペーストを調製した。この負
極ペーストを発泡ニッケル集電体に充填し、乾燥した
後、100MPaの圧力で加圧成形し負極板を得た。負
極板のサイズは、厚さ約0.7mmであり、幅15m
m、長さ40mmとした。ちなみに、この負極の容量
は、容量測定により、約350mAhであった。
【0097】(2)プロトン拡散係数の測定 上記それぞれの正極の両側に上記負極を配した模擬電池
を構成し、上述した定電流ステップ法により、それぞれ
の正極に用いられている#1〜#7の水酸化ニッケルの
プロトン拡散係数Dを実測した。また、この実測プロト
ン拡散係数Dを上記SEM観察によるそれぞれの水酸化
ニッケルの平均粒径aで除して、パラメータD/aを算
出した。さらに、上記分析によって得られたコバルトの
含有割合X(重量%)と、X線回折分析によって得られ
た(001)面の回折ピークの半値幅Yとから、上述し
た式により、プロトン拡散係数D'を算出し推定した。
この結果として、それぞれの水酸化ニッケルの実測プロ
トン拡散係数D、パラメータD/a、推定プロトン拡散
係数D'を、下記表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】上記表2に示した結果から、#3〜#6の
水酸化ニッケルは、D/aの値が1×10-6以上となっ
ており、本発明の水酸化ニッケルであることが確認でき
る。また、実測プロトン拡散係数Dと推定プロトン拡散
係数D'との値に殆ど差はなく、プロトン拡散係数は、
水酸化ニッケルのコバルトの含有割合とX線回折分析に
よって得られた(001)面の回折ピークの半値幅とか
ら、正確に推定できることが確認できる。
【0100】(3)ニッケル水素電池の作製 上記それぞれの正極と上記負極とを用いてニッケル水素
電池を作製した。このニッケル水素電池は、ポリプロピ
レン−ポリエチレン不織布のセパレータを介して正極5
枚と負極6枚とを順次重畳して電極体を形成し、その電
極体をアクリル樹脂の電池ケース内に挿設したものであ
る。電解液には、1Lあたり5molの水酸化カリウム
と1molの水酸化リチウムとを含む水溶液を用いた。
電解液は、電池1個あたり2.6g注液するものとし
た。
【0101】このニッケル水素電池は、正極容量に対し
て負極容量が約2.8となる正極容量規制の電池であ
り、正極活物質の特性を反映するものとなっている。ま
た、充電時の負極の電位変動はかなり小さく、電池電圧
の変化は主に正極電位の変化に起因するものとなってい
る。#1〜#7の水酸化ニッケルを正極活物質に用いた
それぞれの電池を#1〜#7のニッケル水素電池とし
た。
【0102】(4)充放電試験 上記#1〜#7のニッケル水素電池に対して、まず、初
期活性化充放電(コンディショニング)を行った。初期
活性化充放電は、電流値0.1C(全正極容量を1時間
で放電する場合の電流値を1Cとする)の定電流で12
時間充電し、0.5時間休止後、電流値0.2Cの定電
流で放電終止電池電圧1.0Vまで放電するサイクルを
1サイクルとし、このサイクルを10サイクル以上行う
ものとした。
【0103】次いで、これらのニッケル水素電池を、充
放電サイクル試験に供した。充放電サイクル試験の条件
は、電流値1/3Cの定電流で3.3時間充電し、0.
