JP2002146051A - 延伸フィルム及びそれを用いた偏光子保護フィルム - Google Patents

延伸フィルム及びそれを用いた偏光子保護フィルム

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JP2002146051A
JP2002146051A JP2000345967A JP2000345967A JP2002146051A JP 2002146051 A JP2002146051 A JP 2002146051A JP 2000345967 A JP2000345967 A JP 2000345967A JP 2000345967 A JP2000345967 A JP 2000345967A JP 2002146051 A JP2002146051 A JP 2002146051A
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thermoplastic resin
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JP2000345967A
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Minoru Shioda
実 潮田
Toshihiko Hikita
敏彦 疋田
Sadao Fujii
貞男 藤井
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Kanegafuchi Chemical Industry Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高価なテンター横延伸機や同時二軸延伸機を
使うことなくロール縦延伸のみでハンドリング性に優れ
る透明延伸フィルムを得ること。 【解決手段】 (A)側鎖に置換または非置換イミド基
を有する成分からなる熱可塑性樹脂、および(B)側鎖
に少なくとも置換または非置換フェニル基とニトリル基
とを有する熱可塑性樹脂を含有するフィルムを、ネック
イン率(%)が(1−1/延伸倍率の3乗根)×100
以下で、ロール縦一軸延伸することにより優れた延伸フ
ィルムが得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の熱可塑性樹
脂からなる、ハンドリング性および光学的特性に優れた
透明な一軸延伸フィルムおよびそれを用いた偏光子保護
フィルムに関する。本発明はまた、ロール縦一軸延伸フ
ィルムおよびそれを用いてなる偏光子保護フィルムに関
する。
【0002】
【従来の技術】近年、ノート型パソコン、ワードプロセ
ッサ、携帯電話、携帯情報端末等の小型化・薄型化・軽
量化にともない、これらの電子機器に軽量・コンパクト
という特長を生かした液晶表示装置が多く用いられるよ
うになってきている。液晶表示装置には、その表示品位
を保つために偏光フィルム等の各種フィルムが用いられ
ている。また、携帯情報端末や携帯電話向けに液晶表示
装置を更に軽量化するため、ガラス基板の代わりにプラ
スチックフィルムを用いた液晶表示装置も実用化されて
いる。
【0003】液晶表示装置のように偏光を取り扱う装置
に用いるプラスチックフィルムには、光学的に透明であ
る他に光学的な均質性が求められる。このため、高度に
延伸したポリビニルアルコールからなる偏光子を保護す
るための偏光子保護フィルムや、ガラス基板を樹脂フィ
ルムに代えたプラスチック液晶表示装置用のフィルム基
板の場合、複屈折と厚みの積で表される位相差が小さい
ことが要求される。また、外部の応力などによりフィル
ムの位相差が変化しにくいことが要求される。
【0004】液晶表示装置に用いられるプラスチックフ
ィルムとして、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポ
リスルホン、ポリエーテルスルホン等のエンジニアリン
グプラスチックスや、トリアセチルセルロース等のセル
ロース類のプラスチックからなるフィルムが知られてい
る。これらプラスチックフィルムを製造する場合、プラ
スチックの溶融流動、溶剤乾燥収縮、熱収縮や搬送応力
等により成形中のフィルムには各種応力が発生する。こ
のため、得られるフィルムにはこれらの応力により誘起
される分子配向に起因する複屈折により位相差が残存す
る。そのため必要に応じ熱アニール等のフィルムに対す
る特別な処理を施し残存する位相差を低減させなければ
ならず製造工程が煩雑になるなどの問題がある。また、
残存する位相差を低減させたフィルムを用いた場合で
も、そのあとのフィルムの加工時に生じる応力や変形に
より新たな位相差を生じる。更に、プラスチックフィル
ムが偏光子保護フィルムとして用いられる場合、偏光子
の収縮応力により該フィルムに好ましくない位相差が生
じ、偏光フィルムの偏光性能に悪影響を及ぼす事が知ら
れている。
【0005】これらの問題を解決するため、より分極の
小さい、すなわち、分子の配向による位相差が発現しに
くいプラスチックフィルムを得ることが試みられてい
る。例えば、シクロオレフィン系フィルムや、マレイミ
ド成分を有するオレフィン系フィルムが提案されてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記シクロオレフィン
系フィルムや、マレイミド成分を有するオレフィン系フ
ィルムの光弾性係数は比較的小さい。しかし、それでも
配向複屈折のために視野角特性が悪く、大画面や広視野
角用の液晶表示装置への使用が制限される。
【0007】一方、オレフィン−マレイミド系樹脂とス
チレン−アクリロニトリル系樹脂とからなるフィルムは
上記光弾性係数を更に小さくできるため、応力により誘
起される分子配向による複屈折は比較的小さく、位相差
も比較的小さいので好ましい材料として期待される。
【0008】しかし、これらの材料は、機械的特性が低
く脆い。このために、フィルムの加工時のハンドリング
性に問題がある。例えば、フィルムが粘着ロールを通過
する時やスリットする時、巻き取る時あるいは横延伸機
のクリップに挟む時等のフィルムの製造時に、あるい
は、他の材料とのラミネート等のフィルムの後加工時等
に、裂けやすい、割れやすい等の現象が起こるという、
実用上の問題を抱えている。
【0009】フィルムの機械特性を改善する方法とし
て、可塑剤や可撓性を有する高分子などを添加する方法
がある。しかし、これらの方法では一般に、ガラス転移
温度が低下して耐熱性が損なわれやすい。あるいは、透
明性などの光学的特性が損なわれやすいので好ましくな
い。
【0010】一方、特開平9−234786号には、フ
ィルムを延伸加工することが提案されている。しかし、
延伸により分子を強く配向させると配向複屈折が発生
し、位相差が大きくなってしまうので好ましくない。
【0011】また、上記のプラスチックフィルムの機械
的特性を改善するためには2軸延伸が必要である。しか
しそのような2軸延伸を行うためには、高価な同時二軸
延伸機や縦横の逐次延伸からなる逐次二軸延伸機が必要
であり、製造コストが高くなるなどの問題があった。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、本発明者等は鋭意研究を行った。その結果、比較的
安価なロール縦一軸延伸機などを用いて、ネックイン率
を制御しながら特定の組成を有する樹脂組成物からなる
フィルムを一軸延伸することにより、上記課題が解決さ
れることを見出し、本発明を完成した。すなわち、上記
一軸延伸フィルムによれば、フィルムの伸び率や耐揉疲
労、引裂伝播強度等の機械的強度が改善できること、フ
ィルムの製造時や後加工時等のハンドリング性が大幅に
改善され、フィルムが割れる、裂けるなどの問題の発生
が大幅に減少すること、および複屈折がほとんど発生せ
ず位相差が実質的に発生しないことを見出し、本発明に
至った。
【0013】具体的には、本発明によれば、一軸延伸フ
ィルムであって、(A)側鎖に置換または非置換イミド
基を有する熱可塑性樹脂、および(B)側鎖に置換また
は非置換フェニル基とニトリル基とを有する熱可塑性樹
脂を含有する樹脂組成物からなり、ネックイン率(%)
が(1−1/延伸倍率の3乗根)×100以下である、
一軸延伸フィルムが提供される。
【0014】1つの実施態様では、上記延伸フィルム
は、前記熱可塑性樹脂(A)が、式(1)で表される繰
り返し単位および式(2)で表される繰り返し単位を有
し、ここで式(1)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑
性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として30〜80
モル%であり、式(2)の繰り返し単位の含有率が該熱
可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として70〜
20モル%であり、前記熱可塑性樹脂(B)が、式
(3)で表される繰り返し単位および式(4)で表され
る繰り返し単位を有し、該熱可塑性樹脂(B)中の総繰
り返し単位を基準として、式(3)の繰り返し単位の含
有率が20〜50重量%であり、式(4)の繰り返し単
位の含有率が50〜80重量%であり、該熱可塑性樹脂
(A)の量と熱可塑性樹脂(B)の量との合計を基準と
して、該熱可塑性樹脂(A)の含有率が60〜80重量
%であり、かつ該熱可塑性樹脂(B)の含有率が20〜
40重量%である。
【0015】
【化3】
【0016】(ここで、R1 、R2 およびR3 は、それ
ぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示
す。) (ここで、Rは、水素、炭素数1〜18のアルキル基、
または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示す。)
【0017】
【化4】
【0018】(式(3)において、R1 およびR2 は、
それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基
を示す。) (式(4)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立
に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、式
(4)中においてR4は、水素、炭素数1〜8のアルキ
ル基、ハロゲン基、水酸基、アルコキシ基、もしくはニ
トロ基を示す。) 別の局面において、本発明は、上記延伸フィルムを用い
た偏光子保護フィルムを提供する。
【0019】さらに別の局面において、本発明は、延伸
フィルムの製造方法を提供する。この方法は、(A)側
鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、
および(B)側鎖に置換または非置換フェニル基とニト
リル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物か
らなる原料フィルムをロール縦一軸延伸する工程を包含
し、ここで、得られる延伸フィルムのネックイン率
(%)が(1−1/延伸倍率の3乗根)×100以下で
ある。
【0020】またさらに別の局面において、本発明は、
延伸フィルムの製造方法を提供する。この方法は、
(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑
性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル
基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂
組成物からなる原料フィルムをロール縦一軸延伸する工
程を包含し、ここで、該ロール縦一軸延伸を行う際のロ
ール間距離が10mm〜150mmである。
【0021】
【発明の実施の形態】(本発明のフィルム)まず、本発
明のフィルムについて説明する。
【0022】(樹脂組成物)本発明の延伸フィルムは、
(A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑
性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル
基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂
組成物から作られる。本発明の延伸フィルムは、上記熱
可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)のみから製
造されることが好ましい。しかし、必要に応じて、上記
熱可塑性樹脂(A)および熱可塑性樹脂(B)以外に、
第3の樹脂を用いてもよい。
【0023】なお、本明細書中においては、上記熱可塑
性樹脂(A)が共重合体樹脂である場合、この共重合体
を、「熱可塑性共重合体(A)」ともいう。また本明細
書中においては、上記熱可塑性樹脂(B)が共重合体で
ある場合、この共重合体を、「熱可塑性共重合体
(B)」ともいう。
【0024】本発明に用いられる熱可塑性樹脂(A)
は、側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑性
樹脂である。ここで、熱可塑性樹脂(A)の主鎖は、任
意の熱可塑性樹脂の主鎖であり得る。例えば、炭素のみ
からなる主鎖であってもよく、または炭素以外の原子が
炭素間に挿入される主鎖であってもよい。あるいは炭素
以外の原子からなる主鎖であってもよい。好ましくは、
炭素のみからなる主鎖である。例えば、炭化水素または
その置換体であり得る。具体的には例えば、主鎖は、付
加重合により得られる主鎖であり得る。具体的には例え
ば、ポリオレフィンまたはポリビニルである。
【0025】また、主鎖は、縮合重合により得られる主
鎖であってもよい。例えば、エステル結合、アミド結合
などで得られる主鎖であり得る。
【0026】好ましくは、主鎖は、置換ビニルモノマー
を重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0027】熱可塑性樹脂(A)に置換もしくは非置換
のイミド基を導入する方法としては、従来公知の任意の
方法が可能である。例えば、置換もしくは非置換のイミ
ド基を有するモノマーを重合することにより、置換もし
くは非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂を得てもよ
い。また例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成し
た後、側鎖に置換もしくは非置換のイミド基を導入して
もよい。例えば、置換もしくは非置換のイミド基を有す
る化合物を側鎖にグラフトさせてもよい。
【0028】イミド基が置換基で置換されている場合、
当該置換基としては、イミド基の水素を置換し得る従来
公知の置換基が使用可能である。具体的には例えば、ア
ルキル基などである。
【0029】好ましくは、熱可塑性樹脂(A)は、少な
くとも1種のオレフィン(アルケン)から誘導される繰
り返し単位と少なくとも1種の置換あるいは非置換マレ
イミド構造を有する繰り返し単位とを含有する共重合体
(二元もしくはそれ以上の多元共重合体)である。
【0030】特に好ましくは、熱可塑性樹脂(A)は、
下記式(1)で表される繰り返し単位と下記式(2)で
表される繰り返し単位とを含有する。
【0031】
【化5】
【0032】(式(1)において、R1 、R2 およびR
3 は、それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアル
キル基を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜
4であり、より好ましくは、1〜2であり、特に好まし
くは1である。) (式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜18のア
ルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を
示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であ
り、より好ましくは、1〜2である。シクロアルキル基
の炭素数は、好ましくは3〜9であり、より好ましく
は、4〜7である。) ここで、式(1)の繰り返し単位の含有量は、好ましく
は、該熱可塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準とし
て、30〜80モル%である。より好ましくは、40〜
60モル%であり、さらに好ましくは、45〜55モル
%である。式(2)の繰り返し単位の含有量は、該熱可
塑性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として、70〜
20モル%である。より好ましくは、60〜40モル%
であり、さらに好ましくは、45〜55モル%である。
好ましい実施態様では、式(1)の繰り返し単位と式
(2)の繰り返し単位との和は100%である。しか
し、必要に応じて、後述する第3の繰り返し単位を用い
てもよい。
【0033】第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の
繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(A)の総繰り返し
単位を基準として、好ましくは30モル%以下であり、
より好ましくは20モル%以下であり、さらに好ましく
は15モル%以下であり、特に好ましくは10モル%以
下である。第3の繰り返し単位が多すぎる場合には、上
記式(1)で表される繰り返し単位と式(2)で表され
る繰り返し単位との性能が充分に得られにくい。
【0034】また、第3の繰り返し単位を用いる場合、
第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(A)の総繰
り返し単位を基準として、好ましくは1モル%以上であ
り、より好ましくは2モル%以上であり、さらに好まし
くは3モル%以上であり、特に好ましくは5モル%以下
である。第3の繰り返し単位が少なすぎる場合には、組
成物全体として、第3の繰り返し単位による性能が充分
に得られにくい。
【0035】なお、第3の繰り返し単位を用いる場合に
おいても、式(1)の繰り返し単位と式(2)の繰り返
し単位との比率は、第3の繰り返し単位が存在しない場
合と同様の比率とすることが好ましい。
【0036】(式(1)の繰り返し単位)式(1)の繰
り返し単位(オレフィン単位)を提供するオレフィン
は、下記式(5)で表される。
【0037】
【化6】
【0038】(ここで、R1 、R2 およびR3 は、式
(1)と同じである。) このようなオレフィンの好ましい例を挙げると、イソブ
テン、2−メチル−1−ブテン、2−メチル−1−ペン
テン、2−メチル−1−ヘキセン、2−メチル−1−ヘ
プテン、1−イソオクテン、2−メチル−1−オクテ
ン、2−エチル−1−ペンテン、2−エチル−2−ブテ