5時間休止後、電流値1/3Cの定電流で放電終止電池
電圧1.0Vまで放電を行うサイクルを1サイクルと
し、このサイクルを繰り返すものとした。1サイクル目
から5サイクル目までは環境温度20℃の下で充放電を
行い、6サイクル目から10サイクル目までは60℃と
いう高温の環境温度下で充放電を行い、そして11サイ
クル目から15サイクル目までは再び環境温度を20℃
に戻して充放電を行い、各サイクルにおける放電容量お
よび充電時間に対する電池電圧を測定するものとした。
【0104】充電された容量の略100%が放電するも
のと認められることから、各サイクルの放電容量をその
サイクルにおける充電容量とすることができる。したが
って、正極容量に対するそれぞれのサイクルの放電容量
の百分率をもって、本充放電試験による充放電効率とし
た。
【0105】(5)充放電効率の評価 上記充放電試験の結果として、#1および#4のニッケ
ル水素電池の3サイクル目から13サイクル目までの各
サイクルの充電効率を図5に示し、それぞれのニッケル
水素電池の高温充電時(10サイクル目)における充電
効率を下記表3に、それぞれのニッケル水素電池のD/
aの値と高温充電時(10サイクル目)の充電効率との
関係を図6に、#1および#4のニッケル水素電池の高
温充電時(10サイクル目)における充電時間と電池電
圧との関係を図7に、それぞれ示す。
【0106】
【表3】
【0107】図5から明らかなように、D/aの値が1
×10-6を下回る水酸化ニッケルを用いた#1のニッケ
ル水素電池は、60℃の高温サイクルにおいて充電効率
が低下している。これに対して、D/aの値が1×10
-6以上となる水酸化ニッケルを用いた#4のニッケル水
素電池は、60℃の高温サイクルにおいても放電容量の
低下は認められず、高温充電時の充電効率が良好なこと
が判る。
【0108】そのことは上記表3からも明らかであり、
D/aの値が1×10-6以上となる水酸化ニッケルを用
いた#3〜#6のニッケル水素電池は、いずれも高温充
電時の充電効率が80%を超える高いものとなっている
ことが判る。特に、現状市販されている#7の水酸化ニ
ッケルを用いた#7のニッケル水素では、その充電効率
が54%である。このことに鑑みれば、本発明の水酸化
ニッケルの優秀性が際立っていることが容易に理解でき
る。
【0109】さらに、D/aの値と高温充電時の充電効
率との関係を示す図6から明らかなように、D/aの値
が大きくなるにつれて高温充電時の充電効率は向上し、
D/aの値が1.4×10-6以上となる領域において
は、高温充電時の充電効率が90%を超える極めて高い
値を示すことが確認できる。
【0110】また、充電時間と電池電圧との関係を示す
図7からは、D/aの値が1×10 -6を下回る水酸化ニ
ッケルを用いた#1のニッケル水素電池に対して、D/
aの値が1×10-6以上となる水酸化ニッケルを用いた
#4のニッケル水素電池は、電池電圧の上昇が比較的緩
やかに進行することが判る。このことは、#4のニッケ
ル水素電池では、正極電位の上昇が抑制されていること
を意味し、この結果からも、D/aの値が1×10-6
上となる水酸化ニッケルを正極活物質に用いることが、
水の電気分解に伴う酸素発生を抑制し、その電池の高温
充電時の充放電効率を向上させる効果のあることが確認
できる。
【0111】〈正極における抵抗値の調査〉上記製造し
た水酸化ニッケルのうち、#3〜#6の本発明の水酸化
ニッケルについて、BET法により比表面積を求めた。
そして、#3〜#6の水酸化ニッケルを用いてニッケル
水素電池を4種類作製し、それぞれの電池を充放電する
ことにより正極における抵抗値を調査した。以下、詳し
く説明する。
【0112】(1)ニッケル水素電池の作製 まず、上記#3〜#6のそれぞれの水酸化ニッケルを正
極活物質に用い、上記充電効率の調査にて作製した正極
と同様に正極を作製した。正極板のサイズは、厚さ約
0.7mmであり、幅30mm、長さ40mmとした。
ちなみに、この正極の理論放電容量は約430mAhで
ある。次に、上記正極に対向させる負極を作製した。ま
ず、活物質となる希土類系水素吸蔵合金4gに濃度2重
量%のメチルセルロース水溶液を結着剤として1.3g
添加し、混練して負極ペーストを調製した。この負極ペ
ーストの2.5gを、正極と同様の発泡ニッケル集電体
に充填し、乾燥した後、100MPaの圧力で加圧成形
し負極板を得た。負極板のサイズは、厚さ約0.7mm
であり、幅30mm、長さ40mmとした。ちなみに、
この負極の理論放電容量は約700mAhである。
【0113】上記負極2枚の間に、ポリプロピレン−ポ
リエチレン不織布のセパレータを介して正極を挟装し電
極体を形成した。そして、この電極体をアクリル樹脂の
電池ケース内に挿設し、電解液を注液してニッケル水素
電池を完成させた。電解液には、1Lあたり5molの
水酸化カリウムと1molの水酸化リチウムとを含む水
溶液を用いた。なお、#3〜#6の水酸化ニッケルを正
極活物質に用いたそれぞれの電池を#3〜#6のニッケ
ル水素電池とした。
【0114】(2)正極における抵抗値の測定および評
価 上記#3〜#6のニッケル水素電池に対して、まず、コ
ンディショニングを行った。コンディショニングは、電
流値0.1Cの定電流で14時間充電し、0.5時間休
止後、電流値0.2Cの定電流で放電終止電池電圧1.