ン、2−メチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキ
セン等である。これらオレフィンは、単独で用いてもよ
く、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0039】(式(2)の繰り返し単位)上記式(2)
の繰り返し単位(マレイミド単位)は、対応するマレイ
ミド化合物から誘導することができる。そのようなマレ
イミド化合物は、下記式(6):
【0040】
【化7】
【0041】(ここで、Rは、式(2)に同じ。)で表
される。そのようなマレイミド化合物の好ましい例を挙
げると、マレイミド、並びにN−メチルマレイミド、N
−エチルマレイミド、N−n−プロピルマレイミド、N
−i−プロピルマレイミド、N−n−ブチルマレイミ
ド、N−i−ブチルマレイミド、N−s−ブチルマレイ
ミド、N−t−ブチルマレイミド、N−n−ペンチルマ
レイミド、N−n−ヘキシルマレイミド、N−n−ヘプ
チルマレイミド、N−n−オクチルマレイミド、N−ラ
ウリルマレイミド、N−ステアリルマレイミド、N−シ
クロプロピルマレイミド、N−シクロブチルマレイミ
ド、N−シクロペンチルマレイミド、N−シクロヘキシ
ルマレイミド、N−シクロヘプチルマレイミド、N−シ
クロオクチルマレイミド等のN−置換マレイミドであ
る。
【0042】これらのマレイミド化合物は、単独で用い
てもよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよ
い。マレイミド化合物としては、N−置換マレイミド
(式(6)において、Rが水素以外の基)が特に好まし
い。例えば、N−メチルマレイミドなどである。
【0043】(第3の繰り返し単位)本発明に用いる熱
可塑性共重合体(A)は、上記オレフィン単位とマレイ
ミド単位以外に、第3の繰り返し単位として、他の共重
合性単量体を1種以上含有することができる。そのよう
な共重合性単量体には、アクリル酸メチルやアクリル酸
ブチルのようなアクリル酸エステル単量体、メタクリル
酸メチルやメタクリル酸シクロヘキシルのようなメタク
リル酸エステル単量体、酢酸ビニル等のビニルエステル
単量体、メチルビニルエーテルのようなビニルエーテル
単量体等のビニル単量体、並びに無水マレイン酸のよう
な不飽和二重結合を有する酸無水物等が含まれる。これ
ら第3の繰り返し単位は、1種類の単量体であってもよ
く、2種以上の単量体を組み合わせて第3の繰り返し単
位としてもよい。第3の繰り返し単位を光学的特性を損
なわない程度に含有させることにより、熱可塑性共重合
体(A)の耐熱性を向上させたり、機械的強度を増大さ
せたりすることができる。
【0044】(熱可塑性樹脂(A)の重合方法)熱可塑
性樹脂(A)は、例えば、上記オレフィンとマレイミド
化合物とを既知の重合方法で重合させることにより製造
することができる。この重合には、グラフト重合も含ま
れる。あるいは、熱可塑性樹脂(A)は、上記オレフィ
ンと無水マレイン酸とを常法に従って重合させて前駆重
合体を製造し、これにアミン化合物を反応させて前駆重
合体の無水マレイン酸部位をイミド化させることによっ
ても製造することができる。その場合に使用するアミン
化合物としては、上記式(2)のマレイミド単位におけ
るイミド部位に対応するアミンが含まれる。より具体的
には、式R−NH2 (ただし、Rは、式(2)に同
じ。)で表されるアミン化合物、例えばメチルアミン、
エチルアミン、n−プロピルアミン、i−プロピルアミ
ン、n−ブチルアミン、s−ブチルアミン、t−ブチル
アミン、シクロヘキシルアミン等のアルキルアミンやア
ンモニアの他、ジメチル尿素、ジエチル尿素等を好まし
く例示することができる。この場合にも、上記式(1)
の繰り返し単位と式(2)の繰り返し単位を有する共重
合体が得られる。
【0045】本発明に用いる熱可塑性共重合体(A)
は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共
重合体、交互共重合体のいずれであってもよい。交互共
重合体であることが好ましい。熱可塑性共重合体(A)
は、より好ましくは、マレイミド単位として、式(2)
におけるRがメチル基、エチル基、イソプロピル基およ
びシクロヘキシル基から選ばれたアルキル基である少な
くとも1種のマレイミド単位を含有し、オレフィン単位
として、式(1)におけるR1 が水素であり、R 2 およ
びR3 がそれぞれメチル基である少なくとも1種のオレ
フィン単位を含有する共重合体である。ここで、本明細
書中でモノマーについて「単位」という場合には、当該
モノマーが重合した後に残る残基のことをいう。具体的
には、「マレイミド単位」とは、用いられた1つのマレ
イミド分子が重合した後に残る残基をいう。同様に「オ
レフィン単位」とは、用いられた1つのオレフィンモノ
マーが重合した後に残る残基をいう。
【0046】さらに好ましくは、熱可塑性共重合体
(A)は、マレイミド単位としてN−メチルマレイミド
単位を含有し、オレフィン単位としてイソブチレン単位
を含有する。熱可塑性共重合体(A)は、N−置換マレ
イミドとイソブテンとの交互共重合体であることが特に
好ましい。
【0047】本発明に用いる熱可塑性共重合体(A)に
おいて、マレイミド単位の含有率は、熱可塑性共重合体
(A)の総繰り返し単位を基準として30モル%以上8
0モル%未満であることが好ましい。マレイミド単位の
含有率が少なすぎるか、または多すぎる場合、得られる
フィルムの耐熱性や機械的強度が損なわれるおそれがあ
る。マレイミド単位の含有率は、より好ましくは、40
モル%以上60モル%以下である。
【0048】第3の繰り返し単位を添加する場合には、
第3の繰り返し単位の含有率が、熱可塑性共重合体
(A)の総繰り返し単位を基準として5モル%以上30
モル%以下であることが好ましい。5モル%以上10モ
ル%以下であることがより好ましい。
【0049】熱可塑性共重合体(A)中の繰り返し単位
の残りは、オレフィン単位である。熱可塑性共重合体
(A)は、マレイミド単位とオレフィン単位とを主成分
として含むことが特に好ましい。1つの実施態様では、
マレイミド単位とオレフィン単位との合計が、熱可塑性
共重合体(A)中の50モル%以上であり、好ましく
は、70モル%以上である。より好ましくは、80モル
%以上であり、さらに好ましくは、90モル%以上であ
る。
【0050】熱可塑性共重合体(A)は、1×103
上の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ま
しくは、1×104以上である。
【0051】熱可塑性共重合体(A)は、1×107
下の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ま
しくは、5×105以下である。
【0052】さらに、熱可塑性樹脂(A)は、ガラス転
移温度が好ましくは80℃以上、より好ましくは100
℃以上、さらに好ましくは130℃以上であるような耐
熱性を示すことが好ましい。
【0053】本発明に用いられるオレフィン−マレイミ
ド共重合体は、既述のようにそれ自体既知の方法で製造
することができる。例えば特開平5−59193号公
報、特開平5−195801号公報、特開平6−136
058号公報および特開平9−328523号公報に記
載されている方法で得ることができる。具体的には例え
ば、オレフィンとマレイミド化合物とを直接共重合させ
たり、その一方の重合体に他方をグラフト共重合した
り、あるいは前述した前駆重合体に対してアミン化合物
を反応させてイミド結合を導入することによって製造す
ることができる。
【0054】(熱可塑性樹脂(B))本発明に用いられ
る熱可塑性樹脂(B)は、置換または非置換フェニル基
とニトリル基とを側鎖に有する熱可塑性樹脂である。こ
こで、熱可塑性樹脂(B)の主鎖は、任意の熱可塑性樹
脂の主鎖であり得る。例えば、炭素のみからなる主鎖で
あってもよく、または炭素以外の原子が炭素間に挿入さ
れる主鎖であってもよい。あるいは炭素以外の原子から
なる主鎖であってもよい。好ましくは、炭素のみからな
る主鎖である。例えば、炭化水素またはその置換体であ
り得る。具体的には例えば、主鎖は、付加重合により得
られる主鎖であり得る。具体的には例えば、ポリオレフ
ィンまたはポリビニルである。
【0055】また、主鎖は、縮合重合により得られる主
鎖であってもよい。例えば、エステル結合、アミド結合
などで得られる主鎖であり得る。
【0056】好ましくは、主鎖は、置換ビニルモノマー
を重合させて得られるポリビニル骨格である。
【0057】熱可塑性樹脂(B)に置換または非置換フ
ェニル基を導入する方法としては、従来公知の任意の方
法が可能である。例えば、置換または非置換フェニル基
を有するモノマーを重合することにより、置換または非
置換フェニル基を有する熱可塑性樹脂を得てもよい。ま
た例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成した後、
側鎖に置換または非置換フェニル基を導入してもよい。
例えば、置換もしくは非置換のフェニル基を有する化合
物を側鎖にグラフトさせてもよい。
【0058】フェニル基が置換基で置換されている場
合、当該置換基としては、フェニル基の水素を置換し得
る従来公知の置換基および置換位置が使用可能である。
具体的には置換基は、例えば、アルキル基などである。
【0059】熱可塑性樹脂(B)にニトリル基を導入す
る方法としては、従来公知の任意の方法が可能である。
例えば、ニトリル基を有するモノマーを重合することに
より、ニトリル基を有する熱可塑性樹脂を得てもよい。