0Vまで放電するサイクルを1サイクルとし、このサイ
クルを10サイクル以上行うものとした。
【0115】そして、各ニッケル水素電池の放電容量が
略一定となった後、それぞれの電池について正極におけ
る抵抗値を測定した。抵抗値の測定は、以下の方法で行
った。まず、正極の放電容量の半分を放電させて1時間
静置した。次いで、0.1C〜1.0Cの各電流値で放
電および充電を各10秒間ずつ行った。そして、充放電
を行った電流値と10秒後の電圧値との関係を求め、電
流−電圧直線の勾配から正極における抵抗値を求めた。
【0116】#3〜#6のニッケル水素電池に用いた各
水酸化ニッケルの比表面積、比表面積と平均粒径との
積、および各ニッケル水素電池の正極における抵抗値の
値を表4に示す。なお、正極における抵抗値は、先に求
めた抵抗値を放電容量1Ahあたりに換算した値であ
る。また、正極における抵抗値と、比表面積と平均粒径
との積(S・a)との関係を図8に示す。
【0117】
【表4】
【0118】図8より、比表面積と平均粒径との積(S
・a)の値が大きくなるとともに、正極における抵抗値
は小さくなり、S・aの値が50を超える領域では抵抗
値は略一定の値となることがわかる。このことは、表4
からも明らかであり、S・aの値が50を超える#3お
よび#4のニッケル水素電池では、いずれも抵抗値が1
5mΩ以下と小さくなっている。すなわち、S・aの値
が50を超える水酸化ニッケルを活物質として使用した
場合には、正極における抵抗値が減少し、上記充電効率
が良好であることに加え、出力密度の高いアルカリ二次
電池を構成することができることが確認できた。
【0119】
【発明の効果】本発明のアルカリ二次電池正極活物質用
水酸化ニッケルは、プロトン拡散係数をDとし、粒子の
平均粒径をaとした場合に、D/aの値が高いものとな
るように構成されたものである。粒子内部のプロトン濃
度の濃度勾配を小さくすることで、高温環境下の大電流
充電においても充電効率の高い二次電池を構成すること
のできる正極活物質となる。また、比表面積をSとした
場合に、S・aの値が50を超えるものは、電解液との
接触面積がより大きくなり、出力密度の高い二次電池を
構成することのできる正極活物質となる。そして、本発
明のアルカリ二次電池は、上記本発明の水酸化ニッケル
を正極活物質として用いて構成したものであり、その水
酸化ニッケルの作用により、高温環境下の大電流充電に
おいても充電効率が高く、また出力密度の高いアルカリ
二次電池となる。
【0120】また、本発明の特性評価方法は、D/aで
表される上記パラメータにより、その水酸化ニッケルの
アルカリ二次電池用正極活物質としての充電特性を評価
するものであり、D/aが大きいほど粒子内のプロトン
濃度勾配は小さいことから、正確に充電効率に関する特
性を評価できる方法となる。もう一つの本発明の特性評
価方法は、S・aで表される上記パラメータにより、そ
の水酸化ニッケルのアルカリ二次電池用正極活物質とし
ての出力特性を評価するものであり、S・aが大きいほ
ど粒子表面の凹凸が多いという観点から、簡便に出力特
性を評価できる方法となる。
【0121】さらに本発明の製造方法は、上記本発明の
水酸化ニッケルを水溶液からの析出によって製造する方
法であり、一定の還流の中で錯体形成反応と析出反応と
を略同時に起こさせるように構成するものである。析出
する水酸化ニッケルの粒子構造の調整が容易で、連続的
にかつ安定的に本発明の水酸化ニッケルを製造できる製
造方法となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 室温および60℃でのアルカリ二次電池の正
極における充電反応および酸素発生反応の電流−電位曲
線を示す。
【図2】 充電時における水酸化ニッケル粒子内部のプ
ロトン濃度の分布を模式的に示す。
【図3】 水酸化ニッケルのX線回折スペクトルを示
す。
【図4】 本発明の水酸化ニッケルを製造する本発明の
製造方法を実施するための装置を模式的に示す。
【図5】 充放電サイクル試験の結果として、#1およ
び#4のニッケル水素電池の3サイクル目から13サイ
クル目までの各サイクルの充電効率を示す。
【図6】 充放電サイクル試験の結果として、#1〜#
7のニッケル水素電池において、D/aの値と高温充電
時の充電効率との関係を示す。
【図7】 充放電サイクル試験の結果として、#1およ
び#4のニッケル水素電池の高温充電時における充電時
間と電池電圧との関係を示す。
【図8】 #3〜#6のニッケル水素電池の正極におけ
る抵抗値と、比表面積と平均粒径との積(S・a)との
関係を示す。
【符号の説明】
1:反応溶液 2:容器体 3:ドラフトチューブ 4:攪拌羽根 5:滴下パイプ 6:投入パイプ 7:オーバーフロー口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 砥綿 真一 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 今泉 純一 福井県福井市白方町45字砂浜割5番10 株 式会社田中化学研究所内 (72)発明者 臼井 猛 福井県福井市白方町45字砂浜割5番10 株 式会社田中化学研究所内 Fターム(参考) 4G048 AA02 AB02 AC06 AD04 AD06 AE05 5H028 AA05 BB15 EE05 FF03 HH01 HH05 5H050 AA05 AA08 AA19 BA11 CA03 CB16 FA17 FA19 GA02 GA27 GA28 HA00 HA02 HA05 HA07 HA13

Claims (10)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 粉末状をなし、該粉末を構成する粒子の
    プロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平
    均粒径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×10-6 が成立するアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケ
    ル。
  2. 【請求項2】 前記プロトン拡散係数Dが、含まれるコ
    バルトの割合をX(重量%)と、CuKα線を用いた粉
    末法X線回折分析によって得られた(001)面の回折
    ピークの半値幅をY(°)とした場合に、次式 D=7.912+0.566X−3.638/Y により推定されることで、次式 (7.912+0.566X−3.638/Y)/a≧
    1×10-6 が成立する請求項1に記載のアルカリ二次電池正極活物
    質用水酸化ニッケル。
  3. 【請求項3】 比表面積をS(cm2・g-1)とした場
    合に、次式 S・a>50 が成立する請求項1または請求項2に記載のアルカリ二
    次電池正極活物質用水酸化ニッケル。
  4. 【請求項4】 粉末状をなし、該粉末を構成する粒子の
    プロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の平
    均粒径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×10-6 が成立する水酸化ニッケルを、 正極活物質として用いたアルカリ二次電池。
  5. 【請求項5】 前記水酸化ニッケルは、 前記プロトン拡散係数Dが、含まれるコバルトの割合を
    X(重量%)と、CuKα線を用いた粉末法X線回折分
    析によって得られた(001)面の回折ピークの半値幅
    をY(°)とした場合に、次式 D=7.912+0.566X−3.638/Y により推定されることで、次式 (7.912+0.566X−3.638/Y)/a≧
    1×10-6 が成立する請求項4に記載のアルカリ二次電池。
  6. 【請求項6】 前記水酸化ニッケルは、 比表面積をS(cm2・g-1)とした場合に、次式 S・a>50 が成立する請求項4または請求項5に記載のアルカリ二
    次電池。
  7. 【請求項7】 粉末状をなす水酸化ニッケルにおいて、
    該粉末を構成する粒子のプロトン拡散係数をD(cm2
    ・s-1)と、該粒子の平均粒径をa(cm)とした場合
    に、次式 D/a で表されるパラメータにより、 該水酸化ニッケルのアルカリ二次電池用正極活物質とし
    ての充電特性を評価する水酸化ニッケルの特性評価方
    法。
  8. 【請求項8】 前記プロトン拡散係数Dを、前記水酸化
    ニッケルに含まれるコバルトの割合をX(重量%)と、
    CuKα線を用いた粉末法X線回折分析によって得られ
    た(001)面の回折ピークの半値幅をY(°)とした
    場合に、次式 D=7.912+0.566X−3.638/Y により推定する請求項7に記載の水酸化ニッケルの特性
    評価方法。
  9. 【請求項9】 粉末状をなす水酸化ニッケルにおいて、
    比表面積をS(cm2・g-1)と、該粉末を構成する粒
    子の平均粒径をa(cm)とした場合に、次式 S・a で表されるパラメータにより、 該水酸化ニッケルのアルカリ二次電池用正極活物質とし
    ての出力特性を評価する水酸化ニッケルの特性評価方
    法。
  10. 【請求項10】 粉末状をなし、該粉末を構成する粒子
    のプロトン拡散係数をD(cm2・s-1)と、該粒子の
    平均粒径をa(cm)とした場合に、次式 D/a≧1×10-6 が成立するアルカリ二次電池正極活物質用水酸化ニッケ
    ルの製造方法であって、 水溶液中においてニッケルイオンと錯化剤とを反応させ
    てニッケル錯塩を生成させ、次いで該ニッケル錯塩とア
    ルカリ金属水酸化物とを反応させて該水溶液中に水酸化
    ニッケルの粒子を析出させることによって製造し、 その製造は、水溶液が内在する容器体内において、該容
    器体内の所定の一部を一方向に向かって流れる該水溶液
    の還流を作り、該一方向の水溶液の流れの中に前記ニッ
    ケルイオンおよび前記錯化剤を単位時間当たり一定量投
    入し、かつ、該容器体内に前記アルカリ金属水酸化物を
    単位時間当たり一定量投入して行うアルカリ二次電池正
    極活物質用水酸化ニッケルの製造方法。
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