また例えば、各種モノマーを重合して主鎖を形成した
後、側鎖にニトリル基を導入してもよい。例えば、ニト
リル基を有する化合物を側鎖にグラフトさせてもよい。
【0060】本発明に用いられる熱可塑性樹脂(B)
は、好ましくは、不飽和ニトリル化合物から誘導される
繰り返し単位(ニトリル単位)とスチレン系化合物から
誘導される繰り返し単位(スチレン系単位)とを含む共
重合体(二元もしくは三元以上の多元共重合体)であ
る。
【0061】熱可塑性共重合体(B)は、不飽和ニトリ
ル単位とスチレン系単位とを主成分として含むことが特
に好ましい。不飽和ニトリル単位とスチレン系単位との
合計が、熱可塑性共重合体(B)の70重量%以上であ
ることが好ましい。より好ましくは80重量%以上であ
り、さらに好ましくは90重量%であり、特に好ましく
は95重量%以上である。勿論、100重量%としても
よい。
【0062】(ニトリル化合物)上記の好ましい共重合
体(B)を構成する不飽和ニトリル化合物の好ましい例
を挙げると、アクリロニトリルやメタクリロニトリルの
ようなα−置換不飽和ニトリル、フマロニトリルのよう
なα,β−二置換オレフィン性不飽和結合を有するニト
リル化合物である。
【0063】(スチレン系化合物)上記の好ましい共重
合体(B)を構成するスチレン系化合物としては、スチ
レン、ビニルトルエン、メトキシスチレンまたはクロロ
スチレン等の非置換または置換スチレン系化合物や、α
−メチルスチレン等のα−置換スチレン系化合物を用い
ることができる。
【0064】好ましい実施態様では、熱可塑性樹脂
(B)は、式(3)で表される繰り返し単位および式
(4)で表される繰り返し単位を有する。熱可塑性樹脂
(B)中の総繰り返し単位を基準として、式(3)の繰
り返し単位は、好ましくは、20〜50重量%であり、
より好ましくは20〜40重量%であり、さらに好まし
くは20〜30重量%である。
【0065】
【化8】
【0066】(式(3)において、R1 およびR2 は、
それぞれ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基
を示す。アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4であ
り、より好ましくは、1〜2である。) (式(4)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立
に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R4
は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン基、水
酸基、アルコキシ基、もしくはニトロ基を示す。アルキ
ル基の炭素数は、好ましくは1〜4であり、より好まし
くは、1〜3である。さらに好ましくは、1〜2であ
る。式(4)において、アルコキシ基の炭素数は、好ま
しくは、1〜20であり、より好ましくは、1〜8であ
り、さらに好ましくは、1〜4である。) 熱可塑性樹脂(B)中の総繰り返し単位を基準として、
式(4)の繰り返し単位は、好ましくは、50〜80重
量%であり、より好ましくは60〜80重量%であり、
さらに好ましくは70〜80重量%である。1つの好ま
しい実施態様では、式(3)の繰り返し単位と式(4)
の繰り返し単位との和は100%である。しかし、必要
に応じて、後述する第3の繰り返し単位を用いてもよ
い。
【0067】第3の繰り返し単位を用いる場合、第3の
繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(B)の重量を基準
として、好ましくは30重量%以下であり、より好まし
くは20重量%以下であり、さらに好ましくは15重量
%以下であり、特に好ましくは10重量%以下である。
第3の繰り返し単位が多すぎる場合には、上記式(1)
で表される繰り返し単位と式(2)で表される繰り返し
単位との性能が充分に得られにくい。
【0068】また、第3の繰り返し単位を用いる場合、
第3の繰り返し単位は、熱可塑性共重合体(B)の重量
を基準として、好ましくは1重量%以上であり、より好
ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3重量
%以上であり、特に好ましくは5重量%以上である。第
3の繰り返し単位が少なすぎる場合には、組成物全体と
して、第3の繰り返し単位による性能が充分に得られに
くい。
【0069】なお、第3の繰り返し単位を用いる場合に
おいても、式(3)の繰り返し単位と式(4)の繰り返
し単位との比率は、第3の繰り返し単位が存在しない場
合と同様の比率とすることが好ましい。
【0070】(第3の繰り返し単位)熱可塑性共重合体
(B)は、上記ニトリル単位とスチレン系単位以外に、
第3の繰り返し単位として、他の共重合性単量体を含有
していてもかまわない。そのような第3の繰り返し単位
には、好ましくは、ブチルアクリレート等のアクリル系
単量体、エチレンやプロピレン等のオレフィン系単量体
が含まれ得る。これら単量体を1種または2種以上を共
重合させることにより、得られたフィルムの可撓性を向
上させることができる。また、第3の繰り返し単位とし
ては、N−置換マレイミドを用いることもでき、このN
−置換マレイミド、特にフェニルマレイミドを共重合成
分として用いることにより、当該共重合体の耐熱性を向
上させることができる。
【0071】(熱可塑性樹脂(B)の重合方法)熱可塑
性共重合体(B)は、これら単量体を直接共重合させる
ことにより得られるが、スチレン系化合物の重合体およ
び不飽和ニトリル化合物の重合体の一方に、他方をグラ
フト共重合させてもよい。また、ゴム弾性を有するアク
リル系重合体にスチレン系化合物および不飽和ニトリル
系化合物をグラフト重合させることにより好ましい共重
合体を得ることができる。
【0072】特に好ましい熱可塑性共重合体は、不飽和
ニトリル成分としてアクリロニトリルを含有し、スチレ
ン系成分としてスチレンを含有する共重合体である。こ
れら共重合体はAS樹脂やAAS樹脂として知られてい
る。
【0073】熱可塑性共重合体(B)において、不飽和
ニトリル単位とスチレン系単位の比率は、好ましくは、
前者が20〜50重量%であり、後者が50〜80重量
%である。より好ましくは、前者が20〜40重量%で
あり、後者が60〜80重量%である。特に、前者が2
0〜30重量%で、後者が70〜80重量%の場合は更
に好ましい結果を与える。スチレン系化合物やニトリル
系化合物の成分が多すぎる場合には、(A)の熱可塑性
樹脂との相溶性が乏しくなり、得られるフィルムの透明
性が低下しヘーズが大きくなり好ましくない。
【0074】熱可塑性共重合体(B)は、不飽和ニトリ
ル単位とスチレン系単位とを主成分として含むことが特
に好ましい。不飽和ニトリル単位とスチレン系単位との
合計が、熱可塑性共重合体(B)の70重量%以上であ
ることが好ましい。より好ましくは80重量%以上であ
り、さらに好ましくは90重量%であり、特に好ましく
は95重量%以上である。勿論、100重量%としても
よい。
【0075】熱可塑性共重合体(B)が、不飽和ニトリ
ル単位とスチレン系単位とを主成分(好ましくは、不飽
和ニトリル単位とスチレン系単位との合計が、熱可塑性
共重合体(B)の70重量%以上)として含む実施態様
が特に好ましい。
【0076】熱可塑性共重合体(B)は、1×103
上の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ま
しくは、1×104以上である。
【0077】熱可塑性共重合体(B)は、1×107
下の重量平均分子量を有することが好ましい。より好ま
しくは、5×105以下である。
【0078】(熱可塑性樹脂(A)と(B)との比)本
発明の延伸フィルムを得るために用いる熱可塑性樹脂
(A)と熱可塑性樹脂(B)との比率は、熱可塑性樹脂
(A)10〜90重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)
10〜90重量%の割合で配合することが好ましい。熱
可塑性樹脂(A)40〜85重量%に対して、熱可塑性
樹脂(B)15〜60重量%の割合で配合することがよ
り好ましい。熱可塑性樹脂(A)60〜80重量%に対
して、熱可塑性樹脂(B)20〜40重量%の割合で配
合することがさらに好ましく、熱可塑性樹脂(A)65
〜75重量%に対して、熱可塑性樹脂(B)25〜35
重量%の割合は特に好ましい。
【0079】熱可塑性樹脂(B)が好ましい範囲をはず
れると、延伸フィルムにした場合、平面方向または厚み
方向の位相差が大きくなるおそれがある。また、得られ
るフィルムの透明性が低下しやすい。
【0080】両樹脂(A)および(B)を上記割合で配
合することにより、フィルムの平面方向および厚み方向
の両方において位相差が極めて小さい延伸フィルムとす
ることができる。
【0081】好ましい実施態様において、熱可塑性樹脂
(A)と熱可塑性樹脂(B)との和は100重量%であ
る。
【0082】特に好ましい混合比は熱可塑性樹脂(A)
および(B)の種類にも依存する。一般的には、使用す
る熱可塑性樹脂BおよびAに含まれるフェニル基モル数
Pに対する熱可塑性樹脂AおよびBに含まれるイミド基
モル数Iの比(I/P比)が1.3以上であることが好
ましく、1.4以上がより好ましく、さらに好ましくは
1.5以上である。また、2.9以下であることが好ま
しく、2.6以下であることがより好ましく、2.4以
下がさらに好ましい。1つの実施態様では、I/P比を
1.7〜2.9とすることが好ましい。I/P比を1.
8〜2.6とすることがより好ましい。
【0083】別の実施態様では、I/P比を1.3〜
2.0とすることが好ましく、I/P比を1.5〜1.
9とすることがより好ましい。
【0084】N−メチルマレイミドとイソブテンの交互
重合体を熱可塑性樹脂(A)として選択し、アクリロニ
トリルとスチレンの共重合体を熱可塑性樹脂(B)とし
て選択した場合の熱可塑性樹脂(A):熱可塑性樹脂
(B)の重量比は60:40〜80:20が好ましく、
65:35〜75:25がより好ましい。熱可塑性樹脂
(B)中のアクリロニトリル成分の量は20〜30重量
%が好ましく、25〜29重量%がより好ましい。熱可
塑性樹脂(B)中のスチレン系成分の量は80〜70重
量%が好ましく、75〜71重量%がより好ましい。
【0085】上述したような好ましい組成を適宜選択す
ることにより、実質的に複屈折を示さない延伸フィルム
を得ることができる。例えば、好ましい実施態様では、
フィルムの平面方向の位相差を10nm以下に制御する
ことができ、さらに好ましい実施態様では、6nm以下
に制御することができる。また例えば、フィルム厚み方
向の位相差を50nm以下に制御することができ、より
好ましい実施態様では、20nm以下に制御することが
できる。特に好ましい実施態様では、10nm以下に制
御することができる。フィルムの平面方向の位相差が1
0nm以下、かつフィルム厚み方向の位相差が50nm
以下である場合、一般的には、実質的に複屈折がないと
評価することができる。
【0086】また上述した好ましい組成を適宜選択すれ
ば、上記複屈折性能と同時に、光線透過率が高く、か
つ、ヘーズが低い延伸フィルムを得ることができる。具
体的には、例えば、好ましい実施態様では、光線透過率
が85%以上のフィルムが容易に得られ、より好ましい
実施態様では、88%以上のフィルムが得られ得る。ま
た、好ましい実施態様では、ヘーズが2%以下に制御さ
れ得、より好ましい実施態様では、1%以下に制御され
得る。特に好ましい実施態様では、0.5%以下に制御
され得る。光線透過率が85%以上、かつヘーズが2%
以下であるフィルムであれば、各種光学用途の高性能フ
ィルムとして使用することができる。
【0087】(組成物の製造)本発明に用いる樹脂組成
物を得る方法としては、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性
樹脂(B)とを混合してフィルム成形機に投入し得る状
態とすることができる限り、公知の任意の方法が採用さ
れ得る。
【0088】例えば、熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹
脂(B)とを単に混合することにより樹脂組成物を得る
方法や、両樹脂を熱溶融混練して樹脂組成物を得る方法
が挙げられる。
【0089】これらの樹脂組成物は、必要に応じて、可
塑剤、熱安定剤、加工性改良剤、紫外線吸収剤やフィラ
ー等の公知の添加剤やその他の樹脂を含有してもよい。
なお、本明細書中では、このような、熱可塑性樹脂
(A)および熱可塑性樹脂(B)以外の樹脂を、「第3
の樹脂」ともいう。
【0090】未延伸のフィルムの機械的特性を向上させ
るために可塑剤や可撓性を有する高分子などを樹脂組成
物に添加してもよい。しかしこれらの材料を用いると、
ガラス転移温度が低下して耐熱性が損なわれる虞があ
り、あるいは透明性が損なわれる等の虞がある。このた
め、これらの可塑剤または可撓性高分子を用いる場合、
その添加量は、フィルムの性能を妨げない量とするべき
である。好ましくは、樹脂組成物中の20重量%以下で
ある。より好ましくは、10重量%以下であり、さらに
好ましくは5重量%以下である。
【0091】熱可塑性樹脂(A)のイミド含有率が高い
場合、具体的には、例えば、熱可塑性樹脂(A)のイミ
ド含有率が40モル%以上であるような場合には、得ら
れるフィルムは硬く脆くなる傾向にあるため、少量の可
塑剤を加えれば、フィルムの応力白化や裂けを防止する
ことができるので有効である。このような可塑剤として
は、従来公知の可塑剤が使用可能である。例えば、アジ
ピン酸ジ−n−デシルなどの脂肪族二塩基酸系可塑剤や
リン酸トリブチルなどのリン酸エステル系可塑剤などが
例示され得る。
【0092】上記第3の樹脂とは、上記熱可塑性樹脂
(A)および(B)以外の樹脂をいう。第3の樹脂は熱
可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよ
い。好ましくは熱可塑性樹脂である。また、第3の樹脂
は単独の樹脂であってもよく、または複数種類の樹脂の
ブレンドであってもよい。第3の樹脂を用いる場合の使
用量は、樹脂組成物中に使用される樹脂の合計、すなわ
ち、熱可塑性樹脂(A)および(B)ならびに第3の樹
脂の合計量のうちの30重量%以下であることが好まし
く、より好ましくは20重量%以下であり、さらに好ま
しくは10重量%以下である。また、使用される樹脂の
合計量のうちの1重量%以上であることが好ましく、よ
り好ましくは2重量%以上であり、さらに好ましくは3
重量%以上である。
【0093】第3の樹脂が多すぎる場合には、熱可塑性
樹脂(A)および(B)の性能が充分に発揮されにく
い。また、熱可塑性樹脂(A)および(B)との相溶性
が低い樹脂を用いると、得られるフィルムの光学的性能
が低下しやすい。第3の樹脂が少なすぎる場合には、第
3の樹脂の添加効果が得られにくい。
【0094】なお、第3の樹脂を用いる場合であって
も、熱可塑性樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(B)との配
合比は、第3の樹脂を用いない場合と同様に、前述した
比率であることが好ましい。
【0095】(フィルムの製造)フィルムを成形する方
法としては、従来公知の任意の方法が可能である。例え
ば、溶液流延法および溶融押出法等などが挙げられる。
そのいずれをも採用することができる。
【0096】好ましい実施態様においては、フィルム化
の前に、用いる樹脂組成物を予備乾燥しておく。予備乾
燥により、フィルムの発泡などの欠陥を防ぐことができ
るので非常に有用である。
【0097】(延伸)本発明の一軸延伸フィルムは、上
記の樹脂組成物を未延伸状態の原料フィルムに成形し、
さらに一軸延伸を行うことにより得られる。本明細書中
では、説明の便宜上、上記樹脂組成物をフィルム状に成
形した後、延伸工程を施す前のフィルムを「原料フィル
ム」と呼ぶ。
【0098】延伸を行うことにより、機械的特性が向上
する。従来のフィルムでは延伸処理を行った場合に位相
差の発生を避ける事が困難であった。しかし、本発明の
フィルムは、延伸処理を施しても位相差が実質的に発生
しないという利点を有する。
【0099】フィルムの延伸は、原料フィルムを成形し
た後、すぐに連続的に行ってもよい。ここで、上記「原
料フィルム」との状態が瞬間的にしか存在しない場合が
あり得る。瞬間的にしか存在しない場合には、その瞬間
的な、フィルムが形成された後延伸されるまでの状態を
原料フィルムという。また、原料フィルムとは、その後
延伸されるのに充分な程度にフィルム状になっていれば
よく、完全なフィルムの状態である必要はなく、もちろ
ん、完成したフィルムとしての性能を有さなくてもよ
い。
【0100】また、必要に応じて、原料フィルムを成形
した後、一旦フィルムを保管もしくは移動し、その後フ
ィルムの延伸工程を行ってもよい。
【0101】フィルムを延伸する方法としては、従来公
知の任意の延伸方法が採用され得る。具体的には、例え
ば、テンターを用いた横延伸、ロールを用いた縦延伸、
自由端一軸延伸、およびこれらを逐次組み合わせた逐次
二軸延伸方法などがある。また、縦と横を同時に延伸す
る同時二軸延伸方法も採用可能である。ロール縦延伸を
行った後、テンターによる横延伸を行う方法を採用して
も良い。
【0102】本発明においては特に、ロールを用いた縦
延伸が好ましい。
【0103】本発明の一軸延伸フィルムは、一軸延伸フ
ィルムの状態で最終製品とすることができる。勿論、必
要に応じてさらに延伸工程を組合せて行って2軸延伸フ
ィルムとしてもよい。ただし、本発明の一軸延伸フィル
ムは、二軸延伸を行わなくても良好な性能を発揮するの
で、一軸延伸フィルムとして使用することが、製造プロ
セスの簡略化、低コスト化などの点で好ましい。具体的
には、テンターを用いた横延伸機や縦と横を同時に延伸
する同時二軸延伸機のような高価なそして大がかりな装
置を用いることなく、ロール縦延伸機のみで、フィルム
が粘着ロールを通過する時やスリットする時、巻き取る
時あるいは横延伸機のクリップに挟む時等のフィルムの
製造時に、あるいは他の材料とのラミネートなどの後加
工において、フィルムの裂け、あるいは割れを起こしに
くいという利点がある。
【0104】(ネックイン率)本発明において、好まし
いフィルムの一軸延伸時のネックイン率(%)は(1−
(1/(延伸倍率の3乗根)))×100以下である。
好ましくは、(1−(1/(延伸倍率の3.5乗
根)))×100以下である。より好ましくは、(1−
(1/(延伸倍率の4乗根)))×100以下である。
さらに好ましくは、(1−(1/(延伸倍率の5乗
根)))×100以下である。特に好ましくは、(1−
(1/(延伸倍率の6乗根)))×100以下である。
【0105】例えば、延伸倍率が2倍である場合、上記
延伸倍率の3乗根に基づくネックイン率の好ましい上限
は、以下の通り計算される。 (1−1/(延伸倍率)1/3)×100=(1−1/
(21/3))×100=20.6% ネックイン率が高すぎる場合、フィルムの延伸方向と直
交する方向において機械的強度が低下しやすい。このた
め、充分なハンドリング性が得られにくい。すなわち、
フィルムが粘着ロールを通過、剥離する時やスリットす
る時、巻き取る時あるいは横延伸機のクリップに挟む時
などのフィルムの製造時、あるいは他の材料とのラミネ
ートなどの後加工時などにフィルムが割れやすく、また
裂けやすいなどの問題が発生する。
【0106】他方、ネックイン率が高すぎると延伸中に
フィルムに皺が入りやすいなどの弊害が発生しやすい。
【0107】ネックイン率とは延伸によるフィルム延伸
方向と直交する方向の長さ変化率である。すなわち、縦
延伸の場合であれば幅方向の長さ変化率である。ネック
イン率は、次式で計算される。
【0108】 ネックイン率(%)=(W0−W)/W0×100。
【0109】ここで、W0は延伸軸と直交する方向(幅
方向)の延伸前のフィルム幅である。Wは延伸後のフィ
ルム幅である。
【0110】ネックイン率を制御する方法としては、上
記好ましいネックイン率が得られる限り、任意の方法が
採用され得る。例えば、低速で回転するロールと高速で
回転するロール間の共通接線間距離(延伸ロール間距
離)を短くする方法が挙げられる。より具体的には例え
ば、ロール間距離は、好ましくは、150mm以下であ
り、より好ましくは、100mm以下であり、さらに好
ましくは70mm以下であり、特に好ましくは50mm
以下である。ロール間距離が長すぎると、ネックイン率
の制御が困難になりやすい。ロール間距離は、好ましく
は、10mm以上であり、より好ましくは、20mm以
上である。ロール間距離が短すぎる場合には、フィルム
が不均一に延伸されやすい。好ましい実施態様におい
て、ロール間距離は、20mm〜70mmである。
【0111】ネックイン率を制御する方法としてはま
た、フィルムを走行方向とこれに直交する方向に引っ張
るクロスガイダーを使用する方法などが挙げられる。
【0112】テンター横延伸により得られるロール状フ
ィルムに於いては実質的にネックインは起こらない。し
かし、横延伸のみではフィルムの走行方向の機械的強度
が不十分となりやすく、フィルムの製造において割れや
裂けが非常に発生しやすい。また、後加工、例えば他の
フィルムとラミネートする際などにも割れや裂けが非常
に発生しやすい。
【0113】フィルムの延伸温度および延伸倍率は、得
られたフィルムの機械的強度を指標として適宜調整する
ことができる。延伸温度の範囲は、DSC法によって求
めたフィルムのガラス転移温度をTgとしたときに、好
ましくは、Tg−30℃〜Tg+30℃の範囲である。
より好ましくは、Tg−20℃〜Tg+20℃である。
さらに好ましくは、Tg以上Tg+20℃以下の範囲で
ある。延伸温度が高すぎる場合、得られたフィルムの伸
び率や引裂伝播強度、耐揉疲労の改善が不十分になりや
すく、また、フィルムがロールに粘着するトラブルが起
こりやすい。逆に、延伸温度が低すぎる場合、延伸フィ
ルムのヘーズが大きくなりやすく、また、極端な場合に
は、フィルムが裂けやすい、割れやすいなどの工程上の
問題を引き起こしやすい。
【0114】好ましい延伸倍率は、延伸温度にも依存す
るが、1.1倍から3倍の範囲で選択される。より好ま
しくは1.3倍〜2.5倍である。さらに好ましくは
1.5倍〜2.3倍である。
【0115】該熱可塑性樹脂(A)と熱可塑性樹脂
(B)とを前述した好ましい組成範囲に調整した適切な
延伸条件を選択することにより、実質的に複屈折を生じ
させることなく、また光線透過率の低下またはヘーズの
増大を実質的に伴わずに、フィルムを延伸することが容
易にできる。好ましくは1.3倍以上、より好ましくは
1.5倍以上延伸することにより、フィルムの伸び率、
引裂伝播強度、および耐揉疲労などが大幅に改善され、
複屈折が実質的にゼロであり、光線透過率が85%以
上、ヘーズが1%以下のフィルムを得ることができる。
延伸倍率が大きすぎる場合、ネックイン率が大きくなり
過ぎやすい。このため、延伸方向と直交する方向(縦延
伸の場合であれば幅方向)の機械的強度が低くなり過ぎ
やすい。
【0116】本発明のフィルムの厚みは、好ましくは1
0μmから300μmであり、より好ましくは20μm
から150μmであり、さらに好ましくは30μmから
100μmである。
【0117】本発明のフィルムのガラス転移温度は80
℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましく、13
0℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度の上限は特
にないが、250℃以下が好ましく、200℃以下がよ
り好ましい。
【0118】本発明のフィルムの光線透過率は、85%
以上が好ましく、より好ましくは、88%以上である。
また、フィルムのヘーズは2%以下が好ましく、より好
ましくは1%以下である。さらに好ましくは、0.5%
以下である。
【0119】本発明のフィルムは、そのまま最終製品と
して各種用途に使用することができる。あるいは各種加
工を行って、種々の用途に使用できる。特に優れた透明
性、低複屈折性などを利用して光学的等方フィルム、偏
光子保護フィルムや透明導電フィルムなど液晶表示装置
周辺等の公知の光学的用途に好適に用いることができ
る。
【0120】本発明の延伸フィルムは、必要によりフィ
ルムの片面あるいは両面に表面処理を行うことができ
る。表面処理方法としては、例えば、コロナ処理、プラ
ズマ処理、紫外線照射、およびアルカリ処理などが挙げ
られる。特に、フィルム表面にコーティング加工等の表
面加工が施される場合や、粘着剤により別のフィルムが
ラミネートされる場合には、相互の密着性を上げるため
の手段として、フィルムの表面処理を行うことが好まし
い。コロナ処理が特に好適な方法である。好ましい表面
処理の程度は、50dyn/cm以上である。上限は特
に定められないが、表面処理のための設備などの点か
ら、80dyn/cm以下であることが好ましい。
【0121】また、本発明の延伸フィルムの表面には、
必要に応じハードコート層などのコーティング層を形成
することができる。また、本発明のフィルムは、コーテ
ィング層を介して、または、介さずに、スパッタリング
法等によりインジウムスズ酸化物系等の透明導電層を形
成することができ、プラスチック液晶表示装置の電極基
板やタッチパネルの電極基板として用いることもでき
る。
【0122】(偏光子保護フィルム)本発明の延伸フィ
ルムは、偏光子に貼合せて使用することができる。すな
わち、偏光子保護フィルムとして使用することができ
る。ここで、偏光子としては、従来公知の任意の偏光子
が使用可能である。具体的には、例えば、延伸されたポ
リビニルアルコールにヨウ素を含有させて偏光子を得る
ことができる。このような偏光子に本発明の延伸フィル
ムを偏光子保護フィルムとして貼合して偏光板とするこ
とができる。偏光子保護フィルムは、偏光子の片面また
は両面に積層される。一般的には、偏光子の両側に偏光
子保護フィルムが積層される。
【0123】(本発明の製造方法)本発明の製造方法
は、延伸フィルムの製造方法であって、(A)側鎖に置
換または非置換イミド基を有する熱可塑性樹脂、および
(B)側鎖に置換または非置換フェニル基とニトリル基
とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる
原料フィルムをロール縦一軸延伸する工程を包含する。
ここで、得られる延伸フィルムのネックイン率(%)が
(1−1/延伸倍率の3乗根)×100以下となるよう
に、延伸条件が調節される。あるいは、該ロール縦一軸
延伸を行う際のロール間距離が10mm〜150mmに
調節される。
【0124】本発明の製造方法に使用する配合材料につ
いては、本発明のフィルムのための配合材料として上述
した通りである。
【0125】原料フィルムは、従来公知の任意の方法で
成形され得る。例えば、溶液流延法および溶融押出法等
などが挙げられる。なお、本発明の方法においては、原
料フィルムの製造後、一旦フィルムを保管して、その後
別工程として延伸を行ってもよい。また、原料フィルム
の製造の後に続けてフィルムの延伸を行ってもよい。こ
こで、上記「原料フィルム」との状態が瞬間的にしか存
在しない場合があり得る。瞬間的にしか存在しない場合
には、その瞬間的な、フィルムが形成された後延伸され
るまでの状態を原料フィルムという。また、原料フィル
ムとは、その後延伸されるのに充分な程度にフィルム状
になっていればよく、完全なフィルムの状態である必要
はなく、もちろん、完成したフィルムとしての性能を有
さなくてもよい。
【0126】ロール縦一軸延伸の工程は、従来公知のロ
ール設備を用いて行うことができる。ここで、延伸条件
を適宜調節することにより、フィルムのネックイン率が
調節される。延伸条件としては、本発明のフィルムの延
伸方法について上述した延伸条件と同様の延伸条件が使
用可能である。好ましくは、ロール間距離を調節するこ
とにより、フィルムのネックイン率が調節される。ロー
ル間距離は、好ましくは、150mm以下であり、より
好ましくは、100mm以下であり、さらに好ましくは
70mm以下であり、特に好ましくは50mm以下であ
る。ロール間距離が長すぎると、ネックイン率の制御が
困難になりやすい。ロール間距離は、好ましくは、10
mm以上であり、より好ましくは、20mm以上であ
る。ロール間距離が短すぎる場合には、ロールを配置す
る設備が複雑な構造になりコストが上昇しやすい。好ま
しい実施態様において、ロール間距離は、20mm〜7
0mmである。
【0127】ネックイン率を制御する方法としてはま
た、フィルムを走行方向とこれに直交する方向に引っ張
るクロスガイダーを使用する方法などが挙げられる。
【0128】
【実施例】(物性測定方法)以下に本発明の実施例を説
明する。実施例の具体的な内容を説明する前に、まず、
実施例および比較例に示される各物性値の測定方法を以
下に示す。
【0129】<引裂伝播強度> 島津製作所製のオート
グラフを使用してJIS K7128(トラウザー法)
に従い測定した。尚、測定は平均厚みが50±5μmの
フィルムを使用し、引張速度が200mm/分の条件で
行った。また、結果のMD値は、MD方向に引き裂いた
時の数値を示す。
【0130】<耐揉疲労> 東洋精機製作所社製、MI
T耐揉疲労試験機(FOLDINGENDURANCE
TESTER)D型を使用し、JIS C5016に
準拠して測定した。尚、測定は、幅15mm、長さ20
0mm、平均厚み50±5μmの形状のサンプルを使用
し、135°折り曲げ(R=0.38)の条件で行っ
た。また結果のMD値とは、MD方向に折り曲げたとき
の数値を示す。
【0131】<ガラス転移温度> JIS K712
1に準拠し測定した。
【0132】<光線透過率> JIS K7105−1
981の5.5記載の方法により550nmの光を用い
て測定した。
【0133】<ヘーズ> JIS K7105−198
1の6.4記載の方法により測定した。
【0134】<平面方向の位相差> 顕微偏光分光光度
計(オーク製作所:TFM−120AFT)を用い、測
定波長514.5nmで測定した。
【0135】<厚み方向の位相差> 顕微偏光分光光度
計(オーク製作所:TFM−120AFT)を用い、5
14.5nmの測定波長で位相差の角度依存性を測定
し、nx、ny、nzを求めた。別途フィルムの厚みを
測定し、下式を用いて厚み方向の位相差を計算した。
【0136】厚み方向の位相差= |(nx+ny)/
2−nz|×d 以下、実施例に従って本発明を具体的に説明する。
【0137】(製造例1)イソブテンとN−メチルマレ
イミドから成る交互共重合体(N−メチルマレイミド含
量50モル%、ガラス転移温度157℃)65重量部
と、アクリロニトリルの含量が27重量%であるアクリ
ロニトリル・スチレン共重合体35重量部を、塩化メチ
レン溶液に固形分濃度15重量%になるように溶解し、
支持体上に連続的に流延して乾燥し、支持体からフィル
ムを剥離したした後、さらに乾燥して長尺フィルムを得
た。
【0138】(実施例1)製造例1のフィルムを、引き
続いてロール縦一軸延伸機にて145℃、延伸ロール間
距離25mmで2.0倍に延伸した。このフィルムのネ
ックイン率は9.3%、ヘーズは0.4%、フィルムの
平面方向の位相差は5nm、厚み方向の位相差は6nm
であった。また、ガラス転移温度は138℃、耐揉疲労
はMD方向が50回、TD方向が189回、引裂伝播強
度は、MD方向が111gf/mm、TD方向が193
gf/mmであった。このフィルムをレザーカッターを
用いて、ライン速度3m/分でスリットした。その結
果、フィルムに割れは発生しなかった。また、フィルム
を0.1kg/cmの張力下、ライン速度3m/分で粘
着ロールを通過させた。その結果、フィルムに割れは発
生しなかった。
【0139】(比較例1)製造例1のフィルムの延伸を
行わずに、そのフィルムの性能を評価した。フィルムの
フィルム平面方向の位相差は4nm、厚み方向の位相差
は4nm、光線透過率は92%、ヘーズは0.3%であ
った。また、耐揉疲労はMD方向が4回、TD方向が5
回、引裂伝播強度は、MD方向が75gf/mm、TD
方向が73gf/mmであった。
【0140】製造例1のフィルムをカッターでスリット
したところ、スリットする際にフィルムの割れが多発し
た。
【0141】(製造例2)製造例1と同様の樹脂を前も
って押出機にてペレットにしたものを100℃、5時間
乾燥した後、40mm単軸押出機と400mm幅のTダ
イを用いて270℃で押出し、フィルムを得た。
【0142】(実施例2)製造例2のフィルムを、引き
続いてロール縦一軸延伸機にて145℃、延伸ロール間
距離40mmで2.0倍に延伸した。このフィルムのネ
ックイン率は16.3%、ヘーズは0.4%、フィルム
の平面方向の位相差は6nm、厚み方向の位相差は8n
mであった。また、ガラス転移温度は138℃、耐揉疲
労はMD方向が61回、TD方向が180回、引裂伝播
強度は、MD方向が131gf/mm、TD方向が18
9gf/mmであった。このフィルムをレザーカッター
を用いて、ライン速度3m/分でスリットした。その結
果、フィルムに割れは発生しなかった。また、フィルム
を0.1kg/cmの張力下、ライン速度3m/分で粘
着ロールを通過させた。その結果、フィルムに割れは発
生しなかった。
【0143】(比較例2)製造例2のフィルムを延伸せ
ずに、そのフィルムの性能評価を行った。フィルム平面
方向の位相差は5nm、厚み方向の位相差は4nm、光
線透過率は91%、ヘーズは0.3%であった。また、
耐揉疲労はMD方向が5回、TD方向が7回、引裂伝播
強度は、MD方向が80gf/mm、TD方向が74g
f/mmであった。
【0144】製造例2のフィルムをカッターでスリット
したところ、スリットする際にフィルムの割れが多発し
た。
【0145】(比較例3)製造例2のフィルムを製造し
た後、引き続いてロール縦一軸延伸機にて145℃、延
伸ロール間距離200mmで2.0倍に延伸した。この
フィルムのネックイン率は28.5%、ヘーズは0.4
%、フィルムの平面方向の位相差は6nm、厚み方向の
位相差は8nmであり、耐揉疲労はMD方向が3回、T
D方向が224回、引裂伝播強度は、MD方向が32g
f/mm、TD方向が280gf/mmであった。しか
し、このフィルムをカッターでスリットする際にフィル
ムの割れが多発した。
【0146】(製造例3)製造例2において、イソブテ
ンとN−メチルマレイミドから成る交互共重合体(N−
メチルマレイミド含量50モル%、ガラス転移温度15
7℃)を70重量部と、アクリロニトリルの含量が26
重量%であるアクリロニトリル・スチレン共重合体を3
0重量部(I/P比=2.46)にした以外は同じ方法
でフィルムを得た。
【0147】(実施例3)製造例3と同様の方法で作成
したフィルムを用いて実施例2と同じ方法で延伸フィル
ムを得た。このフィルムをレザーカッターを用いて、ラ
イン速度3m/分でスリットした。その結果、フィルム
に割れは発生しなかった。また、フィルムを0.1kg
/cmの張力下、ライン速度3m/分で粘着ロールを通
過させた。その結果、フィルムに割れは発生しなかっ
た。
【0148】(比較例4)製造例3のフィルムをカッタ
ーでスリットしたところ、スリットする際にフィルムの
割れが多発した。
【0149】(比較例5)イソブテンとN−メチルマレ
イミドから成る交互共重合体(N−メチルマレイミド含
量50モル%、ガラス転移温度157℃)のみを用い
て、延伸温度を160℃に変えた以外は実施例2と同じ
方法で延伸フィルムを得た。このフィルムの平面方向の
位相差は10nm、厚み方向の位相差は540nmであ
った。
【0150】以下の表に、上記各実施例および比較例を
整理して示す。
【0151】
【表1】
【0152】
【発明の効果】本発明によれば、ネックイン率を制御し
ながら特定の熱可塑性樹脂からなるフィルムを縦一軸延
伸することにより、ハンドリング性および光学特性に優
れる光学フィルムが提供される。
【0153】具体的には、本発明によれば、比較的安価
なロール縦一軸延伸機などを用いて、ネックイン率を制
御しながら特定の組成を有する樹脂組成物からなるフィ
ルムを一軸延伸することにより、フィルムの伸び率や耐
揉疲労、引裂伝播強度等の機械的強度が改善できる。ま
たフィルムの製造時や後加工時等のハンドリング性が大
幅に改善される。さらに、フィルムが割れる、裂けるな
どの問題の発生が大幅に減少する。またさらに、複屈折
がほとんど発生せず位相差が実質的に発生しないフィル
ムが得られる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 101/02 C08L 101/02 G02B 5/30 G02B 5/30 // B29K 101:12 B29K 101:12 B29L 7:00 B29L 7:00 Fターム(参考) 2H049 BB19 BB22 BB28 BB34 BB37 BB39 4F071 AA04 AA21 AA21X AA22 AA22X AA34 AA34X AA39 AA39X AH12 AH16 BA01 BA02 BB02 BB06 BB07 BC01 4F210 AG01 AH73 QA03 QC01 QC02 QG01 QG18 4J002 BB161 BB171 BC042 BC082 BC092 BC112 BC122 BG122 BG132 BH021

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一軸延伸フィルムであって、 (A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑
    性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル
    基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂
    組成物からなり、 ネックイン率(%)が(1−1/延伸倍率の3乗根)×
    100以下である、フィルム。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のフィルムであって、 前記熱可塑性樹脂(A)が、式(1)で表される繰り返
    し単位および式(2)で表される繰り返し単位を有し、
    ここで式(1)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑性樹
    脂(A)の総繰り返し単位を基準として30〜80モル
    %であり、式(2)の繰り返し単位の含有率が該熱可塑
    性樹脂(A)の総繰り返し単位を基準として70〜20
    モル%であり、 前記熱可塑性樹脂(B)が、式(3)で表される繰り返
    し単位および式(4)で表される繰り返し単位を有し、
    該熱可塑性樹脂(B)中の総繰り返し単位を基準とし
    て、式(3)の繰り返し単位の含有率が20〜50重量
    %であり、式(4)の繰り返し単位の含有率が50〜8
    0重量%であり、 該熱可塑性樹脂(A)の量と熱可塑性樹脂(B)の量と
    の合計を基準として、該熱可塑性樹脂(A)の含有率が
    60〜80重量%であり、かつ該熱可塑性樹脂(B)の
    含有率が20〜40重量%である、フィルム。 【化1】 (式(1)において、R1 、R2 およびR3 は、それぞ
    れ独立に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示
    す。) (式(2)において、Rは、水素、炭素数1〜18のア
    ルキル基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を
    示す。) 【化2】 (式(3)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立
    に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示す。) (式(4)において、R1 およびR2 は、それぞれ独立
    に、水素または炭素数1〜8のアルキル基を示し、R4
    は、水素、炭素数1〜8のアルキル基、ハロゲン基、水
    酸基、アルコキシ基、もしくはニトロ基を示す。)
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の延伸フ
    ィルムを用いてなる偏光子保護フィルム。
  4. 【請求項4】 延伸フィルムの製造方法であって、 (A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑
    性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル
    基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂
    組成物からなる原料フィルムをロール縦一軸延伸する工
    程を包含し、 ここで、得られる延伸フィルムのネックイン率(%)が
    (1−1/延伸倍率の3乗根)×100以下である、方
    法。
  5. 【請求項5】 延伸フィルムの製造方法であって、 (A)側鎖に置換または非置換イミド基を有する熱可塑
    性樹脂、および(B)側鎖に置換または非置換フェニル
    基とニトリル基とを有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂
    組成物からなる原料フィルムをロール縦一軸延伸する工
    程を包含し、 ここで、該ロール縦一軸延伸を行う際のロール間距離が
    10mm〜150mmである、方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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